JP4854110B2 - ヒスタミン放出阻害剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メバロン酸を有効成分とするヒスタミン放出阻害剤、並びに該ヒスタミン放出阻害剤を含有する、抗炎症及び抗アレルギー作用を有する医薬品、食品及び化粧品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、アレルギー症状を呈する患者が増加している。アレルギー発症メカニズムは複雑で多種多様にわたり、未だ解明されていない部分もあるが、オータコイドの1種とされるヒスタミンがその発症に深く関わっていることが明らかにされている。ヒスタミンは、抗原抗体反応・あるいはその他の刺激によって肥満細胞あるいは好塩基球細胞より脱顆粒現象によって放出され、その結果として喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・急性の下痢・アナフィラキシーショック・枯草熱等のアレルギー症状を惹起するとされている。また、ヒスタミンは、非常に強力な「かゆみ誘発物質」でもある。健康な人においても皮内にごく少量のヒスタミンあるいはその塩酸塩水溶液を投与することで、あるいは皮膚に滴下し、その部分をスクラッチすることで強烈なかゆみを誘発する物質で、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹等のかゆみの主要原因物質と認識されている。更に、ヒスタミンを吸入させることで気管支の収縮を惹起することが知られており、喘息症状において重要な役割を果たしているとされる。
【0003】
これまでにアレルギー反応を阻止あるいは抑制すること、あるいはアレルギーを治療することを目的として多くの化合物が合成され、抗アレルギー作用を有する医薬品として実用化されてきた。例えば、多くのアレルギー症状に有効であるステロイド剤や抗アレルギー剤が挙げられる。抗アレルギー剤としては、抗ヒスタミン剤としてレスタミン・ポララミン・ピレチア・ペリアクチン等の化合物、喘息発作を抑制する気管支拡張薬としては、テオフィリン系薬剤やアミノフィリン・プロキシフィリンを含むキサンチン誘導体やイソプロテレノール・アドレナリン・硫酸テレブタリン・塩酸マブテロール等のβ刺激薬等が開発されている。
これらのアレルギーに有効な医薬品は、効果が大きい利点もあるが、その反面、安全性の観点から投与量が限られ、また、内服による眠気の発生や塗布による肌荒れの発生、あるいは重篤の場合、糖尿病や高血圧・胃潰瘍等の副作用も発生し、より安全性の高い、少量投与で効果の大きい物質が望まれていた。
【0004】
アレルギーの抑制・治療を目的とした医薬品の他に、抗炎症・あるいは抗アレルギー作用に寄与する成分を食品素材から探索し、積極的に利用しようとの試みが盛んに進められている。食品成分は安全性が高い反面、効果は緩慢であり医薬品に劣るが、食品の場合、長期的な投与が可能であり、患者が規則正しく摂取することが期待され、その結果として医薬品と同様、場合によっては、それ以上の効果の発現が期待されている。アレルギーの予防やアレルギー体質の改善効果を有する食品成分や食品素材あるいは天然物が近年、非常に注目されている理由である。このような観点から、シソ科植物の抽出物(特開平4ー79852号公報)や生薬類の利用(特開平6−329545号公報)、甜茶抽出物の利用(特開平6−192114号公報)、その他、5ーリポキシゲナーゼの阻害活性を有するヨモギ抽出物の利用、緑茶に含まれるカテキン類等のポリフェノール等々、多くの物質が探究されている。
【0005】
しかしながら、これまでに見出された食品素材や食品成分は、その効果を発現するための有効濃度が比較的高く、抗アレルギー作用を有し、安全且つ実用に供し得る有望なものは未だ得られていない。また、これまでに食品素材から見出された抗アレルギー作用を持つとされる食品成分は、ポリフェノールに代表されるように苦みを有するものが多く、その成分を有効濃度で添加した場合、食品としての価値を十分に発揮するとは言い難いものであった。その上、食品成分の抗アレルギー作用の評価としては、一般的にヒアルロニダーゼに対する阻害活性の測定、あるいはマウスやラットの細胞を用いたセロトニン放出抑制試験等が中心であり、これらの試験法は実際のヒトのアレルギー反応とはかなり乖離した間接的な抗アレルギ−評価試験であるため、上記食品成分のアレルギー患者に対する実際の効果は不明な点が多い。
