JP4857602B2 - 染料インキの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1の実施例1には、染料が有機溶剤に対して、3.8%の割合で溶解している染料インキが示されているが、実際に調べた結果、用いられている染料のトルエン、メチルエチルケトンに対する25℃での溶解性は、MS−RED−G(三井東圧製、ディスパースレッド60)がそれぞれ1.0%、0.9%であり、マクロレックスバイオレットR(バイエル製、ディスパースバイオレット26)ではそれぞれ3.0%、2.7%であった。特許文献1の実施例1で示されている染料インキは、ディスパースレッド60が有機溶剤に対して2.15%、ディスパースバイオレット 26は1.61%溶解していることになる。ディスパースレッド60は染料自体の溶解度を上回る量でインキ中に存在できているが、これは溶剤が混合溶剤であることによる染料の溶解性の向上、構造の異なる複数の染料を同時に存在させたことによる溶解性の向上、バインダー樹脂の存在によりインキ粘度が調整されているため、染料が沈殿しにくくなっていること等の理由が考えられるが、有機溶剤に対する溶解性に対して約2倍程度の染料を含有させることができている。しかしながら、これを超える量の染料を存在せしめる場合には、上述した問題が発生してしまうため、このような手法を用いる溶解性の向上は、おおよそ染料の溶解度の2倍量程度までと考えられる。
さらに、本発明の染料インキの製造方法を適用することで、従来の方法では利用し得なかった染料を、有機溶剤への溶解性に関係なく使用することが可能となるため、染料の選択範囲が格段に広がり、より高濃度で高耐久な印画物を容易に得ることが可能となる。
(染料)
本発明で使用する染料は、従来公知の昇華転写方式の熱転写シートに使用される染料はいずれも有機溶剤への溶解度に関係なく使用可能であるが、特に有機溶剤への溶解性が1%未満など非常に低い場合であっても、使用するバインダー樹脂への溶解性が高いか、あるいはバインダー樹脂中に高濃度で溶解または微分散が可能な染料であれば好適に使用することができ、結果として有機溶剤への溶解度を大きく超えた染料層を形成可能である。その染料として、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キノフタロン系などの染料が挙げられる。具体的には、ソルベントイエロー、ディスパースイエロー、ソルベントレッド、ディスパースレッド、ソルベントブルー、ディスパースブルー等のそれぞれのC.I.(カラーインデックス)No.で、選択できる。これらの染料をイエロー、マゼンタ、シアンのような種類の染料インキを製造する上で、1種類、または2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明の染料インキに使用するバインダー樹脂としては、上記の染料をバインダー樹脂中に溶解または分散させて、染料を担持させている。そのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
本発明の染料インキで使用する有機溶剤は、メチルエチルケトン、トルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、酢酸エチル等或いはそれらの混合溶剤が使用でき、一般的に使用される汎用有機溶剤である。本発明では、有機溶剤は、染料インキの塗工適性を考慮して、沸点の低い溶剤に、少し沸点を高めた溶剤を加えた混合溶剤を使用し、染料インキが塗工中に溶剤が蒸発して、粘度アップが生じやすくなることを防止することが好ましい。また、その染料インキの基材シートへ塗工し、乾燥する際に、乾燥が不十分であると、地汚れや、巻取りにした際に、染料インキが裏移りし、さらにその裏移りした染料インキが巻き返した際に、異なる色相である染料層に再転移する、いわゆるキックバックが生じることがあり、上記の粘度安定性、蒸発性等のバランスを考慮し、有機溶剤を選択することが望ましい。
本発明の染料インキの製造方法として、まず原料として、染料とバインダー樹脂を用意する。この染料とバインダー樹脂を攪拌、混練して、染料がバインダー樹脂中に溶解または分散した状態の染料マスターバッチを作製する。つまり攪拌、混練工程を行なう。この工程では、例えば、プロペラ型攪拌機、ディゾルバー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、2本ロールミル、3本ロールミル、超音波分散機、ニーダーおよびラインミキサー等の攪拌混合機を用いることができる。特に、2本ロールミル、3本ロールミル、2軸押出し機、ニーダー等の高シェアレートでの混練が可能な機械を選定することにより、染料の分散性の高い染料インキが製造しやすいので、好ましく用いられる。また、攪拌時間は攪拌の例えば回転数等の条件により変動するものであるが、例えば30分〜120分程度である。また、攪拌、混練工程における加熱条件を行なう場合、温度としては、80〜250℃程度である。
