以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の概略的なシステム図である。図示されるように、内燃機関1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストン4を往復移動させることにより動力を発生する。内燃機関1は車両用多気筒エンジン(1気筒のみ図示)であり、火花点火式内燃機関、より具体的にはガソリンエンジンである。但し、本発明が適用される内燃機関は火花点火式内燃機関に限られず、例えば圧縮着火式内燃機関即ちディーゼルエンジンであってもよい。
内燃機関1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁Viと、排気ポートを開閉する排気弁Veとが気筒ごとに配設されている。各吸気弁Viおよび各排気弁Veは図示しないカムシャフトによって開閉させられる。また、シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。さらにシリンダヘッドにはインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設され、燃焼室3内に直接燃料噴射するようになっている。ピストン4はいわゆる深皿頂面型に構成されており、その上面には凹部4aが形成されている。そして内燃機関1では、燃焼室3内に空気を吸入させた状態で、インジェクタ12からピストン4の凹部4aに向けて燃料が直接噴射される。これにより点火プラグ7の近傍に、燃料と空気との混合気の層が周囲の空気層と分離された状態で形成(成層化)され、安定した成層燃焼が実行される。
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気集合通路をなす吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式スロットルバルブ10とが組み込まれている。なお吸気ポート、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
一方、各気筒の排気ポートは気筒毎の枝管を介して排気集合通路をなす排気管6に接続されている。これら排気ポート、枝管及び排気管6により排気通路が形成される。排気管6には、排気ガス中のCO,HC,NOxを同時に浄化可能な三元触媒11と、排気ガス中のNOxを還元浄化可能なNOx触媒16,18とが上流側から順に直列に設けられている。以下、上流側のNOx触媒16を上流NOx触媒、下流側のNOx触媒18を下流NOx触媒と称す。これらNOx触媒16,18は後に詳しく述べる吸蔵還元型NOx触媒からなり、それぞれ本実施形態において劣化診断の対象となる触媒である。なおディーゼルエンジンの場合だと、三元触媒の代わりに酸化触媒及びパティキュレートフィルタが典型的に設けられる。
三元触媒11の上流側ないし直前位置に、燃焼室3から排出され三元触媒11に流入する排気ガスの空燃比(A/F)を検出するための空燃比センサ即ち第1空燃比センサ31が設置されている。第1空燃比センサ31は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能で、その空燃比に比例した出力を発する。但しこれに限らず、第1空燃比センサ31は、理論空燃比(ストイキ)を境に出力値が急変する所謂O2センサからなってもよい。
三元触媒11の下流側ないし直後位置に、三元触媒11から流出した排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ即ち第2空燃比センサ32が設置されている。第2空燃比センサ32はO2センサからなるが、広域空燃比センサからなってもよい。
三元触媒11の下流側で且つ上流NOx触媒16の上流側ないし直前位置に、上流NOx触媒16に流入する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ即ち第3空燃比センサ33が設置されている。第3空燃比センサ33は広域空燃比センサからなるが、O2センサからなってもよい。
上流NOx触媒16の下流側ないし直後位置に、上流NOx触媒16から流出した排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ即ち第4空燃比センサ34が設置されている。第4空燃比センサ34は広域空燃比センサからなるが、O2センサからなってもよい。
下流NOx触媒18の下流側ないし直後位置に、下流NOx触媒18から流出した排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ即ち第5空燃比センサ35が設置されている。第5空燃比センサ35はO2センサからなるが、広域空燃比センサからなってもよい。
なお、第4空燃比センサ34が、上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の間に設けられた触媒間空燃比センサをなし、第5空燃比センサ35が、下流NOx触媒18の下流側に設けられた触媒後空燃比センサをなす。
