JP5592685B2 - ヘマタイトスケールの付着診断方法 - Google Patents

ヘマタイトスケールの付着診断方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヘマタイトスケールの付着診断方法に係り、特に、超臨界圧ボイラの伝熱管の内壁に付着するヘマタイトスケールの付着厚さを予測する技術に関する。
例えば、超臨界圧ボイラにより水を臨界圧以上の圧力で加熱して沸騰現象がなく連続的に蒸気を発生させ、この蒸気を火力発電所等の蒸気タービンに供給して発電することが知られている。このような超臨界圧ボイラの給水処理として、例えば、給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイト(Fe)を生成させ、このヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させる、所謂、酸素処理が採用されることがある。この酸素処理により形成されたヘマタイトスケールにより、伝熱管の腐食を防止するようにしている。
一方、特許文献1には、酸素処理により形成されたヘマタイトスケールの付着量を測定するため、伝熱管と同一材質の電極と腐食しない貴金属の電極とにより形成した電極対を備える容器に、節炭器の入側から分岐して減圧した給水を通流させ、伝熱管と同一材質の電極側にヘマタイトスケールを付着させて電極間の電流値の変化を検出してヘマタイトスケールの付着量を測定することが記載されている。同文献によれば、電極にヘマタイトスケールが形成されると電極間の電流値が変化し、この電流値の変化が伝熱管の内壁におけるヘマタイトスケールの付着量に相関するから、電極間の電流値を計測することでヘマタイトスケールの付着量を測定できるとしている。
特開2000−258381号公報
しかしながら、特許文献1によれば、ヘマタイトスケールを付着させる一方の電極は、節炭器の入側の温度が低く、かつ減圧された給水中に配置されるから、高温、高圧の給水が通流する伝熱管内とは、ヘマタイトスケールを生成、付着させる条件が異なる。したがって、通常運転条件において、伝熱管内の流体温度及び圧力により生成されるヘマタイトスケールの付着量に差があるとすれば、特許文献1に記載の技術では、伝熱管の内壁に実際に付着するヘマタイトスケールの付着量を予測できないおそれがある。
本発明が解決しようとする課題は、伝熱管の内壁に実際に付着するヘマタイトスケールの付着厚さを予測することにある。
本発明の発明者らは、給水処理として酸素処理を採用して通常運転した後の伝熱管を調べたところ、伝熱管の部位によってヘマタイトスケールの付着量、例えば、付着厚さに差があることを知見した。さらに、ヘマタイトスケールの付着厚さに差が生じる原因は、ヘマタイトスケールを生成、付着させる条件の違いであることを知見した。そして、ヘマタイトスケールの付着厚さに差を生じさせる条件は、伝熱管内の給水が超臨界水の状態にある場合において、超臨界水中のFe濃度、流体温度及び流体圧力であり、これらの条件とヘマタイトスケールの付着厚さとの間には、相関があることを見出した。なお、超臨界水とは、臨界点(臨界温度:374℃、臨界圧力:22MPa)以上の領域にある水のことで、この領域では、水蒸気のような粘度の小ささと拡散性を有し、かつ水の密度に近い状態であり、液体と気体の区別がつかない状態となっている。
これらの知見に基づいて、上記課題を解決するため、本発明のヘマタイトスケールの付着診断方法は、給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイトを生成させ、ヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させるようにした超臨界圧ボイラのヘマタイトスケールの付着診断方法であって、ヘマタイトスケールの付着厚さと、給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力と、を関係付けた以下に示す評価式に基づいてヘマタイトスケールの付着厚さを予測することを特徴とする。
すなわち、本発明のヘマタイトスケールの付着診断方法は、ヘマタイトスケールの付着厚さと、給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力と、を関係付けた評価式を予め設定し、この評価式と、通常運転時の給水中のFe濃度、流体温度及び流体圧力に基づいて伝熱管に実際に付着するヘマタイトスケールの付着厚さを予測するものである。
これによれば、伝熱管の実際のヘマタイトスケールの付着厚さを予測できるから、伝熱管内の化学洗浄、伝熱管の交換等を実施すべき時期を予測できる。つまり、ヘマタイトスケールが厚くなると、伝熱管内の流動抵抗の増加、ヘマタイトスケールによる伝熱阻害等の問題が生じるおそれがある。そのため、伝熱管内の化学洗浄、伝熱管の交換等を適宜実施し、ヘマタイトスケールの厚さが設定値を超えないようにしている。したがって、伝熱管の実際のヘマタイトスケールの付着厚さを予測できれば、伝熱管内の化学洗浄、伝熱管の交換等を実施すべき時期を予測でき、超臨界圧ボイラを安定運転できる。