【0006】
一方、アレルギー症状は、アトピー性皮膚炎のように常にアレルゲン分子に曝されており、通年性の場合もあり、アレルゲンの除去に困難を極める場合もあるが、一般的にアレルギー反応は、外来抗原の進入と共に発症するものであり、花粉症や食物アレルギーのように症状の悪化が、事前にある程度予想できる場合も少なくない。花粉症の場合は、花粉の飛散時期に合わせて発症が予想できる。食物アレルギーでは、経験から、如何なる食物を摂取したとき症状が誘発されるか患者自身あるいは患者が乳幼児の場合は親が予想できるものである。従って、アレルギーの治療は、アレルギー反応が惹起された事後の処置もさることながら、予防・事前の処置の必要性・重要性が強く認識されている疾患である。
【0007】
従来、花粉症の場合、花粉の飛散時期の直前に抗アレルギー作用を有する医薬品の投与が実施されているが、患者への負担が大きく、有効性も必ずしも満足のいくものではなかった。一方、食品や化粧品のように日常的に摂取されたり用いられたりしているものに抗アレルギー作用を付与すれば、アレルギー患者は、より自然にアレルギーの予防や治療を実施することができ、より望ましいことである。しかし、実際にはアレルギー患者に有効な効果を示すものは見出されておらず、目的を達成するのに満足いく食品素材あるいは化粧品素材はこれまでに得られていなかった。また、抗アレルギー作用を有する物質を医薬品として利用する場合も、その安全性から化学合成品ではなく天然に存在する物質の利用が望まれていた。
【0008】
従って、本発明の目的は、優れた抗アレルギー作用を有し、安全且つ実用に供し得るヒスタミン放出阻害剤、並びに該ヒスタミン放出阻害剤を含有する医薬品、食品及び化粧品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、アレルギー患者血液を用いて、アレルゲン分子に特異的なヒスタミン放出の阻害活性を指標として、食品・化粧品・あるいは天然に存在する物質のヒスタミン放出阻害活性を探索した結果、メバロン酸が、アレルゲン分子に特異的なヒスタミン放出を阻害する活性を十分に持つことを発見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、メバロン酸からなるヒスタミン放出阻害剤を提供するものである。
また、本発明は、上記ヒスタミン放出阻害剤を含有することを特徴とする医薬品、食品及び化粧品をそれぞれ提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のヒスタミン放出阻害剤について詳細に説明する。
本発明のヒスタミン放出阻害剤として用いられるメバロン酸は、自然界においては、極めて多くの生物のイソプレノイド関連物質生合成代謝に関与しているが、そのラクトン型をとったものがメバロノラクトンであり、メバロノラクトンは水溶液中ではメバロン酸として存在する。本明細書では、メバロン酸とメバロノラクトンは同義語として扱う。
【0012】
メバロン酸の大量生産の方式としては例えば、微生物から生産する方法が知られており(特公平7−89938号公報、特公平7−89939号公報、特公平7−89940号公報、特公平7−51068号公報、特許第2763782号公報等参照)、この方法では、天然型であるR−メバロン酸が得られる。
また、化学合成によって得られたメバロン酸には2種の光学異性体、R−メバロン酸及びS−メバロン酸が存在するが、本発明では、これらのラセミ体をそのまま使用することができ、また、天然型のR−メバロン酸のみを分割して使用することもできる。
本発明で用いられるメバロン酸は、生体への適合性や安全性の点から天然型のR−メバロン酸が好ましい。
【0013】
また、本発明ではメバロン酸として、メバロン酸の1価若しくは2価の金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩、あるいは、アルコール類、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、イソプロピルアルコール等とのエステルを使用することもできる。塩においてはR−メバロン酸塩及びS−メバロン酸塩が存在し、エステルにおいてはR−メバロン酸エステル及びS−メバロン酸エステルが存在し、これらのラセミ体もそのまま使用できるが、生体への適合性や安全性の点から天然型のR−メバロン酸塩及びR−メバロン酸エステルが好ましい。
