JP4867594B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、動力源としてエンジンおよびモータを備えた車両の制御装置に関する。
動力源としてエンジンおよびモータを備えた車両の制御装置として特許文献1の技術が開示されている。このハイブリッド車両は、エンジンとモータとを断接する入力クラッチと、モータと駆動輪との間に介装された自動変速機と、を備え、走行モードとして、モータのみを動力源として走行するモータ走行モードと、エンジンを動力源に含みながら走行するエンジン走行モードとを有し、走行状態に応じてこれらの走行モードを自動的に切り替えることで、燃費の向上を図っている。
特開平11−82260号公報
特許文献1に記載の制御装置にあっては、入力クラッチの係合圧を制御し、モータ走行領域とエンジン走行領域との間に設定したスタンバイ制御領域において、入力クラッチのピストンストロークを予め詰めておくスタンバイ制御を行う。すなわち、エンジン走行モードに移行する直前、入力クラッチをすぐに締結できるぎりぎりの開放状態で待機させておく。これにより、モータ走行モードからエンジン走行モードに切り替える際、エンジン始動までの時間を短くして、エンジン再始動の応答性を高めている。
ここで、上記スタンバイ制御を行う場合、フェイル対策を考慮して、油圧センサやストロークセンサ等、入力クラッチの実際の締結状態を監視するセンサが必要となり、しかも、センサ検出値の正確性・信頼性を確保することが重要となる。すなわち、入力クラッチの指令締結状態と実際の締結状態との不一致を正確に認識できない場合、エンジン始動遅れや、これによる発進遅れが発生するおそれがある。また、EV走行時(スタンバイ制御時)に、エンジン連れ回り等が発生し、運転者に違和感を与えるおそれがある。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、入力クラッチの締結状態を検出するセンサに異常が発生したときでも、入力クラッチの指令締結状態と実締結状態との不一致を正確に認識できる車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明の車両の制御装置では、エンジンと、モータと、前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する締結要素とを備え、前記締結要素を締結することで前記エンジンを始動する車両の制御装置において、前記締結要素は、互いに押圧されることで前記締結要素の締結トルクを発生する複数の摩擦部材を有し、前記締結要素の実際の締結状態として、前記複数の摩擦部材間の距離に相関するパラメータを検出する実締結状態検出手段と、前記締結要素の締結トルクの指令値に応じて前記パラメータの目標値を設定し、前記パラメータの目標値を実現するように前記締結要素の締結状態を制御する締結要素制御手段と前記エンジンの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段と、前記実締結状態検出手段の異常を診断する異常診断手段とを設け、前記締結要素制御手段は、前記エンジンの始動を開始する前に、前記締結要素が締結トルクを発生しない範囲で前記複数の摩擦部材間の距離が縮まるような前記パラメータのスタンバイ目標値を設定し、前記パラメータの検出値が前記スタンバイ目標値となるように前記締結要素を制御するスタンバイ制御を行い、前記エンジン作動状態検出手段は、前記エンジンの作動状態として、前記スタンバイ制御中に前記締結要素の締結が指令されてから前記エンジンが始動を開始するまでの時間であるエンジン始動時間を検出し、前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して締結側に所定値以上偏倚し、かつ検出される前記エンジン始動時間が所定値よりも長ければ、前記パラメータの検出値が実値に対して締結側に偏倚する異常が発生していると診断することとした。
よって、本願請求項1に係る発明の車両の制御装置にあっては、エンジン作動状態に基づいて、締結要素(入力クラッチ)の実締結状態を検出する実締結状態検出手段(センサの異常を診断するため、実締結状態検出手段(センサに異常が発生したときでも、締結要素(入力クラッチ)の指令締結状態と実締結状態との不一致を正確に認識できる。
以下、本発明の車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
(駆動系の構成)
まず、実施例1における車両の駆動系の構成を説明する。
図1は、実施例1の車両の制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。このハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有している。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
(エンジン)
エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。なお、エンジン出力軸にはフライホイールFWが設けられている。
(第1クラッチ)
第1クラッチCL1は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装された締結要素であり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧(第1クラッチ圧)により、その締結および開放が制御される。
図2および図3は、第1クラッチCL1の軸方向断面を示す。第1クラッチCL1は、手動変速機に用いられるクラッチと同様の乾式クラッチであり、第1クラッチの入力軸INに接続されたフライホイール30と、フライホイール30に接続されたクラッチカバー31と、クラッチカバー31内に収容されたクラッチディスク32、プレッシャプレート33、および皿バネ(ダイヤフラム)34と、クラッチピストン35と、を有している。
クラッチディスク32の内周側には振動吸収用のトーションスプリング32aが設けられており、クラッチディスク32の中心軸の位置にはハブ32bが設けられている。ハブ32bは第1クラッチCL1の出力軸OUTにスプライン結合されており、軸方向に摺動可能に設けられている。クラッチピストン35は、リング状のスリーブシリンダ36内に軸方向に摺動可能に収容されている。
図2中、上半分はクラッチ締結時を示し、下半分はクラッチ開放時を示す。クラッチピストン35は、シリンダ36内から第1クラッチ圧が抜かれることにより出力軸OUT側にストロークし、これにより第1クラッチCL1が締結する。クラッチ締結状態においては、入力軸IN側に付勢された皿バネ34の外周側がプレッシャプレート33を入力軸IN側に押圧している。プレッシャプレート33は、クラッチディスク32を入力軸IN側に押圧してフライホイール30に押し付け、これによりクラッチディスク32とフライホイール30との間に摩擦力(締結トルク)が発生する。
クラッチ締結状態から、シリンダ36内に第1クラッチ圧が供給されてクラッチピストン35が入力軸IN側にストロークすると、第1クラッチCL1が開放される。すなわち、クラッチピストン35が入力軸IN側にストロークすると、皿バネ34の内周側を入力軸IN側に押圧する。これにより皿バネ34がクラッチカバー31との接触部を支点として弾性変形し、皿バネ34の外周側が出力軸OUT側に変位する。これにより皿バネ34の外周側とフライホイール30との間の軸方向距離が広がって、両者の間に挟まれたクラッチディスク32およびプレッシャプレート33が軸方向に移動可能となる。すなわち、第1クラッチCL1が開放される。
上記のように、クラッチ締結状態においては、フライホイールとクラッチディスクとの間の摩擦力により締結トルクが発生し、入力軸INと出力軸OUTとの間でトルク伝達が可能となる。上記摩擦力は、フライホイール30とクラッチディスク32との間の軸方向距離により決定される。よって、締結トルクは、直接的には、クラッチピストン35の位置により決定され、制御される。
図3は、第1クラッチCL1の部分断面の拡大図である。クラッチピストン35には、クラッチピストン35の位置、すなわちストローク量(変位量)C1Sを検出する第1クラッチストロークセンサ15(以下、単にストロークセンサ15という)が設けられている。以下、クラッチピストン35の位置およびストローク量を、同じ符号C1Sを用いて表す。
(モータジェネレータ)
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
(第2クラッチ)
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装された締結要素(クラッチ)であり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、その締結および開放が制御される。第2クラッチCL2は、ハイブリッド車両専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の締結要素のうち、いくつかの締結要素を流用している。なお、第2クラッチCL2には、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチを用いているが、他の構成としてもよい。
(自動変速機)
自動変速機ATは、前進5速後退1速等の有段階の変速比を、車速VSPやアクセル開度AP等に応じて、予め設定されATコントローラ7に記憶された変速マップに従って自動的に切り替える変速機である。自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
(走行モード)
このハイブリッド車両の駆動系は、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じた3つの走行モードを有している。第1の走行モードは、第1クラッチCL1の開放状態で、モータジェネレータMGの動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モードとしての電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」)である。第2の走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」)である。
第3の走行モードは、第1クラッチCL1は締結状態で第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC(Wet Start Clutch)走行モード」と略称する。)である。このモードは、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに、クリープ走行を達成する。更に、エンジン停止状態からの発進時にエンジン始動しつつ駆動力を出力可能なモードである。
さらに上記HEV走行モードは、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを有している。「エンジン走行モード」は、エンジンEのみを動力源として駆動輪を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジンEとモータジェネレータMGの2つを動力源として駆動輪を動かす。「走行発電モード」は、エンジンEを動力源として駆動輪RR,RLを動かすと同時に、モータジェネレータMGを発電機として機能させる。
上記走行発電モードは、定速運転時や加速運転時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させ、発電した電力をバッテリ4の充電のために使用する。また、減速運転時には、制動エネルギーを利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させ、制動エネルギーを回生する。
(制御系)
