JP4259343B2 - 選択結合性物質の固定化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被検物質と選択的に結合する物質(本明細書において「選択結合性
物質」)を担体へ固定化する方法に関する。
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められており、ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質およびこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列の明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの高分子体の機能については、各種の方法で調べることができる。主なものとしては、核酸についてはノーザンハイブリダイゼーション、あるいはサザンハイブリダイゼーションのような、各種の核酸/核酸間の相補性を利用して各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。蛋白質については、ウエスタンブロッティングに代表されるような、蛋白質/蛋白質間の反応を利用し蛋白質の機能および発現について調べることができる。
近年、多数の遺伝子発現を一度に解析する手法としてDNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)と呼ばれる新しい分析法、ないし方法論が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には従来の方法と同じであり、蛋白質/蛋白質間あるいは糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間の結合反応に基づく蛋白質や糖鎖検出・定量にも応用が可能ではある。これらの技術は、マイクロアレイ又はチップと呼ばれるガラスの平面基板片上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。マイクロアレイ法の具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基板片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度解析装置で高速に読みとる方法や、電気化学反応にもとづく電流値等の応答を検出する方法が挙げられる。こうして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。
核酸を基板上に固定化するための技術としては、スライドガラス等の平坦な基板の上にポリ−L−リジン、アミノシラン等をコーティングして、スポッターと呼ばれる点着装置を用い、比較的塩基長の長いcDNAなどを静電気な力により固定化する方法などが開発されている(例えば、特許文献1参照)。ところで、DNAチップに用いられるプローブ核酸(基板上に固定化された核酸)は、従来の数百〜数千塩基の長さのcDNAおよびその断片から、検出の際のエラーを下げることと、合成機で容易に合成できるという理由から、核酸プローブとしてオリゴDNA(オリゴDNAとは塩基数が10〜100塩基までのものをいう)を用いようとしている。
また、その他の事情として、最近になり樹脂製の基板が割れにくい、さらには、金型を用いて射出成型法やホットエンボス法などの生産手段をとることにより、比較的任意の形状の基板を作製できるとの利点があるため、ガラスに替わり樹脂製の基板に核酸に代表される選択結合性物質を固定化するための技術開発が進められている。例えば特許文献2には、飽和環状ポリオレフィン樹脂を基板として用い、これに酸素雰囲気下でプラズマ処理を施し、アミノアルキルシラン処理を行い、さらに架橋剤としてグルタルアルデヒドを用いてDNAを固定化した例がある。しかしながら、特許文献2の例では、アミノアルキルシランと基板もしくはアルキルシランとグルタルアルデヒドとの反応効率が悪く、固定化できるDNAの量が少なく、検体とのハイブリダイゼーション後の信号強度が弱いといった問題点があった。さらには、特許文献2の例では、基板自体の蛍光(自家蛍光)が大きいといった問題点があった。
その他、担体に酸素プラズマ処理を施してDNAなどを基板に固定化する公知例には特許文献3がある。この方法は、ガラスやサファイヤなどの無機材料からなる基板を酸素プラズマにさらした後、緩衝液中に溶解したDNAをこの基板に滴下するなどして基板上にDNAを固定化するものである。ただし、この方法では、共有結合などでDNAが基板に固定化されているのではなく、基板とDNAとがただ単に物理吸着により固定化されているものと推定される。従って、固定化されるDNAの量が少ない上に、検体DNA(ターゲットDNA)とのハイブリダイゼーションの操作を行った後では固定化されたDNAが剥がれ落ちてしまい、ハイブリダイゼーションを示すシグナル(例えば蛍光)がほとんど観察されないといった問題点がある。また、特許文献3には、ポリマーからなる基板にDNAなどを固定化する方法について、何ら述べられていない。
また、特許文献4にはガラスの基板の上でプラズマによって重合膜(プラズマ重合膜)を作製して、タンパク質をこの上に置き、さらにこの上からプラズマ重合を施して、プラズマ重合膜によりタンパク質をサンドウィッチするような形で基板の上に固定化する方法が開示されている。この方法では、プラズマ重合という煩雑な操作を2回繰り返す必要があり、簡便にタンパクやDNAを基板上に固定化することができないといった問題点があった。
特表平10−503841号公報(特許請求の範囲) 特開2003−161731号広報(特許請求の範囲および実施例) 特開2002−218976号公報(特許請求の範囲) 国際公開第01/33227号パンフレット
