JP4529090B2 - 電動アクチュエータ - Google Patents

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Description

本発明は、駆動部の駆動作用下にピストンを軸線方向に沿って変位させ、該ピストンの変位作用下にワークの搬送・把持等が可能な電動アクチュエータに関する。
従来から、このような電動アクチュエータを適用した一例として、工作機械等の先端部に取り付けられ、把持機構を開閉させることによりワークを把持可能なチャック装置が知られている。
図10に示されるように、このチャック装置1は、ケーシング2の内部にモータ3が設けられ、該モータ3の出力軸4の上端部に断面楕円状のカム5が連結されている。前記カム5の外周面には、一組のローラ6a、6bが当接すると共に、該ローラ6a、6bがケーシング2に対して傾動可能に軸支された一組のフィンガ7a、7bの一端部にそれぞれ回転自在に設けられている。このフィンガ7a、7bには、その一端部を互いに接近する方向に引張するコイルバネ8が介装され、前記一端部側に装着されたローラ6a、6bが常にカム5の外周面に向かって押圧されている。フィンガ7a、7bには、ケーシング2に軸支された部位と一端部との間にそれぞれバネ板9a、9bが設けられ、該バネ板9a、9bは前記フィンガ7a、7bが軸支された部位を支点としてカム5から離間する半径外方向に湾曲可能である。また、フィンガ7a、7bの他端部には、被挟持物10を把持可能な爪部11a、11bがそれぞれ設けられている。
そして、モータ3の駆動作用下にカム5が回転し、該カム5によってローラ6a、6bがコイルバネ8のバネ力に打ち勝って互いに離間するように半径外方向に変位することにより、フィンガ7a、7bがケーシング2に対して軸支された部位を支点として傾動する。これにより、一組の爪部11a、11bが、互いに接近する方向に変位し、該爪部11によって被挟持物10が把持される。この際、爪部11a、11bによる被挟持物10の把持力はバネ板9a、9bのバネ力によって保持される(例えば、特許文献1参照)。
特開平5−220684号公報
ところで、特許文献1に係る従来技術においては、カム5を駆動源であるモータ3に対して直接接続する構造としているため、該モータ3から出力された出力がそのまま前記カム5へと伝達され、前記カム5を所望の回転量(回転数、回転角度等)に制御することができないという問題がある。
また、フィンガ7a、7bの傾動量を、モータ3に設けられた光学センサ12によって検出される回転数等に基づいて制御する構成としているが、前記光学センサ12が高価であるため、チャック装置1における製造コストの増大及び該チャック装置1の大型化を招くと共に、前記フィンガ7a、7bの傾動動作及びカム5の回転動作を機械的に停止させる手段を何ら備えていないため、前記モータ3が何らかの原因で過回転した場合に、前記フィンガ7a、7bによる被挟持物10の把持を確実且つ安定して行うことが困難である。
さらに、被挟持物10をフィンガ7a、7bの傾動作用下に把持する際に、前記フィンガ7a、7bに介装されたコイルバネ8のバネ力と板バネ9のバネ力とが相反する方向に作用することになるため、該コイルバネ8と板バネ9のバネ力とが互いに相殺し、前記板バネ9のバネ力によって保持される被挟持物10の把持力が低下してしまうことが懸念される。
本発明は、前記の種々の課題を考慮してなされたものであり、ギア機構を介してピストンに伝達される駆動部からの出力を制御することができ、且つ、変位終端位置における前記ピストンの変位を確実且つ安定的に規制することができると共に、装置の小型化及びその耐久性の向上を図ることが可能な電動アクチュエータを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、ボディと、
前記ボディに連結され、通電作用下に回転駆動する駆動部と、
前記駆動部に連結されて回転駆動する第1ギアと該第1ギアの周囲を公転する第2ギアとを有するギア機構と、
前記第2ギアを回転自在に支持し、該第2ギアの回転作用下に前記ボディの軸線を中心として回転変位する回転部材と、
前記回転部材に設けられ、該回転部材の軸線と略直交した支軸を介して回転自在に支持されるローラと、前記回転部材が回転した際に前記ローラと対向する位置に形成され、該回転部材の軸線方向に沿った高さ寸法が変化するガイド部とを有し、前記回転部材の回転作用下に該回転部材を前記ボディの軸線方向に沿って変位させる変位機構と、
前記回転部材に連結され、前記ボディの軸線方向に沿って変位自在に設けられるピストンと、
前記ピストンを軸線方向のいずれか一方側に向かって押圧する弾発力を有するスプリングと、
