JP2004532615A - 核酸の検出および識別のためのプライマーおよび方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は特異的な核酸配列を検出するための新規のプライマーおよび方法を提供する。本発明のプライマーおよび方法は、様々な分子生物学の用途に有用であり、特に対立遺伝子特異的PCRに有用である。
Description
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は分子生物学の分野に関する。特に、本発明は核酸の検出および識別に使用するための新規のプライマーに関する。本発明の新規のプライマーは、分子生物学の分野、特に核酸合成および増幅の際の特異性の上昇(例、ミスプライミングの低下)、核酸の増幅および合成反応における産物の検出、ならびに与えられた標的遺伝子の対立遺伝子間の識別に関し、広範囲に応用できると思われる。
【背景技術】
【0002】
関連技術
試料中の特定の核酸分子の存在の検出および定量ができるアッセイ法は、法医学、医学、疫学、および公衆衛生において、ならびに疾病の予測および診断において、非常に重要である。そのようなアッセイ法は、例えば、感染症の原因物質の同定、ある個人が遺伝病を患う可能性の予測、飲料水または牛乳の純度の決定、および組織試料の同定に使用できる。そのようなアッセイ法の有用性および応用可能性を高めたいという要望は、しばしばアッセイ法の感度によって妨げられる。したがって、より感度の高い検出アッセイ法を開発することが非常に望ましい。
【0003】
核酸検出アッセイ法は、サイズ、配列、およびDNAの場合には制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性のような、核酸分子の任意の特性に基づきうる。そのようなアッセイ法の感受性は、検出が観察者に対して報告またはシグナルを与えるよう方法を変えることによって向上されうる。したがって例えば、アッセイ法の感度は、検出可能な標識を施した試薬を使用することによって向上しうる。多様なこのような標識が、この目的のために使用されてきた。検出可能な標識には、例えば、放射性同位元素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および酵素標識が含まれる。米国特許第4,581,333号は、検出アッセイ法における感度向上のための酵素標識の利用を記述している。放射性同位元素標識は、米国特許第4,358,535号および第4,446,237号に記述されている。検出が観察される効率を改善するために、蛍光標識(欧州特許第144,914号)、化学標識(米国特許第4,582,789号および第4,563,417号)、および修飾塩基(欧州特許第119,448号)も使用されてきた。
【0004】
高度に検出可能な標識試薬を利用すると核酸検出アッセイ法の感度は改善されるが、設計上アッセイ法で検出されるような核酸が存在していなくても生成するバックグラウンドシグナルを上昇させる非特異的反応に主に関連した実際的な問題によって、アッセイ法の感度は制限されている。これらの問題に対応して、DNA増幅を用いた様々な検出および定量方法が開発されてきた。
【0005】
核酸の同定および定量のための現行の方法の多くは、増幅および/またはハイブリダイゼーション技術に依存している。これらの多くは分離段階を含んでいるが、反応から標識されたプライマーまたはプローブを分離せずに核酸の検出ができる方法も、いくつか開発されている。これらの方法は、ゲル電気泳動のようなゲルに基づく方法およびドットブロット分析と比較して、例えば、時間が短くてすむ、ハイスループットが可能である、キャリーオーバー汚染が予防される、リアルタイムの検出で定量ができるなど、数多くの利点がある。これらの現行の方法の大部分は、2つの発色団を利用した溶液ベースの蛍光法である。これらの方法は、2つの分子が互いに近くに存在するときに、励起された蛍光成分のエネルギーが受容分子に移動する、蛍光エネルギー移動(FRET)という現象を利用する。この移動により、励起した蛍光成分は光子の形でエネルギーを放出できなくなるため、蛍光成分の蛍光に消光が起こる。受容分子が十分に近くない場合には移動は起こらず、励起した蛍光成分は蛍光を発することができる。FRETに基づくシステムの大きな欠点は、検出オリゴヌクレオチド中に2つの修飾型ヌクレオチドが存在する必要があるというコスト、および特定のアッセイ条件下では、利用できるほどのシグナルの差を与えるほど消光の効率が良くないかも知れないということである。分離せずに検出できる他の既知の方法は、増感ランタニド金属と受容色素との間にエネルギー移動がある発光エネルギー移動(LRET)(Selvin, P. R.,およびHearst, J. D., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10024-10028 (1994));および相補的標的の存在下、2つの隣接するピレンがエキシマー(蛍光二量体)を形成して検出可能な蛍光ピークのシフトが得られるエキシマー形成色素の色の変化(Paris, P. L.ら、Nucleic Acids Research 26:3789-3793 (1998))である。
【0006】
核酸分子の増幅については、当技術分野で様々な方法が周知である。一般に、核酸標的分子は、ポリメラーゼによって触媒される反応においてオリゴヌクレオチドプライマー伸長のための鋳型として使用する。例えば、PanetおよびKhorana (J. Biol. Chem. 249:5213-5221 (1974))はセルロースに結合したデオキシリボポリヌクレオチド鋳型の複製を示した。Kleppeら(J. Mol. Biol. 56:341-361 (1971))は、相補的なDNAの合成の鋳型としての、二本鎖および一本鎖DNA分子の使用を開示している。
【0007】
他の周知の核酸増幅手法には、転写に基づく増幅系(Kwoh, D.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173 (1989));国際公開公報第88/10315号)が含まれる。連結反応の産物の配列に相補的な配列を持つ標的核酸の存在下での2つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドの連結に基づくスキーム(「連結連鎖反応(LCR)」)も、使用されたきた(Wu, D. Y.ら、Genomics 4:560 (1989))。相補的核酸へのアニーリング後の2つのオリゴヌクレオチドの連結に基づく他の適当な核酸増幅法は、当業者に周知である。
【0008】
PCT出願国際公開公報第89/06700号は、標的一本鎖DNA(「ssDNA」)へのプロモーター/プライマーのハイブリダイゼーション後に、その配列の多くのRNAコピーを転写させることに基づく核酸増幅法を開示している。この方法は、サイクルでなく、すなわち、得られたRNA転写物から新しい鋳型を産生するものではない。
【0009】
欧州特許第329,822号は、核酸配列に基づく増幅(NASBA)と呼ばれる別の増幅手法を開示している。NASBAは、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA、および二本鎖DNA(dsDNA)のサイクル合成を含む核酸増幅手法である。ssRNAは第1のプライマーオリゴヌクレオチドの第1の鋳型であり、このプライマーオリゴヌクレオチドは逆転写酵素(RNA依存DNAポリメラーゼ)によって伸長される。その後RNAはリボヌクレアーゼH(RNase H、DNAまたはRNAのいずれかとの二重鎖におけるRNAに特異的なRNase)の作用によって、得られたDNA:RNAの二重鎖分子から除去される。得られたssDNAは第2のプライマーの第2の鋳型である。第2のプライマーは、ssDNA鋳型にハイブリダイズするプライマー配列の5'側に存在する、RNAポリメラーゼプロモーター(例えばT7 RNAポリメラーゼ)の配列を含む。このプライマーはその後、DNAポリメラーゼ(例えば大腸菌DNAポリメラーゼIの大きな「クレノウ」断片)によって伸長され、プライマーの間に存在する元のRNAの部分と同一の配列を持ち、さらに、片方の末端にプロモーター配列を持つ、dsDNA分子が産生される。このプロモーター配列は適当なRNAポリメラーゼに用い、このDNAの多くのRNAコピーを産生できる。これらのコピーは、その後、サイクルに再度入り、非常に速い増幅が行われる。酵素を適切に選択すれば、この増幅は各サイクルで酵素を添加することなく、等温で行なえる。このプロセスはサイクルであるため、開始配列にはDNAまたはRNAのいずれかの型が選択されうる。
【0010】
米国特許第5,455,166号および欧州特許第684 315号は、鎖置換増幅(SDA)法とよばれる方法を開示している。この方法は、単一の温度で行われ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、および修飾型ヌクレオチド三リン酸の組み合せを用いて、標的DNA配列の一本鎖断片を増幅する。標的配列を分断化し、一本鎖にし、エンドヌクレアーゼの認識部位を含むプライマーにハイブリダイズさせる。そして、プライマー:標的複合体を、1つのヌクレオチド三リン酸が修飾された、ヌクレオチド三リン酸混合物を用いて、ポリメラーゼ酵素で伸長する。結果として、元の標的配列およびエンドヌクレアーゼ認識配列を含む、二重鎖分子が得られる。認識配列を持つ片方の鎖は、プライマーに由来し、他方は伸長反応の結果である。伸長反応は修飾型ヌクレオチドを用いて行われるので、認識部位の片方の鎖は修飾されており、エンドヌクレアーゼ消化に抵抗性である。その後、得られた二重鎖分子に非修飾鎖を切断するエンドヌクレアーゼを接触させ、ニックを形成する。ニックの入った鎖は、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を持たないポリメラーゼ酵素によって伸長し、ニックの入った鎖を置換し、新しい二重鎖分子を産生する。新しい二本鎖分子に、ニッキングおよび伸長のサイクルを複数回行い、標的配列を複数コピー産生する。
【0011】
最も広く用いられている核酸増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRの詳細は、以下の参考文献に提供されている:Mullis, K.ら、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263-273 (1986);欧州特許第50,424号;欧州特許第84,796号;欧州特許第258,017号;欧州特許第237,362号;欧州特許第201,184号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,582,788号;米国特許第4,683,194号。最も簡単な形のPCRでは、標的である二本鎖核酸分子の増幅を行なう。二本鎖の配列を変性させ、得られた一本鎖の各々にオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングさせる。プライマーの配列は、増幅する二本鎖核酸配列部分に隣接する位置にプライマーがハイブリダイズするように選択する。オリゴヌクレオチドはポリメラーゼ酵素、ヌクレオチド三リン酸、および適当なコファクターを用いた反応で伸長し、各々が標的配列を含む2つの二本鎖分子を形成する。その後の変性、アニーリング、および伸長反応の各サイクルでは、前のラウンドの伸長産物がその後の複製段階の鋳型として働くために、標的配列のコピー数は2倍になる。したがってPCRは、特定の配列を持つ核酸分子が精製されておらず、特定の試料中に単一のコピーしか存在していなくても、その分子の濃度を選択的に上昇させる方法を提供する。この方法は、一本鎖または二本鎖核酸のいずれの増幅にも使用できる。この方法の本質は、所望の核酸分子の、鋳型に依存し、ポリメラーゼを介する複製のためのプライマーとして働く、2つのオリゴヌクレオチドを使用することである。
【0012】
PCRには研究および診断の分野で、数多くの応用法がある。PCRが有用であることが示された1つの分野は、対立遺伝子特異的PCR(ASPCR)による一塩基突然変異の検出である(例えば、米国特許第5,639,611号および第5,595,890号を参照されたい)。Wuら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2757-2760 (1989))によって最初に記述されたように、ASPCRは核酸分子の特定の位置における一塩基変化を検出するもので、これは、疑われる変種ヌクレオチドに対して相補的な3'末端ヌクレオチドを持つプライマー配列を用いた標的の増幅と、正常なヌクレオチドに相補的な3'末端ヌクレオチドを持つプライマーを用いた標的の増幅とを比較することで行なう。標的に変種ヌクレオチドが存在する場合には、変種ヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを含むプライマーを用いた方が効率的に増幅されるが、標的に正常なヌクレオチドが存在する場合には、正常なヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを含むプライマーを用いた方が効率的に増幅される。
【0013】
この技術は核酸中の一塩基置換を同定するために使用できるが、それでも実用的に応用するためはいくつかの欠点がある。プライマーにおける増幅効率の差は、正常なヌクレオチドと突然変異ヌクレオチドとの差を簡単に区別できるほど十分に大きくない可能性がある。ミスマッチしたプライマーが増幅の初期のラウンドでかなりの頻度で伸長されると、後期のラウンドでは産物の量が大きく異ならない可能性がある。この問題を避けるためには、増幅サイクル数と反応条件を注意深く選択する必要がある。この方法のさらなる問題点は、増幅後の検出段階にある。一般に、検出は電気泳動によって反応産物を分離してから、その産物を可視化して行なう。分離段階が必要なため、この種の分析を行なうために必要な時間と費用は劇的に増加する。FRETに基づく様々な液相の検出法は、分離段階を不要とするために使用されてきた。これらの方法は、上述のような欠点を持つ。
【0014】
核酸増幅産物の検出方法は、通常、ゲル電気泳動を用いるが、これはサイズの差によってプライマーから増幅産物を分離するものである。または、増幅産物は産物の固定化によっても検出できるが、これは遊離プライマー(例えば、ドットブロット分析において)を洗い流し、慣例の固相ハイブリダイゼーション法によって特異的なプローブでのハイブリダイゼーションが行われる。プライマーまたはプローブをあらかじめ分離せずに行なう増幅過程のモニタリング方法がいくつか記述されている。これらの方法は全てFRETに基づく。
【0015】
米国特許第5,348,853号およびWangら、Anal. Chem. 67:1197-1203 (1995)に記述された1つの方法は、プローブ上の2つの蛍光体の間でエネルギー移動が起きるエネルギー移動システムを使用する。この方法では、増幅された分子の検出は、分離段階を必要とせずに、増幅反応容器中で起きる。Wangらの方法は、リバースプライマーに相補的な「エネルギーシンク」オリゴヌクレオチドを使用する。「エネルギーシンク」およびリバースプライマーオリゴヌクレオチドは、それぞれドナーおよびアクセプター標識を持つ。増幅の前に、標識されたオリゴヌクレオチドは、その中でエネルギー移動が自由に起きるプライマー二重鎖を形成する。その後、標的鎖の1つが著しく過剰産生される前の対数期後半まで非対称PCRを実行する。
【0016】
プライマーと産物とをあらかじめ分離せずに増幅産物を検出する第2の方法は、5'ヌクレアーゼPCRアッセイ法(TAQMAN(登録商標)アッセイ法とも呼ばれる)である(Hollandら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280 (1991); Leeら、Nucleic Acids Res. 21:3761-3766 (1993))。このアッセイ法は、増幅反応中に、二重標識された蛍光原性プローブ(「TAQMAN(登録商標)」プローブ)のハイブリダイゼーションおよび切断によって、特異的なPCR産物の蓄積を検出する。蛍光原性プローブは、蛍光レポーター色素および消光色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる。PCR中、増幅されているセグメントにハイブリダイズすれば、このプローブはDNAポリメラーゼの5'エキソヌクレアーゼ活性によって切断される。プローブが切断されると、レポーター色素の蛍光強度が上昇する。TAQMAN(登録商標)アッセイ法では、ドナーおよび消光剤は好ましくはプローブの3'および5'末端に存在する。これは、蛍光体と消光剤との間で5'-3'加水分解が行われるという条件は、これらの2つの部分が互いに近すぎないときにのみ、満たされるからである(Lyamichevら、Science 260:778-783 (1993))。
【0017】
増幅産物の別の検出法(モレキュラービーコン(MOLECULAR BEACON)法)は、TyagiおよびKramer (Nature Biotech. 14:303-309 (1996))によって記述された「ビーコンプローブ」を用いたエネルギー移動を利用する。この方法は、ヘアピン構造を形成できるオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを使用する。ハイブリダイゼーションプローブの一方の端(5'末端または3'末端のいずれか)にドナー蛍光体があり、他方の端にはアクセプター部分がある。TyagiおよびKramerの方法では、アクセプター部分は消光剤、すなわち、アクセプターはドナーから放出されたエネルギーを吸収するが、それ自身は蛍光体ではない。したがって、ビーコンが開いた立体構造の場合には、ドナー蛍光体の蛍光は検出できるが、ビーコンがヘアピン(閉じた)立体構造の場合には、ドナーの蛍光体は消光される。PCR産物の一方の鎖にハイブリダイズするビーコンプローブをPCRに使用すると、「開いた構造」になり、蛍光は検出されるが、ハイブリダイズしなかったものは蛍光を発しない。その結果、PCR産物の量が増加するにつれて蛍光の量は増加するため、これはPCRの進行の尺度として使用できる。
【0018】
エネルギー移動を利用したもう1つの増幅産物の検出法は、Nazarenkoら(Nucleic Acids Research 25:2516-2521 (1997);米国特許第5,866,336号)のサンライズプライマー(SUNRISE PRIMER)法である。サンライズプライマーは、FRETおよび非蛍光消光の他の機構に基づく。サンライズプライマーは、5'末端にヘアピン構造を持つ一本鎖プライマーからなる。ヘアピンのステムはドナー/消光剤対で標識されている。ポリメラーゼによってヘアピン配列が開かれ、複製されると、シグナルが生成する。
【0019】
核酸ハイブリダイゼーションまたは核酸増幅に関する様々な応用法における、蛍光標識した核酸の利用については、一連の論文があるが、応用法の多くはハイブリダイズしなかったプローブまたは取り込まれなかったプライマーを分離し、検出するものである。これらの方法の中で、プローブもしくはプライマーのリアルタイムの検出、または増幅産物への取り込みもしくはハイブリダイゼーションの際の蛍光標識したオリゴヌクレオチドの蛍光特性の変化を記述または考察したものはない。したがって、特定の核酸標的配列の検出が、標的配列を含む核酸試料の増幅を伴う、伴わないに関わらず、標識核酸配列を検出するための、より感度が高く識別できる方法が、当技術分野でまだ必要とされている。
【0020】
本発明の驚くべきかつ新規の一部の所見は、標識されたプローブまたはプライマーが二本鎖になったときに、1つ以上の蛍光特性によって変化が測定されることに基づいている。したがって、本発明は、核酸配列の増幅または合成の多くの方法に適合し、キャリーオーバー汚染の可能性を大きく低下させるような、産物の検出方法を提供することにより、核酸、特に増幅および/または合成産物を検出するといった問題を解決する。本発明の化合物および方法は、先行技術に対して、実質的な改善を提供する。まず、取り込まれなかった蛍光標識オリゴヌクレオチドをあらかじめ分離することなく、増幅または合成の産物を検出できる。第2に、産物に標識オリゴヌクレオチドを取り込むことによって、増幅または合成の産物を直接検出できる。第3に、オリゴヌクレオチドを2つの異なる化合物で標識する(FRETに基づく方法のように)必要はないので、標識オリゴヌクレオチドの産生が簡素化する。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本発明は内部、および/または3'および/または5'末端に1つ以上の修飾を含む可能性のあるオリゴヌクレオチドを提供する。適当な修飾には、標識の含有、特異性増強基の含有、修飾された基(例、修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体)の含有、消光成分の含有、ヌクレオチド類似体の含有等が含まれるがこれらに限定されない。本発明のオリゴヌクレオチドは、関心のある標的または鋳型配列の全体または一部に相補的な1つ以上の配列も含む可能性がある。いくつかの態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ヘアピンの形状である。ヘアピンオリゴヌクレオチドは修飾であっても、または非修飾であってもよい。本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドは、ヘアピンのステム領域またはその付近に1つ以上の一本鎖領域を含む可能性があり、平滑末端であっても、または3'および/もしくは5'末端に突出配列を含んでいてもよい。本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの任意の位置に任意の数のステム・ループ構造を含む可能性もある。いくつかの好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、核酸合成および増幅(例、PCR)を含むがこれらに限定されないプライマー伸長に関する方法、ならびにプローブおよび/またはプライマーのハイブリダイゼーションに関する他の方法によって、標的または鋳型核酸分子の検出および/または識別に使用できる。本発明のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の任意の伸長反応で使用できる。そのような伸長反応には、DNAポリメラーゼを用いてDNA鋳型上のプライマーを伸長して相補的なDNA鎖を産生すること、および逆転写酵素を用いてRNA鋳型上のプライマーを伸長して相補的なDNA鎖を産生することが含まれるがこれらに限定されない。本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドの、関心のある1つ以上の標的核酸へのハイブリダイゼーションを含む方法を用いて、標的または鋳型核酸分子を検出/識別するときにも使用できる。
【0022】
1つの局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは同一または異なる可能性のある1つ以上の標識(例、検出可能標識)を含む可能性がある。いくつかの好ましい態様では、標識は蛍光成分である可能性がある。本発明の標識されたオリゴヌクレオチドは、例えば、そのようなオリゴヌクレオチドをそのような核酸分子にハイブリダイズすることによって、試料中の核酸分子の有無の検出またはその定量に使用できる。選択的に、そのようなオリゴヌクレオチドは合成および/または増幅反応で伸長でき、検出/定量はそのような反応中または反応後に実行できる。本発明の1つの局面では、そのような検出/定量は、二本鎖の標識オリゴヌクレオチドが一本鎖のオリゴヌクレオチドと比較して、1つ以上の特性(好ましくは蛍光特性)において検出可能な変化を示すことに基づく。本発明の別の局面では、本発明のオリゴヌクレオチドが伸長されたときの検出可能な特性(好ましくは蛍光特性)の変化が、標的/鋳型核酸の検出/定量に使用される。変化が検出できる蛍光特性には、蛍光強度(上昇または低下)、蛍光偏光、蛍光寿命、および蛍光の量子収量が含まれるがこれらに限定されない。したがって、検出/定量する核酸分子に対する、本発明の標識オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび/または伸長によって、使用した標識の1つ以上の検出可能な変化、特に、蛍光標識を使用している際には、1つ以上の蛍光特性の検出可能な変化が起こる。本発明のこの局面では、同一の試料中で、複数の異なる標的配列を検出するために、複数の異なるオリゴヌクレオチドが使用でき(例、多重化)、そのような異なるオリゴヌクレオチドは、異なる標識を行い、複数の標識配列を同時および/または順次に検出することができる。
【0023】
別の局面では、本発明は1つ以上の特異性増強基を含むオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドには、例えば、合成または増幅反応において、例えば、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的または鋳型核酸配列と塩基対を形成していないと、それが実質的に伸長しにくくなるようにする1つ以上の特異性増強基を提供できる。いくつかの態様では、特異性増強基は、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドまたはその付近に存在する。
【0024】
特異性増強基は、当技術分野で周知の任意の方法を用いてオリゴヌクレオチドに結合でき、リンカー基を介して結合してもよい。そのようなリンカー基の長さ、および化学的組成、すなわち、疎水性、電荷等は、様々であってよい。本発明の特異性増強基は、修飾するヌクレオチドの任意の部分、すなわち、塩基、糖、またはリン酸基に結合できる。本発明の特異性増強基は、蛍光基、化学発光基、放射性標識基等を含むがこれらに限定されない検出可能な基であるか、またはこれらを含むことができる。別の局面では、特異性増強基は、本発明のオリゴヌクレオチド内の1箇所以上の位置に取り込まれた修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体であってもよい。いくつかの態様では、本発明の特異性増強基は、オリゴヌクレオチドが伸長されると1つ以上の蛍光特性に検出可能な変化がおこる蛍光基、または関心のある核酸の検出を可能にする任意の他の検出可能な標識であってもよい。好ましくは、標識は、本発明のオリゴヌクレオチドが合成または増幅反応において伸長されると、検出可能な変化を示す。
【0025】
本発明のオリゴヌクレオチドは、ヘアピンである可能性がある。本発明のヘアピンは、好ましくは少なくとも1つのステム構造および少なくとも1つのループ構造を持つ。塩基対によってステム構造を形成する配列は、いかなる長さでもよく、好ましくは、標的または鋳型配列に相補的な配列の少なくとも一部を含む。例えば、オリゴヌクレオチドの配列は、まず、標的または鋳型核酸配列の一部に部分的に相補的な配列を選択し、その後、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドに相補的な1つ以上のヌクレオチドを、そのオリゴヌクレオチドの5'末端に付加することにより、合成または増幅反応に使用される温度より低い温度ではヘアピンを形成するように選択できる。温度が低下すると、3'および5'末端の相補的なヌクレオチドは塩基対を作り、ステム構造を形成できる。付加すべき相補的ヌクレオチドの数は、ステム構造の望ましい融解温度を決定することにより選択できる。融解温度は、好ましくは反応混合物の調製時にオリゴヌクレオチドがヘアピン構造であり、それによってそのオリゴヌクレオチドが標的または鋳型核酸分子への間違ったアニーリングまたは間違ったプライミングをしない程度に高く、かつオリゴヌクレオチドの全体または一部が線状構造をとり、合成または増幅反応中の適当な時点で標的または鋳型にアニーリングできる程度に低い。ステム構造のための適当な融解温度の選択は、当技術分野で日常的に行われている。
【0026】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上述の特性の複数またはその組み合せを組み込んでいる可能性がある。例えば、オリゴヌクレオチドは1つ以上の標識および/または1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上のヘアピン構造を含む可能性がある。
【0027】
別の局面では、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の任意の手段によって、支持体に共有結合または非共有結合で結合しうる。そのような支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、本発明の方法の実施に使用できる。例えば、核酸分子の検出もしくは定量は支持体上で実施でき、および/または核酸の合成もしくは増幅は、支持体上で実施できる。そのような支持体は、固体または半固体であってもよく、当技術分野で周知の任意の材料で作られていてもよい。支持体の例には、ポリオレフィン、焼結ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、シリカ等が含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
1つの局面では、本発明は、関心のある1つ以上の標的または鋳型核酸分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子の合成および/または増幅、またはそのような標的への本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの過程に使用する反応混合物または組成物を提供する。いくつかの好ましい態様では、反応混合物は本発明の少なくとも第1の、ならびに好ましくは第1および第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含む可能性があり、プライマーは同一または異なる可能性があり、同一または異なる標識および/または特異性増強基を含む可能性がある。そのような第1のプライマーは好ましくは、標的または鋳型核酸に少なくとも部分的に相補的であって、標的または鋳型核酸の全体または一部に相補的な第1の伸長産物の合成をプライミングする、少なくとも1つの配列を含む。そのような第2のオリゴヌクレオチドプライマーは好ましくは、第1の伸長産物の全体または一部に少なくとも部分的に相補的な配列を含み、第1の伸長産物の全体または一部に少なくとも部分的に相補的な第2の伸長産物の合成をプライミングする。いくつかの態様では、反応混合物は本発明の同一または異なるオリゴヌクレオチドプライマーを1つ以上含み、プライマーは1つ以上の同一または異なる標識および/または特異性増強基を含む可能性がある。例えば、反応混合物または組成物は、少なくとも1つのプライマーがヘアピン型で、他はヘアピン型ではない(好ましくは、そのような他のプライマーは線状である)複数のオリゴヌクレオチドプライマーを含んでいてもよい。別の局面では、1つのプライマーは、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅/伸長時に1つ以上の特性が検出可能な変化をする少なくとも1つの標識を持ち、第2のプライマーはヘアピン型および/または少なくとも1つの特異性増強基を持つ可能性がある。別の局面では、第1および第2のプライマーはともにヘアピン型であり、上述のような標識および/または特異性増強基を含む可能性がある。そのよう本発明の反応混合物または組成物はさらに、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上の標的または鋳型分子、および本発明のハイブリダイゼーションまたは合成/増幅反応によって産生される1つ以上の産物からなる群より選択される1つ以上の成分を含む可能性がある。したがって、本発明は一般的に、本発明を実施するために産生される組成物/反応混合物、および/または本発明を実施して得られる組成物/反応混合物に関する。
【0029】
本発明は、以下の段階を含む、試料中で核酸分子の有無を検出するため、または核酸分子の量を定量するための方法に関する:
(a) 1つ以上の核酸分子を含むと考えられる試料に、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを接触させる段階;および
(b) 試料中の、核酸分子の有無を検出する、または定量する段階。
【0030】
いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは標識されていることがあり、検出段階には、本発明の標識オリゴヌクレオチドの1つ以上の蛍光または他の検出可能な特性の変化を検出する段階が含まれる場合がある。いくつかの態様では、変化する蛍光特性は、蛍光の強度である。いくつかの態様では、蛍光強度の上昇が検出される。
【0031】
好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドは、そのようなオリゴヌクレオチドが試料中の核酸分子にハイブリダイズするのに十分な条件下でインキュベートされる。好ましい局面では、検出または定量段階には、対照試料(核酸分子が存在しない)と核酸分子を含む試料との比較が含まれる。未知の試料中に存在する核酸分子の正確なまたはおおよその量を決定するために、比較のための陽性対照として、本発明にしたがって既知の量の核酸分子を含む別の対照試料が使用できる。
【0032】
関連する局面では、本発明は核酸の合成または増幅中またはその後における、試料中の核酸分子の検出または定量に関する。したがって、本発明は以下の段階を含む、試料中の1つ以上の核酸分子の検出または定量のための方法に関する:
(a) 本発明の1つ以上の鋳型または標的核酸分子を、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階;
(b) 鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、反応液をインキュベートする段階であって、合成または増幅された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 合成または増幅された核酸分子を検出または定量する段階。
【0033】
いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドを標識でき、検出段階においては本発明の標識されたオリゴヌクレオチドの1つ以上の蛍光または他の検出可能な特性の変化が検出されうる。いくつかの態様では、変化する蛍光特性は、蛍光の強度である。いくつかの態様では、蛍光強度の上昇が検出される。
【0034】
鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するために十分な条件は、好ましくは、1つ以上の核酸および1つ以上のポリメラーゼおよび/または逆転写酵素(好ましくはDNAポリメラーゼ、および最も好ましくは耐熱性DNAポリメラーゼ)の存在下で、鋳型/オリゴヌクレオチド混合物をインキュベートする段階を含む。最も好ましい局面では、使用する増幅過程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはRT PCRであるが、本発明にしたがって他の増幅方法も使用できる。本発明のこの局面では、検出/定量段階は、増幅もしくは合成中、または合成もしくは増幅の完了後に実施できる。増幅反応中に検出するときは、リアルタイムの蛍光検出のできるサーモサイクラーが使用できる。さらに、核酸合成または増幅法は、好ましくは二本鎖核酸分子(好ましくは、二本鎖DNA/DNAまたはDNA/RNA分子)を産生し、そのような二本鎖分子の有無または量は、本発明のこの方法によって決定できる。好ましい局面では、本発明の標識されたオリゴヌクレオチドを合成または増幅時にプライマーとして使用して、標識されたオリゴヌクレオチドプライマーは合成または増幅された分子中に取り込まれ、それによって標識された産物分子(一本鎖または二本鎖の可能性がある)が産生される。別の局面では、本発明にしたがって産生された合成または増幅核酸分子は、同一または異なる1つ以上の標識を含む可能性がある。好ましい局面では、検出または定量段階は、対照試料と関心のある標的/鋳型核酸分子を含む試料との比較を含む。比較のため、および/または未知の試料中に存在する標的/鋳型の正確なもしくはおおよその量を決定するために、陽性対照として、既知の量の標的/鋳型を含む別の対照試料を使用できる。
【0035】
より具体的には、本発明は以下の段階を含む、二本鎖標的核酸分子(例、DNA/DNA; RNA/RNA; またはRNA/DNA分子)の増幅方法に関する:
(a) 少なくとも第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的であり、かつ第2のプライマーは核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素の存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、第1のプライマーを第1の鎖、および第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;ならびに
(d) 段階(a)から(c)を1回以上繰り返す段階であって、プライマーのうちの1つ以上が本発明のオリゴヌクレオチドである段階。
【0036】
いくつかの態様では、プライマーの少なくとも1つは、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅/伸長すると、1つ以上の蛍光またはその他の検出可能な特性に検出可能な変化を起こす標識を少なくとも1つ含む。いくつかの態様では、プライマーの少なくとも1つは、プライマーの3'ヌクレオチドが標的分子と塩基対を形成しない場合、プライマーが実質的に伸長しにくくなるような、少なくとも1つの特異性増強基を含む。いくつかの態様では、プライマーの1つ以上は、ヘアピン型である。いくつかの態様では、プライマーの少なくとも1つはヘアピン型であり、さらに検出可能な標識および/または特異性増強基を含む。
【0037】
別の局面では、本発明は増幅または合成の産物を、反応管を開けることなく検出する直接の検出法を提供する。「閉管」形式のこの態様は、増幅または合成の産物のキャリーオーバー汚染の可能性を大きく低下させる。閉管法は、試料のハイスループット分析も提供する可能性があり、自動化できる。閉管形式は、検出過程を著しく単純化し、ゲル電気泳動またはドットブロット解析のような、増幅後または合成後の解析を不要にする。
【0038】
別の局面では本発明は、以下の段階を含む、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを、関心のある1つ以上の核酸分子にハイブリダイズまたは結合する方法に関する:
(a) 1つ以上のオリゴヌクレオチドを1つ以上の核酸分子と混合する段階;および
(b) 1つ以上のオリゴヌクレオチドが1つ以上の核酸分子にハイブリダイズまたは結合するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0039】
好ましい局面では、この方法で使用される少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドはヘアピン型であり、より好ましくは、1つ以上のオリゴヌクレオチドは1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上の標識を含むヘアピン分子である。
【0040】
本発明は以下の段階を含む、1つ以上の核酸分子の合成または増幅方法にも関する:
(a) 1つ以上の鋳型または標的核酸分子を、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階;および
(b) 鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0041】
好ましい局面では、オリゴヌクレオチドはヘアピンであり、より好ましくは、1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上の標識を含むヘアピン分子である。鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するために十分な条件は、好ましくは1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上のポリメラーゼ、および/または1つ以上の逆転写酵素(好ましくは、DNAポリメラーゼ、および最も好ましくは、耐熱性DNAポリメラーゼ)の存在下で、鋳型/オリゴヌクレオチド混合物(例、鋳型-オリゴヌクレオチド複合体)をインキュベートすることを含む。最も好ましい局面では、使用される増幅段階は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはRT PCRであるが、他の増幅方法も本発明したがって使用できる。さらに、核酸の合成または増幅方法は、好ましくは二本鎖核酸分子(好ましくは、二本鎖DNA/DNAまたはDNA/RNA分子)を産生する。本発明のオリゴヌクレオチドを使用すると、核酸分子をより効率的に合成および/または増幅することができる。
【0042】
より具体的には、本発明は、以下の段階を含む、二本鎖標的核酸分子の増幅方法に関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的で、第2のプライマーは核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的な段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素の存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成されるような条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第1の鎖を変性させる段階;
(d) 段階(a)から(c)を1回以上繰り返す段階であって、1つ以上のプライマーが本発明のオリゴヌクレオチドである段階。
【0043】
1つの態様では、使用される本発明のオリゴヌクレオチドはヘアピンであり、より好ましくは、1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上の標識を含むヘアピンである。
【0044】
本発明は、検出/定量/増幅/合成される核酸分子がRNAまたはDNA分子であって、そのような分子が一本鎖または二本鎖のいずれかである、上述の方法の態様も提供する。
【0045】
本発明は、標的または鋳型核酸分子の3'末端がポリアデニル化されており(例、ポリ(A)RNAまたはmRNA)、および/または本発明のプライマーまたはオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つはポリ(T)配列を持ち、および/または本発明の他のプライマーまたはオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが少なくとも1つのデオキシイノシン残基を含む、上述の方法の態様も提供する。関連する局面では、鋳型または標的核酸はmRNA分子であり、少なくとも1つのプライマー/オリゴヌクレオチドは標識され、ポリ(T)配列を含み、および少なくとも1つのプライマー/オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのデオキシイノシン残基を含む。
【0046】
さらに理解されるように、本発明のオリゴヌクレオチドは、単一遺伝子特異的プライマーを用いてmRNA由来のcDNA末端の増幅へのPCRの応用に関するような、他の増幅法にも使用できる。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドは「RT-PCR」、「5'-RACE」、「アンカーPCR」、および「片側PCR」のような、mRNAの5'末端からの配列の捕捉を容易にする方法に使用できる。本発明の方法は、これらに限定されないが、PCR、LCR、SDA、およびNASBA、ならびに当技術分野で周知の他の増幅系を含む核酸配列の増幅の多くの方法に適応できる。
【0047】
別の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは標的核酸配列または関心のある遺伝子標的にはもともと存在していない特異的な配列であり得る(例、対立遺伝子特異的PCR)。そのような局面では、標的または鋳型分子に、まずアダプターまたはテール分子を導入する。そのようなアダプター分子は、様々な方法で結合できる。標的もしくは鋳型への連結、または合成反応(PCRなど)によって付加でき、この場合はアダプターまたはテール配列は、標的または鋳型に相補的な1つ以上の核酸分子の合成に使用された1つ以上のプライマーの一部である。そのようなテールまたはアダプターを含む鋳型または標的配列は、その後、本明細書に記述される方法にしたがって、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、検出できる。したがって、本発明は、様々な配列を検出するためのユニバーサル検出オリゴヌクレオチドも提供する。このようにして、本発明の特定のユニバーサルオリゴヌクレオチドを用いて、本発明のユニバーサルオリゴヌクレオチドに全てまたは特定のものが相補的である、1つ以上のアダプター配列を、いくつかの方法によって単に付加することによって、任意の数の標的または鋳型分子を検出できる。実施例20を参照されたい。1つの局面では、ユニバーサルオリゴヌクレオチドは(プライマーに)相補的なアダプター末端配列が付加または結合された、任意の核酸配列にアニーリングする。ユニバーサルオリゴヌクレオチドを用いるときは、「アダプター」が存在する全ての核酸配列に無作為に結合するのを避けるために、関心のある核酸を単離するために注意する必要があり、あるいは連結手法を関心のある配列のみで行なう必要がある(米国特許第6,174,709号)。別の局面では、標的配列に隣接する既知のベクター配列にアニーリングするまたは相補的な、ユニバーサルオリゴヌクレオチドが使用できる。アダプター分子として使用でき、当技術分野で周知の、市販されているそのようなベクター配列には、pUC/M13、pBR322、lambdagt10、lambdagt11等(米国特許第5,876,936号)が含まれる。アダプターは、pUC/M13、lambdagt10、およびlambdagt11等のように、ユニバーサルプライマーに由来するものでよく(Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、CSHL, 1989、第13節)、そのようなアダプター配列を含む1つ以上のプライマーは、核酸合成反応(PCRなど)によって、標的または鋳型分子に付加できる。
