JP4851999B2 - 反応性スパッタリングの制御方法及び成膜方法 - Google Patents

反応性スパッタリングの制御方法及び成膜方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に反応性スパッタリングの遷移状態での光学膜等の成膜に好適である反応性スパッタリングの制御方法及び成膜方法に関する。
周知の通り、反応性スパッタリングは、反応性ガス導入下で金属ターゲットなどをスパッタし、所要の化合物薄膜を得るために用いられている。例えば、光学薄膜を得るために、酸素ガス導入下で各種金属ターゲットをスパッタし、酸化物薄膜を成膜することが行なわれている。しかし、反応性スパッタリングには、成膜速度や膜質の異なるいくつかの状態が存在する。一般的には、金属状態、遷移状態、化合物状態と呼ばれる三態で、反応性ガス導入量と成膜速度の関係は、例えば図14に示すような逆S字曲線となる。
そして三態について略記すると、
[化合物状態]は、使用するターゲット表面全体を化合物化させるのに十分な量の反応性ガスがチャンバ内に存在し、ターゲット表面が化合物化されている状態である。そのため、成膜速度は非常に低いが、非常に安定な成膜の可能な状態であり、状態としては非常に安定で、成膜物は十分に化合物化されている。
[金属状態]は、使用するターゲット表面を化合物化するには不十分な量の反応性ガスしかチャンバ内に存在しない状態である。そのため、成膜速度は非常に高く、状態としても非常に安定であるが、成膜物はほとんど未化合の状態で、金属的な膜が得られる。
[遷移状態]は、使用するターゲット表面が部分的に化合物化される程度の量の反応性ガスがチャンバ内に存在している状態である。そのため、成膜速度は比較的高くなる。ただし、ターゲット表面が部分的に化合物化されているため、化合物状態と金属状態との中間的な、非常に不安定な状態である。そのため、成膜速度は比較的高く、十分に化合物化された膜質から、不十分に化合物化された膜質まで、条件によって得ることが出来るが、状態としては非常に不安定である状態といえる。
なお、こうした三態の特徴としては、遷移状態が非常に不安定であるため、チャンバ内の反応性ガス導入量を連続的に変動させると、図14における逆S字曲線の屈曲点の部分から遷移状態に移行できずに、同図中の矢印方向に、化合物状態から金属状態へ、あるいは金属状態から化合物状態へのどちらかに瞬時に移ってしまい、結果として、反応性スパッタリングにおけるヒステリシスが構成される。これらの現象に関しては、Berg等がモデルを用いた詳細な考察を行っている(S.Berg,H−O.Blom,T.Larsson,and C.Nender:J.Vac,Sci.Technol.A,5,(1987),202.)他、小林春洋著(スパッタ薄膜(日刊工業新聞社)等の文献で説明されている。
反応性スパッタリングにおける遷移状態は上記のように不安定なものであるため、工業的に安定的に使用する場合には化合物状態において成膜を行い、所望の化合物膜を得ることが一般的となっている。しかし、非常に不安定な状態ではあるが、膜質と成膜速度の点で有利であることから遷移状態を利用することが、工業的にもいくつか行なわれている。例えば、Plasma Emission Monitoring、あるいはOptical Emission Monitoring等と呼ばれる、スパッタリング装置内におけるプラズマ中の特定波長の光の光強度を一定とするよう反応性ガスの導入量を調整することにより遷移状態を制御する方法が特許文献1及び特許文献2に開示されている。
そして、反応性スパッタリングにおける遷移状態制御を、上記のPlasma Emission Monitoringで行うものとして、スパッタにおけるプラズマ発光中の特定波長の光強度をパラメータとして電源電流を第1の制御ループで制御し、さらに電源の平均電力をパラメータとして反応性ガスの導入量を第2の制御ループで制御し、遷移状態の特定位置に状態を固定する方法が特許文献3に開示されている。こうした各制御ループでの制御に、比例積分微分制御(PID制御)が用いられる。
PID制御は、目標値と測定値との偏差に、比例、積分、微分の演算処理を行って制御する手法で、偏差を修正し、偏差をなくし続け、制御が利きすぎた場合にはそれを抑制する制御を行うもので、工業的に広く用いられている。そして、比例、積分、微分の各成分は、
[比例成分]が、目標値と測定値との偏差に比例した出力を出力する成分で、偏差を修正しようとする働きをし、比例ゲインが、この比例成分の大きさをきめる係数として使用される。偏差が大きいほど、また比例ゲインが大きいほど出力は大きくなる。
[積分成分]が、目標値と測定値との偏差を時間で積分し、算出した積分値に比例した出力動作を行う成分で、偏差を最終的に無くそうとする働きをする。ここで、積分成分による出力が偏差と等しくなる時間が積分時間であり、積分時間の設定で積分成分の大きさを決めることができる。この場合、積分時間が短いほど出力は大きくなる。
[微分成分]が、目標値と測定値との偏差の時間的な変化率に比例した出力動作を行う成分で、比例成分、積分成分による制御が強すぎた場合にブレーキをかける働きをする。変化率一定の場合に、微分成分による出力が偏差と等しくなる時間が微分時間であり、微分時間の大きさで微分成分の大きさをきめることができる。この場合、微分時間が大きいほど出力は大きくなる。
なお、この微分成分は、制御の安定動作を行うのに重要な成分であるが、ノイズが大きく、変動の速い制御系では逆効果とされ、例えば流量制御、圧力制御などでは微分成分を使用しない場合もあり、こうした場合も、通常PID制御として扱う。
