JP2009231696A - 窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体レーザ素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】窒化物半導体レーザ素子の高光出力時の長期安定動作を実現させる。
【解決手段】窒化物半導体レーザ素子では、基板10上に窒化物半導体の多層膜100が設けられている。窒化物半導体の多層膜100は、発光層を含み、互いに略平行な2つのへき開面を有している。へき開面はどちらもレーザ共振器の端面であり、レーザ共振器の端面にはその端面に接するように保護膜70がそれぞれ設けられている。そして、レーザ共振器の少なくとも一方の端面と保護膜70との界面におけるシリコン密度が5×1019atoms/cm3以下である。
【選択図】図4

Description

本発明は、窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体レーザ素子の製造方法に関するものである。
近年、各種半導体レーザ素子の高出力化が強く要望されるようになり、その耐光技術が各種半導体レーザ素子の性能を保証する重要なキーファクターとなっている。
例えば、窒化ガリウム(GaN)をはじめとするIII−V族窒化物半導体材料(AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1, 0≦y≦1))を用いて製造される青紫色半導体レーザは、光ディスク装置による超高密度記録を実現させるためのキーデバイスであり、現在、実用レベルに達しつつある。青紫色半導体レーザの高出力化は、光ディスクの高速書き込みを可能にするのみならず、レーザディスプレーへの応用などの新たな技術分野の開拓に必須の技術である。
近年、砒化ガリウム(GaAs)系材料で構成される赤外及び赤色半導体レーザ素子においては、レーザ共振器の端面付近で不純物を選択的に活性層に拡散させることで、活性層の禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)をレーザ共振器の端面付近のみで拡大してその端面での光の吸収および発熱を低減させるという端面窓構造が採用されており、赤外及び赤色半導体レーザ素子の高出力ならびに高信頼化が実現されている。
一方、GaN系材料では、不純物拡散により前記端面窓構造を形成することが容易ではないので、レーザ共振器の端面に形成する誘電体からなる端面保護膜(コート膜)の材料が重要になる。
GaN系レーザ素子の端面保護膜に関しては、窒化シリコン(SiN)膜を採用することで、GaNと保護膜の材料との熱膨張係数の差を小さくしてレーザ共振器の端面への保護膜の密着性を向上させる試みが、例えば、特許文献1等に開示されている。
また、保護膜をレーザ共振器の端面に形成する前にレーザ共振器の端面を希ガスと窒素ガスとの混合ガスでプラズマ処理することで、レーザ共振器の端面に形成された自然酸化膜の除去およびプラズマダメージの緩和(窒素補償)を図る試みが、例えば、特許文献2等に開示されている。
さらに、保護膜を2層で構成し、具体的には、レーザ共振器の端面に接するように単結晶膜を形成し、その単結晶膜上にアモルファス膜を形成することで、半導体層と保護膜との界面反応を抑制し且つレーザ共振器の端面への保護膜の密着性を向上させる試みが、例えば、特許文献3等に開示されている。
さらには、保護膜を酸窒化アルミニウム(AlON)膜とすることで、保護膜をアモルファス膜とする場合に比べて保護膜の結晶性を向上させ、且つ、酸素が保護膜中を透過することを抑制させる試みが、例えば、特許文献4等に開示されている。
特開2007−109737号公報 特開2007−59732号公報 特開2007−59897号公報 特開2007−273951号公報
GaN系レーザ素子を高出力で安定して動作させるためには、レーザ共振器の端面における非発光再結合による光の吸収を低減させ、且つ、高光出力に耐えうる安定な端面保護膜を形成する必要がある。
我々が鋭意検討を重ねた結果、レーザ共振器の端面と保護膜との界面に形成されるシリコン(Si)の凝集(パイルアップ)がGaN系レーザ素子の高出力且つ安定な動作に大きな影響を与えており、このSi量を少なく抑えることがGaN系レーザ素子の高信頼性を実現させるために非常に重要であることを見いだした。また、上記Siのパイルアップは、従来のGaAs系赤外及び赤色半導体レーザ素子では顕著ではなかったが、GaN系レーザ素子では顕著に出現することもわかった。この詳細な機構は不明であるが、GaN系レーザ素子のレーザ共振器の端面では、窒素原子(N)が欠落して空孔のような点欠陥が形成されており、この点欠陥にSiが結合しやすいためにSiパイルアップが顕著になるという可能性が推測される。
次に、上記Siパイルアップが生じた場合のGaN系レーザ素子の信頼性について詳述する。
レーザ共振器の端面と保護膜との界面にSiパイルアップが生じると、Si自身がアモルファス的であるためレーザ光(波長405nm帯)を吸収する。また、Siは、保護膜の形成時に残留する酸素と容易に結合して酸素が欠損した酸化シリコン(SiO)(0<x<2)を形成する可能性があり、酸素が欠損した酸化シリコンもレーザ光を吸収する。レーザ共振器の端面と保護膜との界面にレーザ光を吸収する媒体が形成されれば、GaN系レーザ素子を高光出力で動作させた場合にその界面では光吸収に起因して局所的に発熱が起こる。このため、GaN系レーザ素子の動作を継続させると、レーザ共振器の端面の劣化が徐々に進行し、光学的突然破壊(COD;Catastrophic Optical Damage)のレベルが低下し、その結果、CODのレベルがGaN系レーザ素子を動作させるために必要な光出力レベルに到達した時点でレーザ共振器の端面においてCODが発生し、駆動電流の急増に伴ってGaN系レーザ素子が頓死に到ることになる。
そのため、上記特許文献1に記載されている従来技術のSiN保護膜では、レーザ共振器の端面にSiが接することになるので、その端面と保護膜との界面において上記Siパイルアップが顕著になることが推測され、GaN系レーザ素子の高出力化に対する信頼性に危惧がある。
