JP4856839B2 - シクロヘキサノンオキシムの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホスフェート含有水性反応媒体が、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンからシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンへ、そしてもとのヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンへ循環されるところのシクロヘキサノンオキシムの製造法であって、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンでは水素によるナイトレートの接触還元によってヒドロキシルアンモニウムが形成され、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンでは、有機溶媒の存在下でヒドロキシルアンモニウムがシクロヘキサノンと反応されてシクロヘキサノンオキシムが形成されるところの方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オキシムは、緩衝する酸または酸性の塩、例えばホスフェート緩衝剤、およびこれらの酸から誘導される緩衝する塩を含む、緩衝化した水性反応媒体が、硝酸イオンが分子状水素によって接触還元されるところのヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンと、ケトン、例えばシクロヘキサノンがオキシムに転化されるところのオキシム化ゾーンとの間で連続的に再循環されるところの方法において製造され得る。水性反応媒体は、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに移る前に、その場合に硝酸がインシチュー形成されるところの水性反応媒体中での硝酸の添加または3価窒素を含む気体の吸収によって、必要とされる硝酸イオンで豊富にされ得る。ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンにおいてヒドロキシルアンモニウムで豊富にされた後、水性反応媒体は次いで、オキシム合成ゾーンに移され、そこで、ヒドロキシルアンモニウムがケトン、例えばシクロヘキサノンと反応されて、対応するオキシムを形成する。オキシムは次いで、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに再循環されるところの水性反応媒体から分離され得る。
【0003】
そのプロセス中に生じる正味の化学反応は、以下の反応式によって表せられ得る。
【0004】
1) ヒドロキシルアンモニウムの製造
【化1】
【0005】
2) オキシムの製造
【化2】
【0006】
3) 生成したオキシムの除去後に硝酸イオン源の消耗を埋め合わせるためのHNO3の供給
【化3】
【0007】
硝酸イオンの還元において使用される触媒は一般に、炭素またはアルミナの担体物質上のパラジウムおよび/または白金であり、担体物質には、1〜25重量%のパラジウムおよび/または白金が担持されている。触媒の活性は、再循環流中の有機汚染物質(例えばケトンおよびオキシム)の存在によって悪影響を受ける。
【0008】
触媒を害する多量の汚染物質を含む再循環流のこの問題を処理するために多数の技術が開発されている。米国特許第3,940,442号は、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンからヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンへ再循環されている水性反応媒体を50℃〜106℃の範囲の高められた温度に加熱することによって、触媒を害することが防止されることを記載している。英国特許第1,283,894号および米国特許第3,997,607号は、それぞれ、亜硝酸および3価窒素を含む気体の存在下で水性反応媒体を加熱処理することが、触媒を害することの程度を低下させることを記載している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中の高められたホスフェート濃度が、シクロへキサノンオキシム合成ゾーンからヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンへ再循環される水性反応媒体中の有機汚染物質の濃度の低下をもたらすことが今見出された。
【0010】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明は、ホスフェート含有水性反応媒体がヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンからシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンへ、そしてもとのヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンへ循環されるところのシクロヘキサノンオキシムの製造法であって、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンでは、水素によるナイトレートの接触還元によってヒドロキシルアンモニウムが形成され、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンでは、有機溶媒の存在下でヒドロキシルアンモニウムがシクロヘキサノンと反応されてシクロヘキサノンオキシムが形成されるところの方法において、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が3.0モル/リットルより高いことを特徴とする方法を提供する。本発明はまた、ヒドロキシルアンモニウム、ホスフェートおよびナイトレートを含む水性反応媒体がシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに供給され、ここでヒドロキシルアンモニウムが有機溶媒の存在下でシクロヘキサノンと反応されてシクロヘキサノンオキシムを形成するところのシクロヘキサノンオキシムの製造法において、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が3.0モル/リットルより高いことを特徴とする方法をも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に従う方法の使用により、更なる同等の環境下でヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る、触媒を害する有機汚染物質、特に残留シクロヘキサノンおよび/またはシクロヘキサノンオキシムの量を減少させることができる。