JP4858514B2 - 失火判定装置および失火判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、失火判定装置および失火判定方法に関し、詳しくは、内燃機関と、内燃機関の出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたねじれ要素と、車軸に連結された回転軸に動力を入出力する電動機と、を備えるハイブリッド車における内燃機関の失火を判定する失火判定装置および失火判定方法に関する。
従来、この種の失火判定装置としては、ダンパを介して車軸に動力を出力するエンジンとエンジンのトルク変動を打ち消すよう制振制御を行なうモータとを備えるハイブリッド車におけるエンジンの失火を判定する装置であって、クランクシャフトが30度回転するのに要する30度所要時間からモータの制振制御による影響成分を減じて判定用所要時間を演算すると共に演算した判定用所要時間の変動に基づいてエンジンの失火を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、モータによる制振制御を考慮してエンジンの失火を判定することにより、エンジンの失火をより適正に判定することができるとしている。
特開2007−303309号公報
一般的に、エンジンの失火判定はエンジンの出力軸としてのクランクシャフトの回転変動に基づいて行なわれるが、上述のハイブリッド車のように、クランクシャフトがダンパなどのねじれ要素を介して車軸側に接続されている場合には、ねじれ要素のねじれがクランクシャフトの回転変動に影響を及ぼすためエンジンの失火判定が困難となる。また、悪路を走行する際には、路面状態がねじれ要素に連結された連結軸やクランクシャフトの回転変動に影響を及ぼすため、エンジンの失火判定が更に困難となる。
本発明の失火判定装置および失火判定方法は、出力軸がねじれ要素を介して車軸側に接続された複数気筒の内燃機関の失火を路面状態に応じてより適正に判定することを主目的とする。
本発明の失火判定装置および失火判定方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の失火判定装置は、
内燃機関と、前記内燃機関の出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたねじれ要素と、前記車軸に連結された回転軸に動力を入出力する電動機と、を備えるハイブリッド車における前記内燃機関の失火を判定する失火判定装置であって、
前記出力軸の回転数である出力軸回転数を検出する出力軸回転数検出手段と、
前記連結軸の回転数である連結軸回転数を検出する連結軸回転数検出手段と、
前記検出された連結軸回転数と前記ねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて前記連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に前記検出された出力軸回転数と前記検出された連結軸回転数との差に基づいて演算される前記ねじれ要素のねじれ角と前記ねじれ要素のバネ定数とに基づいて前記ねじれ要素のねじれに基づいて前記連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算するトルク演算手段と、
前記演算された連結軸作用トルクから前記演算されたねじれトルクと前記電動機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が前記連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算する路面状態影響値演算手段と、
前記演算されたねじれトルクのトルク変動に基づく前記出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を前記検出された出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のとき、前記路面状態影響値が所定値以上のときには前記内燃機関は失火していないと判定し、前記路面状態影響値が前記所定値未満のときには前記内燃機関は失火していると判定する失火判定手段と、
を備えることを要旨とする。
この失火判定装置では、車軸に機械的に連結された連結軸の回転数である連結軸回転数とねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に内燃機関の出力軸の回転数である出力軸回転数と連結軸回転数との差に基づいて演算されるねじれ要素のねじれ角とねじれ要素のバネ定数とに基づいてねじれ要素のねじれに基づいて連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算し、演算した連結軸作用トルクから演算したねじれトルクと電動機からの出力に基づいて連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算し、演算したねじれトルクのトルク変動に基づく出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のときに、路面状態影響値が所定値以上のときには内燃機関は失火していないと判定し、路面状態影響値が所定値未満のときには内燃機関は失火していると判定する。即ち、連結軸に作用すると推定されるトルクからねじれ要素による影響成分と電動機による影響成分とを減じた値に基づいて路面状態影響値を演算すると共に、判定用回転数の回転変動が所定変動以上のときに、路面状態影響値が所定値以上のときには内燃機関は失火していないと判定し、路面状態影響値が所定値未満のときには内燃機関は失火していると判定するのである。これにより、路面状態が連結軸や出力軸に及ぼす影響が大きいときに内燃機関の失火を誤判定するのを抑制することができる。この結果、路面状態に応じてより適正に内燃機関の失火を判定することができる。
