JP4857241B2 - 機械装置及びその駆動体保持機構 - Google Patents

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本発明は、ローラギアカム,ボール減速機,バレルカム,バレル形減速機などの機械装置及びその駆動体保持機構に関する。
従来の機械装置,例えばボール減速機としては、下記特許文献1記載のウォーム減速機がある。これによれば、入力軸に固定されたウォームギアと出力軸に固定されたウォームホイールとによって、ウォーム減速機における入力回転の減速が行われる。鼓形のウォームギアのつる巻状のボール溝は、ウォームホイールの周囲の多数の窪み内に配されたボールと噛み合い、ウォームギアの回転動力が、ウォームホイールに伝わる。
特開平5−302649公報
ところで、上述した背景技術では、ウォームホイールの周囲の窪み内に配されたボールがケースによって保持されている。すなわち、ケースによってウォームホイールからのボールの脱落が防止されている。このため、減速機自体が大型化するとともに、重くなるという不都合がある。一方、ロボットなどではその関節部分に減速機が使用されるが、減速機の小型化,軽量化が強く要望されている。減速機以外の各種の機械装置においても同様である。
本発明は、以上の点に着目したもので、ボール等の駆動体保持機構を簡略化することで、それを適用した機械装置の小型化,軽量化を図ることをその目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、磁性材料で形成した第1の機械部材に凹部を形成するとともに、この凹部内に磁石と、第2の機械部材に当接する駆動体とを収納し、前記磁石により前記駆動体を吸着して保持する駆動体保持機構であって、前記凹部が、前記磁石を収納する収納部と、前記駆動体を受ける球面部とによって構成されており、前記磁石と前記駆動体との間にスペースが形成されるように、前記凹部と前記球面部を形成した、ことを特徴とする。

主要な形態の一つは、前記駆動体が、剛球であることを特徴とする。他の形態の一つは、前記駆動体に与圧を付与するための付勢手段を設けたことを特徴とする。

本発明の機械装置は、前記いずれかに記載の駆動体保持機構を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明によれば、磁石を利用してボールなどの駆動体を保持するので、保持用のケースを省略することができ、機械装置の小型化・軽量化を図ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。本実施例は、上述したボール減速機に本発明を適用したもので、図1(A)に示すように、ウォームギア10と、ウォームホイール20とによって構成されている。ウォームギア10は、入力軸12に固定されており、ウォームホイール20は出力軸22に固定されている。図示の例では、入力軸12と出力軸22は略直交している。これらの各軸12,22は、いずれも適宜の軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。
前記ウォームギア10の外周には、螺旋状のボール溝14が形成されており、ウォームホイール20の外周には多数の凹部24が形成されている。凹部24は、図1(B)に分解して示すように、永久磁石26を収納する収納部24Aと、ボール28を受ける球面部24Bを含む。図1(C)に拡大して示すように、磁石26は、凹部24の収納部24Aに収納される。本実施例では、ウォームホイール20が磁性体ないし磁性材料で形成されているので、磁石26は、ウォームホイール20に磁力によって吸着する。次に、凹部24の球面部24Bにボール28が収納される。ボール28も磁性体によって形成されており、磁石26に吸着される。なお、磁石26とボール28との間にスペース29が形成されるように、各部の寸法が設定されている。スペース29は、ボール28の回転による磁石26の損傷を防ぐとともに、油溜まりとしても機能する。
磁石26から出た磁力線は、図1(C)に矢印FA(もしくはその逆)で示すように、ボール28,ウォームホイール20内を通過して再び磁石26に戻る。このように、ボール28は、ウォームホイール20の凹部24に磁石26によって保持され、これらのボール28が、上述したウォームギア10のボール溝14に嵌まり込んで噛み合う構成となっている。
次に、本実施例の作用を説明すると、入力軸12の回転に伴ってウォームギア10が回転すると、そのボール溝14に沿ってボール28が移動するようになる。このボール28の移動に伴ってウォームホイール20が回転し、更には出力軸22が回転するようになる。このようにして、入力軸12の回転が出力軸22に伝達される。入力軸12の回転数に対して出力軸22の回転数が小さくなるので、結果的に減速機として作用することとなる。これらの動作は、上述した背景技術と同様である。
