JP2004160319A - スラリー用濃縮装置及び濃縮・濾過装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高濃度の濃縮スラリーを得ることができる、この濃縮スラリーを濾過装置へ連続的に注入できるようする。
【解決手段】ケーシング2の内部に、スラリー室3と濾液排出路4を形成すると共に、これらの間に濾過層9を配置し、スラリー室3に、スラリー供給口12aとスラリー排出口16aを各々接続すると共に、濾過層9の表面に形成するケークK2を剥離するケーク用剥離具9をスラリー排出口16aから離れた待機位置Bからスラリー排出口16aへ近づく前進位置Gまで往復移動自在に配置し、前進位置Gへ向かって前進する剥離具6でスラリー室3に残留する高濃度のスラリーS2をスラリー排出口16aから濾過装置30のスラリー室33へ送り出すようにした。
【選択図】 図4
【解決手段】ケーシング2の内部に、スラリー室3と濾液排出路4を形成すると共に、これらの間に濾過層9を配置し、スラリー室3に、スラリー供給口12aとスラリー排出口16aを各々接続すると共に、濾過層9の表面に形成するケークK2を剥離するケーク用剥離具9をスラリー排出口16aから離れた待機位置Bからスラリー排出口16aへ近づく前進位置Gまで往復移動自在に配置し、前進位置Gへ向かって前進する剥離具6でスラリー室3に残留する高濃度のスラリーS2をスラリー排出口16aから濾過装置30のスラリー室33へ送り出すようにした。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、濾過してスラリーを濃縮するスラリー用濃縮装置及び濾過してスラリーを濃縮した後に更に低含水率となるように濾過するスラリー用濃縮・濾過装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、濾液の再利用を図るために凝集剤等の化学薬品を用いることなくスラリーを濃縮する装置としては、特許文献1に記載のものがある。このスラリー用濃縮装置は、処理するスラリーを導入する原水タンクと、該原水タンクに浸漬した濾過装置とを備え、濾過装置は原水タンク内部に面する濾材で覆われた内部空間から濾液を排出する排出路を延設し、濾過して原水タンク内部のスラリーを濃縮するものである。そして、このスラリー用濃縮装置は、濾過の進行に連れて濾材の表面に堆積する余分なケークを除去するために、濾材の表面側に気泡を通過させて余分なケークを剥離すると共に、剥離したケークを含む濃縮スラリーを原水タンクの底に一旦貯め、この貯まった濃縮スラリーを開弁したドレン配管からタンク外部へ定期的に取り出すようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3291487号の特許公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スラリーを濃縮する装置は、次のような問題がある。第1の問題は、原水タンクの内部に濾過装置が浸漬しているので、除去したケークが原水と混合することになり、高濃度の濃縮スラリーを得ることが困難となり、濃縮スラリーの後処理の負担が大きくなることである。第2の問題は、取り出した濃縮スラリーを、更に含水率の低いケークと濾液とに分離する場合には、別の濾過装置で濾過せねばならないが、原水タンクの底に貯まった濃縮スラリーを一旦取り出し、その後に圧入装置等で濾過装置へ注入するのに多くの手間を必要とすることである。第3の問題は、濾材の表面上に形成するケーク層でケーク濾過してスラリーを濃縮するときに、ケーク層の表面に気泡を通過させて余分なケークを剥離する方法では、余分なケークのみを均一に剥離させることが困難であり、剥離が過度になったり不足したりすることがあり得ることである。もし、剥離が過度の場合には、濾過に必要なケーク層が薄くなって濾過不足となり濾液に濁りが生じ、逆に、剥離が不足する場合には、ケーク層が必要以上に厚くなり、濾過能力が低下する問題が生じる。また、ケーク層は、その成分の内容により剥離強度が異なるため、気泡を通過させる最適な条件を選択することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、高濃度の濃縮スラリーを得ることができるスラリー用濃縮装置、高濃度の濃縮スラリーを得ることができると共にケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるスラリー用濃縮装置及びスラリー用濃縮装置から濾過装置へ濃縮スラリーを連続的に注入できるスラリー用濃縮・濾過装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
高濃度の濃縮スラリーを得ることができるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、ケーシングの内部に、スラリー室と濾液排出路を形成すると共に、これらの間に濾過層を配置し、該スラリー室に、スラリー供給口とスラリー排出口を各々接続すると共に、該濾過層の表面に形成するケークを剥離するケーク用剥離具を該スラリー排出口から離れた待機位置から該スラリー排出口へ近づく前進位置まで往復移動自在に配置し、前進位置へ向かって前進する該剥離具で該スラリー室に残留するスラリーを該スラリー排出口へ押し出すようにしたことを特徴とするスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、スラリー供給口からスラリー室へ導入したスラリー原液は、濾過層で濾過することで次第に濃縮されて、スラリー室に残留する。スラリー室に貯えるスラリー量を従来の原水タンクに貯えるスラリー量よりも少なくできるため、従来より短い時間で高濃度の濃縮スラリーが得られる共に、濾過の進行に伴い濾過層の表面に堆積したケークを移動するケーク用剥離具で剥離して濃縮スラリーと共にスラリー排出口へ押し出すことができる。もし、剥離したケークがスラリー室に残留している濃縮スラリーに混入したとしても、濃縮スラリーの濃度を更に高めて排出することになる。
【0007】
ケークの剥離と残留している濃縮スラリーの排出とを確実にするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記スラリー室は、前記剥離具の移動方向に沿って横断面形状が均一の寸胴域を形成し、前記剥離具は、この移動方向に直交する方向へ沿った平面形状を該寸胴域の横断面形状と略々同一に形成した請求項1記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、スラリー室を形成する濾過層の表面と剥離具との隙間を小さくできるため、剥離具で押し出すときに剥離具を介してリークする量を少なくして、剥離したケーク及びスラリー室に残留して高濃度のスラリーをスラリー排出口へ押し出すことができる。
【0008】
ケークの剥離と濃縮スラリーの排出とを別個にできるようにするために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記剥離具は、ケークを剥離するための掻取具とスラリーを押し出すための押出具とを個別に往復移動できるように備え、該掻取具は、これで区切った前記寸胴域の両側を連通させる連通路が形成され、該押出具は、これで区切った前記寸胴域の両側を連通しないように形成されている請求項2記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、掻取具の往復移動に伴い寸胴域の両側に存在するスラリーが連通路を介して行き来するので円滑に往復移動し、押出具の押し移動に伴い寸胴域の両側の間のリーク量を少なくしてスラリーを押し出すことができる。
【0009】
ケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるようにするために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層は、濾材の表面上にケーク形成用ディスタントを重ね合わすと共に該ディスタントの上にスラリーが透過する保護膜の裏面側を重ね合わせ、該保護膜の表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、ディスタントの内部に一定厚みの基礎ケーク層が形成され、基礎ケーク層を覆う保護膜の表面に濾過の進行に伴って形成する成長ケーク層を剥離具で剥離するので、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護されその層厚みに変動は生じない。
【0010】
ケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるようにするために請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層は、濾材の表面上にケーク形成用ディスタントを重ね合わせ、該ディスタントの表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、ディスタントの内部に一定厚みの基礎ケーク層が形成され、濾過の進行に伴ってディスタントの表面に形成する成長ケーク層を剥離具で剥離するので、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護されその層厚みに変動は生じない。
【0011】
ケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるようにするために請求項6記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層は、濾材とスラリーが透過する保護膜との間に基礎ケーク層形成用空間を形成したものであり、該保護膜の表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、保護膜と濾材との間の基礎ケーク層形成用空間に一定厚みの基礎ケーク層が形成され、濾過の進行に伴って保護膜の表面に形成する成長ケーク層を剥離具で剥離するので、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護されその層厚みに変動は生じない。
【0012】
ケーク剥離を確実なものとするために請求項7記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層を可撓性の濾材で形成し、前記濾液排出路に加圧空気供給管を接続し、該濾液排出路に供給する加圧空気で濾材を膨らませて移動中の前記剥離具に押し付けるようにした請求項1記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、濾材の表面に堆積したケークを剥離するときに、濾材を膨らませて移動中の剥離具に押し付けることで、ケークを確実に剥離することができるようになる。
【0013】
剥離したケーキ及び濃縮スラリーをスラリー用濃縮装置から濾過装置へ連続的に注入できるようにするために請求項8記載の本発明が採用した手段は、前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスラリー用濃縮装置と、スラリー室と濾液排出路の間に濾材を配置した濾過装置とを備え、該濾過装置のスラリー室に前記スラリー用濃縮装置のスラリー室を連通したことを特徴とするスラリー用濃縮・濾過装置である。
本発明にあっては、剥離具で剥離したケークと濃縮スラリーとは、移動する剥離具で押し出されてスラリー用濃縮装置のスラリー室から濾過装置のスラリー室へ注入される。
【0014】
なお、剥離したケーキ及び濃縮スラリーの注入が確実となるようにするために請求項8記載のスラリー用濃縮・濾過装置において、前記スラリー用濃縮装置の前記スラリー室に加圧空気供給管を接続し、移動する剥離具でスラリー室から押し出されるケーク及び濃縮スラリーを加圧空気で後押しして、濾過装置のスラリー室へ圧送するようにすることもある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るスラリー用濃縮装置及び濃縮・濾過装置を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1乃至図5は本発明の第1の実施の形態を示すものであり、図1はスラリー用濃縮装置10及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置1を示す断面した正面図、図2はスラリー用濃縮装置10を断面した平面図、図3はスラリー用濃縮装置10の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層K1で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層K2を剥離具6で剥離している状態を示し、図4はスラリー用濃縮装置10の成長ケーク層K2を剥離具6で剥離しつつ濃縮スラリーS2をスラリー用濃縮装置10のスラリー室3から濾過装置30のスラリー室33へ押し出している途中を示す断面した正面図、図5はスラリー用濃縮装置10で次の充填されたスラリー原液S1を濃縮すると共に濾過装置30で濃縮スラリーS2を圧搾して濾過している途中を示す断面した正面図である。
【0017】