こうした本発明の失火判定装置において、前記トルク演算手段は、前記検出された連結軸回転数をNcn、前記ねじれ要素より車軸側の慣性モーメントをJw、前記連結軸作用トルクをTcnとしたときに式(1)により該連結軸作用トルクを演算し、前記検出された出力軸回転数をNe、前記ねじれ要素のバネ定数をKdmp、前記ねじれトルクをTdmpとしたときに式(2)により該ねじれトルクを演算する手段であり、前記路面状態影響値演算手段は、前記電動機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクをTmg、前記路面状態影響値をRghとしたときに式(3)により該路面状態影響値を演算する手段であるものとすることもできる。
Figure 0004858514
また、本発明の失火判定装置において、前記ハイブリッド車は、動力を出力する発電機と、前記車軸に接続された回転軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を更に備える車両であり、前記路面状態影響値演算手段は、前記演算された連結軸作用トルクから前記演算されたねじれトルクと前記電動機および前記発電機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて前記路面状態影響値を演算する手段であるものとすることもできる。ここで、「3軸式動力入出力手段」としては、シングルピニオン式またはダブルピニオン式の遊星歯車機構やデファレンシャルギヤなどが含まれる。
本発明の失火判定方法は、
内燃機関と、前記内燃機関の出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたねじれ要素と、前記車軸に連結された回転軸に動力を入出力する電動機と、を備えるハイブリッド車における前記内燃機関の失火を判定する失火判定方法であって、
(a)前記連結軸の回転数である連結軸回転数と前記ねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて前記連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に前記出力軸の回転数である出力軸回転数と前記連結軸回転数との差に基づいて演算される前記ねじれ要素のねじれ角と前記ねじれ要素のバネ定数とに基づいて前記ねじれ要素のねじれに基づいて前記連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算し、
(b)前記演算した連結軸作用トルクから前記演算したねじれトルクと前記電動機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が前記連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算し、
(c)前記演算したねじれトルクのトルク変動に基づく前記出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を前記出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のとき、前記路面状態影響値が所定値以上のときには前記内燃機関は失火していないと判定し、前記路面状態影響値が前記所定値未満のときには前記内燃機関は失火していると判定する、
ことを要旨とする。
この失火判定方法は、車軸に機械的に連結された連結軸の回転数である連結軸回転数とねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に内燃機関の出力軸の回転数である出力軸回転数と連結軸回転数との差に基づいて演算されるねじれ要素のねじれ角とねじれ要素のバネ定数とに基づいてねじれ要素のねじれに基づいて連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算し、演算した連結軸作用トルクから演算したねじれトルクと電動機からの出力に基づいて連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算し、演算したねじれトルクのトルク変動に基づく出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のときに、路面状態影響値が所定値以上のときには内燃機関は失火していないと判定し、路面状態影響値が所定値未満のときには内燃機関は失火していると判定する。即ち、連結軸に作用すると推定されるトルクからねじれ要素による影響成分と電動機による影響成分とを減じた値に基づいて路面状態影響値を演算すると共に、判定用回転数の回転変動が所定変動以上のときに、路面状態影響値が所定値以上のときには内燃機関は失火していないと判定し、路面状態影響値が所定値未満のときには内燃機関は失火していると判定するのである。これにより、路面状態が連結軸や出力軸に及ぼす影響が大きいときに内燃機関の失火を誤判定するのを抑制することができる。この結果、路面状態に応じてより適正に内燃機関の失火を判定することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としての失火判定装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。ここで、実施例の失火判定装置としては、主として、後述するエンジン用電子制御ユニット24やモータ用電子制御ユニット40,クランクポジションセンサ23,回転位置検出センサ43,44が該当する。