JP4850483B2 - 塗工用ポリマーエマルジョン組成物 - Google Patents

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本発明は、塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤、及びそれを含有する塗工用、詳しくは塗料や粘接着剤等に使用されるポリマーエマルジョン組成物に関する。
従来より、アクリル系エマルジョンや酢酸ビニル系エマルジョンなどの合成樹脂エマルジョン、あるいはSBR系ラテックスやクロロプレン系ラテックス等のポリマーエマルジョンが、塗料やコーティング剤、粘接着剤として広汎に使用されている。しかし冬季の低温時には、エマルジョンが凍結し、使用できなくなる等の問題が生じる。そこで凍結防止剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類をポリマーエマルジョンに添加し、凍結温度を低下させる方法が採用されてきた。
また塗料用のエマルジョンでは、塗膜による基材面の保護の観点からポリマーのガラス転移温度を高く設定することが多く、塗装環境温度よりもポリマーのガラス転移温度の高い場合には、ポリマー粒子同士が融着しにくく、成膜性が著しく低下する。そこでエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル酢酸エステル等のいわゆる成膜助剤が添加されている。
近年、室内環境に関る健康障害が問題となっており、シックハウス症候群と言われる健康障害の原因の一つとして、塗料や接着剤に含まれる凍結防止剤や成膜助剤によるVOC(Volatile Organic Compound)の影響が指摘されており、VOCの削減が要望されている(非特許文献1参照)。
北畠道治,「塗料の研究」,No.143,Apr.,41-49頁(2005)
本発明の課題は、低揮発性の塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤、及び塗料や粘接着剤等に有用なVOCの排出を抑制した塗工用ポリマーエマルジョン組成物を提供することにある。
本発明は、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物からなる塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤、並びに(a)ポリマーエマルジョン、及び(b)グリセリンのアルキレンオキサイド付加物を含有する塗工用ポリマーエマルジョン組成物を提供する。
本発明の添加剤は低揮発性であり、塗工用ポリマーエマルジョン用の低揮発性添加剤として有用である。また、本発明のポリマーエマルジョン組成物は、耐揮発性が良好でVOCの排出を抑制することができ、塗料や粘接着剤等の塗工剤として有用であり、特に室内環境に関わる健康障害等が問題となる分野に有効に用いることができる。
[本発明の添加剤((b)成分)]
本発明の添加剤であるグリセリンのアルキレンオキサイド付加物としては、グリセリンのエチレンオキサイド、及び/又はプロピレンオキサイド、及び/又はブチレンオキサイド付加物が挙げられ、式(I)で表される化合物が好ましい。
Figure 0004850483
(式中、A1O、A2O及びA3Oはそれぞれ独立に、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、複数個のA1O、A2O、A3Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。x、y及びzはそれぞれ独立に、アルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す0以上の数で、その合計(x+y+z)が0.5〜40である。)
式(I)において、アルキレンオキサイドの平均付加モル数を示すx、y及びzはそれぞれ独立に0以上の数であり、x+y+zは耐揮発性、低粘度性及び経済性の観点から0.5〜40であり、0.5〜20が好ましく、1〜10がさらに好ましい。また、2種以上のアルキレンオキサイドが付加する場合には、付加形式はブロック付加でもランダム付加でもよく、ブロック付加する場合、付加順序はどのような順序でもよい。
グリセリンのアルキレンオキサイド付加物は、凍結防止効果に優れる観点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数、プロピレンオキサイドの平均付加モル数及びブチレンオキサイドの平均付加モル数の合計が、0.5〜8モルが好ましく、1〜6モルがより好ましい。またグリセリンのアルキレンオキサイド付加物は、成膜助剤としての効果に優れる観点から、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドの付加物が好ましい。プロピレンオキサイドの平均付加モル数は、5〜12モルが好ましく、6〜9モルがより好ましい。ブチレンオキサイドの平均付加モル数は、1〜10モルが好ましく、2〜6モルがより好ましく、2〜4モルが更に好ましい。
