JP4853075B2 - ハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びその製造法と、ハイドロフォーム加工用電縫鋼管 - Google Patents

ハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びその製造法と、ハイドロフォーム加工用電縫鋼管 Download PDF

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本発明は、ハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びその製造法と、ハイドロフォーム加工用電縫鋼管とに関する。例えば、本発明は、ハイドロフォーム加工により成形される、例えば自動車車体の構造部材や足回り部材等の素材として特に好適に用いられるハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びその製造法と、ハイドロフォーム加工用電縫鋼管とに関する。
周知のように、近年、特に地球温暖化防止のために炭酸ガスの総排出量を削減することが世界的規模で求められている。例えば自動車に関しても燃費向上による排出ガスの削減が強力に推進されている。自動車の燃費向上の方策の一つとして、自動車車体のさらなる軽量化が要求されている。その一方で、衝突安全性を高めるために自動車車体の剛性向上による衝撃吸収能の向上も求められている。これら様々な要求を満足して自動車車体の軽量化及び高剛性化をいずれも高次元で達成するには、自動車車体用鋼板の一層の高強度化及び薄肉化を図ることが不可欠である。
このような状況にあって、例えば車体の構造部材や足回り部材等に関して、さらなる高強度化及び軽量化が求められている。このような要求に応えるため、これらの部材をハイドロフォーム加工により製造することが検討されている。
ハイドロフォーム加工とは、略述すると、ダイスの代わりに液圧を利用して素材を成形するものである。具体的には、ハイドロフォーム加工は、液圧により膨出加工をする加工方法であって、実用的には膨出変形させながら型になじませて成形する加工方法である。ハイドロフォーム加工により製造された構造部材や足回り部材を供給することが可能になれば、部品点数やスポット溶接打点数の削減等による軽量化や低コスト化を図ることができるようになるとともに、自動車車体の剛性を高めることができるために衝突安全性の向上も図ることができるようになるといった、多大な効果が期待される。
このようなハイドロフォーム加工による効果を十分に享受するには、ハイドロフォーム加工に適した材料を用いることが必要である。具体的には、ハイドロフォーム加工における膨出加工時に割れを生じないとともに加工コストの上昇を抑制できる材料を用いることが重要である。
特許文献1には、フェライト面積率を95%以上とすることによりハイドロフォーム性を向上させたハイドロフォーム加工用電縫鋼管が開示されている。
特許文献2には、極低炭素の鋼組成とするとともにTi、C及びNそれぞれの添加量の比率を制御するとともにフェライト単相組織を有し、母材と溶接部との硬度差をHv50以下に抑制した、加工性に優れたハイドロフォーム加工用電縫鋼管が開示されている。
さらに、特許文献3には、Ti、C及びNそれぞれの添加量を適正量に制御することにより、溶接による軟化を生じない構造用電縫鋼管が開示されている。
特許文献1〜3から下記事項(I)及び(II)の2点が重要であることが分かる。
(I)ハイドロフォーム性に優れた素材としてフェライト主体の組織にすることが望ましい。この理由を、特許文献1では、素材にフェライトとともに例えばパーライト、マルテンサイトあるいはセメンタイト等といったフェライト以外の硬質な第2相が存在すると、ハイドロフォーム加工の際の塑性変形の比較的初期に軟質なフェライトと硬質な第2相との界面を起点とした割れを生じるためとしている。また、特許文献2では、延性を劣化させないためとしている。
(II)自動車部品として使用する場合には溶接工程は避けられない。このため、溶接部及びその周囲の組織や硬度の変化に留意する必要があり、溶接部及びその熱影響部の軟化や硬化が極力小さいほうが望ましい。この理由を、特許文献2では、硬さが高いところでは延性が低下し、特にハイドロフォーム加工のような厳しい加工の場合は加工が困難となるためとしており、一方、特許文献3では、拡管成形での変形が局部的に集中して素材が有する高い延性を十分に発揮できなくなるためとしている。
特開2001−32034号公報 特開2000−119812号公報 特開2001−303194号公報
フェライト主体の組織で強度を確保するためには、フェライト相の強化、フェライトの固溶強化や析出強化がその改善策として挙げられる。しかし、特許文献1により開示されるように析出強化によって高強度化を図るだけではフェライト相の延性が低下し、さらに、溶接部及び熱影響部の硬化も生じるため、ハイドロフォーム性は必ずしも向上しない。しかし、ハイドロフォーム性を向上させるために単純にフェライト相を増加させると強度の確保が難しくなる。特許文献2及び3では500MPa以上の高強度は得られておらず、自動車車体の剛性向上や軽量化への効果は小さい。