次に、実施例1におけるハイブリッド車両の制御系を説明する。ハイブリッド車両の制御系は、後述する各種センサおよびスイッチの他、エンジンコントローラ1、モータコントローラ2、インバータ3、バッテリ4、第1クラッチコントローラ5、第1クラッチ油圧ユニット6、ATコントローラ7、第2クラッチ油圧ユニット8、ブレーキコントローラ9、および統合コントローラ10を有している。
第1クラッチ油圧ユニット6および第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに備えられた図外の油圧コントロールバルブ内に設けられている。
なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が可能なCAN通信線11を介して互いに接続されている。
各種センサおよびスイッチは、エンジン回転数センサ12、レゾルバ13、第1クラッチ油圧センサ14、ストロークセンサ15、アクセル開度センサ16、車速センサ17、第2クラッチ油圧センサ18、AT油温センサ7a、車輪速センサ19、ブレーキストロークセンサ20、モータ回転数センサ21、第2クラッチ出力回転数センサ22、ブレーキ油圧センサ24、およびバッテリ電力センサ25を有している。
(エンジンコントローラ)
エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12が検出したエンジン回転数Neや統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令Te*等の情報に基づき、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。エンジンコントローラ1内には、エンジンEの燃料噴射量やスロットル開度等に基づいてエンジントルクTeを推定するエンジントルク推定部1aが設けられている。エンジン回転数Ne(第1クラッチCL1入力回転数)や推定されたエンジントルクTeの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
(モータコントローラ)
モータコントローラ2は、レゾルバ13が検出したモータジェネレータMGのロータ回転位置、および統合コントローラ10からの目標モータトルク指令Tm*等に基づき、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。モータコントローラ2内には、モータジェネレータMGに流れる電流値に基づいてモータトルクTmを推定するモータトルク推定部2aが設けられている。推定されたモータトルクTmの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
(第1クラッチコントローラ)
第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14が検出した第1クラッチ圧、ストロークセンサ15が検出したストロークセンサ値C1S、および統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令(ストローク目標値C1S*)に基づき、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令(ストローク目標値C1S*を実現する第1クラッチ圧指令値)を演算し、これを第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。検出したストロークセンサ値C1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10に入力される。
(ATコントローラ)
ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16が検出したアクセル開度AP、車速センサ(AT出力回転数センサ)17が検出した車速VSP、第2クラッチ油圧センサ18が検出した第2クラッチ圧、AT油温センサ7aが検出したAT油温、および統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令(第2クラッチ締結トルク目標値)等に基づき、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令を第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。なお、アクセル開度AP、車速VSP、およびAT油温は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10に入力される。
(ブレーキコントローラ)
ブレーキコントローラ9は、車輪速センサ19が検出した4輪の各車輪速、ブレーキストロークセンサ20が検出したブレーキストロークBS、および統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づき、回生協調ブレーキ制御を行う。例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから算出される要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように制御する。
(統合コントローラ)
統合コントローラ10は、主に、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせる機能を有している。統合コントローラ10は、モータ回転数センサ21が検出したモータ回転数Nm、第2クラッチ出力回転数センサ22が検出した第2クラッチ出力回転数N2out、ブレーキ油圧センサ24が検出したブレーキ圧、バッテリ電力センサ25が検出したバッテリ4の使用可能な電力容量(以下、バッテリSOC)、およびCAN通信線11を介して得られた各情報、すなわちエンジン回転数Ne(第1クラッチCL1入力回転数)、ストロークセンサ値C1S、第1、第2クラッチ圧、アクセル開度AP、車速VSP、およびブレーキストロークBS等の入力を受ける。
以下に、図4に示すブロック図を用いて、実施例1の統合コントローラ10にて演算される制御を説明する。例えば、この演算は、制御周期10msec毎に統合コントローラ10で演算される。統合コントローラ10は、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を有している。
(目標駆動力演算)
目標駆動力演算部100では、図5に示す目標駆動力マップを用いて、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。
(目標モード演算)
モード選択部200では、図6に示すEV-HEV選択マップを用いて、走行状態(アクセルペダル開度APOおよび車速VSP)から、目標モードを演算する。但し、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEV走行モード」を目標モードとする。
なお、EV-HEV選択マップには、低車速領域においてアクセルペダル開度APOが大きいときに、大きな駆動力を出力するために、WSCモードが設定されている。HEV→WSC切換線もしくはEV→WSC切換線は、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEのアイドル回転数よりも小さな回転数となる車速VSP1に設定されている。図4中、斜線領域がWSC走行モードの領域である。網掛け領域は、WSC走行モードとEV走行モードと切り換える際のヒステリシス領域である。
(目標充放電演算)
目標充放電演算部300では、所定の目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
図4に示すように、動作点指令部400は、第2クラッチ締結トルク目標値演算部401と、第2クラッチ締結トルク制御部402と、モータ回転数制御部403と、モータトルク制御部404と、第2クラッチ締結トルク推定部405と、切換部406と、第1クラッチ締結トルク目標値演算部410と、第1クラッチストローク目標値演算部411と、スタンバイ制御部412と、第1クラッチ異常診断部420と、フェイルセーフ制御部430と、を有している。
(エンジン制御)
動作点指令部400は、目標駆動力tFoO等に基づき目標エンジントルクTe*を演算し、これをエンジンコントローラ1に出力して、エンジンEの動作を制御する。
また、動作点指令部400には、EV走行モードからHEV走行モードに移行するときにエンジンEを始動する図外のエンジン始動制御部が設けられている。
(モータ制御)
動作点指令部400は、目標駆動力tFoO等に基づき目標モータ回転数Nm*および目標モータトルクTm*を演算し、これらをモータコントローラ2に出力して、モータジェネレータMGの動作を制御する。すなわち、モータ回転数制御とモータトルク制御を行う。
具体的には、モータ回転数制御部403が、第2クラッチCL2の駆動輪側の出力回転数よりもモータジェネレータMG側の入力回転数が高くなるように目標モータ回転数Nm*を制御する。また、モータトルク制御部404が、目標駆動力tFoOに基づいて目標モータトルクTm*を制御する。
さらに、切換部406が、後述する第2クラッチ締結トルク目標値TCL2*と推定された第2クラッチ締結トルクTCL2とに基づいて、モータ回転数制御部403による制御とモータトルク制御部404による制御とを切り換える。
(変速制御)
動作点指令部400では、シフトスケジュールに沿って目標変速段(目標ATシフト)を自動的に設定し、変速制御部500に出力する。変速制御部500は、この目標変速段を達成するように、自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御し、自動変速機AT内の各クラッチ締結トルクを制御する。尚、このシフトスケジュールは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものであり、アップシフト線、ダウンシフト線等が設定されている。
第2クラッチ締結トルク目標値演算部401は、目標駆動力tFoOに基づいて第2クラッチ締結トルク目標値TCL2*を演算し、第2クラッチ締結トルク制御部402および切換部406に出力する。第2クラッチ締結トルク制御部402は、第2クラッチ締結トルク目標値TCL2*を変速制御部500に出力して、第2クラッチCL2の締結トルクが第2クラッチ締結トルク目標値TCL2*となるように制御する。第2クラッチ締結トルク推定部405は、推定されたモータトルクTmやモータ回転数Nm等に基づいて第2クラッチCL2の締結トルクTCL2を推定し、切換部406に出力する。
(第1クラッチ制御および走行モード切換制御)
第1クラッチCL1の締結状態は、所定の制御ロジックに基づいて決定される。エンジン始動を必要としているとき(HEV走行モードへの移行要求時)はスリップ制御が行われ、エンジンEが始動した状態でトルクを出力しているとき(HEV走行モード)は完全締結状態とされ、エンジンEの駆動力を必要としないとき(EV走行モード)は完全解放状態とされる。
第1クラッチ締結トルク目標値演算部410は、目標モード、エンジン回転数Ne(第1クラッチCL1入力回転数)、およびモータ回転数Nm(第1クラッチCL1出力回転数)等に基づき、第1クラッチ締結トルク目標値TCL1*を演算する。
第1クラッチストローク目標値演算部411は、第1クラッチ締結トルク目標値TCL1*を実現するストローク目標値C1S*を演算し、第1クラッチコントローラ5に出力する。これにより、第1クラッチCL1の締結および開放を制御して、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。ストローク目標値C1S*は、クラッチピストン35の目標位置C1S*に相当する。
(第2クラッチのスリップ制御および切換制御)
エンジン始動要求時には第2クラッチCL2をスリップ制御すると共に、切換部406によりモータトルク制御からモータ回転数制御に切り換える。一方、エンジン始動が完了すると、モータ回転数制御からモータトルク制御に切り換えると共に、第2クラッチCL2を完全締結する。
