JP4852179B2 - 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高密度記録可能な磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
近年の情報化社会において、我々が記録媒体へ記録する情報の量は増加の一途をたどっている。このため、飛躍的に高い記録容量を有する記録・再生装置および記録媒体の出現が望まれている。現在、大容量かつ安価な記録媒体として需要が増加し続けているハードディスクに関しても、数年後には現行のおよそ10倍である1平方インチあたり1テラビット以上の記録密度が必要といわれている。
ハードディスクに用いられている現行の磁気記録媒体では、磁性体微粒子の多結晶体からなる薄膜上の一定の領域に対して1ビットの記録を行っている。磁気記録媒体の記録容量を上げるためには記録密度を増加させなければならない。そのためには、1ビットあたりの記録に使用できる記録マークサイズを小さくすることが有効である。しかし、単純に記録マークサイズを小さくしていくと、磁性体微粒子の粒子形状に起因する記録ノイズの影響が無視できなくなってくる。そこで磁性体微粒子を小さくすると、代わりに熱揺らぎの問題が発生し、磁性体微粒子に記録された情報を常温で保つことができなくなる。
これらの問題を回避するために、あらかじめ記録材料を非記録材料によって分断し、単一の記録材料粒子を単一の記録セルとして記録再生を行うパターンド媒体が提案されている(特許文献1)。
また、近年のHDDのトラック密度の向上に関しては、隣接トラックとの干渉という問題が顕在化している。特に、記録ヘッド磁界のフリンジ効果による書きにじみの低減は重要な技術課題である。記録トラック間を物理的に分離するディスクリートトラック型パターン媒体(ディスクリートトラック媒体)は、記録時におけるサイドイレース現象、再生時におけるサイドリード現象などを低減できるため、クロストラック方向の密度を高めることができ、高密度な磁気記録媒体を提供することが期待できる(特許文献2)。
なお、ディスクリートトラック媒体もパターンド媒体の一つの形式であるため、本明細書においてパターンド媒体はディスクリートトラック媒体も含むものとする。
従来のパターンド媒体においては、強磁性記録層を下地に達するまでエッチングして磁性パターン間の磁気的干渉を完全に分断する方法が主に採用されてきた。しかし、現行のハードディスクドライブのヘッド浮上高さは10nm未満であり、強磁性記録層の厚さ20〜30nmに相当する深さの凹部を形成すると、良好なヘッド浮上安定性が得られなくなる。この問題は、磁性パターン間の凹部を非磁性層で埋め込んで表面を平坦化すれば解決できるが、凹部が深いほどプロセス時間がかかる。
そこで、強磁性記録層の厚さよりも浅い凹部を形成する方法が提案されている。しかし、強磁性記録層を浅く加工しただけでは、磁性パターン間の磁気的干渉を完全に分断することができないため、隣接トラックの信号がノイズになるという問題が生じる。
また、強磁性記録層の一部を、ハロゲンを含む反応ガスまたは反応液と反応させることによって化学的に変質させて非磁性層を形成し、非磁性層によって分断された磁性パターンを形成する方法が知られている(特許文献3)。しかし、この方法では、非磁性層中に残留したハロゲンが腐食の原因となる。
米国特許5,956,216号明細書 特開平7−85406号公報 特開2002−359138号公報
本発明の目的は、磁性パターン間の磁気的干渉を分断してノイズを低減でき、しかも腐食の原因物質を含まない磁気記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
本発明の一態様によれば、Coを含有する強磁性記録層からなる磁性パターンと、前記磁性パターン間を分断する非磁性層とを具備し、前記非磁性層は前記磁性パターンと同じ構成元素からなり、前記非磁性層のCo濃度は前記磁性パターンのCo濃度の60%以下であり、前記非磁性層のCo濃度は表面側よりも下地側で高いことを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
本発明の他の態様によれば、基板上にCoを含有する強磁性記録層を成膜し、前記強磁性記録層の一部を選択的にエッチングし、その部分の前記強磁性記録層をCF4を含むガスと反応させ、Coを含有する反応生成物を除去して前記強磁性記録層の一部から選択的にCoを除去することによって、前記強磁性記録層からなる磁性パターンと、前記磁性パターン間を分断する非磁性層とを形成し、前記非磁性層のCo濃度は前記磁性パターンのCo濃度の60%以下であり、前記非磁性層のCo濃度は表面側よりも下地側で高い
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
本発明によれば、Co濃度が低い非磁性層により磁性パターン間の磁気的干渉を分断してノイズを低減でき、しかも腐食の原因物質を含まない磁気記録媒体を提供することができる。
ディスクリートトラック媒体の平面図。 パターンド媒体の平面図。 本発明の一実施形態に係るパターンド媒体の製造方法を示す断面図。 本発明の一実施形態に係るパターンド媒体の製造方法において、Co濃度の低い非磁性層を形成する工程を示す断面図。 TEM−EDXによって測定した非磁性層の組成分布を示す図。 本発明の方法によって製造された媒体の断面TEM写真。 本発明の他の実施形態に係るパターンド媒体の製造方法を示す断面図。 本発明のさらに他の実施形態に係るパターンド媒体の製造方法を示す断面図。 本発明の実施形態に係る磁気記録装置の斜視図。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1に、ディスクリートトラック媒体の周方向に沿う平面図を示す。図1に示すように、媒体の周方向に沿って、サーボ領域10とデータ領域20とが交互に形成されている。サーボ領域10には、プリアンブル部11、アドレス部12、バースト部13が含まれる。データ領域20には強磁性記録層からなる記録トラック21が含まれる。
