JP4867293B2 - レーザ加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ加工装置に関し、特にレーザ内部スクライブ法に好適なレーザ加工装
置に関する。
従来から、基板またはウエハなどの加工対象物を任意のラインに沿って切断する技術と
して、加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を、切断予定ラインに沿って形成し
、当該改質領域を利用して切断する技術が知られている。この技術によれば、わずかな力
を加えるだけで、改質領域を起点にして加工対象物を切断することができる。この技術は
、切断屑が生じないので、微細な加工に適している。ここで、加工対象物の内部における
多光子吸収は、レーザ加工装置を用いて、レーザ光を加工対象物に照射し、改質させる部
分に当該レーザ光を集光させることによって生じさせる。
加工対象物の厚さが加工対象物の厚さ方向の改質領域の幅に比べて大きい場合には、一
つの切断予定ラインに対して、加工対象物の厚さ方向についての集光点の位置を変えなが
ら複数回の改質領域形成工程を実行し、改質領域を加工対象物の厚さ方向に積層して、加
工対象物の平面方向の改質領域の面積を増すことなく、厚さ方向全域に渉る改質領域を形
成している。あるいは、複数回の改質領域形成工程に代えて、複数の集光レンズを備える
ことで、一回の改質領域形成工程で積層した改質領域を形成できるレーザ加工装置が用い
られている。特許文献1には、集光レンズの焦点位置を二ヶ所にすることで、改質領域の
加工対象物の厚さ方向の大きさを大きくできるレーザ加工装置が開示されている。
特開2004―337902号公報
しかしながら、特許文献1が開示するレーザ加工装置によれば、一旦形成された集光レ
ンズが対応できる加工対象物の厚さは固定であり、様々な厚さの加工対象物には対応でき
ない。従って、特許文献1が開示するレーザ加工装置であっても、加工対象物の厚さが改
質領域に比べて大きい場合には、複数回の改質領域形成工程を実行する必要があり多くの
加工時間を必要とするという課題があった。さらに、複数回の改質領域形成工程を実行す
る際には、繰返し精度によって、切断予定ラインに対して各改質領域形成工程ごとに形成
される改質領域の位置がばらつき、滑らかな切断面が得難くなるという課題があった。複
数の集光レンズを備える装置においては、各集光レンズの位置にばらつきが生ずる可能性
があり、各集光レンズの位置にばらつきが生じた装置を用いると、滑らかな切断面が得難
くなるという課題があった。さらに、加工対象物の材質や厚さによって適切な焦点距離が
異なり、適切な焦点距離の集光レンズを選択するためには、種々の焦点距離の集光レンズ
の焦点位置を適切な位置に調整できる大きな調整装置が必要であり、調整装置を含む集光
のための装置が大きくなるという課題もあった。加えて、各集光レンズに付随する調整装
置が大きくなると、集光レンズ間の距離が長くなり、集光レンズ相互の位置調整がより困
難になるという課題もあった。
本発明は、上記課題を解決するものであり、複数の集光レンズを備えながら、小型で集
光レンズ相互の位置ばらつきが小さいレーザ加工装置を実現することを目的とする。
本発明によるレーザ加工装置は、加工対象物を載置するためのステージと、レーザ光を
出射するレーザ光源と、レーザ光を集光する光学素子と、ステージに載置された加工対象
物の厚さ方向である第1の方向と略直交する第2の方向について、光学素子とステージと
を相対移動させる走査機構とを備え、光学素子によって集光されたレーザ光の集光領域を
、加工対象物に想定されており第1の方向に略平行な切断予定面の一部を包含するように
加工対象物の内部に形成して、加工対象物の集光領域の部分を改質すると共に、走査機構
によって、集光領域を切断予定面に沿って移動させることで、切断予定面を包含する加工
対象物の改質領域を形成するレーザ加工装置であって、光学素子を複数保持可能な光学素
子保持枠と、第1の方向に沿って、光学素子保持枠とステージとの相対位置を調整可能な
保持枠位置調整装置と、をさらに備え、保持枠位置調整装置によって、光学素子保持枠と
ステージとの相対位置を調整することにより、第1の方向について、加工対象物に対する
集光領域の位置を調整することを特徴とする。
本発明に係るレーザ加工装置によれば、保持枠位置調整装置によって光学素子保持枠の
加工対象物に対する位置を調整することにより、光学素子保持枠に保持された複数の光学
素子の加工対象物に対する位置を一括して調整する。これにより、光学素子保持枠に保持
された複数の光学素子それぞれに個別に位置調整装置を設ける場合に比べて、光学素子間
