JP4869805B2 - 地盤の改良工法 - Google Patents

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本発明は、地盤の改良工法に係り、好適には液状化対策が必要な地盤の改良工法に関するものである。
地盤の液状化は、含水率の高い地盤が地震により衝撃や振動を受けて変形することに伴い、土粒子間に飽和状態で存在している間隙水の水圧が急激に上昇し、その結果、土粒子間の摩擦抵抗が消失して地盤があたかも液体のように挙動して耐力を失ってしまう現象である。
液状化を防止するためには、地盤強度を高める、あるいは地盤に細粒分を注入するといった手法が知られているが、最近においては地下水の揚水による液状化防止方法も有効であることが判明している。しかし、地下水位を常に低く維持するために地下水を常時連続的にしかも恒久的に揚水し続けなければならないから、それに要する運転費と維持管理費が嵩む問題がある。
そこで、本出願人は、地下水を揚水し続けて地下水位を常に低く維持するのではなく、地下水位を一時的な低下により砂地盤に過圧密履歴(プレローディング)を与えるとともに、地盤の飽和度(地盤中の地下水の体積/地盤の間隙体積)を低下させ、それによって液状化に対する地盤強度を高めるという液状化防止方法を提案した(特許文献1)。
他方、特許文献2には、液状化防止対策地盤に圧縮気体を注入する方法が開示されている。
特許第3678828号公報 特許第3757216号公報
しかし、特許文献2のものは、液状化防止対策地盤に圧縮気体を注入することで飽和度を低下させるものであるが、単に圧縮気体を注入するのでは、飽和度を低下させるのに限界があり、しかも、地盤を隆起させる虞れが当然に予想される。
したがって、本発明が解決しようとする主たる課題は、地盤の広範囲な対象領域を均等的に飽和度を低下させて地盤の改良を行うことができる方法を提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
可撓性スリーブで包被された注出孔が深さ方向に間隔を置いて複数形成された揚水井から液状化層の揚水を行って液状化層に対して過圧密履歴を与え、
注入水の注入段階において、この揚水井中に注入口を有する注入内管を挿入し軸方向に移動して注出孔の位置を選択しながら、直径が100μm未満の超微細気泡を多数有する注入水を、地盤強度の改善を図る対象領域に注入することを特徴とする地盤の改良工法。
(作用効果)
本発明では、直径が100μm未満の超微細気泡を多数有する水を、地盤強度の改善を図る対象領域に注入する。
注入によって、注入した水は地盤、たとえば液状化層中の間隙を流動する過程で、砂粒子に超微細気泡が吸着され、残存するようになる。この現象は、次の要因であると考えられる。すなわち、超微細気泡は高圧力下において水の表面張力によって小さくなっているが、圧力を解放された超微細気泡が地下水中で漂っている過程で砂粒子表面に付着することで、気泡の曲率半径が小さくなり、気泡内圧が減少し、気泡同士が結合することにより、気泡が析出するものと考えられる。
この超微細気泡の砂粒子表面への付着及び気泡同士の結合によって、液状化地盤の飽和度が低下する。その結果、液状化に対する地盤強度を高めることができる。
特許文献2のものは、液状化地盤に対し空気を注入することで、液状化地盤の飽和度を低下させるものである。しかし、空気の注入では、注入領域が注入管の出口近傍にとどまりがちであり、遠方までの改良は困難であり、地盤を乱したり、あるいは不透気層に空気が溜り、気泡の径が大きくなり地表側に上昇してしまい、均質的な改良は難しい。
これに対し、本発明では、超微細気泡を多数有する注入水を注入するので、注入水が超微細気泡を伴って砂粒子間を抜けながら遠方まで到達する。そして、気泡は超微細であるために、その到達距離が長いものとなるので、たとえば大直径のタンク下部の改良などの場合に特に有効なものとなる。
この一方、可撓性スリーブで包被された注出孔が深さ方向に間隔を置いて複数形成された揚水井戸である揚水井から液状化層の揚水を行って液状化層に対して過圧密履歴を与える他、注入水の注入段階において、この揚水井中に注入口を有する注入内管を挿入し軸方向に移動して注出孔の位置を選択するという構成をも有している。
従って、液状化層に対して過圧密履歴を与えることで、地下水位を一時的に低下させて地盤の飽和度を低下させるのに伴い、液状化に対する地盤強度を高めることができると共に、この揚水井を用いて注入水を注入できるようになる。
