本発明は、基板上に形成された導電パターンの状態を検査する導電パターン検査装置に関する。
基板上に形成された導電パターンの状態を検査する方法として、従来から導電パターンの両端にピンプローブを接触させる方法が知られている。これは、一方のピンプローブに電流を流して他方のピンプローブで電圧値を検出する。そして、検出された値から導電パターンの抵抗値を求めることにより、導電パターンの断線や短絡を検出するというものである。
しかし、この方法では、ピンプローブの接触による導電パターンの損傷や、導電パターンのピッチに応じてピンプローブを交換しなければならないという問題があった。
そこで、特許文献1には、非接触で導電パターンの状態を検査する回路パターン検査装置が開示されている。これは、導電パターンの一端と容量結合されている給電電極から交流信号を導電パターンに給電する。そして、導電パターンの他端に容量結合された2種類のセンサ電極でこの信号を検出し、検出された信号に基づいて導電パターンの状態を検査する。
これによれば、非接触で検査できるため、パターンを損傷することがなく、ピッチに応じてプローブを交換する必要がない。
ところで、この検査装置では、給電された信号は給電電極から導電パターンへ、導電パターンからグラウンドに流れる電流経路を形成する。そのため導電パターン上に誘起される電圧値は非常に小さく、雑音の影響を受けやすい。したがって、信頼性の高い検査ができなかった。また、高電圧の信号を供給する必要があり、放電などの対策を必要とした。
そこで、本発明では、より簡易に信頼性の高い検査ができる導電パターン検査装置を提供することを目的とする。
本発明に係る導電パターン検査装置は、基板上に複数配設された導電パターンの状態を検査する導電パターン検査装置であって、検査対象パターンに静電結合されたセンサ電極と、検査対象パターンのパターン配設方向両側に位置する一対の導電パターンに静電結合された一対の給電電極であって、前記センサ電極に隣接配置される一対の給電電極と、前記一対の給電電極を介して、前記一対の導電パターンに180度異なる位相の検査電圧を供給する印加手段と、センサ電極に誘起された電圧の変化に基づいて、検査対象パターンの短絡を検出する欠陥検出手段と、を備えることを特徴とする。
なお、ここで、基板とは、液晶表示パネルなどに利用されるガラス基板などが好適であるが、複数の導電パターンが列状に配設されている基板であれば他の基板であってもよい。また、導電パターンは、ゲートパターン、Csパターン、データパターン等と称される導電パターンを含む。
本発明によれば、導電パターンへの交流信号の印加率が向上され、低電圧の交流信号であっても、信頼性の高い検査が可能となる。そのため、より簡易に信頼性の高い検査ができる。
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。以下の説明では、特に液晶表示パネルなどに利用されるガラス基板に配設される導電パターンを検査対象としている。しかし、これに限定されるものではなく、互いに独立する列状導電パターンを有するものであれば、他の導電パターンを対象とするものであってもよい。
図1に本発明の実施例であるパターン検査装置10の概略側面図、図2に概略上面図を示す。
この装置10は、ガラス基板12上に配設された導電パターン14の状態を検査するものである。ガラス基板12は、基台24上に図示しない吸着手段によって固定される。ガラス基板12上には、導電パターン14が複数列状に配設されている。この導電パターン14は、正常な状態では、互いに独立しており、隣接する導電パターン14とは接しない。また、ほぼ等ピッチで配設されており、その両端の位置はほぼ同じである。ただし、不等ピッチや不等長の導電パターンを有するガラス基板であっても後述する2種類の電極の大きさなどを調整することにより対応できる。
ガラス基板12の上方には、所定の空間を空けて2種類の電極16,18が設けられている。給電電極16は、検査時に導電パターン14の一端の上方に位置決めされる導電性プレートである。これは、全パターンの端部を被う幅を有しており、全導電パターン14の一端と静電結合される。ただし、給電電極16は、2パターン以上の端部を被う幅であれば、他の幅であってもよい。その場合は、後述するセンサ電極18のY方向への移動に合わせて給電電極16も移動できるようにすればよい。
