上記特許文献1に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイールによれば、その操作部がタッチパネルとして形成されているので、この操作部を操作するためにはタッチパネル上に表示されている各種スイッチの位置を確認することを要し、またこの表示されたスイッチ位置は操作状況に応じて多様な形で表示されるため、乗員はその操作の度にタッチパネルに視線を落とす必要がある。このようにステアリングホイールに視線を落とすと、車外環境を認識し難くなり、一方、車外環境に十分に気を配ると、スイッチの位置を認識し難く、操作部の操作性が悪化するという不具合がある。
このような不具合を解消するために、触感で操作部を把握できるように、操作部をパッド部から大きく突出形成してこの操作部を回転操作やシフト操作するように構成させることも考えられるが、このようにパッド部から大きく突出して形成された場合には、運転者に圧迫感を与えるとともに、この操作部がハンドル操作を行う運転者に接触するなどして邪魔になるという不都合があった。また、このパッド部における中央の固定部は、エアバッグ膨張時にその周囲が展開されることにより瞬間的に比較的大きい応力が作用し、この応力に基づいて凹部の開口部が縮小して操作部に外力が生じ、該操作部を破損する虞がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、車載装置を操作するための操作部の操作性を向上させつつ、該操作部の破損を抑制し、しかも運転者の違和感を低減することができるエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、この発明に係るエアバッグ装置付きステアリングホイールは、車両の衝突時に膨脹するエアバッグを有するエアバッグ装置が内蔵されたパッド部を中央部に備え、このパッド部はその周縁部が上記エアバッグの膨張時に展開する展開部として構成されるとともにその中央部が上記エアバッグの膨張時に展開しない固定部として構成され、この固定部に回転操作および上下左右のシフト操作の少なくともいずれか一方の操作を行うことにより車載装置における選択要素を選択可能な操作部が設けられたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、上記パッド部は少なくとも上記固定部における運転者側の面部に凹部を有し、上記操作部はその側面を触接することができるように該側面が上記凹部の側壁面から離間した状態で該凹部内に配設されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、操作部は、回転操作および上下左右のシフト操作の少なくともいずれか一方の操作を可能に構成されるので、従来のタッチパネルのように視線を操作部に落としてボタンの位置を探す必要がなく、種々の車載装置を操作可能な操作部の位置を触感で把握することができ、車外環境を認識しつつ操作部の操作も可能となり、その操作性を向上させることができる。
また、このように上記操作部を回転操作、シフト操作可能に構成した場合には、該操作部のパッド部からの突出が懸念されるが、この発明によれば、上記パッド部は少なくとも上記固定部における運転者側の面部に凹部を有し、上記操作部は該凹部内に配設されているので、上記操作部による突出量を低減し、或いは無くすことができ、運転者の圧迫感、すなわち違和感を低減ないしは無くすことができるとともに、邪魔な突出部分を排し円滑にハンドルを操作することができる。
また、操作部を凹部内に配設した場合にはエアバッグ膨張時における操作部の破損が懸念されるが、この発明によれば、操作部は、回転操作および上下左右のシフト操作の少なくともいずれか一方の操作を可能に構成されるとともに、この操作時に操作部の側面を触接することができるように、上記操作部の側面が上記凹部の側壁面から離間した状態で該凹部内に配設されているので、上記離間距離によって上記操作部の操作性を向上させつつ、この離間距離を利用してエアバッグ膨張時のパッド部の変形による操作部の破損を有効に抑制することができる。すなわち、運転者が上記操作部の側面を触接することができるように操作部を配置するためには操作部の側面と凹部の側壁面との間をエアバッグ膨張時の凹部の変形量に対して十分に離間させなければならず、この離間距離をエアバッグ膨張時の固定部の変形時の遊びとして利用して、操作部の変形および破損を有効に防止することができる。
ここで、上記操作部の側面と上記凹部の側壁面との離間距離は、上記操作部の側面を触接可能な距離であればその具体的構成は特に限定されるものではないが、例えば運転者の指部が挿通可能に設定されているのが好ましい(請求項2)。
