JP4872802B2 - 液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法 - Google Patents

液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法 Download PDF

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Description

本発明は、液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法に関する。
微細なナノ粒子は、半導体、絶縁体等の種々の材料で合成が試みられており、電子素子、光素子、記録媒体、電池、触媒等に応用されてきた。そして、近年では、このようなナノ粒子の製造方法として、液相中でのレーザーアブレーションを採用する方法が研究されている。
例えば、特開2004−90081号公報(特許文献1)においては、溶液中に設置したターゲット金属に高出力のレーザー光を照射した時に発生する音響信号を検出してレーザー光の最適照射位置を制御する液相レーザーアブレーション方法が開示されている。また、特開2006−122845号公報(特許文献2)においては、被微細化成分を含有するターゲットと、このターゲットにレーザー光を照射することによりターゲット成分を原子、分子、イオンまたはクラスター状の微細化粒子として放出するレーザー発振装置と、上記ターゲットを液体中に保持する反応容器とを備え、上記反応容器は、流通口を有する仕切り板によって内部空間がアブレーション室と回収室とに仕切られており、上記アブレーション室内にターゲットが収容保持され、アブレーションによる微細化反応を進行せしめる一方、上記アブレーション室内での微細化反応によって生じた微細化粒子を含む液体を、仕切り板の流通口を介して上記回収室に導入するように構成した液相レーザーアブレーション装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の液相レーザーアブレーション方法及び特許文献2に記載のような従来の液相レーザーアブレーション装置においては、レーザーアブレーション時に液相中をレーザーが通過すると、溶液中に気泡が発生していた。そして、レーザー光を繰り返し照射する際に、気泡内の気体と溶液との屈折率差によりレーザー光が屈折することや、気泡と溶液との界面でのレーザー光の反射により、レーザー光の照射条件が一定にならず、レーザー光をターゲットに対して安定して照射することができなかった。
特開2004−90081号公報 特開2006−122845号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、レーザー照射時に液相中に気泡が発生することを十分に防止することができ、安定したレーザー照射条件でアブレーションを行うことを可能とする液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、溶媒中に保持されたターゲットに対してレーザー光を照射して液相中でレーザーアブレーションを行うための液相レーザーアブレーション装置であって、レーザー光を発生させるためのレーザー発振器と、前記レーザー光を導入するための窓を備える密封容器と、前記密封容器内に配置されるターゲットと、前記密封容器に接続された真空引き装置と、前記密封容器に接続された不活性ガス又は窒素ガスを導入するためのガス導入装置とを備える液相レーザーアブレーション装置により、レーザー照射時に液相中に気泡が発生することを十分に防止することができ、安定したレーザー照射条件でアブレーションを行うことが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の液相レーザーアブレーション装置は、溶媒中に保持されたターゲットに対してレーザー光を照射して液相中でレーザーアブレーションを行うための液相レーザーアブレーション装置であって、
レーザー光を発生させるためのレーザー発振器と、
前記レーザー光を導入するための窓を備える密封容器と、
前記密封容器内に配置されるターゲットと、
前記密封容器に接続された真空引き装置と、
前記密封容器に接続された不活性ガス又は窒素ガスを導入するためのガス導入装置と、
を備えることを特徴とするものである。
上記本発明の液相レーザーアブレーション装置としては、前記密封容器内に、溶媒を保持するための処理容器が収容されているものが好ましい。
また、本発明の液相レーザーアブレーション方法は、レーザー光を発生させるためのレーザー発振器と、前記レーザー光を導入するための窓を備える密封容器と、溶媒と、前記密封容器内に配置されるターゲットと、前記密封容器に接続された真空引き装置と、前記密封容器に接続された不活性ガス又は窒素ガスを導入するためのガス導入装置とを備える液相レーザーアブレーション装置を用い、
前記密封容器内を真空引きした後に、前記密封容器内に不活性ガス又は窒素ガスを導入し、不活性ガス又は窒素ガス雰囲気下において、ターゲットに対してレーザー光を照射して液相中でレーザーアブレーションすることを特徴とする方法である。
