JP4867374B2 - 繊維強化樹脂成形品の成形装置 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化された発泡樹脂成形品の成形装置に関する。
近年、樹脂成形品において、軽量化等の目的で発泡性樹脂を材料とするものが多用されつつある。このような発泡樹脂成形品の成形方法は、熱可塑性樹脂に予め物理発泡剤としての超臨界状態の流体(Super Critical Fluid:SCF)を注入し、キャビティ(成形金型内に形成された空間)に射出したときに圧力を開放することによって微細に発泡させるのが一般的である。
このような発泡樹脂成形品において、より一層の軽量化のため、ガラス繊維等の強化繊維により強度や剛性の向上を図ったものが開発されている。このような繊維強化発泡樹脂成形品の成形方法では、樹脂中に強化繊維を混合分散させるため、射出ユニットのシリンダー内(成形金型に射出注入するまでの過程)において、スクリューを用いて混練可塑化(溶融)される。そして、溶融した樹脂中に超臨界状態の流体を加圧注入し、成形金型に射出するまでその圧力を維持して発泡を抑制し、キャビティ内で初めて圧力を開放することにより発泡させることになる。例えば、特許文献1に示される方法では、a)熱可塑性樹脂を可塑化・溶融し、溶融樹脂にガスを溶解させて計量し、b)金型のキャビティ内に計量された溶融樹脂を射出し、c)キャビティ内の溶融樹脂を加圧することによりガスの発泡を抑制すると共に、発泡したガスを溶融樹脂中に再溶解し、d)樹脂の冷却・固化に伴う体積減少によりガスを発泡させる、といった手順が採られる。
特開2005−144750号公報
上記の特許文献1に示されているような従来の成形方法で繊維強化発泡樹脂成形品を成形しようとすると、まず、強化繊維と樹脂とを攪拌混練し、可塑化する段階で、強化繊維がスクリューにより破断されて折損し、樹脂成形品の物性が所期の目標物性に対して低下するという問題があった。特に、超臨界状態の流体等からなる物理発泡剤を可塑化混練用のシリンダー内に供給するような場合に、次のような問題があった。
すなわち、発泡剤として超臨界状態の流体を用いる場合には、発泡を抑えるために加圧した状態で溶融樹脂中にこの流体を注入し、成形金型にこの溶融樹脂を射出注入する過程でもその圧力を維持して、キャビティ内で初めて圧力を開放することになる。したがって、射出されるまでのシリンダー内での溶融樹脂に掛かる圧力は高いものとなる。スクリューの螺旋形状により溶融樹脂が下流(射出端)側に送り出されるが、超臨界状態の流体を注入する位置よりも上流側にも上記の圧力が掛かるため、この部分に何も設けなければ、溶融樹脂、さらには投入される樹脂ペレットや強化繊維にもそれらが押し戻される方向に力が掛かることになる。そこで、このような超臨界状態の流体の注入位置より上流側において、超臨界状態の流体が注入された溶融樹脂等の逆流防止を図るための機構をスクリューの途中に設けることが必要になる。
通常、このような逆流防止機構は、樹脂の流路が迷路状となった迷路構造を備え、それより上流側に樹脂等が押し戻されるのを防止することになる。そして、このような逆流防止機構を有するスクリューを用いると、強化繊維が混入された樹脂がこの逆流防止機構(迷路構造)を通過する過程で強化繊維の破断が生じることとなる。したがって、発泡剤として超臨界状態の流体を用いる繊維強化発泡樹脂成形品の成形方法においては、この強化繊維の折損による物性の低下がより深刻なものとなる。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、スクリューに逆流防止機構を設ける必要をなくし、このことにより強化繊維が折損されることを防止するとともに、可塑化された樹脂中での物理発泡剤の混合分散性を向上させ、樹脂成形品の強度、剛性等の物性向上を図ることのできる繊維強化樹脂成形品の成形装置を提供することを目的とするものである。
請求項1に記載の発明は、内部に樹脂が射出注入されるキャビティを有する成形金型と、スクリューを備えた材料送給シリンダー内で、強化繊維と樹脂とを可塑化混練する可塑
化混練部と、前記可塑化混練部で可塑化された樹脂に物理発泡剤を注入するとともに、成形に必要な量の樹脂を計量した上で、前記成形金型のキャビティ内に射出する計量射出部と、を備えた繊維強化樹脂成形品の成形装置であって、前記可塑化混練部で可塑化された後に少なくとも一つのノズルまたはバルブを通過した樹脂に物理発泡剤を注入する発泡剤注入部と、物理発泡剤の注入位置から成形金型のキャビティに至る間の樹脂流路上において、樹脂に振動を付与することにより、前記樹脂中における前記物理発泡剤の混合分散を促進させる振動付与手段とが設けられていることを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によれば、スクリューを備えた材料送給シリンダーに内で強化繊維と樹脂とが可塑化混練された後に、この樹脂に物理発泡剤が注入される。すなわち、可塑化混練部で可塑化され、強化繊維が混入された溶融樹脂を別の部分に移して、この別の部分で物理発泡剤を注入するようにしている。このように、物理発泡剤を注入する部分(発泡剤注入部)を強化繊維と樹脂とを可塑化混練する部分から隔てて配置することにより、物理発泡剤の注入による高い圧力が可塑化混練する部分に波及するのを防止することができる。したがって、従来のようにスクリューに逆流防止機構を設ける必要がなくなり、強化繊維が折損されるのを防止することができる。
また、このような物理発泡剤の注入は、溶融樹脂が少なくとも一つのノズルまたはバルブを通過した後に行われる。ここで、ノズルまたはバルブは、オンオフ操作により開放・閉止動作を行うものであり、開放することで樹脂の流通を許容し、閉止することで樹脂の流通を遮断するものである。このようなノズルまたはバルブを、少なくとも一つ、発泡剤注入部の上流側の適所に配置することで、樹脂の逆流が防止される。しかも、このようなノズルまたはバルブは、強化繊維の折損を引き起こすことがない。