すなわち、エンジン始動時のようにモータジェネレータMGに駆動トルクに加えてエンジン始動分のトルクを発生させるシーンでは、第2クラッチCL2の締結トルクTCL2を制御することで、駆動輪側には第2クラッチ締結トルクTCL2以上のトルクが出力されることがなく、安定した走行を達成する。
このとき、実施例1では、モータトルク制御からモータ回転数制御に切り替えられる。具体的には、回転数N2outに所定スリップ量を加算した値を目標回転数として設定する。このように、モータジェネレータMGを回転数制御とし、第2クラッチCL2を締結トルク制御とすることで、駆動輪には確実に第2クラッチCL2の締結トルク相当値が出力される。
尚、実施例1のようにモータ回転数制御に切り換えることなく、第2クラッチCL2を完全締結したままエンジン始動に必要なトルクをモータジェネレータMGに加算することでモータトルク制御を継続する構成や、第2クラッチCL2をスリップ制御させつつエンジン始動に必要なトルクをモータジェネレータMGに加算することでモータトルク制御を継続する構成としてもよい。
〔第1クラッチ制御〕
HEV走行モード時には第1クラッチCL1の締結制御を実行し、EV走行モード時には第1クラッチCL1のスタンバイ制御を実行する。
(締結制御)
HEV走行モードにおける第1クラッチCL1の締結時には、ストロークセンサ値C1Sに基づくことなく、締結時のストローク目標値C1S*(β)に応じた第1クラッチ圧指令を出力して、クラッチピストン35の実位置をオープン制御する。以下、HEV走行モード時の締結状態におけるクラッチピストン35の位置を締結位置C1S(β)という。締結時のストローク目標値C1S*(β)は、クラッチピストン35の締結目標位置C1S*に相当する。
(スタンバイ制御)
スタンバイ制御部412は、スタンバイ制御を実行する。スタンバイ制御は、第1クラッチCL1を完全開放するEV走行モード時において、第1クラッチCL1を(HEV走行モードに切り替わった後)すぐに締結できるぎりぎりの開放状態に待機させる制御である。以下、EV走行モード時の待機状態におけるクラッチピストン35の位置C1Sをスタンバイ位置C1S(α)という。
図7は、各走行モードにおける第1クラッチCL1の締結状態、すなわちクラッチピストン35の位置C1Sを示す模式図である。
シフト位置がP、Nレンジであるときや、走行モードがHEVモードであるときに、第1クラッチCL1は完全締結される。DレンジでEV走行モード時にはスタンバイ制御が実行され、第1クラッチCL1はスタンバイ状態に維持される。すなわち、クラッチピストン35は、次のエンジン始動に備えてスタンバイ位置C1S(α)に待機する。なお、クラッチピストン35の位置はクラッチディスク32の位置と同視できるため、図7および後述の図12、図13において、クラッチピストン35をクラッチディスク32として描く。
(フローチャート)
図8は、スタンバイ制御処理を表すフローチャートである。下記のように、第1クラッチCL1の締結状態からスタンバイ状態への切り替えはフィードバック制御により行い、スタンバイ状態の維持はオープン制御により行う。
ステップS10では、スタンバイ制御を開始するか否かを判定する。具体的には、目標モードがHEV走行モードからEV走行モードに切り替わったか否かを判定する。EV走行モードに切り替わったときはスタンバイ制御開始と判定してステップS11に移り、切り替わっていないときはステップS14に移りオープン制御による締結を継続する。
ステップS11では、第1クラッチ締結トルク目標値TCL1*を所定の変化率でゼロに減少させる。これに伴いストローク目標値C1S*が、所定の変化率で所定のストローク目標値C1S**にまで減少する。ストローク目標値C1S**は、第1クラッチ締結トルク目標値TCL1*がゼロのとき(第1クラッチCL1の開放時)のストローク目標値C1S*であり、スタンバイ目標位置C1S*(α)にクラッチピストン35が位置するときのストローク値に相当する。ここで、スタンバイ目標位置C1S*(α)とは、スタンバイ位置C1S(α)の目標値である。その後、ステップS12に移る。
ステップS12では、ステップS13におけるフィードバック制御の終了条件が成立したか否かを判定する。成立したときはステップS14に移り、成立していないときはステップS13に移る。
本実施例1では、ストロークセンサ値C1Sがストローク目標値C1S*に収束した状態が所定時間継続したとき、上記終了条件が成立したものとする。なお、ステップS10におけるスタンバイ制御開始判定後、所定時間経過したとき、上記終了条件が成立したものとしても良く、特に限定しない。
ステップS13では、クラッチピストン35の位置C1Sを目標位置C1S*に一致させるフィードバック制御を行う。具体的には、ストロークセンサ値C1Sとストローク目標値C1S*との偏差を演算し、この偏差に基づき、所定のゲインおよび式を用いてストローク目標値C1S*を補正し、補正後のストローク目標値C1S*を第1クラッチコントローラ5に出力する(図19参照)。その後、今回の制御周期を終了する。
ステップS14では、クラッチピストン35の実位置のオープン制御を行う。具体的には、目標値C1S*に応じた第1クラッチ圧指令を演算し、この制御指令を第1クラッチコントローラ5に出力する。その後、今回の制御周期を終了する。
〔第1クラッチの異常診断〕
本実施例1では、装置を小型・軽量化し、コストを低減するために、第1クラッチCL1として、湿式クラッチではなく乾式クラッチを使用している。乾式クラッチでは、湿式クラッチとは異なり、油圧ではなくクラッチピストンの位置(ストローク)を調整することにより、締結容量を制御する。よって、乾式クラッチを用いて上記スタンバイ制御を行う場合、クラッチピストンのスタンバイ目標位置を設定し、センサにより検出したクラッチピストンの実位置とスタンバイ目標位置とに基づいてフィードバック制御を実行することになる。したがって、ストロークセンサ等、クラッチピストンの位置を検出するセンサが必要となり、しかも、センサ検出値の正確性・信頼性を確保することが重要となる。
すなわち、センサ検出値が正常値に対してオフセットすると、第1クラッチCL1の実際のピストン位置を正確に認識できないため、スタンバイ制御時において、ピストン位置がスタンバイ目標位置に対してオフセットする。よって、スタンバイ制御を終了して第1クラッチCL1を締結する際、エンジン始動遅れや、これによる発進遅れが発生するおそれがある。また、EV走行モード時(スタンバイ制御時)に、エンジン連れ回り等が発生し、運転者に違和感を与えるおそれがある。
この問題を解決するため、ストロークセンサのオフセットを検出した場合にはスタンバイ制御を中止し、入力クラッチを常時締結とする制御を行うことも考えられる。しかし、この場合、オフセット判定後には常時HEV走行のみとなり、燃費が大幅に悪化してしまう、という新たな問題が生じる。
したがって、本実施例1では、乾式の第1クラッチCL1のピストン位置制御において、ストロークセンサ15の異常を判定した場合であっても、異常の内容に応じた適切なフェイルセーフ制御を実行することで、スタンバイ制御を可能な限り継続することとした。以下、詳細について説明する。
第1クラッチ異常診断部420は、ストロークセンサ15のオフセット等、第1クラッチCL1の異常を診断する。
図9に示すように、第1クラッチ異常診断部420は、ストロークセンサ値検出部421と、エンジン始動時間計測部422と、エンジン回転数検出部423と、ストロークセンサ値記憶部424と、エンジン始動時間記憶部425と、ストロークセンサ値比較部426と、エンジン始動時間比較部427と、判定部428と、を有している。
ストロークセンサ値検出部421は、第1クラッチ締結トルク指令TCL1*とストロークセンサ値C1S、および両者の関係を検出(モニタ)する。その際、締結制御からスタンバイ制御への移行時、およびスタンバイ制御から締結制御への移行時における、締結トルク指令TCL1*に対するストロークセンサ値C1Sの応答を検出する。具体的には、第1クラッチCL1の開放または締結が指令されてから、ストロークセンサ値C1Sが目標値C1S*(α)に収束するまでの応答時間T1(α)、および目標値C1S*(β)に収束するまでの応答時間T1(β)を検出する。
エンジン始動時間計測部422は、EV走行モード(スタンバイ状態)からHEV走行モード(締結状態)への切換時において、第1クラッチCL1の締結が指令されてからエンジンEが始動を開始するまでに要する時間T2を計測する。
エンジン回転数検出部423は、EV走行モード時におけるエンジン回転数Neを検出する。
ストロークセンサ値記憶部424は、第1クラッチCL1の正常時において、第1クラッチ締結トルク指令TCL1*とストロークセンサ値C1S、および両者の関係を記憶する。その際、ストロークセンサ値C1Sの上記応答時間T1を記憶する。記憶した応答時間T1を正常応答時間T1*とする。
エンジン始動時間記憶部425は、第1クラッチCL1の正常時において、上記エンジン始動時間T2を記憶する。記憶したエンジン始動時間T2を正常エンジン始動時間T2*とする。
ストロークセンサ値比較部426は、記憶したストロークセンサ値と検出したストロークセンサ値、および正常応答時間T1*と検出した応答時間T1を、それぞれ比較する。
エンジン始動時間比較部427は、正常エンジン始動時間T2*と計測したエンジン始動時間T2とを比較する。
判定部428は、上記比較結果に基づき、第1クラッチCL1に発生している異常の内容を判定する。
(フローチャート)
図10は、第1クラッチ異常診断部420で実行される診断処理を表すフローチャートである。
ステップS20では、第1クラッチ締結トルク指令TCL1*とストロークセンサ値C1S、および両者の関係を検出する。また、応答時間T1を検出する。その後、ステップS21に移る。
(締結側オフセット判定)
ステップS21では、記憶したストロークセンサ値C1Sと検出したストロークセンサ値C1Sとの比較結果に基づき、ストロークセンサ値C1Sが締結側に所定値以上オフセットしているか否かを判定する。締結側に所定値以上オフセットしていればステップS22に移り、締結側に所定値以上オフセットしていなければステップS25に移る。
ステップS22では、次のエンジン始動時において、エンジン始動時間T2を計測する。その後、ステップS23に移る。
ステップS23では、計測したエンジン始動時間T2が、正常エンジン始動時間T2*(しきい値)よりも長いか否かを判定する。T2がT2*よりも長ければステップS24に移り、T2がT2*以下であればステップS20に戻る。
ステップS24では、ストロークセンサ15が締結側にオフセットしていると判定する。その後、本制御フローを終了する。
(開放側オフセット判定)
ステップS25では、記憶したストロークセンサ値C1Sと検出したストロークセンサ値C1Sとの比較結果に基づき、ストロークセンサ値C1Sが開放側に所定値以上オフセットしているか否かを判定する。開放側に所定値以上オフセットしていなければステップS29に移り、開放側に所定値以上オフセットしていればステップS26に移る。
ステップS26では、EV走行モード時のエンジン回転数Neを計測する。その後、ステップS27に移る。
ステップS27では、計測したエンジン回転数Neがゼロより大きいか否かを判定する。ゼロより大きければステップS28に移り、ゼロであればステップS20に戻る。
ステップS28では、ストロークセンサ15が開放側にオフセットしていると判定する。その後、本制御フローを終了する。
(油圧系故障判定)
ステップS29では、正常応答時間T1*と検出した応答時間T1との比較結果に基づき、ストロークセンサ値C1Sに応答遅れが発生しているか否かを判定する。応答遅れが発生していればステップS30に移り、応答遅れが発生していなければステップS32に移る。
ステップS30では、応答遅れ時間(=T1−T1*)が所定のしきい値よりも大きいか否かを判定する。しきい値よりも大きければステップS31 に移り、しきい値以下であればステップS20に戻る。
