JP4855293B2 - ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法 - Google Patents
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Description
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長のF2エキシマレーザー、電子線、EUV(極紫外線)やX線などについても検討が行われている。
露光光源の短波長化に伴い、レジスト材料には、露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性の向上が求められる。このような要求を満たすレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分とを含有する化学増幅型レジストが知られている。化学増幅型レジストには、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が低下するネガ型と、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大するポジ型とがある。
しかし、このようなパターン形成材料を用いてパターンを形成した場合、パターンの上面や側壁の表面に荒れ(ラフネス)が生じる問題がある。たとえばレジストパターン側壁表面のラフネス、すなわちラインエッジラフネス(LER)は、ホールパターンにおけるホール周囲の歪みや、ラインアンドスペースパターンにおけるライン幅のばらつき等の原因となるため、微細な半導体素子の形成等に悪影響を与えるおそれがある。
かかる問題は、パターン寸法が小さいほど重大となってくる。そのため、例えば電子線やEUVによるリソグラフィーでは、数10nmの微細なパターン形成を目標としていることから、現状のパターンラフネスを越える極低ラフネスが求められている。
しかし、一般的に基材成分として用いられているポリマーは、分子サイズ(一分子当たりの平均自乗半径)が数nm前後と大きい。パターン形成の現像工程において、現像液に対するレジストの溶解挙動は通常、基材成分1分子単位で行われるため、基材成分としてポリマーを使う限り、さらなるラフネスの低減は極めて困難である。
T.Hirayama,D.Shiono,H.Hada and J.Onodera:J.Photopolym.Sci.Technol.17(2004)、p435 Jim−Baek Kim,Hyo−Jin Yun,Young−Gil Kwon:Chemistry Letters(2002)、p1064〜1065
「露光」とは、放射線の照射全般を含む概念とする。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「低級アルキル基」とは、炭素原子数1〜5のアルキル基を意味する。
「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
《ポジ型レジスト組成物》
本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)(以下、(A)成分という。)、および放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という。)を含有し、前記(A)成分は、フェノール化合物(A1’)の水酸基の水素原子の一部または全部が酸解離性溶解抑制基で置換された、分子量が700〜2500の化合物(A1)を二種以上含むことを特徴とする。
かかるポジ型レジスト組成物において、(A)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して不溶性であり、露光により(B)成分から酸が発生すると、該酸が、前記(A)成分中の酸解離性溶解抑制基を解離させ、アルカリ現像液に対する溶解性を増大させる。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像を行うことにより、レジストパターンを形成することができる。
(A)成分は、二種以上の上記化合物(A1)を含む。本発明においては、(A)成分は非重合体であることが好ましい。
<化合物(A1)>
化合物(A1)は、上記フェノール化合物(A1’)の水酸基の水素原子の一部または全部が酸解離性溶解抑制基で置換された、分子量が700〜2500のものである。
化合物(A1)中の酸解離性溶解抑制基は、解離前は化合物(A1)をアルカリ現像液に対して難溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、酸により解離してこの化合物(A1)をアルカリ可溶性へ変化させる基である。そのため、化合物(A1)においては、後述するようにポジ型レジスト組成物に(B)成分とともに配合された場合に、露光により(B)成分から発生した酸が作用すると、酸解離性溶解抑制基が解離して、化合物(A1)がアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性へと変化し、(A)成分はアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。
第3級アルキル基として、具体的には、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等の鎖状の第3級アルキル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等の、脂肪族環式基を含む第3級アルキル基等が挙げられる。前記脂肪族環式基の具体例としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基を含む第3級アルキル基としては、例えば上述した2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等の、脂肪族環式基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基;鎖状の第3級アルキル基の水素原子の一部が上述した脂肪族環式基で置換された基などが挙げられる。
第3級アルキルオキシカルボニル基における第3級アルキル基としては、上記と同様のものが挙げられる。第3級アルキルオキシカルボニル基として、具体的には、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
環状エーテル基として、具体的には、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む基としては、ヘテロ原子自体であってもよく、また、ヘテロ原子と炭素原子および/または水素原子とからなる基、たとえばアルコキシ基等であってもよい。
