JP4876514B2 - 賦型シート - Google Patents
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従来、表面に凹凸形状を有する熱硬化性樹脂化粧板には、エンボス金型や樹脂凹凸シートにより凹凸形状を形成したものと、賦型シートにより凹凸形状を形成したものがある。しかし、凹凸形状を形成したエンボス金型を使用した場合は、金型をブラスト、エッチング等の表面処理する必要があるため凹凸形状および模様の緻密さに限界が生じてしまう。さらに熱硬化性樹脂化粧板製造時に、高価な型板及び予備の型板が必要となり、化粧板作製の手間と費用の負担が増えるため、製造コストも大幅に増加し製品が高価なものとなる。また、樹脂凹凸シートの場合は、熱硬化性樹脂化粧板が樹脂の硬化後、剥離しにくくなるために型板との間に、アルミニウム箔、ポリプロピレンフィルム等を挟む必要があり、微細な凹凸模様をシャープに形成することは非常に難しい。
例えば、基材シートの表面に電離放射線硬化性樹脂で凹凸形状を設けた賦型シートであって、賦型シートを剥離するときに凹凸形状が割れたりしないような架橋密度を有することにより所望される模様形状を忠実に再現し、かつ繰返し使用できる賦型シートが提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。しかし、賦型シートを作製する際にロール凹版から剥離する工程を介するため、凹部が細い場合には凹凸形状の表現に限界がある。
また、この方法では凹部が細い場合には、凹凸がきれいに出ないという問題がある一方、ある程度の太さの凹部がある場合には、基材表面に凹凸模様は得られるものの、隆起部の高さ以上の凸部が生じ、例えば木目模様の場合にはリアル感がなく、外観及び手触り感がよくないという問題もある。
(1)ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬した後の重量減少が1.0質量%以下であることを特徴とする賦型シート、
(2)前記基材が表面処理されている上記(1)に記載の賦型シート、
(3)前記表面処理が洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選ばれる少なくとも1種である上記(2)に記載の賦型シート、
(4)前記インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の賦型シート、
(5)インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂を含むものであり、かつ電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート単量体を含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の賦型シート、
(6)インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂と不飽和ポリエステル樹脂とを含む上記(5)に記載の賦型シート、
(7)インキ層を構成するインキの厚みが均一でないことを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれかに記載の賦型シート、
(8)前記インキ層が相対的に膜厚の厚い厚膜領域と、相対的に膜厚の薄い薄膜領域とからなるとともに、該厚膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に高く、該薄膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に低い上記(7)に記載の賦型シート、
(9)前記凸形状の高さが1〜3μmである上記(4)〜(8)のいずれかに記載の賦型シート、
(10)前記表面賦型層中に反応性シリコーンを含む上記(1)〜(9)のいずれかに記載の賦型シート、
(11)前記表面賦型層中に微粒子を含み、かつ該微粒子の平均粒径が、前記インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さのプラス側近傍値であることを特徴とする上記(4)〜(10)のいずれかに記載の賦型シート、
(12)微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]が30%以下である上記(11)に記載の賦型シート、
(13)微粒子の平均粒径をdA、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをtM、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをtGとした場合、式(I)
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たす上記(11)又は(12)に記載の賦型シート、
(14)表面賦型層中の微粒子の含有量が2〜20質量%である上記(11)〜(13)のいずれかに記載の賦型シート、
(15)前記表面賦型層が焼成カオリン粒子を含有する上記(1)〜(14)のいずれかに記載の賦型シート、
(16)インキ層を構成するインキが体質顔料を含むことを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載の賦型シート、
(17)電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(16)のいずれかに記載の賦型シート、
(18)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の賦型シートを基板に賦型してなる化粧板、
(19)上記(1)〜(17)のいずれかに記載の賦型シートを、加熱圧板間に圧締して成型される基板と圧板の間に挿入して、成型したことを特徴とする化粧板、
(20)基板がメラミン樹脂化粧板である上記(18)又は(19)に記載の化粧板、及び
(21)基板がジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板である上記(18)又は(19)に記載の化粧板、
