JP4865344B2 - ボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法 - Google Patents

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Description

本発明は、火力発電用ボイラの水壁管、過熱器管、再熱器管などの高温伝熱管で生じるエレファントスキン状の熱疲労亀裂損傷の診断法に関する。
石炭焚きボイラや重油焚きボイラでは、水壁管、過熱器管、再熱器管などの伝熱管に燃焼灰が付着堆積すると伝熱効率が低下するため、ウォールブロワ(以下、WBと略称する)やスートブロワ(以下、SBと略称する)によって、定期的に高圧蒸気を吹付けて付着灰を除去している。
図6は、SBを作用させた場合の伝熱管部の模式図である。図7は、SB作動時のメタル温度変化の模式図である。図6において、1はボイラ用伝熱管、2は付着灰、3はスートブロワ(SB)又はウォールブロワ(WB)による蒸気流、4は熱応力、5は内面スケール、6はエレファントスキン状亀裂、をそれぞれ表す。600〜1200℃の火炉内条件中で300〜500℃の過熱蒸気3を伝熱管1に吹付けるため、WBやSBの作動(稼働)でメタル温度低下→付着灰2の除去でメタル温度上昇→灰の再付着でメタル温度低下を繰返し、メタル温度の変化及び管内外面の温度差により50〜200N/mmの熱応力4が発生する。WBやSBの作動回数は、灰の付着速度、灰性状、部位によって異なるが50〜500回/年のオーダである。このような熱応力の繰返しによって亀裂6が発生・進展し、損傷に繋がる。
図8は、公知の代表的なボイラ用伝熱管の疲労亀裂進展線図である。疲労亀裂進展速度は、鋼種、温度によって変化するが、ボイラ用フェライト系CrMo鋼の進展速度はほぼ同じ挙動である。図8の横軸の応力拡大係数範囲ΔKは、ΔK=D・σ√(πa) (D:形状係数、σ:応力範囲、a:亀裂深さ) で算定される数値であり、形状、応力範囲及び亀裂深さの関数である。亀裂aが1mm以下の場合応力範囲σが大きくてもΔKは50kg/mm3/2以下であり、亀裂進展速度は10−5mm/回のオーダであって、10万回繰返しても1mmの進展であり実機の亀裂状況が説明できない。
そこで、通常、従来技術では、図9に示すフローの記述内容にしたがって、疲労亀裂進展速度に対する高温燃焼ガスの影響及び表面の高温酸化スケールの生成とその割れ及びスケール割れ下の高温酸化を考慮した亀裂進展計算が行なわれている(例えば、特許文献1を参照)。この亀裂進展の計算フローの詳細は、図9に図示説明する通りである。
さらに、上記従来技術の外に、エレファントスキン状亀裂のようなボイラでの熱疲労亀裂損傷診断の従来技術が、例えば、特許文献2や特許文献3に提案されている。この特許文献2は、疲労寿命線図に対し高温ガス中のHSの影響を考慮しようとするものであり、また、特許文献3は、ボイラ停止中の腐食作用を考慮しようとするものである。
特開2002−156325号公報 特開2003−351323号公報 特開2003−202101号公報
ところで、図10は、本発明者らが調査した実機ボイラ伝熱管のエレファントスキン状亀裂の測定結果とその時点でのデータと運転履歴や応力条件をもとに診断した亀裂進展予測線図である。この線図に示すように、約17万hの運転で限界亀裂に達すると予測したが、実際には約15万hで伝熱管は噴破しており、非安全側の評価予測になっている。
そして、上記特許文献1における計算は、通常ある期間毎の高温ガスで加速された疲労亀裂進展量と高温酸化成長量の和を進展量とし、累積計算している。しかし、このような累積計算方法においても、実機での亀裂進展が評価できない事象が発生しており、特に、経年使用したボイラでその傾向が顕著である。
このように、上記特許文献1は、ボイラ伝熱管外面疲労亀裂の進展解析法に関するものであり、上記特許文献2は、疲労寿命線図に対し高温ガス中のHSの影響を考慮しようとするものであり、上記特許文献3は、ボイラ停止中の腐食作用を考慮するものであって、本発明が課題とする、エレファントスキン状の熱応力の繰返しと高温腐食(酸化)の組合せで生じる亀裂損傷については、考慮が払われていない。