水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む基で置換されたアルキル基の例としては、たとえば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、同一の炭素原子に結合した2つの水素原子が1つの酸素原子で置換された基(すなわちカルボニル基(C=O)を有する基)、同一の炭素原子に結合した2つの水素原子が1つの硫黄原子で置換された基(すなわちチオカルボニル基(C=S)を有する基)等が挙げられる。
アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されている基としては、たとえば、炭素原子が窒素原子で置換されている例(たとえば、その構造中に−CH2−を含む分岐鎖状または環状のアルキル基において該−CH2−が−NH−で置換された基)や、炭素原子が酸素原子で置換されている例(たとえば、その構造中に−CH2−を含む分岐鎖状または環状のアルキル基において該−CH2−が−O−で置換された基)等が挙げられる。
R1としての分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が4〜10であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。具体的には、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられ、tert−ブチル基であることが好ましい。
該環状のアルキル基における基本環(置換基を除いた基本の環)の構造は、単環でも多環でもよく、特に、本発明の効果に優れることから、多環であることが好ましい。また、基本環は、炭素および水素から構成された炭化水素環であってもよく、炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された複素環であってもよい。本発明においては、特に、基本環が炭化水素環であることが好ましい。炭化水素環の具体例としては、たとえば、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンが挙げられる。これらのなかでも、アダマンタン、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンが好ましく、特にアダマンタンが好ましい。
これらの基本環は、その環上に置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
置換基としては、低級アルキル基、フッ素原子、フッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。該低級アルキル基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。基本環が置換基を有する場合、置換基の数は、1〜3が好ましく、1がより好ましい。ここで、「置換基を有する」とは、基本環を構成する炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていることを意味する。
R1の環状のアルキル基としては、これらの基本環から1つの水素原子を除いた基が挙げられる。R1においては、該R1に隣接する酸素原子が結合する炭素原子が、上記のような基本環を構成する炭素原子の1つであることが好ましく、特に、R1に隣接する酸素原子に結合する炭素原子が、低級アルキル基等の置換基が結合した第3級炭素原子であることが、本発明の効果に優れ、好ましい。
R1として環状アルキル基を有する酸解離性溶解抑制基としては、たとえば、下記式(p1−1)〜(p1−7)で表される基が挙げられる。これらの中でも、一般式(p1−1)で表されるものが好ましい。
R3は水素原子または低級アルキル基である。R3の低級アルキル基は、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。R3としては、工業上入手しやすい点で、水素原子またはメチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
R2が環状アルキル基である式(p2)で表される基としては、たとえば、下記式で表される基が挙げられる。
アダマンチル基と−CHR3−O−(CH2)n”−との結合位置は特に限定されないが、アダマンチル基の1位又は2位に結合することが好ましい。
つまり、露光部と未露光部とのアルカリ溶解性の差(溶解コントラスト)が大きくなり、解像性が向上する。
フェノール化合物(A1’)は、その構造中にフェノール性水酸基を有するものであれば特に限定されるものではない。ただし、化合物(A1)の分子量が500〜2300であることを考慮すると、該フェノール化合物(A1’)の分子量は、600〜1800であることが好ましく、700〜1400であることがより好ましく、800〜1300であることが特に好ましい。
フェノール化合物(A1’)としては、特に本発明の効果に優れることから、トリフェニルメタン骨格を有することが好ましく、下記一般式(A1’−1)で表されるものがさらに好ましい。
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよいが、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状の低級アルキル基、または炭素数5〜6の環状アルキル基が好ましい。前記低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。前記環状アルキル基としてはシクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜15であることが好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、フェネチル基、ナフチル基などが挙げられる。
これらのアルキル基または芳香族炭化水素基は、その構造中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
R101〜R107としては、メチル基が最も好ましい。
aおよびn1は、1または2であることが好ましく、最も好ましくは1である。
n2は、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、最も好ましくは1である。
n7は、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、最も好ましくは0である。
