JP4856158B2 - スラリー濃縮装置及び濃縮方法 - Google Patents

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Description

本発明は、浄水場、下水処理場等の排水処理設備のスラリーの濃縮処理に係り、特に、近年問題になりつつある浄水場における低濃度のスラリー濃縮処理に最適なスラリー濃縮装置と濃縮方法に関する。
ろ過筒の内部で往復移動を行う移動体をスラリーの圧入圧力により移動させ、ろ過材表面のケーキ層を掻き取りながら連続的にろ過濃縮を行う方式は、特開昭57−65309号公報、特開昭60−31806号公報、特開平8−290018号公報で提案されている。
これらの方式は、ろ過面のケーキ層全体の更新を行うため、ろ過材表面を移動体もしくは移動体に装着したリング等で接触しながらケーキ層を掻き取る構造であった。
ろ過材にスラリーを圧入してろ過濃縮を行う場合、ろ過時間に伴ない、ろ過材表面にはケーキ層が形成され、成長する。ケーキ層はろ液を清澄にする効果があるが、ケーキ層厚が厚くなるほど著しくろ液の排出抵抗が大きくなるので、ろ過速度はろ過時間に伴ない低下していく。そこで、移動媒体によってケーキ層を除去することで、高いろ過速度を維持できるが、ろ過面に接触しながらケーキ層を掻き取る方式には次のような問題点があった。
(1) ろ過材表面のケーキ層を、ろ過材とそのろ過材の内径と同等以上の外径を有するピストン等の移動体を接触させて掻き取るため、ろ過材や移動体表面が摩耗するので、頻繁にピストンを移動させることができない。
(2) ろ過材表面のケーキ層を全て掻き取ると、ろ過開始当初のろ液はろ過材からの目漏れにより清澄性を失うため、頻繁にピストンを移動させることができない。また、ろ液の清澄性を維持するために、ろ過材の目を細かくすると、ろ過材は早期に目詰まりを起こす。
(3) ろ過材と移動体が密着すると、移動体の移動に大きな移動推力が必要となる。また、運転休止時にろ過材と移動体が固着する恐れがある。
(4) ろ過筒の真円度が悪いと移動体が円滑に移動しない。高い真円度を要求すると、製作が困難で、高価になる。
(5) 移動体の移動推力は、移動体を境にしてスラリーを流入する打ち込み側と排出側とで発生する圧力差であるため、ろ過材及びサイドパイプ内の圧力が等しくなって、圧力差がないろ過工程中には移動体によるろ過面の更新が行えない。
(6) ろ過材内部のスラリー濃度が高くなり、ろ過材内部に高濃度の濃縮汚泥が充満すると、移動体の移動抵抗が大きくなり、排出が困難になるため、濃縮汚泥を低濃度のうちに排出するか、高圧力で運転する必要があった。
(7) ろ過材の長さが長くなると、移動体で押し出す濃縮汚泥量が多くなり、移動体の移動抵抗が大きくなり、排出が困難になるため、ろ過材全長を短くするか、濃縮汚泥を低濃度のうちに排出するか、高圧力で運転する必要があった。
(8) 高圧力でろ過を行うと、運転に必要なエネルギーが多くなる。また、ろ過材表面に密度が高い強固なケーキ層が形成されるため、移動体の移動抵抗が高くなる。
特開昭57−65309号公報 特開昭60−31806号公報 特開平8−290018号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、移動体の作動のために、高圧力を必要とせず、移動体を低圧で移動でき連続運動が可能で、低濃度のスラリーに好適なスラリー濃縮装置と方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明では、ろ過材からなるろ過筒が1以上設けられ該ろ過筒の内側にスラリーを圧入することでろ過濃縮を行うスラリー濃縮装置において、該ろ過筒の軸芯に沿って固定設置されたガイドロッドと、該ガイドロッドに摺動可能に挿入され、前記ろ過筒の内径より小径の外周面を有し、該ろ過筒の一端から他端へ往復移動するピストンと、前記ろ過筒の内側にスラリーを圧入するスラリー供給装置とを具備したことを特徴とするスラリー濃縮装置としたものである。
