JP5766659B2 - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化物半導体発光素子に関する。
一般に、半導体レーザ素子においては、共振器端面の劣化を原因とする信頼性不良が知られている。共振器端面の劣化は、非発光再結合準位の存在により共振器端面が過度に発熱することによって起こるとされている。非発光再結合準位が発生する主要因として、共振器端面の酸化が挙げられる。
そこで、特許文献1においては、酸素を含まない窒化物からなるコート膜を共振器端面に形成することで、共振器端面の酸化を防ぐ方法が開示されている。また、特許文献2においては、窒化物半導体レーザ素子の共振器端面に、コート膜として共振器端面と同じ窒化物の誘電体膜を共振器端面に形成することにより、非発光再結合準位を低減する方法が開示されている。
このように窒化物からなるコート膜を共振器端面に形成する手法は従来から知られている。窒化物の中でも特に窒化アルミニウム(AlN)は、化学的および熱的に安定であり、良質の絶縁体であり、また熱伝導率が高く放熱効果も大きいため、半導体レーザの共振器端面に形成するコート膜として優れた特徴を有している(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、酸素を含有しないコート膜は一般に応力が高く、たとえばダークラインの発生のような劣化に結びつくとされている。
特開平9−162496号公報 特開2002−237648号公報 特開平3−209895号公報
本発明者は、高出力駆動時でも共振器端面の劣化を原因とした信頼性不良を起こさないような窒化物半導体レーザ素子の実現を目指して、上記のAlNからなるコート膜を共振器端面に形成する技術開発に取り組んできた。
まず、窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に、ECRスパッタ法を用いて、成膜温度を100℃とした条件で、アルミニウム(Al)と窒素ガスを用いて、厚さ50nmのAlNからなるコート膜を形成した。また、窒化物半導体レーザ素子の光反射側の共振器端面には酸化シリコン膜と酸化チタン膜のペアからなる高反射膜を形成して、95%以上の高反射率が得られるように設定した。
このようにして作製した窒化物半導体レーザ素子のエージング前とエージング後(300時間、70℃、100mW、CW駆動)のCOD(Catastrophic Optical Damage)レベルを調べた。CODレベルとは、素子に流す電流を徐々に増加させ、端面の破壊により、発振が止まったときの最大の光出力値を意味する。なお、本明細書では、CODレベルはCW駆動で光出力―電流特性を測定したときの最大の光出力値で評価している。ここでは、CODレベルは、上記の窒化物半導体レーザ素子の5個のCODレベルの平均値で評価した。
その結果、エージング前では400mWの光出力で熱飽和したが、エージング後ではCODによる共振器端面の破壊を起こし、そのCODレベルは230mW程度であった。その結果を図11に示す。
このエージング後でのCODレベルの低下は、窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面を構成する窒化物半導体とコート膜を構成するAlNとの密着性の低下から、その界面部分で強い発熱を起こし、この発熱によって共振器端面が劣化したためと考えられる。上記の密着性の低下は、コート膜の有する内部応力と、共振器端面とコート膜との熱膨張係数の違い、およびレーザ光の発振時の発熱により促進されたものと考えられる。
また、窒化物半導体発光ダイオード素子の光出射部である光取り出し面にAlNからなるコート膜を形成した場合であっても、窒化物半導体からなる光取り出し面とAlNからなるコート膜との密着性が低下すると、これらの界面に形成された非発光センターなどにより、光が吸収されて光取り出し効率が低下することがあった。
そこで、本発明の目的は、エージング後のCODレベルを向上することができる窒化物半導体発光素子を提供することにある。
本発明は、光出射部に接してコート膜が形成されている窒化物半導体発光素子であって、光出射部は、窒化物半導体からなり、コート膜は、アルミニウムの酸窒化物からなり、光出射部に向けて厚さ方向に酸素の含有量が増加する部分を有し、コート膜の酸素含有量は、2原子%以上35原子%以下である窒化物半導体発光素子である。
本発明によれば、エージング後のCODレベルを向上することができる窒化物半導体発光素子を提供することができる。
本発明の実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子の好ましい一例の模式的な断面図である。 図1に示す本発明の実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子の共振器長方向の模式的な側面図である。 ECRスパッタ成膜装置の模式的な構成図である。 本発明の実施の形態1と同一の条件で別途作製したアルミニウムの酸窒化物をAESにより厚さ方向に組成の分析をした結果を示す図である。 本発明の実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子のエージング前とエージング後のCODレベルについて調査した結果を示す図である。 本発明の実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子のエージング後の光出力−電流特性を示すグラフである。 従来の窒化物半導体レーザ素子のエージング後の光出力−電流特性を示すグラフである。 本発明の実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子におけるアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜中の酸素の含有量のCODレベル依存性を調査した結果を示す図である。 本発明の実施の形態2の窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に形成されたコート膜の組成をAESによって厚さ方向に測定した結果を示す図である。 本発明の実施の形態3の窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に形成されたコート膜の組成をAESによって厚さ方向に測定した結果を示す図である。 従来の窒化物半導体レーザ素子のエージング前とエージング後のCODレベルを比較した図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