ところで、本実施例によれば、上述したように、ボール28が磁石26によってウォームホイール20側に吸着されている。このため、ウォームホイール20からのボール28の脱落を防止するためのケースを省略することができる。従って、減速機全体として小型化,軽量化を図ることができ、ロボットの関節などに好都合である。また、磁石の磁力がウォームホイール20とボール28を通過する閉ループを形成し、外部に磁力線が漏れない。このため、潤滑オイル内に鉄粉等が浮遊しても、それら鉄粉がウォームホイール20やボール28に付着することはない。
次に、図2を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。本実施例は、上述した実施例1のボール28に付勢手段により与圧を付与してバックラッシュを低減するようにした例である。同図中、(A)はボール28が沈んだ状態を示し、(B)はボール28が浮いた状態を示す。これらの図において、円柱状の枠50の外面側には、上述した磁石26及びボール28を収納するための凹部52が形成されている。一方、枠50の内面側には、バネ56を収納するための凹部58が形成されている。枠50の中心であって、前記凹部52の底側には軸部材60が設けられており、この軸部材60にボルト62が摺動可能に設けられている。このボルト62にはシール64が設けられており、このシール64と、前記枠50との間に前記バネ56が挟まれた構造となっている。以上の全体が、ウォームホイール20の周面に埋め込まれるとともに、前記ボルト62の先端が、ウォームホイール20側に設けられたナット(図示せず)にねじ込んで固定されている。すなわち、ボール28及び枠50がバネ56を介してボルト62,すなわちホイール側に固定された構造となっている。他の部分の構成は、上述した実施例1と同様である。
次に、本実施例の作用を説明すると、上述したように、ウォームホイール20側のボール28は、ウォームギア10側のボール溝14と噛み合うが、各部の機械寸法の誤差や、熱的な変形などの理由から、ボール28にかかる圧力が変化する。圧力が高くなると、ボール28に対する圧力が枠50に伝達され、枠50がウォームホイール20に対して沈み込むようになる。すなわち、図2(B)から(A)の状態となる。逆に、圧力が低くなると、バネ56が伸びるようになり、枠50がウォームホイール20の外面側に繰り出し、ひいてはボール28がボール溝14に押し当てられるようになる。このように、バネ56の作用によって、ボール28に対するバックラッシュが低減される。
次に、図3を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。まず、図3(A)に示す例は、ローラギアカムに対して本発明を適用した例である。ローラギアカムは、例えば工作機械の自動工具交換装置(ATC)に使用されている。入力側であるローラギアカム100のボール溝102に対して、出力側であるタレット110のボール28が噛み合っている。タレット110における磁石26やボール28の取付部分の構造は上述した実施例1と同様であり、タレット110は磁性体によって形成される。ローラギアカム100の回転に伴い、タレット110が回転・揺動運動する。
図3(B)の例は、バレルカムないしバレル形減速機に対して本発明を適用した例で、入力側であるカム200に、出力側であるタレット210がボール28を介して噛み合った構造となっている。カム200にはボール当接面202が設けられており、タレット210の主面外周側には、上述した実施例と同様に磁石26及びボール28が複数設けられている。タレット210における磁石26やボール28の取付部分の構造は上述した実施例1と同様であり、タレット210は磁性体によって形成される。カム200の回転に対し、ボール当接面202の形状に対応してタレット200は間欠回転運動を行う。
図3(C)の例は、ATCアームフック固定解除ピンに対して本発明を適用した例で、ピン当り面300は、固定解除ピン310にボール28を介して当接している。固定解除ピン310は、バネ312によって上下動可能に基部314に支持されている。固定解除ピン310における磁石26やボール28の取付部分の構造は上述した実施例1と同様であり、固定解除ピン310は磁性体によって形成される。