このように構成すれば、上記操作部の側面と上記凹部の側壁面との間に運転者、すなわち標準的な体型の運転者の指部を挿通させることができ、その操作部の操作性を向上させることができる。しかも、上記操作部の側面と上記凹部の側壁面との間を十分に離間させることができ、操作部の破損をより確実に防止することができる。
上記パッド部に占める凹部の領域は特に限定されるものではなく、例えば上記固定部から上記展開部の内周縁部にまで跨るように設けられるものや上記固定部における運転者側の面部の一部領域に凹部が形成されているものであってもよいが、上記固定部は、その運転者側の面部の略全面に上記凹部が設けられているのが好ましい(請求項3)。
このように構成すれば、固定部だけに形成された凹部内に配設される操作部を比較的大きく形成することができ、この操作部を大きく形成することにより操作部の操作性をさらに向上させることができる。また、展開部まで凹部を拡張しないため、エアバッグ装置の収納空間を十分に確保でき、エアバッグの展開性を阻害させることがない。
上記操作部が操作する車載装置は、特に限定されるものではなく、ナビゲーション装置、オーディオ装置、空調装置、車両速度や車間距離などを自動制御するオートクルーズ装置、外部サーバーなどと通信して各種情報を取得するための情報通信装置などを例示することができる。いずれの場合でも、上記操作部は、インストゥルメントパネルおよびフロントガラスの少なくともいずれか一方に設けられた表示手段に表示される選択要素を選択操作するものであるのが好ましい(請求項4)。
このように構成すれば、上記操作部で上記表示手段に表示された選択要素を選択操作することにより操作するのでその操作性を向上させることができる。しかも、インストゥルメントパネルおよびフロントガラスの少なくともいずれか一方に設けられた表示手段の選択操作を手元で行うことができるとともに、従来のタッチパネルと異なり視線が上方に向けられるので、車外環境を確認しつつ選択操作することができ、その利便性を向上させることができる。
また、この発明において、上記展開部は、その内部に上記エアバッグを収納するエアバッグ収納部を有し、このエアバッグ収納部は、上記固定部の車両前方位置にまで延設されているのが好ましい(請求項5)。
このように構成すれば、上記エアバッグ収納部にエアバッグを効率的に収納させることができるため、上記パッド部をコンパクトに構成しつつ、そのエアバッグの収納性を高めることができる。
さらに、この発明において、上記操作部は、その運転者側の面部に装飾部材が配設されているのが好ましい(請求項6)。
このように構成すれば、操作部の美観を向上させることができる。しかも、上記操作部の破損が防止されることからこの操作部に配設される装飾部材の破損も効果的に防止することができる。
この場合、上記装飾部材は透光性を有し、この装飾部材を介して車室側を照明する照明手段がさらに設けられているのが好ましく(請求項7)、また、上記装飾部材は、上記照明手段を収納する収納孔が設けられているのが好ましい(請求項8)。
このように構成すれば、この装飾部材による装飾効果を一層向上させることができるとともに、夜間等において操作部の位置確認を確実に行うことができることからこの操作部の操作性を一層向上させることができる。しかも、このように構成した場合には一般的に外力が作用した場合に装飾部材が破損し易くなるが、上述したように装飾部材の破損が効果的に防止されているので、装飾性を向上させるために、装飾部材に形成した収納孔に照明手段が収納された構成を採用することができる。
また、この発明において、上記操作部の運転者側の面部が上記パッド部の運転者側の面部に対して若干突出、或いは若干凹陥しているものであってもよいが、上記操作部および上記パッド部は、その操作部の運転者側の面部と上記パッド部の運転者側の面部とが略面一となるように寸法設定されているのが好ましい(請求項9)。
このように構成すれば、操作性を良好なまま維持しつつ、ステアリングホイールの意匠性をも向上させることができるとともに、ハンドルの操作性もより一層円滑なものとすることができる。
また、本発明に係る別のエアバッグ装置付きステアリングホイールは、車両の衝突時に膨脹するエアバッグを有するエアバッグ装置が内蔵されたパッド部を中央部に備え、このパッド部はその周縁部が上記エアバッグの膨張時に展開する展開部として構成されるとともにその中央部が上記エアバッグの膨張時に展開しない固定部として構成され、この固定部に回転操作およびシフト操作の少なくともいずれか一方の操作を行うことにより車載装置を操作可能な操作部が設けられたエアバッグ装置付きステアリングホイールであって、上記パッド部は少なくとも上記固定部における運転者側の面部に凹部を有し、上記操作部はその運転者側の側面に透光性を有する装飾部材が配設されるとともにこの装飾部材を介して車室側を照明する照明手段が配設され、この操作部は上記エアバッグの膨張時にその側面が上記凹部の側壁面に接触しないようにこの凹部の側壁面から離間した状態で該凹部内に配設されていることを特徴とするものである(請求項10)。