本発明者らは、組成及び製造条件が異なる多数の鋼板と、これらの鋼板を素材とする電縫鋼管とについて、ハイドロフォーム性に及ぼす組成及び組織の影響を調べた。その結果、C含有量を0.01%超0.13%以下(本明細書では特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味する)、Tiを0.02%以上0.2%以下含有するとともにNbを0.002%以上0.1%以下含有し、平均粒径が1.1μm以上10μm以下のフェライトを面積率で95%以上有することにより、引張強度が500MPa以上で優れた強度と延性のバランスを有する鋼板を得られることを知見した。さらに、溶接部の周辺の成形性の劣化が極めて小さいことも知見し、ハイドロフォーム加工による膨出加工の際にも割れを生じることがない優れたハイドロフォーム性を有するハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びハイドロフォーム加工用電縫鋼管を得られることを知見して、本発明を完成した。
本発明は、C:0.01%超0.13%以下、Si:0.005%以上1.0%以下、Mn:0.1%以上3.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Al:0.001%以上0.1%以下、Ti:0.02%以上0.2%以下、Nb:0.002%以上0.1%以下、N:0.01%以下、さらに(1)式:−0.05<4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)<0.2を満足し、残部Fe及び不純物からなる鋼組成を有し、平均粒径が1.1μm以上10μm以下のフェライト相が面積分率で95%以上であり、引張強度TSが500(MPa)以上であるとともに引張強度MPa(MPa)×単軸引張伸びEL(%)が14000(MPa・%)以上であることを特徴とするハイドロフォーム加工用熱延鋼板である。
この本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板は、さらに、
V:0.5%以下、及び/又は、Mo:0.5%以下を含有すること、及び/又は、
Ca:0.01%以下、及び/又は、Mg:0.01%以下を含有すること
が望ましい。
これらの本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板において「フェライト」とは、パーライト組織、セメンタイト組織、残留オーステナイト相、マルテンサイト組織さらにはベイナイト組織を含まず、ポリゴナルフェライト、ベイニティックフェライト、アシキュラーフェライト、グラニュラーベイニティックフェライト、擬ポリゴナルフェライトなどを含み、その形態は問わない。なお、これらの組織の定義については、日本鉄鋼協会編「鋼のベイナイト写真集−I」(平成14年6月29日発行)に基づき、定めたものである。
別の観点からは、本発明は、上述した本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板を素材として電縫溶接して得られることを特徴とするハイドロフォーム加工用電縫鋼管である。
本発明における「ハイドロフォーム加工用電縫鋼管」とは、液体の圧力によって成形もしくは加工する際の素材として用いられる電縫鋼管を意味しており、例えばチューブハイドロフォーミングに供される電縫鋼管が例示される。
さらに別の観点からは、本発明は、上述した鋼組成を有する、例えば連続鋳造スラブ等の鋼片を、1200℃以上に加熱し、1パス当たりの圧下率を40%以下で粗圧延を行い、仕上げ熱間圧延の温度範囲を(Ar点+200℃)以上Ar点以下とするとともに、仕上げ熱間圧延の累積圧下率を50%以上とし、加熱炉から抽出されてから仕上げ熱間圧延を終了した後水冷を開始するまでの時間を350秒以下とするとともに最初に行なう水冷の冷却停止温度を550℃以上750℃以下として水冷を行い、仕上げ熱間圧延を終了した時から30秒以内に350℃以上650℃以下で巻取ることを特徴とする、上述した本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板の製造方法である。
この本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板の製造方法では、さらに、(i)仕上げ熱間圧延を終了した後、最初に行なう水冷の水冷開始までに要する時間を4秒以内とすること、及び/又は,(ii)仕上げ熱間圧延を終了した後、最初に行なう水冷の水冷開始から停止までの時間で水冷前後の温度差を除した平均冷却速度を40℃/s以上とすることを満足することが望ましい。
本発明により、500MPa以上の強度と、溶接部を有する部材のハイドロフォーム加工による膨出加工の際にも割れを生じることがない優れたハイドロフォーム性とをともに備えるハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びハイドロフォーム加工用電縫鋼管を低コストで提供できる。
このため、本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びハイドロフォーム加工用電縫鋼管は、いずれも、各種産業機械等の構造部材の素材として、とりわけ自動車車体の構造部材の素材として、好適に使用することができる。
以下、本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びその製造法と、ハイドロフォーム加工用電縫鋼管を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の基となった、鋼板及びハイドロフォーム成形時の組成変形の挙動に関する基礎的な検討結果を説明する。