グリセリンのアルキレンオキサイド付加物は従来公知の方法で製造することができる。すなわち、オートクレーブにグリセリンと、触媒としてグリセリンに対しKOHを3〜5モル%仕込み、昇温・脱水し、130〜150℃の温度でアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造できる。
[(a)成分]
本発明に用いられる(a)成分のポリマーエマルジョンは、塗料やコーティング剤、粘接着剤の主成分のバインダーとなるもので、合成樹脂エマルジョン、ゴムラテックス等が挙げられる。合成樹脂エマルジョンの具体例としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂を水中に分散した各種エマルジョンが挙げられる。またゴムラテックスとしては、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴムなどの合成ゴム、又は天然ゴムを水中に分散した各種ゴムラテックスが挙げられる。
これらのポリマーエマルジョンの中ではアクリル系樹脂エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンが好ましく、アクリル系樹脂エマルジョンが更に好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンを構成するアクリル系樹脂としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルと共重合しうるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸;酢酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル等が挙げられる。
尚、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
ポリマーエマルジョンは従来公知の方法で製造することができる。例えば、イオン交換水中で、アニオン界面活性剤等の乳化剤存在下、モノマー混合物を乳化重合することにより得ることができる。
ポリマーエマルジョン中におけるポリマーエマルジョンの固形分は、乾燥性とエマルジョン粘度の観点から、30〜70重量%が好ましく、40〜60重量%が更に好ましい。
ポリマーエマルジョンの平均粒径は、塗膜の光沢性とエマルジョン粘度の観点から、80〜200nmが好ましく、100〜170nmが更に好ましい。
尚、ポリマーエマルジョンの平均粒径は、例えば、ベックマンコールター社製、サブミクロン粒子アナライザー「N4plus」装置を使用して、動的光散乱法に従って測定することができる。
[ポリマーエマルジョン組成物]
本発明のポリマーエマルジョン組成物中における(a)成分の含有量は、塗膜化後のポリマー特性が機能する観点から、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましい。
本発明のポリマーエマルジョン組成物中の、(b)成分の含有量は、良好な凍結防止効果及び成膜性能を得、また、塗膜の乾燥性、塗膜の接着力及び乾燥後の塗膜の耐水性に悪影響を与えない観点から、ポリマーエマルジョン100重量部に対し、0.5〜50重量部が好ましく、1〜20重量部がさらに好ましく、2〜10重量部が特に好ましい。
本発明の組成物は、上記の(a)及び(b)成分の他に、必要に応じて、ロジンや石油樹脂等の粘着付与剤、メチルセルロースやポリビニルアルコール等の増粘剤、消泡剤、防腐剤、ジブチルフタレートやジオクチルフタレート等の可塑剤、酸化チタン等の無機顔料、炭酸カルシウムやシリカ等の無機充填剤等の各種添加剤を配合してもよい。
本発明の(a)成分であるポリマーエマルジョンに、(b)成分であるグリセリンのアルキレンオキサイド付加物を混合する方法には特に制限はなく、ポリマーエマルジョンを製造する反応槽に、重合反応後、(b)成分を添加してもよく、また用途に応じて粘着付与剤や顔料等の各種添加物との混合時に添加混合してもよい。
本発明のポリマーエマルジョン組成物は、塗工用として広く用いることができる。塗工用とは、塗料、コーティング材、粘接着剤等の用途を表す。本発明のポリマーエマルジョン組成物は、耐揮発性に優れる観点から、特に建材分野の内装における塗料、コーティング材、粘接着剤等に用いることが好ましい。
実施例1〜8、比較例1〜4
アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸の重量比が49.25/49.25/1.5であるモノマー混合物100重量部に対し、花王(株)製アニオン界面活性剤ラテムルE−118Bを2重量部(有効分換算)の添加量で使用し、プレエマルジョン法で乳化重合することによりポリマーエマルジョンを得た。このエマルジョンは、固形分45%、平均粒径153nmであった。このポリマーエマルジョン100重量部に対して、表1に示すグリセリンのアルキレンオキサイド付加物を5重量部添加して、本発明のポリマーエマルジョン組成物を得た。
尚、本明細書において、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド、BOはブチレンオキサイドを示す。