前記スラリー濃縮装置において、ろ過筒は、ろ過材の外周に補強材を設置したものが使用でき、また、前記ろ過筒は、両端がスラリーの流入及び排出を行うサイドパイプに接続され、該サイドパイプが切替弁を介して前記スラリー供給装置に接続されており、該スラリー供給装置は、スラリーを圧入することができるスラリーポンプ又は圧縮空気が注入されるスラリー貯留槽とすることができる。
また、前記スラリー濃縮装置において、ろ過筒は、両端がスラリーの流入及び排出を行うサイドパイプに接続され、該両端のサイドパイプは、弁を介して、スラリー循環配管に接続され、該スラリー循環配管には、前記ろ過筒の内側にスラリーを両端のサイドパイプから交互に導入して循環流を形成させるスラリー循環装置を接続することができ、前記スラリー循環装置は、前記ろ過筒に両端のサイドパイプから交互にスラリーを導入して循環できるスラリー循環ポンプ又は圧縮空気を注入・排出できるスラリー貯留槽とすることができる。
また、本発明では、ろ過材からなる1以上のろ過筒の内側にスラリーを圧入することでろ過濃縮を行うスラリー濃縮方法において、前記ろ過筒の内径より小径であり、ろ過濃縮過程で前記ろ過筒の内側に形成されるケーキ層を削り取るための該ろ過筒の一端から他端へ往復移動するピストンを、該ピストンの往復移動時に案内するガイドロッドに挿入し、該ガイドロッドに沿って前記ピストンを往復移動させ、前記ろ過筒のろ過面に薄いケーキ膜を残して、該ろ過筒の内側にスラリーを圧入することでろ過濃縮を行うことを特徴とするスラリー濃縮方法としたものである。
前記スラリー濃縮方法において、ろ過濃縮を行って排出される濃縮汚泥を、さらにろ過筒の内側に循環させてろ過濃縮し、高倍率濃縮を行うことができる。
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1) ガイドロッドの設置とピストン外径をろ過材内径より小さくしたことで、ろ過材とピストンが非接触になり、ろ過材や移動媒体表面の磨耗を防止する。なお、「非接触」とは、ろ過材の内周面とピストンの外周面が寸法上非接触である状態を指し、以下同じである。また、ろ過材を円筒状に成形した際の継ぎ目(ろ布の場合、ミシン目、金属ろ材の場合、溶接部)の破損を防止できる。そのため、必要に応じた頻度でピストンを移動することが可能になり、高いろ過速度を維持できる。
(2) ピストンとろ過材が非接触であるため、ろ過材表面のケーキ層をピストンで直接削り取るだけでなく、ピストン移動時のスラリー打込み圧力により、ろ過材とピストンとの間隙から噴出するスラリーで、ろ過材表面の柔らかく比較的高含水率のケーキ層を吹き飛ばし、ろ過面を更新することで、ろ過速度の低下を防止するが、ろ過材表面の薄い低含水率のケーキ膜は剥がれないで残るので、清澄性を維持してろ液を得ることができる。
(3)ピストンとろ過材が非接触であるため、ピストンの移動に必要な推力が低く、ろ過材内の水流程度でも移動が可能となったため、低いスラリーの供給圧力で運転が可能である。低いろ過圧力にすることで、ろ過材表面のケーキ層は密度が低く、除去しやすい。また、ろ過開始当初のろ過材からの目漏れも防止できる。その上、スラリーの供給圧力が低い場合、濃縮装置より高い位置にスラリー供給装置を設置することにより、水頭圧力でのろ過濃縮運転が可能になり、省エネルギー効果もある。
(4) ピストンとろ過材が非接触であるため、ろ過筒の真円度の要求精度が低く、製作が容易であるため、安価な設備となる。
(5) ピストンとろ過材が非接触で、ろ過面表層には薄いケーキ膜が保持されるため、スラリーの打込み当初や、ピストンの移動直後でも清澄なろ液が確保できる。そのため、頻繁にピストンを移動させることが可能になる。また、前述のように、スラリー供給圧力が低く、ケーキ膜によるケーキろ過でスラリーの目漏れを防止するため、ろ過材の目開きを大きくできるので、ろ過材の目詰まりを防止できる。
(6) ろ過材の中心にガイドロッドを設置することで、ろ過面積に対してろ過材内容量を少なくできるので、ろ過時間が短縮される。
