JP4860210B2 - 窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、窒化物半導体層を備えた半導体レーザ素子に関する。
近年、光ディスクの記憶容量の更なる高密度化が要求されており、青色半導体レーザを使用したBD(Blu−ray Disc)やHD−DVD(High Definition DVD)の規格化およびデコーダ等の製品化が行われている。これらの新規のディスクは更なる高密度化(二層ディスク対応)および高速書込みを可能とするために、信頼性の高い高出力青色半導体レーザが必要とされている。
従来のCDまたはDVDの再生および書き込みに用いるAlGaAs系またはInGaAlP系半導体レーザでは、レーザ光の出射面である共振器端面の劣化や光学的な損傷を防ぐため、共振器端面にSiO2、Si34等の誘電体膜をコーティングしている。ただ、青色半導体レーザにEB(Electron Beam;電子ビーム)蒸着装置や、スパッタリング装置を用いてそのまま成膜した場合には、COD(Catastrophe Optical Damage;瞬時光学損傷)が発生する臨界出力であるCODレベルが低く、非常に信頼性が低かった。そこで、コーティング技術の改善が必要となっている。なお、CODとは、レーザ光の出射面で光吸収により、窒化物半導体レーザ素子を構成する結晶が溶融する現象のことである。
特許文献1には、劈開により形成される半導体レーザの共振器端面にArプラズマ処理を施して、共振器端面に自然形成される自然酸化膜を、マイクロ波によってプラズマ状態となったAr粒子によって除去することにより、自然酸化膜が除去された共振器端面に形成されるコート膜と共振器端面との密着性を高め、共振器端面の信頼性向上を行う半導体レーザの製造方法が提案されている。また、劈開後、半導体表面についた水分などを除去するために加熱して、より信頼性の向上を行うことも提案されている。
特開2002−335053号公報(第13頁−第15頁、図6、図9)
特許文献1に提案された半導体レーザの製造方法で用いられるような、Arプラズマによる前処理では、処理されるレーザバーおよびレーザバーの保持台にはバイアスを印加せず、Arイオンを電位差によってレーザバーに引き寄せてレーザバーの端面に衝突させることはしない。つまり、一般的にいう逆スパッタではない。このような場合、レーザバーの端面に到達するイオンのもつエネルギーは数十keVといわれている。この程度のイオンエネルギーは、プラズマによってレーザバーの表面に付着した水分、カーボン、自然酸化膜などを除去する、プラズマクリーニングを行うのに十分であるが、レーザバーの端面に与える損傷はほとんどないと考えられてきた。
しかし、発明者らの実験によると、Arプラズマ処理を行うことにより、端面の自然酸化膜は除去できるが、半導体レーザ素子が窒化物半導体レーザ素子である場合には、それと同時に、半導体レーザ素子の表面に影響があることが分かった。
次に、この実験結果を示す。窒化物半導体レーザ素子について、前処理としてArプラズマ処理を行った試料(前処理あり)とArプラズマ処理を行わない試料(前処理なし)を作製し、それぞれについてエージング試験を行う前の、初期CODレベルを測定した。図3は、Arプラズマ処理を行った後にAl23の誘電体膜を成膜した試料とArプラズマ処理を行わずに劈開したままの端面にAl23の誘電体膜を成膜した試料の、エージング前(初期)と200時間のエージング後のCODレベルをプロットしたものである。エージング条件は、雰囲気温度70℃、出力60mW、APC(Automatic Power Control;定出力制御)駆動およびCW(Continuous Wave;連続発振)駆動である。また、CODの測定条件は50ns、duty50%、室温、pulse測定である。図3より、前処理なしの試料の方が、前処理ありの試料よりも初期CODレベルが高いことが分かる。これは、Arプラズマ処理を行うことにより、半導体の表面(端面)部分に何らかのダメージが入り、初期CODレベルが低下したことを示唆している。
Arプラズマ処理による端面への影響によって、初期CODレベルが低下すると、それ以上の高出力化は実現できなくなる。例えば図3に示したグラフでは、Arプラズマ処理を行った半導体レーザ素子は、初期CODが200mWであるため、この時点で200mW以上の高出力化はできなくなる。
<共振器端面の窒素量>
Arプラズマ処理が窒化物半導体レーザ素子の共振器端面にどのような影響を及ぼすか、これまでほとんど知られていなかった。そこで発明者らは、Arプラズマ処理が共振器端面に及ぼす影響に関して研究を行った。
図4は、窒化物半導体レーザ素子について、共振器端面の表面から内部に向かってエッチングしながらAES(Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光分析)測定によってGa量、窒素量の測定を行い、横軸を共振器端面の表面からの深さ、縦軸をGaに対する窒素の割合(原子数比)としてプロットしたものである。以下、本明細書において、Gaに対する窒素の割合は全て原子数比である。図4には、Arプラズマによる前処理を行っていない試料(前処理なし)と共振器端面にArプラズマによる前処理を行った試料(前処理あり)の結果を示している。図4より、窒化物半導体レーザ素子の端面の表面近傍の窒素の量が、半導体内部に比べて減少していることが分かる。
<端面の相対窒素量の算出方法>
次に窒化物半導体レーザ素子の共振器端面の表面の相対窒素量の算出方法について説明する。
1 前処理を行っていない窒化物半導体レーザ素子の共振器端面のAES測定を行う。
1−1 共振器端面の表面のGaに対する窒素の割合(a)を求める。