図2に、パターンド媒体(狭義)の周方向に沿う平面図を示す。図2のデータ領域20には、強磁性記録層がクロストラック方向において物理的に分断されているだけでなくダウントラック方向においても物理的に分断された磁性ドット22が形成されている。
図3(a)〜(i)を参照して本発明の一実施形態に係るパターンド媒体の製造方法を説明する。
図3(a)に示すように、ガラス基板31上に、厚さ120nmのCoZrNbからなる軟磁性下地層、厚さ20nmのRuからなる配向制御用の下地層、厚さ15nmのCoCrPt−SiO2からなる強磁性記録層32、厚さ5nmのカーボン(C)からなる保護膜33を順次成膜する。ここでは、簡略化のために、軟磁性下地層および配向制御層は図示していない。
図3(b)に示すように、保護膜33上に、レジスト34として厚さ100nmのスピンオングラス(SOG)をスピンコートする。このレジスト34に対向するようにスタンパ50を配置する。このスタンパ50には図1に示した磁性パターンと逆転した凹凸を有するパターンが形成されている。
図3(c)に示すように、スタンパ50を用いてインプリントを行い、スタンパ50の凹部に対応してレジスト34に凸部を形成する。
図3(d)に示すように、ICP(誘導結合プラズマ)エッチング装置でエッチングを行い、レジスト34の凹部の底に残っているレジスト残渣を除去する。このときの条件は、たとえば、プロセスガスとしてCF4を用い、チャンバー圧を2mTorr、コイルのRFパワーとプラテンのRFパワーをそれぞれ100W、エッチング時間を30秒とする。
図3(e)に示すように、残ったレジストパターン(SOG)を耐エッチングマスクとして、たとえばECR(電子サイクロトロン共鳴)イオンガンでArイオンミリングを行い、保護膜33をエッチングし、さらに強磁性記録層32をたとえば10nmだけエッチングする。このときの条件は、たとえば、プロセスガスとしてArを用い、マイクロ波パワーを800W、加速電圧を500V、エッチング時間を1分とする。
図3(f)に示すように、RIE装置でレジストパターン(SOG)を剥離する。このときの条件は、たとえば、プロセスガスとしてCF4ガスを用い、チャンバー圧を100mTorr、コイルのRFパワーを400W、プラテンのRFパワーを100Wとする。このとき、露出した強磁性記録層32の表面でCoとCF4との反応が起こり、反応生成物(CoFと考えられる)を除去することにより、元の強磁性記録層32よりもCo濃度が低い非磁性層35が形成される。この結果、非磁性層35によって分断された強磁性記録層32からなる磁性パターンが形成される。
図3(g)に示すように、必要に応じて、凹部を平坦化層36で埋め込む。図3(h)に示すように、平坦化層36をエッチバックして表面を平坦化する。図3(i)に示すように、CVD(化学気相堆積法)によりカーボン(C)からなる表面保護膜37を形成する。その後、表面保護膜37上に潤滑剤を塗布することにより本発明に係るパターンド媒体を得る。
図4(a)〜(d)(図3(e)、(f)に相当する)を参照して、上述した本発明の一実施形態に係るパターンド媒体の製造方法において、Co濃度の低い非磁性層35を形成する工程をより詳細に説明する。
図4(a)は、レジストパターン(SOG)を耐エッチングマスクとして、非磁性層を形成する部分で強磁性記録層32を加工する工程である。強磁性記録層32の加工には、上述したようにArイオンミリングを用いるのが好適である。
強磁性記録層32の加工深さは、強磁性記録層32の厚さよりも浅くする。図3(e)では、保護膜33と強磁性記録層32の一部を連続的に加工しているが、ここでの加工深さは強磁性記録層32のみの加工深さをいう。強磁性記録層32の加工深さが大きすぎると、表面の凹凸が増えてヘッドの浮上安定性が悪くなるので、必ずしも強磁性記録層32をエッチングする必要はない。本発明においては、強磁性記録層32の加工深さは10nm以下であることが好ましい。
また、次の工程でフッ素を用いて強磁性記録層32からCoを除去する際に、強磁性記録層32中のCoがフッ素と反応すればよいので、フッ素を透過するほど薄ければ、保護膜(DLC)33の一部が残っていてもよい。この場合、非磁性層を形成する部分で残っているDLCの厚みは2nm以下であることが望ましい。DLCの厚みが3nmを超えると、フッ素が透過しないため、強磁性記録層32中のCoとフッ素との反応が生じず、非磁性層を形成することができない。
保護膜33にはDLC以外の材料を用いてもよい。強磁性記録層32中のCoを除去するためにフッ素を用いる場合、フッ素と反応しないRu、Ni、Cr、Pt、Pd、Auなどの金属で保護膜33を形成してもよい。Ta、W、Moなどの金属はフッ素と反応するため、保護膜としては不適当である。
図4(b)において、強磁性記録層32中のCoをフッ素などの反応物と反応させる。この処理には、RIEによるフッ化処理、フッ酸によるウェット処理、フッ素とArとの混合ガスを用いたイオンミリングなどが含まれる。RIEの場合、CF4、SF6、CHF3などのフッ素含有ガスを用いることができる。フッ素含有ガスの反応性を向上させるために、O2やArを混合してもよい。フッ素以外の他のハロゲンを用いることもできる。この反応は、レジスト剥離の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。レジスト34がSOGなどのSi系である場合、図4(b)に示すようにフッ素含有ガスを用いてレジスト剥離およびCo−フッ素の反応を同時に行うことができる。
