JP4861875B2 - 防振マウント組立体 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等のエンジンマウント等として採用されるマウント本体に対して筒形ブラケットを組み付けてなる防振マウント組立体に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体の一種として、例えば、第一の取付部材を筒状の第二の取付部材における軸方向一方の開口部側に離隔配置して、それら第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で弾性的に連結した構造を有する防振マウントが知られている。このような防振マウントは、例えば、自動車のエンジンマウント等として好適に採用されている。
このような構造とされた防振マウントでは、製造上の理由等から、第二の取付部材がブラケットを介して車両ボデー等の防振連結される部材に取り付けられるようになっている場合がある。即ち、例えば、本体ゴム弾性体の耐久性を向上せしめるために、本体ゴム弾性体に対して予圧縮を加える場合には、第二の取付部材に対して八方絞り等の縮径加工を施す方法が知られている。このような縮径加工を施す場合には、防振連結される部材への取付部分が第二の取付部材に対して直接に設けられていると、第二の取付金具に対して縮径加工を施すことが困難となり易い。そこで、従来から一般的に、第二の取付部材を別体形成された筒形ブラケットに圧入固定して、筒形ブラケットを防振連結される車両ボデー等の部材に固定することにより、第二の取付部材を筒形ブラケットを介して防振対象部材に組み付けるようにした構造が好適に採用されている(例えば、特許文献1(特開2001−82531号公報)参照)。
ところで、一般に従来の筒形ブラケットは、防振マウント本体の筒形ブラケットへの圧入による筒形ブラケットの変形や破損を防ぐために、高い剛性を容易に得ることが可能な鉄系金属で形成されていた。しかし、近年では、車両の燃費向上や軽量化等を目的として、筒形ブラケットの形成材料としてアルミニウム合金等の非鉄金属や繊維強化樹脂等の合成樹脂材を採用することが検討されている。
ところが、このような非鉄金属や合成樹脂等の軽量材で筒形ブラケットを形成した場合には、一般的に、鉄系金属で形成した筒形ブラケットほどの耐荷重強度を実現することが難しい。それ故、軽量材で形成した筒形ブラケットに対して第二の取付部材を圧入固定するに際して、筒形ブラケットにひび割れが生じ易くなる等の問題があった。また、充分な耐荷重性を確保するために筒形ブラケットを厚肉とすると、軽量材を採用する趣旨であるブラケットの軽量化に反することとなる。
そこで、本出願人は、特許文献2(特開2005−106150号公報)において、非鉄金属や合成樹脂等の軽量材で形成された筒形ブラケットに対する防振マウント本体の組付けに際して、筒形ブラケットの破損を回避し得る防振マウント組立体を提案している。即ち、特許文献2に示された防振マウント組立体は、防振マウント本体の第二の取付部材を、軽量材で形成された筒形ブラケットに対して隙間をもって嵌め入れると共に、第二の取付部材と筒形ブラケットの隙間には、嵌合ゴムを圧縮された状態で介在せしめて、防振マウント本体と筒形ブラケットを固定的に位置決めするようにした構造とされている。これによれば、第二の取付部材を筒形ブラケットに対して隙間をもって嵌め入れることにより、圧入力の作用による筒形ブラケットの破損を回避することが出来るようになっている。
しかしながら、本発明者が更なる検討と実験を行った結果、特許文献2に開示されている構造にも、未だ改良の余地が存することが明らかとなった。
すなわち、特許文献2に記載の防振マウント組立体では、第二の取付部材と筒形ブラケットの間にゴム弾性体で形成された嵌合ゴムが介在せしめられており、嵌合ゴムが圧縮されるように第二の取付部材が筒形ブラケットに対して嵌め入れられるようになっている。それ故、第二の取付部材を筒形ブラケットに対して嵌め入れた後で、軸方向で剪断変形せしめられた嵌合ゴムの弾性的な復原力によって、防振マウント本体が筒形ブラケットから抜出す方向に相対変位せしめられるおそれがある。従って、防振マウント本体の筒形ブラケットに対する軸方向での相対位置がずれるおそれがあり、場合によっては、防振マウント本体の筒形ブラケットに対する抜け抗力が充分に得られず、防振マウント本体が筒形ブラケットから脱落するおそれもあった。
