I.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の生体分子、方法、反応混合物、組成物、キット、システムに限定されることはなく、さまざまなものが可能であることを理解しておく必要がある。この明細書と添付の請求項では、文脈から明らかである場合以外は単数形“1つの”や“その”に複数形も含まれる。したがって例えば“1つの生体分子”に言及するとき、2つ以上の生体分子の組み合わせがその中に含まれる。この明細書で用いる用語は具体的な実施態様を説明することだけを目的としており、意味がそれだけに限定されないことも理解されたい。さらに、特に断わらない限り、この明細書で用いるあらゆる科学技術用語は、本発明に関係する当業者が一般に理解する意味と同じである。本発明の説明と権利主張においては、以下の用語、ならびにその文法的な変形例を以下に示す定義に従って用いることにする。
“5'-ヌクレアーゼ・プローブ”は、切断したときに検出可能な信号の変化を生じさせることのできる標識されたオリゴヌクレオチドを意味する。例えばいくつかの実施態様では、5'-ヌクレアーゼ・プローブは3つの標識部分を備えていて、1つの標識が切断されるかオリゴヌクレオチドから分離した後に強度が増大する光を発生させる。これら実施態様のいくつかでは、5'-ヌクレアーゼ・プローブは、例えば、5'末端をクエンチャ部分で標識し、プローブの3'末端近くをアクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分のペアで標識する。いくつかの実施態様では、5'-ヌクレアーゼ・プローブは、これら末端位置以外の1つ以上の位置に、またはこれら末端位置に加えて1つ以上の位置に標識する。プローブが完全である場合には、エネルギー移動は一般に標識部分同士の間で起こり、クエンチャ部分がアクセプタ部分からの蛍光発光の少なくとも一部を阻止する。ポリメラーゼ連鎖反応の伸長ステップの間には、例えば鋳型核酸と結合した5'-ヌクレアーゼ・プローブが、例えばTaqポリメラーゼの5'-3'ヌクレアーゼ活性によって切断されるか、この活性を有する別のポリメラーゼの5'-3'ヌクレアーゼ活性によって切断されるため、アクセプタ部分からの蛍光発光はもはや阻止されなくなる。別の実施態様では、5'-ヌクレアーゼ・プローブは、アクセプタ部分と、実質的に蛍光を出さないドナー部分だけを含んでいる。このようなプローブのこれらの部分が切断されたときに互いに分離すると、一般にアクセプタ部分からの蛍光発光の減少が起こる。さらに詳しく説明すると、いくつかの実施態様では、5'-ヌクレアーゼ・プローブは自己相補的領域を含んでいるため、選択された条件下でヘアピン構造を形成することができる。これら実施態様の5'-ヌクレアーゼ・プローブのことをこの明細書では“ヘアピン・プローブ”とも呼ぶ。この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分を用いるために改変できる5'-ヌクレアーゼ・プローブの例は、例えば、Gelfandらに1993年5月11日に付与された「核酸ポリメラーゼのヌクレアーゼ活性を利用したホモジニアス・アッセイ系」という名称のアメリカ合衆国特許第5,210,015号、Higuchiに1999年11月30日に付与された「核酸の増幅と検出のためのホモジニアス法」という名称のアメリカ合衆国特許第5,994,056号、Higuchiに2001年1月9日に付与された「核酸のホモジニアスな増幅と検出のための方法と装置」という名称のアメリカ合衆国特許第6,171,785号にも記載されている。
“アクセプタ部分”または“アクセプタ”は、エネルギー源から移動したエネルギーを受け取ること、または吸収することのできる部分を意味する。いくつかの実施態様では、アクセプタ部分は、移動したエネルギーを十分な量吸収するとエネルギー(例えば光および/または熱)を発生させることもできる。これら実施態様では、アクセプタは、“レポータ部分”または“レポータ”としても知られる。例えばある種のアクセプタ部分は、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分から移動した非蛍光性エネルギーを十分な量受け取ると蛍光を発生させる。アクセプタ部分の例としてはさまざまな発蛍光団があり、その中でも特に、ライトサイクラー(登録商標)-レッド610(LC-レッド610)、LC-レッド640、LC-レッド670、LC-レッド705、JA-270、CY5、CY5.5などが挙げられる。
“アルキル基”は、直鎖、分岐鎖、環式の飽和炭化水素部分を意味し、その中には、あらゆる位置異性体が含まれる。例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ヘプチル、1-メチルエチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、2,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシルなどがある。アルキル基は、一般に約1〜20個の炭素原子を含んでおり、より一般には約2〜15個の炭素原子を含んでいる。アルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
“アミノ酸”は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれかに組み込むことのできるあらゆるモノマー単位を意味する。この明細書では、“アミノ酸”という用語に、20種類の天然のα-アミノ酸、すなわち遺伝子でコードされたα-アミノ酸が含まれる。その20種類のアミノ酸とは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンである。これら20種類のアミノ酸の構造は、例えばStryer他、『生化学』、第5版、フリーマン社、2002年に示してある。別のアミノ酸(例えばセレノシステイン、ピロリシン)も遺伝子でコードすることができる(Stadtman、1996年、「セレノシステイン」、Annu. Rev. Biochem.、第65巻、83〜100ページ;Ibba他、2002年、「遺伝暗号:ピロリシンの導入」、Curr. Biol.、第12巻(13)、R464〜R466ページ)、“アミノ酸”という用語には、天然ではないアミノ酸、修飾されたアミノ酸(例えば修飾された側鎖および/または骨格を有するもの)、アミノ酸類似体も含まれる。例えば、Zhang他、2004年、「哺乳動物のタンパク質への5-ヒドロキシトリプトファンの選択的組み込み」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第101巻(24)、8882〜8887ページ;Anderson他、2004年、「機能的四重コドンを有する拡張された遺伝暗号」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第101巻(20)、7566〜7571ページ;Ikeda他、2003年、「新規なヒスチジン類似体の合成と、生体内のタンパク質へのそのヒスチジン類似体の効率的な組み込み」、Protein Eng. Des. Sel.、第16巻(9)、699〜706ページ;Chin他、2003年、「真核生物の拡張された1つの遺伝暗号」、Science、第301巻(5635)、964〜967ページ;James他、2001年、「光異性体化が可能なフェニルアゾフェニルアラニン残基を含むリボヌクレアーゼS突然変異体の動的キャラクテリゼーション」、Protein Eng. Des. Sel.、第14巻(12)、983〜991ページ;Kohrer他、2001年、「哺乳動物の細胞へのアンバーサプレッサtRNAとオーカーサプレッサtRNAの導入:タンパク質にアミノ酸類似体を部位特異的に挿入するための一般的な方法」、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第98巻(25)、14310〜14315ページ;Bacher他、2001年、「別の状況では毒性のあるトリプトファン類似体上で増殖できる大腸菌バリアントの選択とキャラクテリゼーション」、J. Bacteriol.、第183巻(18)、5414〜5425ページ;Hamano-Takaku他、2000年、「突然変異大腸菌のチロシル-tRNAシンテターゼは非天然アミノ酸であるアザチロシンをチロシンよりも効果的に利用する」、J. Biol. Chem.、第275巻(51)、40324〜40328ページ;Budisa他、2001年、「代替発色団および薬理学的に活性なアミノ酸としての{β}-(チエノピロリル)アラニン」、Protein Sci.、第10巻(7)、1281〜1292ページを参照のこと。
さらに詳しく説明すると、アミノ酸は、一般に、置換されたアミノ基または置換されていないアミノ基と、置換されたカルボキシ基または置換されていないカルボキシ基と、1つ以上の側鎖または基またはこれらの基の任意のものの類似体とを含む有機酸である。側鎖の例としては、例えば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、ホウ酸塩、ボロン酸塩、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミンや、これらの基の任意の組み合わせがある。他の代表的なアミノ酸としては、光活性化可能な架橋剤、金属結合アミノ酸、スピン標識したアミノ酸、蛍光アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規な官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有相互作用または非共有相互作用するアミノ酸、光環化および/または光異性体化が可能なアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化されたアミノ酸、他の炭水化物で修飾されたアミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重い原子で置換されたアミノ酸、化学的に切断可能なおよび/または光で切断可能なアミノ酸、炭素に結合した糖を含むアミノ酸、酸化還元活性のあるアミノ酸、アミノチオ酸を含むアミノ酸、1つ以上の毒性部分を含むアミノ酸などがある。
生体分子の文脈における“増幅する”という用語は、1つの生体分子、または一群の生体分子、または部分配列のコピー数が増加することを意味する。この用語を核酸に適用すると、増幅は、一般に少量のポリヌクレオチド(例えば単一のポリヌクレオチド分子)から出発してポリヌクレオチドの複数のコピー、またはポリヌクレオチドの一部の複数のコピーを生成させることを意味する。この増幅産物またはアンプリコンは一般に検出可能である。ポリヌクレオチドの増幅には、さまざまな化学的方法と酵素による方法が含まれる。標的または鋳型とする1個または数個のDNA分子からDNAの多数のコピーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)の間に生成させるというのが増幅の形態である。増幅は、出発分子の厳密な複製に限定されない。例えばサンプル中の限定された量のRNAからRT-PCRを利用して多数のcDNA分子を生成させることも増幅の一形態である。さらに、転写プロセスの間に単一のDNA分子から多数のRNA分子を生成させることも増幅の一形態である。
“付着”または“結合”という用語は、2種類以上の材料が互いに共有結合および/または非共有結合するプロセスを意味する。例えばいくつかの実施態様では、実質的に光を出さないドナー部分を、ホスホロアミダイトを生成させる方法の一部として化合物に付着させる。さらに詳しく説明すると、プローブ生体分子が標的生体分子と結合し、この明細書に記載した方法のいくつかにおいてその標的が検出される。
“生体分子”は、生物によって作られる有機分子および/または利用される有機分子、および/または生物またはその成分を分析するのに用いられる有機分子を意味する。生体分子の例として、核酸、ヌクレオチド、アミノ酸、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドのフラグメント、糖、脂肪酸、ステロイド、脂質や、これら生体分子の組み合わせ(例えば糖タンパク質、リボヌクレオタンパク質、リポタンパク質)がある。
“バイオポリマー”は、互いに結合した少なくとも2つのモノマー単位を含む生体分子を意味する。
“バイオポリマー合成試薬”は、バイオポリマーまたはその成分の合成に使用できる化合物を意味する。例えばいくつかの実施態様では、バイオポリマー合成試薬は、オリゴヌクレオチドまたはそれ以外の核酸の合成に使用できる“核酸合成試薬”(例えばホスホロアミダイトやそれ以外の試薬)である。利用されることのあるオリゴヌクレオチド合成法の例として、ホスホリルクロリデート法(Michelson他、1955年、J. Chem. Soc.、2632ページ)、ホスホジエステル結合法(Khorana他、1956年、Chem. & ind. London、1523ページ)、ホスホトリエステル法(Letsinger他、1969年、J. Am. Chem. Soc.、第91巻(12)、3360〜3365ページ)、亜リン酸トリエステル法(Letsinger他、1975年、J. Am. Chem. Soc.、第97巻、3278〜3279ページ;Letsinger他、1976年、J. Am. Chem. Soc.、第98巻、3655〜3661ページ)、ホスホロアミダイト法(Beaucage他、1981年、Tetrahedron Lett.、第22巻、1859〜1862ページ;McBride他、1983年、Tetrahedron Lett.、第24巻、245〜248ページ)などがある。さらに詳しく説明すると、バイオポリマー合成試薬には、ペプチドやそれ以外のタンパク質の合成に使用できる“ポリペプチド合成試薬”(例えばt-Boc/Fmoc試薬)も含まれる。例えば、Chan他(編)、『Fmoc固相ペプチド合成:実際的な方法』、オックスフォード大学出版、2000年と、Jones、『アミノ酸とペプチドの合成』、オックスフォード大学出版、2002年を参照のこと。バイオポリマーは、当業者に知られている他の多くの方法(例えば化学的連結)を利用して合成することもできる(例えば、Hackeng他、1999年、「天然の化学的連結によるタンパク質合成:直接的な方法論を利用することによって拡張された範囲」、PNAS、第96巻(18)、10068〜10073ページを参照のこと)。
核酸の文脈における“相補体”は、核酸の少なくとも1つの配列と反平行に結合した状態で結合すること、またはハイブリダイズすることのできる核酸またはそのセグメントを意味する。反平行な結合は、分子内(例えば核酸内のヘアピン・ループの形態)または分子間(例えば2つ以上の一本鎖核酸が互いにハイブリダイズする場合)において可能である。天然の核酸には一般に見られないいくつかの塩基がこの明細書で言及する核酸の中に含まれていてもよい。そのような塩基として、例えばヒポキサンチン、7-デアザグアニンが特に挙げられる。相補性は完全でなくてもよい。例えば安定な二本鎖または三本鎖は、不適正塩基対または対合していない塩基対を含んでいてもよい。すなわち反平行な結合は、分子内であれ分子間であれ、核酸が“部分的に相補的”でありさえすれば、ある条件下で起こりうる。核酸化学の当業者であれば、例えば多数の変数(例えば相補的領域の長さ、相補的領域における塩基の組成と配列、イオンの強度、融点(Tm)、不適正塩基対の頻度)を経験的に考慮することによって二本鎖または三本鎖の安定性を判断することができよう。
“エピトープ”は、抗原上で免疫グロブリンまたはT細胞受容体が認識または結合する部位を意味する。
“伸長可能なヌクレオチド”は、その伸長可能なヌクレオチドがヌクレオチド・ポリマーに組み込まれたとき、例えばヌクレオチド組み込み生体触媒を触媒とした反応において少なくとも1つの他のヌクレオチドを付加または共有結合させることのできるヌクレオチドを意味する。伸長可能なヌクレオチドの例として、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドがある。伸長可能なヌクレオチドは、一般に、その伸長可能なヌクレオチドの糖部分の3'位に別のヌクレオチドを付加することによって伸長する。
核酸の文脈における“伸長する”という用語は、1つ以上のヌクレオチドが所定の核酸に付加または組み込まれるプロセスを意味する。
“伸長されたプライマー核酸”は、1つ以上の追加のヌクレオチドが(例えば共有結合によって)付加されるか組み込まれたプライマー核酸を意味する。
“蛍光染料”は、エネルギー源からエネルギーを吸収し、その吸収したエネルギーに応答して光を発生させることのできる化合物を意味する。いくつかの実施態様では、ある種の蛍光染料は、この明細書に記載した生体分子の中でアクセプタ部分として機能する。
“ヘアピン・プローブ”は、標的核酸の検出に使用できるオリゴヌクレオチドを意味する。ヘアピン・プローブは自己相補的である少なくとも1つの領域を含んでいるため、選択された条件下でヘアピン構造またはループ構造を形成することができる。一般に、ヘアピン・プローブは、1つ以上の標識部分を含んでいる。一実施態様では、アクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分は、ヘアピン・プローブの中で、これらの部分の間でのエネルギー移動が実質的にプローブがヘアピン構造になっているときにだけ起こるような相対位置である。別の実施態様では、ヘアピン・プローブは、アクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分に加え、クエンチャ部分を含んでいる。これら実施態様のいくつかでは、これらの部分は、プローブの中で、プローブがヘアピン構造になっているときにアクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分の間でのエネルギー移動によって生じる信号の少なくとも一部をクエンチャ部分が阻止するような位置にある。この信号は、クエンチャ部分によって阻止されなければ検出可能である。逆に、これら実施態様のプローブがヘアピン構造でない場合には、アクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分の間でのエネルギー移動によって生じる信号は、一般に検出可能である。したがってヘアピン・プローブは、これら実施態様のいくつかにおいては分子ビーコンと同様に機能する。ヘアピン・プローブは、いくつかの実施態様では、5'-ヌクレアーゼ・プローブまたはハイブリダイゼーション・プローブとしても機能することができる。
“ホルモン”は、生物によって産生される生体分子であって、その生体分子の複製起点以外の部位においてその生物に特定の効果を発生させるものを意味する。ホルモンは、一般に多細胞生物の内分泌系によって産生され、一般に細胞活性に対して促進または抑制の効果を及ぼす。ホルモンは、生体外で合成することもできる。
“ハイブリダイゼーション・プローブ”は、標的核酸の検出に使用できる少なくとも1つの標識部分を含むオリゴヌクレオチドを意味する。いくつかの実施態様では、ハイブリダイゼーション・プローブはペアで機能する。これら実施態様のいくつかでは、例えば1つのペアの第1のハイブリダイゼーション・プローブが、3'末端またはその近傍に実質的に蛍光を出さない少なくとも1つのドナー部分を含み、このペアの第2のハイブリダイゼーション・プローブが、5'末端またはその近傍に少なくとも1つのアクセプタ部分(例えばLC-レッド610、LC-レッド640、LC-レッド670、LC-レッド705、JA-270、CY5、CY5.5)を含んでいる。プローブは、一般に、2つのプローブが標的核酸または鋳型核酸と(例えばPCRの間に)ハイブリダイズするとき、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分の間でエネルギー移動が起こるのに十分に近い位置で第1のハイブリダイゼーション・プローブが第2のハイブリダイゼーション・プローブの5'末端側または上流と結合して検出可能な信号が発生するように設計する。一般に、第2のハイブリダイゼーション・プローブは、PCRの間にプローブが伸長しないようにするため、3'末端にリン酸塩またはそれ以外の基も含んでいる。いくつかの実施態様では、ハイブリダイゼーション・プローブのペアは、一方のプローブの5'末端またはその近くに実質的に蛍光を出さないドナー部分を含み、他方のプローブの3'末端またはその近くにアクセプタ部分を含んでいる。別の一実施態様では、ペアの一方のハイブリダイゼーション・プローブは、実質的に蛍光を出さない少なくとも1つのドナー部分と、少なくとも1つのアクセプタ部分を含んでいるのに対し、ペアの他方のプローブは、少なくとも1つのクエンチャ部分を含んでいる。この実施態様では、これらの部分は、プローブ上で、両方のプローブが標的核酸とハイブリダイズしたときにアクセプタ部分から発生する蛍光をクエンチャ部分が阻止するような位置にある。
1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと塩基対を形成する相互作用において核酸を“ハイブリダイズさせる”または “アニールする”ことにより、二本鎖構造または他の秩序化された構造が形成される(一般にハイブリダイゼーション複合体と呼ばれる)。互いに反平行なポリヌクレオチド間の主要な相互作用は、一般に、ワトソン/クリック型および/またはフーグスティーン型の相互作用によって塩基特異的になる(例えばA/TとG/C)。ハイブリダイゼーションが実現する上で2つのポリヌクレオチドが全長にわたって100%相補的である必要はない。いくつかの実施態様では、ハイブリダイゼーション複合体は、分子間相互作用によって形成すること、または分子内相互作用によって形成することができる。ハイブリダイゼーションは、特徴がよくわかったさまざまな力(例えば水素結合、溶媒排除、塩基の積層)が原因で起こる。核酸のハイブリダイゼーションに関する包括的な解説は、Tijssen、『生化学と分子生物学における実験技術 - 核酸プローブとのハイブリダイゼーション』の第1部、第2章、「ハイブリダイゼーションの原理の概説と核酸プローブ・アッセイの戦略」、エルゼビア社、1993年に見いだすことができる。
