JP4843781B2 - グルコース結合蛋白質 - Google Patents

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本発明は、基質特異性に優れた改良されたグルコース結合蛋白質(GBP)に関する。さらに、本発明は、グルコース結合蛋白質をコードする遺伝子、該遺伝子断片を組み込んでなる組み換えベクター、該組み換えベクターで形質転換された形質転換体、該形質転換体を培養することによるGBPの製造方法等に関する。
血中グルコース濃度は、糖尿病の重要なマーカーである。また、微生物を用いる発酵生産においては、プロセスをモニタリングするためにグルコース濃度を定量する。従来、グルコースはグルコースオキシダーゼ(GOD)、ピロロキノリンキノンを補酵素とするグルコース脱水素酵素、グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)を用いる酵素法により定量されていた。しかし、酵素法ではグルコース酸化反応にともない発生する過酸化水素を定量するためカタラーゼあるいはパーオキシダーゼをアッセイ系に添加する必要や、酸化還元色素の添加ならびにそれを検出するための電気化学的デバイス、あるいは、G6PDHでは反応系に補酵素であるNAD(P)を添加しなければならないなどの分子認識素子以外に複数の反応物質を検出系に加えなければならなかった。。
ところで、基質との結合により蛋白質のコンフォメーションが変化する結合蛋白質は、同分子のトリプトファン残基やチロシン残基に基づく自家蛍光あるいはアミノ酸置換によって導入されたチオール基を使って、導入された蛍光色素の蛍光変化を指標として、基質結合にもとづく結合蛋白質のコンフォメーション変化が蛍光波長あるいは強度の変化となって観察される。
したがって、これまでにグルコースやアミノ酸などに結合する結合蛋白質を蛍光標識することによって、グルコースあるいはアミノ酸の蛍光分析方法が提案されている(非特許文献1)。
しかし、これまでにグルコースに結合する蛋白質としては、大腸菌由来のガラクトース・グルコース結合蛋白質(以下グルコース結合蛋白質)をはじめとして、数種知られているが、その中でグルコースに特異性の高いグルコース結合蛋白質は報告されていない。
特に前出の大腸菌由来グルコース結合蛋白質はグルコースと同等のレベルにてガラクトースと結合することから、血糖診断用の素子として応用することは困難であり、同蛋白質のグルコースに対する特異性を向上させることが望まれていた。
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下のものがある。
Periplasmic bindind proteins:a versatile superfamily for protein engineering; M.A.Dwyer and H.W.Hellinga, Current Opinigon in Structural Biology, vol.14, 495-504, 2004, Elsevier
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、グルコースと結合する結合蛋白質、グルコース結合蛋白質の構造遺伝子に変異を導入したグルコースに特異的な結合蛋白質の構造ならびにその配列、およびこれを組換えDNA技術を用いて該蛋白質を製造する方法ならびにこれを用いる分析方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、グルコース結合蛋白質(GBP )をコードする遺伝子を含むDNA断片に変異を導入することで部位特異的にアミノ酸置換を行い、この遺伝子を組み込んでなる組み換えベクターにより微生物を形質転換することによって得られた形質転換体を培養し、該培養物から改良型グルコース結合蛋白質(GBP) を採取し大量に調製できることを見出し、また改良型GBPの結合能力がグルコース特異的であることを見出し、さらに該蛋白質を用いて高感度にグルコースを計測できること、さらに該蛋白質を用いる分析キットが開発できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の事項に関する。すなわち、
1)天然のグルコース結合蛋白質の1またはそれ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されており、かつ前記天然のグルコース結合蛋白質と比較してグルコースに対する高い選択性を有する改変型グルコース結合蛋白質。
2)グルコース結合蛋白質において大腸菌由来グルコース結合蛋白質の成熟型蛋白質の14番目のアスパラギン酸残基、もしくは他の種における同等の位置のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている改変型グルコース結合蛋白質。
