JP4870276B2 - アポトーシス抑制作用を有するrkb−3384物質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アポトーシス抑制剤などの医薬の有効成分として有用な新規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1970年代に提案された細胞死の一形態であるアポトーシスは、ネクローシスとは異なり、ある特定の細胞内情報伝達系を介して誘導される細胞死である〔セル(Cell), 88, 355-365 (1997)〕。アポトーシスは多くの疾患において病態に関与しており、アポトーシスを制御することがそれらの治療法の進歩に寄与する可能性が高い。例えば、正常のアポトーシス制御機構が逸脱して細胞死が亢進することにより、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などを惹起すると考えられている〔サイエンス(Science), 267, 1456-1462 (1995)〕。
【0003】
アポトーシスを誘導する生理的な刺激としては、Fas/Apo-1/CD95のリガンドや、Fas抗体、TNF(腫瘍壊死因子)などが挙げられる〔セル(Cell), 88, 355-365 (1997)〕。アポトーシスを抑制する化合物としては、システインプロテアーゼ阻害剤として各種ペプチド性カスパーゼ阻害剤などが知られているがペプチドであるが故の不安定性、活性の強さの点で問題を抱えている。
【0004】
一方、現在、臨床的に使用されている抗癌剤は、その殺細胞効果により一時的に癌の退縮や消失を達成できるものの、正常細胞にも作用して重篤な副作用を引き起こすため、その使用には大きな制約がある。また、胃癌、大腸癌、膵臓癌などには抗癌剤がほとんど無効な自然耐性癌も多く、あるいは最初は奏効した抗癌剤が効かない獲得耐性癌細胞が出現するという深刻な問題がある。
【0005】
近年、固形癌がある一定以上より大きくなるためのメカニズムとして、癌細胞に栄養や酸素を供給するためのいわゆる腫瘍血管新生が注目されている。この腫瘍血管新生を阻害することにより癌の増殖を押さえる「腫瘍血管新生阻害療法」という概念が確立しつつある[ヨロピアン ジャーナル オブ キャンサー(Eur. J. Cancer), 32A, 2534-2539 (1996)]。すでに多数の化合物が抗腫瘍剤として実用化されているが、血管新生阻害剤は従来の抗癌剤にない利点をもっているため、臨床での1日も早い使用が待ち望まれている。現在、いくつかの血管新生阻害剤が開発研究されてはいるが、リード化合物となりうる新しい化合物は不断の希求と考えられる。
【0006】
また、血管内皮細胞の癌組織へのリクルート機構は、白血球などが炎症部位にリクルートされる機構に似ている点が多いことから、血管内皮細胞の走化性を阻害する薬剤は、血管新生阻害剤としてだけではなく、抗炎症剤としての可能性も期待される[イミュニティー(Immunity), 12, 121-127 (2000)]。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、医薬の有効成分として有用な新規化合物を提供することにある。より具体的には、血管新生を阻害することにより、又は細胞周期を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮する化合物を提供することが本発明の課題である。また、本発明の別の課題は、アポトーシス抑制作用を有し、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎などの疾患の予防及び/又は治療に有用な化合物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、新たに採取した微生物BAUA3384株の培養液に含まれる新規化合物が血管新生抑制活性、アポトーシス抑制活性、及び細胞周期阻害活性を有しており、医薬の有効成分として有用であることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の式(I):
【化4】
〔式中、R1はヒドロキシ基、- CH2-O-CO-R3(式中、R3はアルキル基、アリール基、又はアルキルアミノ基を示す)、-CH2-O-R4(式中、R4は水素原子、アルキル基、又はアルケニル基を示す)、-CH2=N-O-R5(R5は水素原子又はアルキル基を示す)、又は-CH2=CH-R6(R6はアルキルオキシカルボニル基、ホルミル基、又はアルキルオキシカルボニルアルケニル基を示す)を示し、R2は水素原子を示すが、R1及びR2が一緒になってオキソ基となってもよい〕で表される化合物を提供するものである。