さらに、その上で、物理発泡剤の注入位置から成形型のキャビティに至る間の樹脂流路上において、樹脂に振動を付与することにより、樹脂中における物理発泡剤の混合分散を促進させることとしている。上記のように、発泡剤注入部を強化繊維と樹脂を可塑化混練する部分から隔てて配置した場合、このままでは、物理発泡剤の樹脂に対する混合分散性が従来に比べて悪くなることが懸念される。そこで、本発明においては、物理発泡剤の混合分散を促進する振動付与手段を発泡剤注入部より下流側(物理発泡剤の注入位置から成形型のキャビティに至る間の樹脂流路上)に設けて、混合分散性を向上させることにしている。
このように、本発明によれば、スクリューに逆流防止機構を設ける必要がなくなり、この逆流防止機構による強化繊維の折損が防止されるとともに、混合分散の促進手段が設けられていることにより物理発泡剤の混合分散性を従来と同等以上に向上させることができる。
本発明において、物理発泡剤とは、超臨界状態の超臨界流体のほか、圧力が臨界圧以下の発泡剤を含む意味であり、単に化学反応により熱的に発泡させる化学発泡剤を含まないことを意味しているに過ぎない。また、物理発泡剤の注入位置から成形金型のキャビティに至る間とは、金型内部での攪拌混合により混合分散が促進される構成をも含む意味である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の成形装置において、前記振動付与手段が、前記計量射出部に設けられる超音波振動付与手段または電磁波振動付与手段であることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、振動付与手段としては、例えば、超音波振動子(発振装置)による機械的振動の付与手段、あるいは電磁波による加熱振動の付与手段があり、超音波振動を利用する場合、第二射出部のシリンダー側壁(外面又は内面)に超音波振動子を取付け、これに超音波発振器から超音波電圧を加えることで、シリンダー内の樹脂に振動(攪拌力)を与えることができ、これにより樹脂中における物理発泡剤の混合分散が促進される。電磁波振動を利用する場合も、同様である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の成形装置において、前記振動付与手段が、樹脂流路中で樹脂を攪拌するように駆動される被駆動攪拌手段であることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、樹脂流路中(例えば、発泡剤注入部のシリンダー内)に被駆動攪拌手段(例えば、射出ピストンの合流部側の空間内に複数の穴が貫通開口した攪拌板)が設けられ、こ被駆動攪拌手段が駆動されることにより、樹脂流路中(シリンダー内)で樹脂中における物理発泡剤の混合分散が促進される。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品の成形装置において、前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、上記のような物理発泡剤の混合分散性の向上効果を得やすく、より微細な発泡セルを有する繊維強化樹脂成形品を得ることができ、より一層の物性向上を図ることができる。
本発明の繊維強化樹脂成形品の成形装置によれば、スクリューに逆流防止機構を設ける必要がなくなり、この逆流防止機構による強化繊維の折損が防止されるとともに、混合分散の促進手段が設けられていることにより物理発泡剤の混合分散性を従来と同等以上に向上させることができる。
以下、本発明の繊維強化樹脂成形品の成形装置について、具体的に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置の全体構成を図1に示す。繊維強化樹脂射出成形装置1の基本的な構成として、第一射出部10と第二射出部10の二つの射出ユニットと、SCF供給ユニット30および成形金型40を備えている。
第一射出部10(可塑化混練部に相当)は、シリンダー11内にスクリュー12を内蔵し、ホッパー13から投入される樹脂2と強化繊維3とをスクリュー12の回転運動により可塑化(溶融)し、混練する。そして、強化繊維3を含む可塑化された溶融樹脂4(以下、強化繊維等が混入された溶融樹脂を樹脂組成物4ともいう)を射出端14(下流側出口)から後述の第二射出部20との合流部23に向けて勢いよく移送(射出)する。第一射出部10の射出端14には、オンオフ操作で開閉動作するシャットオフノズル15が取り付けられている。
第二射出部20(計量射出部に相当)は、シリンダー21内に射出ピストン22を内蔵し、第一射出部10で可塑化され、強化繊維3が混入された樹脂組成物4を合流部23に導入し、成形に必要な量の樹脂組成物4を計量するとともに、SCF供給ユニット30から送給された物理発泡剤5を発泡剤注入部24で注入し、樹脂組成物4中に混合分散した上で、射出ピストン22の往復運動により成形金型40のキャビティ43(図6参照)内に射出注入する。ここで、合流部23において、樹脂組成物4の導入と発泡剤注入部24からの物理発泡剤5の注入とはほぼ同期して行われるよう制御されており、導入された樹脂組成物4への物理発泡剤5の注入(合流)自体が樹脂組成物4中での物理発泡剤5の混合分散を促進する混合分散促進手段としての役割を担っている。このようにして、樹脂組成物4の流動を利用して攪拌手段が構成されているため、簡単な構成で混合促進手段を実現することができる。そして、物理発泡剤5の混合分散の進んだ樹脂組成物4が成形金型40のキャビティ43内に射出されることになる。第二射出部20の射出端25(下流側出口)にも、オンオフ操作で開閉動作するシャットオフノズル26が取り付けられている。
