以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ここに、図1は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジ10の外観を示す斜視図である。図2は、インクカートリッジ10が分解された状態を示す分解斜視図である。
図1及び図2に示されるように、インクカートリッジ10は、インクが収容される本体100(図2参照)と、ケース20と、プロテクタ30とを備えている。本体10に、本発明のバルブ装置の一例であるインク供給バルブ200及び大気連通バルブ131が配設されている。なお、インク供給バルブ200及び大気連通バルブ131については後段で詳細に説明する。
ケース20は、本体100を保護するものであり、本体100の略全体を覆っている。プロテクタ30は、インクカートリッジ10が搬送される際に本体100のインク供給バルブ200や大気連通バルブ131などを保護するものであり、ケース20に着脱可能に取り付けられている。なお、本実施形態では、本体100、ケース20、及びプロテクタ30は、樹脂材料により構成されている。したがって、金属材料が使用されていないので、廃棄処分の際に焼却することができる。例えば、樹脂材料としては、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンなどが該当する。
ケース20は、本体100を2方向(図2の上下方向)から挟み込む2つのケース部材21,22で構成されている。第1ケース部材21は、本体100の図2下側面を覆う部材であり、第2ケース部材22は、本体100の図2上側面を覆う部材である。各ケース部材21,22は、例えば、樹脂材料を射出成形することにより得られる。これらのケース部材21,22は、本体100を構成するフレーム部110やインク供給バルブ200、大気連通バルブ131などに対応する形状に形成されている。
第1ケース部材21には、本体100の位置決めを行う棒状のピン25a,25b,25cが形成されている。ピン25a〜25cは、第1ケース部材21の内面に垂直に立設されている。ピン25a〜25cで囲まれた部分に本体100が装着される。これにより、ピン25a〜25cによって、本体100が位置決めされ、本体100が緩みなく第1ケース部材21に仮付けされる。また、第2ケース部材22には、ピン25a〜25cが形成された位置に対応して、ピン25a〜25cと嵌合する孔を有する嵌合孔部(図示せず)が設けられている。各ケース部材21,22が本体100を挟み込むようにして接合され、ピン25a〜25cが上記嵌合孔部に嵌め入れられることにより、第1ケース部材21と第2ケース部材とが互いに連結する。これにより、本体100がケース20によって保護される。
ケース20には、突起片26,27が設けられている。突起片26に切り欠き26aが設けられており、突起片27に切り欠き27aが設けられている。これらの切り欠き26a,27aに、プロテクタ30に形成された図示しない突起が嵌合される。これにより、プロテクタ30が、ケース20に確実に取り付けられる。なお、ケース20にプロテクタ30が取り付けられた状態で、プロテクタ30の貫通孔31から大気連通バルブ131のロッド134が露出される。これにより、プロテクタ30をケース20から取り外すことなく、大気連通バルブ131を動作させることができる。
次に、添付図を参照して、本体100について説明する。ここに、図3は、インク注入部150側から見て本体100の左側の面を示す図である。図4は、インク注入部150側から見て本体100の右側の面を示す図である。図5は、バルブ室120の断面構造を示す部分断面図である。図6は、インク供給室175付近の構造を示す部分拡大図である。図6の(a)には、インク供給室175付近の概略構造が示されており、(b)には、(a)における切断線VIb−VIbの断面構造が示されており、(c)には、インク量が減少した状態が示されており、(d)には、インクの供給が終了した状態が示されている。なお、図3では、インク供給バルブ200及び大気連通バルブ131が本体100から取り外された状態が示されている。また、図3及び図4では、フィルム160が省略されている。また、図5では、インク供給バルブ200の一部が省略されている。
図2に示されるように、本体100は、扁平形状の略6面体として構成されている。詳細には、本体100は、幅方向(矢印51の方向)に細く、高さ方向(矢印52の方向)に長く、奥行き方向(矢印53の方向)が上記高さ方向よりもさらに長い略直方体形状に形成されている。この本体100は、図3及び図4に示された起立状態で、つまり、図中の下側の面を底面104とし、図中の上側の面を上面103として記録装置に装着される。インクカートリッジ10は、記録装置に対して矢印50で示される挿入方向に挿入される。なお、本体100において、矢印50の方向の前方側の面、つまり、底面104から起立するように設けられた面が本体100の背面102である。また、この背面102に対向する面が本体100の正面101である。正面101、背面102、上面103、底面104に連結された面が側面105及び側面106である。これら側面105,106は、背面102と底面104との共通辺に交差する一対の辺を有し、互いに対向するよう配置されている。本実施形態では、一対の側面105,106が本体100において6面体の最大面積となっている。
本体100は、大別して、フレーム部110と、撥水性を有する合成樹脂製のフィルム160と、センサーアーム90と、インク供給バルブ200と、大気連通バルブ131とにより構成されている。フレーム部110の両側面(図2の上下の2面)にフィルム160が溶着されることにより、本体100の外枠が構成される。これにより、本体100の内部空間にインク室170が形成される。
フレーム部110は、本体100の筐体を構成する部材であり、本体100の六面101〜106を形成する。したがって、本体100の六面101〜106は、フレーム部110の六面に一致する。以下において、本体100の各面に付された符号を用いてフレーム部110の各面を示す。
フレーム部110は、透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されており、例えば、樹脂材料を射出成形することにより得られる。このフレーム部110は、大別して、複数の壁部材(外周壁111等)と、インク注入部150と、検知窓140と、バルブ収容室120(本発明のバルブ収容部に相当)と、バルブ収容室130と、傾斜部80とを備える。