センサ電極18は、ほぼ1パターン幅の導電性プレートである。これは、断線または短絡のような欠陥の有無検査の際には、検査対象の導電パターン14の他端の上方に位置決めされる。また、欠陥位置の検出の際には、検査対象の導電パターン14に沿って(X方向に)移動する。このセンサ電極18も導電パターン14と静電結合される。移動する際のセンサ電極18の位置情報は、図示しない制御装置に送られ、記憶される。
電源20は、導電パターン14に交流信号を印加するための交流電源である。この電源20の両端は、センサ電極18および給電電極16に接続されている。したがって、電源20から生成、出力される交流信号は、導電パターン14に静電結合されたセンサ電極18および給電電極16を介して導電パターン14に印加される。
ここで、導電パターン14に印加される電圧は、両電極16,18が導電パターン14に対してもつ静電容量の比で分割される。1パターンに対してセンサ電極18および給電電極16が有する静電容量はほぼ等しいため、導電パターン14にかかる電圧は印加した交流電圧の約2分の1となる。そのため、効率よく電圧を加えることができ、電源20で出力される信号の電圧は、数ボルトから数十ボルトのような低電圧でよいこととなる。
電源20とセンサ電極18との間には、電流値を検出する電流検出器22が設けられている。この電流検出器22で検出された電流値は、制御装置に送られ、センサ電極18の位置情報とともに記憶される。電流検出器22には、例えば、トランスを用いることができ、巻回されるコイルの巻き数を調整することにより検出感度を調整できる。また、抵抗の電圧降下を差動増幅器で検出するものであってもよい。
次に、このパターン検査装置10での導電パターン検査原理について説明する。導電パターン14の欠陥(断線および短絡)の有無を検査する場合は、センサ電極18を検査対象導電パターン14の一端の上方に、給電電極16を他端の上方に位置決めし、電源20から交流信号を出力する。出力された交流信号は、センサ電極18および給電電極16を介して導電パターン14に印加される。
導電パターン14が断線および短絡のない正常なパターンの場合、導電パターン14を含む閉回路が形成される。そのため、導電パターン14には、印加された信号の電圧および回路内の抵抗に応じた所定の値(0より大きい)の電流が流れる。この電流値は電流検出器22で検出される。
一方、断線Aのある断線パターン14aの場合は、電流が流れない。そのため、電流検出器22では、ほぼ0の電流値が検出される。また、短絡Bのある短絡パターン14bの場合は、全体の抵抗値が下がり、正常な導電パターン14より高い電流が検出される。
したがって、センサ電極18をパターンに直交する方向(図2おけるY方向)へ移動させることにより、図2の右側に示すような電流値が得られる。すなわち、センサ電極18が正常な導電パターン14上にある場合は所定の値の電流値が、断線パターン14a上にある場合はほぼ0の電流値が、短絡パターン14b上にある場合は所定の値より高い電流値がそれぞれ検出される。
この電流値とセンサ電極18の位置情報は制御装置に送られ、制御装置ではこれらの情報に基づいて短絡および断線のある導電パターンを特定する。すなわち、ほぼ0の電流値が検出された際にセンサ電極18と静電結合している導電パターンを断線パターン、所定の値以上の電流値が検出された際のセンサ電極18と静電結合している導電パターンを短絡パターンとして検出する。
このとき、上述したように両端でほぼ同じ静電容量を介して導電パターン14に交流信号が印加されるため、低電圧の信号を印加しても高い電流値が検出可能となる。そのため、ノイズなどの影響を受けにくく、低電圧であっても精度の良い検査が可能となる。また、低電圧であるため、放電の対策などが不要となり、簡易に検査することができる。さらに、センサ電極18を導電パターン14と直交する方向に1回移動させるだけで断線と短絡の有無の検査を同時に行うことができる。
次に、欠陥の位置を検出する原理について図3、図4を用いて説明する。図3は、断線位置検出の原理を表す図であり、図4は短絡位置検出の原理を表す図である。それぞれ、図の下側に電流検出器22で検出される電流値を示す。
断線位置または短絡位置を検出する場合は、断線パターン14aまたは短絡パターン14bに沿ってセンサ電極18を移動させる。
断線パターン14aに沿ってセンサ電極18を移動させた場合、図3の下側に示すような電流値が検出される。すなわち、センサ電極18が断線Aより手前(図中において左側)にある間は、電流は流れないためほぼ0の値が検出される。そしてセンサ電極18が断線位置を超えた時点で、所定の値の電流値が検出される。そして、さらに給電電極16側に近づけると全体の抵抗値が下がるため、電流値が上昇していく。この電流値とセンサ電極18の位置情報は制御装置に送られ、制御装置ではこれらの情報に基づいて断線位置を検出する。すなわち、電流値がほぼ0から所定の値に変化した時のセンサ電極18の位置を断線位置として検出する。