を近接させることができると共に、位置調整装置を各光学素子毎に個別に設けることが不
要となり、レーザ加工装置を小型にすることができる。また、光学素子相互間の位置ばら
つきは、光学素子の光学素子保持枠への取付精度で定まり、位置調整装置を各光学素子毎
に個別に設けた装置に比べて、位置ばらつきの要因となる要素が少なく、光学素子相互間
の位置ばらつきを小さくすることができる。
この場合、レーザ加工装置は、光学素子保持枠に保持された複数の光学素子は、それぞ
れの光学素子の光軸が、第1の方向に略平行な同一の略平面内にあり、それぞれの光学素
子の集光位置が、第1の方向において異なるように保持されることが好ましい。
このレーザ加工装置の構成によれば、それぞれの光学素子の光軸が、第1の方向に略平
行な同一の略平面内にあることから、それぞれの集光領域も同一の略平面内に位置する。
加工対象物内に集光領域を形成した状態で光学素子と加工対象物とを相対的に第2の方向
に移動させると、集光領域が通過した軌跡が、相対移動方向に延在する改質領域となる。
当該延在する改質領域は、それぞれの光学素子の集光位置が、第1の方向において異なる
ことから、第1の方向の位置が異なり、第1の方向に重なって形成される。従って、走査
機構による一回の走査で、光学素子一個が形成できる改質領域を加工対象物の厚さ方向に
複数個重ねた改質領域を形成することができる。
この場合、レーザ加工装置は、光学素子の光学素子保持枠に対する第1の方向の位置を
調整可能な副位置調整装置をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、光学素子の光学素子保持枠に対する第1の方向の位置を調整するこ
とで、第1の方向における光学素子相互間の位置を調整して、光学素子を相互に適切な位
置に調整することができる。光学素子を相互に適切な位置に調整し、配置することで、集
光点位置を相互に適切な位置に配置することができる。光学素子を別の光学素子に代えて
も、副位置調整装置を用いて調整するだけで、代えた光学素子が相互に適切な位置に集光
できる適切な位置に、光学素子の相互の位置を調整することができる。
この場合、レーザ加工装置は、保持枠位置調整装置を駆動する調整駆動源と、当該調整
駆動源を制御する調整駆動源制御装置とをさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、手作業で保持枠位置調整装置を操作して位置調整を行う場合に比べ
て、迅速に且つ頻繁に、保持枠位置調整装置による位置調整を行うことができる。一つの
加工対象物を加工する中で、集光位置を変えることも容易にできる。例えば、複数の材料
が重ねられて形成された加工対象物のそれぞれの材料に個別に改質領域を形成することも
容易に行うことができる。
この場合、レーザ加工装置は、副位置調整装置を駆動する副調整駆動源と、当該副調整
駆動源を制御する副調整駆動源制御装置とをさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、手作業で副位置調整装置を操作して光学素子相互間の位置調整を行
う場合に比べて、迅速に且つ頻繁に、副位置調整装置による位置調整を行うことができる
。一つの加工対象物を加工する中で、集光位置の第一の方向の間隔を変えることも容易に
できる。例えば、厚さが均一でない加工対象物に、改質領域を形成する部分の厚さに合わ
せて第一の方向の大きさが適切な改質領域を形成することも容易に行うことができる。
以下、本発明に係るレーザ加工装置の一実施形態、及びレーザ加工装置を用いて切断す
る加工対象物の一例について図面を参照して、説明する。
(レーザ加工装置)
最初に、レーザ加工装置の一実施形態について説明する。図1は、レーザ加工装置の要
部の構成を示す模式図である。図1に示したように、レーザ加工装置100は、レーザ光
源10と、分割器12と、集光レンズL1,L2,L3と、レンズ保持枠21と、Z軸調
整機構22と、Z軸副調整機構231,232と、ステージ14と、X軸スライド機構1
7と、Y軸スライド機構16と、回動機構15と、機台18とを備えている。また、Z軸
制御部31とZ軸副制御部32とを含む加工装置制御ユニット30を備えている。方向を
明示するために、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向を定める。X軸方向、Y軸方向、Z軸方
向は、互いに直交する方向であり、図1にY,Zを付記した矢印の方向を、Y軸方向、Z
軸方向と呼び、図1の紙面に直角な方向をX軸方向と呼ぶ。Z軸方向が、第1の方向に相