(7) ろ過材内部に循環流を発生させる動力源を持つことで循環濃縮することができ、ろ過工程中にもピストンによるろ過面の更新が可能となり、頻繁にピストンを移動させることで、ろ過速度がろ過開始初期の高いろ過速度のまま維持されることと高倍率の濃縮をすることが可能となる。
(8) 循環ポンプの吸い込み圧力により、ろ過材内側を負圧にすることで、ろ過材外側から空気を吸い込むため、逆洗効果がある。
以上のように、低い圧力で運転が可能で、循環濃縮することで、高いろ過速度で高濃縮汚泥を排出でき、ピストンやろ過材の目詰まりや磨耗等による消耗部品交換の維持管理労力が少ない濃縮装置である。
以下に、本発明を実施するための詳細な構成要件を詳述する。
本発明で用いるスラリーのろ過濃縮を行うろ過筒に用いるろ過材は、金属製の多孔板や、樹脂製ろ布等、スラリーに応じて適切に選定されるが、ろ布を使用する場合は、ろ布の外周に補強材を設置するのがよい。ろ過材の形状は、ガイドロッドと相関する。ガイドロッドが小径である場合や長尺の場合、ガイドロッドが自重で撓むため、ピストンの円滑な移動の妨げとなり、大径の場合、ろ過面積に対して装置が大きくなる。ろ過材が短尺の場合、ろ過材本数が多くなり、製作コストが高くなる。そのためろ過材の直径は6〜15cmとなるのに対して、ガイドロッドの直径はろ過材よりも2〜10cm程度小さくすることが好ましく、ろ過材の長さは100〜200cm程度が好適である。また、ろ過筒の断面形状は円形だけでなく、楕円形や角型も可能である。
ろ過筒の内側で往復移動するピストンとろ過材との間隙が小さい場合は、ピストンとろ過材が互いに強く接触して往復移動の妨げとなり、間隙が大きい場合はこのような接触はないものの、ろ過材表面に残るケーキ層が厚くなるため、ろ過速度を著しく低下させるので、ピストンとろ過材との間隙は、0.5〜2mm程度であり、ピストンの長さは6〜15cmがよく、材質は樹脂製など軽量の素材が好ましい。
前記ろ過筒の両端には、スラリーの流入兼排出を行うサイドパイプを設置する。該ろ過筒が複数の場合、サイドパイプは複数のろ過材を接続するヘッダ管となる。
該サイドパイプ形状は、円筒パイプだけでなく、角型や半円型も可能である。
また、本発明では、前記ピストンを保持するために、前記ろ過筒と平行に延び、該ろ過筒の軸芯に配置される中実棒又は中空パイプのガイドロッドが配備され、該ガイドロッドを保持する保持器を前記サイドパイプ内に持つ。
それにより、ピストンの中心部はガイドロッドに貫かれ、ピストンはガイドロッドに沿って往復運動を行うが、ピストン外径はろ過材内径より小さいので、該ピストンと前記ろ過筒は寸法上は接触しない。前記ガイドロッドは、一つのろ過筒内に複数本設置することが可能で、その場合、ろ過筒の中芯軸に対称に配置される。前記ガイドロッドの保持器は、ピストンの移動終端となるストッパを兼ねる。
前記サイドパイプには、スラリー供給装置からのスラリー供給、停止を行うスラリー流入弁と、濃縮汚泥槽への濃縮汚泥の排出を行う汚泥排出弁を持つ。
前記スラリー供給装置は、スラリーポンプや、貯留槽にスラリーを貯留し、該貯留槽内に圧縮空気を注入することでスラリーを圧送する方式がある。
次に、本発明の濃縮装置の作動について説明すると、スラリー供給装置を稼働させ、片側のサイドパイプの汚泥排出弁を閉じ、スラリー流入弁を開けると、ろ過材内部にスラリーが供給される。スラリー供給圧により、ろ過材内部のピストンは押し動かされる。この状態で、もう一端のサイドパイプの汚泥排出弁、スラリー流入弁を閉じて、ろ過濃縮を行う。ろ過濃縮を終了すると、スラリー供給側のサイドパイプのスラリー流入弁を閉じ、汚泥排出弁を開ける。それと同時、又は所定量の濃縮汚泥を排出した後に、もう一端のサイドパイプのスラリー流入弁を開けて、これまでとは逆方向からスラリーを圧入すると、ピストンはスラリーの圧入圧力に押し動かされる。ピストンの移動によって、ろ過材のろ過面に薄いケーキ膜を残してろ過材内部の濃縮汚泥は排出される。同様の操作を繰り返すことで、サイドパイプではスラリー供給側と排出側に切り替わりながら運転が行われる。