また、上記特許文献2に記載されている従来技術では、保護膜を形成する前にレーザ共振器の端面を清浄化させることによりGaN系レーザ素子の高信頼化を目指している。しかしながら、上記特許文献2は上記Siパイルアップに言及しておらず、清浄化工程もしくはその前後の工程において、Siパイルアップを抑制する手立てをしないと、GaN系レーザ素子の高出力化に伴いその信頼性が低下する虞がある。
さらに、上記特許文献3及び4に記載されている従来技術では、レーザ共振器の端面に接する保護膜を単結晶膜及びAlON膜としてレーザ光に対する耐光性を強化することを目指しているが、上記特許文献3及び4は上記Siパイルアップに言及していない。よって、上記特許文献3及び4に記載されている従来技術では、上記特許文献2で触れた理由と同じ理由からGaN系レーザ素子の高出力化に対する信頼性が危惧される。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高出力動作での長期信頼性を保証し、高歩留まりで製造されうる窒化物半導体レーザ素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明の窒化物半導体レーザ素子では、基板上に窒化物半導体の多層膜が設けられている。窒化物半導体の多層膜は、発光層を含み、互いに略平行な2つのへき開面を有している。へき開面はどちらもレーザ共振器の端面であり、レーザ共振器の端面にはその端面に接するように保護膜がそれぞれ設けられている。そして、レーザ共振器の少なくとも一方の端面と保護膜との界面におけるシリコン密度が5×1019atoms/cm3以下である。
このように、本発明の窒化物半導体レーザ素子では、レーザ共振器の端面と保護膜との界面におけるシリコンの密度が従来に比べて小さい。よって、その界面における光の吸収を抑制することができるので、界面の劣化を防止でき、その結果、CODレベルの低下を抑制することができる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子では、二次イオン質量分析法において界面付近に得られたシリコン密度のピークの面積を算出した場合には、界面における単位面積当たりのシリコン密度が7×1013atoms/cm以下であることが好ましい。これにより、レーザ共振器の端面と保護膜との界面における光の吸収をさらに抑制できるので、CODレベルの低下をさらに抑制することができる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子では、保護膜は、少なくともアルミニウムを含んでいることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム膜または酸窒化アルミニウム膜である。これにより、窒化物半導体レーザ素子の製造中(例えばプラズマクリーニング中)にレーザ共振器の端面にSiが付着することを抑制することができる。
このような窒化物半導体レーザ素子は、以下に示す方法を用いて製造されることが好ましい。具体的には、基板上に、発光層を含む窒化物半導体の多層膜を形成する工程(a)と、窒化物半導体の多層膜の上面上および基板の下面上のうちの少なくとも一方にシートを固定した後、窒化物半導体の多層膜および基板をへき開してレーザ共振器の端面を形成する工程(b)と、レーザ共振器の端面をそれぞれ洗浄する工程(c)と、工程(c)の後、レーザ共振器の端面上に保護膜をそれぞれ形成する工程(d)とを備えている。ここで、工程(b)では、シリコンを含んでいないシートを前記シートとして用い、工程(c)では、レーザ共振器の少なくとも一方の端面におけるシリコン密度が5×1019atoms/cm3以下となるようにその端面を洗浄する。
この方法に従って窒化物半導体レーザ素子を製造すると、シート中のシリコンがレーザ共振器の端面に付着することを抑制できる。
上記窒化物半導体レーザ素子の製造方法では、工程(c)では、ヘキサンを用いてレーザ共振器の端面を洗浄してもよく、または、紫外線およびオゾンを用いてレーザ共振器の端面を洗浄してもよい。この洗浄により、レーザ共振器の端面に付着しているシリコンをその端面から除去することができる。
また、上記窒化物半導体レーザ素子の製造方法では、工程(a)では、シリコンの密度が3×1017atoms/cm3以下である窒化物半導体基板を基板として用いても良い。これにより、基板からレーザ共振器の端面に付着するシリコンの量を減少させることができる。
本発明によれば、高出力動作時の長期信頼性が大幅に改善され、歩留まり良く窒化物半導体レーザ素子を製造することが可能になる。
本願発明者らは、窒化物半導体レーザ素子において特に高出力動作の長期信頼性を保証する量産レベルでの検討を突き詰めた結果、レーザ共振器の端面とその端面に接する誘電体保護膜との界面におけるSiパイルアップ量を制限することで窒化物半導体レーザ素子の長期信頼性を保証できることを見出し、本発明を想到するに到った。
以下、本発明による窒化物半導体レーザ素子の製造方法を説明する。
まず、本発明では、窒化物半導体基板(基板)の表面(Ga面)上に、エピタキシャル成長技術を用いた公知の半導体成長法により、半導体積層構造(窒化物半導体の多層膜)を形成する。半導体積層構造は、p型領域およびn型領域を含む。また、半導体積層構造は、ダブルヘテロ構造と、光および電流を一定空間内に閉じこめるための構造とを含むことになる。
窒化物半導体基板の表面に半導体積層構造中のp型領域に電気的に接続するp側電極を形成した後、窒化物半導体基板の裏面にn側電極を形成する。
好ましい実施形態において、p側電極は、半導体積層構造中のp型領域に接する箇所を有するコンタクト電極、および、コンタクト電極に電流を供給するための配線電極で構成されている。尚、半導体積層構造の上面上には絶縁膜が配置されており、絶縁膜には開口が形成されており、上記コンタクト電極は絶縁膜の開口においてp型領域と接している。このように、本発明による窒化物半導体レーザ素子では、p側電極のコンタクト電極が反動体積層構造中のp型領域と部分的に接しているので、電流が絶縁膜で狭窄された状態で半導体積層構造に注入され、その結果、電流密度が増加する。よって、本発明による窒化物半導体レーザ素子は、レーザ光を発振させやすいように構成されている。