【0048】
本発明の別の局面では、本発明は以下の段階を含む、核酸分子の増幅を含む、試料中のポリメラーゼの活性または量の決定方法に関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは第1の核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的で、第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) ポリメラーゼの存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;
(d) 段階(a)から(c)を1回以上繰り返す段階;ならびに
(e) 増幅産物を検出する段階であって、プライマーの少なくとも1つは本発明のオリゴヌクレオチドであり、産生される増幅産物の量がポリメラーゼの活性または量を示す段階。
【0049】
いくつかの態様では、産生される増幅産物の量は、取り込まれた検出可能な標識の、1つ以上の蛍光または他の検出可能な特性の変化を検出することによって、決定される。
【0050】
したがって、一般に本発明は以下の段階を含む、試料中のポリメラーゼまたは逆転写酵素の活性または量を決定する方法に関する:
(a) ポリメラーゼまたは逆転写酵素を含むと考えられる試料を、1つ以上の核酸鋳型および1つ以上の本発明の標識オリゴヌクレオチドと混合する段階;
(b) 鋳型の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、合成または増幅された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 1つ以上の検出可能な標識に基づいて、試料中でポリメラーゼまたは逆転写酵素の活性または量を決定する段階。
【0051】
別の局面では、本発明は本発明の方法にしたがって、核酸分子またはポリメラーゼの検出を行なう時の、バックグラウンドの蛍光または他の検出可能な特性の消光に関する。本発明のこの局面では、一本鎖分子によって産生される蛍光または他の検出可能な特性を消光するために、1つ以上の標識された一本鎖核酸分子に結合する1つ以上の消光剤が使用される。好ましい局面では、消光剤は一本鎖分子に特異的で、二本鎖の標識核酸分子とは実質的に相互作用しない。したがって、本発明の標識(蛍光または他の検出可能な標識)されたオリゴヌクレオチドは、そのような物質が存在すると消光されるまたは実質的に消光される。標的分子と相互作用すると(例、ハイブリダイゼーション)、または増幅もしくは合成反応中に形成される本発明の標識オリゴヌクレオチド(蛍光または他の検出可能な標識)を含む二本鎖核酸分子は、そのような物質とは実質的に相互作用しないので、そのような物質によって実質的に消光されない。したがって本発明のこの局面は、蛍光のバックグラウンドを低下(または検出可能な特性のバックグラウンドを低下)させ、本発明の方法において標的核酸分子の検出を増強する。本発明で使用するために好ましい消光剤には、1つ以上の一本鎖結合タンパク質(SSB)が含まれる。そのようなSSBは、当技術分野で周知である(米国特許第5,449,603号および米国特許第5,605,824号)。別の局面では、そのような消光剤には、例えばDABCYLのような1つ以上の消光剤を含むブロッキングオリゴヌクレオチドが含まれる。別の局面では、消光成分は本発明のオリゴヌクレオチドの一部である場合がある。例えば、1つ以上の消光成分は、本発明の1つ以上のヘアピンのステム構造に取り込まれている可能性がある。そのようなステム構造は、1つ以上の標識も取り込んでいる可能性があり、ヘアピン構造の中では消光成分が標識のバックグラウンド活性のレベルを低下させる。ステム構造が変性すると(折畳みが開くと)、標識の消光は低下または予防される。
【0052】
別の態様では、本発明は、本発明の1つ以上の本発明の標識オリゴヌクレオチドを含む組成物に関するが、ここで標識は検出可能な標識であり、オリゴヌクレオチドはDNAおよびRNAからなる群より選択される。本発明の標識オリゴヌクレオチドは、用途によってプライマーおよび/またはプローブであってもよい。本発明の組成物はさらに、1つ以上のポリメラーゼ、1つ以上の消光剤、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の核酸分子(1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチドを含む、鋳型または核酸分子であり得る)、および1つ以上の緩衝塩からなる群より選択される1つ以上の成分を含む可能性がある。
【0053】
本発明の別の態様では、オリゴヌクレオチド標識はFRET対のメンバーである。この態様では、1つ以上の本発明の標識オリゴヌクレオチドは、内部、および/または3'および/または5'末端またはその付近に、FRET対のメンバーを1つ以上含む。好ましい局面では、標識成分は、1つ以上の蛍光成分であり、その発光は反応の進行を評価するために測定できる。
【0054】
本発明は核酸合成もしくは増幅産物の検出もしくは測定のため、または核酸分子の測定もしくは検出のためのキットにも関する。そのようなキットは、ハイブリダイズ、増幅、または合成される核酸の存在が、疾病または障害の有無と相関している、診断キットであってもよい。本発明のキットは、試料中のポリメラーゼの活性または量を検出または決定するためにも使用できる。さらに、本発明のキットは本発明のオリゴヌクレオチドを用いて、ハイブリダイゼーション、合成、増幅、または他の伸長反応を実施するためにも使用できる。本発明の好ましいキットは、本発明の方法で使用される試薬を含むように設計された1つ以上の容器(バイアル、チューブなど)、および選択的に、そのような試薬を使用するための説明書またはプロトコールを含みうる。本発明のキットは、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチド(プローブおよび/またはプライマーを含むがこれらに限定されない)、耐熱性ポリメラーゼのような1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、または任意の他のDNAもしくはRNAポリメラーゼ、1つ以上の標識を消光できる1つ以上の物質、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の標的/鋳型分子(反応の実行を決定するために使用できる、すなわち、対照反応)、および本発明の方法で産生された産物または中間体を解析またはさらに操作するためのその他の試薬からなる群より選択される成分を1つ以上含む可能性がある。そのような付加される成分には、クローニングおよび/または配列決定に使用される成分、および関心のある核酸分子の検出または定量に必要な成分または装置も含まれうる。
【0055】
本発明は本発明の方法を実行することによって産生される任意の産物または中間体(例、核酸分子)にも関する。本発明は本発明の方法によって産生されるそのような産物または中間体を含むベクターまたは宿主細胞にも関する。そのようなベクターの宿主細胞への導入は、当技術分野で周知の任意のクローニングおよび形質転換技術を用いて行なうことができる。
【0056】
また本発明は、以下の段階を含む、1つ以上の核酸分子の合成または増幅方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0057】
また本発明は、以下の段階を含む、核酸合成または増幅の特異性を上昇させた、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つのヘアピン構造を含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、ヘアピン構造ではないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。
【0058】
また本発明は、以下の段階を含む、核酸合成または増幅の特異性を上昇させた、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、非修飾型オリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。
【0059】
また本発明は、以下の段階を含む、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つのヘアピン構造を含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、ヘアピン構造ではないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する段階。
【0060】
また本発明は、以下の段階を含む、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、非修飾型オリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する段階。
【0061】
本発明のオリゴヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドまたはリボヌクレオチド修飾または2'-もしくは3'-置換修飾、例えば、2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシ修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル、または2'-もしくは3'-O-アリール修飾、好ましくは3'末端またはその付近のヌクレオチド残基の2'-O-メチル修飾のような、修飾型ヌクレオチドの形であってもよい。2'-O-アルキル修飾を調製する方法は、米国特許第6,090,932号に示されている。そのようなオリゴヌクレオチドは、上述の複数の特性またはその組み合せを持ちうる。例えば、オリゴヌクレオチドは1つ以上の標識、および/または1つ以上の特異性増強基、および/または1つ以上のヘアピン、および/または1つ以上のヌクレオチド修飾、好ましくは3'末端またはその付近のヌクレオチド残基の2'-O-メチル修飾を含む可能性がある。さらに、本発明の修飾型オリゴヌクレオチド配列は、単一遺伝子特異的プライマーを用いてmRNA由来のcDNA末端を増幅するといったPCRの応用に関するような、他の増幅方法にも利用できる。したがって、本発明の修飾型オリゴヌクレオチドは、「RT-PCR」、「5'-RACE」、「アンカーPCR」、および「片側PCR」のような方法に利用できる。本発明の方法は、PCR、LCR、SDA、およびNASBAを含む、核酸配列の増幅のための多くの方法、および当技術分野で周知の他の増幅系に適用できる。
【0062】
本発明はさらに、1つ以上の核酸分子および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物に関するが、ここでオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は核酸分子の少なくとも一部にハイブリダイズでき、かつオリゴヌクレオチドは修飾型ヌクレオチドまたは2'-置換ヌクレオチド修飾、好ましくは3'末端ヌクレオチドまたはその付近で2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含む。本発明のそのような反応液または組成物は、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上の標的または鋳型分子、および1つ以上の本発明のハイブリダイゼーションまたは合成/増幅反応によって産生された1つ以上の産物からなる群より選択される、1つ以上の成分をさらに含む可能性がある。
【0063】
また本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅方法に関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的であり、第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼの存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成されるような条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;ならびに上述の段階を1回以上繰り返す段階であって、プライマーの1つ以上は、3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階。
【0064】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置で、関心のある少なくとも1つのヌクレオチドの存在を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置で、関心のあるヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成またはハイブリダイズすることができ、かつオリゴヌクレオチドがその3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成したときにオリゴヌクレオチドの伸長が起きるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物の存在またはその産生増加が特定の位置で特定のヌクレオチドが存在することを示す段階。
【0065】
また本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において少なくとも1つのヌクレオチドの欠如を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置に関心のあるヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成するまたはハイブリダイズする能力があり、かつオリゴヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドまたはその付近でヌクレオチド修飾を含む段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨げられるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物の欠如または産生減少がその特定の位置での特定のヌクレオチドの欠如を意味する段階。
【0066】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において、あるヌクレオチドの有無を判定する方法にも関する:
(a) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成するときに第1のオリゴヌクレオチドが伸長するよう十分な条件下で、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸を接触させる段階であって、第1のオリゴヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨害されるよう十分な条件下で、少なくとも第2のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階であって、第2のオリゴヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;および
(c) 第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは産生された伸長産物の量を比較する段階。
【0067】
さらに本発明は、以下の段階を含む1つ以上の核酸分子を合成または増幅するための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型または標的を、1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;および
(b) 鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0068】
さらに本発明は、以下の段階を含む、核酸合成または増幅の特異性が増強された、1つ以上の核酸分子の合成または増幅方法に関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型または標的を、1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;および
(b) 鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含まないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。
【0069】
また本発明は、以下の構造式:
【化2】
を持つヌクレオチド類似体に関するが、ここで
Xは-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、C(R8R9)、-N(R10R11)、NR10、P(O2)、およびP(O)-O-R12からなる群から選択され;
R1は核酸塩基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ基、およびアリールからなる群より選択され;
R2は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノおよびチオからなる群より選択され;
R3は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ基およびチオからなる群より選択され;
各R4はヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、およびチオからなる群より独立して選択され;
R5は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ基およびチオからなる群より選択され;
Uは核酸塩基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ基、およびアリールからなる群より選択され;
UがCR8、NR10、Nの場合、R6はR2であり、またはUが-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-の場合、R6は存在せず;
R7は三リン酸、二リン酸、一リン酸、チオリン酸、オリゴヌクレオチド、核酸、DNA、RNA、LNA[JW1]およびPNAからなる群より選択され;
R8は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノおよびチオからなる群より選択され;
R9は水素、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アルキルメルカプト基、アリール基、アリールオキシ基、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ基およびチオからなる群より選択され;
R10, R11, およびR12は同一または異なっており、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、および糖からなる群より選択される。
【0070】
別の局面では、本発明は1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドを提供する。本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの内部、または5'末端および/または3'末端またはその付近の任意の1つ以上の位置に、1つ以上のそのようなヌクレオチドを含む可能性がある。さらに、オリゴヌクレオチドは上述の複数の特性またはその組み合せを持つ可能性がある。例えば、オリゴヌクレオチドは1つ以上の標識、および/または1つ以上の特異性増強基、および/または1つ以上のヘアピン、および/またはヌクレオチド類似体を含む可能性がある。
【0071】
本発明はさらに、1つ以上の核酸分子および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物に関するが、ここでオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである。
【0072】
さらに本発明は、以下の段階を含む、組成物の産生方法に関する:
(a) 少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを提供する段階;および
(b) オリゴヌクレオチドに少なくとも1つの核酸分子を接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が核酸分子の少なくとも一部にハイブリダイズでき、かつオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0073】
さらに本発明は、1つ以上のオリゴヌクレオチドと検出または定量対象の1つ以上の標的核酸分子とを含む試料中で、1つ以上の標的核酸分子を定量または検出するための組成物に関するが、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである。
【0074】
さらに本発明は、検出または定量する1つ以上の分子を1つ以上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる段階、および標的核酸分子の有無を検出および/または定量する段階を含む、試料中で1つ以上の標的核酸分子を定量または検出するための方法に関するが、ここでオリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである。
【0075】
さらに本発明は、以下の段階を含む、核酸合成中に試料中の1つ以上の核酸分子を定量または検出するための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;
(b) 鋳型の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、合成された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 試料中で合成された核酸分子の量を測定することにより、合成された核酸分子の有無または定量を行なう段階。
【0076】
さらに本発明は、以下の段階を含む、核酸増幅中に試料中で1つ以上の核酸分子の定量または検出を行なうための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、または1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;および
(b) 鋳型の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、増幅核酸分子はオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 試料中で増幅された核酸分子の定量または有無を検出することにより、核酸分子の定量または有無を検出する段階。
【0077】
さらに本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅方法にも関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的であって、第2の核酸プライマーは核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼの存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;ならびに
(d) 上述の段階を1回以上繰り返す段階であって、1つ以上のプライマーが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0078】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置で、1つ以上のヌクレオチドの存在を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置で、関心のある1つ以上のヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成またはハイブリダイズすることができ、かつオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成したときにオリゴヌクレオチドの伸長が起きるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物が産生されることがその位置にその特定のヌクレオチドが存在することを示す段階。
【0079】
また本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において1つ以上の特定のヌクレオチドの欠如を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置に関心のある1つ以上のヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成するまたはハイブリダイズする能力があり、かつオリゴヌクレオチドが1つ以上のヌクレオチド類似体を含む段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨げられるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物の欠如または産生減少がその特定の位置での特定のヌクレオチドの欠如を意味する段階。
【0080】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において、1つ以上の特定のヌクレオチドの有無を判定する方法にも関する:
(a) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成するときに第1のオリゴヌクレオチドが伸長するよう十分な条件下で、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸を接触させる段階;
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨害されるよう十分な条件下で、少なくとも第2のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階;ならびに
(c) 第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは産生された伸長産物の量または有無を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0081】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において、関心のある少なくとも1つの特定のヌクレオチドの有無を判定する方法にも関する:
(a) 特定の位置に関心のあるヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子を提供する段階;
(b) 標的核酸分子に少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部はその核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成するまたはハイブリダイズすることができ、オリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;ならびに
(c) オリゴヌクレオチドの3'末端が標的核酸と塩基対を形成しないときにはオリゴヌクレオチドの伸長能力がより低く、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成するときにはオリゴヌクレオチドの伸長能力がより高いポリメラーゼを、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子に接触させる段階;ならびに最適にオリゴヌクレオチドの伸長のレベル、または伸長の量、または有無を測定する段階。
【0082】
さらに本発明は、以下の段階を含む1つ以上の核酸分子を合成または増幅するための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型または標的を、1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;および
(b) 鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0083】
また、本発明のキットは、本発明のオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーション、合成、増幅、または他の伸長反応を実施するために使用できる。本発明の好ましいキットには、本発明の方法に使用される試薬を含むように構成された1つ以上の容器(バイアル、チューブ等)、および選択的にそのような試薬を使用する説明書またはプロトコールが含まれる。本発明のキットは、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチド(プローブ、および/またはプライマーを含むがこれらに限定されない)、耐熱性ポリメラーゼのような1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、または任意のDNAもしくはRNAポリメラーゼ、1つ以上の標識を消光できる1つ以上の物質、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の標的/鋳型分子(反応の実行を決定するために使用されうる、すなわち対照反応)、および本発明の方法によって産生される産物または中間体の分析またはさらなる操作のための他の試薬からなる群より選択される、1つ以上の成分を含むことができる。そのようなさらなる成分には、クローニングおよび/または配列決定に使用される成分、および関心のある核酸分子の検出または定量に必要な成分または装置が含まれうる。
【0084】
さらに本発明は、核酸分子の合成に使用されるキットにも関するが、キットは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、本発明のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。
【0085】
さらに本発明は、核酸分子の増幅に使用されるキットにも関するが、キットは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、本発明のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。
【0086】
さらに本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドであるか、本発明のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む核酸合成または増幅産物の検出または測定のためのキットにも関する。
【0087】
さらに本発明は以下の段階を含む、一塩基多型の検出方法にも関する:
(a) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成するときに第1のオリゴヌクレオチドが伸長されるよう十分な条件下で、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階;
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に遠位対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨げられるよう十分な条件下で、少なくとも第2のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階;ならびに
(c) 第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは産生された伸長産物の量または有無を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0088】
さらに本発明は、3'末端にシトシンまたはグアニン、またはシトシンもしくはグアニンの類似体、および3'末端から少なくとも2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目の塩基に1つ以上の検出可能な標識を含むオリゴヌクレオチドにも関する。
【0089】
さらに本発明は、3'末端にアデニンまたはチミジン、5'末端に突出したグアニン、および内部に存在する1つ以上の検出可能な標識を含むオリゴヌクレオチドに関する。
【0090】
発明の詳細な説明
定義および略称
以下の記述において、組換えDNA技術で使用される多数の表現が広範囲に使用される。
本明細書で用いる以下の表現は、指定の略称で表されるものとする:
ASP=対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応
bp=塩基対
DABまたはDABCYL=4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸
EDANS=5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸
FAMまたはFlu=5-カルボキシフルオレセイン
JOE=2'7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
NASBA=核酸配列に基づく増幅
Rhod=ローダミン
ROX=6-カルボキシ-X-ローダミン
R6G=6-カルボキシローダミン
TAMRA=N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン
【0091】
増幅:
本明細書で用いる「増幅」という用語は、ポリメラーゼを用いてヌクレオチド配列のコピー数を増加させる任意のインビトロ法を意味する。核酸の増幅の結果、ヌクレオチドが核酸分子(例えばDNA)またはプライマーに取込まれることで核酸鋳型に相補的な新しい核酸分子が形成される。形成された核酸分子およびその鋳型は、追加的な核酸分子を合成するための鋳型として使用することができる。本明細書で用いる、1回の増幅反応は、多数回の核酸合成を含む場合がある。増幅反応は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。1回のPCR反応は、核酸分子の5〜100「サイクル」の変性および合成を含む場合がある。
【0092】
特異性増強官能基:
本明細書で用いる「特異性増強官能基」という表現は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが核酸標的/鋳型分子上のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合に、本発明のオリゴヌクレオチドの伸長性を低下させたり、また好ましくは実質的に低下させる、任意の分子または分子集団を意味する。任意の種類の官能基を使用することができる。好ましい例には、蛍光性官能基、修飾型ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、小分子、ハプテンなどが含まれるがこれらに限定されない。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの任意の位置に結合可能であるほか、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長性を低下させるか、また好ましくは実質的に低下させる限りにおいて、任意の位置でオリゴヌクレオチドの一部となる場合がある(例えば特異性増強官能基が修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の場合)。このような官能基は好ましくは、プライマーもしくはオリゴヌクレオチド、またはプライマーもしくはオリゴヌクレオチドの一部に、プライマーもしくはオリゴヌクレオチドの3'端もしくはその近傍に結合されるが、他の位置に結合または配置される場合もある。好ましくは、官能基はプライマーもしくはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する25塩基中の1個または複数に結合または配置される。いくつかの好ましい態様では、このような官能基は、オリゴヌクレオチドの3'端に隣接する20塩基中の1個もしくは複数に、またはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する15塩基もしくはその一部に、またはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する10塩基もしくはその一部に、または最も好ましくはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する5塩基もしくはその一部に結合または配置される。また特異性増強官能基は、最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型と塩基対を実質的に形成しない場合に伸長が阻害されるというより、プライマーの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型分子上の対応するヌクレオチドに相補的な場合に官能基の存在がプライマーの伸長を防止または阻害しない限りにおいて、最も3'側のヌクレオチドまたはその一部に結合させることができる。プライマーもしくはオリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型の対応するヌクレオチドと相補的でない場合にプライマーおよび鋳型により形成される二重鎖(二本鎖の複合体)の安定性を低下させることが可能な任意の官能基、および/または最も3'側のヌクレオチドが鋳型/標的の対応するヌクレオチドに相補的でない場合にオリゴヌクレオチドの3'端を伸長するポリメラーゼの効率を低下可能な任意の官能基を本発明を実施する際に使用することができる。いくつかの態様では、本発明の特異性増強官能基は、プライマーまたはオリゴヌクレオチドの配列中に取込まれる修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体でありうる。このような修飾は、ヌクレオチドの塩基、糖、またはリン酸部分において作られる場合があり、またホスホチオエートヌクレオチド、ホスホネートヌクレオチド、ペプチド核酸などを含むがこれらに限定されない。特異性増強官能基は例えば、識別を強化するために対立遺伝子特異的PCRで使用される。
【0093】
ポリメラーゼ:
本明細書で用いる「ポリメラーゼ」という用語は、ヌクレオチド重合活性を有する任意の酵素を意味する。本発明に有用なポリメラーゼ(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)は、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermotoga neopolitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENT(登録商標))DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiousus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENT(登録商標))DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woosii(Pwo)DNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bca)DNAポリメラーゼ、Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)DNAポリメラーゼ、Thermus flavus(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)DNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYME(登録商標))DNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)DNAポリメラーゼ、ミコバクテリアDNAポリメラーゼ(Mtb、Mlep)、およびこれらの変異体、変種ならびに誘導体を含むがこれらに限定されない。T3、T5、およびSP6などのRNAポリメラーゼ、ならびにこれらの変異体、変種、および誘導体も本発明に使用される場合がある。一般に、任意のI型DNAポリメラーゼを本発明に使用することができるが、III型またはAファミリー、Bファミリー、CファミリーなどのDNAポリメラーゼを含むがこれらに限定されない他のDNAポリメラーゼを使用することができる。
【0094】
本発明に使用されるポリメラーゼは、核酸鋳型から核酸分子を典型的には5'→3'方向に合成可能な任意の酵素でありうる。「3'→5'エキソヌクレアーゼ活性」とは当技術分野で周知の酵素活性である。この活性はDNAポリメラーゼと関連する場合が多く、DNA複製の「編集」または修正の機構に関連すると考えられている。「3'→5'エキソヌクレアーゼ活性が実質的に低下したポリメラーゼ」とは本明細書で(1)対応する非変異野生型酵素の3'→5'エキソヌクレアーゼ活性の約10%もしくは10%未満、または好ましくは約1%もしくは1%未満を有する変異型ポリメラーゼもしくは修飾型ポリメラーゼ、または(2)約1ユニット/mg タンパク質未満、または好ましくは約0.1ユニット/mg タンパク質、もしくは約0.1ユニット/mg タンパク質もしくは約0.1ユニット/mg タンパク質未満の3'→5'エキソヌクレアーゼの比活性を有するポリメラーゼのいずれかとして定義される。3'→5'エキソヌクレアーゼの活性のユニットは、10ナノモルの基質を60分間で37℃で可溶化する活性の量として定義され、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)によって[3H]dTTPで3'端が標識されたラムダDNAのHhaI断片を用いて、「BRL 1989 Catalogue & Reference Guide」の5ページに記載の手順でアッセイされる。タンパク質は、ブラッドフォード(Bradford)、Anal. Biochem. 72:248(1976)に記載の方法で測定される。比較手段として、pTTQ19-T5-2にコードされた天然の野生型T5-DNAポリメラーゼ(DNAP)すなわちT5-DNAPは、約10ユニット/mg タンパク質の比活性を示し、一方でpTTQ19-T5-2(Exo-)にコードされたDNAポリメラーゼ(米国特許第5,270,179号)は、約0.0001 ユニット/mg タンパク質の比活性、または非修飾型酵素の比活性の0.001%、105倍の低下を示す。「5'→3'エキソヌクレアーゼ活性」も当技術分野で周知の酵素活性である。この活性は、大腸菌のPolIおよびTaq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼと関連する場合が多い。「5'→3'エキソヌクレアーゼ活性が実質的に低下したポリメラーゼ」とは、本明細書で(1)対応する非変異型の野生型酵素の5'→3'エキソヌクレアーゼ活性の約10%もしくは10%未満、または好ましくは約1%もしくは1%未満の変異型ポリメラーゼもしくは修飾型ポリメラーゼ、または(2)約1ユニット/mg タンパク質未満、または好ましくは約0.1ユニット/mg タンパク質もしくは約0.1ユニット/mg タンパク質未満の5'→3'エキソヌクレアーゼの比活性を有するポリメラーゼのいずれかとして定義される。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性も5'→3'エキソヌクレアーゼ活性も配列決定用ゲル上で観察可能である。活性のある5'→3'エキソヌクレアーゼ活性は、延長中のプライマーの5'端からヌクレオチドを除去することにより、配列決定用ゲル上に非特異的なラダーを生じる。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性は、配列決定用ゲル中における放射標識プライマーの分解を追跡することで測定可能である。したがって例えば野生型と変異体、または修飾型ポリメラーゼの比較による、これらの活性の相対量は、常用の実験法で決定することができる。
【0095】
本発明に使用される核酸ポリメラーゼは中温性または好熱性であり、好ましくは好熱性である。好ましい中温性DNAポリメラーゼには、T7 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウ断片DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIIIなどがある。本発明に使用可能な好ましい耐熱性DNAポリメラーゼには、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffel断片、VENT(登録商標)、およびDEEPVENT(登録商標)DNAポリメラーゼ、ならびにこれらの変異体、変種、および誘導体がある(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,188号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;米国特許第6,015,668号;米国特許第5,939,301号;米国特許第5,948,614号;米国特許第5,912,155号;国際公開公報第97/09451号;国際公開公報第98/35060号;国際公開公報第92/06188号;国際公開公報第92/06200号;国際公開公報第96/10640号;Barnes, W.M.、Gene 112:29-35(1992);Lawyer, F.C.ら、PCR Meth. Appl. 2:275-287(1993);Flaman, J.-Mら、Nucl. Acids Res. 22(15):3259-3260(1994))。長い核酸分子(例えば約3 Kb〜5 Kbより長い核酸分子)の増幅には、少なくとも2つのDNAポリメラーゼ(1つは実質的に3'エキソヌクレアーゼ活性を欠き、もう1つは3'エキソヌクレアーゼ活性を有する)が通常使用される。これについては参照として全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Barnes, W.M.、Gene 112:29-35(1992)を参照されたい。3'エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くDNAポリメラーゼの例には、Taq、Tne(exo-)、Tma(exo-)、Pfu(exo-)、Pwo(exo-)、およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにこれらの変異体、変種、および誘導体があるがこれらに限定されない。