なお、濃縮汚泥を排出してろ過材内のスラリーが排出されると、柔軟なろ布の場合、ろ布が部分的に撓むことがある。ろ過濃縮装置運転前にはピストンとろ布の間隙が非接触であったとしても、ろ布の撓んだ部分とピストンが接触することもありうる。しかし、この接触は部分的であり、接触時の圧力が低く、ろ布が容易に変形できる間隙があるため、ピストン移動時の抵抗は少なく、ろ布内面のケーキ膜を大きく損なうこともない。
本発明では、処理できるスラリー濃度は0.5〜3%、濃縮倍率は1.5〜6倍程度で任意に設定することができるが、有益な条件として、ろ過材内に圧入するスラリーの圧力は、0.02〜0.1Mpa位でよく、また、濃縮倍率は1.5〜3倍がよい。
次に、本発明における高倍率濃縮について説明する。高倍率濃縮では、サイドパイプには、スラリー供給と濃縮汚泥排出とは別に、ろ過材両端を連通させるようなスラリー循環配管を設置する。
該スラリー循環配管は、希薄なスラリーをろ過材内部に送り込むように、サイドパイプの上方に接続することが好ましい。
また、スラリー循環配管には、スラリー循環弁と循環流を発生させるためのスラリー循環ポンプを持つか、又は、圧縮空気を注入・排出できるスラリー貯留槽を接続することができる。
スラリー循環ポンプをスラリー循環配管に接続した場合を説明すると、ろ過濃縮工程の間にスラリー供給側のスラリー循環弁をスラリー循環ポンプの吸い込み側に、もう一方のサイドパイプのスラリー循環弁をスラリー循環ポンプの吐出側に接続されるようにそれぞれ切り替えることによって、それまでのスラリーの供給側と排出側を切り替え、スラリー循環ポンプを稼働すると、スラリーの循環流によってピストンは移動しながら濃縮汚泥をピストンの前進方向のサイドパイプへ排出し、ろ過材の内部には、それまでサイドパイプ内に滞留していた未濃縮のスラリーが充填される。
その際、スラリー循環ポンプに正逆運転可能な一軸ねじポンプを使用すると、スラリー循環ポンプの正逆運転で供給側と排出側が切り替えられるので、前項の弁の切り替え操作が不要となる。
この工程を繰り返すことで、ろ過面に形成されるケーキ層は、薄いケーキ膜を残しながら掻き取られるため、ろ液の清澄性は維持されつつ、ろ過速度も維持されながら、系内のスラリー濃度は高くなり、より効率的に高倍率濃縮が可能になる。
次に、圧縮空気を注入・排出できるスラリー貯留槽(圧力槽)を接続した場合を説明すると、サイドパイプにろ過材内容量と同等以上の圧力槽を設置し、片側一方の圧力槽にスラリーを充填し、圧力槽に圧縮空気を注入すると、圧力槽内のスラリーはもう一方のサイドパイプに設置された圧力槽へ移動する。その移動時の流れによってピストンが移動することで、循環ポンプを使用せずに前記のような効率的な高倍率濃縮が可能になる。
本発明では、ガイドロッドと小径ピストンにより、ろ過材とピストンが非接触であり、ろ過材やピストン表面の磨耗を防止する。一般にろ過が進行するにつれて、ろ過材表面に近い部分のケーキからケーキの含水率が低くなり、次第にこの低含水率のケーキの厚みが増して固いケーキ層が形成されていく。しかし、本発明ではピストンの移動により掻き取られて残った低含水率のケーキ層がそれ以上厚くならず、ピストンで掻き取った後に掻き取り面から新たに短時間で形成される含水率のより高い柔らかなケーキを周期的にピストンによって掻き取る。よって、掻き取る周期を一定にするか徐々に短くしていればピストンの移動抵抗も大きくなることはない。また、ケーキ層はピストン移動時のスラリー打込み圧力により、ろ過材とピストンとの間隙から噴出すスラリーで、ケーキ層を吹き飛ばすことも可能である。
また、ピストンとろ過材を非接触としたことで、ピストンの移動に必要な推力が低く、ろ過材内の水流で移動が可能となったので、ろ過工程中にもピストンによるろ過面の更新が可能となり、ろ過速度が向上できると共に、ろ過筒の真円度の要求精度が低くなり、製作が容易になった。