図3及び図4に示されるように、フレーム部110は、外周壁111と、複数の内壁112とを備える。内壁112は、外周壁111の内側に配設されている。外周壁111及び内壁112は、フレーム部110として一体に形成されており、本体100の左側面105から右側面106に渡って設けられている。外周壁111は、内部に空間を形成するように、正面101、上面103、背面102、底面104に概ね沿って環状に配設されている。これにより、フレーム部110の左側面105に開口114aが形成され、右側面106に開口114bが形成される。
外周壁111及び内壁112の側面105,106側の外縁部分には、溶着部116(黒塗りの部分)が設けられている。この溶着部116に、超音波溶着によってフィルム160が溶着される。これにより、開口114a及び開口114bがフィルム160によって閉塞されて、外周壁111とフィルム160とによって囲まれたインク室170が区画される。このように区画されたインク室170にインクが収容される。
本実施形態では、内壁112は、外周壁111で囲まれた領域内において分散された状態で配設されている。そのため、フィルム160の弛みを抑制しつつ、インク室170におけるインクの流通性を高めることができる。また、内壁112が分散して配置されているため、例えば、軟性な樹脂材料でケース20が形成されている場合に、そのケース20が本体100側に変形したとしても、内壁112によってケース20の変形を規制することができる。これにより、ケース20やフィルム160の破損を防止することができる。さらに、外周壁111及び内壁112は、側面105,106の方向、つまり、矢印51(図1参照)で示される幅方向に延設されているため、フレーム部110を射出成形する場合に、複雑な金型を必要としない。これにより、インクカートリッジ10の製作コストの低減を図ることができる。
インク注入部150は、インクをインク室170に注入するために設けられている。インク注入部150は、フレーム部110に一体に成形されている。このインク注入部150は、本体100の正面101の中段付近よりやや下側に配設されている。
図4に示されるように、インク注入部150は、筒部152と、連通孔153と、隔壁156と、連通孔154とを主に備えている。筒部152は、正面101からインク室170側に穿設された略円筒状の孔であり、その奥部が閉塞されている。連通孔153は、筒部152とインク室170との間を連通するものである。この連通孔153は、筒部152の側壁に形成されている。この連通孔153は、筒部152の側壁を本体100の右側面106側に貫通している。
隔壁156は、連通孔153をインク室170に対して隔離するとともに、後述する注入路158を形成するものである。隔壁156は、筒部152の外面に右側面106側へ向けて立設された横向き略U字状のリブ部材からなり、本体100の奥行き方向(図4の矢印53の方向)に延設された細長形状を呈する。隔壁156の右側面106側の外縁部分には溶着部116が設けられている。この溶着部116にもフィルム160が溶着される。右側面106の開口114bがフィルム160で閉塞された状態で、隔壁156及びフィルム160で囲まれた部分に注入路158が形成される。この注入路158は、インクが注入されたときにインクがインク室170へ向かって流れる流路である。隔壁156の正面101側に連通孔154が形成されている。この連通孔154によって、隔壁156が正面101側でインク室170側に開放されている。したがって、注入路158は、連通孔154を通じてインク室170に連通している。
筒部152の正面101側の開口は、本体100の外部に開放されたインク注入口(不図示)である。このインク注入口からインクが注入される。インク注入口から注入されたインクは、筒部152の内部から連通孔153を通って注入路158に流れ込み、そして、連通孔154からインク室170に流入する。
検知窓140は、インク室170に収容されているインクの量を視覚的或いは光学的に検知するためのものである。検知窓140は、フレーム部110に一体に形成されている。したがって、検知窓140は、フレーム部110と同じ材質、つまり、透光性のある樹脂材料で構成されている。そのため、検知窓140は、外部からの光を透過することができる。なお、検知窓140は、記録装置に取り付けられたフォトインタラプタなどの光センサによって検出光が照射される。本実施形態では、上記検出光は、側壁140bに照射される。
検知窓140は、図3〜図5に示されるように、本体100の背面102の中段付近から外向き、つまり、インク室170とは反対側の方向(図3の左向き)へ突出している。具体的には、検知窓140は、背面102に平行で、この背面102から外向きに所定距離だけ離反された矩形状の前壁140a(図5参照)と、この前壁140aの幅方向の二辺を含む一対の側壁140bと、前壁140aの上下の二辺を含む上壁140c及び底壁140dとにより区画されている。前壁140aの幅(図2の矢印51方向の寸法)は、本体100の背面102の幅よりも小さく形成されている。
図5に示されるように、検知窓140の内部に空間142が形成されており、インク室170へ向けられた面が開口された箱形を呈する。空間142は、インク室170に連続している。空間142に、センサーアーム90のインジケータ部92が進入或いは退出する。なお、図3及び図4では、インジケータ部92が空間142に進入した姿勢が実線で示されており、図5では、破線で示されている。
センサーアーム90は、インク室170に収容されたインクの液量を検知するための部材である。センサーアーム90の一方端に、空間142に進入或いは退出されるインジケータ部92が設けられている。センサーアーム90の他方端に、内部が中空状に形成されたフロート部93が設けられている。このセンサーアーム90は、外周壁111の幅方向(矢印51の方向)の中心に立設されたリブ94に揺動可能に支持されている。フロート部93は浮きの役割を担っており、インク量に応じて上下に変位する。これにより、センサーアーム90がフロート部93の変位量に応じて回動する。リブ94は、背面102及び底面104で形成されるコーナー付近の外周壁111に設けられており、このリブ94に、センサーアーム90を軸支する支持部97(図5参照)が形成されている。
センサーアーム90は、インク室170内に十分な量のインクが収容されている場合は、図3及び図4に示されるようにインジケータ部92が空間142に進入した姿勢を維持する。一方、インクが所定量未満になると、フロート部93が下降して、インジケータ部92が空間142から退出した姿勢を維持する。空間142におけるインジケータ部92の有無を検知窓140の外部からフォトインタラプタなどの光センサで監視することで、インク室170内のインクの液量が一定量あるかどうかを検知することができる。