本発明では、樹脂(ポリマー)製の担体(基板)を用いても上記のような信号強度の低下がなくS/N比が良好で検出感度の高い選択結合性物質の固定化方法を提供するものである。
さらには、簡便な方法にて担体上に選択結合性物質を固定化する方法を提供するものである。
すなわち本発明は、担体表面が下記一般式(1)で表される構造単位を含有しているポリマーを有している担体に選択結合性物質を固定化する方法であって、選択結合性物質の固定化前に上記担体表面を酸素プラズマで処理し、次いでアルカリもしくは酸で担体表面を処理することを特徴とする選択結合性物質の固定化方法である。
Figure 0004259343
(一般式(1)のR1、R2、R3は、アルキル基、アリール基もしくは水素原子を表す。)
本発明の方法により、担体の表面に、共有結合で強固に、かつ、高密度に選択結合性物質を固定化できる。さらには、ハイブリダイゼーションに代表される、検体と固定化された選択結合性物質との選択的な反応時における、検体の非特異的な吸着を抑え、かつ、検体と固定化された選択結合性物質との反応効率が高い担体を提供することができる。結果的に、本発明の方法により、検出の際のS/N比が良好な選択結合物質の固定化方法を提供することができる。
以下、本発明の選択結合性物質の固定化担体への固定化方法について説明する。本発明の選択結合性物質の固定化担体は、選択結合性物質を固定化するための担体表面が、下記一般式(1)で表される構造単位を含有しているポリマーを有する固体である必要がある。
Figure 0004259343
(一般式(1)のR1、R2、R3は、アルキル基、アリール基もしくは水素原子を表す。)
前記ポリマーとしては、単独重合体あるいは共重合体が用いられる。前記ポリマーは、少なくとも一つのタイプのモノマーを原料に用いており、そのモノマーは、重合に関与し得る二重結合および重縮合に関与し得る官能基ならびに、ケトンもしくはカルボン酸またはそれらの誘導体の形態で存在する。また前記ポリマーは、一般式(1)の構造を有することがより好ましい。
なお、前記ポリマーが共重合体の場合、一般式(1)で表される構造単位を全モノマー単位の10%以上含有していることが好ましい。一般式(1)で表される構造単位の含有量が10%以上であると、後に説明するようなステップにて、表面に多くのカルボン酸を生成でき、プローブ核酸を多く固定化できるので、結果的にハイブリダイゼーション後のS/N比がより向上する。
本発明において、ポリマーとは、数平均重合度が50以上のものを言う。このポリマーの数平均重合度の好ましい範囲は、100から1万である。特に好ましくは、200以上、5000以下である。なお、数平均重合度はGPC(ゲルパーメイションクロマトグラフ)を用い定法にてポリマーの分子量を測定することにより、容易に測定できる。
一般式(1)において、R1およびR2はアルキル基、アリール基または水素原子を表し、それぞれ同一であっても異なっていても良い。前記アルキル基は直鎖状であってもまたは枝別れしていても良く、好ましくは1から20の炭素数を有する。より好ましくは1から5の炭素数を有する。前記アリール基は、好ましくは6から18、さらに好ましくは6から12の炭素数を有する。官能基XはO、NR3 、またはCH2の中から任意に選ばれる。R3は前記R1およびR2と同様に定義される官能基である。
前記各種のような官能基を含むポリマーで、好ましいものとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)またはポリプロピルメタクリレートのポリメタクリル酸アルキル(PAMA)等がある。これらの中で特に好ましいものは、ポリメチルメタクリレートである。さらに、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸シクロヘキシルまたはポリメタクリル酸フェニル等も用いることができる。また、前記ポリマーの構成要素を組み合わせた、または前記ポリマーの構成要素に他の一種または複数種のポリマーの構成要素を加えた構造の、共重合体も用いることができる。前記他のポリマーとしては、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルまたはポリアミド等がある。
共重合体の場合、各構成要素の比の範囲は、カルボニル基を含むモノマー、例えばメタクリル酸アルキルの割合は、10モル%以上が好ましい。こうすることにより、表面に多くのカルボン酸を生成できプローブ核酸を多く固定化できるので、結果的にS/N比がより向上するからである。ポリマーの構造単位のうち、より好ましい該モノマーの割合は50モル%以上である。以上述べたポリマーの中でも、最も好ましいのはポリメチルメタクリレートである。このポリマーを用いることにより、選択結合性物質の固定量が多く、ハイブリダイゼーション後のシグナルが強い担体が得られる。さらには、自家蛍光も小さく結果的にS/Nの良好な選択結合性物質が固定化された担体を得ることができる。
さて、一般式(1)で表される構造単位を少なくとも1つ有するポリマーを有する担体に選択結合性物質を固定化するためには、これに酸素プラズマにより前処理を施すことが必要である。なお、本発明で酸素プラズマとは、酸素を含むプラズマであればよい。例えばアルゴンや窒素等の酸素以外のガスからなるプラズマを発生させ、担体をプラズマに曝しても良いが、酸素ガスのみからなるプラズマに担体を曝すことが好ましい。このように、酸素プラズマ処理を施すことにより、実際に起きている詳細な現象は不明であるが、担体表面にカルボン酸が形成できるものと推定される。このため、後述するような方法を用いることにより選択結合性物質を容易に担体表面に固定化することが可能となる。上記酸素プラズマ処理を施す手段としては特に限定されないが、例えば低温プラズマ処理が挙げられ、より具体的には酸素雰囲気下における、RIE(リアクティブイオンエッチング)や、酸素雰囲気下でのいわゆる逆スパッタや、大気圧プラズマ方式による酸素プラズマ処理などを挙げることができる。