当する。Z軸方向と直交するX軸Y軸平面方向が、第2の方向に相当する。
レーザ光源10は、例えばチタンサファイアを固体光源とし、レーザ光をフェムト秒の
パルス幅で出射するいわゆるフェムト秒パルスレーザである。ここで、フェムト秒パルス
レーザとは、フェムト秒のオーダーのパルス幅を有するパルスレーザ光を射出するレーザ
である。また、レーザ光源10が射出するレーザ光1は、波長分散特性を有している。具
体的には、レーザ光1の中心波長は800nmであり、その半値幅はおよそ10nmであ
る。また、得られるレーザ光1のパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)であり、パ
ルス周波数は1kHzであり、そして、出力はおよそ700mWである。
分割器12は、レーザ光源10から射出されたレーザ光1を3つのレーザ光2,3,4
に分割する。分割器12は、分割された3つのレーザ光2,3,4が、いずれも同一の仮
想面上を、Z軸方向に平行に伝播するように構成されている。本実施形態では、この仮想
面は、Y軸方向にも平行である。
集光レンズL1,L2,L3は、いずれも同じ光学レンズである。具体的には、これら
はいずれも、倍率が100倍であり、開口数(NA)が0.8であり、そして、WD(W
orking Distance)が3mmである対物レンズである。他方で、集光レン
ズL1,L2,L3は、レーザ加工装置100において、加工対象物Wからそれぞれ異な
る距離の位置に設置されている。このため、集光レンズL1,L2,L3は、加工対象物
W内の異なる深さの箇所にレーザ光2,3,4のそれぞれを集光する。なお、レーザ光2
,3,4が集光する箇所(集光領域)に、後述する多光子吸収による改質領域が生じるこ
とになる。集光レンズL1,L2,L3が、光学素子に相当する。
機台18は、レーザ加工装置100を構成する各機構などを支持する枠体である。X軸
スライド機構17を構成するX軸スライド台17bが機台18に固定されており、X軸ス
ライド機構17を構成するX軸スライダ17aが、X軸方向に摺動自在且つ固定可能にX
軸スライド台17bと係合している。Y軸スライド機構16を構成するY軸スライド台1
6bがX軸スライダ17aに固定されており、Y軸スライド機構16を構成するY軸スラ
イダ16aが、Y軸方向に摺動自在且つ固定可能にY軸スライド台16bと係合している
。回動機構15を構成する回動機構台15bがY軸スライダ16aに固定されており、回
動機構15を構成する回動テーブル15aが、Z軸回りに回動自在且つ固定可能に回動機
構台15bと係合している。X軸スライダ17a、Y軸スライダ16a、回動テーブル1
5aは、それぞれX軸スライド台17b、Y軸スライド台16b、回動機構台15bとの
間に構成されたサーボモータ(図示省略)によって駆動される。
ステージ14は、回動テーブル15aに固定されており、加工対象物Wを載置するため
に用いられる。ステージ14に載置された加工対象物Wは、ステージ14に構成された例
えば吸引装置で吸引されて、ステージ14に固定される。ステージ14に固定された加工
対象物Wは、回動機構15によって、Z軸回りに回動可能であり、集光レンズL1,L2
,L3に対するX軸とY軸とに平行な平面方向の姿勢が調整される。さらに、ステージ1
4に固定された加工対象物Wは、X軸スライド機構17と、Y軸スライド機構16とによ
って、X軸とY軸とに平行な平面方向に移動され、加工対象物Wの任意の部位が集光レン
ズL1,L2,L3に対向する位置に移動される。X軸スライド機構17とY軸スライド
機構16とが、走査機構に相当する。ステージ14に載置され固定された加工対象物Wの
厚さ方向がZ軸方向となる。
Z軸調整機構22を構成するZ軸調整台22bが機台18に対して固定されており(固
定構造は図示省略)、Z軸調整機構22を構成するZ軸スライダ22aが、Z軸方向に摺
動自在且つ固定可能にZ軸調整台22bと係合している。Z軸スライダ22aは、Z軸駆
動モータ22cによってZ軸方向に移動される。レンズ保持枠21は、Z軸スライダ22
aに固定されている。例えば、Z軸調整台22bは軸方向がZ軸方向と平行なボールネジ
であり、Z軸スライダ22aはボールネジと螺合する雌ネジが形成されたブロックであり
、Z軸駆動モータ22cは回転軸にボールネジが固定されたサーボモータである。ボール
ネジをサーボモータで回転させることにより、Z軸スライダ22aに固定されたレンズ保
持枠21をZ軸方向に移動させる。集光レンズL1,L2,L3を集光レンズL1,L2
,L3とは異なる焦点距離の他の集光レンズに代えても、Z軸調整機構22によって、加