(a)電縫鋼管のハイドロフォーム成形において、管端を管軸方向に押し込むことによりハイドロフォーム性は格段に向上する。
(b)電縫鋼管のハイドロフォームによる部品成形では、管軸方向の押し込みの効果が小さい部位での破断が多く、このような変形でのハイドロフォーム性を向上することが重要である。
(c)管軸方向の押し込みの効果がない状態を模擬した管端を固定した条件でのハイドロフォーム成形における膨出変形は、管軸方向の変形が拘束された平面歪み変形であり、平面歪み変形においては、変形の初期から3軸応力が発生する。このため、セメンタイトやマルテンサイトならびにパーライト等の硬質な第2相やTiN系粒子等の粗大な介在物が多量に存在すると、これらと軟質なフェライトとの界面を起点として、比較的初期の段階で割れが発生する。なお、この「TiN系粒子」とは、TiとNを含有する粒子であり、Nbを含有して(Ti,Nb)Nとして表記されるものも含む。
(d)管軸方向の鋼管の押し込みの効果がない状態を模擬して、管端を固定した条件でハイドロフォーム性を評価した場合に良好な特性を有する鋼管は、押し込みをする場合にも良好である。
(e)熱延鋼板の延性と、この鋼板を素材として電縫溶接した電縫鋼管のハイドロフォーム性とは、概ね線形の相関を示すが、鋼種によってはその相関直線から外れ、鋼板の延性と比較して極端にハイドロフォーム性が劣化することがある。
(f)これは、鋼管の硬度を測定した結果から、鋼管の造管時に不均一に歪みが導入される場合があるためと判明した。
(g)さらに、ハイドロフォーム性が低下している鋼管を精査した結果、溶接シーム部及び熱影響部の組織が母材部の組織とは異なり、具体的にはマルテンサイト組織やベイナイト組織等に変化している範囲よりもはるかに広く、シーム幅の10倍以上という広範囲でハイドロフォーム加工の際の局所の延性が低下するという共通した特徴を有することを見出した。この加工性の低下のメカニズムに関しては必ずしも明らかではないが、鋼管の溶接部の周辺は、曲げ応力、突合せによる圧縮応力さらには管軸方向への引張応力等に起因した変形が複合的に加わった状態であり、これらに起因する応力場及び導入されたひずみが、ハイドロフォーム加工における平面ひずみ変形を著しく抑制すると推定される。
(h)アーク溶接及びレーザー溶接等の接合の際にも程度の差はあるものの、シーム部及び熱影響部を超える範囲で局所の延性が低下して、ハイドロフォーム性を劣化させる。電縫溶接をした鋼管の溶接シーム周囲の低下はより広範囲に渡り、電縫鋼管のハイドロフォーム性を著しく劣化させる。
次に、鋼管のハイドロフォーム性に及ぼす影響について、化学成分及び製造条件が種々異なる鋼板と、この鋼板を素材として製造した電縫鋼管とについて検討を行なった結果、以下に列記する知見を得た。
(i)造管時に不均一に導入される歪みは、組織の細粒化を図ることにより、均一に導入されるように緩和できる。
(j)溶接シームの周辺の加工性に関して、溶接シーム部の硬化によるハイドロフォーム性の劣化は抑制できないものの、シーム部よりも広範囲に渡る局所の延性の低下はTi添加により抑制することができる。
(k)TiやNb等の析出元素とC、Nの添加量とを、炭化物、窒化物及び炭窒化物が生成するのに必要十分な量に調整し、熱延条件を最適化することによって、略フェライト単相(フェライト面積率95%以上)となり、さらに、数〜数10nmオーダーの微細なTi、Nb炭化物が多量に析出して高強度を有する鋼板となる。
(l)このような組成を有する電縫鋼管のシーム周辺の硬度をシーム幅の20倍以上に渡って測定した結果、シーム周辺には熱影響による軟化は生じていないことを確認した。
本発明は、以上の検討結果(a)〜(l)に基づいてなされたものであり、「C:0.01%超0.13%以下、Ti:0.02%以上0.2%以下、Nb:0.002%以上0.1%以下とし、加熱炉に装入して1200℃以上に加熱して、1パス当たりの圧下率を40%以下で粗圧延を行い、仕上げ熱間圧延の温度範囲を(Ar点+200℃)〜Ar点とし、加熱炉から抽出されてから水冷を開始するまでの時間を350秒以下とするとともに最初に行なう水冷の冷却停止温度を550℃以上700℃以下として、仕上げ熱間圧延を終了した時から30秒以内に350℃以上650℃以下で巻取ることにより、500MPa以上の強度とハイドロフォーム加工による膨出加工の際にも割れを生じることがない優れたハイドロフォーム性とを有するハイドロフォーム加工用熱延鋼板を提供できる」という、独創的な技術思想に基づくものである。
次に、本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板の組成等の限定理由を説明する。
C:0.01%超0.13%以下
Cは、炭化物による析出強化のために必要な元素である。析出強化を利用して500MPa以上の高強度を確保するために、Cを0.01%超含有する。しかしながら、C含有量が0.13%を超えると、過度に焼入性が上がるためフェライト変態が遅延し、所望のフェライト面積率を得られなくなる。また、炭化物が粗大化し易くなるためハイドロフォーム性の低下を招く。そこで、本実施の形態では、C含有量は0.01%超0.13%以下と限定する。同様の観点からC含有量の上限は0.12%であることが望ましく、下限は0.02%である。より望ましくは上限は0.11%であり、下限は0.04%である。
Si:0.005%以上1.0%以下