また、特許文献2に記載の防振マウント組立体では、防振マウント本体の筒形ブラケットからの抜けを防ぐための抜抗力を、第二の取付部材と筒形ブラケットの間に介在せしめられる嵌合ゴムの復原力を利用して得るようになっており、充分な抜抗力を得るためには、嵌合ゴムの圧縮変形量を充分に確保する必要がある。しかしながら、嵌合ゴムの圧縮変形量を充分に大きくすると、防振マウント本体の筒形ブラケットへの嵌入れが難しくなるおそれがあり、特許文献2に示されているように、防振マウント本体と筒形ブラケットをボルト等で相互に固定することにより、防振マウント本体と筒形ブラケットを相互に位置決めする場合においても、防振マウント本体を筒形ブラケットに対して所定の位置まで嵌め入れて組み付けることが困難となる場合もあった。
特開2001−82531号公報 特開2005−106150号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、防振マウント本体を筒形ブラケットに対して所定の位置に容易に嵌め付けることが出来ると共に、防振マウント本体と筒形ブラケットの組付状態を安定して維持することが出来る、新規な構造の防振マウント組立体を提供することを目的とする。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材が第二の取付部材における円筒状部の軸方向一方の開口部側に離隔配置されて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されることにより防振マウント本体が構成されていると共に、該防振マウント本体の該第二の取付部材における該円筒状部に対して別体の筒形ブラケットが外嵌固定されており、該第二の取付部材が該筒形ブラケットを介して防振連結される他方の部材に取り付けられる防振マウント組立体において、前記防振マウント本体には、前記第二の取付部材の軸方向一方の開口周縁部にフランジ状部を設けると共に、該第二の取付部材の前記円筒状部の外周面に嵌着ゴムを被着形成する一方、前記筒形ブラケットには、非鉄金属または合成樹脂材からなる軽量材製のものを採用すると共に、該筒形ブラケットの内周面を軸方向中間部分から軸方向両側開口部に向かって次第に拡径する上テーパ面と下テーパ面で構成し、それら上テーパ面と下テーパ面の境界に周方向に延びる係止頂部を設けて、該筒形ブラケットにおける該上テーパ面側の開口端面に前記防振マウント本体の前記第二の取付部材の前記フランジ状部を軸方向に重ね合わせる一方、該筒形ブラケットの該係止頂部を該第二の取付部材の前記円筒状部の外周面に設けられた前記嵌着ゴムに食い込ませて係止させることにより、該防振マウント本体の該筒形ブラケットからの抜け抗力が発揮されるようにしたことを特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた防振マウント組立体においては、筒形ブラケットの内周面において上テーパ面と下テーパ面の境界部分に形成される稜線状の係止頂部を、第二の取付部材に被着形成される嵌着ゴムに食い込ませて係止させることにより、防振マウント本体の該筒形ブラケットからの抜け抗力を有効に得ることが出来る。しかも、係止頂部の嵌着ゴムへの食込み係止によって抜け抗力を得るようにされていることから、防振マウント本体の筒形ブラケットへの嵌入れを、比較的に小さい嵌入力で実現することが出来る。それ故、充分な抜け抗力を実現しつつ、軽量材で形成された筒形ブラケットに作用する応力を小さく抑えて、筒形ブラケットの変形や破損等を有利に防ぐことが出来る。
また、筒形ブラケットの内周面を、軸方向両側開口部に向かって次第に拡径する上テーパ面と下テーパ面で構成することにより、防振マウント本体の筒形ブラケットへの嵌入れに際して、防振マウント本体を上テーパ面の案内作用によって軸直角方向での所定位置に案内して容易に嵌め入れることが出来る。それ故、防振マウント組立体を容易に製造することが出来る。
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記嵌着ゴムの外周面に軸方向で延びる複数の凹部が形成されていることが望ましい。
これによれば、防振マウント本体の筒形ブラケットへの組付けに際して、嵌着ゴムの外周面と筒形ブラケットの内周面の当接面積を小さくすることで摩擦抵抗を小さくして、組付けに必要な力を小さく抑えることが出来る。しかも、複数の凹部を軸方向に延びるように形成することにより、軸方向での案内作用によって防振マウント本体の筒形ブラケットへの嵌入れをより有利に実現することが出来る。
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記嵌着ゴムの外周面に周方向で延びる凹溝が形成されていても良い。
このような構造を採用することにより、凹溝の開口縁部の引っ掛かりを利用して、防振マウント本体の筒形ブラケットからの抜けに対する抗力をより有利に得ることが出来る。また、例えば、凹溝を係止頂部の軸方向位置と位置合わせして、凹溝に対して係止頂部を嵌め付けることにより、凹溝に対する係止頂部の係止によって抜け抗力を一層有利に得ることも出来る。