インク室170には、図3及び図4に示されるように、背面102及び底面104で形成されるコーナー部分に、傾斜部80が設けられている。この傾斜部80は、検知窓140の空間142や外周壁111における背面102側の垂直面172に付着したインクをインク室170の底面171、より詳細には、底面171に形成された凹陥部117へ円滑に導くために設けられたものである。傾斜部80は、垂直面172から凹陥部117へ向けて傾斜する第1傾斜面81と、該第1傾斜面81の下方に位置する第2傾斜面82とを有する。
第1傾斜面81は、外周壁111の上記コーナー部分が傾斜されることによって形成される。また、第2傾斜面82は、後述する隔壁177が傾斜されることによって形成される。第1傾斜面81と第2傾斜面とに間には段が設けられている。したがって、傾斜部80は、側面105,106の方向から見て階段状に形成されている。このような傾斜部80が設けられているため、凹陥部117へ効率よくインクを集めることができる。
本実施形態では、傾斜部80は、第1傾斜面81と第2傾斜面82とによって階段状に構成されているが、もちろん、垂直面172から凹陥部117へ向けて段を有しない傾斜面で構成されていてもよい。また、第1傾斜面81が空間142の底面と連続して形成されていてもよい。つまり、空間142の底面が傾斜されており、その底面が第1傾斜面81に連続するように傾斜部80が構成されていてもよい。これにより、外周壁111のみならず、空間142に付着したインクを円滑にインク室170の底面171へ導くことができる。
図3に示されるように、フレーム部110の背面102の上部、言い換えれば、検知窓140の上方に、円形の開口132が設けられている。開口132に連続してフレーム部110の内部に円筒状のバルブ収容室130が形成されている。バルブ収容室130は、その奥部においてインク室170に連通している。バルブ収容室130に、大気連通バルブ131が収容される。なお、大気連通バルブ131の詳細な構成については後述する。
図3及び図5に示されるように、フレーム部110の背面102の下部、言い換えれば、検知窓140の下方に、円形の開口122が設けられている。この開口122に連続してフレーム部110の内部側に、バルブ収容室120及びインク供給室175が形成されている。
バルブ収容室120は、開口122から本体100の奥行き方向(矢印53の方向)に沿ってフレーム部110の内側へ延設されている。このバルブ収容室120は、背面102からフレーム部110の内側へ向けて垂直方向に延設されている。バルブ収容室120は、図示されるように、外周壁111の外側に設けられている。一方、インク供給室175は、背面102側から見てバルブ収容室120の奥側に設けられている。このインク供給室175は、外周壁111の内側に設けられている。つまり、インク供給室175とバルブ収容室120とは、外周壁111によって仕切るように隔離されている。以下、外周壁111において、インク供給室175とバルブ収容室120とを仕切る部分を隔壁179と称する。隔壁179には、連通孔181が形成されており、この連通孔181を通じてインク供給室175とバルブ収容室120とが連通されている。
バルブ収容室120は、略円筒状に形成された側壁124(図5参照)によってその側面が区画され、隔壁179によってその奥面が区画されている。バルブ収容室120の奥部には、連通孔181に隣接する逆止弁収容部126が形成されている。筒状の逆止弁収容部126に逆止弁190が収容され、バルブ収容室120の内部にインク供給バルブ200(図3参照)が収容される。なお、逆止弁190及びインク供給バルブ200の詳細な構成については後述する。
インク供給室175は、右側面106から見て略三角形状に形成されている。このインク供給室175は、右側面106から見て横向き略V字状の隔壁177と外周壁111の一部を構成する隔壁179とによって区画されている。したがって、インク供給室175は、バルブ収容室120から奥行き方向(矢印53の方向)へ向かうにつれて先細り形状に形成されている。インク供給室175とバルブ収容室120とは、隔壁179を間に介在させて本体100の奥行き方向(矢印53の方向)に隣接している。隔壁177の右側面106側の外縁部分には溶着部116が設けられている。この溶着部116にもフィルム160が溶着される。右側面106の開口114bがフィルム160で閉塞されることにより、隔壁177、隔壁179、及びフィルム160で囲まれた空間にインク供給室175が形成される。
隔壁179には、インク供給室175とバルブ収容室120とを連通する連通孔181が形成されている。この連通孔181は、上記インク供給口210と同じように、その中心がバルブ収容室120の円筒中心線176に一致するように形成されている。
図6(a)に示されるように、隔壁177は、連通孔181を囲むように設けられている。隔壁177のうち、下側の壁(以下「下壁」と称する。)177bには、インク室170とインク供給室175とを連通する連通孔182(本発明の第2孔に相当)が形成されている。この連通孔182は、連通孔181及びインク供給口210それぞれの中心を通る円筒中心線176から下方へずらされた箇所に形成されている。なお、隔壁177のうち、上側の壁(以下「上壁」と称する。)177aは、後述する凹陥部117へ向けて傾斜されている。この上壁177aによって第2傾斜面82が形成されている。
図6(b)に示されるように、下壁177bに切り欠き184が形成されている。この切り欠き184は、下壁177bの右側面106側の端部に設けられている。切り欠き184は、下壁177bの右側面106側の端部の一部が略コの字状に切り欠かれることにより形成される。切り欠き184は、フレーム部110を射出成形することによってフレーム部110と同時に形成される。この切り欠き184と、下壁177bの溶着部116に溶着されたフィルム160とによって、連通孔182が形成される。これにより、断面が矩形状(四角形状)に形成された連通孔182が、右側面106側のフィルム160に隣接して設けられる。
本実施形態では、連通孔182は、インク供給口210或いは連通孔181よりも小さい断面積に形成されている。したがって、インクがインク供給口210から外部へ流出するときの連通孔182におけるインクの流速は、インク供給口210及び連通孔181における流速よりも大きい。