1−2 共振器端面の表面からの深さ2〜4.5nmの範囲でのGaに対する窒素の割合の平均(b)を求める。
1−3 1−1で求めた値(a)を1−2で求めた値(b)で割った値(c=a/b)を求める。
2 前処理を行った窒化物半導体レーザ素子の共振器端面のAES測定を行う。
2−1 共振器端面の表面のGaに対する窒素の割合(d)を求める。
2−2 共振器端面の表面からの深さ2〜4.5nmの範囲でのGaに対する窒素の割合の平均(e)を求める。
2−3 2−1で求めた値(d)を2−2で求めた値(e)で割った値(f=d/e)を求める。
3 2−3で求めた値(f)を1−3で求めた値(c)で割った値(g=f/c)を求める。このようにして求めた値(g)を端面の相対窒素量と本明細書において定義する。
次に例として、以上の算出方法に基づいて図4に示す試料について、端面の相対窒素量を求める。図4の前処理なし試料において、端面の表面(図4におけるX=0)のGaに対する窒素の割合(a)は1.185であり、表面からの深さ2〜4.5nmの範囲のGaに対する窒素の割合の平均(b)は1.011である。よって、c=a/b=1.185/1.011≒1.172である。同様の計算を図4の前処理ありの試料について行うと、端面の表面のGaに対する窒素の割合(d)は0.908、表面からの深さ2〜4.5nmの範囲のGaに対する窒素の割合の平均(e)は1.055であることから、f=d/e=0.908/1.055≒0.861である。したがって、図4に示す試料の端面の相対窒素量(g)は、g=f/c=0.861/1.172≒0.73=73%である。
上述の定義からわかるように、端面の相対窒素量は、Arプラズマ処理による前処理を行っていない面のGaに対する窒素の割合を基準とするため、表面に既に前処理が施してあり、前処理していない半導体レーザ素子が手に入らない場合は、半導体レーザ素子などをスクライブなどにより劈開して、新しい端面を形成しその表面を測定し基準とすればよい。つまり、この基準となる面の測定結果と、前処理を行った面の測定結果を相対比較する。これにより、前処理していない試料がない場合でも、端面の相対窒素量を測定することができる。
<Arプラズマ処理による窒素の離脱>
このようにArプラズマ処理を行った半導体レーザ素子の表面においてGaに対する窒素の割合が減少しているのは、励起されたAr粒子のアタックにより、蒸気圧の高い窒素が表面から離脱したためであると考えられる。さらに、この理由としては、Arプラズマ処理により、端面の窒素が離脱し減少することにより、端面(表面)は、相対的にGaが多い状態となり、窒素とGaの割合が1対1であるストイキオメオリ(化学量論的組成)が大きく崩れ、非発光センターが増加し、それに伴う発熱の増加により急速に端面劣化を引き起こすためであると考えられる。このため、Arプラズマ処理時間、マイクロ波パワー、処理温度などにより、窒素の離脱状況は異なる。
<加熱による窒素の離脱>
また、特許文献1で提案された半導体レーザの製造方法では、成膜前に端面に付着した水分を除去するために、バーを加熱して水分を蒸発させる旨が記載されている。このようにバーの温度を室温より高い温度に加熱して処理することは、水分を飛ばすため、または成膜する端面コート膜の膜質を向上させるために、一般的に行われているが、このような加熱により端面から窒素が離脱してCODレベルを低下させていることも同様の測定により分かった。
つまり、熱や、励起されたプラズマ状態のAr粒子などのアタックにより窒化物半導体表面は窒素の離脱が非常に起こりやすい。したがって、自然酸化膜を除去するためにたとえばArプラズマ処理を行ったり、水分を蒸発させるために加熱を行ったりした際の、端面の表面からの窒素の離脱を抑制することで、高出力で駆動でき、長期信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子の端面を作製できることが分かった。さらに窒化物半導体レーザ素子の端面の相対窒素量がCODレベルを決めることも分かった。
<レーザ素子のエージング>
また、図3に結果を示すエージング試験によると、初期CODレベルが高かった前処理なしの試料は、エージングによってCODレベルが著しく低下している。これに対して、前処理ありの試料は、初期CODレベルは低いものの、エージングによるCODレベルの低下は小さく、エージング後のCODレベルは、Arプラズマ処理を行っていない試料のエージング後のCODレベルより高いことが分かる。
何も処理されていない端面に端面コート膜を成膜した場合、端面の表面におけるGaに対する窒素の割合はストイキオメトリに基づき100%となるが、この場合、この端面を含む表面には自然酸化膜が形成されることとなる。この自然酸化膜によって半導体レーザ素子における非発光再結合が増加して、エージングを行った際の発熱により、端面劣化を引き起こすものと考えられる。つまり、端面に形成された自然酸化膜を除去しないと半導体レーザ素子を実用化できる程度の長期信頼性が確保できず、一方Arプラズマ処理等の前処理を行えば自然酸化膜は除去できるものの、同時に端面損傷してしまうことが分かる。