上記本発明の液相レーザーアブレーション方法においては、前記密封容器内に、溶媒を保持するための処理容器が収容されていることが好ましい。
また、上記本発明の液相レーザーアブレーション方法においては、前記密封容器内の圧力を、前記溶媒の25℃における蒸気圧の0.1〜10倍に制御してレーザーアブレーションすることが好ましい。
なお、本発明の液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、レーザーアブレーションに際して、先ず、前記密封容器内を真空引きする。これにより液相レーザーアブレーションに使用する溶媒から、その溶媒に溶解している大気やその他の気体が排出される。これによって、レーザー照射時に溶媒から気泡が発生することが十分に抑制される。また、本発明においては、前記真空引き後に、前記密封容器内に不活性ガスや窒素ガスを導入し、前記容器内を不活性ガス又は窒素ガス雰囲気とするため、レーザー照射時の溶媒の沸騰が十分に防止される。このように、本発明においては、レーザーアブレーション前に、溶媒からその溶媒に溶解している気体が排出され、しかもレーザー照射による溶媒の沸騰が十分に防止されているため、レーザーアブレーション時の溶媒からの気泡の発生が十分に防止される。そのため、本発明によれば、レーザー光が気泡の影響により液相中で屈折したり、反射したりすることが十分に抑制され、レーザー光を安定してターゲットに照射することが可能となり、安定したレーザー照射条件で液相レーザーアブレーションを行うことが可能となるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、レーザー照射時に液相中に気泡が発生することを十分に防止することができ、安定したレーザー照射条件でアブレーションを行うことを可能とする液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法を提供することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の液相レーザーアブレーション装置及び本発明の液相レーザーアブレーション方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の液相レーザーアブレーション装置の好適な一実施形態の構成を示す概略縦断面図である。
図1に示す液相レーザーアブレーション装置は、レーザー発振器10と、反射板11と、集光レンズ12と、密封容器13と、密封容器13内に収容された処理容器14と、処理容器14内に保持された溶媒15と、溶媒15に一部が浸漬されたターゲット16と、ターゲット支持体17と、ターゲット駆動装置18と、密封容器13に接続された真空引き装置19と、密封容器13に接続されたガス導入装置20とを備えるものである。このようなレーザーアブレーション装置においては、レーザー発振器10から発せられたレーザー光Lが光路上に配置された反射板11に反射された後に窓13Aを通過して密封容器13内に導入され、集光レンズ12を通過し、窓14Aを介して処理容器内の溶媒15に入射した後、液相内を通過してターゲット16に照射されるように構成されている。
レーザー光Lを発するためのレーザー発振器10としては特に制限されないが、パルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒のパルスレーザー光を照射することができるレーザー光発生装置を好適に用いることができ、例えばYAGレーザー装置、エキシマレーザー装置によって構成され、中でもYAGレーザー装置によって構成されることがより好ましい。
また、反射板11としては特に制限されず、公知の反射板(例えば鏡等)を適宜用いることができる。更に、集光レンズ12としては特に制限されないが、ターゲット16に照射されるパルスレーザー光Lの照射強度を10W/cm〜1010W/cmとすることが可能な集光レンズであることが好ましく、10W/cm〜10W/cmとすることが可能な集光レンズが特に好ましい。
密封容器13は、容器内を密封系とすることが可能なものであればよく、特に制限されず、目的の設計に合わせて、その材質、形状等を適宜変更して用いることができ、例えばステンレス鋼製のものを用いることができる。また、密封容器13は、レーザー光を導入するための窓13Aを備える。このような窓13Aとしては、特に制限されず、公知の窓材からなるものを適宜用いることができ、例えば、石英製のものを用いてもよい。
また、処理容器14は、容器14内に溶媒15を保持することができ、その液相内にターゲットを保持してアブレーションすることが可能なものであればよい。このような処理容器14の材質等は特に制限されず、目的の設計に合わせて、その材質、形状等を適宜変更することができ、例えばポリプロピレン製の容器を用いてもよい。また、処理容器14は、レーザー光を導入するための窓14Aを備える。このような窓14Aとしては、特に制限されず、公知の窓材からなるものを適宜用いることができ、例えば、石英製のものを用いてもよい。