下壁177bの下方に、凹陥部117が設けられている。凹陥部117は、インク室170の底面171を形成する底壁118の一部を凹陥状に陥没させることにより形成される。なお、外周壁111のうち、インク室170の底面171を形成する部分が底壁118である。本実施形態では、この凹陥部117で区画される凹部空間119に、連通孔182のインク室170側の開口が配置されている。
図6(b)に示されるように、凹陥部117は、リブ94より右側面106側のみに設けられており、リブ94より左側面105側には設けられていない。凹陥部117の直上のリブ94には、リブ94を右側面106側から左側面105側へ貫通する貫通孔95が形成されている。この貫通孔95を通ってインクが右側面106側と左側面105側との間で流通する。なお、凹陥部117は右側面106側のみに設けられているため、例えば、インク室170内のインクの液面が底面171より下がった場合には、リブ94の左側面105側に残ったインクは、貫通孔95を通って凹陥部117へ流入する。このような凹陥部117が設けられているため、凹陥部117に溜められたインクの液面が下がって連通孔182に達するまでの間、空気を連通孔182に入り込ませることなく、インクをインク供給室175に供給することができる。
本実施形態では、図6(b)に示されるように、隔壁177は、インク室170とバルブ収容室120とをインク供給室175で隔てるように設けられている。即ち、インク供給室175は、インク室170との連通を連通孔182のみで行い、バルブ収容室120との連通を連通孔181のみで行う。したがって、インク供給口210が開放されると、インク室170に収容されたインクが、凹陥部117から連通路182を通ってインク供給室175に流入し、インク供給室175から連通孔181を通ってバルブ収容室120に流入する(図6(c)の矢印54)。そして、バルブ収容室120からインク供給口210を通って外部へインクが流出される(図6(c)の矢印55)。
次に、図6(c)及び図6(d)を参照して、インク供給口210が開放されたときのインク流路、つまり、インク室170からバルブ収容室120へのインク流路(図6(c)の矢印54)について説明する。
図6(c)に示されるように、インク室170に収容されたインクの液面60が凹陥部117より上方で、且つ、連通孔181及びインク供給口210より下方に位置する場合は、図示されるように、凹部空間119がインクで満たされている。上述したように、連通孔182は、凹部空間119内に配置されているため、記録装置に対するインクカートリッジ10の装着姿勢において、連通孔182に空気や気泡が入り込むことはない。したがって、この場合は、たとえインク液面60が連通孔181及びインク供給口210より下方に位置していたとしても、インク室170内のインクは、凹陥部117から連通孔182、インク供給室175、連通孔181、バルブ収容室120、そしてインク供給口120を通るインク流路(図6(c)の矢印54,55)で外部へ流出する。
なお、本実施形態では、バルブ収容室120は図5に示されるように略円筒状に形成されている。連通孔181に逆止弁190が装着され、バルブ収容室120内にインク供給バルブ200が収容される。そのため、本体100の底面104を略フラットにしたままの状態で、連通孔181をインク室170の底面171に近づけて配置するのに限界がある。隔壁117を設けない構成では、連通孔181よりインクの液面60が下がると、連通孔181から空気が入り込むため、インクの供給ができなくなり、インク室170内に消費できないインクが残ることになる。しかし、隔壁117を設けることで、連通孔182を連通孔181やインク供給口210より下方で、しかも底面171の近傍に配置することが可能になる。これにより、インクの液面60が連通孔182より下がるまでインクを供給することができるので、インクの消費効率が向上する。
また、本実施形態では、連通孔182の断面が矩形状(四角形状)に形成されているため、矢印54で示されるインク流路を通ってインクが流通する際に、インク中の気泡が凹部空間119から連通孔182に到達したとしても、連通孔182の4つのコーナー部分に気泡が接触しない部分が形成される。そのため、気泡によって連通孔182が完全に閉塞されることがないため、常に、矢印54で示されるインク流路を確保することができる。
次に、図7を参照して逆止弁190の構成について詳述する。ここに、図7は、逆止弁190の構成を示す分解斜視図である。逆止弁190は、インク室170から連通孔181を通じてバルブ収容室120へのインクの流通を許容し、バルブ収容室120からインク供給室175へのインクの流通を制限するものである。
図7に示されるように、逆止弁190は、弁体191と、弁体191を受ける弁座192と、弁座192との間で弁体191を覆うカバー193とを備えている。弁体191は、シリコンゴムを射出成形することにより得られ、弁座192及びカバー193は、ポリプロピレン樹脂(PP)を射出成形することにより得られる。もちろん、このような材質以外のもので弁体191、弁座192及びカバー193が構成されていてもよい。
カバー193は、逆止弁収容部126の内孔に嵌め入れられている。カバー193は、底部を有する略円筒状に形成されており、底部に貫通孔245が設けられている。インクがこの貫通孔245を通る。貫通孔245に弁体191の軸部240が挿入される。また、カバー193の内孔246は、弁体191の傘部241の外径より大きいサイズに形成されている。したがって、カバー193の内部に傘部241が収容可能である。
弁体191は、傘部241と軸部240とを有し、側面視(図3の紙面に垂直な方向)で略傘形状に形成されている。傘部241は、カバー193の内孔246に対応させて円形状に形成されている。軸部240は棒状の部材であり、傘部241の中心から垂直方向に立設されている。弁体191は、軸部240側からカバー193の内孔246に挿入されると、軸部240が貫通孔245に挿通される。そして、傘部241がカバー193の内孔246に挿入される。
傘部241は、軸部240との連結部から外周端に渡って薄肉に形成されている。傘部241の周縁部と貫通孔245の周縁部とが弾性的に当接することにより、貫通孔245が傘部241によって閉塞される。これにより、外部からインク室170へ向かうインク流路が遮断される。また、傘部241の周縁部と貫通孔245の周縁部とが離反することにより、貫通孔245が開放される。これにより、インク室170から外部へ向かうインク流路が確保される。