本発明によれば、高められたホスフェート濃度が、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る有機汚染物質の量の増加を回避しまたは軽減するので、例えばより小さい装置を使用することにより、有機汚染物質の除去のための工程を省くこと、またはそのような工程が行なわれる程度を低下させることが可能である。また、本発明によれば、高められたホスフェート濃度が、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る有機汚染物質の量の増加を回避しまたは軽減するので、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度を増加させることができる。
【0012】
本発明によれば、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が3.0モル/リットルより高い。本明細書で使用されるとき、ホスフェート濃度は、それらが存在する形状にかかわらず、全てのホスフェートの合計濃度を示し、モル/1リットルの水性反応媒体で表される。好ましくは、ホスフェートは、PO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -、H3PO4、またはPO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -の塩、および/またはそれらの組み合わせとして存在する。
【0013】
好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が、3.3モル/リットルより高く、より好ましくは3.4モル/リットルより高く、特に3.5モル/リットルより高く、さらには3.7モル/リットルより高い。ホスフェート濃度の増加は、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機汚染物質の濃度の更なる低下を生じる。ホスフェート濃度の特定の上限はない。好ましくは、ホスフェート濃度は、結晶が生じないように選択され、それは特に、温度および水性反応媒体中の他の成分の濃度に依存する。一般に、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度は、8モル/リットルより低く、好ましくは5モル/リットルより低く、より好ましくは4.5モル/リットルより低い。
【0014】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度の特定の下限はない。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度は、0.8モル/リットルより高い。ヒドロキシルアンモニウムの高められた濃度が有利である。なぜならば、そのとき、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンでのヒドロキシルアンモニウムの転化が高められ得るからである。さらに、単位時間あたりに製造されるシクロヘキサノンオキシムの量が、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度を高めることにより増加され得る。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度は、1.0モル/リットルより高く、より好ましくは1.1モル/リットルより高く、特に1.2モル/リットルより高く、さらには1.4モル/リットルより高く、最も好ましくは1.6モル/リットルより高い。シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中の高められたヒドロキシルアンモニウム濃度は例えば、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーン中の滞在時間を増加させることにより、および/またはヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のナイトレート濃度を増加させることにより達成され得る。シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度の特定の上限はない。一般に、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度は2.5モル/リットルより下である。
【0015】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度の増加が、 シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る水性反応媒体中の有機汚染物質の濃度の増加を生じ得ることが見出された。本発明に従う方法は、この効果が軽減されまたは回避されるという利点を有する。
【0016】
好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体において、c(ホスフェート)/c(NH3OH+)比が2.0より高く、より好ましくは2.1より高く、特に2.2より高く、さらには2.3より高く、最も好ましくは2.4より高い。ここでc(ホスフェート)はホスフェート濃度(モル/リットル)を表し、c(NH3OH+)はヒドロキシルアンモニウム濃度(モル/リットル)を表す。高められた比は、更なる同等の環境下でヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る有機汚染物質の量の低下をもたらすので、有利である。上記比の特定の上限はない。比が高すぎると、経済的な点から、上記方法はあまり魅力的でなくなり得る。一般に、c(ホスフェート)/c(NH3OH+)比は、10未満である。