Siは強度と延性のバランスを向上させるのに有効な元素であり、かかる効果を得るためには0.005%以上含有する。しかし、Si含有量が多すぎると熱間圧延時には島状のスケールの生成を促進して表面性状を悪化させる要因となり、化成処理性も劣化させる作用も有する。また、電縫溶接時には溶接部にSi系酸化物を生成して、これを核とした溶接部に割れを起こし易くなる。これらを抑制する目的においては少ないほど好ましい。したがって、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.5%である。
Mn:0.1%以上3.0%以下
Mnは、0.1%以上含有することにより鋼の強度を上昇させるとともに、変態点を下げる効果も有するため、熱間圧延仕上げ温度を低下させることで、組織の微細化にも有効である。しかし、Mn含有量が3.0%を超えると過度に焼入性が上がるため、フェライト変態が遅延して所望のフェライト面積率を得られなくなる。また、Mnの偏析により組織が著しく不均質になるためハイドロフォーム性が著しく劣化する。そこで、本実施の形態ではMn含有量は0.1%以上3.0%以下と限定する。同様の観点から、上限は2.5%であることが望ましく、下限は0.3%であることが望ましい。より望ましくは上限は2.0%、下限は0.5%である。
P:0.04%以下
Pは、粒界に偏析して加工性の低下を招き、特に、その含有量が0.04%を超えると偏析が著しくなってハイドロフォーム性が著しく劣化する。そこで、本実施の形態では、P含有量は0.04%以下と限定する。
S:0.03%以下
Sは、ハイドロフォーム性を劣化させる硫化物を生成させるため、可能な限り低減する必要がある。しかし、本発明における他の含有成分によるハイドロフォーム性の向上の度合、また製鋼での工程コストを勘案し、本実施の形態では、S含有量は0.03%以下と限定する。
Al:0.001%以上0.1%以下
Alは,0.001%以上含有することにより鋼の脱酸に有用である。しかし、Al含有量が0.1%を超えると、粗大なアルミナ系介在物が増加してハイドロフォーム性が劣化するとともに電縫溶接時にはAl系酸化物を生成し、これを核とした溶接金属割れを起こし易くなる。そこで,本実施の形態ではAl含有量は0.001%以上0.1%以下と限定する。同様の観点から、Al含有量の上限は0.07%であることが望ましく、下限は0.005%であることが望ましい。
Ti:0.02%以上0.2%以下
析出強化に寄与すると同時に、溶接部の周辺の延性劣化を抑制する効果を有する。Ti含有量が0.02%未満であると所望の強度を得られない場合があり、溶接部の周りの延性劣化によりハイドロフォーム性も低下する。一方、Ti含有量が0.2%を超えるとTiN系粒子が粗大化して延性及びハイドロフォーム性が低下する。そこで、本実施の形態ではTi含有量は0.02%以上0.2%以下と限定する。同様の観点から、Ti含有量の上限は0.17%であることが望ましく、下限は0.05%であることが望ましい。
Nb:0.002%以上0.1%以下
NbはTiと同様に主に析出強化に寄与する。さらに、Ti及びNbそれぞれの析出温度域が異なるため、Ti及びNbを複合添加することにより、短時間の冷却中に微細な炭化物を析出してフェライト単相組織を容易に得やすくなる。一方、溶接した際の熱影響部軟化を抑制する効果も有する。これらの効果は、Nb含有量が0.002%未満では得られない。しかし、Nbを過渡に含有して0.1%を超えると、逆にフェライト変態を遅延させてフェライト単相組織を得難くなり、延性及びハイドロフォーム性を劣化させる。そこで、本実施の形態では、Nb含有量は0.002%以上0.1%以下と限定する。同様の観点からNb含有量の上限は0.05%であることが望ましく、下限は0.01%であることが望ましい。
N:0.01%以下
Nは、製鋼工程や鋳造工程において粗大なTiN系粒子を生成させ、変形初期にこれをき裂起点として割れが発生してハイドロフォーム性を低下させる。また、多量に含有するとTiN系粒子の量が増大し、強化に寄与するTi量の減少による強度の低下を起こす。そこで、本実施の形態では、N含有量は0.01%以下と限定する。同様の観点から、N含有量の上限は0.007%であることが望ましい。
本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板は、以下に説明する元素を任意添加元素として含有してもよいので、これらの任意添加元素についても説明する。
V:0.5%以下、及び/又は、Mo:0.5%以下
V、Moは、含有しなくてもよいが、含有することによりTiと同様に析出強化元素として強度の向上に有効な任意添加元素である。しかし、V、Moそれぞれの含有量が0.5%を超えると溶接性や化成処理性が劣化するとともにコストが嵩む。そこで、本実施の形態では、VとMoの含有量はそれぞれ0.5%以下とする。好ましくは0.3%以下である。なお、このような効果を確実に得るには、Vは0.005%以上、Moは0.005%以上添加することが望ましい。
Ca:0.01%以下、及び/又は、Mg:0.01%以下
Ca、Mgは、いずれも任意添加元素であって、一層のハイドロフォーム性の向上を目的に含有する。Caは溶鋼中に酸化物として存在してTiN系粒子の析出核となり、TiN系粒子を微細化するためにこのTiN系粒子を起点とした割れの発生が減少し、ハイドロフォーム性が向上する。かかる効果を得るために、Ca、Mgは極微量でも効果を奏するが、このような効果を確実に得るには、いずれも0.0002%以上含有することが望ましい。しかし、Ca、Mgそれぞれの含有量が0.01%を超えると、溶接時の溶接金属部における酸化物を増加させ、酸化物を起点とした溶接割れを起こし易くなる。そこで、本実施の形態では、CaとMgの含有量は0.01%以下とすることが望ましく、さらに望ましくは0.0002%以上0.01%以下である。