【0010】
この発明の好ましい態様により、下記の式(II):
【化5】
で表される化合物、及び下記の式(III):
【化6】
で表される化合物が提供される。
【0011】
さらに別の観点からは、上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物を有効成分として含む医薬が本発明により提供される。この医薬は血管新生阻害剤、アポトーシス抑制剤、又は細胞周期阻害剤として有用であり、抗腫瘍剤又はアポトーシスの異常亢進が関与する疾患の予防及び/又は治療のための医薬として用いることができる。より具体的には、本発明の医薬は、例えば、抗腫瘍剤のほか、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病およびその合併症、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などの疾患の予防及び/又は治療のための医薬として有用である。
【0012】
さらに別の観点からは、上記の医薬の製造のための上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物の使用;血管新生の阻害方法であって、上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;アポトーシスの調節方法、好ましくはアポトーシスの抑制方法であって、上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;悪性腫瘍の治療方法であって、上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
【0013】
また、本発明により、アポトーシスの異常亢進が関与する疾患の予防及び/又は治療方法であって、上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;過度の炎症の治療方法であって、上記の式(I)ないし一般式(III)で表される化合物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;血管内皮細胞の走化性の調節方法であって、上記の式(I)ないし式(III)で表される化合物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;及び細胞周期進行の調節方法であって、上記の式(I)又は式(III)で表される化合物の有効量を細胞に接触させる行程を含む方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本明細書において、「アルキル基」は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。アルキル基としては、例えば、炭素数1ないし6個のアルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1ないし6個のアルキル基を用いることができる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを用いることができる。アルキル部分を有する他の置換基(例えばアルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基など)のアルキル部分についても同様である。
【0015】
アリール基は単環又は縮合環のいずれでもよく、例えばフェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。アルケニル基に含まれる二重結合の数は特に限定されないが、例えば1ないし3個程度であり、好ましくは1個又は2個である。アルケニル部分を含むアルキルオキシカルボニルアルケニル基のアルケニル部分についても同様である。アルキルアミノ基はモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基のいずれでもよく、ジアルキルアミノ基に存在する2つのアルキル基は同一でも異なっていてもよい。
【0016】
アルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、-CH2-O-R4で表される基、-CH2=N-O-R5で表される基、又は-CH2=CH-R6で表される基は1個又は2個以上の置換基を有していてもよい。これらの基に存在する置換基の個数、存在位置、種類は特に限定されない。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基、オキソ基などを例示することができる。R1はヒドロキシメチル基であることが好ましい。また、R1及びR2が一緒になってオキソ基を示す場合も好ましい。