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等は、制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、第1〜第5空燃比センサ31〜35のほか、内燃機関1のクランク角を検出するクランク角センサ14、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の間に設けられた排気温センサ22、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。なおクランク角センサ14の出力はエンジン回転速度Neの検出に用いられる。
三元触媒11は、これに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比(ストイキ、例えばA/F=14.6)付近のときにCO,HC及びNOxを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。よって三元触媒11を有効に機能させるため、空燃比制御の一態様として、三元触媒11に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比付近となるように混合気の空燃比が制御される。これをストイキ制御といい、ストイキ制御が実行されているときのエンジンの運転態様をストイキ運転という。このストイキ制御では目標空燃比が理論空燃比と等しく設定され、第1空燃比センサ31により検出された空燃比が目標空燃比と等しくなるように、インジェクタ12から噴射される燃料噴射量ひいては空燃比がフィードバック制御される。なお、第2空燃比センサ32により検出された空燃比が理論空燃比と等しくなるように空燃比をフィードバック制御する補助空燃比制御も行われる。補助空燃比制御は第1空燃比センサ31の劣化等により起こる制御空燃比のズレを補正する目的で行われる。
他方、燃費低減等の観点から、空燃比制御の別の態様として、目標空燃比が理論空燃比より高いリーンな値に設定され、理論空燃比よりリーンな混合気が燃焼(希薄燃焼)させられる場合がある。これをリーンバーン制御或いはリーン制御といい、リーンバーン制御が実行されているときのエンジンの運転態様をリーンバーン運転或いはリーン運転という。なおリーンバーン制御時もストイキ制御時と同様、第1空燃比センサ31により検出された空燃比が目標空燃比と等しくなるように燃料噴射量ひいては空燃比がフィードバック制御される。
三元触媒11は、担体基材の表面上に、酸化セリウムCeO2やジルコニア等の酸素吸蔵成分を含むコート材を被覆し、このコート材表面に、Pt、Ld等の貴金属微粒子を多数分散配置させて構成されている。三元触媒11は酸素吸蔵能を有し、これに供給される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンのときに排気ガス中の酸素を吸蔵し、供給される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリッチのときに吸蔵した酸素を放出する。
一方、前述したように、上流側及び下流側のNOx触媒16,18には吸蔵還元型NOx触媒(NSR: NOx Storage Reduction)が用いられている。この吸蔵還元型NOx触媒は、アルミナAl2O3等の酸化物からなる基材表面に、触媒成分としての白金Ptのような貴金属と、NOx吸収成分とが担持されて構成されている。NOx吸収成分は、例えばカリウムK、ナトリウムNa,リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムY、セリウムCeのような希土類から選ばれた少なくとも一つから成る。
吸蔵還元型NOx触媒はNOx吸蔵能を有し、これに供給される排気ガスの空燃比が理論空燃比よりリーンのときには排気ガス中のNOxを硝酸塩の形で吸蔵し、これに供給される排気ガスの空燃比が理論空燃比又はそれよりリッチのときには吸蔵したNOxを放出する。この放出されたNOxは触媒中の貴金属を介して理論空燃比又はそれよりリッチの排気ガス(リッチガス)と反応し、N2に還元処理される。
リーンバーン運転中では、排気空燃比が理論空燃比よりリーンであり、NOx触媒は排気中のNOxの吸蔵を行う。一方、NOx触媒がNOxを飽和状態(満杯)まで吸蔵すると、NOx触媒がそれ以上NOxを吸蔵できなくなることから、NOx触媒から吸蔵NOxを放出させるべく、NOx触媒に一時的に還元剤を供給するリッチスパイクないしリッチスパイク制御が実行される。このリッチスパイクでは目標空燃比が一時的に理論空燃比又はそれよりリッチな値に設定され、混合気ひいては排気ガスの空燃比が理論空燃比又はそれより低いリッチな値に制御される。このリッチな排気ガスに含まれる還元成分(HC、CO、H2)が、NOx触媒から吸蔵NOxを放出させ、この放出NOxと反応して放出NOxを還元する。このように、NOx触媒から吸蔵NOxを放出してNOx触媒のNOx吸蔵能を回復させることをNOx再生と称する。
なお、リッチスパイクについてはこれ以外にも様々な方法がある。例えば、NOx触媒上流側に還元剤供給弁を別途設け、還元剤供給弁を開弁制御して排気中に還元剤を供給する方法がある。還元剤としては、排気中で炭化水素HCや一酸化炭素CO等の還元成分を発生するものであれば良く、水素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタン等の液体又は気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油等の液体燃料等が使用できる。好ましくはエンジンの燃料であるガソリンが使用される。代替的に、インジェクタ12から燃焼室3に膨張行程後期又は排気行程で燃料を噴射し、未燃燃料を排気中に多く含ませるいわゆるポスト噴射を行う方法が可能である。