弁座192は、弁座基部194と弁体受け部195とを備えて構成されており、その外観が略円盤状に形成されている。弁座基部194は、弁座192の底面199(インク供給バルブ200に当接される面)を形成する。この弁座基部194がインク供給バルブ200に当接される。弁座基部194の底面199には2つの突出リブ197が設けられている。この突出リブ197で囲まれた空間197aに、後述する第2バネ206bの頂部332(図9参照)が収容される。このとき、頂部332の外周面と突出リブ197の内面とが当接することで、第2バネ206bは、軸心方向57に直交する方向への移動が規制される。弁座基部194には弁座192の表裏を貫通する複数の貫通孔196が形成されている。インクがこの貫通孔196を流通する。
弁体受け部195は、弁体191を受ける部分である。弁体受け部195は、複数のリブ状部材で構成されている。弁体受け部195は、弁座基部194の上面に設けられた複数の溝198によって構成されている。貫通孔196は、弁座基部194の底面199から溝198の底部に貫通している。したがって、弁体受け部195で弁体191を受けたとしても、貫通孔197は塞がれない。
このように逆止弁190が構成されているため、インクがバルブ収容室120からインク供給室175へ逆流した場合は、逆流したインクが傘部241の外面242を押して、その力によって傘部241が軸心方向57へ移動して、傘部241の周縁部とカバー193の貫通孔245の周縁部とが弾性的に当接する。これにより、貫通孔245が閉塞されて、バルブ収容室120からインク供給室175へのインクの逆流が防止される。また、インクがインク供給室175からバルブ収容室120へ流れる場合は、インクが傘部241の内面243を押圧して、傘部241の周縁部と貫通孔245の周縁部とを離反させる。これにより、貫通孔245が開放されて、インク供給室175からバルブ収容室120へのインクの流通が可能となる。
次に、図8を参照しながらインク供給バルブ200の構成について詳述する。ここに、図8は、インク供給バルブ200の構成を示す分解斜視図である。インク供給バルブ200は、インク室170に収容されたインクを外部へ流出させるためのバルブである。図示されるように、インク供給バルブ200は、カバー205と、シール部材204と、バルブ本体207(本発明の蓋体に相当)と、第1バネ206a(本発明の弾性部材に相当)と、スライダ208(本発明の支持部材に相当)と、第2バネ206b(本発明の弾性部材に相当)とを備えて構成されている。第1バネ206a及び第2バネ206bは、シリコンゴムを射出成形することにより得られ、その他の部材は、アセタール樹脂(POM)を射出成形することにより得られる。なお、図8には、バルブ本体207、第1バネ206a、スライダ208及び第2バネ206bそれぞれが分解された状態と、これらが組み付けられた状態が示されている。
インク供給バルブ200は、上記各要素(カバー205、シール部材204、バルブ本体207、第1バネ206a、スライダ208、第2バネ206b)がその順序で係合されることによって構成される。上記各要素のうち、バルブ本体207、第1バネ206a、スライダ208、及び第2バネ206bがバルブ収容室120に収容される。また、カバー205とシール部材204は、開口122の周縁に装着される。
開口122の外縁部にシール部材204を介してカバー205が取り付けられている(図5参照)。カバー205及びシール部材204それぞれには、後述する貫通孔214,215が設けられている。このカバー205が上記外縁部に取り付けられた状態で、樹脂製の中空管からなるインクニードル65が挿入可能なインク供給口210(貫通孔214,215)が形成される。このインク供給口210は、その中心がバルブ収容室120の円筒中心線176(図5参照)に一致するように形成されている。なお、円筒中心線176は、インク供給バルブ200の軸心方向58に一致する。
シール部材204は、本体100の外部からバルブ収容室120にインクニードル65(図11参照)が挿通されるものである。なお、インクニードル65は、記録装置の記録ヘッドから導出されたインク管の先端に設けられた針状の管である。シール部材204は、密封性を高めるべく、ゴムなどの樹脂で構成されている。シール部材204は、バルブ収容室120の内径及び開口122(図5参照)の形状に合わせて、円環状に形成されている。詳細には、シール部材204は、バルブ収容室120の内周面に嵌め入れられる第1円柱部218と、開口122の周縁に当接される第2円柱部219とを有する。また、シール部材204には、第1円柱部218及び第2円柱部219の中心を貫通する貫通孔215が形成されている。貫通孔215にインクニードル65が挿通される。貫通孔215は、インクニードル65の外径よりもやや小さく形成されている。したがって、貫通孔215にインクニードル65が挿通されると、インクニードル65の外周面が貫通孔215の内面を押圧して密着する。これにより、インクニードル65は、バルブ収容室120と外部との密封状態を維持したまま、バルブ収容室120へ挿通される。
カバー205は、開口122(図5参照)を覆うとともにインクニードル65(図11参照)をバルブ収容室120へ導くものである。カバー205は、奥面を構成する円盤状の壁222と、壁222に形成された貫通孔214と、カバー205の側面を形成する筒状の側壁224とを有する。側壁224には複数の長孔226(本実施形態では2つ)が形成されている。バルブ収容室120を形成する側壁124の周面に突起状の爪123(図3参照)が設けられており、この爪123が長孔226に挿嵌される。これにより、開口122の周縁に対してカバー205が固定される。
バルブ本体207は、円盤状の壁228と、壁228の周縁から立設された筒状の側壁229とを有する。壁228には、複数の貫通孔230(本実施形態では4つ)が周方向に設けられている。貫通孔230は、壁228の周縁に設けられている。壁228がシール部材204に当接することにより、壁228の中央部分(貫通孔が形成されていない部分)が貫通孔215を塞ぐ。なお、貫通孔215が開放されているときは、壁228の貫通孔230を通ってバルブ本体207の内部をインクが流通する。
側壁229で囲まれたバルブ本体207の内部に第1バネ206aが収容される。このとき、第1バネ206aは壁228をバネ座としてバルブ本体207内に配設される。つまり、壁228は、第1バネ206aを受けるバネ座を兼ねる。側壁229の軸心方向58の端部には、軸心方向58に突出した複数の突出片231(本実施形態では2つ)が設けられている。この突出片231の先端に鉤状のフック232(本発明の係合爪に相当)が設けられている。このフック232がスライダ208の底板233に係合することで、バルブ本体207とスライダ208とが連結される。