また、本発明に係る防振マウント組立体において、前記上テーパ面と前記下テーパ面が境界において屈折するように接続されることにより、該上下のテーパ面の境界において尖鋭形状の前記係止頂部が形成されている構造を採用することも出来る。
これによれば、係止頂部を突出方向である内周側に向かって尖鋭となる形状とすることにより、係止頂部の嵌着ゴムへの食込みによる係止を、より効果的に実現することが出来る。それ故、係止頂部の嵌着ゴムに対する食込みによって発揮される抜け抗力をより有利に得ることが出来る。
また、本発明に係る防振マウント組立体においては、前記係止頂部が前記嵌着ゴムの軸方向中央部分に食い込んで係止されており、該係止頂部の軸方向両側において該嵌着ゴムが前記筒状ブラケットの前記上テーパ面と前記下テーパ面に対してそれぞれ密着されていることが望ましい。
このような構造とすることにより、係止頂部付近において上下のテーパ面を広い範囲で嵌着ゴムに当接せしめて、摩擦抵抗等によって抜け抗力をより有利に得ることが出来る。また、防振マウント本体と筒形ブラケットの組付け誤差等に拘らず、安定して目的とする抜け抗力を実現することが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1, 2には、本発明の一実施形態としての防振マウント組立体10が示されている。防振マウント組立体10は、防振マウント本体としてのエンジンマウント12と筒形ブラケット14を含んで構成されている。より詳細には、エンジンマウント12は、図1〜3に示されているように、第一の取付部材としての第一の取付金具16と、第二の取付部材としての第二の取付金具18が、本体ゴム弾性体20で連結された構造を有しており、第一の取付金具16が図示しないパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付金具18が筒形ブラケット14を介して図示しない車両ボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対して防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、主たる振動の入力方向であり、筒形ブラケット14の軸方向である、図1中の上下方向を言うものとする。
第一の取付金具16は、略円形ブロック形状を呈しており、アルミニウム合金等で形成された高剛性の部材とされている。また、第一の取付金具16には、軸方向上方に向かって突出する取付ボルト22が一体形成されている。そして、取付ボルト22が図示しないパワーユニット側の部材に螺着されることにより、第一の取付金具16がパワーユニット側に固定されるようになっている。
また、第二の取付金具18は、大径の略円筒形状とされた円筒状部を有しており、アルミニウム合金等で形成された高剛性の部材とされている。また、第二の取付金具18の円筒状部の軸方向上端部には、図4に示されているように、径方向内側に延び出す段差部24が形成されていると共に、第二の取付金具18において段差部24を挟んだ軸方向上側部分が、上方に向かって次第に拡径するテーパ部26とされている。これにより、第二の取付金具18の軸方向上端部分には、内周側に凹むように湾曲せしめられて、周方向全周に亘って略一定の断面形状とされたくびれ部28が形成されている。
また、第二の取付金具18の軸方向上端の開口周縁部には、フランジ状部30が一体形成されている。フランジ状部30は、軸直角方向で径方向外方に向かって広がるように設けられており、第二の取付金具18の上端部に設けられたテーパ部26と一体形成されている。また、フランジ状部30において、径方向一方向で対向する部分には、径方向外方に向かって大きく延び出した一対の固定片32,32が設けられている。これらの固定片32,32には、それぞれ板厚方向(軸方向)で貫通するボルト挿通孔34が形成されている。
これら第一の取付金具16と第二の取付金具18は、第一の取付金具16が第二の取付金具18に対して同一中心軸上で軸方向上方に離隔配置されると共に、それら第一の取付金具16と第二の取付金具18の間に介装される本体ゴム弾性体20によって弾性的に連結されている。
なお、本実施形態におけるエンジンマウント12は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて有効な防振効果が発揮される流体封入式防振装置とされているが、エンジンマウント12の具体的な内部構造については、特許文献2(特開2005−106150号公報)等において開示された周知の構造であり、且つ、本発明の本質部分ではないことから、ここでは説明を省略する。