PID制御を用い、反応性スパッタリングにおける遷移状態制御を行う場合について以下で説明する。遷移状態の制御は、プラズマ中の特定波長の光強度を一定とするように反応性ガスの導入量を調整することになるため、目標値とはプラズマ発光強度であり、測定値とは測定時点でのプラズマ発光強度であり、これら目標値と測定値とが最終的に一致するように演算処理されたPID出力値が、反応性ガス導入量の値となる。
しかし、図14に示すように、反応性スパッタリングには、反応性ガス導入量と成膜速度の関係にヒステリシスがあり、PID制御によって出力された結果としての反応性ガス導入の効果が、その時々の反応性状態によって大きく異なる。例えば、化合物状態から反応性ガスの導入量を減少させていくと、徐々に成膜速度は増加していく。
そして、図14における逆S字曲線の下側の屈曲点以下に反応性ガスの導入量を減少させると、ヒステリシス性によって一気に金属状態に移行しようとする。そのため、金属状態ではなく遷移状態に移行させようとするならば、逆に反応性ガスの導入量を増加させなければならない。しかし、単に遷移状態で反応性ガスの導入量を増加させた場合には成膜速度が低下し、遷移状態では反応性ガスの導入量の増加により成膜速度が増加するということに一致しなくなる。この不一致は、遷移状態においては、状態を安定させるために導入する反応性ガスの増減方向と、実際に状態を変動させるために導入する反応性のガスの増減方向とが異なるために生じるものと考えられる。
また、遷移状態における成膜速度の増減は、対応関係にあるプラズマ発光強度の強度の増減と1対1で対応するものであり、単一のPID制御では、プラズマ発光強度を反応性ガスの導入量単独で制御することは、反応性スパッタリングの特性を考えると非常に難しく、遷移状態の不安定さによっては、制御不可能となる。
特開昭64−264号公報 特開2006−124811号公報 特開2000−26967号公報
上記のように反応性スパッタリングを、通常のPID制御手法を用いて制御しようとした場合、非常に不安定になりやすく、反応性スパッタリングを遷移状態で維持することが難しい。このような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、制御応答性の異なる化合物状態、遷移状態、金属状態の全てを、状態間のつなぎ目なく連続的に、かつ安定的に制御できる反応性スパッタリングの制御方法と、化合物膜形成に際し、破綻することなく安定して遷移状態での高成膜速度での成膜が行える反応性スパッタリングによる成膜方法を提供することにある。
本発明の反応性スパッタリングの制御方法は、スパッタ状態の変化に対応して変わる特定波長のプラズマ発光強度を検知し、検知した前記プラズマ発光強度が所定値となるよう反応性ガス導入量を制御することにより、所定の反応性スパッタリング状態にする反応性スパッタリングの制御方法であって、前記特定波長のプラズマ発光強度が目標値に一致するように前記反応性ガス導入量を制御する第1PID制御と、前記第1PID制御によって算出された反応性ガス導入量により変動するプラズマ発光強度の予測量と、実際に生じたプラズマ発光強度の変動量との偏差を小さくするために、前記反応性ガス導入量を制御する第2PID制御とを備え時間t=n、制御間隔ΔT=T −T n−1 として、 前記第1PID制御から、前記特定波長のプラズマ発光強度が目標値に一致するように予め設定したプラズマ発光強度の光強度目標値(SetPE )と、時間nにおける実行されている反応性スパッタリングでのプラズマ発光光量値(PE )とが入力され、光強度目標値(SetPE )とプラズマ発光光量値(PE )の偏差に基づいて第1PID出力変化量(ΔM )が出力され、前記第2PID制御から、前記第1PID制御によって算出された反応性ガス導入量により変動するプラズマ発光強度の予測量と、実際に生じたプラズマ発光強度の変動量との偏差を小さくするために、第1PID制御の出力した第1PID出力変化量(ΔM n−1 )と線形関係にあるプラズマ発光強度の変動量と、時間nにおけるプラズマ発光光量値(PE )と時間n−1におけるプラズマ発光光量値(PE n−1 )との差分(PE −PE n−1 )が入力され、第1PID出力変化量(ΔM n−1 )と線形関係にあるプラズマ発光強度の変動量と、プラズマ発光光量値(PE )とプラズマ発光光量値(PE n−1 )との差分(PE −PE n−1 )の偏差に基づいて第2PID出力変化量(ΔM n′ )が出力され、前記第1PID制御のPID制御出力値の第1PID出力変化量(ΔM と前記第2PID制御のPID制御出力値の第2PID出力変化量(ΔM n′ を合計した制御出力値(ΔM +ΔM n′ が実際に反応性ガス導入量を制御するのに使用されることを特徴とする方法である。
また、本発明の反応性スパッタリングによる成膜方法は、上記の反応性スパッタリングの制御方法を用い、少なくとも1つ以上のターゲットを配置したチャンバ内で、成膜基体上に前記ターゲット材料の化合物膜を形成することを特徴とする方法である。
本発明によれば、反応性スパッタリングの制御応答性の異なる化合物状態、遷移状態、金属状態の全てを連続的に、かつ安定的に制御することができ、また、化合物膜形成に際しては、破綻することなく安定して遷移状態での高成膜速度での成膜を行うことができる等の効果を奏する。
以下本発明の一実施形態を、図1及び図2を参照して説明する。図1は反応性スパッタリング装置の概略を示す構成図であり、図2は反応性スパッタリング装置の制御システムを示すブロック図である。