NOx触媒のNOx吸放出作用はNOx触媒が所定の作動温度域(例えば280〜550℃、好ましくは400〜450℃)にないと実質的に行えない。そこで本実施形態では、特に上流NOx触媒16の触媒温度(具体的には触媒床温)を計測し、上流NOx触媒16の状態を監視するようにしている。上流NOx触媒16の温度は、これに埋設した温度センサにより直接検出することもできるが、本実施形態ではそれを推定することとしている。具体的には、ECU20が、触媒後の排気温センサ22により検出された排気温に基づき、上流NOx触媒16の触媒温度を推定する。なお推定方法はこのような例に限られず、また下流NOx触媒18の触媒温度を併せて計測するのも好ましい。
次に、NOx触媒の劣化診断について説明する。前述したように、ここで診断対象となるのは上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18の両方である。
まず劣化診断の概要を説明すると、最初に、空燃比をリーンに制御してNOx触媒16,18に飽和状態までNOx及び酸素を吸蔵させる。そして第1リッチスパイクを実行してNOx触媒16,18毎に吸蔵NOx量及び吸蔵酸素量の合計量を計測し、その後空燃比を一旦リーンに制御して再度NOx触媒16,18に酸素を吸蔵させる。その後第2リッチスパイクを実行してNOx触媒16,18毎に吸蔵酸素量を計測する。次いでNOx触媒16,18毎に、第1リッチスパイク実行時の合計量計測値から第2リッチスパイク実行時の吸蔵酸素量計測値を減じて吸蔵NOx量を計測する。最後に、NOx触媒16,18毎に、吸蔵NOx量計測値を所定の劣化判定値と比較してNOx触媒の劣化を判定する。要するに、第1及び第2リッチスパイクからなるダブルリッチスパイクを実行してその間にNOx触媒16,18の吸蔵NOx量を計測し、この計測値を劣化判定値と比較してNOx触媒16,18の正常・劣化を判定する。
図2に、かかる劣化診断に際しての各値の変化の様子を示す。(A)はECU20の内部値である目標空燃比、(B)〜(F)はそれぞれ第1〜第5空燃比センサ31〜35の出力値を示す。図中、Sはストイキ、Lはリーン、Rはリッチを意味する。
時刻t1以前では、リーンバーン運転によって空燃比がストイキよりも著しくリーンの値に制御されている(例えばA/F=28)。このときエンジンから排出されるNOxはNOx触媒16,18に吸蔵或いはトラップされる。またこのとき排気ガス中の酸素が三元触媒11及びNOx触媒16に吸蔵或いはトラップされる。そして三元触媒11において酸素が飽和状態まで吸蔵され、且つNOx触媒16,18においてNOx及び酸素が飽和状態まで吸蔵されると、1回目のリッチスパイク即ち第1リッチスパイクRS1が実行され、空燃比はストイキよりもリッチな値(例えばA/F=11〜12)に切替制御される(時点t1)。
なお第1リッチスパイクの開始タイミングt1については、例えば、エンジンから排出される微小時間毎のNOx量をエンジン運転状態(回転速度、アクセル開度等)に基づいて推定すると共にこれを積算し、この積算値が、以前計測したNOx触媒16,18の合計NOx吸蔵能相当の値以上に達した時を以て、リッチスパイクの開始タイミングとすることができる。
第1リッチスパイクが実行されると、三元触媒11とNOx触媒16,18にリッチガス(還元剤)が供給される。するとまず三元触媒11から吸蔵酸素が放出され、次いでNOx触媒16,18から吸蔵NOxと吸蔵酸素が放出される。このとき、三元触媒11における吸蔵酸素量、即ち三元触媒11から放出された酸素量が計測され、次いでNOx触媒16,18における吸蔵NOx量と吸蔵酸素量の合計量、即ちNOx触媒16,18から放出されたNOx量と酸素量の合計量が計測される。
図示するように、第1リッチスパイクRS1の実行によって目標空燃比がリッチに切り替えられると、ある時間遅れを伴って三元触媒11に対する排気ガスがリッチになり、三元触媒11から吸蔵酸素が放出される。そしてこの放出が完了するとリッチガスが三元触媒11を素通りして上流NOx触媒16に供給される。これにより上流NOx触媒16から吸蔵NOxと吸蔵酸素が放出される。この放出が完了するとリッチガスが三元触媒11及び上流NOx触媒16を素通りして下流NOx触媒18に供給される。これにより下流NOx触媒18から吸蔵NOxと吸蔵酸素が放出される。この放出が完了するとリッチガスが下流NOx触媒18を素通りし、これにより第5空燃比センサ35の出力がリッチ側に変化する。
三元触媒11からの酸素放出に使用された還元剤量は図中の領域I11で表され、この還元剤量I11は、三元触媒11における吸蔵酸素量(酸素吸蔵能)を表す指標値となる。還元剤量I11は、第1空燃比センサ31の出力値がストイキ相当に達した時点t11から第3空燃比センサ33の出力値がストイキ相当に達した時点t12まで、第1空燃比センサ31で検出されたリッチ空燃比とストイキ空燃比との微小時間当たりの差ΔX11を、ECU20により積算することで計測される。三元触媒11における吸蔵酸素量が多いほど、即ち三元触媒11の酸素吸蔵能が高いほど、放出させる酸素量が増え、t11からt12までの時間が長くなり、還元剤量I11は多くなる。