一方、短絡パターン14bに沿ってセンサ電極18を移動させた場合、図4の下側に示すような電流値が検出される。すなわち、電流値は、センサ電極18が短絡Bの手前にある間は穏やかに増加し、短絡Bを超えた時点でほぼ一定になる。そして、センサ電極18をさらに給電電極16側に近づけると再び、緩やかな増加を始める。制御装置では緩やかな増加から一定への変局点が生じた際のセンサ電極18の位置を短絡位置として検出する。
このように、センサ電極を欠陥のある導電パターン沿って移動させ、そのときの電流値を検出することにより、欠陥位置を特定することができる。
なお、本実施例では、センサ電極18を移動させているが、ガラス基板12を移動させてもよい。また、欠陥位置の検出は、全パターンについての欠陥有無検査終了後に行ってもよいし、欠陥パターンが検出される都度、行ってもよい。
次に、コモンバーを給電電極として用いる場合について説明する。
一般に導電パターン14には、静電気による導電パターン損傷防止のために、全導電パターンの一端をコモンバーと呼ばれる導電性プレートで接続していることがある。このようなガラス基板の場合、このコモンバーを給電電極として用いることができる。
具体的には、図5に示すようにセンサ電極18とコモンバー30とを介して導電パターン14に交流信号を印加する。このとき、コモンバー30への給電は、例えば、1ピンの接触式プローブなどを用いればよい。コモンバー30は、全パターンの一端に電気的、物理的に接続されているため、上述した給電電極と同じ働きをする。
したがって、センサ電極18をY方向に移動させた場合、電流検出器22で検出される電流値は、図5の右側に示すようになる。すなわち、断線パターン14a上ではほぼ0の、短絡パターン14b上では所定の値より大きな電流値が検出される。また、断線Aまたは短絡Bの位置を検出する場合は、センサ電極18を欠陥のある導電パターンに沿って移動させればよい。
このようにコモンバー30を給電電極として利用することにより、より容易にパターン検査をすることができる。また、導電パターン14への給電がより確実にできるため、より正確な検査ができる。
次に他の実施例について用いて説明する。
図6は、他の実施例であるパターン検査装置10の概略上面図である。このパターン検査装置10では、給電電極として、パターンの両端に設けられる1対の第1電極32と検査対象パターンの両側パターン上に設けられる一対の第2電極34とを用いる。また、検査対象パターン上に設けられたセンサ電極36における電圧値に基づいて欠陥検査を行う。
一対の第1電極32は、検査時に導電パターン14の両端の上方に位置決めされる導電性プレートであって、断線検査用の給電電極として機能する。第1電極32は、全パターンの端部を被う幅を有しており、全導電パターン14の端部と静電結合される。ただし、第1電極32は、検査対象パターンとその両側の導電パターンとを含む3パターン以上の端部を被う幅であれば、他の幅であってもよい。その場合は、後述するセンサ電極36のY方向への移動に合わせて第1電極32も移動できるようにすればよい。
一対の第2電極34は、検査時に検査対象パターンの両側パターンの上方に位置決めされる導電性プレートであって、短絡検査用の給電電極として機能する。第2電極34は、ほぼ1パターンと同じ幅を有しており、検査対象パターンの両側の導電パターン14と静電結合される。この第2電極34は、後述するセンサ電極36の移動に合わせて、移動できるようになっている。
センサ電極36は、ほぼ1パターン幅の導電性プレートである。これは、断線または短絡のような欠陥の有無検査の際には、検査対象の導電パターン14の中央から所定距離ずれた位置に位置決めされる。また、欠陥位置の検出の際には、検査対象の導電パターン14に沿って移動する。このセンサ電極36も導電パターン14と静電結合される。このときのセンサ電極36の位置情報は、図示しない制御装置に送られ、記憶される。
第1電源40と第2電源42は、それぞれ異なる周波数である第1周波数f1と第2周波数f2の交流信号を生成、出力するものである。第1電源40の両端は一対の第1電極32に接続されており、第2電源42の両端は一対の第2電極34に接続されている。したがって、第1電源40および第2電源42から生成、出力される2つの周波数f1、f2の交流信号は、それぞれ一対の第1電極32および第2電極32を介して導電パターン14に印加される。