また、エンジンマウント12には、軸方向下側に空気圧式アクチュエータ36が配設されている。この空気圧式アクチュエータ36は、外壁部材38とゴム弾性壁40を含んで構成されている。なお、本実施形態におけるエンジンマウント12は、空気圧式アクチュエータ36の作動によって防振性能が変化せしめられる負圧切換型の流体封入式防振装置とされているが、空気圧式アクチュエータ36の具体的な内部構造についても、特開2005−106150号公報等に開示された周知の構造であり、本発明の本質部分ではないことから、説明を省略する。
さらに、第二の取付金具18の円筒状部における外周面の一部には、嵌着ゴムとしての圧接ゴム弾性体42が被着形成されている。圧接ゴム弾性体42は、全体として略円筒形状を呈しており、図4に示されているように、第二の取付金具18の円筒状部における軸方向中間部分から軸方向上端部分に至る領域に亘って、第二の取付金具18の外周面に固着されている。また、本実施形態において、圧接ゴム弾性体42は、本体ゴム弾性体20と一体形成されている。
また、本実施形態における圧接ゴム弾性体42は、軸方向中間部分に環状段差面44を有している。即ち、本実施形態において、圧接ゴム弾性体42は、軸方向下側部分である圧接部46が、上側部分である固着部48に比して外周側に突出せしめられており、それら圧接部46と固着部48の境界部分において、全周に亘って延びる環状段差面44が形成されている。なお、本実施形態において、環状段差面44は、外周側に行くに従って次第に軸方向下方に向かって傾斜する傾斜面とされている。
さらに、圧接ゴム弾性体42の下端面は、案内テーパ面50とされている。案内テーパ面50は、軸方向上側に行くに従って次第に外周側に傾斜するテーパ状とされている。また、本実施形態では、軸方向に対する案内テーパ面50の傾斜角度が、軸方向に対する環状段差面44の傾斜角度に対して小さくされており、案内テーパ面50が環状段差面44よりも軸方向で広い領域に亘って広がっている。
また、本実施形態では、圧接ゴム弾性体42の圧接部46において、外周面に開口して軸方向で延びる多数の凹部としての案内溝52が形成されており、圧接部46の外周側表面が周方向で凹凸形状とされている。なお、本実施形態では、案内溝52として、比較的に狭幅とされた案内溝52aと、比較的に幅広とされた案内溝52bが、周方向で交互に位置するように形成されている。また、本実施形態では、周方向で隣り合う案内溝52aと案内溝52bの間に、案内溝52よりも周方向で狭幅とされた当接面が形成されている。
また、本実施形態において、圧接ゴム弾性体42は、第二の取付金具18の上端縁部に一体形成されたフランジ状部30にまで至る軸方向長さで形成されており、圧接ゴム弾性体42の上端面がフランジ状部30の下面に加硫接着されている。更に、第二の取付金具18の上端部分に設けられたくびれ部28の外周面には、圧接ゴム弾性体42と一体形成されたゴム弾性体が充填されており、本実施形態では、くびれ部28の形成部分において、圧接ゴム弾性体42が厚肉となっている。更にまた、圧接ゴム弾性体42における圧接部46の上端部分は、第二の取付金具18のくびれ部28の外周側に位置せしめられており、くびれ部28の形状によって厚肉とされた圧接ゴム弾性体42の軸方向中間部分に環状段差面44が形成されている。換言すれば、第二の取付金具18の段差部24よりも軸方向上方に位置して圧接ゴム弾性体42の環状段差面44が設けられている。
また、エンジンマウント12は、筒形ブラケット14に嵌め入れられている。筒形ブラケット14は、図5に示されているように、アルミニウム合金等の非鉄金属や繊維補強された硬質の合成樹脂等の軽量材で形成されており、全体として略円筒形状を呈している。また、筒形ブラケット14の円筒状部の上端縁部には、径方向一方向で両側に突出する一対の固定支持片54,54が一体形成されている。これら一対の固定支持片54,54にはそれぞれ固定ボルト56が配設されており、固定支持片54を板厚方向で貫通して、軸方向上方に向かって延び出している。なお、本実施形態では、一対の固定支持片54,54が突出方向に対して直交する径方向において、筒形ブラケット14の上端縁部に径方向一方の側に向かって延び出すストッパ支持部57が一体形成されており、周方向に所定の長さで延びるように設けられている。
また、筒形ブラケット14の軸方向下端部には、外周側に広がる取付脚部58が一体形成されている。この取付脚部58には、リベット挿通孔60が取付脚部58を軸方向で貫通するように形成されている。また、取付脚部58には、図示しないナットが配設されており、該ナットに螺着されるボルトによって、筒形ブラケット14が、図示しない車両ボデー側に固定的に取り付けられるようになっている。