【0014】
本発明のヒスタミン放出阻害剤は、医薬品・食品・化粧品に利用することができ、その場合、該ヒスタミン放出阻害剤は、そのまま、あるいは、水や安全性の高い有機溶媒に希釈して用いることができる。斯かる有機溶媒としては、エタノール等のアルコール類及びその水溶液、酢酸・酪酸等の脂肪酸やその水溶液等を用いることができる。また、公知の医薬品・食品・化粧品担体と共に製剤化することもできる。
【0015】
本発明のヒスタミン放出阻害剤は、医薬品に利用する場合、錠剤・顆粒剤・粉剤・シロップ剤等の経口剤、坐剤・外用剤等の非経口剤として、単独で、あるいは他の医薬品と併用するかたちで用いられる。
【0016】
本発明のヒスタミン放出阻害剤を含有した医薬品の調製に用いることのできる医薬用の担体としては、特に制限はなく、通常用いられているものを使用することができ、その例としては、デンプン・乳糖・グルコース・マンニット・カルボキシメチルセルロース・コーンスターチ・無機塩類等の固形担体、蒸留水・生理食塩水・ブドウ糖水溶液・エタノール等のアルコール・プロピレングリコール・ポリエチレングリコール等の液体担体、各種の動植物油・白色ワセリン・パラフィン・ロウ類等の油性担体等が挙げられる。
【0017】
また、本発明のヒスタミン放出阻害剤を添加しうる食品としては、何ら制限されるものではなく、例えば、牛乳・ヨーグルト・乳清飲料・乳酸菌飲料・バター・チーズ等の乳製品、ジュース・炭酸飲料、飴・チューインガム・チョコレートのような菓子類、ようかんのような和菓子類、ポタージュスープ・シチュー・カレー等のスープ類、パン類、ホイップクリーム・マーガリン・マヨネーズ等の油脂加工食品、クッキーやケーキ・アイスクリーム・プリン・ゼリー等のデザートを含む洋菓子類、パスタ・ソバ・うどんのような麺類、醤油・ソースやたれ等の調味料類、ソーゼージのような畜肉加工品等が挙げられる。
【0018】
また、本発明のヒスタミン放出阻害剤を添加しうる化粧品としては、例えば、化粧水・化粧クリーム・乳液・ファンデーション・口紅・整髪料・ヘアトニック・育毛料等の他、歯磨き・口腔ケア製品・シャンプー・リンス・入浴剤等の日用品が挙げられる。
【0019】
本発明のヒスタミン放出阻害剤を用いて、上記の食品や化粧品を調製する場合には、その種類に応じて通常用いられる成分を更に配合することができる。
例えば、食品を調製する場合には、アラビアガム・アラビノガラクタン・アラビノキシラン・カラギーナン・ローカストビーンガム・へミセルロース・カードラン・プルラン・サイクロデキストリン・ガラクトマンナン・デキストラン・デキストリン・アルギン酸・アルギン酸ナトリウム・キサンタンガム・(1,2 、1.3 、1,4 、1,6 )−β−D−グルコピラノース結合を1種類以上持つβグルカン・カゼイン・ゼラチン・ペクチン・寒天・ブドウ糖・果糖・蔗糖・ガラクトース・キシリトール・マルチトール・トレハロース・マルトース・ソルビトール・ステビオサイド・ルブソサイド・コーンシロップ・乳糖・クエン酸・酒石酸・リンゴ酸・コハク酸・乳酸・L−アスコルビン酸・dl−α−トコフェロール及びその誘導体・エリソルビン酸ナトリウム・グリセリン・プロピレングリコール・グリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ビタミン類・アミノ酸類・色素・香料・保存剤等の通常の食品原料として使用されるものを配合することができる。
【0020】
また、化粧品を調製する場合には、植物油等の油脂類、ラノリンやミツロウ等のロウ類、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール類、エステル類、種々の界面活性剤、色素、香料、ビタミン類、植物・動物抽出成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐・殺菌剤等、通常の化粧品原料として使用されるものを配合することができる。
【0021】