そこで、本発明は、プラズマ処理によって端面の自然酸化膜を除去することで長期信頼性が高く、それと同時にプラズマ処理による端面の損傷を低減することで初期CODレベルも向上させ、高出力駆動できる半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、基板上に窒化物半導体層を形成した後、前記窒化物半導体層を形成した前記基板を劈開して互いに平行な2個の共振器端面を形成する、前記基板と前記窒化物半導体層とを備える窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記共振器端面を、窒素ガスまたは希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いたプラズマに曝露することで前記共振器端面の組成変化を促すプラズマ処理を行うことにより、前記プラズマ処理前の前記共振器端面の表面におけるGaに対する窒素の割合をa、前記共振器端面の表面よりも内部におけるGaに対する窒素の割合の平均をb、前記プラズマ処理後の前記共振器端面の表面におけるGaに対する窒素の割合をd、前記共振器端面の表面よりも内部におけるGaに対する窒素の割合の平均をeとしたときに、g=(b・d)/(a・e)で表される値gが、0.8≦gとすることを特徴とする。
この構成によると、窒素ガスのプラズマが共振器端面の表面に付着することで、共振器端面の窒素量を増加させることができる。また、窒素ガスおよび希ガスのプラズマによって、共振器端面に生成した酸化膜を除去することができる。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記プラズマ処理を行う前に、希ガスのプラズマによって前記共振器端面をエッチングする予備プラズマ処理を行うことを特徴とする。
この構成によると、希ガスを用いたプラズマによって、共振器端面に生成した酸化膜を除去することができる。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記プラズマ処理の後、前記共振器端面に前記共振器端面の光学的損傷を防ぐコート膜を形成することを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記コート膜が、Al、Ti、Si、Y、Nb、TaまたはZrの酸化物であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記端面コート膜がAlまたはSiの窒化物であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記2個の共振器端面の両方に前記端面コート膜を備え、前記2個の端面コート膜が同一の材料からなることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記端面コート膜が電子サイクロトロン共鳴スパッタ法または高周波スパッタ法で作製されることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記プラズマ処理をする際の前記基板の温度が150℃以上500℃以下であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記プラズマ処理をする際の前記基板の温度が200℃以上400℃以下であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備プラズマ処理をする際の前記基板の温度が150℃以上500℃以下であることを特徴とする。
また本発明は、上記構成の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、前記予備プラズマ処理をする際の前記基板の温度が200℃以上400℃以下であることを特徴とする。
また本発明の窒化物半導体レーザ素子は、上記いずれかの窒化物半導体レーザ素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明によると、窒化物半導体レーザ素子の共振器端面にプラズマ化した窒素を付着させながら、窒素または希ガスのプラズマによって酸化物を除去して共振器端面を清浄化することができる。希ガスのプラズマによって共振器端面の窒素が減少すると、窒化物半導体レーザ素子のCODレベルが低下するが、プラズマ化した窒素が付着することにより、CODレベルの低下を防止することができる。分子状態の窒素ガスは共振器端面に付着しにくく、分子状態の窒素ガスに共振器端面をさらしただけでは付着せず、CODレベルの低下を防止することができないことが発明者らの研究によって分かっている。
また、本発明によると、予備プラズマ処理によりあらかじめ共振器端面を清浄化しておくことにより、窒素ガスを清浄化に用いることなく、共振器端面の窒素量を増加させることができる。
また、本発明によると、共振器端面にコート膜を形成することにより、共振器端面の酸化を防ぎ、また光学的破壊から保護することができ、共振器端面の反射率を制御することができる。
《第1の実施形態》
本発明の第1の実施形態について図を用いて説明する。図1は第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザバーの共振器長に平行な方向から見た断面図、図2は共振器長に垂直な方向から見た窒化物半導体レーザバーの側面図である。
以下に説明するレーザ構造及び電極等が形成された窒化物半導体ウエハをダイヤモンドポイントによるスクライブ及びブレークの手法にて、図1および図2に示す窒化物半導体レーザバーに劈開する。この劈開してできた面が図2に示す、互いに平行な共振器端面13、14となる。窒化物半導体レーザバー10は、n型GaN基板11上に、n型GaN基板11側から順に、n−AlGaInNバッファ層21、n−AlGaInNクラッド層22、n−AlGaInNガイド層23、AlGaInN多重量子井戸活性層24、p−AlGaInNガイド層25、p−AlGaInNクラッド層26、p−AlGaInNコンタクト層27が積層されている。なお、これら窒化物半導体層21〜27にはIII−V族窒化物半導体を用いることができる。また、AlGaInN多重量子井戸活性層24にはAs、P等のV族材料が0.01〜10%程度含まれていてもよい。