【0096】
本発明に使用されるDNAポリメラーゼは、例えばInvitrogen Corporation(Life Technologies Division)(Rockville、 MD)、Pharmacia(Piscataway、NJ)、Sigma(St. Louis、MO)およびBoehringer Mannheim Biochemicalsから市販品を入手することができる。本発明に使用される好ましいDNAポリメラーゼには、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)製のTsp DNAポリメラーゼが含まれる。
【0097】
本発明の組成物、方法、およびキットに使用される酵素には、逆転写酵素活性を有する任意の酵素が含まれる。このような酵素には、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、B型肝炎ウイルス逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルス逆転写酵素、細菌逆転写酵素、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ(Saiki, R.K.ら、Science 239:487-491(1988);米国特許第4,889,818号および第4,965,188号)、Tne DNAポリメラーゼ(国際公開公報第96/10640号)、Tma DNAポリメラーゼ(米国特許第5,374,553号)、ならびにこれらの変異体、断片、変種、もしくは誘導体が含まれるがこれらに限定されない(例えば参照として全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,948,614号および第6,015,668号を参照)。当業者であれば理解するように、修飾型逆転写酵素、およびRT活性を有するDNAポリメラーゼは、当技術分野で周知の組換え技術、または遺伝子工学的手法で得られる。変異体逆転写酵素またはポリメラーゼは例えば、対象となる逆転写酵素もしくはポリメラーゼをコードする遺伝子もしくは遺伝子群に、部位特異的変異誘発法またはランダム変異誘発法で変異を導入することで入手できる。このような変異は、点突然変異、欠失変異、および挿入変異を含む場合がある。好ましくは、1つまたは複数の点突然変異(例えば1つもしくは複数の異なるアミノ酸と1つまたは複数のアミノ酸の置換)が、本発明に使用される変異体逆転写酵素またはポリメラーゼを構築する際に使用される。逆転写酵素またはポリメラーゼの断片は、当技術分野で周知の組換え技術により、または任意の多くの、よく知られたタンパク質分解酵素を用いた、対象となる逆転写酵素もしくはポリメラーゼの酵素的切断により、欠失変異によって入手することができる。
【0098】
本発明に使用される好ましい酵素には、RNase H活性が低下されているか、または実質的に低下されている酵素が含まれる。RNase H活性が低下されているか、または実質的に低下されているこのような酵素は、対象となる逆転写酵素内部のRNase H ドメインに変異を導入することで、好ましくは1つもしくは複数の点突然変異、1つもしくは複数の欠失変異、および/または1つもしくは複数の挿入変異を上述の手順で導入することで入手可能である。「RNase H活性が実質的に低下した」という表現は、酵素の活性が、対応する野生型RNase H活性、または野生型のモロニーマウス白血病ウイルス(M-MLV)、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)逆転写酵素などのRNase H+酵素の約30%未満、約25%未満、約20%未満、より好ましくは約15%未満、約10%未満、約7.5%未満、または約5%未満、また最も好ましくは約5%未満、もしくは約2%未満であることを意味する。任意の酵素のRNase H活性は、参照として全体が本明細書に組み入れられる例えば米国特許第5,244,797号、Kotewicz, M.L.ら、Nucl. Acids Res. 16:265(1988)、Gerard, G.F.ら、FOCUS 14(5):91(1992)、および米国特許第5,668,005号および第6,063,608号に記載の方法などのさまざまなアッセイ法で決定することができる。
【0099】
本発明に使用される逆転写酵素活性を有するポリペプチドは例えば、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)(Rockville、Maryland)、Pharmacia(Piscataway、New Jersey)、Sigma(Saint Louis、Missouri)、またはBoehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis、Indiana)から市販されている。あるいは、逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、当業者に周知の天然タンパク質を単離および精製する標準的な手順(例えばHouts, G.E.ら、J. Virol. 29:517(1979)を参照)にしたがって、天然のウイルスもしくは細菌の供給源から単離することができる。また逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、当業者によく知られる組換えDNA技術で調製することができる(例えばKotewicz, M.L.ら、Nucl. Acids Res. 16:265(1988);Soltis, D.A.およびSkalka, A.M.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3372-3376(1988)を参照)。
【0100】
本発明に使用される逆転写酵素活性を有する好ましいポリペプチドは、M-MLV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、ラウス関連ウイルス(RAV)逆転写酵素、骨髄芽球症関連ウイルス(MAV)逆転写酵素、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)逆転写酵素、および国際公開公報第98/47921号に記載の他逆転写酵素、ならびにこれらの誘導体、変種、断片、または変異体、およびこれらの組み合わせを含む。さらに好ましい態様では、逆転写酵素はRNase H活性が低下されるか、または実質的に低下されており、また最も好ましくは、M-MLV H-逆転写酵素、RSV H-逆転写酵素、AMV H-逆転写酵素、RAV H-逆転写酵素、MAV H-逆転写酵素、およびHIV H-逆転写酵素、ならびにこれらの誘導体、変種、断片、および変異体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される。特に対象となる逆転写酵素には、RNase H活性が低下または実質的に低下したAMV RTおよびM-MLV RT、またより好ましくはAMV RTおよびM-MLV RT(好ましくは、AMV RT αH-/BH+およびM-MLV RT H-)が含まれる。本明細書で使用される最も好ましい逆転写酵素には、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)から入手可能なSuperscript(商標)、Superscript(商標)II、ThermoScript(商標)、およびThermoScript(商標)IIが含まれる。これについては一般に参照として全体が本明細書に組み入れられる国際公開公報第98/47921号および米国特許第5,244,797号、第5,668,005号、ならびに6,063,608号を参照されたい。
【0101】
ヘアピン:
本明細書で用いる「ヘアピン」という表現は、オリゴヌクレオチドの1つまたは複数の部分が、オリゴヌクレオチドの1つまたは複数の他の部分と塩基対を形成するオリゴヌクレオチドの構造を示す表現として使用される。2つの部分が塩基対を形成してオリゴヌクレオチドの二本鎖部分を形成する場合、二本鎖部分はステムと呼ばれる。したがって、使用される相補的な部分の数に応じて、いくつかのステム(好ましくは約1本〜約10本)が形成される場合がある。
【0102】
いくつかの好ましい態様では、本発明のプライマーは、ヘアピン構造をとるように修飾可能である。これは、1個もしくは複数の塩基をオリゴヌクレオチドの5'末端に付加することで達成することができる(塩基はオリゴヌクレオチドの3'末端で塩基と相補的になるように選択される)。いくつかの好ましい態様では、少なくとも1個〜約20個の連続するヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの3'端に存在する少なくとも1個〜20個の連続するヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドの5'端に付加される。好ましい態様では、1個〜約10個のヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの5'端に付加されるが、これらのヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3'端に存在する少なくとも1個〜約10個の連続ヌクレオチドと相補的になるように選択される。別の好ましい態様では、1個〜約5個のヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの5'端に付加されるが、これらのヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3'端に存在する少なくとも1個〜約5個の連続ヌクレオチドと相補的になるように選択される。
【0103】
また、1本または複数のステムの形成は好ましくは、ヘアピン分子中における1つまたは複数のループ構造の形成を可能とする。1つの局面では、任意の1つまたは複数のループ構造は、ループもしくは複数のループ内の1か所または複数の部位で切断されたりニックが入ったりする場合があるが、好ましくは少なくとも1つのループはこのように切断されなかったりニックが入らなかったりする。オリゴヌクレオチドの配列は、塩基対を形成して、約3個〜約100個もしくはこれ以上のヌクレオチド、約3個〜約50個のヌクレオチド、約3個〜約25個のヌクレオチド、また約3個〜約10個のヌクレオチドからステムを形成するヌクレオチドの数が変化するように選択することができる。またオリゴヌクレオチドの配列は、0個〜約100個もしくはこれ以上のヌクレオチド、0個〜約50個のヌクレオチド、0個〜約25個のヌクレオチド、または0個〜約10個のヌクレオチドから塩基対を形成しないヌクレオチドの数を変化するように変化させることができる。塩基対を形成するオリゴヌクレオチドの2つの部分は、オリゴヌクレオチド配列中の任意の位置に、または任意の数の位置に配置することができる。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの1つの塩基対形成部分はオリゴヌクレオチドの3'末端を含む場合がある。いくつかの態様では、1つの塩基対形成部分はオリゴヌクレオチドの5'末端を含む場合がある。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの1つの塩基対形成部分は3'末端を含む場合があり、別の塩基対形成部分は5'末端を含む場合があり、また塩基対が形成される場合は、オリゴヌクレオチドのステムは平滑末端となる。他の態様では、オリゴヌクレオチドの塩基対形成部分の位置は、3'突出および/または5'-突出を形成するように選択することが可能であり、および/または最も3'側のヌクレオチドも最も5'側のヌクレオチドも塩基対形成に関与しないように選択することが可能である。
【0104】
オリゴヌクレオチドプライマーのヘアピンは、例えばオリゴヌクレオチドの3'端に相補的なプライマー配列の5'端に塩基を付加することで構築される場合がある。典型的には、5'端に付加される塩基の数は、オリゴヌクレオチドがアニーリング温度以下の温度でヘアピンを形成するように、またアニーリング温度またはその近傍で直鎖状となるように選択される。当業者であれば、プライマーが直鎖状となる温度を制御するようにプライマーの5'端に付加されるヌクレオチド数を容易に決定することができる。本発明のオリゴヌクレオチドがアニーリング温度で全体的に直鎖状に変換される必要はなく;当業者であれば、本発明のオリゴヌクレオチドが、可逆的に溶解して自己再アニーリング(すなわちブリージング)する能力をもつ場合があることを理解すると思われる。本発明のオリゴヌクレオチドの配列が、十分な数のオリゴヌクレオチドがアニーリング温度において伸長や増幅などの開始に利用できるように選択される限りは、配列は、オリゴヌクレオチドの一部がアニーリング温度でヘアピン状で残るか否かにかかわらず本発明における使用に適している。付加することができるヌクレオチド数は、約3個〜約25個のヌクレオチド、もしくは約3個〜約20個のヌクレオチド、もしくは約3個〜約15個のヌクレオチド、もしくは約3個〜約10個のヌクレオチド、または約3個〜約7個のヌクレオチドでありうる。いくつかの好ましい態様では、約5個〜約8個のヌクレオチドが、本発明のヘアピン状のオリゴヌクレオチドを形成させることを目的としてプライマーオリゴヌクレオチドの5'端に添加される場合がある。
【0105】
ハイブリダイゼーション:
本明細書で用いる「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリッドを形成する」という表現は、2本の相補的な一本鎖の核酸分子(RNAおよび/またはDNA)が対を形成して二本鎖分子を形成することを意味する。本明細書で用いられる2つの核酸分子はハイブリッドを形成する場合があるが、塩基対形成は完全に相補的というわけではない。したがって、誤対合を含む塩基は、当技術分野で周知の適切な条件を用いることが可能であれば2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨げない。
【0106】
取込み:
本明細書で用いる「取込み」という表現は、DNA分子もしくはRNA分子、またはプライマーの一部となることを意味する。
【0107】
ヌクレオチド:
本明細書で用いる「ヌクレオチド」という用語は、塩基-糖-リン酸の組み合わせを意味する。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)の単量体のユニットである。ヌクレオチドという用語は、一リン酸、二リン酸、および三リン酸の状態のデオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシド、ならびにこれらの誘導体を含む。ヌクレオチドという用語は特に、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPなどのデオキシリボヌクレオシド三リン酸、またはこれらの誘導体を含む。このような誘導体は例えば、[αS]dATP、7-デアザ-dGTP、および7-デアザ-dATPを含む。本明細書に用いられるヌクレオチドという用語は、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)、およびこの誘導体も意味する。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の説明目的の例には、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、およびddTTPが含まれるがこれらに限定されない。本発明の「ヌクレオチド」は標識されていない場合があるほか、既知の手法で検出目的で標識することができる。検出用標識には例えば、放射性同位元素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および酵素標識が含まれる。
【0108】
オリゴヌクレオチド:
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」という用語は、共有結合で連結されたヌクレオチドの配列、またはこれらの誘導体を含む合成分子、または生物学的に作られた分子を意味する。このようなヌクレオチドは、1つのヌクレオチドのペントースの3'位または5'位と、例えば隣接するヌクレオチドのペントースの5'位または3'位の間においてホスホジエステル結合で連結される場合がある。結合は3'位と5'位の間で、また他の任意の少なくとも2つの位置の間で生じる場合もある。
【0109】
本明細書で用いるオリゴヌクレオチドは、天然の核酸分子(すなわちDNAおよびRNA)、ならびにペプチド核酸、核酸を含むホスホチオエート、核酸を含むホスホネートなどの非天然分子もしくは誘導体分子を含む。1つの態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは5個〜100個のヌクレオチド(例えば5個〜10個、15個〜20個、25個〜30個、35個〜40個、45個〜50個、55個〜60個、65個〜70個、75個〜80個、85個〜90個、95個〜100個などのヌクレオチド)、好ましくは6ヌクレオチドを含む場合がある。また本発明のオリゴヌクレオチドは、後述する修飾型または非天然の糖残基(すなわちアラビノース)、および/または修飾型の塩基残基を含む場合がある。オリゴヌクレオチドは、さまざまな天然のヌクレオチド、誘導体ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾型ヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含む核酸分子などの誘導体分子を含む。このような修飾には、2'-O-アルキル基(具体的には2'-O-メチル基)をオリゴヌクレオチドに付加すること、オリゴヌクレオチド間に5'-5'ホスホジエステル結合を作ること、またC3-アミノ、C6-アミノ、またはビオチンをオリゴヌクレオチドに付加することが含まれるがこれらに限定されない。したがって、本発明の方法に有用な任意のオリゴヌクレオチドまたは他の分子(例えばプライマーまたはオリゴヌクレオチドプライマー)は、この定義の対象となる。本発明のオリゴヌクレオチドは、分子と特定のタンパク質、酵素、または基質間の相互作用を妨げるブロッキング用の官能基を含む場合もある。
【0110】
プライマー:
本明細書で用いる「プライマー」という用語は、核酸分子の増幅または重合化中におけるヌクレオチド単量体の共有結合によって伸長される、合成的に作られた、または生物学的に作られた一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。核酸の増幅は、核酸ポリメラーゼまたは逆転写酵素による核酸の合成を元にする場合が多い。このようなポリメラーゼまたは逆転写酵素の多くは、伸長されて核酸合成を開始することができるプライマーの存在を必要とする。プライマーは通常11塩基またはこれ以上であり;最も好ましくはプライマーは17塩基またはこれ以上であるが、より短いプライマーまたは、より長いプライマーを必要に応じて使用することができる。当業者であれば理解するように、本発明のオリゴヌクレオチドは、さまざまな伸長、合成、または増幅の反応における1本またはこれ以上のプライマーとして使用することができる。
【0111】
プローブ:
本明細書で用いる「プローブ」という用語は、デザインまたは選択により、特定のストリンジェンシーの下で、特異的に(すなわち選択的に)標的核酸配列とのハイブリッドの形成を可能とする特定のヌクレオチド配列を含む、合成的に作られた、または生物学的に作られた核酸(DNAまたはRNA)を意味する。当業者であれば理解するように、本発明のオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のプローブとして使用することが可能であり、また好ましくは、核酸分子の検出用もしくは定量用のプローブとして使用することができる。
【0112】
実質的に伸長能が弱い:
本明細書で用いる「実質的に伸長能が弱い」という表現は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型分子の対応する塩基と相補的でない場合に、伸長反応および/または増幅反応で非効率的に伸長されるか、または伸長されないオリゴヌクレオチドの特性を示す際に使用される。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド上に特異性増強官能基が存在する結果、実質的に伸長能が弱い。この場合オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが伸長されない場合に、または特異性増強官能基を欠くがそれ以外の構造は同一なオリゴヌクレオチドと比較して少量および/または低速で伸長される場合に、実質的に伸長能が弱い。当業者は、あるオリゴヌクレオチドが、特異性増強官能基を含むオリゴヌクレオチドを用いて伸長反応を行い、その伸長を、同じ構造であるが、特異性増強官能基を欠くオリゴヌクレオチドの伸長と比較することで、実質的に伸長能が弱いか否かを容易に決定することができる。伸長条件(例えば溶解の温度および時間、アニーリングの温度および時間、伸長の温度および時間、反応物濃度など)が同じ場合は、実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが、標的/鋳型分子上の対応するヌクレオチドと相補的でない場合に、特異性増強官能基を欠くがそれ以外は構造が同一なオリゴヌクレオチドによって作られるものと比較して伸長能が弱い産物を生じる。あるいは当業者であれば、あるオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つが1つまたは複数の特異性増強官能基を含む第1のセットのオリゴヌクレオチドと、特異性増強官能基を欠くがそれ以外は第1のセットのオリゴヌクレオチドの構造と同一な第2のセットのオリゴヌクレオチドを用いて対立遺伝子特異的PCRを実施することにより、実質的に伸長能が弱いか否かを判定することができる。次に判定は、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを用いて作られる産物の量、および/または産物が作られる速度が、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドに相補的でない3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを用いて作られる産物の量、および/または産物が作られる速度に対して差のある各セットのプライマーを対象に分けて行われる。実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドで、3'相補的オリゴヌクレオチドと3'非相補的オリゴヌクレオチドの間において、作られる産物の量、および/または産物が作られる速度に、より大きな差がみられる。好ましくは、特異性増強官能基を含むオリゴヌクレオチドを用いて作られる産物の量、および/または産物が作られる速度の差は、特異性増強官能基を欠くプライマーを用いて得られる差の約1.1倍〜約1000倍大きい範囲、または約1.1倍〜約500倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約250倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約100倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約50倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約25倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約10倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約5倍大きい範囲、または1.1倍〜約2倍大きい範囲にある。産物の量は例えば、産物をアガロースゲルに流し、臭化エチジウムで染色し、同様に処理された既知量の核酸標準と比較する方法などの、当業者に周知の任意の方法で決定することができる。産物の量は、対立遺伝子特異的PCRの任意の簡便な時点において決定することができる。産物の形成速度を比較する1つの簡便な方法では、PCRで特定の量の産物の形成に必要なサイクル数を比較する。決定は、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドで任意の量の産物を得るために必要なサイクル数と、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドと相補的でない3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドで同じ量の産物を得るために必要なサイクル数との間に差のある各セットのプライマーに対して分けて行われる。実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドでは、3'相補的オリゴヌクレオチドと3'非相補的オリゴヌクレオチド間において、特定の量の産物を産生するために必要なサイクル数に、より大きな差がみられる。作られる産物の量は例えば、リアルタイム蛍光検出用に改造したサーモサイクラーを用いて標識産物の蛍光強度を決定する手順などの、当業者に周知の任意の手順で決定することができる。好ましくは、特異性増強官能基を含むオリゴヌクレオチドを用いて特定の量の産物を得るために必要なサイクル数の差は、特異性増強官能基を欠くプライマーを用いて得られる差より約1.05倍〜約100倍大きい範囲か、または約1.05倍〜約50倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約25倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約10倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約5倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約2.5倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約1.5倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約1.2倍大きい範囲にある。
【0113】
支持体:
本明細書で用いる「支持体」という用語は、本発明のオリゴヌクレオチド、または標的/鋳型核酸配列の結合に適した任意の材料またはマトリックスでありうる。このようなオリゴヌクレオチドおよび/または配列は、当技術分野で周知の任意の手法、または手法の任意の組み合わせにより、本発明の支持体に付加したり、(共有結合または非共有結合で)結合したりすることができる。本発明の支持体は、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、シリコン、ポリスチレン(マイクロタイタープレートを含む)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、セファロース(登録商標)、寒天、デンプン、ナイロン、または核酸の固定化を可能とする任意の他の材料を含む場合がある。本発明の支持体は、平面、ビーズ、フィルター、膜、シート、フリット、プラグ、カラム、微粒子、ファイバー(例えば光ファイバー)などを含むがこれらに限定されない任意の形状または構造をとりうる。固相支持体は、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、および384ウェルプレートなどのマルチウェルチューブ(マイクロタイタープレートなど)を含む場合もある。好ましいビーズは、ガラス、ラテックス、または磁性材料(磁性ビーズ、常磁性ビーズ、または超常磁性ビーズ)から作られる。固相支持体を使用する場合は、標識されたオリゴヌクレオチドを固定化するか、または溶液に添加する場合がある(後者の場合、検出混合物の他の成分が固定化される)。
【0114】
任意の数の異なる配列を、任意の数の異なる領域中の支持体上に固定化して、核酸標的配列を含むがこれらに限定されない1つもしくは複数の配列を検出することができる。
【0115】
好ましい局面では、本発明の方法は、核酸分子(RNAまたはDNA)のアレイとともに使用することができる。核酸鋳型/標的のアレイ、または本発明のオリゴヌクレオチドのアレイはいずれも本発明の方法の対象となる。これらのアレイは、マイクロプレート、スライドガラス、または標準的なブロット用メンブレン上に形成可能であり、またアレイのフォーマットおよびデザインに応じてマイクロアレイまたは遺伝子チップを参照することができる。このようなアレイの用途には、遺伝子の発見、遺伝子発現プロファイリング、およびジェノタイピング(SNP解析、薬理ゲノム科学、およびトキシコジェネティクス)が含まれる。
【0116】
核酸アレイの合成および用途、また一般には支持体への核酸の結合法については文献に記載されている(例えば米国特許第5,436,327号、米国特許第5,800,992号、米国特許第5,445,934号、米国特許第5,763,170号、米国特許第5,599,695号、および米国特許第5,837,832号を参照)。さまざまな試薬を、基質上の、位置的に決定された部位に結合させる自動プロセスについては米国特許第5,143,854号、および米国特許第5,252,743号に記載されている。
【0117】
本質的には、任意の考えうる支持体を本発明に使用することができる。支持体は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、チューブ、粒子、容器、キャピラリ、パッド、切片、フィルム、プレート、スライドなどとして存在する生物的、非生物的、有機的、無機的な支持体、またはこれらの任意の組み合わせでありうる。支持体は、円盤形、正方形、球形、円形などの任意の利便性を考慮した形状でありうる。支持体は好ましくは平面であるが、さまざまな代替的な表面構造をとりうる。例えば支持体は、本発明の1つまたは複数の方法を実施可能な凸部領域または凹部領域を含む場合がある。支持体およびその表面は好ましくは、本明細書に記載の反応を実施可能な堅牢な支持体を形成する。支持体およびその表面は、適切な光吸収特性を提供するように選択される場合もある。例えば支持体は、重合化されたラングミュアーブロジェット膜、機能付与ガラス(functionalized glass)、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SIN4、修飾シリコンであるほか、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはこれらの組み合わせなどのさまざまな任意のゲルもしくは重合体の1つである。他の支持体材料は、本明細書を読むことで当業者に容易に明らかになる。好ましい態様では、支持体は平面ガラスまたは単結晶シリコンである。
【0118】
標的分子:
本明細書で用いる「標的分子」という表現は、特定のプライマーまたはプローブが選択的にハイブリッドを形成可能な核酸分子を意味する。
【0119】
標的配列:
本明細書で用いる「標的配列」という表現は、特定のプライマーまたはプローブが選択的にハイブリッドを形成可能な、標的分子中の核酸配列を意味する。
【0120】
鋳型:
本明細書で用いる「鋳型」という用語は、増幅される、合成される、または配列決定される二本鎖分子または一本鎖分子を意味する。二本鎖DNA分子の場合、第1および第2の鎖を形成するために鎖の変性を好ましくは実施して、これらの分子の増幅、配列決定、または合成を行う。鋳型の一部に相補的なプライマーは適切な条件下でハイブリッドを形成し、またポリメラーゼ(DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)が次に、鋳型またはその一部に相補的な核酸分子を合成することができる。本発明により新しく合成された分子は元の鋳型と比較して長さが等しいか、または短い。新しく合成された分子の合成中または伸長中における誤対合の取込みは、1つもしくは複数の誤対合のある塩基対を生じる場合がある。したがって合成された分子は、鋳型に正確に相補的である必要はない。鋳型は、RNA分子、DNA分子、またはRNA/DNAハイブリッド分子でありうる。新しく合成された分子は、その後の核酸の合成または増幅の鋳型として機能する場合がある。
【0121】
耐熱性:
本明細書で用いる「耐熱性」という表現は、熱による不活性化に対して耐性をもつポリメラーゼ(RNA、DNA、またはRT)を意味する。DNAポリメラーゼは、プライマーを5'→3'方向に伸長することで一本鎖DNA鋳型に相補的なDNA分子の構造物を合成する。中温性DNAポリメラーゼのこの活性は、加熱処理して不活性化することができる。例えばT5 DNAポリメラーゼの活性は、同酵素を90℃の温度に30秒間曝露することで完全に不活性化される。本明細書で用いる耐熱性DNAポリメラーゼの活性は、中温性DNAポリメラーゼと比較して、熱による不活性化に対する耐性が大きい。しかし耐熱性DNAポリメラーゼは、加熱による不活性化に完全に耐性をもつ酵素を意味しないので、加熱処理は、DNAポリメラーゼ活性をある程度に低下させる場合がある。耐熱性DNAポリメラーゼは通常、中温性DNAポリメラーゼより高い最適温度をもつ。
【0122】
ベクター:
本明細書で用いるベクターは、インビトロで、または宿主細胞内で複製可能な、または複製されうるDNAであるほか、挿入された遺伝子に有用な生物学的特性または生化学的特性を提供するDNAである。例には、プラスミド、ファージ、および他のDNA配列などが含まれる。ベクターは、DNA配列が、ベクターの本質的な生物学的機能を失うことなく決定可能な様式で切断可能で、複製およびクローニングを実施するために、内部にDNA断片がスプライスされうる1か所もしくは複数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有する。ベクターは例えば、PCR、転写、および/または翻訳を開始するためのプライマー認識部位、および/または調節部位、組換えシグナル、レプリコン、選択可能なマーカーなどをさらに提供する場合がある。クローニングベクターは、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定における用途に適した選択可能なマーカーをさらに含む場合がある。原核細胞および真核細胞を含む、任意の数の宿主は、本発明を実施するために使用することができる。使用可能な宿主細胞は当技術分野で周知の細胞である。
【0123】
本明細書で用いる、組換えDNA技術、ならびに分子生物学および細胞生物学の分野で使用される他の表現は、応用可能な分野の当業者によって一般に理解される。
【0124】
オリゴヌクレオチド:
本発明のオリゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNA、またはこれらのキメラ混合物もしくは誘導体、または修飾型でありうる。検出可能な成分で標識されたもののほかに、本発明のオリゴヌクレオチドは、塩基成分、糖成分、またはリン酸主鎖において修飾可能であり、また他の付加的な官能基または標識を含む場合がある。また本発明に使用されるオリゴヌクレオチドは、任意の適切な大きさをとることが可能であり、また好ましくは10個〜100個のヌクレオチド範囲、または10個〜80個のヌクレオチド範囲、より好ましくは11個〜40個のヌクレオチド範囲、また最も好ましくは17個〜25個のヌクレオチド範囲であるが、オリゴヌクレオチドは必要に応じて長くも短くもすることができる。
【0125】
本発明のオリゴヌクレオチドは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノ-メチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルケオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチル-リノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルケオシン、5'-メトキシカルボキシ-メチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチル-チオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンからなる群より選択されるがこれらに限定されない少なくとも1つもしくは複数の修飾型塩基成分を含む場合がある。
【0126】
別の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、ヘキソース、ならびにグルコース、マンノース、ガラクトース、グルコース、アロース、アルトロース、イドース、およびタロースを含むがこれらに限定されないグリコピラノシル基からなる群より選択されるがこれらに限定されない少なくとも1つの修飾型、もしくは非修飾型の糖成分を含む。フラノシル構造の例には、フルクトース、アラビノース、またはキシロースに由来する構造が含まれるがこれらに限定されない。
【0127】
さらに別の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミドチオエート、ホスホラミデート、ホスホジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルマセタル(formacetal)、またはこれらの類似体からなる群より選択される少なくとも1つの修飾型リン酸主鎖を含む。
【0128】
また、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド誘導体、またはヌクレオチド類似体を含む。このような誘導体の例には、デオキシイノシン残基、チオヌクレオチド、ペプチド核酸などが含まれるがこれらに限定されない。
【0129】
本発明の実施に使用可能な修飾型オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の他の例は、以下の化学式で表される:
【化3】
式中、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、C(R8R9)、-N(R10R11)、NR10、P(O2)、またはP(O)-O-R12であり;
Uは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、C(R8)、またはNR10であり;
R1は、ヘテロアリール、ヘテロ環、またはアリールであり;好ましくはR1はヘテロアリール基、例えばアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、およびチミン、ならびにこれらの類似体および誘導体などの核酸塩基であり;
R2、R3、R5、R8、R9は独立に、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸エステル、ヒドロキシ酸エステル、ペプチド、糖残基、ヒドロキシ、アミノ、またはチオであり;
各R4は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、チオ、核酸分子、または修飾型核酸分子であり;
R6は、R2(UがCR8の場合)、または水素、アルキル、アリール、カルボキサミド、アミノ酸アミド、ヒドロキシ酸アミド、ペプチド、もしくは糖残基(UがNR10の場合)の任意の1つであり、またはR6は、Uが-O-、-S-、-SO-、-SO2-、または-Se-の場合には存在せず;
R7は、水素、三リン酸、二リン酸、一リン酸、核酸分子、または修飾型核酸分子であり;
R1OおよびR12は独立に、アルキル、アリール、カルボキサミド、アミノ酸エステルもしくはアミド、ヒドロキシ酸エステルもしくはアミド、ペプチド、または糖残基であり;かつ
R11は、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、または糖残基であり;
R4およびR7の少なくとも1つは、核酸分子もしくは修飾型核酸分子であり、また上記の構造は例えば核酸分子または修飾型核酸分子の糖成分に結合される。
【0130】
このようなヌクレオチド類似体は当業者に周知の方法で調製することができる。例えば5-[6-アミノヘキシル-3-アクリルアミド]-2'-デオキシウリジンを含む合成オリゴデオキシヌクレオチドは、ホスホラミダイト法、および適切なホスホラミダイトを用いて調製される。このようなオリゴデオキシヌクレオチドは、pH 8.5の0.1 Mのホウ酸ナトリウム緩衝液中に溶解する。30倍過剰の蛍光色素のN-ヒドロキシスクシニミドエステルを含む溶液はジメチルスルホキシド中に溶解し、この溶液をオリゴデオキシヌクレオチドに添加する。この反応を1時間かけて進ませる。過剰な色素は沈殿させて除き、また修飾型オリゴデオキシヌクレオチドは、ゲル濾過、ポリスチレンカートリッジ、またはHPLCで精製する。この手順で使用される色素のリストには以下の化合物が含まれるがこれらに限定されない:5-ROX、6-ROX、フルオレセイン(5+6の異性体混合物、ならびに純粋な5の異性体および純粋な6の異性体)、TAMRA、Texas Red、Tet、Hex、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、BODIPY 650、LaJolla Blue、およびJOE。
【0131】
有用なアルキル基は、直鎖状、および分枝状のC1-18アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-5アルキル基を含むがこれらに限定されない。典型的なC1-18アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、およびオクタデシル基を含むがこれらに限定されない。
【0132】
有用なアリール基は、C6-14アリール、特にC6-10アリールを含むがこれらに限定されない。典型的なC6-14アリール基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基(biphenylenyl)、およびフルオレニル基を含むがこれらに限定されない。
【0133】
有用なアルコキシ基は、上述のC1-10アルキル基の1つによる酸素置換を含むがこれらに限定されない。
【0134】
有用なアルキルチオ基は、上述のC1-10アルキル基の1つによる硫黄置換を含むがこれらに限定されない。
【0135】
有用なアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基は、-NHR13および-NR14R15(R13-R15は独立にC1-10アルキル基)を含むがこれらに限定されない。
【0136】
有用な飽和した、または部分的に飽和したヘテロ環基は、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピペリジニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、テトロノイル基、およびテトラモイル基を含むがこれらに限定されない。
【0137】
有用なヘテロアリール基は、以下の1つを含むがこれらに限定されない:チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル(thianthrenyl)、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチイニル(pnenoxanthiinyl)、2H-ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタルジニル、ナフチリジニル、キノザリニル、チノリニル(cinnolinyl)、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナンスリジニル、アクリンジニル(acrindinyl)、ペリミジニル、フェナンスロリニル(phenanthrolinyl)、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル、1,4-ジヒドロキノキサリン-2,3-ジオン、7-アミノイソクマリン、ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、1,2-ベンゾイソキサゾル-3-イル、ベンズイミダゾリル、2-オキシンドリル(oxindolyl)、および2-オキソベンズイミダゾリル。ヘテロアリール基が環内に窒素原子を含む場合、このような窒素原子は、N-オキシド、例えばピリジル N-オキシド、ピラジニルN-オキシド、ピリミジニル N-オキシドなどの状態でありうる。
【0138】
アミノ酸は、任意の天然アミノ酸、ならびに非天然アミノ酸を含むがこれらに限定されない。アミノ酸の例には、チロシン、グリシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、セリン、イソロイシン、ロイシン、スレオニン、バリン、プロリン、リシン、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸、トリプトファン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、およびシステインが含まれるがこれらに限定されない。.