ここにおいて、本実施形態における筒形ブラケット14の内周面は、図5に示されているように、上テーパ面62と下テーパ面64で構成されている。上テーパ面62は、筒形ブラケット14の内周面において、軸方向上側の開口部から軸方向中間の一部に至る領域を構成するように設けられており、軸方向上側に向かって次第に拡開するように傾斜する筒状のテーパ面とされている。また、下テーパ面64は、筒形ブラケット14の内周面において、軸方向中間の一部から軸方向下側の開口部に至る領域を構成するように設けられており、軸方向下側に向かって次第に拡開するように傾斜する筒状のテーパ面とされている。
また、筒形ブラケット14の軸方向中間の一部において、上テーパ面62と下テーパ面64が相互に接続されている。これにより、上テーパ面62と下テーパ面64の境界である筒形ブラケット14の軸方向中間の一部において、内周側に凸となる係止頂部66が形成されている。即ち、本実施形態において、上テーパ面62と下テーパ面64は、それらの境界において共通の接平面(縦断面における接線)を持たない屈折状に接続されている。これにより、筒形ブラケット14の内周面には、上テーパ面62と下テーパ面64の境界において、周方向で全周に亘って延びる折り目状の稜線が形成されている。そして、かかる折り目状の稜線部分を利用して、内周側に向かって次第に軸方向で狭幅となるように突出せしめられて、断面が嘴状の尖鋭形状を呈する本実施形態における係止頂部66が形成されている。
また、本実施形態では、筒形ブラケット14の内径寸法が係止頂部66の形成箇所において最小となっていると共に、係止頂部66の形成箇所における筒形ブラケット14の内径が、第二の取付金具18の最大の外径寸法よりも大きくなっている。更に、図5にも示されているように、本実施形態における係止頂部66は、筒形ブラケット14において軸方向で上側開口部側に偏倚して形成されている。
なお、このような上下のテーパ面62,64は、筒形ブラケット14を成形する際に用いられる成形用金型を、筒形ブラケット14の成形後に筒形ブラケット14から容易に取り外すために設けられる脱型用のテーパ面を利用して、有利に形成することが出来る。
すなわち、本実施形態において、筒形ブラケット14は、硬質の合成樹脂材を用いて射出成形等した成形品とされており、成形用金型によって形成されるキャビティに合成樹脂材料を充填して、筒形ブラケット14を目的とする形状の成形品として形成した後、成形用金型を筒形ブラケット14から取り外すことにより形成されるようになっている。ここにおいて、本実施形態では、筒形ブラケット14の成形用金型が、筒形ブラケット14の内周面形状を設定する上下の成形用金型を含んで構成されており、上成形用金型の抜き外し方向が軸方向上方とされていると共に、下成形用金型の抜き外し方向が軸方向下方とされている。また、各金型には、抜き外し方向に向かって次第に拡径する脱型用のテーパが付けられている。更に、上下の金型が筒形ブラケット14の軸方向中間部分において、特定の位置で組み合わされるようになっている。以上により、筒形ブラケット14の内周面には、上成形用金型の脱型用テーパと下成形用金型の脱型用テーパが、上下金型の組合せ位置である軸方向中間部分から軸方向両側端部に至る各領域に形成されるようになっており、それら上下金型の脱型用テーパによって、本実施形態における上下テーパ面62,64が形成されるようになっている。
そして、筒形ブラケット14は、エンジンマウント12に対して外嵌固定される。即ち、第二の取付金具18の円筒状部が、筒形ブラケット14の円筒状部に対して、軸方向上側の開口部から挿し入れられて、第二の取付金具18に一体形成されたフランジ状部30が筒形ブラケット14の上端面に重ね合わされると共に、第二の取付金具18に一体形成された固定片32が筒形ブラケット14に一体形成された固定支持片54に重ね合わされて、エンジンマウント12と筒形ブラケット14が軸方向で相対的に位置決めされる。なお、本実施形態では、第二の取付金具18のフランジ状部30がくびれ部28の上端から延び出すように形成されている。それ故、フランジ状部30の内径寸法が充分に小さくされて、筒形ブラケット14の上端面に対して広い範囲で重ね合わされるようになっている。