さらに、酸素プラズマ処理を施した後に担体表面により多くのカルボン酸を生成する手段として、アルカリもしくは酸で処理する。このようなアルカリもしくは酸での処理を施すとポリマー側鎖の加水分解がおき、担体表面のカルボン酸の密度が向上する効果がある。アルカリもしくは酸による処理の具体的な例としては、水酸化ナトリウムもしくは硫酸の水溶液(好ましい濃度は、1N〜20N)に担体を浸漬し、好ましくは30℃から80℃の温度にして、1時間から100時間の間保持すればよい。
このように、酸素プラズマ処理とアルカリ、酸による処理を行って、カルボン酸を担体の表面に生成すれば、アミノ基や水酸基を有する選択結合性物質を共有結合により担体表面に固定化することが可能となる。一般的には、これらの結合の反応を助長するため、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−エチル−5−フェニルイソオキサゾリウム−3’−スルホナートなどの様々な縮合剤が用いられている。これらの中でも、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、毒性が少ないことや、反応系からの除去が比較的容易なことから、選択結合性物質と担体表面のカルボン酸との縮合反応にはもっとも有効な縮合剤の1つである。これらEDCなどの縮合剤は、選択結合性物質の溶液と混ぜて使用しても良いし、カルボン酸が表面に生成された担体を予めEDCの溶液に浸漬しておき、表面のカルボン酸を活性化しておいても良い。
このような縮合剤を用い、担体表面のカルボン酸と選択結合性物質のアミノ基とを反応させた場合は、アミド結合により担体表面と選択結合性物質が固定化されることになり、担体表面のカルボン酸と選択結合性物質の水酸基とを反応させた場合は、エステル結合により担体表面と選択結合性物質とが固定化されることになる。選択結合性物質を含む試料を担体に作用させる際の温度は、5℃〜95℃が好ましく、15℃〜65℃が更に好ましい。処理時間は通常5分〜24時間であり、1時間以上が好ましい。
前述した方法により、ポリマー表面に選択結合性物質を固定化することにより、非特異的な検体の吸着を抑え、さらに、共有結合で強固に、かつ、高密度に選択結合性物質を固定化でき、検体とのハイブリダイゼーション効率が高い担体を得ることができる。
ところで、一般式(1)で示されるような構造単位を含むポリマーで担体を作製する場合、ガラス、セラミック、金属などに比較し、射出成形方法やホットエンボス法などを用いることにより、微細な形状を設けた担体をより簡単に大量生産することが可能である。そこで、選択結合性物質が固定化される担体の形状について述べる。本発明の選択結合性物質が固定化される担体には凹凸部があり、凸部上面に選択結合性物質が固定化されていることが好ましい。このような構造を取ることにより、検出の際、後述のように非特異的に吸着した検体を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的によりS/Nが良好な選択結合性物質物質が固定化された担体を提供することができる。そして、凹凸部の複数の凸部の高さに関しては、凸部の上面の高さが略同一であるであることが好ましい。ここで、高さが略同一とは、多少高さの違う凸部の表面に選択結合性物質を固定化し、これと蛍光標識した被検体とを反応させ、そして、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの強度差が問題とならない高さをいう。具体的に高さが略同一とは、高さの差が100μmより小さいことをいう。さらに本発明の担体には、平坦部が設けられていることが好ましい。具体例を図2、図3に示す。11が平坦部であり、かつ、12で示される凹凸部の凸部上面に選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。そして、該凹凸部の凸部分の上面が実質的に平坦であることが好ましい。ここで凸部上面が実質的に平坦とは、50μm以上の凹凸がないことを意味する。さらに、凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さが略同一である。ここで、平坦部と凹凸部との高さが略同一とは、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの低下具合が問題とならない高さをいう。具体的に高さの差が略同一とは、凹凸部凸部上面の高さと、平坦部の高さとの差が100μmより小さいことをいう。
すなわち、一般にマイクロアレイは、蛍光標識化された検体と担体に固定化された選択結合性物質とを反応させ、スキャナーと呼ばれる装置で蛍光を読みとることが一般的である。スキャナーは励起光であるレーザー光を対物レンズで絞り込み、レーザー光を集光する。この集光された光をマイクロアレイの表面に照射して、レーザー光の焦点をマイクロアレイ表面に合わせる。そして、この条件のまま、対物レンズもしくは、マイクロアレイ自体を走査することによりマイクロアレイから発生する蛍光を読み込むような仕組みとなっている。
このような、スキャナーを用いて本発明の凸部上面に選択結合性物質を固定化した担体をスキャンすると、凹凸部の凹部に非特異的に吸着した検体DNAの蛍光(ノイズ)を検出しがたいという効果を発揮する。この理由は、凸部上面にレーザー光の焦点が合っているため、凹部ではレーザー光がデフォーカスされるからである。逆に言えば、選択結合性物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部上面の高さと、最も低い凸部上面の高さの差が50μm以下であることが好ましい。なぜなら、凸部上面の高さにこれ以上のばらつきがあると、スキャナーの焦点深度の関係で正確な蛍光強度を測定できないことが起こりうるからである。