bは、1または2であることが好ましく、最も好ましくは1である。
n3およびn4は、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、最も好ましくは0である。
cは1以上の整数であり、n5およびn6はそれぞれ独立に0以上の整数であり、かつc+n5+n6が4以下である。
cは、1または2であることが好ましく、最も好ましくは1である。
n5およびn6は、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、最も好ましくは0である。
R101、R102およびR107の結合位置は、特に限定されないが、合成のしやすさ等の点で、R101が、水酸基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子の少なくとも一方に結合していることが好ましい。
アルキレン基は特に限定されないが、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基またはメチレン基がより好ましく、合成が容易である点でメチレン基が特に好ましい。
脂肪族環式基の、置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。好ましくは多環式基である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの基は、その水素原子の一部または全部が置換基(例えば低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基)で置換されていてもよい。
これらの中でも、炭素数が4〜15の脂肪族環式基が好ましく、アダマンタンから2個の水素原子を除いた基がより好ましく、特に、アダマンタンの1位および3位の水素原子を除いた基が好ましい。
芳香族環式基の、置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。好ましくは単環式基である。
このような芳香族環式基の具体例としては、ベンゼンから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。これらの基は、その水素原子の一部または全部が置換基(例えば、その構造中にヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基または芳香族炭化水素基、該アルキル基または芳香族炭化水素基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基、水酸基、フッ素原子)で置換されていてもよい。
これらの中でも、置換基として水酸基、およびその構造中にヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基または芳香族炭化水素基を有するベンゼンが好ましく、下記一般式(A1’−1−2)で表される基が、特に好ましいものとして挙げられる。
n8、n9、dはそれぞれ独立に0以上の整数であり、かつn8+n9+dが4以下である。なかでも、d=1であり、かつn8+n9が1であることが好ましい。
fは0または1である。
そして、e+fは1以上である。なかでも、eが1でありかつfが0であるか、eおよびfが共に1であることが好ましい。
式(A1’−3)で表される化合物では、下付文字fを付した基において、ベンゼン環に対する−(CH2)e−、および−COOHの結合位置は、特に限定されないが、−(CH2)e−、および−COOHが互いにパラ位となるように結合していることが好ましい。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記アルキル基としては特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基が挙げられ、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が4〜10であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。具体的には、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
環状のアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、4〜14であることがより好ましく、5〜12であることが特に好ましい。
環状のアルキル基における基本環(置換基を除いた基本の環)の構造は、単環でも多環でもよい。また、基本環は、炭素および水素から構成された炭化水素環であってもよく、後記するように炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された複素環であってもよい。炭化水素環の具体例としては、たとえば、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンが挙げられる。
これらの基本環は、その環上に炭化水素基からなる置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。基本環が置換基を有する場合、置換基の数は、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
前記アリール基としては特に限定されないが、R101〜R107の芳香族炭化水素基として挙げたものが例示でき、中でもフェニル基がより好ましい。
前記アルコキシ基およびアリールオキシ基としては、酸素原子(−O−)に前記アルキル基およびアリール基が結合した基を挙げることができる。
水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む基で置換されたものとしては、例えば、水酸基、アルコキシ基、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基などの、ヘテロ原子と炭素原子および/または水素原子とからなる基で置換されたものが挙げられる。
そして、水素原子の一部または全部がヘテロ原子自体で置換されたものとしては、例えば、同一の炭素原子に結合した2つの水素原子が1つの酸素原子で置換されたもの(すなわちカルボニル基(C=O)を有するもの)、同一の炭素原子に結合した2つの水素原子が1つの硫黄原子で置換されたもの(すなわちチオカルボニル基(C=S)を有するもの)が挙げられる。
炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものとしては、例えば、その構造中に−CH2−を含むものにおいて、該−CH2−が−NH−で置換されたものや、−O−で置換されたものなどが挙げられる。