なお、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測する際に用いる給水中のFe濃度、流体温度及び流体圧力は、実際に測定した実測値、又は設計時に設定される給水中のFe濃度、流体温度及び流体圧力に基づいて求めることができる。
マタイトスケールの付着厚さを予測するための評価式としては、以下の(式1)〜(式3)のいずれか一つを用いることができる。これらの評価式は、実測データから導き出されたものである。実測データは、約6万時間運転後の伝熱管のヘマタイトスケールの付着厚さを実測し、この実測値と、運転時に超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度、伝熱管の各部位の流体温度及び流体圧力を関係付けて得られたものである。
ST=1.6×10−4×Fe×T/μ・・・(式1)
ST:ヘマタイトスケールの付着厚さ
Fe:給水中のFe濃度
T:流体温度
μ:流体温度と流体圧力により決定される粘性係数
ST=0.0048×Fe0.3×SD−2.0―0.16・・・(式2)
ST:ヘマタイトスケールの付着厚さ
Fe:給水中のFe濃度
SD:流体温度と流体圧力により決定される超臨界水密度
ST=0.0048×Fe0.3×V2.0―0.16・・・(式3)
ST:ヘマタイトスケールの付着厚さ
Fe:給水中のFe濃度
V:流体温度と流体圧力により決定される比容積
また、上記評価式に代えて、伝熱管を複数の計測部位に区分し、各計測部位におけるヘマタイトスケールの付着厚さの実測データを、給水中のFe濃度と複数の計測部位における給水の粘性係数に対応させてプロットして作成した評価図に基づいて、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測することができる。なお、評価図は、実測データ、例えば、超臨界圧ボイラを約6万時間運転した後の伝熱管の計測部位ごとのヘマタイトスケールの付着厚さ実測値を、給水中のFe濃度の実測値と、各計測部位における流体温度と流体圧力の設計値により決定される給水の粘性係数と、により整理して作成することができる。
また、上記評価式に代えて、伝熱管の複数の計測部位におけるヘマタイトスケールの付着厚さの実測データを、給水中のFe濃度と複数の計測部位における超臨界水密度に対応させてプロットして作成した評価図に基づいて、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測することができる。なお、評価図は、実測データ、例えば、超臨界圧ボイラを約6万時間運転した後の伝熱管の計測部位ごとのヘマタイトスケールの付着厚さの実測値を、給水中のFe濃度の実測値と、各計測部位における流体温度と流体圧力の設計値により決定される超臨界水密度と、により整理して作成することができる。
本発明によれば、伝熱管の内壁に実際に付着するヘマタイトスケールの付着厚さを予測できる。
本発明のヘマタイトスケールの付着診断方法を適用可能な超臨界圧ボイラの概略図である。 本発明の実施例1の給水中のFe濃度と粘性係数の関係を示す図である。 本発明の実施例1のヘマタイトスケールの付着厚さとブラウン凝集指数の関係を示す図である。 本発明の実施例1によりヘマタイトスケールの付着厚さを予測した例を示す図である。 本発明の実施例2の給水中のFe濃度と超臨界水密度の関係を示す図である。 本発明の実施例2のヘマタイトスケールの付着厚さとパウダー状スケール指数との関係を示す図である。 本発明の実施例2によりヘマタイトスケールの付着厚さを予測した例を示す図である。 超臨界圧ボイラにおける給水の水質を示した図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。まず、本発明のヘマタイトスケールの付着診断方法を実施可能な超臨界圧ボイラの給水の流れについて、図1を用いて説明する。超臨界圧ボイラには、例えば、図示していない給水設備が備えられ、給水設備から節炭器1に給水が供給されるようになっている。給水設備は、例えば、給水に酸素を添加する酸素添加装置と、給水にpH調整剤を添加してpHを設定範囲に維持するpH調整装置が設けられている。酸素添加装置とpH調整装置により、節炭器1に供給される給水は、例えば、溶存酸素30〜200μg/L、pH6.5〜9.3の範囲に調整されている。このように給水設備で給水の溶存酸素量とpHを調整することで、給水中の鉄(Fe)が酸化されて生成したヘマタイト(Fe)が伝熱管の内壁に付着して皮膜を形成する、所謂、酸素処理ができるようになっている。