図4(c)に示すように、このときフッ素含有ガスが雰囲気中の水分と反応してフッ酸を生成し、これが強磁性記録層32中のCoと反応して、表面にCoFのような反応生成物38をリデポジションさせると考えられる。この反応生成物38の下部に、強磁性記録層32よりもCo濃度が低くなった非磁性層35が形成される。
図4(d)に示すように、反応生成物38を除去して、Co濃度が低くなった非磁性層35を露出させる。反応生成物38を除去するには、水洗が最も簡便な方法であるが、Arイオンミリングなどの物理的方法を用いてもよい。なお、フッ酸によるウェット処理を行う場合には、反応生成物であるフッ化物を同時に除去できるので、特に除去工程は必要ない。
本発明においては、非磁性層35を形成する部分で強磁性記録層32中に存在する全てのCoを反応させる必要はない。非磁性層35のCo濃度が、強磁性記録層32からなる磁性パターンのCo濃度の60%以下であればよく、50%以下があることがさらに望ましい。なお、非磁性層35のCo濃度は、表面側よりも下地側で高いという濃度分布をもっていてもよい。
このようにして形成された非磁性層35によって磁性パターン間の磁気的干渉が分断される。また、反応生成物を除去しているので、腐食を招くことはない。また、Co濃度が薄くなることにともなって、非磁性層35の表面に微細な孔が生じていることが予想され、このことは後に形成される表面保護層のDLCとの密着性を高めるのに役立つ。
図5に、透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)によって測定した、非磁性層の組成分布を示す。非磁性層の厚さは10nmで、表面側でCo濃度が著しく低くなっているが、下地側に向かうにつれてCo濃度が高くなっている。下地側や記録トラック側でCo濃度が高い場合、Co拡散が緩和され、組成変質が起こりにくい。この非磁性層は強磁性記録層と同じ構成元素を含むが、Co以外の他の構成元素の濃度については顕著な変動が認められない。
図6に、本発明の方法によって製造された媒体の断面TEM写真を示す。
次に、図7(a)〜(d)を参照して本発明の他の実施形態に係るパターンド媒体の製造方法を説明する。図7(a)〜(d)は、図3(d)〜(i)に対応するが、強磁性記録層32のエッチングを行わず、平坦化層の埋め込み及びエッチバックを行っていない点で異なっている。
図7(a)において、レジスト34の凹部の底に残っているレジスト残渣を除去する。図7(b)において、残ったレジストパターン(SOG)を耐エッチングマスクとして、保護膜33をエッチングして強磁性記録層32を露出させるが、強磁性記録層32はエッチングしない。図7(c)において、レジストパターン(SOG)を剥離するとともに、元の強磁性記録層32よりもCo濃度が低い非磁性層35を形成する。図7(d)において、CVDによりカーボン(C)からなる表面保護膜37を形成する。
次に、図8(a)〜(e)を参照して本発明のさらに他の実施形態に係るパターンド媒体の製造方法を説明する。図8(a)〜(e)は、図3(d)〜(i)に対応するが、レジスト39としてSOGの代わりにノボラック系フォトレジストを用いたことに伴って、工程が異なっている。
図8(a)において、ノボラック系のレジスト34の凹部の底に残っているレジスト残渣を除去する。図8(b)において、残ったレジストパターン(ノボラック系)を耐エッチングマスクとして、保護膜33をエッチングし、さらに強磁性記録層32の一部をエッチングする。図8(c)において、露出した強磁性記録層32の表面でCoとフッ素含有ガスと反応を起こし、反応生成物を除去することにより、Co濃度が低い非磁性層35を形成する。図8(d)において、酸素プラズマ処理を行うことによりレジストパターン(ノボラック系)とともに保護膜(DLC)を剥離する。図8(e)において、CVDによりカーボン(C)からなる表面保護膜37を形成する。
次に、本発明の実施形態において用いられる他の材料について説明する。
<基板>
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラス、結晶化ガラスが挙げられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面に、メッキやスパッタリングによりNiP層が形成されたものを用いることもできる。
なお、基板上への薄膜の形成方法はスパッタリングに限定されず、真空蒸着法や電解メッキ法などを用いても同様の効果を得ることができる。
<軟磁性下地層>
軟磁性下地層(SUL)は、垂直磁磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性下地層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性下地層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタリングにより製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上または基板との密着性の向上のために、さらに下地層を設けてもよい。こうした下地層の材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。軟磁性下地層と記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層は、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御する、という2つの作用を有する。中間層の材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。