本発明は、光出射部にコート膜が形成されている窒化物半導体発光素子であって、光出射部は窒化物半導体からなり、光出射部に接するコート膜が酸窒化物からなる窒化物半導体発光素子であることを特徴としている。このように、本発明においては、光出射部に酸窒化物からなるコート膜を形成することによって、窒化物半導体からなる光出射部と酸窒化物からなるコート膜との密着性が向上することから、エージング後の窒化物半導体発光素子のCODレベルを向上することができる。
ここで、本発明の窒化物半導体発光素子としては、たとえば、窒化物半導体レーザ素子または窒化物半導体発光ダイオード素子などがある。また、本発明の窒化物半導体発光素子が窒化物半導体レーザ素子である場合には光出射部は共振器端面に相当し、本発明の窒化物半導体発光素子が窒化物半導体発光ダイオード素子である場合には光出射部は光取り出し面に相当する。なお、本発明における窒化物半導体レーザ素子は、少なくとも活性層とクラッド層がAlxInyGazN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z≠0)(アルミニウム、インジウムおよびガリウムからなる群から選択された少なくとも1種の3族元素と5族元素である窒素との化合物)を主成分とする材料からなる半導体レーザ素子を意味する。また、本発明において共振器端面とは、半導体基板上に少なくとも活性層とクラッド層が積層された積層体を少なくとも劈開することによって形成された鏡面のことを意味する。
また、本発明に用いられる酸窒化物としては、たとえば、アルミニウムの酸窒化物またはシリコンの酸窒化物が用いられる。ここで、酸窒化物を構成する酸素の含有量は2原子%以上35原子%以下であることが好ましい。酸窒化物における酸素の含有量が2原子%未満である場合には、窒化物半導体からなる光出射部と酸窒化物からなるコート膜との密着性が低下して発熱により光出射部が劣化する傾向にある。また、酸窒化物における酸素の含有量が35原子%よりも多い場合には、コート膜中に含まれる酸素のために窒化物半導体からなる光出射部が酸化され、非発光再結合準位が生成されるため、CODレベルが低下する傾向にある。より好ましくは、酸窒化物を構成する酸素の含有量が2原子%以上15原子%以下である。
また、本発明に用いられる酸窒化物からなるコート膜の厚さは1nm以上であることが好ましい。コート膜の厚さが1nm未満である場合には、コート膜の厚さの制御が困難であり、光出射部に部分的にコート膜が形成されないおそれがある。一方、コート膜の厚さが厚すぎる場合には応力が問題となる可能性はあるが、コート膜の厚さが厚すぎても本発明の効果が損なわれることはないものと考えられる。
なお、本発明に用いられる酸窒化物からなるコート膜上には、反射率を制御するための酸化物(たとえば、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタルおよび酸化イットリウムからなる群から選択された少なくとも1種以上の酸化物など)や窒化物(たとえば、窒化アルミニウムおよび窒化シリコンの少なくとも一方の窒化物など)からなる膜が形成されていてもよい。また、本発明における酸窒化物からなるコート膜上には、フッ化マグネシウム(MgF)等のフッ化物からなる膜を形成してもよい。また、本発明における酸窒化物からなるコート膜上には、下地のコート膜の酸窒化物と酸素の組成が異なる酸窒化物からなる膜として酸窒化シリコン若しくは酸窒化アルミニウム等からなる膜を形成してもよい。
たとえば、表1に示すように、反射率を制御するために各種の層を組み合わせることも可能である。なお、表1では、窒化物半導体の表面に接する第1層としてアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を用いているが、シリコンの酸窒化物からなるコート膜に置き換えてもよい。
Figure 0005766659
また、本発明の窒化物半導体発光素子が窒化物半導体レーザ素子である場合には、劈開により共振器端面を形成する工程と、共振器端面に酸窒化物からなるコート膜を形成する工程と、を含む方法により、本発明の窒化物半導体レーザ素子を作製することができる。
ここで、コート膜がアルミニウムの酸窒化物からなる場合には、コート膜は、たとえば、成膜室内に酸化アルミニウムからなるターゲットを設置し、この成膜室内に窒素ガスのみを導入して、反応性スパッタ法により形成することができる。このように酸化アルミニウムからなるターゲットを用いた場合には、成膜室内に意図的に酸素ガスを導入しなくても、酸窒化物の形成が可能である。
さらに、反応性スパッタリング装置を用いる場合、酸化アルミニウムからなるターゲットを用いなくても、アルミニウムからなるターゲットを成膜室内に設置した後に成膜室内に酸素ガスを導入し、マイクロ波を印加して酸素プラズマを生成してアルミニウムからなるターゲットの表面を酸化させることにより、その表面に酸化アルミニウムからなるターゲットを作製することができる。
たとえば、以下のようなステップにより、アルミニウムからなるターゲットを用いてアルミニウムの酸窒化物を生成することが可能である。
ステップ1
アルミニウムからなるターゲットが設置してある反応性スパッタリング装置の成膜室内に酸素ガスを導入し、マイクロ波を印加して、アルミニウムからなるターゲットを酸素プラズマに曝すことにより、アルミニウムからなるターゲットの表面から数nm程度酸化させ、酸化アルミニウムからなるターゲットを形成する。
ステップ2
その後、成膜室内に窒素ガスとアルゴンガスとを導入し、マイクロ波を印加してプラズマ状態にして、酸化アルミニウムからなるターゲットをスパッタリングすることにより、アルミニウムの酸窒化物を形成することが可能となる。
また、ステップ1とステップ2の間に、窒化物半導体の表面をクリーニングするために、アルゴンプラズマ、窒素プラズマ、若しくはアルゴンと窒素の混合ガスプラズマに窒化物半導体の表面を曝す工程を入れてもよい。
また、アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を形成する場合には、アルミニウムの酸化性が高いため、成膜室内に酸素ガスを導入した場合において酸素の含有量の少ない酸窒化物の組成の制御および再現性は困難となる傾向にあるが、Alxy(ただし、0<x<1、0<y<0.6、x+y=1)の組成式で表わされる酸化状態の低い酸化アルミニウムをターゲットとして用い、成膜室内に酸素ガスを導入せず窒素ガスのみを導入することによって、酸素の含有量の少ないアルミニウムの酸窒化物を比較的容易に形成することができる。さらに、上記のAlxy(ただし、0<x<1、0<y<0.6、x+y=1)の組成式で表わされる酸化状態の低い酸化アルミニウムからなるターゲットを用いる代わりに、酸素の含有量の少ないアルミニウムの酸窒化物からなるターゲットを用いた場合にも同様の効果が得られる。