ここで、一対の第1電極32と導電パターン14との間に形成される静電容量は、両端でほぼ等しくなる。そのため、導電パターン14にかかる第1周波数f1の電圧は印加した交流電圧の約2分の1となる。これにより、効率よく電圧を加えることができるため、電源40で出力される信号の電圧は、数ボルトから数十ボルトのような低電圧でよいこととなる。また、一対の第2電極34が形成する静電容量も両側でほぼ等しくなるため、第2電源42で出力される信号の電圧は、数ボルトから数十ボルトのような低電圧でよいこととなる。第1電源40および第2電源42は、ともに、トランスを用い、中点アースされていることが好適である。
センサ電極36には、周波数毎の電圧値を検出する電圧値検出器44が接続されている。これは、センサ電極36で検出された交流信号を増幅する増幅器46と周波数毎の信号を取り出すための弁別フィルタ48で構成されている。これにより、周波数毎の電圧値を検出することができる。また、検出された信号の極性を判別できる位相検波器(図示せず)も備えている。
次に、このパターン検査装置10での導電パターン検査原理について説明する。
導電パターン14の欠陥(断線または短絡)の有無を検査する場合は、センサ電極36を検査対象の導電パターン14の中央からずれた位置に位置決めし、第1電源40から交流信号を出力する。この交流信号は、一対の第1電極32を介して導電パターン14に印加される。
第1電源40は、中点アースされているため、一対の第1電源40を介して印加される信号の電圧は、その両端で180度位相が異なっている。そのため、正常な導電パターン14に誘起される電圧値は、打ち消しあいによりパターンの中心でほぼ0となり、その両端に近づくほど徐々に増加または減少していく。したがって、導電パターン14が断線および短絡のない正常なものである場合、センサ電極36は導電パターン14の中心からずれた位置にあるため、センサ電極には所定の値の電圧がかかる。この電圧値は、電圧値検出器44により検出される。
一方、断線Aのある断線パターン14aの場合は、導電パターン14の左右から印加される逆位相の電圧の打ち消しがない。そのため、中央位置からずれたセンサ電極36においては、一端から印加される電圧値がそのまま(位相の打ち消しがないまま)検出される。この電圧値は、正常導電パターン14で検出される電圧値より高いものとなる。したがって、所定の電圧値より高い周波数f1の電圧が検出されれば断線パターンとして検出することができる。
一方、短絡の有無を検査する場合は、センサ電極36を検査対象導電パターン14の中央からずれた位置に位置決めし、第2電源42から第2周波数f2の交流信号を出力する。導電パターン14が短絡のない正常なものである場合、センサ電極36には周波数f2の所定の値の電圧がかかる。この電圧値は、電圧値検出器44により検出される。一方、短絡Bのある短絡パターン14bの場合は、両側から印加される電圧のバランスが崩れるため、通常より高い値の電圧が検出される。したがって、所定の電圧値より高い周波数f2の電圧が検出されれば短絡パターンとして検出することができる。
したがって、センサ電極36をパターンに直交する方向(図6におけるY方向)へ移動させることにより、図6右側に示すような電圧値が得られる。すなわち、周波数f1の電圧値は、センサ電極36が正常な導電パターン14上にある場合は所定の値となり、断線パターン14a上にある場合は所定の値より高い値の電圧値が検出される。一方、周波数f2の電圧値は、センサ電極36が正常な導電パターン14上にある場合は所定の値の電圧値が得られる。また、センサ電極36が短絡パターン14b上にあり、かつ、一対の第2電極34のうち一方のみが他の短絡パターン14b上にある場合は所定の値より高い値の電圧値が検出される。
この電流値とセンサ電極18の位置情報は制御装置に送られ、制御装置ではこれらの情報に基づいて欠陥のある導電パターンを特定する。すなわち、所定以上の周波数f1の電圧値が検出された際にセンサ電極36と静電結合されているパターンを断線パターンとして検出する。また、所定以上の周波数f2の電圧値が検出された際にセンサ電極36と静電結合されているパターンを短絡パターンとして検出する。
なお、この断線と短絡の有無の検出は、当然、同時に行ってもよい。電圧値検出器44は、周波数毎の電圧値を検出するための弁別フィルタ48を有しているため、導電パターン14にf1とf2の電圧が印加されても、それぞれの電圧値を検出できる。したがって、センサ電極36と第2電極34とを移動させることにより、短絡と断線とを同時に検出することができる。
