JP4849376B2 - 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具の製造方法 - Google Patents
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(1)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(2)上部層が、化学蒸着形成した状態で、α型の結晶構造を示し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図4(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、図5に例示される通り、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ1〜20μmの平均層厚を有する改質α型酸化アルミニウム層(以下、改質α型Al2O3層で示す)、
以上(1)および(2)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の高速切削加工に用いられている。
反応ガス組成−体積%で、AlCl3:1〜5%、CO2:5〜10%、HCl:0.3〜3%、CH3CN:0.02〜0.1%、NO:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
成膜時間:0.5〜2時間、
の条件で、望ましくは0.02〜0.5μmの平均層厚で種薄膜としてのAl2O3薄膜(以下、Al2O3種薄膜という)を形成し、このAl2O3種薄膜の上に従来α型Al2O3層の形成条件と同じ条件、すなわち、同じく通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成−体積%で、AlCl3:1〜5%、CO2:0.5〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件でα型Al2O3層を蒸着することにより形成され、この結果形成された改質α型Al2O3層は、α型Al2O3層自身が具備するすぐれた高温硬さおよび耐熱性を損なうことなく、前記従来α型Al2O3層に比して、一段とすぐれた高温強度を具備するようになり、一方前記従来α型Al2O3層は、図6に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すことも知られている。
(A)(a)上記の従来TiCN層は、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成−体積%で、TiCl4:2〜10%、CH3CN:0.5〜3%、N2:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜950℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で形成されるが、上記従来TiCN層の形成に先だって、
反応ガス組成−体積%で、TiCl4:0.2〜1%、C3H6(メチルエチレン):1〜5%、N2:20〜40%、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜800℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
成膜時間:0.5〜3時間、
の条件で、望ましくは0.02〜0.5μmの平均層厚で種薄膜としてのTiCN薄膜(以下、種薄膜という)を形成し、この種薄膜の上に上記の従来TiCN層の形成条件と同じ条件でTiCN層を形成すると、形成時の前記TiCN層は、前記種薄膜の結晶配列に著しく影響を受け、これを十分に履歴するようになり、しかもこの結果形成されたTiCN層(以下、改質TiCN層という)は、上記の従来TiCN層に比して、一段とすぐれた高温強度を有し、高い切削抵抗を伴なう難削材の高速切削加工でもすぐれた耐チッピング性を発揮するようになること。
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来TiCN層は、図3に例示される通り、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記改質TiCN層は、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークは、グラフ横軸の傾斜角区分に現れる高さが上記種薄膜形成時の反応雰囲気温度および反応雰囲気圧力によって変化し、グラフ横軸の傾斜角区分位置が同じく反応ガスのTiCl4含有量によって変化すること。
(d−1)まず、下側層として、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa(30〜525torr)、
とした条件で、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、オージェ分光分析装置で測定して、Tiに対する酸素の割合が原子比で1.25〜1.90、即ち、
組成式:TiOW 、
で表わした場合、
W:原子比で1.25〜1.90、
を満足する酸化チタン層を形成し、
(d−2)ついで、上記酸化チタン層(下側層)の上に、上側層として、通常の条件、即ち、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
N2:4〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜90kPa(30〜675torr)、
とした条件で、0.05〜2μmの平均層厚を有するTiN層を形成すると、
(d−3)上記TiN層(上側層)形成時に、上記下側層を構成する酸化チタン層の酸素が拡散してきて前記上側層(TiN層)が、窒酸化チタン層で構成されるようになるが、この場合上記上側層(前記窒酸化チタン層)形成後の上記下側層である酸化チタン層は、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、酸素の割合がTiに対する原子比で1.2〜1.7、即ち、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、
X:原子比で1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層となり、
(d−4)また、上記窒酸化チタン層で構成された上側層は、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、拡散酸素の割合が窒素(N)に対する原子比で0.01〜0.4、即ち、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上側層の蒸着形成時における上記下側層である酸化チタン層からの拡散酸素を示す)、
Y:原子比で0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層となること。
ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%の酸化アルミニウム微粒(以下、Al2O3微粒で示す)を配合した研磨液を噴射すると、前記窒酸化チタン層および酸化チタン層は、前記Al2O3微粒によって粉砕微粒化し、窒酸化チタン微粒および酸化チタン微粒となって前記Al2O3微粒の共存下で研磨材として作用し、硬質被覆層の上部層を構成する改質α型Al2O3層の表面を研磨することになり、この結果研磨後の前記改質α型Al2O3層の表面は、準拠規格JIS・B0601−1994に基いた測定(以下の表面粗さは全てかかる準拠規格に基いた測定値を示す)で、Ra:0.2μm以下の表面粗さにまで平滑化されるようになり、この上部層である改質α型Al2O3層の表面がRa:0.2μm以下の表面粗さに平滑化した上記の被覆サーメット工具を用いて、難削材の高速切削加工を行った場合、350m/min.を越える切削速度でも切刃部におけるチッピング発生抑制効果が十分に発揮され、前記硬質被覆層の耐チッピング性向上に大いに寄与すること。
なお、この場合、上記改質α型Al2O3層の表面に、上記の窒酸化チタン層(上側層)および酸化チタン層(下側層)からなる研磨材層を形成することなく、これに同じくウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl2O3微粒を配合した研磨液を直接噴射して、研磨しても、前記改質α型Al2O3層の表面は、Ra:0.3〜0.6μmの表面粗さにしか研磨されず、この結果の表面粗さがRa:0.3〜0.6μmの改質α型Al2O3層で上部層を構成し、下部層のうちの1層を上記の改質TiCN層で構成した被覆サーメット工具を用いても、切削速度が350m/min.を越えた難削材の高速切削加工では切刃部におけるチッピング発生を満足に抑制することはできないこと。
以上(a)〜(f)に示される研究結果を得たのである。
(a)下部層として、
(a−1)いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上と、
(a−2)同じく化学蒸着形成された、2.5〜15μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層、
からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態で、α型の結晶構造を示し、かつ電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ1〜20μmの平均層厚を有する改質α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成し、
(2)ついで、上記硬質被覆層の上部層である改質α型Al2O3層の全面に、
(b−1)下側層として、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、原子比で、
X:1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層、
(b−2)上側層として、0.05〜2μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上側層の蒸着形成時における上記下側層である酸化チタン層からの拡散酸素を示す)、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、同じく原子比で、
Y:0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層、
以上(b−1)および(b−2)で構成された研磨材層を化学蒸着形成した状態で、
ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl2O3微粒を配合した研磨液を噴射し、
上記の研磨材層が噴射研磨材であるAl 2 O 3 微粒の噴射により粉砕微粒化してなる粉砕化酸化チタン微粒および粉砕化窒酸化チタン微粒と、噴射研磨材としてのAl2O3微粒の共存下で、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質α型Al2O3層の少なくとも切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を研磨して、これら研磨面の表面粗さをRa:0.2μm以下としてなる、
難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具の製造方法に特徴を有するものである。
(A)硬質被覆層
(a−1)Ti化合物層(下部層)
Ti化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層である改質α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
上記の通り、上記改質TiCN層の種薄膜形成に際して、上記反応ガスにおけるTiCl4の含有量を0.2〜1%とすることにより、傾斜角度数分布グラフで、シャープな最高ピークが傾斜角区分の0〜10度の範囲内に現れ、かつ、反応雰囲気温度を700〜800℃、反応雰囲気圧力を3〜13kPaとすることにより、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層が形成されるようになり、この結果として前記改質TiCN層はさらに一段とすぐれた高温強度を具備するようになるが、その平均層厚が2.5μm未満では所望のすぐれた高温強度を硬質被覆層に具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を2.5〜15μmと定めた。
改質α型Al2O3層は、傾斜角度数分布グラフで、シャープな最高ピークが傾斜角区分の0〜10度の範囲内に現れ、かつ前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、この結果すぐれた高温強度を具備し、耐チッピング性の向上が図られるようになる外、Al2O3層自身のもつすぐれた高温硬さと耐熱性によって、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が20μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜20μmと定めた。
上側層を構成する窒酸化チタン層は、上記の通り、まず、酸素の割合をNに対する原子比で1.25〜1.90(W値)とした酸化チタン層を形成し、ついで、前記酸化チタン層の上に通常の条件でTiN層を蒸着することにより形成されるものであり、したがって前記TiN層形成時における前記酸化チタン層からの酸素の拡散が不可欠となるが、前記酸化チタン層のW値が1.25未満であると、前記TiN層への酸素の拡散反応が急激に低下し、上側層における拡散酸素の割合(Y値)を原子比で0.01以上にすることができず、一方同W値が1.90を越えると、前記上側層における拡散酸素の割合(Y値)が原子比で0.40を越えて多くなってしまうことから、W値を1.25〜1.90と定めたものであり、この場合上側層形成後の下側層(酸化チタン層)における酸素の割合(X値)は原子比で1.2〜1.7の範囲内の値をとるようになる、言い換えれば上側層形成後の下側層のX値が1.2〜1.7を満足する場合に、前記上側層のY値は0.01〜0.40を満足するものとなる。