スパイクノイズ防止のために軟磁性下地層を複数の層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させてもよい。また、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持つ硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピン層と軟磁性層とを交換結合させてもよい。交換結合力を制御するために、Ru層の上下に磁性膜(たとえばCo)または非磁性膜(たとえばPt)を積層してもよい。
<強磁性層>
垂直磁気記録層として用いられる強磁性層は、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
垂直磁気記録層の酸化物含有量は、Co、Cr、Ptの総量に対して、3mol%以上12mol%以下であることが好ましく、5mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。垂直磁気記録層の酸化物含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁気記録層を形成した際、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を分離させ、微細化させることができるためである。酸化物の含有量が上記範囲を超えた場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)が得られなくなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のCr含有量は、0at%以上16at%以下であることが好ましく、10at%以上14at%以下であることがより好ましい。Cr含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性、配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のPt含有量は、10at%以上25at%以下であることが好ましい。Pt含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁性層に必要なKuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるためである。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性に十分なKuが得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進し、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi、ならびにPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することもできる。
垂直磁気記録層の厚さは、好ましくは5ないし60nm、より好ましくは10ないし40nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置を作製することができる。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
<保護層>
保護層は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護層の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護層の厚さは1ないし10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護層として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
次に、本発明における、各工程の好適な条件について説明する。
<インプリント>
基板の表面にレジストをスピンコート法で塗布し、モールドを押し付けることにより、レジストにモールドのパターンを転写する。レジストとしては、たとえば一般的なノボラック系のフォトレジストや、スピンオングラス(SOG)を用いることができる。サーボ情報と記録トラックに対応する凹凸パターンが形成されたモールドの凹凸面を、基板のレジストに対向させる。このとき、ダイセットの下板にモールド、基板、バッファ層を積層し、ダイセットの上板で挟み、たとえば2000barで60秒間プレスする。インプリントによってレジストに形成されるパターンの凹凸高さはたとえば60〜70nmである。この状態で約60秒間保持することにより、排除すべきレジストを移動させる。また、モールドにフッ素系の剥離材を塗布することで、モールドをレジストから良好に剥離することができる。
<残渣除去>
RIE(反応性イオンエッチング)により、レジストの凹部の底に残存している残渣を除去する。このとき、レジストの材料に応じて適切なプロセスガスを用いる。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマを生成可能なICP(Inductively Coupled Plasma)が好適であるが、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマや、一般的な平行平板型RIE装置を用いてもよい。
<磁気記録層のエッチング>