さらに、本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板に含有される酸素(O)は、0.01%以下であることが望ましい。Oは、鋼の清浄度を上げてハイドロフォーム性を向上させるために低減させる方が好ましい。しかし、Ca及び/又はMgを添加する際には酸化物を形成してTiN系粒子を微細化させてハイドロフォーム性を向上させる効果に寄与する。かかる効果を確実に得るためには0.0002%以上含有することが好ましい。しかし、過度の添加は清浄度の低下及び酸化物の粗大化によりハイドロフォーム性が低下するために0.01%以下とする。より好ましくは0.0003%以上0.007%以下、さらに好ましくは0.0005%以上0.005%以下である。
本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板の上記以外の組成は、Fe及び不純物である。
(1)式:−0.05<4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)<0.2
本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板では、C、N、Ti、Nb、V及びMoの含有量が、−0.05<4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)<0.2を満足する。ここで、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
仕上げ圧延終了後から巻取るまでの間に、フェライト変態と炭化物の析出とが活発になり、余剰なCはセメンタイトやパーライト等として析出する。この際に、C、N、Ti、Nb、V及びMoの含有量が、−0.05<4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)<0.2を満足すれば、得られるハイドロフォーム加工用熱延鋼板のフェライト面積率が95%以上、すなわち略フェライト単相組織となり、延性及びハイドロフォーム性が向上する。一方、4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)の値が−0.05未満になると、TiやNb等の固溶及び析出物の粗大化により延性及びハイドロフォーム性が劣化する。
そこで、本実施の形態では4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)の値は、−0.05超0.2未満とする。同様の観点から、この値は、−0.03以上0.15以下であることが望ましく、−0.01以上0.1以下であることがより望ましい。
フェライト相の面積分率:95%以
本実施の形態では、フェライト相の面積分率を95%以上とする。フェライト相の面積率が減少するに伴って延性が低下する。さらに、電縫鋼管のハイドロフォーム加工においては、硬質相が亀裂発生の起点となるために著しくハイドロフォーム性を劣化させる。したがって、フェライトの面積分率を95%以上とする。なお、残部5%未満の第二相(硬質相)に関しても、マルテンサイトやベイナイトが生成すると延性が劣化するため、パーライトやセメンタイトであることが望ましい。
フェライト相の平均粒径:1.1μm以上10μm以下
本実施の形態では、フェライト相の平均粒径を1.1μm以上10μm以下とする。組織の微細化は、変形の均一化を促し、鋼板の成形性はもちろんのこと、造管時に導入される歪みも鋼管全体に渡って均一化される。この効果により、鋼管のハイドロフォーム加工の初期から変形部位が局所化することを抑制できハイドロフォーム性が向上する。かかる効果を得るためには、フェライト相の平均粒径は10μm以下が好ましい。より好ましくは7μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。しかしながら、1.1μmを下回るような極端な細粒化は通常の熱間圧延では技術的に困難であるため、1.1μmを下限とする。
引張強度:500(MPa)以上、引張強度(MPa)×単軸引張伸び(%):14000(MPa・%)以上
本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板は、JIS Z 2201に規定された5号引張試験片における引張強度が500(MPa)以上、かつ、引張強度(MPa)と全伸び(%)との積が14000(MPa・%)以上である。
鋼板の引張強度が小さいと、車体軽量化や車体剛性向上などの効果が小さく、また、伸びが小さい場合には、ハイドロフォーミングで成形できる形状が制限されてしまう。本実施の形態では、これらの2つの特性が高レベルでバランスすることが必要であり、引張強度が500(MPa)以上、引張強度(MPa)×単軸引張伸び(%)を14000(MPa・%)以上が必要である。剛性向上効果をより大きく得るためには、さらなる高強度化が好ましく540MPa以上、590MPa以上、780MPa以上、さらには980MPa以上であることが、それぞれ望ましい。また、強度と伸びのバランスにおいても好ましくは14500MPa%以上であり、より好ましくは15000MPa%以上である。
次に、本実施の形態のハイドロフォーム加工用熱延鋼板の製造方法を説明する。