SCF供給ユニット30は、物理発泡剤5を繊維強化樹脂射出成形装置1内に導入するためのものであり、上記の第二射出部20あるいは後述のミキシングノズル50(図4参照)に設けられた所定の注入位置(発泡剤注入部24,57)にて物理発泡剤5を樹脂組成物4中に注入する。SCF供給ユニット30は、原料ガスが充填されているガスボンベ31と、ガスボンベ31から導入される原料ガスを所定の圧力まで昇圧し、昇圧された物理発泡剤のシリンダー内への導入量を制御する昇圧制御部32とを備えている。
第一射出部10、第二射出部20の射出端14,25(下流側出口)に取り付けられたシャットオフノズル15,26は、樹脂組成物4が溜まった状態で上流側の圧力を開放(通常の可塑化混練状態と同様の圧力に)して下流側に樹脂組成物4を流し込み、終了後に閉止することでノズル内のシールを確保する(逆流防止を図る)ことができる。このようなシャットオフノズル15,26の動作は、単なるオンオフによる開放・閉止動作であり、迷路構造をもっておらず、かつ、スクリュー12に設けられているものではないため、強化繊維3の折損を引き起こすことはない。なお、第一射出部10、第二射出部20の射出端14,25に設けられるのはノズル15,26に限定されるものではなく、開閉動作により圧力を遮断する機能を有し、強化繊維3の折損が回避できるものであれば、後述の第2の実施形態で用いられているようなバルブ114,133(図9参照)であってもよい。また、一方がノズル15(26)で、他方がバルブ133(114)であっても構わない。
本実施形態では、第一射出部10で可塑化混練された樹脂2と強化繊維3との樹脂組成物4が、第二射出部20に移送され、第二射出部20(発泡剤注入部24)で物理発泡剤5が注入される。この樹脂組成物4の導入と物理発泡剤5の注入とにより物理発泡剤5の樹脂組成物4中での混合分散が促進される。そして、成形に必要な量の樹脂組成物4が計量された上で、第二射出部20の射出端25からシャットオフノズル26を介して成形金型40(キャビティ43)に射出される。
このように、物理発泡剤5を注入する位置(発泡剤注入部24)を樹脂2と強化繊維3とを可塑化混練する部分(第一射出部10の可塑化混練部)から隔てて配置することにより、物理発泡剤5の注入による高い圧力が可塑化混練する部分に波及するのを防止することができる。したがって、従来のようにスクリューに逆流防止機構を設ける必要がなくなり、強化繊維3が折損されるのを防止することができる。
また、本実施形態では、物理発泡剤5は、少なくとも一つのノズル(シャットオフノズル15)を通過した後の発泡剤注入部24にて注入される。そして、物理発泡剤5の注入位置(発泡剤注入部24)から成形金型40のキャビティ43に至る間の樹脂流路上に、強化繊維3が混入された樹脂組成物4中における物理発泡剤5の混合分散を促進させる合流部23が設けられている。
上記のように、発泡剤注入部24を樹脂2と強化繊維3とを可塑化混練する部分から隔てて配置した場合、このままでは、物理発泡剤5の樹脂組成物4における混合分散性が従来に比べて悪くなることが懸念される。しかしながら、本実施形態においては、物理発泡剤5の混合分散を促進する手段(合流部23)を発泡剤注入部24より下流側(物理発泡剤5の注入位置から成形金型40のキャビティ43に至る間の樹脂流路上)に設けて、その混合分散性を向上させている。すなわち、可塑化されて強化繊維3が混入された樹脂組成物4に対して物理発泡剤5が注入されるが、この注入(合流)自体により物理発泡剤5の混合分散が促進される、樹脂組成物4の流動を利用した攪拌手段が構成されるため、簡単な構成で混合分散促進手段を実現することができる。
このように、本発明によれば、スクリュー12に逆流防止機構を設ける必要がなくなり、この逆流防止機構による強化繊維3の折損が防止されるとともに、物理発泡剤5の混合分散を促進する手段が設けられていることにより物理発泡剤5の混合分散性を従来と同等以上に向上させ、優れた物性を有する繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
本実施形態おいて、樹脂2としては、熱可塑性樹脂が用いられる。本発明において好適に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、液晶樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。この中で好ましくは、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィドであり、特に好ましくはポリプロピレン系樹脂である。また、上記熱可塑性樹脂として、ポリマーブレンドを用いてもよい。
また、強化繊維3としては、ガラス繊維、カーボン繊維、無機ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。好ましくは、ガラス繊維である。
熱可塑性樹脂組成物4における、熱可塑性樹脂2の含有量は、好ましくは、20重量%〜95重量%であり、特に好ましくは、60重量%〜90重量%である。熱可塑性樹脂2の量が少なすぎると、流動性の不足や、機械強度が低下する恐れがある。また、強化繊維3の含有量は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物4の0重量%〜50重量%であり、特に好ましくは、10重量%〜40重量%である。
さらに、熱可塑性樹脂組成物4に、粉末状充填剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤やその他各種の添加剤や改質剤を添加してもよい。
本実施形態において、物理発泡剤5は、超臨界状態の超臨界流体(Super Critical Fluid:SCF)のほか、圧力が臨界圧以下の発泡剤を含むものであり、単に化学反応により熱的に発泡させる化学発泡剤を含むものではない。好適な物理発泡剤5は、上記熱可塑性樹脂組成物4に溶け込むことができ、かつ不活性であれば特に超臨界状態にあることに限定はされないが、二酸化炭素や窒素又はこれらの混合ガスによる超臨界流体は、安全性、コスト等の面から好ましい。そして、物理発泡剤5にこれらの超臨界流体を用いた場合には、発泡剤の混合分散が促進されやすく、より微細な発泡セルを有する繊維強化樹脂成形品を得ることができ、より一層の物性向上を図ることができることから望ましい。