“免疫グロブリン”または“抗体”は、少なくとも1つの免疫グロブリン遺伝子、または少なくとも1つの免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされていて、リガンドとの特異的な結合に関与することのできるポリペプチドを意味する。この用語には、天然の形態と、フラグメントおよび誘導体が含まれる。この明細書で用いる用語の範囲でのフラグメントには、そのフラグメントが標的分子に特異的に結合できる能力を保持している限り、さまざまなペプチダーゼ(例えばFabフラグメント、Fab'フラグメント、F(ab)'2フラグメント)を用いて消化させたもの、化学的な解離によって生成させたもの、化学的な切断によって生成させたもの、組み換えまたは他の人工的な進化によるものなどが含まれる。典型的な組み換えフラグメントとして、例えばファージ提示によって生成された一本鎖のFabフラグメントとscFv(“一本鎖可変領域”)フラグメントがある。この用語の範囲に含まれる誘導体には、配列が改変されているが標的分子に特異的に結合できる能力を保持している抗体(またはそのフラグメント)(例えばさまざまな種のキメラ抗体や、ヒト化抗体)が含まれる。この明細書では、抗体または免疫グロブリンは、公知の任意の方法(例えば天然のBリンパ球、ハイブリドーマ、組み換え発現系、ファージ提示の細胞培養物からの収穫物)で生成させることができる。
“リンカー部分”または“リンカー”は、ある化合物、または置換基、または他の部分を、例えば固体支持体、別の化合物、基、部分に共有結合または非共有結合させる化学的部分を意味する。例えばリンカーは、場合によっては標識(例えば実質的に蛍光を出さないドナー部分、アクセプタ部分)を生体分子に結合させる。リンカーは、一般に二官能性化学的部分であり、いくつかの実施態様では、切断可能な付着部を含んでいる。その付着部は、例えば熱、酵素、化学薬品、および/または電磁波照射によって切断することができ、例えば固体支持体または他の化合物から材料または化合物が放出される。リンカーを注意深く選択すると、化合物の安定性とアッセイ法に合った適切な条件下で切断することができる。一般に、リンカーは、例えば化学的部分(例えば実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分)を互いに結合させたり、そのような部分間の最小距離またはそれ以外の空間的な関係を保持したりする以外の特別な生物活性を持たない。しかしリンカーの構成要素は、互いに結合された化学的部分の何らかの性質(例えば三次元コンフォメーション、および/または正味の電荷、および/または疎水性)に影響を与えるように選択することができる。リンカー分子に関する追加の説明がなされているのは、例えばLyttle他、1996年、Nucleic Acids res.、第24巻(14)、2793ページ;Shchepino他、2001年、Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids、第20巻、369ページ;Doronina他、2001年、Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids、第20巻、1007ページ;Trawick他、2001年、Bioconjugate Chem.、第12巻、900ページ;Olejnik他、1998年、Methods in Enzymology、第291巻、135ページ:Pljevaljcic他、2003年、J. Am. Chem. Soc.、第125巻(12)、3486ページ;Ward他、アメリカ合衆国特許第4,711,955号、Stavrianopolous、アメリカ合衆国特許第4,707,352号、Stavrianopolous、アメリカ合衆国特許第4,707,440号である。
“脂質”は、脂肪酸、および/またはステロール、および/またイソプレノイド化合物を含む水溶性生体分子を意味する。脂肪基の例として、脂肪酸(例えばオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)、中性脂肪(例えばココナツ油、牛脂)、リン脂質(例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール)、スフィンゴ脂質(例えばスフィンゴミエリン)、糖脂質(例えばセレブロシドガングリオシド)、ステロイド(例えばコレステロール)、テルペン(例えば精油、カロテノイド)などがある。脂質は、例えばVance他、『脂質、リポタンパク質、膜の生化学』、第4版、エルゼビア・サイエンス社、2002年にも記載されている。
“脂質混合アッセイ”は、複数の脂質が互いに組み合わさったりプールされたりしたときにその脂質の1つ以上の性質を検出する操作を含むアッセイを意味する。例えばこのようなアッセイのいくつかは、標識部分(例えばこの明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分)を含む膜を融合させる操作を含んでいる。脂質混合アッセイは、例えばBlumenthal他、2002年、「ウイルスの膜融合の研究における蛍光脂質プローブ」、Chem. Phys. Lipids、第116巻、39〜55ページ;Hoekstra他、1993年、「リポソーム系における融合を測定するための脂質混合アッセイ」、Methods Enzymol.、第220巻、15〜32ページ;Hoekstra、1990年、「膜融合をモニタするための蛍光アッセイ:胆汁脂質の分泌と小胞体相互作用における潜在的な応用」、Hepatology、第12巻、61S〜66Sページ;Stegmann他、1989年、「タンパク質を媒介とした膜融合」、Annu. Rev. Biophys. Chem.、第18巻、187〜211ページ;Hoekstra他、1984年、「生体膜の間の融合の動態を測定するための蛍光法」、Biochemistry、第23巻、5675〜5681ページ;Struck他、1981年、「膜融合をモニタするための共鳴エネルギー移動の利用」、Biochemistry、第20巻、4093〜4099ページ;Stegmann他、1993年、「ウイルス膜融合アッセイの評価:オクタデシルローダミン脱クエンチング・アッセイとピレン・エキシマー・アッセイの比較」、Biochemistry、第32巻、11330〜11337ページにも記載されている。
“モノマー単位”または“モノマー”は、重合させることのできる化合物を意味する。モノマー単位の例として、ヌクレオチド(重合によって核酸を形成することができる)、アミノ酸(重合によってタンパク質を形成することができる)、単糖(重合によって多糖を形成することができる)などがある。
“混合物”は、2つ以上の異なる成分の組み合わせを意味する。“反応混合物”は、所定の反応またはアッセイに参加すること、および/または所定の反応またはアッセイを容易にすることのできる分子を含む混合物を意味する。例えば増幅反応混合物は、一般に、増幅反応を実施するのに必要な試薬を含む溶液を含んでおり、適切な緩衝液中に、プライマー、ヌクレオチド組み込み生体触媒、dNTP、2価金属のカチオンを一般に含んでいる。反応混合物は、反応を行なわせるのに必要なすべての試薬を含んでいる場合に完全と呼ばれ、反応を行なわせるのに必要な試薬の一部だけを含んでいる場合に不完全と呼ばれる。当業者であれば、反応成分を別々の溶液として日常的に保管し、それぞれの溶液には、便利さ、保管安定性や、用途に応じて成分の濃度を調節できるようにするためといった理由で全成分の一部が含まれるようにすることが理解できよう。そして反応成分を組み合わせることで反応させ、完全な反応混合物にする。さらに、当業者であれば、市販するために反応成分を別々に包装し、市販する有用なキットには反応成分またはアッセイ成分の任意の一部(その中に本発明の生体分子が含まれる)が含まれるようにできることが理解できよう。
“部分”または“基”は、何か(例えば分子)を分割したときの各切断部の1つ(例えば官能基または置換基)を意味する。例えば本発明の生体分子は、実質的に蛍光を出さない少なくとも1つのドナー部分を含んでいる。
所定のプロセス、反応、アッセイという文脈における“モニタリング”という用語は、そのプロセス、反応、アッセイ、またはその一部の1つ以上の特徴または性質を定期的または連続的に観察、および/または検出、および/または試験、および/または定量化することを意味する。例えばPCRに基づくいくつかのアッセイでは、アクセプタ部分から出る光の強度が、反応サイクルの間を通じて定期的または連続的に検出される。モニタリング・プロセスは、一般に少なくとも一部が自動化される。
“蛍光を出さないドナー部分”は、検出可能な蛍光の形態のエネルギーではない1種類以上の形態の励起エネルギーを1つ以上のアクセプタ部分に移動させること、または放射すること、または供与することのできる部分を意味する。“実質的に蛍光を出さないドナー部分”は、ドナーから検出可能な蛍光をほとんどまたは実質的に発生させることなく1種類以上の形態の励起エネルギーを1つ以上のアクセプタ部分に移動させること、または放射すること、または供与することのできる部分を意味する。例えば蛍光部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分の濃度がほぼ同じであるとき、蛍光部分からの検出可能な蛍光発光の絶対値と、実質的に蛍光を出さないドナー部分からの検出可能な蛍光発光の絶対値の比は、一般に、約500:1以上であり、より一般には約1000:1以上であり、それ以上に一般的には約1500:1以上(例えば約2000:1、約2500:1、約3000:1、約3500:1、約4000:1、約4500:1、約5000:1)である。実質的に蛍光を出さないドナー部分の例として、4',5'-ジメトキシ-6-カルボキシフルオレセイン、4',5'-ジメトキシ-5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシ-アミノペンタクロロフルオレセイン、5-カルボキシ-アミノペンタクロロフルオレセインなどがある。非蛍光性ドナー部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分は、一般に、別のエネルギー源(例えば光源および/または熱源)から十分な量のエネルギーを吸収して非蛍光性励起エネルギーを発生させる。さらに、アクセプタ部分は、一般に、これらドナー部分から出た励起エネルギーを吸収し、それに応答して蛍光を発生させることができる。
“非蛍光性エネルギー”という用語は、蛍光として発生する形態以外のエネルギーを意味する。
“核酸”または“ポリヌクレオチド”という用語は、リボ核酸(RNA)ポリマー、またはデオキシリボ核酸(DNA)ポリマー、またはこれらの類似体に対応させることのできるポリマーを意味する。その中には、ヌクレオチドのポリマー(例えばRNA、DNA)のほか、その修飾された形態、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA(登録商標))が含まれる。いくつかの実施態様では、核酸として、複数のタイプのモノマー(例えばRNAサブユニットとDNAサブユニットの両方)を含むポリマーが可能である。核酸として、例えば染色体またはそのセグメント、ベクター(例えば発現ベクター)、発現カセット、裸のDNAまたはRNAポリマー、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物、オリゴヌクレオチド、プローブ、プライマーが可能である。核酸は、例えば一本鎖、二本鎖、三本鎖のいずれかが可能であり、長さに制限はない。特に断わらない限り、特定の核酸配列は、明示的に示した配列に加え、場合によってはそれと相補的な配列を含んでいるかコードしている。
核酸は、天然のポリヌクレオチドの配列または構造を有する分子、および/または天然の骨格を有する分子、および/または天然のヌクレオチド間結合を有する分子に限定されない。例えば1つ以上の炭素環式糖を含む核酸もこの定義に含まれる(Jenkins他、1995年、Chem. Soc. Rev.、169〜176ページ)。さらに詳しく説明すると、核酸は一般にホスホジエステル結合を含むことになるが、別の骨格を有する核酸類似体が含まれる場合がある。核酸類似体としては、ホスホロアミダイト(Beaucage他、1993年、Tetrahedron、第49巻(10)、1925ページとその中の参考文献;Letsinger、1970年、J. Org. Chem.、第35巻、3800ページ;Sprinzl他、1977年、Eur. J. Biochem.、第81巻、579ページ;Letsinger他、1986年、Nucl. Acids Res.、第14巻、3487ページ;Sawai他、1984年、Chem. Lett.、805ページ;Letsinger他、1988年、J. Am. Chem. Soc.、第110巻、4470ページ;Pauwels他、1986年、Chemica Scripta、第26巻、1419ページ)、ホスホロチオエート(Mag他、1991年、Nucleic Acids Res.、第19巻、1437ページ;アメリカ合衆国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briu他、1989年、J. Am. Chem. Soc.、第111巻、2321ページ)、O-メチルホスホロアミダイト連結(Eckstein、『オリゴヌクレオチドと類似体:実際的な方法』、オックスフォード大学出版、1992年)、ペプチド核酸の骨格と連結(Egholm、1992年、J. Am. Chem. Soc.、第114巻、1895ページ;Meier他、1992年、Chem. Int. Ed. Engl.、第31巻、1008ページ;Nielsen、1993年、Nature、第365巻、566ページ;Carlsson他、1996年、Nature、第380巻、207ページ)などがある。他の核酸類似体としては、正に帯電した骨格(Denpcy他、1995年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第92巻、6097ページ);非イオン性骨格(アメリカ合衆国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、第4,469,863号;Angew、1991年、Chem. Intl. Ed. English、第30巻、423ページ;Letsinger他、1988年、J. Am. Chem. Soc.、第110巻、4470ページ;Letsinger他、1994年、Nucleoside & Nucleotide、第13巻、1597ページ;ASCシンポジウム・シリーズ580、『アンチセンスの研究における炭水化物の修飾』(Y.S. SanghviとP. Dan Cook編)の第2章と第3章;Mesmaeker他、1994年、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett.、第4巻、395ページ;Jeffs他、1994年、J. Biomolecular NMR、第34巻、17ページ;Tetrahedron Lett.、第37巻、743ページ、1996年);非リボース骨格(アメリカ合衆国特許第5,235,033号、第5,034,506号、ASCシンポジウム・シリーズ580、『アンチセンスの研究における炭水化物の修飾』(Y.S. SanghviとP. Dan Cook編)の第6章と第7章)などがある。いくつかの核酸類似体が例えばRawls、C & E News、1997年6月2日号、35ページにも記載されている。リボース-リン酸骨格の修飾により、追加部分(例えば標識部分)の付加を容易にしたり、生理学的環境におけるそのような分子の安定性と半減期を変えたりすることができる。
核酸類似体には、核酸の中に一般的に見いだされる天然の複素環塩基(例えばアデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル)に加え、も天然には存在しない複素環塩基または他の修飾された塩基も含まれる。例えばヌクレオチドの中で用いられて融点(Tm)変更剤として機能するいくつかの塩基が場合によっては挙げられる。そのような塩基をいくつか例示すると、7-デアザプリン(例えば7-デアザグアニンや7-デアザアデニン)、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、プロピニル-dN(例えばプロピニル-dU、プロピニル-dC)がある。例えば1999年11月23日にSeelaに付与された「7-デアザ-2'-デオキシグアノシンヌクレオチドの合成」という名称のアメリカ合衆国特許第5,990,303号を参照のこと。他の代表的な複素環塩基としては、例えばヒポキサンチン、キサンチン;2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、キサンチンの8-アザ誘導体;アデニン、グアニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチンの7-デアザ-8-アザ誘導体;6-アザシトシン;5-フルオロシトシン;5-クロロシトシン;5-ヨードシトシン;5-ブロモシトシン;5-メチルシトシン;5-プロピニルシトシン;5-ブロモビニルウラシル;5-フルオロウラシル;5-クロロウラシル;5-ヨードウラシル;5-ブロモウラシル;5-トリフルオロメチルウラシル;5-メトキシメチルウラシル;5-エチニルウラシル;5-プロピニルウラシルなどがある。天然ではない多くの塩基が、例えばSeeal他、1991年、Helv. Chim. Acta、第74巻、1790ページ;Grein他、1994年、Bioorg. Med. Chem. Lett.、第4巻、971〜976ページ;Seela他、1999年、Helv. Chim. Acta、第82巻、1640ページにも記載されている。
修飾された塩基およびヌクレオチドの別の例が、例えば1996年1月16日にFroehlerらに付与された「5-プロピニルピリミジンを含むオリゴヌクレオチド」という名称のアメリカ合衆国特許第5,484,908号、1997年7月8日にFroehlerらに付与された「修飾されたピリミジンを含むオリゴマーを用いた三重螺旋と二重螺旋の形成増加」という名称のアメリカ合衆国特許第5,645,985号、1998年11月3日にFroehlerらに付与された「修飾されたピリミジンを含むオリゴマーを用いる方法」という名称のアメリカ合衆国特許第5,830,653号、2003年10月28日にKochkineらに付与された「[2.2.1]ビシクロヌクレオシドの合成」という名称のアメリカ合衆国特許第6,639,059号、2001年10月16日にSkouvに付与された「1ステップでのサンプルの調製と、複雑な生物サンプルに含まれる核酸の検出」という名称のアメリカ合衆国特許第6,303,315号、にKochkineらによる2003年5月15日に公開された「[2.2.1]ビシクロヌクレオシドの合成」という名称のアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0092905号にも記載されている。
“ヌクレオシド”は、糖部分(例えばリボース糖)、糖部分の誘導体、糖部分と同等な官能基(例えば炭素環などの類似体)のいずれかに共有結合した(例えば少なくとも1つの同系環、および/または少なくとも1つの複素環、および/または少なくとも1つのアリール環を含む)塩基または塩基性の基を含む核酸成分を意味する。例えばヌクレオシドが糖部分を含んでいる場合には、塩基は一般にその糖部分の1'位に結合する。上記のように、塩基としては、天然のもの(例えばプリン塩基であるアデニン(A)、グアニン(G)、ピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))または天然ではないもの(例えば7-デアザプリン塩基、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン塩基、プロピニル-dN塩基)が可能である。ヌクレオシドの例として、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデオキシリボヌクレオシド、炭素環ヌクレオシドなどがある。
“ヌクレオチド”は、ヌクレオシドのエステル(例えばヌクレオシドのリン酸エステル)を意味する。例えばヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分の5'位に共有結合した1個、2個、3個またはそれ以上のリン酸基を含むことができる。
“ヌクレオチド組み込み生体触媒”は、核酸へのヌクレオチドの組み込みを触媒する触媒を意味する。ヌクレオチド組み込み生体触媒は一般に酵素である。“酵素”は、タンパク質および/または核酸をベースとした触媒であり、他の化合物すなわち“基質”が関与する化学反応の活性化エネルギーを低下させる作用がある。“ヌクレオチド組み込み酵素”は、例えば核酸の増幅中に核酸へのヌクレオチドの組み込みを触媒する酵素を意味する。ヌクレオチド組み込み酵素の例として、例えばポリメラーゼ、ターミナルトランスフェラーゼ、逆転写酵素、テロメラーゼ、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ、リガーゼなどがある。“熱安定酵素”は、熱に対して安定で耐熱性であり、選択された期間にわたって高温に曝されたときに触媒活性を維持する酵素を意味する。例えば熱安定ポリメラーゼは、二本鎖核酸を変性させるのに必要な時間にわたって高温に曝したときにその後プライマー伸長反応が起こるのに十分な活性を保持しているため、ハイブリダイゼーションが可能である。核酸の変性に必要な加熱条件は当業者には周知であり、例えば、1987年7月28日にMullisに付与された「核酸配列を増幅する方法」という名称のアメリカ合衆国特許第4,683,202号と、1987年7月28日にMullisらに付与された「核酸配列を増幅、および/または検出、および/またはクローニングする方法」という名称のアメリカ合衆国特許第4,683,195号に記載されている。さらに詳しく説明すると、“熱安定ポリメラーゼ”は、温度サイクリング反応(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR))で用いるのに適した酵素を意味する。熱安定ポリメラーゼにとっての酵素活性は、鋳型核酸と相補的なプライマー伸長産物を形成するために適切な方法でヌクレオチドを組み合わせる触媒作用を意味する。
