JP4877190B2 - プリント配線板用銅箔およびその製造方法 - Google Patents
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R−Si−(OX)3
で表される。“R”は、エポキシ基やアミノ基からなる有機官能基であり、有機質との親和性が高い。“OX”は、メトキシ基やエトキシ基などの官能基で、加水分解によってシラノール基(Si−OH)を形成し、金属膜の表面等に存在する水酸基(OH)と縮合反応する。シランカップリング剤の添加により、金属と有機樹脂の接着強度を向上させることができることが知られている。
前記防錆処理層と前記シランカップリング処理層との間の吸着率が10%以上40%以下であることを特徴とするプリント配線板用銅箔を提供する。
前記防錆処理層と前記シランカップリング処理層との界面領域における前記シランカップリング処理層中のSi原子濃度が1μm3あたり5×108個以上2×109個以下であることを特徴とするプリント配線板用銅箔を提供する。
前記銅箔と前記防錆処理層との間に拡散バリア層が介在することを特徴とするプリント配線板用銅箔、さらに前記拡散バリア層と前記防錆処理層との間に耐熱層が介在することを特徴とするプリント配線板用銅箔、さらに前記銅箔と前記拡散バリア層との間に銅層が介在することを特徴とするプリント配線板用銅箔を提供する。
前記シランカップリング処理層を積層する際に、シランカップリング剤の濃度が10原子%以上40原子%以下である水溶液を用いることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法を提供する。なお、本発明における「原子%」とは、水溶液中に含まれる全原子数のうち、シランカップリング剤が占める原子数の割合をいうものと定義する。
前記プリント配線板用銅箔の前記防錆処理層と前記シランカップリング処理層との界面領域における前記シランカップリング処理層中のSi原子濃度を1μm3あたり5×108個以上2×109個以下とすることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法を提供する。
前記プリント配線板用銅箔の前記銅箔と前記防錆処理層との間に拡散バリア層を介在させることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法、さらに前記プリント配線板用銅箔の前記拡散バリア層と前記防錆処理層との間に耐熱層を介在させることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法、さらに前記プリント配線板用銅箔の前記銅箔と前記拡散バリア層との間に銅層を介在させることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法を提供する。
図1は、本発明の実施の形態に係るプリント配線板用銅箔の構造の1例を示す断面模式図である。
シランカップリング処理層6とクロメート処理層5の界面領域における吸着率の評価は、例えば、透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(TEM-EDX: Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray spectroscopy, 株式会社日立製作所製、型式:HD-2000)を用い、加速電圧200 kV、倍率500000倍の分析条件(空間分解能:約1nm、検出精度:約±0.1%)により行うことができる。
図4は、本発明のプリント配線板用銅箔における製造工程の概略を示すフローチャートである。以下、図4に従って本発明のプリント配線板用銅箔の製造方法を説明する。
本実施の形態においては、ベース銅箔1に対して、基材との接触面積を増大し接着力を高める目的で粗化処理(工程1)を行うことが好ましいが、行わなくてもよい。粗化処理を行う場合、粗化処理は一般的に銅箔中の結晶粒界の選択エッチングもしくは銅または銅合金めっきによるヤケめっき処理として為される。ヤケめっきによる粗化処理の方法には、例えば特開2005−8972号公報(銅箔の表面粗化方法及び表面粗化装置)に記載の方法が挙げられる。また、例えば特開2007−119902号公報(ニッケルめっき液とその製造方法、ニッケルめっき方法およびプリント配線板用銅箔)に記載の方法を利用することもできる。
銅(例えば、CuSO4・5H2O):0.1〜0.4 mol/L
硫酸(H2SO4):1.3 mol/L
鉄(例えば、FeSO4・7H2O):0.003〜0.1 mol/L
モリブデン(例えば、Na2MoO4・2H2O):0.0004〜0.002 mol/L
タングステン(例えば、Na2WO4・2H2O):1×10-5〜3×10-5 mol/L
ゼラチン:10〜30 ppm
液温:20〜50℃
電流密度:15〜50 A/dm2
銅(例えば、CuSO4・5H2O):0.5〜0.8 mol/L
硫酸(H2SO4):0.7〜1.5 mol/L
ゼラチン:30〜150 ppm
液温:20〜50℃
電流密度:1〜5A/dm2
(電解脱脂)
水酸化ナトリウム(NaOH):1mol/L
炭酸ナトリウム(Na2CO3):0.2 mol/L
液温:40℃
電流密度:5A/dm2
(酸洗処理)
硫酸(H2SO4):0.5 mol/L
液温:25℃
