JP4861503B1 - 面ファスナ用編地 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明に係る面ファスナ用編地は、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とからなるトリコット編地において、表面部、中間部、裏面部の編糸にはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結される構成とした。また、トリコット編地を構成する表面部の編糸により形成されるパイルを同数ごとに左右交互に形成し、ループを形成する編糸の進行方向を表面部と中間部、及び中間部と裏面部とでそれぞれ逆方向とした。
【選択図】図3
Description
これにより、裏面部の編糸は隣接する編糸と繋がり、さらに裏面部に形成されるループ部が中間部のループ部と連結されることで、裏面部の編糸の所定部分が切断されたとしても容易にほどけることがなくなり、生地の強度が増す。
本発明で用いられる編糸はナイロン繊維やポリエステル繊維などの合成繊維が考えられるが、これに限定されるものではない。
このように雄部材などの係合素子と係合するためのパイルを左右交互に形成することで、斜め左上方向から係合素子を接着させても、斜め右上方向から係合素子を接着させても同じ係合力を得ることが可能となる。
すなわち、表面部のループが反時計回りで形成される場合は、これに連結される中間部のループは時計回りで形成されることとなる。また、この中間部のループに連結される裏面部のループは反時計回りで形成されることとなる。
本発明では表面部、中間部、裏面部の各ループを形成する編糸の進行方向を逆方向とすることにより、各ループに編糸の進行方向とは逆方向に緩む力が加わったとしても、連結される他のループにはこれとは逆方向に緩む力が加わることで互いに緩む力が相殺されることとなる。
すなわち、裏面部のループに時計回りに緩む力がかかった場合は中間部のループでは反時計回りに緩む力がかかるため、両ループが接触することでそれぞれ反対方向に力がかかり、ループが緩む力が相殺される。同様に中間部のループで反時計回りに緩む力がかかった場合、表面部のループでは時計回りに緩む力がかかることで、ループが緩む力が相殺される。この仕組みにより表面部、中間部、裏面部の各ループにおいて編糸の進行方向とは逆方向に緩む力が加わったとしてもその力は相殺され、ループが緩んで大きくならないようにすることが可能となる。
これにより各ループを小さい状態で保持することが可能となり、表面部のループも小さい状態で保持されることから、相対的に表面部のパイルに用いられる糸長が長い状態を保持でき、パイルの高さが高い状態を保持することができる。
裏面部(B)の編糸は隣接する編糸と繋がることで生地を形成する。また、該裏面部は基材テープ(4)上の粘着層(3)に接着される。
トリコット編地の所定の一列における表面部、中間部、裏面部の編糸のパターンを組み合わして編成すると図6のように表される。実際は複数列によってトリコット編地は編成され、図7のように表される。
図7において表面部(F)の各編糸は×印の位置で中間部(M)の編糸と結合され、×印と×印の中間において表面部の編糸は立ち上がり、パイルを形成する。
挿入部は図7に示すように隣接する中間部(M)や表面部(F)のループ部分等と繋がり、生地が形成される。しかしながら挿入部のみの場合、どこか一箇所が切断されると容易にほどけてしまう。そのため、生地の引き裂き強度が弱くなってしまっていた。
本実施例に係るトリコット編地では挿入部(10)に加えてループ部(8)を形成し、該ループ部を中間部に形成したループ部(7)と連結した。これにより裏面部の所定箇所の編糸が切断されたとしても、切断箇所の前後には中間部のループ部と連結された裏面部のループ部が残存し、上方の中間部との連結状態は保たれる。したがって裏面部の編糸は容易にほどけるといったことはなく、生地の引き裂き強度が向上した。
図8の表において、試料行に記載の括弧番号は実験に用いた試料番号である。それぞれ以下の試料を意味する。
試料(1):裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地
試料(2):裏面部にループ部を形成しない20コース編立て生地
「引裂強さ」の行の上段「ウェール*1」の行は生地の上部、即ち編み始め方向に2cmの切れ目を入れた場合の引き裂き強度を示す数値であり、下段「ウェール*2」の行は生地の下部、即ち編み終わり方向に2cmの切れ目を入れた場合の引き裂き強度を示す数値である。数値の単位はN(ニュートン)であり、数値が高いほど引き裂き強度が高い(生地が強い)ことを意味する。
また、「N=」とあるのは測定回数を意味し、例えば「N=1」は一度目の測定であり、「N=2」は二度目の測定を示す。コース数は1インチ中の生地の長さ方向の編目数によって定まり、コース数が高いほど生地の密度が高いことを意味する。
この表において、試料行に記載の括弧番号は実験に用いた試料番号である。それぞれ以下の試料を意味する。
試料(1):裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地
試料(2):裏面部にループ部を形成した25コース編立て生地
試料(3):裏面部にループ部を形成した30コース編立て生地
試料(4):裏面部にループ部を形成した35コース編立て生地
試料(5):裏面部にループ部を形成した40コース編立て生地
試料(6):裏面部にループ部を形成しない20コース編立て生地
試料(7):裏面部にループ部を形成しない25コース編立て生地
試料(8):裏面部にループ部を形成しない30コース編立て生地
試料(9):裏面部にループ部を形成しない35コース編立て生地
試料(10):裏面部にループ部を形成しない40コース編立て生地
また、下部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)は6.0N、試料(2)は6.5N、試料(3)は7.8N、試料(4)は9.3N、試料(5)は9.4N、試料(6)は2.6N、試料(7)は4.5N、試料(8)は5.5N、試料(9)は6.6N、試料(10)は10.7Nとなった。
このように、裏面部にループ部を形成しない試料(6)〜(9)より、裏面部にループ部を形成する試料(1)〜(4)のほうが引き裂き強度が高い結果となった。
40コース編立て(試料(5)、(10))では顕著な差異はでなかったものの、20コース編立て〜35コース編立て(試料(1)〜(4)及び(6)〜(9))では裏面部にループ部を形成したほうが引き裂き強度が約1.2〜2.3倍程度増すことが実証された。