を備え
前記ピストンの変位作用下に開閉動作することによってワークを把持可能な一組のチャックを備えた把持装置であり、前記ワークを前記チャックで把持する際の把持力が、前記スプリングの弾発力によって保持されることを特徴とする。
本発明によれば、駆動部からの駆動力をギア機構の第1及び第2ギアを介して伝達することにより、その回転速度を所定量だけ変速し且つ前記駆動力を増大させることができ、前記駆動力が伝達された回転部材を、変位機構によってボディの軸線方向に変位させることができる。従って、ギア機構を介して駆動力をピストンに伝達することにより、該駆動力を所望量に制御することができると共に、前記駆動力を変速させ且つ増大させる機能と、該駆動力を介して回転部材を軸線方向に沿って変位させる機能とを兼ね備えることにより、電動アクチュエータの小型化を図ることができる。また、ピストンの変位作用下に開閉動作することによってワークを把持可能な一組のチャックを備える把持装置とすることにより、前記ピストンの変位作用下にチャックを連動させてその開閉作用下にワークの把持を行うことができると共に、スプリングの弾発力によって前記チャックによるワークの把持状態を好適に維持させることが可能となる。
また、変位機構を介して回転部材が軸線方向に変位する際、該回転部材に支持された第2ギアが第1ギアと噛合された状態で回転しながら軸線方向へと変位している。そのため、第1ギアと第2ギアとの噛合時における摩耗が好適に抑制され、ギア機構の耐久性を向上させることができる。
さらに、ピストンは、スプリングの弾発力によってその軸線方向のいずれか一方側に押圧されているため、一方の変位終端位置において前記ピストンの変位を確実且つ安定的に規制することができる。一方、変位機構を介して回転部材が軸線方向に変位することにより、ピストンを前記スプリングの弾発力に抗して軸線方向の他方側へと変位させている。この結果、電動アクチュエータを、ピストンの変位作用下に開閉動作することによってワークを把持可能な一組のチャックを備えた把持装置とした際、駆動部が駆動していない場合においても、スプリングの弾発力によってピストンをその変位終端位置において確実且つ安定的に保持することが可能であるため、前記弾発力によって前記チャックによるワークの把持状態を好適に維持させることが可能となる。
また、回転部材の回転作用下にローラをガイド部に沿って回転させると共に、スプリングの弾発力を、前記ピストンを介してローラがガイド部側に押圧される方向に付勢させるとよい。
これにより、ローラが回転部材の回転作用下にガイド部に沿って変位することにより、該ローラが高さ寸法の変化するガイド部によってスプリングの弾発力の付勢方向と反対方向に徐々に変位し、それに伴って前記ローラが支持された回転部材を軸線方向に沿って変位させることができる。その結果、回転部材に連結されたピストンを、スプリングの弾発力に抗してボディの軸線方向に沿って変位させることが可能となる。
さらに、回転部材に、ボディに対して係合させることにより前記回転部材の回転変位が規制されるストッパを設けることにより、例えば、駆動部の駆動作用下に前記回転部材が回転し過ぎてしまうことがなく、その回転変位を確実且つ簡便に停止させることができる。その結果、駆動部の回転量を検出・制御するために従来設けられていた検出機構が不要となるため、電動アクチュエータの小型化及びコストの削減を図ることができる。
本発明によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、駆動部からの駆動力を変速且つ増大させるギア機構を設けることにより、ピストンに伝達される駆動力を所望量に制御することができると共に、前記駆動力を変速させ且つ増大させる機能と、該駆動力を介して回転部材を軸線方向に変位させる機能とを兼ね備えているので、電動アクチュエータの小型化を図ることができる。また、ギア機構における第1ギアに対して第2ギアが噛合された状態で回転しながら軸線方向へと変位させることにより、前記ギア機構の噛合時における摩耗が抑制されるので、その耐久性を向上させることができる。
さらに、ピストンは、スプリングの弾発力によってその軸線方向のいずれか一方側に押圧されているため、その変位終端位置における前記ピストンの変位を確実且つ安定的に規制することができる。
本発明に係る電動アクチュエータについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において、参照符号50は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータの一例であるワーク把持用チャックを示す。