同様に、上流NOx触媒16からのNOx及び酸素放出に使用された還元剤量は図中の領域I12で表され、この還元剤量I12は、上流NOx触媒16における吸蔵NOx量及び吸蔵酸素量の合計量を表す指標値となる。還元剤量I12は、第3空燃比センサ33の出力値がストイキ相当に達した時点t12から第4空燃比センサ34の出力値がストイキ相当に達した時点t13まで、第3空燃比センサ33で検出されたリッチ空燃比とストイキ空燃比との微小時間当たりの差ΔX12を、ECU20により積算することで計測される。上流NOx触媒16における吸蔵NOx量及び吸蔵酸素量の合計量が多いほど、即ち上流NOx触媒16のNOx吸蔵能及び酸素吸蔵能が高いほど、放出させるNOx量及び酸素量の合計量が増え、t12からt13までの時間が長くなり、還元剤量I12は多くなる。
同様に、下流NOx触媒18からのNOx及び酸素放出に使用された還元剤量は図中の領域I13で表され、この還元剤量I13は、下流NOx触媒18における吸蔵NOx量及び吸蔵酸素量の合計量を表す指標値となる。還元剤量I13は、第4空燃比センサ34の出力値がストイキ相当に達した時点t13から第5空燃比センサ35の出力が所定のリッチ側しきい値V5sに達した時点t2まで、第4空燃比センサ34で検出されたリッチ空燃比とストイキ空燃比との微小時間当たりの差ΔX13を、ECU20により積算することで計測される。下流NOx触媒18における吸蔵NOx量及び吸蔵酸素量の合計量が多いほど、即ち下流NOx触媒18のNOx吸蔵能及び酸素吸蔵能が高いほど、放出させるNOx量及び酸素量の合計量が増え、t13からt2までの時間が長くなり、還元剤量I13は多くなる。
時点t2で第1リッチスパイクRS1が終了され、これと同時に、第1リッチスパイクRS1と第2リッチスパイクRS2の間のリーン制御即ち中間リーン制御が開始される。この中間リーン制御の実行時間(t2〜t3)は比較的短く(但し図では理解容易のため長めに描かれている)、またNOx触媒16,18における酸素吸蔵速度はNOx吸蔵速度よりも著しく速い。この中間リーン制御により、三元触媒11では酸素が飽和状態まで吸蔵され、NOx触媒16,18では、酸素が飽和状態まで吸蔵されるがNOxは殆ど吸蔵されない。なお図示例の中間リーン制御では、空燃比が、t1以前に行われていた最初のリーン制御のときと同じ値に制御されている。
時点t3で中間リーン制御が終了され、これと同時に第2リッチスパイクRS2が開始される。第2リッチスパイクが実行されると、第1リッチスパイクのときと同様、三元触媒11とNOx触媒16,18にリッチガス(還元剤)が供給され、まず三元触媒11から吸蔵酸素が放出され、次いでNOx触媒16,18から吸蔵酸素が放出される。この第2リッチスパイク時、三元触媒11における吸蔵酸素量は計測されず、NOx触媒16,18における吸蔵酸素量のみが計測される。計測方法は第1リッチスパイクのときと同様で、図中の領域I22、I23で示される使用還元剤量が計測される。
即ち、第3空燃比センサ33の出力値がストイキ相当に達した時点t22から第4空燃比センサ34の出力値がストイキ相当に達した時点t23まで、第3空燃比センサ33で検出されたリッチ空燃比とストイキ空燃比との微小時間当たりの差ΔX22を、ECU20により積算することで、上流NOx触媒16についての還元剤量I22が計測される。次いで、第4空燃比センサ34の出力値がストイキ相当に達した時点t23から第5空燃比センサ34の出力が所定のリッチ側しきい値V5sに達した時点t4まで、第4空燃比センサ34で検出されたリッチ空燃比とストイキ空燃比との微小時間当たりの差ΔX23を、ECU20により積算することで、下流NOx触媒18についての還元剤量I23が計測される。
時点t4で第2リッチスパイクが終了され、これと同時にNOx触媒16,18における吸蔵酸素量の計測が終了すると共に、空燃比はリーンに切り替えられて通常のリーンバーン運転に移行する。
この後、上流NOx触媒16について、第1リッチスパイク時の還元剤量I12から第2リッチスパイク時の還元剤量I22を減算して減算値ΔI2=I12−I22を得る。この減算値ΔI2は、第1リッチスパイク時における吸蔵NOx量を表す指標値となる。この減算値ΔI2を所定の劣化判定値ΔI2sと比較し、ΔI2≧ΔI2sなら上流NOx触媒16を正常、ΔI2<ΔI2sなら上流NOx触媒16を劣化と判定することができる。
同様に、下流NOx触媒18について、第1リッチスパイク時の還元剤量I13から第2リッチスパイク時の還元剤量I23を減算して減算値ΔI3=I13−I23を得る。この減算値ΔI3は、第1リッチスパイク時における吸蔵NOx量を表す指標値となる。この減算値ΔI3を所定の劣化判定値ΔI3sと比較し、ΔI3≧ΔI3sなら下流NOx触媒18を正常、ΔI3<ΔI3sなら下流NOx触媒18を劣化と判定することができる。こうしてNOx触媒16,18の各々について、NOx吸蔵能を計測し、この計測されたNOx吸蔵能を所定値と比較して触媒劣化診断を行うことが可能である。
ところで、各NOx触媒の吸蔵NOx量の計測値が正確であるためには、第2リッチスパイク時に計測された吸蔵酸素量が、第1リッチスパイク時に計測された合計量のうちの吸蔵酸素量と等しいことが必要である。
一方、第1リッチスパイクと第2リッチスパイクとの間の中間リーン制御時に、NOx触媒が飽和状態まで酸素を吸蔵できるような十分な量の酸素をNOx触媒に供給しないと、つまり供給酸素量が不足すると、その後の第2リッチスパイク時に計測された酸素吸蔵量は飽和相当の値より少ない値となってしまう。それ故、最終的に得られる吸蔵NOx量が真の値より多くなり、吸蔵NOx量に計測誤差が生じるほか、劣化したNOx触媒に対して正常と誤判定してしまう虞がある。