さらに、溶媒15としては特に制限されず、公知の溶媒を適宜用いることができ、レーザー光に対して透明性を有するものが好ましい。このような溶媒としては特に制限されないが、例えば、エタノール、イソプロパノール、キシレン、ケロシン、メタノール、水、アセトン、液体窒素等が挙げられる。なお、本発明においては、溶媒15として、燃焼性の溶媒であっても用いることができる。
また、ターゲット16は、前述のレーザー光Lの照射により、金属原子及び/又は炭素原子を含む微粒子を発生させることが可能な材料からなるものである。このような材料としては、各種の金属、金属化合物及び炭素からなる群から少なくとも一つの材料が選択される。また、このような金属材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属、半金属(メタロイド)、又はそれらの合金を用いることができ、例えば、Cu、Al、Ti、Si、Cr、Pt、Au、Ag、Pd、Zr、Mg、Ni、Fe、Co、Zn、Sn、W、Be、Ge、Mn、Mo、Nb、Ta、Hf、それらを主成分とする合金等が挙げられ、中でもCu、Al、Ti、Si、Znを含むものが好ましい。なお、ここでいう金属材料は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、砒化ガリウム、InP、ZnTe等の半導体であってもよい。また、金属化合物材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属又は半金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられ、中でも酸化亜鉛、チタニア、アルミナ、マグネシア、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、Fe、Cr、W、Mo、V等の金属元素の炭化物が好ましい。なお、ここでいう金属化合物材料は複数の金属元素を含有していてもよく、更に非金属元素を含んでいてもよい。また、炭素材料としては、各種の無定形炭素、グラファイト、ダイアモンド等が挙げられ、中でもグラファイト、無定形炭素が好ましい。さらに、ターゲット16は、このような金属材料、金属化合物材料、炭素材料の複合材料であってもよい。
また、ターゲット支持体17は、一端がターゲットに接続され、もう一端がターゲット駆動装置18と接続されるものであり、ターゲットを支持しつつターゲットの駆動を可能とするものである。更に、ターゲット駆動装置18は、レーザー光Lがターゲット13の表面の同じ位置に繰り返し照射されて穴が開かないように回転及び平行移動させることを可能とするものである。このようなターゲット駆動装置18としては特に制限されず、公知の装置(パルスモーター等)を適宜用いることができる。なお、本実施形態においては、ターゲット駆動装置18によりレーザー光Lの照射位置にターゲット16の新鮮な面(レーザー光未照射面)が順次繰り出されるようになっている。
また、真空引き装置19としては、密封容器13内を真空引きすることが可能なものであればよく、特に制限されず、公知の装置(例えば真空ポンプ等)を適宜も用いることができる。また、ガス導入装置20としては、密封容器13内に不活性ガス又は窒素ガスを導入することが可能なものであればよく、特に制限されず、不活性ガス又は窒素ガスが封入されたガスボンベ等を適宜用いることができる。
以下、本発明の液相レーザーアブレーション方法の好適な方法として、図1に示す液相レーザーアブレーション装置を用いた液相レーザーアブレーション方法を説明する。
このような液相レーザーアブレーション方法として好適な方法においては、先ず、真空引き装置19を用いて密封容器13内を真空引きする(第一工程)。次に、ガス導入装置20を用いて、密封容器13内に不活性ガス又は窒素ガスを導入して、密封容器13内を不活性ガス又は窒素ガス雰囲気とする(第二工程)。次いで、不活性ガス又は窒素ガス雰囲気下において、ターゲット16に対してレーザー光Lを照射して液相中(溶媒15中)でレーザーアブレーションを行う(第三工程)。
上記第一工程においては、真空引きを行う。このような真空引きをすることで、密封容器13内に保持されている溶媒15から、その溶媒に溶解している気体(大気等)を排出できる。そのため、本発明においては、レーザーアブレーション時に、溶媒15に溶解している気体に由来する気泡の発生が十分に抑制される。また、このような真空引き工程による真空引き後の密封容器内の圧力は特に制限されないが、10−1〜10−4torrとすることが好ましく、10−2〜10−3torrとすることがより好ましい。このような圧力が前記下限未満では、溶媒が蒸発して、特に長時間処理を行う場合は、溶媒の種類によっては溶媒がなくなってしまうことが生じる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、真空引きが十分なものとならず、溶媒中に溶解している気体を十分に排除することができなくなる傾向にある。