このワーク把持用チャック50は、図1に示されるように、電流が供給されることにより回転駆動する駆動部52と、該駆動部52に接続されて前記駆動部52から出力される駆動力の回転速度を変速するギア機構54と、前記ギア機構54に接続され、該ギア機構54を介して出力される回転駆動力を直線運動へと変換する変換機構56と、前記ギア機構54及び変換機構56に接続され、該変換機構56からの駆動力が伝達されるピストン58を有するボディ60と、前記ボディ60の下部に設けられ、その開閉作用下にワークWを把持する把持機構62とを含む。
駆動部52は、例えば、ステッピングモータ、DCモータ等の回転駆動源からなり、前記駆動部52の駆動力が、駆動軸64に装着されたギア機構54のピニオンギア(第1ギア)66を介して複数のサテライトギア(第2ギア)68へと伝達される。
ギア機構54は、図1及び図2に示されるように、駆動部52の下部に連結されるケーシング(ボディ)70と、該ケーシング70の内部に設けられ、前記駆動部52の駆動作用下に回転するピニオンギア66と、該ピニオンギア66を中心として半径外方向に配置され、該ピニオンギア66とそれぞれ噛合する複数(例えば、3枚)のサテライトギア68とからなる(図3参照)。
ピニオンギア66は、ケーシング70内に向かって突出した駆動部52の駆動軸64に装着され、該駆動部52の駆動作用下に一体的に回転する。
また、サテライトギア68は、それぞれ略同一形状に形成され、変換機構56におけるギアホルダ(回転部材)74のギアピン76にそれぞれ回転自在に支持されると共に、ケーシング70の内周面に形成された内歯部78と噛合している。そして、ギアピン76の上部には、円盤状の保持プレート80が装着されることにより、前記サテライトギア68が、ギアピン76に対してそれぞれ軸支された状態でギアホルダ74及び保持プレート80によって軸線方向(矢印A1、A2方向)への変位が規制される。なお、この保持プレート80は、ギアピン76に螺合される固定ねじ82を介してギアホルダ74に固定されている。
すなわち、複数のサテライトギア68の中心にピニオンギア66が配置されると共に、該サテライトギア68の外周側がそれぞれ内歯部78に噛合されている。そして、駆動部52の回転作用下にピニオンギア66が自転することにより、該ピニオンギア66に噛合された複数のサテライトギア68が、ケーシング70の内歯部78に噛合された状態で該ピニオンギア66を中心として公転する。これにより、サテライトギア68が支持されたギアホルダ74がケーシング70及び変換機構56におけるカムボディ(ボディ)84の内部で回転変位する。
変換機構56は、図1及び図2に示されるように、ケーシング70とボディ60との間に挟持されるカムボディ84と、該カムボディ84の内部に回転自在に設けられるギアホルダ74とを含む。なお、カムボディ84とケーシング70は、駆動部52とボディ60との間に共締めされている。
カムボディ84は樹脂製材料から形成され、その略中央部がボディ60側(矢印A1方向)に向かって突出し、その先端部が該ボディ60の貫通孔86に挿入され、駆動部52側となる端面からボディ60側(矢印A1方向)に向かって断面略円形状に窪んだ凹部88が形成される。カムボディ84は、図2に示されるように、ケーシング70及びボディ60に連結されるためその外形形状が矩形状に形成され、略中央部はその内部にギアホルダ74が配設されるため断面略円形状に窪んで形成されている。さらに、カムボディ84は、略中央部に貫通した挿通孔90と、該挿通孔90の半径外側に周状に形成され、凹部88の底壁面88aに対する高さ寸法Hが徐々に変化する昇降レール(ガイド部)92と、前記凹部88内におけるギアホルダ74の回転変位を規制するストッパ部94とを備える。
昇降レール92は、図2及び図4に示されるように、半径方向に略一定幅で形成されると共に、その高さ寸法Hは、カムボディ84を駆動部52側から見て時計回り(矢印R1方向)に底壁面88aから徐々に高くなるように設定されている。
詳細には、例えば、図4及び図5に示されるように、挿通孔90を中心として半径外方向に延在する昇降レール92の基線Dを初期位置とした場合、該基線Dから45°までの範囲E1における底壁面88aからの高さ寸法Hは、該底壁面88aと同一面となるため0に設定され、45°の位置から225°までの範囲E2においてその高さ寸法Hが徐々に増大していくように設定されている。そして、昇降レール92は、基線Dに対して225°の位置から300°までの範囲E3内で略一定の高さ寸法Hとなる平面状に設定されると共に、300°から360°、すなわち、基線Dの位置までとなる範囲E4内で高さ寸法Hは、再び該底壁面88aと同一面となる0に設定される。このように、昇降レール92の高さ寸法Hは、カムボディ84の周方向に沿った位置に応じてそれぞれ異なる値に設定されている。なお、この昇降レール92の高さ寸法Hと基線Dに対する角度との関係は、上述した数値に限定されるものではなく、ワーク把持用チャック50の使用環境に応じて任意に設定される。