〔請求項2記載の発明〕
可撓性スリーブで包被された注出孔が深さ方向に間隔を置いて複数形成された揚水井から液状化層の揚水を行って液状化層に対して過圧密履歴を与え、
容器内の水中に気泡発生ノズルを臨ませ、かつ、容器内を加圧状態に保持した状態で、前記気泡発生ノズルから気泡を発生させて得た、直径が100μm未満の多数の超微細気泡が水中に分散した水の注入段階において、この揚水井中に注入口を有する注入内管を挿入し軸方向に移動して注出孔の位置を選択しながら、地盤強度の改善を図る対象領域に注入することを特徴とする地盤の改良工法。
(作用効果)
容器内を加圧状態に保持した状態で、気泡発生ノズルから気泡を発生させると、微細気泡よりさらに細かい超微細気泡を容易に得ることが知見された。実際、透明容器内で気泡径がおよそ20〜100μmの微細気泡を発生させた場合には、白濁状態であるのに対し、容器内を加圧状態に保持した状態で、気泡発生ノズルから気泡を発生させて得た、超微細気泡の場合には白濁はせず、透明である。
〔請求項3記載の発明〕
対象地盤に設けた揚水井戸によって地下水を揚水し地下水位を低下させ過圧密を生じさせた後、前記注入水を注入する請求項1または2記載の地盤の改良工法。
(作用効果)
本出願人は、地下水を揚水し続けて地下水位を常に低く維持するのではなく、地下水位を一時的に低下させて地盤の飽和度を低下させ、それによって液状化に対する地盤強度を高めるという液状化防止方法を提案した(特許文献1)。この方法は、地下水位を常に低く維持するために地下水を常時連続的にしかも恒久的に揚水し続けなければならないために伴う、運転費と維持管理費が嵩む問題を解消できる利点がある。
請求項3の発明に従って、対象地盤に設けた揚水井戸によって地下水を揚水し地下水位を低下させ過圧密を生じさせ、その後に、地下水位を元の地下水位状態に自然復旧させた時点で、あるいは復旧過程で、本発明の注入水を注入すると、超微細気泡を対象領域に均質的に分散させることができる。その結果、過圧密履歴による液状化に対する地盤強度を高める効果と、超微細気泡の分散に伴う飽和度の低下効果とが相俟って、高い液状化に対する地盤強度を得ることができる。
〔請求項4記載の発明〕
前記気泡発生ノズルが、ノズル中心軸回りの旋回水流の縮流の中心に沿って圧力空気を噴出させる構成である請求項2、3のいずれか1項に記載の地盤の改良工法。
(作用効果)
ノズル中心軸回りの旋回水流の縮流の中心に沿って圧力空気を噴出させる構成であると、高速旋回水流の縮流部位において渦が崩壊するようになり、そこに圧力空気の噴出に伴う気泡を混入すると、その気泡が破壊し、小さい気泡となる。この場合、容器内を加圧状態に保持しておくと、気泡はさらに微細となる。
本発明によれば、地盤の広範囲な対象領域を均等的に飽和度を低下させて地盤の改良を行うことができる。特に液状化対策地盤の改良に適したものとなる。
次に、本発明の実施の形態を、液状化対策地盤の改良を例に採って説明する。
<工法の概要>
本発明は、対象地盤に設けた揚水井戸によって地下水を揚水し地下水位を低下させ過圧密を生じさせた後、注入水を注入する方法を採るのが最適である(但し、過圧密が不要としても本発明の効果は十分に発揮する。)。
したがって、地盤強度の改善を図る対象領域として、たとえば図1のように、タンク1の下方(あるいは周辺地盤も含めて)領域を対象とする場合において、まず、適宜数の揚水井2、2…をタンク1周辺に設置し、液状化層Lの揚水を行う。
この揚水によって、初期状態の水位に対して、図2に示すように、地下水位の低下を生じさせる。これによって、液状化層Lに対して過圧密(地盤が現在受けている以上の圧密応力を過去に受けたこと)履歴を与えることができる。かくして、地下水位を一時的に低下させて地盤の飽和度を低下させ、それによって液状化に対する地盤強度を高めることができるのである。たとえば、過圧密比を2程度加えると、40〜50%の強度の増加があることが知見されている。
その後に、地下水位を元の地下水位状態に自然復旧させた時点で、あるいは復旧過程で、本発明の注入水を注入する。注入に際しては、新設の注入管を設置するよりも、揚水井2を利用するのが望ましい。たとえば、図4に示すように、予め揚水井2の深さ方向に間隔を置いて、複数の注出孔2A、2A…を形成しておき、その注出孔2Aを可撓性スリーブ2Bで包被しておき、注入水の注入段階で、先端部にパッカー3A、3Aを有し、それらの間に注入口3Bを有する注入内管3を揚水井2中に挿入し、注入内管3を軸方向に移動させる過程で、注出孔2Aの位置を選択しながら、注入水を注入することができる。