バルブ本体207は、バルブ収容室120内において、インク供給バルブ200の軸心方向58(図5の矢印53の方向に一致する方向)へスライド可能に設けられている。言い換えれば、バルブ本体207は、背面102に直交する方向へスライド可能である。このバルブ本体207は、側壁229とバルブ収容室120の内面との間に所定寸法の隙間を形成しつつスライドする。この隙間及び貫通孔230によってインク流路が形成されている。
スライダ208は、第1バネ206a及び第2バネ206bを受けるものであり、円盤状の壁233と、壁233の周縁から表裏面それぞれに垂直な方向へ延びる外周壁234とにより構成されている。壁233と外周壁234とによって、軸心方向58に隣接する2つの空間が形成される。これら2つの空間うち、一方が第1バネ206aを受ける第1バネ座235a(本発明の座部に相当)であり、他方が第2バネ206bを受ける第2バネ座235bである。なお、第1バネ206a及び第2バネ206bについては後述する。
外周壁234の外径は、バルブ本体207の側壁224の内径より小さいサイズに形成されている。したがって、スライダ208は、バルブ本体207の内部に収容可能である。バルブ本体207にスライダ208が収容された状態で、スライダ208がバルブ本体207の内部でスライド可能に支持される。このようにスライダ208を支持するバルブ本体207の内部が、本発明のスライド支持部に相当する。本実施形態では、スライダ208は、第1バネ座235a側からバルブ本体207の内部に挿入される。
壁233の中心部分に貫通孔236(図11参照)が形成されている。この貫通孔236をインクが流通する。スライダ208は、外周壁234の一部が軸心方向58の両端部から底板233まで切り欠かれている。第1バネ座235aに第1バネ206aが支持された状態で、第1バネ座235a側からバルブ本体207が被せられ、そして、外周壁234の切欠部分に突出片231が挿通されると、フック232が底板233に掛け止められる。これにより、内部に第1バネ206aを収容した状態でスライダ208とバルブ本体207とが連結される。このとき、バルブ本体207とスライダ208とが軸心方向58に互いに近接する方向に押圧されると、内部の第1バネ206aが軸心方向に圧縮され、上記押圧が解除されると、第1バネ206aが伸長して、バルブ本体207とスライダ208とが元の位置に戻される。
図9は、第1バネ206aの構成を示す図であり、(a)には、第1バネ206aの側面図が示されており、(b)には、第1バネ206aの平面図が示されており、(c)には、第1バネ206aの底面図が示されており、(d)には、(b)の切断線IXd−IXdにおける第1バネ206aの断面図が示されている。以下に、図9を参照して、第1バネ206aについて説明する。なお、第2バネ206bは、第1バネ206aと同じ部材であるため、第2バネ206bの説明は省略する。
第1バネ206aは、略椀形状(又は略中空円錐形状)に形成されており、第1バネ206aの底面(直径の大きい方の端部)を形成する環状の底部331と、その底部331の直径より小さな直径に形成されると共に、第1バネ206aの上面(直径の小さい方の端部)を形成する環状の頂部332と、その頂部332と底部331との間に連接されると共に、インク供給バルブ200の軸心方向58(図8参照)に荷重がかかった場合に屈曲変形する胴部333とを主に備えている。なお、インク供給バルブ200の軸心方向58は、インクニードル65(図11参照)に押圧されたバルブ本体207の移動方向、及び、第1バネ206a及び第2バネ206bの付勢方向の双方に一致する。本実施形態では、第1バネ206aは、シリコンゴムで構成されている。もちろん、シリコンゴムに限られず、軸心方向58に荷重がかかった場合に胴部が屈曲変形可能な材質であれば如何なるもので構成されていてもよい。
頂部332は、バルブ本体207(図8参照)に収容される。この頂部332は、第1バネ206aが収容されたときに壁228に当接して、バルブ本体207をシール部材204(図8参照)側へ押圧する。底部331は、スライダ208の第1バネ座235aに収容される。底部331の直径が頂部332の直径より大きく形成されている。したがって、底部331は、仮に応力集中によって胴部333が挫屈しても、第1バネ206aの姿勢を安定に維持することができる。
図9(d)に示されるように、第1バネ206aには、頂部332の先端(図9(d)右側端面)から底部331の底面(図9(d)左側端面)まで連通したインク流路334が形成されている。このインク流路334は、頂部332の内周面により区画される上部流路334aと、胴部333の内周面により区画される胴部流路334bと、底部331の内周面により区画される底部流路334cとにより構成されている。このインク流路334の開口面積は、図9(d)に示されるように、頂部332から底部331へ向けて徐々に大きくなっている。言い換えれば、第1バネ206aの内部が、頂部332から底部331へ向けて末広がり状に形成されている。つまり、第1バネ206aが漏斗状に形成されている。また、図9(b)及び図9(c)に示されるように、頂部332の上部流路334aは、断面が円形の筒状に形成されている。
なお、第1バネ206aは、頂部332の上部流路334aの断面形状が略四角形に形成されたものであってもよい。上部流路334aの開口を略四角形に形成することで、インクに含まれた気泡によって上部流路334aが塞がることが防止される。すなわち、インクに含まれた気泡は略球体であるため、上部流路334aの断面形状が円形である場合は、上部流路334aの内径より大きく成長した気泡によって上部流路334が塞がれる場合が生じ得る。この場合、インク流路が遮断されるため、インクを記録装置へ供給することができなくなる。しかし、上部流路334aの開口を略四角形に形成することで、上部流路334aの開口面に大きく成長した気泡が停留しても、四隅は塞がれない。これにより、上部流路334aが塞がれることが防止され、結果として、記録装置による印字品質の低下が防止される。さらに、上部流路334aの開口面は四角形に限られず六角形や星型等の多角形状に形成するものとしてもよい。
本実施形態では、図9(d)に示されるように、頂部332は、軸心方向(一点鎖線の方向)に延在する比較的厚肉の筒状に形成されており、軸心方向(第1バネ206aの付勢方向)に直交する方向の断面形状が均一となるように形成されている。同様に、底部331も軸心方向に延在する比較的厚肉の筒状に形成されており、軸心方向と直交する方向の断面形状が均一となっている。
