JP4873909B2 - 電子線励起発光素子用蛍光体、その作製方法、及び電子線励起発光素子 - Google Patents

電子線励起発光素子用蛍光体、その作製方法、及び電子線励起発光素子 Download PDF

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本発明は、電子線により励起されて発光する蛍光体及びその作製方法並びにこの蛍光体を含む電子線励起発光素子に関する。
今日、ディスプレイ分野では、ブラウン管(CRT)から薄型のフラットパネルディスプレイ(FPD)に移行しつつあり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の、様々なFPDが開発されている。その中でFEDは、CRTと同様の発光原理で、陰極から発生した電子線を陽極の蛍光体に衝突させて発光させるものである。この発光源を担う蛍光体は、発光輝度・色純度・寿命等の特性が優れたものであることが望ましい。従来のCRTで用いられているZnS系やYS系等の硫化物蛍光体は、劇物であったり、電子線照射による蛍光体表面の劣化に起因した発光効率の低下を引き起こすこと、また、赤・緑・青の三色のうち青色は、材料自身が低輝度であること等、未だ解決すべき課題があり、代替材料の開発も盛んに行われている。しかし、未だに満足すべきものは得られていない。
蛍光体としては、例えば、式:M 12 1433(式中のMはCa、Sr及びBaからなる群から選ばれる1種以上であり、MはAl及びGaからなる群から選ばれる1種以上である。)により表される化合物に付活剤としてLn(LnはCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びMnからなる群より選ばれる1種以上である。)が含有されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この蛍光体は、紫外線発光体素子用のものである。
特開2004−300261号公報(特許請求の範囲)
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、CRTやFED用の蛍光体として現在用いられている硫化物蛍光体に代わり、安全かつ安価な発光輝度の高い電子線励起発光素子用蛍光体及びその作製方法並びにこの蛍光体を含んでなる電子線励起発光素子を提供することにある。
本発明者らは、蛍光体の開発過程において、構成元素が安全であると共に、クラーク数上位の豊富な元素(Ca:5位、O:1位)で構成されているCaOを蛍光体の母体材料に用い、これに特定の元素を付活した場合、輝度の高い電子線励起発光が生じることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の電子線励起発光素子用蛍光体は、CaOを母体とし、これに付活剤を添加、含有せしめてなり、前記付活剤が、ユーロピウム(Eu)及びツリウム(Tm)からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、前記母体基準で、5〜30原子%の量で添加されてなることを特徴とする
本発明の電子線励起発光素子用蛍光体の作製方法は、Caを含み、焼成の際に分解してカルシウム酸化物となり得る化合物を母体とし、これに、付活剤として、Eu及びTmから選ばれた少なくとも1種の元素又はその酸化物を、その元素に換算して、母体基準で、〜30原子%の量で混合し、得られた混合物を焼成することにより、式:CaO:A(式中、Aは前記少なくとも1種の元素を表し、xは5〜30原子%である)で表される蛍光体を得ることを特徴とする。
上記焼成の際に分解してカルシウム酸化物となり得る化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及びシュウ酸塩から選ばれた化合物である。この焼成の際に分解してカルシウム酸化物となり得る化合物は炭酸塩であることが好ましい。
本発明の電子線励起発光素子は前記蛍光体を含んでなることを特徴とする。
本発明によれば、CaOを蛍光体の母体材料に用い、これに、付活剤として少なくとも1種の特定の元素を所定量添加、含有せしめることにより、輝度の高い電子線励起発光が生じるという効果を奏する。
本発明の蛍光体によれば、資源の豊富なCaOを母体とするため、従来用いられているZnS等の劇物と比べて、低環境負荷、低コストを実現できるという効果を奏する。
また、本発明の蛍光体は、通常の焼成による簡単なプロセスで作製することができるという効果を奏する。
さらに、本発明の優れた発光輝度・色純度を示す蛍光体を含んでなる発光素子は、輝度の高い電子線励起発光を生じるので、FED等のFPDやブラウン管(CRT)ディスプレイへの利用が期待できるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明によれば、CaOを母体とし、これに少なくとも1種の特定の元素を付活剤として所定量含有せしめてなる電子線励起発光素子用蛍光体を提供することにより、所期の目的を達成することができる。
本発明における付活剤の添加量は、母体基準で、0.1〜30原子%、好ましくは5〜30原子%である。0.1原子%未満であり、また、30原子%を超えると、発光輝度が著しく低下する。
以下、本発明の蛍光体の作製方法について説明する。
本発明の蛍光体の作製方法は、特に限定されるものではない。例えば、母体を構成するためのカルシウム含有化合物と付活剤元素又はその酸化物との混合物を焼成することにより作製することができる。このカルシウム含有化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、及びシュウ酸塩等のような、焼成温度で分解してCaOとなり得る化合物を用いることができる。