本実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1は、図1に示す如く、スラリー用濃縮装置10及び濾過装置30を備え、スラリー用濃縮装置10のスラリー室3と濾過装置30のスラリー室33とを開閉弁15付きの搬送管16で連通してある。
【0018】
前記スラリー用濃縮装置10は、図1及び図2に示す如く、スラリー導入用のスラリー室3及び濾液を排出する濾液排出路4,4を内部に形成したケーシング2と、スラリー室3と濾液排出路4,4との間に配置した濾過層9,9と、スラリー室3に配置した剥離具6とを備えている。スラリー室3は、四角柱又は円柱等の寸胴状に形成されている。各濾過層9は、濾材5の表面上にケーク形成用ディスタント7を重ね合わすと共に、ディスタント7の上にスラリーが透過する保護膜8の裏面側を重ね合わせ、保護膜8の表面側をスラリー室3に面するようにしてある。剥離具6は、保護膜8の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴い保護膜8の表面に形成する成長ケーク層K2(図3(C)参照)を剥離するようにしてある。
【0019】
前記ケーシング2は、複数個に分割された分割部を水密に接合して組立てられており、分割部を接合するときに、濾材5,ディスタント7及び保護膜8を重ね合わせた積層体である濾過層9の周縁部を挟持するようにしてある。ケーシング2は、スラリー室3にスラリーを供給する開閉弁11付きのスラリー供給管12と、各濾液排出路4から濾液を外部へ排出する開閉弁13付きの濾液排出管14と、スラリー室3からケークを含む濃縮スラリーを排出する開閉弁15付きの搬送管16と、スラリー室3及び各濾液排出路4に加圧空気を供給する開閉弁17付きの加圧空気供給管18と、スラリー室3と外部大気とを連通する開閉弁25付きの空気導入管26を夫々接続し、スラリー室3にスラリー供給管12のスラリー供給口12a及び搬送管16のスラリー排出口16aを開口してある。ケーシング2は、スラリー室3の上下両端側を開閉弁19付きのバイパス管20で連通してある。
【0020】
前記濾材5は、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択され、その表面に濾過の進行と共に堆積する基礎ケーク層K1を得るようにしてある。前記ケーク形成用ディスタント7は、開口する目が濾材5の目より粗く形成され、スラリーを透過させることができる布、多孔板又は金網が選択される。ディスタント7は、重ね合わす枚数を調整することで、濾材5の表面に堆積する基礎ケーク層K1の厚みが所定厚みとなるようにできる。前記保護膜8は、開口する目が濾材5の目より粗く且つディスタント7の目より細かく形成され、スラリーを透過させることができる布、多孔板又は金網が選択される。保護膜8の開口する目をディスタント7の目より細かくするのは、ケーク形成用ディスタント7で形成して保持されている基礎ケーク層K1を、図3(C)に示す如く、剥離具6による剥離動作から保護して、基礎ケーク層K1にケーク濾過の障害となるクラック等の傷を生じさせることなく基礎ケーク層K1の層厚みを一定に維持させるためである。なお、保護膜8は、その膜内に堆積したケークを剥離具6で剥離させることなく包含することもある。この場合には、保護膜8で包含されるケーク層が基礎ケーク層K1の一部となるので、ディスタント7及び保護膜8の厚みの総和が基礎ケーク層K1の厚みを決定することになる。
【0021】
前記剥離具6は、図1及び図2に示す如く、長手方向(図2の矢符A方向)に延びる保持具21と、保持具21に保持されて長手方向へ延びる掻取部材22,22と、保持具21を上下移動させる操作棒23,23とを備えている。各掻取部材22としては、保護膜8の表面に線接触する板状体、または、保護膜8の表面に点接触するブラシが選択される(図示例は板状体である)。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。掻取部材22としてブラシを選択するときには、保護膜8の開いた目の中にブラシの先端が入り込まないように、保護膜8の目の大きさを選択すればよい。もし、保護膜8の開いた目の中にブラシの先端が入り込むときには、基礎ケーク層K1を傷つけて基礎ケーク層K1の厚みを変動させ、所定のケーク濾過を維持できなくなる。
【0022】
前記剥離具6は、操作棒23,23を上下移動させることで、保持具21の長手方向と交差する上下方向(スラリー室3の長手方向であり、図1の矢符H方向)に沿って、スラリー排出口16aから離れた待機位置Bからスラリー排出口16aへ近づく前進位置Gまでの間を往復移動する。操作棒23,23の往復移動(図示の場合には上下移動)操作は、手動操作またはエアーシリンダ(図示略)等の外部動力による操作で行う。エアーシリンダを用いる場合には、操作棒23,23の上端に連結した連結部材を介して一組のエアーシリンダの出力端を連結する。各操作棒23は、前記ケーシング2の挿通孔2aに案内されて上下移動できるようになっており、挿通孔2aとの間に気密用のシール材24を設けてある。シール材24は、前記スラリー室3を加圧空気で加圧するとき、加圧空気が外部へ漏れ出させないようにするものである。なお、剥離具6は、その大きさに応じて、操作棒23を一本にすることもある。
【0023】
前記剥離具6と前記スラリー室3とは、成長ケーク層K2の剥離とスラリー室3に残留する濃縮スラリーS2の排出とを確実にするために、次のようになっている。前記スラリー室3は、剥離具6の掻取部材22が移動する領域を、横断面形状が該領域の全域で均一な四角柱又は円柱等の寸胴に形成してある。また、前記剥離具6は、この移動方向に直交する方向へ沿った平面形状を該寸胴域の横断面形状と略々同一に形成してある。これにより、スラリー室3を形成する濾過層9の表面と剥離具6の掻取部材22との隙間を小さくして、スラリー室3に残留する濃縮スラリーS2を剥離具6でスラリー排出口16aへ向かって押し出すときに、スラリー排出口16aと反対となる側にリークする量を最小限にでき、剥離した成長ケーク層K2及び高濃度のスラリーS2を確実に押し出すことができる。なお、成長ケーク層K2を剥離するために剥離具6を上下移動させるときには、前記バイパス管20の開閉弁19を開き、また、スラリー室3の濃縮スラリーS2をスラリー排出口16aへ向かって押し出すために剥離具6をスラリー排出口16aへ向かって移動させるときには、前記バイパス管20の開閉弁19を閉じる。
【0024】
前記濾過装置30は、図1に示す如く、スラリー導入用のスラリー室33、濾液を排出する濾液排出路34及び加圧空気を導入する加圧空気導入室36を内部に形成したケーシング32と、スラリー室33と濾液排出路34との間に配置した濾材35と、スラリー室33と加圧空気導入室36との間に配置した可撓性の加圧板41とを備えている。濾材35は、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。加圧板41は、濾布またはゴム板等が選択される。
【0025】
前記ケーシング32は、分割された分割部32a,32b,32cを水密に接合して組立てられ、分割部を接合するときに、濾材35及び加圧板41の各周縁部を挟持するようにしてある。ケーシング32は、前記スラリー用濃縮装置10から搬送されてくる剥離ケークを含有する濃縮スラリーをスラリー室33に導く前記開閉弁15付きの搬送管16のスラリー供給口16bと、各濾液排出路34から濾液を外部へ排出する開閉弁37付きの濾液排出管38と、加圧空気導入室36に加圧空気を供給する開閉弁39付きの加圧空気供給管40とを夫々接続してある。
【0026】
次に、スラリー用濃縮・濾過装置1を用いてスラリーを処理する方法を説明する。この処理は、スラリー用濃縮装置10を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理と、該剥離ケークを含む濃縮スラリーを更に濾過して低含水率のケークを得る後処理とからなる。また、前処理は、準備工程と濾過・剥離工程とからなる。
【0027】
前記スラリー用濃縮装置10を用いる前処理の準備工程は、図3(B)に示す如く、ケーク濾過に必要な所定厚みの基礎ケーク層K1をケーク形成用デイスタン7の内部に得ることである。デイスタン7の厚みは、予め実験等で求めたケーク濾過に必要な基礎ケーク層K1の厚みが得られるように初期設定される。なお、保護膜8が包含するケーク層の厚みを無視できないときには、この包含されるケーク層が基礎ケーク層K1の一部となるので、保護膜8の膜厚みも考慮される。
【0028】
全く濾過を行っていないスラリー用濃縮装置10では、図3(A)に示す如く、該ディスタント7の内部に基礎ケーク層が全く存在しない。そこで、先ず、図1に示す各濾過液排出管14の開閉弁13を開くと共に、搬送管16の開閉弁15及び加圧空気供給管18の開閉弁17の各々を閉じ、次に、この状態でスラリー供給管12の開閉弁11を開いてスラリー原液S1をスラリー室3へ導入して、初期濾過を開始する。スラリー原液S1は、適度に加圧された状態でスラリー室3へ供給される。なお、スラリー室3にスラリー原液が入り難いときには、空気導入管26の開閉弁25を開いて空気抜きをする。スラリー原液は、適度に加圧された状態でスラリー室3へ供給される。スラリー供給管12の開閉弁11は、スラリー室3に所定量のスラリーが満たされるように開度が調節される。この開度調節を自動的に行うには、スラリー室3に備えた液面検出器(図示略)の検知信号に基づいて開度を自動調節すればよい。この初期濾過の段階では、各保護膜8及びケーク形成用デイスタント7を通過して濾材5へ至ったスラリーは、濾材5で濾過されることになり、濾液が各濾液排出路4及び各濾過液排出管14を介して外部へ排出されると共に、ケークが各濾材5の表面に堆積する。この段階の濾液は、濁っているので、スラリー室3へ戻して再度濾過する。
【0029】
初期濾過の進行に伴い各濾材5の表面に次々と堆積するケークは、デイスタン7の内部に包含されてデイスタン7の厚みに達し、基礎ケーク層K1となる(図3(B)参照)。もし、初期濾過中にスラリーの濃度が上昇して濾過能力が低下したときには、搬送管16の開閉弁15を一時的に開いて高濃度化したスラリーを濾過装置30のスラリー室33へ導き、その後にスラリー原液S1をスラリー室3へ導入して初期濾過を続行する。デイスタン7の内部に基礎ケーク層K1が保持されて所定のケーク濾過の条件が得られると、準備工程が終了する。
【0030】
前記準備工程が終了して濾過を継続すると、次の濾過・剥離工程へ移行する。この工程で濾過が進行すると、デイスタン7の内部に保持されている基礎ケーク層K1の上に更にケークが堆積して成長ケーク層K2を形成すると共に、成長ケーク層K2も次第に厚くなって保護膜の8の表面側に成長ケーク層K2が堆積して形成していく(図3(B)参照)。成長ケーク層K2が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなりケーク濾過による濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、保護膜8の表面に形成した成長ケーク層K2のみを剥離する。
【0031】
この成長ケーク層K2の剥離は、図4及び図3(C)に示す如く、保護膜8の表面側で剥離具6を移動して行う。このとき、バイパス管20の開閉弁19を開き、剥離具6の往復移動を適宜回数できるようにしておく。操作棒23,23を操作して剥離具6を移動させると、掻取部材22が保護膜8の表面に接触し又は接近しながら、保護膜8の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離していく。このとき、ケーク成形用デイスタント7の内部に保持されている基礎ケーク層K1は、剥離動作中の剥離具6から保護膜8で保護され、その層厚みに変動は生じない。本実施の形態では、基礎ケーク層K1を形成する粒子間の結合力(すなわち、基礎ケーク層K1の強度)が弱く、保護膜8が無ければ基礎ケーク層K1が型崩れし易い場合に特に有効である。
【0032】
前記スラリー室3に溜まった濃縮スラリーS2を濾過装置30へ送り出して後処理の濾過へ移行するときには、スラリー供給管12の開閉弁11を閉じると共に搬送管16の開閉弁15を開き、更にバイパス管20の開閉弁19を閉じ、上方の待機位置B(図1参照)に位置している剥離具6を下方の前進位置Gに向かって移動させることで、成長ケーク層K2を剥離しつつこの剥離ケークを含む濃縮スラリーS2を搬送管16へ向かって押し出し、濾過装置30のスラリー室33へ送り出す。スラリー室3から濃縮スラリーS2が押し出されると、その押し出し分量の空気が、開閉弁25を開いた空気導入具管26を介してスラリー室3に導入される。このとき、濾過装置30は、濾液排出管38の開閉弁37を予め開くと共に、加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じておく。
【0033】