工対象物Wと当該集光レンズとの距離を適切に調整することが可能である。レンズ保持枠
21が、光学素子保持枠に相当し、Z軸スライダ22aとZ軸調整台22bとが、保持枠
位置調整装置に相当し、Z軸駆動モータ22cが、調整駆動源に相当する。
Z軸副調整機構231を構成するZ軸副調整台231bがレンズ保持枠21に固定され
ており、Z軸副調整機構231を構成するZ軸副スライダ231aが、Z軸方向に摺動自
在且つ固定可能にZ軸副調整台231bと係合している(図2参照)。Z軸副スライダ2
31aは、Z軸副駆動モータ231cによってZ軸方向に移動される。集光レンズL1は
、Z軸副スライダ231aに、例えばレンズマウントを介して着脱可能に固定されている
(図2参照)。同様に、Z軸副調整機構232を構成するZ軸副調整台232b(図示省
略)がレンズ保持枠21に固定されており、Z軸副調整機構232を構成するZ軸副スラ
イダ232a(図示省略)が、Z軸方向に摺動自在且つ固定可能にZ軸副調整台232b
と係合している。Z軸副スライダ232aは、Z軸副駆動モータ232c(図示省略)に
よってZ軸方向に移動される。集光レンズL2は、Z軸副スライダ232aに、着脱可能
に固定されている。集光レンズL3は、レンズ保持枠21に着脱可能に固定されている。
Z軸副調整機構231,232は、Z軸調整機構22と同様に、例えば、軸方向がZ軸方
向と平行なボールネジと、ボールネジと螺合する雌ネジが形成されたブロックと、回転軸
にボールネジが固定されたサーボモータとを有する機構である。Z軸副スライダ231a
とZ軸副調整台231b、及びZ軸副スライダ232aとZ軸副調整台232bが、副位
置調整装置に相当する。Z軸副駆動モータ232c、又はZ軸副駆動モータ231cが、
副調整駆動源に相当する。
加工装置制御ユニット30は、レーザ加工装置100全体の動作を統括制御する。Z軸
制御部31は、Z軸駆動モータ22cの動作を制御して、レンズ保持枠21のZ軸方向の
位置を移動又は固定させる。Z軸副制御部32は、Z軸副駆動モータ231c,232c
の動作を制御して、集光レンズL1,L2のZ軸方向の位置を移動又は固定させる。Z軸
制御部31が、調整駆動源制御装置に相当し、Z軸副制御部32が、副調整駆動源制御装
置に相当する。
図2は、図1に矢印aで示した方向から見た模式図である。図2に示すように、集光レ
ンズL1,L2,L3は、集光レンズL1,L2,L3の集光点41a,41b,41c
の位置が、Y軸とZ軸とに略平行な同一の略平面内に在るように、レンズ保持枠21上の
位置が規定されている。集光点41a,41b,41cが略存在する平面を平面44と表
記する。集光点41a,41b,41cの周囲には、改質領域42a,42b,42cが
形成されている。
ここで、多光子吸収による改質領域の形成について説明する。加工対象物Wが当てられ
た光に対して透過性を有する材料からなっていても、当該材料の吸収のバンドギャップE
gよりも光子のエネルギーhνが非常に大きいと吸収が生じる。この吸収を多光子吸収と
言う。しかも、レーザ光のパルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物Wの内部
に起こさせると、多光子吸収のエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、イオン価数変化
、結晶化または分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される
。本実施形態では、この屈折率変化領域を改質領域と呼ぶ。
図2に示したように、改質領域42は、集光点41の周囲に形成される。集光点41a
,41b,41cを形成した状態で、加工対象物WをY軸方向に移動することにより、Y
軸方向に延在する帯状の改質領域42a,42b,42cが形成される。Z軸方向で重な
りあった改質領域42a,42b,42cは互いに連なって、平面44を略中心とする平
板状の改質領域42が形成される。加工対象物Wに、改質領域42を挟んだ両側を互いに
分離するように力を加えることで、改質領域42の部分が分断され、概ね平面44を切断
面として、加工対象物Wが切断される。
次に、レーザ加工装置100を用いて切断する加工対象物Wの一例である、液晶表示パ
ネルが区画形成されたマザー基板、及びレーザ加工装置100を用いたレーザスクライブ
方法によって当該マザー基板を切断して個々の液晶表示パネルに分離する工程について説
明する。
(液晶表示パネル)
最初に、液晶表示パネルについて説明する。図3は、液晶表示パネルの構造を示す概略
図である。同図(a)は、液晶表示パネルについて、各構成要素とともに対向基板側から
