JP4876304B2 - 焦電型赤外線センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体から輻射される赤外線を、複数個の検知部で検知する焦電型赤外線センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、防犯用の侵入検知器の他、照明等の負荷の制御に用いられるセンサとして、赤外線の変化量により人体を検出する焦電型赤外線センサが知られている。図8は、そのようなセンサの一例であり、松下電工株式会社製の超小型PIR人体検知センサ、NaPiOn(登録商標)を示す分解斜視図である。このセンサは、略円盤状のベース部11aの平板側表面に、3つの嵌合孔(図示せず)を穿設した後、当該嵌合孔に、3本の接続ピン11bのうち何れか2本を、接続ピン11bの頭部11baが、ベース部11aの上部表面から突出するようにする一方、残りの接続ピン11bの上端部と、ベース部11aの上部表面とが略一致するように挿嵌させてなる底蓋11を備えている。
【0003】
底蓋11の上部表面には、低熱伝導度の樹脂で、略直方体状に一体成型されたMIDブロック(3次元成形回路基板)13が、その下端部の一辺に突設している脚部13cに、略垂直となるように穿設された嵌合溝13bと、接続ピン11bの頭部11baとが嵌合するように載置されている。MIDブロック13の上部には凹部が形成され、その凹部に形成されている両突辺に、8つの電極2a〜2hによって(電極2c、2d、2g、2hは図示せず)4つのエレメントが形成された焦電素子チップ1が載架される一方、MIDブロック13の側面の一方には、ICチップ10が取付けられ、焦電素子チップ1と電気的に接続されている(接続構造及び電極への配線パターンは省略)。
【0004】
そして、MIDブロック13を内装するように、上面に赤外線フィルタ14aを設けた、略筒状のパッケージカバー14を底蓋11に被装して、パッケージを構成し、そのパッケージをさらに、球状表面19aに複数のレンズを構成したマルチレンズ19を被装することによって、センサが構成されている。また、マルチレンズ19は26分割されており、図9に示すような104個の検知単位(26個の検知単位×4エレメント)で構成される検知エリアで、人を検出するようになっているが、夫々のエレメントで検知できる26個の検知単位は、レンズにより分割されたものであるので、独立した出力ではない。
【0005】
従って、図9に示す、検知エリア内で人体の動きがあったことは検出できても、その動きが検知エリア内のどの場所であったものであるかを特定することはできない。このため、人体の動作の場所を特定しなければならない用途等については、単一の検知エリアを持つ赤外線センサを多量に設置するか、サーモグラフィ、パイロビジコン等の装置を用いる必要があり、高価で保守管理に手間がかかるという問題があった。そこで、かかる問題点を解決するためには、特開昭61-66128号公報に記載された二次元焦電型イメージセンサを用いることが考えられる。
【0006】
このイメージセンサは、図10に示すように、平板状の焦電素子チップ1の縦横に複数の略矩形状の孔8aを穿設して、夫々の穿設孔8aの長辺間にスペースを設け、そのスペースの表裏に電極を形成したものである。そして、焦電素子チップ1の表面の、穿設孔8aの長辺側となる何れか一辺に、IC等と接続するための接続電極4a・4b・4c…と、夫々の接続電極4a〜4cから、夫々の穿設孔8aの短辺間を通る配線パターン5a・5b・5c…を形成する一方、接続電極4a〜4cを設けた辺と、垂直に交わる辺上で、かつ焦電素子チップ1の裏面に位置するよう、接続電極6a・6b・6cを形成し、夫々の接続電極6a〜6cから、前記スペースの裏に設けた電極上を通る配線パターン7a・7b・7c…が形成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のようなセンサにあっては、画像処理装置に用いられるセンサであるため、赤外線エネルギーの僅かな変化によっても、各エレメントが反応するよう、各エレメントが独立した1エレメント方式となっている。