このとき、上述したように両端でほぼ同じ静電容量を介して導電パターン14に交流信号が印加されるため、信号印加率が高くなる。そのため、信号が低電圧であっても、十分検出可能な電圧が誘起され、低電圧であってもノイズなどの影響を受けにくく、精度の良い検査が可能となる。また、低電圧であるため、放電などの対策の必要がなく簡易に検査することができる。さらに、センサ電極36と第2電極34とを導電パターン14と直交する方向に1回移動させるだけで断線Aと短絡Bの両方を同時に検出することができる。
なお、センサ電極がちょうど断線位置にある場合、または断線と断線の間にある場合、センサ電極では電圧値を検出できない。しかし、その場合には、所定の電圧値ではなく、0の電圧値が検出される。そのため、ほぼ0の電圧値が検出された導電パターンは、断線パターンとして検出することができる。
また、本実施例では、電源を中点アースとし、センサ電極を中心からずれた位置に位置決めしている。これは、0という電圧値を確実に異常として検出するためである。しかし、このようにしなくても、正常なパターンと欠陥のあるパターンとでは電圧値に何らかの変化があるので、変化のあるパターンを欠陥パターンとして検出すればよい。
次に、断線または短絡の位置を検出する原理について図7、図8を用いて説明する。
図7は、断線位置検出の原理を表す図であり、図8は短絡位置検出の原理を表す図である。それぞれ、図の下側に電圧値検出器44で検出される電圧値を示す。
断線位置を検出する場合は、断線パターン14aに沿ってセンサ電極36を移動させる。その場合、図7の下側に示すような電圧値が検出される。すなわち、センサ電極36が断線Aより手前(図中において左側)にある間は、片側(図中においては左側)から印加される信号の電圧値が検出される。そしてセンサ電極36が断線位置を超えた時点で、位相が180度変化し、反対側(図中において右側)から印加される信号の電圧値が検出される。したがって、センサ電極36で検出された信号の極性を位相検波器により判別し、極性が反転した位置を断線位置として検出できる。この検出結果とセンサ電極36の位置情報は制御装置に送られ、制御装置ではこれらの情報に基づいて断線位置を検出する。つまり、電圧の位相が180度変化した時のセンサ電極36の位置が断線位置として検出される。
一方、短絡パターン14bに沿ってセンサ電極36を移動させた場合、図8の下側に示すような電圧値が検出される。すなわち、センサ電極36が短絡Bの手前では所定の値の電圧値であり、短絡位置に近づくほどバランスか崩れるので、短絡位置の上方に来たとき急激に上昇下降するピークを示す。そして、短絡Bを過ぎると再び所定の値の電圧値に戻る。すなわち、短絡Bの位置において電圧値のピークが検出される。制御装置ではこのピークの電圧値が検出された際のセンサ電極36の位置を短絡位置として検出する。
このように、センサ電極を欠陥のある導電パターンに沿って移動させ、そのときの電圧値を検出することにより、欠陥位置を特定することができる。
なお、本実施例では、センサ電極36を移動させているが、ガラス基板12を移動させてもよい。また、欠陥位置の検出は、全パターンについての欠陥有無検査終了後に行ってもよいし、欠陥パターンが検出される都度、行ってもよい。また、導電パターン14にコモンバーが接続されている場合は、コモンバーを第1電極として用いてもよい。
次に、他の実施例であるパターン検査装置10について説明する。
このパターン検査装置10は、特に液晶表示パネルに用いられるガラス基板に配設されるゲートパターンとCsパターンとの検査に用いられるものである。
液晶表示パネルの製造工程においては、まず、ガラス基板12上にゲートパターンとCsパターンとが同時に配設される。ゲートパターンは、ガラス基板上に列状に複数配設される導電パターンである。Csパターンは、これと交互に列状に配設されている導電パターンである。このゲートパターンとCsパターンとの距離がきわめて小さい(例えば数十μm)ため、短絡が生じやすい。この短絡検査に特に適したパターン検査装置10について説明していく。
図9にこのパターン検査装置10の概略上面図を示す。
検査対象のガラス基板12上には、ゲートパターン50とCsパターン52が互いに隣接して配設されている。また、ゲートパターン50とCsパターン52はともにコモンバー54、58によりその一端が接続されている。