また、この場合、下側層のX値および上側層のY値をそれぞれ1.2〜1.7および0.01〜0.40と定めたのは、前記X値およびY値が前記の値をとった場合に、これら研磨材層のウエットブラスト時における粉砕微粒化が好適な状態で行なわれ、すぐれた研磨機能を十分に発揮することが多くの試験結果から得られ、これらの試験結果に基いて定めたものである。したがって、前記X値およびY値がそれぞれ1.2〜1.7および0.01〜0.40の範囲から外れると、前記研磨材層のウエットブラスト時における粉砕微粒化が満足に行なわれず、すぐれた研磨機能を期待することができない。
さらに、上側層および下側層の平均層厚を、それぞれ0.05〜2μmおよび0.1〜3μmとしたのは、その平均層厚が0.05μm未満および0.1μm未満では、ウエットブラスト時における下側層の粉砕化酸化チタン微粒、上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒の割合が少な過ぎて、研磨機能を十分に発揮することができず、一方、その平均層厚がそれぞれ2μmおよび3μmを越えても、研磨機能が急激に低下するようになり、いずれの場合もα型Al2O3層の表面をRa:0.2μm以下の表面粗さに研磨することができなくなるという理由にもとづくものである。
研磨液のAl2O3微粒には、ウエットブラスト時に研磨材層を構成する下側層の粉砕化酸化チタン微粒および上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒と共存した状態で、改質α型Al2O3層の表面を研磨する作用があるが、その割合が水との合量に占める割合で15質量%未満でも、また60質量%を越えても研磨機能が急激に低下するようになることから、その割合を15〜60質量%と定めた。
引き続いて、表7に示されるブラスト条件で、かつ表8に示される組み合わせでウエットブラストを施して、上記工具基体A〜Fについては、工具取り付け用中心孔周辺部に研磨材層を存在させた状態、また、上記の工具基体a〜fについては、クランプ駒当接面部分(すくい面中心部)に研磨材層を存在させた状態で、前記改質α型Al2O3層(上部層)の切刃稜線部を含むすくい面および逃げ面を、同じく表8に示される表面粗さに研磨することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層、さらに改質α型Al2O3層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子(TiCN)または六方晶結晶格子(Al2O3)を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面(TiCN層)または(0001)面(Al2O3層)の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具7の改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆サーメット工具7の従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフ、図5は、本発明被覆サーメット工具7の改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図6は、従来被覆サーメット工具7の改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:380m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:7分、
の条件(切削条件A)でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・SMn420Hの丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:9分、
の条件(切削条件B)での高マンガン鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・SS400の丸棒、
切削速度:420m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件C)での軟鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は250m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表12に示した。
Claims (1)
- (1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、
(a−1)いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上と、
(a−2)同じく化学蒸着形成された、2.5〜15μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質炭窒化チタン層、
からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態で、α型の結晶構造を示し、かつ電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ1〜20μmの平均層厚を有する改質α型酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成し、
(2)ついで、上記硬質被覆層の上部層である改質α型酸化アルミニウム層の全面に、
(b−1)下側層として、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、原子比で、
X:1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層、
(b−2)上側層として、0.05〜2μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上側層の蒸着形成時における上記下側層である酸化チタン層からの拡散酸素を示す)、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、同じく原子比で、
Y:0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層、
以上(b−1)および(b−2)で構成された研磨材層を化学蒸着形成した状態で、
ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%の酸化アルミニウム微粒を配合した研磨液を噴射し、
上記の研磨材層が噴射研磨材である酸化アルミニウム微粒の噴射により粉砕微粉化してなる粉砕化酸化チタン微粒および粉砕化窒酸化チタン微粒と、噴射研磨材としての酸化アルミニウム微粒の共存下で、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質α型酸化アルミニウム層の少なくとも切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を研磨して、これら研磨面の表面粗さを準拠規格JIS・B0601−1994に基いた測定で、Ra:0.2μm以下としたこと、
を特徴とする難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具の製造方法。
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