更に、本発明のヒスタミン放出阻害剤を用いて化粧品を調製する場合には、他の抗炎症・抗アレルギー性化粧品原料、例えば、甘草抽出成分(特にグリチルリチン酸)、塩酸ジフェンヒドラミン、アズレン、dl−α−トコフェロール及びその誘導体、ビタミンB2、ビタミンB6等を併用することにより、その効果を増強することができ、また他の保湿美肌性化粧品成分、例えば、エラスチン、コラーゲン、レシチン、スクワレン、プラセンターリキッド(胎盤抽出液)、グリセリン類、グリコール類、発酵代謝産物、乳酸菌培養液、ビタミンA、ビタミンC、コンドロイチン硫酸ナトリウム、2−ピロリドンー5−カルボン酸ナトリウム(PCA−Na)、バクモンドウ粘液多糖類等の植物多糖類等を併用することもできる。
【0022】
本発明のヒスタミン放出阻害剤として用いられるメバロン酸は、ビールやワイン等の醸造酒に含まれており、安全性の点での問題はない。しかし、本発明の医薬品における該ヒスタミン放出阻害剤の添加量は、R−メバロノラクトンの重量換算で0.001〜40重量%とすることが好ましく、0.001〜20重量%とすることがより好ましい。
また、本発明の食品における該ヒスタミン放出阻害剤の添加量は、0.01〜40重量%が好ましく、また、本発明の化粧品における該ヒスタミン放出阻害剤の添加量は、0.01〜40重量%が好ましい。
【0023】
本発明のヒスタミン放出阻害剤は、アレルギー患者血液を用いたヒスタミン放出阻害活性の評価試験において有意な活性が認められ、抗アレルギー作用を有する医薬品として有用なものである。
また、本発明のヒスタミン放出阻害剤を含む食品を日常的に摂取することにより、風邪等に伴うヒスタミンの放出による種々の症状(鼻水・せき・のどのはれ・発熱)やヒスタミンの関わるアレルギー反応である、花粉症・食物摂取による蕁麻疹や下痢・皮膚炎・喘息症状を予防又は改善することができる。同様に、本発明のヒスタミン放出阻害剤を含む化粧品を使用することにより、皮膚のかゆみ等を改善することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
(ヒスタミン放出阻害剤の調製)
特公平7−89940号公報の第3頁左欄11行〜第4頁右欄4行に記載された方法に従い、R−メバロン酸を製造した。精製したR−メバロン酸を水に10mg/mlの濃度で溶解させ、メバロン酸水溶液を得て、サンプルー1とした。
また、上記メバロン酸を水に溶解し、100mg/ml溶液を調製し、水酸化カリウムにてpH7.0に調製し、メバロン酸塩水溶液を得て、サンプルー2とした。
また、上記の精製したR−メバロン酸をエタノールに100mg/mlの濃度で溶解させ、メバロン酸エタノール溶液を調製し、サンプルー3とした。
【0026】
〔試験例1〕
(ヒスタミン遊離試験)
アレルギー患者において原因となるアレルゲンを検索することは、その治療において重要であり、患者血液を用いた原因抗原の検索が汎用されている。患者血液を用いた抗原検索方法としては、血清中のIgE抗体と抗原との反応性を検出するCAP−RAST法(ファルマシア社)や血液中の白血球細胞と抗原を反応させて、白血球細胞から放出されるヒスタミンの量を測定するヒスタミン遊離試験がある。本試験例1では、スギ花粉症のあるアレルギー患者血液を用いて、下記の要領でヒスタミン遊離試験を実施した。
【0027】
2月から5月中旬にかけて、くしゃみ、鼻づまり等を発症し、スギ花粉の抗原暴露によって症状が発現あるいは増悪し、スギ花粉によりアレルギー性鼻炎の発症が明らかな患者の血液を用いた。同患者はプリックテストの結果、ダニ(Dp)エキスに陽性(+1)及びスギ花粉エキスに陽性(+3)を示した。プリック用エキスは鳥居薬品社製を用いた。尚、プリックテストには、Bifurcated needle(AOL laboratories INC )を用いた。判定は、ヒスタミン1mg/ml溶液を用いた陽性コントロールの膨疹径の1/2を陽性(+1)、同等を(+2)、2倍以内を(+3)、2倍以上を(+4)とした。
【0028】