【0139】
ペプチドの例には、約2個〜約50個のアミノ酸を含むペプチドが含まれるがこれらに限定されない。
【0140】
ヒドロキシ酸は、アルキル基がヒドロキシ基で置換された任意のアルキルカルボン酸を含むがこれらに限定されない。このようなヒドロキシ酸は、約2個〜約50個の炭素原子、好ましくは約2個〜約6個の炭素原子を含む場合があり、またグリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸などを含むがこれらに限定されない。
【0141】
このような核酸分子は、DNA、RNA、およびホスホロチオエート、タンパク質核酸(PNA)、およびロックドヌクレオシド類似体(LNA)などの修飾型核酸分子でありうる。このような修飾は、核酸分子の3'末端および/または5'末端、またはその近傍、および/または核酸分子の内部に存在する場合がある。
【0142】
核酸分子の既知の修飾には多くの種類がある。これについては例えば米国特許第6,160,109号、第6,153,737号、第6,153,599号、第5,147,200号、第6,146,829号、第6,133,444号、第6,133,438号、第6,127,533号、第6,114,519号、第6,114,513号、第6,111,085号、第6,093,807号、第6,063,569号、第6,043,352号、第6,025,482号、第6,005,087号、第6,001,841号、第5,998,603号、第5,998,419号、第5,969,118号、第5,965,721号、第5,955,600号、第5,914,396号、第5,866,691号、第5,859,232号、第5,859,221号、第5,856,466号、第5,808,023号、第5,736,336号、第5,717,083号、第5,714,331号、第5,705,621号、第5,700,922号、第5,654,284号、第5,646,265号、第5,644,048号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,596,091号、第5,506,212号、第5,521,302号、第5,541,307号、第5,543,507号、第5,519,134号、および第5,554,746号、ならびに国際公開公報第99/14226号(LNA)、国際公開公報第96/35706号、国際公開公報第96/32474号、国際公開公報第96/29337号(チオノ(thiono)トリエステル修飾アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドホスホロチオエート)、国際公開公報第94/17093号(オリゴヌクレオチドアルキルホスホネートおよびアルキルホスホチオエート)、国際公開公報第94/08004号(オリゴヌクレオチドホスホチオエート、メチルリン酸、ホスホラミデート、ジチオエート、架橋(bridged)ホスホロチオエート、架橋ホスホラミデート、スルホン、硫酸塩、ケト体、リン酸エステル、およびホスホロブチルアミン(van der Krolら、Biotech 6:958-976(1988);Uhlmannら、Chem. Rev. 90:542-585(1990))、国際公開公報第94/02499号(オリゴヌクレオチドアルキルホスホノチオエートおよびアリールホスホノチオエート)、ならびに国際公開公報第92/20697号(3'端がキャップされたオリゴヌクレオチド)を参照されたい。
【0143】
本発明の修飾型オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド内の1つまたは複数の位置に、および/または3'末端および/または5'末端、もしくはその近傍に1つまたは複数の修飾を有する場合がある。1つの態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの2個中1個、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの5個中1個、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの10個中1個、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの15個中1個、または最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの20個中1個を修飾可能である。特定の態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、3'末端もしくは5'末端から2番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から3番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から4番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から6番目の塩基において、または3'末端もしくは5'末端から最長20番目の塩基までにおいて修飾可能である。
【0144】
本発明のオリゴヌクレオチドは、固相支持体上に固定化することができる。(本発明の方法で)クエンチされた標識オリゴヌクレオチドを固定化する方法は、さまざまな核酸の検出法と同様の方法である。好ましい態様では、試料に由来する標的DNAまたは標的RNAは、固定化されたオリゴヌクレオチドとハイブリッドを形成可能であり、固定化されたオリゴヌクレオチド上における検出可能な標識の変化が、試料中の特定の遺伝子または配列の有無の指標として用いられる。したがって、固定化されたオリゴヌクレオチドはプローブとして機能する場合がある。オリゴヌクレオチドを固定化することで、標的核酸をコピーする必要がなくなったり(非効率なコピー段階により配列が失われる場合がある)、標識する必要が無くなったりする。オリゴヌクレオチド検出用標識の変化は、ハイブリダイゼーション、またはハイブリダイゼーションに続く、固定化されたオリゴヌクレオチドの酵素的伸長に起因する場合がある。他の態様では、酵素的伸長により、固定化されたオリゴヌクレオチドの位置において標的核酸が局所的に増幅される場合がある。
【0145】
標識化
本発明は、内部で、および/または3'末端および/または5'末端、もしくはその近傍で標識可能な、または脱標識可能なオリゴヌクレオチドを提供する。1つの態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの2個中1個を、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの5個中1個を、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの10個中1個を、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの15個中1個を、または最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの20個中1個を標識することができる。特定の態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、3'末端もしくは5'末端から2番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から3番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から4番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から6番目の塩基、または3'末端もしくは5'末端から最長20番目の塩基において標識することができる。
【0146】
別の局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは、特異性増強官能基が付加された状態で提供される場合がある。このような官能基は、オリゴヌクレオチドの内部に、および/または3'末端および/または5'末端、もしくはその近傍に配置することができる。別の局面では、本発明のオリゴヌクレオチドはヘアピン状とすることができる。いくつかの好ましい態様では、オリゴヌクレオチドは、これらの特徴を複数提供される場合があり(すなわち標識および/または特異性増強官能基を含む場合がある)、および/またはヘアピン状とすることができる。
【0147】
標識する場合は、本発明のオリゴヌクレオチドは、1つもしくは複数の標識を含む場合がある(これらは同じ場合もあれば異なる場合もある)。本発明のオリゴヌクレオチドは、プライマーおよび/またはプローブとして使用することができる。好ましい局面ではオリゴヌクレオチドは標識されており、また標識は、ハイブリダイゼーション時および/または伸長時に任意の観察可能な特性に検出可能な変化を受ける任意の成分である。好ましい態様では、標識は蛍光成分であり、標識は、1つもしくは複数の蛍光特性に検出可能な変化を受ける。このような特性は、蛍光強度、蛍光偏光、蛍光寿命、および蛍光の量子収量を含むがこれらに限定されない。
【0148】
本発明のオリゴヌクレオチドは、任意の既知の標識法で(上述のように)標識することができる。例として、オリゴヌクレオチドは以下の手順で標識することができる:(1)ホスホロチオエート結合の硫黄における結合;(2)2'-アミノ基における結合;(3)例えばアルキルアミン置換カルボキサミドを含む適切に修飾された糖を用いる1'位における結合;(4)例えば脱塩基部位、および例えばリンカーにアルキルジアミンを用いる1'位における結合;(5)アルキルジアミンと脱塩基部位間に形成される付加物の還元的アルキル化による構造の生成;(6)4'-チオ-2'-デオキシウリジンもしくは4'-チオチミジンを用いる取込み;(7)4-チオチミジン、もしくは4-チオ-2'-デオキシウリジンの2'位における結合;(8)デオキシシチジンの4-アミノ位における結合(4-アミノ基がアルキルアミンで誘導体化されている場合);(9)アデニンの6'位を介した結合(6-アミノ基がアルキルアミノ基で誘導体化されている場合);(10)アデニンの8'位を用いた取込み(同位置がアルキルチオアミンで置換されている場合);(11)グアニンのN2における結合(N2アミノがアルキルアミノ基で誘導体化されている場合);または(12)アミノアデニンのN2位における結合(2-アミノ基がアルキルアミンで誘導体化されている場合)。
【0149】
特異性を高めるため、またプライマー二量体の形成を減少させるための修飾
意外なことに、本発明のオリゴヌクレオチドが、増幅および/または合成の特異性を高める(例えばミスプライミングを減少させる)ため、および/またはハイブリダイゼーション反応を促進するために使用可能であることがわかっている。理論に制限されることは望ましくないが、PCR反応のアニーリング温度の周辺温度でヘアピン構造を形成するプライマーとしてのオリゴヌクレオチドの能力、またはプライマーの3'端の隔離が、標的核酸分子に対してミスプライミングを生じるプライマーの能力を低下させると考えられている。このような特異性の上昇は、特定の標的核酸鋳型に依存せず、またさまざまな鋳型で認められている。特異性の上昇は、PCR反応で増幅することが困難な鋳型の増幅、またPCR反応における所望の増幅産物の量が少ないか全くないような鋳型の増幅に特に重要である。これについては例えば実施例14および実施例15を参照されたい。
【0150】
ヘアピン構造のほかに、オリゴヌクレオチドプライマーの3'端を隔離する任意の構造を、本発明を実施するために使用することができる。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドプライマーの5'部分は、3'端が二重鎖と相互作用して三重鎖を形成するように二重鎖形成能力をもつ配列とともに提供される場合がある。一般に、鋳型DNAに対するアニーリング能力をもたない安定な構造でプライマーの3'部分に可逆的に関与する任意のプライマー配列は、このような構造では、本発明を実施するために使用することができる。いくつかの態様では、プライマーに相補的なオリゴヌクレオチドは、プライマーの3'端を隔離するように提供される場合がある。相補的オリゴヌクレオチドは、ヘアピンを形成可能な自己相補性領域を含むように設計可能な5'突出領域を伴って提供される場合がある。隔離されていないプライマーの3'部分が、核酸鋳型のミスプライミング能力をもたず、本発明を実施するのに十分な限りは、プライマーの3'部分の全体が隔離される必要はない。
【0151】
ヘアピン構造に関しては、プライマーがヘアピン構造をとっている場合には、プライマーの3'端は5'側のセグメントと塩基対を形成するので、ミスプライミングまたはプライマー二量体形成に利用されることは少ない。しかし、ヘアピンが平滑末端をもつ場合は、プライマー二量体が形成される別の経路が存在する。具体的には、2つの平滑末端は、ポリメラーゼの極めて近くに接近させることが可能であり、またこの結果として、例えばフォワードプライマーの3'端が、例えばリバースプライマーの5'端と置き換わり、相補的な配列を形成する場合がある。提案された機構は、ヘアピンプライマーにより得られたプライマー二量体の配列を決定することで確認されている。この機構が解明されることによって問題の解法を示すことが可能となっている。ヘアピン状プライマーの5'末端またはその近傍における修飾がプライマー二量体形成を妨げることがわかっている。これは、ヘアピンの5'端の置換の抑制によると考えられる。これについては実施例15および実施例16を参照されたい。このような修飾には、2'-O-アルキルまたは2'-O-メチルの付加、5'-5'ホスホジエステル結合の生成、およびC3-アミノ、C6-アミノ、またはビオチンの付加が含まれる。
【0152】
ヘアピンプライマーを用いる際に、プライマー二量体の形成を最低限に抑える別の方法では、相互に相補的でない1個もしくは2個のヌクレオチドによって伸長される3'端をもつオリゴヌクレオチドを作る。これについては実施例17を参照されたい。
【0153】
プライマー二量体を減少させる別の代替法は、プライマー二量体の形成を妨げないが見えなくする。ヘアピンプライマーにより、プライマー二量体は極めて均一に形成されるので(実施例15に記載)、二本鎖構造中の2本のプライマーの3'端は極めて近くに存在する。したがって1本のプライマーをレポーターで標識し、また別のプライマーを3'端の近くでクエンチャーで標識することで、蛍光のクエンチングが生じる。真のアンプリコンの蛍光は、約20個より長いヌクレオチド配列がプライマーから直ちに離れれば影響を受けない。これについては実施例18を参照されたい。
【0154】
したがって、核酸の合成中または増幅中における、核酸の増幅もしくは合成の特異性の上昇、および/またはプライマーのミスアニーリング(ミスプライミング)の低下もしくは減少に関しては、本発明のオリゴヌクレオチドは以下のような状態でありうる:(1)ヘアピン構造、またはオリゴヌクレオチドプライマーの3'端を隔離したりブロックしたりするような構造(例えば3'末端もしくはその近傍における配列のハイブリッドの形成による);(2)5'末端もしくはその近傍で修飾された状態;および/または(3)(1)と(2)の組み合わせ。
【0155】
本発明のオリゴヌクレオチドの例示的な用途
本発明のオリゴヌクレオチド(標識された状態、脱標識された状態、ヘアピン状態、修飾状態、または非修飾状態、またはこれらの任意の組み合わせ)は、増幅もしくは合成、またはハイブリダイゼーション反応の核酸産物を検出もしくは測定することで、プライマー配列の全体もしくは一部に相補的な試料中の標的核酸を検出または測定するための核酸の増幅、合成、またはハイブリダイゼーションの反応に(例えばプライマーとして)使用される。本発明のオリゴヌクレオチドは、PCR、5'-RACE、アンカーPCR、「片側PCR」、LCR、NASBA、SDA、RT-PCR、リアルタイムPCR、定量PCR、定量RT-PCR、およびユニバーサルプライマーフォーマットによる、当技術分野で周知の他の増幅系を含む任意の増幅反応で使用することができる。
【0156】
したがって本発明は一般に、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法に関する:
(a)1つもしくは複数の鋳型、または標的核酸分子を、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと混合する段階;および
(b)混合物を、鋳型もしくは標的分子の全体もしくは一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階。
【0157】
好ましくは、合成または増幅された核酸分子は、本発明の1つもしくは複数のオリゴヌクレオチド、またはこれらの一部を含む。1つの局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明の方法で作製された、合成もしくは増幅された核酸分子の一端もしくは両端またはこれらの近傍で取込まれる。本発明は、このような増幅反応または合成反応で作製される1つまたは複数の核酸分子にも関する。
【0158】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子を合成する方法に関する:
(a)1つまたは複数の核酸鋳型(cDNA分子などのDNA分子、mRNA分子などのRNA分子、もしくはこれらの分子の集団でありうる)を、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および1つもしくは複数のポリメラーゼと混合する段階;ならびに
(b)混合物を、鋳型の全体または一部に相補的な、1つもしくは複数の第1の核酸分子を十分合成する条件下でインキュベートする段階。
【0159】
このようなインキュベーション条件は、1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数の核酸合成用緩衝剤の使用を含む場合がある。本発明のこのような方法は任意選択で、合成された第1の核酸分子を、第1の核酸分子の全体または一部に相補的な、1つもしくは複数の第2の核酸分子を十分作る条件下でインキュベートする段階などの、1つまたは複数の追加的段階を含む場合がある。このような追加的段階は、本発明の1つまたは複数のプライマー、および本明細書に記載の1つもしくは複数のポリメラーゼの存在下で達成される場合もある。本発明は、このような方法で合成された核酸分子にも関する。
【0160】
本発明は、以下の段階を含む、核酸分子の配列決定法にも関する:
(a)配列決定対象となる核酸分子を、本発明の1本または複数のプライマー、1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数の停止薬剤と混ぜて混合物を得る段階;
(b)混合物を、配列決定対象分子の全体または一部に相補的な分子の集団を十分合成する条件下でインキュベートする段階:ならびに
(c)分子集団を分離して、配列決定対象分子の全体または一部のヌクレオチド配列を決定する段階。
【0161】
本発明は具体的には、以下の段階を含む、核酸分子の配列決定法に関する:
(a)本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数の停止用薬剤を混合する段階;
(b)オリゴヌクレオチドと第1の核酸分子とのハイブリッドを形成させる段階;
(c)段階(b)の混合物を、第1の核酸分子に相補的な核酸分子のランダムな集団を十分合成する条件下でインキュベートする段階(合成される分子は第1の分子より長さが短く、また合成される分子は、3'末端に停止用ヌクレオチドを含む);ならびに
(d)合成された分子を大きさにしたがって分離し、第1の核酸分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を決定可能とする段階。このような停止用ヌクレオチドは、ddTTP、ddATP、ddGTP、ddITP、またはddCTPを含む。このようなインキュベーション条件は、1つまたは複数のポリメラーゼ、および/または緩衝塩の存在下におけるインキュベーションを含む場合がある。
【0162】
関連する局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは、増幅反応または合成反応の実施を必要することなく、試料中の核酸分子の有無を検出する際に、または核酸分子を定量する際に有用である。本発明では、オリゴヌクレオチドは、標識を含むオリゴヌクレオチドが二本鎖分子に(例えばオリゴヌクレオチドと標的分子のハイブリッドを形成することで)変換される場合に少なくとも1つの観察可能な特性に検出可能な変化を受ける1つもしくは複数の標識とともに提供される場合がある。したがって、観察可能な特性の変化は、対象核酸分子を含まない対照試料との比較時に、試料中に標的分子が存在することを意味する。試料中の核酸標的分子の定量は、未知試料の観察可能な特性の変化を、既知量の対象核酸標的分子を含む試料の観察可能な特性の変化と比較することでも決定することができる。対象核酸分子を含むと考えられる任意の試料は、血液、尿、組織、細胞、便、血清、血漿、または動物(ヒトを含む)、植物、細菌、ウイルスなどに由来する他の任意の試料などの生物試料を含むがこれらに限定されない試料に使用することができる。土壌試料、水系試料、気体試料などの環境試料も本発明に使用することができる。
【0163】
本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが感染源の配列(例えばゲノムまたはcDNA)に相補的か、または例えばウイルス(例えばHIVやHPVなど)、細菌、寄生虫、および真菌を含むがこれらに限定されないヒトの疾患の感染源の配列の合成もしくは増幅を開始することで、患者に由来する試料中の感染源の存在を調べることが可能な診断法に使用することができる。標的核酸の種類は、ゲノム、cDNA、mRNA、もしくは合成物でありうるか、または供給源は、ヒト、動物、または細菌でありうる。疾患または障害の診断または予後に使用可能な別の態様では、標的配列は、野生型のヒトゲノム、またはRNA配列もしくはcDNA配列であるか(これらの変異はヒトの疾患または障害の存在に関連づけられる)、または変異配列でありうる。このような態様では、本発明のハイブリダイゼーション、増幅、または合成の反応は、野生型配列または変異配列を選択的に同定する、本発明のさまざまなセットのオリゴヌクレオチドを用いて(例えばさまざまに標識された標識オリゴヌクレオチドを用いて)、同じ試料を対象に繰返すことができる。例えば、このような変異は、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、置換、および/または欠失、または転座でありうる。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、SNP解析、薬理ゲノム科学、およびトキシコジェネティクスに使用することができる。
【0164】
特定の態様では、本発明は、以下の段階を含む、核酸の増幅反応または合成反応の産物の検出法または測定法を提供する:(a)1つまたは複数の標的核酸分子を含む試料を、1つまたは複数のプライマー(このようなプライマーは、同じ場合もあれば異なる場合もある、また内部、および/または3'端および/または5'端もしくはこれらの近傍が標識されたりする1つもしくは複数の標識を含む場合がある)に接触させる段階(プライマーは、標的配列もしくは核酸分子が試料中に存在する場合にプライマーが増幅反応もしくは合成反応の増幅産物もしくは合成産物に取込まれるように、増幅反応もしくは合成反応における使用に適したものとする);(b)増幅反応または合成反応を実施する段階;ならびに(c)1つまたは複数の合成産物分子または増幅産物分子を(好ましくは、1つまたは複数の標識の1つまたは複数の観察可能な特性の変化を検出することで)検出または測定する段階。
【0165】
別の特定の態様では、本発明は、以下の段階を含む、試料に含まれる標的核酸分子の有無または量の検出法および測定法を提供する:(a)1つまたは複数の標的核酸分子を含む試料を、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドに接触させる段階(このようなオリゴヌクレオチドは、同じ場合もあれば異なる場合もある、また内部、および/または3'端および/または5'端もしくはこれらの近傍で標識される場合がある1つもしくは複数の標識を含む場合がある);(b)混合物を、二本鎖分子を(好ましくはハイブリダイゼーションによって)十分形成させる、オリゴヌクレオチドと標的分子との相互作用を十分可能とする条件下でインキュベートする段階;ならびに(c)1つもしくは複数の標的核酸分子を(好ましくは、1つまたは複数の標識の1つまたは複数の観察可能な特性の変化を検出することで)検出する段階。
【0166】
本発明は、核酸混合物を含む試料を、本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドは標的核酸配列とハイブリッドを形成可能で、また少なくとも1つの検出可能な成分を含む(検出可能な成分は、標的核酸配列とハイブリッド形成時に1つもしくは複数の観察可能な特性に変化を受ける))、ならびに観察可能な特性を観察する段階(観察可能な特性の変化は、標的核酸配列が存在することを意味する)を含む、標的核酸配列を検出する方法を提供する。いくつかの態様では、標的核酸配列は混合物から分離されない。いくつかの態様では、観察可能な特性は蛍光である。いくつかの態様では、変化は蛍光の増加である。いくつかの態様では、変化は蛍光の減少である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは特異性増強官能基を含む。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。
【0167】
本発明は、標的核酸分子を含む核酸の混合物を含む試料を、本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドは、標的核酸分子とハイブリッドを形成可能で、少なくとも1つの検出可能な成分を含む(検出可能な成分は、標的核酸配列とハイブリッド形成時に1つもしくは複数の観察可能な特性に変化を受ける))、ならびに観察可能な特性を観察する段階(観察可能な特性の変化は、試料中の標的核酸分子の量に比例する)を含む、標的核酸分子の定量法を提供する。
【0168】
別の局面では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドの標識によって放出されるエネルギーの低下もしくは減少させる1つもしくは複数の処理の使用に関する。このような処理は、本発明のハイブリダイゼーション、合成法、または増幅法におけるバックグラウンドを低下させるために本発明で用いられる場合がある。1つの局面では、一本鎖核酸結合タンパク質(大腸菌、T4バクテリオファージ、または古細菌(Kellyら、Proceedings of the National Academy of Sciences、USA 95:14634-14639(1998)、Chedinら、TIBS 23:273-277(1998)、米国特許第5,449,603号、第5,605,824号、5,646,019号、および第5,773,257号を参照))を用いて、本発明の一本鎖の標識されたオリゴヌクレオチドを相互作用させて、標識から放出されたエネルギー、または他の検出可能な特性を低下またはクエンチさせることができる。このような一本鎖結合タンパク質は、天然のタンパク質の場合もあれば修飾型タンパク質の場合もある。検出または定量の段階(ハイブリダイゼーション、合成反応、または増幅反応)では、形成される二本鎖核酸分子は、一本鎖結合タンパク質と実質的に相互作用しないか、または二本鎖分子と極めてわずかにしか相互作用しない。したがって、非反応状態(本発明のオリゴヌクレオチドの一本鎖状態)では、放出されるエネルギー、または他の検出可能な特性(例えば蛍光)は低下またはクエンチするが、反応状態(二本鎖分子)では、放出されるエネルギー、または他の検出可能な特性は増強される。別の局面では、クエンチャー分子を含むブロッキングオリゴヌクレオチドを用いて、本発明の標識されたオリゴヌクレオチドを非反応状態で競合的に結合させることにより、放出されるエネルギー、または標識されたオリゴヌクレオチドの他の検出可能な特性を低下させることができる。別の局面では、1つもしくは複数の追加的蛍光成分を、ブロッキング分子中に取込ませて、本発明のオリゴヌクレオチドが非反応状態にある場合に本発明のオリゴヌクレオチド上の蛍光成分が、1つもしくは複数の追加的蛍光成分に近接させる。追加的蛍光分子の存在は、本発明のオリゴヌクレオチド上の蛍光成分の放出スペクトルと、ブロッキングオリゴヌクレオチド上の1つもしくは複数の追加的蛍光成分の吸収スペクトルの重複がほとんどないか全くない場合でもバックグラウンドの蛍光レベルを低下させる場合がある。このようなバックグラウンドの低下の原因には、蛍光クエンチャーの別の機構(例えば衝突的なもの〕)と関連が考えられる。フルオロフォアを、検出可能な標識として使用することに加えて、クエンチャーとして使用する場合、クエンチングの機構は衝突的となる。
【0169】
本発明のオリゴヌクレオチドが、ヘアピン構造の形成能力をもつ場合、当業者であれば、1つもしくは複数の追加的蛍光成分を、ヘアピンのステム構造の一方の鎖に結合させながら、1つもしくは複数の標識を、もう一方の鎖のヌクレオチドに結合させることで、1つまたは複数の追加的蛍光成分が本発明のオリゴヌクレオチド上の標識に近づくことを理解すると思われる。検出中または定量中に標的核酸分子は、本発明の標識されたオリゴヌクレオチドヌクレオチドと相互作用することで、標識から放出されるエネルギー、または他の検出可能な特性を高める。このような相互作用により、ブロッキングオリゴヌクレオチド(例えばクエンチャー/追加的蛍光成分を含む分子)を、標識を含む本発明のオリゴヌクレオチドから分離することができる。
【0170】
本発明の別の局面では、オリゴヌクレオチドおよび/またはブロッキングオリゴヌクレオチドの配列は、本発明のオリゴヌクレオチドのバックグラウンド蛍光を低下させるように選択することができる。意外なことに、標識付近の塩基配列が、バックグラウンド蛍光レベルに極めて大きな作用を及ぼすことがわかっている。本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドのバックグラウンド蛍光は、オリゴヌクレオチドの配列が、3'端に近い1つもしくは複数の塩基上に位置し、また二本鎖構造の最後の塩基対がG-C塩基対もしくはC-G塩基対である、1つもしくは複数の塩基上に位置する1つもしくは複数のフルオロフォアにより、平滑末端の二本鎖構造を形成するように選択されると約5倍低下させることができる。いくつかの好ましい態様では、二本鎖構造はヘアピン構造のステムでありうる。いくつかの好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドの3'端は以下の配列の1つで規定することができる:5'-...T(Fluo)C-3'、5'-...T(Fluo)G-3'、5'-...T(Fluo)AG-3'、5'-...T(Fluo)AC-3'、5'-...T(Fluo)TG-3'、および5'-...T(Fluo)TG-3'(フルオロフォアの結合を(Fluo)で示し、3'側の配列を、ブロッキングオリゴヌクレオチド(またはヘアピンオリゴヌクレオチドの5'端)が相補的配列で(好ましくはブロッキングオリゴヌクレオチド/ヘアピン分子の5'端において)規定されるように示す)。クエンチング作用を達成するためには、標識された塩基を、3'端から10ヌクレオチド以内に、好ましくは6ヌクレオチド以内に、また最も好ましくは3'端から2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目に配置するべきである。この種類のオリゴヌクレオチドの特定の例は、表2のオリゴ10(配列番号:22)で規定される。
【0171】
関連する態様では、最も3'側のヌクレオチドがGまたはCでなく、したがって3'端でG-C塩基対を形成しないオリゴヌクレオチドを用いる場合、5'が突出するようにG残基をオリゴヌクレオチドに付加することで、バックグラウンド蛍光を低下させることができる。この態様では、本発明は、以下を含むオリゴヌクレオチドに関する:3'末端におけるシトシンもしくはグアニン、またはシトシンもしくはグアニンの類似体、また3'末端から少なくとも2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、もしくは6塩基の位置における1つもしくは複数の検出可能な標識。
【0172】
別の態様では、上述のクエンチング法は、蛍光共鳴エネルギー移動、または静的クエンチングのようなクエンチングの別の機構と組み合わせることができる。本発明のいくつかの態様では、クエンチング法を組み合わせることで、バックグラウンド蛍光を低下させることができる。例えば本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドの配列をヘアピン構造の平滑末端にG-C塩基対を形成するように選択可能としながら、オリゴヌクレオチドの3'端の近傍に、検出可能な成分を配置することが可能であり、また1つもしくは複数の追加的蛍光成分をオリゴヌクレオチドの5'端、もしくはその近傍でヌクレオチドに結合させることができる。類似の構造は、ヘアピンの代わりにブロッキングオリゴヌクレオチドを用いて用いることができる。
【0173】
別の関連する態様では、蛍光強度が、オリゴヌクレオチド(群)もしくは鋳型の配列、およびオリゴヌクレオチド(群)もしくは鋳型のフルオロフォアもしくは他の検出可能な特性の位置に応じて二本鎖形成時に低下したり上昇したりする場合がある。5'末端にフルオレセインを含むオリゴデオキシヌクレオチドは、5'端にCまたはGがある系では、二重鎖の蛍光は約40%クエンチされるが、オリゴヌクレオチドの末端がAまたはTの場合にはクエンチングは認められない。グアノシンのクエンチング特性は、核酸塩基と近傍色素間における電荷移動を可能とする、電子供与能力に起因するとされている(Seidel, C.A.M.ら、J. Phys. Chem. 100:5541-5553(1996);Steenken, S.およびJovanovic, V.、J. Am. Chem. Soc. 119:617-618(1997))。しかし蛍光は、5'端にGを含む蛍光オリゴヌクレオチドが、Cを含む蛍光オリゴヌクレオチドとハイブリッドを形成した場合にもクエンチされた(図34を参照)。末端のG/C塩基対、およびC/G塩基対は、蛍光のクエンチングに関与する場合がある。
【0174】
さらに別の関連する態様では、本発明の修飾型オリゴヌクレオチド(例えば内部、または3'最末端もしくは5'最末端のヌクレオチドに位置するオリゴヌクレオチド(群)、標識(群)上の1つまたは複数の標識(オリゴヌクレオチドは、最も3'末端もしくは最も5'末端のヌクレオチドとしてGもしくはCを有する))は、オリゴヌクレオチド上における単標識または複数標識は、単標識もしくは複数標識(群)で修飾された、またはオリゴヌクレオチドに対するGまたはCを含む、標的鋳型の検出もしくは増幅に使用することができる。蛍光強度は、二重鎖形成時に低下または上昇する場合がある。
【0175】
他の関連する態様では、末端のG/C塩基対およびC/G塩基対も、オリゴヌクレオチドの3'端に近接して内在する場合にフルオロフォアもしくは他の検出可能な特性をクエンチさせる場合がある。二本鎖中における10倍以上の蛍光クエンチングは、フルオレセインが、3'端から2ヌクレオチドまたは3ヌクレオチド離れたチミジンのC-5位に位置する場合に示された。この作用は、標識された鎖の最も3'端におけるC残基またはG残基の存在に絶対的に依存していた。5'が標識されたオリゴヌクレオチドの場合と同様に、G/C塩基対は有効なクエンチャーであるがG単独では有効ではない。末端におけるG/T誤対合、または5'-Gの突出は、平滑末端のG/C塩基対と比較して、それほど顕著でないクエンチングを生じる。末端のG/C対のみが二重鎖の蛍光に影響し;A/T対に隣接する場合はクエンチングは生じない。このデータは、複数のフルオロフォアと核酸塩基間に電荷移動複合体が形成されるという提案と一致する(Seidel, C.A.M.ら、J. Phys. Chem. 100:5541-5553(1996);Lewis, F.D.ら、Acc. Chem. Res. 34:159-170(2001);Steenken, S.およびJovanovic, V.、J. Am. Chem. Soc. 119:617-618(1997))。全塩基のなかで電子供与能力が最も高いグアノシンは、この段階に重要な役割を果たす。しかしグアノシンのもつ、蛍光をクエンチする能力は、水素結合が関与するか否かに、また位置(鎖の末端もしくは内部)に極めて大きく依存する(実施例27〜30を参照)。
【0176】
本発明の別の局面では、特定のクエンチャーではない1つのレポーターまたは検出可能な標識で標識されたオリゴヌクレオチドは、PCRまたは他の関連する方法でリアルタイムに、またはエンドポイントにおいて反応容器を開封することなく、核酸を効率的に検出するために使用可能である。標識されたPCRプライマーは、二本鎖のPCR産物中に取込まれた場合に蛍光を高めるチミジンのC-5位に結合されたフルオロフォアを伴う、化学的に合成されたオリゴデオキシヌクレオチドでありうる(Lee, S.P.ら、Anal. Biochem. 220:377-383(1994);Knemeyer, J.P.ら、Anal. Chem. 72:3717-3724(2000);Crockett, A.O.ら、Anal. Biochem. 290:89-97(2001);Kurata, S.ら、Nucleic Acids Res. 29: E34(2001);Lakowicz, J.R.、Principles of fluolescence spectroscopy、Kluver Academic/Plenum Publishers、New York、第2版、185-210(1999);Cianferoni, A.ら、Blood 97:1742-1749(2001);Farrar, G.J.ら、Nucleic Acids Res. 19:6982(1991))。これは、末端がGまたはCであるオリゴヌクレオチドの3'端の近くにフルオロフォアをもつこと、標識周辺の数塩基以内にGが存在すること、またオリゴヌクレオチドが、プライマーのアニーリング温度付近の温度で平滑末端のヘアピンを形成する能力をもつことが原因である。蛍光強度のこのような変化の機構は、取込まれなかったヘアピンプライマーの蛍光を低下させる、核酸塩基(具体的にはグアノシン)とフルオロフォア間における電荷の分離に起因する可能性がある(Seidel, C.A.M.ら、J. Phys. Chem. 100:5541-5553(1996);Walter, N.G.およびBurke, J.M. RNA 3:392-404(1997);Sauer, M.ら、Chem. Physical Letters 284:153-163(1998);Lewis, F.D.ら、Acc. Chem. Res. 34:159-170(2001))。したがって本発明はさらに、以下を含むオリゴヌクレオチドに関する:3'末端におけるアデニンもしくはチミジン、5'末端における突出したグアニン、および内部に位置する1つもしくは複数の検出可能な標識。プライマー伸長時の蛍光の上昇は、さまざまな色素-プライマーの組み合わせでは10倍高い場合があるので、標識されたプライマーのデザインは、各社独自のソフトウェアによって推進される活発な研究領域である(実施例31)。
【0177】
複数の重要な特徴があるため、標識プライマーを使用するPCRは、定量的でリアルタイムのPCRおよびSNP検出を含む、DNA検出のツールとして大きな価値がある場合がある。モノ標識オリゴヌクレオチドの合成は、二重標識プローブおよびプライマーと比較して費用が高額でなく、また精製に要求される条件は厳格ではない。標識プライマーは、HIVなどの高頻度で出現する変異を有する標的、またはハイブリダイゼーションプローブを使用する際に問題となる選択的スプライシングを受けた標的を容易に検出することができる。蛍光または標識がPCR産物に取込まれることで、電気泳動法で大きさによる核酸の分離が可能となる。また標識プライマーを使用することで、「ユニバーサルフォーマット」の検出が可能となする。同じユニバーサルの標識プライマーは、非標識プライマー対(非標識プライマーの1本はアダプターテールをもつ)を使用して異なるアンプリコン中に取込まれうる。ユニバーサルフォーマットは、二重標識プライマーとともに良好に使用された(Nuovo, G.J.ら、J. Histochem. & Cytochem. 47:273-279(1999);Myakishev, M.V.、Genome Res. 77:163-169(2001))。言及された応用のほかに、一次構造および二次構造の変化に応じて、標識されたオリゴヌクレオチドが強力なシグナルを発生する能力は、酵素反応、ならびにタンパク質と核酸間の他の相互作用を調べる際に有用な場合がある。
【0178】
本発明は、蛍光成分をオリゴヌクレオチドに結合させる段階を含む、蛍光成分から蛍光をクエンチする方法を提供する(オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが蛍光成分の蛍光をクエンチする構造をとる能力をもつ)。いくつかの態様では、この構造はヘアピンである。
【0179】
本発明では、非反応性の標識されたオリゴヌクレオチドをクエンチしたり減少させたりする他の手段を使用することができるほか、これらの処置の任意の組み合わせを使用することができる。フルオロフォアが検出可能な標識として使用されることに加えてクエンチャーとして使用される場合、クエンチング機構は衝突的である。別のクエンチャー(蛍光性または非蛍光性)が使用される場合、クエンチング機構は、それぞれ衝突的、またはFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)となる。
【0180】
本発明は、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および1つもしくは複数の標的または鋳型の核酸分子を含む組成物を提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的もしくは鋳型の核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である(好ましくはオリゴヌクレオチドは、標的核酸分子とのハイブリダイゼーション時に1つもしくは複数の観察可能な特性に変化を受ける1つもしくは複数の検出可能な成分を含む))。いくつかの態様では、検出可能な成分は蛍光成分であり、また蛍光成分は、標的核酸分子とハイブリッドを形成すると蛍光が変化する。いくつかの態様では、標的核酸分子とハイブリッドを形成しない場合は、オリゴヌクレオチドはヘアピンである。
【0181】
いくつかの好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つの核酸分子、および本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは1つまたは複数の特異性増強官能基を含む)。いくつかの態様では、1つまたは複数の特異性増強官能基は蛍光成分である場合がある。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの任意の位置に結合することが可能であり、結果的にオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドと相補的でない場合に実質的に伸長能が弱くなる。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは3'側のヌクレオチド、またはその近傍でヌクレオチドに結合される。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個に結合される。言いかえると、この種の態様では、1つもしくは複数の特異性増強官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基と5'方向に結合される場合がある。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の5個のヌクレオチドの1個に結合される。いくつかの態様では、この官能基は標識でありうり、好ましくは二本鎖分子の一部となる観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識でありうる(例えば、別の核酸分子とのハイブリッドの形成によるか、または核酸の合成もしくは増幅による)。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン形成能力をもつ。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。
【0182】
別の態様では、本発明は、1つの標識をもつ、ヘアピン形成能力をもつオリゴヌクレオチド(群)を含む増幅法を提供する。クエンチャー分子またはクエンチャー成分は必要ない。標識または検出可能な成分は、内部、または3'末端もしくは5'末端に配置することができる。PCR産物に取込まれると、合成産物量に正比例する場合がある蛍光シグナルの上昇がみられる。本発明のオリゴヌクレオチドは、以下の操作を実施するために使用することができるがこれらに限定されない:配列決定、ジェノタイピング、SNP、エンドポイント検出、定量PCR、定量RT-PCR、変異検出、増幅遺伝子発現、およびインサイチューハイブリダイゼーション。本発明のオリゴヌクレオチドは、さまざまなアンプリコンに使用されたり、さまざまなプローブに使用されたりする、多重鎖形成に使用される場合もある。
【0183】
本発明は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを提供する段階、および1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの核酸分子に接触させる段階を含む、組成物を作製する方法を提供する(少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、少なくとも1つの核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である)。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、1つもしくは複数の特異性増強官能基、および/または少なくとも1つの検出可能な標識を含む。いくつかの態様では、このような官能基は蛍光成分である。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドと相補的でない場合に実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドを生じるオリゴヌクレオチドの任意の位置に結合させることができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、3'ヌクレオチドまたはその近傍にでヌクレオチドに結合される。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個に結合される。言いかえると、この種の態様では、1つもしくは複数の特異性増強官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基と5'方向に結合される場合がある。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の5個のヌクレオチドの1個に結合される。いくつかの態様では、官能基は標識であり、好ましくは二本鎖分子の一部となる際に(例えば別の核酸分子とハイブリッドを形成することで)観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識でありうる。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピンを形成可能である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。
