JP4875239B2 - 鼻および肺送達のためのコルチコステロイドを含有する水性組成物 - Google Patents

鼻および肺送達のためのコルチコステロイドを含有する水性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
(技術分野)
発明の分野
本発明は、コルチコステロイド化合物の吸入投与のために有用な肺薬物送達組成物およびそれらの投与方法に関する。本送達組成物は、肺の不快および疾患の治療のために有用である。類似のコルチコステロイド組成物は、鼻送達のために使用されてもよい。
【0002】
発明の背景
罹患している肺組織への治療化合物の直接送達は、いくつかの利点を有する。薬物は、最初に全身的な循環に入り、そして血液によって希釈されて、血液成分への結合、または肝臓による代謝および腎臓による排泄を受けることもなく、標的組織に到達する。薬物の高い局所濃度が肺において達成できるのに対して、全身濃度は、逆の副作用を惹起するかもしれない濃度以下に維持される。その上、肺組織の根尖側−吸い込まれた空気に直接曝露される側−が、根尖表面と血漿の間のバリヤーを形成している内皮もしくは上皮を容易には横断できないであろう化合物によって治療することができる。同じような考察は、鼻通路および副鼻洞を裏打ちしている組織にも適合する。
【0003】
肺もしくは鼻の通路に化合物を直接送達するいくつかの手段が開発されている。特に水不溶性薬物についての最も普通の剤形は、患者が吸入しながら口中に噴射される粉末懸濁剤である。噴射は、加圧ガスの使用によるか、またはガス流もしくは空気流中に細粉を乗せるいずれか種々の機械的手段によって達成される。この目的のための通常の器具は、定用量吸入器(MDI)、ターボ吸入器およびドライパウダー吸入器を含む。これらの各々は、異なる噴射手段を使用する;しかしながら、共通の特徴は、治療薬物が一旦器具を離れると、それは微粉であるか、または微粉になることである。MDIでは、薬物は、非水性噴射剤中に懸濁されるか溶解されてもよく、噴射剤は、典型的には、室温で加圧下に液体であるクロロフルオロカーボンもしくはフッ素化炭化水素である。ターボ吸入器およびドライパウダー吸入器では、薬物は微粉化された粉末の形態で存在する。
【0004】
吸入によって送達される場合には、エアゾル化された薬物組成物の粒径分布は、薬物の治療効率にとって非常に重要である。吸入されるエアゾル剤の研究によって、平均気体力学直径において約5μmを超える粒子もしくは小滴は、実際上、肺への進入から排除され、そして鼻通路もしくは喉において捕捉され、代わりに飲み込まれることが指摘されている。かくして、これらの器具によって送達される薬化合物は、全体の平均気体力学直径(MMAD)が5μm以下であるような方式で製剤化されねばならない。その上、薬物が肺における肺胞嚢に深く到達する場合には、0.5〜2.5μmのオーダーの一層小さい粒径が必要とされる。しかしながら、約0.5μm以下の気体力学直径をもつ粒子は、薬物が全部肺表面に沈着される前に吐き出される傾向にある。
【0005】
吸入のためのパウダータイプ薬物送達器具の使用について、さらなる考慮すべき点は、器具からの1〜2回の吹き出し中に含有できる限られた薬物量および使用者が器具の手動操作を上手に吸入と一致させる必要性を含む。この後者の制約は、不能者、子供もしくは老人であるそれらの患者には特に重要である。
【0006】
噴霧器は、肺に治療剤を投与する別の方法を提供する。これらの器具は、溶液に適用されるエアージェットもしくは超音波パルスの手段により作動して微小ミストを作成する。溶液中に溶解もしくは懸濁される治療剤はミスト中に組み入れることができる。次いで、患者は、数分間の処置行程にわたってミストを吸入および吐出するが、その間、典型的には薬物製剤1〜3mlが噴霧される。また、前記粒径についての考察は、ミストの小滴サイズにも当てはまる。しかしながら、数分の処置の間に一定分量のミストを再呼吸し、そして肺の最深まで浸透できる微小滴フラクションの捕捉を増加することが可能である。その上、手動操作と呼吸の一致は必要ではなく、患者にとって噴霧器を容易に使用させられる。ある場合には、水溶液において溶解しない薬物を、それを懸濁液において噴霧することによって投与することが可能になるであろう。しかしながら、噴霧される薬物を含有する懸濁液の小滴サイズは、懸濁された粒子のそれよりも小さくなるはずはない。したがって、これらの装置から作成されるより微細な小滴は、いかなる薬物も含有していないであろう。
【0007】
かくして、噴霧製剤の1つの制約は、それらが、薬物の1治療用量が水溶液1〜約3mlに溶解できるように十分に水溶性である薬化合物に最適であることである。この制約に関する1つの方法は、極性有機溶媒もしくはそれらの水溶液を用いて製剤化することである。しかしながら、ほとんどの有機溶媒は、長期間安全に吸入することはできない。現時点で吸入器具において使用が認可されているほとんどの有機溶媒は、噴射剤、例えば環境上の理由のために間もなく製造から除外されるであろうクロロフルオロカーボン(CFC)、または新しいハイドロフルオロカーボンおよび低沸点炭化水素であるが、これらすべてのものは、肺に浸透する前に蒸発が予期される。そのような溶媒は、噴霧の間に速やかに蒸発し、そして薬物を、器具中に残すか、または肺まで運ばれるよりも口もしくは喉に沈着されると思われる大粒子中に残すであろう。実際、MDIは、そのような問題を迂回するために開発された。
【0008】
薬物の溶解性問題を克服するその他の方法は、エタノール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールのような補助溶媒と水とを混合することである。しかしながら、吸入される生成物においてこれらの補助溶媒の許容しうるレベルには限界がある。典型的には、補助溶媒は、噴霧される組成物の約35重量%以下にされるが、それは、これらの限界を決定する補助溶媒の全用量ならびにその濃度である。この限界は、これらの溶媒の性向によって、肺組織の局所刺激を惹起したり、肺中に液を引き出すであろう高浸透溶液を形成したり、そして/または患者を中毒症状を起こしたりする。その上、もっとも潜在能力のある疎水性治療剤は、これらの補助溶媒混合液には十分に可溶性ではない。
【0009】