上記の患者の静脈血をヘパリン加真空採血菅(6ml容)(テルモ社製)にとり、よく混合し、使用するまで室温にて放置した。ヒスタミン遊離試験は全血で測定ができる旭化成社製のキット「HRTルシカ」及びその測定システム(機器とコンピューター解析ソフト)を用いた。抗原は吸入性アレルゲン10種類(日本スギ、ヨモギ、カモガヤ、ブタクサ、ネコ上皮、イヌ上皮、ハウスダスト、ヤケヒョウヒダニ、カンジダ、アルテルナリア)とし、これらの抗原に対する遊離ヒスタミン量を同時に測定できる96ウェルの「吸入型プレート」を用いた。ヒスタミン塩酸塩(和光純薬社製)を生理食塩水(大塚製薬社製)にて溶解し、500ng/ml溶液を調製し、キットに添付の緩衝液で10倍希釈し、50ng/ml溶液としたものを陽性コントロールとして用いた。緩衝液のみを使用したものを陰性コントロールとした。吸入型プレートの所定の位置(6カ所ずつ)に、陽性コントロールと陰性コントロール(ヒスタミン濃度0ng/ml)を25μlづつ加え、その他の抗原が適当濃度で添加してある各ウェルにキットに添付の緩衝液を25μlづつ添加した。次に96ウェルのA列以外の全ウェルに、よく混合して均一とした患者血液を25μl添加し、37℃で90分間放置してヒスタミン遊離反応を実施した。遊離したヒスタミンは、プレート底部のガラス繊維に吸着されるので、プレートに加えた患者血液を吸引除去後、プレートの洗浄処理を施し、強アルカリ条件下でプレートのガラス繊維に吸着したヒスタミンを再度、遊離させ、各ウェルにオルトフタルアルデヒド(OPT)溶液を添加し、遊離したヒスタミンと反応させた後、過塩素酸の添加による安定化を経て、470nmによる蛍光強度を測定した。陽性・陰性の両コントロールの値から得られる検量線を用いて、抗原を加えた各ウェル中に遊離したヒスタミン濃度を算出した。付属のヒスタミン遊離量の解析ソフトを用いて15ng/ml以上のヒスタミン遊離を陽性として、それぞれの抗原の各抗原濃度でのヒスタミン遊離量を総合的に解析し、患者血液の試験抗原に対する反応性をクラス0(陰性)〜クラス4(強陽性)まで区分して算出した。尚、判定は、キットを用いた測定結果を解析する専用の解析ソフトにより自動算出されたものである。
その結果、患者血液は、日本スギ、ハウスダスト、ヤケヒョウヒダニに反応し、それぞれ、クラス4、クラス2、クラス2と判定された。その他の7抗原に対しては、何れの抗原濃度においてもヒスタミン遊離量は15ng/ml以下、即ち、陰性であり、クラス0と判定された。
【0029】
〔試験例2〕
(メバロン酸添加によるヒスタミン放出阻害効果の試験)
試験例1で示したヒスタミン遊離試験を利用して、メバロン酸添加によるヒスタミン放出阻害効果を検討した。試験に使用した血液は、日本スギ花粉の抽出物を加えることで、ヒスタミン遊離反応が強陽性(キットではクラス4)に起こることが明らかとなったので、スギ花粉エキスに対するヒスタミン遊離反応において、メバロン酸の添加効果を調べた。
静脈血をヘパリン加真空採血管(6ml容)(テルモ社製)にとり、よく混合し、使用するまで室温にて放置した。よく混合して均一にした血液を3本のチューブに500μl取り、サンプル−1を1mg/ml、100μg/ml、10μg/mlとなるように生理食塩水で希釈してから、その50μlづつを加え、血液サンプル−A1、血液サンプル−A2、血液サンプル−A3とした。
また、よく混合して均一にした血液を3本のチューブに500μl取り、サンプル−2を1mg/ml、100μg/ml、10μg/mlとなるように生理食塩水で希釈してから、その50μlづつを加え、血液サンプル−B1、血液サンプル−B2、血液サンプル−B3とした。
また、よく混合して均一にした血液の1000μlをチューブに取り、生理食塩水100μlを加え、コントロールとして、血液サンプル−Cとした。
【0030】
上記の各チューブを正確に30分間、37℃に放置した後、ヒスタミン遊離試験に供した。ヒスタミン遊離試験は全血で測定ができる旭化成社製のキット「HRTルシカ」及びその測定システム(機器とコンピューター解析ソフト)を用いた。抗原はスギ花粉抽出物(エル・エス・エル(LSL )社製)を生理食塩水に溶解して用いた。スギ花粉抽出物を生理食塩水で溶解し、10mg/ml濃度に調製し、更にヒスタミン遊離試験キットに添付の緩衝液を用いて10μg/mlから3.3倍希釈で3μg/ml、0.92μg/ml、0.28μg/ml、0.084μg/ml、0.026μg/mlとなるように希釈液を作成し、ガラス繊維を底部に固着させた96ウェルのプレートに25μlづつ添加した。試験例1と同様にプレートの所定の位置(6カ所ずつ)に、陽性コントロールと陰性コントロール(ヒスタミン濃度0ng/ml)を25μlづつ加えた。
【0031】