さらに、ピストンとろ過材を非接触としたことで、ろ過面表層には薄いケーキ膜が保持されるため、スラリーの打込み当初から清澄なろ液が確保できる。また、ケーキ膜によるケーキろ過でスラリーの目漏れを防止するため、ろ過材の目開きを大きくできるので、ろ過材の目詰まりを防止できる。
以上のように、ろ過工程中にピストンを移動させることで、ろ過材内部で過度に濃縮する前に濃縮汚泥が排出できるので、ピストンの移動に高圧力が必要なく、ろ過材内部の濃縮汚泥量が少ない状態でピストンを移動できるので、ろ過材の長さを長くすることができ、これらをろ過工程中に任意に行うことができるので、必要な濃縮濃度になるまで、ろ過を行うことが可能になる。
次に、本発明を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のスラリー濃縮装置の全体構成図であり、図2は、図1のスラリー濃縮部の部分構成図であり、図3は、ろ過筒の設置部分の拡大構成図である。
図1〜3において、1はスラリー濃縮装置のスラリー濃縮部、2はろ過筒、3a、3bはサイドパイプ、4a、4bはスラリー供給弁、5a、5bはスラリー排出弁、6はスラリー供給槽、7は空気槽、8は濃縮スラリー引抜ポンプ、9はスラリー循環配管、10はスラリー循環ポンプ、11はガイドロッド、12はピストン、13は補強パイプ、14はガイドロッド保持器、15はろ液受け、16はスラリー、17は圧縮空気、18はろ液、19は濃縮汚泥、20は仕切板、21a、21bはスラリー循環弁である。
図1〜3を用いて、本発明のスラリー濃縮処理について説明する。
図1〜3において、スラリー16はスラリー供給槽6に導入され、圧縮空気17が空気槽7を介してスラリー供給槽6に導入される。スラリー濃縮部1のスラリー供給弁4aのみを開にするとスラリーは圧縮空気の圧力により、スラリー供給槽よりスラリー供給弁4a、サイドパイプ3aを通りろ過筒2内に導入され、それによりろ過材2内のピストン12は、サイドパイプ3b側に移動し、スラリーは濃縮処理される。ろ液18は、ろ液受け15を通り排出され、濃縮汚泥はろ過材上にケーキ層を形成する。
所定時間濃縮処理を行った後、スラリー供給弁4aを閉にして、スラリー排出弁5aを開にし、スラリー供給弁4bを開にすると、スラリーは、圧縮空気の圧力によりサイドパイプ3b側からサイドパイプ3a側にピストン12を移動させながらろ過材2内に導入され、ピストンの移動により、ろ過材2内のケーキ層は、薄いケーキ膜を残して剥離され、サイドパイプ3aを介して濃縮汚泥19としてスラリー排出弁5aから排出される。なお、所定時間濃縮処理を行う場合は、所定の濃縮倍率に応じたろ液が排出されるまでの時間か、所定量のスラリーが供給されるまでの時間を目標にすることもできる。ピストン12がサイドパイプ3a側に移動し終ってからか、又は所定量の濃縮汚泥を排出してからの後、スラリー排出弁5aを閉にしてスラリー濃縮処理を行う。このように、スラリー濃縮処理は、スラリー供給弁4aと4b及びスラリー排出弁5aと5bをそれぞれ開と閉を繰り返して行うことにより継続的に行うことができる。
次に、図1を用いてスラリーの高倍率濃縮処理について説明する。
高倍率濃縮処理においては、スラリー供給弁4aのみを閉にするか、あるいは4a及び4bを閉にして、スラリー循環配管9のスラリー循環弁21a、21bを開にして、スラリー循環ポンプ10を稼動させる。スラリー循環弁21aの配管をスラリー循環ポンプ10の吸い込み側に、スラリー循環弁21bの配管をスラリー循環ポンプ10の吐出側に接続すると、スラリーの循環流によってピストンはサイドパイプ3b側から3a側に移動して濃縮汚泥をサイドパイプ3a側に移動し、ろ過材2の内部にはサイドパイプ3b内に滞留していた未濃縮のスラリーが充填されろ過濃縮される。この工程を、スラリー循環ポンプ10の正逆運転を切り換えながら繰り返すことにより、系内のスラリー濃度は高くなり、より高倍率濃縮が可能となる。