“オリゴヌクレオチド”は、少なくとも2つの核酸モノマー単位(例えばヌクレオチド)を含む核酸を意味する。モノマー単位の数は一般に4つ以上であり、より一般には11個以上である。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、一般に、さまざまな因子(例えばオリゴヌクレオチドの最終的な機能や最終的な利用法)に依存する。一般に、ヌクレオシド・モノマーがホスホジエステル結合またはそれと同様の結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセロノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、ホスホン酸メチルであり、対イオンが存在している場合には、付随する対イオン(例えばH+、NH4 +、Na+)も含まれる)によって結合する。オリゴヌクレオチドは、場合によっては適切な任意の方法で調製される。方法としては、例えば、既存の配列または天然の配列の分離、DNAの複製または増幅、逆転写、適切な配列のクローニングと制限消化、直接的な化学合成(例えばNarangらのホスホトリエステル法(1979年、Meth. Enzymol.、第68巻、90〜99ページ);Brownらのホスホジエステル法(1979年、Meth. Enzymol.、第68巻、109〜151ページ);Beaucageらのジエチルホスホロアミダイト法(1981年、Tetrahedron Lett.、第22巻、1859〜1862ページ);Matteucciらのトリエステル法(1981年、J. Am. Chem. Soc.、第103巻、3185〜3191ページ);自動化された合成法;1984年7月3日にCaruthersらに付与された「ポリヌクレオチドの調製法」という名称のアメリカ合衆国特許第4,458,066号の固体支持体法;当業者に知られた他の方法)などがある。
“可視光吸光度のピーク位置”という用語は、電磁スペクトルの可視領域または光学領域の範囲において、分子がエネルギーを最も効果的に吸収する波長を意味する。電磁スペクトルの可視領域または光学領域には、一般に、約700ナノメートル(nm)〜約400nmの範囲の波長が含まれる。いくつかの実施態様では、例えば、実質的に蛍光を出さないドナー部分からアクセプタ部分への非蛍光エネルギー移動は、実質的に蛍光を出さないそのドナー部分とそのアクセプタ部分の可視光吸光度のピーク位置が互いに約100nm以上異なっているときに最も効率的である。考慮する特定の分子が何であるかに応じ、可視光吸光度のピーク位置は、その分子に関して全スペクトル範囲で吸光度が最大となる位置に対応する場合と、その分子に関して電磁スペクトルの可視領域で吸光度が局所的な最大となる位置に対応する場合の可能性がある。
“ホスホロアミダイト”は、一般式:
(ただし、R
1とR
2は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルからなるグループの中から独立に選択されたアルキル基であり;R
3は、(CH
2)
2CNまたはCH
3である)を持つ基を含む化合物を意味する。いくつかの実施態様では、例えばホスホロアミダイトは、オリゴヌクレオチドの合成手続きで一般に用いられるヌクレオシド-3'-ホスホロアミダイト・モノマーである。これら実施態様のいくつかでは、そのホスホロアミダイト・モノマーは、5'ヒドロキシル位置が保護基で保護される。さまざまな保護基も一般に塩基の環外アミンに結合される。さらに、モノマーのリン原子は、場合によってはβ-シアノエチル(R
3)基とジイソプロピルアミン(N R
1R
2)基、または上記の一般式に合致した他の基で保護される。ホスホロアミダイトとオリゴヌクレオチドの合成は、例えばBeaucageらによる「ホスホロアミダイト法によるオリゴヌクレオチドの合成における進歩」(1992年、Tetrahedron、第48巻、2223〜2311ページ)にも記載されている。
“ポリペプチド”、“ペプチド”、“タンパク質”という用語はこの明細書では同じ意味で用いられ、アミノ酸のポリマーを意味する。これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が、対応する天然のアミノ酸の類似体、誘導体、ミメティックのいずれかであるアミノ酸ポリマーと、天然のアミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは例えば修飾または誘導体化することができ、例えば炭水化物残基の付加によって糖タンパク質が形成され、脂質部分を付加することによってリポタンパク質が形成される。したがって“ポリペプチド”、“ペプチド”、“タンパク質”という用語には、糖タンパク質とリポタンパク質のほか、非糖タンパク質と非リポタンパク質が含まれる。
“プライマー核酸”または“プライマー”は、標的核酸または鋳型核酸とハイブリダイズできて、例えばヌクレオチド組み込み生体触媒(例えばポリメラーゼ)を用いて適切な反応条件下で鎖の延長または伸長を可能にする核酸である。プライマー核酸は、一般に、天然または合成のオリゴヌクレオチド(例えば一本鎖のオリゴデオキシリボヌクレオチド)である。場合によっては別の長さのプライマー核酸が使用されるが、その長さには、約8〜約100ヌクレオチドの長さのハイブリダイズ領域が一般に含まれる。短いプライマー核酸は、鋳型核酸と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するのに必要な温度が一般により低い。プライマー核酸が鋳型核酸とハイブリダイズして伸長が起こるには、そのプライマー核酸の少なくとも一部が鋳型核酸の部分配列と相補的であれば十分である。プライマー核酸は、望むのであれば、例えば分光法、光化学的な方法、生化学的な方法、免疫化学的な方法、化学的な方法、これら以外の方法のいずれかによって検出できる標識の組み込みによって標識することができる。有用な標識としては、例えば、実質的に蛍光を出さないドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分、放射性同位体、電子が密な試薬、酵素(ELISAを実施するのに一般的に用いられる)、ビオチン、ハプテンや、抗血清またはモノクローナル抗体が利用できるタンパク質などが挙げられる。これらのうちの多くのものとこれら以外の標識は、この明細書にさらに詳しく説明してある、および/または従来技術で知られている。当業者であれば、いくつかの実施態様においてプライマー核酸をプローブ核酸としても使用できることがわかるであろう。
“プローブ生体分子”は、標的生体分子に選択的に結合できる、標識された生体分子または標識されていない生体分子を意味する。
“保護基”は、所定の化合物に共有結合または非共有結合し、望ましくない化学反応がその化合物内の1つ以上の部位で起こらないようにする化学基を意味する。保護基の例としては、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、レブリニル、フルオレニルメトキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニルなどがある。
“プローブ核酸”または“プローブ”という用語は、適切な条件下で標的核酸または鋳型核酸と選択的にハイブリダイズできる標識されたオリゴヌクレオチドまたは標識されていないオリゴヌクレオチドを意味する。一般に、プローブは、核酸サンプルに含まれる特定の標的配列と十分に相補的であるため、選択されたハイブリダイゼーション条件(例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件など)のもとで標的配列と安定なハイブリダイゼーション二本鎖を形成する。十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でプローブを用いて実施するハイブリダイゼーション・アッセイにより、特定の標的配列を選択的に検出することができる。“ハイブリダイズ領域”という用語は、核酸の領域のうちで、標的配列と正確に相補的であるか実質的に相補的であるためにその標的配列とハイブリダイズできる領域を意味する。配列中の1個のヌクレオチドの差を識別するためのハイブリダイゼーション・アッセイで使用するにためのハイブリダイズ領域は長さが約8〜約100ヌクレオチドである。ハイブリダイズ領域は一般にオリゴヌクレオチド全体を意味するが、プローブは追加のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。その追加のヌクレオチド配列は、例えばリンカー結合部位として機能し、プローブ配列を固体支持体に付着させる部位を提供する。本発明のプローブは、一般に、1つ以上の標識(例えば実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分)を有する核酸に含まれる。プローブとしては、5'-ヌクレアーゼ・プローブ、ハイブリダイゼーション・プローブ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブ、ヘアピン・プローブ、分子ビーコン(これも、プローブとサンプル中の標的核酸の間のハイブリダイゼーションを検出するのに使用できる)などがある。いくつかの実施態様では、プローブのハイブリダイズ領域は標的配列と完全に相補的である。しかし一般には、完全な相補性は必要ない(すなわち核酸は互いに一部だけが相補的であってよい)。したがって安定なハイブリダイゼーション複合体は、不適正塩基対または対合していない塩基を含んでいてもよい。不適正塩基対または対合していない塩基を1つ以上含む安定なハイブリダイゼーション複合体が可能であるためには、ストリンジェント条件を変更する必要があろう。Sambrook他、『分子クローニング:実験室マニュアル』、第3版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、2001年には、適切な変更のためのガイドが記載されている。標的/プローブからなるハイブリダイゼーション複合体の安定性は、多数の変数(例えばオリゴヌクレオチドの長さ、塩基組成、オリゴヌクレオチドの配列、温度、イオン条件)に依存する。当業者であれば、一般に、所定のプローブの正確な相補体がプローブとして同様に有用であることが理解できよう。当業者であれば、いくつかの実施態様ではプローブ核酸をプライマー核酸としても使用できることが理解できよう。
“近接アッセイ”という用語は、検出可能な信号が発生する原因の少なくとも1つが、アクセプタ部分とドナー部分が互いに十分に近いことであるアッセイを意味する。いくつかの実施態様では、例えば別々の生体分子がアクセプタ部分とドナー部分を含んでいて、これら生体分子間の分子間距離が少なくとも1つの原因で、アクセプタ部分から検出可能なエネルギー放射が発生する。別の実施態様では、生体分子がアクセプタ部分とドナー部分の両方を含んでいて(例えば1つの生体分子の同じモノマー単位または異なるモノマー単位に結合している)、分子内におけるこれら部分間の間隔が少なくとも1つの原因で、アクセプタ部分から検出可能なエネルギー放射が発生する。これら実施態様のいくつかでは、アクセプタ部分からの検出可能なエネルギー放射は、例えば生体分子がコンフォメーションを変えるにつれて、または生体分子内でアクセプタ部分とドナー部分が酵素プロセスや切断プロセスによって互いに離れるにつれて変化する。
“クエンチャ部分”または“クエンチャ”は、光源からの検出可能な発光(例えば蛍光またはルミネッセンス)を減らすことのできる部分を意味し、この部分が存在していなければこの発光が起こったであろう。クエンチャは、一般に、光源からの検出可能な発光を少なくとも50%減らす(一般には少なくとも80%、より一般には少なくとも90%)。クエンチャの中には、例えば蛍光染料から吸収したエネルギーを再放出し、そのエネルギーがそのクエンチャにとって特徴的な信号となるものがあるため、クエンチャ部分はアクセプタ部分になることもできる。この現象は一般に蛍光共鳴エネルギー移動またはFRETとして知られている。あるいはクエンチャは、蛍光染料から吸収したエネルギーを光以外の形態(例えば熱)で散逸させることができる。FRETの用途で一般に用いられる分子としては、例えば、フルオレセイン、FAM、JOE、ローダミン、R6G、TAMRA、ROX、DABCYL、EDANSなどがある。蛍光染料がアクセプタであるかクエンチャであるかは、その励起スペクトルおよび発光スペクトルと、それとペアにされる蛍光染料によって決まる。例えばFAMは波長が494nmの光によって最も効率的に励起されて500〜650nmのスペクトルの光を発生させ、発光ピークは525nmになる。FAMは、例えばクエンチャとしてのTAMRA(560nmで励起が最大になる)とともに用いるのに適したドナー部分である。蛍光染料から吸収したエネルギーを散逸させる非蛍光性クエンチャまたはダーク・クエンチャの例としては、バイオリサーチ・テクノロジーズ社(ノヴァト、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から市販されているブラック・ホール・クエンチャ(登録商標)がある。ブラック・ホール・クエンチャ(登録商標)は、置換されたアリール化合物、置換されていないアリール化合物、置換されたヘテロアリール化合物、置換されていないヘテロアリール化合物のいずれか、またはこれらの組み合わせの中から選択された少なくとも3つの基を含んでいて、その残基のうちの少なくとも2つは環外ジアゾ結合を通じて結合されている構造体である(例えば2001年11月15日に公開された「ドナー-アクセプタ・エネルギー移動のためのダーク・クエンチャ」という名称のCookらの国際公開番号WO 01/86001を参照のこと)。クエンチャの例は、例えば2002年10月15日にHornらに付与された「クエンチング可能な蛍光標識を有するオリゴヌクレオチド・プローブとその利用方法」という名称のアメリカ合衆国特許第6,465,175号にも提示されている。
生体ポリマーの“配列”は、その生体ポリマーの内部におけるモノマー単位(例えばヌクレオチド、アミノ酸、単糖)の順番と、そのモノマー単位が何であるかを意味する。核酸の配列は、一般に5'から3'の方向に読まれるのに対し、ポリペプチドの配列は、一般にその分子のアミノ末端すなわちN末端からカルボキシル末端すなわちC末端の方向に読まれる。
“固体支持体”は、化学的部分(例えばプローブ)を用いて誘導体化するか結合させることのできる固体材料を意味する。固体支持体の例としては、プレート、ビーズ、マイクロビーズ、細孔性ガラス(CPG)、ポリスチレン、チューブ、ファイバー、ホイスカー、櫛状体、ハイブリダイゼーション・チップ(アフィメトリックス社、サンタ・クララ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)、膜、単結晶、セラミック層、自己集合単層、金属面などがある。
この明細書では、“ストリンジェント”または“ストリンジェントな条件”という用語は、従来技術でよく知られているように、イオン強度が小さくて高温のハイブリダイゼーション条件を意味する。例えばSambrook他、『分子クローニング:実験室マニュアル』、第3版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、2001年;『分子生物学の最新プロトコル』(Ausbel他編、J.ワイリー&サンズ社、ニューヨーク、1997年);Tijssen、1993年、前掲文献を参照のこと。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度とpHにおいて特定の配列の融点(Tm)よりも約5〜30℃低い温度になるように選択される。あるいはストリンジェントな条件は、所定のイオン強度とpHにおいて特定の配列のTmよりも約5〜15℃低い温度になるように選択される。Tmは、(所定のイオン強度、pH、核酸の濃度のもとで)平衡において標的と相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリダイズする温度である(標的配列がTmにおいて過剰に存在していると、平衡においてプローブの50%がハイブリダイズする)。
“配列”、“セグメント”、“フラグメント”は、生体分子配列全体の任意の一部を意味する。
ドナー部分とアクセプタ部分の間のエネルギー移動という文脈における“十分に近い”という用語は、これらの部分が互いに適切な間隔および/または位置にあるためにアクセプタ部分がドナー部分から移動したエネルギーを受け取るか吸収できることを意味する。例えばいくつかのアクセプタ部分は、適切な間隔および/または位置にある実質的に蛍光を出さないドナー部分から移動した十分な量の非蛍光エネルギーを受け取って蛍光を出す。
“糖”または“炭水化物”は、ポリヒドロキシ-アルデヒド(アルドース)またはポリヒドロキシ-ケトン(ケトース)、またはこれらから誘導される化合物または類似体を意味する。炭水化物ポリマー(例えばオリゴ糖や多糖)には単糖モノマー単位が含まれる。炭水化物の例としては、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、ジヒドロキシアセトン、キシルロース、フルクトースなどがある。糖類似体(例えば炭素環糖)も糖の定義に含まれる(例えばJenkins他、1995年、Chem. Soc. Rev.、169〜176ページを参照のこと)。
“システム”は、望む目的を実現するためのネットワークを形成する一群の物体および/または装置を意味する。例えば本発明のいくつかの実施態様では、システムは、例えばハイブリダイゼーション・プローブ・アッセイの一部として、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分を含む1つ以上の生体分子と、アクセプタ部分が実質的に蛍光を出さないドナー部分に十分に近いときにそのアクセプタ部分から発生する光を検出する構成の検出素子とを含む容器および/または固体支持体を備えている。
“標的”は、増幅、および/または検出、および/または分析されることになる生体分子またはその一部を意味する。
“ターミネータ・ヌクレオチド”は、核酸に組み込まれるとその核酸のさらなる伸長を阻止するヌクレオチド(例えば少なくとも1つのヌクレオチド組み込み生体触媒)を意味する。
物体は、熱エネルギーがその物体間で移動するか移動できるときに互いに“熱をやり取りする”。この明細書に記載したシステムのいくつかの実施態様では、例えば熱調節装置が容器および/または固体支持体と熱をやり取りすることで、その容器および/または固体支持体の温度を調節する。
II.序論
本発明は、全体として、ドナー部分とアクセプタ部分の間の非蛍光性エネルギーの移動に関する。より詳細には、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分は、ドナー部分とアクセプタ部分の間でのエネルギー移動が関与するほぼあらゆる用途(例えば多数あるさまざまな近接アッセイ形式)で利用することができる。例えば従来のエネルギー移動染料ペアは、一般に短い波長の蛍光ドナー部分を用いて構成され、そのドナー部分が、吸収されたエネルギーを波長のより長いアクセプタ部分に移動させる。さらに、ドナー部分の蛍光発光スペクトルとアクセプタ部分の蛍光吸収スペクトルは重なるはずである、と一般に考えられている。この従来の教えとは逆に、本発明の驚くべき1つの結果は、この明細書に記載したドナー部分に蛍光発光スペクトルがかなり欠けていることである。それにもかかわらず、アクセプタ部分がこれらドナー部分の十分に近くに位置していると、アクセプタ部分は、ドナー部分から移動した非蛍光性エネルギーを吸収して光を発生させる。
従来の蛍光ドナー部分(例えばフルオレセイン)を用いることに伴う一般的な1つの問題は、ドナー部分自身から発生するバックグラウンドの蛍光である。このバックグラウンドの蛍光のため、特に、多数の蛍光ドナー・プローブを用いる多くの用途においては、より長い波長のアクセプタ部分へのエネルギー移動を識別することが難しくなる可能性がある。さらに詳しく説明すると、このようなバックグラウンドまたはベースラインの発光は、一般に、例えば検出の感度(すなわち分析物の濃度のわずかな差を識別するアッセイの能力)やダイナミック・レンジ(すなわち定量的な測定が可能な最小濃度(定量化の限界、すなわちLOQ)から、較正曲線が線形から外れる濃度(線形性の限界、LOL)まで広がるアッセイの有効な範囲)を制限することにより、これらプローブが関与するアッセイの性能にマイナスの影響を与える。したがってこの明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分を用いることの利点の1つは、このタイプのバックグラウンドの蛍光を低減または除去することで、このタイプのドナー部分が関与するアッセイの性能が向上することである。この明細書に記載したドナー部分によって与えられるこの向上した信号雑音比と本発明の他の多くの特徴について、以下の実施例でさらに詳しく説明する。