図1及び図2において、反応性スパッタリング装置1は、図示しないプラズマ発生機構、不活性ガス供給機構、減圧機構を備え、不活性ガスが供給され、内部が所定圧力に減圧保持されたチャンバ2内のプラズマ形成領域に、プラズマ3を形成するよう構成されている。またチャンバ2内には、ターゲット4が設けられていると共に、反応性ガス供給機構5のガス供給口6がプラズマ形成領域近傍に開口し、ターゲット4近傍に反応性ガスを供給するように設けられており、さらに、ターゲット4に対し、プラズマ形成領域を挟み成膜面を対向させて成膜基体7が配置できるようになっており、図示しないが必要に応じ成膜基体7の成膜面前方にシャッタ等が開閉可能に設けられ、単層膜の形成開始や終了、あるいは多層膜を形成する際の形成開始や終了、膜の種類の切換え時に使用するようになっている。
また、反応性スパッタリング装置1は、プラズマ光の成膜速度と対応関係にある特定波長の光強度を監視、測定し、発光強度が設定した一定値となるように反応性ガスの導入量を調節して反応性スパッタリングを、化合物状態、遷移状態、あるいは金属状態の何れかの状態、例えば遷移状態における一状態を略維持する制御を行う制御部8を備えている。そのため制御部8には、プラズマ3の特定波長光の発光強度を電気信号に変換する光電子増倍管(フォトマル:PMT)9と、PMT9の出力した電気信号を積分し適正な形に平均化する光量積分器10とが備えられている。そしてPMT9には、プラズマ3に向けてチャンバ2内に片端を挿入した光ファイバ11の他端が接続され、光ファイバ11が捉え導光したプラズマ光が、バンドパスフィルタ(BPF)12を通すことでその所定波長のみが選択されて、入力するようになっている。
さらに、制御部8は、光量積分器10からのデータに基づき演算処理を行う、例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)等で構成された演算処理部13を備えており、演算処理部13での演算処理結果は反応性ガス供給機構5のマスフローコントローラ14にガス流量の制御信号として出力される。そして、マスフローコントローラ14によりチャンバ2内への反応性ガスの導入量が、制御信号に基づき適正量に制御されるようになっている。
また、制御部8に設けられた演算処理部13の制御システムは、図2に示すように構成されている。すなわち、PID制御アルゴリズムに基づいてそれぞれプログラムされている第1PID制御15と、第2PID制御16とを備え、要する制御内容に応じて制御パラメータを、0を含む所定値に設定し、所定の制御間隔(ΔT)での制御が行なわれるようになっている。そして、第1PID制御15では、チャンバ2内で実行される反応性スパッタリングのプラズマ発光強度が目標値となる所定状態を維持するよう状態に対応し設定した光強度目標値(SetPE)と、時間tにおける実行されている反応性スパッタリングでのプラズマ発光光量値(PE)とが入力され、光強度目標値(SetPE)とプラズマ発光光量値(PE)の偏差に基づいて第1PID出力変化量(ΔM)が出力される。また、第2PID制御16では、第1PID制御15の出力した第1PID出力変化量(ΔM)と、時間tにおけるプラズマ発光光量値(PE)とが入力され、制御間隔(ΔT)での第2PID出力変化量(ΔMt′)が出力される。そして、各PID制御15,16からの出力の第1PID出力変化量(ΔM)と第2PID出力変化量(ΔMt′)は、その合計した量がマスフローコントローラ14の反応性ガス流量制御17に入力され、反応性ガスの流量の制御が行なわれる。
また、こうした第1PID制御15、第2PID制御16での演算処理の説明を、
時間:t=n、制御間隔:ΔT=T−Tn−1とし、
PID制御の出力を算出する関数をfPIDとして行うと、
第1PID制御15では、
測定値 :X=PE
目標値 :Y=SetPE
偏差 :E=Y−X から演算処理され、
制御出力量が、ΔM=fPID(ΔT) として出力される。
また、第2PID制御16では、
測定値 :Xn′=PE−PEn−1
目標値 :Yn′=β×ΔMn−1
偏差 :En′=Yn′−Xn′ から演算処理され、
制御出力量が、ΔMn′=fPID(ΔT) として出力される。なお、第2PID制御16の設定値に用いられるβは、第2PID制御における目標値の重み付けのための定数であり、基本的には「1」を用いるが、制御環境等によって適宜調整される。
そして、第1PID制御15と第2PID制御16の制御出力量(ΔM),(ΔMn′)の合計(ΔM+ΔMn′)が、最終制御量として反応性ガス流量制御17に入力され、所定の反応性スパッタリングの状態がチャンバ2内で維持されるようマスフローコントローラ14を通流する反応性ガスの流量が、適正値に制御される。
以上の通り構成することで、不活性ガスが供給され、減圧されたチャンバ2内に形成する膜の種類、単層膜にするのか、多層膜にするのかに応じ、1種類あるいは多種類のターゲット4と成膜基体7を配置し、プラズマを発生させ、反応性ガスを供給することにより、成膜基体7成膜面に、使用したターゲット4に応じた薄膜の形成が開始される。
化合物膜の形成に際し、反応性スパッタリングの化合物状態、遷移状態、金属状態の何れかの状態での所望の成膜速度に対応した一状態を略維持するため、プラズマ3の所定の光強度を制御部8に設定する。
制御部8の第1PID制御15では、設定された所定のプラズマ発光強度と、制御時点毎の実測プラズマ発光強度との偏差を小さくするようにマスフローコントローラ14を通流する反応性ガスの流量を制御し、チャンバ2内への反応性ガス導入量を増減させる。このとき、第1PID制御15の制御出力量(ΔM)とその制御で引き起こされるプラズマ発光強度の変動量との間には相関があり、ここでは線形関係があると考えることができる。詳しく説明すると、PID制御は、制御する各点において、制御対象(第1PID制御15においてはプラズマ発光強度)を、制御に関わる演算によって決められた分だけ変動させるための制御出力量(第1PID制御15においては反応性ガス導入量)を決定するものであり、この制御の繰り返しによって、制御対象を所定値に近づけようとするものである。