もし、剥離ケークを含む濃縮スラリーS2が高粘度のために剥離具6のみで押し出すことができないときには、スラリー供給管12の開閉弁11、空気導入管26の開閉弁25及び各濾液排出管14の開閉弁13を夫々閉じると共に、加圧空気供給管18の開閉弁17を開いてスラリー室3を含めてケーシング2の内部の全体を加圧して、スラリー室3から濃縮スラリーS2を搬送管16を介して濾過装置30のスラリー室33へ強制的に押し出す。このとき、ケーシング2の内側の全体を加圧するのは、基礎ケーク層K1を均一な加圧状態にして基礎ケーク層K1にクラック等の欠陥を生じさせないためである。逆に、スラリー室3のスラリーを排出することなくケーク濾過を進行させつつ剥離を行う場合には、バイパス管20の開閉弁19を開いた状態で剥離具6を上下方向に移動して保護膜8の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離する。
【0034】
後処理において前記濾過装置30は、スラリー用濃縮装置10から送られてきた剥離ケークを含む濃縮スラリーS2を濾材35で濾過して、濾液を濾液排出路34及び濾液排出管38を介して外部へ排出し、更に高濃度となったスラリーS2をスラリー室33に貯留する。スラリー室33で貯留した濃縮スラリーS2が充満したり、または濾過能力が極端に低下したときには、図5に示す如く、搬送管16の開閉弁15を閉じた状態で加圧空気供給管40の開閉弁39を開いて、加圧空気導入室36に導いた加圧空気で加圧板41を膨らませて、スラリー室33の濃縮スラリーS2を圧搾濾過し、スラリー室33に残留するケークと濾液排出路38へ排出される濾液とに分離する。最後に、濾過装置30の加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じて、ケーシング32を分離して低含水率のケークを取り出し、その後に、ケーシング32を接合して次の濾過に備える。圧搾濾過中でもスラリー用濃縮装置10は、スラリー室3にスラリー原液S1を導き、濾過して濃縮化を行うことができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
図6及び図7は本発明の第2の実施の形態を示すものであり、図6はスラリー用濃縮装置50及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置51を示す断面した正面図、図7はスラリー用濃縮装置50の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層K1で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層K2を剥離具6で剥離している状態を示す。
【0036】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と相違する点は、前記スラリー用濃縮装置10の前記保護膜8を省略したことである。この相違点以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0037】
スラリー用濃縮装置50の各濾過層59は、濾材5の表面上にケーク形成用ディスタント7の裏面側を重ね合わてたものである。剥離具6は、ディスタント7の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴いディスタント7の表面に堆積するように形成する成長ケーク層K2(図7(C)参照)を剥離するようにしてある。
【0038】
前記濾材5は、前記第1の実施の形態と同様に、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。前記ケーク形成用ディスタント7は、開口する目を濾材5の目より粗く形成してスラリー原液を通過させることができる布、多孔板又は金網が選択され、重ね合わす枚数を調整することで、所定層厚みの基礎ケーク層K1を得るようにする。
【0039】
前記剥離具6は、前記第1の実施の形態と同様に構成され、掻取部材22として、ディスタント7の表面に線接触する板状体、または、ディスタント7の表面に点接触するブラシが選択される。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。掻取部材22としてブラシを選択するときには、ディスタント7の開いた目の中にブラシの先端が入り込まないように、ブラシの長さが調整される。
【0040】
次に、本実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置51を用いてスラリーを処理する方法を説明する。本実施の形態の処理が前記第1の実施の形態と相違する点は、スラリー用濃縮装置50を用いる前処理であり、濾過装置30を用いる後処理は実質的に同一である。スラリー用濃縮装置50を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理は、準備工程と濾過・剥離工程とからなる。
【0041】
準備工程は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、ケーク濾過に必要な所定厚みの基礎ケーク層K1をケーク形成用デイスタン7の内部に得ることであり、その手順は前記第1の実施の形態の通りである。
【0042】
前記準備工程が終了して濾過を継続すると、次の濾過・剥離工程へ移行する。この工程で濾過が進行すると、デイスタン7の内部に保持されている基礎ケーク層K1の上に更にケークが堆積して成長ケーク層K2を形成すると共に、成長ケーク層K2も次第に厚くなっていく(図7(B)参照)。成長ケーク層K2が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなりケーク濾過による濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、デイスタン7の表面に形成した成長ケーク層K2のみを剥離する。この成長ケーク層K2の剥離は、同図(C)に示す如く、デイスタン7の表面側で剥離具6を移動して行われ、掻取部材22がデイスタン7の表面に接触し又は近接しながら、デイスタン7の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離していく。基礎ケーク層K1は、ケーク成形用デイスタント7の内部に保持されているので、剥離動作中の剥離具6から保護され、その層厚みに変動は生じない。本実施の形態は、基礎ケーク層K1を形成する粒子間の結合力(すなわち、基礎ケーク層K1の強度)が第1の実施の形態に比べて強い中程度であるが、デイスタント7が無ければ基礎ケーク層K1が型崩れし易い場合に特に有効である。
【0043】
(第3の実施の形態)
図8及び図9は本発明の第3の実施の形態を示すものであり、図8はスラリー用濃縮装置60及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置61を示す断面した正面図、図8はスラリー用濃縮装置60の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層K1で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層K2を剥離具6で剥離している状態を示す。
【0044】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と相違する点は、前記スラリー用濃縮装置10の前記ケーク成形用デイスタント7を省略し、濾材5と保護膜8との間に基礎ケーク層形成用空間Eを形成したことである。この相違点以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0045】
スラリー用濃縮装置60の各濾過層69は、濾材5の表面上にスラリーが透過する保護膜8を配置して、濾材5と保護膜8の裏面との間に基礎ケーク層形成用空間Eを形成してある。剥離具6は、保護膜8の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴い保護膜8の表面に堆積するように形成する成長ケーク層K2(図9(C)参照)を剥離するようにしてある。
【0046】
前記濾材5は、前記第1の実施の形態と同様に、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。前記保護膜8は、開口する目を濾材5の目より粗く形成してあり、スラリー原液を通過させることができる布、多孔板又は金網が選択される。保護膜8は、基礎ケーク層形成用空間Eに形成した基礎ケーク層K1を、剥離具6による剥離動作から保護して、基礎ケーク層K1にケーク濾過の障害となるクラック等の傷を生じさせないためのものである。
【0047】
前記剥離具6は、前記第1の実施の形態と同様に、掻取部材22として、保護膜8の表面に線接触する板状体、または、ディスタント7の表面に点接触するブラシが選択される。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。掻取部材22としてブラシを選択するときには、保護膜8の開いた目の中にブラシの先端が入り込まないように、ブラシの長さが調整される。
【0048】
次に、本実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置61を用いてスラリーを処理する方法を説明する。本実施の形態におけるこの処理が前記第1の実施の形態と相違する点は、スラリー用濃縮装置60を用いる前処理であり、濾過装置30を用いる後処理は実質的に同一である。スラリー用濃縮装置60を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理は、準備工程と濾過・剥離工程とからなる。
【0049】
準備工程は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、ケーク濾過に必要な所定厚みの基礎ケーク層K1をケーク形成用デイスタン7の内部に得ることであり、その手順は前記第1の実施の形態の通りである。
【0050】
前記準備工程が終了して濾過を継続すると、次の濾過・剥離工程へ移行する。この工程で濾過が進行すると、基礎ケーク層形成用空間Eに形成されて保護膜8で保持されている基礎ケーク層K1の上に更にケークが堆積して成長ケーク層K2を形成すると共に、成長ケーク層K2も次第に厚くなって保護膜の8の表面側に成長ケーク層K2が堆積していく(図9(B)参照)。成長ケーク層K2が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなりケーク濾過による濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、保護膜8の表面に形成した成長ケーク層K2のみを剥離する。この成長ケーク層K2の剥離は、同図(C)に示す如く、保護膜8の表面側で剥離具6を移動して行われ、掻取部材22が保護膜8の表面に接触し又は近接しながら、保護膜8の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離していく。基礎ケーク層K1は、保護膜8で覆われて保持されているので、剥離動作中の剥離具6から保護され、その層厚みに変動は生じない。本実施の形態は、基礎ケーク層K1を形成する粒子間の結合力(すなわち、基礎ケーク層K1の強度)が第1,2の実施の形態に比べてかなり強い場合に特に有効である。
【0051】
(第4の実施の形態)
図10及び図11は、本発明の第4の実施の形態を示すものであり、図10はスラリー用濃縮装置70及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置71を示す断面した正面図、図11はスラリー用濃縮・濾過装置71に形成されたケークを剥離しつつ濃縮スラリーS2を濾過装置30へ搬出している途中の状態を示す断面した正面図である。
【0052】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と大きく相違する点は、スラリー用濃縮装置70の濾過層79を可撓性の濾材で形成したことである。この相違点以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0053】
スラリー用濃縮装置70は、スラリー導入用のスラリー室3及び濾液を排出する濾液排出路4,4を内部に形成したケーシング2と、スラリー室3と濾液排出路4,4との間に配置した可撓性の濾材79,79と、スラリー室3に配置した剥離具6とを備えている。剥離具6は、濾材79の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴い濾材79の表面に堆積して形成するケーク層K3を剥離するようにしてある。
【0054】
前記ケーシング2は、スラリー室3にスラリーを供給する開閉弁11付きのスラリー供給管12と、各濾液排出路4から濾液を外部へ排出する開閉弁13付きの濾液排出管14と、スラリー室3からケークを含む濃縮スラリーS2を搬出する開閉弁15付きの搬送管16と、スラリー室3に加圧空気を供給する開閉弁17付きの加圧空気供給管18と、各濾液排出路4に加圧空気を供給する開閉弁73付きの加圧空気供給管74とを夫々接続し、スラリー室3にスラリー供給管12のスラリー供給口12a及び搬送管16のスラリー排出口16aを開口してある。ケーシング2は、スラリー室3の上下両端側を開閉弁19付きのバイパス管20で連通してある。
【0055】