かくして、水不溶性薬物を噴霧のために可溶化することができる改良されたシステムを開発し、そしてこれを達成するのに必要な補助溶媒レベルを最小化することが必要である。理想的な系、補助溶媒濃度約15%以下、そしてある場合には約5%以下をもつことが望まれる。それは、非毒性成分からなり、そして室温での長期貯蔵に対して安定であることが必要である。噴霧される場合、それは、約5μm以下のMMADをもつ小滴を生成することが望まれる。
【0010】
小滴サイズの配慮は、副鼻洞もしくは鼻投与では決定的なものではないが、安全な非刺激性成分を使用することが、やはり重要である。鼻および吸入送達の両方にとってのさらなる配慮は、ある種の製剤は、確実に口にすることができ、そして飲み込めることである。したがって、許容しうる味および臭いは、特に、曝露が長引く場合、そして小児被験者が見込まれる患者集団の重要な部分を形成している場合には、噴霧製剤にとっては特に重要なパラメーターとして考慮されねばならない。
【0011】
抗炎症性コルチコステロイド、これは、呼吸器粘膜における炎症細胞に作用する本質的に水不溶性薬物であるが、吸入送達の改良が必要な治療化合物の種類である。これらのステロイドは、喘息を含む種々の炎症疾患を治療するのに有用である。
【0012】
喘息は、下部気道の慢性閉塞疾患である。喘息の主要な臨床的および病理学的特徴は、気管支閉塞、アレルゲンもしくは冷気のような有害な刺激に対する気管支過敏、および気道の炎症による(部分的に)可逆的な空気流阻害である。抗炎症性コルチコステロイドは、この最後の症状を治療するために有用である。それらは、アレルギー性喘息を治療するために現在利用できるもっとも有効な治療剤のグループである。ステロイドは、好酸球増多症、上皮剥離および浮腫の抑制を含む多くの炎症過程を抑制する。これらの作用の細胞的基礎は、活発な研究下にある。
【0013】
他のステロイドホルモン類似体のように、コルチコステロイドは、標的細胞中の細胞質受容体タンパク質に対して高い親和力をもって結合する。受容体ステロイド複合体は細胞核に移動し、ここで、それらは核クロマチンと相互作用して、遺伝子発現を調節する。受容体結合は飽和可能であり、そして非常に少量のステロイドでも、炎症の抑制を含む最大の細胞応答を引き出すのに十分である。
【0014】
抗炎症性ステロイドは、全身的ならびに局所的に作用できる。したがって、抗炎症性ステロイドの全身投与が、喘息における気道炎症を減少するであろうが、また、それは、一般的免疫抑制および無機質代謝における不均衡のような逆効果を惹起できる。喘息治療に共通して使用されるコルチコステロイドは、全身的能力に対して局所的能力の高い割合を有する。すなわち、これらのコルチコステロイドは、炎症部位に直接送達された場合に高い活性があるが、全身循環を通過する場合は比較的活性が低い。飲み込まれ、そして腸を通して吸収されるか、または肺組織を通して循環液中に吸収される吸入用量の一部は、肝臓によって代謝され、そして短い半減期をもつ低い活性化合物に変えられる。これらの代謝物は、速やかに血液から除去され、全身的副作用の発生を低下する。
【0015】
もっとも普通に使用されるステロイドには、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルルアンドレノロン、フルチカソン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、イコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニソロン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニソロン、プレドニソン、チクソコルトール、トリアムシノロンおよびその他、ならびにそれらのそれぞれ製薬学的に許容しうる誘導体、例えばベクロメタゾンジプロプリオネート、デキサメタゾン21−イソニコチネート、フルチカゾンプロピオネート、イコメタゾンエンブテート、チクソコルトール21−ピバレート、トリアムシノロンアセトニド、およびその他がある。幸いに、若干のこれらの合成ステロイドは、それらのユニークな構造と代謝のために、全身的吸収に関して低い潜在力を有している。
【0016】
コルチコステロイドは、通常、クロロフルオロカーボン媒質中に微小薬物粉末の懸濁物として製剤化されるか、またはにクロロフルオロカーボン不含の噴射剤とともに製剤化され、そして定用量の吸入器によって送達される。この種類のキャリヤーおよび装置の選択は、コルチコステロイドが、水性媒質中で安定化するのが非常に困難であり、そしてしばしば、懸濁もしくは溶解された薬物の結晶成長、沈殿および/または凝集を起こす系を生み出すという事実によって説明された。
【0017】
コルチコステロイドは、呼吸器に投与するために種々の薬物送達システムにおいて製剤化されてきた。米国特許第5,292,499号は、局所的、肺内、鼻もしくは吸入投与に有用なエアゾルCFC噴射剤製剤を用いて製造される親水性の製薬学的活性化合物の逆ミセルコロイド状分散物に関している。
【0018】
米国特許第5,208,226号は、新規な併用療法を用いる概念を記述していて、これは、従来公知の組み合わせ物よりも大きい有効性と気管支拡張作用を有し、そして毎日2回の投与処方の確立を可能にする。有効な治療は、ドライパウダーによる定用量吸入器またはクロロフルオロカーボン含有製剤のような吸入に適する形態におけるベクロメタゾンジプロピオネートと組み合わせられた、興奮性気管支拡張剤、サルメテロール、および/または生理学的に許容しうるその塩の投与からなる。
【0019】
米国特許第5,474,759号は、実質的にクロロフルオロカーボンを含有せず、そして医学応用に特に利用性をもつエアゾル製剤を開示している。その製剤は、噴射剤(例えば1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、中級脂肪酸プロピレングリコールジエステル、中級トリグリセリド、場合によっては界面活性剤および場合によっては補助剤、例えば抗酸化剤、保存剤、バッファー、甘味剤および風味マスキング剤を含有する。これらの製剤は、吸入される薬物、例えばアルブテロール、モメストラゾン、イソプレナリン、ジナトリウムクロモグリケート、ペンタミジン、イプラトロピウムブロミド、およびそれらの塩および包接物の送達のためのキャリヤーとして使用される。
【0020】