まず、上述した鋼組成を有する、例えば連続鋳造スラブ等の鋼片を、加熱炉に装入して1200℃以上に加熱する。スラブの加熱温度が1200℃未満であると、鋼片中の粗大なTiやNbなどの炭化物及びTiN系粒子が十分に固溶せずに粗大なまま残存し、延性及びハイドロフォーム性が劣化するばかりでなく、冷却中に析出して強化に寄与する微細析出物の減少により強度が低下する。そこで、本実施の形態では、鋼片の加熱温度は1200℃以上とする。同様の観点からより望ましくは1230℃以上である。ただし、鋼片の加熱温度が1400℃を超えると、多量のスケールが生成して歩留まりが低下し、加熱炉の損傷も著しくなる。このため、鋼片の加熱温度は、1400℃以下であることが望ましい。
このように加熱した鋼片に、慣用される手法により粗圧延及び仕上げ熱間圧延を行なう。ここで、本実施の形態では、粗圧延の各パス当たりの圧下率を40%以下とするとともに、加熱炉から抽出されてから、仕上げ圧延後の水冷を開始するまでの時間を350秒以下とすることにより、圧延過程におけるハイドロフォーム加工性の低下および特性バラツキ要因を排除することができる。以下、この理由を説明する。
本発明により得られる鋼板は、ハイドロフォーム性の向上を目的にTiおよびNbを含有する。しかし、これらによる介在物が大きい場合には、逆にハイドロフォーム性の低下を招くため,介在物の大きさを制御する必要がある。このためには、加熱炉から抽出されてから仕上げ圧延の終了までの条件を制御することが有効であり、具体的には、粗圧延の各パスの圧下率を40%以下とするとともに、加熱炉から抽出されてから、仕上げ圧延後の水冷を開始するまでの時間を350秒以下とする。
すなわち、炭化物、窒化物、炭窒化物等の介在物の大きさは、高温であるほど粗大化し易く、一方、その量は概ね溶解度積で決まり低温であるほど増加する。しかし、実際に析出するまでにはある程度の潜伏期が存在するので、必ずしも溶解度積に見合う量が析出するわけではない。
しかしながら、圧延によりひずみが加わると、このひずみエネルギーを駆動力として析出が促進される。特に、高温域の粗圧延の加工量を大きくすると、その量が多くなくても、粗大に成長した介在物が局所的に存在することになり、加工性のばらつきを生じ、場合によっては著しくハイドロフォーム性が低下することがある。したがって、粗圧延の加工量はあまり大きくしないほうが好ましく、粗圧延の各パスの圧下率は40%以下とする。
また、本実施の形態では、仕上げ熱間圧延を(Ar点+200)℃以下Ar℃以上の温度で行う。仕上げ圧延の温度範囲が(Ar点+200)℃超であると、回復および再結晶を生じて仕上げ圧延における累積ひずみ量が少なくなり、フェライト変態が遅延し所望のフェライト面積率を得難くなる。
一方、Ar点未満のフェライトとオーステナイトの二相域で仕上げ熱間圧延を行なうと、フェライト相に歪みが加わって加工フェライトが生成するため、延性及びハイドロフォーム性が劣化する。
そこで、本実施の形態では、熱間圧延時の仕上げ圧延温度は(Ar点+200)℃以下Ar点以上とする。
このようにして熱間圧延を終了した後、加熱炉から抽出されてから、仕上げ圧延後の水冷を開始するまでの時間を350秒以下として水冷を行うことにより、圧延過程におけるハイドロフォーム加工性の低下および特性バラツキ要因を抑制することができる。
すなわち、加熱炉から抽出されてから仕上げ圧延終了までの圧延過程の中での析出、または、析出した介在物があったとしてもその粗大化を抑制するためには、加熱炉を抽出されてから仕上げ圧延後の冷却を開始するまでの時間をできるだけ短くすることが好ましい。そこで、加熱炉から抽出されてから、仕上げ圧延後の水冷を開始するまでの時間を350秒以下と限定する。
また、仕上げ熱間圧延を終了後の最初に行なう水冷の冷却停止温度を550℃以上750℃以下として、仕上げ熱間圧延を終了した時から30秒以内に350℃以上650℃以下で巻取ることが望ましい。
仕上げ熱間圧延を終了後に最初に行なう水冷の冷却停止温度が750℃より高いと、フェライト変態の駆動力を十分に得られずに所望のフェライト体積率が得られなかったり、冷却中に析出する炭化物が粗大化したりすることにより延性やハイドロフォーム性が劣化する。しかし、この水冷の冷却停止温度が550℃よりも低い温度まで冷却すると、ベイナイトやマルテンサイトの生成温度に達し、所望の組織が得られずに延性やハイドロフォーム性が劣化する。このため、仕上げ熱間圧延を終了後、最初に行なう水冷の冷却停止温度は550℃以上750℃以下とする。同様の観点から、望ましくは730℃以下580℃以上である。
また、仕上げ熱間圧延を終了した時から巻取りを開始する時までに要する時間を、30秒以上にすると巻取りまでに析出するTiやNb等の炭化物が巻取るまでに粗大化して強度、延性及びハイドロフォーム性が劣化する。加えて生産能率も低下する。そこで、仕上げ熱間圧延を終了した時から巻取りを開始するまでに要する時間は30秒以下が望ましく、同様の観点から25秒以内がより望ましい。
一方、巻取り温度が350℃未満であると、硬質な第2相の生成により延性及びハイドロフォーム性が劣化する。一方、巻取り温度が650℃超であると、巻取後に炭化物が著しく粗大化し強度や延性及びハイドロフォーム性を劣化させる。このため、巻取温度は350℃以上650℃以下が望ましい。同様の観点から600℃未満400℃超が望ましい。
さらに、仕上げ熱間圧延を終了した時から冷却を開始するまでに要する時間を短時間化することにより、加工オーステナイトの回復・再結晶を抑制して、フェライト変態の駆動力が大きくなる。同様に、仕上げ熱間圧延後に最初に実施する水冷の冷却速度を大きくすることによってもフェライト変態の大きな駆動力が得られる。これらを組み合わせた場合は相乗効果により変態の駆動力はさらに大きくなる。この作用により、フェライト単相組織をより短時間に確実かつ容易に得ることができ、析出物の粗大化も抑制できる。さらに、短時間で巻取ることが可能になり生産能率の向上にも寄与する。以上のことから、