本発明によれば、例えば、上記カルシウム含有化合物と付活剤元素又はその酸化物とを、目的とする蛍光体の組成に併せて秤量し、既知のボールミル、ジェットミル、V型混合器、攪拌装置等を用いて混合・粉砕し、得られた混合物を、例えば、不活性ガス雰囲気(アルゴン等の希ガスや窒素等の雰囲気)、酸化性ガス雰囲気(空気、酸素、酸素原子含有ガス等の雰囲気)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等の水素原子含有ガス等の雰囲気)中、1000〜1500℃(好ましくは、1200〜1300℃)で所定の時間焼成し、目的とする蛍光体を得ることができる。これらの焼成雰囲気のうち、輝度の点からは、窒素ガス雰囲気が最も好ましい。
本発明によれば、具体的には、例えば、炭酸カルシウム(CaCO)に、Mn、Sn、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びBiから選ばれた少なくとも1種の元素又はその酸化物を、この元素に換算して、CaO母体基準で、0.1〜30原子%、好ましくは5〜30原子%混合し、かくして得られた混合粉末をボールミル中で粉砕・攪拌した後、この混合物を不活性ガス雰囲気、酸化性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気中において好ましくは1200〜1300℃(例えば、1200℃)で焼成することにより、所望の蛍光体を得ることができる。
上記したようにして得られる本発明の蛍光体は従来の蛍光体よりも優れた発光輝度を有する。この蛍光体を用いて、公知の製造方法により発光素子を製造できる。この蛍光体を用いるFEDやCRT用発光素子のうち、FED用発光素子を例にとり、以下簡単に説明する。
例えば、本発明の蛍光体の粒子を高分子化合物(例えば、セルロース系化合物、ポリビニルアルコール等)からなるバインダーの有機溶媒溶液に分散せしめて、蛍光体ペーストを調製する。この蛍光体ペーストを公知のスクリーン印刷等の塗布方法により導電性膜(例えば、ITO(酸化インジウムスズ))が形成された(この導電性膜をアノード電極とする)前面基板の表面に塗布する。この蛍光体層と、電子源(例えば、カーボンナノチューブ、グラファイトナノチューブ)及びカソード電極を備えた背面基板とを、真空領域を確保するためのスペーサーを挟んで重ねて貼り合わせる。次いで、内部を排気して真空封止し、電子飛行空間を形成させることにより、目的とするFEDモデルを製造することができる。
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
CaCOに酸化ツリウム(Tm)を、CaO基準で、Tmに換算して23原子%添加し、乾式粉砕・攪拌した粉末を大気中にて1時間30分で1200℃まで昇温し、この温度に4時間保持して焼成し、CaO:Tm0.23を得た。
次に、得られた焼成粉末の蛍光特性評価について説明する。
測定サンプルの準備として、まず、エタノール20ccを注入したビーカーに上記焼成粉末0.01gを入れ、十分攪拌した。このビーカー中に導電性を持つITOの成膜されたガラス基板を投入し、エタノール混合液を乾燥させた。この手法により堆積した粉末に加速電圧3kVの電子線を照射し、分光光度計により蛍光特性を評価した。
CaO:Tm0.23に加速電圧3kVの電子線を照射したときの発光スペクトルを図1に示す。CaO:Tm0.23は波長450nm付近に鋭いピークを持ち、色座標は、CIE色度図上ではx=0.157、y=0.08に位置する青色発光を示した。これは、従来の青色蛍光体であるZnS:Agの色座標x=0.146、y=0.074と同等であり、ZnS:Agに匹敵する色度であることが確認できた。
実施例1記載の方法に従って、CaCOに酸化ユーロピウム(Eu )を、CaO基準で、Euに換算して23原子%添加し、乾式粉砕・攪拌した粉末を大気中にて1時間30分で1200℃まで昇温し、この温度に4時間保持して焼成し、CaO:Eu0.23を得た。
かくして得られた焼成粉末に対して、実施例1と同様にして蛍光特性を評価した。その結果を図2に示す。図2から明らかなように、400nm近辺及び600nm前後にピークがあり、共にシャープである。
本発明によれば、CaOを蛍光体の母体材料に用い、これに付活剤を含有せしめることにより、電子線照射により優れた発光輝度・色純度を示す蛍光体及びこの蛍光体を含んでなる発光素子を提供できるので、本発明は、薄型のFPD(液晶ディスプレイ、PDP、有機ELディスプレイ、FED等)、特にFEDやCRT等のディスプレイ分野で利用可能である。
実施例1で得られたCaO:Tm0.23に電子線を加速電圧3kVで照射した時の発光スペクトル。 実施例2で得られたCaO:Eu0.23に電子線を加速電圧3kVで照射した時の発光スペクトル。

Claims (4)

  1. CaOを母体とし、これに付活剤を添加、含有せしめてなり、前記付活剤が、Eu及びTmからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、前記母体基準で、5〜30原子%の量で添加されてなることを特徴とする電子線励起発光素子用蛍光体。
  2. Caを含み、焼成の際に分解してカルシウム酸化物となり得る化合物を母体とし、これに、付活剤として、Eu及びTmから選ばれた少なくとも1種の元素又はその酸化物を、その元素に換算して、母体基準で、5〜30原子%の量で混合し、得られた混合物を焼成することにより、式:CaO:A (式中、Aは前記少なくとも1種の元素を表し、xは5〜30原子%である)で表される蛍光体を得ることを特徴とする電子線励起発光素子用蛍光体の作製方法
  3. 前記焼成の際に分解してカルシウム酸化物となり得る化合物が、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及びシュウ酸塩から選ばれた化合物であることを特徴とする請求項2記載の電子線励起発光素子用蛍光体の作製方法。
  4. 請求項1記載の蛍光体又は請求項2若しくは3記載の作製方法により作製された蛍光体を含んでなることを特徴とする電子線励起発光素子。
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