以下により詳しく説明するように、本発明により、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分が共有結合またはそれ以外の結合をした生体分子(例えばバイオポリマー合成試薬、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質)が提供される。本発明により、これら生体分子を含むさまざまな反応混合物と、所定のプロセスを実施するための他の試薬も提供される。所定のプロセスとしては、特にバイオポリマーの合成、バイオポリマーの標識、核酸の検出が挙げられるが、この明細書には他にも多く記載されているし、当業者に知られているプロセスも多くある。やはりこの明細書に記載されているように、さまざまな方法も提供される。いくつかの実施態様では、例えば本発明により近接アッセイを実施する方法と、標的生体分子を検出する方法が提供される。例えばいろいろな用途(当業者によく知られているものの中では、特に、遺伝子型決定、診断、裁判など)において核酸を検出する方法の中で、場合によってはこの明細書に記載されている生体分子が利用される。さらに詳しく説明すると、バイオポリマーのシークエンシングおよび/または標識を行なう方法と、この明細書に記載した生体分子の合成方法も提供される。本発明によりいくつかのビジネス法がさらに提供される。本発明のこれらの特徴と他のさまざまな特徴は、この明細書の全体を概観することによって明らかになろう。
III.実質的に蛍光を出さないドナー部分
プロセスの途中で顕著に蛍光を発生させることなく非蛍光性エネルギーをアクセプタ部分に移動させることのできるほぼすべての化合物を、実質的に蛍光を出さないドナー部分として用いることができる。したがってこの目的で場合によっては用いられる可能性のある化合物がすべてこの明細書に掲載されているわけではない。そうではなく、本発明の特徴をより詳しく説明するため、この明細書では実質的に蛍光を出さない特定のいくつかのドナー部分に言及する。特に、実質的に蛍光を出さないドナー部分またはその前駆体の代表例として、4',5'-ジメトキシ-6-カルボキシフルオレセイン、4',5'-ジメトキシ-5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオロセイン、6-カルボキシ-アミノペンタクロロフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオロセイン、5-カルボキシ-アミノペンタクロロフルオレセインなどがある。例示したこれら部分のいくつかの化学構造を表Iに示す。
ある条件下(例えばHEXで標識されたオリゴヌクレオチドがアンモニアの中で55℃にて約24時間にわたって加熱されているとき)では、生体分子への6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオロセインと5-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオロセインの結合は、少なくとも1つの塩素イオンの欠失と少なくとも1つのアミノ基の付加を伴っているため、この明細書では、これらの実施態様で生体分子に結合させるときにはこれらの部分をそれぞれ“6-カルボキシ-アミノペンタクロロフルオレセイン”、“5-カルボキシ-アミノペンタクロロフルオレセイン”と呼ぶこと、または“ダメージを受けたHEX”または“Dam HEX”(例えば5-Dam HEXまたは6-Dam HEX)と呼ぶことに注意されたい。さらに、この明細書に提示したどの分子構造に関しても、これら分子構造には、提示した正確な電子構造だけでなく、あらゆる共鳴構造とそのプロトン化状態も含まれるものとする。
実質的に蛍光を出さない多くのドナー部分は、当業者に知られている化学的な方法を利用して容易に合成することができる。合成プロトコルで利用する際に場合によっては改変されるさまざまな合成法が当業者に広く知られており、例えばMarch、『高等有機化学:反応、メカニズム、構造』、第5版、ジョン・ワイリー&サンズ社、2000年;CareyとSundberg、『高等有機化学、パートA:構造とメカニズム』、第4版、プレナム出版、2000年;CareyとSundberg、『高等有機化学、パートB:反応と合成』、第4版、プレナム出版、2001年にも記載されている。実質的に蛍光を出さないドナー部分の合成に役立つ出発化学材料と他の反応成分は、さまざまな製造会社(例えばシグマ-オールドリッチ社(セントルイス、ミズーリ州、アメリカ合衆国))から容易に入手できる。さらに、実質的に蛍光を出さないいくつかのドナー部分は、さまざまな製造会社(モレキュラー・プローブズ社(ユージン、オレゴン州、アメリカ合衆国))からあらかじめ合成された状態で市販品を入手することができる。
IV.実質的に蛍光を出さないドナー部分を含む試薬
本発明は、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分を含む試薬にも関する。この試薬は、このドナー部分を共有結合または非共有結合させることのできるあらゆる分子または材料を含むことができる。そのような分子または材料の例としては、固体支持体(例えば膜や細孔性ガラス)、ウイルス粒子、組織、細胞(例えば哺乳動物の細胞、細菌、他の微生物)、オルガネラ、有機モノマー、無機モノマー、有機ポリマー、無機ポリマーなどがある。いくつかの実施態様では、例えば本発明の試薬は生体分子(例えば脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、アミノ酸、糖)を含んでいる。いくつかの実施態様では、これら生体分子として、バイオポリマー(例えばペプチド、タンパク質、ポリペプチド、酵素、ある種のホルモン、免疫グロブリン、多糖、オリゴ糖、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド)などが挙げられる。
本発明の試薬は多くの異なるプロセスで利用することができる。ヌクレオチド試薬とヌクレオシド試薬の代表的な用途としては、例えば、酵素を用いた合成によって形成された標識オリゴヌクレオチド(例えばPCR増幅、ニックトランスレーション反応、糖タイプのオリゴヌクレオチドのシークエンシングといった文脈で用いられるヌクレオシド三リン酸)などがある。いくつかの実施態様では、例えばこれら試薬は、本発明の実質的に蛍光を出さないドナー部分で標識されたヌクレオシド(例えばシトシン、アデノシン、グアノシン、チミジン)である(NTP)。これら試薬は、オリゴヌクレオチドの合成が関与するさまざまな方法で使用することができる。いくつかの実施態様では、これら試薬として、標識されたヌクレオチドも挙げられる(例えば一リン酸ヌクレオシドリン酸エステル、二リン酸ヌクレオシドリン酸エステル、三リン酸ヌクレオシドリン酸エステル)。より詳細には、これら試薬として、例えばこの明細書に記載したドナー部分で標識したデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などが挙げられる(例えばデオキシアデノシン三リン酸、デオキシシトシン三リン酸、デオキシチミジン三リン酸、デオキシグアノシン三リン酸)。これら試薬は、例えばオリゴヌクレオチドで標識した染料を調製するときにポリメラーゼの基質として使用することができる。これら試薬として、標識したジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)(例えばジデオキシアデノシン三リン酸、ジデオキシグアノシン三リン酸、ジデオキシシトシン三リン酸、ジデオキシチミジン三リン酸)や、本発明の実質的に蛍光を出さないドナー部分で標識した他のターミネータ・ヌクレオチドも挙げられる。これら試薬は、例えば染料末端部のシークエンシングで使用することができる。オリゴヌクレオチド試薬の利用法の例として、核酸シークエンシング・プライマー、PCRプライマー、ハイブリダイゼーション・プローブ、ヘアピン・プローブ、5'-ヌクレアーゼ・プローブなどがある。この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分で標識したポリペプチドの代表的な利用法として、タンパク質の構造とコンフォメーションの研究、受容体/リガンド結合アッセイ、イムノアッセイなどがある。この明細書に記載したドナー部分で標識した脂質試薬の利用法の例としては、脂質の分布と輸送のアッセイ、膜融合アッセイ、膜電位感知アッセイなどがある。さらに、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分で標識した炭水化物試薬の利用法の例として、受容体/リガンド結合アッセイ、構造分析などがある。本発明の試薬の利用法について以下にさらに詳しく説明する。
いくつかの実施態様では、本発明の試薬は、実質的に蛍光を出さない1つ以上のドナー部分に加え、1つ以上のアクセプタ部分および/またはクエンチャ部分を含んでいる。別の実施態様では、所定の試薬は、アクセプタ部分および/またはクエンチャ部分を欠いている。さらに詳しく説明するため、図1A〜図1Fに本発明の試薬の代表例を図示してある。より詳細には、図1A〜図1Fのそれぞれに、モノマー単位102を含むバイオポリマー100を示してある。図1Aに図示した実施態様からわかるように、バイオポリマー100は、モノマー単位102に結合した実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)104を含んでいる。図1Bでは、アクセプタ部分(A)106が、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)104を介してバイオポリマー100のモノマー単位102に結合しているのに対し、図1Cでは、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)104が、アクセプタ部分(A)106を介してバイオポリマー100のモノマー単位102に結合している。図1Dには、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)104とアクセプタ部分(A)106がバイオポリマー100に結合する別の方法を示してある。図1Eは、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)104とアクセプタ部分(A)106が同じモノマー単位102に別々に結合した様子を示している。さらに、図1Fは、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)104とアクセプタ部分(A)106とクエンチャ部分(Q)108がバイオポリマー100の異なるモノマー単位102に別々に結合した様子を示している。ドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分は、場合によっては共有結合または非共有結合で、試薬に結合すること、および/または互いに結合することがわかるであろう。いくつかの実施態様では、例えばこれらの部分はリンカー部分を介して互いに、および/または試薬の他の成分に結合するのに対し、別の実施態様では、これらの部分がリンカー部分を介して互いに結合することも、試薬の他の成分に結合することもない。ドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分は、骨格または分子の他の任意の構造成分を介してポリマーと結合できることもわかるであろう。
アクセプタ部分とクエンチャ部分
本発明による試薬のアクセプタ部分は、一般に、実質的に蛍光を出さないドナー部分から移動した励起エネルギーを吸収し、それに応答して蛍光を出すことができる。いくつかの実施態様では、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分の可視光吸光度のピーク位置は、互いに100nm以上異なっている。使用できるアクセプタ部分の代表的なクラスとして、キサンテン染料、シアニン染料、フタロシアニン染料、スクアレン染料などがある。染料のこれらクラスに含まれるアクセプタ部分の例は、例えば1998年9月1日にLeeらに付与された「蛍光が増大したエネルギー移動染料」という名称のアメリカ合衆国特許第5,800,996号にも記載されている。
さらに詳しく説明すると、本発明による試薬のいくつかの実施態様で使用できるアクセプタ部分のより具体的な例として、カルボキシフルオレセインの異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、4,7-ジクロロフルオレセイン、4,7-ジクロロローダミン(1998年12月8日にLeeらに付与された「4,7-ジクロロローダミン染料」という名称のアメリカ合衆国特許第5,847,162号)、フルオレセイン、非対称ベンゾキサンテン染料、カルボキシ-HEXの異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、NAN、CI-FLAN、TET、JOE、VIC、ZOE、ローダミン、カルボキシローダミンの異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、カルボキシR110の異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、カルボキシR6Gの異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、N,N,N',N'-テトラメチルカルボキシローダミン(TAMRA)の異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)の異性体(例えば5-カルボキシ、6-カルボキシ)、LC-レッド610、LC-レッド640、LC-レッド670、LC-レッド705、JA-270、CY3、CY3.5、CY5、CY5.5、BODIPY(登録商標)染料(例えばFL、530/550、TR、TMR)、ALEXA FLUOR(登録商標)染料(例えば488、532、546、568、594、555、653、647、660、680)、他のエネルギー移動染料(例えばBIGDYE(登録商標)v1染料、BIGDYE(登録商標)v2染料、BIGDYE(登録商標)v3染料)、ルシファー染料(例えばルシファー・イエロー)、CASCADE BLUE(登録商標)、オレゴン・グリーンなどがある。適切なアクセプタ部分のさらに別の例は、例えばHaugland、『蛍光プローブと探索生成物の分子プローブ・ハンドブック』、第9版、2003年とそのアップデート版に提示されている。アクセプタ部分は一般にさまざまな製造会社(例えばモレキュラー・プローブズ社(ユージン、オレゴン州、アメリカ合衆国)、アマーシャム・バイオサイエンシーズ社(ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)、アプライド・バイオシステムズ社(フォスター・シティ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国))から容易に市販品を入手することができる。
いくつかの実施態様では、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分は、リンカー部分を介して互いに結合していない。他の実施態様では、これらの部分は、リンカー部分を介して互いに結合している。これら実施態様のいくつかでは、例えばリンカー部分に構造:
が欠けている。ただし、R
4は、実質的に蛍光を出さないドナー部分に結合したC
1〜5アルキルであり;R
5は、NH、S、Oからなるグループの中から選択され;R
6は、アルケンと、ジエンと、アルキンと、少なくとも1つの不飽和結合を有するか、カルボニルの炭素に結合した縮合環構造を有する5〜6員の環とからなるグループの中から選択され;R
7は、リンカー部分をアクセプタ部分に結合させる官能基を含んでいる。リンカー部分について以下にさらに詳しく説明する。
いくつかの実施態様では、本発明の試薬は、1つ以上のクエンチャ部分も含んでいる。所定の蛍光染料がレポータであるかクエンチャであるかという問題は、一般に、その励起スペクトルおよび発光スペクトルと、それとペアにされる蛍光染料によって決まる。クエンチャ部分として一般に用いられる蛍光分子としては、例えばフルオレセイン、FAM、JOE、ローダミン、R6G、TAMRA、ROX、DABCYL、EDANSなどがある。これら化合物の多くは上記の製造会社から市販品として入手することができる。蛍光染料から吸収したエネルギーを散逸させる非蛍光クエンチャまたはダーク・クエンチャの例としては、バイオリサーチ・テクノロジーズ社(ノヴァト、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から市販されているブラック・ホール・クエンチャ(登録商標)またはBHQ(登録商標)などがある。
いくつかの実施態様では、本発明の試薬は、他の標識部分も含んでいてよい。他の標識の例として、例えばビオチン、弱い蛍光標識(Yin他、2003年、Appl. Environ. Microbiol.、第69巻(7)、3938ページ;Babendure他、2003年、Anal. Biochem.、第317巻(1)、1ページ;Jankowiak他、2003年、Chem. Res. Toxicol.、第16巻(3)、304ページ)、放射性標識、非蛍光標識、熱測定標識、化学発光標識(Wilson他、2003年、Analyst.、第128巻(5)、480ページ;Roda他、2003年、Luminescence、第18巻(2)、72ページ)、ラマン標識、電気化学標識、生体発光標識(Kitayama他、2003年、Photochem. Photobiol.、第77巻(3)、333ページ;Arakawa他、2003年、Anal. Biochem.、第314巻(2)、206ページ;Maeda、2003年、J. Pharm. Biomed. Anal.、第30巻(6)、1725ページ)、α-メチル-PEG標識試薬(例えばBodepudiらによって2002年11月22日に「検出可能な標識をされたヌクレオシド類似体とその利用方法」という名称で出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/428,484号に記載されているもの)などがある。
リンカー部分
多彩なリンカー部分を利用して他の部分(例えば実質的に蛍光を出さないドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分)を本発明の生体分子および他の試薬と結合させることができる。そのようなリンカー部分は当業者には明らかであろう。リンカー部分は、一般に、所定の生体分子に結合させるのに立体的および電子的に適した構造である。例えばリンカー部分は、場合によっては、例えばエーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、尿素、ウレタン、ヒドラジンや、他の部分を含んでいる。さらに詳しく説明すると、リンカー部分は、一般に、例えばC、N、O、P、Siの中から選択した1〜約25個の非水素原子を含むとともに、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、エステル結合、カルボキサミド結合、スルホンアミド結合、ヒドラジド結合のいずれかと、芳香族結合または複素芳香族結合とのほぼ任意の組み合わせを含んでいる。いくつかの実施態様では、例えばリンカー部分は、炭素-炭素単結合と、カルボキサミド結合またはチオエーテル結合との組み合わせを含んでいる。より長い直線状セグメントを持つリンカーが場合によっては利用されるが、直線状セグメントは一般に約3〜約15個の非水素原子を含んでいる。リンカーのこれらのタイプの例のいくつかを以下により詳しく説明する。
さらに詳しく説明すると、リンカー部分の例として、置換された(例えば機能化された)基または置換されていない基などがある。より詳細には、リンカーの例として、イミダゾール/ビオチン・リンカー、ポリメチレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、アリーレンアルキル基、アリールチオ基、アミドアルキル基、アルキニルアルキル基、アルケニルアルキル基、アルキル基、アルコキシ基、チオ基、アミノアルキル基、モルホリン誘導体化リン酸塩、ペプチド核酸(例えばN-(2-アミノエチル)グリシン)、ジスルフィド基などがある。いくつかの実施態様では、相補的な官能基がアミンであるか、生体分子への結合部位がアミンである場合には、リンカー部分は、イソチオシアネート、塩化スルホニル、4,6-ジクロロトリアジニルアミン、スクシンイミジルエステル、他の活性なカルボン酸塩である。相補的な官能基がスルフヒドリルである場合には、リンカー部分は、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドである。いくつかの実施態様では、リンカー部分は、ドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分いずれかのカルボキシル基から形成された活性化されたN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルであり、特定の生体分子のアミノヘキシルと反応させることができる。これらリンカーのうちのいくつかと他のリンカーは、例えばHauglandらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,339,392号、Hobbs, Jr.らに付与されたアメリカ合衆国特許第5,047,519号、Iizukaらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,711,958号、Stavrianopoulosに付与されたアメリカ合衆国特許第5,175,269号、Wardらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,711,955号、Engelhardtらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,241,060号、Wardらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,328,824号、Khanらによるアメリカ合衆国特許出願公開第2002/0151711号により詳しく記載されている。生体分子の標識とリンカー部分に関するより詳しいことは、例えばHermanson、『生体共役技術』、エルゼビア・サイエンス社、1996年と、Haugland、『蛍光プローブと探索生成物の分子プローブ・ハンドブック』、第9版、2003年とそのアップデート版に提示されている。