前記濾材79は、織成した濾布又は不織布の濾布等が選択される。前記剥離具6は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、長手方向(図面の紙面手前方向)に延びる保持具21と、保持具21に保持されて長手方向へ延びる掻取部材22,22と、保持具21を上下移動させる操作棒23,23とを備えている。各掻取部材22としては、濾材79の表面に線接触する板状体、または、濾材79の表面に点接触するブラシが選択される(図示例は板状体である)。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。剥離具6を移動させるときには、濾液排出路4に加圧空気を供給して膨らませた濾材79,79を剥離具6の各掻取部材22に押し付けるようにしある。
【0056】
前記剥離具6は、操作棒23,23を上下移動させることで、保持具21の長手方向と交差する上下方向へ移動する。操作棒23,23の上下移動操作は、手動操作またはエアーシリンダ(図示略)等の外部動力による操作で行う。前記スラリー室3を加圧空気で加圧できるように、挿通孔2aとの間に気密用のシール材24を設けてある。
【0057】
前記濾過装置30は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、スラリー導入用のスラリー室33、濾液を排出する濾液排出路34及び加圧空気を導入する加圧空気導入室36を内部に形成したケーシング32と、スラリー室33と濾液排出路34との間に配置した濾材35と、スラリー室33と加圧空気導入室36との間に配置した可撓性の加圧板41とを備えている。濾材35は、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。加圧板41は、濾布又はゴム板等が選択される。
【0058】
前記濾過装置30のケーシング32は、前記スラリー用濃縮装置70から搬送されてくるケークを含有する濃縮スラリーをスラリー室33に導く前記開閉弁15付きの搬送管16のスラリー供給口16bと、各濾液排出路34から濾液を外部へ排出する開閉弁37付きの濾液排出管38と、加圧空気導入室36に加圧空気を供給する開閉弁39付きの加圧空気供給管40とを夫々接続してある。
【0059】
次に、スラリー用濃縮・濾過装置71を用いてスラリーを処理する方法を説明する。この処理は、スラリー用濃縮装置70を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理と、該ケークを含む濃縮スラリーを更に濾過して低含水率のケークを得る後処理とからなる。
【0060】
前記スラリー用濃縮装置70を用いる前処理は、剥離具6を上方の待機位置Bへ後退させ、各濾液排出管14の開閉弁13を開き、搬送管16の開閉弁15を閉じ、加圧空気供給管18,74の開閉弁17,73を閉じ、この状態で、スラリー供給管12の開閉弁13を開いてスラリー原液S1をスラリー室3へ導入して充填する。なお、スラリー室3にスラリー原液が入り難いときには、空気導入管26の開閉弁25を開いて空気抜きして行う。スラリー室3に充満したスラリー原液S1は、液体成分が濾材79,79で濾過され、濾液を外部へ排出して濃縮される。スラリー室3のスラリーが濾液の排出で減少したならば、スラリー原液S1を補充する。
【0061】
濾過が進行すると各濾材79の表面側にケーク層K3が堆積していく(図11参照)。ケーク層K3が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなり濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、各濾材79の表面に形成したケーク層K3を剥離具6で剥離する。
【0062】
このケーク層K3の剥離は、図11に示す如く、剥離具6を移動させて行う。操作棒23,23を操作して剥離具6を移動させると、掻取部材22が濾材79の表面に接触し又は接近しながら、各濾材79の表面にあるケーク層K3のみを剥離していく。このとき、各濾液排出管14の開閉弁13を閉じた後に加圧空気供給管74の開閉弁74を開くことで、各濾材79をスラリー室3へ向かって膨らませて移動中の剥離具6に押し付け、ケーク層K3を確実に剥離することができる。
【0063】
前記スラリー室3に溜まった濃縮スラリーS2を濾過装置30へ送り出して後処理の濾過へ移行するときには、スラリー供給管12の開閉弁11を閉じると共に搬送管16の開閉弁15及び空気導入管26の開閉弁25を夫々開き、更にバイバス管20の開閉弁19を閉じ、上方に位置している剥離具6を下方へ移動させることで、剥離したケークを含む高濃度化したスラリーS2を搬送管16へ向かって押し出し、濾過装置30のスラリー室33へ送り出す。このとき、濾過装置30は、濾液排出管38の開閉弁37を予め開くと共に、加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じておく。もし、ケークを含む濃縮スラリーS2が高粘度のために剥離具6のみで押し出すことができないときには、スラリー供給管12の開閉弁11、空気導入管26の開閉弁25及び各濾液排出管14の開閉弁13を夫々閉じた状態で加圧空気供給管18の開閉弁17を開いてスラリー室3を加圧し、スラリー室3から濃縮スラリーS2を搬送管16を介して濾過装置30のスラリー室33へ強制的に押し出す。
【0064】
後処理において前記濾過装置30は、スラリー用濃縮装置70から送られてきたケークを含む濃縮スラリーS2を濾材35で濾過して、濾液を濾液排出路34及び濾液排出管38を介して外部へ排出し、更に高濃度となったスラリーS2をスラリー室33に貯留する。スラリー室33で貯留した濃縮スラリーS2が充満したり、または濾過能力が極端に低下したときには、搬送管16の開閉弁15を閉じた状態で加圧空気供給管40の開閉弁39を開いて、加圧空気導入室36に導かれた加圧空気で加圧板41を膨らませ(図5参照)、スラリー室33の濃縮スラリーS2を圧搾して濾過し、スラリー室33に残るケークと濾液排出路38へ排出される濾液とに分離する。最後に、濾過装置30の加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じて、ケーシング32を分離して低含水率のケークを取り出し、その後に、ケーシング32を接合して次の濾過に備える。なお、圧搾濾過中でもスラリー用濃縮装置70は、スラリー室3にスラリー原液S1を導き、濾過して濃縮化を行うことができる。
【0065】
(第5の実施の形態)
図12は、本発明の第5の実施の形態を示すものであって、スラリー用濃縮装置80及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置81を示す断面した正面図であり、濾過装置30の一部を省略してある。
【0066】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と大きく相違する点は、スラリー用濃縮装置80の剥離具86であり、この相違以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0067】
前記剥離具86は、濾過層9に形成した成長ケーク層K2(図3(B),同図(C)参照)を剥離する掻取具87と、スラリー室3内に貯留する濃縮スラリーS2(図4参照)をスラリー排出口16aに向かって押し出すための押出具88とを個別に矢符H方向へ往復移動できるように備えている。該掻取具87は、長手方向(図2の矢符A方向)に延びる保持具91と、保持具91に保持されて長手方向へ延びる掻取部材22,22と、保持具91を矢符H方向へ往復移動させる操作棒23,23とを備えている。該保持具91は、掻取具87で区切ったスラリー室3の寸胴域の両側を連通する連通路91aが形成されている。なお、この連通路91aに代わることのできる隙間があるブラシで掻取部材22を形成したときには、この連通路91aを省略することもある。前記押出具88は、本体92と、本体92に取付けられて濾過層9の表面に接触又は接近できるシール部材94と、本体92を矢符H方向へ往復移動させる操作棒93,93とを備えている。押出具88は、これで区切ったスラリー室3の寸胴域の両側を連通する連通路は存在しない。掻取具87の各操作棒23は、押出具88の本体92を水密状態で貫通している。なお、掻取具87の各操作棒23は、中空棒とし、押出具88の各操作棒93を挿通させるようにしてもよい。更に、掻取具87の各操作棒23は、押出具88の各操作棒93の延設する方向と逆の方向(スラリー排出口16a側へ向かう方向)に延設して、押出具88の本体92と干渉しないようにすることも可能である。
【0068】
前記剥離具86は、掻取具87の往復移動に伴いスラリー室3の寸胴域の両側に存在するスラリーが連通路91aを介して行き来するので、掻取具87が円滑に往復移動できると共に、押出具92の押し移動に伴い寸胴域の両側の間のリーク量を少なくしてスラリーを押し出すことができる。
【0069】
前記第2の実施の形態(図6及び図7)及び前記第3の実施の形態(図8及び図9)において備えた前記剥離具6を前記掻取具87及び押出具88を備えた剥離具86に置換することも勿論可能である。
【0070】
【発明の効果】
請求項1に係るスラリー用濃縮装置は、濾過の進行に伴い濾過層の表面に堆積したケークを移動するケーク用剥離具で剥離してスラリー室の濃縮スラリーと共にスラリー排出口へ押し出すことができるため、高濃度の濃縮スラリーが得られ、濃縮スラリーを処理する後処理の負担を軽減できる。
【0071】
請求項2に係るスラリー用濃縮装置は、濾過層と剥離具との隙間をリークする量を最小限にして、剥離したケーク及びスラリー室に残留して濃縮スラリーをスラリー排出口へ確実に押し出すことで、濾過能力を飛躍的に回復させることができる。
【0072】
請求項3に係るスラリー用濃縮装置は、ケークの剥離と濃縮スラリーの排出とが別個にできるため、各種スラリーの仕様に応じた最適な剥離操作の回数と濃縮スラリーの押し出しとが可能になる。
【0073】
請求項4〜6に係るスラリー用濃縮装置は、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護して、成長ケーク層のみを剥離具で剥離するので、基礎ケーク層の層厚みが一定に維持され、一定の濾過能力を安定して維持できる。
【0074】
請求項7に係るスラリー用濃縮装置は、濾材を膨らませて移動中の剥離具に押し付けてケークを確実に剥離するので、濾過能力を飛躍的に回復させることができる。
【0075】
請求項8に係るスラリー用濃縮・濾過装置は、剥離したケーキ及び濃縮スラリーをスラリー用濃縮装置から濾過装置へ連続的に注入できるので、スラリー処理の作業能率を飛躍的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図2】同実施の形態のスラリー用濃縮装置を断面した平面図である。
【図3】同実施の形態のスラリー用濃縮装置の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層を剥離具で剥離している状態を示すものである。
【図4】同実施の形態において、スラリー用濃縮装置の成長ケーク層を剥離具で剥離しつつ濃縮スラリーをスラリー用濃縮装置のスラリー室から濾過装置のスラリー室へ押し出している途中を示す断面した正面図である。
【図5】同実施の形態において、スラリー用濃縮装置で次のスラリーを濃縮すると共に濾過装置で濃縮スラリーを圧搾して濾過している途中を示す断面した正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図7】同実施の形態のスラリー用濃縮装置の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層を剥離具で剥離している状態を示すものである。
【図8】本発明の第3の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図9】同実施の形態のスラリー用濃縮装置の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層を剥離具で剥離している状態を示すものである。
【図10】本発明の第4の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図11】同実施の形態において、スラリー用濃縮・濾過装置に形成されたケークを剥離しつつ濃縮スラリーを濾過装置へ搬出している途中の状態を示す断面した正面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態を示すものであって、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図であり、濾過装置の一部を省略してある。
【符号の説明】
1…スラリー用濃縮・濾過装置、3…スラリー室、4…排出路、5…濾材、6(86)…剥離具、7…ケーク形成用ディスタント、8…保護膜、9…濾過層、16a…スラリー排出口、10…スラリー用濃縮装置、30…濾過装置、33…スラリー室、87…掻取具、88…押出具、K1…基礎ケーク層、K2…成長ケーク層、S1…スラリー原液、S2…濃縮スラリー
【発明の属する技術分野】
