JP4844873B2 - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップの製造方法 - Google Patents
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Description
(a−1)下部層として、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(a−2)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するAl2O3層(以下、従来Al2O3層という)、
以上(a−1)および(a−2)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆切削チップが知られており、この被覆切削チップが、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
(a−1)上記の従来被覆切削チップの硬質被覆層の上部層としての従来Al2O3層は、一般に、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:6〜13kPa、
の条件(以下、通常条件という)で形成されるが、この通常条件形成の従来Al2O3層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成すると、図3に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が45〜90度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すこと。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、SF6:0.1〜1%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:55〜80kPa、
の条件、すなわち上記の従来Al2O3層形成条件に比して、相対的に低温高圧条件で、かつ反応ガスとして、H2Sに代ってSF6を使用する条件でAl2O3層を形成すると、この結果形成されたAl2O3層は、同じくα型の結晶構造を有するが、これを、同じく電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に示される通り、同じく表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、試験結果によれば、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を、上記の通り55〜80kPaの範囲内で変化させると、上記シャープな最高ピークの現れる位置が傾斜角区分の83〜90度の範囲内で変化すると共に、前記83〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占めるようになり、この結果の傾斜角度数分布グラフにおいて83〜90度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れるα型Al2O3層(以下、改質Al2O3層という)は、上記の通常条件形成の従来Al2O3層に比して、一段とすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
(b−1−1)まず、下側層として、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa(30〜525torr)、
とした条件で、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、オージェ分光分析装置で測定して、Tiに対する酸素の割合が原子比で1.25〜1.90、即ち、
組成式:TiOW 、
で表わした場合、
W:原子比で1.25〜1.90、
を満足する酸化チタン層を形成し、
(b−1−2)ついで、上記酸化チタン層(下側層)の上に、上側層として、通常の条件、即ち、反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
N2:4〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜90kPa(30〜675torr)、
とした条件で、0.05〜2μmの平均層厚を有するTiN層を形成すると、
(b−1−3)上記TiN層(上側層)形成時に、上記下側層を構成する酸化チタン層の酸素が拡散してきて前記上側層(TiN層)が、窒酸化チタン層で構成されるようになるが、この場合上記上側層(前記窒酸化チタン層)形成後の上記下側層である酸化チタン層は、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、酸素の割合がTiに対する原子比で1.2〜1.7、すなわち、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、
X:原子比で1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層となり、
(b−1−4)また、上記窒酸化チタン層で構成された上側層は、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、拡散酸素の割合が窒素(N)に対する原子比で0.01〜0.4、即ち、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)上側層の蒸着形成時における上記下側層である酸化チタン層からの拡散酸素を示す)、
Y:原子比で0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層となること。
上記蒸着表面に、ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%の酸化アルミニウム微粒(以下、Al2O3微粒で示す)を配合した研磨液を噴射すると、上記窒酸化チタン層および酸化チタン層は、前記Al2O3微粒によって粉砕微粒化し、窒酸化チタン微粒および酸化チタン微粒となって前記Al2O3微粒の共存下で研磨材として作用し、図12に概略斜視図で例示される通り、硬質被覆層の上部層を構成する改質Al2O3層の表面を研磨することになり、この結果研磨後の前記改質Al2O3層の表面は、いずれも準拠規格JIS・B0601−1994に基いた測定(以下の表面粗さは全てかかる準拠規格に基いた測定値を示す)で、Ra:0.2μm以下の表面粗さにまで平滑化されるようになり、前記改質Al2O3層の表面がRa:0.2μm以下の表面粗さに平滑化されると、硬質被覆層の耐チッピング性に顕著な向上効果が現れるようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
(1)チップ基体の切刃稜線部を含むすくい面および逃げ面の全面に表面に、