本発明の目的は、ボイラ伝熱管外面で生じるエレファントスキン状の熱応力の繰返しと高温腐食(又は高温酸化)の組合せで生じる亀裂損傷に対して、その進展挙動の高精度化を図り、実機での挙動を説明、評価し得る診断法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
ボイラ伝熱管の外面から発生するエレファントスキン状の熱疲労亀裂による損傷度を診断する診断法であって、
前記ボイラ伝熱管の寸法、熱膨張率、温度変化をもとに計算された熱応力範囲と亀裂深さとに基づいて、応力拡大係数範囲を算定するステップと、
前記応力拡大係数範囲及び亀裂進展速度の関係を表す熱疲労亀裂進展線図と熱応力繰り返し回数とに基づいて、熱疲労亀裂進展量を解析するステップと、
前記ボイラ伝熱管の管外面の高温酸化スケール又は高温腐食スケールの生成量を求め、当該生成されたスケールに因る割れを評価するステップと、
前記ボイラ伝熱管の管内面側におけるスケールの生成量を求めるステップと、を備え、 前記ボイラ伝熱管は管内を蒸気または高温水が流れる水壁管であり、前記ボイラ伝熱管の管内面側におけるスケールの生成量は、管内が蒸気の場合には温度、材質、時間、熱負荷をもとに算出した水蒸気酸化スケールの生成量とし、管内が高温水の場合には水中Fe濃度、温度、pH、流速をもとに算出した析出付着スケールの生成量とし、
前記求めた管内面側スケール生成量に起因する伝熱管メタル温度の上昇が、前記熱応力範囲、前記熱疲労亀裂進展量および前記管外面のスケール生成量を加速させることを組み込んで、前記熱疲労亀裂進展量を解析するとともに前記割れを評価することによって、前記熱疲労亀裂の損傷度を診断するものである。
本発明によると、SB又はWBの運用に伴う熱応力の繰返し又は起動停止に伴なう熱応力の繰返しと高温ガスの影響が組み合わさって生じるボイラ伝熱管のエレファントスキン状亀裂進展挙動を高精度に予測、解析することができ、ボイラ設備の安全かつ安定運転に寄与することができる。さらに、ボイラ伝熱管内の水蒸気酸化スケール以外に高温水による析出付着スケールについても評価診断ができる。
従来技術の診断法では、非安全側の診断となり、事前に伝熱管の噴破漏洩トラブルに遭遇して火力発電プラントを停止する事態を招くが、本発明の診断法によると、伝熱管噴破による火力発電プラントの停止を回避することができる。
本発明の実施形態に係るボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法について、主として図1〜図5を参照しながら以下詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係るボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法のフローを示す図である。図2は本実施形態に関する熱疲労亀裂損傷診断法を用いて亀裂進展解析及び寿命診断を実施した結果を示す図である。図3は本実施形態に関する熱疲労亀裂損傷診断法の入力項目及び診断画面例を示す図である。図4は図3に示す条件で解析し診断した具体的結果を示す図である。図5は本実施形態に係るボイラ伝熱管の管内面にスケールが存在する場合と存在しない場合とにおけるメタル温度変化を示す図である。
まず、本発明の実施形態に係るボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法の概要について説明する。そもそも、ボイラ伝熱管は高温水又は高温過熱蒸気を加熱するものであり、管内面側では高温水からの析出付着スケール又は過熱蒸気による水蒸気酸化スケールが生成する。管内面に析出又は生成するスケールは、ほとんどが鉄酸化物(Fe又はFe)であり、その熱伝導率は伝熱管鋼材の1/20〜1/40であるため、伝熱管外面からの熱負荷によりメタル温度(管表面温度)が上昇する。