また、図9(d)に示されるように、胴部333は、軸心方向に対して所定の角度で湾曲した(又は傾斜した)略椀形状(又は略中空円錐形状)に形成されている。これにより、底部331及び頂部332に比べて軸心方向における荷重に対する強度が弱くなっている。しかも、胴部333の厚みは、底部331及び頂部332に比べて薄く形成されているので、これによっても胴部333の強度が弱くなっている。このように胴部333が形成されているため、第1バネ206に軸方向に外力が加えられると、胴部333に応力が集中する。したがって、所定の強さ以上の外力が第1バネ206aに加えられた場合は、真っ先に胴部333が弾性変形して挫屈することになる。
次に、図10を参照しながら大気連通バルブ131の構成について説明する。ここに、図10は、大気連通バルブ131の構成を示す分解図である。大気連通バルブ131は、開口132からインク室170に至る経路を開放又は遮断する弁機構である。この大気連通バルブ131は、インク室170と大気とを連通させるために設けられる。大気連通バルブ131は、図示されるように、カバー135、シール部材133、バルブ本体137(本発明の蓋体に相当)、第1バネ136a(本発明の弾性部材に相当)、スライダ138(本発明の支持部材に相当)、第2バネ136b(本発明の弾性部材に相当)とを備えて構成されている。この大気連通バルブ131は、これら各要素がその順序で係合されることにより構成される。上記各要素のうち、バルブ本体137にロッド134が設けられている点と、シール部材133にスカート部139が設けられている点が、インク供給バルブ200の各要素と異なる。なお、大気連通バルブ131のうち、ロッド134及びスカート部139を除く他の部位は、インク供給バルブ200と概ね同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。
バルブ本体137には、該バルブ本体137に外力を伝達するためのロッド134が連結されている。ロッド134は、シール部材133及びカバー135に形成された貫通孔(不図示)を挿通されて、本体100の外部に延びている。インクカートリッジ10が記録装置に装着されたときにロッド134が押圧されると、その押圧力がバルブ本体137に伝達される。このとき、バルブ本体137は、第1バネ136a、第2バネ136bの付勢力に抗してバルブ収容室130内をスライドする。これにより、シール部材133及びカバー135の貫通孔が開放されて、インク室170が大気に連通する。
スカート部139は、カバー135の貫通孔214の内面に当接するとともに、カバー135から外側へ露出される部材である。このスカート部139は、薄肉状に形成されている。インクカートリッジ10が記録装置に装着されると、スカート部139が記録装置側の壁面に当接して弾性変形する。これにより、カバー135と記録装置の壁面との間でスカート部139が緩衝材として作用する。
次に、図11を参照して、インク供給バルブ200にインクニードル65が挿入される前と挿入された後のインク供給バルブ200の動作とインク流路について説明する。ここに、図11は、インク供給バルブ200の動作を説明するための模式断面図であり、(a)には、インクニードル65が挿通される前の状態が示されており、(b)には、インクニードル65が挿通されている途中の状態が示されており、(c)には、インクニードル65が挿通されてインクカートリッジ10が記録装置に装着された状態が示されている。なお、大気連通バルブ131における空気の流路については、インク供給バルブ200におけるインクの流路と概ね同様であるため、本実施形態ではその説明を省略する。
インクカートリッジ10が記録装置に装着される前の状態(図11(a))では、バルブ本体207は、第1バネ206a及び第2バネ206bによって、軸心方向58と平行でシール部材204に当接する向きに付勢されている。これにより、インク供給口210がバルブ本体207で閉塞される。つまり、インクカートリッジ10が記録装置に装着される前の状態では、バルブ本体207は、インク供給口210を閉塞する位置(本発明の第2位置に相当)に移動している。
図11(a)に示されるように、第1バネ206aがバルブ本体207(及びスライダ208)内に収納されている状態で、第1バネ206aの胴部333は若干撓んでいる。一方、スライダ208の上部(図11(a)上側)に配置される第2バネ206bの胴部333に撓みは生じていない。これは、バネ206a,206bの撓む順序決めをするためである。即ち、胴部333が撓んでいる第1バネ206aの方が第2バネ206bよりも撓みやすくなっている。したがって、インクニードル65がインク供給口210に挿通されてバルブ本体207が押圧されると、第1バネ206aが先に撓み、その後、第2バネ206bが撓むように構成されている。
なお、第1バネ206aの胴部333の撓みは、バルブ本体207のフック232がスライダ208の壁233に係合することにより形成される。バルブ本体207の壁228の内側の壁面からフック232の壁228側の端面との間の距離d(図11(a)参照)が、スライダ208の壁233の厚みと、第1バネ206aの上下方向のサイズ(高さ)との合算値よりも短く形成されているので、スライダ208の壁233にバルブ本体207のフック232が係合すると、第1バネ206aの胴部333に僅かな撓みが生じる。ここで、インク供給バルブ200の軸心方向58の高さは、各部品毎に生産時の寸法誤差があるので、部品点数が多くなるほど寸法誤差が生じやすくなる。しかし、スライダ208がバルブ本体207のフック232に当接されているので、インク供給バルブ200は、少なくとも第1バネ206aの寸法の誤差による影響を受けない。よって、インク供給バルブ200の寸法誤差が少なくなり、インク供給バルブ200の動作が安定する。
また、図11(a)に示されるように、バルブ本体207の側壁229の内径と、スライダ208の外周壁234の外径とは略同等に形成されている。よって、スライダ208がインク供給バルブ200の軸心方向58に動作した場合に、移動方向のずれの発生を防止することができる。また、外周壁234の内径と、各バネ206a,206bの底部331の外径とが略同等に形成されている。よって、各バネ206a,206bが、スライダ208の壁233に配設された状態で、軸心方向58と直交する方向(図11(a)左右方向)へずれることを防止することができる。また、バルブ本体207の側壁229の外形は、バルブ収容室120の内径より若干小さいものの、略同等に形成されている。よって、バルブ本体207が軸心方向58へ動作した場合における移動方向のずれを防止することができる。従って、インク供給バルブ200の軸心方向58方向への動作が安定する。