p−AlGaInNガイド層25、p−AlGaInNクラッド層26及びp−AlGaInNコンタクト層27の少なくとも一部には、共振器方向に延伸したストライプ状のリッジ12が設けられる。リッジ12のストライプの幅は、1.2〜2.4μm程度、代表的には1.5μm程度である。
p−AlGaInNコンタクト層27に接してp電極32が設けられ、p電極32下部には、リッジ12と接する部分を除いて絶縁膜31が設けられている。このように、窒化物半導体レーザバー10は、いわゆるリッジストライプ構造を有している。さらに、窒化物半導体レーザバー10の裏面側には、n電極33が形成されている。
また図2に示すように、劈開により形成された共振器端面13に端面コート膜(低反射膜)34が形成され、同様に劈開により形成された共振器端面14に端面保護強化膜35が形成され、その上に端面コート膜(高反射膜)36が積層される。低反射膜34、端面保護強化膜35および高反射膜36は、共振器端面13、14の酸化の防止や、レーザ光の反射率の制御などの目的で設けられる。低反射膜34、端面保護強化膜35および高反射膜36の形成は、窒化物半導体レーザバー10をホルダーに固定して、処理室内に配置されたECR(Electron Cyclotron Resonance;電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング装置に導入することによって行う。
<炉内酸化>
この、ECRスパッタリング装置による低反射膜34、または端面保護強化膜35および高反射膜36の形成の前に、端面に付着した自然酸化膜を除去する為に、窒化物半導体レーザバーにプラズマ処理による前処理を行う。プラズマ処理を行う際に、ターゲットの材料がプラズマ放電後にプラズマのシース電位として数V程度の電位を有してしまい、この電位差のためにプラズマ中のイオンがターゲットに衝突し、ターゲット原料がスパッタリングされ窒化物半導体レーザバーの表面に付着することが知られている。ターゲットがAlなどの金属である場合、この金属がメタル状態で共振器端面に付着し、強い光吸収を引き起こして発熱するため、COD破壊に至り、窒化物半導体レーザ素子のCODレベルを大幅に低減してしまう。
このため、ターゲットからのコンタミを防いでCODレベルの低下を防ぐため、前処理の前に、処理室内でターゲットとECRスパッタリング装置内部の炉内を強制的に酸化させ、炉内及びターゲットの表面を酸化させる炉内酸化を行う目的で酸素プラズマ処理を行う。酸素プラズマ処理は、ターゲット表面に酸化物が形成される状態で行う。ターゲットの表面に酸化物が形成されたかどうかは、ターゲットの表面電位をモニターすることで判断できる。
処理室内でArと酸素の混合ガスをプラズマ状態にして、酸素の比率を上げていったときに、ターゲットの表面電位が50V程度急激に低下する。これは、ターゲットの表面がメタル状態から酸化物に変化した為に、引き起こされるものである。酸素の割合が少ないとArによりターゲットがスパッタされるため、常にターゲット表面はメタルの状態になる。しかし、酸素の割合を増やすと、ある時点でArによるターゲットのスパッタレートよりターゲットの酸化の方が早くなりターゲット表面が酸化される。このターゲットの表面電位が低下した状態がターゲット表面が酸化物で覆われたことを示す。
炉内酸化は、ターゲットの表面電位が低下した時よりも酸素流量を1ccm程度増加させた状態で行う。ターゲットがAlの場合、Alの酸化物は、スパッタレートがメタル状態のAlと比べて十数分の一程度と非常にスパッタされにくい。このため、数Vのターゲットの自己バイアスでは、プラズマ処理による前処理を行う際にAl23がスパッタされて、窒化物半導体レーザバーの表面に付着することはない。
炉内酸化の直後は非常に酸素が多く処理室内に残るため、プラズマ処理による前処理の直前に炉内酸化を行うと残留酸素により、窒化物半導体レーザバーの端面が酸化されCODレベルが低下することがある。このため、炉内酸化は、低反射膜34または端面保護強化膜35および高反射膜36を形成した後に行ってもよい。ただし、炉内酸化した後で真空引きを十分に行って残留酸素を十分に排出すれば、炉内酸化の直後に前処理を行ってもなんら問題はない。
<前処理>
本実施の形態では、半導体レーザ素子がGaN系の窒化物である為、プラズマ処理による前処理によって窒素が離脱するのを防止する為に、窒素プラズマでプラズマ処理を行う。ここでは比較のため、表1にArガスのみで前処理を行った場合と窒素ガスのみで前処理を行った場合の条件を示す。
Figure 0004860210
第1の実施形態に係る条件で、処理室にガスを導入し、マイクロ波を印加する。このプラズマ状態のArおよび窒素の中に窒化物半導体レーザバー10が置かれることになり、窒化物半導体レーザバー10の共振器端面13、14がクリーニングされる。この際、Alからなるターゲットに接続されたRF(Radio Frequency;高周波)電源の出力値は0Wであるため、Arおよび窒素がターゲットに対して引き寄せられて衝突することはない。
前処理中の窒化物半導体レーザバーの温度は室温でもよいが、窒素は端面への付着率が非常に低いことから、端面への窒素の付着率を向上させるために、ホルダーの加熱などによって前処理中の窒化物半導体レーザバーを室温よりも高い温度に加熱してもよい。温度をあげることにより、自然酸化膜の除去も効率よく行なわれる。窒化物半導体レーザバーの温度は150℃以上500℃以下が好ましい。500℃よりも高くすると、電極構造などが破壊され、電圧上昇を引き起こすことがあるためである。また、200℃以上400℃以下がさらに好ましい。
<低反射膜形成>