なお、選択結合性物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部上面の高さと、最も低い凸部上面の高さの差は、50μm以下であれば良いが、30μm以下であることがより好ましく、高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。
なお、選択結合性物質が固定化された複数の凸部とは、データとして必要な選択結合性物質(例えば核酸)が固定化された部分をいうのであって、ただ単にダミーの選択結合性物質を固定化した部分は除く。
また、一般にスキャナーの焦点を調整する方法は、以下の通りである。すなわち、スキャナーがマイクロアレイの表面に励起光の焦点を合わせる際には、マイクロアレイの隅で励起光の焦点を合わせるか、図4に示すように、治具にマイクロアレイを突き当て、レーザー光の焦点をマイクロアレイ表面に合わせる。そして、その条件のまま、マイクロアレイ全体をスキャンする。したがって、本発明の担体には、特に凹凸部と平坦部が設けられていることが好ましい。具体例を図2、図3に示す。11が平坦部であり、かつ、12で示される凹凸部の凸部上面に選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。さらに、凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差が50μm以下であることが好ましい。このようにしておけば、選択結合性物質が固定化された担体をスキャンする場合は、いったん平坦部の上面で励起光の焦点を合わせたり、平坦部を治具に突き当てることが可能である。すなわち、スキャナーの焦点合わせが容易になる。このようにして、平坦部で励起光の焦点を合わせるので、選択結合性物質が固定化された凸部の上面は、平坦であり、かつ、凸部上面の高さと平坦部の高さの差が50μm以下であることが好ましい。
凸部の上面の高さと平坦部の高さの差が50μmより大きいと、以下のような問題点が生じることがある。すなわち、励起光の焦点は平坦部の上面で調整されているので、凸部の上面の高さが異なると、凸部上面での励起光の焦点がぼやけてしまい、最悪の場合、選択結合性物質と検体が反応したことによる蛍光が全く検出されないことが起こりうる。同様なことは、凸部上面と高さが同じ平坦部が設けられていない場合でも起こりうる。
また、凸部の上面が平坦でない場合、凸部上面での励起光の焦点の大きさにばらつきが起き、結果的に1つの凸部上面内で検出された蛍光の強さにむらが発生する。こうなると、後の解析が困難となる。本願の場合は、上記のような問題は起きず、良好なシグナル(蛍光)を得ることが可能である。
なお、凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差は、50μm以下であればよいが、30μm以下であることがより好ましく、凸部の上面の高さと平坦部分の高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。
また本発明では、平面状の担体に選択結合性物質を点着するのではなく、凹凸部分の凸部上面にのみ選択結合性物質を固定化している。したがって、凸部上面以外の部分に非特異的に検体試料が吸着しても、凸部上面以外の部分では、励起光の焦点がぼやけてるため、望まざる非特異的な吸着をした検体試料からの蛍光を検出することがない。このため、ノイズが小さくなり、結果的にS/Nが良くなるという効果を発揮する。
また、凸部の上面の面積は略同一であることが好ましい。このようにすることにより、多種の選択結合性物質が固定化される部分の面積を同一にできるので、後の解析に有利である。ここで、凸部の上部の面積が略同一とは、凸部の中で最も大きい上面面積を、最も小さい上面面積で割った値が1.2以下であることを言う。
凸部の上面の面積は、特に限定される物ではないが、選択結合性物質の量を少なくすることができる点とハンドリングの容易さの点から、4mm2以下、10μm2以上が好ましい。
凹凸部における凸部の高さとしては、0.01mm以上、1mm以下が好ましい。凸部の高さがこれより低いと、スポット以外の部分の非特異的に吸着した検体試料を検出してしまうことがあり、結果的にS/Nが悪くなることがある。また、凸部の高さが1mm以上であると、凸部が折れて破損しやすいなどの問題が生じる場合がある。
また、少なくとも凸部の側面に導電性材料が設けられていることが好ましい。こうすると、例えば、対抗電極を設け、対抗電極とこの導電性材料の間に電流、電圧を印加することにより核酸の場合であるとハイブリダイゼーションの高速化が可能となる。導電性材料がコートされる好ましい領域としては、凹部の全部、凸部の側面全部である。その例を図5に示す。
印加する電圧の範囲としては、電流が流れる場合は、0.01V以上、2V以下の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は、0.1V以上、1.5V以下である。これより、大きい電圧を印加すると水が電気分解をおこし、表面の選択結合性物質に悪影響を及ぼす場合がある。導電性材料の材質としては特に限定されないが、炭素、マグネシウム、アルミ、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、錫、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、白金、金、ステンレスやこれらの混合物や導電性ポリマーが挙げられる。この中でも、白金、金、チタンが特に好ましく用いられる。これらの導電性材料の膜の作製方法としては、蒸着、スパッタ、CVD、メッキなどが挙げられる。