ストッパ部94は、凹部88の内周面に沿って断面略円弧状に形成され、該内周面より半径内方向に若干だけ突出すると共に、カムボディ84の上面より所定長だけ駆動部52側(矢印A2方向)に突出している(図2参照)。
図2、3及び図6に示されるように、ギアホルダ74は樹脂製材料から形成され、断面略円形状に形成されたプレート部96と、該プレート部96から上方に向かって突出した複数のギアピン76と、該プレート部96の略中央部から下方に向かって突出した保持部98と、前記保持部98及びプレート部96を貫通する孔部100と、前記プレート部96に形成されたローラ孔102を介して回転自在に保持されるローラ104と、前記プレート部96の外周面より半径外方向に突出した係止部(ストッパ)106とを含む。
ギアピン76は、孔部100を中心として同一直径上に等間隔離間して配置され、前記ギアピン76の突出量はそれぞれ略同一に設定される。そして、ギアピン76には、それぞれサテライトギア68が挿通される。すなわち、ギアピン76の数量は、サテライトギア68の数量に対応して設定されている。
保持部98は、図1に示されるように、カムボディ84の挿通孔90に挿入されると共に、その内部には孔部100を通じてピストン58の第1軸部108が挿入され該第1軸部108の段部108aに係合される。そして、ピストン58の第1軸部108に環状溝を介して係止リング110を装着することにより、該ギアホルダ74のピストン58に対する軸線方向(矢印A1、A2方向)への変位が規制され、前記ギアホルダ74とピストン58とが一体的に変位する。
ローラ孔102は、図6に示されるように、断面略長方形状に開口して形成され、孔部100の半径外側となり且つ隣接するギアピン76の間となる位置に配置される。詳細には、ローラ孔102は、一方のギアピン76と他方のギアピン76とを結ぶ仮想線S上に配置され、前記ギアピン76側に向かって延在するローラ孔102の一辺が、前記仮想線Sと略直交する一辺より長く設定されている。
このローラ孔102には、ローラ軸(支軸)112によって回転自在に軸支された円盤状のローラ104が挿入され、該ローラ軸112は、前記ローラ孔102を挟むように形成されたプレート部96の第1ピン穴114と、保持部98側に形成された第2ピン穴116に挿入されることにより保持されている。前記第1ピン穴114は、プレート部96の外周面に貫通するように形成されているため、ローラ104をローラ孔102に配置した状態で第1ピン穴114からローラ軸112を該ローラ104へと挿通させ、該ローラ軸112の先端部を第2ピン穴116に挿入させることにより、該ローラ104がローラ孔102の内部に回転自在に軸支される。
このローラ104は、図1に示されるように、ローラ孔102を介してプレート部96の上面より若干だけ突出すると共に、該プレート部96の下面より所定長だけ突出し、その外周面がカムボディ84の昇降レール92に当接する。すなわち、ローラ104は、ギアホルダ74をカムボディ84に対して装着した際に、昇降レール92と対向する位置に設けられている。
換言すれば、ギアホルダ74の軸線とローラ104の軸線とが略直交するように配置されると共に、前記ギアホルダ74の回転方向と前記ローラ104の回転方向とが略直交することとなる。
係止部106は、図2、3及び図6に示されるように、プレート部96の外周面より半径外方向に所定長だけ突出し、ギアホルダ74がカムボディ84内で回転変位した際に、ストッパ部94に当接することによりその回転変位が規制される。
図1に示されるように、ボディ60の内部には、軸線方向(矢印A1、A2方向)に沿って貫通した貫通孔86が形成され、該貫通孔86の内部に長尺なピストン58が変位自在に設けられている。
この貫通孔86の上端部には、筒状の第1軸受118が挿入され、該第1軸受118によってピストン58の第1軸部108が軸線方向に沿って変位自在に保持される。この第1軸受118は、貫通孔86の内壁面に形成された段部86aに係合されると共に、環状溝に装着された係止リング72によって上方(矢印A2方向)への変位が規制されている。
