JP4864243B2 - 運転者の心理状態判定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の運転者の心理状態を検出して車両の運転を支援する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の運転者の生理状態や心理状態に基づいた運転支援技術としていくつかの先行技術がある。
【0003】
たとえば、特許第3027786号公報は、運転中の視線移動の分布を計算し、これを予め定められた視線分布パターンに比較することで運転者の心理的または生理的状態を識別する技術を開示している。
【0004】
また、特開平11−278048号公報には、車両の運転者を活性化させたり、リラックスさせるために有効な芳香の種類と濃度を種々のデータに基づいて自動的に選択して車室内へ供給する技術が開示されている。そのために、車室内センサや車室外センサの検出信号を設けるとともに身体情報計測装置を設け、脳波計のような身体状態計測センサの信号によって芳香発生装置を制御している。
【0005】
また、特開平8−290725号公報では、運転中のぼんやり状態やいらいら状態を解放するために、現在の走行状況を検出する回路と、前方車両を検出する回路と、運転者のぼんやり度を検出する回路と、運行運転状況評価回路と、複数個の警報出力装置とを設け、その運転者の心理的・生理的状態に応じて、必要であれば同乗者にも警報を出力することにより、運転者の警報無視や警報の未認知を抑止する技術を開示している。
【0006】
また、特開平7−257222号公報では、運転者に、その運転中の心理状態の乱れを認識させて事故を防止するために、車両運転時の加速、減速、旋回の頻度を検出し、この加速、減速、旋回の頻度パターンを運転者固有の運転パターンとし、これと普段の車両運転状態時の運転者固有の運転パターンとを比較し、比較結果が異なれば運転者に不安全状態があると判断して運転者に警告する技術を開示している。
【0007】
以上、いくつかの先行技術中にも述べられているように、運転中の心理状態や生理状態(以下、「心理状態」と総称する)の検出、すなわち「いらいら」や「あせり」の検出は、安全運転を支援するにあたって重要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記いずれの先行技術も視線検出機構や、身体情報計測装置等の大掛かりな装置を必要とするため、既存車両への汎用性や、コストの面で未だ多くの解決すべき点が残されている。
【0009】
また、本発明者らは、運転者の心理状態を判定するにあたって、車両運転以前の心理状態の乱れに着目した。すなわち、「あせり」や「いらいら」といった心理状態の乱れは、車両の運転に起因して生じるもののほか、運転を行う以前にも生じるものである。従って、それら運転以前の心理状態の乱れによる事故を未然に防止するには、少なくとも、運転を開始する以前に、その心理状態の乱れを検出する必要がある。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、運転者の心理状態を、運転以前に検出し、その旨を運転者に認識させることで、運転者の運転を支援する心理判定技術を提供することを技術的課題とする。また、既存車両への汎用も容易な心理判定技術を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両操作時の操作時間定数を登録する手段を設けておき、実際の運転者の車両に対する操作時間を計数して、前記操作時間定数と比較して出力を決定する心理状態判定技術である。
【0012】
前記操作時間定数は、運転者毎に設けておいてもよく、この場合は運転者を特定する手段が必要となる。なお、運転者特定手段としては、例えば、既存のシートポジションスイッチ等を利用することができるが、勿論、この例に限られることはなく、運転者を特定し得るものであれば、その装置構成は特に問わない。
【0013】
また、操作時間の計数とは、運転者が行う第1の操作と第2の操作の間の時間を意味し、たとえば、乗車時のドアスイッチ等の第1のセンサで計数を開始し、車両の運転開始を車速センサ等の第2のセンサで検出して前記計数を終了し、そのときの計数値を操作時間として使用する。
【0014】
なお、本発明は、情報処理装置(コンピュータ)のプログラムとして実施でき、該プログラムは既存のカーナビゲーションシステムにインストールすることも可能である。また、この場合には、その出力をカーナビゲーションシステムの既存の表示装置、音声出力装置を通じて行うと好適である。
【0015】
また、本発明の心理状態判定装置にて得られる出力は、勿論、運転を開始する以前に出力するのが望ましいが、必ずしもその必要はなく、所定距離を走行した後、所定時間を走行した後、第1回目の停車操作がなされたときなど、その出力のタイミングは所望に応じて変更可能である。なお、この理由としては、運転に伴い、ある程度の緊張感を運転者に期待できるため、その間に出力を行うことで、出力の伝達をより効果的に行うことができるなどといった理由からである。
【0016】
【発明の実施の形態】
【実施例】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は本発明の実施例におけるシステム構成を示している。
【0018】
同図に示すように、本実施例は、入力信号処理部11と、心理判定処理部16と、出力信号処理部12と記憶部15とで構成されている。
【0019】