次に、窒化物半導体レーザバー10の一方の共振器端面13にスパッタリング装置内でAl23からなる低反射率の端面コーティング膜である低反射膜34を形成する方法について説明する。まずArガス(流量40ccm)および酸素ガス(流量6〜7ccm)を処理室に導入しプラズマ状態を形成する。このとき炉内の内圧は1×10-1Pa程度、マイクロ波の出力は500W、Alターゲットに接続されたECRスパッタリング装置のRF電源の出力値は500Wとする。プラズマ状態のArがRFパワーの500WでAlターゲットに引き寄せられ、Alターゲットをたたくことで、Alがサンプルに向けて飛散する。この飛散したAlがArガスと同時に導入されている酸素ガス(プラズマ状態になっている)と結合することによりAl23が成膜される。この状態で、窒化物半導体レーザバーのホルダーの直下に設けられたシャッターを開けることで、共振器端面13に低反射膜34が形成される。
なお、本発明においては、窒化物半導体素子の共振器端面の表面の窒素量が重要であり、低反射膜34を構成する材料は問題にならないため、TiO2、SiO2、Y25、Nb25、Ta25、ZrO2、AlN、Si34、MgFなどの材料からなるものとしてもよい。窒化物系半導体レーザ素子のように400nm付近で発振するレーザ素子の場合、Al23からなる低反射膜34の膜厚は80nm程度とすることにより、5%の低反射率を実現することができる。この時の膜厚制御は、事前にダミーに低反射膜を形成し、反射率を測定し成膜レートを調べておいて、実際に形成する際にシャッターを開ける時間を制御することにより実現することができる。このように、低反射膜34が形成された側の共振器端面13を前面とする。
以上より、共振器端面13に低反射膜34を形成するプロセスをまとめると次のようになる。
1 炉内酸化(ターゲット表面と炉内表面の酸化)
2 前処理(窒素プラズマ処理)
3 本成膜(低反射膜形成)
4 窒化物半導体レーザバーの取り出しおよび次の窒化物半導体レーザバー導入
なお、上記では、ECRスパッタリング装置を用いた場合の処理について説明したが、ECRスパッタリング装置に替えてEB(Electron Beam;電子ビーム)蒸着装置にプラズマ発生装置を付けた場合などは、炉内酸化などのプロセスを行わなくても問題ない。EB蒸着装置の場合、プラズマガスの発生場所とターゲットを分離できる為、プラズマガスにより、ターゲットがスパッタされ原料がサンプルに付着することがない。また、ECRスパッタリング装置に替えて、RF(Radio Frequency)スパッタリング装置を用いてもよい。RFプラズマ法で窒素ガスをプラズマ状態にした場合、原子状窒素が多く生成され、この原子状窒素は付着しやすいため、窒素抜けを有効に防止できる。RFプラズマ法は、ガスをプラズマ状態にする際に、13.56MHzの高周波を用い、ECRプラズマ法のように磁場によるサイクロトロン運動を利用しない点で異なるが、それ以外の成膜方法に関しては、ECRプラズマ法と同じであるまた、初回だけ上記のプロセスによって前処理の前に炉内酸化を行い、2回目以降は下記のプロセスで繰り返し処理を行ってもよい。
1 前処理(窒素プラズマ処理)
2 本成膜(低反射膜34形成)
3 炉内酸化(ターゲット表面と炉内表面の酸化)
4 窒化物半導体レーザバーの取り出しおよび次の窒化物半導体レーザバー導入
<高反射膜形成>
次に、低反射膜34の形成後、ホルダーを取り出し、窒化物半導体レーザバー10のもう一方の共振器端面14(後面側)に、端面保護強化膜35および高反射率の端面コーティング膜である高反射膜36を形成できるようにセッティングを行い、まず端面保護強化膜35を形成する。低反射膜を形成するのと同様のプロセスで行う。つまり、次の手順で端面保護強化膜35を形成する。
1 炉内酸化(ターゲット表面と炉内表面の酸化)
2 前処理(窒素プラズマ処理)
3 本成膜(端面保護強化膜形成)
4 窒化物半導体レーザバーの取り出しおよび次の窒化物半導体レーザバーの導入
ターゲットとしてAlを用いた場合、後面側の共振器端面14に形成するAl23からなる端面保護強化膜35は、60Å程度と薄いため、後面側の共振器端面14の反射率にはほとんど寄与しない。この端面保護強化膜35は、共振器端面14に前面側の低反射膜34と同じ膜を形成することで共振器端面14の耐久性を確保しようとするものである。端面保護強化膜35は、膜厚は異なるが、前処理、成膜条件等は低反射膜34と同じである。なお、一般的に高反射膜36付近の光密度は低反射膜34に比べ低いため、後面側の共振器端面14の方が、前面側の共振器端面13に比べて発熱が少なく、破壊しにくい。このため、第1の実施形態においては、低反射膜34と同じ条件で後面側の共振器端面14に接する第1層である端面保護強化膜35を形成するとしたが、端面保護強化膜35は低反射膜34と、異なる条件、異なる材料(TiO2、SiO2、Y25、Nb25、Ta25、ZrO2など)で形成しても構わない。端面保護強化膜35を形成した後、続いてその上に、たとえばSiO2/TiO2/SiO2/…/TiO2/SiO2の9層からなる95%程度の反射率を有する高反射膜36を形成する。
<チップ分割、マウント>
前後面の共振器端面13、14の端面コートが終わった窒化物半導体レーザバー10は、スクライブ、ブレーク装置により、チップ状態の窒化物半導体レーザ素子(不図示)に分割される。その後、分割された窒化物半導体レーザ素子はAlN、SiCなどのサブマウントに上にマウントされ、サブマウントごとステムにマウントされる。その後、ステムのピンとワイヤーボンドされ、大気封止でキャップされる。
<COD測定>