(a−1)下部層として、いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(a−2)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、83〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記83〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質Al2O3層、
以上(a−1)および(a−2)で構成された硬質被覆層を蒸着形成し、
(2)ついで、上記硬質被覆層の上部層である改質Al2O3層の全面に、
(b−1)下側層として、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、
X:原子比で1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層、
(b−2)上側層として、0.05〜2μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上側層の蒸着形成時における上記下側層であるTi酸化物層からの拡散酸素を示す)、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、
Y:原子比で0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層、
以上(b−1)および(b−2)で構成された研磨材層を蒸着形成した状態で、
(3)ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl2O3微粒を配合した研磨液を噴射し、
上記の研磨材層が噴射研磨材であるAl 2 O 3 微粒の噴射により粉砕微粒化してなる粉砕化酸化チタン微粒よび粉砕化窒酸化チタン微粒と、噴射研磨材としてのAl2O3微粒の共存下で、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質Al2O3層の少なくとも切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を研磨して、これら研磨面の表面粗さをRa:0.2μm以下とし、
(4)さらに、上記研磨面のすくい面および逃げ面のいずれか、またはこれら両面の全面に亘って、単一基本形状マークおよび前記単一基本形状マークの集合マークのいずれか、または両方が分散分布してなると共に、前記単一基本形状マークを、上記硬質被覆層の構成層のうちのいずれかの層が露出した掘下げ面とした硬質被覆層残留応力低減模様をレーザービーム照射形成してなる、
硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する被覆切削チップの製造方法に特徴を有するものである。
(1)硬質被覆層
(a−1)Ti化合物層(下部層)
Ti化合物層は、基本的には改質Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようにするほか、チップ基体と改質Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層のチップ基体に対する密着性向上に寄与する作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
上記の通り、改質Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置は、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによって変化するが、試験結果によれば、前記反応雰囲気圧力を、55〜80kpaとすると、最高ピークが、83〜90度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記83〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記反応雰囲気圧力が前記範囲から低い方に外れても、また高い方に外れても、測定傾斜角の最高ピーク位置は83〜90度の範囲から外れてしまい、このような場合には所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができないものである。
また、改質Al2O3層全体の平均層厚が1μm未満では、これのもつすぐれた特性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、切刃部にチッピング(微少欠け)が発生し易くなることから、その全体平均層厚を1〜15μmと定めた。
上側層を構成する窒酸化チタン層は、上記の通り、まず、酸素の割合をTiに対する原子比で1.25〜1.90(W値)とした酸化チタン層を形成し、ついで、前記酸化チタン層の上に通常の条件でTiN層を蒸着することにより形成されるものであり、したがって前記TiN層形成時における前記酸化チタン層からの酸素の拡散が不可欠となるが、前記酸化チタン層のW値が1.25未満であると、前記TiN層への酸素の拡散反応が急激に低下し、上側層における拡散酸素の割合(Y値)を原子比で0.01以上にすることができず、一方同W値が1.複合酸化物層90を越えると、前記上側層における拡散酸素の割合(Y値)が原子比で0.40を越えて多くなってしまうことから、W値を1.25〜1.90と定めたものであり、この場合上側層形成後の下側層(酸化チタン層)における酸素の割合(X値)は原子比で1.2〜1.7の範囲内の値をとるようになる、言い換えれば上側層形成後の下側層のX値が1.2〜1.7を満足する場合に、前記上側層のY値は0.01〜0.40を満足するものとなる。
また、この場合、下側層のX値および上側層のY値をそれぞれ1.2〜1.7および0.01〜0.40と定めたのは、前記X値およびY値が前記の値をとった場合に、これら研磨材層のウエットブラスト時における粉砕微粒化が好適な状態で行なわれ、すぐれた研磨機能を十分に発揮することが多くの試験結果から得られ、これらの試験結果に基いて定めたものである。したがって、前記X値およびY値がそれぞれ1.2〜1.7および0.01〜0.40の範囲から外れると、前記研磨材層のウエットブラスト時における粉砕微粒化が満足に行なわれず、すぐれた研磨機能を期待することができない。
さらに、上側層および下側層の平均層厚を、それぞれ0.05〜2μmおよび0.1〜3μmとしたのは、その平均層厚が0.05μm未満および0.1μm未満では、ウエットブラスト時における下側層の粉砕化酸化チタン微粒、上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒の割合が少な過ぎて、研磨機能を十分に発揮することができず、一方、その平均層厚がそれぞれ2μmおよび3μmを越えても、研磨機能が急激に低下するようになり、いずれの場合も複合酸化物層の表面をRa:0.2μm以下の表面粗さに研磨することができなくなるという理由にもとづくものである。
研磨液のAl2O3微粒には、ウエットブラスト時に研磨材層を構成する下側層の粉砕化酸化チタン微粒および上側層の粉砕化窒酸化チタン微粒と共存した状態で、改質複合酸化物層の表面を研磨する作用があるが、その割合が水との合量に占める割合で15質量%未満でも、また60質量%を越えても研磨機能が急激に低下するようになることから、その割合を15〜60質量%と定めた。