いくつかの実施態様では、適切なリンカーは、光によって切断する部分(例えば2-ニトロベンジル部分、α置換された2-ニトロベンジル部分(例えば1-(2-ニトロフェニル)エチル部分)、3,5-ジメトキシベンジル部分、チオヒドロキサミン酸、7-ニトロインドリン部分、9-フェニルキサンチル部分、ベンゾイン部分、ヒドロキシフェナシル部分、NHS-ASA部分)を含んでいる。光によって切断するリンカーは、例えばOlejnikらによるアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0099972号により詳しく記載されている。いくつかの実施態様では、リンカーは、金属(例えば白金原子)を含んでいる。金属は、例えばHouthoffらに付与されたアメリカ合衆国特許5,714,327号により詳しく記載されている。さまざまな長さの多数のリンカーをさまざまな製造会社(例えばオペロン・バイオテクノロジーズ社(ハンツヴィル、アラバマ州、アメリカ合衆国)、BDバイオサイエンシーズ・クロンテック社(パロ・アルト、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)、モレキュラー・バイオサイエンシーズ社、ボルダー、コロラド州、アメリカ合衆国)から市販品として入手することができる。
ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸の文脈では、実質的に蛍光を出さないドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分は、場合によっては例えばヌクレオシドまたはヌクレオチドの同系環、複素環、アリール基と、(例えばピリミジンのC5、シチジンのN4、プリンのN7、アデノシンのN6、プリンのC8や、従来技術で知られている別の結合部位を介して)アミド、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、炭素-炭素や、他のタイプの共有結合によって結合する。それに加え、あるいはその代わりに、特定の部分がヌクレオシドまたはヌクレオチドの糖部分(例えばリボース糖)またはその類似体(例えば炭素環)、および/またはヌクレオチドのリン酸基と、共有結合(アミド、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、炭素-炭素など)や他の結合によって結合する。共有結合は一般に、上記部分とヌクレオシドまたはヌクレオチドの求電子基と求核基の間の反応によって形成される。いくつかの実施態様では、実質的に蛍光を出さないドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分と、ヌクレオチドとは、(例えば炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、芳香族炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、窒素-窒素結合、炭素-酸素結合、炭素-イオウ結合、リン-酸素結合、リン-窒素結合を介して)互いに直接に共役する。
いくつかの実施態様では、リンカー部分は、アセチレンアミド結合またはアルケンアミド結合であり、実質的に蛍光を出さないドナー部分、アクセプタ部分、クエンチャ部分のいずれかとヌクレオチド塩基との結合は、特定の部分の活性化NHSエステルを、ヌクレオチドのアルキニルアミノ誘導体化塩基、アルキニルエトキシアミノ誘導体化塩基、アルケニルアミノ誘導体化塩基のいずれかと反応させることによって形成される。得られる結合としては、例えばプロパルギル-1-エトキシアミド(3-(アミノ)エトキシ-1-プロピニル)、3-(カルボキシ)アミノ-1-プロピニル、3-アミノ-1-プロピン-1-イルなどが挙げられる。
さらに詳しく説明すると、アルキニルアミノ誘導体化ヌクレオシドは、例えばHobbs、1989年、「パラジウムを触媒としたアルキニルアミノヌクレオシドの合成。核酸のための普遍的リンカー」、J. Org. Chem.、第54巻、3420〜3422ページにも記載されている。要するに、アルキニルアミノ誘導体化ヌクレオチドは、適切なハロジデオキシヌクレオシド(通常は5-ヨードピリミジンと7-ヨード-7-デアザプリンジデオキシヌクレオシド)とCu(I)をフラスコの中に入れ、アルゴンを用いて空気を除去し、乾燥DMFを添加した後、アルキニルアミン、トリエチルアミン、Pd(0)を添加することによって形成される。この反応混合物は、数時間にわたって撹拌するか、ハロジデオキシヌクレオシドが消費されたことが薄層クロマトグラフィによってわかるまで撹拌するとよい。保護されていないアルキニルアミンを用いる場合には、アルキニルアミノヌクレオシドは、反応混合物を濃縮した後、カップリング反応で生成するヒドロハロゲン化物を中和するために水酸化アンモニウムを含む溶離溶媒を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィを行なうことによって分離することができる。保護されたアルキニルアミンを用いる場合には、メタノール/塩化メチレンを反応混合物に添加した後、炭酸水素塩の形態の強塩基性アニオン交換樹脂を添加するとよい。次に、得られたスラリーを約45分間にわたって撹拌し、濾過し、追加のメタノール/塩化メチレンを用いて樹脂をリンスする。1つにまとめた濾液を濃縮し、メタノール-塩化メチレン勾配を用いたシリカゲル上のフラッシュ-クロマトグラフィによって精製する。当業者に知られている標準的な方法で三リン酸塩が得られる。
生体分子の調製
本発明の生体分子またはそれ以外の試薬は、適切な任意の方法を利用して調製することができる。その中には、(例えば標識する前に)天然の供給源から合成または取得されるものも含まれる。例えば実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分で標識されたオリゴヌクレオチドの合成は、多数ある公知のオリゴヌクレオチド標識法のうちの任意のものを利用して実現できる。例えば標識されたオリゴヌクレオチドは、酵素を用いて合成すること(例えばDNAポリメラーゼまたはリガーゼを用いる)、または化学的に合成すること(例えばホスホロアミダイト法または亜リン酸トリエステル法(Herdewijn、『オリゴヌクレオチド合成:方法と応用』、ヒューマナ出版、2005年;Gait(編)、『オリゴヌクレオチド合成』、オックスフォード大学出版、1984年;Vorbruggen他、『ヌクレオシド合成のハンドブック』、ジョン・ワイリー&サンズ社、2001年;Hermanson、『生体共役技術』、エルゼビア・サイエンス社、1996年))ができる。標識は、例えば標識されたヌクレオシド三リン酸モノマーを用いた酵素式合成の間に導入すること、または標識された非ヌクレオチドホスホロアミダイトまたはヌクレオチドホスホロアミダイトを用いた化学的合成の間に導入すること、または合成の後に導入することができる。実質的に蛍光を出さないドナー部分を含むホスホロアミダイトを合成する方法は、後出の実施例にも記載されている。
酵素を用いて標識されたオリゴヌクレオチドを合成する手続きの一例には、鋳型核酸または標的核酸を変性させ、プライマーをその鋳型にアニールする操作が含まれる。デオキシヌクレオシド三リン酸(例えばdGTP、dATP、dCTP、dTTP)の混合物を一般に反応混合物に添加する。そのとき1つのデオキシヌクレオチドの少なくとも一部は、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分で標識されている。次に、ヌクレオチド組み込み生体触媒(例えばポリメラーゼ酵素)を、その酵素が活性を持つ条件下で反応混合物に添加するのが一般的である。標識されたオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼによる鎖合成の間に標識されたデオキシヌクレオチドが組み込まれることによって形成される。酵素を用いた合成法の別の一例では、1つではなく2つのプライマーを用いる。一方のプライマーは、標的二本鎖核酸の1本の鎖の一部と相補的であり、他方のプライマーは他方の鎖の一部と相補的である。この方法で用いるポリメラーゼは一般に熱安定であり、反応温度を一般に変性温度と伸長温度の間で繰り返し、標的核酸と相補的な標識された鎖をPCRによって合成する(Edwards他(編)、『リアル-タイムPCR:必携ガイド』、ホライズン・サイエンティフィク出版、2004年;Innnis他(編)、『PCR法』、エルゼビア・サイエンス&テクノロジーズ・ブックス社、1995年;Innis他(編)、『PCRプロトコル』、アカデミック出版、1990年)。
化学的合成を利用して得られる標識されたオリゴヌクレオチドは、一般にホスホロアミダイト法で製造されるが、場合によっては他の方法も利用される。ホスホロアミダイトに基づく合成は、一般に、固体支持体に結合させた成長するオリゴヌクレオチド鎖を用いて実施されるため、液相状態にある過剰な試薬は濾過によって容易に除去できる。そのためサイクル間に他の精製ステップが必要ない。
ホスホロアミダイト法を利用する固相オリゴヌクレオチド合成サイクルの一例を簡単に説明すると、一般に、保護されたヌクレオチド・モノマーを含む固体支持体を最初に酸(例えばトリクロロ酢酸)で処理して5'-ヒドロキシル保護基を外し、続くカップリング反応のためにヒドロキシルを遊離状態にする。次に、保護されたホスホロアミダイトヌクレオシド・モノマーと弱酸(例えばテトラゾール)を反応物に同時に添加することにより、活性化された中間体を一般に形成する。弱酸がホスホロアミダイトの窒素をプロトン化し、反応性中間体が形成される。成長している核酸鎖へのヌクレオシドの付加は、一般に30秒以内に完了する。その後、一般にキャッピング・ステップを実施し、ヌクレオシドが付加されなかったあらゆるオリゴヌクレオチド鎖を終了させる。キャッピングは、例えば無水酢酸と1-メチルイミダゾールを用いて実施できる。次に、例えば酸化剤としてのヨウ素と酸素ドナーとしての水を用いた酸化により、ヌクレオチド間の結合を亜リン酸塩からより安定なホスホトリエステルに変える。酸化の後、ヒドロキシル保護基は一般にプロトン性の酸(例えばトリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸)を用いて除去され、鎖の伸長が完了するまでサイクルを繰り返す。合成の後、合成されたオリゴヌクレオチドは一般に塩基(例えば水酸化アンモニウム、t-ブチルアミン)を用いて固体支持体から切断される。切断反応によってあらゆるリン酸保護基(例えばシアノエチル)も除去される。最後に、高温(例えば約55℃まで)にて塩基性条件下でオリゴヌクレオチド溶液を処理することにより、塩基の環外アミン上の保護基と、標識部分のヒドロキシル保護基が除去される。
ホスホロアミダイト法によってオリゴヌクレオチドを形成するための化学に関する説明は、例えば1984年7月3日にCaruthersらに付与された「ポリヌクレオチドの調製法」という名称のアメリカ合衆国特許第4,458,066号と、1983年11月15日にCaruthersらに付与された「ホスホロアミダイト化合物と方法」という名称のアメリカ合衆国特許第4,415,732号にも提示されている。
任意のホスホロアミダイトヌクレオシド・モノマーをこの明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分で標識することができる。いくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチドの5'末端が標識されていると、標識された非ヌクレオチドホスホロアミダイトを最終凝縮ステップで用いることができる。オリゴヌクレオチドの1つの内部位置が標識されている場合には、標識されたヌクレオチドホスホロアミダイトを任意の凝縮ステップで用いることができる。さらに、合成の後、オリゴヌクレオチドのかなり多数の位置を標識することもできる(Eckstein他(編)、『オリゴヌクレオチドと類似体:実践的方法』、オックスフォード大学出版、1992年;Chu他、1983年、「保護されていないポリヌクレオチドの誘導体化」、Nucleic Acids Res.、第11巻(18)、6513〜6529ページ;1992年6月2日にSmithらに付与された「末端ヌクレオチドに第一級アミノ基を有するオリゴヌクレオチド」という名称のアメリカ合衆国特許第5,118,800号)。さらに詳しく説明すると、オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格上に標識すること(Eckstein他、1992、前掲文献)、または3'末端を標識すること(Nelson他、1992年、「オリゴヌクレオチド標識法。3.新規な非ヌクレオシドである2-アミノブチル-1,3-プロパンジオール骨格を用いたオリゴヌクレオチドの直接的な標識法」、Nucleic Acids Res.、第20巻(23)、6253〜6259ページ;1995年3月28日にNelsonに付与されたユニークな細孔性多機能ガラス(MF-CPG)試薬を固相オリゴヌクレオチド合成において用いて合成オリゴヌクレオチドの3'末端に標識する方法」という名称のアメリカ合衆国特許第5,401,837号;1992年8月25日にNelsonに付与された「固相オリゴヌクレオチド合成のための細孔性多機能ガラス試薬」という名称のアメリカ合衆国特許第5,141,813号)もできる。
いくつかの実施態様では、修飾されたヌクレオチドは、この明細書に記載した標識されたオリゴヌクレオチド(例えばプローブまたはプライマー)に含まれる。例えば修飾されたヌクレオチドをオリゴヌクレオチド配列に導入すると、そのオリゴヌクレオチドの融点が上昇する。いくつかの実施態様では、そのことによって、たとえ標的核酸と特定のオリゴヌクレオチドの間に1つ以上のミスマッチがある場合でさえ、対応する修飾されていないオリゴヌクレオチドよりも大きな感度を得ることができる。オリゴヌクレオチドで置換すること、またはオリゴヌクレオチドに付加することのできる修飾されたヌクレオチドの例としては、例えばC5-エチル-dC、C5-メチル-dC、C5-エチル-dU、2,6-ジアミノプリン、C5-プロピニル-dC、C7-プロピニル-dA、C7-プロピニル-dG、C5-プロパルギルアミノ-dC、C5-プロパルギルアミノ-dU、C7-プロパルギルアミノ-dA、C7-プロパルギルアミノ-dG、7-デアザ-2-デオキシキサントシン、ピラゾロピリミジン類似体、シュード-dU、ニトロピロール、ニトロインドール、2'-0-メチルリボ-U、2'-0-メチルリボ-C、8-アザ-dA、8-アザ-dG、7-デアザ-dA、7-デアザ-dG、N4-エチル-dC、N6-メチル-dAなどがある。さらに詳しく説明すると、修飾されたヌクレオチドの他の例としては、1つ以上のLNA(登録商標)モノマーを有するものがある。このようなヌクレオチド類似体は、例えば2003年10月28日にKochkineらに付与された「[2.2.1]ビシクロヌクレオシドの合成」という名称のアメリカ合衆国特許第6,639,059号;2001年10月16日にSkouvに付与された「1ステップでのサンプルの調製と、複雑な生物サンプルに含まれる核酸の検出」という名称のアメリカ合衆国特許第6,303,315号;2003年5月15日に公開されたKochkineらによる「[2.2.1]ビシクロヌクレオシドの合成」という名称のアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0092905号にも記載されている。LNA(登録商標)モノマーを含むオリゴヌクレオチドは、例えばエキシコンA/S社(ヴェドベック、デンマーク国)から市販品を入手することができる。オリゴヌクレオチドのさらに別の修飾は、この明細書に言及されている(例えば上記の定義の項)。
さらに詳しく説明すると、ほぼ任意の核酸(と、標準的であるかないかに関係なく、ほぼ任意の標識された核酸)をさまざまな製造会社(例えばザ・ミッドランド・サーティファイド・リージェント社(ミッドランド、テキサス州、アメリカ合衆国)、オペロン・バイオテクノロジーズ社(ハンツヴィル、アラバマ州、アメリカ合衆国)、プロリゴLLC(ボルダー、コロラド州、アメリカ合衆国)を始めとする多くの会社)からカスタム注文品または標準品として得ることができる。
本発明の試薬は、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分で標識したタンパク質とペプチドも含むことができる。ペプチドは、場合によっては公知の任意の方法で合成および/または標識される。例えばC末端にアルコールを有するペプチドを調製する方法は、一般に、溶液相合成または固相ペプチド合成の操作を含んでいる。固相手続きでは一般に、適切なリンカー部分を通じて出発材料を固体支持体(例えばポリスチレンまたはポリエチレングリコール)に共有結合させる。適切なリンカー部分は当業者に広く知られている。Boc/Bzl(t-ブトキシカルボニル/ベンジル)化学のためのベンジル・リンカーとベンズヒドリルアミン・リンカーに基づくペプチド合成用C末端アンカリング法と、Fmoc/tBu(フルオレニルメトキシカルボニル/t-ブチル)プロトコルで用いられるより不安定なアルコキシベンジルまたは2,4-ジメトキシベンズヒドリルアミンのバージョンに基づくペプチド合成用C末端アンカリング法が、自由なカルボキシル末端またはカルボキシルアミド末端を有するペプチドの合成に適用されることがある。ペプチド合成のさまざまな側面は、例えばMerrifield、1963年、J. Am. Chem. Soc.、第85巻、2149ページ;Larsen他、1993年、J. Am. Chem. Soc.、第115巻、6247ページ;Smith他、1994年、J. Peptide Protein Res.、第44巻、183ページ;O'Donnell他、1996年、J. Am. Chem. Soc.、第118巻、6070ページ;Mitchell他、1976年、J. Am. Chem. Soc.、第98巻、7357〜7362ページ;Matsueda他、1981年、Peptides、第2巻、45〜50ページ;Wang、1972年、J. Am. Chem. Soc.、第95巻、1328〜1333ページ;Rink、1987年、Tet. Let.、第28巻、3787〜3790ページ;Lloyd-Williams他、『ペプチドとタンパク質を合成するための化学的方法』、CRC出版、1997年;Jones、『アミノ酸とペプチドの合成』、第2版、オックスフォード大学出版、2002年;Howl、『ペプチドの合成と応用』、ヒューマナ出版、2005年にも記載されている。さらに、カスタム生産のペプチドとタンパク質は、さまざまな製造会社(例えばシグマ-ジェネシス社(ザ・ウッドランズ、テキサス州、アメリカ合衆国)、バイオペプチド社LLC(サン・ディエゴ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)、インヴィトロジェン社(カールスバッド、カリフォルニア州、アメリカ合衆国))に注文することができる。
いくつかの実施態様では、本発明の試薬は、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分を含む免疫グロブリンまたは抗体である。本発明のこれら実施態様で用いるのに適した抗体は、従来法および/または遺伝子工学によって調製することと標識することができる。抗体フラグメントは、例えば軽鎖および/または重鎖(VHとVL)の可変領域(その中には超可変領域が含まれる)から、またはVHとVLの両方の領域から、遺伝子工学によって得ることができる。例えばこの明細書で用いる“免疫グロブリン”または“抗体”という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの生物学的に活性なフラグメントが含まれる。特に例示するならば、“1価”抗体(Glennie他、1982年、Nature、第295巻、712ページ);Fabタンパク質(例えば共有結合または非共有結合したFab'フラグメントやF(ab')2フラグメント);単独の軽鎖または重鎖(一般には重鎖と軽鎖の可変領域(VH領域とVL領域)であり、より一般には超可変領域(VH領域とVL領域の相補性決定領域(CDR)としても知られる)が含まれる);Fcタンパク質;1種類以上の抗体と結合することのできる“ハイブリッド”抗体;定常-可変領域キメラ;起源の異なる重鎖と軽鎖を有する“複合”免疫グロブリン;標準的な組み換え技術、突然変異誘発技術、従来技術で知られている他の定方向進化技術のいずれかによって調製した、特異性とそれ以外の特徴が改善された“改変”抗体などがある。標識された免疫グロブリンは、よく知られたさまざまなアッセイ(例えば蛍光イムノアッセイ)で用いることができる。
本発明による他の試薬の例として、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分を含む脂質と炭水化物がある。脂質および/または炭水化物の化学と合成のさまざまな側面は、例えばTyman(編)、『脂質化学における界面活性剤:合成、物理学、生物分解性に関する最近の研究』、王立化学会、1992年;Gurr他、『脂質の生化学』、第5版、アイオワ州出版、2001年;Min Kuo他(編)、『脂質のバイオテクノロジー』、マルセル・デッカー社、2002年;Ogura他(編)、『医化学における炭水化物の合成法と応用』、VCHパブリッシャーズ社、1993年;Derek Horton他(編)、『合成炭水化物の化学におけるトレンド』、アメリカ化学会、1989年;Gunstone他、『脂質ハンドブック』、第2版、CRC出版、1994年;Scherz他、『炭水化物の分析化学』、ジョン・ワイリー&サンズ社、2002年;Boons(編)、『炭水化物の化学』、チャップマン&ホール社、1997年;Davis他、『炭水化物の化学』、オックスフォード大学出版、2002年にも記載されている。
V.反応混合物