また、レーザ光を発振させるためには光を増幅させるレーザ共振器が必要であるが、例えば、窒化物半導体基板を含む半導体積層構造をへき開させることにより互いに略平行なレーザ共振器の端面を形成することができる。
好ましい実施形態において、レーザ共振器の端面は誘電体からなる保護膜で覆われているので、レーザ共振器の端面が外気に暴露されることを防止でき、且つ、その端面での反射率を任意に調整できる。
本願発明者らの実験によれば、上記の構成において、レーザ共振器の端面と保護膜との界面に形成されるSiパイルアップ量を制限することで、レーザ共振器の端面におけるレーザ光の吸収に起因するその端面の劣化を抑制できることが分かっている。例えば、レーザ共振器の端面と保護膜との界面におけるSi密度が5×1019atoms/cm3以下であることが好ましいことが分かっている。さらには、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析してレーザ共振器の端面と保護膜との界面付近に得られたシリコン密度のピークの面積を算出した場合には、その界面における単位面積当たりのシリコン密度が7×1013atoms/cm以下であることが好ましいことが分かっている。また、保護膜が少なくともAlを含むこと、具体的にはAlO膜またはAlON膜で構成されることが好ましいことが分かっている。
上記構成を有する窒化物半導体レーザ素子では、高出力動作を長期保証でき、歩留まりが大幅に改善され低コストでの量産が可能となる。
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明による窒化物半導体レーザ素子およびその製造方法の第1の形態を説明する。
まず、図1を参照する。図1は、本実施形態の窒化物半導体レーザ素子の断面を模式的に示している。図1に示されている窒化物半導体レーザ素子の断面はレーザ共振器の端面に平行な面であり、共振器長方向はこの断面に直交している。
本実施形態の窒化物半導体レーザ素子は、n型不純物(Si)が約1×1018atoms/cm3程度にドープされたn型GaN基板(厚さが80μm)10と、n型GaN基板10の表面(Ga面)に設けられた半導体積層構造100とを備えている。
半導体積層構造100は、n型AlGaNクラッド層12、n型GaN光ガイド層14、InGaN多重量子井戸層16、InGaN中間層18、p型AlGaNキャップ層20、p型AlGaNクラッド層24及びp型GaNコンタクト層26を含んでいる。
本実施形態における半導体積層構造100を構成する各窒化物半導体層中の不純物および不純物濃度(ドーパント濃度)ならびに各窒化物半導体層の厚さは、以下の表1に示すとおりである。
Figure 2009231696
なお、表1に示す不純物の材料、不純物濃度および各窒化物半導体層の厚さは、一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。また、InGaN中間層18は、In組成の相異なる多重層であってもよく、この場合、好ましくはInGaN多重量子井戸層16の活性層に近い方がIn組成が大きくなるように配置されている。
半導体積層構造100のうち、p型GaNコンタクト層26及びp型AlGaNクラッド層24は、共振器長方向に沿って延びるリッジストライプ形状に加工されている。リッジストライプ部の幅は例えば1.4μm程度であり、レーザ共振器の長さは例えば800μmである。チップ幅(図2において、各窒化物半導体層に平行な方向の素子サイズ)は、例えば150μmである。
半導体積層構造100の上面のうちリッジストライプの上面を除く部分は、絶縁膜30に被覆されており、絶縁膜30には、リッジストライプの上面を露出させるストライプ状の開口部が形成されている。p型GaNコンタクト層26の表面は絶縁膜30の開口部においてp側コンタクト電極(Pd/Pt)32に接触しており、p側コンタクト電極32の上面を覆うようにp側配線電極(Ti/Pt/Au)34が配置されている。
n型GaN基板10の裏面は、n側電極(Ti/Pt/Au)36に接している。
以下、本実施形態に係る窒化物半導体レーザ素子の好ましい製造方法を説明する。
まず、公知の方法で作製されたn型GaN基板10を用意する。n型GaN基板10の厚さは、例えば約300μm程度である。n型GaN基板10の表面は、研磨加工により平坦化されている。
次に、n型GaN基板10の表面に、半導体積層構造100を形成する(工程(a))。半導体積層構造100の形成は、公知のエピタキシャル成長技術を用いて行うことができる。例えば、以下のようにして各窒化物半導体層を成長させる。
まず、n型GaN基板10を有機金属気相成長(MOVPE;Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)装置のチャンバ内に挿入する。この後、n型GaN基板10の表面に対して500〜1100℃程度の熱処理(サーマルクリーニング)を行う。この熱処理は、例えば800℃で1分以上、望ましくは5分以上行う。この熱処理を行っている間、窒素原子(N)を含むガス(N、NH、ヒドラジンなど)をチャンバ内に流すことが好ましい。