【0017】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンでは、ヒドロキシルアンモニウムがシクロヘキサノンと反応されてシクロヘキサノンオキシムを形成する。好ましくは、水性反応媒体およびシクロヘキサノンを、向流で接触させる。シクロヘキサノン、有機溶媒および水性反応媒体を、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンで接触させ、そして、有機溶媒およびシクロヘキサノンオキシムを含む有機媒体をシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンから抜き出すことが好ましい。これは、水性反応媒体からシクロヘキサノンオキシムを分離する非常に有効な方法である。有機溶媒が使用されるところの適する方法は、例えば、英国特許第1,138,750号に記載されている。最も好ましくは、水性反応媒体とシクロヘキサノンおよび有機溶媒を含む流れとを向流で接触させる。公知の型の向流反応器、例えば充填物を満たしたパルスカラムまたは回転ディスク反応器が使用され得る。また、撹拌器を備えた多数(例えば3〜6)の直列に連結した反応器(これらの反応器の各々には、液体−液体分離器をも備えられている)を含む系を使用することもできる。シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムが溶解され得るあらゆる有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、これらの混合物が使用され得る。好ましくは、有機溶媒は、20℃で0.1重量%未満の水溶解度を有する。好ましくは、有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンおよびそれらの混合物から成る群から選択される。最も好ましくは、有機溶媒がトルエンである。好ましくは、シクロヘキサノンが有機溶媒に溶解される。
【0018】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシムの濃度の特定の下限はない。一般に、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度は、5重量%より高い。シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中の高められたシクロヘキサノンオキシム濃度は、例えば蒸留プロセスにおける、シクロヘキサノンオキシムからの有機溶媒の分離が、より少ないエネルギーを使用して行われるという利点を有する。好ましくは、オキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度は、25重量%より高く、より好ましくは30重量%より高く、特に35重量%より高く、さらには38重量%より高い。シクロヘキサノンオキシムの高められた濃度は、例えば、オキシム合成ゾーンに入るシクロヘキサノンの流速に対するオキシム合成ゾーンに入る溶媒の流速を減少させることによって達成され得る。一般に、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度は、95重量%より低く、好ましくは80重量%より低く、より好ましくは60重量%より低い。有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度は全て、シクロヘキサノンオキシムと有機溶媒との合計重量に対して示される。
【0019】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度の増加が、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンを出る水性反応媒体中の有機汚染物質の濃度の増加を生じ得ることが見出された。本発明に従う方法は、この効果が軽減されまたは回避されるという利点を有する。
【0020】
シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンは、40〜150℃の温度で、大気圧、大気圧より下、または高められた圧力、好ましくは0.05〜0.5MPa、より好ましくは0.1〜0.2MPa、最も好ましくは0.1〜0.15MPaで運転され得る。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体が、1〜6、より好ましくは1.5〜4のpHを有する。
【0021】
好ましくは、残留有機汚染物質、特にシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシム、の量を減少させるために、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る水性反応媒体は、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る前に、1以上の分離工程に付される。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る水性反応媒体を、抽出ゾーンで有機溶媒と接触させる。抽出ゾーンで使用される有機溶媒は好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンで使用される有機溶媒と同じである。シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムが溶解され得るあらゆる有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、およびそれらの混合物が使用され得る。好ましくは、有機溶媒が20℃で0.1重量%未満の水溶解度を有する。好ましくは、有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンおよびそれらの混合物から成る群から選択される。最も好ましくは、有機溶媒がトルエンである。公知の型の抽出器、例えば抽出カラム、または撹拌器を備えた、所望により直列に連結した1以上の反応器(これらの反応器の各々には、液体−液体分離器をも備えられている)が使用され得る。好ましくは、充填物が満たされたパルスカラムが使用される。抽出ゾーンは好ましくは、40〜150℃の温度範囲および大気圧、大気圧より下、または高められた圧力、好ましくは0.05〜0.5MPa、より好ましくは0.1〜0.2MPa、最も好ましくは0.1〜0.15MPaで運転される。好ましくは、抽出ゾーンを出る水性反応媒体中のシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムの合計含量が、0.2重量%(2000ppm)より下、より好ましくは0.05重量%より下、特に0.02重量%より下、さらには0.01重量%より下、最も好ましくは0.005重量%より下である(水性反応媒体の重量に対する)。
【0022】