然るに、人体検出の観点においては、太陽光の入射や温度の変化による、赤外線エネルギーの変化も検知する共に、ノイズが印加され易いという特性は、誤検出を招く恐れがあり、確実に人体を検出したいという要求を満足できないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、ノイズ耐性があり、太陽光の入射や温度の変化により誤検出を起さない焦電型赤外線センサを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明にあっては、焦電型赤外線センサであって、焦電素子チップの表面に、略直角三角形状の電極の斜辺どうしが対向して略正方形状の検知領域が形成されて、前記検知領域の略正方形状の四辺周辺のそれぞれと前記電極の斜辺どうしの間とにそれぞれ熱的アイソレーションを取るためのくり抜き孔を前記焦電素子チップの表面と裏面とを貫通するように開け、前記表面の、斜辺どうしが対向する2つの電極を、極性の異なる1対の電極として構成すると共に、
前記裏面には、前記表面の電極と対向する位置に、平面透過視で前記表面の電極と重なるように略直角三角形状であるが前記表面の電極とは異なる極性の電極がそれぞれ形成され、
このように形成した略正方形状の前記表面での前記電極2つおよび前記裏面での前記電極2つとの計4つの電極でもって、ひとつの検知部をなし、
これら検知部を焦電素子チップにマトリクス状に配置するよう、複数形成し、
しかも、複数の検知部のうち、隣り合う検知部どうしのあいだでは、前記斜辺の向きが互いに略直交しており、それら隣り合う検知部どうしのあいだで隣り合う位置の略直角三角形状の前記電極どうしは、極性が互いに異なるよう形成されており、
これら複数の検知部のマトリクス状に配置された同一の行ごとに形成された前記検知部どうしを導通させる配線パターン及び、同一の列ごとに形成された前記検知部どうしを導通させる配線パターンを、夫々の配線パターン毎に出力タイミングを所定のタイミングでON/OFFさせるように開閉コントロールするスイッチを設けられた
ことを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
[第1の参考形態]
以下、本発明の参考形態に係る焦電型赤外線センサについて、図1〜図5に基づいて詳細に説明する。ここで、当該赤外線センサの説明に用いる図1は、本実施形態の焦電素子チップ1の一部を示す斜視図であり、図2(a)は、その焦電素子チップ1の表面の電極パターンを示す図、(b)は裏面の電極パターンを示す透視図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、略正方形平板状の焦電素子チップ1は、例えば、PbTiO3、PZT等のセラミックや、LiTaO3等の単結晶、PVF2等の高分子からなり、その表裏面には、略直角三角形状の複数の電極2a・2b・2c・2dが、メッキ、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング、導電性ペーストの塗布等の手法を用いて形成されている。焦電素子チップ1の表面に形成された電極2aと、裏面に形成された電極2cとは、表裏1組で1つのエレメントを構成すると共に、焦電素子チップ1の表面に形成された電極2bと、裏面に形成された電極2dとで、表裏1組の1つのエレメントを構成している。また、電極2a〜電極2dで構成される略正方形状の検知部3aa〜3cbは、一例として、8行8列のマトリクス状に形成されている。
【0021】
焦電素子チップ1の表面の一辺には、所定の間隔をおいて、IC等と接続するための複数の略矩形状の接続電極4a・4b・4c…が形成されると共に、接続電極4aからは、夫々検知部3aa、3ab、3ac…の電極2aと接続される配線パターン5aが導出されており、同様にして、接続電極4bからは、夫々検知部3ba〜3bc…の電極2aと接続される配線パターン5bが、接続電極4cからは、夫々検知部3ca・3cb…の電極2aと接続される配線パターン5cが導出されている。すなわち、マトリクス状に形成された複数の電極2aのうち、同一の行に形成された電極同志は、同一の配線パターンで導通され、その配線パターンの終端には、IC等と接続することを目的とした接続電極4a〜4cが形成されている。