その後、反応炉を約1000℃に温度制御して、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG;trimethylgallium)、アンモニアガス(NH)およびトリメチルアルミニウム(TMA;trimethylaluminum)を反応炉に供給し、キャリアガスである水素ガスと窒素ガスとを同時に反応炉に供給するとともに、n型ドーパントとしてシランガス(SiH)を反応炉に供給する。これにより、厚さが約1.5μmでSi不純物濃度が約5×1017atoms/cm3のAl0.04Ga0.96Nからなるn型AlGaNクラッド層12を成長させる。その後、厚さが約160nmでSi不純物濃度が約5×1017atoms/cm3のGaNからなるn型GaN光ガイド層14を成長させた後、温度を約800℃まで降温して、キャリアガスを水素ガスから窒素ガスに変更して、トリメチルインジウム(TMI;trimethylindium)とTMGとを反応炉に供給して、膜厚が約7nmのIn0.1Ga0.9Nからなる量子井戸(2層)および膜厚が約13nmのIn0.02Ga0.98Nバリア層(1層)からなるInGaN多重量子井戸層16を成長させる。その後、In0.01Ga0.99NからなるInGaN中間層18を成長させる。このInGaN中間層18はその上に形成するp型の窒化物半導体層(p型AlGaNキャップ層20)からInGaN多重量子井戸層16へのp型ドーパント(Mg)拡散を大幅に抑制し、これにより、結晶成長が終了してからでもInGaN多重量子井戸層16を高品質に維持することができる。
次に、再び反応炉内の温度を約1000℃にまで昇温させ、キャリアガスに水素ガスも導入して、p型ドーパントであるビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)ガスを反応炉に供給しながら、膜厚約20nmでMg不純物濃度が約1×1019atoms/cm3のAl0.20Ga0.80Nからなるp型AlGaNキャップ層20を成長させる。
次に、厚さが約0.5μmでMg不純物濃度が約1×1019atoms/cm3のAl0.05Ga0.95Nからなるp型AlGaNクラッド層24を成長させる。最後に、厚さが約0.1μmでMg不純物濃度が約1×1020atoms/cm3のp型GaNコンタクト層26を成長させる。
次に、半導体積層構造100の上面にp側電極を形成する。まず、半導体積層構造100の上面にプラズマCVD(chemical vapor deposition)装置などで絶縁膜を堆積させる。この絶縁膜はドライエッチングのマスクになるため、絶縁膜の材料としてSiOなどの耐ドライエッチング性の高い材料を選択することが好ましい。その後、フォトリソグラフィー技術とフッ酸処理とで上記絶縁膜を幅1.4μmのストライプ状に加工する。続いて、このストライプ状の絶縁膜をマスクとして、ドライエッチング装置でp型窒化物半導体層(具体的には、p型GaNコンタクト層26およびp型AlGaNクラッド層24の一部)をリッジ状に加工し、フッ酸処理で上記絶縁膜を除去する。
次に、リッジが形成された半導体積層構造100の上面上に絶縁膜30を堆積させ、フォトリソグラフィー技術とフッ酸処理とでリッジ上に形成された絶縁膜30のみを除去する。この際、上記絶縁膜30として、ドライエッチングされたp型AlGaNクラッド層24の表面に接する絶縁膜を絶縁性の高いSiO膜とし、そのSiO膜の上に形成する絶縁膜をレーザ光に対して光吸収作用を有する二酸化チタン(TiO)膜および窒化チタン(TiN)膜などの複数層で構成しても良い。絶縁膜30をこのような複数層で構成することで、電気的絶縁による無効電流の抑制の低閾値化と、遠視野像(FFP)特に基板表面に水平方向の形状を顕著に改善することができる。
この後、リッジの長手方向に対して平行となるように、且つ、リッジ上面上、リッジ側面上およびリッジ底面周辺に付着するように、フォトリソグラフィー技術とレジストのリフトオフ技術とでPdおよびPtを順に蒸着させる。これにより、p側コンタクト電極が形成される。続いて、p側コンタクト電極32および絶縁膜30の表面を覆うようにTi、PtおよびAuの順で蒸着させ、p側配線電極(Ti/Pt/Au)34を形成する。
最後に、電流供給のためのAuワイヤーをボールボンダー装置などでp側配線電極34上に接続させる。尚、Auワイヤーの接続位置をリッジ底面周辺に形成された絶縁膜上とすることで、ボールボンダー装置でのAuワイヤーの接続時にダメージが電流供給通路となるリッジ上部に直接導入されることがなく、活性層へのダメージも少なく信頼性に優れた窒化物半導体レーザ素子を製造することが可能となる。
続いて、n側電極36を形成した後、窒化物半導体レーザ素子をへき開(一次へき開)させる。まず、n型GaN基板10の裏面を研磨し、n型GaN基板10の厚さが約80μm程度となるようにn型GaN基板10を薄膜化させる。次に、ウエットエッチングおよびドライエッチングなどでn型GaN基板10の研磨面をクリーニングした後、Ti/Pt/Auをn型GaN基板10の裏面上に順に連続して堆積させ、n側電極36を形成する。これにより、窒化物半導体レーザ素子を形成することができる。その後、n側電極36の最表層のAu膜のみをウエットエッチングで選択的に除去する。このようにAu膜を選択的に除去する理由は、続工程のへき開による窒化物半導体レーザ素子の分割工程においてAuの堆積箇所をへき開させると、Auは粘性が高いので良好なへき開面を得にくいからである。一方、Auが選択的に除去された領域を一次へき開および二次へき開させると、良好なへき開面を得ることができ、よって、へき開の歩留まりを改善することができる。
n側電極36からAu膜を部分的に除去した後、スクライブ装置およびブレーキング装置を用いて、n型GaN基板10のM面に沿って窒化物半導体レーザ素子を一次へき開させ、レーザ共振器の端面を形成する。窒化物半導体レーザ素子を一次へき開させる際には、粘着シート上に窒化物半導体レーザ素子を固定し且つ半導体積層構造100の上面に保護シートを配置して、窒化物半導体レーザ素子を保護してへき開時に窒化物半導体レーザ素子が飛散することを防止する。従って、レーザ共振器の端面は、へき開により露出された時点で、粘着シート及び保護シートで挟まれた雰囲気中にさらされる。あるいは、へき開されてバー状態に分割された窒化物半導体レーザ素子を取り出す際に、レーザ共振器の端面が粘着シートまたは保護シートに触れる可能性もある。このような状態では、粘着シートまたは保護シートに含まれる成分がレーザ共振器の端面に付着することも起こりうる。後述するが、保護シートまたは粘着シートに含まれる成分中特にSi含有のシロキサン系の物質がレーザ共振器の端面に付着すると、窒化物半導体レーザ素子の信頼性に大きな影響を与えてしまう。このため、本実施形態では、Siを含有しないノンシリコン系シートを用いて一次へき開を実施している(工程(b))。