3)配列番号1で表されるアミノ酸配列の14番目のアスパラギン酸が他のアミノ酸残基で置換されている、請求項1記載の改変型グルコース結合蛋白。
4)配列番号1で表されるアミノ酸配列の14番目のアスパラギン酸がアスパラギンまたはグルタミン酸で置換されている、3)記載の改変型グルコース結合蛋白質。
5)1)−4)のいずれかに記載の改変型グルコース結合蛋白質をコードする遺伝子。
6)5)記載のグルコース結合蛋白質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクター。
7)6)に記載の組み換えベクターで形質転換した形質転換体または形質導入体。
8)7)記載の形質転換体を培養して、該培養物からグルコース結合蛋白質を採取することを特徴とするグルコース結合蛋白質の製造方法。
9)8)記載の方法で製造されたグルコース結合蛋白質。
10)9)に記載のグルコース結合蛋白質を用いることを特徴とするグルコースの分光学的分析方法。
11)9)に記載のグルコース結合蛋白質を用いることを特徴とするグルコースの蛍光分光学的分析方法。
12)9)に記載のグルコース結合蛋白質を含むことを特徴とするグルコースの分光学的分析用アッセイキット。
13)9)に記載のグルコース結合蛋白質を含むことを特徴とする、グルコースの蛍光分析用アッセイキット。
本発明よれば、グルコースと特異的に結合する新規なグルコース結合蛋白質(GBP)を提供することができる。また本発明によれば、上記GBPを組み換えDNA技術により大量生産することができ、その組み換えGBPを用いて、グルコースを蛍光分光法により簡易かつ高感度に計測することができる。さらに、本発明によれば、GBPにCys残基をアミノ酸置換により導入し、そこへ環境応答性蛍光色素を修飾することで、グルコースの計測にきわめて好適に使用できる環境応答型蛍光色素標識GBPを大量に生産することができ、また上記修飾分子を用いて、グルコースの蛍光分析をさらに簡易かつ高感度に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の改良型グルコース結合蛋白質(以下、GBP)は、ガラクトースに比べ、グルコースと特異的に結合し、そのコンフォメーション変化に基づき、蛍光特性を変化させることができることを特徴とするものである。したがって、本発明の蛋白質、その構造遺伝子、アミノ酸配列は新規であり、その組み換えDNA技術を用いた蛋白質の製造方法ならびに該蛋白質を用いる分析方法ならびに該蛋白質を含む分析キットは、新規な方法である。
遺伝子の調製方法
天然型のGBPをコードする遺伝子を含むDNA断片は、GBP生産菌から得ることができる。該GBP生産菌としては具体的にはEscherichia coli(大腸菌)が適している。
該GBPをコードする遺伝子はこれらの菌株から抽出してもよく、また化学的に合成することもできる。さらにPCR法の利用によりGBP遺伝子を含むDNA断片を得ることができる。
上記GBPをコードする遺伝子としては、例えば(a)配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子、または(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつGBP活性を有するタンパク質であるGBPをコードする遺伝子が挙げられる。なお、本発明においては、アミノ酸をアルファベット1文字で表記することとした。
本発明において、GBPをコードする遺伝子を得る方法としては、次のような方法が挙げられる。例えば染色体を分離、精製した後、超音波処理、制限酵素処理等を用いてDNAを切断したものと、リニアーな発現ベクターと両DNAを平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーと蛋白質の発現を指標としてスクリーニングして、GBPをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する微生物を得る。
改変型GBPの製造方法
大腸菌由来の天然のGBPをコードする遺伝子の配列は配列番号2で規定される。この配列には同蛋白質が細胞内でmRNAから翻訳されるときの蛋白質の配列をコードしているものであり、細胞内膜を通るときに切除されるN末端領域のシグナル配列(MNKKVLTLSA VMASMLFGAA AHA(配列番号9))をコードする領域を含む。本発明の改変型GBPをコードする遺伝子は、天然のGBPをコードする遺伝子において、置換すべきアミノ酸残基をコードする塩基配列を、所望のアミノ酸残基をコードする塩基配列に置換することにより構築することができる。このような部位特異的塩基配列置換のための種々の方法が、当該技術分野において知られており、例えば、Sambrookら,”Molecular Cloning; A Laboratory Manual”,第2版, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