本発明は、濾過してスラリーを濃縮するスラリー用濃縮装置及び濾過してスラリーを濃縮した後に更に低含水率となるように濾過するスラリー用濃縮・濾過装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、濾液の再利用を図るために凝集剤等の化学薬品を用いることなくスラリーを濃縮する装置としては、特許文献1に記載のものがある。このスラリー用濃縮装置は、処理するスラリーを導入する原水タンクと、該原水タンクに浸漬した濾過装置とを備え、濾過装置は原水タンク内部に面する濾材で覆われた内部空間から濾液を排出する排出路を延設し、濾過して原水タンク内部のスラリーを濃縮するものである。そして、このスラリー用濃縮装置は、濾過の進行に連れて濾材の表面に堆積する余分なケークを除去するために、濾材の表面側に気泡を通過させて余分なケークを剥離すると共に、剥離したケークを含む濃縮スラリーを原水タンクの底に一旦貯め、この貯まった濃縮スラリーを開弁したドレン配管からタンク外部へ定期的に取り出すようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3291487号の特許公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スラリーを濃縮する装置は、次のような問題がある。第1の問題は、原水タンクの内部に濾過装置が浸漬しているので、除去したケークが原水と混合することになり、高濃度の濃縮スラリーを得ることが困難となり、濃縮スラリーの後処理の負担が大きくなることである。第2の問題は、取り出した濃縮スラリーを、更に含水率の低いケークと濾液とに分離する場合には、別の濾過装置で濾過せねばならないが、原水タンクの底に貯まった濃縮スラリーを一旦取り出し、その後に圧入装置等で濾過装置へ注入するのに多くの手間を必要とすることである。第3の問題は、濾材の表面上に形成するケーク層でケーク濾過してスラリーを濃縮するときに、ケーク層の表面に気泡を通過させて余分なケークを剥離する方法では、余分なケークのみを均一に剥離させることが困難であり、剥離が過度になったり不足したりすることがあり得ることである。もし、剥離が過度の場合には、濾過に必要なケーク層が薄くなって濾過不足となり濾液に濁りが生じ、逆に、剥離が不足する場合には、ケーク層が必要以上に厚くなり、濾過能力が低下する問題が生じる。また、ケーク層は、その成分の内容により剥離強度が異なるため、気泡を通過させる最適な条件を選択することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、高濃度の濃縮スラリーを得ることができるスラリー用濃縮装置、高濃度の濃縮スラリーを得ることができると共にケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるスラリー用濃縮装置及びスラリー用濃縮装置から濾過装置へ濃縮スラリーを連続的に注入できるスラリー用濃縮・濾過装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
高濃度の濃縮スラリーを得ることができるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、ケーシングの内部に、スラリー室と濾液排出路を形成すると共に、これらの間に濾過層を配置し、該スラリー室に、スラリー供給口とスラリー排出口を各々接続すると共に、該濾過層の表面に形成するケークを剥離するケーク用剥離具を該スラリー排出口から離れた待機位置から該スラリー排出口へ近づく前進位置まで往復移動自在に配置し、前進位置へ向かって前進する該剥離具で該スラリー室に残留するスラリーを該スラリー排出口へ押し出すようにしたことを特徴とするスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、スラリー供給口からスラリー室へ導入したスラリー原液は、濾過層で濾過することで次第に濃縮されて、スラリー室に残留する。スラリー室に貯えるスラリー量を従来の原水タンクに貯えるスラリー量よりも少なくできるため、従来より短い時間で高濃度の濃縮スラリーが得られる共に、濾過の進行に伴い濾過層の表面に堆積したケークを移動するケーク用剥離具で剥離して濃縮スラリーと共にスラリー排出口へ押し出すことができる。もし、剥離したケークがスラリー室に残留している濃縮スラリーに混入したとしても、濃縮スラリーの濃度を更に高めて排出することになる。
【0007】
ケークの剥離と残留している濃縮スラリーの排出とを確実にするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記スラリー室は、前記剥離具の移動方向に沿って横断面形状が均一の寸胴域を形成し、前記剥離具は、この移動方向に直交する方向へ沿った平面形状を該寸胴域の横断面形状と略々同一に形成した請求項1記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、スラリー室を形成する濾過層の表面と剥離具との隙間を小さくできるため、剥離具で押し出すときに剥離具を介してリークする量を少なくして、剥離したケーク及びスラリー室に残留して高濃度のスラリーをスラリー排出口へ押し出すことができる。
【0008】
ケークの剥離と濃縮スラリーの排出とを別個にできるようにするために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記剥離具は、ケークを剥離するための掻取具とスラリーを押し出すための押出具とを個別に往復移動できるように備え、該掻取具は、これで区切った前記寸胴域の両側を連通させる連通路が形成され、該押出具は、これで区切った前記寸胴域の両側を連通しないように形成されている請求項2記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、掻取具の往復移動に伴い寸胴域の両側に存在するスラリーが連通路を介して行き来するので円滑に往復移動し、押出具の押し移動に伴い寸胴域の両側の間のリーク量を少なくしてスラリーを押し出すことができる。
【0009】
ケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるようにするために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層は、濾材の表面上にケーク形成用ディスタントを重ね合わすと共に該ディスタントの上にスラリーが透過する保護膜の裏面側を重ね合わせ、該保護膜の表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、ディスタントの内部に一定厚みの基礎ケーク層が形成され、基礎ケーク層を覆う保護膜の表面に濾過の進行に伴って形成する成長ケーク層を剥離具で剥離するので、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護されその層厚みに変動は生じない。
【0010】
ケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるようにするために請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層は、濾材の表面上にケーク形成用ディスタントを重ね合わせ、該ディスタントの表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、ディスタントの内部に一定厚みの基礎ケーク層が形成され、濾過の進行に伴ってディスタントの表面に形成する成長ケーク層を剥離具で剥離するので、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護されその層厚みに変動は生じない。
【0011】
ケーク濾過に必要な基礎ケーク層の厚みを変動させることなく余分な成長ケーク層のみを剥離できるようにするために請求項6記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層は、濾材とスラリーが透過する保護膜との間に基礎ケーク層形成用空間を形成したものであり、該保護膜の表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、保護膜と濾材との間の基礎ケーク層形成用空間に一定厚みの基礎ケーク層が形成され、濾過の進行に伴って保護膜の表面に形成する成長ケーク層を剥離具で剥離するので、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護されその層厚みに変動は生じない。
【0012】
ケーク剥離を確実なものとするために請求項7記載の本発明が採用した手段は、前記濾過層を可撓性の濾材で形成し、前記濾液排出路に加圧空気供給管を接続し、該濾液排出路に供給する加圧空気で濾材を膨らませて移動中の前記剥離具に押し付けるようにした請求項1記載のスラリー用濃縮装置である。
本発明にあっては、濾材の表面に堆積したケークを剥離するときに、濾材を膨らませて移動中の剥離具に押し付けることで、ケークを確実に剥離することができるようになる。
【0013】
剥離したケーキ及び濃縮スラリーをスラリー用濃縮装置から濾過装置へ連続的に注入できるようにするために請求項8記載の本発明が採用した手段は、前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスラリー用濃縮装置と、スラリー室と濾液排出路の間に濾材を配置した濾過装置とを備え、該濾過装置のスラリー室に前記スラリー用濃縮装置のスラリー室を連通したことを特徴とするスラリー用濃縮・濾過装置である。
本発明にあっては、剥離具で剥離したケークと濃縮スラリーとは、移動する剥離具で押し出されてスラリー用濃縮装置のスラリー室から濾過装置のスラリー室へ注入される。
【0014】
なお、剥離したケーキ及び濃縮スラリーの注入が確実となるようにするために請求項8記載のスラリー用濃縮・濾過装置において、前記スラリー用濃縮装置の前記スラリー室に加圧空気供給管を接続し、移動する剥離具でスラリー室から押し出されるケーク及び濃縮スラリーを加圧空気で後押しして、濾過装置のスラリー室へ圧送するようにすることもある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るスラリー用濃縮装置及び濃縮・濾過装置を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1乃至図5は本発明の第1の実施の形態を示すものであり、図1はスラリー用濃縮装置10及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置1を示す断面した正面図、図2はスラリー用濃縮装置10を断面した平面図、図3はスラリー用濃縮装置10の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層K1で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層K2を剥離具6で剥離している状態を示し、図4はスラリー用濃縮装置10の成長ケーク層K2を剥離具6で剥離しつつ濃縮スラリーS2をスラリー用濃縮装置10のスラリー室3から濾過装置30のスラリー室33へ押し出している途中を示す断面した正面図、図5はスラリー用濃縮装置10で次の充填されたスラリー原液S1を濃縮すると共に濾過装置30で濃縮スラリーS2を圧搾して濾過している途中を示す断面した正面図である。
【0017】
本実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1は、図1に示す如く、スラリー用濃縮装置10及び濾過装置30を備え、スラリー用濃縮装置10のスラリー室3と濾過装置30のスラリー室33とを開閉弁15付きの搬送管16で連通してある。
【0018】
前記スラリー用濃縮装置10は、図1及び図2に示す如く、スラリー導入用のスラリー室3及び濾液を排出する濾液排出路4,4を内部に形成したケーシング2と、スラリー室3と濾液排出路4,4との間に配置した濾過層9,9と、スラリー室3に配置した剥離具6とを備えている。スラリー室3は、四角柱又は円柱等の寸胴状に形成されている。各濾過層9は、濾材5の表面上にケーク形成用ディスタント7を重ね合わすと共に、ディスタント7の上にスラリーが透過する保護膜8の裏面側を重ね合わせ、保護膜8の表面側をスラリー室3に面するようにしてある。剥離具6は、保護膜8の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴い保護膜8の表面に形成する成長ケーク層K2(図3(C)参照)を剥離するようにしてある。
【0019】
前記ケーシング2は、複数個に分割された分割部を水密に接合して組立てられており、分割部を接合するときに、濾材5,ディスタント7及び保護膜8を重ね合わせた積層体である濾過層9の周縁部を挟持するようにしてある。ケーシング2は、スラリー室3にスラリーを供給する開閉弁11付きのスラリー供給管12と、各濾液排出路4から濾液を外部へ排出する開閉弁13付きの濾液排出管14と、スラリー室3からケークを含む濃縮スラリーを排出する開閉弁15付きの搬送管16と、スラリー室3及び各濾液排出路4に加圧空気を供給する開閉弁17付きの加圧空気供給管18と、スラリー室3と外部大気とを連通する開閉弁25付きの空気導入管26を夫々接続し、スラリー室3にスラリー供給管12のスラリー供給口12a及び搬送管16のスラリー排出口16aを開口してある。ケーシング2は、スラリー室3の上下両端側を開閉弁19付きのバイパス管20で連通してある。