近年、数種のコルチコステロイドリポソーム製剤が開発下にある。米国特許第5,192,528号は、種々の肺疾患を治療するための吸入によるコルチコステロイドの送達を開示している。そのキャリヤーは、薬物を含有している大きさを一定にしたリポソームの水性懸濁液からなる。このリポソームに封入された薬物剤形は、次に空気噴霧器を用いてエアゾル化されて肺に薬物を送達する。コレステロールおよび/または硫酸コレステロールは、肺環境においてリポソームからコルチコステロイドの放出を遅延させるシステム中に組み入れることができる。これらの製剤は、別の水不溶性材料の利用を含む微結晶製剤を越える利点をもち、肺放出を持続し、そして細胞内送達を容易にする。しかしながら、製造工程に関してリポソームにまつわる若干の一般的問題、合成リン脂質(例えばジラウロイルホスファチジルコリン)の使用、および肺におけるエアゾル化されたリポソームの分布パターンが、このタイプのエアゾル化製剤の広い応用には困難を引き起こすであろう。
【0021】
コルチコステロイドの肺送達に利用しうる上市された商業用のリポソーム、ミセルもしくはミクロエマルション製剤は、まだ存在しない。
【0022】
発明の概要
本発明は、治療用量のコルチコステロイドを呼吸器に投与するために適当な組成物および該組成物の投与方法を提供する。
【0023】
1つの実施態様では、コルチコステロイド組成物は、高HLB界面活性剤成分(約10超のHLB)、例えばトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(「TPGS」)のようなビタミンEのエトキシル化誘導体約0.1〜約20重量%を含有する。HLB、もしくは親水性−親油性バランスは、界面活性剤または界面活性剤混合物の極性の任意のスケールにおける測定値である。例えば、TPGSはHLB約15〜19をもっている。一般に、コルチコステロイド組成物は、約5μg/ml〜約1mg/ml量のコルチコステロイドを含有する。本組成物は、緩衝化、等張化、風味マスキングおよび保存用添加物を含有できる水相の少なくとも約70重量%を含有している水性物に基づいている。
【0024】
また、コルチコステロイド組成物は、組成物の加工を助けるため、そしてコルチコステロイドの溶解度を増加するために、1種以上の製薬学的に許容しうる補助溶媒を含有することができる。そのような補助溶媒は、一価および多価アルコール、例えばプロピレングリコール、エタノールおよびポリエチレングリコールを含む。また場合によっては、コルチコステロイド組成物は、低HLB界面活性剤(約8以下のHLB)および/または油のような成分を含有することができる。低HLB界面活性剤は、リン脂質、中級モノおよびジグリセリド、およびそれらの混合物を含む。有用な製薬学的に許容しうる油は、中級脂肪酸のトリグリセリドおよびプロピレングリコールジエステルを含む。
【0025】
発明の詳細な記述
本発明は、鼻および肺投与の方法による呼吸器、特に肺の不快および疾患の治療のための、活性薬剤としてコルチコステロイドを含有している組成物を提供する。本組成物は、それらが、溶解された状態においてコルチコステロイド活性薬剤を含有するように製剤化することができる。製剤は、使用時に希釈される濃厚形態か、またはそのまま使用できる希釈状態かいずれかで貯蔵することができる。また、本発明は、鼻もしくは吸入送達のための組成物を使用する方法を記述する。
【0026】
本発明のコルチコステロイド組成物は、好ましくは、高HLB界面活性剤成分としてビタミンEのエトキシル化誘導体を用いて製剤化される。この種類の界面活性剤からの好適な高HLB界面活性剤の例は、トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(「TPGS」)である。TPGSは、「ビタミンE TPGS」としてEastman Chemical Companyから市販されていて、そして口摂取のための水溶性ビタミンE補助成分として使用されてきた。それは、室温でワックス状固体であり、そして融点40℃付近を有する。コルチコステロイド組成物におけるTPGSの使用は、コルチコステロイドを可溶化し、そして水相における希釈により安定なミセル溶液を形成するTPGSの能力のために、そしてまたいずれか鼻にもしくは吸入によって投与されるコルチコステロイド組成物において使用される場合のTPGSのはっきりしない味のために、特に有利であることが見い出された。その結果、製造の容易さのために特に良く適する本発明の実施態様は、コルチコステロイド化合物が、最初にTPGSに溶解されて、最終コルチコステロイド組成物を形成するために水相により希釈される「濃厚液(concentrate)」を形成する態様である。TPGSの濃度が、37℃において水中約0.02wt.%であるTPGSの臨界ミセル濃度(CMC)をはるかに超えているので、この組成物はミセル溶液である。この実施態様は、製造のために容易であり、低レベルの添加物をもち、そして吸入送達にとってはっきりしない味を有する。
【0027】
吸入投与のために設計された組成物は、最終の希釈されたコルチコステロイド組成物における高HLB界面活性剤レベル約0.1〜約20、好ましくは約0.25〜約15、より好ましくは約0.5〜約5重量%をもつ。鼻投与のために設計された組成物は、最終の希釈されたコルチコステロイド組成物における高HLB界面活性剤レベル約1〜約20、好ましくは約2.5〜約15、より好ましくは約5〜約10重量%をもつ。
【0028】
本発明において有用であるコルチコステロイドは、一般に、グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド、ならびに抗炎症活性をもつ天然に存在するコルチコステロイドの合成類似体および誘導体を含む、副腎皮質によって産生されるすべてのステロイドを包含する。本発明の組成物において使用できるコルチコステロイドの例は、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルルアンドレノロン、フルチカソン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、イコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニソロン、パラメタゾン、プレドニソロン、プレドニソン、チクソコルトール、トリアムシノロン、およびそれらのそれぞれ製薬学的に許容しうる誘導体、例えばベクロメタゾンジプロプリオネート、デキサメタゾン21−イソニコチネート、フルチカゾンプロピオネート、イコメタゾンエンブテート、チクソコルトール21−ピバレートおよびトリアムシノロンアセトニドを包含する。特に好適な化合物は、ベクロメタゾンジプロプリオネート、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾンプロピオネート、モメタゾンおよびトリアムシノロンアセトニドのような化合物である。