本発明により、さまざまな用途で使用できる多くの異なった反応混合物も提供される。いくつかの実施態様では、例えば反応混合物を用い、ホモジニアス増幅/検出アッセイ(例えばリアル-タイムPCRモニタリング)、核酸シークエンシング手続き、バイオポリマー合成プロトコル(例えばペプチド合成またはオリゴヌクレオチド合成)、バイオポリマー標識反応を実施する。これら用途の多くについては、以下にさらに詳しく説明するか、この明細書の別の箇所で言及されている。
いくつかの実施態様では、本発明の反応混合物に選択された量のヌクレオチド、および/またはプライマー、および/またはプローブが含まれる。一般に、これらヌクレオチド、および/またはプライマー、および/またはプローブのうちの1つ以上を、実質的に蛍光を出さないドナー部分、および/またはアクセプタ部分、および/またはクエンチャ部分のうちの少なくとも1つを用いて標識する。反応混合物のヌクレオチドは一般に伸長可能なヌクレオチドおよび/またはターミネータ・ヌクレオチドであり、例えば核酸増幅反応や核酸シークエンシング反応で用いられる。当業者に知られている実質的にあらゆるターミネータ・ヌクレオチドが必要に応じて利用される。いくつかの実施態様で使用できるターミネータ・ヌクレオチドのいくつかの例は、例えば1993年12月28日にKonradらに付与された「さまざまな濃度の対合したジデオキシヌクレオチド・ターミネータを用いたヌクレオチド配列の決定」という名称のアメリカ合衆国特許第5,273,638号;2004年6月28日にGelfandらによって出願された「2'-ターミネータ・ヌクレオチドに関係する方法とシステム」という名称のアメリカ合衆国特許出願第10/879,493号;2004年6月28日にBodepudiらによって出願された「2'-ターミネータ・ヌクレオチドの合成と組成物」という名称のアメリカ合衆国特許出願第10/879,494号にも記載されている。これら反応混合物に含まれるプローブとしては、一般に、例えばハイブリダイゼーション・プローブ、および/または5'-ヌクレアーゼ・プローブ、および/またはヘアピン・プローブがある。
さらに、反応混合物は、一般に、核酸増幅反応または核酸検出反応(例えばリアル-タイムPCRモニタリングや5'-ヌクレアーゼ・アッセイ)や核酸シークエンシング反応を実施するのに役立つさまざまな試薬も含んでいる。このような別のタイプの試薬の例として、例えば鋳型核酸または標的核酸、ヌクレオチド組み込み生体触媒(例えばDNAポリメラーゼ)、緩衝液、塩、アンプリコン、グリセロール、金属イオン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリrAなどがある。核酸増幅法および核酸検出法とそれ以外の方法は、以下でも詳しく説明する。
反応混合物は、一般に、選択された上記のヌクレオチド、および/またはプライマー、および/またはプローブを、選択された特定の目的を実現するのに十分な量の他の試薬と組み合わせることによって製造される。所定の反応混合物に含まれる試薬の量は、実施される選択された方法がわかれば当業者には明らかであろう。しかしプライマー核酸と伸長可能なヌクレオチド(例えば4種類のdNTP(dGTP、dCTP、dATP、dTTP))はそれぞれ反応混合物の中にかなり過剰のモル数が存在している。本発明の反応混合物において利用できるプローブとプライマーはこの明細書に記載されている。適切な伸長可能なヌクレオチドおよび/またはターミネータ・ヌクレオチドは、さまざまな製造会社(例えばロッシュ・ディアグノスティックス社(インディアナポリス、インディアナ州、アメリカ合衆国)、アマーシャム・バイオサイエンシーズ社(ピスカタウェイ、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)、アプライド・バイオシステムズ社(フォスター・シティ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国))から容易に市販品として入手することができる。
本発明の反応混合物とそれ以外の面で使用されるヌクレオチド組み込み生体触媒は、一般に、酵素(例えばポリメラーゼ、ターミナルトランスフェラーゼ、逆転写酵素、テロメラーゼ、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ)を含んでいる。いくつかの実施態様では、例えば酵素として、5'-3'ヌクレアーゼ活性のある酵素、および/または3'-5'エキソヌクレアーゼ活性のある酵素、および/または熱安定酵素などがある。酵素は、場合によっては生物に由来するものである。生物としては、テルムス・アントラニキアニイ、テルムス・アクアティクス、テルムス・カルドフィルス、テルムス・クリアロフィルス、テルムス・フィリフォルミス、テルムス・フラブス、テルムス・イグニテッレ、テルムス・ラクテウス、テルムス・オシマイ、テルムス・ルーバー、テルムス・ルーベンス、テルムス・スコトドゥクトゥス、テルムス・シルヴァヌス、テルムス属Z05、テルムス属sps17、テルムス・テルモフィルス、テルモトガ・マリティマ、テルモトガ・ネアポリタナ、テルモシフォ・アフリカヌス、アネロケルム・テルモフィルム、バシラス・カルドテナックス、バシラス・ステアロテルモフィルスなどが挙げられる。
いくつかの実施態様では、別の試薬も本発明の反応混合物に添加される。例えば反応混合物は、場合によっては、例えば加ピロリン酸分解を最少にするために用いるピロホスファターゼ(例えば熱安定ピロホスファターゼ)や、例えば汚染が持ち越されないようにするためのウラシルN-グリコシラーゼ(UNG)(例えば熱安定UNG)も含んでいる。
本発明による別の反応混合物は、この明細書に記載したバイオポリマー合成試薬(例えばポリペプチド合成試薬(ホスホロアミダイト試薬など)や核酸合成試薬)を含んでいる。これら反応混合物は、一般に、この明細書で言及したバイオポリマー合成プロセスや、当業者に知られている他のバイオポリマー合成プロセスで使用される。
本発明の生体分子や他の試薬で用いるのに適した形に改変することのできる多くの反応混合物は、例えばAusbel他(編)『分子生物学の最新プロトコル』、第I巻、第II巻、第III巻、1997年(Ausbel 1);Ausbel他(編)『分子生物学における簡単なプロトコル:分子生物学における最新プロトコルからの方法の要約』、第5版、ジョン・ワイリー&サンズ社、2002年(Ausbel 2);Sambrook他、『分子クローニング:実験室マニュアル』、第3版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、2000年(Sambrook);BergerとKimmel、『分子クローニング技術のガイド:酵素学における方法』、第152巻、アカデミック出版(Berger);Vorbruggen他、『ヌクレオシド合成のハンドブック』、有機反応シリーズ、#60、ジョン・ワイリー&サンズ社、2001年;Gait(編)、『オリゴヌクレオチド合成』、オックスフォード大学出版、1984年;HamesとHiggins、『核酸ハイブリダイゼーション』、実践的な方法シリーズ、オックスフォード大学出版、1997年;HamesとHiggins(編)、『転写と翻訳』、実践的な方法シリーズ、オックスフォード大学出版、1984年にも記載されている。
VI.実質的に蛍光を出さないドナー部分を含む生体分子を用いる方法
本発明により、この明細書に記載した標識された生体分子の利用法も提供される。いくつかの実施態様では、例えばこれら生体分子を用いて標的核酸またはそれ以外の生体分子の検出操作を含むアッセイを実施し、例えばその標的核酸を取得した対象に関する診断情報、遺伝子情報、これら以外の情報を得る。この方法で実質的に蛍光を出さないドナー部分を用いると、一般に、従来のドナー部分を用いた手続きと比べてバックグラウンドの蛍光が減る。したがってこのようにすると、一般に、性能(例えば実質的に蛍光を出さないドナー部分を用いた特定のアッセイにおける感度やダイナミック・レンジ)が向上する。これらの側面については以下の実施例でも説明する。
この明細書に記載した生体分子は、分析物を検出するのにエネルギーの移動が関与するほぼすべての用途でそのまま使用されるか、改変して使用される。核酸に関連する用途の例として、核酸の構造およびコンフォメーションの分析、リアル-タイムPCRアッセイ、SNPの検出(Myakishev他、2001年、「普遍的エネルギー移動標識プライマーを用いた対立遺伝子特異的PCRによる高スループットSNP遺伝子型決定」、Genome Res.、第11巻、163〜169ページ;Lee他、1999年、「6種類のPCR産物のホモジニアスな7色検出」、Biotechniques、第27巻、342〜349ページ;Thelwell他、2000年、「サソリ・プライマーの作用方式と突然変位検出への応用」、Nucleic Acids Res.、第28巻、3752〜3761ページ;Whitcombe他、1999年、「自己プロービング・アンプリコンと蛍光を利用したPCR産物の検出」、Nat. Biotechnol.、第17巻、804〜807ページ;Heid他、1996年、「リアル・タイム定量PCR」、Genome Res.、第6巻、986〜994ページ;Nazarenko他、1997年、「エネルギー移動に基づくDNAの増幅と検出のための閉鎖チューブ形式」、Nucleic Acids Res.、第25巻、2516〜2521ページ);核酸のハイブリダイゼーションの検出(Parkhurst他、1995年、「二重標識したオリゴヌクレオチドを用いた蛍光共鳴エネルギー移動による動的研究:オリゴヌクレオチド相補体と一本鎖DNAへのハイブリダイゼーション」、Biochemistry、第34巻、285〜292ページ;Tyagi他、1996年、「分子ビーコン:ハイブリダイゼーションによって蛍光を出すプローブ」、Nat. Biotechnol.、第14巻、303〜308ページ;Tyagi他、1998年、「対立遺伝子を識別するためのマルチカラー分子ビーコン」、Nat. Biotechnol.、第16巻、49〜53ページ;Sixou他、1994年、「蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって検出される細胞内オリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーション」、Nucleic Acids Res.、第22巻、662〜668ページ;Cardullo他、1988年、「非放射性蛍光共鳴エネルギー移動による核酸のハイブリダイゼーションの検出」、Proc. Natl. Acad. Sci、 USA、第85巻、8790〜8794ページ);突然変異を検出するためのプライマー伸長アッセイ(Chen他、1997年、「ホモジニアスなDNA診断法としての蛍光エネルギー移動の検出」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第94巻、10756〜10761ページ);自動化されたDNAシークエンシング(Woolley他、1995年、「キャピラリー電気泳動チップを用いた超高速DNAシークエンシング」、Anal. Chem.、第67巻、3676〜3680ページ;Hung他、1998年、「さまざまなドナー-アクセプタ染料の組み合わせを有する蛍光エネルギー移動プライマーの比較」、Anal. Biochem.、第255巻、32〜38ページ;Ju他、1995年、「DNAのシークエンシングと分析のための、蛍光エネルギー移動染料で標識したプライマー」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第92巻、4347〜4351ページ)などがある。
タンパク質関連の用途の例として、タンパク質の構造とコンフォメーションの分析(Xing他、1995年、「ミオシンのサブフラグメント1において蛍光共鳴エネルギー移動によって検出された内部運動」、Biochemistry、第34巻、6475〜6487ページ;Luo他、1998年、「共鳴エネルギー移動によるトロポニン-Cに対するウサギ骨格トロポニン-IのCys133の局在」、Biophys. J.、第74巻、3111〜3119ページ;Erickson他、1995年、「サイクリックGMPホスホジエステラーゼのγサブユニットにあるコンフォメーション感受性部位とトランスデューシンのグアニン・ヌクレオチド結合部位の近接度を調べるための共鳴エネルギー移動の利用」、Biochemistry、第34巻、8693〜8700ページ;Taniguchi他、1993年、「プローブで標識された(Na+, K+)-ATPアーゼにおける反応中間体の形成を伴う蛍光エネルギー移動の可逆的変化」、J. Biol. Chem.、第268巻、15588〜15594ページ);タンパク質複合体の空間的分布と組み立ての分析(Moens他、1994年、「蛍光共鳴エネルギー移動分光を利用したF-アクチンのCys-374の径方向の座標の決定:ファロイジンがポリマー複合体に及ぼす効果」、Biochemistry、第33巻、13102〜13108ページ;Watson他、1995年、「アミノアシル-tRNA.伸長因子Tu.GTP三重複合体における巨大分子の配置。蛍光エネルギー移動の研究」、Biochemistry、第34巻、7904〜7912ページ;Adair他、1994年、「グリコフォリンA螺旋膜貫通ドメインはリン脂質二重層の中で二量体になる:共鳴エネルギー移動の研究」、Biochemistry、第33巻、5539〜5544ページ;Matyus、1992年、「細胞表面における蛍光共鳴エネルギー移動測定。タンパク質相互作用を測定するための分光学的ツール」、J. Photochem. Photobiol.、第12巻、323〜337ページ);受容体/リガンド相互作用の分析(Berger他、1994年、「蛍光共鳴エネルギー移動によって明らかになるL型Ca(2+)-チャネルへのジヒドロピリジンの結合の複雑な分子メカニズム」、Biochemistry、第33巻、11875〜11883ページ;Gagne他、2002年、「Gタンパク質結合受容体へのフルオペプチド(登録商標)の結合を測定するための蛍光偏光検出の利用」、J. Recept. Signal Transduct. Res、第22巻、333〜343ページ;Poo他、1994年、「腫瘍浸潤リンパ球に由来する細胞傷害性T細胞クローンにおいてCD3の連結がLFA-1と表層マイクロフィラメントの間の膜貫通近接化をトリガーする:共鳴エネルギー移動の顕微鏡による定量的研究」、J. Cell. Physiol.、第159巻、176〜180ページ);イムノアッセイ(Morrison、1988年、「エネルギー移動の時間分解検出:イムノアッセイへの理論と応用」、Anal. Biochem.、第174巻、101〜120ページ;Khanna他、1980年、「4',5'-ジメトキシ-6-カルボキシフルオレセイン:蛍光イムノアッセイに役立つ新規な双極子-双極子結合蛍光エネルギー移動アクセプタ」、Anal. Biochem.、第108巻、156〜161ページ)などがある。
脂質関連の用途と他のタイプの用途の例として、脂質の分布と輸送の分析(Gutierrez-Merino他、1995年、「蛍光性リン脂質の選択的分布が、アセチルコリン受容体が豊富なシビレエイ由来の膜の外側リーフレットにおけるNBD-ホスファチジルコリンとローダミン-ホスファチジルエタノールアミンのプローブとなる」、Biochemistry、第34巻、4846〜4855ページ;Wolf他、1992年、「非放射性蛍光共鳴エネルギー移動による蛍光性脂質の二重層貫通分布の測定」、Biochemistry、第31巻、2865〜2873ページ);膜融合アッセイ(Pecheur他、1998年、「アニオン性ペプチドとカチオン性ペプチドの11量体によって誘導される膜融合:構造-機能の研究」、Biochemistry、第37巻、2361〜2371ページ;Partearroyo他、1994年、「細胞の単層において化学的に誘導される膜融合の、共鳴エネルギー移動法を利用したリアル-タイム測定」、Biochem. Biophys. Acta、第1189巻、175〜180ページ);膜電位感知アッセイ(Gonzalez他、1995年、「単細胞における蛍光エネルギー移動による電圧測定」、Biophys. J.、第69巻、1272〜1280ページ);蛍光発生プロテアーゼ基質の分析(Kurth他、1998年、「トリプシンのS1'サブサイトの操作:二塩基性残基間を切断させるプロテアーゼの設計」、Biochemistry、第37巻、11434〜11440ページ;Gulnik他、1997年、「ヒト・カテプシンDのための感受性蛍光発生基質の設計」、FEBS Lett.、第413巻、379〜384ページ);サイクリックAMPのインディケータの分析(Adams他、1991年、「単細胞におけるサイクリックAMPのための蛍光比イメージング」、Nature、第349巻、694〜697ページ);亜鉛のインディケータの分析(Godwin他、1996年、「金属によって誘導されるペプチドの折り畳みに基づく蛍光性亜鉛プローブ」、J. Am. Chem. Soc.、第118巻、6514ページ);単一分子の相互作用の分析(Ha他、1996年、「2つの単一分子間の相互作用の探索:単一のドナーと単一のアクセプタの間の蛍光共鳴エネルギー移動」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第93巻、6264〜6268ページ)などがある。
さらに詳しく説明すると、例えば本発明の反応混合物に含まれる標的核酸、またはその反応混合物からの標的核酸を分析するのにそのまま使用できるか、使用に適したように改変できる核酸分析技術の一般的なタイプとして、さまざまな核酸増幅アッセイがある。核酸増幅アッセイに共通する1つの特徴は、一般に、検出する生物に特異的な核酸配列を増幅する設計にされていることである。核酸増幅試験は、一般に、核酸分析の他の方法よりも感度が大きい。この感度は、この明細書に記載した実質的に蛍光を出さないドナー部分を用いることによってさらに大きくなるが、一般に、標的核酸のわずか1つのコピーから意味のある信号を発生させる能力に帰せられる。標的核酸の検出に場合によっては用いられるかそのために改変される増幅法としては、例えば、さまざまなポリメラーゼ、リガーゼ、逆転写酵素のいずれかを用いた増幅法(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、逆転写PCR(RT-PCRなど))がある。これらの増幅法および他の増幅法の利用と、これらアッセイのためのサンプルの調製法に関するより詳しいことは、標準的なさまざまな文献のうちの任意のものに見いだすことができる(例えばすでに言及したBerger、Sambrook、Ausbel 1と2、Innis)。
本発明の試薬と方法で利用するために場合によっては改変される市販のさまざまな核酸増幅アッセイは、一般に、増幅法と標的核酸配列が互いに異なっている。これら市販の試験法の例として、ハイブリダイゼーション・プローブ・アッセイ(例えばライトサイクラー(登録商標)系を用いる)や、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用するAMPLICOR(登録商標)アッセイとCOBAS AMPLICOR(登録商標)アッセイ(ロッシュ・ディアグノスティックス社、インディアナポリス、インディアナ州、アメリカ合衆国);リガーゼ連鎖反応(LCR)を利用するLCx(登録商標)試験(アボット・ラボラトリーズ、アボット・パーク、イリノイ州、アメリカ合衆国);鎖置換増幅(SDA)を利用するBDProbeTec(登録商標)ET試験(ベクトン・ディッキンソン社、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州、アメリカ合衆国);転写を媒介とした増幅(TMA)を利用するAPTIMA(登録商標)アッセイ(ジェン-プローブ社、サン・ディエゴ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)などがある。
いくつかの実施態様では、例えば本発明の5'-ヌクレアーゼ・プローブをさまざまな5'-ヌクレアーゼ反応で用いる。多くの5'-ヌクレアーゼ・アッセイが当業者に知られている。そのような反応の例は、例えば2001年4月10日にGelfandらに付与された「ホモジニアスなアッセイ系」という名称のアメリカ合衆国特許第6,214,979号;1998年9月8日にGelfandらに付与された「標的核酸を検出するための反応混合物」という名称のアメリカ合衆国特許第5,804,375号;1996年1月30日にGelfandらに付与された「隣接してハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドに作用するポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性による核酸の検出」という名称のアメリカ合衆国特許第5,487,972号;1993年5月11日にGelfandらに付与された「核酸ポリメラーゼのヌクレアーゼ活性を利用したホモジニアス・アッセイ系」という名称のアメリカ合衆国特許第5,210,015号にも記載されている。
簡単に説明すると、5'-ヌクレアーゼ反応では、標的核酸がプライマーおよびプローブ(例えば本発明の5'-ヌクレアーゼ・プローブ)とある条件下で接触し、そのプライマーおよびプローブが標的核酸の鎖とハイブリダイズする。標的核酸、プライマー、プローブは、5'-3'ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼとも接触する。5'-3'ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼは、標的核酸とハイブリダイズしたプローブをプライマーの下流で切断することができる。プライマーの3'末端は、そのポリメラーゼの初期結合部位を提供する。結合したポリメラーゼは、プローブの5'末端と出会うとそのプローブからフラグメントを切断する。このプロセスを図2にも示してある。この図からわかるように、プライマー200が伸長しているとき、ポリメラーゼ202が、アニールによって標的または鋳型206と二本鎖を形成した5'-ヌクレアーゼ・プローブ204を切断し、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)208とアクセプタ部分(A)210を5'-ヌクレアーゼ・プローブ204の残部から放出させる。その残部にはクエンチャ部分(Q)212が含まれている。クエンチャ部分(Q)212は、切断前にはアクセプタ部分(A)210から蛍光が出るのを阻止するのに対し、図からわかるように、この切断プロセスの後は、クエンチャ部分(Q)212は、アクセプタ部分(A)210から蛍光が出るのをもはや阻止しない。別の一実施態様では、5'-ヌクレアーゼ・プローブは、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分だけを含んでいる。これら実施態様では、アクセプタ部分からの蛍光発光強度は、切断後はドナー部分とアクセプタ部分が互いに分離するため一般に低下する。