好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出るまたは抽出ゾーンを出る水性反応媒体が、有機汚染物質の更なる低下を達成するために、ストリッピングに付される。米国特許第3,940,442号に記載されているストリッピング法が例えば使用され得る。好ましくは、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムの合計含量が、0.02重量%(200ppm)以下、より好ましくは0.005重量%以下、特に0.002重量%以下、さらには0.001重量%以下、最も好ましくは0.0002重量%以下である(水性反応媒体の重量に対する)。
【0023】
一般に、水性反応媒体は、酸性の緩衝化した反応媒体である。水性反応媒体は、例えばヒドロキシルアンモニウムの合成において副生物として生成した、アンモニウム(NH4 +)を含み得る。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体において、c(NH4 +)/c(ホスフェート)比が0.1〜3、より好ましくは0.2〜2、最も好ましくは0.5〜1.5である。ここでc(NH4 +)はNH4 +濃度(モル/リットル)を表し、c(ホスフェート)はホスフェート濃度(モル/リットル)を表す。
【0024】
一般に、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体は、ナイトレート(NO3 -)を含む。好ましくは、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体において、c(NO3 -)/c(ホスフェート)比が0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.5である。ここでc(NO3 -)はNO3 -濃度(モル/リットル)を表し、c(ホスフェート)はホスフェート濃度(モル/リットル)を表す。
【0025】
ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンでは、ナイトレートを水素で接触還元することによってヒドロキシルアンモニウムが形成される。ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンは、20〜100℃、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜65℃の範囲の温度、および大気圧、大気圧より下、または高められた圧力、好ましくは0.1〜5MPa、より好ましくは0.3〜3MPa、特に0.5〜2MPa(水素分圧)で運転され得る。好ましくは、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンのpHが0.5〜6、より好ましくは1〜4である。このゾーンで使用される触媒は一般に、担体および触媒の合計重量に対して、1〜25重量%、好ましくは5〜15重量%の貴金属の範囲で存在する。好ましくは、触媒が、パラジウム含有触媒、例えば、担体(例えば炭素またはアルミナ担体)上に存在するパラジウムまたはパラジウム−白金触媒である。一般に、触媒は、ヒドロキシルアンモニウム反応器容器中の全液体重量に対して0.2〜5重量%の量で、 ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンに存在する。
【0026】
図1を参照すると、AおよびBは、各々、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンおよびシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを表す。触媒を含むゾーンAにライン1を介して水素が供給される。未反応水素は、ライン2を介して、他の気体と共に排出される。特にホスフェートを含む水性反応媒体が、ライン15を通ってゾーンAに供給され、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンでヒドロキシルアンモニウム(副生物としてのアンモニウムも)が豊富にされた後、ライン3を介して、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに送られる。ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAからシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBへ送られる水性反応媒体中のホスフェート濃度は、3.0モル/リットルより高い。転化されるべきシクロヘキサノンは、有機溶媒中で、ライン4を介してオキシム合成ゾーンBへ供給される。シクロヘキサノンは、ライン7を介して有機溶媒中に導入される。製造され、有機溶媒中に溶解されたシクロヘキサノンオキシムの最大部分が、ライン5を介して系から除去される。
【0027】
オキシム合成ゾーンBを出た後、水性反応媒体は、ライン6を介して抽出ゾーンCへ送られる。オキシム合成ゾーンBを出た後、水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム含量は、反応によって減少され、少量のシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムの汚染物質を含む。有機溶媒は、ライン9を通って抽出ゾーンCに入る。抽出ゾーンC内で、さらにシクロヘキサノンオキシムが水性反応媒体から除去され、ライン8を通って有機溶媒中でゾーンCの外に運ばれる。抽出ゾーンCでは、水性反応媒体中の残留有機汚染物質(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)が減少される。
【0028】
水性反応媒体は、ライン10を通って抽出ゾーンCを出る。ライン10は、水性反応媒体を分離運転、ストリッピングカラムDに送る。このカラムでは、シクロヘキサノンオキシムがシクロヘキサノンに加水分解され、こうして生成したシクロヘキサノンが、すでに存在するシクロヘキサノンと共に、ライン11を通って、有機物質および水と共に(例えば、共沸混合物として)排出される。系において再循環される水性反応媒体は次いで、ライン12を通ってゾーンEに入る。ゾーンEでは、硝酸が生成される。好ましくは、ライン13を通って供給される空気を、ライン4を通って供給されるアンモニアおよび水性反応媒体からの水と反応させることによって、ゾーンEでまたはその後に、硝酸が生成される。硝酸を生成する代わりに、硝酸を水性反応媒体に直接供給することも可能である。従って、ゾーンEで、無機媒体中のナイトレートレベルが増加される。ゾーンEでは、アンモニウムイオン、例えば、ヒドロキシルアンモニウムの合成において副生物として生成したアンモニウムイオンが、酸化窒素を含む気体によって転化され得る。しかし、アンモニウムイオンの除去のための他の方法も使用され得る。次いで、水性反応媒体は、ライン15を介してヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAに戻ることによりサイクルを完了する。上記プロセスは連続して行われる。