【0029】
コルチコステロイド化合物は、吸入用に設計された最終の希釈されたコルチコステロイド組成物中には、約5μg/ml〜約5mg/ml、好ましくは約10μg/ml〜約1mg/ml、より好ましくは約20μg/ml〜約500μg/ml量において存在する。例えば、好適な薬物濃度は、投与されるべき容量に応じて、ベクロメタゾンジプロプリオネートでは約20〜100μg/ml、トリアムシノロンアセトニドでは約30〜150μg/ml、およびブデソニドでは約50〜200μg/mlである。本発明の好適な方法にしたがうことによって、コルチコステロイドの比較的高い溶解度が、水性に基づく組成物において達成することができる。コルチコステロイドの溶解度は、約50超、好ましくは約75超、より好ましくは約100超であり、ある場合には約150もしくは約200超、μg/mlであってもよい。
【0030】
同様に、コルチコステロイド化合物は、鼻投与用に設計された最終の希釈されたコルチコステロイド組成物中には、約50μg/ml〜約10mg/ml、好ましくは約100μg/ml〜約2mg/ml、より好ましくは約300μg/ml〜約1mg/ml量において存在する。例えば、好適な薬物濃度は、投与されるべき容量に応じて、ベクロメタゾンジプロプリオネートでは約200〜900μg/ml、トリアムシノロンアセトニドでは約250μg/ml〜1mg/ml、およびブデソニドでは約400μg/ml〜1.6mg/mlである。
【0031】
また、コルチコステロイド組成物は、組成物の貯蔵安定性を改善するが、その新しく製造された状態において組成物の総体的効力には有意には影響しない種々の添加物を含有できる。そのような添加物は、緩衝剤、浸透圧(張性調整)剤、低毒性消泡剤および保存剤を含む。
【0032】
緩衝剤は、本組成物において、pHを範囲約4〜約8、好ましくは約4.5〜約7、より好ましくは約5〜約6.8に調整するために使用される。あるコルチコステロイドでは、pHは、さらに低下されて水性組成物の安定性を増強できることが見い出された。例えば、ある種の製剤では、好適なpH範囲は、約3〜約8、好ましくは約3.2〜約6.5、より好ましくは約3.5〜約6である。ブデソニドは、これらのより低いpH範囲において優れた安定性を示したコルチコステロイドの1例である。バッファーの種類は、前記pH範囲を提供するいかなる製薬学的に認可されたバッファー、例えばクエン酸塩、燐酸塩、マレイン酸塩などであってもよい。好適なバッファー溶液は、濃度約0.0005〜約0.05M、好ましくは約0.001〜約0.025M、より好ましくは約0.005〜約0.02Mをもつクエン酸バッファーである。
【0033】
浸透圧剤は、コルチコステロイド組成物の送達において患者に対して総体的な安楽を増強するために、組成物において使用することができる。組成物の浸透性を約280〜300mOsm/kgに調整することが好適である。そのような薬剤は、肺および鼻送達のために製薬学的に認可されたすべての低分子量水溶性の種類、例えば塩化ナトリウムおよびグルコースを含む。
【0034】
保存剤は、組成物において微生物増殖を阻止するために使用できる。保存剤の量は、一般に、少なくとも6カ月の貯蔵期間、組成物における微生物増殖を防ぐことが必要である量である。製薬学的に許容しうる保存剤の例は、パラベン、塩化ベンズアルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコールおよびソルビン酸カリウムを含む。
【0035】
高HLB界面活性剤を含有するコルチコステロイド組成物は、次のように製造することができる。TPGSが、具体的に説明する目的のために代表的な高HLB界面活性剤として使用されるであろう。まず、TPGSは、温度少なくとも約40℃、好ましくは少なくとも約45℃、一般に約45〜60℃に加熱されてもよい。次いで、コルチコステロイド化合物の適当量が同じ温度において融解されたTPGS中に溶解され、かくして濃厚コルチコステロイド組成物を形成する。最終の希釈コルチコステロイド組成物を達成するために、融解された濃厚コルチコステロイド組成物が、連続撹拌下で水相に徐々に添加される。水相は、好ましくは、pHおよび張性を調整するのに必要な添加物、および製剤が多用途を意図するならば保存剤を含有する水である。水相は、分散を助けるために融解されたコルチコステロイド濃厚液の添加前に加熱されることが好適である。一般に、水相は、約55〜85℃、より好ましくは約60〜70℃に加熱されねばならない。
【0036】
希釈コルチコステロイド組成物は、融解されたTPGS中に最初に薬物を溶解し、次いで、この濃厚液を水相に分散することによって製剤化されるのが好適である。薬物がTPGSと水相の前希釈された混合液に添加される場合、溶解状態における薬物の最終所望濃度を達成することは不可能であるかもしれない。確実に、薬物が可溶化され、そして希釈組成物中で安定であるためには、濃厚組成物中の薬物レベルが、希釈前に約1〜約30mg/ml、好ましくは約2〜約20mg/ml、より好ましくは約2〜約10mg/mlであるのが好適である。濃厚コルチコステロイド組成物中の水レベルは、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であるべきであり、そして一般に、濃厚コルチコステロイド組成物にはいかなる水も添加しないことが得策である。
【0037】
水および場合によっては緩衝化、等張化、および/または保存添加物を含んでなる水相は、TPGSを少なくとも約70、好ましくは少なくとも約80、より好ましくは少なくとも90、なおより好ましくは少なくとも約95重量%量で含有する希釈コルチコステロイド組成物において存在する。種々の他の添加物、例えば緩衝化剤、張性調整剤および保存剤は、好ましくは、水相の一部として組成物中に混合され、そして用語「水相」の使用は、使用される場合は、そのような成分を含むことを意図している。
【0038】