また、上記第二工程においては、真空引き後の密封容器13内に不活性ガス又は窒素ガスを導入して、密封容器13内を不活性ガス又は窒素ガス雰囲気とする。真空状態のままで溶媒15にレーザー光Lを照射すると溶媒15が沸騰し易いため、気泡が生じ易く、ターゲットへの安定したレーザー照射が困難となる。そのため、本発明においては、密封容器13内に不活性ガス又は窒素ガスを導入して、溶媒の沸騰を十分に防止し、これにより、気泡の発生を防止して十分に安定したレーザーアブレーションを行うことを可能とする。また、本発明においては、レーザーアブレーションの際の雰囲気を不活性ガス又は窒素ガス雰囲気とするため、溶媒15として燃焼性のものも安全に用いることが可能である。なお、このような不活性ガスとしては、特に制限されず、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
また、このような不活性ガス又は窒素ガス雰囲気においては、圧力を、溶媒15の室温(25℃)における蒸気圧の0.1〜10倍(より好ましくは0.5〜2倍)の範囲内に制御することが好ましい。このような圧力が前記下限未満では、圧力が低すぎて、レーザーアブレーションを行う際に溶媒15が沸騰し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒中に雰囲気ガスが多く溶け込み、液相レーザーアブレーション時に溶け込んだガスが気泡として発生する傾向にある。
また、上記第三工程においては、上記不活性ガス又は窒素ガス雰囲気下、ターゲット16に対してレーザー光Lを照射して液相中(溶媒15中)でレーザーアブレーションを行う。すなわち、先ず、レーザー発振器10からレーザー光Lを出射させた後、そのレーザー光Lを光路上に配置された反射板11により反射させる。次に、前記レーザー光Lを、光路上に配置された窓13Aを介して密封容器13内に導入し、集光レンズ12を通過させた後、窓14Aを介して処理容器内に入射させる。次に、処理容器内に入射させた前記レーザー光Lを、処理容器内の溶媒15(液相)中を通過させた後、液相中に保持されたターゲット16に照射させる。そして、ターゲット16にレーザー光Lが照射されると、ターゲット上にはプラズマが生じ、液相内にターゲット16の材料からなるナノメートルサイズ(好ましくは数〜数十nm)の粒子が形成され、分散される。なお、本実施形態においては、レーザー光Lは、略水平方向から照射される。
このようなレーザー光の照射に際しては、ターゲット16の同じ位置にレーザー光が繰り返し照射されて穴が開くことがないように、ターゲット駆動装置18を用いてターゲット16を駆動させながらレーザー照射することが好ましい。本実施形態においては、ターゲット駆動装置18としてパルスモータを用いて、ターゲットを回転させながらレーザー光Lを照射する。なお、このようなターゲットの回転数等は、ターゲットの材質やレーザー光Lの照射強度等によって適宜変更することができる。また、レーザーアブレーション時の温度条件は特に制限されないが、室温(25℃)程度を行うことが好ましい。
以上、本発明の液相レーザーアブレーション装置及び液相レーザーアブレーション方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の液相レーザーアブレーション装置及び液相レーザーアブレーション方法は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態の液相レーザーアブレーション装置は、密封容器13内に処理容器14が収容されたものであるが、本発明の液相レーザーアブレーション装置は、レーザー光を発生させるためのレーザー発振器と、前記レーザー光を導入するための窓を備える密封容器と、前記密封容器内に配置されるターゲットと、前記密封容器に接続された真空引き装置と、前記密封容器に接続された不活性ガス又は窒素ガスを導入するためのガス導入装置とを備えていればよく、処理容器14は必ずしも別途用いなくてもよい。このように処理容器14を用いない場合には、密封容器13に処理容器としての機能を併せ持たせればよく、溶媒を密封容器に直接保持させる以外は、上記実施形態と同様の方法を採用することで、安定したレーザーアブレーションを施すことが可能である。なお、本発明においては、生成したナノ粒子を回収したり、容器に付着した汚れに起因する不純物の混入を十分に防止するという観点からは、上記実施形態のように、密封容器13内に収容された処理容器14を更に備えていることが好ましい。また、上記実施形態の液相レーザーアブレーション装置においては、前記装置中に溶媒が保持された状態のものを説明したが、本発明の液相レーザーアブレーション装置においては、溶媒は使用時に注入すればよい。