この発明によれば、操作部は、回転操作およびシフト操作の少なくともいずれか一方の操作を可能に構成されるので、従来のタッチパネルのように視線を操作部に落としてボタンの位置を探す必要がなく、種々の車載装置を操作可能な操作部の位置を触感で把握することができ、車外環境を認識しつつ操作部の操作も可能となり、その操作性を向上させることができる。
また、このように上記操作部を回転操作、シフト操作可能に構成した場合には、該操作部のパッド部からの突出が懸念されるが、この発明によれば、上記パッド部は少なくとも上記固定部における運転者側の面部に凹部を有し、上記操作部は該凹部内に配設されているので、上記操作部による突出量を低減し、或いは無くすことができ、運転者の圧迫感、すなわち違和感を低減ないしは無くすことができるとともに、邪魔な突出部分を排し円滑にハンドルを操作することができる。
また、操作部を凹部内に配設した場合にはエアバッグ膨張時における操作部の破損、特にこの操作部に配設された装飾部材の破損が懸念されるが、この発明によれば、操作部は上記エアバッグの膨張時にその側面が上記凹部の側壁面に接触しないようにこの凹部の側壁面から離間した状態で該凹部内に配設されているので、上記離間距離を利用してエアバッグ膨張時の固定部の変形による操作部および装飾部材の破損を有効に防止することができる。したがって、上記操作部に比較的破損し易そうな装飾部材を配設することもでき、これらの装飾部材によってステアリングホイールの意匠性を向上させることができる。
この発明によれば、従来のタッチパネルのように視線を操作部に落としてボタンの位置を探す必要がなく、触感で操作部の位置を把握することができ、車外環境を認識しつつ操作部の操作も可能となり、その操作性をも向上させることができるという利点がある。また、操作部による突出量を低減し、或いは無くすことができ、運転者の圧迫感、すなわち違和感を低減ないしは無くすことができるとともに、邪魔な突出部分を排し円滑にハンドルを操作することができる。しかも、上記操作部の側面が上記凹部の側壁面から離間した状態で操作部が該凹部内に配設されているので、上記離間距離によって上記操作部の操作性を向上させつつ、この離間距離を利用してエアバッグ膨張時の固定部の変形による操作部の破損を有効に防止することができる。
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は当実施形態に係るエアバッグ装置付きステアリングホイールが設けられた車室前部を示す概略図である。
この車室前部には、車室床面を構成するフロアパネル2に連設してダッシュパネル(不図示)が設けられ、このダッシュパネルの車両後方側に車室前部を構成するインストゥルメントパネル3が設けられている。このインストゥルメントパネル3には、各種メータ類31、空調装置32、ナビゲーション装置の表示装置33などが装備されるとともに、メータ類31が配置された運転席側には車両を操作するステアリング装置4が装備されている。
ステアリング装置4は、運転者によって操作されるステアリングホイール5を備え、該ステアリングホイール5が回転操作されることにより、ステアリングシャフト51(図4参照)、ギヤボックス(不図示)を経て、リンケージ(不図示)を車軸に作用させるように構成されている。図2は、ステアリングホイールを拡大して示す平面図である。
このステアリングホイール5は、衝突センサ(不図示)によって車両の衝突が検出された場合に、図3に示すように、インフレータ62から供給されたガスによって膨張展開するエアバッグ61を有するエアバッグ装置6が内蔵され、乗員(運転者)の二次衝突を防止するものとなされている。なお、エアバッグ装置6は、エアバッグ61と、このエアバッグ61を膨張させるインフレータ62とを含んで構成されている。
具体的には、このステアリングホイール5は、図2に示すように、運転者によって把持される円形環状のリング部7と、このリング部7の略中央部に配置されるパッド部8と、リング部7とパッド部8とを連結するスポーク部9とを備え、図4に示すように、パッド部8においてステアリングシャフト51に固定されている。当実施形態では、リング部7が4本のスポーク部9でパッド部8に支持され、このパッド部8内に上記エアバッグ装置6が内蔵されている。なお、リング部7をパッド部8に支持するスポーク部9の本数は特に限定されるものではなく、例えば3本のスポーク部であってもよい。
リング部7およびスポーク部9は、所定の形状を有する芯材が例えばウレタン材などからなる合成樹脂製の被覆層によって被覆されることにより形成されている。