一方、貫通孔86の下端部には、筒状の第2軸受120が挿入され、該第2軸受120によってピストン58の第2軸部122が軸線方向に沿って変位自在に保持される。第2軸受120は、貫通孔86の内壁面に形成された段部86bに係合されると共に、前記貫通孔86の下端部に螺合された係止ねじ124によって係止される。このように、第1及び第2軸受118、120は、貫通孔86の内部に固定されている。
また、ピストン58は、一端部側に形成され第1軸受118に保持される第1軸部108と、他端部側に形成され第2軸受120に保持される第2軸部122と、前記第1軸部108と第2軸部122の間に形成され、該第1及び第2軸部108、122より拡径して貫通孔86の内壁面に当接する本体部126とを含む。この本体部126と第1軸受118との間にはスプリング128が介装され、ピストン58を常に第1軸受118から離間させる方向(矢印A1方向)に付勢すると共に、本体部126と第2軸受120との間には弾性材料(例えば、ゴム)からなるダンパ130が配設されている。なお、このダンパ130は、本体部126の端面に対して固着されている。
そして、ボディ60の上端部には、変換機構56のカムボディ84が連結ねじ132を介して連結されている。
把持機構62は、ボディ60の下部に形成された切欠部134に設けられ、ピストン58の第2軸部122に係合される一組のチャック136a、136bからなる。このチャック136a、136bは、断面略L字状に形成され、その折曲した略中央部がリンクピン140を介してボディ60の切欠部134に回動自在に軸支されている。また、チャック136a、136bの一端部側には、それぞれ半円状に切り欠かれた溝部138が形成され、ピストン58の第2軸部122に装着されたピストンピン142にそれぞれ係合されている。一方、チャック136a、136bの他端部は、リンクピン140に軸支された部位から下方に向かって延在している。
すなわち、ピストン58の軸線方向に沿った変位作用下にピストンピン142に係合された一組のチャック136a、136bがリンクピン140を支点として所定角度だけ回動し、前記一組のチャック136a、136bの回動作用下にその他端部が互いに接近・離間するように開閉動作する(図1中、矢印B、C方向)。なお、把持機構62は、チャック136a、136bが互いに離間する方向(矢印B方向)に回動した際にワークWを把持すると共に(図1参照)、互いに接近する方向(矢印C方向)に回動した際に、前記ワークWの把持状態が解除される(図7参照)。
本発明の第1の実施の形態に係るワーク把持用チャック50は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、図1に示されるように、ピストン58がスプリング128の弾発力によって下方(矢印A1方向)へと変位し、一組のチャック136a、136bの他端部が互いに離間する方向(矢印B方向)に回動してワークWの孔部w1を把持した状態を初期状態とする。
このワークWがチャック136a、136bによって把持された初期状態では、図示しない電源から駆動部52への電流の供給が停止してギア機構54及び変換機構56に対して駆動力が付与されておらず、且つ、ローラ104がカムボディ84における基線D上に位置して昇降レール92に当接していない状態にある。この場合、ピストン58は、スプリング128の弾発力によって下方に向かって押圧されているため、該ピストン58の変位作用下に一組のチャック136a、136bが開動作してワークWの孔部w1を把持している。
次に、この初期状態(図1参照)からワークWの把持状態を解除する場合について説明する。
先ず、図示しない電源より駆動部52に対して電流が供給され、前記駆動部52が所定量だけ時計回り(矢印R1方向)に回転駆動することにより、駆動軸64と共にピニオンギア66が回転する。そして、駆動部52からの駆動力がピニオンギア66に噛合された複数のサテライトギア68へと伝達され、該サテライトギア68が前記ピニオンギア66を中心としてその周りを公転する。これにより、駆動部52からの駆動力がギア機構54を介して増大され、サテライトギア68を支持しているギアホルダ74がケーシング70及びカムボディ84内において駆動部52側から見て時計回り(矢印R1方向)に回転変位する。なお、ギアホルダ74は、該ギアホルダ74に連結されたピストン58に対するスプリング128の弾発力によって常に下方へと引張されている。
この際、ギアホルダ74は、該ギアホルダ74に装着されたローラ104が、基線D上からカムボディ84の昇降レール92に沿って時計回り(矢印R1方向)に回転変位する。この昇降レール92は、時計回り(矢印R1方向)方向にその高さ寸法Hが徐々に増大するように形成されているため、前記ローラ104が昇降レール92の範囲E2から範囲E3に向かって回転するのに伴い、該ローラ104が支持されたギアホルダ74が徐々に駆動部52側(矢印A2方向)へと上昇する。