【0184】
本発明は、以下の段階を含む、標的または鋳型の核酸分子中の特定の位置または複数の位置における特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが存在することを判定する方法を提供する:(a)特定の位置または複数の位置にヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的または鋳型の核酸分子に、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的もしくは鋳型の核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成(例えばハイブリッドを形成)可能であり、オリゴヌクレオチドは好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基および/または標識を含む);ならびに(b)オリゴヌクレオチドと核酸分子の混合物を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが核酸標的分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階。このような条件下では、伸長産物の産生は、特定の位置または複数の位置に特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが存在することを意味する。本明細書で用いる、伸長産物の存在、または伸長産物の産生の上昇は、修飾型オリゴヌクレオチドを用いて作製された増幅されたDNAの量の差が、修飾を欠くオリゴヌクレオチドを用いて得られる差と比較して1倍〜約1000倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約500倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約250倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約100倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約50倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約25倍大きい、もしくは約1倍〜約10倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約5倍以上の間にあること、または約1倍〜約2倍以上の間にあることを意味する。産物の量は例えば、産物をアガロースゲルに流し、臭化エチジウムで染色し、同様に処理された既知量の核酸標準と比較するといった、当業者に周知の任意の方法で決定することができる。
【0185】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的または鋳型の核酸分子中の特定の位置または複数の位置に少なくとも1つの特定のヌクレオチドが存在しないことを判定する方法を提供する:(a)特定の位置にヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、本発明のオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成(例えばハイブリッドを形成)可能であり(オリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基もしくは標識を含む));ならびに(b)オリゴヌクレオチドと核酸分子の混合物を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドと塩基対を形成しない(例えばハイブリッドを形成しない)場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分防止もしくは阻害する条件下でインキュベートする段階。このような条件では、伸長産物の産生がみられないこと、または産生の低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが存在しないことを意味する。本明細書で用いる、伸長産物の産生がみられないこと、または産生の低下は、修飾を欠くオリゴヌクレオチドを用いて作られた増幅されたDNAの量の差が、修飾型オリゴヌクレオチドを用いて得られた差と比較して約1倍〜約500倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約250倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約100倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約50倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約25倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約10倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約5倍以上の間にあること、または約1倍〜約2倍以上の間にあることを意味する。好ましい局面では、上記の第1の方法におけるオリゴヌクレオチドの伸長の結果を、上記の第2の方法におけるオリゴヌクレオチドの伸長がみられないこと、もしくは伸長レベルが低下することと比較する。好ましい局面では、第1の方法の条件は、標的核酸分子の全体もしくは一部が増幅されるように実施されるが、第2の方法の条件は、標的核酸分子が増幅されないように、または第1の方法で作られた、増幅された標的核酸分子と比較して低レベルで、もしくは遅い速度で増幅されるように実施される。いくつかの態様では、特異性増強官能基は蛍光成分である。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが、標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドに相補的でない場合に伸長能が弱い、好ましくは伸長能が実質的に弱いオリゴヌクレオチドを生じるオリゴヌクレオチドの任意の位置に結合することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチドで、もしくはその近傍でヌクレオチドに結合される。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個のヌクレオチドに結合される。言いかえると、この種の態様では、1つもしくは複数の特異性増強官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基と5'方向に結合される場合がある。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の5個のヌクレオチドの1個に結合される。いくつかの態様では、官能基は標識であり、好ましくは(例えば別の核酸分子とハイブリッドを形成することで)二本鎖分子の一部となる際に観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識である場合がある。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピンを形成可能である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。インキュベーション条件は好ましくは、Tsp DNAポリメラーゼ(Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)、Rockville、MDから入手可能)などの1つまたは複数のポリメラーゼ酵素の存在を含む。
【0186】
本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法を提供する:(a)少なくとも1つの標的または鋳型の核酸分子を本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的/鋳型核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である(オリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基および/または標識を含む));ならびに(b)オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成する(例えばハイブリッドを形成する)場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で標的核酸とオリゴヌクレオチドの混合物とをインキュベートする段階。
【0187】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成を低下させる方法を提供する:(a)少なくとも1つの標的もしくは鋳型の核酸分子を本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的/鋳型核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である(オリゴヌクレオチドは好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基および/または標識を含む));ならびに(b)標的/鋳型核酸分子とオリゴヌクレオチドの混合物を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的/鋳型核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドと塩基対を形成しない(例えばハイブリッドを形成しない)場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分防止もしくは阻害する条件下でインキュベートする段階。好ましい局面では、上記の第1の方法における合成の結果を、上記の第2の方法における合成の消失もしくは合成レベルの低下と比較する。好ましい局面では、第1の方法の条件を標的核酸分子の全体もしくは一部が増幅されるように実施し、一方で第2の方法の条件を、標的核酸分子が増幅されないか、または第1の方法で作られた増幅された標的核酸分子と比較して低レベルで、および/または遅い速度で増幅されるように実施する。いくつかの態様では、特異性増強官能基は蛍光成分である。いくつかの態様では、特異性増強官能基を、最も3'側のヌクレオチドもしくはその近傍でヌクレオチドに結合する。いくつかの態様では、特異性増強官能基は、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個に結合する。言いかえると、この種の態様では、特異性増強官能基を、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基に5'方向に結合される。いくつかの態様では、特異性増強官能基は標識、好ましくは、(例えば別の核酸分子とハイブリッドを形成することで)二本鎖分子の一部となる場合に観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識である場合がある。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピンを形成可能である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。インキュベーション条件は、好ましくは、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)、Rockville、MDから入手可能なTsp DNAポリメラーゼなどの1つまたは複数のポリメラーゼ酵素の存在を含む。
【0188】
本発明は、PCRにおけるプライマーの3'末端のヌクレオチド、もしくはその近傍における、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシ修飾を含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル修飾、または2'-もしくは3'-O-アリール修飾、または好ましくは、2'-O-メチルリボヌクレオチドの修飾などの、修飾型ヌクレオチドを使用する、一塩基多型(SNP)の検出法を提供する。この方法は、既存の手法による高スループットのスクリーニング法に容易に応用することができる。ポリメラーゼによる、(唯一の必要条件は不安定な(frayed)3'末端がないこと)鋳型配列に完全に相補的なプライマー鎖の3'末端へのヌクレオチドの取込み効率は、3'末端のヌクレオチドの位置における一塩基誤対合を形成する3'端への取込み効率と比較して有意に高い。不安定端の3'末端と比較した、完全にアニーリングしたプライマー/鋳型基質のプライマー伸長の動態の量的比較は、SNPを含むDNA試料を同定目的のスクリーニングに用いられている。しかし、ポリメラーゼは、誤対合のあるプライマー末端を十分な効率で伸長するので、この方法はSNP同定法としては信頼性が低い(誤対合のある末端の伸長速度は特定のプライマー/鋳型配列によって変動する)。このような基本的な手法の改善は、本発明では、修飾型オリゴヌクレオチドを使用して、アッセイ法の解像度を上げることで、標的鋳型配列中の一塩基変異の信頼性の高い検出を可能とすることで記載されている。このようにプライマーを修飾することで、ゲノム試料中のSNPの同定を高精度でかなり速めることができる。
【0189】
本発明は、DNA合成反応におけるプライマーの3'末端のヌクレオチドまたはその近傍における、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または例えば、2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシの修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル、または2'-もしくは3'-O-アリールの修飾、または好ましくは2'-O-メチルリボヌクレオチドの修飾を含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾などの修飾型ヌクレオチドを用いるSNP(一塩基多型)検出法も提供する。例えば末端が2'-O-メチルリボースであるプライマーは、3'末端にデオキシヌクレオチドをもつ標準的な非修飾プライマーと比較して効率は低いが、TaqなどのDNAポリメラーゼによって伸長されうる。DNAポリメラーゼによって触媒される1塩基対の誤対合を形成する3'末端の伸長効率は、3'末端のヌクレオチドが2'-O-置換成分、具体的には、2'-O-メチル成分を含む場合には大きく低下する。不安定な末端の場合と比較して、正しくアニーリングするプライマー3'端へのヌクレオチドの挿入速度に相対的な差があることは、DNA試料中の一塩基変化を検出するために使用することができる。PCR条件に2'-O-置換、または好ましくは末端が2'-O-メチルのプライマーを用いるこのような手法は、対費用効果に極めて優れており、DNA試料間の一塩基の変化を検出するための信頼性の高い方法であり、また高スループットのスクリーニングに容易に応用することができる。3'末端のヌクレオチドに2'-O-メチル修飾を含むプライマーを用いる標的配列のPCR増幅の例を以下に挙げる。3'末端で正しく塩基対を形成するプライマー、および誤対合のある末端を形成するプライマーでは、増幅収量が有意に変動した。好ましい態様では、誤対合のある3'末端を形成するプライマーでは、産物量は実質的に低下した(例えば20%未満、より好ましくは10%未満)か、または増幅産物は得られなかった。
【0190】
本発明は、1つまたは複数の核酸分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物も提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または例えば3'末端のヌクレオチドまたはその近傍における、2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシの修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキルの修飾、または2'-もしくは3'-O-アリールの修飾、または好ましくは2'-O-メチルリボヌクレオチドの修飾を含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾などの修飾型ヌクレオチドを含む)。本発明のこのような反応混合物または組成物は、1つもしくは複数のヌクレオチド、1つまたは複数のDNAポリメラーゼ、1つまたは複数逆転写酵素、1つもしくは複数の緩衝剤もしくは緩衝塩、1つもしくは複数の標的もしくは鋳型の分子、および本発明のハイブリダイゼーションもしくは合成/増幅反応で作られる1つもしくは複数の産物からなる群より選択される1つもしくは複数の成分をさらに含む場合がある。
【0191】
本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子を増幅する方法も提供する:
(a)第1および第2のプライマーを提供する段階(第1のプライマーは、核酸分子の第1の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的であり、また第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的である);
(b)第1のプライマーと第1の鎖のハイブリッド、および第2のプライマーと第2の鎖のハイブリッドを、1つもしくは複数のポリメラーゼの存在下、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で形成させる段階;
(c)第1の鎖と第3の鎖を、および第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに、上記段階を1回もしくは複数回繰返す段階(1つもしくは複数のプライマーは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む)。
【0192】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置に少なくとも1個の対象ヌクレオチドが存在することを判定する方法を提供する:
(a)標的核酸分子上の特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチド、もしくはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階(伸長産物の存在、もしくは伸長産物の産生の増加は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在することを意味する)。
【0193】
本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置に少なくとも1個のヌクレオチドが存在しないことを判定する方法も提供する:
(a)標的核酸分子の特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下でインキュベートする段階(伸長産物が存在しないこと、または伸長産物の産生の低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する)。
【0194】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置におけるヌクレオチドの有無の判定法を提供する:
(a)少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階(第1のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチド、またはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);
(b)少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下で接触させる段階(第2のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(c)第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルもしくは伸長産物の量、または伸長産物の有無を比較する段階。
【0195】
産物の量は例えば、産物をアガロースゲルに流し、臭化エチジウムで染色し、同様に処理した既知量の核酸標準と比較するといった、当業者に周知の方法で決定することができる。
【0196】
本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子を合成または増幅する方法を提供する:
(a)1つもしくは複数の核酸の鋳型または標的と、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)混合物を、この鋳型もしくは標的の全体もしくは一部に相補的な1つもしくは複数の核酸分子が十分合成または増幅する条件下でインキュベートする段階。
【0197】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つもしくは複数の核酸分子の合成法または増幅法を提供する(核酸の合成または増幅の特異性は上昇する):
(a)1つもしくは複数の核酸鋳型もしくは標的と、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドもしくはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)混合物を、鋳型もしくは標的の全体もしくは一部に相補的な1つもしくは複数の核酸分子を十分合成もしくは増幅する条件下でインキュベートする段階(合成または増幅は、3'末端のヌクレオチドもしくはその近傍にヌクレオチドの修飾で修飾されていないオリゴヌクレオチドで実施された増幅もしくは合成と比較した場合に特異性を高める)。
【0198】
別の局面では、本発明は、本発明の修飾型オリゴヌクレオチドによるオリゴヌクレオチドの分解を防止する方法を提供する。本発明の方法は、PCR(例えば、「RT-PCR」、「5'-RACE」、「アンカーPCR」、および「片側PCR」)、LCR、SDA、およびNASBA、ならびに当業者に周知の他の増幅系を含むがこれらに限定されない、核酸配列の多くの増幅法に適用することができる。修飾型ヌクレオチド、具体的には3'末端のヌクレオチドまたはその近傍における2'-O-メチルリボヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの分解を防ぐ。これについては実施例26を参照されたい。さらに別の局面では、本発明は、オリゴヌクレオチドを、本発明の修飾型オリゴヌクレオチドで保護する段階を含む、オリゴヌクレオチドの分解の抑制法を提供する。
【0199】
さらに別の局面では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0200】
本発明は、1つまたは複数の核酸分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体であるオリゴヌクレオチドである)。
【0201】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、組成物の作製法を提供する:
(a)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを提供する段階;ならびに
(b)オリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの核酸分子に接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)
【0202】
本発明は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および検出または定量の対象となる1つまたは複数の標的核酸分子を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量用または検出用の組成物を提供する(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0203】
別の局面では、本発明は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと、検出または定量の対象となる1つまたは複数の分子のハイブリッドを形成させる段階、ならびに標的核酸分子の有無を検出する段階、および/または標的核酸分子を定量する段階を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量法もしくは検出法を提供する(オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0204】
本発明は、以下の段階を含む、核酸合成中における試料中の1つまたは複数の核酸分子の定量法または検出法を提供する:
(a)1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);
(b)混合物を、鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子を十分合成する条件下でインキュベートする段階(合成された核酸分子はオリゴヌクレオチドを含む);ならびに
(c)試料中に合成された核酸分子の量を測定することで、合成された核酸分子の有無を検出する、または合成された核酸分子を定量する段階。
【0205】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、核酸増幅中における、試料中の1つまたは複数の核酸分子の定量法または検出法を提供する:
(a)1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)混合物を、鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子を十分増幅する条件下でインキュベートする段階(増幅された核酸分子はオリゴヌクレオチドを含む);ならびに
(c)試料中で増幅された核酸分子の量を測定することで、核酸分子の有無を検出する、または核酸分子を定量する段階。
【0206】
本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅法を提供する:
(a)第1および第2のプライマーを提供する段階(第1のプライマーは、核酸分子の第1の鎖の内部の配列、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的であり、また第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部の配列、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的である);
(b)第1のプライマーと第1の鎖のハイブリッド、および第2のプライマーと第2の鎖のハイブリッドを、1つもしくは複数のポリメラーゼの存在下、第1の鎖の全体もしくは一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体もしくは一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で形成させる段階;
(c)第1の鎖と第3の鎖を、および第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに
(d)上記段階を1回または複数回繰返す段階(1つもしくは複数のプライマーは、本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含む)。
【0207】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置における1つまたは複数の特定のヌクレオチドの存在の判定法を提供する:
(a)標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に1つもしくは複数の対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階(伸長産物の産生は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在することを意味する)。
【0208】
本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置に1つまたは複数の特定のヌクレオチドが存在しないことを判定する方法を提供する:
(a)標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に1つまたは複数の対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能か、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下インキュベートする段階(伸長産物が存在しないこと、または伸長産物の産生低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する)。
【0209】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置における1つまたは複数の特定のヌクレオチドの有無を判定する方法を提供する:
(a)少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
(b)少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下で接触させる段階;ならびに
(c)第1のヌクレオチドと第2のヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階(第1および/または第2のオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0210】
本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置における少なくとも1つの特定の対象ヌクレオチドの有無を判定する方法を提供する:
(a)特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を提供する段階;
(b)標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(c)オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸と塩基対を形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が弱いポリメラーゼに、またオリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が強いポリメラーゼに接触させる段階;およびオリゴヌクレオチドの伸長レベルを測定する段階。
【0211】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つもしくは複数の核酸分子を合成法または増幅法を提供する:
(a)1つもしくは複数の核酸鋳型または標的と、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)混合物を、鋳型もしくは標的の全体もしくは一部に相補的な1つもしくは複数の核酸分子を十分合成または増幅する条件下でインキュベートする段階。
【0212】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、一塩基多型の検出法を提供する:
(a)少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
(b)少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下で接触させる段階;ならびに
(c)第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルもしくは伸長産物の量、または伸長産物の有無を比較する段階(第1および/または第2のオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチドであるか、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0213】
キット
本発明は、試料中の核酸分子またはポリメラーゼ活性の検出もしくは測定用のキットにも関する。このようなキットは、核酸の合成または増幅の反応中または反応後に対象核酸分子を検出/定量するためにデザインすることもできる。このようなキットは、核酸の存在が疾患または障害の有無と相関する、診断用キットでありうる。本発明は、本発明の伸長反応、合成反応、および/または増幅反応を実施するためのキット、および本発明の組成物を作製するキットにも関する。
【0214】
特定の態様では、本発明のキットは、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む(プライマーおよび/またはプローブを含む)。本発明のキットは、本発明の検出/定量アッセイ法、または他の方法を実施するための追加的成分を含む場合もある。このようなキットは、1つまたは複数のポリメラーゼ(例えばDNAポリメラーゼおよび逆転写酵素)、1つまたは複数のヌクレオチド、1つもしくは複数の緩衝塩(核酸の合成または増幅用の緩衝剤を含む)、1つまたは複数の対照核酸標的分子(アッセイ法を検討する際、または未知試料中の核酸分子の定量を補助する際の正の対照となる)、1つもしくは複数のクエンチャー(一本鎖結合タンパク質やブロッキングオリゴヌクレオチドなど)、および本発明の方法を実施するための指示書などからなる群より選択される1つもしくは複数の追加的成分を含む場合がある。対照核酸分子は、未知試料中の対象核酸分子の量を決定する者を補助するための標的分子の既知量の対照試料とするために、好ましくは本発明のキット内に既知濃度で提供される。したがって、既知試料に対する、標識されたオリゴヌクレオチドの活性の尺度は、未知試料中の標的核酸分子を定量するために未知試料に対する同尺度と比較することができる。本発明のキットは、好ましくは、本発明の方法を実施するためのさまざまな試薬を含む1つもしくは好ましくは複数の容器(チューブやバイアルなど)を収納するための容器(箱、カートン、または他の包装材料)を含む。試薬類は、別の容器に収容することができるほか、1つの容器内にさまざまな組み合わせで収容することができる。本発明のこのようなキットは、本発明の方法の実施手順を記載した指示書もしくはプロトコルをさらに含み、また任意選択で、本発明のオリゴヌクレオチドと結合する検出可能な標識を検出するための機器および他の装置を含む場合がある。
【0215】
別の態様では、本発明のキットは、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または例えば2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシの修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル、または2'-もしくは3'-O-アリール修飾、2'-O-アルキル、または好ましくは2'-O-メチルで修飾された本発明のオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾などの修飾型ヌクレオチドを用いるハイブリダイゼーション反応、合成反応、増幅反応、または他の伸長反応を実施するために使用することができる。本発明の好ましいキットは、本発明の方法に使用される試薬類を含むように構成される1つまたは複数の容器(バイアルやチューブなど)を含む場合があるほか、また任意選択で試薬類の使用手順を記載した指示書またはプロトコルを含む場合がある。本発明のキットは、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド、プローブ、および/またはプライマー、ならびにヌクレオチドが修飾されたオリゴヌクレオチド、プローブ、および/またはプライマーを含むがこれらに限定されない)、耐熱性ポリメラーゼなどの1つもしくは複数のDNAポリメラーゼ、1つもしくは複数逆転写酵素、または他の任意のDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼ、1つもしくは複数の緩衝剤もしくは緩衝塩、1つまたは複数のヌクレオチド、1つもしくは複数の標的/鋳型分子(反応効率の決定、すなわち対照反応に使用される場合がある)、および本発明の方法で産生される産物もしくは中間体の解析用もしくはさらなる操作用の他の試薬類からなる群より選択される1つもしくは複数の成分を含む場合がある。このような追加的成分は、クローニングおよび/または配列決定に使用される成分、ならびに対象核酸分子の検出もしくは定量に必要とされる成分もしくは装置を含む場合がある。
【0216】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の合成に使用するキットを提供する。
【0217】
別の局面では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の増幅に使用するキットを提供する。
【0218】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸の合成産物または増幅産物の検出用または測定用のキットを提供する。
【0219】
本明細書に記載の方法および応用に対する他の適切な修飾および応用が自明であること、また発明の範囲または発明の任意の態様から解離することなくなされる場合があることは、関連分野の当業者に容易に明らかになると思われる。本発明を詳細に記載したが、本発明は、本明細書に説明目的でのみ含まれ、本発明を制限することは意図されない、以下の実施例を参照することで明瞭に理解される。
【0220】
実施例 1
オリゴヌクレオチドの調製
オリゴヌクレオチドは既知の任意の方法で調製してよい。いくつかの好ましい態様においては、市販の技術を用いて固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成してもよい。オリゴデオキシヌクレオチドはDNA合成装置-8700(ミリゲン社(Milligen)/バイオサーチ社(Biosearch))を用いて合成した。本発明のオリゴヌクレオチドには、任意の従来技術を用いて、且つ、オリゴヌクレオチド中の任意の座位(例:任意のヌクレオチド部位)に、蛍光性の成分を組み込んでもよい。例えば、自動化学合成の過程中に、蛍光標識をヌクレオシドホスホラミダイトに組み込み、且つオリゴデオキシヌクレオチドに直接組み込んでもよい。いくつかの好ましい態様において、修飾型ヌクレオチドはフルオレセイン-dTホスホラミダイト(グレンリサーチ社(Glen Research)、カタログ番号10-1056)であってもよく、フルオレセイン-dTホスホラミダイトはオリゴヌクレオチドの化学合成過程中に指定の位置に挿入されてもよい。5'-フルオレセインホスホラミダイト(FAM)(グレンリサーチ社、カタログ番号10-5901)および3'-TAMRA-CPG 500(グレンリサーチ社、カタログ番号20-5910)を用いて、化学合成過程中にオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端および3'末端をそれぞれ標識した。もしくは、反応性官能部を有するヌクレオチドを合成過程中にオリゴヌクレオチドに組み込んでもよい。合成および固体支持体からのオリゴヌクレオチドの除去が完了した後、反応性官能部分を利用して、蛍光性成分含有分子をオリゴヌクレオチドに結合させてもよい。いくつかの好ましい態様において、反応性官能部はアミノ修飾C6-dT(グレンリサーチ社、カタログ番号10-1039)であってもよく、アミノ修飾C6-dTはオリゴヌクレオチドの化学合成過程中に指定の位置に挿入し且つさらなる修飾に利用してもよい。さらなる修飾は、蛍光標識した分子の組込みを含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様において、蛍光標識した分子は、6-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(6-FAM、SE、カタログ番号C6164、モレキュラープローブ社(Molecular Probes))、フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)(モレキュラープローブ社、カタログ番号F1907)、5-(6-)-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)スクシンイミジルエステル(モレキュラープローブ社)、またはBODIPY 530/550 スクシンイミジルエステル(モレキュラープローブ社)であってもよい。
【0221】
すべての標識オリゴヌクレオチドは逆相HPLC(例:C-18カラム上で、0.2 Mトリエチル酢酸アンモニウム中に形成したアセトニトリルの濃度勾配を使用)で生成してもよい。
【0222】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置(バイオサーチ社(Biosearch)、アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)などから市販されているものなど)を使用して、当業者に既知の標準的な方法で合成してもよい。例として、スタイン(Stein)ら(Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988))の方法でホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドを合成してもよく、多孔質ガラス(controlled pore glass; CPG)ポリマー支持体を用いてメチルホスホネート型オリゴヌクレオチドを調製してもよい(Sarinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451 (1988))。オリゴヌクレオチドはまた、標準的なホスホラミダイト化学によって調製してもよく、または非特異的に核酸を切断する化合物もしくは酵素、または部位特異的な制限エンドヌクレアーゼを用いて、大きな核酸断片を切断することによって調製してもよい。本発明の標識オリゴヌクレオチドはまた、インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)(ライフテクノロジー事業部(Life Technologies Division))またはその他のオリゴヌクレオチド製造業者から購入してもよい。
【0223】
オリゴヌクレオチド合成法として好ましい方法の1つは、当業者に既知の方法で自動DNA合成装置を使用することである。所望のオリゴヌクレオチドを合成した後は、保護基を除去するため、合成および処理を行った固体支持体から当業者に既知の方法でオリゴヌクレオチドを切断する。次に、抽出およびゲル精製など当業者に既知の方法を用いてオリゴヌクレオチドを精製してもよい。アクリルアミドゲル上で分離されたオリゴヌクレオチドを調べることによって、または分光光度計で260 nmの光学濃度を測定することによって、オリゴヌクレオチドの濃度および純度を決定してもよい。
【0224】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当業者に既知の方法によって、化学合成中に標識してもよく、または合成後に標識を結合させてもよい。特定の態様において、標識成分は蛍光体である。蛍光体または消光剤として適した化学物質を表1に示す。
【0225】
【表1】
【0226】
当業者であれば、当業者に周知の分光測光技術を用いて、上述の蛍光体またはその組合せのいずれが本発明で使用可能であるかを容易に決定できる。オリゴヌクレオチドは好ましくは、Juら(Proc. Natl. Acad. Sci., USA 92:4347-4351 (1995))の論文に記載のように、修飾T塩基がアミノ修飾因子C6 dT(グレンリサーチ社)の使用により指定の位置に導入され、且つ、修飾T塩基上に第一級アミノ基が組み込まれるように合成過程中に修飾する。これらの修飾を利用して、標識オリゴヌクレオチドの指定の位置に引き続き蛍光色素を組み込んでもよい。
【0227】
また別の態様において、標識したオリゴヌクレオチドを、32P、35S、3Hなどの放射性標識を含む当業者に周知の他の任意の検出可能マーカー、またはアルカリフォスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼなど特定の化学反応の発生時に検出可能なシグナルを発する酵素マーカーでさらに標識してもよい。このような酵素マーカーは、増幅処理中または合成処理中の変性段階に耐えるよう、熱安定性を有することが好ましい。
【0228】
オリゴヌクレオチドは、ビオチンまたはジゴキシゲニンなどの分子またはハプテンに共有結合したヌクレオチドを組み込むことによって間接的に標識してもよい。ビオチンには標識したアビジン分子を結合させてもよく、ジゴキシゲニンには標識した抗ジゴキシゲニン抗体を結合させてもよい。オリゴヌクレオチドは、当業者に既知の方法によって、化学合成中に補助標識してもよく、または合成後に補助標識を結合させてもよい。
【0229】
後述の具体的な実施例で使用したプライマーの配列を表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
蛍光成分の結合対象としたヌクレオチドを太字の大文字で示した。
【0232】
実施例 2
PCR の標的および条件
当業者には、PCRで増幅可能な核酸であればいかなる核酸をも本発明の実施に使用できると理解されることと思われる。好適な核酸の例にはゲノムDNA、cDNA、およびクローニングしたPCR産物が含まれるが、これらに限定されることはない。本発明の実施は、DNA分子の使用に限定されない。例えば、当業者に周知の技術を用いて最初に第1の鎖の合成反応を行うことによって、mRNA分子を増幅反応用の鋳型として使用してもよい。本発明では、例として、対応する細胞に由来する全mRNAと第1鎖cDNA合成用Superscript(商標)システム(Gibco BRL, カタログ番号18089-011)とを用い、且つ製造業者のマニュアルに従って合成した、IL4およびβアクチンのcDNAを使用した。Gibco BRLのマニュアル(カタログ番号10156-016)に従い、IL4およびβアクチンのcDNAを増幅し、且つpTEPAプラスミドにクローニングした。