を提供するものである。
表面賦型層5の最表面における、相互作用領域4の上部は、インキ層3の形成に伴って隆起し、凸形状7を有している。表面賦型層5の表面がこのように凸形状を有することによって、全体として凹凸形状を有する賦型シートを形成する。なお、該凸形状の高さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、通常1〜3μmの範囲である。
一方、インキ層3が全面にベタ状に塗布される場合には、凸形状7は発現しないが、表面賦型層5の最表面に凸形状7に比較して、さらに微細な凹凸があるため、これを賦型シートとして使用した場合には、賦型される化粧板の表面にマットな意匠を賦型することができる。
本発明で用いられる基材2は、ポリエステル系フィルムにより構成される。ポリエステル系フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と表現する。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどの樹脂をフィルム化したものを挙げることができる。これらのうち、特にポリエチレンテレフタレートは安価であるため好適である。また、これらの樹脂は単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。さらには、これらの樹脂を混合したものであってもよい。
基材2の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲である。
以上の点から、基材2は上記キシレンへの浸漬による重量減少が0.65質量%以下であることが好ましい。該重量減少の下限値については特に制限はなく、賦型シートの表面の汚染に関しては、該重量減少が低いほど好ましい。しかしながら、過度に該重量減少を抑制することは、以下に詳述するような該重量減少を抑制する手法において、過度の処理を行うことになり、基材の他の物性を低下させることがある。このような観点から、該重量減少は、0.30〜0.65質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、ここでいう不純物は、例えばPETの場合は、エチレンテレフタレート環状三量体などのオリゴマー成分と考えられる。
洗浄処理は、通常、ポリエステルフィルムを、溶媒を張った洗浄槽を通すことで行われる。ここで用いられる溶媒としては、水、アルコールなどが好適に挙げられ、特にエタノールが好ましい。また、洗浄処理中に超音波振動を連続的に付与することが好ましい。超音波振動により、ポリエステルフィルム表面上のオリゴマーを、より完全に洗い流すことができる。洗浄処理後は、再付着したオリゴマーをシャワー状の洗浄液(溶媒)でさらに洗浄し、乾燥することが好ましい。
コロナ放電処理は基材2とその上の層との層間密着性を向上させる効果もある。従って、コロナ放電処理の条件は、基材中の不純物の揮散の抑制とともに、層間密着強度の制御を考慮して決定する必要がある。具体的には放電時間をコントロールすることで、表面張力及び層間密着強度を制御することが好ましい。
コロナ放電処理及びプラズマ処理は、ポリエステル基材の表面のオリゴマーのみを分解・除去し、有害物は残留せず、また温度上昇も極めて低いという利点がある。
本発明における凹凸形状発生の機構については、十分解明されるには至っていないが、各種実験と観察、測定の結果から、インキ層3の表面に表面賦型層5を形成するための電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を塗工した際に、各材料の組合せ、塗工条件の適当な選択によって、インキ層3の樹脂成分と表面賦型層が、一部溶出、分散、混合等の相互作用を発現することによるものと推測される。この際、インキ層3のインキと電離放射線硬化性樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、インキ層3の直上部及びその近傍に存在し、該懸濁状態となった部分が相互作用領域をなして、凸形状7を発現させるものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面賦型層を架橋硬化せしめることにより、かかる状態が固定されると、図1および図2に示すように、表面賦型層中に相互作用領域4が部分的に形成され、凸形状7をなすものと推測される。
上記ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂肪族ないしは脂環式イソシアネート等のイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。またウレタン樹脂の平均分子量は10,000〜50,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は−70〜−40℃程度のものが相互作用領域発現のために好ましい。
本発明で用いる体質顔料としては特に限定されず、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらのうち吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。シリカの粒径としては、0.1〜5μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であるとインキに添加した際にインキのチキソ性が極端に高くならず、またインキの粘性が上がりすぎず印刷のコントロールがしやすい。いいかえると、凹凸形状のコントロールがしやすくなる。また、木目模様の作製において、導管模様部分を表現しようとした場合、導管模様部分のインキの塗布厚みが通常5μm以下であり、シリカの粒径が塗布厚みよりも小さければ粒子の頭だしが比較的押えられ目立たないことから、相互作用領域発現の状態が自然となることで、凹凸形状の違和感は生じにくく、自然な仕上がりとなる。
これらの体質顔料のインキ組成物における含有量は、5〜15質量%の範囲であることが好ましい。5質量%以上であるとインキ組成物に十分なチキソ性を付与することができ、15質量%以下であると凸形状の発現を付与する効果の低下が全く見られず好ましい。
