JP4860791B2 - ロールコータによる帯状体の塗装膜厚制御方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献6には、モデル式が詳細に記載された方法が報告されている。しかしながら、アプリケーターロールのゴムライニングの厚みや、ミータロールにメッシュロールを用いる場合の考慮がされていない等の問題がある。
また、特許文献8、9には、ゴムライニング厚みの影響が考慮された方法が報告されているが、塗装モデルが実験式に基づくため、多くの実験による必要があり、応用が困難であるという問題がある。
そして、これらの従来技術においては、アプリケータロールのゴムライニングの厚みが5〜50mmの場合に、高い精度で塗装する条件を算出することができないという不具合がある。
少なくとも、塗装膜厚Mと、上記アプリケータロールと上記ミータロールとの間の間隔hmaと、上記アプリケータロールと上記帯状体との間隔hasとの関係を含む、下記の式1よりなるモデル式を用いて、上記塗装膜厚Mが目標膜厚M0の公差範囲内となる塗装条件を算出して初期設定を行うに当たり、
上記hma、hasは以下の式2及び式3を用いて求め、
以下の式4〜式6を用いてh’ma及びh’asを求め、
上記モデル式における上記hmaの代わりにh’maを代入すると共に上記hasの代わりに上記h’asを代入して上記塗装条件を算出することを特徴とするロールコータの塗装膜厚の制御方法にある(請求項1)。
式1:M=(ρ・C/LS)・{〔α(Va/Vm)β/(1+α(Va/Vm)β)〕・hma・(Va+Vm)/2−λ・has・(Va−LS)}
式2:hma=3.10・μ0.6・Ema-0.4・Rma0.6・(Nma/L)-0.2・[(Va+Vm)/2]0.6
式3:has=3.10・μ0.6・Eas-0.4・Ras0.6・(Nas/W)-0.2・[(Va−LS)/2]0.6
式4:h’ma=f(hma/2b)・hma
式5:h’as=f(has/2b)・has
式6:f(X)=A0+A1・X+A2・X2+A3・X3+・・・+An・Xn
また、上記ロールコータ1は、帯状体幅方向において、塗料3の流れや分布がなく均一であるとする。
まず、帯状体の表面に付着した塗料の焼き付け後の付着量Mは、以下の式7で表される。
式7:M=qs・ρ・C/LS
ここで、
qs:帯状体の表面に単位幅あたりに付着した塗料流量〔m2/s〕
式8:M=(qa−qL)・ρ・C/LS
ここで、
qa:アプリケータロールと帯状体との界面に流れ込む塗料流量〔m2/s〕
qL:アプリケータロールと帯状体との間をすり抜けてアプリケータロール上に残留する塗料流量〔m2/s〕
式9:qma=hma・(Va+Vm)/2
式10:qma=qm+qa
ここで、
qm:ニップ部をすり抜けてミータロール上に残留する塗料流量〔m2/s〕
式11:qa/qm=α・(Va/Vm)β
上記式10及び上記式11より、下記の式12を得ることができる。
式12:qa=〔α(Va/Vm)β/(1+α(Va/Vm)β〕・qma
式13:qa=〔α(Va/Vm)β/(1+α(Va/Vm)β〕・hma・(Va+Vm)/2
式14:qL=λ・has・(V−LS)
上記式13及び上記式14を上記式8に代入することで、塗装膜厚Mと、上記hmaと、上記hasとの関係を含むモデル式である、上記式4を得ることができる。
この場合には、ロールコーティングにゴムからなるロールを用いる際には無視することができない潤滑接触面の弾性変形を反映し、アプリケータロールとミータロールとの間の間隔hmaと、アプリケータロールと帯状体との間の間隔hasを求めることができる。
式15:H=3.10・U0.6・W-0.2
Hは膜厚、Uは速度、Wは荷重の無次元表示であり、以下の式16〜式18によって無次元化している。
式16:H=h/R
式17:U=(η・u)/(E・R)
式18:W=w/(E・R)
ここで、
h:膜厚〔kg/m2〕
w:単位幅あたりの荷重〔N〕
u:平均流速〔m/s〕
R:等価半径〔m〕
η:大気圧下での粘度〔N・s/m2〕
E:等価弾性係数〔N/m2〕