これらのTPGSコルチコステロイド組成物における補助溶媒群のいずれか1種の含有は、組成物の加工および薬物の可溶化を助けることが見い出された。好適な補助溶媒は、一価および多価アルコール、例えばプロピレングリコール、エタノール、グリセロール、グリコフロール(SigmaからTetraglycolとして市販)、エトキシジグリコール(GattefosseからTranscutolとして市販)、および平均分子量約200〜4000、好ましくは200〜1000をもつポリエチレングリコール(PEG)、より好ましくはPEG400、およびそれらの組み合わせ物を含む。補助溶媒は、最終の希釈コルチコステロイド組成物において、個々には、濃度約0.1〜約20、好ましくは約0.25〜約15、より好ましくは約0.5〜約5、なおより好ましくは約0.5〜約2.5重量%で存在することができる。最終の希釈コルチコステロイド組成物中に合わされた補助溶媒の総レベルは、約0.1〜約20、好ましくは約0.25〜約15、より好ましくは約0.5〜約10、なおより好ましくは約0.5〜約5重量%である。
【0039】
コルチコステロイド組成物を製造する場合は、補助溶媒は、融解TPGSに、TPGS/薬物濃厚液に、またはTPGS/薬物濃厚液が分散される水相に添加されても良い。いずれにしても、安定な希釈コルチコステロイド組成物は、溶解状態における薬物を用いて製造することができる。補助溶媒が、薬物の添加前に融解TPGSと混合される場合、この濃厚液の温度は、次に、溶解工程の間に低下することができる。一般に、TPGS/補助溶媒混合液の温度は、薬物を溶解するためには約50℃以下、好ましくは約45℃以下に維持できる。ある場合、例えば、エタノールのような揮発性補助溶媒が使用される場合は、溶解を達成するために、加熱は不必要である。その上、濃厚組成物が補助溶媒を含有する場合は、希釈コルチコステロイド組成物を形成するために、希釈媒質として使用される水相を加熱する必要はない。
【0040】
あるいはまた、薬物は、最初に20〜50℃において補助溶媒もしくは補助溶媒の混合液中に溶解され、次いで、その溶液が融解TPGSと混合されて、濃厚コルチコステロイド組成物を形成することができる。
【0041】
ビタミンEのエトキシル化誘導体の代わりか、またはそれと混合して使用できる他の好適な高HLB界面活性剤は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルである。脂肪酸部分は、好ましくは、炭素原子約8〜約18個をもつ。好適なポリエチレングリコール脂肪酸高HLB界面活性剤製品は、BASF Fine Chemicals製の「Solutol HS−15」である。Solutol HS−15は、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート(70%)とポリエチレングリコール(30%)の混合物である。それは室温において白色ペーストであり、約30℃で液体になり、そしてHLB約15をもつ。この界面活性剤の水溶液は、TPGSのそれのように、はっきりしない味を有する。同様に好適な製造工程および薬物溶解に関する操作、希釈方法、および補助溶媒の添加は、TPGSに関して先に記述されたようにSolutol HS−15にも適合する。
【0042】
コルチコステロイド組成物は、他の高HLB界面活性剤、例えばエトキシル化水素化ヒマシ油(Cremophor RH40およびRH60、BASFより市販)、チロキサポール、ソルビタンエステル例えばTweenシリーズ(ICI Surfactants製)またはMontanoxシリーズ(Seppic製)などを含んでもよい。コルチコステロイド組成物は、好ましくは、高HLB界面活性剤成分の全部もしくは一部として、ビタミンEのエトキシル化誘導体もしくはポリエチレングリコール脂肪酸エステルのいずれか、または両方を含有し、そして一般に、これらの2種の界面活性剤の合計は、高HLB界面活性剤成分の重量で少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%を数えるであろう。
【0043】
場合によっては、HLB値約8以下をもつ低HLB界面活性剤が、また本発明において使用できる。そのような低HLB界面活性剤の例は、リン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルイノシトール;ならびに中級モノおよびジグリセリド、すなわちC8〜C12脂肪酸のモノおよびジグリセリド、およびそれらの混合物を含む。低HLB界面活性剤は、一般に、希釈組成物における重量で約0.1〜約3%レベルで使用できる。
【0044】
場合によっては、また、油が組成物中に組み入れられてもよい。製薬学的に許容しうる油化合物の例は、C8〜C12脂肪酸のトリグリセリドおよびプロピレングリコールジエステル、例えばAbitec製Captexシリーズを含む。油は、一般に、濃厚組成物における重量で約1〜約30%、および希釈組成物における重量で約0.1〜約3%レベルで使用できる。
【0045】
水相による希釈前に濃厚コルチコステロイド組成物を形成するためには、高HLBおよび低HLB界面活性剤、および/または補助溶媒、および/または油化合物を含有する組成物に薬物を添加することが必要である。
【0046】
薬物を可溶化するために高HLB界面活性剤、例えばTPGSもしくはSolutol HS−15を用いる希釈コルチコステロイド組成物は、ミセル組成物であると考えられる。この信念は、両TPGSおよびSolutol HS−15についての臨界ミセル濃度が、37℃において約0.02重量%であり、これは、希釈コルチコステロイド組成物におけるそれらの濃度以下にあるという事実に基づいている。油成分が低HLB界面活性剤の有無によらず存在する場合、水中油(o/w)ミクロエマルジョンが、希釈コルチコステロイド組成物として形成されるであろう。
【0047】
前記希釈組成物は、エアゾルの形態で身体に投与することができる。呼吸器、特に肺への投与では、噴霧器が、適当なサイズの小滴を作成するために使用される。典型的には、吸入のために噴霧器によって作成される小滴の粒径は、範囲約0.5〜約5ミクロンである。小滴が、呼吸器の下部領域、すなわち肺胞および末端気管支に達することが望まれる場合は、好適な粒径範囲は、約0.5〜約2.5ミクロンである。小滴が、上部呼吸器に達することが望まれる場合は、好適な粒径範囲は、2.5ミクロン〜5ミクロンである。噴霧器は、圧縮空気を噴射(direct)させて希釈コルチコステロイド組成物の小滴を流動させ、得られるエアゾルが、ノズルを通して、続いて大きい粒子を除くバッフルシステムを通して噴射される。
【0048】