次に、コバルト−ニッケル合金めっき(工程2)を施す。形成されるめっき皮膜量は、コバルトとニッケルの付着金属量が合計として3μg/cm2以上20μg/cm2以下であることが望ましい。また、めっき皮膜中のコバルト濃度は、55質量%以上80質量%以下であることが望ましい。該コバルト−ニッケル合金めっきを施すことで銅原子の拡散バリア性や耐酸化変色性を向上させ、結果的にポリイミド系樹脂との接着性を高めることができる。コバルト−ニッケル合金皮膜のめっき方法は、例えば特開2007−119902号公報(ニッケルめっき液とその製造方法、ニッケルめっき方法およびプリント配線板用銅箔)に記載の方法を利用することができる。
コバルト(例えば、CoSO4・7H2O):0.03〜0.3 mol/L
ニッケル(例えば、NiSO4・6H2O):0.4〜0.8 mol/L
クエン酸(例えば、C6H8O7・H2O):0.02〜0.08 mol/L
pH:2〜4
液温:20〜50℃
電流密度:1〜5A/dm2
基材との接合時の熱処理やシランカップリング処理後の乾燥熱処理に対する耐熱性を高める目的で、前記工程2の後に白金めっき(工程2’、図示省略)を行うことは好ましいが、行わなくてもよい。耐熱層のめっきとして白金合金めっき、ルテニウムめっき、ルテニウム合金めっき等でもよい。
次に、亜鉛めっき(工程3)を施す。この亜鉛(Zn)めっき層は、次工程のクロメート皮膜の形成を促進させるとともに、銅箔の防錆層としても機能する。また、本亜鉛めっきは亜鉛合金めっきを含み、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)の金属から一つまたは複数を組み合わせて添加することができる。形成される亜鉛めっき皮膜の付着金属量は、0.5μg/cm2以上3μg/cm2以下であることが望ましい。また、亜鉛めっきの方法は、例えば特開2006-319287号公報(プリント配線板用銅箔とその製造方法およびその製造に用いる3価クロム化成処理液)に記載の方法を利用することができる。
亜鉛(例えば、ZnSO4・7H2O):0.007〜0.1 mol/L
錫(例えば、SnSO4):0.005〜0.05 mol/L
ナトリウム(例えば、Na2SO4・10H2O):0.2〜0.3 mol/L
pH:2〜5
液温:15〜40℃
電流密度:0.3〜3A/dm2
次に、3価クロメート処理(工程4)を行う。上記銅箔に3価クロメート処理を施すことにより、亜鉛めっき層の防錆・耐食性を補強することができるとともに、耐変色性を付与することもできる。形成される3価クロメート皮膜は、クロムの付着金属量が0.5μg/cm2以上2.5μg/cm2以下であることが望ましい。3価クロメート化成処理液としては、6価クロムイオンとフッ化物イオンを実質的に含まず、3価クロムイオンが0.002 mol/L以上0.009 mol/L以下含まれ、pHが3.0〜4.5で液温が15〜40℃に調整されている水溶液を使用することが望ましい。該水溶液(3価クロメート化成処理液)に上記銅箔を1〜20秒程度侵漬させることにより、3価クロメート皮膜を形成する。また、3価クロメート化成処理の方法は、例えば特開2006-319287号公報(プリント配線板用銅箔とその製造方法およびその製造に用いる3価クロム化成処理液)に記載の方法を利用することができる。
次に、銅箔とプリント配線板用基材の接着力を向上させるために、シランカップリング処理(工程5)を行う。次に説明するようなシランカップリング処理を施すことにより、銅箔と基材との接合強度を従来よりも更に向上させることができる。本実施の形態のシランカップリング処理は、シランカップリング剤の濃度が10原子%以上40原子%以下である水溶液を用い、それを上記銅箔の表面に吸着させることにより行う。シランカップリング剤を銅箔に吸着させる方法は特に限定されず、浸漬、噴霧、シャワーリングなどによって行えばよい。より好ましいシランカップリング剤の濃度は、15原子%以上37原子%以下であり、更に好ましいシランカップリング剤の濃度は、20原子%以上35原子%以下である。シランカップリング剤の濃度が10原子%未満であると、従来と同程度の接合強度しか得られない。一方、シランカップリング剤の濃度が40原子%より高いと、接合強度が逆に低下する(詳細は後述する)。
シランカップリング処理を施した後、プリント配線板用基材の接合(工程6)を行う。銅箔に基材を接合させる方法としては、ラミネート法(樹脂フィルムを張り合わせる手法)やキャスティング法(樹脂の前駆体を主成分とするワニスを塗布・硬化する手法)などの技術を用いることができる。ラミネート法で使用されるポリイミドフィルムは市販のものでよい。例えば、ユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)や、カプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)などを用いることができる。なお、工程6の中では、しばしば接合のための熱処理(例えば、180〜300℃で1〜60分間)が施される。
上記の本発明の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)本発明のプリント配線板用銅箔は、防錆処理層とシランカップリング処理層との間の吸着率を所定の範囲となるように制御することにより、銅箔とプリント配線板用基材との接合において従来よりも高い接合強度を得ることができる。
(2)本発明のプリント配線板用銅箔は、防錆処理層とシランカップリング処理層との界面領域におけるシランカップリング処理層中のSi原子濃度を所定の範囲となるように制御することにより、銅箔とプリント配線板用基材との接合において従来よりも高い接合強度を得ることができる。