式19:h=3.10・η0.6・u0.6・E-0.4・R0.6・w-0.2
このため、上記hma及び上記hasを求める式は、上記式2及び上記式3となる。
式20:w0={16・W・Rma・(1−νm)}1/2
いくつかの肉厚biのゴムを金属ロール上に被覆したロールを準備し、それぞれの接触幅wiを測定する。測定した接触幅wiから、(w0/2bi,wi/w0)の関係を求め、下記の式21で多項式近似する。
式21:(wi/w0)=f(w0/2bi)=A0+A1・(w0/2bi)+A2・(w0/2bi)2+・・・・+An・(w0/2bi)n
この方法は、G.J.Parishらが行った実験結果(1957)と同様の方法である。
上記式21の係数A0、A1、A2、・・・・、Anを求める。
ゴムの弾性によって接触幅(ニップ幅)が変化するので、その幅wiが増加する場合には、面圧が低下するため、ロール間の間隙も増加する。従って、接触幅wiをロール間の間隙に置き換えて同様の補正を行う。即ち、h’ma/hma=f(hma/2b)及びh’as/has=f(has/2b)と置き換えて、h’ma=f(hma/2b)・hma及びh’as=f(has/2b)・hasとして、ゴム弾性変形によるロール間の間隙の補正を行う。
上記適正組合せの中から、最大のNmaを含む最適組合せを選択し、当該Vm及びNmaを含む条件を上記塗装条件とする条件決定ステップとを含むことが好ましい(請求項2)。
上述したように、Vm及びNma以外の値を初期固定値とする。
上記Vm及び上記Nmaは操作量であり、例えば、Nmaを主操作量とし、操作の感度が高いVmを2次操作量として適宜に用いる。
上記初期固定値としては、後述する実施例にも示すごとく、固定条件値、固定設定値、Va初期値、塗料粘度、濃度の実測値等の種々の呼称のものがある。
上記初期固定値の中で、実測値を用いるものについては、塗料循環系に濃度計、粘度計等を適用することで、塗装開始後においても、随時上記データを測定し、反映することが可能である。
上記固定条件値は、M0、LS、Ra、W等であり、上記固定設定値は、Rm、Vcc、Vmmax、Vmmin、ΔVm、ΔNma等がある。
上記Vmには、遠心力で塗料が飛び散る最大速度に安全余裕を持たせた値を限界速度Vmmaxとする制約がある。また、上記Nmaには、装置性能の最大荷重に安全係数をかけた値を限界荷重Nmamaxとする制約がある。また、荷重を安全にかけられる値を最低荷重Nmaminとする制約がある。
上記Vm及びNmaの制約のもとで、上記選出ステップによって求められた目標膜厚M0を呈するVmとNmaの適正組合せの中から、Nmaが最大となる最適組合せを含む塗装条件求める。
上記Nmaは値が大きい方が気泡の入り込みや、除去に有効であるため、望ましいが、目標膜厚M0を得るには、必ずしもNmaが最大である必要がなく、上記曲線上にある組合せであれば良い。そのため、品質上に問題がある際には、上記曲線上を変化させた条件を用いることで、目標膜厚M0を得ることができる。
上記曲線を図3に示す。横軸をVmとし、縦軸をNmaとした。
上記式4におけるhma・(Va+Vm)/2を、
hma・(Va+Vm)/2+〔1−kd・exp(kc・P)〕・Vcc・Vmに置き換えることが好ましい(請求項4)。
この場合には、ミータロールとして、メッシュロールを用いた場合での塗料付着量を精度良く求めることができる。
すなわち、ミータロールに施されたますメッシュ溝内に溜まって、アプリケータロールとミータロールとの間を通過する塗料流量は、〔1−kd・exp(kc・P)〕・Vcc・Vmで表すことができる。
これを、モデル式である式1におけるアプリケータロールとミータロールとの間の間隔hmaを通過する塗料流量hma・(Va+Vm)/2に足して補正することにより、ミータロールとしてメッシュロールを用いた場合の塗装条件を精度良く求めることができる。
本発明の塗装膜厚制御方法にかかる実施例について説明する。