以上のことから本実施例に係る裏面部にループ部を形成した編地によると、外側方向に引っ張る力が加わったときに生地が破れにくくなることから、本トリコット編地と雄部材等の係合素子との着脱可能回数がより多くなる。
本実施例に係る表面部はループ(22)を中心にして左右均等にパイル(21)を配置した。これは係合素子を左右どちらから係合させても同等の係合力となるようにするためである。すなわち、本来であればパイルは垂直に立ち上がることが好ましいが、実際には右側に形成されたパイルは右側に傾斜して立ち上がり、左側に形成されたパイルは左側に傾斜して立ち上がることとなる。そのため、仮に左右のどちらか一方にのみパイルを形成すると、すべてのパイルはその方向に傾斜して形成されてしまい、係合素子を右上方から接着する場合と左上方から接着する場合とで係合力に差が生じてしまう。
本願に係る面ファスナ用編地では上述のとおりパイルを左右交互に形成することで、係合素子を左右どちらの方向から接着させても係合力に差を生じないため、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなり、上記問題点は解消される。
また、パイルが左右両方向に立ち上がることから、雄部材等の係合素子を右上から接着した場合と左上から接着した場合のパイルへの引っかかり易さに差が生じることがなくなり、どちらの方向からでも係合素子は雌部材に引っかかり易くなる。
図3において、所定のループ部に注目すると、表面部のループ部を形成する編糸が反時計回りになっている箇所では、対応する中間部のループ部を形成する編糸が時計回りになっており、同様に該中間部のループ部に対応する裏面部のループ部を形成する編糸が反時計回りになっている。
一般に面ファスナ用雌部材ではパイルが高ければ高いほど係合素子との係合力は大きくなり好ましい。そのため、表面部のループ部に用いられる糸量をいかに少なく抑えてパイルに用いられる糸量を多くするかが要点となる。
本実施例では表面部と中間部、及び中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向をそれぞれ逆行させたことで各ループ部を小さくし、用いられる糸量を少なくすることに成功した。
図11の写真は表面部、中間部、裏面部の各ループ部の編糸の進行方向が表面部、中間部及び裏面部とですべて同じ向きとなるよう形成した比較例に係る編地の側面を拡大したものである。
各写真の右側には1目盛りあたり0.5mmの間隔で目盛りが入っている。
各写真の中間から上部にかけて形成されている輪の部分が表面部の編糸によって形成されるパイルである。図10ではおよそ矢印αの間にパイルが形成されており、図11ではおよそ矢印βの間にパイルが形成されている。
なお、図10の本実施例に係る編地と図11の比較例に係る編地とは用いた編糸の長さはどちらも等量(同じ糸長)であり、20コース編立てで形成している。
これに対して、表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ同方向となるよう形成した場合(比較例)は、図11の写真にあるとおり、パイルの高さが約1.0mm(約2目盛り)となった。
この結果から分かるとおり、同じ糸長で編地を形成した場合、表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ逆方向となるよう形成することにより、それぞれ同方向となるよう形成した場合の約3倍の高さでパイルを維持できることが実証された。
すなわち、連続するループ部分(6)を中間地点とした場合、左右交互に2部ずつパイル(5)を形成する。右側に2つパイルを形成し、続いて左側にパイルを2つ形成し、続いて右側に2つパイルを形成する、という形を繰り返すのである。
また、上記実施形態の記述は本発明をこれに限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。
2 トリコット編地
3 粘着層
4 基材テープ
5 パイル
6 表面部のループ部
7 中間部のループ部
8 裏面部のループ部
10 裏面部の挿入部
21 パイル形成部分
22 ループ連結部分
F 表面部
M 中間部
B 裏面部
X 表面部の編糸の進行方向
Y 中間部の編糸の進行方向
Z 裏面部の編糸の進行方向
α 本実施例のパイルの高さ
β 比較例のパイルの高さ
Claims (5)
- 面ファスナ用編地に用いられるトリコット編地において、
該トリコット編地は、種々の係合素子と結合されるパイル部を形成する表面部の編糸と、隣接する編糸群と繋がり生地を形成する裏面部の編糸と、該表面部の編糸と該裏面部の編糸とを繋げる中間部の編糸とからなり、
表面部、中間部、裏面部の編糸は各々所定のステッチパターンの繰り返しにより編成され、
表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とにはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結されることを特徴とする面ファスナ用編地。 - 請求項1に記載のトリコット編地において、
表面部の編糸により形成されるパイルが所定の数ごとに左右交互に形成されることを特徴とする面ファスナ用編地。 - 請求項1又は2に記載のトリコット編地において、
表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成されることを特徴とする面ファスナ用編地。 - 請求項1から3の何れかに記載のトリコット編地において、
表面部と中間部、及び中間部と裏面部とが連結される所定のループ部分に着目した場合に、ループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部とではそれぞれ逆方向となることを特徴とする面ファスナ用編地。 - 該トリコット編地を1から9までのステッチ位置の繰り返しによるステッチパターンにより表示すると、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表され、
隣接する組織と結合される挿入部、及び中間部の編糸に形成されるループ部と結合されるループ部とを裏面部が有することによりトリコット編地の強度が増すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の面ファスナ用編地。
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