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出するクランクポジションセンサ23からのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、クランクポジションセンサ23は、クランクシャフト26と回転同期して回転するように取り付けられて10度毎に歯が形成されると共に基準位置検出用に2つ分の欠歯を形成したタイミングローターを有する電磁ピックアップセンサとして構成されており、クランクシャフト26が10度回転する毎に整形波を生じさせる。エンジンECU24では、このクランクポジションセンサ23からの整形波に基づいてクランクシャフト26が30度回転する毎の回転数をエンジン22の回転数Neとして計算している。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34に接続された連結軸としてのキャリア軸34aにダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1とモータMG2が運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
また、実施例のハイブリッド自動車20は、要求トルクに対応する要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から効率よく出力されるようエンジン22の目標運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、エンジン22が目標回転数Ne*で回転するようモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に要求動力が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定した目標運転ポイントでエンジン22が運転されるようエンジン22が制御されると共に設定したトルク指令Tm1*,Tm2*でモータMG1,MG2が駆動されるようモータMG1,MG2が制御される。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20に搭載されたエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する際の動作について説明する。図2はエンジンECU24により実行される失火判定処理の一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。
失火判定処理が実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、判定用回転数Njや悪路判定指標Rghなどのデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、判定用回転数Njは、エンジン22の回転数Neからダンパ28のねじれに基づく影響成分Ndeを減じた回転数であり、図3に例示する判定用回転数演算処理により演算されてRAM24cの所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。また、悪路判定指標Rghは、路面状態が連結軸としてのキャリア軸34aやエンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26に及ぼす影響を示す指標であり、図4に例示する悪路判定指標設定処理により設定されてRAM24cの所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。以下、失火判定処理の説明を中断し、図3の判定用回転数演算処理と図4の悪路判定指標設定処理について順に説明する。これらの処理は、失火判定処理と並行して所定時間毎に繰り返し実行される。
図3の判定用回転数演算処理では、エンジンECUのCPU24aは、まず、エンジン22の回転数NeとモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2とを入力すると共に(ステップS200)、入力したモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)と減速ギヤ35の減速比Grとに基づいて次式(4)により連結軸としてのキャリア軸34aの回転数であるキャリア回転数Ncを計算する(ステップS210)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランクポジションセンサ140からの整形波に基づいてクランクシャフト26が30度回転する毎に計算される回転数Neのうちクランク角CAに対応するものを入力するものとした。モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算される回転数Nm1,Nm2のうちクランク角CAに対応するものをモータECU40からハイブリッド用電子制御ユニット70を介して通信により入力するものとした。また、式(4)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図5に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22にダンパ28を介して接続されたキャリア34の回転数Ncを示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(4)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。
Nc=(ρ・Nm1+Nm2/Gr)/(1+ρ) (4)