残渣を除去した後、レジストパターンをエッチングマスクとして用い、磁気記録層を加工する。磁気記録層の加工には、Arイオンビームを用いたエッチング(Arイオンミリング)が好適であるが、Clガス、またはCOとNH3の混合ガスを用いたRIEでもよい。COとNH3の混合ガスを用いたRIEの場合、エッチングマスクにはTi、Ta、Wなどのハードマスクを用いる。RIEを用いた場合、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付着しにくい。いかなる材料でもエッチング可能なArイオンミリングで磁気記録層を加工する場合、たとえば加速電圧を400Vとし、イオン入射角度を30°、70°と変化させてエッチングを行うと、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付着しにくい。ECRイオンガンを用いたミリングにおいては、静止対向型(イオン入射角90°)でエッチングすると、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付着しにくい。
<レジスト剥離>
磁気記録層をエッチングした後、レジストを剥離する。レジストとして一般的なフォトレジストを用いた場合、酸素プラズマ処理を行うことによって容易に剥離することができる。具体的には、酸素アッシング装置を用い、たとえばチャンバー圧を1Torr、パワーを400Wとし、処理時間を5分としてフォトレジストを剥離する。レジストとしてSOGを用いた場合、フッ素系ガスを用いたRIEでSOGを剥離する。フッ素系ガスとしてはCF4やSF6が好適である。なお、フッ素系ガスが大気中の水と反応してHF、H2SO4などの酸が生じることがあるため、水洗を行う。
<平坦化層の梅込み>
必要に応じて、レジスト剥離後、磁性パターン間の凹部に平坦化層を埋め込む。平坦化層は、プロセスダストが生じにくい通常のスパッタ法で成膜することが好ましい。平坦化層としては、無機化合物、金属、金属酸化物、金属窒化物から選択される。具体的には、Si、SiC、SiC−C、SiOC、SiON、Si34、Al、Alxy、Ti、TiOx、Ru、Pd、NiNb、NiNbTi、NiTa、NiSi、Zr、ZrOx、W、Ta、Cr、CrN、CNなどから選択できる。バイアススパッタ法は、基板にバイアスをかけながらスパッタ成膜する方法で、容易に凹凸を埋め込みながら成膜できる。しかし、基板バイアスによる基板の溶解、スパッタダストが生じやすいので、通常のスパッタ法を用いるのが好適である。RFスパッタを用いることもできるが、膜厚に分布が生じやすいため、DCスパッタが好ましい。
<平坦化層のエッチバック>
磁性パターン上の保護膜または磁性パターンが露出するまでエッチバックを行う。このエッチバックプロセスは、たとえばArイオンミリングを用いて行うことができる。SiO2などのシリコン系の非磁性体を用いた場合には、フッ素系ガスを用いたRIEによりエッチバックを行ってもよい。また、ECRイオンガンを用いて非磁性体をエッチバックしてもよい。エッチバックのガスにO2を混合すると、表面を改質しながらエッチバックを行うことができる。O2分圧が1%以下では改質が進まず、70%以上ではカーボン保護膜の表面が荒れるので好ましくない。
<保護層形成および後処理>
エッチバック後、カーボン保護層を形成する。カーボン保護層は、CVD法、スパッタ法、または真空蒸着法により成膜することができる。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。保護層の膜厚は、2nm未満だとカバレッジが悪くなり、10nmを超えると磁気ヘッドと媒体との磁気スペーシングが大きくなってSNRが低下するので好ましくない。保護層上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
図9に本発明の実施形態に係る磁気記録装置(ハードディスクドライブ)の斜視図を示す。この磁気記録装置は、筐体70の内部に、上記の磁気記録媒体(パターンド媒体)71と、磁気記録媒体71を回転させるスピンドルモータ72と、磁気ヘッドを組み込んだヘッドスライダ76と、ヘッドスライダ76を支持する、サスペンション75およびアクチュエータアーム74を含むヘッドサスペンションアッセンブリと、ヘッドサスペンションアッセンブリのアクチュエータとしてのボイスコイルモータ(VCM)77とを備えている。
磁気記録媒体71はスピンドルモータ72によって回転される。ヘッドスライダ76にはライトヘッドとリードヘッドを含む磁気ヘッドが組み込まれている。アクチュエータアーム74はピボット73に回動自在に取り付けられている。アクチュエータアーム74の一端にサスペンション75が取り付けられる。ヘッドスライダ76はサスペンション75に設けられたジンバルを介して弾性支持されている。アクチュエータアーム74の他端にはボイスコイルモータ(VCM)77が設けられている。ボイスコイルモータ(VCM)77はアクチュエータアーム74にピボット73周りの回転トルクを発生させ、磁気ヘッドを磁気記録媒体71の任意の半径位置上に浮上した状態で位置決めする。
実施例1
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図3に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて40秒エッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが10nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は70secとした。原子間力顕微鏡(AFM)で表面形状を調べたところ、SOGレジストが剥離され、深さ10nmの凹部が形成されていることを確認できた。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
このDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、良好な浮上性が得られた。この媒体をドライブに組み込み、フリンジ評価を行った。作製した媒体の記録密度は244kTPI、ビットピッチ1260kBPI、評価に用いたヘッドはリード幅80nm、ライト幅116nmである。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−4.5乗であった。この結果から、DTR媒体として隣接記録耐性があることを確認できた。
比較例1
実施例1と同一なスタンパを用いて、Co除去工程を行わなかった以外は実施例1と同様な方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて40secエッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが10nmになるように加工した。フッ素処理は行わず、代わりにイソプロピルアルコールへの浸漬によりSOGを剥離した。AFMで表面形状を調べたところ、SOGレジストが剥離され、深さ10nmの凹部が形成されていることを確認できた。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
このDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、ヘッドの媒体への接触が起こった。接触後の媒体を調べると、溝部のDLCにコロージョンが発生していることがわかった。この媒体をドライブに組み込み、実施例1と同様にフリンジ評価を行った。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−3.6乗であった。この結果から、磁性パターン間の溝部でCo除去工程を行っていない媒体では隣接記録耐性が低いことを確認できた。
以上のように、実施例1の媒体は、Co除去を行っていない比較例1の媒体よりも隣接記録耐性があった。また、実施例1の媒体は、コロージョンが発生しにくく、腐食耐性が強かった。
実施例2
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図7に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて15秒エッチングし、DLC保護膜33のみの厚さに対応して凹部の深さが5nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は120secとした。AFMで表面形状を調べたところ、SOGレジストが剥離され、深さ10nmの凹部が形成されていることを確認できた。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
このDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、非常に良好な浮上性が得られた。この媒体をドライブに組み込み、実施例1と同様にフリンジ評価を行った。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−4.5乗であった。
比較例2
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、エッチング時に厚いDLCを残した以外は実施例2と同様な方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて3秒エッチングし、DLC保護膜33を4nm残して凹部の深さが1nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は200secとした。AFMで表面形状を調べたところ、SOGレジストが剥離され、深さ1nmの凹部が形成されていることを確認できた。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
このDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、非常に良好な浮上性が得られた。この媒体をドライブに組み込み、実施例1と同様にフリンジ評価を行った。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。しかし、隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−3.1乗であった。これは、DLC保護膜33の加工深さが浅すぎたため、フッ素処理によって非記録層が十分に形成されず、ディスクリートトラック媒体としての効果が得られなかったためであると思われる。
以上のように、DLC保護膜33のみをエッチングする場合、残ったDLCの厚さによってフッ素処理の効果に差が生じることがわかった。
非晶質層を形成すべき部分に残すDLCの厚さを変えてサーボ動作が可能かどうかを調べた。その結果を表1に示す。表1から、非晶質層を形成すべき部分に残すDLC厚さが2nm以下であればよいことがわかる。
Figure 0004852179
実施例3
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図3に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて40秒、34秒、または30秒エッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが10nm、7nm、または5nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は70secとした。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
それぞれの媒体についてグライド試験を行ったところ、いずれも良好な浮上性が得られた。
比較例3