【0017】
式(I)ないし式(III)で表される化合物は少なくとも1個の不斉炭素を有しており、置換基の種類により2個以上の不斉炭素を有する場合がある。こ(れら)の不斉炭素に基づく光学異性体又はジアステレオマーなどの立体異性体が存在するが、本発明の範囲には純粋な形態の立体異性体のほか、任意の立体異性体の混合物又はラセミ体などが包含される。また、本発明の化合物は5個のオレフィン性二重結合を有しており、さらに二重結合を有する場合もある。それぞれの二重結合に基く幾何異性体が存在するが、純粋な形態の幾何異性体のほか、任意の幾何異性体の混合物も本発明の範囲に包含される。さらに、本発明の化合物は互変異性体として存在する可能性もあるが、任意の互変異性体又はそれらの混合物も本発明の範囲に包含される。本発明の化合物は任意の結晶形として存在することができ、水和物又は溶媒和物として存在する場合もある。これらの物質がいずれも本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。
【0018】
式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物は上記の式(II)および式(III)で示される化合物である。本明細書において、式(II)で表される化合物を「RKB-3384A」、式(III)で表される化合物を「RKB-3384B」と呼ぶ場合がある。なお、この化合物は立体異性体(又は幾何異性体)が一部平衡状態にあり、上記の式(II)および(III)はその立体異性体の主要な1つを特定したものである。
【0019】
本発明の式(I)ないし式(III)で表される化合物は微生物の培養物から分離・採取することができ、あるいは微生物の培養物から分離・採取された本発明の化合物を出発原料として化学的修飾を施す方法により製造することができる。本発明の化合物を産生しうる微生物としてはアスペルギルス属に属するBAUA-3384株を例示することができる。この微生物を通常用いられる培地組成及び培養条件で培養し、培養物に含まれる本発明の化合物を分離・採取することができる。本菌株は工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM P-18283として寄託されている。
【0020】
本発明の化合物の製造用培地としては、炭素源、窒素源、および無機塩を適当に含有するものであれば合成培地または天然培地のいずれでも好適に用いることができる。必要に応じて、ビタミン類またはその他栄養物質を適宜加えてもよい。
炭素源としては、例えば、グルコース、マルトース、フラクトース、シュークロース、デンプン等の糖類、グリセロール、マンニトール等のアルコール類、グリシン、アラニン、アスパラギン等のアミノ酸類、大豆油、オリーブ油等の油脂類等の一般的な炭素源より微生物の資化性を考慮して1種または2種以上を適宜選択して用いればよい。窒素源としては、大豆粉、コーンスチープリカー、ビーフエキス、ペプトン、酵母エキス、アミノ酸混合物、魚粉等の有機含窒素化合物またはアンモニウム塩、硝酸塩等の無機窒素化合物が挙げられ、微生物の資化性を考慮して1種または2種以上を適宜選択して用いればよい。無機塩としては、例えば炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化コバルト、各種リン酸塩を必要に応じて添加すればよい。また、消泡剤、例えば植物脂、ポリプロピレンアルコール等を必要に応じて添加することができる。
【0021】
培養温度は、微生物が成育し、かつ本発明の化合物が効率的に産生される範囲で適宜変更できるが、好ましくは10ないし32℃であり、さらに好ましくは20ないし25℃である。培養開始時のpHは6ないし8付近が望ましく、培養時間は通常日〜数週間程度である。一般的には、本発明の化合物の生産量が採取可能な量に達したとき、好ましくは最高に達したときに培養を終了すればよい。培養法としては、固層培養、通常攪拌培養等の通常用いられる方法をいずれも好適に用いうる。
【0022】