【0029】
【実施例】
以下の特定の実施例は、開示の残りを単に説明するものであり、限定するものではない。
【0030】
実施例1〜7
全ての実施例において、図1に示す実施態様が使用された。
【0031】
実施例1
ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンA(触媒(炭素上に担持された8重量%のPdおよび2重量%のPt)を含み、55℃の温度で1MPaの圧力(水素分圧)で運転される)において、単位時間当たりに下記の組成を有する水性反応媒体が製造された。
1. 30モルのNH3OH・H2PO4
1.38モルのNH4H2PO4
0.365モルのH3PO4
1.73モルのNH4NO3
41.5モルのH2O
そして、シクロヘキサノンおよびトルエンと共に、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンB(パルス式充填カラム、55℃で運転)に連続的に供給された。単位時間当たりにシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに供給されたヒドロキシルアンモニウムと、単位時間当たりにシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに供給されたシクロヘキサノンとのモル比、すなわちヒドロキシルアンモニウム(モル/秒)/シクロヘキサノン(モル/秒)比は0.95であった。実質的に全てのヒドロキシルアンモニウムを反応させてシクロヘキサノンオキシムを生成した。トルエンに溶解されたシクロヘキサノンオキシムは、 ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンから抜き出され、シクロヘキサノン濃度は38重量%であった(トルエン+シクロヘキサノンオキシムの合計重量に対する)。ゾーンBを出る水性反応媒体は、トルエンとともに抽出ゾーンC(パルス化充填カラム、70℃で運転)に供給された。
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、123ppm(0.0123重量%)の有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0032】
実施例2
本実施例では、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAを出てシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに入る水性反応媒体が以下の組成を有することを除いて、全ての条件が実施例1と同じであった。
1.30モルのNH3OH・H2PO4
1.38モルのNH4H2PO4
0.665モルのH3PO4
1.73モルのNH4NO3
39.9モルのH2O
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、43ppmの有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0033】
実施例3
本実施例では、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAを出てシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに入る水性反応媒体が以下の組成を有することを除いて、全ての条件が先の実施例と同じであった。
1.50モルのNH3OH・H2PO4
1.45モルのNH4H2PO4
0.39モルのH3PO4
1.65モルのNH4NO3
39.8モルのH2O
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、218ppmの有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0034】
実施例4
本実施例では、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAを出てシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに入る水性反応媒体が以下の組成を有することを除いて、全ての条件が先の実施例と同じであった。
1.5モルのNH3OH・H2PO4
1.45モルのNH4H2PO4
0.80モルのH3PO4
1.65モルのNH4NO3
37.6モルのH2O
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、42ppmの有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0035】
実施例5
本実施例では、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAを出てシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに入る水性反応媒体が以下の組成を有することを除いて、全ての条件が先の実施例と同じであった。
1.50モルのNH3OH・H2PO4
1.45モルのNH4H2PO4
0.93モルのH3PO4
1.65モルのNH4NO3
36.9モルのH2O
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、24ppmの有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0036】
実施例6
本実施例では、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAを出てシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに入る水性反応媒体が以下の組成を有することを除いて、全ての条件が先の実施例と同じであった。
1.60モルのNH3OH・H2PO4
1.45モルのNH4H2PO4
0.30モルのH3PO4
1.65モルのNH4NO3
39.6モルのH2O
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、277ppmの有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0037】
実施例7