入力信号処理部11は、入力信号処理回路119とこの回路と接続される各種センサまたはスイッチ群(111〜118)とで構成されている。
【0020】
心理判定処理部16は心理判定回路16で構成されており、前記入力信号処理部11からの入力信号を処理して運転者の心理状態を判定しこの判定信号を出力信号処理回路12に引き渡す機能を有している。
【0021】
また、前記心理判定回路16は記憶部15と接続されており、記憶部15内の記憶装置151内のデータベースに格納されたデータに基づいて心理判定を実行するようになっている。
【0022】
出力信号処理部12は出力信号処理回路121で構成されており、心理判定結果の信号を処理して音声データや表示データに変換し、例えば、車載ナビゲーション装置13の表示装置(図示せず)やスピーカ14から心理判定結果を出力するようになっている。
【0023】
前記入力信号処理回路119、心理判定回路161および出力信号処理回路121は、既存のカーナビゲーション装置内に組み込むことも可能である。
この場合、各回路はカーナビゲーション装置内の中央処理装置(CPU)がプログラムを読み込んで実行処理することにより実現されることになる。なお、当該プログラムは、カーナビゲーション装置のROMまたはRAM内のメモリまたはハードディスク装置等にインストールしておくとよい。また、上記の記録装置151もカーナビゲーション装置のROM、RAM、ハードディスク装置等を利用して構成できる。
【0024】
本実施例において、入力信号処理回路119には、車速センサ111、ドライバー席ドアスイッチ112、イグニッションキー113、方向指示スイッチ114、シートベルトスイッチ115、照度ライトセンサ116、ワイパスイッチ117および運転者特定装置118が接続されている。この中で運転者特定装置118は、たとえばハンドルに設けられた指紋検出装置(図示せず)、ダッシュボードに設けられた運転者顔面撮像装置(図示せず)、またはカーナビゲーションに対して入力された暗唱番号等から運転者を特定する装置であるが、かならずしもこれらの複雑な機構を備えている必要はない。たとえば、運転席側のシート位置スイッチのいずれが操作されたかによって運転者を特定するものであってもよい。
【0025】
なお、各種センサやスイッチ(111〜117)について既存の車載センサおよびスイッチを用いることができる。
【0026】
入力信号処理回路119には、メモリおよびタイマを備えており、操作の種類の設定および時間の計数が可能となっている。
【0027】
前記センサやスイッチ(111〜117)および運転者特定装置118からの信号に基づいて、運転者の第1の操作から第2の操作がなされるまでの時間を計測し、これらの時間がそれぞれの条件毎に設定されたしきい値よりも小さい場合に運転者があせり状態にあると判定する機能を有している。
【0028】
ここで第1の操作と第2の操作の組み合わせ、およびそのしきい値については記憶装置151内のデータベースに規定されている。
【0029】
図2は、前記記憶装置151内のデータベースの構成を示す説明図である。
【0030】
同図に示すように、記憶装置151内のデータベースは、運転者毎(運転者ID毎)に第1操作、第2操作、しきい値(Tave)および最大値(Tmax)が登録されている。この第1操作および第2操作は同図では異なるセンサ(またはスイッチ)からの入力を規定しているが、同一のセンサ(またはスイッチ)からの入力であってもよい。たとえば、ドアスイッチ112からの入力の時間差でドアの開閉時間やドアを閉めるときの強さを判定してもよい。また、イグニッションキーの操作時間を検出してイグニッションキーを回す速さや、シートベルトスイッチの操作時間を検出してシートベルトを引き出す速さを判定してもよい。
【0031】
次に、図3を用いて具体的な「あせり」判定の処理フローを説明する。
【0032】
まず、入力信号処理回路119に対してドライバー席ドアスイッチ112よりドア開動作信号が入力され(ステップ301)、ドアが開かれたことが検出されると、このドア開動作を第1操作としての入力信号処理回路119の記憶部(図示せず)にセットする。
【0033】
次に、運転者特定装置118より運転者特定信号が入力信号処理回路119に入力される。このときの運転者特定方法としては、前述のようにハンドルに設けられた指紋検出装置(図示せず)、ダッシュボードに設けられた運転者顔面撮像装置(図示せず)、またはカーナビゲーションに対して入力された暗唱番号等から運転者特定信号を出力したり、運転席側のシート位置スイッチのいずれが操作されたかを運転者特定信号として出力してもよい。
【0034】
これらの運転者特定信号は、入力信号処理回路119に入力されて運転者が特定される(ステップ302)。このとき入力信号処理回路119は、入力された運転者特定信号に基づいて記憶装置151から運転者データベースを検索し、当該運転者に関する操作情報としきい値(Tave)と最大値(Tave)を読み出せる状態とする。
【0035】
次に、入力信号処理回路119内のタイマで計数を開始する(ステップ303)。
【0036】
次に、入力信号処理回路119は、タイマの計数値がデータベースから読み出した最大値(Tmax)を越えたか否かをチェックする。このとき、車速センサ111からの入力がある前にタイマの計数が最大値(Tmax)を越えたときには当該計数値を心理判定回路116に出力し、該心理判定回路116は、当該運転者には落ち着きがあり平常であると判断し、平常状態判定信号を出力信号処理回路121に出力する(ステップ304,309)。