このようにして得た変異遺伝子を遺伝子発現用のベクター(例えばプラスミド)に挿入し、これを適当な宿主(例えば大腸菌)に形質転換する。外来性蛋白質を発現させるための多くのベクター・宿主系が当該技術分野において知られており、宿主としては例えば、細菌、酵母、培養細胞などの種々のものを用いることができる。
本発明の改変型GBPにおいては、所望のグルコース結合能力を有する限り、さらに他のアミノ酸残基の一部が欠失または置換されていてもよく、また他のアミノ酸残基が付加されていてもよい。このような部位特異的塩基配列置換のための種々の方法が当該技術分野においてよく知られている。
さらに、当業者は、他の細菌に由来するGBPについても、蛋白質の一次構造を並列して比較すること、あるいは当該蛋白質の一次構造をもとに予測された二次構造を比較することにより、大腸菌由来のGBPの第14番目のアスパラギン酸残基と同等の残基を容易に認識することができ、本発明にしたがって、この領域中のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換することにより、グルコース選択性の向上した改変型GBPを得ることができる。これらの改変型GBPも本発明の範囲内である。
改良型GBPの構築
改良型GBPは、定法に構築することができ、変異箇所に対応する合成オリゴヌクレオチドを用いて単離されているGBP構造遺伝子、あるいはpGEにクローニングされた該構造遺伝子、あるいはpETベクターなどの発現ベクターに挿入された該構造遺伝子に対して部位特異的に変異を導入することができる。改良型GBPとして天然型GBPの第14番目のアスパラギン酸(Asp14)をアスパラギン(Asp14Asn)あるいはグルタミン酸(Asp14Glu)に置換する。
本発明のグルコース結合蛋白質は、そのアミノ酸配列中にCys残基を含まない。したがって、任意の位置をCysに置換することにより、Cys残基に存在するチオール基を用いて、部位特異的にチオール標識能力のある蛍光色素でラベルすることもできる。
上述のようにして得られた、改変型GBPを発現する形質転換体を培養し、培養液から遠心分離などで菌体を回収した後、菌体をフレンチプレスなどで破砕するか、またはオスモティックショックによりペリプラズム蛋白質を培地中に放出させる。これを超遠心分離し、GBPを含む水溶性画分を得ることができる。あるいは、適当な宿主ベクター系を用いることにより、発現したGBPを培養液中に分泌させることもできる。得られた水溶性画分を、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、HPLCなどにより精製することにより、本発明の改変型GBPを調製する。
改良型GBPの蛍光特性
このように構築された改良型GBPのうち、Asp14AsnおよびAsn14Gluの二種の改良型GBPを精製し、グルコースおよびガラクトース結合に基づく自家蛍光の変化を測定した。これらの改良型GBPは、野生型GBPと同様の方法で精製できる。蛍光スペクトル変化を観察したところ、天然型GBPはグルコースとガラクトース両方に対してほぼ同等の結合を示した。いずれの糖に対しても濃度依存的に蛍光強度が変化することからGBPを用いてグルコースの計測が行えることが明らかであったが、しかし、その選択性は低いものであった。これに対して、Asp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPはグルコースとの結合により天然型GBPと同様に蛍光強度の増加がみられた。しかし、おどろくべきことに、ガラクトース存在下ではAsp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPは蛍光強度の変化が観察されず、ガラクトースとはほとんど結合しないことがわかった。
本発明においては、これらの改良型GBPを用いて、該蛋白質の自家蛍光を指標としてもグルコースの計測が行うことができる。さらに、これらの改良型GBPにCys残基を導入し、これを環境応答性蛍光色素を用いて蛍光ラベルすることもできる。このように、改良型GBPを環境応答型の蛍光色素でラベルすることにより、グルコースの結合によるGBPのコンフォメーション変化をラベルした蛍光色素の蛍光強度変化により明瞭に観察することができる。
また、蛍光色素の蛍光強度を計測することができるので、蛍光分光法により蛍光修飾された改良型GBPを用いることでグルコースの新規な分析方法が開発できる。