また逆に、中間リーン制御時にNOx触媒への供給酸素量があまりに過剰であると、例えば中間リーン制御時間が過剰に長かったりすると、酸素は飽和状態まで吸蔵されるものの、NOxも許容量以上に吸蔵されてしまい、第2リッチスパイク時に計測された吸蔵酸素量が吸蔵NOx量を多く含む値となってしまい、真の値より多い吸蔵酸素量が計測されてしまう。それ故、最終的に得られる吸蔵NOx量が真の値より少なくなり、吸蔵NOx量に計測誤差が生じるほか、正常のNOx触媒に対して劣化と誤判定してしまう虞がある。
このように、中間リーン制御時には、NOx触媒16,18の酸素吸蔵能に相当する過不足のない適正量の酸素をNOx触媒16,18に供給し、且つ吸蔵させることが、正確なNOx触媒16,18のNOx吸蔵能を計る上で重要である。よってこの供給酸素量の適正化を本実施形態では行うようにしており、以下、これについて述べる。
図3にはNOx触媒におけるNOxと酸素の吸蔵特性をそれぞれ示す。横軸には触媒温度Tcがとってあり、縦軸にはNOx触媒が吸蔵し得る吸蔵量がとってある。実線で示すように、吸蔵NOx量はある触媒温度Tcxのときに極大となり、この触媒温度(ピーク温度)Tcxから触媒温度が離れるにつれ吸蔵NOx量は徐々に減少する。そしてNOxを吸蔵可能な触媒温度範囲も限られている。例えばピーク温度Tcxは約400℃であり、NOxを吸蔵可能な触媒温度範囲は280〜550℃である。他方、一点鎖線で示すように、吸蔵酸素量は、触媒温度Tcの増加につれほぼ比例的に増大する。酸素を吸蔵可能な高温側の触媒温度限界はNOxの場合より高く、例えば800℃付近である。このように、NOx触媒におけるNOx吸蔵能及び酸素吸蔵能は触媒温度に対して個別に変化し、触媒温度は、NOx触媒の酸素吸蔵能に相関する一つのパラメータとなる。
図4にはNOx触媒における別の吸蔵特性を示し、具体的には、NOx及び酸素の吸蔵量がゼロ(つまり空)の初期状態から空燃比一定のリーン制御を行ったときのリーン制御時間と吸蔵NOx量及び吸蔵酸素量との関係を示す。線図a,bで示すのがそれぞれ新品触媒及び劣化触媒の場合のリーン制御時間及び吸蔵酸素量の関係である。なお線図cは、リーン制御時間と吸蔵NOx量との関係を参考的に示す。これからわかるように、リーン制御時の酸素吸蔵速度はNOx吸蔵速度よりも著しく速い。
図示するように、リーン制御時間の経過につれ吸蔵酸素量は次第に増加するが、吸蔵酸素量が触媒の持つ酸素吸蔵能相当に達するとそれ以降吸蔵酸素量は増加せず、即ち飽和する。酸素吸蔵能は新品触媒より劣化触媒の方が低いので、新品触媒より劣化触媒の方が早く飽和状態に達し、従ってリーン制御時間は短くて済む。図中tL1,tL2はそれぞれ劣化触媒及び新品触媒が酸素飽和状態に達する時のリーン制御時間を示す。このように、NOx触媒における酸素吸蔵能は触媒劣化度に対しても変化する特性を有し、触媒劣化度は、NOx触媒の酸素吸蔵能に相関する一つのパラメータとなる。
ところで、従来の中間リーン制御では制御時間を予め定められた数秒程度の一定時間とするのが一般的であった。しかしこれだと、NOx触媒の実際の酸素吸蔵能に相応した適正量の酸素量を供給し、且つ吸蔵させるのが困難であった。
図4を参照して、例えば新品触媒の場合に中間リーン制御の制御時間をtL2より短いtL1に設定してしまうと、NOx触媒が酸素飽和状態に達せず、よってその後に計測される吸蔵酸素量が飽和相当の値より少ない値となってしまう。それ故、最終的に得られる吸蔵NOx量が真の値より多くなり、吸蔵NOx量に計測誤差が生じるほか、劣化したNOx触媒に対して正常と誤判定してしまう虞がある。
また逆に、劣化触媒の場合に中間リーン制御の制御時間をtL1より長いtL2に設定してしまうと、NOx触媒は酸素飽和状態に達せるものの、NOxが図示されるΔMnだけ余計に吸蔵されてしまい、その分、後に計測される吸蔵酸素量が見掛け上多くなってしまう。それ故、最終的に得られる吸蔵NOx量が真の値より少なくなり、吸蔵NOx量に計測誤差が生じるほか、正常のNOx触媒に対して劣化と誤判定してしまう虞がある。
他方、触媒温度については、図3に示したように、触媒温度がピーク温度Tcxのときとそうでないときとでは前者の方が後者より酸素吸蔵能が高い。よって触媒温度がピーク温度Tcxのときに中間リーン制御時間が不足したり、触媒温度がピーク温度Tcxでないときに中間リーン制御時間が過剰であったりすると、同様の問題が生じる。
そこで本実施形態では、NOx触媒の酸素吸蔵能に相関する少なくとも一つのパラメータを計測し、このパラメータ計測値に基づいて、上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18の仮の吸蔵酸素量の合計値を推定する。そして中間リーン制御時に、少なくとも、その推定された仮の吸蔵酸素量の合計値に等しい酸素量を両NOx触媒に供給する。ここでいうパラメータは、触媒温度及び触媒劣化度の少なくとも一つであるのが好ましいが、それ以外も可能である。本実施形態では触媒温度及び触媒劣化度の両方を用いている。