次に、エンジン22の回転数Neと計算したキャリア回転数Ncとに基づいて次式(5)によりダンパ28のねじれ角θを計算し(ステップS220)、ダンパ28のバネ定数Kとダンパ28よりエンジン22側の慣性モーメントJとの比である定数関係値(K/J)と計算したねじれ角θとに基づいて次式(6)によりダンパ28のねじれがエンジン22の回転数に与える影響としての影響成分Ndeを計算し(ステップS230)、エンジン22の回転数Neから計算した影響成分Ndeを減じて判定用回転数Njを計算して(ステップS240)、判定用回転数演算処理を終了する。このように、エンジン22の回転数Neからダンパ28のねじれに基づく影響成分Ndeを減じて判定用回転数Njを演算することによってエンジン22の各気筒の爆発(燃焼)や失火により生じる回転変動のみが反映された回転数として判定用回転数Njを演算することができる。
θ=2π・∫(Ne-Nc)dt (5)
Nde=(K/J)∫θdt (6)
図4の悪路判定指標設定処理では、エンジンECU24のCPU24aは、まず、エンジン22の回転数NeやモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を入力し(ステップS300)、キャリア回転数Ncとダンパ28のねじれ角θとを計算する(ステップS310,S320)。エンジン22の回転数NeとモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2の入力や、キャリア回転数Ncとねじれ角θの計算については上述した。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるよう設定されたトルク指令をハイブリッド用電子制御ユニット70から通信により入力するものとした。
続いて、キャリア回転数Ncとダンパ28より後段側(キャリア軸34a側)の慣性モーメントJcとに基づいて次式(7)により連結軸としてのキャリア軸34aに作用していると推定されるトルクとしてのキャリア軸作用トルクTsumを演算し(ステップS330)、ダンパ28のねじれ角θにダンパ28のバネ定数Kを乗じてダンパ28のねじれによってキャリア軸34aに作用するトルクとしてのダンパ影響トルクTdmpを演算すると共に(ステップS340)、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35の減速比Grとに基づいて次式(8)によりモータMG1,MG2からの出力によってキャリア軸34aに作用するトルクとしてのモータ影響トルクTmgを演算し(ステップS350)、キャリア軸作用トルクTsumからダンパ影響トルクTdmpとモータ影響トルクTmgとを減じて路面状態がキャリア軸34aに及ぼす影響としての路面影響トルクTrghを演算すると共に(ステップS360)、所定時間前から現在までの路面影響トルクTrghを積算することにより悪路判定指標Rghを設定して(ステップS370)、悪路判定指標設定処理を終了する。ここで、式(8)は、図5の共線図から容易に導くことができる。エンジン22の運転を伴って走行している最中は、連結軸としてのキャリア軸34aには、ダンパ28を介してエンジン22から出力されるトルクとモータMG1,MG2から出力されるトルクと路面状態による影響などの外乱によるトルクとが作用する。このため、実施例では、キャリア軸34aに作用していると推定されるトルクとしてのキャリア軸作用トルクTsumからダンパ28のねじれによる影響成分としてのダンパ影響トルクTdmpとモータMG1,MG2の出力による影響成分としてのモータ影響トルクTmgとを減じて路面状態がキャリア軸34aに及ぼす影響としての路面影響トルクTrghを演算するものとした。そして、ノイズによる影響を抑制するため、実施例では、所定時間前から現在までの路面影響トルクTrghを積算することにより悪路判定指標Rghを設定するものとした。ここで、所定時間としては、ノイズによる影響を抑制することができると共に現在の路面状態に対応した指標として悪路判定指標Rghを設定することができる時間として予め実験などにより定められた時間を用いることができる。こうした設定により、路面状態がキャリア軸34aやクランクシャフト26に及ぼす影響を示す指標としての悪路判定指標Rghをより適正に設定することができる。
Figure 0004858514
以上、図3の判定用回転数演算処理と図4の悪路判定指標設定処理について説明した。図2の失火判定処理の説明に戻る。こうして、判定用回転数Njと悪路判定指標Rghとを入力すると、入力した判定用回転数Njの逆数によりクランクシャフト26が30度回転するのに要する時間としての30度回転所要時間T30を計算し(ステップS110)、失火判定の対象となる気筒の圧縮行程の上死点から30度後(ATDC30)と90度後(ATDC90)との30度回転所要時間T30(ATDC30),T30(ATDC90)の差分[T30(ATDC30)−T30(ATDC90)]を所要時間差分TD30として計算すると共に(ステップS120)、計算した所要時間差分TD30と360度前に所要時間差分TD30として計算された値との差(所要時間差分TD30の360度差)[TD30−TD30(360度前)]を判定用値J30として計算し(ステップS130)、計算した判定用値J30を閾値Jrefと比較する(ステップS140)。ここで、所要時間差分TD30は、圧縮上死点からの角度から考えれば、エンジン22の燃焼(爆発)によるクランクシャフト26の加速の程度から、その気筒が正常に燃焼(爆発)していれば負の値となり、その気筒が失火していれば正の値となる。従って、判定用値J30は、対象の気筒が正常に燃焼(爆発)していれば値0近傍の値となり、対象の気筒が失火していれば正常に燃焼している気筒の所要時間差分TD30の絶対値より大きな正の値となる。このため、実施例では、判定用値J30を閾値Jrefと比較することによって判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上であるか否か、即ち判定用回転数Njの回転変動が正常であるか否かを判定するものとした。ここで、閾値Jrefは、正常に燃焼している気筒の所要時間差分TD30の絶対値近傍の値として設定することによって判定用回転数Njの回転変動が正常であるか否かをより適正に判定することができる。判定用値J30が閾値Jref未満のときには、判定用回転数Njの回転変動は正常であると判断して失火判定処理を終了する。