【0022】
一方、接続電極4a〜4cが形成される辺と直交する辺の裏面には、複数の略矩形状の接続電極6a・6b・6c…が形成され、検知部3aa〜3cbの裏側にある全ての電極2dの近傍を通るように、複数の配線パターン7a〜7c…が導出されている。尚、接続電極4a〜4c、6a〜6c及び、配線パターン5a〜5c、7a〜7cは、上記で説明したメッキ等の手法を用いて形成されている。また、夫々の電極2a〜2dの短辺側近傍及び長辺側近傍には、夫々他の電極2a〜2dとの、熱的アイソレーションを取るための、くり抜き孔8a・8bが、サンドブラスト加工やドライエッチング法、ウェットエッチング法等を用いて穿設されている。
【0023】
電極2bの右方に穿設されたくり抜き孔8aの、電極2b側の側面には、夫々メッキ等で金属膜が形成され、その金属膜は焦電素子チップ1の裏面に形成された配線パターン7a〜7cと接続されると一方、焦電素子チップ1の表面に形成された配線パターン9aを介して電極2bと接続されている。すなわち、マトリクス状に形成された複数の電極2bのうち、同一の列に形成された電極同志は、同一の配線パターンで導通され、その配線パターンの終端には、IC等と接続することを目的とした接続電極6a〜6cが形成されている。
【0024】
また、電極2cと電極2dとは、配線パターン9bを介して接続されており、接続電極4a〜4cと、接続電極6a〜6cの極性を逆とすること、例えば、接続電極4a〜4cを正極性、接続電極6a〜6cを負極性とすることによって、電極2aが正極性を持つ一方、電極2bが負極性を持ち、各エレメントが直列に接続された、デュアル直列接続型の焦電型赤外線センサを構成することができる。
【0025】
次に、焦電素子チップ1を駆動させるICチップ10の構成とその動作について、図3及び図4に基づいて詳細に説明する。ここで、ICチップ10の説明に用いる図3は、焦電素子チップ1上に形成された接続電極4・6とICチップ10との接続を示したブロック図であり、図4は、ICチップ10からの出力を示すタイミングチャートである。尚、上述したように、1つの検知部は、略直角三角形状のデュアル素子として形成されているが、本図においては簡便のため1つの正方形として表現している。
【0026】
ICチップ10は、図3に示すように、FET等からなるI/V変換部(電流−電圧変換部)10aと、定電圧源10bとを備えると共に、I/V変換部10aと接続される8個のスイッチSw1〜Sw8と、定電圧源10bと接続される8個のスイッチSwA〜SwHを備えている。尚、通常、I/V変換部10aは、増幅回路及びコンパレータ(図示せず)と接続され、コンパレータから出力が得られるようになっている。スイッチSw1〜Sw8は、8つの接続電極4と夫々接続されると共に、スイッチSwA〜SwHは、8つの接続電極6と夫々接続されている。
【0027】
また、スイッチSw1〜Sw8、スイッチSwA〜SwHは、トランジスタ等により構成され、ICチップ10内のメモリ(図示せず)に記憶されているプログラムによって、夫々ON/OFFの制御がされるようになっており、スイッチSw1〜Sw8及びスイッチSwA〜SwHのON/OFFの組み合わせにより、上述のI/V変換部10aに取り込む検知部3を特定することができる。
【0028】
例えば、スイッチSw1及びSwAのみがONとなり、それ以外のスイッチが全てOFFであるような状態を考えると、1Aの検知部3のみがI/V変換部10a及び定電圧源10bの両方に接続されることとなり、1Aの検知部3の出力がI/V変換部10aによって、電流−電圧変換されることとなる。一方、1Aの検知部3以外の検知部3については、 I/V変換部10a又は定電圧源10bの何れか、或いは両方に通じるスイッチSwがOFF状態となるため、出力がされないようになっている。
【0029】