炭化水素基以外の置換基は、上記のヘテロ原子を含む基以外のものでもよい。
化合物(A1)の分子量は、本発明の効果に優れることから、800〜2000であることが好ましく、900〜1800であることがより好ましく、1000〜1500であることが特に好ましい。
そして化合物(A1)は、下記一般式(A1−1)で表される化合物が、レジスト組成物用として好適であるため好ましい。
Z11は水素原子または酸解離性溶解抑制基であり、酸解離性溶解抑制基としては前記と同様のものが挙げられる。
複数のZ11のうちの少なくとも1つは酸解離性溶解抑制基であり、レジスト組成物の解像性に優れることからZ11のいずれもが酸解離性溶解抑制基であることが好ましい。
また、酸解離性溶解抑制基が位置選択的に導入されるため、酸解離性溶解抑制基の種類を選択することにより、(A)成分全体の性質を調節しやすいという利点も有する。たとえば酸解離性溶解抑制基としてアダマンタン等の多環構造を有する基を選択した場合と、シクロヘキサン等の単環構造を有する基を選択した場合と、鎖状構造の基を選択した場合とでは、(A)成分のアルカリ現像液に対する溶解性は、「多環構造を有する基<単環構造を有する基<鎖状構造の基」となる。
b’およびc’は1〜4の整数であり、1または2が好ましく、1が最も好ましい。なかでも、b’およびc’が共に1である化合物が好ましく、特に下記一般式(A1−3)で表される化合物が好ましい。
R102の結合位置は、特に限定されないが、合成のしやすさ等の点で、水酸基のオルト位またはメタ位に結合していることが好ましい。
すなわち、式(A1−2)で表される化合物としては、下記一般式(A1−4)または(A1−5)で表される化合物が好ましい。
保護率は、たとえば、1H−NMR、13C−NMR等のNMR(核磁気共鳴スペクトル)により求めることができる。
当該化合物がスピンコート法によりアモルファスな膜を形成し得る材料であるかどうかは、8インチシリコンウェーハ上にスピンコート法により形成した塗膜が全面透明であるか否かにより判別できる。より具体的には、例えば以下のようにして判別できる。まず、当該化合物に、一般的にレジスト溶剤に用いられている溶剤、例えば乳酸エチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=40/60(質量比)の混合溶剤(以下、EMと略記する)を用いて、濃度が14質量%となるよう溶解し、超音波洗浄器を用いて超音波処理(溶解処理)を施して溶解させ、該溶液を、ウェーハ上に1500rpmにてスピンコートし、任意に乾燥ベーク(PAB,Post Applied Bake)を110℃、90秒の条件で施し、この状態で、目視にて、透明かどうかによりアモルファスな膜が形成されているかどうかを確認する。なお、透明でない曇った膜はアモルファスな膜ではない。
本発明において、化合物(A1)は、上述のようにして形成されたアモルファスな膜の安定性が良好であることが好ましく、例えば上記PAB後、室温環境下で2週間放置した後でも、アモルファスな状態が維持されていることが好ましい。
そして、フェノール化合物(A1’−2)も公知の方法で製造できる。例えば、2個のサリチルアルデヒド(置換基を有していてもよい)が前記Aを介して結合してなるビスサリチルアルデヒド誘導体と、置換基を有するフェノール化合物とを酸性条件下で脱水縮合させることにより得られる。
一般式(A1’−3−1)〜(A1’−3−3)中、R103〜R106、n3〜n6、b、cおよびAは、上記一般式(A1’−1)中のR103〜R106、b、cおよびAと同様である。
一般式(A1’−3−2)中、Xのハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。なかでも反応性に優れることから、臭素原子または塩素原子が好ましい。
Rの保護基は、例えば酸性条件下で解離するか、または塩基性条件下で加水分解する基が挙げられる。
酸性条件下で解離する保護基としては、化合物(A1’−3−1)と化合物(A1’−3−2)とを反応させる際に反応せず、かつ、次のフェノール化合物(A1’−3)形成工程において、化合物(A1’−3−3)を反応させる際の酸性条件下で解離する酸解離性の基が例示でき、一般的に保護基として提案されているもののなかから任意に選択できる。かかる保護基としては、化合物(A1)のところで酸解離性溶解抑制基として挙げたものと同様のものが挙げられる。Rの保護基としては、酸により解離しやすいこと、入手の容易さ等の点で、第3級アルキル基またはアルコキシアルキル基が好ましく、特に、鎖状のもの(鎖状の第3級アルキル基;一般式(p2)において、R2が直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であって、その構造中にヘテロ原子を含んでもよく、R3が水素原子または直鎖状または分岐鎖状の低級アルキル基であるアルコキシアルキル基等)が好ましく、鎖状の第3級アルキル基がより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
また、塩基性条件下で加水分解する保護基としては、化合物(A1’−3−1)と化合物(A1’−3−2)とを反応させる際に反応せず、かつ、次のフェノール化合物(A1’−3)形成工程において、化合物(A1’−3−3)を化合物(A1’−3−4)と反応させた後、塩基性条件下で加水分解する基が例示できる。このようなRの保護基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
このとき使用する有機溶剤としては、化合物(A1’−3−1)および化合物(A1’−3−2)、並びに生成する化合物(A1’−3−3)を溶解するものであればよく、一般的な有機溶剤から任意のものを選択すればよい。一般的な有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルペンチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等を挙げることができ、これらを単独で、または混合して用いることができる。
反応条件は、用いる原料の組み合わせ、有機溶剤の沸点等に応じて適宜選定すれば良い。例えば、反応温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜60℃、特に好ましくは室温(20〜25℃)程度とし、反応時間は、好ましくは1〜24時間、より好ましくは4〜15時間とすればよい。あるいは、反応が進行しにくいものであれば、反応温度を二段階に切り替えてもよく、例えば、化合物(A1’−3−1)と化合物(A1’−3−2)との混合時の温度は、好ましくは30〜70℃、より好ましくは40〜60℃とし、その後昇温して、好ましくは90〜130℃、より好ましくは100〜120℃として引き続き反応を行ってもよい。反応時間は、例えば、昇温前は好ましくは0.5〜3.5時間、より好ましくは1.5〜2.5時間とし、昇温後は好ましくは1〜24時間、より好ましくは4〜15時間とするのがよい。