次に96ウェルのコントロールの部分とヒスタミン濃度50ng/mlと0ng/mlのウェルに、血液サンプル−Cの25μlを加えた。スギ花粉抽出物の希釈液(10μg/ml〜0.026μg/ml)を添加したウェルに血液サンプル−A1、−A2、−A3、−B1、−B2、−B3、及び血液サンプル−Cの25μlを添加して、37℃で90分間放置してヒスタミン遊離反応を実施した。その後の操作は、試験例1と同様に実施し、スギ花粉抽出物を加えた各ウェル中に遊離したヒスタミン濃度を算出した。その結果を表1に示した。遊離したヒスタミンの濃度が15ng/ml 以上を有意なヒスタミン遊離と判定した。今回の試験の中で、血液サンプル−Cを用い、高濃度のスギ花粉抽出物と反応させた場合、他の血液サンプルに比較して、最もヒスタミン濃度が高く検出された。
上記試験結果はメバロン酸、あるいはメバロン酸塩を添加し、処理したアレルギー患者血液の細胞からのヒスタミン放出が、無添加の場合に比較して阻害されていることを示している。
【0032】
【表1】
【0033】
〔試験例3〕
(メバロン酸によるかゆみ抑制効果の試験)
アレルゲンを用いた皮膚試験において、メバロン酸によるかゆみ抑制効果について検討した。サンプル−3を生理食塩水で希釈し、10mg/ml、1mg/ml、0.1mg/mlのメバロン酸希釈溶液とした。スギアレルゲンエキスを用いたプリックテストが+3の陽性と判定されたスギ花粉患者において、右前腕屈側面をアルコール綿にて消毒し、乾燥させた後、各メバロン酸希釈溶液と生理食塩水の50μlを2.5cm間隔で滴下した。尚、滴下場所にはペンで軽くマーカーし、滴下場所がわかるようにした。各溶液の滴下場所の中心部位において、Bifurcated needle(AOL laboratories INC )を皮膚に直角に圧迫して軽く傷を付けた。そのまま、溶液が乾燥あるいは吸収されるまで静止させ、30分間放置後、同一の部位にスギアレルゲンエキス(スクラッチ用:鳥居薬品社製)を1滴滴下した。再度、Bifurcated needle(AOL laboratories INC )を皮膚に直角に圧迫して軽く傷を付けた。1分後に余分なエキスをふき取り、10分後に、各溶液を滴下した部位のかゆみの度合いをチェックした。尚、Bifurcated needleで傷を付けた部位に出血のないことを確認した。右前腕における試験の翌日、左前腕において同様の試験を実施した。かゆみの度合いをかゆくない(0)、ややかゆい(+1)、かゆい(+2)、とてもかゆい(+3)にて判定した。その結果を表2に示した。
その結果、前もってメバロン酸を塗布した皮膚においては、生理食塩水のみ塗布した部位に比較してかゆみの低減効果が認められた。
上記、皮膚試験の結果は、メバロン酸によるヒスタミン放出阻害によって、実際に皮膚上でのかゆみが抑制されることを示している。
【0034】
【表2】
【0035】
〔実施例2〕
(飴の製造例)
以下の処方に従い、常法により飴を製造した。
(組成) (重量部)
粉末ソルビトール 99. 7
香料 0. 2
R−メバロン酸 0. 05
ソルビトールシード 0. 05
全量 100
【0036】
〔実施例3〕
(トローチの製造例)
以下の処方に従い、常法によりトローチを製造した。
(組成) (重量部)
アラビアゴム 6
ブドウ糖 73
R−メバロン酸 1.0
リン酸第二カリウム 0. 2
リン酸第一カリウム 0. 1
乳糖 17
香料 0. 1
ステアリン酸マグネシウム 残量
全量 100
【0037】
〔実施例4〕
(ジュースの製造例)
以下の処方に従い、常法によりジュースを製造した。
(組成) (重量部)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5
果糖ブドウ糖液糖 11
クエン酸 0. 2
L−アスコルビン酸 0. 02
R−メバロン酸 0. 05
香料 0. 2
色素 0. 1
水 残量
全量 100
【0038】
〔実施例5〕
(乳酸菌飲料の製造例)
以下の処方に従い、常法により乳酸菌飲料を製造した。
(組成) (重量部)
乳固形分21%発酵乳 14. 76
果糖ブドウ糖液糖 13. 31
ペクチン 0. 5
クエン酸 0. 08
香料 0. 15
水 71. 14
R−メバロン酸 0. 06
全量 100
【0039】
〔実施例6〕
(歯磨剤の製造例)
以下の処方に従い、常法により歯磨剤を製造した。
(組成) (重量部)
第二リン酸カルシウム 42