上記のように凸部に導電性材料をコートした場合は、凸部の上面以外はさらに絶縁材料の層を設けることが好ましい。絶縁材料の層があると、電流を流した場合凸部の上面にのみ被検体を引き寄せることが可能である。絶縁材料の材料としては、金属の酸化物(例えば、Al−O、SiO2、TiO2、VO、SnO、Cr−O、Zn−O、GeO2、Ta25、ZrO2、Nb−O、Y23など)、窒化物(Al−N、Si34、TiN、Ta−N、Ge−N、Zr−N、NbNなど)、硫化物(ZnS、PbS、SnS、CuS)、絶縁性のポリマーが挙げられる。
上述の方法により得られた選択結合性物質固定化担体は、選択結合性物質を固定した後、適当な処理をすることができる。例えば、熱処理、アルカリ処理、界面活性剤処理などを行うことにより、固定された選択結合性物質を変性させることもできる。
また、選択結合性物質固定化担体は、蛍光標識化された検体と担体に固定化された選択結合性物質とをハイブリダイゼーション反応させ、スキャナーと呼ばれる装置で蛍光を読みとることが一般的である。スキャナーは励起光であるレーザー光を対物レンズで絞り込み、レーザー光を集光する。しかし、担体表面から自家蛍光が生じる場合、その発光がノイズとなり検出精度の低下に繋がることがある。これを防ぐため一般式(1)の構造単位を有するポリマーに黒色を呈し、またレーザー照射により発光を生じない物質を含有させて表面を黒色にすることにより、担体自身からの自家蛍光を低減させることができるので好ましい。このような担体を用いることにより、検出の際、担体からの自家蛍光を低減できるのでよりノイズが小さく、結果的にS/N比が良好な選択結合性物質物質が固定化された担体を提供することができる。
ここで、担体が黒色とは、可視光(波長が400nmから800nm)範囲において、担体の黒色部分の分光反射率が特定のスペクトルパターン(特定のピークなど)を持たず、一様に低い値であり、かつ、担体の黒色部分の分光透過率も、特定のスペクトルパターンを持たず、一様に低い値であることをいう。
この分光反射率、分光透過率の値としては、可視光(波長が400nmから800nm)の範囲の分光反射率が7%以下であり、同波長範囲での分光透過率が2%以下であることが好ましい。なお、ここでいう分光反射率は、JIS Z 8722 条件Cに適合した、照明・受光光学系で、担体からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率をいう。
黒色にする手段としては、担体に黒色物質を含有させることにより達成しうるが、この黒色物質の好ましいものを挙げると、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物などの黒色物質が使用できる。
これらの黒色物質は単独で含有させる他、2種類以上を混合して含有させることもできる。この中の黒色物質の中でも、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラックを好ましく含有させることができ、ポリマーに一様に分散しやすいことから特にカーボンブラックを好ましく用いることができる。
また、担体の形状としてガラス、金属などの熱変形をし難い材料からなる支持体層の上に、一般式(1)で表される構造単位を少なくとも1つ有するポリマーからなる選択結合性物質固定化層を設けると、熱や外力による担体の形状変化を防げることから好ましい。この概念図を図6に示す。支持体層としては、ガラスや、鉄、クロム、ニッケル、チタン、ステンレスなどの金属が好ましい。また、この支持体層と選択結合性物質固定化層との密着性を良くするため、支持体層の表面を、アルゴン、酸素、窒素ガスでのプラズマ処理やシランカップリング剤での処理を施すことが好ましい。このようなシランカップリング剤としては3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシランなどが挙げられる。支持体層の上に選択結合性物質固定化層を設ける手段としては、ポリマーを有機溶媒に溶解し、スピンコートやディッピングなどの公知の手段を用いることができる。より簡単には、支持体層に接着剤で貼り付けることもできる。
ここで、「選択結合性物質」とは、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る物質を意味し、代表的な例として、核酸、タンパク質、糖類及び他の抗原性化合物を挙げることができる。核酸は、DNAやRNAでもPNAでもよい。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう「選択結合性物質」に該当する。また、タンパク質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab')2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。糖類としては、多糖類が好ましく、種々の抗原を挙げることができる。また、タンパク質や糖類以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。本発明に用いる選択結合性物質は、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。「選択結合性物質」として、特に好ましいものは、核酸である。この核酸の中でも、オリゴ核酸と呼ばれる、長さが10塩基から100塩基までの核酸は、合成機で容易に人工的に合成が可能であり、また、核酸末端のアミノ基修飾が容易であるため、担体表面への固定化が容易となることから好ましい。さらに、20塩基未満ではハイブリダイゼーションの安定性が低いという観点から20〜100塩基がより好ましい。ハイブリダイゼーションの安定性を保持するため、特に好ましくは40〜100塩基の範囲である。