(i)仕上げ熱間圧延を終了した後、最初に行なう水冷の水冷開始までに要する時間を4秒以内とすること、及び/又は、
(ii)仕上げ熱間圧延を終了した後、最初に行なう水冷の水冷開始から停止までの時間で水冷前後の温度差を除した平均冷却速度を40℃/s以上とすること
が望ましい。同様の観点から、上記(i)項の時間及び上記(ii)項の平均冷却速度は、それぞれ、3秒以内、60℃/s以上であることが望ましく、より好ましくは2.0秒以内、80℃/s以上である。
このようにして、本実施の形態によれば500MPa以上の強度と、優れた強度と延性のバランスを有し、さらに溶接部周辺の成形性劣化が極めて小さく、ハイドロフォーム加工による膨出加工の際にも割れを生じることがない優れたハイドロフォーム性とを有するハイドロフォーム加工用熱延鋼板及びハイドロフォーム加工用電縫鋼管を提供することができる。
本実施の形態では、このようにして製造された本発明にかかるハイドロフォーム加工用熱延鋼板を素材として周知慣用の手法により電縫溶接することによって、ハイドロフォーム加工用電縫鋼管、例えばチューブハイドロフォーミングに供される電縫鋼管が製造される。
このため、本実施の形態により、ハイドロフォーム加工により製造された構造部材や足回り部材を供給することが可能になるので、部品点数やスポット溶接打点数の削減等による軽量化や低コスト化を図ることができるとともに、自動車車体の剛性を高めることができるために衝突安全性の向上も図ることができる。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
初めに、Ti添加量の影響について詳細に説明する。表1に示す組成を有する6種類の鋼種A1〜A6を溶製して鋼片とした。この鋼片を、加熱温度を1240℃、仕上げ温度を900℃、仕上げ熱間圧延終了後の最初に行なう水冷の冷却停止温度(以下、冷却停止温度)を650℃、仕上げ熱間圧延を終了した時から巻取りを開始する時までに要する時間(以下、巻取時間)を20秒、巻取温度を550℃、仕上げ熱間圧延を終了した時から冷却を開始するまでに要する時間(以下、冷却開始時間)を1.5秒、仕上げ熱間圧延終了後の最初に行なう水冷の冷却開始から停止までの時間で水冷前後の温度差を除した平均冷却速度(以下、冷却速度)を50℃/秒として、板厚2.0mmの熱延鋼板とした。
また、表1のすべての例において、粗圧延の圧下率については1パス当たり17〜35%、加熱炉抽出から水冷開始までの時間を150〜300秒とした。
この熱延鋼板を円筒状に成形してから継目部を電気抵抗溶接して、直径:60.0mm、肉厚:2.0mmの電縫鋼管とした。
熱延鋼板のフェライト面積率は圧延方向に対して平行となる板厚断面を鏡面研磨した組織観察試料をナイタール液で腐食し、走査電子顕微鏡を用いて板厚方向(1/4)深さ位置を1000倍で組織観察を行った。フェライト粒径は、いわゆる切片法で測定した平均粒径を1.13倍したものを任意の2視野で測定し、これらの算術平均値として求めた。フェライト相の面積分率は、フェライト粒径を測定した2視野を画像解析により測定した値を算術平均して求めた。機械特性は、圧延方向に対して直角方向からJIS Z 2201に規定される5号引張試験片を切り出して、室温で引張試験を行なうことにより、引張強度及び全伸びを測定した。
一方、電縫鋼管の機械特性は、JIS Z 2201に規定される11号引張試験片を切り出して室温で引張試験を行なって引張強さと全伸びを測定した。又ハイドロフォーム成形は、図1(a)に示す鋼管5のハイドロフォーム成形試験機1の上金型2及び下金型3を用いて、鋼管5の管端を固定した状態で鋼管5内に水で内圧をかけて、鋼管5を上下の金型2、3により形成された空間4内に膨れ出させた。そして、図4(b)に示すように鋼管5にバースト部6を生じるまで行い、バースト部6を含む拡管部7の周長を測定した。そして、限界拡管率=(破断部鋼管周長−素管周長)/素管周長×100(%)により、限界拡管率を求めた。
表2に本発明により製造された熱延鋼板及び比較鋼板それぞれの特性(TS、El、TS×El)と、電縫鋼管の特性(TS、El、限界拡管率、TS×限界拡管率)をまとめて示し、図2にはTi添加量と強度−伸びバランス及び強度−限界拡管率バランスの関係を示す。
Ti添加量の増加に伴い強度が増加し伸びが低下するが、Ti添加量が請求範囲内の開発鋼である試番2〜5は、請求範囲外の試番1及び試番6と比較して強度−伸びバランスが優れる。一方、電縫鋼管の強度−限界拡管率バランスにおいても、試番2〜5は試番1及び6と比較して優れる。
Figure 0004853075
Figure 0004853075
次に、製造条件について詳細に説明する。供試材は表1のA3及びA4を用い、表3に示す種々の熱延条件にて板厚2.0mmの熱延鋼板とした。また、表3のすべての例において、粗圧延の圧下率については1パス当たり17〜35%、加熱炉抽出から水冷開始までの時間を150〜300秒とした。
この熱延鋼板を前述と同様の方法により直径:60mm、肉厚:2.0mmの電縫鋼管とした。熱延鋼板の組織及び機械特性と電縫鋼管の機械特性についても前述の方法で測定した。
表4に本発明により製造された熱延鋼板及び比較鋼板それぞれの特性をまとめて示す。