判定用値J30が閾値Jref以上のときには、判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上である、即ち、判定用回転数Njの回転変動に異常が生じていると判断し、悪路判定指標Rghを閾値Rghrefと比較する(ステップS150)。そして、悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときには、判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものではなくエンジン22が失火している可能性があると判定し、失火カウンタCを値1だけインクリメントすると共に(ステップS160)、失火カウンタCを閾値Crefと比較し(ステップS170)、失火カウンタCが閾値Cref未満のときにはエンジン22の失火を判定するのに十分な時間が経過していないと判断して失火判定処理を終了し、失火カウンタCが閾値Cref以上のときにはエンジン22の対象気筒が失火していると判定して(ステップS180)、失火判定処理を終了する。ここで、閾値Crefは、エンジン22が失火しているか否かを判定するのに要する時間に相当するカウント値としてエンジン22の特性や失火判定処理の実行間隔などに基づいて予め実験などにより定められた値を用いることができる。なお、失火カウンタCは、実施例では、エンジン22の始動時や所定時間に亘ってエンジン22が失火していないと判定されるときに値0にリセットされる。一方、ステップS150で悪路判定指標Rghが閾値Rghref以上のときには、判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものであってエンジン22は失火していないと判定して失火判定処理を終了する。エンジン22の失火判定は判定用回転数Njの回転変動に基づいて行なわれるが、悪路を走行する際には、路面状態がキャリア軸34aやクランクシャフト26に影響を及ぼすことによって失火していないにも拘わらず判定用回転数Njの回転変動に異常が生じる場合がある。このため、実施例では、判定用回転数Njの回転変動に異常が生じていると判断されたときに、悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものではなくエンジン22が失火している可能性があると判定し、悪路判定指標Rghが閾値Rghref以上のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものであってエンジン22は失火していないと判定するものとした。これにより、路面状態がキャリア軸34aやクランクシャフト26に及ぼす影響が大きいときにエンジン22の失火を誤判定するのを抑制することができる。この結果、路面状態に応じてより適正にエンジン22の失火を判定することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20が搭載する失火判定装置によれば、連結軸としてのキャリア軸34aに作用していると推定されるトルクとしてのキャリア軸作用トルクTsumからダンパ28のねじれによる影響成分としてのダンパ影響トルクTdmpとモータMG1,MG2の出力による影響成分としてのモータ影響トルクTmgとを減じて路面状態がキャリア軸34aに及ぼす影響としての路面影響トルクTrghを演算すると共に所定時間前から現在までの路面影響トルクTrghを積算することにより悪路判定指標Rghを設定し、エンジン22の回転数Neからダンパ28のねじれに基づく影響成分Ndeを減じた判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上のときに、悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものではなくエンジン22が失火していると判定し、悪路判定指標Rghが閾値Rghref以上のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものであってエンジン22は失火していないと判定するから、路面状態がキャリア軸34aやクランクシャフト26に及ぼす影響が大きいときにエンジン22の失火を誤判定するのを抑制することができる。この結果、路面状態に応じてエンジン22の失火をより適正に判定することができる。