したがって、PID制御における制御出力量は、その制御時点において、制御対象をある一定の変動量分だけ動かすことが、その制御処理において予測される。ここで、その制御出力量とそれによって引き起こされる制御対象の変動量との間には一定の相関がなければならないことは明らかであり、これはPID制御における制御の考え方に基づくものである。このようにして、第1PID制御15の制御によって引き起こされるであろうプラズマ発光強度の予測量を考えることができる。
そして、第2PID制御16では、第1PID制御15によって算出された反応性ガス導入量により変動するプラズマ発光強度の予測値を目標値とし、実際に生じたプラズマ発光強度変動量を制御時点での測定値とすることで、これら設定値と測定値との偏差を小さくするように、すなわち、第1PID制御15の制御によって予測されるプラズマ発光強度変動量と、実際に生じたプラズマ発光強度変動量との偏差を小さくするように反応性ガス導入量を制御する制御出力量(ΔMn′)を出力する。
これら第1PID制御15の制御出力量(ΔM)と第2PID制御16の制御出力量(ΔMn′)との合計(ΔM+ΔMn′)が、反応性ガス流量制御17にて算出され、実際にチャンバ2内へ導入する反応性ガス導入量を制御するのに使用される。
さらに説明を加えれば、反応性ガスの増加は成膜速度を下げ、反応ガスの減少は成膜速度を上げるものとする。これは、化合物状態、遷移状態、金属状態の何れの状態でも成り立つことが、第1PID制御15、第2PID制御16の出力値における考え方になっている。しかし、遷移状態おいては、図14の逆S字曲線を見れば分かるように、状態として安定となるのは、成膜速度を上げる方向では反応性ガス導入量を増加させ、成膜速度を下げる方向では反応性ガス導入量を減少させる曲線上のみである。つまり、第1PID制御15、第2PID制御16の出力値における前提と反する。したがって、遷移状態では、成膜速度を上げる方向で制御しようとすると、必ず極端に成膜速度が上がりすぎる方向に、かつ急峻にプラズマ発光強度が変化してしまうことになる。このとき、第1PID制御15自体は測定値を目標値に近づけようとして働く通常のPID制御であるため、こうした遷移状態特有の現象が起こると、それは第1PID制御15が期待した制御変化と実際の変化の差異が大きくなることとなり、この偏差を小さくしようと第2PID制御16が大きく動作する。
つまり、第1PID制御15のみが最終的な制御目標である目標値を把握しており、第2PID制御16は、全体の制御が適正に行われていれば出力が小さくなり、そうでなければ其れを修正する方向に出力を発生するという働きをする。この第1PID制御15の応答から状態を判別し、第2PID制御16が、PID制御のP成分、I成分、D成分全てを使用して状態を適正化する方向に制御しようと動作する。これが本発明の最も特徴的なところである。
なお、上記説明は、遷移状態において成膜速度を下げる方向に制御する場合であっても同様であり、また化合物状態や金属状態などを制御する場合でも当然ではあるが、同様に動作する。また第1PID制御15の応答が極端に緩慢である場合には、それに対応する形で第2PID制御16が大きくなり、第1PID制御15と同方向に制御を加速させることになる。しかも遷移状態に入って制御応答が極端に大きくなれば、その程度に正しく対応する形で第2PID制御16が自動的に調整されるため、化合物状態、遷移状態、金属状態の全域にわたり、反応性スパッタリングに適した形の制御を連続的に行い続けることが可能となる。
また、反応性スパッタリングに適合するために非常に大きな働きを行うのが第2PID制御16であるから、仮にそれぞれのPID制御出力を算出するにあたって、第1PID制御における目標値と第2PID制御における目標値とが同一であり、かつ、PID制御開始後の第1PID制御における測定値と第2PID制御における測定値とが同一である場合には、第1PID制御15の制御出力量(ΔM=fPID(ΔT))の絶対値より、第2PID制御16の制御出力量(ΔMn′=fPID(ΔT))の絶対値がおおきくなるように第1PID制御及び第2PID制御のPID制御パラメータを設定することが、制御性が向上し、望ましい。また、PID制御パラメータとは、PID制御の比例成分、積分成分、微分成分の各係数(比例ゲイン、積分時間、微分時間)やPID制御に特有の係数(微分ゲイン、遅延時間など)であり、PID制御の制御動作を決定するPID制御に一般的な設定条件である。
上記の制御では、第1PID制御15、第2PID制御16を、制御間隔をΔTとした場合の出力の変化分だけを見る速度型PID制御アルゴリズムとしたので、必要とする変数を上記とし、制御出力量(ΔM),(ΔMn′)を算出する関数を、fPID(ΔT)と同一のものとしたが、第1PID制御15、第2PID制御16を他の種類のPID制御アルゴリズムを選択した場合には、必要とする変数、算出式は上記とは異なったものとなる。例えば、他の好適するものとしては、特に目標値変更によるキックバックが小さく、実制御においては望ましい、比例先行型PID制御アルゴリズムがあり、
その関数は、fPID(ΔT,X,Xn−1,Xn−2,E) となり、
他には、不完全微分を適用した比例先行型PID制御アルゴリズムがあり、
その関数は、fPID(ΔT,X,Xn−1,Xn−2,E,ΔMn−1) となる。