ステップS31では、第1クラッチCL1の油圧装置等のメカ系に故障(請求項4のクラッチ系故障に対応)が発生していると判定する。その後、本制御フローを終了する。
(オープン・ショート故障判定)
ステップS32では、ストロークセンサ値C1Sのモニタ結果に基づき、ストロークセンサ値C1Sが固定値であるか否かを判定する。固定値であればステップS33に移り、固定値でなければステップS20に戻る。
ステップS33では、第1クラッチCL1のオープン故障またはショート故障であると判定する。その後、本制御フローを終了する。
次に、図11〜図17に基づき、上記制御フローにおける各判定の根拠を説明する。
図11および図14〜図17は、第1クラッチCL1の締結トルク指令値TCL1*およびストロークセンサ値C1Sのタイムチャートを示す。図中(a)(b)はそれぞれ、(a)締結状態からスタンバイ状態へ移行する場合、および(b)スタンバイ状態から締結状態に移行する場合を示す。
図11は第1クラッチCL1の正常時、図14はストロークセンサ15の締結側オフセット時、図15は開放側オフセット時、図16はクラッチ油圧系故障時、図17はストロークセンサ15のオープンまたはショート故障時のタイムチャートをそれぞれ示す。
図14〜図17において、異常時のストロークセンサ値C1Sを破線で示し、正常時に記憶しておいたストロークセンサ値を実線で示す。
〔正常時〕
第1クラッチ正常時の制御においては、ストロークセンサ値を記憶しておく。また、第1クラッチ締結トルク指令に対するストロークセンサ値の関係、具体的には、ストロークセンサ値の応答を記憶しておく。
(締結→スタンバイ)
図11(a)に示すように、t1以前において、第1クラッチCL1は締結状態である。締結トルク指令値TCL1は所定の値TCL1*(β)に維持されており、オープン制御により、ストロークセンサ値C1Sは、締結時のストローク目標値C1S*(β)に維持されている。
t1において、目標モードがHEV走行モードからEV走行モードに切り替わり、第1クラッチCL1の開放指令が出力される。これによりt1以後、スタンバイ制御が実行される。まず、フィードバック制御を実行し、第1クラッチCL1を以下のようにスタンバイ状態へ切り替える。
t1以後、締結トルク指令値TCL1*は徐々に減少され、t2において、所定値TCL1*(α)=0となる。TCL1*の減少に伴い、ストローク目標値C1S*は、徐々に開放側に変更され、t2において、スタンバイ状態を実現するストローク目標値(スタンバイ目標位置)C1S*(α)となる。
ストロークセンサ値は、実値C1Sと目標値C1S*との偏差に基づきフィードバック制御されるため、t3において、実値C1Sが目標値C1S*(α)に収束する。これにより、第1クラッチCL1がスタンバイ状態へ切り替えられる。
t3以後、フィードバック制御からオープン制御に切り替える。締結トルク指令値TCL1*(α)=0およびストロークセンサ目標値C1S*(α)に応じた第1クラッチ圧指令が出力されるため、クラッチピストン35はスタンバイ位置に固定される。よって、ストロークセンサ値C1Sも目標値C1S*(α)に固定される。
(スタンバイ→締結)
図11(b)に示すように、t4以前において、第1クラッチCL1はスタンバイ状態である。オープン制御により、上記のようにクラッチピストン35はスタンバイ位置に固定されている。よって、ストロークセンサ値C1Sも目標値C1S*(α)に固定される。
t4において、目標モードがEV走行モードからHEV走行モードに切り替わり、第1クラッチCLの締結指令が出力される。これによりt4以後、締結制御が実行され、オープン制御によってクラッチピストン35は締結位置にストローク制御される。
t4以後、締結トルク指令値TCL1*は徐々に増大され、t7において所定値TCL1*(β)となる。TCL1*の増大に伴い、ストローク目標値C1S*は徐々に締結側に変更され、t7において締結時のストローク目標値C1S*(β)となる。クラッチピストン35の位置が締結位置C1S*(β)と一致することにより、第1クラッチが締結状態へ切り替えられる。
なお、t5からt6までの間、締結トルク指令値TCL1*および目標値C1S*が一定値に維持されることにより、クラッチピストン35の位置も、締結位置C1S*(β)に対して開放側の所定位置に維持される。これにより半クラッチ状態となり締結ショックが防止される。
t7以後、締結トルク指令値TCL1*(β)および目標値C1S*(β)に応じた第1クラッチ圧指令が出力されるため、クラッチピストン35は締結位置に固定される。よって、ストロークセンサ値C1Sも目標値C1S*(β)に固定される。
〔締結側オフセット時〕
図12は、図11(a)のt1以前においてストロークセンサ15が締結側にオフセットした場合、具体的には、ストロークセンサ値C1Sがクラッチピストン35の実位置に対して締結側にΔC1Sだけオフセットした場合における第1クラッチCL1の模式図を示す。
図12(a)は、ストロークセンサ値C1Sがフィードバック補正される前のクラッチピストン35の位置を示す。
図12(b)は、図11(a)のt1〜t3(スタンバイ制御の開始時)において、ストロークセンサ値C1Sがスタンバイ目標位置C1S*(α)と一致するようにフィードバック補正された後のクラッチピストン35の位置を示す。(締結側にΔC1Sだけオフセットした)ストロークセンサ値C1Sを開放側にΔC1Sだけフィードバック補正することになるので、これに伴い、クラッチピストン35の実位置は、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して開放側にΔC1Sだけオフセットして位置決めされることになる。
(締結→スタンバイ)
図14(a)は、t1以前における締結時に、ストロークセンサ値C1Sが、正常時のストロークセンサ値C1S*(β)に対して締結側にΔC1Sだけオフセットした場合(図12参照)のタイムチャートを示す。
t1以降、ストロークセンサ値C1Sが、ストローク目標値C1S*と一致するようにフィードバック補正される。t31において、ストロークセンサ値C1Sが、正常時のストロークセンサ値として記憶されているスタンバイ目標位置C1S*(α)に収束する。
このようにスタンバイ制御時には、ストロークセンサ値C1Sにオフセットが発生していても、ストロークセンサ値C1Sが、フィードバック補正により正常時のストロークセンサ値(スタンバイ目標位置C1S*(α))に収束する。このため正常時とオフセット時との間でストロークセンサ値C1Sのズレは生せず、よってオフセットを検知できない。
(スタンバイ→締結)
図14(b)は、図14(a)のt1〜t31においてストロークセンサ値C1Sを開放側にΔC1Sだけフィードバック補正した後、第1クラッチCL1を締結制御する場合のタイムチャートを示す。
t4以前のスタンバイ制御時においては、図12(b)に示すように、フィードバック補正後のクラッチピストン35の実位置は、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して開放側にΔC1Sだけオフセットして位置決めされている。
t4以降の締結時には、ストロークセンサ値C1Sに基づかず、ストローク目標値C1S*に応じた第1クラッチ圧指令を出力することにより、クラッチピストン35の実位置をオープン制御する。
このため、ストローク目標値C1S*が完全締結時のストローク目標値C1S*(β)に設定されるt7以降、クラッチピストン35の実位置が締結目標位置C1S*(β)となる。このときストロークセンサ値C1Sは、実位置に対して締結側にΔC1Sだけオフセットしているため、締結時のストローク目標値C1S*(β)に対して締結側にΔC1Sだけオフセットする。締結時のストローク目標値C1S*(β)は正常時のストロークセンサ値として記憶されている。
このように、ストロークセンサ値C1Sにオフセットが発生していた場合、締結制御時においては、検出されるストロークセンサ値C1Sと、記憶していた正常時のストロークセンサ値C1S*(β)との間にズレが生ずる。このため、ストロークセンサ値C1Sのオフセットを検知できる。
(診断ロジック)
ストロークセンサ値C1Sのオフセットを検知した場合、以下の診断ロジックにより、締結側オフセットと判定できる。
締結制御時に検出されるストロークセンサ値C1Sが、正常時のストロークセンサ値(C1S*(β))に対して締結側にオフセットしていた場合(図10のステップS21)、次のエンジン始動時(EV走行モードからHEV走行モードへ移行する際)におけるエンジン始動時間T2を計測する(ステップS22)。
ストロークセンサ値C1Sが締結側にオフセットしていれば、エンジン始動時刻が遅れる。なぜなら、エンジン始動時間T2は、クラッチピストン35をスタンバイ位置から締結位置までストロークさせることによって第1クラッチCL1を締結するのに要する時間と考えられるところ、上記のようにスタンバイ制御時において開放側にΔC1Sだけオフセットして位置決めされたクラッチピストン35(図12(b)参照)を、このスタンバイ位置から締結位置にまでストロークさせるのに要する時間T2は、オフセット分(ΔC1S)のストロークに要する時間ΔT2だけ、正常エンジン始動時間T2*よりも長くなるからである(T2=T2*+ΔT2)。
よって、計測したエンジン始動時間T2と正常エンジン始動時間(しきい値)T2*とを比較して(ステップS23)、T2がT2*よりも長ければ、締結側オフセットが発生していると判定できる(ステップS24)。
〔開放側オフセット時〕
図13は、図11(a)のt1以前においてストロークセンサ15が開放側にオフセットした場合、具体的には、ストロークセンサ値C1Sがクラッチピストン35の実位置に対して開放側にΔC1Sだけオフセットした場合における第1クラッチCL1の模式図を示す。
図13(a)は、ストロークセンサ値C1Sがフィードバック補正される前のクラッチピストン35の位置を示す。
図13(b)は、図11(a)のt1〜t3(スタンバイ制御の開始時)において、ストロークセンサ値C1Sがスタンバイ目標位置C1S*(α)と一致するようにフィードバック補正された後のクラッチピストン35の位置を示す。(開放側にΔC1Sだけオフセットした)ストロークセンサ値C1Sを締結側にΔC1Sだけフィードバック補正することになるので、これに伴い、クラッチピストン35の実位置は、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して締結側にΔC1Sだけオフセットして位置決めされることになる。
(締結→スタンバイ)
図15(a)は、t1以前における締結時に、ストロークセンサ値C1Sが、正常時のストロークセンサ値C1S*(β)に対して開放側にΔC1Sだけオフセットした場合(図13参照)のタイムチャートを示す。
t1以降、ストロークセンサ値C1Sが、スタンバイ目標位置C1S*と一致するようにフィードバック補正される。t31において、ストロークセンサ値C1Sが、正常時のストロークセンサ値として記憶されているスタンバイ目標位置C1S*(α)に収束する。
(スタンバイ→締結)
図15(b)は、図15(a)のt1〜t31においてストロークセンサ値C1Sを締結側にΔC1Sだけフィードバック補正した後、第1クラッチCL1を締結制御する場合のタイムチャートを示す。
t4以前のスタンバイ制御時においては、図13(b)に示すように、フィードバック補正後のクラッチピストン35の実位置は、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して締結側にΔC1Sだけオフセットして位置決めされている。
t4以降の締結時には、ストロークセンサ値C1Sに基づかず、クラッチピストン35の実位置をオープン制御する。このため、ストローク目標値C1S*が完全締結時のストローク目標値C1S*(β) に設定されるt7以降、クラッチピストン35の実位置が締結目標位置C1S*(β)となる。一方、実位置に対してΔC1Sだけ開放側にオフセットした状態のストロークセンサ値C1Sは、目標値C1S*(β)に収束せず、(正常時のストロークセンサ値として記憶されている)締結時のストローク目標値C1S*(β)に対して開放側にΔC1Sだけオフセットする。