また、成膜室内の真空度および/または成膜温度などの成膜条件を変化させることによっても、酸窒化物における酸素の含有量を変化させることができるために酸窒化物の組成を変化させることができる。なお、成膜室内の真空度は低い方が酸窒化物に酸素が取り込まれやすく、成膜温度は高い方が酸窒化物に酸素が取り込まれにくい傾向がある。
また、成膜室の内壁を酸化させる、または、成膜室の内壁に酸化アルミニウムを形成した後、成膜室内にアルゴンガスと窒素ガスとを導入し、Alからなるターゲット(Alターゲット)を用いてスパッタ法などにより成膜すると、成膜室の内壁の酸素がプラズマにより離脱するため、アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を形成することが可能である。
また、上記においては、リッジストライプ型の窒化物半導体レーザ素子を例にして説明したが、本発明の本旨は窒化物半導体の内部で発生した光を、窒化物半導体から外部に取り出す際の光取り出し面に施すコート膜に関する。したがって、本発明は、リッジストライプ型の窒化物半導体レーザ素子に限定されず、たとえば、面発光レーザの光取り出し面のコート膜および窒化物半導体発光ダイオード素子の光取り出し面(窒化物半導体表面またはチップへの分割の際の劈開面若しくは分割された側面)のコート膜等にも有効に適用することができる。
(実施の形態1)
図1に、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の好ましい一例の模式的な断面図を示す。ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子100は、n型GaN基板101上に、n型AlGaInNバッファ層102、n型AlGaInNクラッド層103、n型AlGaInNガイド層104、AlGaInN多重量子井戸活性層105、p型AlGaInNガイド層106、p型AlGaInNクラッド層107およびp型AlGaInNコンタクト層108がn型GaN基板101側からこの順序で積層された構成を有している。なお、上記の各層の混晶比は適宜調節されるものであり、本発明の本質とは関係がない。また、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子から発振されるレーザ光の波長はAlGaInN多重量子井戸活性層105の混晶比によって、たとえば370nm〜470nmの範囲で適宜調節することができる。本実施の形態においては、405nmの波長のレーザ光が発振するように調節された。
なお、本実施の形態においては、基板の材料にGaNを用いているが、本発明においては、基板の材料にたとえばAlGaNまたはAlNを用いてもよい。
また、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子100は、p型AlGaInNクラッド層107およびp型AlGaInNコンタクト層108の一部が除去されて、ストライプ状のリッジストライプ部111が共振器長方向に延伸するように形成されている。ここで、リッジストライプ部111のストライプの幅は、たとえば1.2〜2.4μm程度であり、代表的には1.5μm程度である。なお、本明細書では、リッジストライプ部111のストライプの幅を1.2〜2.4μm程度と例示しているが、本発明は、照明用途などで使用されるブロードエリア(リッジストライプ部111のストライプの幅が2〜100μm程度)型の窒化物半導体レーザ素子についても好適に適用することができる。
また、p型AlGaInNコンタクト層108の表面にはp電極110が設けられ、p電極110の下部にはリッジストライプ部111の形成箇所を除いて絶縁膜109が設けられている。また、n型GaN基板101の上記の層の積層側と反対側の表面にはn電極112が形成されている。
図2に、図1に示す本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の共振器長方向の模式的な側面図を示す。ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子100の光出射部である光出射側の共振器端面113にはアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜114が厚さ50nmで形成されており、光反射側の共振器端面115には厚さ6nmのアルミニウムの酸窒化物膜116、厚さ80nmの酸化アルミニウム膜117、および、厚さ71nmの酸化シリコン膜と厚さ46nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ142nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜118がこの順序で形成されている。
なお、上記のコート膜114、アルミニウムの酸窒化物膜116、酸化アルミニウム膜117および高反射膜118は、n型GaN基板上にn型AlGaInNバッファ層などの上記の半導体層を順次積層し、リッジストライプ部を形成した後に、絶縁膜、p電極およびn電極をそれぞれ形成したウエハを劈開することによって劈開面である共振器端面113および共振器端面115がそれぞれ露出した試料を作製し、その試料の共振器端面113および共振器端面115上にそれぞれ形成される。
上記のコート膜114を形成する前に成膜装置内において共振器端面113をたとえば100℃以上500℃以下の温度で加熱することによって、共振器端面113に付着している酸化膜や不純物などを除去してクリーニングすることが好ましいが、本発明においては特に行なわなくてもよい。また、共振器端面113にたとえばアルゴンまたは窒素のプラズマを照射することで共振器端面113のクリーニングを行なってもよいが、本発明においては特に行なわなくてもよい。また、共振器端面113を加熱しながらプラズマ照射することも可能である。また、上記のプラズマの照射に関しては、たとえば、アルゴンのプラズマを照射した後に続けて窒素のプラズマを照射することも可能であり、その逆の順番でプラズマを照射してもよい。アルゴンと窒素以外にも、たとえば、ヘリウム、ネオン、キセノンまたはクリプトンなどの希ガスを用いることもできる。また、共振器端面113に形成される上記のコート膜114の形成についてもたとえば100℃以上500℃以下の温度で加熱した状態で行なうことが好ましいが、本発明においては特に加熱をしない状態で上記のコート膜114を形成してもよい。