図5に管内面スケールがある場合とない場合のメタル温度変化の模式図を示しており、メタル温度が上昇すると図8に示したように疲労亀裂進展速度が高くなり、高温酸化や高温腐食も増加する。さらに、SB又はWBの稼働によるメタル温度差ΔTは内面スケールにより増加し(図5を参照)、熱応力もより高くなる。このような伝熱管内面スケールの影響を診断法に組み入れて、伝熱管外面のエレファントスキン状亀裂進展を評価しようとすることが本発明の主たる要旨である。すなわち、ボイラ伝熱管外面で生じるエレファントスキン状亀裂の進展解析において、従来技術(例えば上記特許文献1)では管外面からの高温酸化又は高温腐食とそのスケールの割れによる割れ下のスケール再生を考慮したものであったが、前述したように実機伝熱管での亀裂進展を診断でき得ない状況があり、本実施形態では、内面スケールによるメタル温度の影響が重要であることを見出し、管内面スケールを亀裂損傷診断法に組み入れることを主旨とするものである。
図1において、管外面疲労亀裂進展解析+管外面高温酸化又は高温腐食量の算定法は、従来技術と同様であって、温度差、温度変化および材料の線膨張率から式(1)によって熱応力範囲(σR)を算定する。
σR=ΔT×Lec×E …(1)
ここで、σR:熱応力範囲(N/mm)、ΔT:温度差(K)、Lec:線膨張率(1/K)、E:ヤング率(N/mm)である。
また、σR、亀裂形状、構造材形状から式(2)によって応力拡大係数範囲ΔKを算定し、その材料の疲労亀裂進展線図(ΔK−da/dN)(図8に示す亀裂進展速度da/dNを参照)と繰返し数から亀裂進展量を計算する。
ΔK=D×σR√(πa)=112×(σR/(t0.5×W)×(tan(π×a/t)))0.5 …(2)
ここで、D:形状係数、t:管板厚(mm)、W:管半周幅(mm)、a:亀裂深さ(mm)である。
次に、管外面の高温酸化スケール又は高温腐食スケールの生成量は、材質、温度、ガス性状及び付着灰性状からデータベースを元にした回帰式から次のように算定する。高温酸化又は高温スケール厚さは、次のようになる。
Y=EI×(Kp×t)0.5 …(3)
Kp=A×exp(−Q/RT) …(4)
Log(Kp)=as×1/T+bs …(5)
ここで、Y:酸化スケール厚さ(mm)、Kp:放物線則速度定数、t:時間(h)、T:温度(K)、Q:活性化エネルギー、R:ガス定数、A:材料定数、as,bs:スケール厚さの実験値(又は実測値)と温度および時間の回帰式より求められる回帰係数、EI:環境加速係数である。
ここで、各材料についてのas,bs値と温度(K)を式(5)に代入するとKp値が計算でき、Kp値と時間t及び環境加速係数EIを式(3)に代入すると酸化スケール厚さYが計算できる。各環境に応じたa,bが得られていればEI=1とすればよいが、一般的にa,bは大気環境で得られた数値が多く、その条件でのas,bs値を用いる場合は、ガス性状(腐食性のSO,HCl濃度)や付着灰の性状に応じたEIを設定することになる。
次に、管内面側のスケール生成量は、管内が過熱蒸気の場合、温度、材質より回帰式(高温腐食のas,bsの代わりに蒸気酸化のc,dを用いる)によって算定し、管内が高温水の場合は、水中Fe濃度、pH及び過去の実績より求める。管内面スケールによる表面温度やメタル温度の上昇は、内面スケールの厚さ、スケール熱伝導率、熱負荷、管寸法がパラメータになるものであり、式(6)で代表される伝熱の式を用いる。
ΔT=DI×Q×ts/λs …(6)
ここで、ΔT:スケールによる温度上昇(K)、DI:形状係数、Q:熱負荷(W/m)、ts:スケール厚さ(mm)、λs:スケール熱伝導率(W/mK)である。
管内スケールにより表面温度、メタル温度及びSBやWB作動時の温度差が大きくなると熱応力範囲、疲労亀裂進展及び高温酸化や高温腐食が加速され、管外面からのエレファントスキン状熱疲労亀裂の進展が加速されることになる。