一般式(A1’−3−4)中、R101、R102、R107、n1、n2、n7およびaは、それぞれ、上記一般式(A1’−1)中のR101、R102、R107、n1、n2、n7およびaと同様である。
具体的には、例えば、使用する化合物(A1’−3−3)に対して約4〜5当量倍の化合物(A1’−3−4)をメタノール等の有機溶剤に溶解し、該溶液中に、塩酸等の酸を添加し、この混合溶液中に、化合物(A1’−3−3)を添加することにより反応させることができる。
このとき使用する酸としては、化合物(A1’−3−3)と化合物(A1’−3−4)とが反応し、保護基Rが酸解離性の基である場合には該保護基Rが解離するものであれば特に制限はない。好ましくは塩酸、硫酸、無水硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、リン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等を好ましい具体例として挙げることができる。特に、塩酸が好ましく用いられる。これらの酸は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
酸の添加量は、例えば、35%質量塩酸の場合は、100質量部の化合物(A1’−3−3)に対して、1〜700質量部、好ましくは、80〜600質量部の範囲で用いられ、塩酸ガスの場合は、100質量部の化合物(A1’−3−3)に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部の範囲で用いられる。
反応温度は、20〜80℃が好ましく、30〜65℃がより好ましい。
反応時間は、2〜96時間が好ましく、5〜72時間がより好ましい。
反応終了後、反応液に水酸化ナトリウム等の塩基を添加して、反応液中の酸を中和する。このとき、たとえば、保護基Rとして酸解離性の基を用いかつ有機溶剤としてメタノール等のアルコールを用いた場合、生じたカルボキシ基が該アルコールにより若干エステル化している場合がある。そのため、エステルを加水分解させるために、過剰の塩基を加えることが好ましい。また、保護基Rとして塩基性条件下で加水分解する基を用いた場合にも、直ちに加水分解を行うために、過剰の塩基を加えてもよい。
このようにして得られる反応液中には、フェノール化合物(A1’−3)が、塩となって溶解している。そのため、たとえば反応液を分液ロートに移し、水/ジエチルエーテル等で洗浄して原料(反応に用いた化合物等)を除去し、次いで水層を抜き取り、塩酸水溶液で中和すると、沈殿が生じる。この沈殿物をろ過等によって回収することにより、フェノール化合物(A1’−3)が得られる。
保護基Rとして塩基性条件下で加水分解する基を用いた場合には、上記のように過剰の塩基を加える代わりに、酸中和後、必要に応じて濃縮や抽出を行った後、別途、保護基Rの加水分解を行い、中和、抽出、濃縮等を経て、フェノール化合物(A1’−3)を得てもよい。
未精製のフェノール化合物(A1’−3)は、さらに、再沈、再結晶等の精製処理を行ってもよい。
なお、ここでいう二種以上とは、同一ではない複数種のことを指し、化合物(A1)として構造が互いに異なっていればよい。すなわち、化合物(A1)のうち、酸解離性溶解抑制基を除いた部位を「基本骨格」とすると、「基本骨格」および酸解離性溶解抑制基の少なくとも一方が互いに異なっていればよい。
例えば、本発明における好ましい化合物(A1)の組み合わせとして、以下に示す三通りの組み合わせが挙げられる。
ここに示す一般式(A1−6)および(A1−7)で表される化合物の組み合わせは、上記「基本骨格」が同一で、酸解離性溶解抑制基が互いに異なっている化合物(A1)の組み合わせである。
ここに示す一般式(A1−6)および(A1−8)で表される化合物の組み合わせは、酸解離性溶解抑制基が同一で、上記「基本骨格」が互いに異なっている化合物(A1)の組み合わせである。
ここに示す一般式(A1−7)および(A1−8)で表される化合物の組み合わせは、上記「基本骨格」および酸解離性溶解抑制基のいずれもが互いに異なっている化合物(A1)の組み合わせである。
前記一般式(A1−6)及び(A1−8)の混合比(質量比)としては、特に限定はされないが、9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがさらに好ましく、7:3〜3:7であることが最も好ましい。
前記一般式(A1−7)及び(A1−8)の混合比(質量比)としては、特に限定はされないが、9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがさらに好ましく、7:3〜3:7であることが最も好ましい。
上記範囲とすることにより、解像性、レジストパターン形状に優れたものとなる。
(A)成分中の化合物(A1)の割合は、逆相クロマトグラフィー等の手段により測定できる。
かかる(A2)成分としては、例えば従来の化学増幅型のKrF用ポジ型レジスト組成物、ArF用ポジ型レジスト組成物等のベース樹脂として提案されているものが挙げられ、レジストパターン形成時に用いる露光光源の種類に応じて適宜選択できる。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
前記直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、炭素数4〜12であることが好ましく、炭素数5〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、該フッ素化アルキル基のフッ素化率(該フッ素化アルキル基中のフッ素原子および水素原子の合計数に対するフッ素原子数の割合(%))は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
R51としては、直鎖状のアルキル基またはフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
R52において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子が好ましい。
R52において、アルキル基は、直鎖または分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、特に1〜4、さらには1〜3であることが望ましい。