本実施例では、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンAを出てシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンBに入る水性反応媒体が以下の組成を有することを除いて、全ての条件が先の実施例と同じであった。
1.6モルのNH3OH・H2PO4
1.45モルのNH4H2PO4
0.88モルのH3PO4
1.65モルのNH4NO3
36.4モルのH2O
抽出ゾーンCを出る水性反応媒体は、26ppmの有機残渣(シクロヘキサノン+シクロヘキサノンオキシム)を含んでいた。
【0038】
実施例1〜7の概観を表に示す。表には、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度(1.25モル/リットルの密度を有する水性反応媒体に関するモル/リットルで表す)、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度(モル/リットルで表す)、および抽出ゾーンを出る水性反応媒体中の有機残渣(シクロヘキサノンオキシム+シクロヘキサノン)の濃度を示す。
【0039】
実施例から、高められたホスフェート濃度が、更なる同等の環境(例えば、一定濃度のヒドロキシルアンモニウム)下で、低められた有機残渣濃度をもたらすことが分かる。実施例はさらに、ヒドロキシルアンモニウムの高められた濃度の結果としての有機残渣濃度の増加が、ホスフェート濃度の増加によって回避されまたは軽減されることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の特定の実施態様を上記に例示し、記載した。しかし、当業者が理解するように、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変が行われ得る。したがって、本発明の解釈は、特許請求の範囲による限定を除いて、限定されるべきではない。
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に従う方法の実施態様の模式図である。
Claims (11)
- ホスフェート含有水性反応媒体がヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンからシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンへ、そしてもとのヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンへ循環されるところのシクロヘキサノンオキシムの製造法であって、ヒドロキシルアンモニウム合成ゾーンでは、水素によるナイトレートの接触還元によってヒドロキシルアンモニウムが形成され、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンでは、有機溶媒の存在下でヒドロキシルアンモニウムがシクロヘキサノンと反応されてシクロヘキサノンオキシムが形成されるところの方法において、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が3.0モル/リットルより高く、かつシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度が0.8モル/リットルより高いことを特徴とする方法。
- ヒドロキシルアンモニウム、ホスフェートおよびナイトレートを含む水性反応媒体がシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに供給され、そこでヒドロキシルアンモニウムが有機溶媒の存在下でシクロヘキサノンと反応されてシクロヘキサノンオキシムを形成するところのシクロヘキサノンオキシムの製造法において、シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が3.0モル/リットルより高く、かつシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度が0.8モル/リットルより高いことを特徴とする方法。
- シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のホスフェート濃度が3.3モル/リットルより高いことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- オキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度が1.0モル/リットルより高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- オキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体中のヒドロキシルアンモニウム濃度が1.2モル/リットルより高いことを特徴とする請求項4記載の方法。
- シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体において、c(ホスフェート)/c(NH3OH+)比>2.0(ここでc(ホスフェート)はホスフェート濃度(モル/リットル)を表し、c(NH3OH+)はヒドロキシルアンモニウム濃度(モル/リットル)を表す)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- オキシム合成ゾーンに入る水性反応媒体において、c(ホスフェート)/c(NH3OH+)比>2.1であることを特徴とする請求項6記載の方法。
- シクロヘキサノン、有機溶媒および水性反応媒体をシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンで接触させること、および有機溶媒およびシクロヘキサノンオキシムを含む有機媒体をシクロヘキサノンオキシム合成ゾーンから抜き出すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
- 水性反応媒体と、シクロヘキサノンおよび有機溶媒を含む流れとを向流で接触させることを特徴とする請求項8記載の方法。
- シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度が5重量%より高いことを特徴とする請求項8または9記載の方法。
- シクロヘキサノンオキシム合成ゾーンを出る有機媒体中のシクロヘキサノンオキシム濃度が25重量%より高いことを特徴とする請求項10記載の方法。
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