ガラス基板12の上方には、給電電極として、ゲート用電極56、Cs用電極60が設けられている。また、センサ電極62が検査対象の導電パターン上に設けられている。
ゲート用電極56は、検査時にゲート用コモンバー54とは反対側のゲートパターン50の一端に設けられている導電性プレートである。これは、全ゲートパターン50の一端を被う幅を有しており、全ゲートパターン50の一端と静電結合されている。ただし、検査対象のゲートパターンを含む1以上のゲートパターンを被う幅であれば他の幅であってもよい。その場合は、後述するセンサ電極62のY方向への移動に合わせて移動できるようにすればよい。
Cs用電極60は、検査時にCs用コモンバー58とは反対側のCsパターン52の一端に設けられている導電性プレートである。これも、Csパターン52と静電結合されており、全Csパターン52の一端を被う幅を有している。もちろん、対象Csパターンを含む1以上のCsパターンを被う幅であれば他の幅であってもよい。
センサ電極62は、検査時に検査対象のゲートパターン50またはCsパターン52上方に位置決めされる導電性プレートであって、これらと静電結合されている。センサ電極62は、検査時には、Y方向またはX方向に移動することができ、そのときの位置情報は、図示しない制御装置に送られ、記憶される。
センサ電極62には、電圧値検出器76が設けられており、センサ電極62の位置における電圧値が検出される。検出された電圧値は、センサ電極62の位置情報とともに制御装置に送られ、記憶される。
電圧値検出器76は、センサ電極62で検出された交流信号を増幅する増幅器78と周波数毎の信号を取り出すための弁別フィルタ80で構成されている。これにより、周波数毎の電圧値を検出することができる。また、検出された信号の極性を判別できる位相検波器(図示せず)も備えている。
ゲートパターン50には、ゲート用電極56とゲート用コモンバー54とを介して周波数f1の交流信号が印加される。これは、一端をゲート用電極56、他端をゲート用コモンバー54に接続したゲート用電源64により印加される。一方、Csパターン52には、Cs用電極60とCs用コモンバー58とを介してCs用電源66により周波数f2の交流信号が印加される。ゲート用電源64とCs用電源66は、ともに中点アースされている。
次に、ゲートパターン50とCsパターン52との短絡Aおよび断線Bの検出原理について説明する。この場合、センサ電極62を検査対象のゲートパターン50またはCsパターン52上に位置決めする。このとき、センサ電極62は、パターンの中心から若干ずれた位置にあることが好適である。
この状態で、ゲート用電源64およびCs用電源66から周波数f1、f2の交流信号を印加する。そして、センサ電極62における周波数毎の電圧値を電圧値検出器76で検出する。
このとき、短絡Aまたは断線Bのない正常なゲートパターン50には、周波数f1(ゲート用電源の周波数)の電圧が誘起されるが、周波数f2(Cs用電源の周波数)の電圧は誘起されない。また、正常なCsパターン52には、周波数f2(Cs用電源の周波数)の電圧が誘起されるが、周波数f1の電圧(ゲート用電源の周波数)は誘起されないこととなる。
一方、短絡Aのあるゲートパターン50aには、周波数f1の電圧とともに周波数f2の電圧も誘起される。また、短絡AのあるCsパターン52aでも周波数f1と周波数f2の両周波数の電圧が誘起される。つまり、周波数f2(Cs用電源の周波数)の電圧が誘起されたゲートパターン、周波数f1(ゲート用電源の周波数)の電圧が誘起されたCsパターンは、短絡が生じていると判断できる。
次に、断線Bの有無検出について説明する。断線Bの有無検出の場合には、検出される電圧値に着目する。ゲートパターン50、Csパターン52のいずれであっても、正常なパターンの場合は、所定の値の電圧値が検出される。これは、パターンの両側から逆位相の電圧が印加されているためである。電圧の位相の打ち消しがあるため、電圧値は、パターンの中心でほぼ0となり、両端に近づくにつれ徐々に高く(低く)なる。したがって、中心から若干ずれた位置にあるセンサ電極62の位置においては、所定の電圧値(0以上)が検出される。
一方、断線のあるパターン50b、52bの場合には、位相の打ち消しがないため、所定の値より高い電圧値が検出される。つまり、所定の値より高い電圧値が検出されたパターンは、断線パターン50b、52bとして検出できる。