【0020】
前記濾材5は、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択され、その表面に濾過の進行と共に堆積する基礎ケーク層K1を得るようにしてある。前記ケーク形成用ディスタント7は、開口する目が濾材5の目より粗く形成され、スラリーを透過させることができる布、多孔板又は金網が選択される。ディスタント7は、重ね合わす枚数を調整することで、濾材5の表面に堆積する基礎ケーク層K1の厚みが所定厚みとなるようにできる。前記保護膜8は、開口する目が濾材5の目より粗く且つディスタント7の目より細かく形成され、スラリーを透過させることができる布、多孔板又は金網が選択される。保護膜8の開口する目をディスタント7の目より細かくするのは、ケーク形成用ディスタント7で形成して保持されている基礎ケーク層K1を、図3(C)に示す如く、剥離具6による剥離動作から保護して、基礎ケーク層K1にケーク濾過の障害となるクラック等の傷を生じさせることなく基礎ケーク層K1の層厚みを一定に維持させるためである。なお、保護膜8は、その膜内に堆積したケークを剥離具6で剥離させることなく包含することもある。この場合には、保護膜8で包含されるケーク層が基礎ケーク層K1の一部となるので、ディスタント7及び保護膜8の厚みの総和が基礎ケーク層K1の厚みを決定することになる。
【0021】
前記剥離具6は、図1及び図2に示す如く、長手方向(図2の矢符A方向)に延びる保持具21と、保持具21に保持されて長手方向へ延びる掻取部材22,22と、保持具21を上下移動させる操作棒23,23とを備えている。各掻取部材22としては、保護膜8の表面に線接触する板状体、または、保護膜8の表面に点接触するブラシが選択される(図示例は板状体である)。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。掻取部材22としてブラシを選択するときには、保護膜8の開いた目の中にブラシの先端が入り込まないように、保護膜8の目の大きさを選択すればよい。もし、保護膜8の開いた目の中にブラシの先端が入り込むときには、基礎ケーク層K1を傷つけて基礎ケーク層K1の厚みを変動させ、所定のケーク濾過を維持できなくなる。
【0022】
前記剥離具6は、操作棒23,23を上下移動させることで、保持具21の長手方向と交差する上下方向(スラリー室3の長手方向であり、図1の矢符H方向)に沿って、スラリー排出口16aから離れた待機位置Bからスラリー排出口16aへ近づく前進位置Gまでの間を往復移動する。操作棒23,23の往復移動(図示の場合には上下移動)操作は、手動操作またはエアーシリンダ(図示略)等の外部動力による操作で行う。エアーシリンダを用いる場合には、操作棒23,23の上端に連結した連結部材を介して一組のエアーシリンダの出力端を連結する。各操作棒23は、前記ケーシング2の挿通孔2aに案内されて上下移動できるようになっており、挿通孔2aとの間に気密用のシール材24を設けてある。シール材24は、前記スラリー室3を加圧空気で加圧するとき、加圧空気が外部へ漏れ出させないようにするものである。なお、剥離具6は、その大きさに応じて、操作棒23を一本にすることもある。
【0023】
前記剥離具6と前記スラリー室3とは、成長ケーク層K2の剥離とスラリー室3に残留する濃縮スラリーS2の排出とを確実にするために、次のようになっている。前記スラリー室3は、剥離具6の掻取部材22が移動する領域を、横断面形状が該領域の全域で均一な四角柱又は円柱等の寸胴に形成してある。また、前記剥離具6は、この移動方向に直交する方向へ沿った平面形状を該寸胴域の横断面形状と略々同一に形成してある。これにより、スラリー室3を形成する濾過層9の表面と剥離具6の掻取部材22との隙間を小さくして、スラリー室3に残留する濃縮スラリーS2を剥離具6でスラリー排出口16aへ向かって押し出すときに、スラリー排出口16aと反対となる側にリークする量を最小限にでき、剥離した成長ケーク層K2及び高濃度のスラリーS2を確実に押し出すことができる。なお、成長ケーク層K2を剥離するために剥離具6を上下移動させるときには、前記バイパス管20の開閉弁19を開き、また、スラリー室3の濃縮スラリーS2をスラリー排出口16aへ向かって押し出すために剥離具6をスラリー排出口16aへ向かって移動させるときには、前記バイパス管20の開閉弁19を閉じる。
【0024】
前記濾過装置30は、図1に示す如く、スラリー導入用のスラリー室33、濾液を排出する濾液排出路34及び加圧空気を導入する加圧空気導入室36を内部に形成したケーシング32と、スラリー室33と濾液排出路34との間に配置した濾材35と、スラリー室33と加圧空気導入室36との間に配置した可撓性の加圧板41とを備えている。濾材35は、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。加圧板41は、濾布またはゴム板等が選択される。
【0025】
前記ケーシング32は、分割された分割部32a,32b,32cを水密に接合して組立てられ、分割部を接合するときに、濾材35及び加圧板41の各周縁部を挟持するようにしてある。ケーシング32は、前記スラリー用濃縮装置10から搬送されてくる剥離ケークを含有する濃縮スラリーをスラリー室33に導く前記開閉弁15付きの搬送管16のスラリー供給口16bと、各濾液排出路34から濾液を外部へ排出する開閉弁37付きの濾液排出管38と、加圧空気導入室36に加圧空気を供給する開閉弁39付きの加圧空気供給管40とを夫々接続してある。
【0026】
次に、スラリー用濃縮・濾過装置1を用いてスラリーを処理する方法を説明する。この処理は、スラリー用濃縮装置10を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理と、該剥離ケークを含む濃縮スラリーを更に濾過して低含水率のケークを得る後処理とからなる。また、前処理は、準備工程と濾過・剥離工程とからなる。
【0027】
前記スラリー用濃縮装置10を用いる前処理の準備工程は、図3(B)に示す如く、ケーク濾過に必要な所定厚みの基礎ケーク層K1をケーク形成用デイスタン7の内部に得ることである。デイスタン7の厚みは、予め実験等で求めたケーク濾過に必要な基礎ケーク層K1の厚みが得られるように初期設定される。なお、保護膜8が包含するケーク層の厚みを無視できないときには、この包含されるケーク層が基礎ケーク層K1の一部となるので、保護膜8の膜厚みも考慮される。
【0028】
全く濾過を行っていないスラリー用濃縮装置10では、図3(A)に示す如く、該ディスタント7の内部に基礎ケーク層が全く存在しない。そこで、先ず、図1に示す各濾過液排出管14の開閉弁13を開くと共に、搬送管16の開閉弁15及び加圧空気供給管18の開閉弁17の各々を閉じ、次に、この状態でスラリー供給管12の開閉弁11を開いてスラリー原液S1をスラリー室3へ導入して、初期濾過を開始する。スラリー原液S1は、適度に加圧された状態でスラリー室3へ供給される。なお、スラリー室3にスラリー原液が入り難いときには、空気導入管26の開閉弁25を開いて空気抜きをする。スラリー原液は、適度に加圧された状態でスラリー室3へ供給される。スラリー供給管12の開閉弁11は、スラリー室3に所定量のスラリーが満たされるように開度が調節される。この開度調節を自動的に行うには、スラリー室3に備えた液面検出器(図示略)の検知信号に基づいて開度を自動調節すればよい。この初期濾過の段階では、各保護膜8及びケーク形成用デイスタント7を通過して濾材5へ至ったスラリーは、濾材5で濾過されることになり、濾液が各濾液排出路4及び各濾過液排出管14を介して外部へ排出されると共に、ケークが各濾材5の表面に堆積する。この段階の濾液は、濁っているので、スラリー室3へ戻して再度濾過する。
【0029】
初期濾過の進行に伴い各濾材5の表面に次々と堆積するケークは、デイスタン7の内部に包含されてデイスタン7の厚みに達し、基礎ケーク層K1となる(図3(B)参照)。もし、初期濾過中にスラリーの濃度が上昇して濾過能力が低下したときには、搬送管16の開閉弁15を一時的に開いて高濃度化したスラリーを濾過装置30のスラリー室33へ導き、その後にスラリー原液S1をスラリー室3へ導入して初期濾過を続行する。デイスタン7の内部に基礎ケーク層K1が保持されて所定のケーク濾過の条件が得られると、準備工程が終了する。
【0030】
前記準備工程が終了して濾過を継続すると、次の濾過・剥離工程へ移行する。この工程で濾過が進行すると、デイスタン7の内部に保持されている基礎ケーク層K1の上に更にケークが堆積して成長ケーク層K2を形成すると共に、成長ケーク層K2も次第に厚くなって保護膜の8の表面側に成長ケーク層K2が堆積して形成していく(図3(B)参照)。成長ケーク層K2が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなりケーク濾過による濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、保護膜8の表面に形成した成長ケーク層K2のみを剥離する。
【0031】
この成長ケーク層K2の剥離は、図4及び図3(C)に示す如く、保護膜8の表面側で剥離具6を移動して行う。このとき、バイパス管20の開閉弁19を開き、剥離具6の往復移動を適宜回数できるようにしておく。操作棒23,23を操作して剥離具6を移動させると、掻取部材22が保護膜8の表面に接触し又は接近しながら、保護膜8の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離していく。このとき、ケーク成形用デイスタント7の内部に保持されている基礎ケーク層K1は、剥離動作中の剥離具6から保護膜8で保護され、その層厚みに変動は生じない。本実施の形態では、基礎ケーク層K1を形成する粒子間の結合力(すなわち、基礎ケーク層K1の強度)が弱く、保護膜8が無ければ基礎ケーク層K1が型崩れし易い場合に特に有効である。
【0032】
前記スラリー室3に溜まった濃縮スラリーS2を濾過装置30へ送り出して後処理の濾過へ移行するときには、スラリー供給管12の開閉弁11を閉じると共に搬送管16の開閉弁15を開き、更にバイパス管20の開閉弁19を閉じ、上方の待機位置B(図1参照)に位置している剥離具6を下方の前進位置Gに向かって移動させることで、成長ケーク層K2を剥離しつつこの剥離ケークを含む濃縮スラリーS2を搬送管16へ向かって押し出し、濾過装置30のスラリー室33へ送り出す。スラリー室3から濃縮スラリーS2が押し出されると、その押し出し分量の空気が、開閉弁25を開いた空気導入具管26を介してスラリー室3に導入される。このとき、濾過装置30は、濾液排出管38の開閉弁37を予め開くと共に、加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じておく。
【0033】
もし、剥離ケークを含む濃縮スラリーS2が高粘度のために剥離具6のみで押し出すことができないときには、スラリー供給管12の開閉弁11、空気導入管26の開閉弁25及び各濾液排出管14の開閉弁13を夫々閉じると共に、加圧空気供給管18の開閉弁17を開いてスラリー室3を含めてケーシング2の内部の全体を加圧して、スラリー室3から濃縮スラリーS2を搬送管16を介して濾過装置30のスラリー室33へ強制的に押し出す。このとき、ケーシング2の内側の全体を加圧するのは、基礎ケーク層K1を均一な加圧状態にして基礎ケーク層K1にクラック等の欠陥を生じさせないためである。逆に、スラリー室3のスラリーを排出することなくケーク濾過を進行させつつ剥離を行う場合には、バイパス管20の開閉弁19を開いた状態で剥離具6を上下方向に移動して保護膜8の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離する。
【0034】
後処理において前記濾過装置30は、スラリー用濃縮装置10から送られてきた剥離ケークを含む濃縮スラリーS2を濾材35で濾過して、濾液を濾液排出路34及び濾液排出管38を介して外部へ排出し、更に高濃度となったスラリーS2をスラリー室33に貯留する。スラリー室33で貯留した濃縮スラリーS2が充満したり、または濾過能力が極端に低下したときには、図5に示す如く、搬送管16の開閉弁15を閉じた状態で加圧空気供給管40の開閉弁39を開いて、加圧空気導入室36に導いた加圧空気で加圧板41を膨らませて、スラリー室33の濃縮スラリーS2を圧搾濾過し、スラリー室33に残留するケークと濾液排出路38へ排出される濾液とに分離する。最後に、濾過装置30の加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じて、ケーシング32を分離して低含水率のケークを取り出し、その後に、ケーシング32を接合して次の濾過に備える。圧搾濾過中でもスラリー用濃縮装置10は、スラリー室3にスラリー原液S1を導き、濾過して濃縮化を行うことができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