各NOx触媒の仮の吸蔵酸素量は、図5に示すような、予め定められ且つECU20に記憶されたマップ(関数でもよい、以下同様)に従って推定される。即ち、所定時期における推定触媒温度と、触媒劣化度から、マップに従って仮の吸蔵酸素量が算出される。推定触媒温度は中間リーン制御開始時t2における各NOx触媒の値とするのが好ましい。触媒劣化度は、本実施形態では、三元触媒11からの酸素放出に使用された第1リッチスパイク時の還元剤量I11(これは三元触媒11の酸素吸蔵能及び吸蔵酸素量を表す指標値である)に基づいて推定される。図6に示すように、車載のエンジンの場合、走行距離の増加につれ三元触媒11及びNOx触媒16が同程度劣化していくので、このことを利用して三元触媒11の酸素吸蔵能からNOx触媒16の触媒劣化度が推定される。但しこの方法に限られず、NOx触媒の触媒劣化度を別途計測してもよく、例えば前回診断時に計測された吸蔵NOx量に基づいて触媒劣化度を計測するようにしてもよい。
各NOx触媒の仮の吸蔵酸素量が推定されたならば、前記還元剤量I11から所定のマップを利用して三元触媒11の吸蔵酸素量を算出ないし換算し、これを両NOx触媒の仮の吸蔵酸素量の合計値に加算して三者の和、即ち要求酸素量を算出する。この要求酸素量が、中間リーン制御で供給すべき酸素量となる。次いで要求酸素量に基づき、図2に示したような中間リーン制御の制御時間tL(t2〜t3)を、図示しない所定のマップに従って決定する。この決定された制御時間だけ中間リーン制御を行うことにより、要求酸素量に等しい酸素量が三元触媒及びNOx触媒に供給される。
なお、ここでは要求酸素量に基づいて中間リーン制御時間を制御するようにしたが、代替的或いは付加的に、中間リーン制御の空燃比を制御するようにしてもよい。この場合、空燃比をリーン側にするほど単位時間当たりの供給酸素量が増加し、中間リーン制御時間は短くて済むようになる。
上記のように決定された制御時間だけ中間リーン制御を実行すれば、理論上は両NOx触媒にその酸素吸蔵能相当の適正量の酸素量を供給し、吸蔵させることができる。しかしながら、仮の吸蔵酸素量があくまで推定値であるため、推定誤差があると実際にNOx触媒に飽和状態まで酸素を吸蔵させられない可能性もある。よって、中間リーン制御時間を、決定された制御時間に僅かな所定時間を加えた時間としてもよい。こうすれば中間リーン制御中に確実に両NOx触媒に飽和状態まで酸素を吸蔵させることができる。
さて、以上述べたように上流NOx触媒16と下流NOx触媒18のNOx吸蔵能を個別に計測することができるが、本発明者らの鋭意研究の結果によれば、高硫黄濃度の燃料使用によりNOx触媒がS被毒する場合、上流NOx触媒16と下流NOx触媒18とで硫黄被毒の程度が異なることが判明した。そこで本実施形態ではこのことを利用して、少なくとも上流NOx触媒16の被毒を検出するようにしている。
図7には、上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18のNOx吸蔵能指標値としての吸蔵NOx量(以下、それぞれ上流吸蔵NOx量M2及び下流吸蔵NOx量M3という)の関係を調べた試験結果を示す。図示するように、通常の熱劣化時に比べS被毒時には、上流吸蔵NOx量M2と下流吸蔵NOx量M3の比R=M3/M2が大きくなる傾向にある。即ちこれは、上流NOx触媒16の方が下流NOx触媒18よりもS被毒の程度が大きいことを意味しており、その理由は前者の方が後者よりも先に硫黄分を含む排気ガスを受けるために硫黄分を多く吸着するからと考えられる。よってこの比Rが、図中破線で示されるS被毒判定ライン相当の所定値より大きいとき、少なくとも上流NOx触媒16がS被毒していると判断される。こうして少なくとも上流NOx触媒16のS被毒が、通常劣化と区別して検出されることとなる。
少なくとも上流NOx触媒16のS被毒が検出された場合、少なくとも上流NOx触媒16の劣化診断を禁止するのが好ましい。本実施形態では、上流NOx触媒16のS被毒が検出された場合、下流NOx触媒18も既にS被毒しているか或いは近いうちにS被毒する可能性が高いため、両触媒の劣化診断を禁止するようにしている。これによりS被毒に起因する誤診断を防止でき、診断精度及び信頼性を高めることができる。
なお、被毒検出については、上流吸蔵NOx量M2と下流吸蔵NOx量M3の差D=M3−M2に基づいて少なくとも上流NOx触媒16の被毒を検出してもよい。この場合、S被毒が生じると通常劣化時に比べて差Dが大きくなるので、この差Dが所定値より大きいとき、少なくとも上流NOx触媒16がS被毒していると判断することができる。このように被毒検出に際しては、比R及び差Dの少なくとも一方を用いることが可能である。
次に、具体的な劣化診断処理の手順を図8を参照して説明する。かかる処理はECU20により実行される。なお前提としてリッチスパイク時以外は前述のようなリーン制御がなされているものとする。
最初のステップS101では、所定の第1診断条件が成立しているか否かが判断される。この第1診断条件は、三元触媒11に飽和状態まで酸素が吸蔵され、上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18に飽和状態までNOx及び酸素が吸蔵され、三元触媒11及び両NOx触媒16,18の推定触媒温度が作動温度域にあり、各空燃比センサ31〜35が活性化しているときに成立となる。このほか、第1リッチスパイクが未実施であること、現トリップ中の診断が未終了であることなどを条件に含めてもよい。
条件不成立のときは待機状態となり、他方、条件成立のときは、ステップS102に進んで第1リッチスパイクが実行され、ステップS103において、三元触媒11からの酸素放出、並びに上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18からの酸素及びNOx放出にそれぞれ使用された還元剤量I11,I12,I13が計測される。