本発明の担体を用いた測定方法に供せられる被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの被検物質を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸を標識してもよいし、該核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。後者の場合には、測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を被検物質とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオチド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、被検物質が抗原又は抗体の場合には、被検物質である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、被検物質である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、担体を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、担体に結合した標識を測定することもできる。
固定化物質と被検物質を相互作用させる工程は、従来と全く同様に行うことができる。反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる核酸の鎖長や、免疫反応に関与する抗原及び/又は抗体の種類等に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、50℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1
公知の方法であるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスを用いて、射出成形用の型を作製し、射出成型法により後述するような形状を有するPMMA製の担体を得た。なお、この参考例1で用いたPMMAの平均分子量は15万であり、PMMA中には0.5重量%の割合で、カーボンブラック(三菱化学製 #3050B)を含有させており、担体は黒色である。この黒色担体の分光反射率と分光透過率を測定したところ、分光反射率は、可視光領域(波長が400nmから800nm)のいずれの波長でも5%以下であり、また、同範囲の波長で、透過率は0.5%以下であった。分光反射率、分光透過率とも、可視光領域において特定のスペクトルパターン(ピークなど)はなく、スペクトルは一様にフラットであった。なお、分光反射率は、JIS Z 8722の条件Cに適合した照明・受光光学系を搭載した装置(ミノルタカメラ製、CM−2002)を用いて、担体からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を測定した。
担体の形状は、大きさが縦76mm、横26mm、厚み1mmであり、担体の中央部分を除き表面は平坦であった。担体の中央には、直径10mm、深さ0.2mmの凹んだ部分が設けてあり、この凹みの中に、直径0.2mm、高さ0.2mmの凸部を64(8×8)箇所設けた。凹凸部分の凸部上面の高さ(64箇所の凸部の高さの平均値)と平坦部分との高さの差を測定したところ、3μm以下であった。また、64個の凸部上面の高さのばらつき(最も高い凸部上面の高さと最も低い凸部上面との高さの差)、さらには、凸部上面の高さの平均値と平坦部上面の高さの差を測定したところそれぞれ3μm以下であった。さらに、凹凸部凸部のピッチ(凸部中央部から隣接した凸部中央部までの距離)は0.6mmであった。
そしてこの表面を、エタノールで洗浄して乾燥した後、リアクティブイオンエッチング装置(サムコ(株)製:RIE−10NR)の真空チャンバー中にセットした。ついで、高真空(3×10-3Pa)まで排気した後、酸素ガス流量100sccm、投入電力100W、チャンバー内圧力10Paの条件で酸素プラズマ処理を20秒間施した。ついで、この担体を真空チャンバー中から取り出し、後述する手法を用いて、この担体にプローブDNAの固定化、さらには固定化されたプローブDNAとターゲットDNA(検体DNA)とのハイブリダイゼーションを試みた。
実施例1
参考例1と同様の担体を参考例1と同様な条件にて、酸素プラズマ処理を施した。ついで、この担体を60℃で、10Nの水酸化ナトリウム水溶液に20時間浸漬して、担体の表面に加水分解にてカルボン酸を生成した。そして、水酸化ナトリウム水溶液からこの担体を取り出した後、純水、0.1Nの塩酸、純水の順に洗浄して乾燥した。後述する手法にて、この担体にプローブDNAの固定化、さらには固定化されたプローブDNAとターゲットDNA(検体DNA)とのハイブリダイゼーションを試みた。
比較例1
透明なポリメチルメタクリレート(PMMA)板((株)クラレ製;コモグラス押し出し板、厚さ1mm、平均分子量15万、すなわち数平均重合度1500)をスライドガラスと同じ大きさに切りだした。そしてこの表面を、エタノールで拭いた。後述する手法にて、この担体(基板)へのプローブDNAの固定化、さらには固定化されたプローブDNAとターゲットDNA(検体DNA)とのハイブリダイゼーションを試みた。
比較例2