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する失火判定装置では、所定時間前から現在までの路面影響トルクTrghを積算することにより悪路判定指標Rghを設定するものとしたが、路面影響トルクTrghをそのまま悪路判定指標Rghに設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する失火判定装置では、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2からの出力によってキャリア軸34aに作用するトルクとしてのモータ影響トルクTmgを演算するものとしたが、実際にモータMG1,MG2から出力されるトルクTm1,Tm2に基づいてモータ影響トルクTmgを演算するものとしてもよい。この場合、実際にモータMG1,MG2から出力されるトルクTm1,Tm2は、モータMG1,MG2の各相に印加される相電流に基づいて検出されるものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する失火判定装置では、判定用回転数Njの回転変動に異常が生じていると判断されて悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときに、失火カウンタCが閾値Cref以上であればエンジン22の対象気筒が失火していると判定するものとしたが、判定用回転数Njの回転変動に異常が生じていると判断されて悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときには失火カウンタCに拘わらずエンジン22の対象気筒が失火していると判定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する失火判定装置では、判定用回転数Njに基づく判定用値J30を閾値J30refと比較することによって判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上であるか否かを判定するものとしたが、判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上であるか否かの判定は、判定用値J30を閾値J30refと比較することによって行なわれるものに限定されるものではなく、例えば、30度回転所要時間T30の波高が所定値Tref以上のときに判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上であると判定するものとしても構わない。ここで、所定値Trefとしては、エンジン22が失火していないときの波高よりも大きく、エンジン22が失火しているときの波高よりも小さい値として予め実験などにより定めた値を用いることができる。
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する失火判定装置では、エンジン22のクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続されると共にモータMG1の回転軸や駆動軸としてのリングギヤ軸32aに接続される動力分配統合機構30とリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されるモータMG2とを備える車両におけるエンジン22の失火を判定するものとしたが、エンジンとこのエンジンの出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたねじれ要素としてのダンパと車軸に連結された回転軸に動力を入出力するモータとを備える車両におけるエンジンの失火を判定するものであればよいから、図6の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図6における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続する車両におけるエンジン22の失火を判定するものとしてもよい。また、モータMG2は、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aに接続されるものとしてもよいし、減速ギヤ35や変速機を介さずに車軸側に接続されていてもよい。さらに、車軸に連結された回転軸に動力を入出力する単一のモータを備える車両におけるエンジンの失火を判定するものとしても構わない。
実施例では、ハイブリッド自動車20に搭載された内燃機関の失火判定装置として説明
したが、内燃機関の失火判定方法の形態としてもよい。
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、ダンパ28が「ねじれ要素」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、クランクシャフト26のクランク角を検出するクランクポジションセンサ23と検出されたクランク角に基づいてエンジン22の回転数Neを演算するエンジンECU24とが「出力軸回転数検出手段」に相当し、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44と検出された回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算するモータECU40と演算された回転数Nm1,Nm2に基づいてキャリア軸34aの回転数Ncを計算するエンジンECU24とが「連結軸回転数検出手段」に相当し、キャリア軸34aの回転数Ncとダンパ28より後段側(キャリア軸34a側)の慣性モーメントJcとに基づいて連結軸としてのキャリア軸34aに作用していると推定されるトルクとしてのキャリア軸作用トルクTsumを演算すると共にエンジン22の回転数Neとキャリア軸34aの回転数Ncとの差に基づくダンパ28のねじれ角θにダンパ28のバネ定数Kを乗じてダンパ28のねじれによってキャリア軸34aに作用するトルクとしてのダンパ影響トルクTdmpを演算する図4の悪路判定指標設定処理のステップS330,340の処理を実行するエンジンECU24が「トルク演算手段」に相当し、キャリア軸作用トルクTsumからダンパ影響トルクTdmpとモータ影響トルクTmgとを減じて路面状態がキャリア軸34aに及ぼす影響としての路面影響トルクTrghを演算すると共に所定時間前から現在までの路面影響トルクTrghを積算することにより悪路判定指標Rghを設定する図4の悪路判定指標設定処理のステップS360,S370の処理を実行するエンジンECU24が「路面状態影響値演算手段」に