上記のように製作された、プラズマ処理による前処理を窒素ガスで行った窒化物半導体素子と、比較のためにプラズマ処理による前処理を従来条件のArガスで行った窒化物半導体素子の、初期状態と200時間のエージング後のCODレベルを測定した。エージング条件は、雰囲気温度70℃、出力60mW、APC駆動であり、CODの測定条件は50ns、duty50%、室温、pulse測定である。その結果を図5および表2に示す。図5は、横軸をエージング時間、縦軸をCODレベルとしてプロットしたものである。
Figure 0004860210
この結果、窒素ガスで前処理を行った場合のほうが、Arガスで前処理を行った場合に比べ、3倍近く高いCODレベルが実現できることが分かる。
なお、窒素ガスによるプラズマ処理の出力は、300Wから800Wが好ましい。200W以下では窒化物半導体レーザバーの表面に窒素が再付着できず、800W以上では窒化物半導体レーザ素子が窒素イオンなどによって損傷するためである。また、窒素ガスによる前処理の処理時間は30秒以上、20分以内が好ましい。30秒以下では窒化物半導体レーザバーの表面に窒素が再付着できず、20分以上では窒化物半導体レーザバーが窒素イオンなどによって損傷するためである。
<窒素量測定>
これらの2個の試料を、共振器端面から内部に向かってエッチングしながらAES(Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光分析)測定し、端面の相対窒素量を測定した。その結果を図6に示す。図6は、横軸(X軸)を共振器端面の表面からの深さ、縦軸(Y軸)をGaに対する窒素の割合(原子数比)としてプロットしたものである。図6のX=0の部分がGaNからなる共振器端面と低反射膜との界面であり、たとえばX=2nmの部分は共振器端面と低反射膜の界面から2nm内部を表し、ここにおけるGaに対する窒素の割合を示している。
<端面の相対窒素量の算出>
図6の「Arガス」と図4の「前処理あり」とは同じ試料であるため、同じグラフである。このため、Arガスで前処理を行った試料の端面の相対窒素量は先述したとおり、73%となる。また、窒素ガスで前処理を行った試料の端面の相対窒素量は、先述の算出方法に基づき、次のようにして算出できる。端面の表面のGaに対する窒素の割合(d)は1.222、表面からの深さ2〜4.5nmの範囲のGaに対する窒素の割合の平均(e)は1.062であることから、f=d/e=1.222/1.062≒1.150である。ここで、何も前処理を行っていない、図4の「前処理なし」を基準とし、端面の相対窒素量(g)は、g=f/c=1.150/1.172≒0.98=98%となる。
このように、端面の相対窒素量は、Arガスによる前処理を行った試料では73%と前処理を行う前と比べて減少しており、さらに窒素ガスで前処理を行った試料では98%と前処理を行う前とほぼ同じ値となった。よって、プラズマ処理による前処理を、窒素ガスを用いて行うことにより、窒化物半導体レーザ素子表面の窒素の量を減らすことなく、クリーニングすることができる。また、前処理によるクリーニング後に、共振器端面において高い相対窒素量を維持することで、高い初期CODレベルと、エージングによるCODの低下率の低減を実現できることが分かった。
また、水分除去、コート膜の膜質向上を目的として、バー、およびチップなどを加熱して、前処理もしくはコート膜の成膜等を行ったときにも窒素の減少が見られ、この場合においても、半導体表面(端面)の相対窒素量とCODレベルの強い相関がみられ、上述した結果と同様な結果が得られた。
なお、第1の実施形態では、劈開によって形成した窒化物半導体レーザ素子の端面に関して詳細に記述したが、RIE(Reactive Ion Etching;反応性イオンエッチング)法、ICP(Inductive Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)法などの気相エッチング、KOH(水酸化カリウム)などの溶液によるウエットエッチングによって形成された端面(エッチドミラー)においても、エッチングの際の窒素抜けが確認されており、本発明はなんら問題なく適用できる。
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、窒化物半導体レーザ素子に対するプラズマ処理による前処理にArガスと窒素ガスの混合ガスを用いる点が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
前処理において用いるガスの、Arガスに対する窒素ガスの分圧比を0%から100%の間で変化させて作製した窒化物半導体レーザ素子の端面の相対窒素量を、AESで測定した。その結果を図7に示す。図7は、横軸をArガスに対する窒素ガスの分圧比、縦軸を端面の相対窒素量としてプロットしている。図7から、前処理ガスのArガスに対する窒素ガスの分圧比が増加すると端面の相対窒素量も増加するという相関があることが分かる。つまり、Arガスに対する窒素ガスの分圧比を制御することによって、端面の相対窒素量を制御することができる。
同様に、Arガスに対する窒素ガスの分圧比を0%から100%の間で変化させることによって作製し、端面の相対窒素量を変化させた窒化物半導体レーザ素子について、雰囲気温度70℃、出力60mW、APC駆動で200時間のエージング試験を行った。図8は、横軸に端面の相対窒素量、縦軸にエージング後のCODレベルをプロットしたものである。図8から、端面の相対窒素量が増加するとエージング後のCODレベルも増加するという相関があることが分かる。したがって、高いCODレベルと低い劣化率を実現するためには、クリーニング後に高い端面の相対窒素量を維持することが必要である。また、端面の相対窒素量が80%を下回ると、エージング後CODレベルが大幅に低下することが分かる。このため、端面の相対窒素量は80%以上であることが好ましい。