図1で示す構成を有するロールコータについて、異なる2種の塗料を準備し、図2に示すフローチャートに従って、目標膜厚M0に対する塗装条件を算出する。なお、同図のフローチャートは、厳密な意味でのフローチャートではなく、簡略化して大まかな流れを示したものである。
また、アプリケータロール12は、ゴムライニングb=20mm、周速Va=2.0m/s、ポアソン比νa=0.48、縦弾性係数Ea=7×106N/m2である。
また、帯状体2は、幅W=1m、ライン速度LS=1.83m/s、ポアソン比νs=0.33、縦弾性係数Es=6.9×1010N/m2である。
また、タッチ荷重合計Nasは2000N、アプリケータロール/ミータロール面長さLは1.8mである。
塗装に用いる塗料の種類、粘度、濃度、及び比重を表1に示す。
更に、ステップS102においては、実測値から塗料粘度μ及び濃度Cを入力する。
ステップS202において適正範囲の領域と適正組合せ曲線との共有領域があると判断されると、ステップS204、S205において、Nmaが最大となるVmとNmaの組合せを決定し、最適組合せとする。その後、ステップS206において、最適組合せを含む条件を塗装条件として自動設定する。
図4は、横軸をミータロール周速Vm、縦軸をアプリケータロール/ミータロール間荷重Nmaとする。領域SAは、塗料Aに対するVmの適正範囲且つNmaの適正範囲である領域を示す。曲線Kは、塗料Aの適正組み合わせを示す。
図4より知られるごとく、塗料Aは、経験上の標準値のVaにおいて求められた曲線K上の点のうち、限界荷重Nmamax及び限界速度Vmmax以下で、最低荷重Nmamin及び最低速度Vmmin以上の領域SA内で、Nmaが最大となるA点が最適組合せとして求められた。
図5は、横軸をミータロール周速Vm、縦軸をアプリケータロール/ミータロール間荷重Nmaとする。領域SBは、塗料Bに対するVmの適正範囲且つNmaの適正範囲である領域を示す。また、曲線Lは、塗料Bの適正組合せを示す。
図5より知られるごとく、塗料Bは、経験上の標準値のVaにおいて求められた曲線L上の点のうち、限界荷重Nmamax及び限界速度Vmmax以下で、最低荷重Nmamin及び最低速度Vmmin以上の領域SB内で、Nmaが最大となるB点が最適組合せとして求められた。
また、算出された塗装条件を適用した測定結果について、目標膜厚と、塗装膜厚実測値との関係を図6に示す。横軸を目標膜厚、縦軸を塗装膜厚実測値とする。
図6及び図7より知られるごとく、本例においては、塗装条件を精度良く算出することができ、ロールコータによる帯状体の塗装膜厚を制御することができた。
本例では、上記実施例で準備した塗料Aを用いて、特開平5−220441号公報記載のモデル式を用いて算出した塗装条件を適用した。具体的には、アプリケータロールの外周部におけるゴムライニングの厚みを考慮せず、本発明のようなhma及びhasを上記h’ma及び上記h’asによって置換する処理を行わないものである。
比較例の結果を図8に示す。横軸を目標膜厚、縦軸を塗装膜厚実測値とする。図8より知られるごとく、目標膜厚と、塗装膜厚実測値が絶対的にずれているのみでなく、ばらつきも大きいことがわかる。
10 ピックアップロール
11 ミータロール
12 アプリケータロール
13 バックアップロール
14 ニップ部
2 帯状体
3 塗料
Claims (4)
- 塗料を帯状体に転写するアプリケータロールと、該アプリケータロールに塗料を供給するミータロールとを有すると共に、上記アプリケータロールの外周部に厚みb(5mm≦b≦50mm)のゴムライニングを備えてなるロールコータを用い、上記アプリケータロールの回転方向を帯状体の走行方向と反対方向とし、上記ミータロールの回転方向を上記アプリケータロールの回転方向と反対方向として、移動する上記帯状体に連続的に塗装を行う際の塗装膜厚を制御する方法において、
少なくとも、塗装膜厚Mと、上記アプリケータロールと上記ミータロールとの間の間隔hmaと、上記アプリケータロールと上記帯状体との間隔hasとの関係を含む、下記の式1よりなるモデル式を用いて、上記塗装膜厚Mが目標膜厚M0の公差範囲内となる塗装条件を算出して初期設定を行うに当たり、
上記hma、hasは以下の式2及び式3を用いて求め、