節炭器1に供給された給水は、節炭器1の伝熱管を通流し、超臨界圧ボイラの排ガスにより予熱される。予熱された給水は、火炉2の水冷壁の伝熱管及び伝熱管群を通流して、燃料の燃焼熱により加熱されて、臨界圧以上の水蒸気が発生するようになっている。臨界圧以上の水蒸気は、火炉2の上部の煙道に設けられた1次過熱器3、2次過熱器4、3次過熱器5の伝熱管を通流して排ガスにより過熱される。3次過熱器5から排出された水蒸気は、図示していない高圧の蒸気タービンに供給され、蒸気タービンの駆動力として用いられる。また、高圧の蒸気タービンを駆動して温度が下がった抽気蒸気は、火炉2の上部の煙道に設けられた1次再加熱器6、2次再加熱器7の伝熱管を通流して排ガスにより再加熱された後、中圧又は低圧の蒸気タービンに供給されて、蒸気タービンの駆動力として用いられる。なお、図1の網掛けで示した対象範囲は、本発明のヘマタイトスケールの付着診断方法が適用される伝熱管の位置を示している。以下、本発明のヘマタイトスケールの付着診断方法を実施例に基づいて説明する。
本発明の発明者らは、図1の超臨界圧ボイラを約6万時間運転後に、火炉2の水冷壁の伝熱管を複数の計測部位に分割し、各計測部位のヘマタイトスケールの付着厚さを測定した。また、運転時における給水中のFe濃度の実測値を運転記録等から求めた。さらに、各計測部位の流体温度、流体圧力を設計値から求めた。これらの実測値及び設計値を整理して、図2、3のグラフを得た。なお、給水中のFe濃度は、超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度を、例えば、節炭器1の入口側に設置されるFe濃度検出センサで実測して求めた値である。
図2は、流体温度と流体圧力により決定される臨界点以上の領域(超臨界状態)にある給水の粘性係数を縦軸とし、給水中のFe濃度を横軸としたグラフである。また、図2の●点はヘマタイトスケールの付着厚さが0.1mm以下であった計測部位であり、■点はヘマタイトスケールの付着厚さが0.1mm以上であった計測部位である。また、同図のデータからヘマタイトスケールの付着厚さが0.1mmとなる境界は、グラフ中に示した曲線11のような、近似曲線になることが推定できる。
図2によれば、ヘマタイトスケールの付着厚さは、粘性係数が低くなる、つまり、給水の粘度が低くなると厚くなり、また、給水中のFe濃度が高くなると厚くなることがわかる。そこで、ブラウン運動の凝集理論に基づき、ブラウン凝集指数を求め、このブラウン凝集指数に基づいてヘマタイトスケールの厚さの実測値を整理して、図3のグラフを得た。
図3は、ヘマタイトスケールの付着厚さ(ST)を縦軸とし、ブラウン運動の凝集理論に基づき、下記の(式4)で定義されるブラウン凝集指数(JBI)を横軸としたグラフである。
JBI=Fe×T/μ・・・(式4)
(式4)のFeは超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度(μg/L)の実測値であり、Tは流体温度(K)の設計値であり、 μは流体温度の設計値と流体圧力の設計値により決定される給水の粘性係数(μPa・s)である。また、図3の●点は、各計測部位のヘマタイトスケールの付着厚さの実測値である。なお、(式4)のJBIは1次関数形式であるが、2次や3次関数など別の関数を使用することができる。
図3によれば、ヘマタイトスケールの付着厚さ(ST)とブラウン凝集指数(JBI)とは、相関があることがわかる。したがって、給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力から求めたブラウン凝集指数(JBI)に基づいて、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測できることがわかる。そこで、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するため、図3の●点の近似式を求めた結果、下記の(式5)を得た。
ST=1.6×10-4×JBI…(式5)
すなわち、給水中のFe濃度と、予測対象となる伝熱管の部位の流体温度と、流体圧力とを求め、求めた値からブラウン凝集指数(JBI)を算出し、算出したブラウン凝集指数(JBI)を(式5)に代入することで、伝熱管の各部位の6万時間運転後の実際のヘマタイトスケールの付着厚さを予測できるのである。なお、(式5)は、1次関数で整理すると相関係数(R)が0.85と良好であったため、1次関数を採用したが、2次、3次関数等他の関数を評価式として使用できる。
次に、(式5)を評価式として、ヘマタイトスケールの付着厚さが設定上限値、例えば、0.1mmを超える伝熱管の部位を予測する場合を、図4に基づいて説明する。図4は、伝熱管の流体温度を横軸とし、ヘマタイトスケール皮膜の厚さを縦軸としたグラフである。図示のとおり、例えば、伝熱管の給水中のFe濃度が3μg/L、流体圧力が30MPaであった場合、6万時間後に流体温度が約468℃以上となっている伝熱管の部位、例えば、火炉2の水冷壁のバーナより上方の伝熱管、又はノーズ壁の伝熱管のヘマタイトスケールの付着厚さが設定上限値0.1mmを超えると予測できる。なお、超臨界圧ボイラの定期点検は、6万時間運転後であったため、実施例1では6万時間運転後のヘマタイトスケールの厚さを予測している。したがって、評価式を求める実測データの採取は、定期点検の時期に応じて適宜選択できる。