見た平面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A線に沿う概略断面図である。なお、
以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさと
するため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
図3(a)および(b)に示すように、液晶表示パネル60は、TFT(Thin Film
Transistor)素子63を有する素子基板61と、対向電極66を有する対向基板62と、
シール材64によって接着された素子基板61と対向基板62との隙間に充填された液晶
65とを備えている。素子基板61は対向基板62より一回り大きく額縁状に張り出した
状態となっている。
素子基板61は、厚さおよそ1.2mmの石英ガラス基板を用いており、その表面には
画素を構成する画素電極(図示省略)と、3端子のうちの一つが画素電極に接続されたT
FT素子63が形成されている。TFT素子63の残りの2端子は、画素電極を囲んで互
いに絶縁状態で格子状に配置されたデータ線(図示省略)と走査線(図示省略)とに接続
されている。データ線は、Y軸方向に引き出されて端子部70においてデータ線駆動回路
部69に接続されている。走査線は、X軸方向に引き出され、左右の額縁領域に形成され
た2つの走査線駆動回路部73,73に個々に接続されている。各データ線駆動回路部6
9および走査線駆動回路部73の入力側配線は、端子部70に沿って配列した実装端子7
1にそれぞれ接続されている。端子部70とは反対側の額縁領域には、2つの走査線駆動
回路部73,73を繋ぐ配線72が設けられている。
対向基板62は、厚みおよそ1.0mmの透明なガラス基板を用いており、共通電極と
しての対向電極66が設けられている。対向電極66は、対向基板62の四隅に設けられ
た上下導通部74を介して素子基板61側に設けられた配線と導通しており、当該配線も
端子部70に設けられた実装端子71に接続されている。
液晶65に面する素子基板61の表面および対向基板62の表面には、それぞれ配向膜
67,68が形成されている。
液晶表示パネル60は、外部駆動回路と電気的に繋がる中継基板が実装端子71に接続
される。そして、外部駆動回路からの入力信号が各データ線駆動回路部69および走査線
駆動回路部73に入力されることにより、TFT素子63が画素電極ごとにスイッチング
され、画素電極と対向電極66との間に駆動電圧が印加されて表示が行われる。
尚、図3では図示省略したが、液晶表示パネル60の表裏面には、それぞれ入出射する
光を偏向する偏光板が設けられる。
(液晶表示パネルマザー基板)
次に、液晶表示パネル60が区画形成されたマザー基板80について説明する。図4は
、液晶表示パネルが区画形成されたマザー基板を示す概略図である。同図(a)は、対向
基板側から見た平面図であり、同図(b)は、同図(a)のB−B線に沿った概略断面図
である。
図4(a)及び(b)に示すように、マザー基板80は、素子マザー基板81と対向マ
ザー基板82とが接着されている。素子マザー基板81には、1つの液晶表示パネル60
の素子基板61に相当する素子基板区画61aが複数区画形成されている。対向マザー基
板82には、1つの液晶表示パネル60の対向基板62に相当する対向基板区画62aが
複数区画形成されている。素子マザー基板81と対向マザー基板82とは、素子基板区画
61aと対向基板区画62aとの位置関係が、液晶表示パネル60における素子基板61
と対向基板62との位置関係となるように、シール材64によって貼り合わされている。
シール材64によって囲まれた素子マザー基板81と対向マザー基板82との隙間には、
液晶65が充填されている。
マザー基板80から液晶表示パネル60を切出すための切断面をそれぞれ、H素子切断
面84、V素子切断面86、H対向切断面87、V対向切断面88と表記する。H素子切
断面84は、二点鎖線で示した素子マザー基板81の切断面であり、図4(a)のX軸方
向に延在する切断面である。V素子切断面86は、二点鎖線で示した素子マザー基板81
の切断面であり、図4(a)のY軸方向に延在する切断面である。H対向切断面87は、
一点鎖線で示した対向マザー基板82の切断面であり、図4(a)のX軸方向に延在する
切断面である。V対向切断面88は、一点鎖線で示した対向マザー基板82の切断面であ
り、図4(a)のY軸方向に延在する切断面である。図4に示した、84a,84b,8
4cは、それぞれH素子切断面84であり、86a,86b,86cは、それぞれV素子