パッド部8は、ポリプロピレン系、ポリエチレン系等の合成樹脂から正面視(運転者側から見て)略逆台形状に形成されている。このパッド部8は、ステアリングシャフト51に固定される基部80(図4参照)と、この基部80の運転者側であって上記パッド部8の周縁部に設けられた展開部81と、その中央部、すなわち展開部81の内側に設けられた固定部82とを備え、この展開部81にドーナツ状に膨張するエアバッグ61が折り畳まれた状態で収納されている。
基部80は、図4に示すように、漏斗状に形成され、ステアリングシャフト51の先端部に固定されている。この基部80は、運転者側に大きく開口しこの開口縁部に外側に延出したフランジ部80cを有する芯材80aと、この芯材80aを被覆するトリム部80bとを備え、展開部81および固定部82を、ステアリングシャフト51(ステアリング軸)方向に沿って相対移動可能で、かつ、ホーンスイッチ部20を介して運転者側に付勢した状態で保持している。このホーンスイッチ部20は、展開部81に固定された接点部材21と、上記芯材80aのフランジ部80cに立設され上記接点部材21をガイドするとともにこの接点部材21と接離する通電端子22aが基端部に設けられたガイド軸22と、通電端子22aに対して離間する方向に接点部材21を付勢する付勢部材23とを備え、パッド部8(より具体的には展開部81および固定部82)が運転者側から押圧されることにより付勢部材23の弾性力に抗して接点部材21がガイド軸22に沿って移動し、該接点部材21が通電端子22aに当接することにより警笛が発せられるように構成されている。
展開部81は、その略中央部に固定部82が取り付けられ、その周縁部にエアバッグが小さく折り畳まれた状態で収納されるとともに、該エアバッグ61の膨張時にこの周縁部に設けられた後述するカバー83が展開するように構成されている。
すなわち、展開部81は、図5に明示するように、その中央の車両前方側にエアバッグ装置6のインフレータ62がそのガス噴出孔62aをエアバッグ61内に臨んだ状態で固設され、このインフレータ62を横断するように、コ字状の支持ブラケット87が取り付けられている。この支持ブラケット87は、固定部82を支持するためのものである。また、展開部81は、その周縁部が中空状に形成され、その内部にエアバッグ61を収納するエアバッグ収納部81aを有するとともに、このエアバッグ61の膨張時に運転者側のカバー83が破断部84(図2参照)において破断してヒンジ部85を中心に回転展開することによりエアバッグ61の膨張展開を許容し得るように構成されている。
エアバッグ収納部81aは、固定部82を取り囲むようにドーナツ型に形成され、後述するように固定部82が車両前方側に向かうに従って縮径する断面視略台形状に形成されることにより、固定部82の周縁部の車両前方位置、すなわちインフレータ62と固定部82との間にまで延設されている。このようにエアバッグ収納部81aが固定部82の車両前方位置にまで延設されているので、パッド部8の正面視の占有領域をコンパクトに形成することができる。
カバー83は、図2に示すように、展開部81の運転者側の壁面部を構成するものであり、固定部82を取り囲むように配設されている。破断部84は、溝部として形成され、エアバッグ収納部81a側から外力が作用することにより、比較的簡単に破断するように構成される。当実施形態では、この破断部84が固定部82を中心に放射状に形成されている。そして、この破断部84の間であって、展開部81の外周側に、ヒンジ部85が設けられ、破断部84で破断されたカバー83の各パーツ83aがこのヒンジ部85を中心に運転手側からパッド部8の外側に回転展開するように構成されている。また、このカバー83の内周端部は、図5に明示するように、断面視略フック状に形成され、車両前方側に凹陥したこのフック状の係合部83bにおいて固定部82の後述する係合フランジ部82aと係合するものとなされている。
一方、固定部82は、上記エアバッグ61の膨張時に展開せず、展開部81に固設されている。この固定部82は、図4に示すように、エアバッグ収納部81aを大幅に阻害しないように車両前方側に向かうに従って縮径して断面視で略台形状に形成され、その運転者側壁面部に外方に向かって突設された係合フランジ部82aを展開部81の係合部83bに係合させた状態で、その底部(車両前方側部)において支持ブラケット87に取り付けられている。図5および図6は、固定部を拡大して示す断面図である。
固定部82は、その運転者側の壁面部の略全面に、車両前方側に凹陥した凹部88を有する。凹部88は、正面視において略円形状に形成され、その深さが5mm以上に設定されている。また、凹部88は、その側壁面(周壁面)が開口縁部に向かうに従って外側に傾斜した傾斜面88aとして形成されている。この凹部88内には、車載装置を操作可能な操作部90が配設され、より詳しくはこの操作部90の後述する板状触接部91が略完全に収納された状態で配設されている。したがって、この操作部90の運転者側の壁面は、パッド部8、より詳しくは固定部82の運転者側壁面と略面一になるように寸法設定されている。