相当し、エンジン22の回転数Neからダンパ28のねじれに基づく影響成分Ndeを減じた判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上のときに、悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものではなくエンジン22に失火が生じていると判定し、悪路判定指標Rghが閾値Rghref以上のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものであってエンジン22に失火は生じていないと判定する図2の失火判定処理のステップS150〜S180の処理を実行するエンジンECU24が「失火判定手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「ねじれ要素」としては、ダンパ28に限定されるものではなく、内燃機関の出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、車軸に連結された回転軸に動力を入出力するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「出力軸回転数検出手段」としては、クランクシャフト26のクランク角を検出すると共に検出したクランク角に基づいてエンジン22の回転数Neを演算するものに限定されるものではなく、出力軸の回転数である出力軸回転数を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「連結軸回転数検出手段」としては、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出すると共に検出した回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算し、演算した回転数Nm1,Nm2に基づいてキャリア軸34aの回転数Ncを計算するものに限定されるものではなく、連結軸の回転数である連結軸回転数を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「トルク演算手段」としては、キャリア軸34aの回転数Ncとダンパ28より後段側(キャリア軸34a側)の慣性モーメントJcとに基づいて連結軸としてのキャリア軸34aに作用していると推定されるトルクとしてのキャリア軸作用トルクTsumを演算すると共にエンジン22の回転数Neとキャリア軸34aの回転数Ncとの差に基づくダンパ28のねじれ角θにダンパ28のバネ定数Kを乗じてダンパ28のねじれによってキャリア軸34aに作用するトルクとしてのダンパ影響トルクTdmpを演算するものに限定されるものではなく、検出された連結軸回転数とねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に検出された出力軸回転数と検出された連結軸回転数との差に基づいて演算されるねじれ要素のねじれ角とねじれ要素のバネ定数とに基づいてねじれ要素のねじれに基づいて連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算するものであれば如何なるものとしても構わない。「路面状態影響値演算手段」としては、キャリア軸作用トルクTsumからダンパ影響トルクTdmpとモータ影響トルクTmgとを減じて路面状態がキャリア軸34aに及ぼす影響としての路面影響トルクTrghを演算すると共に所定時間前から現在までの路面影響トルクTrghを積算することにより悪路判定指標Rghを設定するものに限定されるものではなく、演算された連結軸作用トルクから演算されたねじれトルクと電動機からの出力に基づいて連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算するものであれば如何なるものとしても構わない。「失火判定手段」としては、エンジン22の回転数Neからダンパ28のねじれに基づく影響成分Ndeを減じた判定用回転数Njの回転変動が所定変動以上のときに、悪路判定指標Rghが閾値Rghref未満のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものではなくエンジン22に失火が生じていると判定し、悪路判定指標Rghが閾値Rghref以上のときには判定用回転数Njの回転変動の異常は路面状態の影響によるものであってエンジン22に失火は生じていないと判定するものに限定されるものではなく、演算されたねじれトルクのトルク変動に基づく出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を検出された出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のとき、路面状態影響値が所定値以上のときには内燃機関は失火していないと判定し、路面状態影響値が所定値未満のときには内燃機関は失火していると判定するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力するものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせたものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、車軸に接続された回転軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。
なお、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、内燃機関の失火判定装置や車両の製造産業などに利用可能である。