R52において、ハロゲン化アルキル基は、アルキル基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。ここでのアルキル基は、前記R52における「アルキル基」と同様のものが挙げられる。置換するハロゲン原子としては上記「ハロゲン原子」について説明したものと同様のものが挙げられる。ハロゲン化アルキル基において、水素原子の全個数の50〜100%がハロゲン原子で置換されていることが望ましく、全て置換されていることがより好ましい。
R52において、アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4であり、特に好ましくは1〜3である。
R52としては、これらの中でも水素原子が好ましい。
置換基としては、水酸基、低級アルキル基(直鎖または分岐鎖状であり、その好ましい炭素数は5以下であり、特にメチル基が好ましい)などを挙げることができる。
R53のアリール基としては、置換基を有しないものがより好ましい。
u’’は1〜3の整数であり、2または3であることが好ましく、特に3であることが望ましい。
R1”〜R3”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n‐ブチル基、tert‐ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
R1”〜R3”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R1”〜R3”はすべてフェニル基であることが最も好ましい。
前記直鎖または分岐のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R1”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、該フッ素化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中のフッ素原子の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
R4”としては、直鎖または環状のアルキル基、またはフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
R5”〜R6”のアリール基としては、R1”〜R3”のアリール基と同様のものが挙げられる。
R5”〜R6”のアルキル基としては、R1”〜R3”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R5”〜R6”はすべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR4”としては上記式(b−1)のR4”と同様のものが挙げられる。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7であり、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
R31の有機基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していても良い。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
R31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
R32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
R33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
R33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが特に好ましい。
R34のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していても良い。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
R35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、部分的にフッ素化されたアルキル基が最も好ましい。
R35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
R37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
R38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p’’は好ましくは2である。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、WO2004/074242A2(65〜85頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
本発明においては、中でも(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
本発明のポジ型レジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。上記範囲とすることでパターン形成が十分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良く、なかでも脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。ここで、本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−オクチルアミンが最も好ましい。
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸およびその誘導体としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい]; ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
本発明のレジストパターン形成方法は、上記ポジ型レジスト組成物を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む。
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