また、比較のため、グリセリン、エチレングリコール、メタノールのPO4モル付加物を、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物の代わりに用いて、同様に比較のポリマーエマルジョン組成物を得た。
得られたポリマーエマルジョン組成物、及び添加剤を添加しない無添加のポリマーエマルジョンについて、耐揮発性及び凍結防止効果を下記方法で評価した。これらの結果を表1に示す。
<耐揮発性の評価法>
セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA200型示差熱熱重量同時測定装置により、250mL/minの窒素気流雰囲気下、5℃/minで昇温し、200℃における加熱減量(%)を測定した。
<凍結防止効果の評価法>
ポリマーエマルジョン組成物を−8℃の恒温槽に8時間保存し、凍結防止効果を目視観察により下記基準で評価した。
○:液状
×:凍結
Figure 0004850483
表1から明らかなように、本発明のポリマーエマルジョン組成物は、耐揮発性及び凍結防止性が良好であることがわかる。
実施例9〜18、比較例5〜8
アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸の重量比が29.55/68.95/1.5であるモノマー混合物100重量部に対し、花王(株)製アニオン界面活性剤ラテムルPD−104を2重量部(有効分換算)の添加量で使用し、プレエマルジョン法で乳化重合することによりポリマーエマルジョンを得た。このエマルジョンは、固形分45%、平均粒径154nmであった。このエマルジョン100重量部に表2に示すグリセリンのアルキレンオキサイド付加物を5重量部添加し、ポリマーエマルジョン組成物を得た。
また、比較のため、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物の代わりに、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル酢酸エステル、テキサノールCS−12(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)をそれぞれ用い、同様に比較のポリマーエマルジョン組成物を得た。
得られたポリマーエマルジョン組成物、及び添加剤を添加しないポリマーエマルジョンの耐揮発性を、加熱減量(%)の測定温度を250℃とする以外は実施例1と同じ条件で評価した。また成膜性を下記方法で評価した。結果を表2に示す。
<成膜性評価法>
ポリマーエマルジョン組成物を、アクリル板上に乾燥膜厚50μmとなるようにアプリケータで塗工し、室温で乾燥した。塗膜の状態を下記基準で評価した。
○:成膜可能
×:成膜不可
Figure 0004850483
表2から明らかなように、本発明のポリマーエマルジョン組成物は、揮発性が低く、従来使用されてきた成膜助剤と同等の成膜性を示した。

Claims (6)

  1. 式(I)で表されるグリセリンのアルキレンオキサイド付加物からなる塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤。
    Figure 0004850483
    (式中、A 1 O、A 2 O及びA 3 Oはそれぞれ独立に、エチレンオキサイド基、及び/又はプロピレンオキサイド基を示し、複数個のA 1 O、A 2 O、A 3 Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。x、y及びzはそれぞれ独立に、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す0以上の数で、その合計(x+y+z)が1〜20であり、かつエチレンオキサイドの付加モル数が1以上であるか、又はプロピレンオキサイドの付加モル数が3以上である。)
  2. 式(I)中、x+y+z=1〜12である、請求項1記載の式(I)で表されるグリセリンのアルキレンオキサイド付加物からなる塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤。
  3. 式(I)中、x+y+z=1〜8である、請求項1記載の式(I)で表されるグリセリンのアルキレンオキサイド付加物からなる塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤。
  4. 式(I)中、x+y+z=5〜12である、請求項1記載の式(I)で表されるグリセリンのアルキレンオキサイド付加物からなる塗工用ポリマーエマルジョン用添加剤。
  5. (a)ポリマーエマルジョン100重量部に対し、及び(b)請求項1〜4のいずれか1項に記載の添加剤を0.5〜50重量部含有する塗工用ポリマーエマルジョン組成物
  6. ポリマーエマルジョンがアクリル系樹脂エマルジョンである請求項記載のポリマーエマルジョン組成物。
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