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図3に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて44、または50秒エッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが12nm、または15nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は70secとした。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
それぞれの媒体についてグライド試験を行ったところ、いずれもヘッドが媒体に衝突し、グライド試験にパスすることはできなかった。
実施例3および比較例3に示されるように、強磁性記録層32の凹部の深さが10nm以下の媒体ではヘッド浮上性が良好であったが、強磁性記録層32の凹部の深さが10nmよりも大きい媒体ではグライド試験にパスすることはできなかった。したがって、強磁性記録層32からなる磁性パターンの厚さをTm(nm)、非磁性層35の厚さをTn(nm)としたとき、Tm≧Tn≧Tm−10nmであることが好ましい。
実施例4
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図3に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の組成はCo:60%、Cr:9%、Pt:23%、SiO2:8%であり、厚さは15nmとした。DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて40秒エッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが10nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は70secとした。原子間力顕微鏡(AFM)で表面形状を調べたところ、SOGレジストが剥離され、深さ10nmの凹部が形成されていることを確認できた。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
この媒体をドライブに組み込み、実施例1と同様にフリンジ評価を行った。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−4.5乗であった。
別途、作製した試料について、TEM−EDXにより、フッ素処理後の磁性パターンと非磁性層とでCo濃度を調べた。その結果、非記録層のCo原子数(カウント)は磁性パターンの17%であった。
比較例4
フッ素処理を十分に行わなかった以外は実施例4と同様な方法でDTR媒体を作製した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は70secとしたが、処理時間は20secと短くした。
この媒体をドライブに組み込み、実施例1と同様にフリンジ評価を行った。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−3.6乗であった。
別途、作製した試料について、TEM−EDXにより、フッ素処理後の磁性パターンと非磁性層とでCo濃度を調べた。その結果、非記録層のCo原子数(カウント)は磁性パターンの70%であった。
実施例4および比較例4の結果から、非記録層のCo濃度が高い媒体では、非記録層のCo濃度が低い媒体よりもBERが悪くなることがわかる。これは、非記録層のCo濃度が高い場合、非記録層に磁性が残り、再生時のノイズ発生源になるためであると考えられる。
実施例5
実施例1と同様の方法で、DTR媒体を作製した。フッ素処理後の非磁性層について深さ方向のCo濃度分布を測定した。その結果、非磁性層のCo濃度は平均で20%であったが、最表面では5%であった。
表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。この媒体について腐食試験を行ったところ、コロージョンの発生は認められなかった。
比較例5
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、従来の方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて5nmのDLC保護膜33および15nmの強磁性記録層32を全てエッチングして、深さ20nmの凹部を形成した。SOGレジストを剥離した。スパッタリングにより凹部にCoCrPt−SiO2(Co:10%、Cr:59%、Pt:23%、SiO2:8%)からなる厚さ50nmの平坦化層を埋め込んだ。ECRイオンガンを使用して30nmのエッチバックを行った。平坦化層の埋め込みおよびエッチバックを10回繰り返し、最後のエッチバックで磁性パターンの表面を出した。この平坦化層のCo濃度は磁性パターンの約17%であり、実施例4および5の非磁性層と同等であった。媒体の記録トラック領域の凹凸はおよそ10nmであった。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
この媒体について腐食試験を行ったところ、平坦化層の部分にコロージョンが発生した。
実施例5および比較例5の結果から、非磁性層にCo濃度分布のある媒体よりも、Co濃度分布がない媒体のほうが腐食に弱いことがわかる。これは、表面のCo濃度が低い媒体の方が、Coの反応量が少なくなるためである。
実施例6