培養終了後、培養液から本発明の化合物を分離・採取するには、一般に微生物代謝産物を採取するのに通常用いられる手段を適宜利用して行うことができる。例えば、各種イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂などを用いた分離方法、ゲル濾過クロマトグラフィー、活性炭、アルミナ若しくはシリカゲル等の吸着剤によるクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを用いた分離方法、あるいは結晶化、減圧濃縮、又は凍結乾燥の手段を単独でまたは適宜組み合わせて、あるいは反復して用いることが可能である。
【0023】
培養液から分離・採取された本発明の化合物(例えばRKB-3384A又はRKB-3384Bなど)を出発原料として用い、当業者に周知の官能基変換を施すことによって、R1が-CH2-O-CO-R3(R3は上記のとおりである)、-CH2-O-R4(R4はアルキル基又はアルケニル基である)、-CH2=N-O-R5(R5は上記のとおりである)、又は-CH2=CH-R6(R6は上記のとおりである)である化合物を製造することができる。
【0024】
例えば、R1が-CH2-O-CO-R3である化合物はR1がヒドロキシメチル基である化合物からアシル化剤(アセチルクロリドなど)などを用いた通常のエステル化反応を行うことにより製造できる。R1が-CH2-O-R4(R4はアルキル基又はアルケニル基である)である化合物はR1がヒドロキシメチル基である化合物からハロゲン化アルキル(ヨウ化メチルなど)又はハロゲン化アリール(臭化プロパルギルなど)通常のアルキル化又はアルケニル化反応を行うことにより製造できる。R1が-CH2=N-O-R5(R5は上記のとおりである)である化合物は、R1がヒドロキシメチル基である化合物を通常の酸化反応に付してR1がホルミル基である化合物を製造した後、ヒドロキシルアミンなどを反応させることにより製造できる。また、R1が-CH2=CH-R6(R6は上記のとおりである)である化合物は、R1がヒドロキシメチル基である化合物を通常の酸化反応に付してR1がホルミル基である化合物を製造した後、通常のWittig反応に付することにより製造することができる。上記の反応において、反応条件、反応試薬などは当業者が適宜選択可能である。
【0025】
本発明の化合物は、後述の試験例に示すように血管新生抑制活性、アポトーシス抑制活性、及び細胞周期阻害活性を有しており、抗腫瘍剤のほか、アポトーシスの異常亢進が関与する疾患の予防及び/又は治療のための医薬、又は過度の血管新生に関連する疾患の予防及び/又は治療のための医薬として有用である。正常のアポトーシス制御機構が逸脱して細胞死が亢進している疾患として、例えば、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などを例示することができる。また、過度の血管新生に関連する疾患としては、悪性腫瘍のほか、糖尿病血管合併症(例えば糖尿病性網膜症)などを例示することができる。
【0026】
本発明の医薬は、使用目的にあわせて投与方法、剤型、又は投与量を適宜決定することが可能である。本発明の医薬の投与形態は、経口投与でも非経口投与でもよい。本発明の医薬の形態は特に限定されないが、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤、又は注射剤、点滴剤、若しくは坐剤等の非経口投与剤を挙げることができる。これらの製剤は、賦形剤、結合剤等の製薬上許容される添加剤を用いて既知の方法で医薬組成物として調製することができる。本発明の化合物を有効成分として含む医薬の投与量は、患者の年齢、体重、感受性、症状の程度などにより異なるが、通常、効果的な量は成人1日あたり0.1 mg〜1 g程度であり、1日一回又は数回にわけて投与することも可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
【0027】
上記式(I)ないし式(III)で表される本発明の化合物の用途は上記の医薬としての用途に限定されることはない。例えば、本発明の化合物を試薬として使用する場合には、有機溶剤又は含水有機溶剤に溶解して用いることができる。例えば、各種培養細胞系へ直接投与すると細胞成長を抑制することができる。使用可能な有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、又はジメチルスルホキシド等を挙げることができる。試薬の形態は特に限定されないが、例えば、粉末などの固形剤、又は有機溶剤若しくは含水有機溶剤に溶解した液体剤などを挙げることができる。通常、上記の化合物を試薬として用いて細胞成長抑制作用を発揮させるための効果的な使用量は、0.1〜100 μg/mlであるが、適切な使用量は培養細胞系の種類や使用目的により異なり、当業者が適宜選択可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