一次へき開を行った後は、誘電体からなる保護膜をレーザ共振器の端面に形成する端面コート工程へ移行する。しかし、一次へき開工程と端面コート工程との間においても、へき開により形成されたレーザ共振器の端面は大気中に暴露される。さらには、一次へき開の後にレーザバー(バー状の窒化物半導体レーザ素子)が大気中に放置される虞もあり、レーザ共振器の端面が大気中に暴露される期間を制御することは非常に困難である。大気中にはシロキサン系物質が多数存在することが知られており、大気中においてレーザ共振器の端面にシロキサン系物質が付着することを回避することは困難である。対策として、真空中で一次へき開を行った後、レーザ共振器の端面に保護膜を形成する際に用いる電子サイクロトロン共鳴(ECR;electron cyclotron resonance )スパッタリング装置などへレーザバーを真空搬送する手だてが考えられるが、装置が大掛かりとなり、製造工程の煩雑化および窒化物半導体レーザ素子の高コスト化を招来するため、窒化物半導体レーザ素子の量産には不向きである。
そこで、本実施形態では、一次へき開後のレーザバーをECR装置内に搬入する直前に、レーザ共振器の端面に付着したシロキサン系物質を除去する工程(工程(c))を導入している。具体的には、本実施形態では、有機液体であるヘキサンでレーザバーを洗浄する。ヘキサンは、シロキサン系物質を効果的に除去することが知られている。従って、大気中に長時間放置されたレーザバーに対しても同様の洗浄を行えばレーザ共振器の端面に付着したシロキサン系物質を簡便に除去することができ、この洗浄をECR装置への搬入直前に行うことでシロキサン系物質の除去作用を効果的に得ることができる。また、ヘキサンは高い揮発性を有しているので、洗浄後のレーザバーを容易に自然乾燥させることができる。
ヘキサンでレーザ共振器の端面を洗浄した後には、その端面に端面保護膜を形成する(工程(d))。この工程では、一次へき開され且つヘキサンで洗浄されたレーザバーをECR装置内に搬入し、真空排気した後にレーザ共振器の端面に誘電体からなる端面保護膜を堆積させる。
図2に、ECR装置の断面図を示す。このECR装置は、ECRプラズマを発生させるプラズマ室40と、成膜室50と、プラズマ室40と成膜室50との間に設置されたターゲット52と、プラズマ室40の周囲に設けられ磁場を形成するための磁気コイル60とを備えている。また、ターゲット52はRF(radio frequency )電源に接続されており、スパッタ量を制御することができる。本実施形態では、ターゲット材料として高純度なAl、Siおよびジルコニウム(Zr)を用いている。プラズマ室40には、導入窓42からマイクロ波が導入され、マイクロ波と磁気コイル60による磁場とによりECRプラズマが生成される。また、成膜室50は、排気口から排気されて真空に減圧される。成膜室50には、ガス導入口からアルゴン(Ar)ガス、酸素(O)ガスおよび窒素(N)ガスが導入される。さらに、成膜室50内の試料台54の上には、レーザ共振器の端面にECRプラズマが照射されるようにバー状態の窒化物半導体レーザ素子が配置される。プラズマ室40の内面は、ECRプラズマからプラズマ室40を保護する目的で、石英からなる部材で覆われている。詳細には、石英からなる部材としてエンドプレート44、インナーチューブ46およびインナーチューブ46の上下に配置された窓プレート48などが、プラズマ室4の内面に配置されている。
ECR装置において、ターゲット52にバイアスを印加しない場合には、ターゲット52のスパッタ量が極小となる。このため、レーザ共振器の端面に保護膜を形成するのではなくその端面にプラズマを照射するのみであれば、プラズマを発生させた状態でターゲット52を無バイアスとすればよい。
保護膜を形成する前にレーザ共振器の端面を清浄化させるためには、Arガスからなるプラズマクリーニング(清浄化処理)を実施する方が好ましい。尚、このプラズマクリーニングは、ArガスのみでなくArガスとNガスとの混合ガスを用いて実施しても良い。
では、レーザ共振器の端面に保護膜を形成する方法を示す。まず、レーザ共振器の端面のうち光出射端面上に保護膜を形成する方法を示す。レーザ共振器の光出射端面に対して上述のプラズマクリーニングを行った後、Alターゲット室にArガスとOガスとを導入してプラズマを発生させ且つターゲット52にバイアスを印加させることにより、出射端面に接する第1保護膜70としてAl膜を堆積させる。出射端面での反射率はAl膜の膜厚で制御することができ、本実施形態においてはレーザ光に対する反射率が例えば18%となるようにAl膜の膜厚を制御する。
次に、レーザ共振器の端面のうち光反射端面上に保護膜(反射膜)を形成する。レーザ共振器の光反射端面に対して上述のプラズマクリーニングを行った後、光反射端面に接する第1保護膜70としてAl膜を堆積させる。引続き、プラズマ室40、成膜室50およびターゲット材料を変更して、SiO膜72および二酸化ジルコニウム(ZrO)膜74の多層膜(7対)で構成される反射膜を形成する。本実施形態においては、SiO膜72とZrO膜74とをこの順で配置し、各膜の厚みはレーザ光に対する反射率が例えば90%以上となるように調整する。
そして、二次へき開を実施することにより、チップ状の窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。二次へき開によりへき開された面から窒化物半導体レーザ素子を見た場合の窒化物半導体レーザ素子の構造図を図3に示す。尚、図3では、簡便のため、半導体積層構造100における積層構造、絶縁膜30、p側電極およびn側電極36を省略している。