すなわち、まずシリコンウェーハのような基板上に、上記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えば、ArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光したり、または電子線描画装置などにより、電子線をマスクパターンを介さずに直接照射による描画等で選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理し、好ましくは純水を用いて水リンスを行い、乾燥を行うことにより、レジストパターンを形成できる。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
また、露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本発明にかかるポジ型レジスト組成物は、特に、電子線に対して有効である。
[合成例1](化合物(1)の合成)
30gのメチレンビスサリチルアルデヒド(1’)(本州化学工業製)に500gのアセトンを加え、溶解させた。そこへ48.6gの炭酸カリウム(K2CO3)を加え、10分間室温で攪拌させた。その後、45.72gのtert−ブチルブロモアセテート(2’)を加え、室温(r.t)で12時間反応させた。
反応終了後、水/酢酸エチル(質量比1:1)で抽出、酢酸エチル相を減圧濃縮し、目的とする化合物(3’)を53.5g得た。
反応終了後、室温に戻し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加して10時間攪拌を行った。その後、反応液を分液ロートに移して、水/ジエチルエーテルで洗浄して原料を除去し、次いで水層を抜き取り、塩酸水溶液で中和(pH試験紙で中性を確認)し、沈殿物を得た。この沈殿物をろ過して粗結晶を得た。この粗結晶をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ヘプタンで再沈を行った。次いでこれをろ過して粗結晶を得た。この粗結晶をTHFに溶解させ、濃縮・乾燥を経て目的の化合物(1)を15.3g得た。
1H−NMRデータ(重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン):δ(ppm)=12.68 brs 2H Ha,8.94 brs 4H Hb,6.82−6.27 m 14H Hc,5.85 s 2H Hd,4.47 s 4H He,3.32 s 2H Hf,2.09−1.76
brs 24H Hg。
IRデータ:3382cm−1,2925cm−1,1728cm−1,1495cm−1,1463cm−1,1411cm−1,1285cm−1,1227cm−1,1195cm−1,1119cm−1,1075cm−1。
この結果から、化合物(1)が下記に示す構造を有することが確認できた。
温度計、冷却器及び攪拌機を備えた3L容量の4つ口フラスコに、4,4’−メチレンビス(2−ホルミルフェノール)(1’)を160g(0.625mol)及びN−メチルピロリドンを480g仕込み、攪拌下、ここに温度50℃で炭酸カリウム207g(1.50mol)を30分かけて粉体間欠添加し、添加終了後50℃で30分攪拌した。さらにそこへ、276g(1.50mol)の4−クロロメチル安息香酸メチル(5’)を800gのN−メチルピロリドンに溶解した溶液を50℃で2時間かけて滴下し(途中で結晶が析出)、滴下終了後1時間かけて系内温度を110℃に昇温した後、7時間攪拌反応を行った。
反応終了後、系内温度を70℃に冷却し、そこへ酢酸200g(3.333mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、系内温度を55℃に冷却し、そこへ水1000gを加えた後、系内温度を70℃に昇温した。次いで、系内温度が22℃になるまで自然冷却した後、析出した固体をろ過した。ろ過の際、メタノール300g、水600g、再度メタノール300gでろ別固体にリンスを行った。この固体を乾燥して、白色粉末として純度97.2%(高速液体クロマトグラフィー分析による)、融点224.0℃(示差熱分析法ピークトップ値)の目的とする化合物(6’)を314g得た。この時の化合物(1’)を基準とした収率は91.0%であった。
反応終了後、16%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して反応液を中和し、中和後の反応液を常圧で系内温度が95℃になるまで濃縮し、そこに80℃でメチルイソブチルケトン430.0g及び純水100.0gを加え、30分攪拌し静置した。分液した水層を抜き取り、得られた油層にさらに純水を加え、同様の操作で水洗、分液を2回ずつ行った。その後、得られた油層に50℃で25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液480.5g(1.32mol)と純水72.1gを加え、1時間撹拌しメチルエステルの加水分解を行った。加水分解後30分静置し、分液した水層を抜き取り、得られた水層にメチルイソブチルケトン430.0gを加え、50℃で35%塩酸で中和し、70℃まで昇温して静置した。分液した水層を抜き取り、得られた油層にさらに純水を加え、同様の操作で水洗、分液を3回ずつ行った。
その後、得られた油層を常圧で濃縮して溶媒を留去した後(途中で結晶析出)、これにトルエンを添加した。このスラリー溶液を25℃まで冷却し、析出した固体をろ過してウエット粗結晶244.7g(固形分:196.0g)を得た。この粗結晶を75℃でメチルイソブチルケトン490.0gに溶解し、純水200.0gを加え水洗し、静置した。
分液した水層を抜き取り、得られた油層にさらに純水を加え、同様の操作で水洗、分液を3回ずつ行った。
その後、得られた油層を常圧で濃縮して溶媒を留去した後(途中で結晶析出)、これにトルエンを添加した。このスラリー溶液を25℃まで冷却し、析出した固体をろ過、乾燥して、黄橙色粉末として純度98.0%(高速液体クロマトグラフィー分析による)、融点231.4℃、219.4℃(示差熱分析法ピークトップ値)の目的とする化合物(2)を193.2g得た。この時の化合物(6’)を基準とした収率は89.9%であった。
5gの化合物(1)を30gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、1.52gのトリエチルアミン(Et3N)を加えて10分撹拌し、そこへ2.43gの2−クロロメトキシアダマンタンを加え、室温で10時間撹拌した。反応終了後、ろ過を行い、得られたろ液に水/酢酸エチル(質量比1:1)を加えて抽出を行い、分離した酢酸エチル相を減圧濃縮し、5.1gの目的とする化合物(3)を得た。