なお、第2の実施形態において、前処理に用いる混合ガスにArガスを用いているが、Arガスに替えて、そのほかの希ガス(He、Ne、Kr、Xe)を用いても、同様の結果が得られた。なお、本明細書において希ガスとは(He、Ne、Ar、Kr、Xe)をさすものとする。
《第3の実施形態》
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、窒化物半導体レーザ素子に対するプラズマ処理による前処理を、処理室に接続されたクリーニング専用のクリーニング室において行う点が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態において、低反射膜34、端面保護強化膜35および高反射膜36の形成が行われる処理室には、処理室よりも高真空状態に保持可能なクリーニング室が接続されており、ホルダーに固定された窒化物半導体レーザバーは、クリーニング室から処理室に、クリーニング室または処理室を開けることなく搬送可能である。このクリーニング室には、RFプラズマ源が装備されており、このRFプラズマ装置を用いて、窒素ガス、またはアルゴンガスと窒素の混合ガスを用いて、レーザバーの端面をプラズマ処理により前処理する。前処理が完了した後に、Taからなるターゲットの配置された処理室に高真空状態のまま搬送し、Ta25膜を50nmの膜厚で成膜したところ、第3の実施形態においても、初期CODレベルおよびエージングによるCODレベルの低下について、第1、第2の実施形態と同様の結果が得られた。これにより、炉内酸化をする必要がなくなるため、工程の簡略化が実現できる。
《第4の実施形態》
次に本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、プラズマ処理による前処理を2段階で行う点が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
第4の実施形態において、前処理は、まず第1段階としてArガスによりプラズマ処理を行い、その後第2段階として窒素ガスによるプラズマ処理を行う。このときの条件を表3に示す。
Figure 0004860210
第4の実施形態によると、第1段階のArガスを用いたプラズマ処理によって窒化物半導体レーザバー10の共振器端面13、14から自然酸化膜を除去すると、共振器端面13、14から窒素が離脱する。しかし、第2段階の窒素ガスを用いたプラズマ処理によって、窒素を共振器端面13、14に再吸着させることができるため、共振器端面13、14の相対窒素量を維持することができる。上記の条件で二段階処理した試料の共振器端面13、14の表面の相対窒素量は98%であり、前処理を行う前とほぼ同じ値であった。
ここで、第1段階のArガスを用いたプラズマ処理の出力は、200Wから800Wが好ましい。200W以下では自然酸化膜の除去ができず、800W以上では窒化物半導体レーザバーがArイオンなどによって損傷するためである。また、Arガスによる前処理の処理時間は30秒以上、20分以内が好ましい。30秒以下では自然酸化膜の除去ができず、20分以上では窒化物半導体レーザバーがArイオンなどによって損傷するためである。
また、第2段階の窒素ガスを用いたプラズマ処理の出力は、300Wから800Wが好ましい。200W以下では窒化物半導体レーザバーの表面に窒素が再付着できず、800W以上では窒化物半導体レーザバーが窒素イオンなどによって損傷するためである。また、窒素ガスによる前処理の処理時間は30秒以上、20分以内が好ましい。30秒以下では窒化物半導体レーザバーの表面に窒素が再付着できず、20分以上では窒化物半導体レーザバーが窒素イオンなどによって損傷するためである。
また、第1段階のArガスを用いた前処理、第2段階の窒素ガスを用いた前処理とも、処理中の窒化物半導体レーザバーの温度は室温でもよいが、ホルダーの加熱などによって処理中の窒化物半導体レーザバーを室温よりも高い温度に加熱してもよい。このように加熱することにより、前処理の第1段階においては自然酸化膜の除去が効率よく行なわれ、前処理の第2段階においては自然酸化膜の除去および窒素の再付着が促進される。窒化物半導体レーザバーの温度は150℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がさらに好ましい。第4の実施形態においても、初期CODレベルおよびエージングによるCODレベルの低下について、第1、第2の実施形態と同様の結果が得られた。
また、第4の実施形態において、自然酸化膜除去のための前処理の第1段階に、Arガスを用いているが、そのほかの希ガス(He、Ne、Kr、Xe)を用いても、Arガスの場合と同様の結果が得られた。また、前処理の第2段階に窒素ガスを用いているが、窒素ガスと希ガスとの混合ガスを用いてもよい。ただし、この場合混合ガス中の窒素ガスの割合が多いことが好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、窒化物半導体レーザ装置、例えば、単体の半導体レーザ装置、ホログラム素子を備えたホログラムレーザ装置、駆動もしくは信号検出等の処理のためのICチップと一体化してパッケージされたオプトエレクトロニクスIC装置、導波路あるいは微小光学素子と一体化してパッケージされた複合光学装置などに応用可能である。また、本発明は、これらの装置を備えた光記録システム、光ディスクシステムや、紫外から緑色領域の光源システムなどに応用可能である。