【0037】
一方、タイマの計数値が最大値(Tmax)を越える前に車速センサ111からの入力が検出されたときには(ステップ305)、心理判定回路116は、この時点での計数値(カウント値)がしきい値(Tave)を越えているか否かを判定する(ステップ306)。ここで、しきい値(Tave)を越えていた場合には(ステップ306)、このときの計数値を新たなしきい値(Tave)として当該運転者のデータベースを更新する(ステップ308)。そして、このときには、該心理判定回路116は、当該運転者には落ち着きがあり平常であると判断し、平常状態判定信号を出力信号処理回路121に出力する(ステップ309)。
【0038】
一方、ステップ306において、車速センサ111からの入力時間が計数値がしきい値(Tave)よりも小さい場合には、心理判定回路116は、運転者があせり状態にあると判定し、あせり状態判定信号を出力信号処理回路121に出力する(ステップ307)。
【0039】
平常状態判定信号またはあせり状態判定信号を受信した出力信号処理回路121は、それぞれの状態に対応した表示データまたは音声データを車載ナビゲーション装置13に対して出力する。このような表示データまたは音声データは前述の記憶装置151に格納されていてもよいし、車載ナビゲーション装置13側に保有しているものを使用してもよい。
【0040】
車載ナビゲーション装置13からは前記表示データや音声データが出力される。このときの出力形式としては、車載ナビゲーション装置13の表示装置を通じてキャラクタが運転者に対して話しかけるようにするなど、あたかも車両が意志をもっているかのような出力(表現)が望ましい。なお、ここで例示した出力系の装置構成は、勿論、上記した例に限られず、例えば、エアコン(車内空調設備)およびオーディオ装置を備え、前記の処理フローで「あせり」が検出されたときには、エアコンを作動させることで運転者に冷風を吹き付けたり、また、オーディオ装置を作動させることで曲を流す、などしてもよく、心理状態を運転者に認識させることができる出力方法、および装置構成であれば、所望に応じて変更可能である。
【0041】
なお、本実施例では第1の操作(ドア開動作)から第2の操作(車速入力)がなされるまでの時間がしきい値よりも小さい場合に運転者の心理状態が「あせり」の状態であると判定したが、これに限らず設定された怠惰しきい値(たとえばTmax2)を設定し、これよりも大きな場合に「たいくつ」または「怠惰」な状態にあると判定してもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、運転者の心理状態を、運転以前に検出し、その旨を運転者に認識させることで、運転者の運転を支援できる。また、既存のセンサ類を利用して運転者の車両操作に基づいた運転者の心理状態の判定をなし得るため、既存車両への適用も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例のシステム構成を示すブロック図
【図2】 実施例の運転者データベースの内容を示す説明図
【図3】 実施例の処理手順を示すフロー図
【符号の説明】
11 入力信号処理部
12 出力信号処理部
13 車載ナビゲーション装置
14 スピーカ
15 記憶部
111 車速センサ
112 ドライバー席ドアスイッチ
113 イグニッションキー
114 方向指示スイッチ
115 シートベルトスイッチ
116 照度ライトセンサ
117 ワイパスイッチ
118 運転者特定装置
121 出力信号処理回路
151 記憶装置

Claims (2)

  1. 車両の運転を開始する前に運転者が前記車両に対して行う第1の操作を検出するための第1の車両操作検出手段と、
    車両の運転を開始する前であって前記第1の操作よりも後に前記運転者が前記車両に対して行う第2の操作を検出するための第2の車両操作検出手段と、
    前記第1の車両操作検出手段により前記第1の操作が検出されてから、前記第2の車両操作検出手段により前記第2の操作が検出されるまでの時間を計数する計数手段と、
    しきい値を記憶する記憶手段と、
    前記計数手段により計数された計数値と前記記憶手段に記憶されているしきい値とを比較し、前記計数値が前記しきい値よりも小さい場合に、前記運転者があせり状態にあると判定する判定手段と、
    を備えることを特徴とする運転者の心理状態判定装置。
  2. 運転者を特定する運転者特定手段と、
    運転者毎に車両操作時の操作時間のしきい値を記憶する記憶手段と、
    車両の運転を開始する前に前記運転者特定手段により特定された運転者が前記車両に対して行う第1の操作を検出するための第1の車両操作検出手段と、
    車両の運転を開始する前であって前記第1の操作よりも後に前記運転者特定手段により特定された運転者が前記車両に対して行う第2の操作を検出するための第2の車両操作検出手段と、
    前記第1の車両操作検出手段により前記第1の操作が検出されてから、前記第2の車両操作検出手段により前記第2の操作が検出されるまでの時間を計数する計数手段と、
    前記計数手段により計数された計数値と前記運転者特定手段により特定された運転者に対応するしきい値とを比較し、前記計数値が前記しきい値よりも小さい場合に、特定された運転者があせり状態にあると判定する判定手段と、
    を備えることを特徴とする運転者の心理状態判定装置。
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