また、上記のコート膜114は、たとえば以下に説明するECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法により形成することができるが、他の各種スパッタ法、またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法あるいはEB(Electron Beam)蒸着法などにより形成することができる。
図3に、ECRスパッタ成膜装置の模式的な構成図を示す。ここで、ECRスパッタ成膜装置は、成膜室200と、磁気コイル203と、マイクロ波導入窓202とを備えている。成膜室200にはガス導入口201およびガス排気口209が設置されており、成膜室200内にはRF電源208に接続されたAlターゲット204とヒータ205とが設置されている。また、成膜室200内には試料台207が設置されており、試料台207上には上記の試料206が設置されている。なお、磁気コイル203はプラズマを生成するのに必要な磁場を発生させるために設けられており、RF電源208はAlターゲット204をスパッタするために用いられる。また、マイクロ波導入窓202よりマイクロ波210が成膜室200内に導入される。
そして、ガス導入口201から成膜室200内に窒素ガスを5.5sccmの流量で導入し、酸素ガスを1.0sccmの流量で導入し、さらに、プラズマを効率よく発生させて成膜速度を大きくするためにアルゴンガスを20.0sccmの流量で導入する。なお、成長室200内における窒素ガスと酸素ガスの比率を変更することによって上記のコート膜114中の酸素の含有量を変更することができる。また、Alターゲット204をスパッタするためにAlターゲット204にRFパワーを500W印加し、プラズマの生成に必要なマイクロ波パワーを500W印加したところ、成膜レートが1.7Å/秒で、波長633nmの光の屈折率が2.0であるアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜114を形成することができる。コート膜114を構成するアルミニウム、窒素および酸素の含有量(原子%)はたとえばAES(Auger Electron Spectroscopy)によって測定することができる。また、コート膜114を構成する酸素の含有量は、TEM−EDX(Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によっても測定することができる。
図4に、上記と同一の条件で別途作製したアルミニウムの酸窒化物をAESにより厚さ方向に組成の分析をした結果を示す。ここで、AESによるアルミニウムの含有量、酸素の含有量および窒素の含有量はそれぞれ、AES信号強度をもとに、各元素のピークの感度を考慮して求めた。ここでは、アルミニウムの原子%と酸素の原子%と窒素の原子%との合計が100原子%となるようにし、アルミニウム、酸素および窒素以外のアルゴンなどの他の微量に含まれる元素は除いている。
図4に示すように、このアルミニウムの酸窒化物を構成するアルミニウムの含有量は34.8原子%、酸素の含有量は3.8原子%および窒素の含有量は61.4原子%で厚さ方向にほぼ均一な組成であることがわかる。なお、図4には示していないが、極微量のアルゴンが検出された。
また、光反射側の共振器端面115のアルミニウムの酸窒化物膜116、酸化アルミニウム膜117および高反射膜118も上記のコート膜114と同様にECRスパッタ法などにより形成することができる。また、これらの膜の形成前にも加熱によるクリーニングおよび/またはプラズマ照射によるクリーニングを行なうことが好ましい。ただし、共振器端面の劣化が問題となるのは光密度の大きい光出射側であり、光反射側の共振器端面は光出射側に比べて光密度が小さいため、劣化が問題とならない場合が多い。したがって、本発明においては光出射側の共振器端面に酸窒化物からなるコート膜が形成されていればよく、光反射側の共振器端面にはアルミニウムの酸窒化物膜などの膜は設けなくてもよい。また、本実施の形態においては、光反射側の共振器端面115には厚さ6nmのアルミニウムの酸窒化物116が形成されているが、アルミニウムの酸窒化物116の厚さはたとえば50nmと厚くしても問題はない。
また、共振器端面に上記の膜を形成した後には加熱処理を行なってもよい。これにより、上記の膜に含まれる水分の除去や加熱処理による膜質の向上を期待することができる。
以上のようにして、上記の試料の光出射側の共振器端面113にコート膜114を形成し、光反射側の共振器端面115にアルミニウムの酸窒化物膜116、酸化アルミニウム膜117および高反射膜118をこの順序で形成した後にチップ状に分割することによって、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子が得られる。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のエージング前とエージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルについて調査した。その結果を図5に示す。図5に示すように、エージング前のCODレベルは400mW程度であり、エージング後でも350mW程度とほとんど劣化していないことがわかる。
また、図6に、上記のエージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の光出力−電流特性のグラフを示す。図6に示すように、300時間のエージング後においても本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は熱飽和しており、光出射側の共振器端面113の破壊は見られなかった。勿論、エージング前の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の光出力が400mWの時にも熱飽和し、光出射側の共振器端面113の破壊は見られなかった。