これによれば、実測データに基づいて、ヘマタイトスケールの厚さと、給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力と、を関係付けた評価式(式5)を予め設定し、この評価式と、通常運転時の給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力に基づいて伝熱管に実際に付着するヘマタイトスケールの付着厚さを予測することができる。その結果、ヘマタイトスケールの付着厚さを設定値以下に維持するための伝熱管の化学洗浄、交換等の実施時期を予測できる。また、予測結果に基づいて、ヘマタイトスケールが厚くなる点検個所を選定することができる。これらにより、超臨界圧ボイラを安定運転できる。
また、給水中のFe濃度、流体温度、流体圧力のみ利用するため、特別な装置を必要とせず、かつ非破壊でヘマタイトスケールの付着厚さを予測できる。
また、超臨界圧ボイラの定期点検の時期に応じて、評価式(式5)を適宜設定でき、例えば、1万時間運転後、2万時間運転後、3万時間運転後等の実測データに基づいて設定できる。また、評価式(式5)が他の運転時間に相関する場合は、評価式(式5)を適宜変形して使用できる。
また、実施例1は、給水中のFe濃度及び流体圧力を一定として、流体温度の変化に基づいてヘマタイトスケール皮膜の厚さを予測している。つまり、超臨界圧ボイラは、伝熱管の流体温度を上げるものであるから流体温度は変化する。一方、超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度と、伝熱管の流体圧力は、大きく変化するものではないから、給水中のFe濃度及び流体圧力を一定とし、流体温度の変化に基づいてヘマタイトスケールの付着厚さを予測することができる。
また、ヘマタイトスケールの厚さを予測する際に必要な超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度、流体温度、流体圧力は、実際に測定した実測値、又は設計時に設定される給水中のFe濃度、流体温度、流体圧力の設計値に基づいて求めることができる。
また、実施例1は、ヘマタイトスケールの付着厚さの設定上限値を0.1mmとしたが、これに限定されるものではなく、ヘマタイトスケールによる伝熱阻害等を考慮して適宜設定できる。
また、ヘマタイトスケールの付着厚さの予測は、常時行う必要はなく、例えば、超臨界圧ボイラの定期点検時に実施することができる。
また、評価式(5)に代えて、図2を評価図としてヘマタイトスケールの付着厚さを予測することができる。例えば、予測対象とする伝熱管の部位の流体温度が450℃、流体圧力が25MPaの場合、給水の粘性係数は29μPa・sとなる。この場合、超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度が5μg/L未満であれば、予測対象の伝熱管の部位における約6万時間運転後のヘマタイトスケールの付着厚さは、0.1mm以下であると予測できる。
次に、実施例2のヘマタイトスケールの付着診断方法を説明する。本発明の発明者らは、実施例1で説明した実測データを基づいて、図5、6のグラフを得た。図5は、流体温度と流体圧力により決定される超臨界水密度を縦軸とし、給水中のFe濃度を横軸としたグラフである。また、図5の●点はヘマタイトスケールの付着厚さが0.1mm以下であった計測部位であり、■点はヘマタイトスケールの厚さが0.1mm以上であった計測部位である。同図のデータからヘマタイトスケールの厚さが0.1mmとなる境界は、グラフ中に示した曲線13のような近似曲線になることが推定できる。
図5によれば、ヘマタイトスケールの付着厚さは、給水の超臨界水密度が低くなると厚くなり、また、給水中のFe濃度が高くなると厚くなることがわかる。そこで、給水中のFe濃度と超臨界水密度で定義されるパウダー状スケール指数(PSI)を求め、このパウダー状スケール指数(PSI)に基づいてヘマタイトスケールの付着厚さの実測値を整理した結果、図6を得た。
図6は、ヘマタイトスケールの付着厚さ(ST)を縦軸とし、下記の(式6)で定義されるパウダー状スケール指数(PSI)を横軸としたグラフである。
PSI=Fe0.3×SD−0.2・・・(式6)
(式6)のFeは超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度(μg/L)の実測値であり、SDは、流体温度の設計値と流体圧力の設計値により決定される超臨界水密度(kg/L)である。また、図6の●点は各計測部位のヘマタイトスケールの付着厚さの実測値である。なお,(式6)は、パウダー状スケール指数(PSI)の各パラメータを指数関数として整理したが、例えば、2次や3次関数など別の関数を使用することができる。