注入口3Bから出た注入水は、注出孔2Aからスリーブ2Bを拡開しながら周辺地盤に注入される。これらの作業を続けることで、液状化層Lの深さ方向全体に注入することができる。
一方、注入に際しては、移動車10に循環ポンプ11、貯留槽12、コンプレッサー13及び気泡発生装置14を搭載させ、貯留槽12内において、コンプレッサー13による加圧下で、気泡発生装置14により超微細気泡を発生させて得た注入水Wを注入することができる。この場合、好ましくは、タンク1を挟む他の揚水井2から揚水すると、注入揚水2から注入した注入水を他の揚水井2に向かう流れを生成でき、改良範囲の拡大に有効なものとなる。揚水は、循環ポンプ11の入り側に循環させて、注入水の生成に再利用するのが望ましい。揚水中には不純物があるので、フィルター(図示せず)などの不純物除去手段により除去することができる。
<気泡発生ノズル(装置)の例示>
図5〜図7は気泡発生ノズル(装置)20を例示したもので、筒体21内に翼付案内体22を内装してある。筒体21は、円筒形の本体21Aと、先窄まりの円錐状の縮流部21Bと、小円筒形の噴出部21Cとを備える。円筒形の本体21A内には、案内体22が内装されている。
案内体22は、円柱状の本体部22Aとその後端(図5の左側)がほぼ半球状の入口部22Bとを有し、入口部22Bから本体部22A先端までの外周に翼体22C、22C…が一体化されている。ここで、各翼体22C、22C…の先端部は順次角度を曲げるように形成され、翼状をなしている。翼体22C、22C間と筒体21とで囲まれる溝空間は、筒体21内にその後方から循環ポンプ11からの水W0が導入されるようになっている。また、本体部22Aの外周面から内部に入り、先端(図5の右側)の中央から抜ける圧力空気Aの導入孔22Dが形成されている。
かかる気泡発生ノズル20においては、筒体21内にその後方から循環ポンプ11からの導入された水W0は、入口部22Bから各溝空間内に入り込む。溝空間内に入り込んだ水は、その空間を先端側に流れ、先端部においては、各翼体22C、22C…が捩れている関係で、周方向に向きを変えながら、本体部22Aの先端から本体21A内に流出する。その結果、本体部22Aの先端から前方の本体21A内においては、旋回流F1が生じる。この旋回流F1は、縮流部21Bにおいては、順次小さい渦流F2となって先端に向かい、特に縮流部21Bの先端部分において、渦流F2が崩壊し、気泡が発生する。
他方で、導入孔22Dの先端から圧力空気Aが噴出され、そのエネルギーは、渦流F2またはその崩壊部に与えられる。その結果、発生した気泡が微細化され、噴出部21Cから噴出される。
かくして、微細化された超微細気泡が貯留槽12内の水中に形成される。この水は、注入水Wとして、地盤強度の改善を図る対象領域に注入する。
図8は他の気泡発生ノズル20aの例を示したもので、噴出部21Caの先端側に拡大径部を形成したものである。
気泡発生方式としては、超音波方式、超高速旋回方式、気液二層対流混合・せん断方式などもできるが、容器内を加圧状態に維持することで超微細気泡を発生させることができる。しかし、本発明者らの研究によれば、上記例のものが超微細気泡の発生率及び安定性において最適であることを知見している。
<施工条件等>
本発明では、直径が10μm未満の超微細気泡を多数有する注入水を使用する。好ましい超微細気泡の直径は、平均で0.5〜5μm、特に1〜3μmである。本発明において規定する気泡の直径は、70%以上、特に80%以上が上記に規定する直径のものを有すればよく、すべての気泡が上記に規定する直径である必要はない。
気泡生成容器(たとえば貯留槽12)内の加圧力は、100kPa〜1.0MPaが望ましい。注入時の圧力としては、50kPa〜1.0MPaとすることができる。
地盤強度の改善を図る対象領域としては、前述のタンク下部領域のほか、改良が必要な地盤であれば限定されない。注入水の注入量は、超微細気泡で置換できるだけの注入量であるのが望ましい。通常は、飽和度が90%以下となることを目標とし、その目標の飽和度になったか否かはたとえば地盤の比抵抗測定により判定が可能である。
超微細気泡で置換した地盤は、前述のように地盤を構成する粒子、たとえば地盤の間隙に残存するので、長期間その置換状態を維持できる。仮に、激しい地下水流が予想される場合には、2〜3年程度の時間間隔で飽和度の測定を行い、必要により注入水の再注入を行うことができる。