超臨界流体に窒素を使用した場合は、地球環境に悪影響を与えることがなく特に好ましい。二酸化炭素の臨界温度は31.3℃で、臨界圧は7.4MPaであり、また、窒素の臨界温度は−147℃で、臨界圧力は3.4MPaであって、いずれも加熱(窒素の場合は常温でも可)、加圧するだけで容易に超臨界状態を維持することができる。超臨界状態の二酸化炭素又は窒素を採用すれば、超臨界流体が可塑剤として作用するので樹脂流動性が向上し、強化繊維3を添加した樹脂組成物4の射出成形に好適な流動性が得られる。
物理発泡剤5を熱可塑性樹脂組成物4に注入する時の圧力は、十分な注入速度を確保するといった観点から、15MPa以上、さらには20MPa以上であることが好ましい。また、物理発泡剤5の注入量は、その種類にもよるが、熱可塑性樹脂組成物4の100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。物理発泡剤5が0.1重量部よりも少ないと、微細な発泡セルを得ることができず、20重量部よりも多いと、粗大な発泡セルが生成しやすく、成形品の外観が損なわれることがある。
また、本実施形態において、成形金型40は、図6に示すように、炭素鋼やアルミニウム合金、銅合金等の金属材料で作製される固定金型41と可動金型42とからなり、固定金型41と可動金型42とが型締めされた状態でキャビティ43が形成され、射出注入孔44(スプル)からゲート45に至る溶融した樹脂組成物4の流路上にホットランナー部46が設けられている。
本実施形態においては、上記の基本的構成を有する繊維強化樹脂射出成形装置1に、さらに物理発泡剤5の混合分散を促進する手段を組み込むことにより、以下のような実施態様を採ることができる。
1.樹脂組成物の流動(攪拌)を利用して物理発泡剤の混合分散を促進
1)ミキシングノズルを設けて混合を促進
まず、樹脂組成物4の流動を利用した攪拌手段として、ミキシングノズルを用いる場合について説明する。ミキシングノズル50は、図2に示すように、例えば、円筒状のノズル管体51内に、平板を右回り螺旋状に180°ひねったエレメントA52と左回り螺旋状に180°ひねったエレメントB53とを軸方向に交互に配列し、収容することにより構成される。このようなミキシングノズル50内に導入された樹脂組成物4は、軸方向に進むことで右回りと左回りとに交互にひねられ、攪拌されることによって強化繊維3や物理発泡剤5の混合分散が促進される。なお、ミキシングノズル50の内部構造は上記のものに限定されることなく、要は樹脂流路上において溶融樹脂(樹脂組成物4)を攪拌し、強化繊維3や物理発泡剤5の混合分散を促進できるものであればよく、種々の態様を採ることができる。そして、ミキシングノズル50で攪拌された樹脂組成物4を送り出す移送口54には、例えば、シャットオフノズル55が取り付けられている。
ミキシングノズル50の取付け態様としては、第1の実施形態において以下の3つの態様が例示される。
A)第1の取付け形態では、図3に示すように、第二射出部20の射出端14側に第一射出部10との合流部23を形成し、この合流部23の下流側出口と成形金型40の射出注入孔44との間にミキシングノズル50を接続するとともに、第二射出部20の合流部23より上流側に発泡剤注入部24を設けている。第一射出部10で可塑化混練された樹脂2と強化繊維3との樹脂組成物4が第二射出部20の合流部23に移送され、物理発泡剤5が注入され、成形に必要な量の樹脂組成物4が計量された上で、ミキシングノズル50を介して成形金型40のキャビティ43内に射出注入される。上記した場合と同様に、物理発泡剤5が注入されるときに樹脂組成物4中での物理発泡剤5の混合分散が促進されるとともに、さらにミキシングノズル内を流通する際に物理発泡剤5の混合分散が促進される。
B)第2の取付け形態では、図4に示すように、ミキシングノズル50を第二射出部20の射出端25と成形金型40の射出注入孔44(図6参照)との間に接続するとともに、このミキシングノズル50の下流側に第一射出部10との合流部56を形成し、ミキシングノズル50の第一射出部10側の移送口54(第二射出部20の射出端25)と前記合流部56との間に発泡剤注入部57を設けている。第一射出部10から注入された樹脂2と強化繊維3との樹脂組成物4がミキシングノズル50の合流部56を介して導入され、さらに第二射出部20に移送され、第二射出部20で成形に必要な量の樹脂組成物4が計量された上で、第二射出部20からミキシングノズル50を介して成形金型40のキャビティ43内に射出注入される。この樹脂組成物4を第二射出部20に移送する際に、発泡剤注入部57から物理発泡剤5が注入され、ミキシングノズル50を流通する際に物理発泡剤5の樹脂組成物4中での混合分散が促進される。
C)第3の取付け形態では、図5に示すように、ミキシングノズル50の上流側の一端を第一射出部10の射出端14(シャットオフノズル15)に接続し、このミキシングノズル50の下流側の他端(移送口54)を第二射出部20の合流部23に接続するとともに、ミキシングノズル50の上流側一端の直下流側の位置(下流側他端との間)に発泡剤注入部57’を設けている。第一射出部10から樹脂2と強化繊維3との樹脂組成物4がミキシングノズル50に流入され、これと同時に、ミキシングノズル50の発泡剤注入部57’から物理発泡剤5が注入され、第二射出部に移送される。そして、第二射出部で成形に必要な量の樹脂組成物が計量され、成形金型のキャビティ内に射出注入される。発泡剤注入部57’から物理発泡剤5が注入された樹脂組成物4がミキシングノズル50内を流通する間において、さらに、第二射出部20の合流部23に移送される際に、樹脂組成物4中での物理発泡剤5の混合分散が促進される。