これは、インキ層3の塗布量が相対的に、より多くなるにしたがって、インキ層3と表面賦型層5との間の相互作用が相対的に増加して、懸濁状態の程度がより高く、凸形状の起伏がより大きくなるためと考えられる。
図3〜5を用いて以下詳細に説明する。図3においては、インキ層3を構成するインキ3−a、3−b及び3−cの厚みを異なるようにしている。すなわち、膜厚は相対的に3−a、3−b、3−cの順に段階的に薄くなる。こうすることによって、相互作用領域4−a、4−b及び4−cを、段階的に変化させることができ、得られる凹凸形状の凸形状7−c、7−b、7−aの順に段階的に凸部はより隆起する。これは、インキ層3を構成するインキの厚みが均一ではなく、3−a、3−b、3−cの順に、該インキの厚みが減少するように塗布されているため、インキの厚みの大きい部分はより凸形状の起伏が著しくなり、3−a、3−b、3−cの順に階調的に凸形状の起伏が小さくなるように変化すると考えられる。こうしたインキの厚みを、さらに細かく変化させることによって、凹凸形状を連続的に変化させることもできる。
こうした構造を有する賦型シートにより一層多彩で繊細な質感を付与することが可能となる。インキ層3を構成するインキの厚みを変化させる方法は、通常、インキの塗工量を変化させることで容易に行うことができ、インキの塗工量を連続的に変化させることによって、上記段階的な変化を連続的に無段階で変化させることもできる。
表面賦型層5中に形成される相互作用領域4の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図3に示すように、インキ層3の表面から表面賦型層5の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また図4及び図5に示すように表面賦型層5の最表面に達するものであってもよいし、さらには表面賦型層5の最表面に凸形状を形成していてもよい。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、(メタ)アクリレート単量体を含むことによって、上述のインキとの相互作用が生じ、凹凸形状の差を好適に形成するものである。インキとの相互作用をより強いものとし、さらなる凹凸形状を得るとの観点から、(メタ)アクリレート単量体の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明においては、上述のようにインキ層3を構成するインキと表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物の相互作用が重要であり、この観点から適当なインキと電離放射線硬化性樹脂組成物が選定されるが、電離放射線硬化性樹脂組成物としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
ここで反応性シリコーンとは、側鎖、末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーンは、具体的には、変性シリコーンオイル側鎖型、変性シリコーンオイル両末端型、変性シリコーンオイル片末端型、変性シリコーンオイル側鎖両末端型等において、導入する有機基がアミノ変性、エポキシ変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、フェノール変性、メタクリル変性、異種官能基変性等であるものが挙げられる。
上記反応性シリコーンは、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化する。したがって、本発明の化粧板を熱圧成型によって成型する際に、化粧板の表面にブリードアウトしない(滲み出ない)ので、本発明の賦型シートと化粧板との密着性を著しく向上させて、微細な凹凸形状を有する繊細な意匠を化粧材に賦型することが可能となる。
上記反応性シリコーンの使用量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部あたり約0.1〜50質量部の範囲、好ましくは約0.5〜10質量部の範囲である。反応性シリコーンの使用量が0.1質量部以上の場合、化粧板と賦型シートの表面との剥離が十分となり、賦型シートの表面の凹凸形状が維持され、より長期間の使用に耐えうる。一方、反応性シリコーンの使用量が50質量部以下であれば、電離放射線硬化性樹脂組成物を基材に塗工する際にはじきが発生しないので塗膜面の面が荒れず、塗料安定性が向上する。
表面賦型層に配合された微粒子8(8−a,8−b)は、その平均粒径dAが、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さtMのプラス側近傍値、すなわちdAがtMよりも若干大きく、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の表面から、該微粒子8−aの頭出しが起こる。この頭出しが起こった部分は凸形状を形成するために、微細な凹凸感を形成することができる。これと同時に、表面賦型層5の内部では、インキ層3におけるインキと、表面賦型層5を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用によって、インキ層3の直上部及びその近傍部に凸形状を発現させる相互作用領域4が形成される。
一方、インキ層3の直上部ではない部分に位置する微粒子8−bは、頭出しをすることがなく、凸形状の発現には寄与しないが、このように表面賦型層内における微粒子の位置による凸形状の発現に対する効果は様々である。
従って、この表面賦型層5中の相互作用領域4と、該表面賦型層5の表面における微粒子の頭出しによる効果と、前記したインキ層3の形成に伴い形成される凸形状の効果により、凹凸形状は微細であり、かつさらに強調されたものになる。
なお、インキ層3の直上部に位置する表面賦型層5の最大厚さtMとは、上記インキ層3の形成に伴う凸形状が形成されない場合には、表面賦型層5の厚さであり、該凸形状が形成される場合には、その部分を含んだ厚さである。