図6及び図7は本発明の第2の実施の形態を示すものであり、図6はスラリー用濃縮装置50及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置51を示す断面した正面図、図7はスラリー用濃縮装置50の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層K1で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層K2を剥離具6で剥離している状態を示す。
【0036】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と相違する点は、前記スラリー用濃縮装置10の前記保護膜8を省略したことである。この相違点以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0037】
スラリー用濃縮装置50の各濾過層59は、濾材5の表面上にケーク形成用ディスタント7の裏面側を重ね合わてたものである。剥離具6は、ディスタント7の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴いディスタント7の表面に堆積するように形成する成長ケーク層K2(図7(C)参照)を剥離するようにしてある。
【0038】
前記濾材5は、前記第1の実施の形態と同様に、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。前記ケーク形成用ディスタント7は、開口する目を濾材5の目より粗く形成してスラリー原液を通過させることができる布、多孔板又は金網が選択され、重ね合わす枚数を調整することで、所定層厚みの基礎ケーク層K1を得るようにする。
【0039】
前記剥離具6は、前記第1の実施の形態と同様に構成され、掻取部材22として、ディスタント7の表面に線接触する板状体、または、ディスタント7の表面に点接触するブラシが選択される。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。掻取部材22としてブラシを選択するときには、ディスタント7の開いた目の中にブラシの先端が入り込まないように、ブラシの長さが調整される。
【0040】
次に、本実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置51を用いてスラリーを処理する方法を説明する。本実施の形態の処理が前記第1の実施の形態と相違する点は、スラリー用濃縮装置50を用いる前処理であり、濾過装置30を用いる後処理は実質的に同一である。スラリー用濃縮装置50を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理は、準備工程と濾過・剥離工程とからなる。
【0041】
準備工程は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、ケーク濾過に必要な所定厚みの基礎ケーク層K1をケーク形成用デイスタン7の内部に得ることであり、その手順は前記第1の実施の形態の通りである。
【0042】
前記準備工程が終了して濾過を継続すると、次の濾過・剥離工程へ移行する。この工程で濾過が進行すると、デイスタン7の内部に保持されている基礎ケーク層K1の上に更にケークが堆積して成長ケーク層K2を形成すると共に、成長ケーク層K2も次第に厚くなっていく(図7(B)参照)。成長ケーク層K2が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなりケーク濾過による濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、デイスタン7の表面に形成した成長ケーク層K2のみを剥離する。この成長ケーク層K2の剥離は、同図(C)に示す如く、デイスタン7の表面側で剥離具6を移動して行われ、掻取部材22がデイスタン7の表面に接触し又は近接しながら、デイスタン7の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離していく。基礎ケーク層K1は、ケーク成形用デイスタント7の内部に保持されているので、剥離動作中の剥離具6から保護され、その層厚みに変動は生じない。本実施の形態は、基礎ケーク層K1を形成する粒子間の結合力(すなわち、基礎ケーク層K1の強度)が第1の実施の形態に比べて強い中程度であるが、デイスタント7が無ければ基礎ケーク層K1が型崩れし易い場合に特に有効である。
【0043】
(第3の実施の形態)
図8及び図9は本発明の第3の実施の形態を示すものであり、図8はスラリー用濃縮装置60及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置61を示す断面した正面図、図8はスラリー用濃縮装置60の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層K1で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層K2を剥離具6で剥離している状態を示す。
【0044】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と相違する点は、前記スラリー用濃縮装置10の前記ケーク成形用デイスタント7を省略し、濾材5と保護膜8との間に基礎ケーク層形成用空間Eを形成したことである。この相違点以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0045】
スラリー用濃縮装置60の各濾過層69は、濾材5の表面上にスラリーが透過する保護膜8を配置して、濾材5と保護膜8の裏面との間に基礎ケーク層形成用空間Eを形成してある。剥離具6は、保護膜8の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴い保護膜8の表面に堆積するように形成する成長ケーク層K2(図9(C)参照)を剥離するようにしてある。
【0046】
前記濾材5は、前記第1の実施の形態と同様に、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。前記保護膜8は、開口する目を濾材5の目より粗く形成してあり、スラリー原液を通過させることができる布、多孔板又は金網が選択される。保護膜8は、基礎ケーク層形成用空間Eに形成した基礎ケーク層K1を、剥離具6による剥離動作から保護して、基礎ケーク層K1にケーク濾過の障害となるクラック等の傷を生じさせないためのものである。
【0047】
前記剥離具6は、前記第1の実施の形態と同様に、掻取部材22として、保護膜8の表面に線接触する板状体、または、ディスタント7の表面に点接触するブラシが選択される。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。掻取部材22としてブラシを選択するときには、保護膜8の開いた目の中にブラシの先端が入り込まないように、ブラシの長さが調整される。
【0048】
次に、本実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置61を用いてスラリーを処理する方法を説明する。本実施の形態におけるこの処理が前記第1の実施の形態と相違する点は、スラリー用濃縮装置60を用いる前処理であり、濾過装置30を用いる後処理は実質的に同一である。スラリー用濃縮装置60を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理は、準備工程と濾過・剥離工程とからなる。
【0049】
準備工程は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、ケーク濾過に必要な所定厚みの基礎ケーク層K1をケーク形成用デイスタン7の内部に得ることであり、その手順は前記第1の実施の形態の通りである。
【0050】
前記準備工程が終了して濾過を継続すると、次の濾過・剥離工程へ移行する。この工程で濾過が進行すると、基礎ケーク層形成用空間Eに形成されて保護膜8で保持されている基礎ケーク層K1の上に更にケークが堆積して成長ケーク層K2を形成すると共に、成長ケーク層K2も次第に厚くなって保護膜の8の表面側に成長ケーク層K2が堆積していく(図9(B)参照)。成長ケーク層K2が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなりケーク濾過による濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、保護膜8の表面に形成した成長ケーク層K2のみを剥離する。この成長ケーク層K2の剥離は、同図(C)に示す如く、保護膜8の表面側で剥離具6を移動して行われ、掻取部材22が保護膜8の表面に接触し又は近接しながら、保護膜8の表面にある成長ケーク層K2のみを剥離していく。基礎ケーク層K1は、保護膜8で覆われて保持されているので、剥離動作中の剥離具6から保護され、その層厚みに変動は生じない。本実施の形態は、基礎ケーク層K1を形成する粒子間の結合力(すなわち、基礎ケーク層K1の強度)が第1,2の実施の形態に比べてかなり強い場合に特に有効である。
【0051】
(第4の実施の形態)
図10及び図11は、本発明の第4の実施の形態を示すものであり、図10はスラリー用濃縮装置70及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置71を示す断面した正面図、図11はスラリー用濃縮・濾過装置71に形成されたケークを剥離しつつ濃縮スラリーS2を濾過装置30へ搬出している途中の状態を示す断面した正面図である。
【0052】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と大きく相違する点は、スラリー用濃縮装置70の濾過層79を可撓性の濾材で形成したことである。この相違点以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0053】
スラリー用濃縮装置70は、スラリー導入用のスラリー室3及び濾液を排出する濾液排出路4,4を内部に形成したケーシング2と、スラリー室3と濾液排出路4,4との間に配置した可撓性の濾材79,79と、スラリー室3に配置した剥離具6とを備えている。剥離具6は、濾材79の表面側(スラリー室3に面する側)で移動するように配置され、濾過の進行に伴い濾材79の表面に堆積して形成するケーク層K3を剥離するようにしてある。
【0054】
前記ケーシング2は、スラリー室3にスラリーを供給する開閉弁11付きのスラリー供給管12と、各濾液排出路4から濾液を外部へ排出する開閉弁13付きの濾液排出管14と、スラリー室3からケークを含む濃縮スラリーS2を搬出する開閉弁15付きの搬送管16と、スラリー室3に加圧空気を供給する開閉弁17付きの加圧空気供給管18と、各濾液排出路4に加圧空気を供給する開閉弁73付きの加圧空気供給管74とを夫々接続し、スラリー室3にスラリー供給管12のスラリー供給口12a及び搬送管16のスラリー排出口16aを開口してある。ケーシング2は、スラリー室3の上下両端側を開閉弁19付きのバイパス管20で連通してある。
【0055】
前記濾材79は、織成した濾布又は不織布の濾布等が選択される。前記剥離具6は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、長手方向(図面の紙面手前方向)に延びる保持具21と、保持具21に保持されて長手方向へ延びる掻取部材22,22と、保持具21を上下移動させる操作棒23,23とを備えている。各掻取部材22としては、濾材79の表面に線接触する板状体、または、濾材79の表面に点接触するブラシが選択される(図示例は板状体である)。板状体の素材としては、ゴム、スポンジ、合成樹脂又は鋼等の板材が選択され、また、ブラシの素材としては、天然素材、合成樹脂又は鋼等の線材が選択される。剥離具6を移動させるときには、濾液排出路4に加圧空気を供給して膨らませた濾材79,79を剥離具6の各掻取部材22に押し付けるようにしある。
【0056】
前記剥離具6は、操作棒23,23を上下移動させることで、保持具21の長手方向と交差する上下方向へ移動する。操作棒23,23の上下移動操作は、手動操作またはエアーシリンダ(図示略)等の外部動力による操作で行う。前記スラリー室3を加圧空気で加圧できるように、挿通孔2aとの間に気密用のシール材24を設けてある。
【0057】
前記濾過装置30は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であり、スラリー導入用のスラリー室33、濾液を排出する濾液排出路34及び加圧空気を導入する加圧空気導入室36を内部に形成したケーシング32と、スラリー室33と濾液排出路34との間に配置した濾材35と、スラリー室33と加圧空気導入室36との間に配置した可撓性の加圧板41とを備えている。濾材35は、多孔質の合成樹脂系若しくはセラミック系の濾過膜、または織成した濾布等が選択される。加圧板41は、濾布又はゴム板等が選択される。
【0058】
前記濾過装置30のケーシング32は、前記スラリー用濃縮装置70から搬送されてくるケークを含有する濃縮スラリーをスラリー室33に導く前記開閉弁15付きの搬送管16のスラリー供給口16bと、各濾液排出路34から濾液を外部へ排出する開閉弁37付きの濾液排出管38と、加圧空気導入室36に加圧空気を供給する開閉弁39付きの加圧空気供給管40とを夫々接続してある。