(診断ロジック)
ストロークセンサ値C1Sのオフセットを検知した場合、以下の診断ロジックにより、開放側オフセットと判定できる。
締結制御時に検出されるストロークセンサ値C1Sが、正常時のストロークセンサ値(C1S*(β))に対して開放側にオフセットしていた場合(図10のステップS25)、次のEV走行モード時におけるエンジン回転数Neを計測する(ステップS26)。
ストロークセンサ値C1Sが開放側にオフセットしていれば、エンジン回転(エンジン連れ回り)が発生する。なぜなら、この場合、上記のように締結側にオフセットしてクラッチピストン35を位置決めすることになるため(図13(b)参照)、スタンバイ制御により第1クラッチCL1を開放すべきEV走行モード時においても、第1クラッチCL1が十分に開放されずに締結されてしまう可能性がある。すなわち、締結トルクTCL1が発生する場合があり、この場合、モータトルクTmが第1クラッチCL1の出力軸OUTから入力軸INに伝達されて、エンジン回転(エンジン連れ回り)が発生することになる。
よって、EV走行モード時のエンジン回転数Neがゼロより大きいか否かを検出し(ステップS27)、エンジン回転が発生していれば開放側オフセットが発生していると判定できる(ステップS28)。
〔油圧系故障時〕
図16(a)(b)は、第1クラッチCL1の油圧系に故障が発生した場合のタイムチャートを示す。
(締結→スタンバイ)
図16(a)に示すように、t1以降、ストロークセンサ値C1Sのフィードバック制御が行われ、t32において、ストロークセンサ値C1Sがスタンバイ時のストローク目標値C1S*(α)に収束する。この収束時刻t32は正常時の時刻t3よりも遅い。すなわち、応答時間T1(α)は、正常応答時間T1*(α)よりも長い。言い換えれば、フィードバック制御が行われるt1からt32までの間、締結トルク指令TCL1*に対するストロークセンサ値C1Sの応答が正常時よりも遅れる。t1からt21までの間におけるストロークセンサ値C1Sの変化勾配の大きさ(時間当たり変化量)は、t1からt2までの間において記憶された正常時のストロークセンサ値C1Sの変化勾配の大きさよりも小さい。
(スタンバイ→締結)
図16(b)に示すように、t4以降、クラッチピストン35の実位置のオープン制御が行われ、t71において、ストロークセンサ値C1Sが締結時のストローク目標値C1S*(β)に一致する。この一致時刻t71は正常時の時刻t7よりも遅い。すなわち、応答時間T1(β)は、正常応答時間T1*(β)よりも長い。言い換えれば、締結が行われるt4からt71までの間、締結トルク指令TCL1*に対するストロークセンサ値C1Sの応答が正常時よりも遅れる。t4からt71までの間におけるストロークセンサ値C1Sの変化勾配の大きさは、t4からt7までの間において記憶された正常時のストロークセンサ値C1Sの変化勾配の大きさよりも小さい。
このように、油圧故障が発生した場合、スタンバイ制御から締結制御への移行時(図16(a)参照)においても、締結制御からスタンバイ制御への移行時(図16(b)参照)においても、応答時間T1のズレが発生するため、油圧故障を検知できる。
(診断ロジック)
応答時間T1のズレを検知した場合、以下の診断ロジックにより油圧故障の発生を判定できる。
第1クラッチCL1の開放または締結指令後、ストロークセンサ値C1Sがスタンバイ時(または締結時)のストローク目標値C1S*(α)(またはC1S*(β))に一致するまでの応答時間T1が正常応答時間T1*よりも長い場合(図10のステップS29)、ストロークセンサ15の故障による応答遅れは可能性が低い一方、第1クラッチCL1の油圧系の故障による応答遅れの可能性が高い。具体的には、自動変速機ATの油圧コントロールバルブ内に設けられた第1クラッチ油圧ユニット6において、ソレノイド故障や油圧劣化、またはシリンダ36内におけるクラッチピストン35の動作異常が発生している可能性がある。
よって、応答時間T1が正常応答時間T1*よりも所定のしきい時間ΔT1以上長い場合(ステップS30)、油圧系故障が発生していると判定できる(ステップS31)。
ただし、AT油温が高すぎる場合や低すぎる場合には油圧応答が悪化する。よって、AT油温が判定に与える影響を排除するため、AT油温を考慮して判定を行う。
〔オープン、ショート故障時〕
図17(a)(b)は、ストロークセンサ15にオープン故障またはショート故障が発生した場合のタイムチャートを示す。
図17(a)(b)に示すように、締結トルク指令TCL1*やストローク目標値C1S*の変化に関わらず、ストロークセンサ15は、スタンバイ時のストローク目標値C1S*(α)よりも開放側の固定値C1S、または締結時のストローク目標値C1S*(β)よりも締結側の固定値C1Sを出力し続けている。
(診断ロジック)
このように、締結トルク指令TCL1*に対してストロークセンサ値C1Sに変化が生じず、開放側または締結側に固定値を出力し続けた場合には(図10のステップS32)、ストロークセンサ15の断線または短絡、すなわちオープン故障またはショート故障が発生していると判定できる(ステップS33)。
〔第1クラッチのフェイルセーフ制御〕
フェイルセーフ制御部430は、第1クラッチ異常診断部420による診断結果に応じたフェイルセーフ制御を行う。
図18は、フェイルセーフ制御部430によるフェイルセーフ制御の流れを示すフローチャートである。
ステップS40では、フェイルセーフ処理の前段階として、第1クラッチ異常診断部420が、上記のように、図10のステップS20〜S33に示す診断処理を実行する。
(締結側オフセット時フェイルセーフ処理)
ステップS41では、締結側オフセットと判定したか否かを検出する。締結側オフセットと判定したときはステップS42に移り、その他のときはステップS43に移る。
ステップS42では、締結側にオフセットした分だけ、スタンバイ時のストローク目標値C1S*(α)、すなわちスタンバイ目標位置C1S*(α)を補正する。その後、ステップS52に移り、通常制御を実行する。
図12に示すように、ストロークセンサ値C1Sが締結側にΔC1Sだけオフセットしている時、クラッチピストン35の実位置は、ストロークセンサ値C1Sに対して開放側にΔC1Sだけオフセットしている。よって、図12(b)に示すように、スタンバイ時のストローク目標値C1S*(α)にストロークセンサ値C1Sを一致させるフィードバック制御を行った後には、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して、実位置が開放側にΔC1Sだけオフセットする。
ここで、オフセット分のΔC1Sだけ実位置を締結側に修正すれば、当初のスタンバイ目標位置C1S*(α)にクラッチピストン35を配置できる。したがって、当初のストローク目標値C1S*(α)を締結側にΔC1Sだけオフセットさせて補正し、スタンバイ目標位置C1S*(α)を更新する。その後、通常制御に移行する。
通常制御に移行後、スタンバイ制御を実行すると、ストロークセンサ値C1Sは、オフセット補正後のストローク目標値C1S*(α)に一致するようにフィードバック補正される。一方、ストロークセンサ値C1Sは締結側にΔC1Sだけオフセットしたままであり、クラッチピストン35の実位置は、ストロークセンサ値C1Sに対して開放側にΔC1Sだけオフセットしている。よって、スタンバイ制御におけるフィードバック補正後、クラッチピストン35の実位置は、当初のスタンバイ目標位置C1S*(α)となるように修正される。
(開放側オフセット時フェイルセーフ処理)
図18のステップS43では、開放側オフセットと判定したか否かを検出する。開放側オフセットと判定したときはステップS44に移り、その他のときはステップS45に移る。
ステップS44では、開放側にオフセットした分だけ、スタンバイ目標位置C1S*(α)を補正する。その後、ステップS52に移り、通常制御を実行する。
図13(b)に示すように、ストロークセンサ値C1Sが開放側にΔC1Sだけオフセットしている場合、ストロークセンサ値C1Sをストローク目標値C1S*(α)に一致させるフィードバック制御を行った後には、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して実位置が締結側にΔC1Sだけオフセットする。
ここで、オフセット分のΔC1Sだけ実位置を開放側に修正すれば、当初のスタンバイ目標位置C1S*(α)にクラッチピストン35を配置できる。したがって、当初のストローク目標値C1S*(α)を開放側にΔC1Sだけオフセットさせて補正し、スタンバイ目標位置C1S*(α)を更新する。その後、通常制御に移行する。
通常制御に移行後にスタンバイ制御を実行すると、ストロークセンサ値C1Sは、オフセット補正後のストローク目標値C1S*(α)に一致するようにフィードバック補正される。一方、ストロークセンサ値C1Sは開放側にΔC1Sだけオフセットしたままであり、クラッチピストン35の実位置は、ストロークセンサ値C1Sに対して締結側にΔC1Sだけオフセットしている。よって、フィードバック補正後、実位置は当初のスタンバイ目標位置C1S*(α)となるように修正される。
(油圧系故障時フェイルセーフ処理)
図18のステップS45では、油圧系故障と判定したか否かを検出する。油圧系故障と判定したときはステップS52に移り、通常制御を継続する。その他のときはステップS46に移る。
図16に示すように、油圧系故障時には、クラッチピストン35のストローク応答が遅れるだけであり、(ストロークセンサ値C1Sで表される)クラッチピストン35の実位置は、スタンバイ時または締結時の(ストローク目標値C1S*(α)(β)で表される)目標位置と一致している。すなわち、スタンバイ制御時についてみると、クラッチピストン35の実位置はスタンバイ目標位置C1S*(α)となり、EV走行モード時にエンジン連れ回りが発生することはない。よって、運転者に与える違和感は少なく、走行も可能である。したがって、油圧系故障が発生していることを運転者に報知した上で、通常制御を継続する。
(オープン故障時またはショート故障時のフェイルセーフ処理)
図18のステップS46では、オープン故障またはショート故障と判定したか否かを検出する。オープン故障またはショート故障と判定したときはステップS47に移り、その他のときはステップS41に戻る。
ステップS47では、故障直前における締結トルク指令TCL1*とストロークセンサ値C1Sとの関係を表すマップに基づいてスタンバイ目標位置C1S*(α)を演算し、第1クラッチコントローラ5に出力する。すなわち、ストロークセンサ値C1Sに基づいてフィードバック補正したストローク目標値C1S*(α)ではなく、上記所定のマップに基づいて演算したストローク目標値C1S*(α)を第1クラッチコントローラ5に出力することにより、クラッチピストン35の実位置をスタンバイ目標位置C1S*(α)にオープン制御する。その後、ステップS48に移る。
上記マップとして、第1クラッチ異常診断部420のストロークセンサ値記憶部424が記憶した、第1クラッチ締結トルク指令TCL1*とストロークセンサ値C1Sとの関係を表すマップ(図11参照)を用いることができる。
なお、故障直前に第1クラッチコントローラ5が演算した第1クラッチ圧指令値と、ストロークセンサ15が検出したストロークセンサ値C1Sとの関係を表すマップを作成し、このマップに基づいてスタンバイ目標位置C1S*(α)を演算することとしてもよい。この場合、ストローク目標値C1S*(α)を実現する第1クラッチ圧指令値を第1クラッチコントローラ5(第1クラッチ油圧ユニット6)に出力することになる。
以上の制御をイメージ化すると、図19のようになる。オープン故障またはショート故障の検出前には、ストロークセンサ値C1Sを用いてスタンバイ目標位置C1S*(α)をフィードバック補正するスタンバイ制御を行う。一方、オープン故障またはショート故障の検出後には、上記マップを用いて設定したスタンバイ目標位置C1S*(α)をそのまま第1クラッチコントローラ5に出力するスタンバイ制御に切り替える。