この操作部90は、回転操作および上下左右のシフト操作可能に構成され、これらの操作を行うことにより車載装置、ここでは上記ナビゲーション装置における表示装置33の画面上に表示された選択要素の選択操作を行うことができるように構成されている。例えば、操作部90は、回転操作することにより、表示装置33のメニュー画面に表示された操作項目を順次送り操作することができるように構成されるとともに、シフト操作することにより、表示装置33の画面に表示されたポインタを移動操作することができるように構成されている。
具体的には、操作部90は、円板状に形成され一面を運転者側に向けた状態で配設されるとともに運転者によって触接される板状触接部91と、この板状触接部91の裏面側にステアリング軸方向に突出する操作軸部92とを備え、この板状触接部91の専ら側面が運転者によって触接されてこの板状触接部91の後述するダイヤルスイッチ部95を転動させ、或いはこの板状触接部91自体を上下左右にシフトさせることにより、選択操作できるように構成されている。
板状触接部91は、凹部88よりも小さく形成された板状体であり、その側面を標準的な体型を有する運転者が触接することができるように、より詳しくはこの側面と凹部88の側壁面との間に該運転者の指部が挿入可能なように、その側面が凹部88の側壁面から離間した状態で凹部88内に配設されている。この離間距離は、上記運転者の指部が挿入可能に設定されているだけでなく、操作部90の上下左右のシフト操作に伴って板状触接部91が凹部88内を移動できるように設定されている。また、板状触接部91は、その側面が運転者側に向かうに従ってこの触接部91の内側に傾倒した傾斜触接面91aとして形成され、運転者がこの板状触接部91の側面を触接して、より操作し易いように工夫されている。
さらに具体的には、板状触接部91は、図5および図6に示すように、運転者側の壁面の略中央部に押圧スイッチ収納凹部93aが設けられるとともに周縁部に環状にダイヤルスイッチ収納凹部93bが設けられた本体部93と、この押圧スイッチ収納凹部93a内に配設され本体部93に対してステアリング軸方向に沿って相対移動可能な押圧スイッチ部94と、上記ダイヤルスイッチ収納凹部93b内に配設され本体部93に対して相対的に回転可能なダイヤルスイッチ部95とを備える。
押圧スイッチ部94は、例えば表示装置33に表示された選択要素の決定ボタンとして機能するものである。この押圧スイッチ部94は、図6に明示するように、裏面側にボス部94aが設けられるとともにこのボス部94aが上記押圧スイッチ収納凹部93a内の中心に突設された突出軸部93cに嵌挿されることにより、ステアリング軸方向に移動可能に構成されている。なお、図示していないが、押圧スイッチ部94の所定箇所には、この突出軸部93cがボス部94aから抜出しないようにストッパが設けられている。
そして、この押圧スイッチ部94は、弾性部材96によって運転者側に付勢され、この弾性部材96の弾性力に抗してステアリング軸に沿って押圧操作が可能に構成されている。また、ボス部94aの底面およびこの底面に対向する押圧スイッチ収納凹部93aの底面部に、それぞれ互いに接離する接点部93dが設けられ、これらの接点部93dが押圧操作に伴って当接するように設定されている。そして、これらの接点部93dが当接することにより所定の決定信号を図示しない車載装置のコントロール部に送信するものとなされている。
この押圧スイッチ部94は、円板状に形成されるとともに、その運転者側の面部が通常の体型を有する運転者の掌よりも小さく設定され、例えばその直径が7cm以下に設定されている。さらに、押圧スイッチ部94は、板状触接部91の運転者側面部に対して略面一ないしは凹陥して配置されている。したがって、パッド部8を運転者が掌で押圧操作した場合には、この運転者の力が板状触接部91の押圧スイッチ収納凹部93a周りの土手部91bに作用して押圧スイッチ部94に作用し難く構成されているので、ホーンスイッチ部20の押圧操作時に誤って押圧スイッチ部94が押圧操作され、或いは押圧スイッチ部94の押圧操作とホーンスイッチ部20の押圧操作とが混同されることを効果的に抑制することができる。
また、この押圧スイッチ部94は、その中央部に装飾板97(装飾部材に相当)が嵌め込まれ、その意匠性が向上されている。この装飾板97は、透光部材、例えばアクリル板などの透明ないしは半透明の板状体が用いられ、表面に遮光性の塗料が塗布されたマスク部97aが設けられることによりマスクされていない部分97bが後述する光源部98(照明手段に相当)によって照明されるようになっている。例えば、この非マスク部97bがエンブレムの形状に合わせて形成されることによりこの押圧スイッチ部94の意匠性を向上させることができる。