一方、図7に、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後の光出力−電流特性のグラフを示す。図7に示すように、従来の窒化物半導体レーザ素子においては光出力が250mW程度でCODによる共振器端面の破壊が起こっていた。したがって、上記の結果から明らかなように、光出射側の共振器端面にアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜が形成された本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子に比べて、エージング後のCODレベルが向上していることがわかる。
このように、光出射側の共振器端面に酸窒化物からなるコート膜を形成した場合に、エージング後のCODレベルの低下が見られないのは、共振器端面とコート膜の密着性が向上したためと考えられる。窒化物半導体とAlNなどの窒化物からなるコート膜との密着性よりも、窒化物半導体と酸窒化物からなるコート膜との密着性の方が高いのは、アルミニウムやガリウムなどの3族元素と酸素との強い結合エネルギが作用しているものと考えられる。つまり、酸窒化物に含まれる酸素が、窒化物半導体に含まれるアルミニウムやガリウムといった3族元素と強い結合を持つために密着性を向上させると考えられる。敢えて例えると、酸素が接着剤のような役割を果たしているものと考えられる。つまり、これは、窒化物半導体と酸窒化物からなるコート膜との密着性を向上させる手法であると考えられる。
次に、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子におけるアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜中の酸素の含有量のCODレベル依存性を調査した。その結果を図8に示す。ここでは、アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜中の酸素の含有量を0原子%から50原子%まで変化させて、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルを測定した。コート膜中の酸素の含有量を変化させた場合、基本的に酸素も窒素もアルミニウムと結合するため、コート膜中のアルミニウムの含有量(原子%)はほとんど変化せず、酸素の含有量(原子%)が増加した分だけ、窒素の含有量(原子%)が減少することになる。
また、図8において、○は窒化物半導体レーザ素子がCODせず熱飽和したときの光出力−電流特性における光出力のピーク位置を示しており、CODレベルはその値よりも高い値となる。また、図8において、×は窒化物半導体レーザ素子が実際にCODを起こしていることを示しており、その値がCODレベルとなる。
図8に示すように、アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜の酸素の含有量が2原子%以上35原子%以下である場合には、光出力が300mW以上で熱飽和しており、非常に良好な特性を示していることがわかる。したがって、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜における酸素の含有量は2原子%以上35原子%以下であることが好ましい。この場合にはエージング後のCODレベルが向上する傾向にある。その理由としては、窒化物半導体からなる共振器端面とアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜との密着性が向上し、共振器端面の酸化による非発光再結合準位の生成がCODレベルに影響を与えないためと考えられる。また、酸素の含有量が2原子%未満である場合には、窒化物半導体からなる共振器端面とアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜との密着性の低下から、発熱により共振器端面が劣化したものと考えられる。また、酸素の含有量が35原子%よりも多い場合には、コート膜中に含まれる酸素のために窒化物半導体からなる共振器端面の部分が酸化され、非発光再結合準位が生成されるため、CODレベルの低下が引き起こされたものと考えられる。
(実施の形態2)
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜の構成および光反射側の共振器端面に形成される膜の構成を変更したこと以外は、実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子と同様の構成を有している。
ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、光出射側の共振器端面にアルミニウムの酸窒化物からなる厚さ6nmのコート膜が形成されている。また、光反射側の共振器端面には光出射側の共振器端面のコート膜と同一の条件で厚さ12nmのアルミニウムの酸窒化物膜が形成され、そのアルミニウムの酸窒化物膜上に、厚さ81nmの酸化シリコン膜と厚さ54nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ162nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜が形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に形成されたコート膜の組成をAESによって厚さ方向に測定した結果を図9に示す。図9に示すように、このコート膜は、アルミニウムの含有量が33.6原子%、酸素の含有量が35.2原子%および窒素の含有量が31.2原子%で厚さ方向にほぼ均一な組成であった。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子についても、実施の形態1と同様にして、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルを調査した。その結果、エージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルは光出力が330mWで熱飽和しており、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング後のCODレベルと比べて向上していることが確認された。
(実施の形態3)