実施例1
グルコース 1.0%、可溶性デンプン 2.0%、大豆粉 1.5%、麦芽抽出液 0.5%、野菜抽出液10%、リン酸第2カリウム 0.05%、ポテトデキストロース 2.6%、硫酸マグネシウム 0.05%からなる組成の培地に、アスペルギルス属に属するBAUA-3384株を接種して28℃で48時間振盪培養を行った。この培養液140 mlを同組成の培地15リットルに接種し、28℃で96時間振盪培養を行った。
【0029】
上記培養液を遠心分離器で菌体と上清に分離し、上清をpH6.8に調整し、15リットルの酢酸エチルで抽出した。抽出後、すべての酢酸エチルを合わせて減圧濃縮し、褐色のシロップ10 gを得た。このシロップをクロロホルム10 mlに溶解し、クロロホルムで充填したシリカゲルカラム(直径4 cm、長さ60 cm)に浸潤させた。最初に、クロロホルム500mlで溶出した後、割合配合を順次変えたクロロホルム-メタノール溶液(100:1, 50:1, 20:1, 10:1, 5:1, 1:1)各500 mlずつで溶出した。
【0030】
本発明の化合物RKB-3384Aは、クロロホルム-メタノール溶液(100:1)の画分に溶出した。この分画を減圧濃縮することにより、0.95 gの褐色シロップを得た。次に、この褐色シロップ0.95 gをメタノール1.9 mlに溶解し、数回に分けて逆相ODSカラム(直径2 cm、長さ 25 cm、PEGASIL ODS、株式会社センシュー科学製)を用いて、高速液体クロマトグラフィーによる分取(アセトニトリル:水=2:8→アセトニトリル:水=10:0;直線的グラジエント、流速9.0 ml/分)を行い純粋な淡黄色アモルファス状物質RKB-3384A(20 mg)を得た。
【0031】
本発明の化合物RKB-3384Bは、クロロホルム-メタノール溶液(10:1)の画分に溶出した。この分画を減圧濃縮することにより、3.2 gの褐色シロップを得た。次に、この褐色シロップ3.2 gをメタノール3.2 mlに溶解し、数回に分けて逆相ODSカラム(直径2 cm、長さ 25 cm、PEGASIL ODS、株式会社センシュー科学製)を用いて、高速液体クロマトグラフィーによる分取(アセトニトリル:水=4.5:5.5→アセトニトリル:水=6.5:3.5;直線的グラジエント、流速9.0 ml/分)を行い純粋な淡黄色アモルファス状物質RKB-3384B(50 mg)を得た。
【0032】
RKB-3384A
NMRデータを表1に示す(溶媒:重クロロホルム、δppm、内部標準: TMS、13C:100 MHz、1H:400 MHz)。
性状:淡黄色アモルファス状
分子式:C20H23NO5
比旋光度:-14.0 (c=0.2, メタノール, 30℃)
高分解能質量分析 (HR-EIMS) : (M+)
実験値 (m/z): 357.1555
理論値 (m/z):357.1576
UV λmax nm (メタノール) (ε):360 (20350)
IR λmax (neat) cm-1:3275, 1720, 1700, 1650, 1580, 1460, 1250, 1180
Rf値(シリカゲル60 F254、メルク社製):0.61 (溶媒; CHCl3:メタノール=10:1)
呈色反応(陽性):10%硫酸、ヨウ素
【0033】
【化7】
【0034】
【表1】
【0035】
RKB-3384B
NMRデータを表2に示す(溶媒:重クロロホルム、δppm、内部標準: TMS、13C:125 MHz、1H:500 MHz)。
性状:淡黄色アモルファス状
分子式:C21H27NO5
比旋光度:+20.0 (c=0.40, メタノール, 21℃)
高分解能質量分析 (HR-FAB, pos.) : (M+H)+
実験値 (m/z):374.1946
理論値 (m/z):374.1967
UV λmax nm (メタノール) (ε):272 (7270), 360 (56930)
IR λmax (neat) cm-1:3475, 1715, 1700, 1680, 1650, 1650, 1585, 1260
Rf値(シリカゲル60 F254、メルク社製):0.42 (溶媒; CHCl3:メタノール=10:1)
呈色反応(陽性):10%硫酸、ヨウ素
【0036】
【化8】
【0037】
【表2】
【0038】
試験例1:RKB-3384AおよびRKB-3384Bによる血管内皮細胞の走化性の阻害