図6によれば、ヘマタイトスケールの付着厚さ(ST)とパウダー状スケール指数(PSI)とは、相関があることがわかる。したがって、給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力とにより求めたパウダー状スケール指数(PSI)に基づいて、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測できることがわかる。そこで、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するため、図6の●点の近似式を求めた結果、下記の(式6)を得た。
ST=0.0048×PSI―0.16・・・(式6)
ここで、STは約6万時間運転後のヘマタイトスケールの付着厚さ(mm)である。すなわち、予測対象となる伝熱管の部位の、給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力とを求め、求めた値からパウダー状スケール指数(PSI)を算出し、算出したパウダー状スケール指数(PSI)を(式6)に代入することで、伝熱管の各部位の6万時間運転後のヘマタイトスケールの付着厚さを予測できるのである。なお、実施例2では、1次関数で整理した結果、相関係数(R)が0.9と良好であったため1次関数を使用したが、2次、3次関数等の他の関数を使用することができる。
次に、(式6)を評価式として、ヘマタイトスケールの付着厚さが設定上限値、例えば、0.1mmを超える伝熱管の部位を予測する場合を、図7に基づいて説明する。図7は、ヘマタイトスケールの付着厚さ(ST)を縦軸とし、給水の超臨界水密度(SD)を下側の横軸とし、流体温度を上側の横軸としたグラフである。例えば、給水中のFe濃度を2μg/L、流体圧力を25MPaとすると、流体温度が420℃以上となっている伝熱管の部位で、約6万時間運転後にヘマタイトスケール皮膜の厚さが設定上限値0.1mmを超えると予測できる。
これによれば、ヘマタイトスケールの付着厚さと、給水中のFe濃度と、流体温度及び流体圧力により決定される超臨界水密度を予め関係付けた評価式(式6)を用いて、ヘマタイトスケールの付着厚さを予測できる。
なお、評価式(式6)の給水の超臨界水密度に代えて、給水の比容積を用いてヘマタイトスケールの厚さを予測することができる。つまり、超臨界状態における給水の比容積(V)は、超臨界水密度の逆数であるから、(式5)を変形して下記の(式7)に示すようにパウダー状スケール指数(PSI)を定義できる。
PSI=Fe0.3×V2.0・・・(式7)
このパウダー状スケール指数(PSI)を評価式(式6)に代入することで、ヘマタイトスケール皮膜の厚さを予測できる。
また、評価式(式6)に代えて、図5を評価図としてヘマタイトスケールの厚さを予測することができる。例えば、予測対象とする伝熱管の部位の流体温度が450℃、流体圧力が30MPaの場合、超臨界水密度は0.15kg/Lとなる。この場合、超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度が2.5μg/L未満であれば、予測対象の伝熱管の部位における約6万時間運転後のヘマタイトスケールの付着厚さは、0.1mm以下であると予測できる。
また、実施例1、2で予測可能な超臨界圧ボイラは、例えば、最高使用圧力が15〜20MPa又は20MPaを超える超臨界圧ボイラである。このような超臨界圧ボイラは、給水処理として酸素処理を採用すると図5の網掛けで示すとおり超臨界圧ボイラに供給される給水中のFe濃度を5μgFe/L以下にする必要がある(日本工業規格 JIS B 8223:2006 ボイラの給水及びボイラ水の水質より)。
このような管理状態において、例えば、給水中のFe濃度を5μgFe/Lよりも低い、例えば、2μgFe/Lに維持すると、ヘマタイトスケールの付着厚さは薄くなる傾向にある。しかし、本発明の発明者らは、給水が超臨界状態となる超臨界圧ボイラにおいては、給水中のFe濃度を2μgFe/Lに維持しても、ヘマタイトスケールの付着厚さが局所的に厚くなり、その部位だけヘマタイトスケールの付着厚さが設定上限値を超えることを知見した。このように局所的に厚くなる部位を予測することは、従来技術では困難である。そこで、実施例1、2のヘマタイトスケールの付着診断方法を採用することにより、局所的にヘマタイトスケールが厚くなる伝熱管の部位を予測でき、超臨界圧ボイラを安定運転できる。
なお、図8の揮発性物質処理とは、給水のpH調整にアンモニア又は揮発性のアミンを用い、溶存酸素の除去にはヒドラジンを用い、揮発性物質だけで処理する方法である。これにより、給水中のFeからマグネタイト(Fe)を生成し、このマグネタイトを皮膜として、伝熱管の内壁に付着させる。しかし、揮発性物質処理を採用すると、酸素処理に比べて皮膜が多量に付着して、流動抵抗の増加、伝熱阻害等の問題が生じるので、本発明は、給水処理として酸素処理を採用している。