図11(b)に示されるように、インクニードル65がインク供給口210を通じてシール部材204の貫通孔215に挿通され、バルブ収容室120内に進入する。インクニードル65の先端がバルブ本体207の壁228に当接して、バルブ本体207を弁座192側(図11(b)の上方)へ移動させる。これにより、インク供給口210が開放される。つまり、バルブ本体207が、インク供給口210を開放する位置(本発明の第1位置に相当)に移動する。バルブ本体207の移動に伴って、第1バネ206aが圧縮されてその胴部333が屈曲変形する。しかし、インクニードル65の進入量が僅かであるときは、バルブ本体207の移動分だけ第1バネ206aの胴部333のみが屈曲変形する。つまり、第1バネ206aの胴部333のみが挫屈する。このとき、スライダ208は移動せず、バルブ本体207のフック232とスライダ208の壁233とが離される。
インクニードル65がさらにバルブ収容室120内に進入すると、バルブ本体207が弁座192側へさらに移動する。これに伴って、スライダ208が弁座192側(第1バネ206a及び第2バネ206bの付勢方向と反対方向)へ移動し、その移動に伴って第2バネ206bの圧縮が開始される。つまり、第2バネ206bの胴部333の屈曲変形が開始される。
図11(c)に示されるように、インクカートリッジ10が記録装置に完全に装着された状態では、第2バネ206bの胴部333が屈曲変形して挫屈する。このとき、矢印66で示されるインク流路が形成される。矢印66で示されるインク流路は、カバー193の貫通孔245、弁座192の貫通孔196、第1バネ206aの内部空間(インク流路334)、スライダ208の貫通孔236、第2バネ206bの内部空間(インク流路334)、バルブ本体207の貫通孔230、インクニードル65の内孔を順次通る流路を含む。この流路がインクの大半が流れる主流路となる。また、バルブ本体207とバルブ収容室120の内壁との間に形成された隙間もインク流路となる。
ここで、図12を参照して、インクカートリッジ10の装着に伴い第1バネ206a及び第2バネ206bが屈曲変形する動作について説明する。ここに、図12は、第1バネ206a及び第2バネ206bのバネ長さと荷重との関係を示すグラフであり、横軸は、インクカートリッジ10の未装着時を基準としたときの第1バネ206a及び第2バネ206bのバネ長さの変位量(換言すれば、バルブ本体207の移動距離)Lであり、縦軸は、インクカートリッジ10の装着時に第1バネ206a及び第2バネ206bに加わる荷重Wである。なお、図12中の曲線αは、インクカートリッジ10が装着されるときのグラフであり、曲線βは、インクカートリッジ10が脱抜されるときのグラフである。また、図12では、縦軸と横軸との交点を原点Oとしている。また、点Qは、インクニードル65が挿通されていない状態(図11(a)の状態)を示しており、曲線α及び曲線βは、上記点Qにおいて縦軸と交差している。
図12の曲線αに示されるように、インクカートリッジ10の装着が開始されて、インクニードル65(図11参照)の先端がバルブ本体207に当接してバルブ本体207を押圧すると、バルブ本体207に加わる荷重は点Qから急激に上昇する。この荷重は、第1バネ206aの胴部333が挫屈するまで継続して上昇する。その後、第1バネ206aの胴部333が屈曲し始めると、その荷重が急激に下がる。このときの曲線αにおける荷重の変曲点(ピーク点)が、図12中のP1点である。
その後、インクカートリッジ10の装着が継続され、バルブ本体207がインクニードル65によって更に押圧されると、第1バネ206aの屈曲変形が終わり、その胴部333が完全に挫屈する。そして、第1バネ206aで吸収されていた力が第2バネ206bに加わり、再度荷重が急激に上昇する。このときの曲線αにおける荷重の変曲点が、図12中のP2点である。その後、荷重は第2バネ206bの胴部333が屈曲し始める変曲点P3まで急激に上昇し、変曲点P3以降は再度荷重が急激に下がり、第2バネ203bの胴部333が完全に挫屈するP4点に達する。
このような第1バネ206a及び第2バネ206bが備えられているため、インク供給バルブ200では、その動作過程において2段階の荷重変化が生じる。よって、インクカートリッジ10の装着者は、インクカートリッジ10を装着し始めた初期段階においては強くインクカートリッジ10を押し付ける必要があるものの、変曲点P1を超えた以降は、最初の荷重変化によって比較的小さい力を加えるだけでバルブ本体207を移動させることができる。なお、第2バネ206bによって再び荷重が上昇するものの、線形特性を有するバネに比べ、小さい力でバルブ本体207を移動させることに変わりはない。
また、図12の曲線αに示されるように、本インク供給バルブ200においては、第1バネ206a及び第2バネ206bによって2段階の荷重の変化が生じる。この荷重変化は、インクカートリッジ10の装着者の身体(例えば、手や指)に対して触感(挫屈感)として伝達される。したがって、装着者は、インクカートリッジ10の装着が正確に行われていることを挫屈感を感じ取ることで判断することができる。これにより、インクカートリッジ10が正確に装着されているか否かを目視確認することなく、挫屈感によって確認することができる。
ところで、インクカートリッジ10の脱抜にも同様に荷重の変化が生じる。その荷重変化は、図12にしめされるように、インクカートリッジ10の脱抜時の曲線βに表されている。インクカートリッジ10の脱抜時は、脱抜開始時は、第1バネ206a及び第2バネ206bが元の状態に戻る弾性力があるので、荷重が小さくなっている。したがって、操作者は、装着時よりも小さな力を加えるだけでインクカートリッジ10を脱抜することができる。
なお、本実施形態では、第1バネ206aと第2バネ206bの2つのバネを有するインク供給バルブ200について例示したが、第1バネ206a又は第2バネ206bのいずれか1つを有するインク供給バルブ200としてもかまわない。もちろん、インク供給バルブ200と同じように、大気連通バルブ131が、第1バネ136a及び第2バネ136bのいずれか一方のみで構成されたものであってもよい。
なお、上述した実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更することが可能である。