(基材シート)
基材シートとしては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであれば、いずれのものでもよい。好ましい基材シートの具体例は、グラシン紙、コンデンサー紙、パフィン紙等の薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチックの延伸あるいは未延伸フィルムや、これらの材料を積層したものが挙げられる。この基材シートの厚さは、強度及び耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
(実施例1)
染料として、メチルエチルケトンに対して、0.2%しか溶解しないSolvent Red 155を使用し、ポリビニルアセトアセタール樹脂(エスレックKS−5、積水化学工業(株)製)への分散を試みた。
Solvent Red 155を10部、エスレックKS−5を20部、トルエンを20部で配合したものを、100℃の加熱条件下で、ローラーローターを用いて、回転数50rpmにて20分間、さらに回転数100rpmで20分間、攪拌、混練し、その後冷却、乾燥、固化させて、染料マスターバッチを製造した。上記の攪拌、混練、冷却、乾燥、固化の各工程は、英弘精機(株)製のポリラボシステムを利用して行なった。
・サーマルヘッド:KGT−217−12MPL20(京セラ製)
・発熱体平均抵抗値:3195(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印字電力:0.12(W/dot)
・1ライン周期:5(msec.)
・印字開始温度:40(℃)
・階調制御方法:1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長を持つ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を60%固定とし、階調によって、ライン周期あたりのパルス数を1ステップでは0個、2ステップでは17個、3ステップでは34個と0から255個まで17個毎に順次増加させることにより、1ステップから16ステップまでの16階調を制御した。この印字条件による印画濃度のグラフを図3に示した。
実施例1で使用した染料とバインダー樹脂と同じものを用意し、それらをペイントシェーカーを用いて、メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量基準)の混合溶剤に溶解または分散させて、固形分が約5%となるように、染料インキを作製した。但し、染料が染料インキ中で析出しない範囲で、添加し、40℃の加熱条件下にて、インキを調整した。すなわち、比較例1では染料マスターバッチを製造せずに、染料とバインダー樹脂と有機溶剤の原料を一度に攪拌、混練して、染料インキを製造した。その染料インキを使用して、実施例1の場合と同様に、基材シート上に染料層を設けて熱転写シートを用意した。
実施例1で使用した染料とバインダー樹脂と同じものを用意し、それらをペイントシェーカーを用いて、メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量基準)の混合溶剤に溶解または分散させる。その際に、比較例1とは異なる条件として、染料が染料インキ中で析出する範囲で、染料を添加して、固形分が約5%となるように、染料インキを作製した。この場合、比較例1における加熱条件を行なわないで、原料を溶解または分散させて、染料インキを製造したものである。その染料インキを使用して、実施例1の場合と同様に、基材シート上に染料層を設けて熱転写シートを用意した。この熱転写シートは染料層にスジ状のムラが生じており、塗工面の品質が不良であった。よって、実施例1、比較例1と同様に印画物を形成したが、ステップ別の階調画像として、ムラが多く、印字濃度を正確に測定することが出来なかった。
Claims (1)
- 染料、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる染料インキの製造方法において、染料をバインダー樹脂に溶解または分散させるために、染料とバインダー樹脂を攪拌、混練して、染料マスターバッチを作製し、次に該染料マスターバッチを有機溶剤に溶解または分散させて、染料インキを作製し、前記の染料が前記の有機溶剤に溶解する限度を超えた量で、染料インキ中に含有されていることを特徴とする染料インキの製造方法。
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