これにより、ギアホルダ74に連結されたピストン58が、スプリング128の弾発力に抗して徐々に駆動部52側(矢印A2方向)へと変位する。なお、ギアホルダ74とピストン58とは、相対的な軸線方向への変位のみが規制されているため、該ギアホルダ74の回転方向への変位がピストン58に対して伝達されることがない。換言すれば、ピストン58は、ボディ60の貫通孔86内を軸線方向にのみ変位可能であり、該貫通孔86内で回転変位することがない。
そして、図7に示されるように、ピストン58が駆動部52側へと変位することにより、ピストンピン142を介して前記ピストン58に係合されたチャック136a、136bがリンクピン140を支点としてその他端部が互いに接近する方向(矢印C方向)に回動する。これにより、チャック136a、136bがワークWの孔部w1より離間して該ワークWに対する把持状態が解除される。この際、ローラ104は、昇降レール92において最も高さ寸法Hが大きく設定された範囲E3内にあり、この範囲E3は略一定の高さ寸法Hとなる平面状に設定されているため、前記ピストン58が軸線方向に沿って変位することがなく、チャック136a、136bが所望量だけ閉動作した状態で保持される。すなわち、ピストン58は、その軸線方向(上方)への変位が規制された変位終端位置となる。
また、このギアホルダ74がさらに回転変位し、その係止部106がカムボディ84のストッパ部94に当接することにより、前記ギアホルダ74の回転変位が規制されて停止する。その結果、カムボディ84に対するギアホルダ74の周方向への位置決めがなされ、それに伴ってピストン58の軸線方向に沿った変位量が制御されるため、該ピストン58を介して開閉するチャック136a、136bの開閉量が所望量に制御される。
一方、把持機構62を介して再びワークWの孔部w1を把持する場合には、互いに接近する方向に回動した閉状態である一組のチャック136a、136bを予めワークWの孔部w1に挿入しておく。そして、駆動部52に対して供給する電流の極性を逆転させ、該駆動部52を前記とは反対方向(矢印R2方向)に回転させることにより、ギアホルダ74が駆動部52側から見て反時計回り(矢印R2方向)に回転変位するため、該ギアホルダ74のローラ104が昇降レール92に沿って徐々にボディ60側(矢印A1方向)に接近するように下降する。これにより、ギアホルダ74が、ケーシング70及びカムボディ84の内部で軸線方向に沿って下降し、それに伴って、ピストン58がスプリング128の弾発力によってボディ60の貫通孔86に沿って下方へと変位する。この際、ピストン58の端面に装着されたダンパ130によって、該ピストン58が第2軸受120に当接した際の衝撃が緩衝される。
その結果、ピストン58が駆動部52から離間する方向(矢印A1方向)に変位することにより、該ピストン58にピストンピン142を介して係合されたチャック136a、136bがリンクピン140を支点としてその他端部が互いに離間する方向(矢印B方向)に回動するため、ワークWの孔部w1に挿入された一組のチャック136a、136bが該孔部w1の内周面に当接し、前記チャック136a、136bによってワークWが把持される。この際、ローラ104は、昇降レール92に沿って変位した後に再びカムボディ84の基線D上に位置している。すなわち、ピストン58は、スプリング128の弾発力によって下方へと変位し、ギアホルダ74に設けられたローラ104がカムボディ84の底壁面88aに当接してその下方への変位が規制された変位終端位置となる。
また、上述したピストン58の軸線方向に沿った変位量は、カムボディ84の底壁面88aから昇降レール92における範囲E3までの高さ寸法Hと同等となる。換言すれば、昇降レール92の高さ寸法Hは、ピストン58の変位量に基づいて予め設定されている。
そして、ギアホルダ74がさらに回転変位し、その係止部106がカムボディ84のストッパ部94に当接することにより、前記ギアホルダ74の回転変位が規制されて停止する。これにより、カムボディ84に対するギアホルダ74の周方向に沿った位置決めがなされ、それに伴って、ピストン58の軸線方向に沿った変位量が制御されるため、該ピストン58を介して開閉するチャック136a、136bの開閉量が所望量に制御される。