実施例1と同様に、図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図3に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いてエッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが10nmになるように加工した。フッ素処理を行い、SOGレジストを剥離し、深さ10nmの凹部を形成した。スパッタリングにより凹部にNiNbTiからなる厚さ50nmの平坦化層を埋め込んだ。ECRイオンガンを使用して50nmのエッチバックを行った。平坦化層の埋め込みおよびエッチバックを5回繰り返した。トラック領域の表面のRaを測定すると、1.5nmであった。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。このDTR媒体について浮上試験を行った。その結果、良好な浮上性が得られた。
比較例6
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、従来の方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはSOGを使用した。ECRイオンガンを用いて5nmのDLC保護膜33および15nmの強磁性記録層32を全てエッチングして、深さ20nmの凹部を形成した。SOGレジストを剥離した。スパッタリングにより凹部にNiNbTiからなる厚さ50nmの平坦化層を埋め込んだ。ECRイオンガンを使用して50nmのエッチバックを行った。平坦化層の埋め込みおよびエッチバックを5回繰り返した。トラック領域の表面のRaを測定すると、8.3nmであった。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。このDTR媒体について浮上試験を行った。その結果、媒体のサーボ領域上で、ヘッドの浮上量が約10nm低下することが観測された。
実施例6および比較例6から、強磁性記録層を完全にエッチングした作製された凹部の深さが深い媒体と比べ、凹部の深さが浅い媒体では同じ厚さの平坦化層を用いても表面の凹凸を低くできることがわかる。したがって、凹部の深さが浅い媒体はタクト時間が短く、プロセス上有利である。
実施例7
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト、トラック)が凹凸パターンとして形成されたスタンパを用い、図8に示した方法でDTR媒体を作製した。強磁性記録層32の厚さは15nm、DLC保護膜33の厚さは5nmとした。レジスト34にはノボラック系フォトレジストS1801を使用した。インプリント後に、酸素RIEによってレジストパターンの凹部の底に残っているレジスト残渣を除去した。ECRイオンガンを用いて40秒エッチングし、DLC保護膜33を除去し、さらに強磁性記録層32の凹部の深さが10nmになるように加工した。CF4とO2の混合ガスを用いてフッ素処理を行った。ガス流量はそれぞれ40sccmと5sccm、処理時間は70secとした。O2アッシングによって残ったフォトレジストおよびDLC保護膜を除去した。原子間力顕微鏡(AFM)で表面形状を調べたところ、フォトレジストおよびDLCが剥離され、深さ10nmの凹部が形成されていることを確認できた。表面保護膜37としてDLCを成膜し、潤滑剤を塗付してDTR媒体を作製した。
このDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、非常に良好な浮上性が得られた。この媒体をドライブに組み込み、実施例1と同様にフリンジ評価を行った。隣接トラックへの記録前のエラー率は10の−6乗であった。隣接トラックに1000回記録を行った後のエラー率は10の−4.3乗であった。このように、フォトレジストを用いた場合にも、隣接記録耐性があるDTR媒体が得られることを確認できた。
以上のように本発明によれば、Co除去処理を行うことによって、強磁性記録層を完全にエッチングする必要がなく、フリンジ特性および浮上性の良好なパターンド媒体を製造できる。
10…サーボ領域、11…プリアンブル部、12…アドレス部、13…バースト部、20…データ領域、21…記録トラック、22…磁性ドット、31…ガラス基板、32…強磁性記録層、33…保護膜、34…レジスト、35…非磁性層、36…平坦化層、37…保護層、38…反応生成物、39…レジスト、50…スタンパ、70…筐体、71…磁気記録媒体、72…スピンドルモータ、73…ピボット、74…アクチュエータアーム、75…サスペンション、76…ヘッドスライダ、77…ボイスコイルモータ。

Claims (2)

  1. Coを含有する強磁性記録層からなる磁性パターンと、
    前記磁性パターン間を分断する非磁性層と
    を具備し、
    前記非磁性層は前記磁性パターンと同じ構成元素からなり、前記非磁性層のCo濃度は前記磁性パターンのCo濃度の60%以下であり、前記非磁性層のCo濃度は表面側よりも下地側で高い
    ことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 基板上にCoを含有する強磁性記録層を成膜し、
    前記強磁性記録層の一部を選択的にエッチングし、その部分の前記強磁性記録層をCF4を含むガスと反応させ、Coを含有する反応生成物を除去して前記強磁性記録層の一部から選択的にCoを除去することによって、前記強磁性記録層からなる磁性パターンと、前記磁性パターン間を分断する非磁性層とを形成し、
    前記非磁性層のCo濃度は前記磁性パターンのCo濃度の60%以下であり、前記非磁性層のCo濃度は表面側よりも下地側で高い
    ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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