この装飾板97は、図7に明示するように、その非マスク部97bの裏面側にV字状の溝部97cが形成され、光源部98からの投光を乱反射し易いように工夫されている。また、この装飾板97が嵌め込まれる押圧スイッチ部94の凹部94cは、その底面であって上記溝部97cに対向する位置に、白色や銀色等の塗料が塗布されることにより光源部98からの投光を乱反射させる反射部94dが形成されている。
光源部98は、当実施形態ではLED(Light Emitting Diode)により構成され、上記凹部94cの側壁面に設けられた収納孔94e内に配設されている。当実施形態では、光源部98は、図8に示すように、正面視において凹部94cの上下左右の計4箇所に配設されている。したがって、これらの光源部98から照射された光は、反射部94d、溝部97cで乱反射され、間接照明によって非マスク部97bを照明している。この光源部98は、例えばルームライト、或いはスモールライト(車幅灯)、ヘッドライトに連動して点灯するように構成される。なお、図7の実施形態では、押圧スイッチ部94の運転者側面の反射部94d以外を黒等のダーク系の塗料等を塗布すれば、上記マスク部97aを省略することができる。
ダイヤルスイッチ部95は、リング状に形成され、板状触接部91内にこのダイヤルスイッチ部95の裏面と接するようにほとんど埋没されるように設けられたボールベアリング(不図示)によってステアリング軸に平行な回転軸を中心に回転操作可能に構成されている。このダイヤルスイッチ部95は、ダイヤルスイッチ収納凹部93b内に配設され、その表面(運転者側の面)が上記傾斜触接面91aの一部を構成している。このダイヤルスイッチ部95は、その表面に放射状に細溝部95aが形成されるとともに、所定間隔おきに運転者の指部が係合し易くなるように球面状の凹陥部としての指係合部95bが形成され、このダイヤルスイッチ部95の回転操作を行い易いように構成されている。
また、このダイヤルスイッチ部95は、その車両前方側の面部に、リング状にN極磁石とS極磁石(ともに不図示)とが交互に配設されている。一方、本体部93のダイヤルスイッチ収納凹部93bの側面であって、上記ダイヤルスイッチ部95の車両前方側の面部に対向する所定の位置にホール素子からなる磁場検出部95cが設けられている。そして、ダイヤルスイッチ部95の回転に伴って変化する磁場を磁場検出部95cで検出することにより所定の信号が制御装置(不図示)に送信され、この信号に基づいて表示装置33の画面上の選択要素を変更するように構成されている。
一方、操作軸部92は、図6および図8に示すように、ステアリング軸と平行な軸を有する円柱状部材として、板状触接部91の本体部93の裏面側略中心部に、この本体部93に一体に形成されている。この操作軸部92は、固定部82の凹部88における底面に設けられた有底の操作ガイド孔89に挿入され、操作部90のシフト方向およびシフト量を規制するものとなされている。具体的には、操作軸部92は、図8に明示するように、その軸方向中間部に十字形状の規制翼片111を有し、この規制翼片111が操作ガイド孔89の所定箇所に十字状に形成された位置決め孔110に遊嵌されることにより、操作部90の抜脱およびその全体の回転を防止するとともに、該操作部90の姿勢を保持するものとなされている。また、この操作軸部92は、車両前方側の端部に軸方向に沿ったピン挿通孔99aを有する軸本体99と、このピン挿通孔99aに軸部が挿入されるとともに付勢部材101によって操作ガイド孔89の底面に付勢された制御ピン100とを備え、軸本体99の所定箇所に設けられた、図示しないストッパによってステアリング軸方向に沿った移動が拘束されるように構成されている。この制御ピン100は、先端部が半球状に形成されるとともに導電部材として構成され、所定の回路を構成する配線102の一端が接続されている。
また、操作ガイド孔89は、上記したように操作軸部92が挿入されている。操作ガイド孔89の底面は、図6および図9に明示するように、その中心部に向かって深くなる傾斜ガイド面89aとして構成されるとともに、上記位置決め孔110の十字に対応して操作部90の上下左右のシフト移動に伴って制御ピン100が当接することにより閉回路を構成するシフト用接点部103が配設されている。したがって、運転者が操作部90を触接してこの操作部90を上下左右にシフト操作すると、操作軸部92も操作ガイド孔89内を移動して制御ピン100がシフト用接点部103に当接して閉回路を形成し、所定の制御が実行されるとともに、運転者が操作部90から手を離すと、制御ピン100が操作ガイド孔89の底面である傾斜ガイド面89aに付勢されていることから、この傾斜ガイド面89aに沿って操作軸部92、言い換えると操作部90が操作ガイド孔89の中心部、すなわち中立位置に自動的に移動する。なお、これらの制御ピン100やシフト用接点部103等、この操作部90に必要な各配線は、この操作ガイド孔89内に収納された集中分配器104に接続されるように構成されている。この集中分配器104は一ないし複数の所定のコントロール部(不図示)に接続され、操作部90等から送られてくる信号を各コントロール部に送信するものとなされている。