このように、物理発泡剤5の混合分散促進手段は、樹脂の流動を利用した混練攪拌機能を有する攪拌手段(例えば、ミキシングノズル50)を物理発泡剤5の注入位置(発泡剤注入部24,57,57’)より下流側に設置することにより実現される。このような混練攪拌の効果により樹脂組成物4中における物理発泡剤5の混合分散が効率よく促進されることになる。
2)成形金型中のホットランナー部にミキシング部を設けて混合を促進
成形金型40において、図6に示すように、上記のミキシングノズル50と同様の混練攪拌機能を有するミキシング部47を、射出注入孔44(スプル)からゲート45(複数も可)に達するまでの樹脂組成物4の流路(例えば、ホットランナー部46)に埋設することも有効である。このような方法によれば、樹脂組成物4が成形金型40内(ゲート45)に流入する前に、樹脂組成物4中での物理発泡剤5の混合分散を促進することができる。このような成形金型40内の樹脂流路上で物理発泡剤5の混合分散を促進させる混合分散促進手段が設けられることにより、装置側に構造・スペース上の問題を引き起こすことなく、より簡単で確実な方法により、物理発泡剤5の混合分散を促進させることができる。なお、成形金型40に至る前(上流側)にミキシングノズル50等の混合分散促進手段を設けた場合には、成形金型40側に構造上の制約(負荷)を掛けずにおくことができる。
2.発泡剤注入部で多孔質構造体により物理発泡剤の混合分散を促進
第二射出部20の発泡剤注入部24において、図7に示すように、注入ノズル24aの内壁に多孔質の構造体24b(例えば、金属製の多孔質部材)を配置することも有効である。これにより物理発泡剤の注入孔24cを多点化し、樹脂組成物4との接触面積を増やして、物理発泡剤5を樹脂組成物4中に速やかに拡散させる(すなわち、樹脂組成物4中における物理発泡剤5の拡散係数を高くする)ことにより、簡単で確実な方法で、物理発泡剤5の混合分散が促進される。
3.第二射出部で振動付与手段により物理発泡剤の混合分散を促進
第二射出部20に振動付与手段(例えば、超音波振動付与手段、電磁波振動付与手段または被駆動攪拌手段)を配設し、物理発泡剤5の混合分散を促進することも有効である。
1)超音波振動付与手段または電磁波振動付与手段による場合
振動付与手段としては、例えば、超音波振動子(発振装置)による機械的振動の付与手段、あるいは電磁波発振器による加熱振動の付与手段を挙げることができる。超音波振動を利用する場合、図8(a)に示すように、第二射出部20のシリンダー21側壁(シリンダーバレルの外面)に超音波振動子27Aを取付け、これに不図示の超音波発振器から超音波電圧を加えることで、シリンダー21内の樹脂組成物4に振動(攪拌力)を与えることができる。なお、超音波振動子27Aの取付け部位は上記に限定されるものではない。電磁波振動付与手段を利用する場合の電磁波発振器27Bの取付けについても同様である。
このように、超音波振動子27A、電磁波発振器27B等の振動付与手段により樹脂組成物4に振動が付与され、樹脂組成物4中における物理発泡剤5の混合分散が促進されることになる。
2)被駆動攪拌手段による場合
第二射出部20のシリンダー21内に、図8(b)に示すように、射出ピストン22とは別に、この射出ピストン22の合流部23側の空間内に複数の穴28aが貫通開口した攪拌板28(被駆動攪拌手段に相当)を配置し、射出ピストン22の位置を固定した状態でこの攪拌板28を前後進(往復動)させる。そして、このような攪拌板28の前後進により、穴28aの中を樹脂組成物4が流動する(乱流発生)ことで物理発泡剤5の混合分散を促進することができる。そして、射出時には射出ピストン22と攪拌板28とを共に前進させることにより樹脂組成物4を成形金型40に送出する。
なお、攪拌板28は、射出時に射出ピストン22に密着した状態で射出ピストン22と一体的に前進させるか、射出前に予め前進限に位置させておいて射出ピストン22のみを前進させることにより、射出時における射出ピストン22の動作との干渉を回避することができる。攪拌板28を貫通開口する穴28aの形状・個数は、図示されている断面円形状および4個に限定されるものではない。また、穴28aに上述のミキシングノズル50の場合と同様のエレメント52,53(平板を右回り又は左回りに180°ひねったもの)を組み付けてもよく、さらには穴28aの形状自体をエレメント52,53と類似の螺旋状に加工してもよい。これにより一層攪拌板28による混合分散効果を向上させることができる。
さらに、被駆動攪拌手段は、上記のような攪拌板28に限定されるものではなく、往復駆動あるいは回転駆動により周囲の樹脂組成物4に流動力を与え、攪拌することができるものであればよい。上記の攪拌板28以外の例として、例えば、攪拌翼を有するプロペラ状のものを回転駆動するものであってもよく、あるいは攪拌翼を円穴内に有する攪拌板を往復駆動するものであってもよい。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置の全体構成を図9に示す。この繊維強化樹脂射出成形装置1Aの基本的な構成として、可塑化押出部110、計量射出部120、樹脂貯留部130、SCF供給ユニット30および成形金型40を備えている。