本発明においては、当該微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]は、30%以下であることが好ましい。前記CV値が30%以下であれば、当該微粒子は、実用的な粒度分布を有し、かつ適度の使用量で前記効果を十分に発揮することができる。このCV値は、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たすことが好ましい。当該微粒子の平均粒径dAが、1.05×tM以上であれば、インキ層に当該微粒子の沈み込みが生じたとしても、該インキ層の直上部に位置する表面賦型層の表面に当該微粒子の頭出しが生じ、前記効果が十分に発揮される。また、該dAがtG以下であれば、インキ層が存在しない領域における表面賦型層において、当該微粒子の頭出しが抑制される。
当該微粒子の形状については特に制限はなく、球状、楕円体状、多面体状などの微粒子を用いることができるが、球状微粒子が好ましい。なお、本発明においては、球状以外の形状の微粒子の粒径は、外接球の直径で示される値とする。
これらの微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果の点から、シリカ粒子が好適である。
また該微粒子は、同様の効果を有する上記焼成カオリン粒子とあわせて用いてもよい。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。賦型シートの長期使用を図るために添加するものである。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面賦型層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
また、本発明の化粧板11は、本発明の賦型シートを使用して作製される化粧板であれば特に限定されないが、表面が硬く、耐熱性や耐汚染性にも優れ、かつ意匠性の面でも豊富な色柄が選択出来ることから、メラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板、ポリカーボネート樹脂化粧板、特にはメラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板が好適である。これらの化粧板を製造するには、公知の一般的になされる方法であれば、特に限定されないが、例えば以下にあげる製造方法により得られる。
メラミン樹脂化粧板は、フェノール樹脂含浸コア紙4枚程度の上にメラミン樹脂含浸シート、さらにその上にメラミン樹脂を含浸したオーバーレイ紙を積層し、2枚の鏡面金属板の間に挟み、表面に前記賦型シートを挿入して、例えば、0.98MPa 、160℃で20分間加熱圧締を行い、室温まで放冷した後、前記賦型シートを剥離することにより得られる。
また、ジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板は、ジアリルフタレート樹脂含浸紙を板状基材の上に順次積み重ねて、メラミン樹脂化粧板の製造方法と同様に、鏡面金属板の間で、前記賦型シートを使用して、140〜150℃、0.98MPa 、10分程度加熱圧締を行い、室温まで放冷した後、前記賦型シートを剥離することにより得られる。いずれも、繊細な凹凸形状を有する化粧板となる。
被着体となる基板は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基板の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基板として使用できる。
化粧板11の基板10上への貼着は、通常、本発明の化粧板11の裏面に接着剤層9を形成し、基板10を貼着するか基板10の上に接着剤を塗布し、化粧板11を貼着する等の方法による。
(評価方法)
各実施例で得られた賦型シートおよび化粧板について、以下の方法で評価した。
(1)表面形状の観察
電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製「S−2400型走査型電子顕微鏡」)を用いて、表面形状(表面凹凸、凹凸ピッチ)、賦型シートの効果確認、繰返し使用した際の成形再現性を観察した。
(2)連続成型適性
同一の賦型シートにて10回成型を行い、各成型毎の剥離強度を測定し、賦型シートを繰返し使用した際の剥離安定性を測定した。
PETフィルム(東レ(株)製「ルミラー(厚さ;50μm、重量減少;0.65質量%)」)の処理面上全面にプライマーインキ((株)昭和インク工業所製アクリル系インキ「EBF同調プライマー」)をグラビア印刷して浸透防止層6(プライマー層)を形成した。
次に、柄版によりインキ(ザ・インクテック(株)製ウレタン系導管インキ「導管MINI(A)」)を木目模様の導管部分に印刷して、インキ層3を形成した。さらにこれらインキ層の上に電子線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製「REB−GE」)に焼成カオリン粒子5重量%、反応性シリコーンメタクリレート2重量%を添加した電子線硬化性樹脂組成物を塗工量4g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量30kGy(3Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面賦型層5とし、賦型シートを得た。当該賦型シートは、インキ層3の直上部及びその近傍の上に位置する表面賦型層5の表面が1〜3μm隆起した凸形状を有し、また高級感があり繊細な木目表現を有したフィルムであった。
フェノール樹脂含浸コア紙4枚程度の上に、メラミン樹脂含浸シート、さらにその上に35g/m2程度のオーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸したものを積層し、2枚の鏡面金属板の間に挟み、表面に凹凸形状を形成した実施例1で製造された賦型シートを挿入して、0.98MPa 、160℃で20分間、加熱圧締を行った。
室温まで放冷した後、賦型シートを剥離することにより、表面が繊細な凹凸形状を有したメラミン樹脂化粧板を得た。