【0233】
適切なPCR条件は当業者であれば決定可能である。当業者には、目的の標的およびプライマーについてPCR反応条件を最適化するため、核酸標的の濃度、プライマー、および種々の段階の温度を調節する必要が生じうることが理解されると考えられる。このような最適化は過度の実験を必要とするものではない。本明細書に記載の具体的な実施例では、PLATINUM(登録商標)Taq反応緩衝液25μl中で、PLATINUM(登録商標)Taq 0.5 U、0.2 mM dNTPs、0.2 μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、および1.75 mM MgCl2を使用し、標的のコピー数を104〜106 としてPCRを行った。PLATINUM(登録商標)Tspも同じ条件下で使用した。熱サイクルには9600またはABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクター(Sequence Detector)(パーキンエルマー社(Perkin Elmer))を使用し、94℃で4分間変性した後、94℃で15秒間、55℃で30秒間、および72℃で40秒間を35〜40サイクル行った。2段階PCRではサイクル条件を94℃で15秒間および65℃で30秒間とした。特に断りがない限り、全実施例において、PLATINUM(登録商標)Taq(インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部)から入手可能)を使用して増幅を行った。
【0234】
実施例 3
核酸の検出
いかなる従来技術により核酸を検出することができる。いくつかの好ましい態様において、検出対象とする核酸はPCR産物であってもよく、且つ、アガロースゲル電気泳動かまたはホモジニアス(homogeneous)蛍光検出法のいずれかによって検出してもよい。この方法では、特異的に標識されたプライマーがPCR産物に取り込まれると蛍光シグナルが発せられる。この方法は、特異的な消光成分が存在していること、またはオリゴヌクレオチドを検出することを必要としない。いくつかの好ましい態様において、検出用オリゴヌクレオチドは、ヘアピン構造をつくることができ、且つ、3'末端またはその付近に結合されたフルオレセイン標識を有する。
【0235】
蛍光測定は、PCR反応緩衝液中で、ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクター、蛍光プレートリーダー(TECAN)、またはKODAK(登録商標)EDASデジタルカメラを使用して行った。励起/発光波長は、フルオレセインについては490 nm/520 nm、TAMRAについては555 nm/580 nmとした。
【0236】
実施例 4
フルオレセインで内部標識したオリゴヌクレオチドの蛍光シグナルは、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイズ時に増強する
同じ塩基配列の2つのオリゴヌクレオチドについて、T塩基上(内部標識)(オリゴA(配列番号:1))または5'末端(オリゴB(配列番号:2))を上述の方法によりフルオレセインで標識した。各オリゴヌクレオチド10ピコモルをPCR緩衝液0.05 ml中で相補的なオリゴC(配列番号:3)(50ピコモル)とハイブリダイズさせ、70℃で2分間加温し、次に25℃まで冷却した。ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクターで25〜95℃の融解曲線を決定した。
【0237】
図2A〜2Bに示すように、内部標識したオリゴA(配列番号:1)の場合は、標識していない相補オリゴヌクレオチドの存在によって蛍光シグナルが増強する。このことは、二重鎖構造の形成によってシグナル増強が生じたことを意味している。これとは対照的に、同じ配列の5'末端にフルオレセインが存在していた場合(オリゴB(配列番号:2))は、ハイブリダイズ時に蛍光シグナルが減弱した。
【0238】
実施例 5
3' 末端を TAMRA で標識したオリゴデオキシヌクレオチドでは、ハイブリダイズ時の蛍光シグナルが増強する
前記の、TAMRAで3'末端を標識したオリゴD(配列番号:4)20ピコモルを、PCR緩衝液0.5 ml中で、標識していない相補的オリゴデオキシヌクレオチド(オリゴE(配列番号:5))100ピコモルとアニーリングさせた。555 nmの励起波長を用いて分光蛍光計で蛍光発光スペクトルを検出した。
【0239】
図3に示すように、ハイブリダイズ時にシグナルの顕著な増強が観察された。このことから、本提案方法が種々の蛍光体に適用可能であることが示唆された。図中の「緩衝液」という曲線は、蛍光を緩衝溶液の波長の関数として示している。図中の「一本鎖」という曲線は、オリゴD(配列番号:4)の一本鎖単独で得られた結果を示している。非相補的なオリゴヌクレオチドをオリゴD(配列番号:4)に添加した場合は、シグナルのわずかな低減が観察された(「+非相補的」)。相補的なオリゴヌクレオチドであるオリゴE(配列番号:5)を添加した場合は、蛍光の大幅な増強が観察された(「+相補的」)。
【0240】
実施例 6
5' 末端を BODIPY 530/550 で標識したオリゴデオキシヌクレオチドでは、ハイブリダイズ時の蛍光シグナルが増強する
実施例4および5においては、フルオレセインで内部標識したオリゴヌクレオチドおよびTAMRAで3'末端を標識したオリゴヌクレオチドが、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイズ時に蛍光強度を増加させることが確認された。これとは対照的に、5'末端をフルオレセインで標識したオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ時に蛍光消光を生じる(実施例4;Cardulloら、PNAS 85: 8790-8794(1988);米国特許第5,846,729号を参照されたい。)
【0241】
しかし、オリゴヌクレオチドの5'末端部に配置されていてもハイブリダイズ時に蛍光強度を増強させうる色素がいくつか存在する。例えば、5'末端をBODIPY 530/550で標識したオリゴデオキシヌクレオチドは、ハイブリダイズ時に蛍光強度を増強させる。
【0242】
同じ配列のオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端を、フルオレセイン(オリゴF(配列番号:6))またはBODIPY 530/550(オリゴG(配列番号:7))で標識した。標識した各オリゴヌクレオチド20ピコモルを、PCR緩衝液0.5 ml中で、標識していない相補的オリゴデオキシヌクレオチド(オリゴH(配列番号:8))100ピコモルとアニーリングさせた。フルオレセインの場合は490 nm、BODIPYの場合は538 nmの励起波長を用いて、分光蛍光計で蛍光発光スペクトルを検出した。
【0243】
図4に示すように、BODIPY色素の場合はハイブリダイズ時にシグナルの顕著な増強が観察され、対照的に、フルオレセイン含有オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ時にはシグナルの低減が観察された。
【0244】
実施例4、5、および6の結果は、所与のオリゴヌクレオチドに蛍光体を結合させる位置(すなわち、配列内部、3'末端、および5'末端)の結果として、所与の蛍光体の蛍光特性(具体的には蛍光強度)が、発光スペクトルの有意なシフトを生じることなく、ハイブリダイズ時に影響されうるということを示している。
【0245】
実施例 7
フルオレセインで内部標識したプライマーを用いる、 IL4 cDNA の定量的 PCR
前述の方法を用いて、化学合成中に、IL-4プライマーの配列内にフルオレセイン-dTを直接組み込んだ。これにより得られたオリゴヌクレオチド(オリゴA(配列番号:1))を、IL4 cDNA増幅用のリバースプライマーとして使用した。種々の量の鋳型DNAの存在下で、リバースプライマー(オリゴA(配列番号:1))およびフォワードプライマー(オリゴI(配列番号:9))を用いて前述のように定量的PCRを実施した。1回の反応につき、濃度が未知である標的の試料4つと、クローニングしたIL4標的のコピー107個、106個、105個、104個、103個、102個、10個、および0個とを使用した。図5Aに示すように、DNA標的の希釈液はいずれも極めて高感度で検出可能であった。
【0246】
この実施例の結果は、標識したオリゴヌクレオチドの構造内に消光剤が存在していなくても、これを定量的PCRに問題なく使用できることを示している。
【0247】
実施例 8
合成後に FTTC で標識したプライマーを用いる、 IL4 cDNA のリアルタイム PCR
IL4用のリバースプライマー(オリゴA(配列番号:1))を合成し、前述のように合成後に標識した。前記実施例の説明と同様に、核酸標的のコピーを106個、104個、102個、および0個として増幅を行った。図6に示すように、DNA標的の希釈液はいずれも検出可能であった。
【0248】
前記実施例の実験結果は、異なるオリゴヌクレオチド標識法を使用して同じ結果が得られうることを示している。さらに、2つの合成法ではオリゴヌクレオチドと蛍光体との間のリンカーアームが異なる構造となるため、本提案方法において、異なるリンカーアームを用いて蛍光体を結合させてもよい。
【0249】
実施例 9
フルオレセインで内部標識したプライマーを用いる、βアクチン cDNA のリアルタイム PCR
ヒトβアクチンcDNA用のフォワードプライマーの配列内に、フルオレセイン-dTを化学合成中に直接組み込んだ(オリゴJ(配列番号:10))。このオリゴヌクレオチドと標識していないリバースプライマー(オリゴK(配列番号:11))とをβアクチンcDNAの増幅に使用した。HeLa細胞のmRNAの逆転写により、cDNA標的を得、且つ、クローニングされたcDNA断片(1回の反応につきコピー数107個、105個、および0個)を得た。前述のとおり定量的PCRを実施した。図7に示すように、DNA標的の希釈液はいずれも検出可能であった。
【0250】
この実験の結果は、本提案方法を用いて異なる標的を検出できることを示している。
【0251】
実施例 10
標的に非相補的な「 Tag 」配列を介して内部標識したプライマーを用いる、βアクチン cDNA のリアルタイム PCR
前述の実験はいずれも、標的の核酸と相補的なオリゴヌクレオチドの配列内に標識が組み込み可能であることを示している。しかし、PCRプライマーの5'末端に結合された非相補的なタグ配列上に標識が存在する場合も同じ結果が得られうる。この場合は、このテールドプライマー(tailed primer)がコピーされ且つ二本鎖PCR産物の中に組み込まれた後にシグナルが生成される。βアクチンPCRでこの手法を実施した。
【0252】
標的と非相補的な9ヌクレオチドのテールの構造内に直接組み込んだフルオレセイン-dTを用いて、オリゴデオキシヌクレオチド(オリゴL(配列番号:12))を合成した。このテールをβアクチンのフォワードプライマーの5'末端に付加した。オリゴL(配列番号:12)と標識していないリバースプライマー(オリゴK(配列番号:11))とを用いて、βアクチンcDNA、ならびにコピー数106個、104個、および0個のクローニングした標的を増幅した。図8に示すように、全cDNA群中のcDNAおよびクローニングした標的はいずれも検出された。
【0253】
実施例 11
修飾型オリゴヌクレオチドプライマーを用いる対立遺伝子特異的 PCR
対立遺伝子特異的PCRの原理を図9に示す。この方法は、3'末端が突然変異部位に配置される(すなわち、プライマーの最も3'末端側のヌクレオチドが、標的/鋳型の核酸中の変異ヌクレオチドに対応する)よう設計されたプライマーを用いたPCRによる、標的対立遺伝子の特異的な増幅に基づいて実施される。この塩基が、特定の対立遺伝子の対応ヌクレオチドの塩基と相補的である場合は、標的が増幅される;相補的でない場合は、PCRの進行が顕著に遅くなる。遅延が長いほど、このシステムによる対立遺伝子の識別効率が高くなる。本発明は、いくつかの好ましい態様において、対立遺伝子の識別を向上させるような特異性増強基を有する、対立遺伝子特異的PCRに有用なオリゴヌクレオチドを提供する。
【0254】
通常のPCRプライマーと、3'末端付近の塩基をフルオレセインで標識したプライマーとを用いて、対立遺伝子特異的PCRを実施した。IL4 cDNA上のC297およびG300の2箇所を検出位置として選択した。各検出位置について、同じフォワードプライマー(オリゴ1(配列番号:9))と、異なるリバースプライマー(標的に相補的な野生型(WT)または3'末端にミスマッチを有する突然変異型(MUT))とを用いて、2セットのPCRを実施した。使用したプライマーの配列を表2に示す。これらの対立遺伝子特異的なプライマーはそれぞれ、3'末端付近のT塩基に化学修飾を伴って、および伴わずに合成した。使用したプライマーは、塩基297位のC対立遺伝子に相補的なプライマー「297 WT」(オリゴ2(配列番号:14))、3'末端にC-T変異を有する同じプライマー「297 MUT」(オリゴ3(配列番号:15))、塩基300位のC対立遺伝子に相補的なプライマー「300 WT」(オリゴ4(配列番号:16))、および3'末端にG-T変異を有する同じプライマー「300 MUT」(オリゴ5(配列番号:17))である。オリゴヌクレオチド6、7、8、9(それぞれ、配列番号:1、19、20、21)は、指定のT塩基にフルオレセインを結合させたオリゴヌクレオチド2、3、4、5(それぞれ、配列番号:14、15、16、17)と対応する。
【0255】
前述のように、PLATINUM(登録商標)Taqを使用して3段階PCRを40サイクル実施した。結果を図10に示す。3'末端における297位または300位のリバースプライマーは、標的と相補的である(WT)か、または3'変異を有する(MUT)プライマーとした。レーン1〜4は、特異性増強基としてフルオレセインで修飾したプライマーを用いて得た結果を示す。レーン5〜8は非修飾型プライマーを用いて得た結果である。レーン1〜5はプライマー297 WT、レーン2〜6はプライマー297 MUT、レーン3〜7はプライマー300 WT、レーン4〜8はプライマー300 MUTをそれぞれ用いて得た結果を示す。レーン2と6との比較、およびレーン4と8との比較から、修飾が存在することによって、40サイクルでほぼ完全な識別が可能になることが示唆される。本発明の実施がフルオレセインの使用に限定されることはなく、特異性増強基としてTAMRAを使用した場合も同様の結果が得られた。
【0256】
実施例 12
ヘアピンオリゴヌクレオチドプライマーを用いる対立遺伝子特異的 PCR
突然変異の識別は、対立遺伝子特異的なプライマーの二次構造を介して向上できることが発見されている。この特徴を、RDS遺伝子に特異的なプライマーを用いて例示する。RDS遺伝子用のフォワードプライマーは、C/T多型部位である塩基558位に3'末端が位置するようなプライマーとした。DNA標的はC対立遺伝子を含むものとした。リバースプライマーは両対立遺伝子について同じものを使用し、且つ、リアルタイムにおける増幅のホモジニアス検出(homogeneous detection)を可能にするような標識を含有するプライマーとした(オリゴ10(配列番号:22))。対立遺伝子特異的なフォワードプライマーの構造は、従来の線状構造(オリゴ11、12(それぞれ、配列番号:23、24))またはヘアピン構造(オリゴ13、14(それぞれ、配列番号:25、26))のいずれかとした。ヘアピンプライマーは、標的特異的な配列とプライマーの3'末端断片に相補的な短いテールとで構成した。前述のように、PLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを使用してPRIZM(登録商標)7700で3段階PCRを実施した。図11の結果は、プライマーの平滑末端ヘアピン構造により突然変異の識別能が顕著に向上することを示している。本発明のプライマーを用いて、PLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼによる対立遺伝子特異的PCRによって、同じ蛍光リバースプライマー(オリゴ10(配列番号:22))と、異なる対立遺伝子特異的フォワードプライマーとを使用してヒトRDS遺伝子のC対立遺伝子とT対立遺伝子とを識別した。使用したプライマーは、C対立遺伝子に特異的な線状プライマー「L-C」(オリゴ11(配列番号:23))、T対立遺伝子に特異的な線状プライマー「L-T」(オリゴ12(配列番号:24))、C対立遺伝子に特異的なヘアピンプライマー「H-C」(オリゴ13(配列番号:25))、およびT対立遺伝子に特異的なヘアピンプライマー「H-T」(オリゴ14(配列番号:26))である。反応のリアルタイム蛍光測定の比較結果をサイクル数の関数としてプロットした。線状のTミスマッチプライマーからは、ヘアピン型のTミスマッチプライマーよりはるかに早く、検出可能なシグナルが発せられた。このことは、プライマーの3'末端をヘアピン内に組み込むことにより対立遺伝子の識別能が向上したことを示している。
【0257】
ヘアピンプライマーを使用した対立遺伝子特異的PCRの別の実施例を図12に示す。この実施例では、2つのゲノムDNA試料を2段階PCRで試験した。試料の1つはRDS遺伝子の558C対立遺伝子を有し、もう1つは558T対立遺伝子を有することが既知であった。フォワードプライマーは全てヘアピンプライマーとし、検出には蛍光リバースプライマーを使用した。曲線1はC特異的プライマーを用いてC標的DNAで得られたもの;曲線2はC特異的プライマーを用いてT標的DNAで得られたもの;曲線3はC特異的プライマーを用いて標的DNAなしで得られたもの(陰性対照);曲線4はT特異的プライマーを用いてT標的DNAで得られたもの;曲線5はT特異的プライマーを用いてC標的DNAで得られたもの;曲線6はT特異的プライマーを用いて標的DNAなしで得られたもの(陰性対照)である。
【0258】
この結果から、ヘアピンプライマーを使用した場合、C特異的プライマーではC対立遺伝子のみが、T特異的プライマーではT対立遺伝子のみがシグナル陽性となることが示された。プライマーが3'末端にミスマッチを有する場合は、蛍光の増強が検出されなかった。標的の不在下ではシグナルが発せられなかった。図13A〜Bに示すように、リアルタイムの場合のみならずエンドポイントにおいても、同様の高い特異性で対立遺伝子が検出可能であった。検出には蛍光リバースプライマーを使用した。1、3、5はC特異的プライマー、2、4、6はT特異的プライマー、1および2はC対立遺伝子標的DNA、3および4はT対立遺伝子標的DNA、5および6はDNAなし(陰性対照)である。図13Aは蛍光測定結果の棒グラフであり、図13Bは増幅反応後の反応混合物の写真である。検出システムのシグナル/雑音比が高いためエンドポイントでの検出が可能であり、蛍光プレートリーダーまたはUVトランスイルミネータおよびデジタルカメラを使用することにより検出を行うことができる。
【0259】
本発明のプライマーの利用による別の驚くべき結果として、PCR反応からのプライマー二量体の排除がある。図14に示すように、PCR反応にヘアピンオリゴヌクレオチドを使用することにより、プライマー二量体の形成が阻害される。PCR標的としてIL4 cDNAを使用した。オリゴ1(配列番号:9)をフォワードプライマーとして、オリゴ2(配列番号:14)を線状リバースプライマーとして、オリゴ15(配列番号:27)をヘアピンリバースプライマーとして使用した。PLATINUM(登録商標)Taqを使用してPCRを50サイクル行った。レーン1、5は標的のコピーを106個、レーン2、6は標的のコピーを104個、レーン3、7は標的のコピーを102個含んだものであり、レーン4、8は標的を含まないものである。レーン4と8との比較から、線状リバースプライマーではプライマー二量体が形成されたがヘアピンリバースプライマーでは形成されなかったことが示される。
【0260】
実施例 13
対立遺伝子特異的 PCR におけるミスマッチ識別ポリメラーゼの使用
対立遺伝子特異的PCRによって対立遺伝子を識別する能力は、オリゴヌクレオチドの最も3'末端側のヌクレオチドが標的核酸配列と塩基対を形成していないときオリゴヌクレオチドを実質的に伸長できないよう改変されたDNAポリメラーゼを用いることによって向上させてもよい。このような改変DNAポリメラーゼの調製法は国際公開広報第99/10366号および同第98/35060号に開示されている。これらの公報には、熱安定性ポリメラーゼ、特にテルモトーガ(Thermatoga spp)から単離された熱安定性DNAポリメラーゼのクローニングおよび突然変異生成が開示されている。本発明のいくつかの好ましい態様においては、テルモトーガ・ネオポリタナ(Thermotoga neopolitana) (Tne) のDNAポリメラーゼ由来の突然変異DNAポリメラーゼを用いて対立遺伝子特異的PCRが実施される。好適な突然変異には、1つ以上のアミノ酸欠失、フレームシフト突然変異、酵素中の1つ以上の部位で1つ以上のアミノ酸置換を起こす点突然変異、挿入突然変異、およびこれらの組合せが含まれる。本発明の好ましい態様において、突然変異は、アミノ酸284番目のメチオニンから始まる断片を残すような、野生型酵素の最初の283個のアミノ酸の欠失(Δ283)、323番目のアミノ酸をアスパラギン酸からアラニンに変更させるような点突然変異(D323A)、および722番目のアミノ酸をアルギニンからリシンに変更させるような点突然変異(R722K)を含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様において、突然変異Tne DNAポリメラーゼは少なくとも3つの突然変異(すなわち、Δ283、D323A、およびR722K)を有する。
【0261】
インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部)が所有する酵素、PLATINUM(登録商標)Tsp DNAポリメラーゼは、温度による賦活化が可能であり、したがってPCRのホットスタートを可能にする(米国特許第5,338,671号および同第5,587,287号)。本明細書では、この酵素の新しい特性、すなわち、プライマーの塩基対3'末端に対する特異性の高さについて開示する。PLATINUM(登録商標)TspまたはPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを用い、IL4 cDNAを標的として使用してPCRを45サイクル行った。IL4 cDNAの、C297およびG300の2箇所を検出部位として選択した。これら各位置について、同じフォワードプライマー(オリゴ1(配列番号:9))と、異なるリバースプライマーとを使用して2つのPCR反応を行った。プライマーの配列を表2に示す(オリゴ1〜5(配列番号:9, 14〜17))。オリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドが標的に相補的である場合を野生型(WT)、3'末端にミスマッチを有する場合を突然変異型(MUT)とした。使用したオリゴヌクレオチドは、297位でC対立遺伝子と相補的な297 WTプライマー(オリゴ2(配列番号:14)、レーン1)、3'末端のC-T変異以外は297 WTプライマーと同じ配列を有する297 MUTプライマー(オリゴ3(配列番号:15)、レーン3)、300位でC対立遺伝子と相補的な300 WTプライマー(オリゴ4(配列番号:16)、レーン2)、および3'末端のG-T変異以外は300 WTプライマーと同じ配列を有する300 MUTプライマー(オリゴ5(配列番号:17)、レーン4)である。図15に示すように、PLATINUM(登録商標)Tsp DNAポリメラーゼを使用した場合の結果とPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを使用した場合の結果とを比較すると、PLATINUM(登録商標)TspのほうがPLATINUM(登録商標)Taqよりも識別特性が優れている。
【0262】
実施例 14
PCR の特異性を高めるためのヘアピンプライマーの使用
この実験では、Pfx緩衝液(インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部))中でPLATINUM(登録商標)Pfx温度安定性ポリメラーゼを使用してヒトゲノムDNAからヒトβグロビンの3.6 kb断片を増幅した。2つの異なるプライマーセットを使用した。各プライマーセットは、線状プライマーのペア1つと、同じ遺伝子特異的なプライマー配列を有するヘアピンプライマーのペア1つという、2つのプライマーペアで構成した。オリゴヌクレオチドの各ペアのヘアピン型のものは、前述のように、オリゴヌクレオチドの3'末端に相補的な塩基をプライマー配列の5'末端に追加することによって作製した。典型的に、5'末端に追加する塩基の数は、オリゴヌクレオチドが、アニーリング温度より低い温度でヘアピンを形成し、且つ、アニーリング温度またはその付近では線状となるように選択した。当業者であれば、プライマーが線状になる温度を制御するため、プライマーの5'末端に追加するヌクレオチドの数を容易に決定できる。
【0263】
βグロビン遺伝子の増幅には2セットのプライマーを使用した。セットA−オリゴ16(配列番号:28)および17(配列番号:29)(線状)、または18(配列番号:30)および19(配列番号:31)(ヘアピン型)、ならびに、セットB−オリゴ20(配列番号:32)および21(配列番号:33)(線状)、または22(配列番号:34)および23(配列番号:35)(ヘアピン型)である。PCRは、種々の量の鋳型DNAを使用して、次のとおり実施した:94℃2分間、続いて、94℃で15秒間、60℃で30秒間、68℃で4分間を35サイクル。結果を図16A〜Bに示す。「M」と表示したレーンは、分子量マーカーを含むレーンである。レーン1および2は鋳型DNAを50 ng使用して得られた結果、レーン3および4は鋳型DNAを20 ng使用して得られた結果、レーン5および6はDNAを使用せずに行った対照である。線状のプライマーセットでは種々のミスプライミング産物およびプライマー二量体が産生されたが、対応するヘアピンプライマーを用いた増幅では、不適当な産物をほとんど生じることなく、予測されたサイズの増幅産物が産生されたことが明らかである。
【0264】
別のヒト遺伝子、壊死因子2(Necrosis Factor 2、NF2)の増殖においても同様の結果が得られた。PCR SuperMix(インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部))中でPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを使用して1.3 kbおよび1.6 kb断片を増幅した。1.3 kb断片の増幅には、プライマーとして、オリゴ24(配列番号:36)および25(配列番号:37)(線状)、または26(配列番号:38)および27(配列番号:39)(ヘアピン型)を使用した。1.6 kb断片の増幅には、プライマーとして、オリゴ28(配列番号:40)および29(配列番号:41)(線状)、または30(配列番号:42)および31(配列番号:43)(ヘアピン型)を使用した。ヒトゲノムDNA 50 ngに対して、次のようにPCRを行った:94℃2分間、続いて、94℃で30秒間、62℃で30秒間、68℃で4分間を35サイクル。結果を図17A〜Bに示す。レーン「M」は、分子量マーカーを含むレーンである。「+」は鋳型DNAが存在することを示し、「-」はDNAを含まない対照を示す。レーン1は、鋳型DNAの存在下で1.3 kb断片用の線状プライマーを使用した結果を示す。レーン2はレーン1に対するDNA不使用対照である。レーン3は、1.3 kb断片用のヘアピンプライマーを使用した結果を示す。レーン4はレーン3に対するDNA不使用対照である。レーン5は、1.6 kb断片用の線状プライマーを使用した結果を示す。レーン6はレーン5に対するDNA不使用対照である。レーン7は、1.6 kb断片用のヘアピンプライマーを使用した結果を示す。レーン8はレーン7に対するDNA不使用対照である。いずれの場合も、同じ遺伝子特異的配列の線状プライマーと比較して、ヘアピンプライマーのほうが、適切なサイズの増幅産物をより多く且つ純粋に生成した。
【0265】
実施例 15
ヘアピンプライマーの 5' 末端を 2'-O メチル , 5'-5' ホスホジエステル結合で修飾すると、プライマー二量体の発生率が低下しうる
ヒトツベリン(tuberin)cDNAを、MgCl2の濃度を3 mMとし、3%グリセロールを添加した以外は実施例2と同様の方法でPCRにより増幅した。検出にはSYBR Green(モレキュラープローブ社、30,000倍に希釈)を使用した。各プライマーセットにつき、標的を添加した反応2つと標的を使用しない対照反応(NTC)6つとからなる8つの反応を行った。プライマー二量体形成の頻度およびプライマー形成が生じたサイクル数をプライマー二量体人工産物の尺度として使用した。
【0266】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーとしてオリゴヌクレオチド32および33を使用した。
【0267】
【0268】
図18A〜Dの結果は、修飾が標的増幅にネガティブな影響を与えないことを示している(標的+)。しかし、プライマー二量体の形成は大幅に低減された。プライマーの5'末端付近に修飾を行った場合も同様の結果が得られる可能性がある。図18A〜Dにおいて:
18A − 5'末端を修飾していないフォワードプライマーおよびリバースプライマー;
18B − 両プライマーの5'末端のヌクレオチドを2'-O-メチル類似物で置換;
18C − 両プライマーの5'末端のヌクレオチドに5'-5'ホスホジエステル結合を使用;
18D − フォワードプライマーを2'-O-メチルで、リバースプライマーを5'-5'結合で修飾。
【0269】
実施例 16
ヘアピンプライマーの 5' 末端を C3 アミノ、 C6 アミノ、またはビオチンで修飾すると、プライマー二量体の発生率が低下しうる
ヒトツベリンcDNAを、実施例2と同様にPCRにより増幅した。検出には、フルオレセイン標識したフォワードプライマーを使用した。各プライマーセットにつき、標的を添加した反応2つと標的を使用しない対照反応(NTC)6つとからなる8つの反応を行った。プライマー二量体形成の頻度およびプライマー形成が生じたサイクル数をプライマー二量体人工産物の尺度として使用した。
【0270】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーとしてオリゴヌクレオチド34および33を使用した。
【0271】
【0272】
図19A〜Dの結果は、標的不使用の対照においてプライマー二量体の形成が大幅に低減されたことを示している。プライマーの5'末端付近に修飾を行った場合も同様の結果が得られる可能性がある。図19A〜Dにおいて:
19A − 5'末端を修飾していないフォワードプライマーおよびリバースプライマー;
19B − 両プライマーの5'末端をC3アミノ修飾剤(グレンリサーチ社)で修飾;
19C − 両プライマーの5'末端をC6アミノ修飾剤(グレンリサーチ社)で修飾;
19D − 両プライマーの5'末端をビオチン(グレンリサーチ社)で修飾。
【0273】
実施例 17
プライマー二量体形成に対する 3' 末端伸長ヌクレオチドの影響
前述のとおり、ヘアピンプライマーを使用してプライマー二量体形成を最小限に抑える別の方法は、互いに相補的でない1つまたは2つまたはそれ以上のヌクレオチドで3'末端を伸長したオリゴヌクレオチドをつくることである。この実施例では、特定の条件下で顕著なプライマー二量体人工産物を示した2つの標的、ヒトツベリンcDNAおよびヒトRDS遺伝子を選択した。MgCl2の濃度を3 mMとし、3%グリセロールを添加した以外は実施例2と同様の方法でPCRを行った。検出にはSYBR Green(モレキュラープローブ社、30,000倍に希釈)を使用した。各プライマーセットにつき、標的を添加した反応2つと標的を使用しない対照反応(NTC)6つとからなる8つの反応を行った。プライマー二量体形成の頻度およびプライマー形成が生じたサイクル数をプライマー二量体人工産物の尺度として使用した。
【0274】
【0275】
図20A〜Dの結果は、3'末端を伸長したヘアピンプライマーを使用した場合に、プライマー二量体人工産物が顕著に低減されることを示している。図20A〜Dにおいて:
20A − 平滑末端を有するヘアピン型のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてツベリンcDNAを増幅(オリゴ32および33);
20B − 3'末端を伸長したフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてツベリンcDNAを増幅(オリゴ35および36);
20C − 平滑末端を有するヘアピン型のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてヒトRDS遺伝子を増幅(オリゴ37および38);
20D − 3'末端ヌクレオチドを1つ伸長したフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてヒトRDS遺伝子を増幅(オリゴ39および40)。
【0276】
実施例 18
プライマー二量体は、プライマーの 1 つに蛍光体を、別の 1 つに消光剤を配置することによって非蛍光性にすることができる
この実施例で説明する方法においては、プライマー二量体の形成を防止するのではなく、これらを不可視化する。この手法を、ヒト遺伝子WIAE-1328の対立遺伝子特異的PCRで実施した。PCRの条件は実施例2と同様である。リバースプライマーには、フルオレセインで標識した同じオリゴ43を使用した。A対立遺伝子およびB対立遺伝子用のフォワードプライマーは、消光剤としてDABCYLで標識した(オリゴ41および42)。図21が示しているとおり、標的でない対照の蛍光シグナルはプライマー二量体の形成に伴って低下した。同時に、標的の存在下ではシグナルの正常な増強が観察された。
【0277】
【0278】
実施例 19
IL4 cDNA およびβアクチンのマルチプレックス PCR
この実施例は、本発明の検出法の多重処理能を示すものである。IL4 cDNA用には、フォワードプライマー(オリゴ46)およびフルオレセイン標識したリバースプライマーの2つのプライマー(オリゴ47)を使用した。βアクチンの増幅用としては、フォワードプライマーをJOEで標識し(オリゴ44)、リバースプライマーは標識せずに(オリゴ45)使用した。これら4つのプライマーすべてを、実施例2で説明した条件下で同一チューブ内で増幅した。βアクチン標的の濃度は一定に維持され(1つの反応につきコピー数106個)た。IL4標的の濃度はコピー数2個〜3 x 105個とばらつきがあった。2つの蛍光体の蛍光をリアルタイムで検出した。図22A〜Bの結果は、検出の感度が高く且つダイナミックレンジが大きいことを示している。
【0279】
【0280】
実施例 20
対立遺伝子特異的 PCR と組み合わせた、ユニバーサル検出プライマー形式
蛍光修飾したオリゴヌクレオチドを、遺伝子特異的なあらゆるヌクレオチド標的配列を検出できるような形式で使用してもよい。より具体的には、前述の各実施例で説明した設計の蛍光性検出用プライマーを、3つのプライマーを必要とする「ユニバーサル」プライマー形式で、PCR産物の検出に使用した。この方法においては、PCRに使用する遺伝子特異的標的プライマーの5'末端に配列テール(テールX)を追加する必要がある。テールXは標的に非相補的な配列である。テールを付けた配列は、蛍光検出プライマーの3'末端配列と同一である。第2のプライマーは、テールXと少なくとも部分的に同一であり、且つ、蛍光部分を有する、ユニバーサルプライマーである(線状またはヘアピン型)。第3のプライマーは通常のPCRプライマーである。第1のプライマーがフォワードプライマーである場合は第3のプライマーがリバースプライマーであり、第1のプライマーがリバースプライマーである場合は第3のプライマーはフォワードプライマーである。したがって、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの両方、ならびにユニバーサルプライマーが使用されうる。フォワードプライマーおよびリバースプライマーがXテールを有していてもよく、または一方がXテールを有し且つ他方がYテールを有していてもよい。ユニバーサルプライマーがXテール配列を含んでいてもよく、または1つがXテール配列を含みもう1つがYテール配列を含む2つのユニバーサルプライマーを使用してもよい。PCRのサイクル初期に生成された増幅産物が、サイクル後期においてユニバーサル検出プライマーの鋳型として機能する。図33を参照されたい。
【0281】
本実施例では遺伝子特異的配列を対立遺伝子特異的PCR用に設計したが、遺伝子特異的プライマーに適切な配列の5'末端テールを追加することにより、任意の標的に対してユニバーサル検出形式を使用してもよい。PCRは、1.5 mM MgCl2、0.2 mMの各dNTP、PLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ 2.5 U、0.2 μMの標識したユニバーサル検出用フォワードプライマー、0.02 μMの対立遺伝子特異的なテールを付加したフォワードプライマー、および0.2 μMのリバースプライマーを含む、反応緩衝液(20 mM Tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl)50 μl中で行った。熱サイクルおよび蛍光検出は、ABI 7700シークエンスディテクションシステム(Sequence Detection System)を用いて、25℃を2分間保持、94℃を2分間保持、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル、および25℃を2分間保持するという設定で実施した。
【0282】
図23で使用したプライマー配列は、ユニバーサル検出プライマー用のオリゴ48、対立遺伝子A特異的なフォワードプライマー用のオリゴ49、およびリバースプライマー用のオリゴ50である。対立遺伝子B特異的なフォワードプライマー(オリゴ51)を使用した場合、ユニバーサル形式の検出と対立遺伝子識別とは等価であった。同じ実験で他のユニバーサル検出配列(オリゴ52〜58)を使用した場合も、同様の結果が得られた。これらおよび他のユニバーサルプライマー配列をFAM以外の色素(JOE、TAMRA、ALEXA 450、ALEXA 594、HEX、およびTET)で標識した場合も、同様の結果が得られた。
【0283】
【0284】
実施例 21
標識したオリゴヌクレオチドの配列決定
標的の各鎖において標識オリゴヌクレオチドの配列を発見するには、標識したプライマーを以下の段階により発見する:
段階1 − Tを発見する。
段階2 − Tの3'側がAG、TG、AC、TC、C、またはGであること。
段階3 − Tの5'側は、3つのヌクレオチドのうち少なくとも1つがGであること(NGG/GNG/GGN、NNG、NGN、GNN、またはGGG)(これらの配列は好ましい順に記載してある)。
段階4 − 段階2で発見した3'末端を有するプライマーを、64〜70℃、好ましくは66〜68℃で作製する。Rozen, S.およびH.J. Skaletsky(1996, 1997, 1998)「Primer 3」を参照されたい(コードはhttp:/www-genome.wi.mit.edu/genome_software/other/primer3.htmlまたはhttp:/www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3 www.cgiより入手可能)。
段階5 − デルタG(すなわち、得られるヘアピン構造の安定性を決定するエネルギーの測定値)を確認しながら、3'末端に相補的なヌクレオチドを5'末端に追加することによって、ヘアピンをつくるためのテールをプライマーに追加する。
デルタGは「Primer 3」を用いて算出する。デルタGの計算結果は2.5〜5.5であること。デルタGが小さいほどヘアピン構造の安定度が高い。
【0285】
段階1〜5の結果として、両鎖用の標識プライマーが得られる。
【0286】
さらに、上述の各段階を、「Primer 3」(一般公開されている)などの既存のプライマー設計用プログラムと組み合わせても良い。標識したプライマーと、標識していないその相対物とをDNA標的の各鎖上に発見する必要がある。次に、以下の各段階を行う:
段階1 − Tを発見する。
段階2 − Tの3'側がAG、TG、AC、TC、C、またはGであること。
段階3 − Tの5'側は、3つのヌクレオチドのうち少なくとも1つがGであること(NGG/GNG/GGN、NNG、NGN、GNN、またはGGG)。
段階4 − 段階2で発見した3'末端を有するプライマーを、64〜70℃、好ましくは66〜68℃で作製する。Rozen, S.およびH.J. Skaletsky(1996, 1997, 1998)「Primer 3」を参照されたい(コードはhttp:/www-genome.wi.mit.edu/genome_software/other/primer3.htmlまたはhttp:/www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3 www.cgiより入手可能)。
段階5 − 最良のプライマーを選択するため、標識プライマーに「Primer 3」の関数を適用する。選択した各標識プライマーに対する相対プライマー(右側標識に対しては左側、左側標識に対しては右側)を発見する。
段階6 − 得られるヘアピン構造のデルタGを確認しながら、3'末端に相補的なヌクレオチドを5'末端に追加することによって、ヘアピンをつくるためのテールをプライマーに追加する。
デルタGは「Primer 3」を用いて算出する。デルタGの計算結果は2.5〜5.5であること。
【0287】
実施例 22
PCR プライマーの 3' 末端のヌクレオチド残基を 2'-O- メチルで修飾することにより、対立遺伝子特異的 PCR の特異性が上昇しうる
対立遺伝子特異的PCRの原理を図9に示し、且つ実施例11で説明した。この実験では、2セットのPCRプライマー(セットAおよびB)を用いて線状化したpUC19プラスミド20 ngを増幅した。PCRを実施例2と同様に実施した。検出には、実施例15に記載のSYBR Greenを使用した。
【0288】
セットAは通常の線状オリゴヌクレオチドで構成した。フォワードプライマーとして、3'末端がA、T、C、およびGである4種類のオリゴヌクレオチドを使用した。末端がCのオリゴヌクレオチドのみが標的と相補的であり(G/C)、他は3'末端にミスマッチを有する(G/T; G/A; G/G)。リバースプライマーにはオリゴ63を使用した。
【0289】
セットBにも同じ配列のオリゴヌクレオチドを使用したが、全てのフォワードプライマーの3'末端ヌクレオチドを2'-O-メチルで修飾した。リバースプライマーにはオリゴ63を使用した。
【0290】
【0291】
リアルタイムPCRの結果を図24A〜Bに示す。この結果は、修飾が存在することによりウィンドウ識別(マッチするプライマーによる増幅産物とミスマッチのプライマーによる増幅産物が出現するサイクル数の差)が向上することを示している。
【0292】
さらに、下記にオリゴ68、69、70、および71として示した配列の異なる4つのフォワードプライマーを使用して、2.7 Kbの標的DNA配列(pUC19)の増幅実験を行った。各フォワードプライマーは、3'末端ヌクレオチドにdNTPまたは2'-O-メチルリボヌクレオチドを有する類似のプライマーを有する。図25Aは、3'末端に標準的なヌクレオチド(デオキシヌクレオチド)を有するフォワードプライマーを用いた増幅結果を示す;図25Bは、3'末端に2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を有するフォワードプライマーを用いた増幅結果を示す。リバースプライマーは各増幅アッセイ法で同じものを使用した(オリゴ72を参照されたい)。C、T(U)、G、およびAと記したレーンは各フォワードプライマーの3'末端ヌクレオチドの配列を示しており、Cでは標的配列と正しいワトソン/クリック塩基対が形成されている。標的配列をTaq DNAポリメラーゼで増幅し、増幅サイクルを40回繰り返した。各増幅反応は二連に実施した。図26A〜Bに、30回繰り返した増幅サイクルを示す。
【0293】
【0294】
図25A〜Bおよび図26A〜Bの結果は、非修飾のプライマーを使用した場合と比較して、2'-O-メチル修飾したプライマーでは増幅産物の特異性が上昇することを示している。
【0295】
実施例 23
3' 末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる 3' 末端のヌクレオチド残基の 2'-O- メチル修飾は、 Taq ポリメラーゼにより、効率が有意に低下した状態で伸長される
この実験では、3'末端ヌクレオチドにデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、および2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含むプライマーをTaq DNAポリメラーゼにより60℃で伸長させたときの相対的な伸長度を分析した。その結果を図27A〜Cに示す。各種類の3'末端ヌクレオチド修飾(標準的な非修飾型プライマーも含む)について、完全に相補的なプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および3'末端で一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。これらのアッセイ法に使用したプライマー配列はオリゴ73およびオリゴ74である。オリゴ73の鋳型配列は
である。
オリゴ74の鋳型配列は
である。
【0296】
末端がリボヌクレオチドまたは2'-O-メチルであるオリゴヌクレオチドの場合は、3'末端ヌクレオチドにチミンではなくウラシルを使用した(オリゴ74を参照されたい)。
【0297】
【0298】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、60℃のDNA基質の溶液9 μLに市販(インビトロジェン社、ライフテクノロジー事業部;メリーランド州Rockville))のTaq(5単位/μlを1 μL)を添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、Taqポリメラーゼ添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0299】