以下の式4〜式6を用いてh’ma及びh’asを求め、
上記モデル式における上記hmaの代わりにh’maを代入すると共に上記hasの代わりに上記h’asを代入して上記塗装条件を算出することを特徴とするロールコータの塗装膜厚の制御方法。
式1:M=(ρ・C/LS)・{〔α(Va/Vm)β/(1+α(Va/Vm)β)〕・hma・(Va+Vm)/2−λ・has・(Va−LS)}
式2:hma=3.10・μ0.6・Ema-0.4・Rma0.6・(Nma/L)-0.2・[(Va+Vm)/2]0.6
式3:has=3.10・μ0.6・Eas-0.4・Ras0.6・(Nas/W)-0.2・[(Va−LS)/2]0.6
式4:h’ma=f(hma/2b)・hma
式5:h’as=f(has/2b)・has
式6:f(X)=A0+A1・X+A2・X2+A3・X3+・・・+An・Xn
ここで、
M:帯状体の単位面積あたりの塗料付着量(焼き付け後)〔kg/m2〕
ρ:塗膜密度〔kg/m3〕
C:濃度
LS:ライン速度〔m/s〕
Va:アプリケータロール周速〔m/s〕
Vm:ミータロール周速〔m/s〕
hma:ミータロールとアプリケータロールとの間の間隔〔m〕
has:アプリケータロールと帯状体との間の間隔〔m〕
α:分配係数〔=0.87(ニュートン流体)、=0.99(非ニュートン流体)〕
β:分配係数〔=1.65(ニュートン流体)、=1.54(非ニュートン流体)〕
λ:リーク係数〔=0.63(ニュートン流体)、=0.69(非ニュートン流体)〕
μ:塗料粘度〔N・s/m2〕
Ema:等価縦弾性係数〔N/m2、2/Ema=(1−νm 2)/Em+(1−νa 2)/Ea〕
Rma:アプリケータロール/ミータロール間等価曲率半径〔m〕
Nma:アプリケータロール/ミータロール間荷重(以下、ニップ荷重合計)〔N〕
Nas:アプリケータロール/帯状体間荷重(以下、タッチ荷重合計)〔N〕
L:アプリケータロール/ミータロール面長さ〔m〕
Eas:等価縦弾性係数〔N/m2、2/Eas=(1−νa 2)/Ea+(1−νs 2)/Es〕
Ras:アプリケータロール/帯状体間等価曲率半径〔m〕
W:帯状体幅〔m〕
νm:ミータロール材のポアソン比
Em:ミータロール材の縦弾性係数〔N/m2〕
νa:アプリケータロールゴム材のポアソン比
Ea:アプリケータロールゴム材の縦弾性係数〔N/m2〕
νs:帯状体のポアソン比
Es:帯状体の縦弾性係数〔N/m2〕 - 請求項1において、上記式1〜式6を用いて上記塗装条件を算出するに当たっては、Vm及びNma以外の値に初期固定値を入力することを前提として、Vm及びNmaの値を順次変更しながらMの値を算出し、Mの値が目標膜厚M0の公差内となるVmとNmaの適正組合せを求める適正組合せ選出ステップと、
上記適正組合せの中から、最大のNmaを含む最適組合せを選択し、当該Vm及びNmaを含む条件を上記塗装条件とする条件決定ステップとを含むことを特徴とするロールコータの塗装膜厚の制御方法。 - 請求項2において、上記条件決定ステップでは、上記適正組合せの条件を基にしてVm及びNmaを横軸及び縦軸にとった曲線を求め、該曲線とVmの適正範囲及びNmaの適正範囲の関係から上記塗装条件を決定することを特徴とするロールコータの塗装膜厚の制御方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記ミータロールとしてその表面に、ます目対角0.2〜1.0mm、深さ50〜500μmの四角錐又は四角錐台状の凹みを設けたメッシュロールを用いる場合においては、上記凹み部の1m2あたりの容積をVcc〔m3/m2〕として、
上記モデル式1におけるhma・(Va+Vm)/2を、
hma・(Va+Vm)/2+〔1−kd・exp(kc・P)〕・Vcc・Vm(ここで、Pは、単位幅当たりの面圧;P=Nma/L[N/m]、また、kc、kdは係数)に置き換えることを特徴とするロールコータの塗装膜厚の制御方法。
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