(3)本発明のプリント配線板用銅箔の製造方法は、シランカップリング処理層を積層する際に用いるシランカップリング剤水溶液の濃度を所定の範囲となるように制御することにより、銅箔とプリント配線板用基材との接合において従来よりも高い接合強度を有するプリント配線板用銅箔を製造することができる。
(4)本発明のプリント配線板用銅箔は、銅箔とプリント配線板用基材との接合において従来よりも高い接合強度を有することから、フレキシブルプリント配線板等における回路配線の更なる微細化に対応することが可能となる。
図1に示したような構造のプリント配線板用銅箔の製造において、シランカップリング処理層を積層する際に用いるシランカップリング剤水溶液の濃度のみを変化させた試料を用意した。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品番号:Z-6040)を用い、プリント配線板用基材としては、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、製品番号:ユーピレックス-25S)を用いた。シランカップリング剤水溶液の濃度は、0原子%(比較例1)、10原子%(実施例1)、30原子%(実施例2)、40原子%(実施例3)、50原子%(比較例2)、100原子%(比較例3)とした。なお、0原子%(比較例1)とは、「シランカップリング処理なし」を意味する。
つぎに、銅箔とプリント配線板用基材との接合強度が高くなるメカニズムについて考察する。シランカップリング処理層の挙動に関し、分子動力学シミュレーションによる解析を行った。なお、分子動力学とは、原子間ポテンシャルから計算される各原子に働く力を用いて、原子ごとにニュートンの運動方程式を解き、各時刻における各原子の位置を計算する方法である。分子動力学に関する解説は、例えば、下記文献に記載されている。
4…亜鉛めっき層、5…クロメート処理層、6…シランカップリング処理層、
7…プリント配線板用基材、8…プリント配線板用銅箔。
Claims (10)
- 銅箔上に、防錆処理層およびシランカップリング処理層が順次積層されてなるプリント配線板用銅箔であって、
前記防錆処理層は3価クロメート処理した亜鉛めっき層であり、
前記シランカップリング処理層は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで処理した層であり、
前記防錆処理層と前記シランカップリング処理層との間の吸着率が10%以上40%以下であることを特徴とするプリント配線板用銅箔。 - 請求項1に記載のプリント配線板用銅箔において、
前記防錆処理層と前記シランカップリング処理層との界面領域における前記シランカップリング処理層中のSi原子濃度が1μm3あたり5×108個以上2×109個以下であることを特徴とするプリント配線板用銅箔。 - 請求項1または請求項2に記載のプリント配線板用銅箔において、
前記銅箔と前記防錆処理層との間に拡散バリア層が介在することを特徴とするプリント配線板用銅箔。 - 請求項3に記載のプリント配線板用銅箔において、
前記拡散バリア層と前記防錆処理層との間に耐熱層が介在することを特徴とするプリント配線板用銅箔。 - 請求項4に記載のプリント配線板用銅箔において、
前記銅箔と前記拡散バリア層との間に銅層が介在することを特徴とするプリント配線板用銅箔。 - 銅箔上に、防錆処理層およびシランカップリング処理層が順次積層されてなるプリント配線板用銅箔の製造方法であって、
前記防錆処理層は3価クロメート処理した亜鉛めっき層であり、
前記シランカップリング処理層はシランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いて処理した層であり、
前記シランカップリング処理層を積層する際に、前記シランカップリング剤の濃度が10原子%以上40原子%以下である水溶液を用いることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法。 - 請求項6に記載のプリント配線板用銅箔の製造方法において、
前記プリント配線板用銅箔の前記防錆処理層と前記シランカップリング処理層との界面領域における前記シランカップリング処理層中のSi原子濃度を1μm3あたり5×108個以上2×109個以下とすることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法。 - 請求項6または請求項7に記載のプリント配線板用銅箔の製造方法において、
前記プリント配線板用銅箔の前記銅箔と前記防錆処理層との間に拡散バリア層を介在させることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法。 - 請求項8に記載のプリント配線板用銅箔の製造方法において、
前記プリント配線板用銅箔の前記拡散バリア層と前記防錆処理層との間に耐熱層を介在させることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法。 - 請求項9に記載のプリント配線板用銅箔の製造方法において、
前記プリント配線板用銅箔の前記銅箔と前記拡散バリア層との間に銅層を介在させることを特徴とするプリント配線板用銅箔の製造方法。
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