HuMedia-EG2 (KURABO)培地を用いて培養維持されたHUVEC細胞(正常ヒトさい帯静脈血管内皮細胞)をケモタキセルチャンバーを用いた3次元培養の上層にまいた。下層に内皮細胞増殖因子(VEGF)を含むHuMedia-EG2を充填させることでHUVEC細胞の走化性を誘導した。RKB-3384A及びRKB-3384Bは、それぞれ10〜30 μg/mlの濃度でVEGFによって誘導されるHUVEC細胞の走化性を抑制した。この結果は、本発明の上記化合物が抗VEGF作用を有しており、血管新生阻害剤、抗腫瘍剤、及び抗炎症剤などの医薬として有効であることを示している。
【0039】
試験例2:RKB-3384AおよびRKB-3384BによるFas抗体誘導アポトーシスの抑制活性
Fasを発現している成人T細胞白血病細胞株Jurkat細胞をFas抗体感受性細胞として用いた。Jurkat細胞は、10%子牛血清を含むRPMI培地にて5%炭酸ガスと水蒸気を飽和させた培養器内で培養した。対数増殖期にあるJurkat細胞に一連の希釈系列のRKB-3384A又はRKB-3384Bを添加し、Fas抗体CH-11(株式会社医学生物学研究所製, 100 ng/ml)存在下で6時間培養し、細胞の生存率をMTT法により検定した。
生存率は以下の式に従い算出した。
生存率(%)=[[(抗Fas抗体および化合物の存在下における吸光度)−(抗Fas抗体存在下および化合物の非存在下における吸光度)]/[( 抗Fas抗体および化合物の非存在下における吸光度)−(抗Fas抗体存在下および化合物の非存在下における吸光度)]]×100
【0040】
Fas抗体により誘導されるアポトーシスを50%阻害する濃度は、RKB-3384A及びRKB-3384Bともに1〜10 μg/mlであった。この結果は、本発明の上記化合物が抗アポトーシス作用を有しており、アポトーシスの異常亢進が関与する炎症性疾患の予防及び/又は治療薬として有効であることを示している。
【0041】
試験例3:RKB-3384A及びRKB-3384Bの細胞周期阻害活性
癌抑制遺伝子p53を欠損しているヒト肺癌細胞H1299細胞におけるRKB-3384A及びRKB-3384Bの細胞周期阻害活性を測定した。H1299細胞は10%子牛血清を含むDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)培地にて5%炭酸ガスと水蒸気を飽和させた培養器内で培養した。対数増殖期にあるH1299細胞に一連の希釈系列のRKB-3384A 又はRKB-3384Bを添加し24時間後にフローサイトメーターによりH1299細胞の細胞周期の進行を解析した。RKB-3384A及びRKB-3384Bはともに約30 μg/mlの濃度でG1期に細胞周期を停止させた。この結果は、本発明の上記化合物が細胞周期を阻害する作用を有しており、抗腫瘍剤として有効であることを示している。
【0042】
製剤例1:注射・点滴剤
RKB-3384A又はRKB-3384B 10 mgを含有するように、粉末ブドウ糖5 gを加えてバイアルに無菌的に分配して密封し、窒素又はヘリウムなどの不活性ガスを封入して冷暗所に保存する。使用前にエタノールに溶解し、0.85%生理的食塩水100 mlを添加して静脈内投与用製剤とし、一日あたり10〜100 mlを症状に応じて静脈内注射又は点滴で投与する。
【0043】
製剤例2:顆粒剤
RKB-3384A又はRKB-3384B 1 g、乳糖98 g、及びヒドロキシプロピルセルロース1 gをよく混和した後、定法にしたがって粒状に成形する。得られた造粒物をよく乾燥して、瓶やヒートシール包装などに適した顆粒剤を製造する。この顆粒剤は、一日あたり100〜1000 mgを症状に応じて経口投与できる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の化合物は、アポトーシス抑制活性などを有しており、抗腫瘍剤又はアポトーシスの異常亢進が関与する疾患の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。
Claims (9)
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物を有効成分として含む医薬。
- 血管新生阻害剤である請求項4に記載の医薬。
- アポトーシス抑制剤である請求項4に記載の医薬。
- 細胞周期阻害剤である請求項4に記載の医薬。
- 抗腫瘍剤である請求項4に記載の医薬。
- アポトーシスの異常亢進が関与する疾患の予防及び/又は治療のための請求項4に記載の医薬。
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