反応性スパッタリングの状態を監視し、測定するプラズマ発光としては、発光強度がターゲット4に使用された原子種の原子発光のように、成膜速度と対応し、増減の方向も同じであるものと、反応性ガス種の原子発光のように、成膜速度と対応し、増減の方向は逆方向であるものとの2種類が存在するが、どちらを用いてもよい。
そして、上記のような構成とすることで、反応性スパッタリングの特性に非常にあった形で制御を行うことになるため、制御応答性の全く異なる化合物状態、遷移状態、金属状態の全てを、状態間のつなぎ目なく連続的に制御することが可能であり、特に遷移状態では、通常のPID制御におけるよりも、より合理的な制御を行うことができ、破綻し難く、システムとして堅牢な制御となる。その結果、反応性スパッタリングの制御性が格段に向上したものとなり、安定した制御、特に遷移状態での安定した制御が実現できる。
反応性スパッタリングにおいて生じるプラズマ発光は、ターゲット材料の原子種の原子発光や不活性ガス種の原子発光や反応性ガス種の原子発光など複数存在する。したがって、前記制御に用いるプラズマ発光強度の検知を行うプラズマ発光は、プラズマ発光強度と反応性スパッタリングの成膜速度とが1対1で対応し、かつ他の発光波長と干渉しない原子発光を用いる必要がある。
このため、スパッタ状態の変化に対応して変わる特定波長のプラズマ発光強度の検知を行うプラズマ発光は、ターゲット材料の原子種の原子発光、または反応性ガス種の原子発光のいずれかを、上記のような理由から選択することが好ましい。
前記の反応性スパッタリングの制御方法を用いて、少なくとも1つ以上のターゲットを配置したチャンバ内で、成膜基体上に前記ターゲット材料の化合物膜を形成する。これにより、反応性スパッタリングの特性に適合した成膜がなされるため、通常のPID制御を用いた場合と比較して、反応性スパッタリングの制御性が格段に向上したものとなる。また、前記の通り、この反応性スパッタリングの制御方法は、特に遷移状態での制御性に優れているため、単一PID制御では制御が難しい遷移状態においても、安定した成膜が実現でき、化合物状態での成膜と比較して高速な化合物膜の成膜が可能である。
本発明の反応性スパッタリングによる成膜方法に用いられる反応性ガスとしては、酸素ガスや窒素ガスおよびフッ素ガスが好適に用いられる。成膜基体上に形成される化合物膜としては、反応性ガスとして酸素ガスを用いた場合は酸化物膜が、窒素ガスを用いた場合は窒化物膜が、フッ素ガスを用いた場合はフッ化物膜が形成される。また、成膜中には、アルゴンガスなどの不活性ガスをチャンバ内に一定量供給する必要がある。
本発明の反応性スパッタリングによる成膜方法に用いられるターゲット材料としては、Nb、Ti、Si、Ta、Zn、Sn、In、MgおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の元素を含むものが好適に用いられる。具体的には、成膜基体上に形成する化合物膜に応じてターゲット材料が選択され、上述の元素のみから構成される単元素ターゲットや、多成分系のターゲット、これらの元素を含む酸化物もしくは窒化物ターゲットや、酸素欠陥を有する構造の酸化物ターゲットなどを用いることができる。
本発明の反応性スパッタリングによる成膜方法には、チャンバ内に、上記のようなターゲットを1つだけ配置することも可能であるし、チャンバ内に複数のターゲットを配置して成膜を行うことも可能である。チャンバ内に1つのターゲットのみを配置して成膜を行う場合、以下のような例が挙げられる。酸化ニオブ膜を成膜する場合には、ターゲット材料として金属Nbのみからなる1つのターゲットのみをチャンバ内に配置し、不活性ガスをチャンバ内に一定量供給するとともに、反応性ガスとして酸素ガスを導入し、酸化ニオブ膜を成膜することが可能となる。
また、SiOの薄膜を形成する場合には、ターゲット材料としてSiCとSiの混合物からなるターゲットをチャンバ内に配置し、不活性ガスをチャンバ内に一定量供給するとともに、反応性ガスとして酸素ガスを導入し、SiOの薄膜を成膜することが可能となる。
一方、チャンバ内に複数のターゲットを配置して成膜を行う場合としては、以下のような例が挙げられる。ターゲット材料として、多結晶シリコン若しくは、SiCとSiとの混合物のような、酸化したときに低屈折率材料が形成される第1のターゲットと、Nb若しくはTaのような酸化したときに高屈折率材料が形成される第2のターゲットとの2種類のターゲットをチャンバ内に配置し、これらのターゲットを用いて、交互にSiを含有する化合物膜と、Nb若しくはTaを含有する化合物膜の成膜を行うことができる。
また、成膜基体上に形成される化合物膜は、酸化物光学膜であってもよい。この場合、反応性スパッタリングによる成膜方法に用いられる反応性ガスとして、酸素ガスを用い、前記の適宜のターゲット材を用いて形成される。酸化物光学膜としては、例えば、ビデオカメラ等の固体撮像素子の光学系に用いられる、反射防止膜や、近赤外線カット膜などがある。反射防止膜は、成膜基体表面の光の反射率を低減し、光の透過率を増加するものであり、MgFの単層膜やAl・Ta・MgFの多層膜などで構成される。また、近赤外線カット膜は、近赤外域の波長の光のみを選択的にカットするものであり、低屈折率膜と高屈折率膜との交互多層膜で構成され、例えば、Ti・SiOの多層膜やAl・Ti・SiOの多層膜などで構成される。このように、複数の化合物膜を多層構造で成膜基体上に形成する場合は、チャンバ内に複数のターゲットを配置して、順番に薄膜を形成する。