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜の構成および光反射側の共振器端面に形成される膜の構成を変更したこと以外は、実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子と同様の構成を有している。
ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、光出射側の共振器端面にアルミニウムの酸窒化物からなる厚さ100nmのコート膜が形成されている。また、光反射側の共振器端面には光出射側の共振器端面のコート膜と同一の条件で厚さ20nmのアルミニウムの酸窒化物膜が形成され、そのアルミニウムの酸窒化物膜上に、厚さ81nmの酸化シリコン膜と厚さ54nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ162nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜が形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に形成されたコート膜の組成をAESによって厚さ方向に測定した結果を図10に示す。図10に示すように、このコート膜は、アルミニウムの含有量が34原子%、酸素の含有量が12原子%および窒素の含有量が54原子%で厚さ方向にほぼ均一な組成であった。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子についても、実施の形態1と同様にして、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルを調査した。その結果、エージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルは光出力が333mWで熱飽和しており、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング後のCODレベルと比べて向上していることが確認された。
(実施の形態4)
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜の構成および光反射側の共振器端面に形成される膜の構成を変更したこと以外は、実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子と同様の構成を有している。
ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、光出射側の共振器端面にアルミニウムの酸窒化物からなる厚さ12nmのコート膜(酸素の含有量:35原子%)を形成した後にそのコート膜上に厚さ60nmの酸化アルミニウム膜が形成されている。また、光反射側の共振器端面には光出射側の共振器端面のコート膜と同一の条件で厚さ6nmのアルミニウムの酸窒化物膜が形成され、そのアルミニウムの酸窒化物膜上には、厚さ80nmの酸化アルミニウム膜、さらに、厚さ81nmの酸化シリコン膜と厚さ54nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ162nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜がこの順序で形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子についても、実施の形態1と同様にして、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルを調査した。その結果、エージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルは光出力が336mWで熱飽和しており、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング後のCODレベルと比べて向上していることが確認された。
(実施の形態5)
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、460nmの波長のレーザ光が発振するように調節されたこと、ならびに光出射側の共振器端面に形成されるコート膜の構成および光反射側の共振器端面に形成される膜の構成を変更したこと以外は、実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子と同様の構成を有している。なお、発振されるレーザ光の波長は、AlGaInN多重量子井戸活性層のAlGaInNの混晶比を変更することで調節している。
ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、光出射側の共振器端面にアルミニウムの酸窒化物からなる厚さ50nmのコート膜を形成して反射率を10%程度に調節している。また、光反射側の共振器端面には光出射側の共振器端面のコート膜と同一の条件で厚さ6nmのアルミニウムの酸窒化物膜が形成され、そのアルミニウムの酸窒化物膜上には、厚さ80nmの酸化アルミニウム膜、さらに、厚さ81nmの酸化シリコン膜と厚さ54nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ162nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜がこの順序で形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子についても、実施の形態1と同様にして、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルを調査した。その結果、エージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルは光出力が343mWで熱飽和しており、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング後のCODレベルと比べて向上していることが確認された。
460nmの波長のレーザ光が発振する本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、照明デバイスの励起光源として用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜の構成および光反射側の共振器端面に形成される膜の構成を変更したこと以外は、実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子と同様の構成を有している。
ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、光出射側の共振器端面にシリコンの酸窒化物からなる厚さ12nmのコート膜が形成されている。また、光反射側の共振器端面には光出射側の共振器端面のコート膜と同一の条件で厚さ20nmのシリコンの酸窒化物膜が形成され、そのシリコンの酸窒化物膜上には、厚さ81nmの酸化シリコン膜と厚さ54nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ162nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜が形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に形成されたコート膜の組成をAESによって厚さ方向に測定したところ、このコート膜は、アルミニウムの含有量が34原子%、酸素の含有量が3原子%および窒素の含有量が63原子%で厚さ方向にほぼ均一な組成であった。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子についても、実施の形態1と同様にして、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルを調査した。その結果、エージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルは光出力が302mWで熱飽和しており、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング後のCODレベルと比べて向上していることが確認された。
また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様にして、コート膜中の酸素の含有量のCODレベル依存性を調査した。すなわち、シリコンの酸窒化物からなるコート膜中の酸素の含有量を0原子%から50原子%まで変化させて、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルを測定した。ここでも、コート膜中の酸素の含有量を変化させた場合、基本的に酸素も窒素もシリコンと結合するため、コート膜中のシリコンの含有量(原子%)はほとんど変化せず、酸素の含有量(原子%)が増加した分だけ、窒素の含有量(原子%)が減少することになる。
その結果、コート膜中の酸素の含有量のCODレベル依存性についても、図8に示すアルミニウムの酸窒化物の場合とほぼ同じ傾向を示した。すなわち、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜における酸素の含有量は2原子%以上35原子%以下である場合にはエージング後のCODレベルが向上する傾向にあった。
(実施の形態7)
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光出射側の共振器端面に形成されるコート膜の構成および光反射側の共振器端面に形成される膜の構成を変更したこと以外は、実施の形態1の窒化物半導体レーザ素子と同様の構成を有している。
ここで、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、光出射側の共振器端面にアルミニウムの酸窒化物からなる厚さ25nmのコート膜が形成されており、さらにそのコート膜上にシリコンの窒化物からなる厚さ150nmの膜が形成されている。また、光反射側の共振器端面には光出射側の共振器端面のコート膜と同一の条件で厚さ25nmのアルミニウムの酸窒化物膜とその上に厚さ50nmのシリコンの窒化物膜が形成され、そのシリコンの窒化物膜上には、厚さ81nmの酸化シリコン膜と厚さ54nmの酸化チタン膜とを1ペアとして4ペア積層(酸化シリコン膜から積層開始)した後に最表面に厚さ162nmの酸化シリコン膜が積層された高反射膜が形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の光出射側の共振器端面に形成されたアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜の組成をAESによって厚さ方向に測定したところ、このコート膜は、アルミニウムの含有量が34原子%、酸素の含有量が3原子%および窒素の含有量が63原子%で厚さ方向にほぼ均一な組成であった。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子についても、実施の形態1と同様にして、300時間エージング(300時間、70℃、100mW、CW駆動)後のCODレベルを調査した。その結果、エージング後の本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子のCODレベルは光出力が350mWで熱飽和しており、光出射側の共振器端面にAlNからなるコート膜が形成された従来の窒化物半導体レーザ素子の300時間エージング後のCODレベルと比べて向上していることが確認された。
なお、シリコンの窒化物からなる膜の厚さが5nm以下である場合には、均一な膜を作製するのが困難であるため、シリコンの窒化物からなる膜の厚さは5nm以上であることが好ましい。
また、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子を長期間エージングさせた場合には、窒化物半導体レーザ素子が置かれた雰囲気中に存在する水分等によって、アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜が酸化され、膜の屈折率が変化する等のおそれがある。そのため、コート膜の防湿性を考慮すると、シリコンの窒化物からなる膜の厚さは40nm以上であることがより好ましい。また、成膜の時間等を考慮すると、シリコンの窒化物からなる膜の厚さは300nm以下とすることが好ましい。
また、本実施の形態では、アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜上にシリコンの窒化物からなる膜を形成したが、本発明においては、シリコンの窒化物からなる膜に代えてシリコンの酸窒化物からなる膜を形成してもよい。アルミニウムの酸窒化物からなるコート膜上にシリコンの酸窒化物からなる膜を形成する場合には、コート膜の防湿性を考えると、シリコンの酸窒化物からなる膜中の酸素の含有量は40原子%以下であることが好ましい。また、シリコンの酸窒化物からなる膜の厚さは、上記のシリコンの窒化物からなる膜の場合と同様の理由により、5nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましい。また、シリコンの酸窒化物からなる膜の厚さは、上記のシリコンの窒化物からなる膜の場合と同様の理由により、300nm以下とすることが好ましい。