同様にして、スイッチSw1及びSwBのみがONの場合には、1Bの検知部3の出力が、I/V変換部10aによって電流−電圧変換され、スイッチSw1及びSwCのみがONの場合には、1Cの検知部3の出力が電流−電圧変換されることになる。このように、スイッチSw1〜Sw8及びスイッチSwA〜SwHを所定のタイミングでON/OFFさせることにより、64個の検知部3の出力を順番に電流−電圧変換することができる。
【0030】
図4に、各スイッチのON/OFFタイミングの一例を示す。スイッチSw1〜Sw8及びスイッチSwA〜SwHを、図4に示したようなタイミングでON/OFFさせることにより、検知部1A→1B→1C→1D→1E→1F→1G→1H→2A→2B→…(省略)→8F→8G→8Hの順序で出力を取り出すことができる。一例として、スイッチング幅を2msとすると、全ての検知部の出力を取り出すためには、2ms×64個=128msの時間がかかり、この動作を繰り返すことによって、128ms毎の各検知部3の出力を取り出すことができる。
【0031】
次に、焦電素子チップ1と、ICチップ10とを収めた焦電型赤外線センサの構造について、図5に基づいて詳細に説明する。図5は、本参考形態の焦電型赤外線センサの構造を示す分解斜視図であり、かかる赤外線センサは、焦電素子チップ1等を載置するための、ベース部11の表面の四隅に、4つの嵌合孔(図示せず)を穿設した後、当該嵌合孔に、回路等に半田付けするための4本の接続ピン11bを、その接続ピン11bの頭部11baが、ベース部11aの上部表面から突出するように挿嵌させてなる底蓋11を備えている。
【0032】
ベース部11aは、略正方形平板状のベース板11aaと、その上部に一体に形成され、ベース板11aaよりも小さな正方形平板状のベースブロック11abとから構成されている。ベースブロック11abの上部表面に載置されるMIDブロック13は、例えば、ダイシング加工等によって、その上面に四角錐台状のICチップ取付け孔13aが穿設される一方、下面には、コンデンサ、抵抗等の複数のチップ部品12を取付けるための取付け部(図示せず)が設けられている。
【0033】
また、MIDブロック13の四隅には、平面視略円弧状の嵌合溝13bが形成されており、4つの嵌合溝13bに、夫々4本の接続ピン11bの頭部11baが接するようにすることで、ベース部11aにMIDブロック13を固定することができる。ここで、MIDブロック13には、配線パターンが形成されており(図示せず)、その配線パターンとチップ部品12の電極とは、導電性接着剤等で接続されると共に、配線パターンとICチップ10のパッドは、ワイヤボンディング等で接続されている。
【0034】
次に、MIDブロック13に、ICチップ10を取付けた後、そのICチップ10を被覆するようにして、焦電素子チップ1を載置して、焦電素子チップ1の接続電極4・6と、ICチップ10のパッドとをワイヤボンディング等で接続する。次に、赤外線フィルタ14aを設けた、略有底箱状のパッケージカバー14の内側に、ベースブロック11abを嵌合させることにより、底蓋11に被装してパッケージを構成した後、さらに、そのパッケージの上から、単眼レンズを被装することによって、センサを構成するようになっている。
【0035】
このように、焦電素子チップ1の表裏に夫々、略直角三角形状の極性の異なる1対の電極を形成すると共に、焦電素子チップ1の裏面に形成された2つの電極を互いに接続して、デュアル直列接続型の検知部をなし、当該検知部をアレイ状(一次元)又はマトリクス状(二次元)に複数形成することにより、ノイズ耐性があり、太陽光の入射や温度の変化により誤検出を起さないと共に、検知エリア内のどの場所で動作があったか特定することができる焦電型赤外線センサを提供することができるのである。
【0036】
尚、本参考形態の焦電型赤外線センサにおいて、1対の電極として、三角形のデュアル素子の場合を示した。また、ICチップ10内に1つのI/V変換部10aを備えた例を示したが、複数のI/V変換部10aを備えてもよく、その場合は、ICチップ10内に形成されるスイッチの数が減り、例えば、ICチップ10内に、I/V変換部10aを8個有している場合などは、スイッチSw1〜Sw8は不要となり、スイッチSwA〜SwHのスイッチングのみで、64個の検知部の出力を取り出すことができる。