次に、図4を参照しながら、本発明の実施例4について説明する。上述した実施例は、いずれもボールに対して本発明を適用したものであるが、本実施例は、円筒状ないし円柱状のカムフォロアに対して適用した例である。同図(A)は、ホイールやタレットなどの保持ベース500の凹部502に対して、上述した実施例と同様に、まず磁石26を収納し、次に円筒状のカムフォロア510を回転可能に収納した例である。本例でも、保持ベース500は、磁性体によって形成されている。カムフォロア510は、磁石26に吸引されて保持ベース500の凹部502内に保持されているので、軸512を中心として自在に回転することができる。図4(B)の例は、前記図4(A)と比較して、カムフォロア520の保持ベース500からの露出部分にテーパ520Aを形成して円錐状とした例である。
図4(C)の例は、前記図4(A)の変形例である。図4(A)の例では、保持ベース500の凹部502にカムフォロア510の外面が当たり摩擦が生ずるが、特にカムフォロア510の磁石側の角部において顕著となる。そこで、本例では、カムフォロア530の磁石側部に切除部532を形成し、この切除部532と保持ベース500の凹部502との間に、多数のボール534を挿入している。本実施例によれば、これらのボール534の作用により、保持ベース500とカムフォロア530との間の摩擦が低減されるようになる。なお、ボール534は、磁性体で形成してもよいが、磁性体としなくても、カムフォロア530の切除部532内に保持される。図4(D)の例は、前記図4(B)の例に対して前記図4(C)を適用したもので、カムフォロア540の保持ベース500からの露出部分にテーパ520Aが形成されている。
図4(E)の例は、前記図4(C)の変形例で、カムフォロア550の胴体部分に凹部552を形成し、この部分と保持ベース500の凹部502との間に複数のニードルピン554を挿入した例である。ニードルピン554の作用によって、カムフォロア550の胴体部分と、保持ベース500の凹部502との摩擦が低減されるようになる。図4(F)の例は、前記図4(B)の例に対して前記図4(E)を適用したもので、カムフォロア560の保持ベース500からの露出部分にテーパ520Aが形成されている。
以上の図4に示した実施例でも、カムフォロアは磁石によって保持ベースに回転自在に保持される。このため、カムフォロアの脱落を防止するためのケースを省略することができ、機械装置の小型化,軽量化を図ることができる。
次に、図5を参照しながら実施例5について説明する。本実施例は、接合体の例で、(A)は磁性材料によって形成された棒600の先端に凹部602が形成されている。凹部602は、その底側に磁石604の収納部602Aが形成されており、その周囲の球面部602Bに、磁性材料によるボール606が回転自在に当接している。同図(B)に示す従来技術のように、棒610の先端に凹部612を形成してボール614を圧入する場合、ボール614の中心HCは、棒610の先端より凹部内側に位置している必要がある。しかし、同図(A)の例によれば、磁石604によってボール606を吸着しているので、必ずしもそのような必要はなく、ボール606の中心HCが凹部602の外側,すなわち棒600の先端よりも飛び出した位置であってもよい。
図5(C)は、同図(A)のボール606の代わりに、その一部を切除して平面を形成した切断球608を球面部602Bに当接させた例である。図5(D)は、同図(A)の棒600の外周にネジ溝620を形成し、ボルトとして機能するようにしたものである。図5(E)は、同図(C)の棒600の外周にネジ溝620を形成し、ボルトとして機能するようにしたものである。図5(F)は、同図(E)の棒600の先端にフランジ622を設けた例である。図5(G)は、棒630のフランジ622側に、前記凹部602を形成するとともに、磁石604及び切断球608を収納した例である。
図6は、押え機構の例である。同図(A)の主要断面図及び同図(B)の底面図に示すように、押え板700の先端に凹部702を形成し、磁石704及び切断球706を収納している。また、押え板700の中央寄りには、後述するボルトを通すための貫通孔710を設けている。なお、凹部702,磁石704,切断球706の代わりに、上述した図5(E)ないし(F)の接合体を押え板700に形成したナットにネジ止めしたり、図5(G)の接合体を押え板700に形成した穴に圧入するようにしてもよい。
このような押え板700は、例えば図6(C)に示すように、部材720に対して部材722を固定するような場合に使用する。すなわち、押え板700と部材720との間に部材722を挟み込む。このとき、切断球706の平坦面が部材722の表面に当接する。次に、押え板700の貫通孔710及び部材720の貫通孔724にボルト726を貫通させ、部材720の裏側でナット728により締付固定する。これにより、押え板700によって部材722が部材720に押さえ付けられて固定される。このとき、部材722の表面が傾いていても、切断球706が回転し、切断球706の平坦面と部材722の表面は絶えず全体として接合した状態を維持する。