以上の構成を有するエアバッグ装置6付きステアリングホイール5によれば、エアバッグ61の展開時においても固定部82が展開せずに展開部81を介して基部80に固定されているので、この固定部82に表示装置33の画面に表示された選択要素の選択操作を行う操作部90を設けることができる。
そして、この操作部90を回転操作する場合には、図2に示すように、ステアリングホイール5に掛けられた運転者の手の第1指部(親指)等を伸ばしてこの指部を板状触接部91の傾斜触接面91aに添える。そして、この指部でダイヤルスイッチ部95を時計方向、或いは反時計方向に回転させることによりこの操作部90を容易に回転操作することができる。一方、操作部90をシフト操作する場合にも、上記と同様、運転者の指部を板状触接部91の傾斜触接面91aであって、シフト方向と反対側の側面に添え、この指部をシフト方向に動かすことにより、操作部90を容易にシフト操作することができる。そして、これらの操作によって、表示装置33の画面上の選択要素を選択して、この選択された要素で決定する場合には、押圧スイッチ部94を押圧することによりナビゲーション装置のコントロール部(不図示)によって所定の処理が実行される。
これらの各操作のとき、操作部90は、その側面が固定部82の凹部88における傾斜面88aから離間した状態で配置されているとともに、その側面が傾斜触接面91aとして形成されているので、容易に指部を操作部90の側面と凹部88の側壁面との間に挿入することができ、回転操作およびシフト操作における操作性を向上させることができる。しかも、操作部90が凹部88内に突出して設けられているので、触感でこの操作部90の位置を認識することができ、インストゥルメントパネル3に設けられた表示装置33を見ながら各操作を行うことができる。したがって、従来のタッチパネルのように視線を下方に落として操作部を操作する必要がなく、車外環境を認識しつつナビゲーション装置の操作を行うことができる。
また、この操作部90は棒状部材に比べて比較的大きく形成することができる板状触接部91を有するので、触感で容易に操作部90の位置を把握することができる。しかも、板状触接部91を比較的大きく形成すれば、ステアリングホイール5を把持する運転者がその手を大きく移動させなくても板状触接部91に触接することができ、この点においても操作部90の操作性を向上させることができる。
さらに、この操作部90は、その運転者側の壁面が固定部82の運転者側壁面と略面一になるように、固定部82の凹部88内に略完全に収納されているので、パッド部8の運転者側壁面に対する操作部90の突出量を無くすことができ、運転者の圧迫感、すなわち、違和感を無くすことができる。しかも、操作部90がパッド部8から突出していないので、運転者がステアリングホイール5の操作時にこの操作部90に手が引っ掛かって邪魔になるという事態も防止することができ、運転者が円滑にハンドルを操作することができる。また、操作部90の運転者側壁面から運転席に着座する運転者までの距離を適正に保つことができ、エアバッグ装置6が作動しないような衝撃が作用した場合でも、運転者が操作部90に接触するという事態を防止することができる。
また、板状触接部91を上記凹部88内に略完全に収納させるためには、この板状触接部91が比較的薄く形成されるのが好ましいが、このように薄く形成された場合には、板状触接部91の側面の面積が減少して操作性が悪化することが懸念されるが、このステアリングホイール5によれば、この板状触接部91はその側面が傾斜触接面91aとして形成されているので、板状触接部91を薄く形成することができるとともに、同時に傾斜触接面91aによって触接面積を確保することができ、操作部90の操作性を確保することができる。
前部車体の所定箇所に配設された衝突センサ(不図示)が車両の例えば前面衝突を検出した場合には、衝突検知信号がインフレータ62に送られ、インフレータ62から不活性ガスが排出される。エアバッグ61は、この不活性ガスが充填されることにより膨張し、展開部81の破断部84を引き裂いてカバー83の各パーツ83aを展開させ、ステアリングホイール5の運転者側に展開される。各パーツ83aはその内端部に設けられた係合部83bが固定部82の係合フランジ部82aを乗り越えて回転展開されるとともに、固定部82の車両前方側にまでエアバッグ収納部81aが延設されているので、このエアバッグ61が膨張する際には、固定部82はステアリング軸に直交する方向等から種々の外力が作用して変形する。特に、固定部82を、図4に示すように、エアバッグ収納部81aを大幅に阻害しないように車両前方側に向かうに従って縮径して断面視で略台形状に形成すると、より大きく変形し易くなる。