さらに、光出射側の共振器端面に厚さ25nmのアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を形成し、そのコート膜上に厚さ150nmのシリコンの窒化物からなる膜を形成し、さらにシリコンの窒化物からなる膜上に厚さ30nmのアルミニウムの酸化物からなる膜を形成した窒化物半導体レーザ素子(第1の窒化物半導体レーザ素子)を作製した。
また、光出射側の共振器端面に厚さ25nmのアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を形成し、そのコート膜上に厚さ150nmのシリコンの窒化物からなる膜を形成し、さらにシリコンの窒化物からなる膜上に厚さ150nmのアルミニウムの酸化物からなる膜を形成した窒化物半導体レーザ素子(第2の窒化物半導体レーザ素子)を作製した。
また、光出射側の共振器端面に厚さ25nmのアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を形成し、そのコート膜上に厚さ150nmのシリコンの窒化物からなる膜を形成し、さらにシリコンの窒化物からなる膜上に厚さ30nmのシリコンの酸化物からなる膜を形成した窒化物半導体レーザ素子(第3の窒化物半導体レーザ素子)を作製した。
また、光出射側の共振器端面に厚さ25nmのアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜を形成し、そのコート膜上に厚さ150nmのシリコンの窒化物からなる膜を形成し、さらにシリコンの窒化物からなる膜上に厚さ150nmのシリコンの酸化物からなる膜を形成した窒化物半導体レーザ素子(第4の窒化物半導体レーザ素子)を作製した。
以上のようにして作製された第1の窒化物半導体レーザ素子、第2の窒化物半導体レーザ素子、第3の窒化物半導体レーザ素子および第4の窒化物半導体レーザ素子においても上記と同様の結果が得られた。
なお、上記の第1の窒化物半導体レーザ素子、第2の窒化物半導体レーザ素子、第3の窒化物半導体レーザ素子および第4の窒化物半導体レーザ素子の光反射側の共振器端面上の膜構造は、上記の実施の形態7の窒化物半導体レーザ素子の光反射側の共振器端面上の膜構造と同一である。
なお、本発明において議論されるアルミニウムの酸窒化物は、AlNの中に酸化アルミニウムが混在している場合、AlNの中にアルミニウムの酸窒化物の結晶として存在する場合、または、AlNの中に酸化アルミニウムおよびアルミニウムの酸窒化物が存在する場合があるが、本発明においてはいずれの形態をとっていてもよい。
また、上記の実施の形態においてはアルミニウムの酸窒化物からなるコート膜の酸素の含有量が厚さ方向にほぼ一定である場合について説明したが、厚さ方向に酸素の含有量がグレーデッドに変化する、若しくは酸素の含有量が異なる多層構造で形成されていてもよい。
また、上記の実施の形態においては、シリコンの酸窒化物またはアルミニウムの酸窒化物からなる膜をコート膜として用いる場合について主に説明したが、シリコンとアルミニウムの混合物をターゲットとして用いてスパッタすることによってアルミニウムとシリコンを含むアルミニウム−シリコンの酸窒化物からなる膜をコート膜として用いてもよい。
このとき、ターゲットであるシリコンとアルミニウムとの混合物におけるシリコンとアルミニウムの組成を制御することにより、コート膜の組成を制御することができる。また、上記においては、シリコンとアルミニウムとの混合物をターゲットとして用いる場合について説明したが、スパッタによる成膜法等では、シリコンとアルミニウムとの混合物をターゲットとして用いなくても、シリコンからなるターゲットとアルミニウムからなるターゲットとをハニカム状や交互に並べる等してそれを同時にスパッタすることにより、アルミニウムとシリコンを含むアルミニウム−シリコンの酸窒化物からなる膜をコート膜として形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、たとえば、紫外から緑色領域の波長の光を発振する窒化物半導体レーザ素子、高出力用途に用いられるストライプ幅が数十μm程度のブロードエリア型の窒化物半導体レーザ素子、または紫外から赤色領域の波長の光を発振する窒化物半導体発光ダイオード素子などに利用することができる。
さらに、本発明は、窒化物半導体レーザ素子において、端面に窓構造(たとえば、GaAs系の半導体レーザ素子で用いられているような活性層の端面付近の組成を平均化することによってその付近のバンドギャップを大きくしてCODレベルを向上させる構造)を形成した場合でも、その端面に本発明におけるコート膜を形成することは有効であると考えられる。
100 窒化物半導体レーザ素子、101 n型GaN基板、102 n型AlGaInNバッファ層、103 n型AlGaInNクラッド層、104 n型AlGaInNガイド層、105 AlGaInN多重量子井戸活性層、106 p型AlGaInNガイド層、107 p型AlGaInNクラッド層、108 p型AlGaInNコンタクト層、109 絶縁膜、110 p電極、111 リッジストライプ部、112 n電極、113,115 共振器端面、114 コート膜、116 アルミニウムの酸窒化物膜、117 酸化アルミニウム膜、118 高反射膜、200 成膜室、201 ガス導入口、202 マイクロ波導入窓、203 磁気コイル、204 Alターゲット、205 ヒータ、206 試料、207 試料台、208 RF電源、209 ガス排気口、210 マイクロ波。

Claims (1)

  1. 光出射部に接してコート膜が形成されている窒化物半導体発光素子であって、
    前記光出射部は、窒化物半導体からなり、
    前記コート膜は、アルミニウムの酸窒化物からなり、前記光出射部に向けて厚さ方向に酸素の含有量が増加する部分を有し、
    前記コート膜の酸素含有量は、2原子%以上35原子%以下であることを特徴とする、窒化物半導体発光素子。
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