このアッセイ結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチドまたは2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーはTaqポリメラーゼによる伸長が可能である(図27BおよびC)。ただし、2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾した3'末端の伸長効率は、3'末端にdNTPまたはrNTPを含むプライマーと比較して低い(図27AとBとのデータ比較);(ii)各3'末端リボース修飾について、プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、完全にアニーリングしたDNA基質と比較して、Taqによる伸長効率が低い(図27A〜Cのパネルaとbとのデータ比較);および(iii)3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーは、Taqによる伸長の効率が有意に低下する(図27C、パネルb)。
【0300】
実施例 24
2'-O- メチル修飾したプライマーの 3' 末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる DNA 基質は、 Taq ポリメラーゼによる伸長レベルが無視できる程度に低い
図28A〜Bは、3'末端ヌクレオチドに2'-O-メチルリボース修飾を含むプライマーの、周囲温度(レーンa)、55℃(レーンb)、および72℃(レーンc)における相対的な伸長効率を示している。図28Aは完全に相補的なプライマー/鋳型基質を、図28Bはプライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるプライマー/鋳型基質を示している。
【0301】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、周囲温度、55℃、および72℃にしたDNA基質の溶液9 μLにTaq(5単位/μlを1 μL)を添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各パネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、Taq添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0302】
この結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端に2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーは、周囲温度において、Taqポリメラーゼによる伸長効率が非常に低くなる;および(ii)プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は(図28B)、本アッセイ法の各温度において、10分間の反応後、Taqによる伸長レベルが無視できる程度に低い。
【0303】
実施例 25
3' 末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる 2'-O- メチルリボヌクレオチド修飾プライマーは、類似のプライマー / 鋳型基質に対して伸長効率が有意に低かった
図29は、デオキシヌクレオチド修飾(パネルI)、リボヌクレオチド修飾(パネルII)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾(パネルIII)を3'末端ヌクレオチドに含むプライマーを、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントにより37℃で伸長したときの相対的な伸長効率を示している。各種類の3'末端修飾について、完全な塩基対となるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0304】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にクレノウフラグメントを添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。各反応条件について、DNA基質およびクレノウフラグメントの濃度をそれぞれ約12 nMおよび75 nMに維持した。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、クレノウフラグメント添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0305】
図29に示した結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチド(rNTP)または2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーはクレノウフラグメントにより容易に伸長可能である(パネルIIおよびIII)。ただし、2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾したオリゴヌクレオチドの伸長効率は、3'末端にdNMPまたはrNMPを含むプライマーと比較して低かった(パネルIII);(ii)本実験の条件下において、末端がデオキシヌクレオチドまたはリボヌクレオチドであるプライマーの場合、プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、完全に相補的なDNA基質と同程度の効率でクレノウフラグメントにより伸長される(パネルIおよびIIのサブパネルaとbとの比較)。この結果は、プライマーの3'末端におけるミスマッチが3'→5'エクソヌクレアーゼの作用により排除されたことを示唆している;ならびに(iii)本実験の条件下において、3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾プライマーは、類似のプライマー/鋳型基質に対して伸長効率が有意に低下していた(パネルIIIのサブパネルaとbとの比較)。
【0306】
上述と同じ実験を、突然変異クレノウフラグメント(エクソヌクレアーゼ欠失変異誘導体;Asp424Ala)を用いて行った。図30は、デオキシヌクレオチド修飾(パネルI)、リボヌクレオチド修飾(パネルII)、または2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾(パネルIII)を3'末端ヌクレオチドに有するプライマーを、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(エクソヌクレアーゼ欠失変異誘導体;Asp424Ala)により37℃で伸長したときの相対的な伸長効率を示している。各種類の3'末端について、完全な塩基対となるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0307】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にクレノウフラグメントの変異誘導体(3'→5'エクソヌクレアーゼ欠失)を添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。各反応条件について、DNA基質およびクレノウフラグメントの濃度をそれぞれ約12 nMおよび75 nMに維持した。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、クレノウフラグメント添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0308】
この実験の結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチドまたは2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーはクレノウフラグメントにより容易に伸長可能である(パネルIIおよびIII)。ただし、2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾したオリゴヌクレオチドの伸長効率は、3'末端にdNMPまたはrNMPを含むプライマーと比較して低かった(パネルIII);(ii)本実験の条件下において、DNA基質の各セットについて、プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は完全に相補的なDNA基質と比較してクレノウフラグメントによる伸長効率が低い(各パネルのサブパネルaとbとのデータ比較);ならびに(iii)本実験の条件下において、3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾プライマーは、完全に相補的なプライマー/鋳型基質に対して、クレノウフラグメント(3'→5'エクソヌクレアーゼ欠失タンパク質)による伸長効率が低下していた(パネルIIIのサブパネルaとbとのデータ比較)。
【0309】
実施例 26
2'-O- メチル修飾は、オリゴヌクレオチドを分解から有意に保護する
37℃で大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントにより触媒される、3'→5'エクソヌクレアーゼによる分解の相対的速度を図31に示す。プライマー/鋳型基質は、プライマー鎖の3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、または2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)を含む。各種類の3'末端ヌクレオチド修飾について、完全な塩基対となるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および3'末端ヌクレオチド位置で一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0310】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。MgCl2およびNaClの存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にクレノウフラグメントを添加することにより、エクソヌクレアーゼによる分解を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、クレノウフラグメントは約75 nM、MgCl2およびNaClの濃度はそれぞれ6 mMおよび50 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を示している。各反応条件について、DNA基質およびクレノウフラグメントの濃度をそれぞれ約12 nMおよび75 nMに維持した。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、分解開始後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0311】
この実験の結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチド修飾または2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含むプライマーは、その速度は異なるものの、クレノウフラグメントにより除去可能である。完全に相補的なプライマー/鋳型基質の場合、3'末端がdNTP、rNTP、および2'-O-メチル-NTPの順で除去速度が速い。この結果から、2'-O-メチル修飾が、クレノウフラグメントの3'→5'エクソヌクレアーゼ活性による分解からオリゴヌクレオチドを有意に保護することが示唆される;ならびに(ii)本実験の条件下において、プライマーの3'末端でdNTPまたはrNTPと一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、同程度の効率でクレノウフラグメントにより分解される(パネルIおよびIIのサブパネルbのデータ比較)。
【0312】
Tneポリメラーゼを用いたさらなる実験では、2'-O-メチル修飾により、Tneの3'→5'エクソヌクレアーゼ活性による分解からオリゴヌクレオチドが有意に保護されることが示された。72℃でTne DNAポリメラーゼ(Asp137Ala変異誘導体;5'→3'エクソヌクレアーゼ欠失をもたらす)により触媒される、3'→5'エクソヌクレアーゼによる分解の相対的速度を図32に示す。プライマー/鋳型基質は、プライマー鎖の3'末端に、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、または2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)を含む。各種類の3'末端ヌクレオチド修飾について、完全な塩基対を生じるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)およびプライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0313】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。MgCl2およびNaClの存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にTneを添加することにより、エクソヌクレアーゼによる分解を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、Tneポリメラーゼは75 nM、MgCl2およびNaClの濃度はそれぞれ6 mMおよび50 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、Tne添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0314】
この実験の結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチド修飾または2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含むプライマーは、その速度は異なるものの、Tneにより除去可能である。完全に相補的なプライマー/鋳型基質の場合、プライマーの3'末端がdNTP、rNTP、および2'-O-メチル-NTPの順で除去速度が速い。この結果から、2'-O-メチル修飾が、Tneの3'→5'エクソヌクレアーゼ活性による分解からオリゴヌクレオチドを有意に保護することが示唆される;ならびに、(ii)本実験の条件下において、3'末端でdNTPまたはrNTPと一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、同程度の効率でTneにより分解される(パネルIおよびIIのサブパネルbのデータ比較)。
【0315】
実施例 27
共役フルオレセインの蛍光に対する末端塩基対の影響
種々の一次構造および二次構造を有する、オリゴヌクレオチドと共役させた一般的ないくつかの蛍光体について、蛍光強度、偏光、および寿命を調べた。蛍光強度は、標識した鎖がその相補鎖とハイブリダイゼーションする際に、配列および蛍光体の位置によって増強または減弱しうる。一本鎖における蛍光の消光は、色素と、電子の最も効率的な供与体であるグアノシンとの間の電荷移動プロセスによって生じうる。二本鎖構造の形成により電荷の分離が抑制され、蛍光強度が増強する。フルオレセイン標識したオリゴヌクレオチドの偏光および寿命の測定値は、塩基共役蛍光体が「暗い」および「明るい」という2つのコンホメーションで存在し、且つ、移動度が低く、消光状態の寿命が短い状態であることを意味する。蛍光に対する二次構造の有意性は、一本鎖および二本鎖のオリゴヌクレオチドの使用により研究されている。
【0316】
オリゴデオキシヌクレオチド合成用の試薬はグレンリサーチ社から購入した。ただし、洗浄用アセトニトリルはフィッシャー(Fisher)から購入し、標準CPGはABIから入手した。Perceptive Biosystems Expedite DNA合成装置で、フルオレセインホスホラミダイトを5'末端に、フルオレセインCPGを3'末端に、C5-フルオレセイン-dTホスホラミダイトを配列内部に直接組み込むことによって、蛍光オリゴデオキシヌクレオチドを合成した。他の色素は合成後に組み込んだ。合成中にアミノ修飾剤C6 T ホスホラミダイト(ホスホラミダイト-5-[N(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジンホスホラミダイト)を結合させる段階と、合成後にモレキュラープローブ社より販売されている蛍光色素をN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルで修飾する段階とからなる、2段階処理を行った(Ju, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4347-4351 (1995))。逆相HPLC解析およびオリゴヌクレオチド精製には、Millenniumソフトウェア・パッケージ(バージョン3.1)を備えたコンピュータに接続したWaters Alliance HPLCを使用した。
【0317】
20 mM tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl、2 mM MgCl2中の200 nM 蛍光オリゴヌクレオチドについて、蛍光強度、寿命、および偏光を測定した。二重鎖形成に使用した非標識の相補オリゴヌクレオチドの濃度は、特に断りがない限り1 μMとした。蛍光オリゴヌクレオチドおよび二重鎖の融解曲線を、上述の緩衝液50 μl中で以下のプロトコルを用いてABI PRISM 7700で測定した:25℃2分間、95℃2分間、次に、15秒につき2℃の割合で温度を25℃まで低下、25℃で2分間インキュベーション、次に、15秒につき2℃の割合で温度を25℃まで上昇。一本鎖オリゴヌクレオチドと対応する二重鎖とで蛍光を正確に比較するため、93〜95℃で正規化を行った。この温度で二重鎖は完全に融解する。正規化手順により、蛍光測定値のウェルごとのばらつきを排除することが可能となった。
【0318】
いくつかの実験においては、標識したオリゴヌクレオチドを、突出した5'末端を有する相補オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。平滑末端を有する二重鎖を作製するため、この複合体を、20 mM tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl、2 mM MgCl2の溶液50 μl中でTaq DNAポリメラーゼ(インビトロジェン社)1単位および対応する200 nM dNTPとともに37℃で15分間インキュベートした。得られた二重鎖の融解を上記と同様に行った。
【0319】
IL4 cDNAの133 bp断片のPCR産物を、
をフォワードプライマーとして、
(太字の(t)はフルオレセイン結合位置を示す)をリバースプライマーとして使用して合成した。別の実験では、標識した線状プライマーの代わりに、標識したヘアピンオリゴヌクレオチド
(下線部の配列がプライマーの3'末端に相補的)を使用した。PCR混合液50 μl中には、200nMの各プライマー;各200 μMのdATP、dGTP、dCTP、dTTPを含む1x Platinum q PCR Supermix緩衝液(インビトロジェン社)中のクローニングしたIL4 cDNAの106コピー;2 mM MgCl2;20 mM tris-HCl(pH 8.4);50 mM KCl;Platinum(商標)1 Uが含まれるようにした。25℃2分間、95℃2分間、続いて、95℃で15秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクルというプロトコルにより、反応を行った。
【0320】
5'末端塩基が蛍光に及ぼす影響を調べるため、5'末端を6-カルボキシフルオレセインで標識した4つのオリゴヌクレオチドを合成した。これらオリゴヌクレオチドの配列は、5'末端部の2塩基をd(AA)、TT、d(CC)、またはd(GG)とした以外は同一とした。これらの標識オリゴヌクレオチドを過量の同じ長さの非標識相補配列とハイブリダイズさせ、ABI PRISM 7700で融解曲線を測定した。上記および図34に示したように、一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二重鎖について、25℃で正規化した蛍光強度を計算した。得られたデータは、オリゴヌクレオチドが5'末端にAAまたはTTを含む場合はハイブリダイズ時に蛍光シグナルが変化しないことを示している。一方、蛍光オリゴヌクレオチドが5'末端にCCを含む場合はハイブリダイズ時に約40%の蛍光減弱が生じ、蛍光オリゴヌクレオチドが5'末端にGGを含む場合は約30%の蛍光減弱が生じる。
【0321】
3'末端塩基が蛍光に及ぼす影響を調べるため、オリゴヌクレオチドの3'末端付近のチミジンにフルオレセインを結合させた。3'末端の塩基のみが異なる(C、G、T、またはA)、4つの標識した一本鎖オリゴヌクレオチドを使用した(表3)。これらのオリゴヌクレオチドを長さが異なる一連の相補鎖とハイブリダイズさせることによって、平滑末端または5'突出末端を有する二重鎖を形成させた。5'突出末端に基づいて、適切なdNTPおよびDNAポリメラーゼを使用して種々の末端を有する多数の二重鎖が生成されている。いくつかの二重鎖は、標識した鎖の3'末端と相補オリゴヌクレオチドの5'末端との間にミスマッチを含んでいた。上記のように、二重鎖形成時の蛍光の変化を融解曲線から計算し、結果を表3に示した。3'末端にCを含む標識オリゴヌクレオチドは、二重鎖形成時に87%消光した(シリーズA、二重鎖A1)。単一のA-T塩基対の追加により伸長した同じ二重鎖では、消光が全く生じなくなった(二重鎖A2)。この末端のA-T塩基対をC-G塩基対で置換すると消光が回復した(二重鎖A3)。標識していない相補鎖にGの5'突出末端がある場合は、C-G塩基対の平滑末端と比較して、消光効果がはるかに小さい(二重鎖A4)。相補鎖に2つ目のGを追加して突出末端を2塩基にすると、消光効果がさらに小さくなる(二重鎖A5)。標識したオリゴヌクレオチドの末端がGである場合も同様の結果が得られた(シリーズB、表3)。末端にG-C塩基対を含む二重鎖では、71%の消光が観察された(二重鎖B1)。G-C塩基対の次にA-T塩基対を追加することによってこの二重鎖を伸長すると、消光効果が失われた(二重鎖B2)。
【0322】
【表3】
【0323】
3'末端にTを含み、且つ末端から2番目の塩基にフルオレセインを含むオリゴヌクレオチドは、二重鎖形成時に蛍光を減弱させなかった(シリーズC、二重鎖C1)。平滑末端に単一のG-C塩基対を追加することによってこの二重鎖を伸長したところ、蛍光の有意な消光が生じた(二重鎖C2)。このG-C塩基対をGの5'突出末端または末端G-Tミスマッチで置換すると、観察された消光効果が実質的に小さくなった(二重鎖C3、C4、およびC5)。末端がアデノシンである標識オリゴヌクレオチド(シリーズD)では、末端がTであるオリゴヌクレオチドと同様の結果となった。末端にG-C塩基対を追加することによってこの二重鎖を伸長した場合にのみ、蛍光の消光が観察された(二重鎖D2)。
【0324】
表3の結果は、末端のG-C塩基対またはC-G塩基対による蛍光の消光が蛍光体と平滑末端との距離に依存することも示している。蛍光体の位置が3'末端から遠くなるほど、ハイブリダイズ時の消光効果が小さくなる(二重鎖A1、A3、およびA6;C2、C6〜C8)。蛍光体が末端から6番目の塩基にある場合は(二重鎖C8)、消光効果が完全に失われ、蛍光の強力な増強が観察される。
【0325】
蛍光体を3'末端付近に配置した場合と5'末端付近に配置した場合とについて、ハイブリダイゼーションが蛍光に及ぼす影響を比較した。3'末端側半分が5'末端側半分の鏡像となるよう、同じ配列の2つのオリゴヌクレオチドを合成した(図35および表4)。3'末端塩基および5'末端塩基はGとした。オリゴヌクレオチドのうち1つについては5'末端に最も近いチミジンにフルオレセインを結合させ、もう一方のオリゴヌクレオチドについては3'末端に最も近いチミジンを標識した。これらの標識オリゴヌクレオチドを、標識していない同サイズの相補配列とハイブリダイズさせた。一本鎖構造および二本鎖構造の蛍光強度を測定し、表4および図35に示した。3'末端付近を標識したオリゴヌクレオチドはハイブリダイズ時に顕著な消光効果を示した。一方、5'末端付近を標識したオリゴヌクレオチドでは蛍光の低減が生じなかった。
【0326】
【表4】
【0327】
実施例 28
二重鎖形成時の、内部共役フルオレセインの蛍光強度の増強
表3の結果に示すように、蛍光体を3'末端のG-Cから離すと、消光効果が小さくなり、最終的に蛍光の増強が観察される(二重鎖C7およびC8)。これをさらに調べるため、別のオリゴヌクレオチドセットを合成した。第1のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3'末端から三番目の塩基を標識した。第2のオリゴヌクレオチドは、3'末端にヌクレオチドを3つ多く追加した以外は同じ配列とした。したがって、第2のオリゴヌクレオチドでは3'末端から6塩基離れた位置にフルオレセインが結合された。各オリゴヌクレオチドを相補配列にハイブリダイズさせた。両二重鎖の融解曲線を図36に示す。3'末端のG-C塩基対と標識とが2つのヌクレオチドで隔てられている場合はハイブリダイズ時に蛍光強度が減弱したが、蛍光体が3'末端から6ヌクレオチド離れている場合は蛍光強度が増強した。
【0328】
このハイブリダイズ時の蛍光の増強は、オリゴヌクレオチド配列中の蛍光体の位置に依存する(図37)。同じ配列のオリゴヌクレオチドだがフルオレセインの位置のみが異なる(すなわち、5'末端、3'末端、または配列内部(6つの異なるT塩基のうちの1つ))オリゴヌクレオチドを8種類合成した。一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二重鎖の融解曲線を分析した。相対的な蛍光データを図37に示す。5'末端、3'末端、またはT3を標識したオリゴヌクレオチドの蛍光はハイブリダイズ時に消光した。しかし、T6以降の内部位置を標識したオリゴヌクレオチドでは、蛍光の増強が観察された。標識が5'末端から遠いほどハイブリダイズ時の蛍光増強が大きかった。
【0329】
ハイブリダイズ時の蛍光増強の説明としては、一本鎖のとき消光状態にあった蛍光体が二重鎖形成によって非消光化されるという可能性が考えられる。そうであるならば、二重鎖のときの蛍光増強度が異なる種々の標識オリゴヌクレオチドは、一本鎖型のときの消光も同程度になるはずである。図37に、種々の位置を標識した一本鎖オリゴヌクレオチドについて、pmolあたりの蛍光強度の測定値を示した。これらオリゴヌクレオチドの均質性はHPLCにより確認された。表5に示すように、遊離のフルオレセインの比蛍光は色素標識したヌクレオチドの蛍光より実質的に強く、色素標識したヌクレオチドの蛍光はオリゴヌクレオチドと共役させた色素の蛍光よりも強い。興味深いことに、位置T3〜T18を標識した一本鎖オリゴヌクレオチドの蛍光/pmolは、対応する二重鎖の蛍光増強と逆比例の関係にある。したがって、位置T16〜T18を標識したオリゴヌクレオチドは、一本鎖の状態では最も蛍光強度が小さいが、二重鎖形成によって最も強力な蛍光増強を示す。したがって、ハイブリダイゼーションにより、一本鎖オリゴヌクレオチドで観察される消光効果が減弱するようにみえる。蛍光体付近の配列が二重鎖における蛍光増強にどのように影響するかを調べるため、内部標識したオリゴデオキシヌクレオチドを多数分析した。その結果、3'末端または5'末端から少なくとも6ヌクレオチド離れた位置に標識がある場合は、3'末端または5'末端の塩基が蛍光増強に有意な影響を及ぼさないことが示された。しかし、二重鎖形成時に蛍光の増強が起こるためには、標識から4ヌクレオチド以内にグアノシンが少なくとも1つ存在する必要がある。例えば、配列
において標識付近のGをAに置換し、
とした場合、ハイブリダイズ時に蛍光増強は観察されなかった。
【0330】
二重鎖構造における色素の電荷または到達性が一本鎖と比較して異なっているか否かを調べるため、フルオレセイン標識した一本鎖および二本鎖のオリゴヌクレオチドの蛍光強度を、既知の消光剤である25mM NaIの存在下で測定した。一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二本鎖オリゴヌクレオチドのいずれの場合も、NaIにより蛍光がわずかに減弱した。このことから、蛍光色素に対するNaIの到達性はいずれの形態でも同等であることが示唆され、二重鎖への色素の挿入は否定的であると考えられた。
【0331】
【表5】
【0332】
実施例 29
オリゴヌクレオチドの一次構造および二次構造が、共役フルオレセインの蛍光の偏光および寿命に与える影響
位置T3、T18、または5'末端をフルオレセインで標識したオリゴヌクレオチドの蛍光の強度および偏光を、これらオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して得られた133 bpの二本鎖PCR産物の強度および偏光と比較した。線状オリゴヌクレオチドとあわせて、位置T18を標識したヘアピンオリゴヌクレオチドについても調べた。このオリゴヌクレオチドにおいては、平滑末端のヘアピンを形成するため、線状オリゴヌクレオチドの5'末端に6個のヌクレオチドを追加した。一本鎖構造および二本鎖構造の蛍光の強度および偏光を表6に示す。オリゴヌクレオチドの5'末端位置に結合させたフルオレセインの場合、二本鎖構造の形成時に蛍光強度が減弱し偏光が増強した。内部標識したオリゴヌクレオチドの場合はこれと逆の効果が観察された。この場合、強度の増強は偏光の減弱を伴っていた。内部標識したヘアピンオリゴヌクレオチドは、PCR産物形成時の蛍光強度および偏光の双方で変化が最も大きかった。
【0333】
フルオレセイン標識した一本鎖オリゴヌクレオチドと、蛍光強度が1.8倍異なっていたその二重鎖とについて、蛍光寿命を決定した(T18、表5)。測定は、25℃にて、方法の項で説明した溶液中、SPEX分光蛍光計を用いて周波数領域モードで行った。データはDataMaxソフトウェアを使用して解析した(表7)。一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二本鎖オリゴヌクレオチドのいずれのデータにも、減衰成分を約4 nsおよび1 nsとする二重指数関数型の減衰モデルがもっともよく適合した。一次成分の寿命は遊離のフルオレセインの寿命と同程度であり、且つ、その分画振幅は短寿命成分のものと比較してはるかに大きかった。一本鎖構造とに二本鎖構造との間で寿命パラメータの有意差は見出されなかった。しかし、χ2の値から、他の多重指数関数型の減衰モデルがこのデータにより良好に適合し、より複雑な減衰成分の組合せの解を与える可能性が示唆された。
【0334】
【表6】
【0335】
【表7】
【0336】
実施例 30
オリゴヌクレオチドの一次構造および二次構造が、フルオレセイン以外の色素の蛍光に与える影響
実施例27〜29で示したデータはすべて、チミジンのC5位置を介して共役させたかまたは短いアルキル基のリンカーにより末端に結合させたフルオレセインを有するオリゴヌクレオチドを用いて得たものである。フルオレセインとあわせて、他の種々の蛍光体についても検証した。フルオレセインと同様に、JOE、HEX、TET、Alexa 594、ROX、MAX、およびTAMRAも末端のG-C塩基対およびC-G塩基対の付近で消光され、オリゴヌクレオチドの末端から少なくとも6ヌクレオチド離れた配列内部に配置されている場合は二重鎖の形成により蛍光が増強する。テキサスレッド、BODIPY TR、ならびにCy3およびCy5など特定の色素はこのパターンに従わなかった。
【0337】
実施例 31
蛍光原性 PCR プライマーの設計および特性
二本鎖PCR産物への組込み時に蛍光強度が増強するように蛍光原性プライマーを設計した。この設計は、オリゴヌクレオチドの一次構造および二次構造が共役蛍光体の特性に与える影響を研究した結果に基づくものである。考慮すべき設計要因または規則は次のとおりである:プライマーの3'末端ヌクレオチドにCまたはGが存在すること;蛍光体が3'末端から2番目または3番目の塩基(チミジン)に結合されていること;5'末端側の標識ヌクレオチドから3ヌクレオチド以内にGが1つ以上存在すること;およびヘアピンプライマーについては、プライマーの3'末端に相補的な5'末端テールが存在すること。5'末端テールは融点より低い温度で平滑末端のヘアピンを形成する。融点は、プライマーと鋳型とのアニーリング温度にほぼ等しい。ヘアピンプライマーのステムのΔGは -1.6 〜 -5.8 kcal/molであった(表8)。これらの特性および他の標準的なプライマーの特性(長さおよびTmなど)を独自仕様のソフトウェアによりプライマー設計に組み込んだ。ユーザーはこのソフトウェアを使用して標的配列または鋳型配列を入力してもよい。ソフトウェアは前述の設計要因または規則に従ってプライマーを設計する(配列決定に関する各ステップについては実施例21を参照されたい)。これらの設計規則により、標的配列全体にわたって配置される多数のプライマー対をソフトウェアが出力することが可能になる。例えば、GAPDH配列(1310塩基対)に対して、94対の使用可能なプライマー対がソフトウェアにより出力される。
【0338】
【表8】
【0339】
蛍光体を有するプライマーはシンセティックジェネティクス(Synthetic Genetics、カリフォルニア州San Diego)またはインビトロジェン社(Invitrogen Corporation(ライフテクノロジー事業部)、メリーランド州Rockville)の化学部門から供給されている。フルオレセイン-dTホスホラミダイトの直接組込み、またはアミノ修飾剤C6 T ホスホラミダイト(グレンリサーチ社)を結合させる段階とカルボキシフルオレセインNHSエステル(5-および6-異性体の混合物、モレキュラープローブ社)を用いた合成後修飾の段階とからなる2段階処理によって、FAM標識オリゴヌクレオチドの化学合成を行った。2段階処理は全てのJOE標識オリゴヌクレオチドの合成にも使用し、この合成には5-カルボキシJOE NHSエステル(モレキュラープローブ社)を使用した。ポリスチレン樹脂への吸収によって修飾型プライマーの逆相精製を行った。非標識プライマーはインビトロジェン社から供給されているものを使用した。
【0340】
Trizol試薬(インビトロジェン社)を使用して、供給者のプロトコルに従いHela細胞およびヒト血液リンパ球から全RNAを単離した。刺激したまたはアスピリン処理した末梢血T細胞(PBT)から単離したRNAの試料はVincenzo Casolaro博士(Johns Hopkins University、メリーランド州Baltimore)の厚意により提供された。オリゴ-d(T12-18)またはランダムヘキサマープライマーを用いるSuperscript II(商標)キット(インビトロジェン社)を使用し、供給者のプロトコルに従って、逆転写により全RNAから第1鎖cDNAを合成した。刺激リンパ球由来の全RNAのRT-PCRを行うことによって、インターロイキン-4(IL-4)のクローンcDNA鋳型を生成した。遺伝子特異的プライマー(プライマー配列は示していない)およびTaqポリメラーゼをTaqポリメラーゼ抗体(Platinum Quantitative PCR Supermix-UDG;インビトロジェン社)と併用して、標準的な「ホットスタート」PCRを行った。これらのPCRにより、ほぼ全長の適切なcDNAが増幅された。次にこの増幅産物を、TOPO T/Aクローニングキット(インビトロジェン社)を使用して細菌にクローニングした。最後に、クローンのプラスミドDNAをアルカリ溶解により精製して遠心分離を行い、次に、フェノール抽出およびエタノール沈殿によって線状化およびさらなる精製を行った上で、PCR鋳型として使用に供した。励起波長260 nmでの吸光度測定によりプラスミドのコピー数を計算した。この他、c-myc癌遺伝子、βアクチン、グリセルアルデヒド-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、および18SリボソームRNAのクローンcDNA鋳型も同様の方法を用いてHela細胞RNAから作製した。
【0341】
反応液50 μlの含有物は次のとおりとした:該当する鋳型cDNA、80〜200 nMの各遺伝子特異的プライマー、各200 μMのdATP、dGTP、dCTPと400 μMのdUTPとを含む1x Platinum Quantitative PCR Supermix-UDG(インビトロジェン社)、ウラシルDNAグリコシラーゼ 1 U、3 mM MgCl2、20 mM tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl、DNAポリメラーゼ抗体、安定剤、ならびに、Taqポリメラーゼ 1.5 Uおよび1x ROX基準色素(インビトロジェン社)。3段階サイクルとして、反応液を25℃で2分間および95℃で2分間インキュベートし、次に95℃で15秒間、55℃で30秒間、および72℃で30秒間のサイクルを行い、次に25℃で2分間インキュベートした。500塩基対より長い増幅産物については例外を設けた。これには、120秒間の伸長時間およびサイクル後の72℃4分間の保持時間を含めた。2段階サイクルは95℃15秒間および65℃30秒間で構成した。反応は、96ウェルの分光蛍光測定用サーマルサイクラー(ABI PRISM 7700、アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems, Inc.))またはi-Cycler(BioRad)中で行った。各PCRサイクルのアニーリング中に蛍光をモニターした。
【0342】
蛍光原性プライマーを用いたPCRの略図を図38に示す。プライマーは、Tmより低い温度で比較的弱い蛍光を示す、平滑末端を有するヘアピン構造を維持している。ヘアピン型が融解すると蛍光が数倍増強し、プライマーの3'末端が伸長して二本鎖PCR産物になったときに蛍光は最大になる。ヘアピンプライマーは、線状プライマーと比較して非伸長時の消光度が大きいため、リアルタイムPCR中により良好なシグナルを発する(図39A〜C)。同一の配列特異的部位を有する、ヘアピン型および線状の2つの標識リバースプライマーを調製した(プライマーセット1および2、表8)。これらを、同じ非標識の線状プライマーとともに使用してIL-4 cDNAを増幅した。25℃の反応前段階、94℃の変性段階、各PCRサイクルのアニーリング段階(55℃)、およびPCR完了後の25℃の段階において、ABI PRISMを用いてPCR用混合物の蛍光を測定した(図39A〜C)。線状プライマーの蛍光は、94℃の変性段階よりも25℃の反応前段階のときのほうが強く、これは蛍光に対する温度およびpHの既知の影響によるものである(Lakowicz, J.R., 「Principles of fluorescence spectroscopy」, Kluver Academic/Plenum Publishers, New York, 第2版, pp. 185-210 (1999))。線状の標識プライマーを用いたPCRにおいて、蛍光はPCRの最初のサイクル中一定に維持されたためこれがベースラインとなり、次にプラトーまで上昇した。利得(gain)は2000相対蛍光単位であった。線状プライマーの場合、PCR後の25℃での蛍光はPCR前と比較して2000単位強かった。ヘアピンプライマーは25℃で線状プライマーより3倍強力に消光され、したがって、エンドポイントにおける蛍光の利得は線状プライマーよりも大きく、5700相対蛍光単位に等しい。ヘアピン構造は55℃でもある程度維持され、したがって消光がある程度維持されることから、ヘアピンプライマーの利得が大きいことは理解可能である。
【0343】
ヘアピンプライマーがPCRの効率および特異性に与える影響を調べるため、線状プライマーを用いた場合とヘアピンプライマーを用いた場合とでリアルタイムPCRの増幅曲線のCTおよび傾きを比較した。増幅曲線のCTおよび傾きは線状プライマーとヘアピンプライマーとで同程度であり、このことから、ヘアピン構造がPCRの効率に悪影響を与えていないことが示唆された(図39A〜Cおよび40)。さらに、平滑末端を有するヘアピンプライマーを使用することにより、標的不在下におけるプライマー二量体人工産物の形成が低減され、これにより、PCRの特異性が上昇する。線状の標識プライマーと、これと相対する線状またはヘアピン型の非標識プライマーとを使用した別々の反応において、プライマー二量体形成を比較した(図40;プライマーセット3および4、表8)。反応には、ゲノムDNAとDNAを含まない対照との10倍段階希釈液を含めた。両プライマーとも線状である場合、鋳型を添加していない対照ではPCRの45サイクル目でプライマー二量体が増幅される。一方、ヘアピンプライマーを含むPCRでは、55サイクル経過後でもプライマー二量体の増幅が生じない(図40)。アガロースゲル解析により、プライマー、プライマー二量体、およびPCR産物について予想通りの移動パターンが確認された。
【0344】
実施例 32
定量的リアルタイム PCR
クローニングしたc-myc cDNAの10倍段階希釈液(コピー数10〜10,000,000)を含む鋳型を試料として、2段階リアルタイムPCRで識別を行った(図41A;プライマーセット3、表8)。コピー数10〜10,000,000では、CTと開始時コピー数との間に直線関係(r2 = 0.999)が存在する(標準曲線、図41B)。種々の標的に対して蛍光原性PCRが利用可能であることを示すため、IL-4のクローンDNAの10倍段階希釈液を用いて同様の蛍光原性PCRを実施した(プライマーセット2、表8)。相関係数は0.992となり、同等の結果が得られた。クローニングしたIL-4 cDNAの3倍段階希釈液(1希釈につき3回の反復反応)(コピー数22〜1,000,000)を含む試料を用いて、3段階蛍光原性PCRで識別を行った(プライマーセット2、表8)。CTとコピー数との相関係数は0.999であった。
【0345】
この他、種々のサイズの増幅産物について蛍光原性PCRを行った。サイズが66、562、1107塩基対のc-myc、およびサイズが74、570、956塩基対のGAPDHの増幅産物に対してFAM標識プライマーを設計した(表8)。Hela全RNA(2.5 ng)を鋳型として第1鎖合成反応から得たcDNA(20 μl)を用いて蛍光原性PCR(3段階サイクル)を行った。PCRには、これら第1鎖反応液2、0.2、0.02、または0 μlを使用した。全てのプライマーセットについて等間隔のCTでcDNA希釈液が決定された。このことから、種々のサイズの増幅産物に対してPCR効率が同程度であることが確認された。
【0346】
実施例 33
マルチプレックス定量的 PCR
遺伝子特異的プライマーを2セット使用した、定量的、リアルタイム、且つマルチプレックスの蛍光原性PCRは、1つのプライマーセットを変数遺伝子の量の検出に、もう1つのプライマーセットを比較的一定であり基準として使用される遺伝子の検出に使用できるため、有用である。c-myc用またはIL-4用のFAM標識プライマーと基準遺伝子用のJOE標識プライマーとを用いたマルチプレックスPCRを行った。クローンIL-4 cDNAの3倍段階希釈液(プライマーセット2、表8)(コピー数22〜300,000)の各希釈液にクローンGAPDH cDNAを1,000,000コピー入れ、これら希釈液の識別について調べた(プライマーセット12、表1;図42A)。3つの反復希釈液のうち良好な2つについて、CTとIL-4のコピー数との相関係数は0.999であった。したがって、IL-4の量が未知である試料のPCRにおいてCTが標準曲線上のどの点で生じるかを分析することによって、未知の試料を決定することが可能である。クローニングしたc-mycのcDNA(プライマーセット5、表8)を変数遺伝子として、GAPDHを定数遺伝子として使用し、同様のPCRセットを行った。図42Bの結果は、c-mycの希釈液間の識別がIL-4と同様であることを示している。
【0347】
GAPDH以外のcDNAを基準遺伝子として使用してもよい。βアクチン(プライマーセット13、表8)または18S(プライマーセット14、表8)のクローンcDNA 1,000,000コピーを基準遺伝子として用いた蛍光原性PCRにより、標的濃度(IL-4)の3倍段階希釈液の識別が可能であった。標準曲線プロットから得られたr2値は、βアクチンおよび18Sについてそれぞれ0.995および0.998であった。
【0348】
さらに、特定のクローンcDNAの代わりに、Hela細胞の全RNA由来の第1鎖cDNAを基準遺伝子の供給源として使用した。これは、PCRにより、非特異的なcDNAの混合物中から特異的な標的が増幅されるか否かを確認するために実施した。これらの実験のため、クローニングしたIL-4 cDNA(3倍段階希釈)を変数鋳型とし、Hela全RNAの逆転写から得た固定量の第1鎖cDNAを定数鋳型とした(図43A〜B)。標準曲線から得られたr2値は、βアクチンが0.997(プライマーセット13、表8)、GAPDHが0.996(プライマーセット12、表8)、および18Sが0.999(プライマーセット14、表8)であった。蛍光原性PCRはその適切な標的のみを増幅した。アガロースゲル電気泳動でPCR産物の分析を行ったところ、プライマー二量体の非特異的なPCR産物は全くないかまたはごくわずかであった。
【0349】
上記の結果はすべてABI 7700システムを使用して得たものである。一定量のクローンGAPDHと混合した種々の量のクローンIL-4について、BioRad i-Cycler IQシステムを用いてマルチプレックス蛍光原性PCRを行った。Biorad i-Cycler IQシステムにより、ABI 7700と同等の感度およびダイナミックレンジでcDNAが検出された。
【0350】
蛍光原性プライマーを使用した定量的PCRの結果は、比較CT法によって分析してもよい。比較CT法は、試料中の未知量の標的cDNAを定量するうえで、標準曲線法のほかに広く用いられている方法の1つである(ユーザー速報(User Bulletin)#2、ABI PRISM 7700シークエンスディテクションシステム、P/N 4303859)。この分析方法では、CT対開始時コピー数の標準曲線をプロットする必要がない。その代わりに、標的と内部基準遺伝子とのCTの差に基づいて標的の量が計算される。アスピリン処理したリンパ球ではIL-4発現が低減することを比較CT法と5'末端ヌクレアーゼアッセイ法との併用により示した既報の研究では、RNA試料のサブセットが使用された(Cianferoni, A.ら、Blood 97:1742-1749 (2001))。これらと同じ試料中のIL-4の量を、蛍光原性マルチプレックスPCRを用いて比較CT法により解析した。アスピリン処理を施したまたは施していない刺激PBT試料から取得した全RNA(1 ng)を逆転写してcDNAを作製し、この反応液2 μlを用いてリアルタイムPCRを行った。各RNA試料に対してRT反応を1回行い、3つの反復PCR用の鋳型を作製した。IL-4用のFAM標識プライマーおよびGAPDH用のJOE標識プライマー(プライマーセット2および12、表8)を用いて、3段階リアルタイム・マルチプレックスPCRのプロトコルを実施した。ABI 7700を用いて標的遺伝子(IL-4)および基準遺伝子(GAPDH)のCTを求めた。比較CT法で計算したところ、アスピリン処理したPBT試料では未処理PBT試料と比較して試料中のIL-4 mRNAレベルが33%低かった。TaqMan(商標)プローブを使用した既報の研究では、アスピリン処理後IL-4発現が43%低減したと報告されており(Cianferoni, A.ら、Blood 97:1742-1749 (2001))、上記の結果はこの報告と一致する。