【0059】
次に、スラリー用濃縮・濾過装置71を用いてスラリーを処理する方法を説明する。この処理は、スラリー用濃縮装置70を用いてスラリーを濃縮してケークを含む濃縮スラリーを得る前処理と、該ケークを含む濃縮スラリーを更に濾過して低含水率のケークを得る後処理とからなる。
【0060】
前記スラリー用濃縮装置70を用いる前処理は、剥離具6を上方の待機位置Bへ後退させ、各濾液排出管14の開閉弁13を開き、搬送管16の開閉弁15を閉じ、加圧空気供給管18,74の開閉弁17,73を閉じ、この状態で、スラリー供給管12の開閉弁13を開いてスラリー原液S1をスラリー室3へ導入して充填する。なお、スラリー室3にスラリー原液が入り難いときには、空気導入管26の開閉弁25を開いて空気抜きして行う。スラリー室3に充満したスラリー原液S1は、液体成分が濾材79,79で濾過され、濾液を外部へ排出して濃縮される。スラリー室3のスラリーが濾液の排出で減少したならば、スラリー原液S1を補充する。
【0061】
濾過が進行すると各濾材79の表面側にケーク層K3が堆積していく(図11参照)。ケーク層K3が厚くなりすぎると、濾過抵抗が大きくなり濾過能力が低下する。そこで、適当なときに、各濾材79の表面に形成したケーク層K3を剥離具6で剥離する。
【0062】
このケーク層K3の剥離は、図11に示す如く、剥離具6を移動させて行う。操作棒23,23を操作して剥離具6を移動させると、掻取部材22が濾材79の表面に接触し又は接近しながら、各濾材79の表面にあるケーク層K3のみを剥離していく。このとき、各濾液排出管14の開閉弁13を閉じた後に加圧空気供給管74の開閉弁74を開くことで、各濾材79をスラリー室3へ向かって膨らませて移動中の剥離具6に押し付け、ケーク層K3を確実に剥離することができる。
【0063】
前記スラリー室3に溜まった濃縮スラリーS2を濾過装置30へ送り出して後処理の濾過へ移行するときには、スラリー供給管12の開閉弁11を閉じると共に搬送管16の開閉弁15及び空気導入管26の開閉弁25を夫々開き、更にバイバス管20の開閉弁19を閉じ、上方に位置している剥離具6を下方へ移動させることで、剥離したケークを含む高濃度化したスラリーS2を搬送管16へ向かって押し出し、濾過装置30のスラリー室33へ送り出す。このとき、濾過装置30は、濾液排出管38の開閉弁37を予め開くと共に、加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じておく。もし、ケークを含む濃縮スラリーS2が高粘度のために剥離具6のみで押し出すことができないときには、スラリー供給管12の開閉弁11、空気導入管26の開閉弁25及び各濾液排出管14の開閉弁13を夫々閉じた状態で加圧空気供給管18の開閉弁17を開いてスラリー室3を加圧し、スラリー室3から濃縮スラリーS2を搬送管16を介して濾過装置30のスラリー室33へ強制的に押し出す。
【0064】
後処理において前記濾過装置30は、スラリー用濃縮装置70から送られてきたケークを含む濃縮スラリーS2を濾材35で濾過して、濾液を濾液排出路34及び濾液排出管38を介して外部へ排出し、更に高濃度となったスラリーS2をスラリー室33に貯留する。スラリー室33で貯留した濃縮スラリーS2が充満したり、または濾過能力が極端に低下したときには、搬送管16の開閉弁15を閉じた状態で加圧空気供給管40の開閉弁39を開いて、加圧空気導入室36に導かれた加圧空気で加圧板41を膨らませ(図5参照)、スラリー室33の濃縮スラリーS2を圧搾して濾過し、スラリー室33に残るケークと濾液排出路38へ排出される濾液とに分離する。最後に、濾過装置30の加圧空気供給管40の開閉弁39を閉じて、ケーシング32を分離して低含水率のケークを取り出し、その後に、ケーシング32を接合して次の濾過に備える。なお、圧搾濾過中でもスラリー用濃縮装置70は、スラリー室3にスラリー原液S1を導き、濾過して濃縮化を行うことができる。
【0065】
(第5の実施の形態)
図12は、本発明の第5の実施の形態を示すものであって、スラリー用濃縮装置80及び濾過装置30を備えたスラリー用濃縮・濾過装置81を示す断面した正面図であり、濾過装置30の一部を省略してある。
【0066】
本実施の形態が前記第1の実施の形態のスラリー用濃縮・濾過装置1(図1〜図5参照)と大きく相違する点は、スラリー用濃縮装置80の剥離具86であり、この相違以外の構成は、前記第1の実施の形態に係るスラリー用濃縮・濾過装置1と実質的に同一であり、同一の符号は同一の構成部材等を示す。
【0067】
前記剥離具86は、濾過層9に形成した成長ケーク層K2(図3(B),同図(C)参照)を剥離する掻取具87と、スラリー室3内に貯留する濃縮スラリーS2(図4参照)をスラリー排出口16aに向かって押し出すための押出具88とを個別に矢符H方向へ往復移動できるように備えている。該掻取具87は、長手方向(図2の矢符A方向)に延びる保持具91と、保持具91に保持されて長手方向へ延びる掻取部材22,22と、保持具91を矢符H方向へ往復移動させる操作棒23,23とを備えている。該保持具91は、掻取具87で区切ったスラリー室3の寸胴域の両側を連通する連通路91aが形成されている。なお、この連通路91aに代わることのできる隙間があるブラシで掻取部材22を形成したときには、この連通路91aを省略することもある。前記押出具88は、本体92と、本体92に取付けられて濾過層9の表面に接触又は接近できるシール部材94と、本体92を矢符H方向へ往復移動させる操作棒93,93とを備えている。押出具88は、これで区切ったスラリー室3の寸胴域の両側を連通する連通路は存在しない。掻取具87の各操作棒23は、押出具88の本体92を水密状態で貫通している。なお、掻取具87の各操作棒23は、中空棒とし、押出具88の各操作棒93を挿通させるようにしてもよい。更に、掻取具87の各操作棒23は、押出具88の各操作棒93の延設する方向と逆の方向(スラリー排出口16a側へ向かう方向)に延設して、押出具88の本体92と干渉しないようにすることも可能である。
【0068】
前記剥離具86は、掻取具87の往復移動に伴いスラリー室3の寸胴域の両側に存在するスラリーが連通路91aを介して行き来するので、掻取具87が円滑に往復移動できると共に、押出具92の押し移動に伴い寸胴域の両側の間のリーク量を少なくしてスラリーを押し出すことができる。
【0069】
前記第2の実施の形態(図6及び図7)及び前記第3の実施の形態(図8及び図9)において備えた前記剥離具6を前記掻取具87及び押出具88を備えた剥離具86に置換することも勿論可能である。
【0070】
【発明の効果】
請求項1に係るスラリー用濃縮装置は、濾過の進行に伴い濾過層の表面に堆積したケークを移動するケーク用剥離具で剥離してスラリー室の濃縮スラリーと共にスラリー排出口へ押し出すことができるため、高濃度の濃縮スラリーが得られ、濃縮スラリーを処理する後処理の負担を軽減できる。
【0071】
請求項2に係るスラリー用濃縮装置は、濾過層と剥離具との隙間をリークする量を最小限にして、剥離したケーク及びスラリー室に残留して濃縮スラリーをスラリー排出口へ確実に押し出すことで、濾過能力を飛躍的に回復させることができる。
【0072】
請求項3に係るスラリー用濃縮装置は、ケークの剥離と濃縮スラリーの排出とが別個にできるため、各種スラリーの仕様に応じた最適な剥離操作の回数と濃縮スラリーの押し出しとが可能になる。
【0073】
請求項4〜6に係るスラリー用濃縮装置は、基礎ケーク層が剥離動作中の剥離具から保護して、成長ケーク層のみを剥離具で剥離するので、基礎ケーク層の層厚みが一定に維持され、一定の濾過能力を安定して維持できる。
【0074】
請求項7に係るスラリー用濃縮装置は、濾材を膨らませて移動中の剥離具に押し付けてケークを確実に剥離するので、濾過能力を飛躍的に回復させることができる。
【0075】
請求項8に係るスラリー用濃縮・濾過装置は、剥離したケーキ及び濃縮スラリーをスラリー用濃縮装置から濾過装置へ連続的に注入できるので、スラリー処理の作業能率を飛躍的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図2】同実施の形態のスラリー用濃縮装置を断面した平面図である。
【図3】同実施の形態のスラリー用濃縮装置の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層を剥離具で剥離している状態を示すものである。
【図4】同実施の形態において、スラリー用濃縮装置の成長ケーク層を剥離具で剥離しつつ濃縮スラリーをスラリー用濃縮装置のスラリー室から濾過装置のスラリー室へ押し出している途中を示す断面した正面図である。
【図5】同実施の形態において、スラリー用濃縮装置で次のスラリーを濃縮すると共に濾過装置で濃縮スラリーを圧搾して濾過している途中を示す断面した正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図7】同実施の形態のスラリー用濃縮装置の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層を剥離具で剥離している状態を示すものである。
【図8】本発明の第3の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図9】同実施の形態のスラリー用濃縮装置の要部の拡大図であって、同図(A)は基礎ケーク層を得る前の状態を示し、同図(B)は基礎ケーク層で濾過している状態を示し、同図(C)は成長ケーク層を剥離具で剥離している状態を示すものである。
【図10】本発明の第4の実施の形態を示すものであり、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図である。
【図11】同実施の形態において、スラリー用濃縮・濾過装置に形成されたケークを剥離しつつ濃縮スラリーを濾過装置へ搬出している途中の状態を示す断面した正面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態を示すものであって、スラリー用濃縮装置及び濾過装置を備えたスラリー用濃縮・濾過装置を示す断面した正面図であり、濾過装置の一部を省略してある。
【符号の説明】
1…スラリー用濃縮・濾過装置、3…スラリー室、4…排出路、5…濾材、6(86)…剥離具、7…ケーク形成用ディスタント、8…保護膜、9…濾過層、16a…スラリー排出口、10…スラリー用濃縮装置、30…濾過装置、33…スラリー室、87…掻取具、88…押出具、K1…基礎ケーク層、K2…成長ケーク層、S1…スラリー原液、S2…濃縮スラリー
Claims (8)
- ケーシングの内部に、スラリー室と濾液排出路を形成すると共に、これらの間に濾過層を配置し、該スラリー室に、スラリー供給口とスラリー排出口を各々接続すると共に、該濾過層の表面に形成するケークを剥離するケーク用剥離具を該スラリー排出口から離れた待機位置から該スラリー排出口へ近づく前進位置まで往復移動自在に配置し、前進位置へ向かって前進する該剥離具で該スラリー室に残留するスラリーを該スラリー排出口へ押し出すようにしたことを特徴とするスラリー用濃縮装置。
- 前記スラリー室は、前記剥離具の移動方向に沿って横断面形状が均一の寸胴域を形成し、前記剥離具は、この移動方向に直交する方向へ沿った平面形状を該寸胴域の横断面形状と略々同一に形成した請求項1記載のスラリー用濃縮装置。
- 前記剥離具は、ケークを剥離するための掻取具とスラリーを押し出すための押出具とを個別に往復移動できるように備え、該掻取具は、これで区切った前記寸胴域の両側を連通させる連通路が形成され、該押出具は、これで区切った前記寸胴域の両側を連通しないように形成されている請求項2記載のスラリー用濃縮装置。
- 前記濾過層は、濾材の表面上にケーク形成用ディスタントを重ね合わすと共に該ディスタントの上にスラリーが透過する保護膜の裏面側を重ね合わせ、該保護膜の表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1,2又は3記載のスラリー用濃縮装置。
- 前記濾過層は、濾材の表面上にケーク形成用ディスタントを重ね合わせ、該ディスタントの表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置。
- 前記濾過層は、濾材とスラリーが透過する保護膜との間に基礎ケーク層形成用空間を形成したものであり、該保護膜の表面に形成するケークを前記剥離具で剥離するようにした請求項1、2又は3記載のスラリー用濃縮装置。
- 前記濾過層を可撓性の濾材で形成し、前記濾液排出路に加圧空気供給管を接続し、該濾液排出路に供給する加圧空気で濾材を膨らませて移動中の前記剥離具に押し付けるようにした請求項1記載のスラリー用濃縮装置。
- 前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスラリー用濃縮装置と、スラリー室と濾液排出路の間に濾材を配置した濾過装置とを備え、該濾過装置のスラリー室に前記スラリー用濃縮装置のスラリー室を連通したことを特徴とするスラリー用濃縮・濾過装置。
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