切断面86であり、87a,87b,87c,87d,87eは、それぞれH対向切断面
87であり、88a,88b,88c,88d,88eは、それぞれV対向切断面88で
ある。
(改質領域の形成)
次に、H素子切断面84、V素子切断面86、H対向切断面87、V対向切断面88の
位置に改質領域を形成する手順の一例を説明する。図2に示した改質領域42のZ軸方向
の幅は300から400μmであり、厚さおよそ1.2mmの素子マザー基板81及び厚
さおよそ1.0mmの対向マザー基板82を切断可能な改質領域は、図1及び図2に示し
たレーザ加工装置100と同様に改質領域42を3段重ねることで形成できる。集光レン
ズL1,L2の集光レンズL3に対するZ軸方向の位置を、Z軸副調整機構231,23
2で調整して、改質領域42a,42b,42cのZ軸方向の総幅がおよそ1.0mmと
なるように予め調整する。
最初に、マザー基板80をステージ14に固定する。次に、回動機構15によってステ
ージ14をZ軸回りに回動させて、マザー基板80のH素子切断面84又はV素子切断面
86の延在方向の一方、例えばH素子切断面84の延在方向を、図1のY軸方向と一致さ
せる。
次に、図2に示した平面44のZ軸方向の位置が、ステージ14に固定されたマザー基
板80の図4(b)に示したH対向切断面87aのZ軸方向の位置となるように、Z軸調
整機構22によって、レンズ保持枠21のZ軸方向の位置、即ち集光レンズL1,L2,
L3のZ軸方向の位置を調整する。次に、平面44のX軸方向の位置が、H対向切断面8
7aのX軸方向の位置となるように、X軸スライド機構17によって、ステージ14のX
軸方向の位置、即ちマザー基板80のX軸方向の位置を位置合わせする。次に、改質領域
42a,42b,42cが、H対向切断面87aの一端から他端まで連続して形成される
ように、レーザ光を照射しながら、Y軸スライド機構16によって、ステージ14、即ち
マザー基板80をY軸方向に移動して、H対向切断面87aに沿う改質領域が形成される
。同様にして、H対向切断面87bなどの全てのH対向切断面87に沿う改質領域が形成
される。
次に、集光レンズL1,L2の集光レンズL3に対するZ軸方向の位置を、Z軸副調整
機構231,232で調整して、改質領域42a,42b,42cのZ方向の総幅がおよ
そ1.2mmとなるように調整する。次に、図2に示した平面44のZ軸方向の位置が、
ステージ14に固定されたマザー基板80の図4(b)に示したH素子切断面84のZ軸
方向の位置となるように、Z軸調整機構22によって、レンズ保持枠21のZ軸方向の位
置、即ち集光レンズL1,L2,L3のZ軸方向の位置を調整する。次に、H対向切断面
87の場合と同様にして、全てのH素子切断面84に沿う改質領域を形成する。
次に、回動機構15によってステージ14をZ軸回りに90°回動させて、マザー基板
80のV素子切断面86の延在方向を、図1のY軸方向と一致させる。以降、上記したH
対向切断面87又はH素子切断面84に沿う改質領域を形成する手順と同様にして、V素
子切断面86、又はV対向切断面88に沿う改質領域を形成する。全てのH対向切断面8
7、H素子切断面84、V素子切断面86、V対向切断面88について当該切断面に沿う
改質領域が形成されたマザー基板80は、わずかな力を加えるだけで、改質領域を起点に
して容易に分割され、各液晶表示パネル60が形成される。
以下、実施形態の効果を記載する。
(1)集光レンズL1,L2,L3を保持するレンズ保持枠21のZ軸方向の位置を調
整可能なZ軸調整機構22を設けたことにより、集光レンズL1,L2,L3を集光レン
ズL1,L2,L3とは異なる焦点距離の他の集光レンズに代えても、Z軸調整機構22
によって、加工対象物Wと当該集光レンズとの距離を適切に調整することが可能である。
これにより、加工対象物Wの特性に合わせて、適切な焦点距離などの特性を持つ集光レン
ズを選び、加工対象物Wに合わせて集光レンズを交換し、加工対象物Wと集光レンズとの
距離を適切に調整することを容易に実行することができる。
(2)集光レンズL1,L2,L3を保持するレンズ保持枠21のZ軸方向の位置を調
整可能なZ軸調整機構22を設けたことにより、集光レンズL1,L2,L3のZ軸方向
の位置は一緒に調整される。集光レンズL1,L2,L3それぞれにZ軸方向の位置調整
装置を設けることが不要となり、集光レンズL1,L2,L3と位置調整装置とを含む装
置を小型にすることができる。また、集光レンズL1,L2,L3を個別に位置調整しな
いため、位置調整の集光レンズL1,L2,L3ごとのばらつきを抑制することができる