(a)まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表6に示される組み合わせおよび目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
ついで、表3に示される低温高圧条件で、同じく表6に示される組み合わせおよび目標層厚で、上部層である改質Al2O3層を蒸着形成し、
(b)ついで、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質Al2O3層の全面に、研磨材層の下側層形成用酸化チタン層[TiOW(1)〜(6)のいずれか]を表4に示される条件で形成した後、上側層形成用窒化チタン層(TiN層)を同じく表4に示される条件で、表7に示される目標層厚で蒸着形成して、同じく表7に示される組成、すなわち厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、それぞれ表7に示されるX値およびY値の下側層および上側層からなる研磨材層を形成し(図11参照)、
(c)引き続いて、上記の下側層および上側層からなる研磨材層形成の被覆切削チップに、表5に示されるブラスト条件で、かつ表7に示される組み合わせでウエットブラストを施して、工具取り付け孔周辺部に研磨材層を存在させた状態で、前記改質Al2O3層の切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を、同じく表7に示される表面粗さに研磨し(図12参照)、
(d)さらに、レーザービーム照射装置を用い、上記表面研磨の硬質被覆層に、
レーザービーム出力:10W、
単一基本形状マークの形状:直径が0.5mmの円形、
硬質被覆層残留応力低減模様:図4〜10に示される実施模様のうちのいずれかを表7に示される組み合わせで適用、
単一基本形状マークの露出面の掘下げ深さ:表7に硬質被覆層の全目標層厚に対する割合で示される深さ、
の条件で硬質被覆層残留応力低減模様を形成することにより本発明被覆切削チップ1〜13をそれぞれ製造した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記改質Al2O3層および従来Al2O3層のそれぞれの表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
また表6,8には、上記の各種のAl2O3層の傾斜角度数分布グラフにおいて、それぞれ83〜90度の範囲内の傾斜角区分に存在する全傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体に占める割合を示した。
なお、図2は、本発明被覆切削チップ1の改質Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆切削チップ1の従来Al2O3層の傾斜角区分を示す傾斜角度数分布グラフである。
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:370m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
の条件(切削条件Aという)で、合金鋼の断続乾式高速切削試験(通常の切削速度は200m/min.)、
被削材:JIS・FC250の丸棒、
切削速度:420m/min.、
切り込み:3mm、
送り:0.3mm/rev.、
の条件(切削条件Bという)で、鋳鉄の連続乾式高速切削試験(通常の切削速度は250m/min.)、さらに、
被削材:JIS・S30Cの丸棒、
切削速度:330m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
の条件(切削条件Cという)で、炭素鋼の連続乾式高速切削試験(通常の切削速度は170m/min.)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅が、一般に切削チップの使用寿命の目安とされている0.3mmに至るまでの切削時間を測定した。この測定結果を表9に示した。
Claims (1)
- (1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成されたサーメット基体の切刃稜線部を含むすくい面および逃げ面の全面に、
(a−1)下部層として、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(a−2)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、83〜90度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記83〜90度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質酸化アルミニウム層、
以上(a−1)および(a−2)で構成された硬質被覆層を蒸着形成し、
(2)ついで、上記硬質被覆層の上部層である改質酸化アルミニウム層の全面に、
(b−1)下側層として、0.1〜3μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、原子比で、
X:1.2〜1.7、
を満足する酸化チタン層、
(b−2)上側層として、0.05〜2μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:TiN1-Y(O)Y、
で表わした場合(ただし、(O)は上側層の蒸着形成時における上記下側層である酸化チタン層からの拡散酸素を示す)、同じく厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、同じく原子比で、
Y:0.01〜0.4、
を満足する窒酸化チタン層、
以上(b−1)および(b−2)で構成された研磨材層を化学蒸着形成した状態で、
(3)ウエットブラストにて、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%の酸化アルミニウム微粒を配合した研磨液を噴射し、
上記の研磨材層が噴射研磨材である酸化アルミニウム微粒の噴射により粉砕微粒化してなる粉砕化酸化チタン微粒および粉砕化窒酸化チタン微粒と、噴射研磨材としての酸化アルミニウム微粒の共存下で、上記硬質被覆層の上部層を構成する改質酸化アルミニウム層の少なくとも切刃稜線部を含むすくい面部分および逃げ面部分を研磨して、これら研磨面の表面粗さを準拠規格JIS・B0601−1994に基いた測定で、Ra:0.2μm以下とし、
(4)さらに、上記改質酸化アルミニウム層研磨面のすくい面および逃げ面のいずれか、またはこれら両面の全面に亘って、単一基本形状マークおよび前記単一基本形状マークの集合マークのいずれか、または両方が分散分布してなると共に、前記単一基本形状マークを、上記硬質被覆層の構成層のうちのいずれかの層が露出した掘下げ面とした硬質被覆層残留応力低減模様をレーザービーム照射形成すること、
を特徴とする高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削スローアウエイチップの製造方法。
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