可塑化押出部110(可塑化混練部に相当)は、第1の実施形態の射出成形装置1における第一射出部10に当たるものであり、この可塑化押出部110で可塑化された樹脂組成物4は、その下流側に設けられた樹脂貯留部130に移送され、その貯留槽131内にて溶融樹脂として一旦蓄積される。これにより、可塑化押出部110は、前出の第一射出部10のようにスクリューの前進駆動による射出能力を持つ必要はなく、スクリューの回転駆動による押出能力を持つだけでよい。また、計量射出部120は、第1の実施形態の射出成形装置1における第二射出部20に当たるものである。なお、本第2の実施形態では、可塑化押出部110の押出端113、計量射出部120の射出端124(出口)には、第1の実施形態のシャットオフバルブ15,26ではなく、単なるオンオフ動作で開閉機能を有するバルブ114,125が取り付けられている。これらのバルブ114,125は、機能的にはシャットオフバルブ15,26と同様の働きをし、閉止時には樹脂組成物4の流動を止めてシール性を確保し、樹脂組成物4の逆流を防止する。これらのバルブ15,26もまた、強化繊維3を折損するものではない。その他の構成は、第1の実施形態の場合と同様であるので、ここでの説明は省略する。
このように構成された繊維強化樹脂射出成形装置1Aにおいて、可塑化押出部110はシリンダー111内に不図示のスクリューを内蔵し、ホッパー112から投入される樹脂2と強化繊維3とをスクリューの回転により攪拌混練し、可塑化(溶融)する。そして、可塑化した樹脂組成物4を樹脂貯留部130に送出(押出)し、その貯留槽131に一旦貯留する。一時貯留された樹脂組成物4は、貯留槽131からバルブ133の開閉動作により必要量だけ計量され、計量射出部120との合流部122に供給される。
計量射出部120は、シリンダー121内に不図示の射出ピストンを内蔵し、可塑化押出部110で可塑化され、樹脂貯留部130の貯留槽131に一旦蓄積されていた樹脂組成物4を合流部122に導入して、計量射出部120の発泡剤注入部123でSCF供給ユニット30から注入された物理発泡剤5を樹脂組成物4中に混合分散した上で、成形に必要な量の樹脂組成物4を計量するとともに、射出ピストンの往復動により成形金型40のキャビティ43内に射出する。ここで、合流部122において、樹脂組成物4の導入と発泡剤注入部123からの物理発泡剤5の注入はほぼ同期して行われるよう制御されており、樹脂組成物4の導入(合流)自体が物理発泡剤5の樹脂組成物4中での混合分散を促進する役割を担っている。このようにして、物理発泡剤5の混合分散の進んだ樹脂組成物4が成形金型40のキャビティ43内に射出されることになる。
このように、第2の実施形態では、可塑化押出部110で可塑化混練された樹脂2と強化繊維3との樹脂組成物4が一旦樹脂貯留部130に貯留された後、計量されて、計量射出部120に送出(押出)される。計量射出部120では、導入された樹脂組成物4に物理発泡剤5が注入(合流)され、計量射出部120を介して成形金型40のキャビティ43内に射出される。この合流に際して物理発泡剤5の樹脂組成物4中での混合分散がより一層確実に促進される。このような合流により物理発泡剤5の混合分散が促進される作用効果については、第1の実施形態の場合と同様である。そして、迷路構造をもたないバルブ114,125を用いているため、強化繊維3の折損を回避することができる。
そして、この第2の実施形態では、装置の構成として射出ユニットを二つそろえる必要がなく、装置コストが低く、必要なパワーが小さくてすむという第1の実施形態では得られなかった効果をも得ることができる。
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置1Bの全体構成を図10に示す。この射出成形装置1Bは、射出ユニットを2つ揃えている点で、第1の実施形態と同様であり、2つの射出ユニットから同時に直接成形金型40に樹脂組成物4等を射出する点で異なっている。
第3の実施形態における第一射出部210(可塑化混練部に相当)は、シリンダー211内に不図示の繊維折損に有利なスクリューを内蔵し、ホッパー212からは強化繊維3が多く添加された樹脂2が投入され、これを可塑化混練した上で、可塑化された樹脂組成物4が成形に必要な量だけ計量されて、成形金型40に直接射出されるように構成されている。強化繊維3が多く添加された樹脂2とは、製品としての繊維強化樹脂成形品において設定されている含有量よりも多くの強化繊維3を含有していることを意味するものであり、同じく可塑化された後述の希釈樹脂6と混合(合流)されることにより、製品(繊維強化樹脂成形品)において所定(設定された通り)の強化繊維含有量となるものである。繊維折損に有利なスクリューとは、スクリューの回転により多少の強化繊維3の折損が起こり得るものの、スクリューの形状等により強化繊維3の折損が起こりにくいようにしたものである。また、この第一射出部210には、逆流防止弁等の強化繊維3を折損するおそれのあるものは使用されておらず、その射出端213(出口)には、第1の実施形態と同様のシャットオフノズル214aあるいは第二の実施形態と同様のバルブ214bが取り付けられ、オンオフ操作による開閉動作により、強化繊維3の折損を引き起こすことなく、樹脂組成物4を成形金型40に射出できるようになっている。
第二射出部220(計量射出部に相当)は、シリンダー内221に不図示のガス逆流防止機能を備えたスクリューを内蔵し、ホッパー222からは希釈樹脂6が投入され、SCF供給ユニット30から物理発泡剤5の供給を受けながら希釈樹脂6が可塑化され、物理発泡剤5が混入された希釈樹脂6が成形に必要な量だけ計量されて成形金型40に直接射出するように構成されている。この第二射出部220では、ガス逆流防止機能付きのスクリューが用いられ、発泡剤注入部223がホッパー222(希釈樹脂投入口)の下流側に配設されているため、発泡剤注入部223から注入された物理発泡剤5が上流側に移動してきて、可塑化された希釈樹脂6と共にホッパー222から漏出することが防止される。また、この第二射出部220内の希釈樹脂には強化樹脂3が混入されないため、強化繊維3の折損の問題を生じることはない。そして、その射出端224(出口)には、シャットオフノズル225aあるいはバルブ225bが取り付けられ、オンオフ操作による開閉動作により希釈樹脂6を成形金型40に射出できるようになっている。