次に、ステップS104において中間リーン制御時間tLが前述の方法で決定される。そしてこの決定された時間tLだけ中間リーン制御が実行される。
次に、ステップS105において、所定の第2診断条件が成立しているか否かが判断される。この第2診断条件は、各触媒が作動温度域にあり、各空燃比センサ31〜35が活性化しており、且つ中間リーン制御時間tLが経過した時点で成立となる。このほか、第2リッチスパイクが未実施であること、現トリップ中の診断が未終了であることなどを条件に含めてもよい。
条件不成立のときは待機状態となり、他方、条件成立のときは、ステップS106に進んで第2リッチスパイクが実行され、ステップS107において、上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18からの酸素放出にそれぞれ使用された還元剤量I22,I23が計測される。
次に、ステップS108において、還元剤量I12から還元剤量I22を減算し、上流NOx触媒16についての減算値ΔI2が算出される。また、還元剤量I13から還元剤量I23を減算し、下流NOx触媒18についての減算値ΔI3が算出される。
次いでステップS109において、これら減算値の合計である合計減算値ΔI23=ΔI2+ΔI3が算出されると共に、この合計減算値ΔI23が所定値ΔI23sと比較される。この所定値ΔI23sは、前述のNOx触媒毎の劣化判定値ΔI2s、ΔI3sの和に等しい値である。
合計減算値ΔI23が所定値ΔI23s以上の場合、ステップS110に進んで、上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18のいずれも正常と判定される。即ち、この場合は上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18の合計吸蔵NOx量が正常とみなせるほどに十分大きな値であることから、両NOx触媒を正常と判定する。この後ステップS111にて所定の診断終了設定が実行され、診断処理が終了する。かかる診断終了設定としては、例えば現トリップ中の再度の診断を省略すべく診断終了フラグをオンするなどがある。
他方、ステップS109で合計減算値ΔI23が所定値ΔI23s未満の場合、ステップS112に進んで、減算値ΔI2、ΔI3の比Ri=ΔI3/ΔI2が算出されると共に、この比Riが所定値Risと比較される。これは、各NOx触媒の吸蔵NOx量の比が所定値と比較されていることと実質的に等しい。例えば新品状態での両NOx触媒の吸蔵NOx量が等しい場合、高硫黄濃度の燃料が用いられると上流NOx触媒16の方が下流NOx触媒18より顕著にS被毒し、吸蔵NOx量が低下する。従って比Riは1より大きな値となる。
比Riが所定値Risより小さい場合、ステップS113に進んで、上流NOx触媒16及び下流NOx触媒18のいずれも劣化と判定される。即ち、この場合には上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の両方で正常相当の合計吸蔵NOx量を確保できず、且つ上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の間で吸蔵NOx量に顕著な差がなくS被毒ではないとみなせるから、この場合には両NOx触媒を通常劣化による劣化と判定する。この後、ステップS111にて所定の診断終了設定が実行され、診断処理が終了する。劣化判定後の診断終了設定では、ユーザに触媒劣化の事実を知らせるべくチェックランプ等の警告装置をオンするのが好ましい。
他方、比Riが所定値Ris以上の場合、ステップS114に進んで、少なくとも上流NOx触媒16がS被毒していると判定される。即ち、この場合は上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の両方で正常相当の合計吸蔵NOx量を確保できず、しかも上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の間で吸蔵NOx量に顕著な差がある場合であるから、少なくとも上流NOx触媒16がS被毒していると判定する。次いでステップS115において、誤診断防止のために両NOx触媒の劣化診断が禁止され、併せてS被毒フラグがオンされ、診断処理が終了する。S被毒フラグは、例えばその後にS被毒回復制御(高温の触媒温度条件下での所定時間以上のリッチ制御)が実行された後にオフされ、これと同時に劣化診断禁止状態も解除されることとなる。
ここで述べたダブルリッチスパイクを用いる劣化診断の態様については、前記実施例のほか、次のような変形例も可能である。即ち、第4空燃比センサ34が広域空燃比センサからO2センサに置き換えられる。そして前記実施例では上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の吸蔵NOx・酸素量を個別に計測していたものを、変形実施例ではまず上流NOx触媒16の吸蔵NOx・酸素量を計測し、次いで両NOx触媒の合計の吸蔵NOx・酸素量を計測し、後者から前者を差し引いて下流NOx触媒18の吸蔵NOx・酸素量を計測するようにする。具体的には、第3空燃比センサ33の出力値がストイキ相当に達した時点t12から、連続的に、第4空燃比センサ34が所定のリッチ側しきい値V4sに達する時点t13’までの第3空燃比センサ出力値に基づく還元剤量I12’を計測し、次いで第5空燃比センサ35が所定のリッチ側しきい値V5sに達する時点t2’までの第3空燃比センサ出力値に基づく還元剤量I13’を計測する。そして還元剤量I13’から還元剤量I12’を減じて下流NOx触媒18単独についての還元剤量を求める。