なお、センサ電極がちょうど断線位置にある場合、または断線と断線の間にある場合、センサ電極では電圧値を検出できない。しかし、その場合には、所定の電圧値ではなく、0の電圧値が検出される。そのため、ほぼ0の電圧値が検出された導電パターンは、断線パターンとして検出することができる。
センサ電極62をY方向に移動させることにより図9右側に示すような電圧値が得られる。すなわち、センサ電極62が短絡Aの生じているCsパターン52a上またはゲートパターン50a上にあるときは、周波数f1および周波数f2のいずれの電圧も所定の値が検出される。
一方、断線の生じているゲートパターン50b上にあるときは、周波数f1の電圧値は高くなる。また、断線の生じているCsパターン52b上にあるときは、周波数f2の高い電圧値が検出される。
この電圧値とセンサ電極62の位置情報は制御装置に送られ、制御装置では、これらの情報に基づいて短絡パターンおよび断線パターンを検出する。すなわち、周波数f1の電圧が検出されたCsパターン52、または、周波数f2の電圧が検出されたゲートパターン50を短絡パターンとして検出する。また、所定の値より高い、または、0の電圧値が検出されたパターンを断線パターンとして検出する。
次に、欠陥の位置を検出する場合について説明する。欠陥位置を検出する場合は、欠陥パターンに沿ってセンサ電極62を移動させる。
センサ電極62を短絡パターン50a、52aに沿って移動させると、センサ電極62が短絡Aの上方にきた際に最大の電圧値が検出される(図10)。一方、センサ電極62を断線パターン50b、52bに沿って移動させると、断線Bの上方にセンサ電極62がきた際に位相が180度反転する(図11)。制御装置では、電圧値(位相検波結果)およびセンサ電極62の位置情報に基づいて短絡または断線の位置を検出する。
このように、本実施例によれば、パターンの両端から交流信号を印加するために信号印加率が高い。そのため、検出される信号がノイズの影響を受けにくく、精度の高い検査が可能となる。また、低電圧の交流信号でも検査可能であるため、放電の対策などを必要とせず、簡易に検査を行うことができる。
また、短絡の生じやすいゲートパターンとCsパターンとの短絡を容易に検出することができる。さらに、センサ電極62をY方向に移動させることにより、短絡と断線の有無検査を同時に行うことができる。
なお、本実施例では、ゲート用コモンバー54のあるガラス基板12を用いたが、ゲート用コモンバー54のないガラス基板12でも当然よい。ゲート用コモンバー54がない場合は、ゲートパターンの端部と静電結合する一対のゲート用電極56をゲートパターン50の両端に設けるようにすればよい。
次に他の実施例について図12を用いて説明する。これもゲートパターンとCsパターンの短絡を検出するのに好適なパターン検査装置10である。
これは、欠陥の有無検出を電流値に基づいて行うものである。
このパターン検査装置10においては、センサ電極62は、ゲート用電源64とCs用電源66の中点に接続されている。
次に、このパターン検査装置10を用いての欠陥(短絡または断線)の有無検査について説明する。
この場合、センサ電極62を検査対象のゲートパターン50またはCsパターン52上に位置決めする。そして、ゲートパターン50およびCsパターン52にそれぞれの電極56,60とコモンバー54、58とを介して交流信号を印加する。このとき、センサ電極62は、両電源64、66の中点に接続されている。この場合、センサ電極62と電源64,66とを接続する線によって、2つの回路IRとILが形成される。このIRとILに流れる電流値は、短絡Aおよび断線Bのない正常なパターンであれば、ほぼ等しく、逆向きとなる。したがって、正常なパターンの場合、電流検出器68、70では、ほぼ0の電流値が検出される。
しかし、短絡Aが生じているパターン50a、52b上にセンサ電極62がある場合は、電圧のバランスが崩れる(IRとILでの電流値が不等になる)ため、両方の電流検出器68、70で、高い電流値が検出される。このときの電流値は、センサ電極62の位置情報とともに制御装置に記憶される。
また、断線Bがある場合にも高い電流値が検出される。しかし、この場合、断線Bが生じたパターンとは異なるパターン用の電流検出器ではほぼ0の電流値となる。つまり、ゲートパターンに断線がある場合は、ゲート用電流検出器68では高い電流値が、Cs用電流検出器70ではほぼ0の電流値が検出される。反対にCsパターンに断線がある場合は、Cs用電流検出器70では高い電流値が、ゲート用電流検出器68ではほぼ0の電流値が検出される。