【0037】
[第2の参考形態]
本願の発明者らは、第1の参考形態において、ノイズ耐性があり、太陽光の入射や温度の変化により誤検出を起さないと共に、検知エリア内のどの場所で動作があったか特定することができる焦電型赤外線センサを提供することができたが、近年、赤外線を通しにくい断熱ガラスや、木目細かい温度制御が行われているビル内では、太陽光等による誤検出は然程問題とならず、かかる問題点よりも、よりノイズ耐性の良いセンサが求められている。
【0038】
そこで、本願の発明者らは、かかる要求に鑑み、当該要求を満たすセンサを提案している。以下に、その焦電型赤外線センサについて、図6に基づいて詳細に説明する。図6(a)は、本参考形態に係る焦電素子チップ1の表面の電極パターンを示す図、(b)は裏面の電極パターンを示す透視図である。尚、第1の参考形態と同様の構成部分及び動作については、説明を省略又は簡略化することとし、本参考形態の特徴となる焦電素子チップ1の表裏面の電極パターンの構成について、詳細に説明することとする。
【0039】
図6(a)に示すように、本参考形態の焦電素子チップ1の表面の一辺には、所定の間隔をおいて、複数の略矩形状の接続電極4a〜4c…が形成されると共に、接続電極4aからは、夫々検知部3ha、3ga、3fa…の電極2aと接続される配線パターン5aが導出されている。すなわち、マトリクス状に形成された複数の電極2aのうち、同一の列に形成された電極同志は、同一の配線パターンで導通され、その配線パターンの終端には、接続電極4a〜4cが形成されている。
【0040】
一方、接続電極4a〜4cが形成される辺と反対側の辺には、所定の間隔をおいて、複数の略矩形状の接続電極6a・6b・6c…が形成されると共に、接続電極6aからは、夫々検知部3aa、3ba、3ca…の電極2bと接続される配線パターン7aが導出されている。すなわち、マトリクス状に形成された複数の電極2bのうち、同一の列に形成された電極同志は、同一の配線パターンで導通され、その配線パターンの終端には、接続電極6a〜6cが形成されている。
【0041】
同様にして、図6(b)に示すように、焦電素子チップ1の裏面の一辺には、複数の略矩形状の接続電極15a〜15c…が形成されると共に、接続電極15aからは、夫々検知部3ah、3ag、3af…の電極2cと接続される配線パターン16aが導出されている。すなわち、マトリクス状に形成された複数の電極2cのうち、同一の行に形成された電極同志は、同一の配線パターンで導通され、その配線パターンの終端には、接続電極15a〜15cが形成されている。
【0042】
また、接続電極15a〜15cが形成される辺と反対側の辺には、複数の略矩形状の接続電極17a〜17cが形成されると共に、接続電極17aからは、夫々検知部3aa、3ab、3ac…の電極2dと接続される配線パターン18aが導出されている。すなわち、マトリクス状に形成された複数の電極2dのうち、同一の列に形成された電極同志は、同一の配線パターンで導通され、その配線パターンの終端には、接続電極17a〜17cが形成されている。
【0043】
そして、接続電極4a〜4cと接続電極6a〜6cの極性を逆とする一方、接続電極4a〜4cと接続電極15a〜15cの極性を逆とすると共に、接続電極6a〜6cと接続電極17a〜17cの極性を逆とし、夫々の接続電極を、8組のスイッチSw(1組4つのスイッチ×8組=32個のスイッチ)を具備したICチップ10のスイッチSwに取付けるようにする。例えば、接続電極4a〜4c及び接続電極17a〜17cを正極性、接続電極15a〜15c及び接続電極6a〜6cを負極性とすることによって、電極2a及び電極2dが正極性を持つ一方、電極2b及び電極2cが負極性を持つようする。
【0044】