本発明の酸化物光学膜は、増反射膜、ダイクロイックフィルタ、バンドパスフィルタなどに用いることが可能である。化合物膜は、反応性ガスによって完全に化合物化された膜だけでなく、例えば化学量論的組成と比較して、酸素のモル比が少ない酸化物膜を含んでいてもよい。また、これら化合物膜の幾何学的膜厚は、特に限定されないが、1層あたり5nm〜1μmであるのが好ましく、特に、酸化物光学膜に用いる観点からは、1層あたり5nm〜500nmであるのが好ましい。
次に、上記構成の一実施形態により薄膜形成を行った実施例1乃至実施例13を、比較例1乃至比較例8と図3乃至図13とを参照して説明する。図3は実施例1から実施例10までの成膜条件等を説明するための図であり、図4は実施例4でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図であり、図5は実施例6でのプラズマ発光強度、スパッタ電圧と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図であり、図6は実施例7でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図であり、図7は実施例8でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図であり、図8は実施例10でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図であり、図9は比較例1から比較例5までを説明するための図であり、図10は実施例11から実施例13までを説明するための図であり、図11は比較例6から比較例8までを説明するための図であり、図12は実施例11でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図であり、図13は実施例12での化合物状態から遷移状態に推移した際のプラズマ発光強度と経過時間の関係を示す図である。
先ず、実施例1乃至実施例10を、比較例1乃至比較例5と共に図3乃至図9を用いて説明する。
実施例1乃至実施例10及び比較例1乃至比較例5は、反応性スパッタリング装置1として、
スパッタリング装置:芝浦メカトロニクス(株)のCFS−4EP−LL
真空チャンバ容積 :幅315×高さ317×奥行228 [mm]
真空排気系 :ターボ分子ポンプ、油回転真空ポンプ
スパッタ方式 :マグネトロンスパッタ
ターゲットサイズ :直径76.2×厚さ5 [mm]
の諸元のものを用い、他の共通条件を、
不活性ガス :アルゴン
反応性ガス :酸素
チャンバ内圧力 :8×10−4Pa (到達真空度)
とし、その他の成膜条件は図に示した通りとして、成膜基体7のガラス板表面に酸化物薄膜の成膜を行った。
実施例1乃至実施例10では、図3に示した通り、ターゲット4にTi、Si、Nb、Ta、Alを用い、成膜基体7にそれぞれTiO、SiO、Nb、Ta、Alの酸化物薄膜の形成を行った。この時のプラズマ発光強度の監視、測定は、ターゲット4がSiの場合は、反応性ガス種である酸素の波長777nmの原子発光を対象に行い、他のターゲット4の場合、Tiでは波長501nm、Alでは波長396nmの各原子種の原子発光を対象に行った。また、ターゲット4がNbおよびTaの場合は、ターゲット材の各原子種の原子発光波長のうち、不活性ガスや反応性ガスの発光波長と干渉せず、かつ発光強度と反応性スパッタリングの成膜速度とが1対1に対応する発光波長を監視波長として用いた。また比較例1乃至比較例5では、図9に示した通り、ターゲット4にTi、Alを用い、成膜基体7にそれぞれTiO、Alの酸化物薄膜の形成を行い、その際のプラズマ発光強度の監視、測定は、ターゲット4がTiの場合は波長501nm、Alの場合は波長396nmの各原子種の原子発光を対象に行った。なお、前記波長については、特開2006−124811号、特開2003−268540号、特開2006−9084号他を参照し設定した。
そして、実施例1乃至実施例10では、反応性スパッタリングの開始は、図3の反応性ガス導入量に示した値を開始時の導入量として化合物状態(酸化状態)から行った。さらに、スパッタ状態が、化合物状態から遷移状態における所定の一状態に移行するように、プラズマ発光強度の監視、測定を行いながら上記の制御部8の第1PID制御15、第2PID制御16により反応性ガスの導入量の制御を行い、反応性ガス導入量を順次設定し、所定の遷移状態になったらその状態を略維持する適正値に設定し、所定遷移状態での成膜を行った。
その結果、実施例1乃至実施例10の何れの実施例でも、60分間遷移状態を維持したが制御破綻を起こすことなく、安定して成膜基体7に所定の酸化物薄膜を形成することができた。
これに対し、比較例1乃至比較例5では、上記の制御部8における第1PID制御15に相当するPID制御のみにより、実施例1乃至実施例10と同様に化合物状態から開始し、プラズマ発光強度の監視、測定を行い反応性ガスの導入量を制御し遷移状態へ移行するよう制御したが、制御破綻を起こし、また制御パラメータを種々設定し条件を変えて実施したが、いずれの場合でも制御破綻を起こした。なお、制御破綻については、化合物状態から遷移状態への移行ができずに瞬時に金属状態になった場合、遷移状態を連続的に制御できずに化合物状態または金属状態に移行した場合を持って判断した。
また、実施例1乃至実施例10のうち、実施例4、実施例6、実施例7、実施例8、実施例10についての化合物状態における成膜レートと、遷移状態を維持した状態の成膜レートは図3に示す通りであり、第1PID制御15、第2PID制御16の制御パラメータと、化合物状態から遷移状態に制御した場合のプラズマ発光強度(PE)と反応性ガス導入量との関係は図4乃至図8に示す通りで、第1PID制御15、第2PID制御16で制御することで、化合物状態、金属状態では勿論のこと、遷移状態においても安定的に成膜することができる。なお、これらの図では、遷移状態から金属状態もしくは成膜基体7に形成された膜が吸収膜となった時点でスパッタを終了しているが、金属状態は反応性ガス導入量に対する状態変動が化合物状態と同様に小さいため、上記構成の制御によれば、さらにこれより先の金属状態でも安定的に制御することが可能である。