プライマーとプローブは、アニールによってこれらが標的核酸上で近接して二本鎖を形成する設計にできる。するとプライマーが伸長しないのであれば、核酸ポリメラーゼがプライマーの3'末端に結合すると核酸ポリメラーゼがプローブの5'末端に接触する。“重合とは独立な切断”という用語はこのプロセスを意味する。あるいはプライマーとプローブが標的核酸の互いにより離れた領域とアニールして二本鎖を形成する場合には、重合は、一般に、核酸ポリメラーゼがプローブの5'末端に出会う前に起こる。ポリメラーゼは、重合が進むにつれてプローブの5'末端からフラグメントを切断する。この切断は、プローブの残部が鋳型分子から解離する程度に不安定になるまで継続する。“重合に依存した切断”という用語はこのプロセスを意味する。
重合とは独立な切断の1つの利点は、核酸を増幅する必要がないことである。プライマーとプローブが隣り合って核酸に結合すると、プローブのアニーリングとフラグメントの切断からなる連続的サイクルが起こる。したがって十分な量のフラグメントが生成されるため、重合なしで検出が可能になる。
いずれの方法でも、標的核酸を含むと考えられるサンプルを用意する。サンプルに含まれる標的核酸は、必要な場合には最初に逆転写してcDNAにし、次に、適切な任意の変性法を利用して変性させる。変性法として物理的方法、化学的方法、酵素による方法があるが、これらは当業者には公知である。鎖を分離する物理的方法の一例は、核酸が完全に(99%超)変性するまで加熱する操作を含んでいる。典型的な熱変性は、約1〜約10分間にわたって約85℃〜約105℃の範囲の温度にする操作を含んでいる。変性に代わる方法として核酸はサンプル中で一本鎖の形態で存在していてもよい。それは例えばサンプルが一本鎖のRNAまたはDNAウイルスを含んでいる場合である。
変性した標的核酸の鎖は、一般に、プライマーおよびプローブとともにインキュベートする。そのときそのプライマーとプローブが標的核酸の鎖と結合できるハイブリダイゼーション条件にする。いくつかの実施態様では、2つのプライマーを用いて標的核酸を増幅することができる。一般に、これら2つのプライマーは、標的核酸に沿った相対位置をうまく選択することで、一方のプライマーから合成された伸長産物が対応する鋳型(相補体)から分離したとき、その伸長産物を他方のプライマーが伸長するための鋳型として機能させ、所定の長さの複製鎖が生じるようにする。
相補的な鎖は一般にプローブまたはプライマーよりも長いため、その鎖はより多くの接点を持ち、したがって所定の期間に互いに結合する機会がより多くなる。したがってプローブとプライマーを一般に過剰なモル数にすることで、鋳型鎖の再アニーリングの間を通じてプライマーとプローブがアニーリングすることを促進する。多重方式では、一般に多数のプローブを単一の反応容器の中で用いて多数の標的核酸を同時に検出する。
プライマーは、一般に、重合とは独立な切断または重合に依存した切断が進行できる選択された条件下で標的核酸と選択的に結合するのに十分な長さと相補性を持つ。プライマーの正確な長さと組成は多くの因子に依存することになろう。因子としては、例えば、アニーリング反応の温度、プライマーの供給源と組成、プローブのアニーリング部位とプライマーのアニーリング部位の近さ、プライマー:プローブの濃度比などがある。例えば標的配列の複雑さに応じてプライマーは一般に約15〜30個のヌクレオチドを含んでいるが、より多くのヌクレオチド、またはより少ないヌクレオチドを含んでいてもよい。
プローブは一般に、アニールによってそれと相補的な標的核酸と二本鎖を形成した後、核酸ポリメラーゼが標的核酸のその領域と出会う。そのため酵素の5'-3'ヌクレアーゼ活性によってプローブからフラグメントが切断される。プローブが標的核酸にアニールする確率を大きくしてからポリメラーゼがこのハイブリダイゼーション領域に到達するようにするため、さまざまな方法を利用することができる。例えば短いプライマーは、一般に、核酸と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するのにより低い温度を必要とする。したがってプローブをプライマーよりも長くなるように設計することで、プライマーのアニーリングよりも高い温度ではプローブが標的核酸と選択的にアニールするようにできる。さらに詳しく説明すると、プローブのヌクレオチドの組成は、G/Cの含有量がより多くなるように選択することができる。その結果、プローブはプライマーよりも熱安定性が大きくなる。修飾されたヌクレオチドを場合によってはプライマーまたはプローブに組み込むことにより、修飾されていないヌクレオチドだけを含むプライマーまたはプローブと比べて熱安定性をより大きく、またはより小さくすることができる。修飾されたヌクレオチドの例はすでに詳しく説明した。プローブとプライマーの熱安定性の違いを活用するには熱サイクリング・パラメータを変えてもよい。例えば熱サイクリング変性ステップの後、プローブは結合できるがプライマーは結合できない中間温度を導入することができる。その後、温度をさらに下げてプライマーのアニーリングが可能になるようにする。プローブがプライマーよりもが結合しやすくするため、プライマーよりもプローブの濃度を大きくすることもできる。プローブのこのような濃度は、一般に、それぞれのプライマーの濃度よりも約2〜約20倍大きな範囲にあり、一般に約0.5から5×10-7Mである。
鋳型に依存したプライマーの伸長は、一般に、反応混合物の中で、十分な量の4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)または類似体の存在下にて、ヌクレオチド組み込み生体触媒が触媒となって起こる。反応混合物には、適切な塩、金属カチオン、緩衝液も含まれている。反応混合物についてはすでに詳しく説明した。適切なヌクレオチド組み込み生体触媒は、プライマーおよび鋳型依存DNA合成の触媒となるとともに、5'-3'ヌクレアーゼ活性を有することが知られている酵素である。このタイプのDNAポリメラーゼの例としては、大腸菌DNAポリメラーゼI、T番目DNAポリメラーゼ、バシラス・ステアロテルモフィルスDNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、テルムス属ZO5 DNAポリメラーゼ、テルモトガ・マリティマDNAポリメラーゼ、テルモトガ・ネオポリタナDNAポリメラーゼ、テルモシフォ・アフリカヌスDNAポリメラーゼなどがある。これらのDNAポリメラーゼを用いたDNA合成の触媒となる反応条件は従来技術でよく知られている。一般に、ヌクレオチド組み込み生体触媒がプローブを効率的に切断して標識されたフラグメントを放出させるため、検出可能な信号が直接または間接に発生する。
合成の生成物は一般に、鋳型の鎖とプライマーが伸長した鎖を含む二本鎖分子である。この合成の副生成物はプローブのフラグメントであり、その中にはモノヌクレオチドのフラグメントと、ジヌクレオチドのフラグメントと、これらよりも大きなヌクレオチドのフラグメントの混合物が含まれている可能性がある。変性サイクルの繰り返しと、プローブおよびプライマーのアニーリングと、プライマーの伸長と、プローブの切断とにより、プライマーによって規定される領域の指数関数的な蓄積と、標識されたフラグメントの指数関数的な生成が起こる。十分なサイクル数を実施することで、プローブのフラグメントが検出可能な十分な量になるようにする。これは、一般に、バックグラウンドの信号よりも数桁大きい。この明細書に記載したドナー部分を用いると、バックグラウンドの信号が小さくならないアッセイと比べ、検出可能な信号が得られるまでのサイクル数を大きく減らすことができる。
いくつかの実施態様では、PCR反応は、熱安定酵素を用いて自動化プロセスとして実施される。このプロセスでは、変性ステップと、プローブおよびプライマーのアニーリング・ステップと、プライマーに依存した鋳型の伸長と同時に切断と変位が起こる合成ステップを通じ、反応混合物をサイクルさせる。いくつかの実施態様では、この明細書に記載した方法をあるシステムを用いて実施する。そのようなシステムについてはあとでさらに詳しく説明する。場合によっては、熱安定酵素とともに使用する設計の熱サイクラー(例えばアプライド・バイオシステムズ社(フォスター・シティ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から入手できるもの)を使用することができる。
自動化されたプロセスでは、PCRサイクルの間に高温(例えば約95℃)に曝すことによって二本鎖の伸長産物を変性させる熱安定性ポリメラーゼが一般に使用される。例えば1989年12月26日にGelfandらに付与された「精製された熱安定酵素」という名称のアメリカ合衆国特許第4,889,818号には、テルムス・アクアティクスから単離した代表的な1つの熱安定酵素が開示されている。別の代表的な熱安定ポリメラーゼとしては、例えば、熱安定細菌(テルムス・フラブス、テルムス・ルーバー、テルムス・テルモフィルス、バシラス・ステアロテルモフィルス(掲載した他のものよりも最適な温度が幾分か低い)、テルムス・ラクテウス、テルムス・ルーベンス、テルモトガ・マリティマ、テルモトガ・ネオポリタナ、テルモシフォ・アフリカヌス、テルモコックス・リトラリス、メタノテルムス・フェルビドゥス)から取り出したポリメラーゼなどがある。
標的核酸へのプローブのハイブリダイゼーションは、適切なハイブリダイゼーション条件を選ぶことによって実現できる。プローブ:標的核酸のハイブリッドの安定性をアッセイと洗浄の条件に合致するように一般に選択することで、プローブと標的核酸の間にだけ安定で検出可能なハイブリッドが形成されるようにする。1つ以上の異なるアッセイ・パラメータを操作し、特定のハイブリダイゼーション・アッセイの正確な感度と特異性を決める。
より詳細には、核酸の相補的な塩基(例えばDNA、RNA、PNAや、これらの組み合わせ)間のハイブリダイゼーションは、温度、塩の濃度、静電強度、緩衝液の組成が異なるさまざまな条件下で起こる。こうした条件とそれを適用する方法の例は、例えばTijssen、『核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション』、第24巻、エルゼビア・サイエンス社、1993年;HamesとHiggins、前掲文献に記載されている。ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズさせる配列の性質とその長さに応じ、一般に、約1分間〜約1時間の期間にわたって約0℃〜約70℃にて起こる。しかしハイブリダイゼーションは、反応条件に応じて数秒または数時間で起こる可能性があると認識されている。例えば2つの20量体の混合物に関する典型的なハイブリダイゼーション条件は、その混合物を68℃にした後、5分間にわたって室温(22℃)まで冷却するか、非常に低温(例えば2℃)に冷却するというものである。核酸同士がハイブリダイゼーションしやすくなるようにするため、緩衝液(例えばトリス-EDTA(TE)、トリス-HCl、ヘペス)、塩溶液(例えばNaCl、KCl、MgCl2)、他の水溶液、試薬、化学物質を用いることができる。このような試薬の例として、一本鎖結合タンパク質(Rec Aタンパク質、T4遺伝子32タンパク質、大腸菌一本鎖結合タンパク質、核酸主溝結合タンパク質、核酸副溝結合タンパク質など)がある。このような試薬および化学物質の他の例としては、2価イオン、多価イオン、インターカレーション物質(例えば臭化エチジウム、アクチノマイシンD、ソラレン、アンゲリシン)などがある。
標的核酸の検出に利用できるほぼすべての方法を本発明で利用できる。一般的な方法としては、5'-ヌクレアーゼ・プローブ、ハイブリダイゼーション・プローブ、ヘアピン・プローブ(例えば分子ビーコン)のいずれかを用いたリアル-タイム増幅検出、および/または(例えば組み込まれなかった標識から増幅産物を電気泳動で分離した後の)増幅プライマーまたは増幅された核酸そのものに組み込まれた標識の検出、および/またはハイブリダイゼーションに基づくアッセイ(例えばアレイに基づくアッセイ)、および/または核酸に結合する二次的試薬の検出がある。このような一般的な方法は、例えば前掲のSambrook、Ausbel 1と2にも記載されている。
ヘアピン・プローブ(例えば分子ビーコン)は、標的核酸のリアル-タイム検出と定量化のために設計されたオリゴヌクレオチドである。ヘアピン・プローブの5'末端と3'末端は、一般に、プローブに検出可能な性質を与える標識部分を含んでいる。一実施態様では、一方の末端を実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分(例えば蛍光染料)に結合させ、他方の末端を、アクセプタ部分からの蛍光発光を阻止することのできるクエンチャ部分に結合させる。ヘアピン・プローブが溶液中で遊離状態になっているとき、すなわち第2の核酸にハイブリダイズしていないとき、プローブの幹部は、相補的な塩基とペアになることよって安定化される。この自己相補的なペア形成により、アクセプタ部分とクエンチャ部分が互いに近接したプローブが“ヘアピン・ループ”構造になる。このコンフォメーションでは、クエンチャ部分がアクセプタ部分を阻止する。ヘアピン・プローブのループは、一般に、標的核酸中で検出される配列と相補的な配列を含んでいるため、そのループが標的中の相補的な配列とハイブリダイズすると幹部が解離し、そのことによってアクセプタ部分とクエンチャ部分が互いに離れる。このことによってアクセプタ部分が自由になり、ヘアピン・プローブからの蛍光が増大する。
さらに詳しく説明するため、図3にヘアピン・プローブ300を図示してある。このヘアピン・プローブ300は、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)302と、アクセプタ部分(A)304と、クエンチャ部分(Q)306を含んでいる。図からわかるように、クエンチャ部分(Q)306は、ヘアピン・プローブ300が溶液中で遊離状態になっているときにアクセプタ部分(A)304からの蛍光発光を阻止するが、ヘアピン・プローブ300が標的核酸308とハイブリダイズしているときは阻止しない。別の代表的な一実施態様では、ヘアピン・プローブは、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分だけを含んでいる。これら実施態様では、アクセプタ部分からの蛍光の強度は、プローブが標的核酸とハイブリダイズしてプローブのコンフォメーションが変化することが原因で一般に低下する。
ヘアピン・プローブの標準的な製造方法と利用方法に関する詳細は当業者に広く知られており、例えばLeone他、1995年、「分子ビーコン・プローブをNASBAによる増幅と組み合わせることによりRNAのホモジニアスなリアル-タイム検出が可能になる」、Nucleic Acids Res.、第26巻、2150〜2155ページ;Kstrikis他、1998年、「分子ビーコン:スペクトルによるヒト対立遺伝子の遺伝子型決定」、Science、第279巻、1228〜1229ページ;Fang他、1999年、「表面に固定化したDNAのハイブリダイゼーションを研究するための新規な分子ビーコンの設計」、J. Am. Chem. Soc.、第121巻、2921〜2922ページ;Marras他、1999年、「分子ビーコンを用いた一ヌクレオチド変異の多重検出」、Genet. Anal. Biomol. Eng.、第14巻、151〜156ページにも記載されている。さまざまな製造会社(例えばオズウェル・リサーチ・プロダクツ社(イギリス国)、リサーチ・ジェネティクス(インヴィトロジェン社の一部門、ハンツヴィル、アラバマ州、アメリカ合衆国)、ザ・ミッドランド・サーティファイド・リージェント社(ミッドランド、テキサス州、アメリカ合衆国))が、この明細書に記載した方法で利用するために改変できる標準的なヘアピン・プローブとカスタム生産のヘアピン・プローブを製造している。ヘアピン・プローブを利用したさまざまなキットも市販されている。例えば、ストラタジーン社(ラ・ジョラ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)からのセンチネル(登録商標)分子ビーコン対立遺伝子識別キットや、ユーロジェンテック社(ベルギー国)とイソジェン・バイオサイエンス社(オランダ国)からのさまざまなキットがある。これらのキットも、場合によっては改変されてこの明細書に記載した方法で使用される。
ハイブリダイゼーション・プローブは一般にペアで機能し、さまざまなタイプのリアル-タイム標的核酸検出(例えば定量化、突然変異の検出、融点(Tm)の多重化、色の多重化)を行なうのに使用できる。ハイブリダイゼーション・プローブ・アッセイのいくつかの特徴は、例えばBrega他、2004年、「プラスモジウム・ビバックス単離体におけるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子の一塩基多型のためのリアル-タイムPCR」、Antimicrob. Agents Chemother.、第48巻(7)、2581〜2587ページ;Perelle他、2004年、「食物に含まれる好熱性カンピロバクターを検出するためのライトサイクラー・リアル-タイムPCRハイブリダイゼーション・プローブ・アッセイ」、Mol. Cell Probes、第18巻(5)、321〜327ページ;Whiley他、2003年、「porA遺伝子とctrA遺伝子を標的とした二重リアル-タイムPCRによって臨床サンプルに含まれる髄膜炎菌を検出する方法」、Mol. Diagn.、第7巻(3〜4)、141〜145ページにも記載されている。
ハイブリダイゼーション・プローブ・アッセイは、一般に、標的核酸または鋳型核酸を含む一対の標識されたプローブを互いに十分に近接した状態でハイブリダイズさせ、標識部分間でエネルギー移動が起こるようにする操作を含んでいる。より詳細には、ペアの一方のハイブリダイゼーション・プローブ(“ドナー・プローブ”)は一般に実質的に蛍光を出さない少なくとも1つのドナー部分を含んでいるのに対し、他方のハイブリダイゼーション・プローブ(“アクセプタ・プローブ”)は、少なくとも1つのアクセプタ部分を含んでいる(例えばLC-レッド610、LC-レッド640、LC-レッド670、LC-レッド705、JA-270、CY5、CY5.5)。さらに詳しく説明するため、図4には、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)402を含むドナー・プローブ400と、アクセプタ部分(A)406を含むアクセプタ・プローブ404とが溶液中で遊離状態になっているとき、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)402からアクセプタ部分(A)406には非蛍光性励起エネルギーが移動しないことが示されている。逆に、ドナー・プローブ400とアクセプタ・プローブ404の両方が標的核酸または鋳型核酸408とハイブリダイズすると、アクセプタ部分(A)406は、標的核酸または鋳型核酸408上のアクセプタ部分(A)406に十分に近接している実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)402から移動した非蛍光性励起エネルギーを受け取って蛍光エネルギーを発生させる。別の一実施態様では、ペアの一方のハイブリダイゼーション・プローブが実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分の両方を含んでいるのに対し、ペアの他方のハイブリダイゼーション・プローブはクエンチャ部分を含んでいる。この実施態様では、アクセプタ部分からの検出可能な蛍光発光は、プローブのペアが標的核酸とハイブリダイズしたときに低下する。なぜならクエンチャ部分が蛍光を阻止するからである。ハイブリダイゼーション・プローブのアクセプタ部分から出る蛍光は、公知のさまざまな方法(例えばライトサイクラー(登録商標)系(例えばロッシュ・ディアグノスティックス社(インディアナポリス、インディアナ州、アメリカ合衆国)を利用する方法))で検出することができる。
この明細書に記載した生体分子を用いる別の代表的な実施態様では、標識されたプライマーを用いて標的核酸をリアル-タイムで検出する。例えば図5にプライマー500を図示してある。このプライマー500は、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)502と、アクセプタ部分(A)504と、クエンチャ部分(Q)506を含んでいる。プライマー500は、伸長する前にヘアピン・プローブ構造を形成し、アクセプタ部分(A)504から出た蛍光をクエンチャ部分(Q)506が阻止する。プライマー500が伸長する(鋳型核酸508と結合する)と、ヘアピン・プローブ構造は解離して新たに形成された相補的配列とハイブリダイズし、アクセプタ部分(A)504がクエンチャ部分(Q)506から離れる。そのためアクセプタ部分(A)504からの蛍光発光を検出することができる。別の実施態様では、プライマーは、実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分だけを含んでいる。プライマーに基づいて標的核酸をリアル-タイムで検出するための方法のうちで本発明の生体分子とともに用いるために改変できる方法は、例えばHuang他、2004年、「サソリ二重プライマーを用いたテロメラーゼ活性のリアル-タイム定量アッセイ」、Biotechnol. Lett.、第26巻(11)、891〜895ページ;Asselbergs他、2003年、「小さな細胞質RNA Y1のリアル-タイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応測定を通じたアポトーシスの迅速な検出」、Anal. Biochem.、第318巻(2)、221〜229ページ;Nuovo他、1999年、「普遍的なエネルギー移動標識プライマーを用いたその場での増幅」、J. Histochem. Cytochem.、第47巻(3)、273〜280ページにも記載されている。