1H−NMR(重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン):δ(ppm)=8.80 brs 4H Ha,6.24−6.72 m 14H Hb,5.83 s 2H Hc,5.36 s 4H Hd,4.61 s 4H He,3.66 s 2H Hf,3.57 s 2H Hg,1.95 s 12H Hh,1.85 s 12H Hi,1.29−2.15 m 28H Hj。
IR:3391cm−1,2907cm−1,2855cm−1,1737cm−1,1496cm−1,1286cm−1。
上記の結果から、化合物(3)が下記に示す構造を有することが確認できた。なお、下記構造中、f は、2−アダマンチル基の、酸素原子が直接結合している炭素原子に結合した水素原子を示し、jは2−アダマンチル基の、f以外の水素原子を示す。
4gの化合物(1)を20gのTHFに溶解し、1.52gのEt3Nを加えて10分撹拌し、そこへ2.79gのブロモ酢酸−2−メチル−2−アダマンチルを加え、室温で10時間撹拌した。反応終了後、ろ過を行い、得られたろ液に水/酢酸エチル(質量比1:1)を加えて抽出を行い、分離した酢酸エチル相を減圧濃縮し、3.2gの目的とする化合物(4)を得た。
1H−NMR(重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン):δ(ppm)=8.80 brs 4H Ha,6.23−6.94 m 14H Hb,5.84 s 2H Hc,4.68 s 4H Hd,4.68 s 4H He,3.58 s 2H Hf,2.19 s 4H Hg,1.39−2.15 m 54H Hh。
IR:3417cm−1,2920cm−1,2863cm−1,1750cm−1,1728cm−1,1495cm−1,1292cm−1,1278cm−1。
上記の結果から、化合物(4)が下記に示す構造を有することが確認できた。なお、下記構造中、gは、2−メチル−2−アダマンチル基の、酸素原子が直接結合している炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子(2個×2)を示し、hは、2−メチル−2−アダマンチル基の、g以外の水素原子と、ベンゼン環に結合したメチル基の水素原子とを示す。
温度計、冷却器及び攪拌機を備えた500mL容量の4つ口フラスコに、化合物(2)24.4g(0.025mol)及びN−メチルピロリドン97.6gを仕込み、攪拌下、ここに温度40℃でトリエチルアミン6.3g(0.0625mol)を15分かけて滴下し、滴下終了後、40℃で15分攪拌した。さらにそこへ、17.9g(0.0625mol)のブロモ酢酸2−メチル−アダマンタノールエステルを60分かけて間欠添加した。添加終了後、40℃で4時間攪拌反応を行った。
反応終了後、トルエン69.6gと純水100.0gを添加し、温度40℃で30分撹拌し、15分静置して分液した下層を抜き取った。さらにそこへ、酢酸エチル35.0gと純水100gを添加し、温度40℃で30分撹拌し、15分静置して分離した水層を抜き取った。
その後、得られた油層に純水100.0gを添加し、温度40℃で30分撹拌し、15分静置して分液した水層を抜き取る操作を3回繰り返し行った。
フラスコ内の油層を温度45℃、圧力10.7kPaで減圧濃縮し、そこにトルエン70.0gを添加し、温度45℃、圧力8.0kPaで再度減圧濃縮した。残渣にトルエン86.8g、アセトン20.0g及びシクロヘキサン70.0gを添加して溶液としたものを、シクロヘキサン500.0gに滴下して再沈殿を行った。沈殿した固体をろ過、乾燥して、化合物(5)を31.0g得た。この時の化合物(2)を基準とした収率は89.1%であった。
また、1H−NMR(重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)による分析を行ったところ、下記表1に示す結果が得られた。これらの結果から、化合物(5)が下記構造を有することが確認できた。
表2に示す組成と配合量で各成分を混合、溶解してポジ型レジスト組成物溶液を調製した。
化合物(6):下記化合物(6)。
(B)−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート。
(D)−1:トリ−n−オクチルアミン 。
(S)−1:PGMEA。
得られたポジ型レジスト組成物溶液を用いて解像性の評価を行った。
ポジ型レジスト組成物溶液を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上にスピンナーを用いて均一に塗布し、110℃にて90秒間ベーク処理(PAB)を行ってレジスト膜(膜厚100nm)を成膜した。
該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70kVにて描画(露光)を行い、100℃にて90秒間のベーク処理(PEB)を行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(23℃)を用いて60秒間の現像を行った後、純水にて30秒間リンスして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
このとき、100nmのL/Sパターンが1:1に形成される露光量Eop(μC/cm2)を求めた。結果を表3に示す。
これに対し、(A)成分として化合物(3)を単独で用いた比較例4では、膜べりが見られ、化合物(5)を単独で用いた比較例5では、感度・解像性が実施例1〜3よりも劣っていた。さらに、(A)成分が本発明の組み合わせではない比較例1〜3については、パターンが解像しなかった。
Claims (3)
- 酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)、および放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するポジ型レジスト組成物であって、
前記基材成分(A)は、フェノール化合物(A1’)の水酸基の水素原子の一部または全部が酸解離性溶解抑制基で置換された、分子量が700〜2500の下記一般式(A1−1)で表される化合物(A1)を二種以上含むことを特徴とするポジ型レジスト組成物。
- さらに、含窒素有機化合物(D)を含有する請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
- 請求項1または2に記載のポジ型レジスト組成物を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。
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