本発明の改良型GBP修飾する蛍光色素としては、環境応答型の蛍光色素であれば特に制限されるものではないが、たとえば6−アクリロイル2ジメチルアミノナフタレン(アクリロダン)、バダン:6−ブロモアセチル−2―ジメチルアミノナフタール、N−(1−ピレン)マレイミド、N−(1−ピレン)ヨードアセタミド、PMIAアミド:(N−(1−ピレンメチル)ヨードアセタミド、パナシルブロミド、 TFPAM-SS1 、
PyMPOマレイミド、ダンシルアジリデン、ダポキシル(登録商標)、 IAANS :2-(4'-(ヨードアセトアミド)アニリノ)ナフタレン−6− サルフォニック酸ナトリウム塩などがあげられる。
改良型GBPの蛍光ラベルは、例えば、以下のようにして行うことができる。所定濃度の緩衝溶液に精製した改良型GBPを所定濃度の緩衝溶液に溶解させ、さらに蛍光色素を混合、遮光下で所定時間反応させた後、ろ過、遠心分離を行い未反応の蛍光色素を除去し、蛍光修飾GBPを得る。
さらに、本発明の改良型GBP、蛍光修飾された改良型GBPは、グルコースの計測用キットの他、センサーの構成物として利用も可能である。
以下、本発明につき、実施例を用いて説明するが、本発明は、なんらこれに限定されるものではない。
(実施例1)
<天然型グルコース結合蛋白質(GBP)のクローニング>
大腸菌、Escherichia coli DH5α株をL完全培地で培養後、GenomicPrep Cell and Tissue DNA Isolation kit (Amercham)を用いて同株のゲノム抽出を行った。これに対して大腸菌の天然型GBP構造遺伝子をコードするmglb遺伝子のクローニングを行った。
すなわち、下記に示すPCRプライマー1及び2(配列番号3、4)を用いて、大腸菌ゲノムDNAをテンプレートとしPCRによって目的遺伝子の増幅を行い、精製後、TAクローニングを行った。反応条件を以下の通りに設定して、PCR増幅を行った。なお、このプライマーによって増幅されるGBPの配列は最終的に蛋白質として調製される成熟型の蛋白質に加え、N末端領域にペルプラズムに分泌するためのシグナルペプチド配列(MNKKVLTLSA VMASMLFGAA AHA)が付与された状態にて増幅される。
94℃ 1分、60℃ 30秒、72℃ 30秒(以上を1サイクル)、
98℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 7分、72℃ 8分(以上を25サイクル)。
プライマーの配列
配列番号3 (プライマー1)
forward; 5'- gagatcatatgaataagaaggtgttaaccc - 3'
配列番号4 (プライマー2)
reverse; 5'- cccaaaagcttttttttcttgctgaattc -3'
Taqポリメラーゼは、TaKaRa LA TaqTMを用いた。このようにして得られたPCR産物をGENE CLEAN2Kit付属のマニュアルに従いグラスミルク精製後、pGEM-T Vector System付属のマニュアルに従いサブクローニングし、カラーセレクションにより、インサートを有するベクターを保持する形質転換体を得た。得られた形質転換体をLB培地で培養(37℃、1.8ml、試験管)し、集菌、プラスミド抽出を行った。得られたプラスミドをM13プライマーフォワード、M13プライマーリバース(タカラバイオ(株))を用い、インサートの塩基配列解析を行った。サンプルの調整方法、解析法などはABIプリズム310ジェネティックアナライザー(パーキンエルマーアプライドバイオシステム社製)付属のマニュアルにしたがった。
配列解析の結果、pGEMへのmglB配列の挿入(pGEM-GBP)が確認された。また配列中にアミノ酸変化を伴う変異はなかった。
(実施例2)
<天然型GBPの調製>
GBPのC末端にHis Tagを付加した発現用ベクターpET-GBPの構築を行った。
pGEM/GBPをNdeI-HindIII消化し、グラスミルク精製を行なった後、同制限酵素にて消化したpET30(c)とライゲーションし、His-tag融合発現ベクターpET30(c)/ GBPを構築した。シークエンス解析により配列が確認されたpET30(c)/GBPで形質転換した大腸菌BL21(DE3)/ pET30(c)/GBPをLB培地(Amp 50μg/ml)にて150 mlスケールで培養した。OD600が0.6となったところでIPTGを終濃度0.4 mMとなるように添加し、添加後5.5 時間で培養を停止した。集菌・洗浄後、20% sucrose/30 mM Tris−HCl buffer (pH8.0)に懸濁・攪拌・遠心分離後、得られたペレットに5 mM MgCl2を加え攪拌後、遠心分離を行い、ペリプラズム画分を調整し、10 mM imidazol を含む300 mM NaCl / 50 mM Na-phosphate buffer (pH8.0)(buffer A)にて一晩透析し、Ni-NTA agarose (QIAGEN) 5 mlを充填したOpen columnを用いて組換えGBPの精製を行った(平衡化buffer: A + 10 mM imidazol, 洗浄buffer:A + 20 mM imidazol, 溶出buffer: A + 250 mM imidazol)。天然型GBPを終濃度1μMに調製し、グルコース、ガラクトースを添加したときの342 nmにおける蛍光強度の変化を測定した(励起波長; 295 nm)。