ここで、強化繊維3が混入された樹脂組成物4と物理発泡剤5が注入された希釈樹脂6の粘度を略同等に設定するのが好ましい。このように設定すれば、樹脂組成物4と希釈樹脂6との粘度差が小さく、両者を成形金型の樹脂流路上で混合攪拌したときに強化繊維3が折損されるのを抑制し、両者をスムーズに混合攪拌することができる。すなわち、強化繊維3が配向された樹脂組成物4を合流させる際に、マトリックスとなる希釈樹脂6の粘度が高いと、両者を混合攪拌するときに強化繊維3に掛かる応力が高くなり、強化繊維3の折損が混合攪拌のときに起こってしまうが、希釈樹脂6の粘度を下げることにより、樹脂組成物4に力が掛かってもそれを介して強化繊維3に力が及ばないように粘度設定を行うのが好ましい。
そして、このように粘度設定された樹脂組成物4および希釈樹脂6を同時に成形金型40に射出することで、両注入物4,6は金型40内に形成されたキャビティ43に至る手前の樹脂流路上で合流し、この合流により物理発泡剤5の樹脂組成物4中での混合分散が促進される。そして、成形金型40のキャビティ43においては、物理発泡剤5が適正に混合分散され、所定含有量の強化繊維3が均質に分散された樹脂組成物4が射出される。すなわち、成形金型40内での両注入物4,6の合流自体が物理発泡剤5の混合促進手段として作用し、そのことにより発泡率が均等で強度、剛性等の物性に優れた繊維強化樹脂成形品が得られることになる。
なお、上記開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解される。
[変形の実施形態]
以下に、上記の実施形態に代えてあるいは加えて、一部機能を変更あるいは付加する変形実施例について説明する。
1)上記の第1の実施形態では、合流部23の上流側の第二射出部20(発泡剤注入部24)で物理発泡剤5が注入され、合流部23で物理発泡剤5と強化繊維3が添加された樹脂組成物4との混合分散が促進されているが、物理発泡剤5が注入される位置を合流部23の近傍(図11参照)としても差し支えない。すなわち、合流と同時に物理発泡剤5が注入され、合流に際してのミキシング効果により物理発泡剤5を樹脂組成物4中に混合分散させることができる。
2)上記の第2の実施形態では、樹脂貯留部130に一旦蓄積された樹脂組成物4(溶融樹脂)を計量射出部120に合流する、合流部122の側方の計量射出部120(発泡剤注入部123)で物理発泡剤5が注入されているが、物理発泡剤5の注入位置を樹脂貯留部130として可塑化押出部110から樹脂組成物4が移送されてくる位置よりも下流側(具体的にはバルブ133の直上流部)(図12参照、発泡剤注入部132)あるいは上流側(図13参照、発泡剤注入部132’)としても差し支えない。このようにしても、合流部122において物理発泡剤5の樹脂組成物4中での混合分散が促進されることになる。
3)上記の実施形態では、第1の実施形態においてミキシングノズル50を取り付ける態様について説明したが、ミキシングノズル50を取り付けるのは第1の実施形態のような場合に限定されるものではない。例えば、上記第1の実施形態の変形実施例1)において、合流部23の下流側にミキシングノズルを配し、そこで混合分散をより促進した上で、樹脂組成物4を成形金型40のキャビティ43に射出するように構成してもよい。
また、第2の実施形態やその変形実施例2)において、第1の実施形態で示した様々な取付け態様(上記ではA〜Cを例示)でミキシングノズルを取り付けて物理発泡剤5の混合分散をより促進した上で、樹脂組成物4を成形金型40のキャビティ43に射出してもよい。
さらに、第3の実施形態では、二つの射出部210,220を直接成形金型40に接続し、各々から射出される樹脂組成物4と希釈樹脂6を金型40内で合流させる態様について説明したが、二つの射出部210,220をミキシングノズル250に接続し、樹脂組成物4と希釈樹脂6とを混練して物理発泡剤5を混合分散させ、その上で金型40内に射出するように構成してもよい(図14参照)。これらの場合には、ミキシングノズル250内での混合分散促進効果により、より均一に物理発泡剤5が樹脂組成物4中に分散されることになる。
4)上記の実施形態では、第1の実施形態において第二射出部20のシリンダー21内に攪拌板28を設ける態様について説明したが、攪拌板28を取り付けるのは第1の実施形態のような場合に限定されるものではない。例えば、上記第2の実施形態およびその変形実施例2)において、計量射出部120のシリンダー121内の射出ピストンに攪拌板を取付け、そこで物理発泡剤5の混合分散をより促進した上で、樹脂組成物4を成形金型40に射出注入してもよい。
また、上記第2の実施形態の変形実施例2)において、樹脂貯留部130の貯留槽131内の樹脂送出機構に攪拌板を取付け、そこで物理発泡剤5の混合分散をより促進した上で、樹脂組成物4を計量射出部120との合流部122に移送してもよい。
さらに、これらの変形実施例において、攪拌板に替えて、超音波発振装置等の振動付与手段を適用してもよい。
5)上記の実施形態では、第1の実施形態において成形金型40のホットライナー部46にミキシングノズル50と同様の混練攪拌機能を有するミキシング部47を配設する態様について説明したが、同様の構成を第1の実施形態の変形実施例や第2の実施形態およびその変形実施例に適用してもよい。また、第1の実施形態において発泡剤注入部24の注入ノズル24a内壁に多孔質構造体24bを設け、樹脂組成物4との接触面積を増大させる態様について説明したが、同様の構成を第1の実施形態の変形実施例や第2の実施形態およびその変形実施例に適用してもよい。
6)上記の第1の実施形態では、第二射出部20が射出ピストン22を内蔵し、射出ピストン22の往復動により樹脂組成物4を成形金型40のキャビティ43内に射出する構成を示したが、第二射出部20が射出ピストン22に替えてスクリューを内蔵するものであってもよい。