次に、実施例11乃至実施例13を、比較例6乃至比較例8と共に図10乃至図13を用いて説明する。
実施例11乃至実施例13及び比較例6乃至比較例8は、上記の実施例1乃至実施例10及び比較例1乃至比較例5で用いた反応性スパッタリング装置よりもチャンバ容積が大きい反応性スパッタリング装置を用い、その他の成膜条件を、図10、図11に示した通りとして、成膜基体7のガラス板表面に酸化物薄膜の成膜を行った。なお、一般に、チャンバ容積が大きくなるほど、反応性スパッタリングでのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量との関係におけるヒステリシス(逆S字状曲線の屈曲)が大きくなり、制御性が悪くなることが知られている。
そして、実施例11乃至実施例13及び比較例6乃至比較例8では、図10、図11に示した通りの成膜条件のもとで、ターゲット4にTi、Si、Nbを用い、成膜基体7にそれぞれTiO、SiO、Nbの酸化物薄膜の形成を行った。この時のプラズマ発光強度の監視、測定は、ターゲット4がSiの場合は、反応性ガス種である酸素の波長777nmの原子発光を対象に行い、他のターゲット4の場合、Tiでは波長501nm、Nbでは、Nbの原子種の原子発光波長のうち、不活性ガスや反応性ガスの発光波長と干渉せず、かつ発光強度と反応性スパッタリングの成膜速度とが1対1に対応する発光波長を監視波長として用いた。
反応性スパッタリングの開始は、実施例1乃至実施例10及び比較例1乃至比較例5と同様に、図10、図11の反応性ガス導入量に示した値を開始時の導入量として化合物状態から行った。さらに、スパッタ状態が、化合物状態から遷移状態における所定の一状態に移行するように、プラズマ発光強度の監視、測定を行いながら上記の制御部8の第1PID制御15、第2PID制御16により反応性ガスの導入量の制御を行い、反応性ガス導入量を順次設定し、所定の遷移状態になったらその状態を略維持する適正値に設定し、所定遷移状態での成膜を行った。
その結果、実施例11乃至実施例13の何れの実施例でも、60分間遷移状態を維持したが制御破綻を起こすことなく、安定して成膜基体7に所定の酸化物薄膜を形成することができた。しかし、比較例6乃至比較例8では、制御破綻を起こし、また制御パラメータを種々設定し条件を変えて実施したが、いずれの場合でも制御破綻を起こした。
また、実施例11についての第1PID制御15、第2PID制御16の制御パラメータと、スパッタ状態を化合物状態から開始し、反応性ガスの導入量を逐次変えながら遷移状態、さらに金属状態に至るまで制御した場合のプラズマ発光強度と反応性ガス導入量との関係は図12に示す通りで、第1PID制御15、第2PID制御16で制御することにより、化合物状態、遷移状態、金属状態を通して、安定的に成膜することができる。さらに、実施例12における化合物状態から遷移状態に第1PID制御15、第2PID制御16の制御パラメータを変えることなく推移させた際のプラズマ発光強度と経過時間の関係は図13に示す通りで、第1PID制御15、第2PID制御16で制御することにより、化合物状態、遷移状態を通して、安定的に成膜することができる。
以上、各実施例からも明らかなように、第1PID制御15、第2PID制御16で制御することにより、化合物状態、遷移状態、金属状態を通して、PID制御におけるオーバーシュートもなく、化合物状態、遷移状態、金属状態、また各状態を継ぎ目なく、非常にスムーズに単一の制御パラメータで制御可能である。また、この制御を用いて成膜基体上に、特に遷移状態での制御性に優れ、単一PID制御では制御が困難である遷移状態においても、長時間安定した成膜が実現でき、化合物状態と比較して高速な化合物膜の成膜が可能である。なお、本件発明は単一の制御パラメータによる制御に限定するものではなく、必要であれば複数の制御パラメータを併用することも可能である。
このことから、上記第1PID制御15、第2PID制御16による制御によれば、工業的に必要な容易性、安定性、ロバスト性を有する反応性スパッタリングの制御が実行できる。また、この反応性スパッタリングの制御方法を化合物膜の成膜に用いることで、薄膜形成においても様々な条件、状態のもとでの成膜を安定的に行うことができる。なお、上記各実施例は、マグネトロンスパッタ装置を用いて行っており、DCスパッタ、RFスパッタ、ACスパッタ等いずれであってもよい。
本発明の一実施形態に係る反応性スパッタリング装置の概略を示す構成図である。 本発明の一実施形態に係る反応性スパッタリング装置の制御システムを示すブロック図である。 本発明の一実施形態における実施例1から実施例10までを説明するための図である。 本発明の一実施形態における実施例4でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図である。 本発明の一実施形態における実施例6でのプラズマ発光強度、スパッタ電圧と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図である。 本発明の一実施形態における実施例7でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図である。 