その後、実装工程に移行する。まず、半田を介してチップ状の窒化物半導体レーザ素子をAlNなどのサブマウントおよびステムに順に実装させる。次に、電流供給のためのAuワイヤーをp側配線電極34と、n側電極36に電気的に接続されているサブマウントの配線電極とに接続させる。その後、チップ状の窒化物半導体レーザ素子を外気から遮断させるために、高電界プレス機で、レーザ光を取り出すためのガラス窓が設けられたキャップをチップ状の窒化物半導体レーザ素子に融着させる。
上記製造方法により製造された窒化物半導体レーザ素子(以下では「第1のレーザ素子」という)を室温において通電させたところ、閾値電流が30mAで連続発振し、スロープ効率は1.5W/Aであり、発振波長は405nmであった。また、この第1のレーザ素子に対して高温且つ高出力条件(75℃、160mW)で連続(CW;Continuous Wave)駆動によるエージング試験を行ったところ、1000時間以上安定して動作させることが可能であった。一方、一次へき開させた後にレーザバーを大気中に放置する時間を第1のレーザ素子と同一としたがECR装置への搬入直前にヘキサン洗浄を実施することなく製造した窒化物半導体レーザ素子(以下では「第2のレーザ素子」という)も準備し、第2のレーザ素子を第1のレーザ素子の比較の対象とした。第2のレーザ素子も第1のレーザ素子と同じく室温において通電させたところ、CW発振に到り、第2のレーザ素子の特性は第1のレーザ素子の特性とほぼ同じであった。
また、第1のレーザ素子および第2のレーザ素子について、レーザ共振器の端面と保護膜との界面のSi密度(パイルアップ量)を確認するためにSIMSによる分析を実施した。なお、SIMSによる分析を行う際には、窒化物半導体レーザ素子をキャップおよびステムから取り外してSIMSによる分析を行う装置内に設置し、その後、光出射面側を第1保護膜70の表面から分析した。分析結果を図4に示す。
図4に示す分析結果から、第1のレーザ素子および第2のレーザ素子の両方ともにおいて、レーザ共振器の端面と第1保護膜70との界面に顕著なSiパイルアップが確認された。また、Siパイルアップはレーザ共振器の端面と第1保護膜70との界面において最大値を示し、その最大値(ピーク値)は第1のレーザ素子では約5×1019atoms/cmであり第2のレーザ素子では約2×1020atoms/cmであった。この結果から、一次へき開後にレーザ共振器の端面をヘキサンで洗浄することにより、レーザ共振器の端面に付着したシロキサン系物質を効果的に除去できることが分かった。レーザ共振器の端面に付着したシロキサン系物質による光の吸収の度合いを考慮に入れる場合、Si密度の最大値だけでなく体積割合も重要である。SIMSの結果を数値解析することにより、Si密度のピーク面積を算出することが可能である。この解析により、第1のレーザ素子および第2のレーザ素子におけるSi密度のピーク面積を算出すると、それぞれ、7×1013atoms/cmおよび3×1014atoms/cmであった。
このようなSiパイルアップはレーザ光の吸収媒体となるので、CODレベル、特にエッジングによるCODレベルの変化に大きな影響を及ぼす。そこで、第1のレーザ素子および第2のレーザ素子を用いて上記エージング前および上記エージング後(エージング試験前から300時間が経過した時点)でのCODレベルを評価した。評価結果を図5に示す。なお、上記CODレベルはパルス駆動(50%デューティ)による通電でレーザ発振が停止する最大光出力とした。
図5から分かるように、第2のレーザ素子では、CODレベルが450mWから200mW程度に著しく低下していることが確認できた。一方、第1のレーザ素子では、CODレベルは500mWから450mWへ低下した程度であり、初期のCODレベルが高く、且つ、エージング試験中のCODレベルの低下が顕著に改善されたことが明らかになった。つまり、第1のレーザ素子と第2のレーザ素子とでは、レーザ共振器の端面と保護膜との界面におけるSi密度の差がCODレベルの低下の差となって現れていると言え、最大値(ピーク値)で約5×1019atoms/cmでありピーク面積が7×1013atoms/cmとなるようにSi密度を制御すれば、CODレベルの改善に大きく寄与できることが明らかとなった。さらに好ましくは、Si密度の最大値が約3.5×1019atoms/cmでありピーク面積が5×1013atoms/cmである。
なお、本実施形態では、SIMSによるレーザ共振器の反射端面と第1保護膜70との界面におけるSi密度の定量については記載していないが、反射端面と第1保護膜70との界面においても最大値で5×1019atoms/cm3以下でありピーク面積が7×1013atoms/cm以下であればよい。
(実施形態2)
本発明による窒化物半導体レーザ素子の他の形態を説明する。
実施形態2にかかる窒化物半導体レーザ素子(以下では「第3のレーザ素子」という)は、一次へき開後の窒化物半導体レーザ素子をヘキサン溶液を用いた有機洗浄ではなく紫外線(UV;ultra violet)及びオゾンを用いて洗浄する工程を除いて、実施形態1における第1のレーザ素子と同じ方法で製造された窒化物半導体レーザ素子である。この第3のレーザ素子を室温において通電させたところ、CW発振に到り、また、その特性は上記第1のレーザ素子とほぼ同等であった。
また、第3のレーザ素子に対してSIMSによりレーザ共振器の端面と保護膜との界面におけるSi密度を評価したところ、上記第1のレーザ素子とほぼ同程度であることが分かった。従って、UVおよびオゾンを用いてレーザバーを洗浄することで、レーザ共振器の端面に付着したシロキサン系物質を実施形態1のヘキサン洗浄と同程度にまで除去することができると言える。
また、実施形態1と同じく、第3のレーザ素子に対してエージング試験の前後でCODレベルの変化を調べたところ、CODレベルは500mWから430mW程度に低下した。このように、第3のレーザ素子では、CODレベルの低下量は第1のレーザ素子よりは若干大きいものの、第2のレーザ素子よりは顕著なCODの改善を確認できた。このようにCODレベルの低下量が第1のレーザ素子と第3のレーザ素子とで相異なる理由として、第3のレーザ素子では、UVおよびオゾンを用いてレーザ共振器の端面に付着したシロキサン系物質を除去することができるものの、UVおよびオゾンによりその端面が若干酸化されることでエージング試験時における端面の劣化が進行したからであると考えられる。