このように固定部82が変形すると、その凹部88も変形してその内部に配設されている操作部90の破損が懸念される。特に、パッド部8からの突出を抑制するためにはその板状触接部91は比較的薄く形成され、しかも、この板状触接部91には意匠性を向上させるために、装飾板97や光源部98およびこの光源部98を収納するための収納孔94eなどが形成されているので、この板状触接部91の破損が懸念される。
しかしながら、当実施形態のステアリングホイール5によれば、操作部90は、操作時にその側面を触接することができるように、操作部90の側面が凹部88の側壁面から離間した状態で配設されているので、この離間距離を利用してエアバッグ61の膨張時の固定部82の変形による操作部90、特に板状触接部91の破損を有効に防止することができる。
なお、以上に説明したエアバッグ装置6付きステアリングホイール5は、本発明の構造に係る一実施形態であって、この構造の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。変形例を以下に説明する。
(1)上記実施形態では、操作部90は、回転操作およびシフト操作のいずれの操作も可能に構成されているが、回転操作およびシフト操作のいずれか一方の操作のみ可能に構成されるものであってもよい。また、操作部90による各操作のための具体的構成は、上記実施形態に記載されたものに限らず、その他の公知の構成を採用するものであってもよい。
さらに、この操作部90によって操作される車載装置は、ナビゲーション装置に限定されるものではなく、オーディオ装置、空調装置、車両速度や車間距離などを自動制御するオートクルーズ装置、外部サーバーなどと通信して各種情報を取得するための情報通信装置などであってもよい。
(2)上記実施形態では、液晶、CRT等からなる表示装置33がインストゥルメントパネル3内に設けられたものが示されているが、この表示装置33の設置箇所はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、表示装置133は、情報画像が発光表示される発光表示パネル133aと、この発光表示パネル133aの表示面から投影された情報画像を反射するコンバイナ133bとを備えた、いわゆるヘッドアップディスプレイとして構成されるものであってもよい。この場合でも、車外環境を認識しつつ、情報画像の選択要素を選択することができる。
(3)上記実施形態において、固定部82に設けられた凹部88の底面における周縁部に、一端に光源部が設けられた光ファイバを環状に形成して埋設することにより発光部を構成するものとしてもよい。
(4)上記実施形態では、光源部98によって装飾板97の非マスク部97bを間接的に照明するように構成されているが、この装飾板97の照明構造は特に限定されるものではなく、例えば図11に示すように、表面に明るい色が施された押圧スイッチ部94にクリア板197aを配設し、このクリア板197aのマスク部97aの裏側にLED等からなる光源部198を収納する収納孔200を形成して、この収納孔200に光源部198を収納するように構成してもよい。このように、装飾板に収納孔200が形成されることにより装飾板の剛性は低下するものの、板状触接部の側面が傾斜触接面91aとして形成されているため、エアバッグ展開時の応力がダイレクトに装飾板に作用せず低減された状態で伝達されるため、装飾板の損傷を効果的に抑制しつつ、装飾性を高めることができる。
(5)上記実施形態では、操作部90は、固定部82の凹部88に略完全に収納されているが、例えば操作部90の運転者側の壁面部が若干パッド部8から突出されるようなものであってもよい。
(6)上記実施形態では、凹部88が固定部82だけに形成されたものについて説明しているが、この凹部はパッド部8において固定部82から展開部81の内周部に跨って形成されるものであってもよい。すなわち、図5の破線250で示すように、展開部が凹部の底面にまで延びて形成され、その結果、凹部が固定部と展開部とに跨って配置されるように構成されてもよいし、或いは展開部が傾斜面で固定部と破断されるように構成されてもよい。
(7)また、上記実施形態では、板状触接部91の側面が傾斜触接面91aとして構成されているが、この側面は凹部88の底面に対して垂直な縦面として構成されるものであってもよい。
(8)上記実施形態における装飾板97は、押圧スイッチ部94が省略される場合には板状触接部91に直接設けられるものであってもよい。