気管支収縮の治療のために、希釈コルチコステロイド組成物が上記のように製造される。そのような治療のためのコルチコステロイドは、好ましくは、ベクロメタゾンジプロピオネート、ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、フルチカゾンプロピオネートもしくはトリアムシノロンアセトニドのいずれかであり、そし先に述べられた濃度において製剤化される。コルチコステロイドの1日の用量は、Physician’s Desk Referenceにしたがえば、薬物および疾病に応じて一般に、約0.4〜2mgである。
【0049】
実施例
本発明の種々の実施態様が、次の例によって具体的に説明されるが、これは、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。例1,2,3および5の組成物は、噴霧による吸入のために適しており、そして例4の組成物は鼻投与に適している。
【0050】
例1
グルココルチコイド ベクロメタゾンジプロピオネート1水塩を、予め融解(50℃)したTPGS中に濃度2.8および6.3mg/gにおいて溶解した。これらの濃厚液を、約15分の完全に可溶化する工程の間50℃に維持した。この融解形態にある間に、その濃厚液を、種々の水溶液、例えば熱(80℃)脱イオン水、生理食塩水、マレイン酸バッファー、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、および5%プロピレングリコール溶液、先のいずれかのPEG200もしくはPEG400中に、種々の容量比1:10〜1:100において希釈した。これらの希釈組成物を、TPGS濃厚液が水相と接触した場合に形成されるかもしれないゲルが、すべて完全に分散するまで混合した。いかなる沈殿物も含まない透明な物理的に安定な希釈コルチコステロイド組成物が、ベクロメタゾンジプロピオネート約28〜420μg/mlを含有して得られた。希釈コルチコステロイド組成物は、それを0.22ミクロン無菌フィルターを通過させることによって無菌化された。
【0051】
例2
ベクロメタゾンジプロピオネート1水塩(4.2mg)を、TPGSおよびエタノールの二液混合液(重量比1:1)995.8mg中に、室温で短時間混合することによって溶解して、濃厚コルチコステロイド組成物を生成した。その濃厚液を、いずれか脱イオン水、生理食塩水、または20mMマレイン酸、クエン酸もしくはリン酸バッファー中5重量%PEG400溶液中に、室温で数分間混合することによって容量で1:100に希釈した。得られる光学的に透明な希釈コルチコステロイド組成物は、ベクロメタゾンジプロピオネート約42μg/mlを含有した。希釈コルチコステロイド組成物は、それを0.22ミクロン無菌フィルターを通過させることによって無菌化された。
【0052】
また、同じ濃厚コルチコステロイド組成物を、上記水相中に容量で1:50に希釈し、そしてベクロメタゾンジプロピオネート約84μg/mlを含有する最終製剤を得た。これらの希釈製剤は、5℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHにおいて1年間以上物理的および化学的に安定であった。
【0053】
例3
数種のコルチコステロイド−ベクロメタゾンジプロピオネート、ブデソニドおよびトリアムシノロンアセトニド−を、TPGSおよび、群エタノール、プロピレングリコール、PEG200およびPEG400から選ばれる補助溶媒の二液混合液中に溶解した。TPGS対補助溶媒の重量比は1:1であり、そして得られる薬物濃度は1.4〜4.0mg/gであった。薬物を溶解するためにはTPGS/プロピレングリコールおよびTPGS/PEG混合液を数分間約45℃に加熱することが必要であるが、溶解は、TPGS/エタノール混合液では室温で達成できるであろう。濃厚液を、水相(脱イオン水中5%wt.PEG400)中に容量で1:50に希釈して、28μg〜80μg/mlを含有する澄明溶液を得た。希釈コルチコステロイド組成物は、それを0.22ミクロン無菌フィルターを通過させることによって無菌化された。
【0054】
例4
この実施例の組成物は鼻投与に適する。
ベクロメタゾンジプロピオネート1水塩(2.8mg)を、PEG200およびTPGSの2:1w/w混合液997.2mg中に溶解し、次いで脱イオン水で希釈(容量で1:6.65)した。最終透明溶液は、ベクロメタゾンジプロピオネート420μg/溶液mlを含有した。製剤の組成は以下に示される。張性は、グルコースもしくは塩化ナトリウムの添加によって約300mOsm/kgに調整できる。
【0055】
【表1】
Figure 0004875239
【0056】
希釈コルチコステロイド組成物は、それを0.22ミクロン無菌フィルターを通過させることによって無菌化された。
【0057】
例5
本発明において記述される若干のコルチコステロイド組成物の安定性プロフィルを検査するために、4種の製剤を次の表に示される重量組成により作成した。
【0058】
【表2】
Figure 0004875239
【0059】
製剤を、研究期間中ガラスバイアルおよび吹込み成形ポリエチレンアンプルにおいて保存した。種々の試験を使用して上記コルチコステロイド組成物の物理的および化学的安定性を検査した。
【0060】
上記組成物の水溶液における分散された材料小滴のサイズおよび分布は、準弾性光散乱技術を用いて決定された。実験装置は、Brookhaven Instrument Corporation製BI−200SM GoniometerおよびBI9000AT Digital Correlator、およびBertan Associates製2000ボルト送電の高電圧パワーサプライによって動力供給される検出用Thorn EMI Electron tubeからなった。Spectra Physics製ヘリウム−ネオンレーザーが波長632.8nmをもつ光源であった。噴霧前の全製剤における分散相の小滴サイズは約10nmであり、そして研究期間中一定のままであった。
【0061】
噴霧されたコルチコステロイド組成物のMMADおよび対応する幾何学的標準偏差(GSD)は研究の時間0において決定された。生理食塩水は参考文献のとおり使用された。実験は、Andersenカスケードインパクター(Andersen Airsampler Inc.,Atlanta,GA)を直列に接続した、Pronebコンプレッサーおよび適合されたマウスピースを装着したPari LC Plus Reusable Nebulizer(Pari Respiratory Equipment,Inc.,Richmond,VA)からなる装置を用いて実施された。真空ポンプが、カスケードインパクターの出口に接続され、そしてそれらの間に、流速約28.3L/minに指定した空気流コントローラーを置いた。カスケードインパクターは、増加する浸透の深さを表す、出口前に7ステージとフィルターを含有するヒト肺の機械的モデルである。各プレートに沈着された添加物の量は、プレート乾物重量の増加によって決定された。各プレート上の薬物重量からのMMADを決定する場合に、類似の結果が得られた。これは、薬物が添加物と同じ方式で移動することを明らかにした。