以上のように、第1の実施の形態では、駆動部52からの駆動力がギア機構54のピニオンギア66及びサテライトギア68を介して伝達されることにより、その回転速度が所定量だけ減速され、且つ、前記駆動力が増大されると共に、複数のサテライトギア68を支持するギアホルダ74をピストン58に連結し、該ギアホルダ74をサテライトギア68の回転作用下に軸線方向(矢印A1、A2方向)に昇降させることができる。すなわち、前記ギアホルダ74は、駆動力を減速させ且つ増大させる機能と、該駆動力をギアホルダ74を介して直線運動に変換する機能とを兼ね備えている。そのため、ワーク把持用チャック50において、駆動部52とボディ60との間に設けられるギア機構54及び変換機構56を小型化することができると共に、低コストで構成することができる。
また、ギア機構54では、ピニオンギア66に対して噛合された複数のサテライトギア68が、ギアホルダ74を介して軸線方向に沿って変位する際に、ピニオンギア66の自転により公転しながら変位することとなるため、前記ピニオンギア66とサテライトギア68との噛合時における摩耗を好適に抑制することができる。その結果、ギア機構54におけるピニオンギア66及びサテライトギア68の高寿命化を図ることができ、ワーク把持用チャック50の耐久性を向上させることができる。
さらに、ワークWを把持する際の把持力は、ピストン58と第1軸受118との間に介装されたスプリング128の弾発力によって保持されているため、何らかの原因で駆動部52に対する電流の供給が停止した場合にも、前記ワークWを確実且つ安定した状態で把持することが可能である。換言すれば、チャック136a、136bは、駆動部52による駆動力が付勢されていない場合にもワークWを把持することが可能な自己保持機能を有する。
またさらに、カムボディ84に半径内方向に突出したストッパ部94を設け、該カムボディ84の凹部88に配設されるギアホルダ74の外周面に半径外方向に突出した係止部106を設けることにより、前記ギアホルダ74が回転変位した際に、その係止部106がストッパ部94に当接することにより回転変位を確実に停止させることができる。これにより、ストッパ部94及び係止部106を介して回転変位しているギアホルダ74を強制的に係止することができるため、前記ギアホルダ74又は駆動部52の回転量を検出するための検出機構を別個に設け、該検出機構の検出結果に基づいて前記ギアホルダ74又は駆動部52の回転量を制御する必要がない。その結果、モータ3の回転量を検出する光学センサ12(検出機構)を設けた従来技術と比較し、コストを削減することができ低コストでワーク把持用チャック50を構成することができる。
次に、第2の実施の形態に係るワーク把持用チャック150を図8及び図9示す。なお、上述した第1の実施の形態に係るワーク把持用チャック50と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この第2の実施の形態に係るワーク把持用チャック150では、図8及び図9に示されるように、ピストン58と第2軸受120との間にスプリング152が介装され、該スプリング152によってピストン58が常に駆動部52側(矢印A2方向)へと押圧される点、カムボディ154がケーシング70と駆動部52との間に挟持され、該カムボディ154の昇降レール156がギア機構54側(矢印A1方向)に向かって徐々に高くなるように形成されると共に、ギアホルダ74に装着された保持プレート158にローラ104が前記昇降レール156に対向して回転自在に設けられている点で、第1の実施の形態に係るワーク把持用チャック50と相違している。
図8に示されるように、ピストン58がスプリング152の弾発力によって上方へと変位し、一組のチャック136a、136bの他端部が互いに接近する方向(矢印C方向)に回動してワークWを把持した状態を初期状態では、駆動部52への電流の供給が停止し、ローラ104がカムボディ154の底壁面154aに当接している状態にある。この場合、ピストン58は、スプリング152によって上方(矢印A2方向)へと押圧されているため、該ピストン58の変位作用下に一組のチャック136a、136bが閉動作してワークWの側面を把持している。
次に、この初期状態(図8参照)からワークWの把持状態を解除する場合には、駆動部52に対して電流が供給されることにより、ピニオンギア66が自転すると共に複数のサテライトギア68が公転し、前記駆動部52からの駆動力が増大されてギアホルダ74へと伝達される。そして、ギアホルダ74及び保持プレート158がケーシング70及びカムボディ154内において駆動部52側から見て時計回り(矢印R1方向)に回転変位することにより、ローラ104が底壁面154aから昇降レール156に沿って回転変位し、前記ローラ104の回転に伴って該ローラ104を備えるギアホルダ74が徐々にボディ60側に変位する。