次に、接続電極4a〜4c、接続電極6a〜6c、接続電極15a〜15c、接続電極17a〜17cを夫々、ICチップ10のスイッチSwに取付けることにより、各エレメントが並列に接続された、デュアル並列接続型の焦電型赤外線センサを構成することができる。尚、接続電極が夫々別となっていることにより、例えば、受光部3aaの電極2a・2cと、受光部3afの電極2b・2dとの出力を取ることもできるようになっている。
【0045】
このように、焦電素子チップ1の表裏に夫々、略直角三角形状の極性の異なる1対の電極を構成すると共に、同一の極性を持つ電極を夫々接続して、デュアル並列接続型の検知部をなし、当該検知部をアレイ状又はマトリクス状に形成することにより、デュアル直列接続型よりもノイズ耐性があり、検知エリア内のどの場所で動作があったか特定することができる焦電型赤外線センサを提供することができるのである。
【0046】
[本発明の一実施の形態]
また、本願の発明者らは、第1の参考形態において、ノイズ耐性があり、太陽光の入射や温度の変化により誤検出を起さないと共に、検知エリア内のどの場所で動作があったか特定することができる焦電型赤外線センサを提供することができたが、方向性の影響という問題点を解決するまでには至らなかった。すなわち、正極性の電極が形成する検知範囲、負極性の電極が形成する検知範囲を、人体が順番に横切る場合は、大きな出力が得られるが、夫々の検知範囲を同時に横切る場合には、出力を打ち消し合い、殆ど出力が得られないという問題点があった。
【0047】
本願の発明者らは、かかる問題点に鑑み、当該問題点を略解決するセンサを提案している。以下に、その焦電型赤外線センサについて、図7に基づいて詳細に説明する。図7は、本実施形態の焦電素子チップ1の一部を示す斜視図である。尚、第1の参考形態と同様の構成部分及び動作については、説明を省略又は簡略化することとし、本実施形態の特徴となる焦電素子チップ1の、表裏面の電極パターンの構成について、詳細に説明することとする。
【0048】
本実施形態の赤外線センサは、図1に示す第1の参考形態のセンサに対し、焦電素子チップ1上に穿設されるくり抜き孔8bの長手方向を、交互に違う向きとなるように穿設したものである。すなわち、検知部3aa、3ac、3bb、3ca(以下、第1の受光グループと呼ぶ)のくり抜き孔8bの長手方向を同一とすると共に、当該長手方向と略垂直となる方向に、検知部3ab、3ba、3bc、3cb(以下、第2の受光グループと呼ぶ)のくり抜き孔8bを穿設するようにし、それに伴って、検知部3ab、3ba、3bc、3cbの電極2a及び電極2bの配置を、夫々半時計周りに回転させた位置に形成したものである。
【0049】
このように構成することにより、第1の受光グループには、右斜め方向に方向性が生じるが、第2の受光グループにおいては、最も大きな出力が得られる方向となる一方、第2の受光グループには、左斜め方向に方向性が生じるが、第1の受光グループにおいては、最も大きな出力が得られる方向となる。すなわち、夫々の受光グループに方向性はあるものの、互いの欠点を補い合うようにしたことによって、センサ全体としては、無方向性の焦電型赤外線センサを提供することができるのである。
【0050】
尚、デュアル並列接続型については、特に説明しないが、上述と同様にして、焦電素子チップ1上に穿設されるくり抜き孔8bの長手方向を、交互に違う向きとすることにより、センサ全体として、無方向性のデュアル並列接続型のセンサを提供することができる。
【0052】
請求項1記載の発明にあっては、
焦電型赤外線センサであって、焦電素子チップの表面に、略直角三角形状の電極の斜辺どうしが対向して略正方形状の検知領域が形成されて、前記検知領域の略正方形状の四辺周辺のそれぞれと前記電極の斜辺どうしの間とにそれぞれ熱的アイソレーションを取るためのくり抜き孔を前記焦電素子チップの表面と裏面とを貫通するように開け、前記表面の、斜辺どうしが対向する2つの電極を、極性の異なる1対の電極として構成すると共に、前記裏面には、前記表面の電極と対向する位置に、平面透過視で前記表面の電極と重なるように略直角三角形状であるが前記表面の電極とは異なる極性の電極がそれぞれ形成され、
このように形成した略正方形状の前記表面での前記電極2つおよび前記裏面での前記電極2つとの計4つの電極でもって、ひとつの検知部をなし、