【0062】
【表3】
Figure 0004875239
【0063】
上記組成物におけるコルチコステロイド含量および分解生成物についての分析はHPLCによって行われた。Shimadzu LC 10Aが、Supelcosil LC−318カラムおよび波長254nmにおける吸光度を追跡するUV/VIS検出器とともに使用された。無勾配法は、流速約1.5mL/minにおいて15分間、脱イオン水中60%アセトニトリルを使用した。交差偏光フィルム下および肉眼によるコルチコステロイド組成物の可視試験が1週ベースで行われた。何か相分離、薬物沈殿、濁度もしくは色の変化があるか否かを経時的に観察するために、これらの試験が実施された。40℃/75%RHにおける安定性研究の結果が以下に示される。これらのデータから、試験された製剤が、苛酷条件下で相分離もしくは薬物の沈殿が起こらないことを意味する、物理的に安定であることが結論できる。コルチコステロイドの分解は観察されなかった。類似の結果が、5℃および25℃で保存されたサンプルからも得られた。
【0064】
【表4】
Figure 0004875239
【0065】
例6〜8は、吸入に適するさらなる組成物を述べる。
【0066】
例6
これらのブデソニド製剤組成物は、適当な吸入送達組成物である:
【0067】
【表5】
Figure 0004875239
【0068】
製剤1は、次のように製造された:最初に、重量比1:1.72における融解TPGSおよびプロピレングリコールの混合液を、45〜50℃において調製し、次いで得られる液体濃厚液を周囲温度まで冷却した。次いで、ブデソニドを添加し、そして周囲温度において溶解した。濃厚液をpH3.5,4.0および4.5の20mMクエン酸バッファーにより室温で希釈した。
【0069】
製剤2は、重量比1対1をもつ融解TPGSおよびPEG400の混合液を用いて、製剤1と同様にして調製した。ブデソニドを35〜40℃において撹拌によって溶解した。混合液を徐々に加温して粘度を低下させた。あるいはまた、ブデソニドを、適当な機械的撹拌装置を用いることによって室温で溶解できる。次いで、得られる濃厚液を、張性を調整するために塩化ナトリウムを含有する上記pHの20mMクエン酸バッファー溶液中に周囲温度において希釈した。
【0070】
希釈後、すべてのサンプルを、それを0.2μmMillipore無菌フィルターを通して濾過することによって無菌化し、そして無菌低密度ポリエチレンプラスチックバイアル中に注入した。これらの製剤は、5℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RH(RHは相対湿度)に湿度および温度を調節した部チャンバーにおいて維持された。時間0から13.5週後の回収%が、各製剤および保存条件について次の表に示される:
【0071】
【表6】
Figure 0004875239
【0072】
NDは、これらが95%以下であったので「測定不能」を表す。
【0073】
例7
最終濃厚液中にブデソニド0.5mg/mLを含有するブデソニド組成物が調製され、そして例6に記述されたようにクエン酸バッファーで希釈された。製剤は次のとおり:
【0074】
【表7】
Figure 0004875239
【0075】
製剤1の、吸入によって治療用量のブデソニドを送達する能力が次の研究において例証された。製剤のMMAD、GSDおよび呼吸可能フラクションは、例5に記述されたようにPari Pronebコンプレッサー噴霧器を用いて各々15分間噴霧し、そして例5に記述されたようにAndersenカスケードインパクター(Andersen Air Samplers,Inc.,Atlanta,GA)を通して噴霧されたミストを運ぶことによって決定された。呼吸可能フラクションは、装置に流入する全量に対する、カスケードインパクターにおけるステージ2もしくはそれ以降において沈着された薬物の、%で示した比率であり、そして肺のより深部に到達するであろう薬物フラクションの評価を提供する。
【0076】
【表8】
Figure 0004875239
【0077】
MMADデータおよび呼吸可能フラクションのデータの両方は、吸入の方法による肺へのブデソニドの送達のために、これらの製剤が利用できることを支持する。また、これらの製剤は、好ましくは保存剤を含有して、スプレー器具を用いる鼻送達のために使用することができる。
【0078】
例8
例6および7に記述された製剤は、また、10mM,5mMおよび1mMというより低いバッファー濃度を用いて製造されて類似の安定性結果を得た。しかしながら、0.1mM以下のバッファー濃度を用いることは、高温(40℃)におけるブデソニドの安定性に悪影響をもつ。
【0079】
例9
フルチカゾン17−プロピオネートを含有する組成物を、水相として0.01Mクエン酸バッファー,pH5.0を用いて製造した。フルチカゾン17−プロピオネート(27.5mg)を、60℃で1時間撹拌することによってTPGSおよびポリオキシエチレングリコール400の2:1w/w混合液9.9725gに溶解した。熱い濃厚液を、60℃で20分間混合することによって、張性調整のために1.6%プロピレングリコールを含有している0.01Mクエン酸バッファー,pH5.0を用いて希釈(1:25wt/wt)した。最終透明溶液を、それを0.2ミクロン無菌フィルターを通過させることによって無菌化し、そして無菌プラスチック低密度ポリエチレンバイアル中に充填した。この製剤の組成は、次の表に示される。
【0080】
【表9】
Figure 0004875239
【0081】
この組成物は、噴霧器を用いる経口吸入によるフルチカゾン17−プロピオネートの送達に適している。
【0082】
例10
次のフルチカゾン組成物は鼻投与に適していて、そして保存剤として塩化ベンズアルコニウムとエデト酸二ナトリウム、および浸透圧調整剤として塩化ナトリウムを含有する。
【0083】