(実施例1)
注入水の注入による地盤の飽和度の低下を調査した。図5〜図7に示したとおりの気泡発生ノズル20を、直径300mm、高さ500mmのアクリル円筒容器内の底部に縦向きに設置し、循環ポンプに接続した送給路と繋げた。容器の底部は返送路を接続し、他端は循環ポンプに繋げ、循環量を制御しながら、円筒容器内に超微細気泡を包含する注入水を生成させた。このとき、円筒容器内は20〜200kPaに加圧した。他方、円筒容器には注入路を接続し、その他端は、内径59.4mm、高さ600mmのアクリル円筒容器内に豊浦砂を100%充填した縦向きカラムの下端に連結した。このカラム内に、前記の注入水を連続的に約100分注入した。上端から流出する注入水は廃棄した。
他方で、同じカラムに対し、圧力空気のみの圧送も行った。
その結果、図9に示すように、圧力空気のみの圧送の場合には、飽和度が約90%程度までしか低下しなかったのに対し、直径が10μm未満の超微細気泡を包含する注入水の注入の場合には、ほぼ経時的に順次飽和度は低下し、飽和度が約65%程度まで低下することが確認できた。
(実施例2)
超微細気泡を包含する注入水の通水による地盤の液状化強度を調べるために、不飽和地盤の繰り返し三軸試験を行った。すなわち、空中落下法により直径5cm、高さ10cm、相対密度60%程度の円筒供試体を飽和させ、前記の注入水を0.2Hzのsin波で繰り返し載荷試験を行った。なお、供試体の初期有効応力σc´は98kPaである。
試験は、飽和度100%(通水なし)の場合と90%(通水あり)の場合との2通りとした。結果を図10に示した。
100%の飽和砂(豊浦砂)では過剰間隙水圧比0.5付近に達した時点から急激にひずみが増加し液状化に至るのに対し、飽和度90%では過剰間隙が100%の場合に比較して緩やかに増加し、ひずみは塑性的な変形(残留ひずみ)がみられ、有効応力(強度)の回復が大きく液状化抵抗が大きいことが判明した。また、本発明の超微細気泡を包含する注入水の通水した飽和度90%の供試体は、飽和度100%の供試体と比較して、液状化強度が約1.5倍程度増加することを知見した。
本発明に係る施工の第1段階概要説明図である。 本発明に係る施工の第2段階概要説明図である。 本発明に係る施工の第3段階概要説明図である。 注入管の一部破断正面図である。 気泡発生装置例の概要斜視図である。 案内体の縦断面図である。 その側面図である。 他の気泡発生装置例の縦断面図である。 実験結果のグラフである。 他の実験結果のグラフである。
1…タンク、2…揚水井、2A…注出孔、2B…スリーブ、3…注入内管、3A…パッカー、3B…注入口、10…移動車、11…循環ポンプ、12…貯留槽、13…コンプレッサー、14…気泡発生装置、20…気泡発生ノズル(装置)、21…筒体、22…タービン翼付案内体、W0…導入水、W…注入水。

Claims (4)

  1. 可撓性スリーブで包被された注出孔が深さ方向に間隔を置いて複数形成された揚水井から液状化層の揚水を行って液状化層に対して過圧密履歴を与え、
    注入水の注入段階において、この揚水井中に注入口を有する注入内管を挿入し軸方向に移動して注出孔の位置を選択しながら、直径が100μm未満の超微細気泡を多数有する注入水を、地盤強度の改善を図る対象領域に注入することを特徴とする地盤の改良工法。
  2. 可撓性スリーブで包被された注出孔が深さ方向に間隔を置いて複数形成された揚水井から液状化層の揚水を行って液状化層に対して過圧密履歴を与え、
    容器内の水中に気泡発生ノズルを臨ませ、かつ、容器内を加圧状態に保持した状態で、前記気泡発生ノズルから気泡を発生させて得た、直径が100μm未満の多数の超微細気泡が水中に分散した水の注入段階において、この揚水井中に注入口を有する注入内管を挿入し軸方向に移動して注出孔の位置を選択しながら、地盤強度の改善を図る対象領域に注入することを特徴とする地盤の改良工法。
  3. 対象地盤に設けた揚水井戸によって地下水を揚水し地下水位を低下させ過圧密を生じさせた後、前記注入水を注入する請求項1または2記載の地盤の改良工法。
  4. 前記気泡発生ノズルが、ノズル中心軸回りの旋回水流の縮流の中心に沿って圧力空気を噴出させる構成である請求項2、3のいずれか1項に記載の地盤の改良工法。
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