ステップS48では、EV走行モード時にエンジン回転数Neを検出し、エンジン連れ回りが発生しているか否かを判定する。エンジン連れ回りを検出したときはステップS49に移り、検出しなかったときはステップS47に戻る。
すなわち、オープン制御によるスタンバイ制御時、クラッチピストン35の実位置が、理想的なスタンバイ目標位置C1S*(α)よりも締結側に位置してしまうと、エンジン連れ回りが発生して運転者に違和感を与えるおそれがあるため、EV走行モード時にはエンジン回転数Neをモニタする。
ステップS49では、ステップS48で検出したエンジン回転数Neに応じて、上記オープン制御によるスタンバイ制御において用いるスタンバイ目標位置C1S*(α)を、所定値だけ開放側にオフセット補正する。その後、ステップS50に移る。
すなわち、エンジン連れ回りが発生したときであっても、オープン制御によるスタンバイ制御を継続する。
ステップS50では、エンジン連れ回りを検出した回数が所定のしきい値よりも大きいか否かを判定する。しきい値よりも大きいときはステップS51に移り、しきい値以下であるときはステップS47に戻る。
ステップS51では、第1クラッチCL1のスタンバイ制御を実行せず、第1クラッチCL1を常時締結とする。その後、本制御フローを終了する。
すなわち、ある一定回数以上、EV走行モード時のエンジン連れ回りが発生したときは、上記オープン制御によるスタンバイ制御の継続を諦めて、第1クラッチCL1を常時締結とする。言い換えると、HEV走行モードに固定する。
なお、オープン制御により、クラッチピストン35の実位置が、理想的なスタンバイ目標位置C1S*(α)よりも開放側に位置したときには、エンジン始動開始が遅れるのみであり、エンジン連れ回り発生時のような不都合は生じないため、上記オープン制御によるスタンバイ制御を継続する。
[実施例1の効果]
以下、実施例1から把握される、本発明のハイブリッド車両の制御装置が有する効果を列挙する。
(1)エンジンEと、モータジェネレータMGと、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されエンジンEとモータジェネレータMGとを断接する第1クラッチCL1と、第1クラッチCL1を締結することでエンジンEを始動するエンジン始動制御部と、を備えた車両の制御装置において、第1クラッチCL1の締結トルク指令TCL1*に応じて第1クラッチCL1の締結状態を制御する締結要素制御手段(第1クラッチコントローラ5等)と、締結トルク指令TCL1*に対する実際の締結状態を検出する実締結状態検出手段(ストロークセンサ15)と、エンジンEの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段(エンジン回転数センサ12、エンジン始動時間計測部422、エンジン回転数検出部423)と、モータジェネレータMGの作動状態を検出するモータ作動状態検出手段(モータ回転数センサ21、モータトルク推定部2a)と、エンジン作動状態またはモータ作動状態に基づき、実締結状態検出手段(ストロークセンサ15)の異常を診断する第1クラッチ異常診断部420と、を設けた。
このように、第1クラッチCL1の実締結状態を検出する実締結状態検出手段(ストロークセンサ15)の異常を、エンジン作動状態等に基づいて診断するため、実締結状態検出手段(ストロークセンサ15)に異常が発生したときでも、第1クラッチCL1の指令締結状態と実締結状態との不一致を正確に認識できる。すなわち、センサ検出値の正確性・信頼性を確保することができ、エンジン始動遅れやエンジン連れ回り等の発生を防止できる。
(2)上記締結要素制御手段は、第1クラッチCL1の締結トルク指令TCL1*に応じて第1クラッチCL1のクラッチピストン35の位置を制御する第1クラッチコントローラ5等であり、上記実締結状態検出手段は、締結トルク指令TCL1*に対するクラッチピストン35の位置(ストロークセンサ値C1S)を検出するピストン位置検出手段(ストロークセンサ15)であり、第1クラッチCL1の正常制御中において、締結トルク指令TCL1*に対するクラッチピストン35の位置(ストロークセンサ値C1S)を記憶する正常ピストン位置記憶手段(ストロークセンサ値記憶部424)と、第1クラッチCL1の正常制御中におけるエンジン作動状態(正常エンジン始動時間T2*、EV走行モードにおけるエンジン回転数Ne=0)を記憶する正常エンジン作動状態記憶手段(エンジン始動時間記憶部425)と、を設け、第1クラッチ異常診断部420の各部(ストロークセンサ値比較部426、エンジン始動時間比較部427、判定部428)は、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値と記憶値とを比較するとともに、エンジン作動状態(エンジン始動時間T2、エンジン回転数Ne)の検出値と記憶値とを比較し、これらの比較結果に基づき、ピストン位置検出手段(ストロークセンサ15)の異常を診断することとした。
すなわち、ストロークセンサ値C1Sの検出値と記憶値とを比較するとともに、エンジン作動状態の検出値と記憶値とを比較し、これらの比較結果に基づき、第1クラッチCL1の異常(ストロークセンサ15のオフセットや第1クラッチCL1の油圧系故障等)を診断する。このため、ストロークセンサ値C1Sに異常が発生したときでも、第1クラッチCL1のクラッチピストン35の目標位置C1S*と実位置との不一致を正確に認識できる。したがって、第1クラッチCL1の異常内容を正確に判定でき、故障の種類を特定できる。
また、ストロークセンサ15の検出値の正確性・信頼性を確保することができるため、第1クラッチCL1として乾式クラッチを用いた場合でも、ストロークセンサ15により検出したクラッチピストン35の実位置と目標位置C1S*とに基づいてフィードバック制御を実行することが可能になる。よって、第1クラッチCL1として乾式クラッチを利用するシステムにおいてスタンバイ制御の機能を追加することができ、装置の小型・軽量化によりコストを低減することと、スタンバイ制御を実行することとを両立できる。
(3)上記エンジン作動状態は、第1クラッチCL1の締結指令後、エンジンEが始動を開始するまでの時間であるエンジン始動時間T2であり、第1クラッチ異常診断部420は、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が記憶値に対して締結側に所定値以上偏倚し、かつエンジン始動時間の計測値T2が記憶値T2*よりも所定値以上大きいときに、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が実際のクラッチピストン位置に対して締結側に偏倚していると診断することとした。
すなわち、ストロークセンサ値C1Sが締結側にオフセットしていれば、クラッチピストン35は、スタンバイ制御時において開放側にオフセットして位置決めされる(図12(b)参照)。よって、この状態から第1クラッチCL1を締結してエンジンEを始動させる場合、オフセット分のストロークに要する時間ΔT2だけエンジン始動時刻が遅れ、エンジン始動時間の計測値T2は正常エンジン始動時間T2*よりも長くなる(T2=T2*+ΔT2)。このため、計測したエンジン始動時間T2と正常エンジン始動時間(しきい値)T2*とを比較して(ステップS23)、T2がT2*よりも長ければ、締結側オフセットが発生していると判定できる(ステップS24)。したがって、第1クラッチCL1の異常内容を正確に判定でき、オフセットの種類を特定できる。
(4)上記エンジン作動状態は、第1クラッチCL1の開放制御中(EV走行モード時)におけるエンジン回転数Neであり、第1クラッチ異常診断部420は、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が記憶値に対して開放側に所定値以上偏倚し、かつエンジン回転数Neの検出値が記憶値であるゼロよりも大きいときに、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が実際のクラッチピストン位置に対して開放側に偏倚していると診断することとした。
すなわち、ストロークセンサ値C1Sが開放側にオフセットしていれば、クラッチピストン35は、締結側にオフセットして位置決めされる(図13(b)参照)。よって、第1クラッチCL1を開放すべきEV走行モード時においても、第1クラッチCL1が十分に開放されずに、エンジン回転(エンジン連れ回り)が発生する可能性がある。よって、EV走行モード時のエンジン回転数Neがゼロより大きいか否かを検出し(ステップS27)、エンジン回転が発生していれば開放側オフセットが発生していると判定できる(ステップS28)。したがって、第1クラッチCL1の異常内容を正確に判定でき、オフセットの種類を特定できる。
(5)第1クラッチ異常診断部420は、締結トルク指令TCL1*に対するピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値の応答が、ピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の記憶値の応答よりも所定以上遅れるときに、第1クラッチCL1のクラッチ系故障が発生していると診断することとした。
すなわち、第1クラッチCL1の開放または締結指令後、ストロークセンサ値C1Sがストローク目標値C1S*(α)(またはC1S*(β))に一致するまでの応答時間T1が正常応答時間T1*よりも長い場合(図10のステップS29)、ストロークセンサ15の故障による応答遅れは可能性が低い一方、第1クラッチCL1の油圧系(クラッチ系)の故障による応答遅れの可能性が高い。よって、応答時間T1が正常応答時間T1*よりも所定のしきい時間ΔT1以上長い場合(ステップS30)、油圧系故障が発生していると判定できる(ステップS31)。したがって、第1クラッチCL1の異常内容を正確に判定でき、故障の種類を特定できる。
(6)第1クラッチ異常診断部420は、締結トルク指令TCL1*に対して、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が開放側または締結側に固定されているときは、ピストン位置検出手段(ストロークセンサ15)に断線故障または短絡故障が発生していると診断することとした。
このように、締結トルク指令TCL1*に対してストロークセンサ値C1Sに変化が生じず、開放側または締結側に固定値を出力し続けた場合には(図10のステップS32)、ストロークセンサ15の断線または短絡、すなわちオープン故障またはショート故障が発生していると判定できる(ステップS33)。したがって、第1クラッチCL1の異常内容を正確に判定でき、故障の種類を特定できる。
(7)締結トルク指令TCL1*に応じてクラッチピストン35の目標位置(ストローク目標値C1S*)を設定する第1クラッチストローク目標値演算部411と、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が実際のクラッチピストン位置に対して偏倚していると診断されたときに、ストローク目標値C1S*(スタンバイ目標位置C1S*)を偏倚分だけオフセットさせて補正するフェイルセーフ制御部430と、を設けた。
このように第1クラッチCL1の異常判定結果に応じた適切なフェイルセーフ制御を実行することにより、スタンバイ制御を可能な限り継続できる。すなわち、ストロークセンサ15の検出値がオフセットした後も、ストロークセンサ15の検出値を用いたスタンバイ制御が可能となるため、制御の信頼性が向上する。また、第1クラッチCL1を常時締結とするフェイルセーフ制御を回避でき、常時HEV走行モードのみとなって燃費が大幅に悪化する事態を防止できる。言い換えれば、EV走行モードを実現できるため、燃費が悪化しない。
(8)フェイルセーフ制御部430は、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が実際のピストン位置に対して締結側に偏倚していると診断されたときに、ストローク目標値C1S*(スタンバイ目標位置C1S*(α))を締結側に偏倚分だけ補正することとした。