この明細書に記載した生体分子のいくつかの実施態様の別の一応用例は、核酸のシークエンシングである。一般に、核酸シークエンシングのプロトコルには、プライマー核酸の伸長/終結反応が含まれる。反応混合物には、一般に、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)と、プライマーを伸長させるポリメラーゼ酵素とが含まれる。さらに、反応混合物には、少なくとも1つのジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)またはターミネータ・ヌクレオチドも含まれる。このターミネータ・ヌクレオチドは、伸長したプライマーに組み込まれるとそのプライマーがさらに伸長するのを阻止する。伸長反応が終了すると、形成されたさまざまな終結産物が分離され、分析されて、標的核酸の塩基配列が決定される。
核酸のシークエンシングは、一般に2つのクラスに分けられる。それは“染料プライマーのシークエンシング”と“染料ターミネータのシークエンシング”である。染料プライマーのシークエンシングでは、蛍光染料(例えばこの明細書に記載したアクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分のペア)を、伸長しているプライマーに組み込む。次に、4つの独立した伸長/終結反応を並列に実施する。それぞれの伸長反応は、その伸長反応を終結させるための異なるターミネータ・ヌクレオチドを1つ含んでいる。終結の後、反応生成物は一般にゲル電気泳動によって分離され、分析される(Ansorge他、1987年、Nucleic Acids Res.、第15巻、4593〜4602ページ)。
染料プライマーのシークエンシングの一変形例では、4つの独立した伸長/終結反応で異なるプライマーを用いる。それぞれのプライマーは、スペクトル分解可能な異なる染料を含んでいる。終結の後、4つの伸長/終結反応からの反応生成物は一般にプールされ、電気泳動によって分離され、単一のレーンの中で検出される(Smith他、1986年、Nature、第321巻、674〜679ページ)。したがって染料プライマーのシークエンシングに関するこの変形例では、スペクトル分解可能な一群の染料を含むプライマーを用いることにより、2つ以上の伸長/終結反応からの生成物を同時に検出することができる。
染料ターミネータのシークエンシングでは、蛍光染料(例えばこの明細書に記載したアクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分のペア)を、それぞれのターミネータ・ヌクレオチド(例えば2'-ターミネータまたはジデオキシヌクレオシド三リン酸)に結合させる。次に、伸長/終結反応を実施する。そのときデオキシヌクレオシド三リン酸を用い、標識されたターミネータ・ヌクレオチドが伸長したプライマーに組み込まれるまでプライマーを伸長させる。するとプライマーがそれ以上伸長しなくなる。終結後、各ターミネータ・ヌクレオチドに関する反応生成物が分離されて検出される。一実施態様では、独立した伸長/終結反応を4種類のターミネータ・ヌクレオチドのそれぞれについて実施する。別の一実施態様では、4種類のターミネータ・ヌクレオチドを含む伸長/終結反応を1回だけ実施する。各ターミネータ・ヌクレオチドは、この明細書に記載したスペクトル分解可能な別々の蛍光染料で標識する。
したがって本発明の1つの特徴によれば、本発明の1種類以上のオリゴヌクレオチド試薬を用いて染料プライマーのシークエンシングを行なう方法が提供される。この方法によれば、デオキシヌクレオシド三リン酸と、少なくとも1種類のターミネータ・ヌクレオチドと、ポリメラーゼとの存在下にて標的核酸を標識されたプライマーとハイブリダイズさせることにより、伸長した標識されたプライマーの混合物が形成される。標識されたプライマーは、配列を明らかにする標的核酸の配列の一部と相補的なオリゴヌクレオチド配列と、オリゴヌクレオチドに結合したエネルギー移動蛍光染料(例えばこの明細書に記載したアクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分のペア)とを含んでいる。
この方法によれば、ポリメラーゼは、デオキシヌクレオシド三リン酸を用い、プライマーの伸長を終結させるターミネータ・ヌクレオチドが組み込まれるまでプライマーを伸長させる。終結後、混合物に含まれる伸長したプライマーは一般に(例えば電気泳動および/またはクロマトグラフィによって)分離される。次に、この標的核酸の配列が、伸長したプライマーを検出することによって決定される。
この方法の別の一実施態様では、4回の染料プライマー・シークエンシング反応を実施する。それぞれのプライマー・シークエンシング反応には、異なる標識をされたプライマーと、異なるターミネータ・ヌクレオチド(例えばddATP、ddCTP、ddGTP、ddTTP)とが含まれている。4回の染料プライマー・シークエンシング反応を実施した後、伸長したプライマーからなる得られた混合物はプールすることができる。次に、混合物に含まれる伸長したプライマーは分離され、4種類の異なる標識をされたプライマーのそれぞれからの蛍光信号が検出されて、標的核酸の配列が決定される。
本発明の別の一実施態様によれば、本発明のエネルギー移動染料(例えばこの明細書に記載したアクセプタ部分と実質的に蛍光を出さないドナー部分のペア)で標識された1つ以上のターミネータ・ヌクレオチド(例えば2'-ターミネータまたはジデオキシヌクレオシド三リン酸)を用いて染料ターミネータのシークエンシングを行なう方法が提供される。この方法によれば、デオキシヌクレオシド三リン酸と、少なくとも1つの標識されたターミネータ・ヌクレオチドと、ポリメラーゼとの存在下にて標的核酸をプライマーとハイブリダイズさせることにより、伸長したプライマーの混合物が形成される。この方法のいくつかの実施態様では、伸長したプライマーの混合物を形成するステップに、標的核酸を4種類の異なる標識されたターミネータ・ヌクレオチドとハイブリダイズさせる操作が含まれる。ポリメラーゼは、デオキシヌクレオシド三リン酸を用い、標識されたターミネータ・ヌクレオチドが伸長したプライマーに組み込まれるまでプライマーを伸長させる。終結の後、混合物に含まれる伸長したプライマーは一般に分離される。次に、標的核酸の配列が、伸長したプライマーに組み込まれた標識されたターミネータ・ヌクレオチドからの蛍光を検出することによって決定される。
本発明の生体分子の利用法の別の例として、タンパク質の分析がある。例えば図6に、タンパク質の切断に対する応答を調べるのに利用できるアッセイを示してある。図からわかるように、タンパク質600のいくつかのアミノ酸602は、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)604と、アクセプタ部分(A)606と、クエンチャ部分(Q)608のいずれかを備えている。切断(例えばプロテアーゼによる切断および/または化学的な切断)の前には、クエンチャ部分(Q)608が、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)604から移動した励起エネルギーを受け取るアクセプタ部分(A)606からの蛍光発光を阻止する。切断後はクエンチャ部分(Q)608はこの蛍光をもはや阻止しないため、当業者に知られたさまざまな方法でこの蛍光を検出することができる。この方法の一変形例では、タンパク質を実質的に蛍光を出さないドナー部分とアクセプタ部分だけで標識するため、切断されたときにアクセプタ部分から出る蛍光の強度が低下する。本発明の生体分子とともに使用するために改変できるプロテアーゼ切断アッセイのさまざまな側面は、例えばJenny他、2003年、「トロンビンおよびXa因子との融合タンパク質を切断する方法の批判的検討」、Protein Expr. Purif.、第31巻(1)、1〜11ページ;Funovics他、2003年、「バイオイメージングのためのプロテアーゼ・センサー」、Anal. Bioanal. Chem.、第377巻(6)、956〜963ページにも記載されている。
本発明のいくつかの生体分子を用いて実施できる他の代表的な近接アッセイとして、エネルギー移動に基づく脂質混合アッセイがある。例えば図7に、本発明の一実施態様による脂質混合アッセイで実施するいくつかのステップを示してある。図からわかるように、標識された膜700は、実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)704を備えるドナー脂質702と、アクセプタ部分(A)708を備えるアクセプタ脂質706とを含んでいる。標識された膜700を標識されていない膜710と融合させる前に、アクセプタ部分(A)708は、標識された膜700においてアクセプタ部分(A)708に十分に近接している実質的に蛍光を出さないドナー部分(D)704から移動した励起エネルギーを吸収して蛍光を出す。ドナー脂質702とアクセプタ脂質706の距離が大きいほど、膜が融合したときにこの蛍光は低下する。
これら近接アッセイと他の近接アッセイにおいてアクセプタ部分からの蛍光を検出する方法は、当業者に広く知られている。これらの検出法と関連するシステム(光増倍管または電荷結合デバイスの利用が含まれる)のいくつかについて以下にさらに詳しく説明する。
本発明の他の代表的な実施態様では、この明細書に記載した生体分子が関係するビジネスを行なう方法が提供される。例えば図8は、本発明の一実施態様によるビジネスの方法で実施するいくつかのステップを示している。この方法のステップ800は、この明細書に記載した少なくとも1種類の生体分子の注文を顧客から受ける操作を含んでいる。さらに、この方法は、注文に応えて顧客に生体分子を供給する操作も含んでいる(ステップ802)。いくつかの実施態様では、例えばビジネスの主体が、顧客またはその代理人の来訪を通じて、または郵便その他の配達サービス(例えば運送業者)を通じて、または電話を通じて、またはeメールその他の電子媒体を通じて、または他の適切な任意の方法を通じて注文を受け取る。いくつかの実施態様では、注文される生体分子および/または供給される生体分子は、この明細書に記載したキットの中に含まれている。さらに、生体分子は、適切な任意の方法で(例えば顧客またはその代理人の来訪を通じて、または郵便その他の配達サービス(例えば運送業者)を通じて)顧客に(例えば代金と引き換えに)供給される。
VII.システム
本発明により、実質的に蛍光を出さないドナー部分から移動した非蛍光性エネルギーに応答してアクセプタ部分から発生するエネルギーを検出するシステムも提供される。このシステムを用いて多くのさまざまなアッセイ(例えばこの明細書で言及した近接アッセイ)を実施することができる。このシステムは、実質的に蛍光を出さない1つ以上のドナー部分で少なくとも標識された1つ以上の生体分子を含んでいる。いくつかの実施態様では、生体分子は固体支持体上でアレイ状にされているのに対し、別の実施態様では、生体分子は、例えば溶液中で実施するアッセイのために1つ以上の容器に入れられて供給される。このシステムは、照射源と、アクセプタ部分が実質的に蛍光を出さないドナー部分に十分に近接しているときにアクセプタ部分から出るエネルギーを少なくとも検出する少なくとも1つの検出装置または検出部品(例えば分光器)も含んでいる。さらに、このシステムは、場合によっては、容器または固体支持体と機能上関連するように接続されていてその容器または固体支持体の温度を調節する少なくとも1つの熱調節装置(例えば熱サイクリング装置)および/または流体をその容器または固体支持体との間でやり取りして例えばそのその容器または固体支持体において1つ以上の近接アッセイを実施する少なくとも1つの流体移動用部品(例えば自動化されたピペッタ)も含んでいる。
検出装置は、一般に、例えば所定のアッセイ系の(例えば容器および/または固体支持体の)別の部品の中または近くで発生する検出可能な信号を検出する構造にされている。そのまま使用されるか改変されて使用される可能性のある適切な信号検出装置は、この明細書では、例えば蛍光、リン光、放射線、吸光度、屈折率、ルミネッセンス、質量を検出する。検出装置は、場合によっては、例えば所定のアッセイの1つのステップが実施される上流および/または下流からの1つまたは複数の信号をモニタする。例えば検出装置は、場合によっては、位置的に“リアル-タイム”の結果に対応する複数の光学信号をモニタする。検出装置またはセンサーの例としては、光増倍管、CCDアレイ、光センサー、温度センサー、圧力センサー、pHセンサー、導電率センサー、走査検出装置などがある。本発明の方法を実施する際に場合によっては用いられる検出装置のより具体的な例として、例えば、共鳴光散乱検出装置、発光分光器、蛍光分光器、リン光分光器、ルミネッセンス分光器、分光光度計、光度計などがある。検出装置は、例えばSkoog他、『機器分析の原理』、第5版、ハーコート・ブレイス・カレッジ・パブリッシャーズ、1998年;Currell、『分析装置:性能、特徴、品質』、ジョン・ワイリー&サンズ社、2000年;Sharma他、『蛍光分光分析入門』、ジョン・ワイリー&サンズ社、1999年;Valeur、『分子蛍光:原理と応用』、ジョン・ワイリー&サンズ社、2002年;Gore、『分光測定と蛍光分光測定:実践的方法』、第2版、オックスフォード大学出版、2000年にも記載されている。
本発明のシステムは、一般に、部品の動作を制御するため、システムの1つ以上の部品(例えば検出装置、および/または熱調節装置、および/または流体移動装置)に機能上関連するように接続された制御装置も含んでいる。より詳細には、制御装置は、一般に、例えば検出装置からのデータを受け取るため、または容器の温度を設定および/または調節するため、または選択された容器との間での流体のやり取りを実施および/または調節するために用いられる独立したシステム部品または一体化したシステム部品として含まれている。制御装置および/またはシステムの他の部品は、場合によっては、適切にプログラムされたプロセッサ、コンピュータ、ディジタル装置、情報機器に接続されたり、あらかじめプログラムされている命令またはユーザーが入力した命令に従ってこれら装置の操作を指示したり、データや情報をこれらの装置から受け取ったり、その情報を解釈、処理してユーザーに報告したりする機能を持つ他の論理装置(例えば、必要に応じて存在するアナログ/ディジタル変換器、ディジタル/アナログ変換器など)に接続されたりする。適切な制御装置は従来技術でよく知られており、さまざまなメーカーから入手することができる。
どの制御装置またはコンピュータも、場合によってはモニタを備えている。それは、陰極線管(“CRT”)ディスプレイ、フラット・パネル・ディスプレイ(例えばアクティブ・マトリックス液晶ディスプレイ、または液晶ディスプレイ)などであることがしばしばある。コンピュータの回路は、箱の中に入れられることがしばしばある。その箱の中には、多数の集積回路チップ(例えばマイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路など)が含まれる。この箱には、場合によっては、ハード・ディスク・ドライブ、フロッピー・ディスク・ドライブ、大容量の取外し可能なドライブ(例えば書き込み可能なCD-ROM)や、他の一般的な周辺機器も収容される。ユーザーが入力するのに場合によっては入力装置(例えばキーボードやマウス)が用いられる。これらの部品について以下にさらに詳しく説明する。
コンピュータは、一般に、ユーザーからの命令を受け取るための適切なソフトウエアを含んでいる。その命令は、例えばGUIにおいてユーザーが一連のパラメータ・フィールドに入力する形態、またはあらかじめプログラムされた命令(例えば特定のさまざまな操作を行なうためにあらかじめプログラムされている)の形態である。次にソフトウエアはその命令を適切な言語に変換して1つ以上の制御装置に命令を出し、望む操作を実施する。次に、コンピュータは、例えばシステムに含まれるセンサー/検出装置からデータを受け取り、そのデータを解釈し、ユーザーが理解できる形式でそのデータを供給するか、プログラムに従ってそのデータを利用して制御装置のさらに別の命令を開始させる(例えば秤から受け取った流体の重量データに応答して流体流調節装置を制御する)。
図9は、本発明のさまざまな特徴を実現できる論理装置を含む代表的な1つのシステムの図である。当業者であればこの明細書に記載した内容からわかるように、本発明は場合によってはハードウエアおよび/またはソフトウエアとして実現される。いくつかの実施態様では、本発明のさまざまな特徴は、クライアント側論理またはサーバー側論理として実現される。従来技術からわかるように、本発明またはその一部は、適切な構成の計算装置にロードされたときにその装置を望み通りに機能させる論理命令および/またはデータを含む媒体プログラム部品(例えば固定された媒体部品)の中に実現することができる。やはり従来技術からわかるように、論理命令を含む固定された媒体を固定された媒体に収容して見る人に提供し、見る人がそれを自分のコンピュータに物理的にロードすることができる。あるいは論理命令を含む固定された媒体を遠隔サーバーに収容し、見る人が通信媒体を通じてアクセスしてプログラムをダウンロードすることができる。
より詳細には、図9は、検出装置902(例えば分光蛍光計などの分光器)と、流体移動用部品904と、熱調節装置908とが機能上関連するように接続されたコンピュータ900を示している。場合によっては、これら部品の1つ以上がサーバー(図9には図示せず)を通じてコンピュータ900に機能上関連するように接続されている。動作中は、流体移動用部品904は、一般に、反応混合物またはその成分をマルチ-ウエル容器906に移す。熱の調節(例えば熱サイクル)は、一般に、マルチ-ウエル容器906と熱のやり取りをする熱調節装置908によって実行される。検出装置902は、一般に、システムの中で所定の近接アッセイが実施される前、および/または実施されている最中、および/または実施された後に、検出可能な信号(例えば蛍光発光)を検出する。当業者にとって、図9に図示したシステムの1つ以上の部品を場合によっては互いに一体化して(例えば同じハウジングの中に)製造できることは明らかであろう。
VIII.キット
本発明の方法で用いられる反応混合物またはその成分(例えば生体分子)は、場合によっては包装されてキットにされる。いくつかの実施態様では、例えばキットを所定の複数の用途で利用するため、このキットに含まれる異なる生体分子をスペクトル分解可能なアクセプタ部分で標識する。このキットのいくつかの実施態様では、実質的に蛍光を出さないドナー部分として適切な1つのタイプのものだけが含まれるようにすることで、異なるアクセプタ部分のそれぞれを励起するのにエネルギー源が1つだけ必要とされるようにする。
さらに、キットは、バイオポリマーの合成や、核酸シークエンシング反応や、核酸増幅のリアル-タイム・モニタや、他の近接アッセイに用いられる適切に包装された試薬と材料も含むことができる。そのような試薬および材料としては、緩衝液、酵素、基準または対照、塩、金属イオン、プライマー、プローブ、伸長可能なヌクレオチド、ターミネータ・ヌクレオチド、グリセロール、ジメチルスルホキシド、ポリrAなどのほか、特定のプロセスまたはアッセイを実施するための指示書がある。これら実施態様のいくつかでは、キットは、例えば加ピロリン酸分解を最少にするために用いる少なくとも1つのピロホスファターゼ(例えば熱安定ピロホスファターゼ)、および/または例えば汚染が持ち越されないようにすることが望ましい用途で用いるためのウラシルN-グリコシラーゼ(UNG)をさらに含んでおり、場合によってはdUTPも含んでいる。キットの要素(例えば生体分子)は、一般に1つ以上の容器に入れて提供される。
さらに詳しく説明すると、本発明のキットには多くの異なる実施態様があり、多彩なアッセイおよび/または合成反応が実施される。そうした用途のいくつかについてはすでに説明した。いくつかの実施態様では、例えばキットは、この明細書で説明したようにして標識された免疫グロブリンと、所定のイムノアッセイの一部として標的エピトープへのその免疫グロブリンの結合を検出するための指示書を含んでいる。場合によっては、キットは、標識された脂質と、その脂質を用いた特定の近接アッセイ(例えば膜誘導アッセイ)を行なうための指示書を含んでいる。いくつかの実施態様では、キットは、プライマーと、(例えば核酸シークエンシング反応または核酸増幅反応において)プライマーを伸長させるための指示書を含んでいる。これら実施態様では、プライマーおよび/または場合によっては含まれる伸長可能なヌクレオチド、および/またはターミネータ・ヌクレオチド(例えばジデオキシシトシン三リン酸、ジデオキシアデノシン三リン酸、ジデオキシグアノシン三リン酸、ジデオキシチミジン三リン酸)、および/またはプローブ(例えばハイブリダイゼーション・プローブ、5'-ヌクレアーゼ・プローブ、ヘアピン・プローブ)は、一般に、この明細書に記載されているようにして標識される。他のいくつかの実施態様では、キットは、バイオポリマー合成試薬(例えばポリペプチド合成試薬や核酸合成試薬)と、その試薬を用いてバイオポリマーを合成するための指示書を含んでいる。
IX.実施例
この明細書に記載した実施例と実施態様は説明だけを目的としており、権利を主張する本発明の範囲を制限するためのものではないことが理解されよう。当業者であればこの明細書に記載した実施例と実施態様に基づくさまざまな修正や変更を思いつくであろうが、それらはこの明細書の精神と範囲に含まれるとともに、添付の請求項の範囲にも含まれることが理解されよう。