(3)集光レンズL3に対する集光レンズL1,L2のZ軸方向の位置を調整できるZ
軸副調整機構231,232を設けたことにより、改質領域42a,42b,42cのZ
軸方向の総幅を調整することができる。これにより、加工対象物Wの厚さ即ちZ軸方向の
幅に応じて、切断予定面に沿う改質領域の幅を適切な大きさに調整することができる。
(4)Z軸調整機構22を駆動するZ軸駆動モータ22cを設けたことにより、加工対
象物Wに対するレンズ保持枠21のZ軸方向の位置、即ち集光レンズL1,L2,L3の
Z軸方向の位置の調整の迅速化がなされた。これにより、レーザ加工装置100が稼動し
ている合間に、加工対象物Wに対する改質領域42a,42b,42cが形成される位置
の変更が可能となり、レーザ加工装置100の一連の作業の中で、積層された加工対象物
W毎に、異なる切断予定面に沿った改質領域42を形成することができる。
(5)Z軸副調整機構231,232を駆動するZ軸副駆動モータ231c,232c
を設けたことにより、集光レンズL3に対する集光レンズL1,L2のZ軸方向の位置の
調整の迅速化がなされた。これにより、レーザ加工装置100が稼動している合間に集光
レンズL3に対する集光レンズL1,L2のZ軸方向の位置を調整する作業を実行するこ
とが可能となり、レーザ加工装置100の一連の作業の中で異なる厚さの加工対象物Wに
対応して、加工対象物Wの厚さに適したZ軸方向の幅を持つ改質領域42を形成すること
ができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発
明の実施形態は、前記実施形態に限らない。本発明は、前記実施形態に限定されるもので
はなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり
、以下のように実施することもできる。
(変形例1)前記実施形態においては、加工対象物Wに対する集光点41のZ軸方向の
位置調整は、Z軸調整機構22によって集光レンズL1,L2,L3を保持するレンズ保
持枠21を移動することでおこなっていたが、集光レンズL1,L2,L3を移動するこ
とは必須ではない。加工対象物Wに対する集光点41のZ軸方向の位置調整は、ステージ
をZ軸方向に移動して調整してもよい。レーザ光源10や集光レンズL1,L2,L3を
含む光学系が調整装置を持たなくてすみ、光学系が調整装置を持つ場合に比べて光学系全
体を軽量小型にすることができる。
(変形例2)前記実施形態においては、Z軸副調整機構231,232を設け、集光レ
ンズ相互のZ軸方向の位置を調整可能にしていたが、集光レンズ相互のZ軸方向の位置を
調整することは必須ではない。特定の加工対象物Wに合わせて、集光レンズ相互のZ軸方
向の位置は固定であってもよい。Z軸副調整機構231,232を設けないことで、集光
レンズ回りをより軽量化小型化することができる。
(変形例3)前記実施形態においては、Z軸調整機構22やZ軸副調整機構231,2
32は、機構を駆動するための駆動源として、Z軸駆動モータ22cやZ軸副駆動モータ
231c,232cを設けていたが、駆動源を設けることは必須ではない。Z軸調整機構
22やZ軸副調整機構231,232は、手作業で調整を行う構成であってもよい。
(変形例4)前記実施形態においては、分割器12を設け、レーザ光源10から射出さ
れたレーザ光1を3つのレーザ光2,3,4に分割していたが、複数の集光点を構成する
ためにレーザ光を分割することは必須ではない。一個のレーザ光源10からのレーザ光を
一個の集光レンズで集光する構成であってもよい。ただし、焦点位置間のY軸方向の距離
は、レーザ光源10と集光レンズのどちらか大きい方で規制される距離より小さくできな
いため、それぞれレーザ光の屈曲器を設け、レーザ光源10の大きさが焦点位置間のY軸
方向の距離に影響しないようにすることが好ましい。
(変形例5)前記実施形態においては、3つのレーザ光2,3,4は互いに平行であっ
たが、複数の集光点を構成するためレーザ光が互いに平行であることは必須ではない。X
軸に略直交する平面内で傾け、集光点41a,41b,41cのY軸方向の距離を小さく
することで、一つの切断面のための改質領域42を形成するためのY軸方向の相対移動距
離を小さくすることができる。例えば、集光点41a,41b,41cがZ軸方向でも略
直線状に位置するように構成することで、Z軸方向に長い線状の改質領域を形成し、集光
点を移動して当該線状の改質領域を連続させて形成することで、Z軸に略直交する平面に
おいて直線ではない切断線に沿って、加工対象物を切断することができる。
(変形例6)前記実施形態においては、集光レンズL1,L2,L3に対してステージ