したがって、ゲート用電流検出器68,Cs用電流検出器70の両方で高い電流値が検出された場合は短絡、ゲート用電流検出器68,Cs用電流検出器70のいずれかのみで高い電流値が検出された場合は断線と判断できる。
したがって、センサ電極62をY方向に移動させることにより、短絡と断線の有無検査を同時に行うことができる。
断線位置を特定する場合は、センサ電極62を断線のあるパターンに沿って移動させればよい。パターンの両側から逆位相の電圧が印加されているため、断線位置を境に位相が異なることとなる。そのため、位相検波装置(図示せず)などにより位相の変化を見ることにより断線位置を特定することができる。また、断線位置では、電流値がほぼ0となるため、ほぼ0の電圧値が検出された位置を断線位置として特定してもよい。
このように、本実施例によれば、パターンの両端から交流信号を印加するために信号印加率が高い。そのため、検出される信号がノイズの影響を受けにくく、精度の高い検査が可能となる。また、低電圧の交流信号でも検査可能であるため、放電などの対策を必要とせず、簡易に検査を行うことができる。
また、短絡の生じやすいゲートパターンとCsパターンとの短絡を容易に検出することができる。
次に他の実施例について、図13を用いて説明する。これは、より容易にゲートパターンとCsパターンとの短絡を検出するためのものである。
この検査装置10は、引き出し電極82を有するゲートパターン50とコモンバー58により一端を接続されたCsパターン52との短絡を検出するものである。
交流信号を出力、生成する電源64の両端は、センサ電極62とコモンバー58に接続されている。センサ電極62は、ほぼ引き出し電極と同じ幅の導電性プレートであって、短絡の検出の際には、検査対象の導電パターンに接続された引き出し電極82上方に位置決めされ、引き出し電極82と静電結合される。
電源64の一端はコモンバー58に、他端はセンサ電極62に接続される。コモンバー58と電源64との間には、電流値を検出するための電流検出器68が設けられている。
次に、このパターン検査装置10での短絡検出原理について説明する。短絡の有無を検出する場合は、センサ電極62を検査対象のゲートパターン50と接続された引き出し電極82上方に位置決めする。そして、電源64から交流信号を出力する。電源20の一端はコモンバー58に、他端はセンサ電極62に接続する。
このとき、コモンバー58はCsパターン52と電気的物理的に接続されている。また、センサ電極62は、引き出し電極82を介してゲートパターン50と電気的に接続されている。したがって、ゲートパターン50とCsパターン52が短絡していない場合、電流は流れないこととなる。したがって、センサ電極62が正常なパターン上にある場合には、ほぼ0の電流値が検出される。
一方、ゲートパターン50とCsパターン52とが短絡していると、短絡部Aを介して電流が流れることとなる。したがって、センサ電極62が短絡しているパターン上にある場合には、高い電流値が検出される。
したがって、センサ電極62をY方向に移動させると、図13の右側に示すような電流値が検出される。すなわち、正常なゲートパターン50の場合は、ほぼ0の、短絡の生じているゲートパターン50aの場合は高い値の電流値が検出される。制御装置では、このときの電流値とセンサ電極62の位置情報とに基づいて短絡の有無を検出する。すなわち、高い電流値が検出された際のセンサ電極62と電気的に接続されたゲートパターン50を短絡のあるパターンとして検出する。
このように、本実施例によれば1つの電源で短絡の有無を検出することができる。
本発明の実施例であるパターン検査装置の概略側面図である。
本発明の実施例であるパターン検査装置の概略上面図である。
断線位置検出の原理を示す図である。
短絡位置検出の原理を示す図である。
他の実施例であるパターン検査装置の概略上面図である。
他の実施例であるパターン検査装置の概略上面図である。
断線位置検出の原理を示す図である。
短絡位置検出の原理を示す図である。
他の実施例であるパターン検査装置の概略上面図である。
短絡位置検出の原理を示す図である。
断線位置検出の原理を示す図である。
他の実施例であるパターン検査装置の概略上面図である。
他の実施例であるパターン検査装置の概略上面図である。
符号の説明
10 パターン検査装置、14 導電パターン、16 給電電極、18,36,62 センサ電極、20,40,42,64,66 電源、22 電流検出器、30 コモンバー、32 第1電極、34 第2電極、44 電圧値検出器、50 ゲートパターン、52 Csパターン、56 ゲート用電極、60 Cs用電極、82 引き出し電極。