敷衍して説明すると、図1に示すように、管外面の疲労亀裂進展の解析は、伝熱管の温度差、温度変化、熱膨張率をもとに熱応力範囲σRを算定し、このσR、亀裂形状及び構造材形状をもとに応力拡大係数範囲ΔKを算定し、このΔKと亀裂進展速度との関係を示す疲労亀裂進展線図と、SB又はWBや起動停止に伴う応力繰り返し数とに基づいて亀裂進展量を解析する。次いで、管外面の高温酸化又は高温腐食スケールの評価は、温度、材質、ガス性状、灰性状をもとに高温酸化又は高温腐食スケールの生成量を算定し、生成したスケールの割れを評価する。
以上のような疲労亀裂進展解析や管外面スケールの割れ評価によって基本的な熱疲労亀裂損傷を診断する。これに加えて、本発明の実施形態では、管内面のスケール生成による昇温効果を前述の基本的熱疲労亀裂損傷の診断に反映させようとするものである。ここで、管内面スケールは、管内が蒸気の場合に温度、材質、時間、熱負荷をもとに水蒸気酸化スケールの生成量を算出し、管内が高温水の場合に水中Fe濃度、温度、pH、流速をもとに析出付着スケール量を算出する。
管内面スケールの生成によって、その内面スケール厚さ、そのスケールの熱伝導率、熱負荷、管寸法を要因としてメタル及び表面温度が上昇し、この温度上昇によって前述の亀裂進展量及び管外面高温酸化又は高温腐食が加速する。したがって、本実施形態ではこの温度上昇を前記基本的熱疲労亀裂損傷の診断に反映させようとするものである。
図2は、本発明の実施形態に係る亀裂損傷診断法を用いて、亀裂進展解析及び寿命診断を実施した結果である。条件は、図10に示す条件と同じであり、STBA24鋼について、SB回数250回/10kh、初期平均温度520℃、内面:過熱蒸気、の条件で解析したもので、5万hから15万hで約0.2〜0.3mm厚の管内水蒸気酸化スケールによる昇温効果(平均メタル温度で12℃昇温)、応力範囲は、亀裂進展効果を含め倍増し、15万hで寿命に達する線図が得られ、実機測定値とよく一致した線図になっている。
図3は、本発明の実施形態に係るボイラ伝熱管の高精度熱疲労亀裂損傷診断法の入力項目及び診断画面例である。また、図4は、図3の条件で解析診断した本実施形態の具体的結果を示している。材質:STBA24(2.25Cr1Mo)鋼、温度520℃、初期熱応力範囲σR:180N/mm、繰返し数:200回/年、運転時間:7000h/年などの条件と約9万hの運転で、1.2mm深さのエレファントスキン状亀裂をもとに解析した結果である。
図4に示すように(図4の上辺に記述された0,2,4,6,8年後を参照)、今後3.9年で噴破限界亀裂に成長することから、定期検査時期を考慮し、2年後には取替が必要であると診断できるものである。従来技術の診断法では、8〜10年後の寿命と診断することになり、本実施形態に係る診断法ではより高精度かつ設備信頼性の高い診断が可能となる。
本発明の実施形態に係る診断法の主旨は、管外面側熱疲労亀裂進展評価に用いる項目に管内面側のスケール成長及び内面スケールによるメタル温度などの上昇が評価できる項目を追加したものである。さらに、図3に示す入力項目を一例とした入力画面によって亀裂進展解析を行って診断することも本実施形態の含まれる。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法は、次のような課題を解決するためのものであって、下記の構成を備えることを特徴とするものである。すなわち、石炭焚き等のボイラの経年化に伴い水壁管、過熱器管、再熱器管等のボイラ伝熱管のスートブロワ(SB)又はウォールブロワ(WB)作動部でのエレファントスキン状亀裂損傷が発生しており、この亀裂は、SB又はWB作動時のメタル温度の変化に伴なう熱応力の繰返し作用と燃焼ガスの高温腐食又は高温酸化の組合せによって生じるものであり、応力、環境、材質など種々の因子の影響を受けて、一概に損傷度を評価できないという課題を抱えていた。