これにより、ギアホルダ74に連結されたピストン58が、スプリング152の弾発力に抗して徐々に駆動部52から離間する方向(矢印A1方向)に変位し、ピストンピン142を介して前記ピストン58に係合されたチャック136a、136bがリンクピン140を支点としてその他端部が互いに離間する方向(矢印B方向)に回動する(図9参照)。これにより、チャック136a、136bがワークWの側面から離間して該ワークWに対する把持状態が解除される。
また、ギアホルダ74がさらに回転変位し、その係止部106がカムボディ154のストッパ部94に当接することにより、前記ギアホルダ74の回転変位が規制されて停止する。その結果、カムボディ154に対するギアホルダ74の周方向への位置決めがなされ、それに伴ってピストン58の軸線方向に沿った変位量が制御されるため、該ピストン58を介して開閉するチャック136a、136bの開閉量が所望量に制御される。
なお、本発明に係る電動アクチュエータは、上述した第1及び第2の実施の形態のワーク把持用チャックに限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本発明の第1の実施の形態に係るワーク把持用チャックがワークを把持した状態を示す全体縦断面図である。 図1のワーク把持用チャックにおけるギア機構及び変換機構の分解斜視図である。 図1のギア機構及び変換機構を示す平面図である。 図1のカムボディの単体平面図である。 図4の昇降レールにおいて基線Dを支点とした周方向の各範囲E1〜E4と高さ寸法Hとの関係を示す特性曲線図である。 図1のギアホルダの単体平面図である。 図1のワーク把持用チャックがワークを把持していない非把持状態を示す全体縦断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係るワーク把持用チャックがワークを把持した状態を示す全体縦断面図である。 図8のワーク把持用チャックがワークを把持していない非把持状態を示す全体縦断面図である。 従来技術に係るチャック機構の正面図である。
符号の説明
50、150…ワーク把持用チャック 52…駆動部
54…ギア機構 56…変換機構
58…ピストン 60…ボディ
62…把持機構 64…駆動軸
66…ピニオンギア 68…サテライトギア
70…ケーシング 74…ギアホルダ
76…ギアピン 78…内歯部
80、158…保持プレート 84、154…カムボディ
88…凹部 88a、154a…底壁面
92、156…昇降レール 94…ストッパ部
96…プレート部 102…ローラ孔
104…ローラ 106…係止部
112…ローラ軸 128、152…スプリング
130…ダンパ 136a、136b…チャック
140…リンクピン 142…ピストンピン

Claims (3)

  1. ボディと、
    前記ボディに連結され、通電作用下に回転駆動する駆動部と、
    前記駆動部に連結されて回転駆動する第1ギアと該第1ギアの周囲を公転する第2ギアとを有するギア機構と、
    前記第2ギアを回転自在に支持し、該第2ギアの回転作用下に前記ボディの軸線を中心として回転変位する回転部材と、
    前記回転部材に設けられ、該回転部材の軸線と略直交した支軸を介して回転自在に支持されるローラと、前記回転部材が回転した際に前記ローラと対向する位置に形成され、該回転部材の軸線方向に沿った高さ寸法が変化するガイド部とを有し、前記回転部材の回転作用下に該回転部材を前記ボディの軸線方向に沿って変位させる変位機構と、
    前記回転部材に連結され、前記ボディの軸線方向に沿って変位自在に設けられるピストンと、
    前記ピストンを軸線方向のいずれか一方側に向かって押圧する弾発力を有するスプリングと、
    を備え
    前記ピストンの変位作用下に開閉動作することによってワークを把持可能な一組のチャックを備えた把持装置であり、前記ワークを前記チャックで把持する際の把持力が、前記スプリングの弾発力によって保持されることを特徴とする電動アクチュエータ。
  2. 請求項1記載の電動アクチュエータにおいて
    記回転部材の回転作用下に前記ローラが前記ガイド部に沿って回転すると共に、前記スプリングの弾発力が、前記ピストンを介して前記ローラを前記ガイド部側に押圧する方向に付勢されることを特徴とする電動アクチュエータ。
  3. 請求項1又は2記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記回転部材には、前記ボディに対して係合させることにより前記回転部材の回転変位が規制されるストッパが設けられることを特徴とする電動アクチュエータ。
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