なお、装置内のスラリー濃度が高くなるにつれ、ろ過速度は遅くなるので、濃縮が進むにつれて繰り返すろ過工程の時間を短くする運転を行うことができる。例えば、1回目のろ過工程を20分間行ってピストンを反対側の端部へ移動し、2回目のろ過工程を15分間行ってピストンを元の端部へ移動し、3回目10分間行ってピストンを反対側の端部へ移動することで、高いろ過速度を維持することができる。
以上は、濃縮倍率を高くする運転を述べた。これに対し、同様の処理方法で濃縮倍率を低くすれば、短時間に多くのスラリーを処理する高速処理をすることもできる。
以下に、本発明を実際に組み込んだ実験プラントによる運転結果の一例について詳細に説明する。なお、本発明はこの実施例により何等制限されるものではない。
本実施例では、A浄水場で発生する汚泥a、及びB浄水場で発生する汚泥bの2種類の汚泥に対して、本発明のスラリー濃縮装置を用いて濃縮処理を行った。
本装置の装置構成は、図1に図示した構成からなり、直径:100mm、長さ500mmのフィルターパイプ13内面にろ過筒2が配置されており、フィルターパイプ13内でガイドロット11にガイドされながら任意に移動可能なピストン12が存在する。ろ過筒2としては、厚みが0.6mmの比較的厚さの薄いフィルターを採用した。該スラリー濃縮装置は、該フィルターパイプ13が2本平行して設置されており、有効ろ過面積は0.3m2である。該ピストン12の外径は該ろ過筒2とのクリアランスが1.5mmとなるものを使用した。
実施例1では、汚泥aを対象汚泥とし、実施例2では、汚泥bを対象汚泥として、いずれも循環配管を使用しない濃縮方法を採用した。実施例3では、汚泥bを対象汚泥とし、循環配管9を使用して所定の圧力下において循環ポンプ10を使用することで、5分間隔でピストン12を左右に移動させる高速処理の方式を採用した。
また、本実験プラントによる汚泥濃縮運転と平行して、従来方式による濃縮運転も併せて行った。従来方式の濃縮装置としては、本発明のスラリー濃縮装置のろ過材の内部にガイドロット11が存在せず、ろ過材内部には、フリーのピストン外径がろ過体内径と設計上、同寸法となるように設置されたこと以外は、全て本発明スラリー濃縮装置と同じ構成の汚泥濃縮機を使用した。
従来方式、実施例1、2、3の計4種類の方式による汚泥濃縮性能の評価方法としては、汚泥の濃縮倍率を2倍に設定し、各方式ごとに汚泥の打ち込み圧力を30、50、70、100、200kPaの5段階に変化させて濃縮処理を行うこととし、その結果、打ち込み圧力とピストン起動時圧力が低く、ろ過速度が高く、SS回収率が高い濃縮運転が可能であった方式を濃縮性能が優れていると判断する方法を採用した。
なお、汚泥の「打ち込み圧力」と「ピストン起動時圧力」の関係について補足説明すると、「打ち込み圧力」とは、濃縮運転中の「ろ過圧力」を意味し、汚泥供給ポンプにより供給された汚泥がフィルターパイプ内で発生させる圧力のことで、本実施例では、30〜200kPaの範囲であらかじめ設定された圧力のことである。「ピストン起動時圧力」とは、ピストンがフィルターパイプ内の一方の端から、もう一方の端まで移動する際の動き始める時に必要な圧力である。
本実施例に使用した本発明のスラリー濃縮装置は、ピストン外径とフィルター内面とのクリアランスが製作寸法上で1.5mm存在するので、装置自体の摩擦はない。しかし、ろ過の進行に伴ってフィルター内面にケーキ層が生成され、その厚みがクリアランス以上になると、ピストンが移動する時にケーキ層の一部を剥離させながら移動することになる。この時のピストン起動時のケーキ層から受ける静摩擦抵抗を、上回るために必要な圧力を「ピストン起動時圧力」とした。「打ち込み圧力」>「ピストン起動時圧力」となる場合は、設定された「打ち込み圧力」において、スラリー供給弁4a、4bが切り替わる度にピストンが起動し、一方端から他方端に移動することができるが、ケーキ層から受ける静摩擦抵抗が大きく「打ち込み圧力」<「ピストン起動時圧力」となる場合は、ピストンを起動させるためにあらかじめ設定された「打ち込み圧力」以上に、一時的に圧力を上昇させる必要がある。このような処置が必要となることは、汚泥供給ポンプの動力として「打ち込み圧力」以上の圧力を発揮することができるレベルまで大きくする必要があり、デメリットとなる。