(実施形態3)
図2を参照しながら、本発明による窒化物半導体レーザ素子の製造装置の他の実施形態を説明する。
実施形態3にかかる窒化物半導体レーザ素子(以下では「第4のレーザ素子」という)は、ECR装置のプラズマ室40の内面のエンドプレート44、インナーチューブ46およびインナーチューブ46の上下に配置された窓プレート48のうち特にエッチング磨耗の大きいエンドプレート44および窓プレート48を石英ではなくアルミナ(Al)で構成して第1保護膜70を形成することを除いて、実施形態1における第2のレーザ素子と同じ方法で製造された窒化物半導体レーザ素子である。つまり、第4のレーザ素子を製造する際には、ヘキサンによるレーザバーの洗浄ならびにUVおよびオゾンによるレーザバーの洗浄を行わない。
実施形態1では、レーザ共振器の端面に保護膜を形成する前にその端面を清浄化させるために、Arガスからなるプラズマクリーニングを実施する。しかし、実施形態1のようにプラズマ室40の内面が石英で製造されている場合、プラズマクリーニング中に石英からなる部材がエッチングにより磨耗され、石英成分のSiおよびOがプラズマ内に混入する傾向がある。この理由としては、プラズマガスのArの質量が比較的大きいために、石英からなる部材がプラズマにさらされてエッチングが進行するからである。石英成分のSiおよびOがプラズマ内に混入すると、プラズマクリーニング中にレーザ共振器の端面上にSiおよびOが付着する。レーザ共振器の端面と第1保護膜70との界面に形成されたSiおよびOのパイルアップはレーザ光を吸収する媒体となるので、レーザ光の吸収に起因する端面での発熱および端面の劣化をエージング試験中に誘発し、CODレベルの低下につながる。
そこで、本実施形態では、エンドプレート44および窓プレート48を石英ではなくアルミナで製造している。石英と比較してアルミナはArプラズマに対する耐性が大きく、スパッタ収量で考えるとエッチング量を1/3程度に低減させることができる。よって、プラズマクリーニング中にプラズマに混入する石英の成分を低減させることができ、レーザ共振器の端面に形成されるSiおよびOのパイルアップを低減させることができる。
このようにして製造された第4のレーザ素子を室温において通電させたところ、CW発振に到り、その特性は第1のレーザ素子とほぼ同じであった。また、第4のレーザ素子に対してSIMSによる分析を用いてレーザ共振器の端面と保護膜との界面のSi密度を評価したところ、そのSi密度を第1のレーザ素子とほぼ同程度にまで低減できることが明らかになった。また、第4のレーザ素子に対して実施形態1と同様にエージング試験の前後でCODレベルの変化を調査したところ、CODレベルの低下量は第1のレーザ素子と同等であり、ECR装置のプラズマ室40のエンドプレート44および窓プレート48を石英ではなくアルミナで製造することの有効性を実証することができた。よって、ECR装置の内面を石英ではなくアルミナで製造すれば、ヘキサンまたは紫外線及びオゾンを用いてレーザバーを洗浄した場合と同じ効果が得られるということが分かった。
なお、本実施形態では、プラズマクリーニングではArガスを用いるのではなくArガスとNガスとの混合ガスを用いた方が効果的である。その理由としては、NはArに比べて軽量であるために、混合ガスを用いた方がエンドプレート44および窓プレート48へのエッチングがさらに抑制され、エッチング量を低減させることができるからである。さらに、ArガスとNガスとの混合ガスを用いたプラズマクリーニングを行う場合には、ArガスよりもNガスの比率を大きくした方がエンドプレート44および窓プレート48がエッチングされることを抑制できるため好ましい。
また、本実施形態では、上記実施形態1におけるヘキサンによるレーザバーの洗浄または上記実施形態2におけるUVおよびオゾンによるレーザバーの洗浄を実施してもよい。どちらかの洗浄を実施すれば、レーザ共振器と保護膜との界面におけるSi密度をさらに低減させることができるため、好ましい。
(実施形態4)
実施形態4にかかる窒化物半導体レーザ素子(以下では「第5のレーザ素子」という)は、n型GaN基板10のSi密度を約1×1018cm−3から約3×1017cm−3に減少させることを除いて、実施形態1における第2のレーザ素子と同じ方法で製造された窒化物半導体レーザ素子である。つまり、第5のレーザ素子を製造する際には、実施形態3と同じくヘキサンによるレーザバーの洗浄ならびにUVおよびオゾンによるレーザバーの洗浄を行わない。
第1保護膜70を形成する前のプラズマクリーニング工程において、レーザ共振器の端面はArプラズマによりエッチングされて清浄化される。このとき、半導体積層構造100の方がn型GaN基板10よりも分厚いので、レーザ共振器の端面においてはn型GaN基板10の支配率の方が半導体積層構造100の支配率よりも高く、よって、エッチングされる領域もn型GaN基板10の方が半導体積層構造100よりも優勢であろうと考えられる。このため、n型GaN基板10のSi密度を減少させてプラズマクリーニング時のエッチングによるSi飛散量を低減すれば、レーザ共振器の端面に付着されるSiパイルアップ量を低減させることができる可能性がある。
このようにして製造された第5のレーザ素子を室温において通電させたところ、CW発振に到り、その特性は第1のレーザ素子と同じであった。また、第5のレーザ素子に対してSIMSによる分析によりレーザ共振器の端面と保護膜との界面におけるSi密度を評価したところ、そのSi密度が第1のレーザ素子よりも20%低減していることが分かった。また、実施形態1と同じく第5のレーザ素子に対してエージング試験の前後でのCODレベルの変化を調べたところ、エージング試験後のCODレベルは470mWであり、第1のレーザ素子よりも改善されていることが分かった。