本発明の一実施例としての失火判定装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 エンジンECU24により実行される失火判定処理の一例を示すフローチャートである。 エンジンECU24により実行される判定用回転数演算処理の一例を示すフローチャートである。 エンジンECU24により実行される悪路判定指標設定処理の一例を示すフローチャートである。 エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、34a キャリア軸、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (4)

  1. 内燃機関と、前記内燃機関の出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたねじれ要素と、前記車軸に連結された回転軸に動力を入出力する電動機と、を備えるハイブリッド車における前記内燃機関の失火を判定する失火判定装置であって、
    前記出力軸の回転数である出力軸回転数を検出する出力軸回転数検出手段と、
    前記連結軸の回転数である連結軸回転数を検出する連結軸回転数検出手段と、
    前記検出された連結軸回転数と前記ねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて前記連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に前記検出された出力軸回転数と前記検出された連結軸回転数との差に基づいて演算される前記ねじれ要素のねじれ角と前記ねじれ要素のバネ定数とに基づいて前記ねじれ要素のねじれに基づいて前記連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算するトルク演算手段と、
    前記演算された連結軸作用トルクから前記演算されたねじれトルクと前記電動機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が前記連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算する路面状態影響値演算手段と、
    前記演算されたねじれトルクのトルク変動に基づく前記出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を前記検出された出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のとき、前記路面状態影響値が所定値以上のときには前記内燃機関は失火していないと判定し、前記路面状態影響値が前記所定値未満のときには前記内燃機関は失火していると判定する失火判定手段と、
    を備える失火判定装置。
  2. 請求項1記載の失火判定装置であって、
    前記トルク演算手段は、前記検出された連結軸回転数をNcn、前記ねじれ要素より車軸側の慣性モーメントをJw、前記連結軸作用トルクをTcnとしたときに式(1)により該連結軸作用トルクを演算し、前記検出された出力軸回転数をNe、前記ねじれ要素のバネ定数をKdmp、前記ねじれトルクをTdmpとしたときに式(2)により該ねじれトルクを演算する手段であり、
    前記路面状態影響値演算手段は、前記電動機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクをTmg、前記路面状態影響値をRghとしたときに式(3)により該路面状態影響値を演算する手段である
    失火判定装置。
    Figure 0004858514
  3. 請求項1または2記載の失火判定装置であって、
    前記ハイブリッド車は、動力を出力する発電機と、前記車軸に接続された回転軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を更に備える車両であり、
    前記路面状態影響値演算手段は、前記演算された連結軸作用トルクから前記演算されたねじれトルクと前記電動機および前記発電機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて前記路面状態影響値を演算する手段である
    失火判定装置。
  4. 内燃機関と、前記内燃機関の出力軸と車軸に機械的に連結された連結軸とに接続されたねじれ要素と、前記車軸に連結された回転軸に動力を入出力する電動機と、を備えるハイブリッド車における前記内燃機関の失火を判定する失火判定方法であって、
    (a)前記連結軸の回転数である連結軸回転数と前記ねじれ要素より車軸側の慣性モーメントとの積に基づいて前記連結軸に作用すると推定されるトルクである連結軸作用トルクを演算すると共に前記出力軸の回転数である出力軸回転数と前記連結軸回転数との差に基づいて演算される前記ねじれ要素のねじれ角と前記ねじれ要素のバネ定数とに基づいて前記ねじれ要素のねじれに基づいて前記連結軸に作用するトルクであるねじれトルクを演算し、
    (b)前記演算した連結軸作用トルクから前記演算したねじれトルクと前記電動機からの出力に基づいて前記連結軸に作用するトルクとを減じた値に基づいて路面状態が前記連結軸の回転数に与える影響である路面状態影響値を演算し、
    (c)前記演算したねじれトルクのトルク変動に基づく前記出力軸の回転数に影響を及ぼすねじれ影響成分を前記出力軸回転数から減じて得られる判定用回転数の回転変動が所定変動以上のとき、前記路面状態影響値が所定値以上のときには前記内燃機関は失火していないと判定し、前記路面状態影響値が前記所定値未満のときには前記内燃機関は失火していると判定する、
    失火判定方法。
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