濃縮倍率を2倍に設定するために、あらかじめピストン移動1回(1バッチとする)あたりの濃縮汚泥排出量を汚泥排出バルブ制御により5Lに設定し、1バッチあたりのろ液排出量が5Lに達した時点(すなわち、「汚泥供給量≒ろ液排出量+濃縮汚泥排出量」なので1バッチあたりの汚泥供給量が10Lに達した時点)で1バッチが終了とし、その後、汚泥供給バルブを切り替えて、ピストンの逆側より汚泥供給を行うことでピストンを逆サイドに移動させ、次のバッチに移行することとした。1バッチごとに、常にピストンの片側から供給する汚泥量が10L、ろ液が5L、排出濃縮汚泥が5Lと設定することから、濃縮倍率は2倍とすることができるが、濃縮性能の違いにより、汚泥10Lを2倍濃縮するまでの時間(すなわち単位ろ過面積あたりの「ろ過速度」)に差が生じることから、本試験の場合この「ろ過速度」と、ろ液に含まれるSS量から求めるSS回収量と、打込み圧力、ピストン起動時圧力により濃縮性能を評価できることになる。
ろ過面近傍のケーキ含水率は、ピストン移動後に装置内部の未濃縮スラリーを流出させた後、ろ過面に残ったケーキを掻きとって測定した。
実験は、各運転条件ごとに約50時間行った。試験結果を表1に示す。
Figure 0004856158
また、各方式による打ち込み圧力とろ過速度の関係を図4に、打ち込み圧力とピストン起動時必要圧力の関係を図5に、打つ込み圧力とろ過面近傍ケーキ含水率の関係を図6に、打ち込み圧力とSS回収率の関係を図7にそれぞれ示す。
試験結果を、前記表1及び図4〜図7に基づいて説明する。汚泥濃度が9g/lと比較的低濃度の汚泥aを使用した従来方式と実施例1の試験では、打ち込み圧力を30kPa〜200 kPaまで増加させるにつれて、従来方式と実施例1は、共にろ過速度が増加し、ろ過面近傍ケーキの含水率は低下し、それらはほぼ同等の値を示した。しかし、打ち込みバルブを切り替えて、ピストンを逆サイドに移動させるための起動圧力は、従来方式の方が高くする必要があり、一旦約100kPaまで上昇させて、ピストンの移動が完了した直後に、打ち込み圧力を所定の圧力まで低下させる方法をとらなければ、ピストンを移動することができなかった。
また、この従来方式のピストン起動時圧力は、打ち込み圧力が高くなるほど大きくする必要があった。この原因としては、ろ過材内径の真円度により、部分的にピストンと強く接触する部分があり、移動を妨げていると考えられた。また、ろ過面近傍ケーキが打ち込み圧力の上昇に伴って固くなっており、従来方式は、ピストンとろ過筒のクリアランスがないので、この固くなったケーキを、ろ過筒から根こそぎ剥離させながらピストンが移動するため、ピストン移動抵抗が比較的高い点にあると考えられた。
一方、実施例1では常に1.5mmのクリアランスが存在するために、ピストン移動時は、ろ過面近傍のケーキ層を一部残しながら、ある程度含水率が高くやわらかいケーキ層のみを掻き取るので、ピストン起動時圧力は常に50kPa以下であった。
また、従来方式では、100kPa以上の汚泥打ち込み圧においては、SS回収率が86〜92%と比較的悪かった。これは、ピストンが移動するごとにろ過体近傍のケーキ層をほぼ全量かきとることから、ケーキろ過作用が小さくなり、100kPa以上の比較的高圧力下において、SSがリークしたと考えられる。この結果より、実施例1の方式は、従来方式よりも低動力設備による低動力運転が可能であり、SS回収率が高いという利点があることが実証できた。
次に、23g/lの汚泥bを使用した実施例2、3では、先の汚泥aを使用した試験と同様に、打ち込み圧力を30kPa〜200kPaまで増加させるにつれて、実施例2、3は共にろ過速度が増加し、ろ過面近傍ケーキの含水率は低下し、実施例3の方が実施例2よりろ過速度が約2割大きく濃縮性能が向上した。また、ケーキ含水率、ピストン起動時圧力、及びSS回収率は共に大きな差は無かった。実施例3の濃縮性能が高かった理由としては、実施例3は循環方式を採用していることから、ろ過筒近傍で固くなり始めたケーキ層が、5分に1回の割合でスクレーピングされ、ケーキ層のろ過抵抗が高くなりすぎない状態を維持できることにあると考えられる。