一方、n型GaN基板10及び半導体積層構造100を構成する各窒化物半導体層のSi密度を例えば約2.5×1018cm−3に増加させると、レーザ共振器の端面におけるSi密度が第2のレーザ素子と同程度に増加しており、且つ、エージング試験のCODレベルも第2のレーザ素子と同程度に低下していることが分かった。以上より、n型GaN基板10および半導体積層構造100の各窒化物半導体層におけるSi密度を減少させることの有効性が実証された。よって、n型GaN基板10におけるSi密度を減少させれば、ヘキサンまたは紫外線及びオゾンを用いてレーザバーを洗浄した場合と同じ効果が得られるということが分かった。
なお、実施形態1から実施形態4において、第1保護膜70をAl膜で形成したが、第1保護膜70としては例えばAlON膜のような少なくともAlを含む誘電体膜を用いればよい。このように保護膜が少なくともAlを含んでいれば、プラズマクリーニングをAlターゲット室で実施することができ、その結果、プラズマ室40がエッチング耐性の大きい酸化アルミナ(AlO)膜で被膜されているので、プラズマクリーニング中にレーザ共振器の端面にSiなどの不純物が付着することを抑制できる。また、プラズマクリーニングをAlターゲット室で実施した後にAlを含む保護膜をレーザ共振器の端面に形成するので、試料台54を移動させることなくAlターゲット室内で第1保護膜70を形成でき、レーザ共振器の端面の清浄度を維持できるとともに窒化物半導体レーザ素子の製造時間ロスを低減させることができる。
以上説明したように、本発明は、短波長光源としての活用が期待されている窒化物半導体レーザ素子における高出力動作での長期信頼性を保証することができるので、次世代の光ディスクなどの記録媒体への高密度高速記録化に寄与することができる。
本発明による窒化物半導体レーザ素子の第1の実施形態を示す断面図である(共振器長方向に対して垂直方向)。 ECRスパッタリング装置の断面図である。 本発明による窒化物半導体レーザ素子の第1の実施形態を示す断面図である(共振器長方向に対して平行方向)。 本発明の実施形態1における窒化物半導体レーザ素子のSIMSによる分析結果を示すグラフ図である。 本発明の実施形態1における窒化物半導体レーザ素子のパルスCODレベルの変化を示すグラフ図である。
符号の説明
10 n型GaN基板(基板)
12 n型AlGaNクラッド層
14 n型GaN光ガイド層
16 InGaN多重量子井戸層
18 InGaN中間層
20 p型AlGaNキャップ層
24 p型AlGaNクラッド層
26 p型GaNコンタクト層
30 絶縁膜
32 p側コンタクト電極
34 p側配線電極
36 n側電極
70 第1保護膜(保護膜)
72 SiO
74 ZrO
100 半導体積層構造(窒化物半導体の多層膜)

Claims (9)

  1. 基板と、前記基板上に設けられているとともに発光層を含む窒化物半導体の多層膜とを備えた窒化物半導体レーザ素子であって、
    前記窒化物半導体の多層膜は、互いに略平行な2つのへき開面を有し、
    前記へき開面は、どちらも、レーザ共振器の端面であり、
    前記レーザ共振器の前記端面には、それぞれ、前記端面に接するように保護膜が設けられており、
    前記レーザ共振器の少なくとも一方の前記端面と前記保護膜との界面におけるシリコン密度が5×1019atoms/cm3以下であることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 二次イオン質量分析法において前記界面付近に得られたシリコン密度のピークの面積を算出した場合には、前記界面における単位面積当たりのシリコン密度が7×1013atoms/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記保護膜は、少なくともアルミニウムを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記保護膜は、酸化アルミニウム膜であることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記保護膜は、酸窒化アルミニウム膜であることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 基板上に、発光層を含む窒化物半導体の多層膜を形成する工程(a)と、
    前記窒化物半導体の多層膜の上面上および前記基板の下面上のうちの少なくとも一方にシートを固定した後、前記窒化物半導体の多層膜および前記基板をへき開してレーザ共振器の端面を形成する工程(b)と、
    前記レーザ共振器の前記端面をそれぞれ洗浄する工程(c)と、
    前記工程(c)の後、前記レーザ共振器の前記端面上にそれぞれ保護膜を形成する工程(d)とを備え、
    前記工程(b)では、シリコンを含んでいないシートを前記シートとして用い、
    前記工程(c)では、前記レーザ共振器の少なくとも一方の前記端面におけるシリコン密度が5×1019atoms/cm3以下となるように、前記端面を洗浄することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  7. 前記工程(c)では、ヘキサンを用いて前記レーザ共振器の前記端面をそれぞれ洗浄することを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  8. 前記工程(c)では、紫外線およびオゾンを用いて前記レーザ共振器の前記端面をそれぞれ洗浄することを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  9. 前記工程(a)では、シリコンの密度が3×1017atoms/cm3以下である窒化物半導体基板を前記基板として用いることを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
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