飽和環状ポリオレフィン樹脂を用い、射出成形によりスライドグラス状の担体を得た。これをリアクティブイオンエッチング装置(サムコ(株)製:RIE−10NR)の真空チャンバー中にセットした。ついで、高真空(3×10-3Pa以下)まで排気した後、酸素ガス流量100sccm、パワー100W、チャンバー内圧力10Paの条件で酸素プラズマ処理を20秒間施した。次に、アミノアルキルシランとしてγ―アミノプロピルトリエトキシシランをメタノール中に5%の濃度で溶解させたものをアミノ基導入処理液として調製し、この溶液の中に2時間浸漬の後、担体を溶液から取り出し、超純水中に浸漬し放置後担体を取り出し乾燥した。グルタルアルデヒドをリン酸バッファー(pH7.0)中に2%の濃度で溶解させてグルタルアルデヒド溶液を調製し、アミノアルキルシラン処理を行なった担体をグルタルアルデヒド溶液中に浸漬し、4時間放置した後、担体を取り出して超純水中に浸漬し、洗浄乾燥した。後述する手法により、この担体へのプローブDNAの固定化、さらには固定化されたプローブDNAとターゲットDNA(検体DNA)とのハイブリダイゼーションを試みた。
(比較例3)
スライドガラス(松波硝子(株)製)の表面を、エタノールで洗浄して乾燥した後、リアクティブイオンエッチング装置(サムコ(株)製:RIE−10NR)の真空チャンバー中にセットした。ついで、高真空(3×10−3Pa)まで排気した後、酸素ガス流量100sccm、投入電力100W、チャンバー内圧力10Paの条件で酸素プラズマ処理を30秒間施した。ついで後述する方法にて、プローブDNAの固定化、およびターゲットDNAとのハイブリダイゼーションを試みた。
(プローブDNA調整および担体への固定化)
参考例1実施例1、比較例1については以下の方法を用いた。
配列番号1(60塩基、5’末端アミノ化)のDNAを合成した。このDNAの5’末端はアミノ化されている。
このDNA(乾燥状態)を、純水に0.27nmol/μlの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。担体に点着する際は、PBS(NaClを8g、Na2HPO4・12H2Oを2.9g、KClを0.2g、KH2PO4を0.2g純水に溶かし1lにメスアップしたものにpH調整用の塩酸を加えたもの、pH5.5)でプローブの終濃度を0.027nmol/μlとし、かつ、担体表面のカルボン酸とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mlとした。そして、これらの混合溶液をおよそ200nl取り出して、これを担体に点着した。次いで、担体を密閉したプラスチック容器入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートして、純水で洗浄した。この反応スキームを図1に示す。
比較例2の場合は次の方法を用いた。
すなわち、上記の配列番号1のDNAのストックソリューションをPBSに薄めて、プローブDNA(配列番号1)の終濃度を0.027nmol/μlとした。そして、この溶液を200nl取り出して、担体に点着した。密閉したプラスチック容器に入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間インキュベートして、担体表面のアルデヒド基とプローブ核酸のアミノ基とをシッフ塩基結合にて結合させた。次いで、この担体を0.2重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液の中に担体を入れ、2分間振とうし、さらに、純水中で2分間振とうして洗浄した。さらに、1.5gのNaBH4に450mlのPBSと100%エターノールを133ml加えた溶液を準備した。溶液の準備後、素早く前記担体をこの溶液に浸し、5分後にこれを取りだした。このようにして、DNAと結合していない、担体上の余分なアルデヒド基をブロッキングした。次いで、0.2重量%SDS水溶液、純水の順に洗浄し、乾燥した。
また、比較例3の場合は次の方法を用いた。
すなわち、上記の配列番号1のDNAのストックソリューションをPBSに薄めて、プローブDNA(配列番号1)の終濃度を0.027nmol/μlとした。そして、この溶液を200nl取り出して、担体に点着し乾燥し、純水で洗浄した。
(検体DNAの調整)
検体DNAとして、上記DNA固定化担体とハイブリダイズ可能な塩基配列を持つ配列番号5のDNA(968塩基)を用いた。調整方法を以下に示す。
配列番号2と配列番号3のDNAを合成した。これを純水にとかして濃度を100μMとした。次いで、pKF3 プラスミドDNA(タカラバイオ(株)製品番号;3100)(配列番号4:2264塩基)を用意して、これをテンプレートとし、配列番号2および配列番号3のDNAをプライマーとして、PCR反応(Polymerase Chain Reaction)により増幅を行った。
PCRの条件は以下の通りである。すなわち、ExTaq 2μl、 10×ExBuffer 40μl、 dNTP Mix 32μl(以上はタカラバイオ(株)製 製品番号RR001Aに付属)、 配列番号2の溶液を2μl、配列番号3の溶液を2μl、 テンプレート(配列番号4)を0.2μlを加え、純水によりトータル400μlにメスアップした。これらの混合液を、4つのマイクロチューブに分け、サーマルサイクラーを用いてPCR反応を行った。これを、エタノール沈殿により精製し、40μlの純水に溶解した。PCR反応後の溶液の一部をとり電気泳動で確認したところ、増幅したDNAの塩基長は、およそ960塩基であり配列番号5(968塩基)が増幅されていることを確認した。