スラブ加熱温度が請求範囲より低い試番7及び試番22は粗大な析出物が未固溶で存在しているため、所望のフェライト面積率は得られたが機械特性は開発鋼と比較して劣る。
仕上げ温度が請求範囲より高い試番8及び試番23と冷却停止温度が請求範囲より高い試番11及び試番26、冷却停止温度が請求範囲より低い試番12及び試番27は、フェライトの析出が遅延して所望のフェライト体積率が得られていないため、成形性が劣る。
さらに、比較鋼の試番11と同等の19%程度の伸びを有する開発鋼の試番29を比較しても電縫鋼管の限界拡管率は開発鋼の方が優れる。これは、第2相がハイドロフォーム加工の初期にき裂起点となるためである。
巻取温度が請求範囲より低い試番17及び試番32は、所望のフェライト体積率が得られず、第2相の硬質化により成形性が著しく劣化する。
仕上げ温度が請求範囲より低い試番10及び試番25は所望のフェライト面積率は得られたが、仕上圧延終了前に析出したフェライトが加工されたことにより成形性が劣化している。
さらに、巻取時間が請求範囲より長い試番13及び試番18は冷却中に析出した炭化物が粗大化したことにより成形性が劣化している。
Figure 0004853075
Figure 0004853075
表5に示す組成を有する21種類の鋼種B1〜B21を溶製して鋼片とし、この鋼片を、加熱温度を1240℃、仕上げ圧延温度をAr〜(Ar+150)℃の範囲内、冷却停止温度を650℃、巻取時間を20秒、巻取温度を550℃、冷却開始時間を1.0秒、冷却速度を80℃/秒の熱延条件で板厚2.0mmの熱延鋼板とした。また、表5において、すべての粗圧延の圧下率については1パス当たり17〜35%とし、加熱炉抽出から水冷開始までの時間については、B1〜B20は300秒、B21は400秒とした。
また、この熱延鋼板を素材として、前述したのと同様の方法で直径:60mm、肉厚:2.0mmの電縫鋼管とした。熱延鋼板の組織及び機械特性と電縫鋼管の機械特性についても前述の方法で測定した。結果を表6にまとめて示す。
試番37〜55の開発鋼は、優れた強度−伸びバランス及び強度−限界拡管率バランスを示す。
一方、C及びMnの添加量が請求範囲よりも多い試番56及び試番57は過度に焼入れ性が向上したため、所望のフェライト体積率が得られておらず、特性も劣る。
Figure 0004853075
Figure 0004853075
図1(a)は、鋼管のハイドロフォーム成形試験機を示す説明図であり、図1(b)は、バースト部を生じた鋼管を示す説明図である。 単軸引張伸び及び限界拡管率に及ぼすTi添加量を示すグラフである。 強度と引張伸びのバランス及び強度と限界拡管率のバランスに及ぼすTi添加量を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01%超0.13%以下、Si:0.005%以上1.0%以下、Mn:0.1%以上3.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Al:0.001%以上0.1%以下、Ti:0.02%以上0.2%以下、Nb:0.002%以上0.1%以下、N:0.01%以下、さらに下記(1)式を満足し、残部Fe及び不純物からなる鋼組成を有し、平均粒径が1.1μm以上10μm以下のフェライト相が面積分率で95%以上であり、引張強度(TS)が500(MPa)以上であるとともに引張強度(MPa)×単軸引張伸び(EL)(%)が14000(MPa・%)以上であることを特徴とするハイドロフォーム加工用熱延鋼板。
    −0.05<4(C+N)−(Ti+V+Nb/2+Mo/2)<0.2・・・(1)
  2. さらに、質量%で、V:0.5%以下、及び/又は、Mo:0.5%以下を含有する請求項1に記載されたハイドロフォーム加工用熱延鋼板。
  3. さらに、質量%で、Ca:0.01%以下、及び/又は、Mg:0.01%以下を含有する請求項1又は請求項2に記載されたハイドロフォーム加工用熱延鋼板。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたハイドロフォーム加工用熱延鋼板を素材として電縫溶接して得られることを特徴とするハイドロフォーム加工用電縫鋼管。
  5. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された鋼組成を有する鋼片を加熱炉に装入して1200℃以上に加熱し、1パス当たりの圧下率を40%以下で粗圧延を行い、仕上げ熱間圧延の温度範囲を(Ar点+200℃)〜Ar点とするとともに該仕上げ熱間圧延の累積圧下率を50%以上とし、前記加熱炉から抽出されてから仕上げ熱間圧延終了後の水冷を開始するまでの時間を350秒以下とするとともに最初に行なう水冷の冷却停止温度を550℃以上750℃以下として水冷を行い、仕上げ熱間圧延を終了した時から30秒以内に350℃以上650℃以下で巻取ることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたハイドロフォーム加工用熱延鋼板の製造方法。
  6. さらに、(i)仕上げ熱間圧延を終了した後、水冷の水冷開始までに要する時間を4秒以内とすること、及び/又は、(ii)仕上げ熱間圧延を終了した後、最初に行なう水冷の水冷開始から停止までの時間で水冷前後の温度差を除した平均冷却速度を40℃/s以上とすることを満足する請求項5に記載されたハイドロフォーム加工用熱延鋼板の製造方法。
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