本実施形態は、このエレファントスキン状亀裂の進展に管外面の高温酸化(高温腐食)と管内面の酸化スケールの影響が大きいことを見出し、これらの影響を考慮した熱疲労亀裂損傷診断法を提案するものであり、具体的に云えば、ボイラ伝熱管の外面から発生するエレファントスキン状の熱疲労亀裂による損傷度や余寿命を診断する手法において、管外面側の高温酸化又は高温腐食による酸化スケール生成に加えて、管内面側の酸化スケールによるメタル温度上昇度及び熱応力の上昇度を亀裂進展損傷診断に組み入れることである。また、ボイラ伝熱管の外面から発生するエレファントスキン状の熱疲労亀裂による損傷度や余寿命を診断する手法において、当該伝熱管材料の高温疲労亀裂進展線図、温度及びガス性状をパラメータにした高温酸化速度、高温酸化スケールの割れひずみ、熱応力範囲、亀裂寸法、管外面の熱負荷、管内面スケール成長速度、管内面スケール熱伝導率を入力項目として、熱疲労亀裂損傷診断を行なうものである。
本発明の実施形態に係るボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法のフローを示す図である。 本実施形態に関する熱疲労亀裂損傷診断法を用いて亀裂進展解析及び寿命診断を実施した結果を示す図である。 本実施形態に関する熱疲労亀裂損傷診断法の入力項目及び診断画面例を示す図である。 図3に示す条件で解析し診断した具体的結果を示す図である。 本実施形態に係るボイラ伝熱管の管内面にスケールが存在する場合と存在しない場合とにおけるメタル温度変化を示す図である。 ボイラ伝熱管にスートブロワを作用させた場合における熱疲労亀裂損傷を表す説明図である。 ボイラ伝熱管にスートブロワを作用させた場合におけるメタル温度変化を示す図である。 ボイラ伝熱管の疲労亀裂進展線図である。 従来技術に関するボイラ伝熱管の亀裂進展量の算定と寿命評価を示すフローである。 実機ボイラ伝熱管の亀裂測定結果と亀裂進展予測線図である。
符号の説明
1 ボイラ用伝熱管
2 付着灰
3 スートブロワ(SB)又はウォールブロワ(WB)による蒸気流
4 熱応力
5 内面スケール
6 エレファントスキン状亀裂

Claims (2)

  1. ボイラ伝熱管の外面から発生するエレファントスキン状の熱疲労亀裂による損傷度を診断する診断法であって、
    前記ボイラ伝熱管の寸法、熱膨張率、温度変化をもとに計算された熱応力範囲と亀裂深さとに基づいて、応力拡大係数範囲を算定するステップと、
    前記応力拡大係数範囲及び亀裂進展速度の関係を表す熱疲労亀裂進展線図と熱応力繰り返し回数とに基づいて、熱疲労亀裂進展量を解析するステップと、
    前記ボイラ伝熱管の管外面の高温酸化スケール又は高温腐食スケールの生成量を求め、当該生成されたスケールに因る割れを評価するステップと、
    前記ボイラ伝熱管の管内面側におけるスケールの生成量を求めるステップと、を備え、 前記ボイラ伝熱管は管内を蒸気または高温水が流れる水壁管であり、前記ボイラ伝熱管の管内面側におけるスケールの生成量は、管内が蒸気の場合には温度、材質、時間、熱負荷をもとに算出した水蒸気酸化スケールの生成量とし、管内が高温水の場合には水中Fe濃度、温度、pH、流速をもとに算出した析出付着スケールの生成量とし、
    前記求めた管内面側スケール生成量に起因する伝熱管メタル温度の上昇が、前記熱応力範囲、前記熱疲労亀裂進展量および前記管外面のスケール生成量を加速させることを組み込んで、前記熱疲労亀裂進展量を解析するとともに前記割れを評価することによって、前記熱疲労亀裂の損傷度を診断する
    ことを特徴とするボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法。
  2. 請求項1において、
    前記熱疲労亀裂進展量と前記管外面のスケール生成に因るスケール割れとをもとに算定した亀裂損傷度と、前記ボイラ伝熱管の材料強度をもとに求めた限界亀裂深さと、によって、ボイラ伝熱管の余寿命を診断する
    ことを特徴とするボイラ伝熱管の熱疲労亀裂損傷診断法。
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