7)以上の実施形態や変形実施例で挙げた物理発泡剤の混合分散促進手段とは別に、あるいはそれらの混合分散促進手段に加えた別の方法・手段により、物理発泡剤5が注入された樹脂組成物4中における物理発泡剤5の拡散係数を高くすることが好ましい。上記の第1の実施形態において、発泡剤注入部に多孔質構造体を配設する例を示したが、このように樹脂組成物4中における物理発泡剤5の拡散係数を高くすることにより、物理発泡剤5の混合分散が促進されるため、より簡単で確実な方法により、物理発泡剤5の混合分散性を向上させ、一層優れた物性を有する樹脂成形品を得ることができる。その他、具体的には、樹脂組成物4中における物理発泡剤5の高い拡散係数は、樹脂組成物4に掛かる圧力(射出ピストン22により付与される圧力)を高く設定したり、樹脂温度を融点以上で(可塑化が維持できる範囲で)できるだけ低く設定したりすることにより実現される。これらの方法や手段が、上記の実施形態に挙げられた方法や手段に付加されることにより、より簡単、確実に樹脂組成物4中における物理発泡剤5の混合分散を促進させることができる。また、当然のことながら、高い拡散係数が得られる方法や手段を単独で用いることであってもよい。
本発明の第1の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置に関して(a)はその全体構成を示す側面図であり、(b)は第一射出部のシリンダー内部、(c)は第二射出部のシリンダー内部の要部構成を示す側断面図である。 ミキシングノズルの要部を示す側断面図である。 第1の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置にミキシングノズルを取り付けたもの(第1の取付け形態)の概要構成を示す側面図である。 第1の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置にミキシングノズルを取り付けたもの(第2の取付け形態)の概要構成を示す側面図である。 第1の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置にミキシングノズルを取り付けたもの(第3の取付け形態)の概要構成を示す側面図である。 ミキシングノズルと類似の攪拌手段をホットランナー部に設けた成形金型の側断面図である。 注入ノズルの内壁に多孔質の構造体を配置した物理発泡剤注入部の側断面図である。 振動付与手段を設けた第二射出部のシリンダー内部の状態を示す側断面図であり、(a)は超音波振動子(または電磁波発振器)、(b)は攪拌板の組付け状態を示す。 本発明の第2の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置の概要構成を示す側面図である。 本発明の第3の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置の概要構成を示す側面図である。 第1の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置において物理発泡剤注入部を合流部に位置させた変形実施例の概要構成を示す側面図である。 第2の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置において物理発泡剤注入部を樹脂貯留部の下流側に位置させた変形実施例の概要構成を示す側面図である。 第2の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置において物理発泡剤注入部を樹脂貯留部の上流側に位置させた変形実施例の概要構成を示す側面図である。 第3の実施形態に係る繊維強化樹脂射出成形装置において二つの射出部の下流側にミキシングノズルを取り付けた変形実施例の概要構成を示す側面図である。
1,1A,1B 繊維強化樹脂射出成形装置
2 樹脂
3 強化繊維
4 溶融樹脂(樹脂組成物)
5 物理発泡剤
6 希釈樹脂
10 第一射出部(可塑化混練部)
11 シリンダー
12 スクリュー
15 シャットオフノズル
20 第二射出部(計量射出部)
21 シリンダー
22 射出ピストン
23 合流部
24 発泡剤注入部
26 シャットオフノズル
27A 超音波振動子(振動付与手段)
27B 電磁波発振器(振動付与手段)
28 攪拌板(被駆動攪拌手段)
30 SCF供給ユニット
40 成形金型
50 ミキシングノズル

Claims (4)

  1. 内部に樹脂が射出注入されるキャビティを有する成形金型と、
    スクリューを備えた材料送給シリンダー内で、強化繊維と樹脂とを可塑化混練する可塑化混練部と、
    前記可塑化混練部で可塑化された樹脂に物理発泡剤を注入するとともに、成形に必要な量の樹脂を計量した上で、前記成形金型のキャビティ内に射出する計量射出部と、
    を備えた繊維強化樹脂成形品の成形装置であって、
    前記可塑化混練部で可塑化された後に少なくとも一つのノズルまたはバルブを通過した樹脂に物理発泡剤を注入する発泡剤注入部と、
    物理発泡剤の注入位置から成形金型のキャビティに至る間の樹脂流路上において、樹脂に振動を付与することにより、前記樹脂中における前記物理発泡剤の混合分散を促進させる振動付与手段とが設けられている
    ことを特徴とする繊維強化樹脂成形品の成形装置。
  2. 前記振動付与手段が、前記計量射出部に設けられる超音波振動付与手段または電磁波振動付与手段であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の成形装置。
  3. 前記振動付与手段が、樹脂流路中で樹脂を攪拌するように駆動される被駆動攪拌手段であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の成形装置。
  4. 前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品の成形装置。
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