次いで、9塩基のランダムプライマー(タカラバイオ(株)製;製品番号3802)を6mg/mlの濃度に溶かし、上記のPCR反応後精製したDNA溶液にに2μl加えた。この溶液を100℃に加熱した後、氷上で急冷した。これらにKlenow Fragment(タカラバイオ(株)製;製品番号2140AK)付属のバッファーを5μl、dNTP混合物(dATP、dTTP、dGTPの濃度はそれぞれ2.5mM、dCTPの濃度は400μM)を2.5μl加えた。さらに、Cy3−dCTP(アマシャムファルマシアバイオテク製;製品番号PA53021)を2μl加えた。この溶液に10UのKlenow Fragmentを加え、37℃で20時間インキュベートし、Cy3で標識された検体DNAを得た。なお、標識の際ランダムプライマーを用いたので検体DNAの長さには、ばらつきがある。最も長い検体DNAは配列番号5(968塩基)となる。なお、検体DNAの溶液を取り出して、電気泳動で確認したところ、960塩基に相当する付近にもっとも強いバンドが現れ、それより短い塩基長に対応する領域に薄くスメアがかかった状態であった。そして、これをエタノール沈殿により精製し、乾燥した。
この標識化された検体DNAを、1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC(5×SSCとはNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1gの純水にとかし、200mlにメスアップしたもの。またNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1g純水にとかし、1lにメスアップしたものを1×SSCと表記し、これの10倍濃縮液を10×SSC、5倍希釈液を0.2×SSCと表記する。)、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液(各濃度はいずれも終濃度)、1mlに溶解し、ハイブリダイゼーション用の溶液とした。
(ハイブリダイゼーション)
上記で得られたプローブDNAを固定化した担体に上記検体DNAをハイブリダイゼーションさせた。具体的には、先に用意したプローブ核酸が固定化されている担体にハイブリダイゼーション用の溶液を40μl滴下し、その上にカバーガラスをかぶせた。また、カバーガラスの周りをペーパーボンドでシールし、ハイブリダイゼーションの溶液が乾燥しないようにした。これを、プラスチック容器の中に入れ、65℃、湿度100%の条件で10時間インキュベートした。インキュベート後、カバーガラスを剥離後に洗浄、乾燥した。
(測定)
ハイブリダイゼーションの有無を検出するために、DNAチップ用のスキャナー(Axon Instruments社のGenePix 4000A)に上記処理後の担体をセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を500にした状態で測定を行った。その結果を表1に示す。ここで、蛍光強度とはスポット内の蛍光強度の平均値であり、ノイズとはスポット周り(DNAが点着されていない部分)の蛍光強度の平均値とした。測定結果を表1に示す。
Figure 0004259343
なお、実施例1において、10NのNaOH水溶液を用いる替わりに、10Nの硫酸を用いても上記とほぼ同様な結果が得られた。
また、特許文献3の技術にてDNAを固定化した比較例3において、ハイブリダイゼーション後のシグナルがほとんど観察されない原因は以下のように推定される。すなわち、特許文献3では、DNAを固定化した後、水洗してAFM(原子間力顕微鏡)で基板上にDNAが固定化されているかどうかを分子像で観察している。この時は、単なる物理吸着によって、基板にDNAが固定化されているものと推定される。そのため、この状態からハイブリダイゼーションを行うと、基板上に固定化されているDNAがほとんど流れ落ちてしまうので、比較例3のように、ほとんどハイブリダイゼーション後のシグナルが観察されないものと推定される。
以上より、本発明の固定化方法を用いることにより、S/N比が良好な選択結合性物質が固定化された基材を得ることができることがわかる。また、簡便な方法にて、DNAに代表される選択結合性物質を再現性よく固定化することが可能である。
PMMA表面に選択結合性物質を固定化する際の反応スキーム 本発明の担体の模式図 本発明の担体の断面模式図 マイクロアレイ突き当て用治具の例 担体凹凸部の断面図 支持体層と選択結合性物質固定化層を有する担体の概念図
符号の説明
1 PMMA担体
2 選択結合性物質(DNA)
3 支持体層(ガラス)
4 選択結合性物質固定化層(PMMA)
11 平坦部
12 凹凸部
13 マイクロアレイ
14 対物レンズ
15 励起光
16 マイクロアレイを治具に突き当てるためのバネ
21 凸部上面
22 導電性膜
23 絶縁膜

Claims (4)

  1. 担体表面が下記一般式(1)で表される構造単位を含有しているポリマーを有している担体に選択結合性物質を固定化する方法であって、担体表面を酸素プラズマで処理した後にアルカリもしくは酸で担体表面を処理し、次いで選択結合性物質を固定化することを特徴とする選択結合性物質の固定化方法。
    Figure 0004259343
    (一般式(1)のR1、R、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜18のアリール基もしくは水素原子を表す。)
  2. 担体には凹凸部があり、該凸部上面に選択結合性物質を固定化することを特徴とする、請求項1に記載の選択結合性物質の固定化方法。
  3. 担体表面のポリマーがポリメチルメタクリレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の選択結合性物質の固定化方法。
  4. 選択結合性物質が核酸であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の選択結合性物質の固定化方法。
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