すなわち、ストロークセンサ値C1Sが締結側にΔC1Sだけオフセットしている時、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して、クラッチピストン35の実位置が開放側にΔC1Sだけオフセットする(図12(b)参照)。よって、当初のストローク目標値C1S*(α)を締結側にΔC1Sだけオフセットさせて補正し、スタンバイ目標位置C1S*(α)を更新する。通常制御に移行後、スタンバイ制御においてフィードバック補正が行われると、クラッチピストン35の実位置は、当初のスタンバイ目標位置C1S*(α)となるように修正される。
(9)フェイルセーフ制御部430は、クラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値が実際のクラッチピストン位置に対して開放側に偏倚していると診断されたときに、目標位置を開放側に前記偏倚分だけ補正することとした。
すなわち、ストロークセンサ値C1Sが開放側にΔC1Sだけオフセットしている時、スタンバイ目標位置C1S*(α)に対して、クラッチピストン35の実位置が締結側にΔC1Sだけオフセットする(図13(b)参照)。よって、当初のストローク目標値C1S*(α)を開放側にΔC1Sだけオフセットさせて補正し、スタンバイ目標位置C1S*(α)を更新する。通常制御に移行後、スタンバイ制御においてフィードバック補正が行われると、クラッチピストン35の実位置は、当初のスタンバイ目標位置C1S*(α)となるように修正される。
(10)エンジン作動状態検出手段(エンジン回転数検出部423)は、第1クラッチCL1の開放制御中(EV走行モード時)におけるエンジン回転数Neを検出し、ピストン位置検出手段(ストロークセンサ15)に断線故障または短絡故障が発生していると診断されたときにフェイルセーフ制御を行うフェイルセーフ制御部430を設け、フェイルセーフ制御部430は、断線故障または短絡故障の直前における締結トルク指令TCL1*とクラッチピストン位置(ストロークセンサ値C1S)の検出値との関係を表すマップに基づいて、第1クラッチCL1の開放状態におけるクラッチピストン35の目標位置(スタンバイ目標位置C1S*(α))を設定する第2目標位置設定手段(ステップS47に相当)と、上記エンジン回転数Neがゼロより大きいエンジン連れ回り状態を検出したときに、前回の制御周期において設定された目標位置(スタンバイ目標位置C1S*(α))を上記エンジン回転数Neに応じた所定値だけ開放側に補正する目標位置補正手段(ステップS48、S49に相当)と、所定回数以上、上記エンジン連れ回り状態を検出したときに第1クラッチCL1を締結状態とする完全締結手段(ステップS50、S51に相当)と、を有することとした。
すなわち、オープン故障またはショート故障の検出後は(ステップS46)、所定のマップを用いて設定したスタンバイ目標位置C1S*(α)をそのまま第1クラッチコントローラ5に出力するオープン制御によるスタンバイ制御に切り替える(ステップS47)。これにより、オープン故障またはショート故障の検出後であっても、スタンバイ制御を継続できる。
また、上記オープン制御において用いるスタンバイ目標位置C1S*(α)を、EV走行モード時に検出したエンジン回転数Ne(ステップS48)に応じた所定値だけ開放側にオフセット補正する(ステップS49)。これにより、エンジン連れ回りが発生した場合であっても、エンジン連れ回りを抑止し、運転者に与える違和感を低減しつつ、オープン制御によるスタンバイ制御を継続できる。
さらに、所定回数以上、エンジン連れ回りを検出したときには、第1クラッチCL1を常時締結としてHEV走行モードに固定する(ステップS50、S51)。これにより、エンジン連れ回りを解消でき、運転者に与える違和感を解消できる。
(11)第1クラッチCL1のクラッチ系故障が発生していると診断されたときに、故障を運転者に報知するフェイルセーフ制御部430を設けた。
すなわち、油圧系故障時には、クラッチピストン35のストローク応答が遅れるだけであり、クラッチピストン35の実位置は目標位置と一致している(図16参照)。スタンバイ制御時についてみると、クラッチピストン35の実位置はスタンバイ目標位置C1S*(α)となり、EV走行モード時にエンジン連れ回りが発生することはない。よって、運転者に与える違和感は少なく、走行も可能である。したがって、油圧系故障が発生していることを運転者に報知した上で、通常制御を継続する。このように故障を運転者に告知することにより、故障箇所の修理、点検を促すことができる。
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、第2クラッチCL2として自動変速機ATに内蔵されたクラッチを利用する例を示したが、モータジェネレータと変速機との間に第2クラッチを追加して介装したり、または、変速機と駆動輪との間に第2クラッチを追加して介装(例えば、特開2002−144921号公報参照)しても良い。さらには、第1クラッチ(エンジンクラッチ)のみを持つハイブリッド車両にも適用できる。
実施例1では、第1クラッチCL1として乾式クラッチを用い、ストロークセンサ15を用いて第1クラッチをフィードバック制御することとしたが、第1クラッチCL1として湿式クラッチを用い、油圧センサを用いて第1クラッチをフィードバック制御することとしてもよい。この場合にも、本発明の制御装置を適用することにより、油圧センサに異常が発生したときでも、第1クラッチCL1の指令締結状態と実締結状態との不一致を正確に認識できる。すなわち、センサ検出値の正確性・信頼性を確保することができ、エンジン始動遅れやエンジン連れ回り等の発生を防止できる。
実施例1では、ストロークセンサ値C1Sの応答遅れを、応答時間T1により判定したが、締結トルク指令値TCL*に対するストロークセンサ値C1Sの勾配(時間当たりの変化率)の大きさにより判定することとしてもよい。
実施例1では、第1クラッチCL1の異常をエンジン始動時間T2やエンジン回転数Neに基づき検出することとした。言い換えると、第1クラッチCL1の異常がエンジンEの作動状態に与える影響に基づいて、第1クラッチCL1の異常を検出することとした。エンジンEとモータジェネレータMGとは第1クラッチCL1を介して断接される構成となっているため、第1クラッチCL1の締結状態(締結トルクTCL1)に応じて、エンジンEとモータジェネレータMGとは負荷を及ぼし合う。すなわち、エンジンEの作動状態とモータジェネレータMGの作動状態とは影響を及ぼし合う。
よって、第1クラッチCL1に異常が発生していれば、その異常は第1クラッチ制御時におけるエンジンEおよびモータジェネレータMGの作動状態の異常として現れる。実施例1は、第1クラッチCL1の異常がエンジンEの作動状態に与える影響に基づいて、第1クラッチCL1の異常を検出するものである。
これに対し、第1クラッチCL1の異常がモータジェネレータMGの作動状態に与える影響に基づいて、第1クラッチCL1の異常を検出することもできる。
上記のように、本実施例1のハイブリッド車両の制御装置においては、エンジン始動要求時において第1クラッチCL1を締結する際、すなわちスタンバイ制御から締結制御への移行時に、モータ回転数制御を行う。第1クラッチCL1に異常が発生し、第1クラッチCL1の締結トルクが正常値に対して偏倚すると、エンジンEからモータジェネレータMGに伝達されるトルク(モータジェネレータMGの負荷)も正常値に対して偏倚する。よって、モータジェネレータMGの回転数を一定に維持するためのモータトルクTmも正常値に対して偏倚することになる。したがって、モータトルクTmの偏倚、具体的にはモータジェネレータMGに流れる電流値の偏倚に基づいて、第1クラッチCL1の異常を検出できる。
一方、HEV走行モードからEV走行モードへの移行時において第1クラッチCL1を開放する際、すなわち締結制御からスタンバイ制御への移行時には、モータトルク制御を行っている。第1クラッチCL1に異常が発生し、締結トルクTCL1が正常値に対して偏倚すると、エンジンEからモータジェネレータMGに伝達されるトルク(モータジェネレータMGの負荷)も正常値に対して偏倚する。よって、モータトルクTmを目標値に維持するための目標モータトルクTm*(制御電流値)と、実際にモータジェネレータMGに発生する負荷トルクTmとの間に偏差が発生し、この偏差がモータ回転数Nmの変動として現れる。したがって、モータ回転数Nmの偏倚に基づいて、第1クラッチCL1の異常を検出できる。
よって、第1クラッチCL1の異常がモータジェネレータMGの作動状態(モータトルクTmやモータ回転数Nm)に与える影響に基づいて、第1クラッチCL1の異常を検出することとしてもよい。具体的には、動作点指令部400において、第1クラッチCL1の正常時における推定モータトルクTmおよびモータ回転数Nmを記憶する記憶部と、推定モータトルクTmおよびモータ回転数Nmの検出値と記憶値とを比較する比較部と、を設け、判定部428は、上記比較結果に基づき、第1クラッチCL1に発生している異常の内容を判定する。
この場合、ストロークセンサ値C1Sの検出値と記憶値との偏差、およびモータジェネレータMGの作動状態に基づいて第1クラッチCL1の異常を判定するため、ストロークセンサ値C1Sに異常が発生した場合でも第1クラッチCL1のクラッチピストン35の実位置を正確に認識できる。したがって、上記(1)と同様の効果を有する。
実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両を示す全体システム図である。 第1クラッチの軸方向断面図である。 第1クラッチの軸方向部分断面図である。 実施例1の制御装置における統合コントローラの制御ブロック図である。 目標駆動力マップである。 EV-HEV選択マップである。 第1クラッチの締結状態を示す模式図である。 第1クラッチのスタンバイ制御処理を表すフローチャートである。 第1クラッチ異常診断部の構成を示す図である。 第1クラッチの異常診断処理を表すフローチャートである。 第1クラッチの締結トルク指令値およびストロークセンサ値のタイムチャートである(正常時)。 締結側オフセット時における第1クラッチの模式図である。 開放側オフセット時における第1クラッチの模式図である。 第1クラッチの締結トルク指令値およびストロークセンサ値のタイムチャートである(締結側オフセット時)。 第1クラッチの締結トルク指令値およびストロークセンサ値のタイムチャートである(開放側オフセット時)。 第1クラッチの締結トルク指令値およびストロークセンサ値のタイムチャートである(油圧系故障時)。 第1クラッチの締結トルク指令値およびストロークセンサ値のタイムチャートである(オープン故障またはショート故障時)。 第1クラッチのフェイルセーフ制御の流れを示すフローチャートである。 オープン故障時またはショート故障時のフェイルセーフ処理の制御ブロック図である。
符号の説明
E エンジン
MG モータジェネレータ
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
7a AT油温センサ
10 統合コントローラ
12 エンジン回転数センサ
14 第1クラッチ油圧センサ
15 第1クラッチストロークセンサ
21 モータ回転数センサ
22 第2クラッチ出力回転数センサ
35 クラッチピストン
410 第1クラッチ締結トルク目標値演算部
411 第1クラッチストローク目標値演算部
412 スタンバイ制御部
420 第1クラッチ異常診断部
421 ストロークセンサ値検出部
422 エンジン始動時間計測部
423 エンジン回転数検出部
424 ストロークセンサ値記憶部
425 エンジン始動時間記憶部
426 ストロークセンサ値比較部
427 エンジン始動時間比較部
428 判定部
430 フェイルセーフ制御部

Claims (15)

  1. エンジンと、モータと、前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する締結要素とを備え、前記締結要素を締結することで前記エンジンを始動する車両の制御装置において、