(実施例3)
<天然型GBPのグルコース結合能力の検討>
実施例2で得られた精製GBPを用いて、蛍光分光光度計による自家蛍光特性検討を行った。1μM GBPにグルコースあるいはガラクトースを加え25℃で2.5分間インキュベート後、蛍光波長及びGBP配列中に有するトリプトファン残基の自家蛍光に由来する最大蛍光強度の変化を測定した(λex=295 nm)。
図3に示される蛍光スペクトル変化からも明らかなように、グルコースおよびガラクトースとの結合により蛍光強度の増加が見られた。
<グルコース類の蛍光分析>
実施例2で得られた天然型GBP用いて、蛍光分光光度計によるグルコースの蛍光測定を行った。GBPを含む溶液にグルコースあるいはガラクトースを加え25℃で2.5分間インキュベート後、335nmにおける最大蛍光強度の変化を測定した(λex=295 nm)。
図4で示される蛍光強度変化のグルコース及びガラクトースの濃度依存性からも明らかなように、グルコースおよびガラクトースの濃度とともに蛍光強度の増加が観測され、蛍光強度を指標としてグルコースおよびガラクトースが蛍光分光法により計測できることがわかった。しかし、天然型GBPはグルコースとガラクトースの両単糖類に対して同等に結合し、選択性が低いことが明らかである。
(実施例4)
<改良型GBPの構築>
グルコース結合蛋白質の14番目AspをAsnあるいはGlu残基に置換した改良型GBPを構築した。
改良型GBPは定法に従い、GBP構造遺伝子に対して部位特異的に変異を導入する。本実施例では、pGEM/GBPをテンプレートとし、Asp14Asn, Asp14Gluとなるようにデザインしたプライマーを用いて、クイックチェンジ(登録商標)を用いて作成した。
すなわち、pGEM/GBPを対象として、以下に示す変異導入用のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて14番目AspをAsnあるいはGlu残基に相当するコドンに置換した。
Asp14Asn gat→aac
プライマーの配列
配列番号5 (プライマー3)
forward; 5'- caatctataagtacgac aac aactttatgtctgtag -3'
配列番号6 (プライマー4)
reverse; 5'- ctacagacataaagtt gtt gtcgtacttatagattg -3'
Asp14Glu gat→gaa
プライマー配列
配列番号7 (プライマー5)
forward; 5'- caatctataagtacgac gaa aactttatgtctgtag -3'
プライマー配列
配列番号8 (プライマー6)
reverse; 5'- ctacagacataaagtt ttc gtcgtacttatagattg -3'
その結果、Asp14AsnおよびAsp14Gluの改良型GBPをコードする遺伝子が構築できた。
実施例5
<改良型GBPの調製>
改良型GBPはすでにC末端にHis Tagを付加した発現用ベクターpETに挿入されていることから天然型GBPと同様に精製を行った。
pET30(c)/1Asp14AsnあるいはpET30(c)/1Asp14Gluで形質転換した大腸菌BL21(DE3)をLB培地(Amp 50μg/ml)にて150 mlスケールで培養した。OD600が0.6となったところでIPTGを終濃度0.4 mMとなるように添加し、添加後5.5 時間で培養を停止した。集菌・洗浄後、20% sucrose/30 mM Tris−HCl buffer (pH8.0)に懸濁・攪拌・遠心分離後、得られたペレットに5 mM MgCl2を加え攪拌後、遠心分離を行い、ペリプラズム画分を調整し、10 mM imidazol を含む300 mM NaCl / 50 mM Na-phosphate buffer (pH8.0)(buffer A)にて一晩透析し、Ni-NTA agarose (QIAGEN) 5 mlを充填したOpen columnを用いて改良型GBPの精製を行った(平衡化buffer: A + 10 mM imidazol, 洗浄buffer:A + 20 mM imidazol, 溶出buffer: A + 250 mM imidazol)。
(実施例6)
<改良型GBPのグルコース結合能力の検討>
実施例5で得られた改良型GBP用いて、蛍光分光光度計による自家蛍光特性検討を行った。1μM 改良型GBPにグルコースあるいはガラクトースを加え25℃で2.5分間インキュベート後、蛍光波長及びGBP配列中に有するトリプトファン残基の自家蛍光に由来する最大蛍光強度の変化を測定した(λex=295 nm)。