さらに、図示しないリバウンドストッパ部材が固定片32に上方から重ね合わされると共に、固定支持片54に固着されて軸方向上方に向かって延び出す固定ボルト56が、軸方向で重ね合わされた固定支持片54と固定片32とリバウンドストッパ部材を貫通せしめられている。そして、固定ボルト56に対して図示しない締結ナットを螺着せしめることにより、固定片32と固定支持片54、延いては、エンジンマウント12と筒形ブラケット14が相互に固定されるようになっている。これにより、エンジンマウント12を構成する第二の取付金具18は、筒形ブラケット14を介して図示しない車両ボデー側に取り付けられるようになっている。なお、固定支持片54に設けられた固定ボルト56が、固定片32に形成されたボルト挿通孔34に挿通せしめられることにより、エンジンマウント12が筒形ブラケット14に対して周方向で容易に位置合わせされるようになっている。
ここにおいて、筒形ブラケット14の円筒状部における最小内径寸法は、第二の取付金具18の円筒状部における最大外径寸法よりも大きくなっている。これにより、エンジンマウント12と筒形ブラケット14の組付け状態下において、第二の取付金具18の円筒状部と筒形ブラケット14の円筒状部の間に隙間が設けられており、第二の取付金具18の円筒状部と筒形ブラケット14の円筒状部が全周に亘って離隔せしめられている。
そして、第二の取付金具18の円筒状部と筒形ブラケット14の円筒状部の間には、第二の取付金具18の外周面に固着された圧接ゴム弾性体42が介在せしめられている。即ち、第二の取付金具18の外周面に固着された圧接ゴム弾性体42の圧接部46は、その外径寸法が筒形ブラケット14の係止頂部66付近の内径寸法よりも大きくされている。これにより、図4に拡大して示されているように、エンジンマウント12の筒形ブラケット14への装着状態下において、筒形ブラケット14の内周面に形成された係止頂部66が、圧接ゴム弾性体42の下側部分を構成する圧接部46に対して押し当てられて食い込まされている。なお、図4においては、上下テーパ面62,64の傾斜角度や係止頂部66の圧接ゴム弾性体42への食込み等が誇張して示されている。
要するに、筒形ブラケット14には、上テーパ面62の上方開口部からエンジンマウント12がその第二の取付金具18側から軸方向に挿し入れられている。そして、筒形ブラケット14の内周面に設けられた係止頂部66が、圧接ゴム弾性体42において環状段差面44を挟んだ大径側部分(図中の軸方向下側部分)である圧接部46の軸方向略中央に位置せしめられている。ここにおいて、圧接ゴム弾性体42の圧接部46の外径寸法が、筒形ブラケット14の係止頂部66付近の内径寸法よりも大きくされていることにより、圧接ゴム弾性体42が第二の取付金具18と筒形ブラケット14の係止頂部66付近の間で締め付けられて押し潰されるように変形せしめられて、第二の取付金具18と筒形ブラケット14の間に介在せしめられている。
このように圧接ゴム弾性体42が第二の取付金具18と筒形ブラケット14の間で圧縮された状態で介在せしめられることにより、圧接ゴム弾性体42と筒形ブラケット14の当接箇所で摩擦力が生じて、エンジンマウント12と筒形ブラケット14の軸方向での相対変位が防がれるようになっている。そして、この摩擦力によって軸方向の抜け抗力としての当接係止力が実現されるようになっている。
しかも、本実施形態におけるエンジンマウント12と筒形ブラケット14の組付け状態下において、内周側に向かって次第に軸方向で狭幅となるように突出せしめられた係止頂部66が、圧接ゴム弾性体42における圧接部46に食い込まされている。それ故、係止頂部66と圧接ゴム弾性体42の当接係止によって、エンジンマウント12を筒形ブラケット14に対して軸方向上方に相対変位せしめるように作用する抜け力に対して、抗力を有利に得ることが出来る。従って、第二の取付金具18の筒形ブラケット14への嵌入れに際して剪断変形せしめられる圧接ゴム弾性体42の復原力によって、エンジンマウント12が筒形ブラケット14に対して軸方向で相対的に変位せしめられるのを防いで、エンジンマウント12と筒形ブラケット14を軸方向で所定の位置に固定的に組み付けることが出来る。
また、本実施形態では、エンジンマウント12と筒形ブラケット14の組付け状態下において、上テーパ面62と下テーパ面64の境界に形成される係止頂部66が、圧接ゴム弾性体42における圧接部46の軸方向略中央に食い込むように位置せしめられている。それ故、係止頂部66を挟んだ軸方向両側において、上テーパ面62と下テーパ面64が広い範囲で圧接部46に密着せしめられて、上下のテーパ面62,64と圧接ゴム弾性体42の間での摩擦抵抗によって抜け抗力を一層有利に得ることが出来る。