フルチカゾン17−プロピオネート0.4g量を、融解TPGS79.6gに添加し、そして混合物を60℃で均質になるまで(約1時間)撹拌した。濃厚液を、0.01Mクエン酸バッファー,塩化ナトリウム、塩化ベンズアルコニウムおよびエデト酸二ナトリウムからなる水相により希釈(1:10wt/wt)した。混合液を、60℃で20分間(均質になるまで)撹拌した。製剤の組成は、次の表に示される。
【0084】
【表10】
Figure 0004875239
【0085】
例11
この実施例は、濃厚液の水相による希釈後、水中油ミクロエマルジョンを形成する2種のコルチコステロイド組成物を含有する。
【0086】
フルチカゾン17−プロピオネート(38.5mg)を、60℃で1時間撹拌することによってTPGS−Captex300(重量で9:1)混合液9.9615gに溶解した。濃厚液を、60℃で10分間撹拌することによって、浸透圧調整剤として1.8%プロピレングリコールを含有している0.01Mクエン酸バッファーを用いて希釈(1:35wt/wt)した。最終透明溶液の組成は、次の表に示される。
【0087】
【表11】
Figure 0004875239
【0088】
Captex300は中級脂肪酸のトリグリセリドの混合物である。この組成物は、噴霧器を用いるフルチカゾン17−プロピオネートの吸入経口送達に適している。
【0089】
例12
この水中油ミクロエマルジョン組成物は、鼻投与に適しているブデソニドの濃厚液を含有する。次の混合液が製造され、そして非水相として使用された:
【0090】
【表12】
Figure 0004875239
【0091】
ブデソニド(0.016g)を、55℃で20分間撹拌することによって、上記非水相(1.984g)中に溶解した。次いで、調製された濃厚液を、塩化ナトリウムおよび塩化ベンズアルコニウムを含有する0.02Mクエン酸バッファー、pH5により希釈(1:16)した。光学的に透明な水中油ミクロエマルジョンが形成された。製剤の組成は、次の表に示される。CapmulMCMは中級脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物である。
【0092】
【表13】
Figure 0004875239

Claims (13)

  1. (a)溶解形態のコルチコステロイド5μg/ml〜5mg/ml、
    (b)HLBが10を超えている高HLB界面活性剤成分であって、ビタミンEのエトキシル化誘導体少なくとも50重量%を含有する、製薬学的に許容しうる高HLB界面活性剤成分0.1〜20重量%、および
    (c)水相少なくとも70重量%:
    からなる、治療用量のコルチコステロイドを呼吸器に投与するために適当な組成物。
  2. コルチコステロイドが、ベクロメタゾンジプロピオネート、ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾンプロピオネートまたはフルニソリドを含む、請求項1記載の組成物。
  3. 高HLB界面活性剤成分が、トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート少なくとも50重量%を含有する、請求項1または2記載の組成物。
  4. 高HLB界面活性剤成分が、トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート少なくとも75重量%を含有する、請求項3記載の組成物。
  5. 高HLB界面活性剤成分が、トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート少なくとも90重量%を含有する、請求項4記載の組成物。
  6. 高HLB界面活性剤成分が、ビタミンEのエトキシル化誘導体少なくとも75重量%を含有する、請求項1または2記載の組成物。
  7. 高HLB界面活性剤成分が、ビタミンEのエトキシル化誘導体少なくとも90重量%を含有する、請求項6記載の組成物。
  8. プロピレングリコール、平均分子量200〜4000のポリエチレングリコール、グリセロール、エトキシジグリコール、グリコフロールもしくはエタノールまたはそれらの組み合わせ物を含む製薬学的に許容しうる補助溶媒0.1〜20重量%をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
  9. (a)溶解形態のコルチコステロイド5μg/ml〜5mg/ml、
    (b)HLBが10を超えている高HLB界面活性剤成分であって、ビタミンEのエトキシル化誘導体少なくとも50重量%を含有する、製薬学的に許容しうる高HLB界面活性剤成分0.1〜20重量%、
    (c)水相少なくとも70重量%、および
    (d)HLB値8以下の低HLB界面活性剤0.1〜重量%
    からなる、治療用量のコルチコステロイドを呼吸器に投与するために適当な組成物。
  10. (a)溶解形態のコルチコステロイド5μg/ml〜5mg/ml、
    (b)HLBが10を超えている高HLB界面活性剤成分であって、ビタミンEのエトキシル化誘導体少なくとも50重量%を含有する、製薬学的に許容しうる高HLB界面活性剤成分0.1〜20重量%、
    (c)水相少なくとも70重量%、および
    (d)油0.1〜3重量%
    からなる、治療用量のコルチコステロイドを呼吸器に投与するために適当な組成物。
  11. 請求項1記載の組成物の製造方法であって、
    (a)HLBが10を超えている高HLB界面活性剤成分であって、ビタミンEのエトキシル化誘導体少なくとも50重量%を含有する、融解された製薬学的に許容しうる高HLB界面活性剤成分中に、コルチコステロイド化合物を溶解する工程;
    (b)溶解されたコルチコステロイドを含有する融解高HLB界面活性剤成分を水相と混合する工程、を順に含み、かつ、
    水相が少なくとも70重量%量で存在し、そして高HLB界面活性剤成分が、該コルチコステロイド組成物の0.1〜20重量%量で存在する、
    ことを特徴とする、上記方法。
  12. ビタミンEのエトキシル化誘導体が、高HLB界面活性剤成分の少なくとも75重量%含有する、請求項11記載の方法。
  13. 高HLB界面活性剤成分が、トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート少なくとも75重量%を含有する、請求項11記載の方法。
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