1 節炭器
2 火炉
3 1次過熱器
4 2次過熱器
5 3次過熱器
6 1次再加熱器
7 2次再加熱器

Claims (5)

  1. 給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイトを生成させ、該ヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させるようにした超臨界圧ボイラのヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法であって、
    前記ヘマタイトスケールの付着厚さと、前記給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力と、を関係付けた以下に示す評価式に基づいて前記ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法。
    ST=1.6×10 −4 ×Fe ×T/μ・・・(評価式)
    ST:ヘマタイトスケールの付着厚さ
    Fe:給水中のFe濃度
    T:流体温度
    μ:流体温度と流体圧力により決定される粘性係数
  2. 給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイトを生成させ、該ヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させるようにした超臨界圧ボイラのヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法であって、
    前記ヘマタイトスケールの付着厚さと、前記給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力と、を関係付けた以下に示す評価式に基づいて前記ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法
    ST=0.0048×Fe0.3×SD−2.0―0.16・・・(評価式)
    ST:ヘマタイトスケールの付着厚さ
    Fe:給水中のFe濃度
    SD:流体温度と流体圧力により決定される超臨界水密度
  3. 給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイトを生成させ、該ヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させるようにした超臨界圧ボイラのヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法であって、
    前記ヘマタイトスケールの付着厚さと、前記給水中のFe濃度と、流体温度と、流体圧力と、を関係付けた以下に示す評価式に基づいて前記ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法
    ST=0.0048×Fe0.3×V2.0―0.16・・・(評価式)
    ST:ヘマタイトスケールの付着厚さ
    Fe:給水中のFe濃度
    V:流体温度と流体圧力により決定される比容積
  4. 給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイトを生成させ、該ヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させるようにした超臨界圧ボイラのヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法であって、
    前記伝熱管の複数の計測部位における前記ヘマタイトスケールの付着厚さの実測データを、前記給水中のFe濃度と前記複数の計測部位における給水の粘性係数に対応させてプロットして評価図を作成し、該評価図に基づいて前記ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法。
  5. 給水に酸素を添加して給水中のFeを酸化してヘマタイトを生成させ、該ヘマタイトを伝熱管の内壁に付着させて皮膜を形成させるようにした超臨界圧ボイラのヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法であって、
    前記伝熱管の複数の計測部位における前記ヘマタイトスケールの付着厚さの実測データを、前記給水中のFe濃度と前記複数の計測部位における超臨界水密度に対応させてプロットして評価図を作成し、該評価図に基づいて前記ヘマタイトスケールの付着厚さを予測するヘマタイトスケールの付着診断方法。
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