この変形例では、高価な広域空燃比センサの代わりに安価なO2センサを用いるので、コストを抑制できるメリットがある。これに対し、前記実施例では、下流NOx触媒18についての還元剤量を広域空燃比センサからなる第4空燃比センサ34で直接計測するので、より高い計測精度を得られるメリットがある。よっていずれを採用するかはコストと精度のバランスを考慮して決定すればよい。
次に、ダブルリッチスパイクを用いない別のNOx吸蔵能の計測方法について説明する。
図9に、第1の計測方法を採用したときの各値の変化を示す。(A)は上流NOx触媒16に流入する排気ガスのNOx濃度(上流入ガスNOx濃度C2)、(B)は上流NOx触媒16に吸蔵されたNOx量(上流吸蔵NOx量M2)、(C)は第4空燃比センサ34の出力、(D)は下流NOx触媒18に吸蔵されたNOx量(下流吸蔵NOx量M3)、(E)は第5空燃比センサ35の出力をそれぞれ示す。図中、Lはリーン、Rはリッチを意味し、第4空燃比センサ34及び第5空燃比センサ35はそれぞれO2センサからなっている。但し広域空燃比センサからなっていてもよい。
ここではリッチスパイク中ではなくリーンバーン運転中に、両NOx触媒16,18の吸蔵NOx量が上流側のものから順次計測される。この計測中、エンジンは定常運転状態であるのが好ましい。上流入ガスNOx濃度C2は、エンジン運転状態に基づいて推定されるか又は別途設けられたNOxセンサで直接検出される。
両NOx触媒16,18がNOxを吸蔵していない空の時点(例えばリッチスパイク終了直後)から、両NOx触媒16,18へのリーンガスの供給が開始される(時点t1)。すると先ず上流NOx触媒16にNOxが吸蔵されていき、次いで下流NOx触媒18にNOxが吸蔵されていく。上流NOx触媒16について、これに満杯までNOxが吸蔵されると上流NOx触媒16の下流側にリーンガスが流出し、第4空燃比センサ34の出力が所定のリーン側しきい値V4Lsに達する(時点t2)。よって、時点t1から時点t2まで、微小時間当たりの上流入ガスNOx濃度C2と排ガス量の積が積算され、最終的な上流吸蔵NOx量M2が求められる。なお排ガス量としては、エアフローメータ5で検出された吸入空気量の値が代用される。同様に、時点t2から、第5空燃比センサ35の出力が所定のリーン側しきい値V5Lsに達する時点t3まで、微小時間当たりの上流入ガスNOx濃度C2と排ガス量の積が積算され、最終的な下流吸蔵NOx量M3が求められる。これらM2,M3に基づき、前記同様に各NOx触媒の正常・劣化が判定されると共に、少なくとも上流NOx触媒16のS被毒が検出される。
次に、第2の計測方法を説明する。この第2の計測方法は第1の計測方法とほぼ同様であるが、第4空燃比センサ34及び第5空燃比センサ35がそれぞれNOxセンサに置き換えられる点が異なる。以下便宜上、これらNOxセンサを第4NOxセンサ34’及び第5NOxセンサ35’と称す。これらNOxセンサは、それぞれ、排気ガスのNOx濃度に比例した出力を発する。第4NOxセンサ34’が上流NOx触媒16と下流NOx触媒18の間に設けられた触媒間NOxセンサをなし、第5NOxセンサ35’が下流NOx触媒18の下流側に設けられた触媒後NOxセンサをなす。
図10に、第2の計測方法を採用したときの各値の変化を示す。(A)は上流入ガスNOx濃度C2、(B)は上流吸蔵NOx量M2、(C)は第4NOxセンサ34’の出力、(D)は下流吸蔵NOx量M3、(E)は第5NOxセンサ35’の出力をそれぞれ示す。両NOx触媒16,18へのリーンガスの供給が開始される(時点t1)と、先ず上流NOx触媒16にNOxが吸蔵されていく。そして上流NOx触媒16に満杯までNOxが吸蔵されると、上流NOx触媒16の下流側にリーンガスが流出し、第4NOxセンサ34’の出力が立ち上がって所定のNOx濃度相当の値B4sに達する(時点t2)。よって、時点t1から時点t2まで、微小時間当たりの上流入ガスNOx濃度C2と排ガス量の積が積算され、最終的な上流吸蔵NOx量M2が求められる。同様に、時点t2から、第5NOxセンサ35’の出力が所定のNOx濃度相当の値B5sに達する時点t3まで、微小時間当たりの上流入ガスNOx濃度C2と排ガス量の積が積算され、最終的な下流吸蔵NOx量M3が求められる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記以外の実施形態を採ることも可能である。例えば前記実施形態ではNOx触媒の上流側に三元触媒を配置した例を示したが、三元触媒のない実施形態や、NOx触媒の下流側に三元触媒を配置した実施形態も可能である。前記実施形態では二つのNOx触媒を設けた例を示したが、NOx触媒の数は3個以上でもよい。この場合、上流側のNOx触媒及び下流側のNOx触媒の少なくとも一方は2個以上のNOx触媒からなってもよい。被毒物質は硫黄に限定されず、他の被毒物質であってもよい。
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。