また、本実施形態では、筒形ブラケット14の内周面が軸方向に対して傾斜して広がるテーパ面とされていると共に、圧接ゴム弾性体42の外周面が軸方向に対して平行に広がる筒状面とされている。それ故、エンジンマウント12の筒形ブラケット14への嵌入れに際して、筒形ブラケット14の内周面と圧接ゴム弾性体42の外周面の当接面積を小さくすることが出来て、比較的に小さな押圧力でエンジンマウント12を筒形ブラケット14に嵌め入れることが出来る。しかも、本実施形態では、筒形ブラケット14の内径寸法が係止頂部66の形成位置において最小となるようにされていると共に、係止頂部66が突出先端側である内周側に向かって次第に軸方向で狭幅となる嘴状とされている。それ故、エンジンマウント12を筒形ブラケット14に嵌め入れる際に必要な外力をより有利に抑えることが出来る。従って、非鉄金属や合成樹脂材等の軽量材を筒形ブラケット14の材料として採用する場合にも、エンジンマウント12の組付けによる筒形ブラケット14の破損や変形を有利に防ぐことが出来る。
さらに、本実施形態では、圧接ゴム弾性体42における圧接部46の外周面に、軸方向で直線的に延びる多数の案内溝52が形成されている。これにより、筒形ブラケット14の内周面と圧接ゴム弾性体42の外周面の当接面積をより小さくすることが出来て、エンジンマウント12の筒形ブラケット14への嵌入れに際して、抗力を小さく抑えることが出来る。それ故、比較的に小さな嵌入れ力でエンジンマウント12の筒形ブラケット14への組付けを実現して、筒形ブラケット14の変形やクラック等の破損を防ぐことが出来る。特に本実施形態では、案内溝52が軸方向で直線的に延びる多数の凹部で構成されていることから、案内溝52の案内作用によって、エンジンマウント12を引っ掛かることなくスムーズに嵌め入れることが出来る。
更にまた、本実施形態では、圧接ゴム弾性体42の軸方向下端に設けられた案内テーパ面50の軸方向に対する傾斜角度が充分に小さくされている。それ故、エンジンマウント12の筒形ブラケット14への嵌入れに際して、案内テーパ面50の案内作用によってエンジンマウント12を筒形ブラケット14に対して比較的容易に圧入することが出来る。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態において、上テーパ面62と下テーパ面64は、何れも一定の勾配で傾斜するテーパ面とされているが、上テーパ面と下テーパ面は、例えば、勾配が漸次変化する湾曲面とされていても良いし、勾配が異なる複数の傾斜平面の組合わせによって構成されていても良い。具体的には、例えば、図6に示されている筒形ブラケット68のように、下テーパ面70が、筒形ブラケット68の軸方向下側開口部から軸方向中間部分に至る領域に形成されて、軸方向に対する勾配が比較的に小さい第一のテーパ面72と、筒形ブラケット68の軸方向中間部分から係止頂部66に至る領域に形成されて、軸方向に対する勾配が比較的に大きい第二のテーパ面74を有している。換言すれば、下テーパ面70は、軸方向下側部分に比して係止頂部66付近である軸方向上側部分において、軸方向に対する勾配が大きくなっている。これによれば、筒形ブラケット68の大径化を回避しつつ、筒形ブラケット68の係止頂部66の突出先端角をより尖鋭とすることが出来て、楔状とされた係止頂部66を圧接ゴム弾性体42に食い込ませることによる当接係止力を一層有利に得ることが出来る。
また、前記実施形態においては、嵌着ゴムとしての圧接ゴム弾性体42における圧接部46の外周面に、凹部としての案内溝52が軸方向で延びて多数条形成された例が示されている。しかし、嵌着ゴムの外周面には、必ずしも軸方向に延びる凹部が形成されている必要はない。具体的には、例えば、図7に示されている防振マウント組立体76のように、圧接ゴム弾性体78に対して外周側に開口して周方向に延びる凹溝としての案内溝80を形成しても良い。これによれば、係止頂部66の案内溝80に対する当接係止によって、抜け抗力を一層有利に得ることが出来る。また、例えば、嵌着ゴムの外周面に凹部や凹溝が形成されていなくても良い。また、軸方向に延びる凹部としての案内溝52と、周方向に延びる凹溝としての案内溝80を組み合わせても良い。更に、図7にも示されているように、凹部および凹溝は必ずしも複数形成されている必要はないが、例えば、軸方向で相互に離隔する複数の案内溝80が凹溝として形成されていても良い。
また、前記実施形態では、凹部として溝幅寸法が異なる案内溝52aと案内溝52bが形成されている。しかし、凹部は、同じ溝幅寸法とされた複数の溝状部によって構成されていても良い。
また、前記実施形態においては、嵌着ゴムとしての圧接ゴム弾性体42が、軸方向中間部分に環状段差面44を有する段付き形状とされており、環状段差面44を挟んだ軸方向下側部分の外径が軸方向上側部分の外径に比して大径とされている。しかしながら、嵌着ゴムは、必ずしも段付き形状とされていなくても良く、例えば、軸方向で一定の外径寸法をもって延びる筒状とされていても良い。