既に易接着処理された市販のPETフィルム(重量減少;1.5質量%)の易接着面にドラムプリンティングフィルム(以下「DPS」という。)方式によってウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製 XD−808)による凸状模様層を形成した。
ロール凹版面には木目柄の凹凸模様(深さ70μm、凸部の幅及び凹部の幅が各々35μm)をエッチング法で設けた。なお、DPS方式のラインスピードは10m/minとし、紫外線の照射にはオゾン高圧水銀灯(日本電池(株)製)160W、2灯を使用した。
こうして得られた賦型シートは、凹凸形状を有するものとなった。これにより得られた賦型シートを用いて、実施例2と同様な操作を行い、メラミン樹脂化粧板を作製した。
比較例1による化粧板は、ダイナミックな凹凸感の表現は良好なものの、繊細な凹凸形状を表現することはできなかった。また、フィルムは製造上の問題で腰のある厚いシートを使用する必要があり、製造コストは高くなった。耐久性、剥離性は、実施例2と同等であった。
2.基材
3.インキ層
3−a.インキ
3−b.インキ
3−c.インキ
4.相互作用領域
4−a.相互作用領域
4−b.相互作用領域
4−c.相互作用領域
5.表面賦型層
6.浸透防止層
7.凸形状
7−a.凸形状
7−b.凸形状
7−c.凸形状
8.微粒子または焼成カオリン粒子
8−a.微粒子または焼成カオリン粒子
8−b.微粒子または焼成カオリン粒子
9.接着剤層
10.基板
11.化粧板
12.微細凹凸面
Claims (19)
- ポリエステル系フィルムからなる基材上に、少なくとも部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、該インキ層が形成された領域及び該インキ層が形成されていない領域とを含む全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、該インキ層の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面が凸形状を有し、かつ、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬後の重量減少が0.3〜1.0質量%であることを特徴とする賦型シート。
- 前記基材が表面処理されている請求項1に記載の賦型シート。
- 前記表面処理が洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の賦型シート。
- インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂を含むものであり、かつ電離放射線硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート単量体を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の賦型シート。
- インキ層を構成するインキがバインダーとして非架橋ウレタン樹脂と不飽和ポリエステル樹脂とを含む請求項4に記載の賦型シート。
- インキ層を構成するインキの厚みが均一でないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の賦型シート。
- 前記インキ層が相対的に膜厚の厚い厚膜領域と、相対的に膜厚の薄い薄膜領域とからなるとともに、該厚膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に高く、該薄膜領域の直上部及びその近傍の上部に位置する表面賦型層の表面の凸形状は相対的に低い請求項6に記載の賦型シート。
- 前記凸形状の高さが1〜3μmである請求項1〜7のいずれかに記載の賦型シート。
- 前記表面賦型層中に反応性シリコーンを含む請求項1〜8のいずれかに記載の賦型シート。
- 前記表面賦型層中に微粒子を含み、かつ該微粒子の平均粒径が、
微粒子の平均粒径をd A 、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをt M 、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをt G とした場合、式(I)
1.05×t M ≦d A ≦t G ・・・(I)
の関係を満たす、
前記インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さのプラス側近傍値であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の賦型シート。 - 微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]が30%以下である請求項10に記載の賦型シート。
- 表面賦型層中の微粒子の含有量が2〜20質量%である請求項10又は11に記載の賦型シート。
- 前記表面賦型層が焼成カオリン粒子を含有する請求項1〜12のいずれかに記載の賦型シート。
- インキ層を構成するインキが体質顔料を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の賦型シート。
- 電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項1〜14のいずれかに記載の賦型シート。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の賦型シートを基板に賦型することを特徴とする化粧板の製造方法。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の賦型シートを、加熱圧板間に圧締して成型される基板と圧板の間に挿入して、成型することを特徴とする化粧板の製造方法。
- 基板がメラミン樹脂化粧板である請求項16又は17に記載の化粧板の製造方法。
- 基板がジアリルフタレート(DAP)樹脂化粧板である請求項16又は17に記載の化粧板の製造方法。
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