グリセリン 18
カラギーナン 0. 9
ラウリル硫酸ナトリウム 1. 2
サッカリンナトリウム 0. 09
パラオキシ安息香酸ブチル 0. 005
R−メバロン酸 0. 05
香料 1
水 残量
全量 100
【0040】
〔実施例7〕
(洗口液の製造例)
以下の処方に従い、常法により洗口液を製造した。
(組成) (重量部)
ラウリル硫酸ナトリウム 0. 8
グリセリン 7
ソルビトール 5
エチルアルコール 15
R−メバロン酸 0. 1
1−メントール 0. 05
香料 0. 04
サッカリンナトリウム 0. 1
水 残量
全量 100
【0041】
〔実施例8〕
(柔軟化粧水(弱酸性)の製造例)
以下の処方に従い、常法により柔軟化粧水(弱酸性)を製造した。
(組成) (重量部)
グリセリン 5. 0
プロピレングリコール 4. 0
ヒアルロン酸ナトリウム 0. 1
R−メバロン酸 0. 05
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(20E.O.) 1. 5
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(20E.O.) 0. 5
エタノール 10. 0
香料 0. 1
染料 適量
防腐剤 適量
紫外線吸収剤 適量
精製水 78. 75
【0042】
〔実施例9〕
(皮膚用クリームの製造例)
以下の処方に従い、常法により皮膚用クリームを製造した。
(組成) (重量部)
ミツロウ 2. 0
ステアリルアルコール 5. 0
ステアリン酸 8. 0
スクアラン 10. 0
自己乳化型プロピレングリコール 3. 0
モノステアレートポリオキシエチレンセチルエーテル(20.E.O.) 1. 0
香料 0. 5
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
プロピレングリコール 7. 8
グリセリン 4. 0
ヒアルロン酸ナトリウム 0. 1
R−メバロン酸 0. 1
トリエタノールアミン 1. 0
精製水 57. 5
【0043】
〔実施例10〕
(ローションの製造例)
以下の処方に従い、常法によりローションを製造した。
(組成) (重量部)
ステアリン酸 2. 0
セタノール 1. 5
ワセリン 3. 0
ラノリンアルコール 2. 0
流動パラフィン 10. 0
ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル(10E.O.) 2. 0
香料 0. 5
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
プロピレングリクール 4. 8
グリセリン 3. 0
ヒアルロン酸ナトリウム 0. 1
R−メバロン酸 0. 1
トリエタノールアミン 1. 0
精製水 70. 0
【0044】
〔実施例11〕
(シャンプーの製造例)
以下の処方に従い、常法によりシャンプーを製造した。
(組成) (重量部)
アルキルエーテル硫酸ナトリウム(AES-Na) 16. 0
ラウリン酸ジエタノールアミド 4. 0
プロピレングリコール 2. 0
R−メバロン酸 0. 5
防腐剤 適量
色素 適量
香料 適量
精製水 77. 5
【0045】
〔実施例12〕
(リンスの製造例)
以下の処方に従い、常法によりリンスを製造した。
(組成) (重量部)
塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム 1. 4
ステアリルアルコール 0. 6
グリセリンモノステアレート 1. 5
食塩 0. 1
R−メバロン酸 0. 1
精製水 96. 3
全量 100
【0046】
【発明の効果】
本発明のヒスタミン放出阻害剤は、優れた抗アレルギー作用を有し、安全且つ実用に供し得るものであり、医薬品、食品及び化粧品に好適に利用できる。
Claims (3)
- メバロン酸からなるヒスタミン放出阻害剤。
- メバロン酸が天然型のものである請求項1記載のヒスタミン放出阻害剤。
- 請求項1又は2記載のヒスタミン放出阻害剤をR−メバロノラクトンの重量換算で0.001〜40重量%含有することを特徴とするヒスタミン放出抑制用医薬品。
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