この場合に、本実施例によれば、切断球706の球中心が押え板700の表面よりも突出していてもよく、切断球706を例えば半球とすることができ、切断球706の平坦面を従来技術よりも大きくすることができる。また、切断球706と凹部702の内側との接触面積も従来技術より小さくなり、切断球706の回転が滑らかになる,摩擦が低減される,といった利点も生ずる。
なお、本発明は、何ら上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,材質は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更してよい。また、前記実施例を組み合わせてもよい。例えば、図2に示した実施例を、図3〜図6に示した実施例に適用するという具合である。
(2)前記実施例では、ボール減速機やバレル形減速機などを機械装置の例として示したが、ボールやカムフォロアなどの駆動体に当接して機械部材が当接あるいは駆動される構造のものであれば、各種の機械装置に適用可能である。
(3)前記実施例で示したボールとしては、特に剛球が好適であるが、それに限定されるものではない。
本発明によれば、ボールやカムフォロアなどの駆動体を磁性材料によって形成するとともに、磁石を利用して機械部材に吸着保持することとしたので、ボール等の保持機構を簡略化することができる。従って、それを適用した機械装置の小型化,軽量化を図ることができ、ロボットの関節などに好適である。
本発明の実施例1を示す図であり、(A)は概略の側面図,(B)は主要部の組立図,(C)は磁束の様子を示す説明図である。 本発明の実施例2を示す図であり、(A)はボールが沈んだ状態を示す図,(B))はボールが浮いた状態を示す図である。 本発明の実施例3を示す図であり、(A)はローラギアカムに対する適用例を示す図,(B)はバレルカムないしバレル形減速機に対する適用例を示す図,(C)はATCアームフック固定解除ピンに対する適用例を示す図である。 本発明の実施例4を示す図である。 本発明の実施例5を示す図である。(A)及び(C)〜(G)は実施例の主要部を示す図であり、(B)は背景技術を示す図である。 本発明の実施例5を示す図である。(A)は主要断面図であり、(B)は(A)の例の底面図である。(C)は使用状態の一例を示す図である。
符号の説明
10:ウォームギア
12:入力軸
14:ボール溝
20:ウォームホイール
22:出力軸
24:凹部
24A:収納部
24B:球面部
26:磁石
28:ボール
29:スペース
50:枠
52:凹部
56:バネ
58:凹部
60:軸部材
62:ボルト
64:シール
100:ローラギアカム
102:ボール溝
110:タレット
200:カム
202:ボール当接面
210:タレット
300:ピン当り面
310:固定解除ピン
312:バネ
314:基部
500:保持ベース
502:凹部
510:カムフォロア
512:軸
520:カムフォロア
520A:テーパ
530:カムフォロア
532:切除部
534:ボール
540:カムフォロア
550:カムフォロア
552:凹部
554:ニードルピン
560:カムフォロア
600:棒
602:凹部
602A:収納部
602B:球面部
604:磁石
606:ボール
608:切断球
610:棒
612:凹部
614:ボール
620:ネジ溝
622:フランジ
630:棒
700:押え板
702:凹部
704:磁石
706:切断球
710:貫通孔
720:部材
722:部材
724:貫通孔
726:ボルト
728:ナット
HC:中心

Claims (4)

  1. 磁性材料で形成した第1の機械部材に凹部を形成するとともに、この凹部内に磁石と、第2の機械部材に当接する駆動体とを収納し、前記磁石により前記駆動体を吸着して保持する駆動体保持機構であって、
    前記凹部が、前記磁石を収納する収納部と、前記駆動体を受ける球面部とによって構成されており、
    前記磁石と前記駆動体との間にスペースが形成されるように、前記凹部と前記球面部を形成した、
    ことを特徴とする駆動体保持機構。
  2. 前記駆動体が、剛球であることを特徴とする請求項1記載の駆動体保持機構。
  3. 前記駆動体に与圧を付与するための付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の駆動体保持機構。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の駆動体保持機構を備えたことを特徴とする機械装置。
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