また、上記実施形態においては、レーザー光Lがターゲットに対して略水平方向から照射されるように構成されているが、本発明においては、レーザー光の照射方向は特に制限されず、垂直方向からレーザー光を照射してもよい。本発明においては、真空引きと不活性ガス又は窒素ガスの導入により、レーザー照射時に液相内に気泡が発生することが十分に抑制されるため、レーザー照射の方向に関係なく、十分に安定した条件でのレーザーアブレーションが可能となる。なお、このようなレーザー光の照射方向としては、気泡が発生した場合に、より十分に安定したレーザーアブレーションを行うことが可能となるという観点から、略水平方向からレーザー光を照射することが好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
上述の図1に示す液相レーザーアブレーション装置を用いて、液相中でレーザーアブレーションを行った。なお、レーザー発振器10としては、Nd−YAGレーザー装置を用い、集光レンズ12としては、焦点距離100mmのレンズを用いた。また、密封容器13としては、株式会社トヨタマックス製の容積12000ccの容器を用い、前記容器の側面にレーザー入射窓(直径50mm、厚さ5mmの石英板)を接着した。更に、処理容器14としては、ポリプロピレンで製造した容積1000ccの容器を用い、前記容器の開放された端面にレーザー入射窓(直径50mm、厚さ5mmの石英板)を接着した。また、ターゲット駆動装置18としてはパルスモータを用い、ターゲット16としては厚さ3mm、直径40mmのNiTi合金を用いた。また、このような液相レーザーアブレーション装置においては、処理容器14の側面に取り付けたパルスモータの軸を接続器(ターゲット支持体17)によって伸ばしてターゲット16とパルスモータとを接続し、ターゲット16を処理容器14内で回転することが可能な状態とした。また、ターゲット16は、その一部が溶媒15内に浸漬されるようにして保持した。また、レーザー照射時においては、前記パルスモータにより、回転速度を1回転/分としてターゲット16を回転させた。また、不活性ガスとしては、アルゴンガスを用い、溶媒15としては350ccのエタノール(20℃での蒸気圧43.9Torr)を用いた。
また、レーザーアブレーションに際しては、先ず、密封容器13内を真空装置19(真空ポンプ)により、圧力が10−3Torrになるまで真空引きした後、前記密封容器13内にアルゴンガスを導入し、密封容器13内の圧力を40Torrに制御した。そして、このようなアルゴンガス雰囲気下において、前記Nd−YAGレーザー装置からレーザー光Lを出射し、焦点距離100mmのレンズ(集光レンズ12)を用いて、前記Nd−YAGレーザー装置から発せられたレーザー光に対して2倍の高調波(エネルギー200mJ/パルス、波長532nm、パルス幅7ns、繰返し10Hz)を有するレーザー光Lを、ターゲット16に対して側面方向(略水平方向)から集光照射した。なお、このようなレーザー光の照射に際しては、集光レンズ12により、溶媒15内のターゲット16上でのレーザー光Lの集光サイズが、直径6mmとなるようにした。また、このようなレーザー光Lの照射は、60分間行った。
このような液相レーザーアブレーションの結果、レーザー照射時に、溶媒15中に発生した気泡の数は、2分から5分の間に1粒程度であり、ほとんど気泡が発生しないことが確認された。また、このような液相レーザーアブレーションにおいては、レーザー照射部に安定してプラズマが発生していることが確認された。更に、レーザー照射後の溶媒15(エタノール)は薄い紫色に着色していた。そして、この溶媒15を濃縮したところ、溶媒中に主として数nmの粒子が凝集した数10nmの粒子が形成されていたことが確認された。
(比較例1)
図2に示す比較のための液相レーザーアブレーション装置を用いて、比較のための液相中でレーザーアブレーションを行った。なお、装置構成は以下の通りである。すなわち、レーザー発振器10及び集光レンズ12としては、実施例1と同様のものを用いた。また、処理容器14としては、容積1000ccのフラスコを用い、前記フラスコ内に、溶媒15として600ccのエタノールを入れた。また、ターゲット16としては、厚さ3mm、直径40mmのNiTi合金のターゲットを用い、前記フラスコの底に固定した。また、前記フラスコは回転台30の上に設置し、回転台30は、実施例1と同様のターゲット駆動装置18(パルスモータ)に接続させた。なお、レーザー照射時には、前記フラスコの回転速度が1回転/分となるようにして回転させた。
また、レーザーアブレーションに際しては、エタノールがレーザーアブレーション時に引火しないように、フラスコ内のエタノール液面にアルゴンガスを吹きつけた。そして、前記Nd−YAGレーザー装置からレーザー光Lを出射し、焦点距離100mmのレンズを用いて、Nd−YAGレーザー装置から発せられたレーザー光に対して2倍の高調波(エネルギー200mJ/パルス、波長532nm、パルス幅7ns、繰返し10Hz)を有するレーザー光を、ターゲットに対して上面方向(略垂直方向)から集光照射した。なお、このようなレーザー光の照射に際しては、集光レンズ12によりターゲット16上でのレーザー光Lの集光サイズが、直径6mmとなるようにした。また、このようなレーザー光Lの照射は、60分間行った。