    前記締結要素は、互いに押圧されることで前記締結要素の締結トルクを発生する複数の摩擦部材を有し、
    前記締結要素の実際の締結状態として、前記複数の摩擦部材間の距離に相関するパラメータを検出する実締結状態検出手段と、
    前記締結要素の締結トルクの指令値に応じて前記パラメータの目標値を設定し、前記パラメータの目標値を実現するように前記締結要素の締結状態を制御する締結要素制御手段と
    前記エンジンの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段と
    前記実締結状態検出手段の異常を診断する異常診断手段とを設け、
    前記締結要素制御手段は、前記エンジンの始動を開始する前に、前記締結要素が締結トルクを発生しない範囲で前記複数の摩擦部材間の距離が縮まるような前記パラメータのスタンバイ目標値を設定し、前記パラメータの検出値が前記スタンバイ目標値となるように前記締結要素を制御するスタンバイ制御を行い、
    前記エンジン作動状態検出手段は、前記エンジンの作動状態として、前記スタンバイ制御中に前記締結要素の締結が指令されてから前記エンジンが始動を開始するまでの時間であるエンジン始動時間を検出し、
    前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して締結側に所定値以上偏倚し、かつ検出される前記エンジン始動時間が所定値よりも長ければ、前記パラメータの検出値が実値に対して締結側に偏倚する異常が発生していると診断する
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  2. エンジンと、モータと、前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する締結要素とを備え、前記締結要素を締結することで前記エンジンを始動する車両の制御装置において、
    前記締結要素は、互いに押圧されることで前記締結要素の締結トルクを発生する複数の摩擦部材を有し、
    前記締結要素の実際の締結状態として、前記複数の摩擦部材間の距離に相関するパラメータを検出する実締結状態検出手段と、
    前記締結要素の締結トルクの指令値に応じて前記パラメータの目標値を設定し、前記パラメータの目標値を実現するように前記締結要素の締結状態を制御する締結要素制御手段と、
    前記エンジンの作動状態を検出するエンジン作動状態検出手段と、
    前記実締結状態検出手段の異常を診断する異常診断手段とを設け、
    前記締結要素制御手段は、前記エンジンの始動を開始する前に、前記締結要素が締結トルクを発生しない範囲で前記複数の摩擦部材間の距離が縮まるような前記パラメータのスタンバイ目標値を設定し、前記パラメータの検出値が前記スタンバイ目標値となるように前記締結要素を制御するスタンバイ制御を行い、
    前記エンジン作動状態検出手段は、前記エンジンの作動状態として、前記スタンバイ制御中におけるエンジン回転数を検出し、
    前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して開放側に所定値以上偏倚し、かつ検出される前記エンジン回転数がゼロよりも大きければ、前記パラメータの検出値が実値に対して開放側に偏倚する異常が発生していると診断する
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  3. エンジンと、モータと、前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する締結要素とを備え、前記締結要素を締結することで前記エンジンを始動する車両の制御装置において、
    前記締結要素は、互いに押圧されることで前記締結要素の締結トルクを発生する複数の摩擦部材を有し、
    前記締結要素の実際の締結状態として、前記複数の摩擦部材間の距離に相関するパラメータを検出する実締結状態検出手段と、
    前記締結要素の締結トルクの指令値に応じて前記パラメータの目標値を設定し、前記パラメータの目標値を実現するように前記締結要素の締結状態を制御する締結要素制御手段と、
    前記モータの回転数が目標モータ回転数に一致するように前記モータを制御するモータ回転数制御を行い、または前記モータのトルクが目標モータトルクに一致するように前記モータを制御するモータトルク制御を行うモータ制御手段と、
    前記モータの作動状態として、前記モータのトルクまたは回転数を検出するモータ作動状態検出手段と、
    前記実締結状態検出手段の異常を診断する異常診断手段とを設け、
    前記締結要素制御手段は、前記エンジンの始動を開始する前に、前記締結要素が締結トルクを発生しない範囲で前記複数の摩擦部材間の距離が縮まるような前記パラメータのスタンバイ目標値を設定し、前記パラメータの検出値が前記スタンバイ目標値となるように前記締結要素を制御するスタンバイ制御を行い、
    前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して締結側に所定値以上偏倚し、かつ前記モータ回転数制御中の前記モータのトルクの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記モータのトルクの検出値よりも小さいか、または前記モータトルク制御中の前記モータの回転数の検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記モータの回転数の検出値よりも大きければ、前記パラメータの検出値が実値に対して締結側に偏倚する異常が発生していると診断する
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  4. エンジンと、モータと、前記エンジンと前記モータとの間に介装され前記エンジンと前記モータとを断接する締結要素とを備え、前記締結要素を締結することで前記エンジンを始動する車両の制御装置において、
    前記締結要素は、互いに押圧されることで前記締結要素の締結トルクを発生する複数の摩擦部材を有し、
    前記締結要素の実際の締結状態として、前記複数の摩擦部材間の距離に相関するパラメータを検出する実締結状態検出手段と、
    前記締結要素の締結トルクの指令値に応じて前記パラメータの目標値を設定し、前記パラメータの目標値を実現するように前記締結要素の締結状態を制御する締結要素制御手段と、
    前記モータの回転数が目標モータ回転数に一致するように前記モータを制御するモータ回転数制御を行い、または前記モータのトルクが目標モータトルクに一致するように前記モータを制御するモータトルク制御を行うモータ制御手段と、
    前記モータの作動状態として、前記モータのトルクまたは回転数を検出するモータ作動状態検出手段と、
    前記実締結状態検出手段の異常を診断する異常診断手段とを設け、
    前記締結要素制御手段は、前記エンジンの始動を開始する前に、前記締結要素が締結トルクを発生しない範囲で前記複数の摩擦部材間の距離が縮まるような前記パラメータのスタンバイ目標値を設定し、前記パラメータの検出値が前記スタンバイ目標値となるように前記締結要素を制御するスタンバイ制御を行い、
    前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して開放側に所定値以上偏倚し、かつ前記モータ回転数制御中の前記モータのトルクの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記モータのトルクの検出値よりも大きいか、または前記モータトルク制御中の前記モータの回転数の検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記モータの回転数の検出値よりも小さければ、前記パラメータの検出値が実値に対して開放側に偏倚する異常が発生していると診断する
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    前記パラメータの検出値が実値に対して偏倚していると診断されたときに、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して偏倚している分だけ、前記パラメータの目標値を補正する第1フェイルセーフ手段を設けたことを特徴とする車両の制御装置。
  6. 請求項5に記載の車両の制御装置において、
    前記第1フェイルセーフ手段は、前記パラメータの検出値が実値に対して締結側に偏倚していると診断されたときに、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して偏倚している分だけ、前記パラメータの目標値を締結側に補正することを特徴とする車両の制御装置。
  7. 請求項5または6に記載の車両の制御装置において、
    前記第1フェイルセーフ手段は、前記パラメータの検出値が実値に対して開放側に偏倚していると診断されたときに、前記締結要素の制御時における前記パラメータの検出値が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値に対して偏倚している分だけ、前記パラメータの目標開放側に補正することを特徴とする車両の制御装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時に、締結トルクの指令値に対して前記パラメータの検出値が開放側または締結側に固定されていると、前記実締結状態検出手段の断線故障または短絡故障が発生していると診断することを特徴とする車両の制御装置。
  9. 請求項8に記載の車両の制御装置において、
    前記実締結状態検出手段の断線故障または短絡故障が発生していると診断されたときに、前記スタンバイ目標値を実現する前記締結要素の制御指令値を前記パラメータの検出値によらず所定のマップにより設定して前記スタンバイ制御を行う第2フェイルセーフ手段を設けたことを特徴とする車両の制御装置。
  10. 請求項9に記載の車両の制御装置において
    前記第2フェイルセーフ手段は、前記マップを用いたスタンバイ制御中、検出される前記エンジン回転数がゼロより大きければ、前記スタンバイ目標を前記エンジン回転数に応じた所定値だけ開放側に補正することを特徴とする車両の制御装置。
  11. 請求項10に記載の車両の制御装置において、
    前記第2フェイルセーフ手段は、前記スタンバイ目標値を補正した後、前記エンジン回転数がゼロより大きい状態を所定回数以上検出すると、前記締結要素を締結状態とすることを特徴とする車両の制御装置。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    前記異常診断手段は、前記締結要素の制御時における締結トルクの指令値に対する前記パラメータの検出値の応答が、前記締結要素の正常制御時に記憶された前記パラメータの検出値の前記応答よりも所定以上遅れると、前記締結要素の故障が発生していると診断することを特徴とする車両の制御装置。
  13. 請求項12に記載の車両の制御装置において、
    前記締結要素の故障が発生していると診断されたときに、前記故障を運転者に報知する第3フェイルセーフ手段を設けたことを特徴とする車両の制御装置。
  14. 請求項1ないし13のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    前記パラメータは、前記複数の摩擦部材間の距離を制御するクラッチピストンの位置であることを特徴とする車両の制御装置。
  15. 請求項1ないし13のいずれか1つに記載の車両の制御装置において、
    前記パラメータは、前記複数の摩擦部材間の距離を制御する油圧であることを特徴とする車両の制御装置。
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