蛍光スペクトル変化を観察したところ、Asp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPはグルコースとの結合により天然型GBPと同様に蛍光強度の増加がみられた。しかし、おどろくべきことに、ガラクトースの存在下ではAsp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPは蛍光強度の変化が観察されず、ガラクトースとはほとんど結合しないことがわかった。
(実施例7)
<改良型GBPを用いるグルコース類の蛍光分析>
実施例5で得られたAsp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBP用いて、蛍光分光光度計によるグルコースの蛍光測定を行った。Asp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPGBPを含む溶液にグルコースあるいはガラクトースを加え25℃で2.5分間インキュベート後、335nmにおける最大蛍光強度の変化を測定した(λex=295 nm)。
図5及び図6に示される蛍光強度変化のグルコース及びガラクトースの濃度依存性からも明らかなように、Asp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPを用いた蛍光分析においてはグルコースの濃度とともに蛍光強度の増加が観測され、蛍光強度を指標としてグルコースが蛍光分光法により計測できることがわかった。しかし、天然型GBPとは全く異なり、Asp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPはガラクトースの濃度増加に対して蛍光強度の増加は観測されず、きわめて選択性の高い分析方法が構築できた。
このように蛍光強度の変化量からグルコースの濃度が高まるとともに、蛍光修飾GBPの蛍光強度が増加したことから、蛍光強度を指標として選択的にグルコースの定量が可能であった。
以下の表に本発明にて構築された改良型GBPのグルコースに対する結合定数を記す。このように、Asp14AsnおよびAsp14Gluの両改良型GBPはグルコースに対してそれぞれ0.39μMおよび0.34μMときわめて高い親和性を有し、かつ、天然型GBPのようにガラクトースを認識しないことがわかった。このように本発明の両改良型GBPは血糖値をはじめとするグルコース計測においてすぐれた特性を示す。
Figure 0004843781
本発明の新規なグルコース結合蛋白質(GBP)及びこれを用いたグルコースの蛍光分光学的分析方法は、糖尿病の診断や臨床検体の分析等の臨床試験に大きく貢献することができるものであり、医療分野の技術革新に寄与することができる。すなわち本発明は、糖尿病に代表される生活習慣病等の医療技術の進歩に寄与することができる革新的な技術である。
グルコース結合蛋白質のアミノ酸配列を示した配列番号1を示す。 グルコース結合蛋白質の遺伝子配列を示した配列番号2を示す。 天然型グルコース結合蛋白質の自家蛍光特性を示す。 天然型グルコース結合蛋白質の自家蛍光に基づくグルコースおよびガラクトースの蛍光測定を示す。 改良型グルコース結合蛋白質、Asp14Asnの自家蛍光に基づくグルコースの蛍光測定を示す。 改良型グルコース結合蛋白質、Asp14Gluの自家蛍光に基づくグルコースの蛍光測定を示す。

Claims (8)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列の14番目のアスパラギン酸がアスパラギンまたはグルタミン酸で置換されているアミノ酸配列からなる改変型グルコース結合蛋白質。
  2. 請求項1に記載の改変型グルコース結合蛋白質をコードする遺伝子。
  3. 請求項2記載のグルコース結合蛋白質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクター。
  4. 請求項3に記載の組み換えベクターで形質転換した形質転換体または形質導入体。
  5. 請求項4記載の形質転換体を培養して、該培養物からグルコース結合蛋白質を採取することを特徴とするグルコース結合蛋白質の製造方法。
  6. 請求項5記載の方法で製造されたグルコース結合蛋白質。
  7. 請求項6に記載のグルコース結合蛋白質がグルコースと結合したときに生ずる蛍光強度の変化を測定することを特徴とするグルコース濃度の分光学的分析方法。
  8. 請求項6に記載のグルコース結合蛋白質を含むことを特徴とするグルコース濃度の分光学的分析用アッセイキット。
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