このような液相レーザーアブレーションの結果、レーザー照射時には、溶媒15中に沸騰したように連続的に気泡が発生することが確認された。また、レーザー光がその気泡を介してターゲットに照射されるため、レーザー光の集光条件が一定でなくなっていた。更に、レーザー照射後のエタノールはほとんど着色しておらず、得られる飛散粒子の量も少ないことが確認された。
(比較例2)
実施例1で用いられた装置を用い、アルゴンガスを導入せずに圧力10−3Torrの真空条件下でレーザー光Lを照射した以外は実施例1と同様にして、比較のための液相レーザーアブレーションを行った。
このような液相レーザーアブレーションの結果、レーザー照射時には大気圧下での場合よりも激しく沸騰したように連続的に気泡が発生し、レーザー照射後のエタノールは全く着色していないことが確認された。このような結果から、真空条件下でのレーザーアブレーションにおいては、溶媒15(エタノール)中には飛散粒子がほとんど形成されないことが確認された。
(比較例3)
実施例1で用いられた装置を用い、真空引きを行わず、アルゴンガスを導入して密封容器内の気体を全てアルゴンガスと置換し、大気圧(1気圧)下、アルゴンガス雰囲気下でレーザー光Lを照射した以外は実施例1と同様にして、比較のための液相レーザーアブレーションを行った。
このような液相レーザーアブレーションの結果、レーザー照射時には連続した(1秒間に数10個)気泡の発生が確認され、60分間のレーザーアブレーションでもエタノールの着色は確認されなかった。
このような結果から明らかなように、本発明の液相レーザーアブレーション装置及び本発明の液相レーザーアブレーション方法(実施例1)によれば、安定したレーザー照射条件でアブレーションを行うことができ、ナノメートルサイズの粒子を安定して形成できることが分かった。また、燃焼性の溶媒を用いても安全にレーザーアブレーションが可能であることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、レーザー照射時に液相中に気泡が発生することを十分に防止することができ、安定したレーザー照射条件でアブレーションを行うことを可能とする液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法を提供することが可能となる。従って、本発明の液相レーザーアブレーション装置及びそれを用いた液相レーザーアブレーション方法は、電子素子、光素子、記録媒体、電池、触媒等に用いるナノメートルサイズの微粒子を製造するための装置及び方法として特に有用である。
本発明の液相レーザーアブレーション装置の好適な一実施形態の構成を示す概略縦断面図である。 比較例1で用いた液相レーザーアブレーション装置の構成を示す概略縦断面図である。
符号の説明
10…レーザー発振器、11…反射板、12…集光レンズ、13…密封容器、13A…窓、14…処理容器、14A…窓、15…溶媒、16…ターゲット、17…ターゲット支持体、18…ターゲット駆動装置、19…真空引き装置、20…ガス導入装置、30…回転台、L…レーザー光。

Claims (5)

  1. 溶媒中に保持されたターゲットに対してレーザー光を照射して液相中でレーザーアブレーションを行うための液相レーザーアブレーション装置であって、
    レーザー光を発生させるためのレーザー発振器と、
    前記レーザー光を導入するための窓を備える密封容器と、
    前記密封容器内に配置されるターゲットと、
    前記密封容器に接続された真空引き装置と、
    前記密封容器に接続された不活性ガス又は窒素ガスを導入するためのガス導入装置と、
    を備えることを特徴とする液相レーザーアブレーション装置。
  2. 前記密封容器内に、溶媒を保持するための処理容器が収容されていることを特徴とする請求項1に記載の液相レーザーアブレーション装置。
  3. レーザー光を発生させるためのレーザー発振器と、前記レーザー光を導入するための窓を備える密封容器と、溶媒と、前記密封容器内に配置されるターゲットと、前記密封容器に接続された真空引き装置と、前記密封容器に接続された不活性ガス又は窒素ガスを導入するためのガス導入装置とを備える液相レーザーアブレーション装置を用い、
    前記密封容器内を真空引きした後に、前記密封容器内に不活性ガス又は窒素ガスを導入し、不活性ガス又は窒素ガス雰囲気下において、ターゲットに対してレーザー光を照射して液相中でレーザーアブレーションすることを特徴とする液相レーザーアブレーション方法。
  4. 前記密封容器内に、溶媒を保持するための処理容器が収容されていることを特徴とする請求項3に記載の液相レーザーアブレーション方法。
  5. 前記密封容器内の圧力を、前記溶媒の25℃における蒸気圧の0.1〜10倍に制御してレーザーアブレーションすることを特徴とする請求項3又は4に記載の液相レーザーアブレーション方法。
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