本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザバーの共振器長に平行な方向から見た断面図 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体レーザバーの共振器長に垂直な方向から見た側面図 前処理を行った素子と前処理を行っていないの素子のCODレベルのエージングによる変化を示したグラフ 前処理を行った素子と前処理を行っていないの素子の、Gaに対する窒素の割合の、端面から内部への深さ方向のプロファイル 前処理を窒素ガスで行った素子とArガスで行った素子のCODレベルのエージングによる変化を示したグラフ 前処理を窒素ガスで行った素子とArガスで行った素子の、Gaに対する窒素の割合の、端面から内部への深さ方向のプロファイル Arガスと窒素ガスの分圧比に対する端面の相対窒素量のグラフ 端面の相対窒素量に対するエージング後のCODレベルのグラフ
符号の説明
10 窒化物半導体レーザバー
11 n型GaN基板
12 ストライプ状のリッジ
13 共振器端面(前面)
14 共振器端面(後面)
21 n−AlGaInNバッファ層
22 n−AlGaInNクラッド層
23 n−AlGaInNガイド層
24 AlGaInN多重量子井戸活性層
25 p−AlGaInNガイド層
26 p−AlGaInNクラッド層
27 p−AlGaInNコンタクト層
31 絶縁膜
32 p電極
33 n電極
34 端面コート膜(低反射膜)
35 端面強化保護膜
36 端面コート膜(高反射膜)

Claims (13)

  1. 基板上に窒化物半導体層を形成した後、前記窒化物半導体層を形成した前記基板を劈開して互いに平行な2個の共振器端面を形成する、前記基板と前記窒化物半導体層とを備える窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、
    前記共振器端面を、窒素ガスまたは希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いたプラズマに曝露することで前記共振器端面の組成変化を促すプラズマ処理を行う時に、金属からなるターゲット表面に酸化物が炉内酸化により強制的に形成された状態であり、
    前記プラズマ処理を行うことにより、前記プラズマ処理前の前記共振器端面の表面におけるGaに対する窒素の割合をa、前記共振器端面の表面よりも内部におけるGaに対する窒素の割合の平均をb、前記プラズマ処理後の前記共振器端面の表面におけるGaに対する窒素の割合をd、前記共振器端面の表面よりも内部におけるGaに対する窒素の割合の平均をeとしたときに、g=(b・d)/(a・e)で表される値gが、0.8≦gとすることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  2. 前記プラズマ処理を行う前に、希ガスを用いたプラズマによって前記共振器端面をエッチングする予備プラズマ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  3. 前記プラズマ処理の後、前記共振器端面に前記共振器端面の光学的損傷を防ぐ端面コート膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  4. 前記端面コート膜が、Al、Ti、Si、Y、Nb、TaまたはZrの酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 前記端面コート膜がAlまたはSiの窒化物であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 前記2個の共振器端面の両方に前記端面コート膜を備え、前記2個の端面コート膜が同一の材料からなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  7. 前記端面コート膜が電子サイクロトロン共鳴スパッタ法または高周波スパッタ法で作製されることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  8. 前記プラズマ処理をする際の前記基板の温度が150℃以上500℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  9. 前記プラズマ処理をする際の前記基板の温度が200℃以上400℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  10. 前記予備プラズマ処理をする際の前記基板の温度が150℃以上500℃以下であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  11. 前記予備プラズマ処理をする際の前記基板の温度が200℃以上400℃以下であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法により製造した窒化物半導体レーザ素子。
  13. 基板上に窒化物半導体層を形成した後、前記窒化物半導体層を形成した前記基板を劈開
    して互いに平行な2個の共振器端面を形成する、前記基板と前記窒化物半導体層とを備える窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、
    前記共振器端面の光学的損傷を防ぐ端面コート膜を前記共振器端面に形成する前に、前記共振器端面を、窒素ガスまたは希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いたプラズマに曝露するプラズマ処理を行う時に、金属からなるターゲット表面に酸化物が炉内酸化により強制的に形成された状態であることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
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