また、防振マウント本体の具体的な構造は、前記実施形態で示されたエンジンマウント12の構造によって限定的に解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、各種公知の構造を有する防振装置が防振マウント本体として適用可能である。即ち、前記実施形態においては、防振マウント本体として、壁部の一部が本体ゴム弾性体20で構成されて、振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されて、容積変化が容易に許容される平衡室を設けて、それら両室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら両室をオリフィス通路で相互に連通せしめて、オリフィス通路を通じて両室間を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようにした流体封入式のエンジンマウント12が例示されているが、防振マウント本体は、流体封入式以外の防振装置であっても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の一実施形態としての防振マウント組立体を示す断面図であって、図3におけるI−I線断面図。 図1に示された防振マウント組立体を示す図3におけるII−II線断面図。 図1に示された防振マウント組立体を構成するエンジンマウントを示す平面図。 図1に示された防振マウント組立体の要部を拡大誇張して示す説明図。 図1に示された防振マウント組立体を構成する筒形ブラケットを示す縦断面図。 本発明の別の一実施形態としての防振マウント組立体を構成する筒形ブラケットの要部を拡大誇張して示す説明図。 本発明のまた別の一実施形態としての防振マウント組立体を示す断面図。
符号の説明
10:防振マウント組立体,12:エンジンマウント,14:筒形ブラケット,16:第一の取付金具,18:第二の取付金具,20:本体ゴム弾性体,42:圧接ゴム弾性体,44:環状段差面,46:圧接部,48:固着部,52:案内溝,62:上テーパ面,64:下テーパ面,66:係止頂部

Claims (5)

  1. 防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材が第二の取付部材における円筒状部の軸方向一方の開口部側に離隔配置されて、それら第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体で連結されることにより防振マウント本体が構成されていると共に、該防振マウント本体の該第二の取付部材における該円筒状部に対して別体の筒形ブラケットが外嵌固定されており、該第二の取付部材が該筒形ブラケットを介して防振連結される他方の部材に取り付けられる防振マウント組立体において、
    前記防振マウント本体には、前記第二の取付部材の軸方向一方の開口周縁部にフランジ状部を設けると共に、該第二の取付部材の前記円筒状部の外周面に嵌着ゴムを被着形成する一方、
    前記筒形ブラケットには、非鉄金属または合成樹脂材からなる軽量材製のものを採用すると共に、該筒形ブラケットの内周面を軸方向中間部分から軸方向両側開口部に向かって次第に拡径する上テーパ面と下テーパ面で構成し、それら上テーパ面と下テーパ面の境界に周方向に延びる係止頂部を設けて、該筒形ブラケットにおける該上テーパ面側の開口端面に前記防振マウント本体の前記第二の取付部材の前記フランジ状部を軸方向に重ね合わせる一方、該筒形ブラケットの該係止頂部を該第二の取付部材の前記円筒状部の外周面に設けられた前記嵌着ゴムに食い込ませて係止させることにより、該防振マウント本体の該筒形ブラケットからの抜け抗力が発揮されるようにしたことを特徴とする防振マウント組立体。
  2. 前記嵌着ゴムの外周面に軸方向で延びる凹部が形成されている請求項1に記載の防振マウント組立体。
  3. 前記嵌着ゴムの外周面に周方向で延びる凹溝が形成されている請求項1又は2に記載の防振マウント組立体。
  4. 前記上テーパ面と前記下テーパ面が境界において屈折するように接続されることにより、該上下のテーパ面の境界において尖鋭形状の前記係止頂部が形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の防振マウント組立体。
  5. 前記係止頂部が前記嵌着ゴムの軸方向中央部分に食い込んで係止されており、該係止頂部の軸方向両側において該嵌着ゴムが前記筒状ブラケットの前記上テーパ面と前記下テーパ面に対してそれぞれ密着されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の防振マウント組立体。
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