本発明の一実施形態における実施例8でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図である。 本発明の一実施形態における実施例10でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図である。 本発明の一実施形態における実施例に係る比較例1から比較例5までの成膜条件等を説明するための図である。 本発明の一実施形態における実施例11から実施例13までの成膜条件等を説明するための図である。 本発明の一実施形態における実施例に係る比較例6から比較例8までの成膜条件等を説明するための図である。 本発明の一実施形態における実施例11でのプラズマ発光強度と反応性ガス導入量の関係及び制御パラメータを示す図である。 本発明の一実施形態における実施例12での化合物状態から遷移状態に推移した際のプラズマ発光強度と経過時間の関係を示す図である。 反応性スパッタリングにおける成膜速度と反応性ガス導入量の関係を示す図である。
符号の説明
1…スパッタリング装置
2…チャンバ
3…プラズマ
4…ターゲット
5…反応性ガス供給機構
7…成膜基体
8…制御部
9…光電子倍増管(PMT)
10…光量積分器
12…バンドパスフィルタ(BPF)
13…演算処理部
14…マスフローコントローラ
15…第1PID制御
16…第2PID制御
17…反応性ガス流量制御

Claims (7)

  1. スパッタ状態の変化に対応して変わる特定波長のプラズマ発光強度を検知し、検知した前記プラズマ発光強度が所定値となるよう反応性ガス導入量を制御することにより、所定の反応性スパッタリング状態にする反応性スパッタリングの制御方法であって、
    前記特定波長のプラズマ発光強度が目標値に一致するように前記反応性ガス導入量を制御する第1PID制御と、前記第1PID制御によって算出された反応性ガス導入量により変動するプラズマ発光強度の予測量と、実際に生じたプラズマ発光強度の変動量との偏差を小さくするために、前記反応性ガス導入量を制御する第2PID制御とを備え
    時間t=n、制御間隔ΔT=T −T n−1 として、
    前記第1PID制御から、前記特定波長のプラズマ発光強度が目標値に一致するように予め設定したプラズマ発光強度の光強度目標値(SetPE )と、時間nにおける実行されている反応性スパッタリングでのプラズマ発光光量値(PE )とが入力され、光強度目標値(SetPE )とプラズマ発光光量値(PE )の偏差に基づいて第1PID出力変化量(ΔM )が出力され、
    前記第2PID制御から、前記第1PID制御によって算出された反応性ガス導入量により変動するプラズマ発光強度の予測量と、実際に生じたプラズマ発光強度の変動量との偏差を小さくするために、第1PID制御の出力した第1PID出力変化量(ΔM n−1 )と線形関係にあるプラズマ発光強度の変動量と、時間nにおけるプラズマ発光光量値(PE )と時間n−1におけるプラズマ発光光量値(PE n−1 )との差分(PE −PE n−1 )が入力され、第1PID出力変化量(ΔM n−1 )と線形関係にあるプラズマ発光強度の変動量と、プラズマ発光光量値(PE )とプラズマ発光光量値(PE n−1 )との差分(PE −PE n−1 )の偏差に基づいて第2PID出力変化量(ΔM n′ )が出力され、
    前記第1PID制御のPID制御出力値の第1PID出力変化量(ΔM と前記第2PID制御のPID制御出力値の第2PID出力変化量(ΔM n′ を合計した制御出力値(ΔM +ΔM n′ が実際に反応性ガス導入量を制御するのに使用されることを特徴とする反応性スパッタリングの制御方法。
  2. 前記第1PID制御と前記第2PID制御は、それぞれのPID制御出力を算出するにあたって、第1PID制御における目標値と第2PID制御における目標値とが同一であり、かつ、PID制御開始後の第1PID制御における測定値と第2PID制御における測定値とが同一である場合に、
    前記第1PID制御のPID制御出力値の絶対値より、前記第2PID制御のPID制御出力値の絶対値が大きくなるように、第1PID制御及び第2PID制御のPID制御パラメータを設定するものであることを特徴とする請求項1記載の反応性スパッタリングの制御方法。
  3. 前記プラズマ発光強度の検知を行うプラズマ発光が、ターゲットの原子種の原子発光または反応性ガス種の原子発光の何れかであることを特徴とする請求項1または2記載の反応性スパッタリングの制御方法。
  4. 請求項1または2記載の反応性スパッタリングの制御方法を用い、少なくとも1つ以上のターゲットを配置したチャンバ内で、成膜基体上に前記ターゲット材料の化合物膜を形成することを特徴とする反応性スパッタリングによる成膜方法。
  5. 前記少なくとも1つ以上のターゲット材料が、Nb、Ti、Si、Ta、Zn、Sn、In、MgおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項4記載の反応性スパッタリングによる成膜方法。
  6. 前記反応性ガスが酸素であって、前記成膜基体上に形成する化合物膜が酸化物光学膜であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の反応性スパッタリングによる成膜方法。
  7. 前記化合物膜が、単層もしくは多層構造であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の反応性スパッタリングによる成膜方法。
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