これら検知部を焦電素子チップにマトリクス状に配置するよう、複数形成し、
しかも、複数の検知部のうち、隣り合う検知部どうしのあいだでは、前記斜辺の向きが互いに略直交しており、それら隣り合う検知部どうしのあいだで隣り合う位置の略直角三角形状の前記電極どうしは、極性が互いに異なるよう形成されており、
これら複数の検知部のマトリクス状に配置された同一の行ごとに形成された前記検知部どうしを導通させる配線パターン及び、同一の列ごとに形成された前記検知部どうしを導通させる配線パターンを、夫々の配線パターン毎に出力タイミングを所定のタイミングでON/OFFさせるように開閉コントロールするスイッチを設けられたので、確実に人体等を検知することができると共に、検知エリア内のどの場所で動作があったか特定することができるという効果を奏する。このとき、検知部の周辺に、くり抜き孔を穿設したことにより、隣接する検知部間の熱的な絶縁が良好となり、センサの感度を高めることができるという効果を奏する。そして、隣り合う前記検知部の方向性を、互いに異なるようにしたことで、センサ全体として、無方向性のセンサを提供することができるという効果を奏する。さらに、スイッチのON/OFFによって、容易に各検知部の出力を取ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の参考形態に係るデュアル直列接続型の焦電素子チップ1の構成を示す斜視図である。
【図2】 第1の参考形態に係るデュアル直列接続型の焦電素子チップ1、電極の構成を示す図であり、(a)は表面を示す平面図、(b)は裏面を示す透視図である。
【図3】 本発明のセンサを駆動させる為のICチップ10と、焦電素子チップ1との接続関係を示すブロック図である。
【図4】 本発明のセンサを駆動させる為のICチップ10からの出力を示すタイミングチャートである。
【図5】 本発明のセンサの構造を示す分解斜視図である。
【図6】 第2の参考形態に係るデュアル並列接続型のセンサの、電極の構成を示す図であり、(a)は表面を示す平面図、(b)は裏面を示す透視図である。
【図7】 本発明の一実施形態に係るデュアル直列接続型の焦電素子チップ1の構成を示す斜視図である。
【図8】 従来のセンサの構造を示す分解斜視図である。
【図9】 レンズによって形成されたセンサの検知エリアを示す平面図である。
【図10】 従来の焦電素子チップ1の構成を示す平面図である。
Claims (1)
- 焦電素子チップの表面に、略直角三角形状の電極の斜辺どうしが対向して略正方形状の検知領域が形成されて、前記検知領域の略正方形状の四辺周辺のそれぞれと前記電極の斜辺どうしの間とにそれぞれ熱的アイソレーションを取るためのくり抜き孔を前記焦電素子チップの表面と裏面とを貫通するように開け、前記表面の、斜辺どうしが対向する2つの電極を、極性の異なる1対の電極として構成すると共に、
前記裏面には、前記表面の電極と対向する位置に、平面透過視で前記表面の電極と重なるように略直角三角形状であるが前記表面の電極とは異なる極性の電極がそれぞれ形成され、
このように形成した略正方形状の前記表面での前記電極2つおよび前記裏面での前記電極2つとの計4つの電極でもって、ひとつの検知部をなし、
これら検知部を焦電素子チップにマトリクス状に配置するよう、複数形成し、
しかも、複数の検知部のうち、隣り合う検知部どうしのあいだでは、前記斜辺の向きが互いに略直交しており、それら隣り合う検知部どうしのあいだで隣り合う位置の略直角三角形状の前記電極どうしは、極性が互いに異なるよう形成されており、
これら複数の検知部のマトリクス状に配置された同一の行ごとに形成された前記検知部どうしを導通させる配線パターン及び、同一の列ごとに形成された前記検知部どうしを導通させる配線パターンを、夫々の配線パターン毎に出力タイミングを所定のタイミングでON/OFFさせるように開閉コントロールするスイッチを設けられた
ことを特徴とする焦電型赤外線センサ。
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