以上の結果より、汚泥bを使用した濃縮試験においては、循環方式を採用する実施例3の方が標準方式を採用した実施例2よりも濃縮性能が高く循環方式の効果があったと判断できる。
本発明の濃縮装置の一例を示す全体構成図。 図1のスラリー濃縮部の部分構成図。 本発明の円筒状ろ過材の設置部分の拡大構成図。 各方式の打ち込み圧力とろ過速度の関係を示すグラフ。 各方式の打ち込み圧力とピストン起動時必要圧力の関係を示すグラフ。 各方式の打ち込み圧力とろ過面近傍ケーキ含水率の関係を示すグラフ。 各方式の打ち込み圧力とSS回収率の関係を示すグラフ。
符号の説明
1:スラリー濃縮部、2:ろ過筒、3a、3b:サイドパイプ、4a、4b:スラリー供給弁、5a、5b:スラリー排出弁、6:スラリー供給槽、7:空気槽、8:濃縮スラリー引抜ポンプ、9:スラリー循環配管、10:スラリー循環ポンプ、11:ガイドロッド、12:ピストン、13:補強パイプ、14:ガイドロッド保持器、15:ろ液受け、16:スラリー、17:圧縮空気、18:ろ液、19:濃縮汚泥、20:仕切板、21a、21b:スラリー循環弁

Claims (8)

  1. ろ過材からなるろ過筒が1以上設けられ該ろ過筒の内側にスラリーを圧入することでろ過濃縮を行うスラリー濃縮装置において、該ろ過筒の軸芯に沿って固定設置されたガイドロッドと、該ガイドロッドに摺動可能に挿入され、前記ろ過筒の内径より小径の外周面を有し、該ろ過筒の一端から他端へ往復移動するピストンと、前記ろ過筒の内側にスラリーを圧入するスラリー供給装置とを具備したことを特徴とするスラリー濃縮装置。
  2. 前記ろ過筒は、ろ過材の外周に補強材を設置したものであることを特徴とする請求項1記載のスラリー濃縮装置。
  3. 前記ろ過筒は、両端がスラリーの流入及び排出を行うサイドパイプに接続され、該サイドパイプが切替弁を介して前記スラリー供給装置に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラリー濃縮装置。
  4. 前記スラリー供給装置は、スラリーを圧入することができるスラリーポンプ又は圧縮空気が注入されるスラリー貯留槽であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスラリー濃縮装置。
  5. 前記ろ過筒は、両端がスラリーの流入及び排出を行うサイドパイプに接続され、該両端のサイドパイプは、弁を介してスラリー循環配管に接続され、該スラリー循環配管には、前記ろ過筒の内側にスラリーを両端のサイドパイプから交互に導入して循環流を形成させるスラリー循環装置を接続したことを特徴とする請求項1又は2に記載のスラリー濃縮装置。
  6. 前記スラリー循環装置は、前記ろ過筒の内側に両端のサイドパイプから交互にスラリーを導入して循環できるスラリー循環ポンプ又は圧縮空気を注入・排出できるスラリー貯留槽であることを特徴とする請求項5記載のスラリー濃縮装置。
  7. ろ過材からなる1以上のろ過筒の内側にスラリーを圧入することでろ過濃縮を行うスラリー濃縮方法において、前記ろ過筒の内径より小径であり、ろ過濃縮過程で前記ろ過筒の内側に形成されるケーキ層を削り取るための該ろ過筒の一端から他端へ往復移動するピストンを、該ピストンの往復移動時に案内するガイドロッドに挿入し、該ガイドロッドに沿って前記ピストンを往復移動させ、前記ろ過筒のろ過面に薄いケーキ膜を残して、該ろ過筒の内側にスラリーを圧入することでろ過濃縮を行うことを特徴とするスラリー濃縮方法。
  8. 請求項7記載のスラリー濃縮方法において、ろ過濃縮を行って排出される濃縮汚泥を、さらにろ過筒の内側に循環させてろ過濃縮し、高倍率濃縮を行うことを特徴とするスラリー濃縮方法。
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