14をZ軸に直交する方向に移動することで、集光レンズL1,L2,L3と加工対象物
Wとを相対移動させていたが、ステージ14側を移動させることは必須ではない。集光レ
ンズL1,L2,L3側を移動することで、集光レンズL1,L2,L3と加工対象物W
との相対移動をおこなってもよい。
(変形例7)前記実施形態においては、レーザ加工装置100は、3個の集光レンズを
備えていたが、レーザ加工装置が備える集光レンズはいくつであってもよい。より多数の
集光レンズを備えることで、一回の走査でより厚い加工対象物に適切な改質領域を形成す
ることができる。
上述した実施形態においては、加工対象物の一例として、液晶表示パネルが形成された
マザー基板について説明したが、本発明による加工装置は様々な加工対象物の加工装置と
して利用できる。例えば、液晶表示パネルと同様にガラス基板の切断に用いられるガラス
基板分割装置、水晶発振器などの水晶基板の切断に用いられる水晶基板分割装置、集積回
路などのシリコン基板分割装置、ピエゾ素子などの圧電素子分割装置、フィルム分割装置
、プラスチック板分割装置などとして、利用することができる。
本発明のレーザ加工装置の要部の構成を示す模式図。 図1に矢印aで示した方向から見たレーザ加工装置の要部の模式図。 液晶表示パネルの構造を示す概略図。 液晶表示パネルが区画形成されたマザー基板を示す概略図。
符号の説明
1,2,3,4…レーザ光、10…レーザ光源、14…ステージ、15…回動機構、1
6…Y軸スライド機構、17…X軸スライド機構、21…レンズ保持枠、22…Z軸調整
機構、22a…Z軸スライダ、22b…Z軸調整台、22c…Z軸駆動モータ、31…Z
軸制御部、32…Z軸副制御部、41,41a,41b,41c…集光点、42,42a
,42b,42c…改質領域、44…平面、60…液晶表示パネル、80…マザー基板、
81…素子マザー基板、82…対向マザー基板、84…H素子切断面、86…V素子切断
面、87,87a,87b…H対向切断面、88…V対向切断面、100…レーザ加工装
置、231,232…Z軸副調整機構、231a…Z軸副スライダ、231b…Z軸副調
整台、231c…Z軸副駆動モータ、L1,L2,L3…集光レンズ。

Claims (1)

  1. 加工対象物を載置するためのステージと、
    レーザ光を出射するレーザ光源と、
    前記レーザ光を集光する光学素子と、
    前記ステージに載置された前記加工対象物の厚さ方向である第1の方向に直交する第2の方向について、前記光学素子と前記ステージとを相対移動させる走査機構と、
    前記走査機構に接続され、前記光学素子を複数保持可能な光学素子保持枠と、
    前記第1の方向に沿って、前記光学素子保持枠と前記ステージとの相対位置を調整可能な保持枠位置調整装置と、
    前記保持枠位置調整装置を駆動する調整駆動源と、
    前記調整駆動源を制御する調整駆動源制御装置と、
    前記光学素子保持枠に保持された前記光学素子の前記第1の方向の位置を調整可能な副位置調整装置と、
    前記副位置調整装置を駆動する副調整駆動源と、前記副調整駆動源を制御する副調整駆動源制御装置とを備え、
    前記光学素子保持枠に保持された複数の前記光学素子は、それぞれの前記光学素子の光軸が、前記第1の方向に平行な同一の平面内にあり、それぞれの前記光学素子の集光位置が、前記第1の方向において異なるように保持され、
    前記保持枠位置調整装置によって、前記光学素子保持枠と前記ステージとの相対位置を調整することにより、前記加工対象物の内部に形成する前記集光領域の前記第1の方向の位置を調整し、
    前記光学素子によって集光された前記レーザ光の前記集光領域は、前記加工対象物に想定されており前記第1の方向に平行な切断予定面の一部を包含するように前記加工対象物の内部に形成され、前記加工対象物の前記集光領域の部分を改質すると共に、前記走査機構によって、前記集光領域を前記切断予定面に沿って移動させることで、前記切断予定面を包含する前記加工対象物の改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
    前記副位置調整装置は、前記第1の方向及び前記第2の方向を含む平面内で、前記光学素子を更に傾斜調整可能であり、
    前記光学素子を透過した前記レーザ光が集光することにより形成される複数の前記集光領域は、前記第1の方向に直線状に連続して配置される、
    ことを特徴とするレーザ加工装置。
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