【0351】
実施例 34
対立遺伝子特異的 PCR のエンドポイント検出
エンドポイント検出能を示すため、ヒトゲノムDNAを鋳型として使用し、対立遺伝子特異的PCRを行った。これらのPCRにより、RDS遺伝子の558位にC/T多型が存在することが検出された(Farrar, G.J.ら、Nucl. Acids Res. 19:6982 (1991))。CまたはTの多型を検出するため、3'末端にCまたはTを有する非標識の対立遺伝子特異的フォワードプライマー2つと、蛍光原性リバースプライマーとを設計した(プライマーセット15、表8)。DNAポリメラーゼにおいて3'末端ミスマッチを伸長する効率が、正しいマッチを伸長する効率と比較してはるかに低いことに基づいて、対立遺伝子の識別を行った(Petruska, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6252-6256 (1988))。異なる一塩基多型を有する2つのゲノムDNA試料それぞれについて、対立遺伝子特異的PCRを2回行った(図44)。PCRに続いて、蛍光プレートリーダー(Polarion, TECAN)またはUVトランスイルミネータのいずれかを使用してPCRチューブ内で直接蛍光を測定した。測定結果から、適切なプライマーにより両遺伝子とも正しく同定されたこと、および標的不在下でシグナル増強が生じないことが示された。
【0352】
実施例 35
遺伝子発現研究用の定量的 RT-PCR
1つのプライマー(蛍光原性プライマー)が3'末端から1塩基対前のT残基を単一の蛍光体(FAM)で標識したプライマーであるプライマー対を用いて、リアルタイム1段階RT-PCRを行った。消光剤は必要としない。蛍光原性プライマーが、PCR産物に組み込まれていないとき平滑末端のヘアピンを形成するよう、5ヌクレオチドのテールを蛍光原性プライマーの5'末端に追加した。この設計により、蛍光プライマーの蛍光は最初は弱く、PCR産物の形成時に増強する。ヘアピンプライマーは、線状プライマーと同等の効率性を示す可能性があり、且つ、プライマー二量体およびミスプライミングを防ぐことによりPCRの特異性を高めることができる。効率的な標識部位を同定するための規則を組み込み、且つPCR中の非特異的な相互作用を最小限に抑えるための専用ソフトウェア(実施例21を参照)により、蛍光原性プライマーおよび非標識プライマーを設計した。上記のように設計したβアクチン特異的プライマー対を用いたリアルタイム定量において、HeLa全RNAを鋳型として用いた1段階RT-PCRを実施した。βアクチン標的は、FAM標識プライマーを用いたPCRにおいて高精度で検出された。Trizol試薬を用いて全RNAの単離を行った。One Step Thermoscript qRT-PCRキット(インビトロジェン社、カタログ番号:11731-015)を用いて1段階RT-PCRを実施した。
【0353】
HeLa細胞の全RNAの10倍段階希釈液(100 ng〜0.1 pg)を含む試料について、鋳型なしの対照をも含めた3つの反復調製液でβアクチン転写物の定量を行った。ABI PRISM 7700装置で、50℃30分間(RT反応)、95℃5分間、および95℃15秒間/60℃45秒間を45サイクル(PCR反応)というプロトコルを用いて、リアルタイム1段階RT-PCRを実施した。図45に増幅プロットを、図46に開始時RNA濃度対CTのプロットを示す。
【0354】
以上、明確な理解に資することを目的として、図示および実施例により本発明をある程度詳細に説明したが、当業者には、広範且つ同等の条件、処方、およびその他のパラメータの範囲内で本発明を修正または変更することにより本発明の範囲またはその特定の態様に影響を及ぼすことなく上記を実施することが可能であること、ならびに、そのような修正または変更は添付の特許請求の範囲に含まれると意図されることが明らかであると考えられる。
【0355】
本明細書記載の全ての刊行物、特許、および特許出願は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示すものであり、各刊行物、特許、または特許出願は参照として本明細書に組み込まれると具体的且つ個別に示されてもいるように、参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0356】
(図1) 本発明のホモジニアス/リアルタイム検出系の模式図である。1つ以上の蛍光の変化または他の検出可能な特性の変化は、標識されたプライマーの二本鎖増幅産物への取り込み(図1A)、または標識されたプローブの核酸標的への直接のハイブリダイゼーション(図1B)によって検出される。本発明では、検出または定量される核酸分子は、合成もしくは増幅の産物であっても、または天然に存在する核酸であってもよい。そのような核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、RNA、DNA、またはRNA/DNAハイブリッドであってもよい。本発明では、いかなる1つ以上の標識(同一でも異っていてもよい)が使用できる。
(図2) 内部(図2A)および5'-フルオレセイン標識(図2B)オリゴヌクレオチドの蛍光に対する、ハイブリダイゼーションの効果を示す、温度の関数としての蛍光強度の線グラフである。標識されたオリゴヌクレオチドは異なる温度で蛍光の試験を行なった。一本鎖(SS)または二本鎖(DS)オリゴヌクレオチドは、実施例4に記述のように融解した。5'標識オリゴヌクレオチドについては、SSオリゴヌクレオチドからDSオリゴヌクレオチドに転換すると、蛍光が低下したが、内部標識したオリゴヌクレオチドでは、SSオリゴヌクレオチドからDSオリゴヌクレオチドに転換すると、蛍光が上昇した。
(図3) 波長の関数としての蛍光強度の線グラフであり、相補的および非相補的オリゴヌクレオチドの存在下での3'-TAMRAオリゴヌクレオチドの蛍光を示す。相補鎖(二本鎖分子を形成する)の存在下では、一本鎖型と比較して蛍光は上昇した(実施例5参照を参照)。
(図4) 波長の関数としての蛍光強度の線グラフであり、フルオレセインおよびBODIPY 530/550で5'標識したオリゴヌクレオチドの蛍光に対するハイブリダイゼーションの効果を示す。相補的なオリゴヌクレオチド(二本鎖分子を形成する)の存在下では、BODIPY色素の場合には蛍光は上昇し、フルオレセインの場合には低下した。
(図5) 図5Aは実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、内部標識したプライマーを用いたIL4 cDNAの定量的PCRを示す。PCRは実施例7に記述のように実行した。ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクターから得られたデータは、メーカーの説明書にわずかな変更を施して処理された(図5B)。図5Cは鋳型DNAの開始量に対して、増幅サイクルの数をプロットした標準曲線である。
(図6) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、フルオレセインで合成後標識したプライマーを用いて行ったIL4 cDNAのPCRを示す。PCRは実施例8に記述のように実行した。リアルタイム増幅データは、ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクターからエクセルに出力した。
(図7) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、フルオレセインで内部標識したプライマーを用いて行ったPCRによるβアクチンcDNAの検出を示す。PCRは実施例9に記述のように実行した。
(図8) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、5'検出テールで内部標識したプライマーを用いたβアクチンcDNAのPCRを示す。PCRは実施例10に記述のように実行した。
(図9) 対立遺伝子特異的PCRの模式図である。
(図10) 本発明のプライマーと標準的プライマーとを比較した、対立遺伝子特異的PCR反応の結果を示すアガロースゲルの写真である。
(図11) 本発明のヘアピンプライマーと標準的な線状プライマーとを比較した、対立遺伝子特異的PCR反応において実行したPCRのサイクル数の関数としての、蛍光のプロットである。
(図12) 2段階PCR反応形式を用いて、本発明のヘアピンプライマーと標準的な線状プライマーとを比較した、対立遺伝子特異的PCR反応において実行したPCRのサイクル数の関数としての、蛍光のプロットである。
(図13) 図13Aは本発明のプライマーを用いた対立遺伝子特異的PCR反応のエンドポイントにおいて得られた蛍光強度の棒グラフを示す。図13Bは対立遺伝子特異的反応が行われたPCRチューブに紫外線を照射した写真である。
(図14) 本発明のプライマーを用いた対立遺伝子特異的PCR反応に対する、標的DNA濃度の影響を示すアガロースゲルの写真である。
(図15) Tsp DNAポリメラーゼを用いた結果とPLATINUM(登録商標)Taqポリメラーゼを用いた結果とを比較した、標準的プライマーによる対立遺伝子特異的反応の結果を示すアガロースゲルの写真である。
(図16) 様々な量の鋳型DNAを用いた増幅反応において、本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドと線状オリゴヌクレオチドとを比較した結果を示す、エチジウムブロマイド染色アガロースゲルの写真である。図16Aは第1のプライマーセットを用いたヒトβグロビン遺伝子の3.6 kb断片の増幅を示す。図16Bは第2のプライマーセットを用いたヒトβグロビン遺伝子の3.6 kb断片の増幅を示す。
(図17) 様々なサイズの増幅産物を産生する増幅反応において、本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドと線状オリゴヌクレオチドとを比較した結果を示すエチジウムブロマイド染色アガロースゲルの写真である。図17AはNF2遺伝子の1.3 kb断片の増幅を示す。図17BはNF2遺伝子の1.6 kb断片の増幅を示す。
(図18) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、2'-O-Me (図18B)、5'-5'結合(図18C)で両方のプライマーの5'末端を修飾したヘアピンプライマー、および修飾していないヘアピンプライマー(図18A)、ならびに2'-O-Meで修飾したフォワードプライマーおよび5'-5'結合のリバースプライマー(図18D)を用いて行ったPCRによるヒトツベリンcDNAの検出を示す。PCRは実施例15に記述のように実行した。「F」=フォワードプライマー;「R」=リバースプライマー;および「NTC」=標的なしの対照。
(図19) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、C3アミノ(図19B)、C6アミノ(図19C)およびビオチン(図19D)で5'末端を修飾したヘアピンプライマー、および修飾していないヘアピンプライマー(図19A)を用いて行ったPCRによるヒトツベリンcDNAの検出を示す。PCRは実施例16に記述のように実行した。「R」=リバースプライマー。
(図20) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、平滑末端ヘアピンプライマー(図20A, 20C)および伸長した3'末端を有するヘアピンプライマー(図20B、20D)を用いたPCRによるヒトツベリンcDNA(図20A, 20B)およびRDSゲノムDNA(図20C, 20D)の検出を示す。PCRは実施例17に記述のように実行した。
(図21) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、DABCYL標識のA特異的またはB特異的フォワードプライマー(オリゴ41、42)、およびFAM(オリゴ43)標識のリバースプライマーを用いて行ったPCRによる5 ngのゲノムDNA(A対立遺伝子)の検出を示す。PCRは実施例18に記述のように実行した。
(図22) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、FAM標識プライマー(図22A)を用いたIL4 cDNA、およびJOE標識プライマー(図22B)を用いたヒトβアクチンの検出を示す。PCRは実施例19に記述のように実行した。
(図23) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、FAM標識ユニバーサル検出プライマーを用いたヒトRDS対立遺伝子の検出を示す。PCRは実施例20に記述のように実行した。図23AはAAホモ接合ヒトDNA上でA特異的プライマーを用いたRDS A対立遺伝子の検出を示す。図23BはA特異的プライマーの識別を示す(A特異的プライマーはBBホモ接合DNAを検出できない)。図23Cは、DNA鋳型なしの対照には検出可能な増幅がないことを示す。
(図24) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフである。図24Aは通常のPCRプライマーを用いて行った検出を示す。図24Bは3'末端が2'-Oメチル修飾されたPCRプライマーを用いて行った検出を示す。実施例22を参照されたい。
(図25) 2.7 Kbの標的DNA配列(pUC19)の増幅を示すエチジウム染色したアガロースゲルの写真である。増幅サイクルは40回繰り返された。
(図26) 2.7 Kbの標的DNA配列(pUC19)の増幅を示すエチジウム染色したアガロースゲルの写真である。増幅サイクルは30回繰り返された。
(図27) 3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(図27A)、リボヌクレオチド(図27B)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド(図27C)修飾を含むプライマーの、Taq DNAポリメラーゼによる60℃での相対的な伸長を示すオートラジオグラフである。
(図28) 3'末端ヌクレオチドに、2'-O-メチルリボース修飾を含むプライマーの、Taq DNAによる室温(レーンa)、55℃(レーンb)、および72℃(レーンc)での相対的な伸長効率を示すオートラジオグラフである。
(図29) 3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)修飾を含むプライマーの、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントによる37℃での相対的な伸長効率を示すオートラジオグラフである。
(図30) 3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)修飾を含むプライマーの、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(エキソヌクレアーゼ欠損突然変異誘導体;Asp424Ala)による37℃での相対的な伸長効率を示すオートラジオグラフである。
(図31) 大腸菌のDNAポリメラーゼのクレノウフラグメントにより37℃で触媒される、3'→5'エキソヌクレアーゼ分解の相対速度を示すオートラジオグラフである。
(図32) 72℃で、Tne DNAポリメラーゼ(Asp137Ala突然変異誘導体;5'→3'エキソヌクレアーゼ欠損)によって触媒される3'→5'エキソヌクレアーゼ分解の相対速度を示すオートラジオグラフである。
(図33) 対立遺伝子特異的PCRに結合したアダプターおよびユニバーサル検出オリゴヌクレオチドを用いた模式図である。実施例20を参照されたい。
(図34) 5'末端がフルオレセインで標識されたオリゴヌクレオチドの蛍光強度に対する5'核酸塩基の効果を示す相対蛍光の棒グラフである。10 pmolの
を、5倍過剰量の同じサイズの相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。グラフに示されるようにNN-変動ヌクレオチド。融解曲線は、実施例27に記述のように検出して標準化した。二本鎖構造の蛍光は、(1.0)として示される対応する一本鎖オリゴヌクレオチドに対する相対量で示されている。
(図35) 3'末端または5'末端に近い内部でフルオレセイン標識されたオリゴヌクレオチドの、二重鎖形成に伴う蛍光の変化を示す相対蛍光の棒グラフである。標識位置は太字で示されている。
(図36) フルオレセインで標識された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの融解曲線を示す棒グラフである。
。標識の位置は、太字で示されている。二重鎖形成には標識オリゴヌクレオチドと同じサイズの相補鎖を使用し、融解曲線は実施例27に記述のように測定した。
(図37) 5'末端、3'末端、または内部でFAM標識されたオリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションに伴う蛍光強度の変化を示す蛍光強度の棒グラフである。内部の標識位置は太字で示されている。相補鎖は小文字で示されている。二本鎖および一本鎖の標識オリゴヌクレオチドの蛍光の比は、実施例27に記述のように融解曲線から決定された。
(図38) 蛍光原性プライマーによるシグナル生成の模式図である。平滑末端でヘアピン構造をとるオリゴヌクレオチドの蛍光シグナルが最も弱い。シグナルはプライマーが線状になると増加し、プライマーが二本鎖DNAに取り込まれると最大になる。
(図39) 線状またはヘアピン型の蛍光原性プライマーを用いたリアルタイムPCRにおける、蛍光測定値を示す蛍光強度の線グラフである。蛍光はPCR前の25℃、予備加熱段階の94℃、各PCRサイクル中の55℃、最後にサイクリング後の25℃で測定された。FAM標識線状リバースプライマーを用いたPCR中の蛍光強度は、図39Aに示されている(実施例31、プライマーセット1、表8を参照)。FAM標識ヘアピンリバースプライマーを用いたPCR中の蛍光強度は、図39Bに示されている(実施例31、プライマーセット2、表8を参照)。PCRは、同様の条件で106コピーのクローンIL-4 cDNAを用い、および共通の非標識フォワードプライマーを用いて行われた。図39Cは温度に対する検出器測定値のプロットである。
(図40) PCRの特異性および効率に対するヘアピン構造の効果を示す相対蛍光の線グラフである。ヒトRDS遺伝子は線状(点線)またはヘアピン型(実線)のいずれかの非標識リバースプライマーおよび共通蛍光原性線状フォワードプライマーを用いて増幅された(実施例31、プライマーセット3および4、表8を参照)。両プライマーセットのPCRは、100 ng、2 ng、0.08 ng、および0 ngのゲノムDNAを用いて行われた。
(図41) 図41Aは増幅サイクルの数の関数としての相対蛍光を示す線グラフである。蛍光原性リアルタイムPCRの感度、精度、およびダイナミックレンジが示されている。実施例32に記述のように、c-myc cDNAの10倍段階希釈を増幅し、ABI 7700での2段階PCRにおいてはFAM標識蛍光原性プライマーを用いて検出した(実施例31、プライマーセット5、表8を参照)。図41Bは最初のcDNA濃度に対する閾値サイクル(CT)を表すグラフであり、エラーバーとして標準偏差が示されている(1希釈につき12回の反復)。
(図42) 増幅サイクルの数の関数としての相対蛍光を示す線グラフであり、ABI PRIZM 7700での多重蛍光原性PCRの代表として、クローンcDNAの3倍段階希釈を含むPCRを示す。図42Aは303,030から22コピーまでのIL-4 cDNA(灰色)を示す。図42Bは1,000,000から22コピーまでのc-myc cDNA(灰色)を示す。各希釈液は、クローンGAPDH cDNAを1,000,000コピー持っていた(黒)。IL-4(実施例31、プライマーセット2、表8を参照)、およびc-myc(実施例31、プライマーセット5、表8を参照)の検出にはFAM標識の蛍光原性プライマーを使用し、GAPDH(実施例31、プライマーセット12、表8を参照)の検出にはJOE標識プライマーが使用された。図42C〜Dは、CTに対する初期cDNA濃度(1濃度につき2回の重複する反応)の対応するプロットである。
(図43) Hela細胞由来の第1の鎖cDNA群を用いた多重リアルタイム蛍光原性PCRを示す線グラフである。Hela全RNAから作製された一定量のcDNAの存在下で、91,000から22コピーまでのクローンIL-4 cDNAの段階希釈液を含む鋳型を用いて、3段階PCRを実行した。FAM標識のヘアピンプライマーを用いて変動するIL-4標的が検出され(実施例31、プライマーセット2、表8を参照;灰色の線)、JOE標識ヘアピンプライマーを用いて一定のGAPDH標的が検出された(実施例31、プライマーセット12、表8を参照;黒線)。
(図44) 図44AはRDS多型の蛍光強度を示す棒グラフである。蛍光は、490 nm励起、20 nm帯域幅、525 nm発光、20 nm帯域幅を用いて、プレートリーダー(Polarion, TECAN)で検出された。エンドポイントにおける蛍光PCR産物の検出が示されている。C対立遺伝子またはT対立遺伝子に特異的な2つの異なるフォワードプライマー、およびFAM標識された共通のヘアピンリバースプライマー(プライマーセット15;表8)を用いて、RDS遺伝子におけるC558/T558多型に特異的なPCR産物が産生された。実施例34に記述のように、3段階PCRは40サイクル行われた。図44Bは緑色のフィルター(520 nm, 40 nm帯域幅)を備えたKodakイメージングシステムを用いて撮影した、UVトランスイルミネータ上のチューブの写真である。
(図45) 実施した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフである。
(図46) 鋳型DNAの開始量に対して増幅サイクルの数をプロットした標準曲線である。
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は分子生物学の分野に関する。特に、本発明は核酸の検出および識別に使用するための新規のプライマーに関する。本発明の新規のプライマーは、分子生物学の分野、特に核酸合成および増幅の際の特異性の上昇(例、ミスプライミングの低下)、核酸の増幅および合成反応における産物の検出、ならびに与えられた標的遺伝子の対立遺伝子間の識別に関し、広範囲に応用できると思われる。
【背景技術】
【0002】
関連技術
試料中の特定の核酸分子の存在の検出および定量ができるアッセイ法は、法医学、医学、疫学、および公衆衛生において、ならびに疾病の予測および診断において、非常に重要である。そのようなアッセイ法は、例えば、感染症の原因物質の同定、ある個人が遺伝病を患う可能性の予測、飲料水または牛乳の純度の決定、および組織試料の同定に使用できる。そのようなアッセイ法の有用性および応用可能性を高めたいという要望は、しばしばアッセイ法の感度によって妨げられる。したがって、より感度の高い検出アッセイ法を開発することが非常に望ましい。
【0003】
核酸検出アッセイ法は、サイズ、配列、およびDNAの場合には制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性のような、核酸分子の任意の特性に基づきうる。そのようなアッセイ法の感受性は、検出が観察者に対して報告またはシグナルを与えるよう方法を変えることによって向上されうる。したがって例えば、アッセイ法の感度は、検出可能な標識を施した試薬を使用することによって向上しうる。多様なこのような標識が、この目的のために使用されてきた。検出可能な標識には、例えば、放射性同位元素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および酵素標識が含まれる。米国特許第4,581,333号は、検出アッセイ法における感度向上のための酵素標識の利用を記述している。放射性同位元素標識は、米国特許第4,358,535号および第4,446,237号に記述されている。検出が観察される効率を改善するために、蛍光標識(欧州特許第144,914号)、化学標識(米国特許第4,582,789号および第4,563,417号)、および修飾塩基(欧州特許第119,448号)も使用されてきた。
【0004】
高度に検出可能な標識試薬を利用すると核酸検出アッセイ法の感度は改善されるが、設計上アッセイ法で検出されるような核酸が存在していなくても生成するバックグラウンドシグナルを上昇させる非特異的反応に主に関連した実際的な問題によって、アッセイ法の感度は制限されている。これらの問題に対応して、DNA増幅を用いた様々な検出および定量方法が開発されてきた。
【0005】
核酸の同定および定量のための現行の方法の多くは、増幅および/またはハイブリダイゼーション技術に依存している。これらの多くは分離段階を含んでいるが、反応から標識されたプライマーまたはプローブを分離せずに核酸の検出ができる方法も、いくつか開発されている。これらの方法は、ゲル電気泳動のようなゲルに基づく方法およびドットブロット分析と比較して、例えば、時間が短くてすむ、ハイスループットが可能である、キャリーオーバー汚染が予防される、リアルタイムの検出で定量ができるなど、数多くの利点がある。これらの現行の方法の大部分は、2つの発色団を利用した溶液ベースの蛍光法である。これらの方法は、2つの分子が互いに近くに存在するときに、励起された蛍光成分のエネルギーが受容分子に移動する、蛍光エネルギー移動(FRET)という現象を利用する。この移動により、励起した蛍光成分は光子の形でエネルギーを放出できなくなるため、蛍光成分の蛍光に消光が起こる。受容分子が十分に近くない場合には移動は起こらず、励起した蛍光成分は蛍光を発することができる。FRETに基づくシステムの大きな欠点は、検出オリゴヌクレオチド中に2つの修飾型ヌクレオチドが存在する必要があるというコスト、および特定のアッセイ条件下では、利用できるほどのシグナルの差を与えるほど消光の効率が良くないかも知れないということである。分離せずに検出できる他の既知の方法は、増感ランタニド金属と受容色素との間にエネルギー移動がある発光エネルギー移動(LRET)(Selvin, P. R.,およびHearst, J. D., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10024-10028 (1994));および相補的標的の存在下、2つの隣接するピレンがエキシマー(蛍光二量体)を形成して検出可能な蛍光ピークのシフトが得られるエキシマー形成色素の色の変化(Paris, P. L.ら、Nucleic Acids Research 26:3789-3793 (1998))である。
【0006】
核酸分子の増幅については、当技術分野で様々な方法が周知である。一般に、核酸標的分子は、ポリメラーゼによって触媒される反応においてオリゴヌクレオチドプライマー伸長のための鋳型として使用する。例えば、PanetおよびKhorana (J. Biol. Chem. 249:5213-5221 (1974))はセルロースに結合したデオキシリボポリヌクレオチド鋳型の複製を示した。Kleppeら(J. Mol. Biol. 56:341-361 (1971))は、相補的なDNAの合成の鋳型としての、二本鎖および一本鎖DNA分子の使用を開示している。
【0007】
他の周知の核酸増幅手法には、転写に基づく増幅系(Kwoh, D.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173 (1989));国際公開公報第88/10315号)が含まれる。連結反応の産物の配列に相補的な配列を持つ標的核酸の存在下での2つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドの連結に基づくスキーム(「連結連鎖反応(LCR)」)も、使用されたきた(Wu, D. Y.ら、Genomics 4:560 (1989))。相補的核酸へのアニーリング後の2つのオリゴヌクレオチドの連結に基づく他の適当な核酸増幅法は、当業者に周知である。
【0008】
PCT出願国際公開公報第89/06700号は、標的一本鎖DNA(「ssDNA」)へのプロモーター/プライマーのハイブリダイゼーション後に、その配列の多くのRNAコピーを転写させることに基づく核酸増幅法を開示している。この方法は、サイクルでなく、すなわち、得られたRNA転写物から新しい鋳型を産生するものではない。
【0009】
欧州特許第329,822号は、核酸配列に基づく増幅(NASBA)と呼ばれる別の増幅手法を開示している。NASBAは、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA、および二本鎖DNA(dsDNA)のサイクル合成を含む核酸増幅手法である。ssRNAは第1のプライマーオリゴヌクレオチドの第1の鋳型であり、このプライマーオリゴヌクレオチドは逆転写酵素(RNA依存DNAポリメラーゼ)によって伸長される。その後RNAはリボヌクレアーゼH(RNase H、DNAまたはRNAのいずれかとの二重鎖におけるRNAに特異的なRNase)の作用によって、得られたDNA:RNAの二重鎖分子から除去される。得られたssDNAは第2のプライマーの第2の鋳型である。第2のプライマーは、ssDNA鋳型にハイブリダイズするプライマー配列の5'側に存在する、RNAポリメラーゼプロモーター(例えばT7 RNAポリメラーゼ)の配列を含む。このプライマーはその後、DNAポリメラーゼ(例えば大腸菌DNAポリメラーゼIの大きな「クレノウ」断片)によって伸長され、プライマーの間に存在する元のRNAの部分と同一の配列を持ち、さらに、片方の末端にプロモーター配列を持つ、dsDNA分子が産生される。このプロモーター配列は適当なRNAポリメラーゼに用い、このDNAの多くのRNAコピーを産生できる。これらのコピーは、その後、サイクルに再度入り、非常に速い増幅が行われる。酵素を適切に選択すれば、この増幅は各サイクルで酵素を添加することなく、等温で行なえる。このプロセスはサイクルであるため、開始配列にはDNAまたはRNAのいずれかの型が選択されうる。
【0010】
米国特許第5,455,166号および欧州特許第684 315号は、鎖置換増幅(SDA)法とよばれる方法を開示している。この方法は、単一の温度で行われ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、および修飾型ヌクレオチド三リン酸の組み合せを用いて、標的DNA配列の一本鎖断片を増幅する。標的配列を分断化し、一本鎖にし、エンドヌクレアーゼの認識部位を含むプライマーにハイブリダイズさせる。そして、プライマー:標的複合体を、1つのヌクレオチド三リン酸が修飾された、ヌクレオチド三リン酸混合物を用いて、ポリメラーゼ酵素で伸長する。結果として、元の標的配列およびエンドヌクレアーゼ認識配列を含む、二重鎖分子が得られる。認識配列を持つ片方の鎖は、プライマーに由来し、他方は伸長反応の結果である。伸長反応は修飾型ヌクレオチドを用いて行われるので、認識部位の片方の鎖は修飾されており、エンドヌクレアーゼ消化に抵抗性である。その後、得られた二重鎖分子に非修飾鎖を切断するエンドヌクレアーゼを接触させ、ニックを形成する。ニックの入った鎖は、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を持たないポリメラーゼ酵素によって伸長し、ニックの入った鎖を置換し、新しい二重鎖分子を産生する。新しい二本鎖分子に、ニッキングおよび伸長のサイクルを複数回行い、標的配列を複数コピー産生する。
【0011】
最も広く用いられている核酸増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRの詳細は、以下の参考文献に提供されている:Mullis, K.ら、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263-273 (1986);欧州特許第50,424号;欧州特許第84,796号;欧州特許第258,017号;欧州特許第237,362号;欧州特許第201,184号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,582,788号;米国特許第4,683,194号。最も簡単な形のPCRでは、標的である二本鎖核酸分子の増幅を行なう。二本鎖の配列を変性させ、得られた一本鎖の各々にオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングさせる。プライマーの配列は、増幅する二本鎖核酸配列部分に隣接する位置にプライマーがハイブリダイズするように選択する。オリゴヌクレオチドはポリメラーゼ酵素、ヌクレオチド三リン酸、および適当なコファクターを用いた反応で伸長し、各々が標的配列を含む2つの二本鎖分子を形成する。その後の変性、アニーリング、および伸長反応の各サイクルでは、前のラウンドの伸長産物がその後の複製段階の鋳型として働くために、標的配列のコピー数は2倍になる。したがってPCRは、特定の配列を持つ核酸分子が精製されておらず、特定の試料中に単一のコピーしか存在していなくても、その分子の濃度を選択的に上昇させる方法を提供する。この方法は、一本鎖または二本鎖核酸のいずれの増幅にも使用できる。この方法の本質は、所望の核酸分子の、鋳型に依存し、ポリメラーゼを介する複製のためのプライマーとして働く、2つのオリゴヌクレオチドを使用することである。
【0012】
PCRには研究および診断の分野で、数多くの応用法がある。PCRが有用であることが示された1つの分野は、対立遺伝子特異的PCR(ASPCR)による一塩基突然変異の検出である(例えば、米国特許第5,639,611号および第5,595,890号を参照されたい)。Wuら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2757-2760 (1989))によって最初に記述されたように、ASPCRは核酸分子の特定の位置における一塩基変化を検出するもので、これは、疑われる変種ヌクレオチドに対して相補的な3'末端ヌクレオチドを持つプライマー配列を用いた標的の増幅と、正常なヌクレオチドに相補的な3'末端ヌクレオチドを持つプライマーを用いた標的の増幅とを比較することで行なう。標的に変種ヌクレオチドが存在する場合には、変種ヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを含むプライマーを用いた方が効率的に増幅されるが、標的に正常なヌクレオチドが存在する場合には、正常なヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを含むプライマーを用いた方が効率的に増幅される。
【0013】
この技術は核酸中の一塩基置換を同定するために使用できるが、それでも実用的に応用するためはいくつかの欠点がある。プライマーにおける増幅効率の差は、正常なヌクレオチドと突然変異ヌクレオチドとの差を簡単に区別できるほど十分に大きくない可能性がある。ミスマッチしたプライマーが増幅の初期のラウンドでかなりの頻度で伸長されると、後期のラウンドでは産物の量が大きく異ならない可能性がある。この問題を避けるためには、増幅サイクル数と反応条件を注意深く選択する必要がある。この方法のさらなる問題点は、増幅後の検出段階にある。一般に、検出は電気泳動によって反応産物を分離してから、その産物を可視化して行なう。分離段階が必要なため、この種の分析を行なうために必要な時間と費用は劇的に増加する。FRETに基づく様々な液相の検出法は、分離段階を不要とするために使用されてきた。これらの方法は、上述のような欠点を持つ。
【0014】
核酸増幅産物の検出方法は、通常、ゲル電気泳動を用いるが、これはサイズの差によってプライマーから増幅産物を分離するものである。または、増幅産物は産物の固定化によっても検出できるが、これは遊離プライマー(例えば、ドットブロット分析において)を洗い流し、慣例の固相ハイブリダイゼーション法によって特異的なプローブでのハイブリダイゼーションが行われる。プライマーまたはプローブをあらかじめ分離せずに行なう増幅過程のモニタリング方法がいくつか記述されている。これらの方法は全てFRETに基づく。
【0015】
米国特許第5,348,853号およびWangら、Anal. Chem. 67:1197-1203 (1995)に記述された1つの方法は、プローブ上の2つの蛍光体の間でエネルギー移動が起きるエネルギー移動システムを使用する。この方法では、増幅された分子の検出は、分離段階を必要とせずに、増幅反応容器中で起きる。Wangらの方法は、リバースプライマーに相補的な「エネルギーシンク」オリゴヌクレオチドを使用する。「エネルギーシンク」およびリバースプライマーオリゴヌクレオチドは、それぞれドナーおよびアクセプター標識を持つ。増幅の前に、標識されたオリゴヌクレオチドは、その中でエネルギー移動が自由に起きるプライマー二重鎖を形成する。その後、標的鎖の1つが著しく過剰産生される前の対数期後半まで非対称PCRを実行する。
【0016】
プライマーと産物とをあらかじめ分離せずに増幅産物を検出する第2の方法は、5'ヌクレアーゼPCRアッセイ法(TAQMAN(登録商標)アッセイ法とも呼ばれる)である(Hollandら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280 (1991); Leeら、Nucleic Acids Res. 21:3761-3766 (1993))。このアッセイ法は、増幅反応中に、二重標識された蛍光原性プローブ(「TAQMAN(登録商標)」プローブ)のハイブリダイゼーションおよび切断によって、特異的なPCR産物の蓄積を検出する。蛍光原性プローブは、蛍光レポーター色素および消光色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる。PCR中、増幅されているセグメントにハイブリダイズすれば、このプローブはDNAポリメラーゼの5'エキソヌクレアーゼ活性によって切断される。プローブが切断されると、レポーター色素の蛍光強度が上昇する。TAQMAN(登録商標)アッセイ法では、ドナーおよび消光剤は好ましくはプローブの3'および5'末端に存在する。これは、蛍光体と消光剤との間で5'-3'加水分解が行われるという条件は、これらの2つの部分が互いに近すぎないときにのみ、満たされるからである(Lyamichevら、Science 260:778-783 (1993))。
【0017】
増幅産物の別の検出法(モレキュラービーコン(MOLECULAR BEACON)法)は、TyagiおよびKramer (Nature Biotech. 14:303-309 (1996))によって記述された「ビーコンプローブ」を用いたエネルギー移動を利用する。この方法は、ヘアピン構造を形成できるオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを使用する。ハイブリダイゼーションプローブの一方の端(5'末端または3'末端のいずれか)にドナー蛍光体があり、他方の端にはアクセプター部分がある。TyagiおよびKramerの方法では、アクセプター部分は消光剤、すなわち、アクセプターはドナーから放出されたエネルギーを吸収するが、それ自身は蛍光体ではない。したがって、ビーコンが開いた立体構造の場合には、ドナー蛍光体の蛍光は検出できるが、ビーコンがヘアピン(閉じた)立体構造の場合には、ドナーの蛍光体は消光される。PCR産物の一方の鎖にハイブリダイズするビーコンプローブをPCRに使用すると、「開いた構造」になり、蛍光は検出されるが、ハイブリダイズしなかったものは蛍光を発しない。その結果、PCR産物の量が増加するにつれて蛍光の量は増加するため、これはPCRの進行の尺度として使用できる。
【0018】
エネルギー移動を利用したもう1つの増幅産物の検出法は、Nazarenkoら(Nucleic Acids Research 25:2516-2521 (1997);米国特許第5,866,336号)のサンライズプライマー(SUNRISE PRIMER)法である。サンライズプライマーは、FRETおよび非蛍光消光の他の機構に基づく。サンライズプライマーは、5'末端にヘアピン構造を持つ一本鎖プライマーからなる。ヘアピンのステムはドナー/消光剤対で標識されている。ポリメラーゼによってヘアピン配列が開かれ、複製されると、シグナルが生成する。
【0019】
核酸ハイブリダイゼーションまたは核酸増幅に関する様々な応用法における、蛍光標識した核酸の利用については、一連の論文があるが、応用法の多くはハイブリダイズしなかったプローブまたは取り込まれなかったプライマーを分離し、検出するものである。これらの方法の中で、プローブもしくはプライマーのリアルタイムの検出、または増幅産物への取り込みもしくはハイブリダイゼーションの際の蛍光標識したオリゴヌクレオチドの蛍光特性の変化を記述または考察したものはない。したがって、特定の核酸標的配列の検出が、標的配列を含む核酸試料の増幅を伴う、伴わないに関わらず、標識核酸配列を検出するための、より感度が高く識別できる方法が、当技術分野でまだ必要とされている。
【0020】
本発明の驚くべきかつ新規の一部の所見は、標識されたプローブまたはプライマーが二本鎖になったときに、1つ以上の蛍光特性によって変化が測定されることに基づいている。したがって、本発明は、核酸配列の増幅または合成の多くの方法に適合し、キャリーオーバー汚染の可能性を大きく低下させるような、産物の検出方法を提供することにより、核酸、特に増幅および/または合成産物を検出するといった問題を解決する。本発明の化合物および方法は、先行技術に対して、実質的な改善を提供する。まず、取り込まれなかった蛍光標識オリゴヌクレオチドをあらかじめ分離することなく、増幅または合成の産物を検出できる。第2に、産物に標識オリゴヌクレオチドを取り込むことによって、増幅または合成の産物を直接検出できる。第3に、オリゴヌクレオチドを2つの異なる化合物で標識する(FRETに基づく方法のように)必要はないので、標識オリゴヌクレオチドの産生が簡素化する。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本発明は内部、および/または3'および/または5'末端に1つ以上の修飾を含む可能性のあるオリゴヌクレオチドを提供する。適当な修飾には、標識の含有、特異性増強基の含有、修飾された基(例、修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体)の含有、消光成分の含有、ヌクレオチド類似体の含有等が含まれるがこれらに限定されない。本発明のオリゴヌクレオチドは、関心のある標的または鋳型配列の全体または一部に相補的な1つ以上の配列も含む可能性がある。いくつかの態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ヘアピンの形状である。ヘアピンオリゴヌクレオチドは修飾であっても、または非修飾であってもよい。本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドは、ヘアピンのステム領域またはその付近に1つ以上の一本鎖領域を含む可能性があり、平滑末端であっても、または3'および/もしくは5'末端に突出配列を含んでいてもよい。本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの任意の位置に任意の数のステム・ループ構造を含む可能性もある。いくつかの好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、核酸合成および増幅(例、PCR)を含むがこれらに限定されないプライマー伸長に関する方法、ならびにプローブおよび/またはプライマーのハイブリダイゼーションに関する他の方法によって、標的または鋳型核酸分子の検出および/または識別に使用できる。本発明のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の任意の伸長反応で使用できる。そのような伸長反応には、DNAポリメラーゼを用いてDNA鋳型上のプライマーを伸長して相補的なDNA鎖を産生すること、および逆転写酵素を用いてRNA鋳型上のプライマーを伸長して相補的なDNA鎖を産生することが含まれるがこれらに限定されない。本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドの、関心のある1つ以上の標的核酸へのハイブリダイゼーションを含む方法を用いて、標的または鋳型核酸分子を検出/識別するときにも使用できる。
【0022】
1つの局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは同一または異なる可能性のある1つ以上の標識(例、検出可能標識)を含む可能性がある。いくつかの好ましい態様では、標識は蛍光成分である可能性がある。本発明の標識されたオリゴヌクレオチドは、例えば、そのようなオリゴヌクレオチドをそのような核酸分子にハイブリダイズすることによって、試料中の核酸分子の有無の検出またはその定量に使用できる。選択的に、そのようなオリゴヌクレオチドは合成および/または増幅反応で伸長でき、検出/定量はそのような反応中または反応後に実行できる。本発明の1つの局面では、そのような検出/定量は、二本鎖の標識オリゴヌクレオチドが一本鎖のオリゴヌクレオチドと比較して、1つ以上の特性(好ましくは蛍光特性)において検出可能な変化を示すことに基づく。本発明の別の局面では、本発明のオリゴヌクレオチドが伸長されたときの検出可能な特性(好ましくは蛍光特性)の変化が、標的/鋳型核酸の検出/定量に使用される。変化が検出できる蛍光特性には、蛍光強度(上昇または低下)、蛍光偏光、蛍光寿命、および蛍光の量子収量が含まれるがこれらに限定されない。したがって、検出/定量する核酸分子に対する、本発明の標識オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび/または伸長によって、使用した標識の1つ以上の検出可能な変化、特に、蛍光標識を使用している際には、1つ以上の蛍光特性の検出可能な変化が起こる。本発明のこの局面では、同一の試料中で、複数の異なる標的配列を検出するために、複数の異なるオリゴヌクレオチドが使用でき(例、多重化)、そのような異なるオリゴヌクレオチドは、異なる標識を行い、複数の標識配列を同時および/または順次に検出することができる。
【0023】
別の局面では、本発明は1つ以上の特異性増強基を含むオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドには、例えば、合成または増幅反応において、例えば、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的または鋳型核酸配列と塩基対を形成していないと、それが実質的に伸長しにくくなるようにする1つ以上の特異性増強基を提供できる。いくつかの態様では、特異性増強基は、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドまたはその付近に存在する。
【0024】
特異性増強基は、当技術分野で周知の任意の方法を用いてオリゴヌクレオチドに結合でき、リンカー基を介して結合してもよい。そのようなリンカー基の長さ、および化学的組成、すなわち、疎水性、電荷等は、様々であってよい。本発明の特異性増強基は、修飾するヌクレオチドの任意の部分、すなわち、塩基、糖、またはリン酸基に結合できる。本発明の特異性増強基は、蛍光基、化学発光基、放射性標識基等を含むがこれらに限定されない検出可能な基であるか、またはこれらを含むことができる。別の局面では、特異性増強基は、本発明のオリゴヌクレオチド内の1箇所以上の位置に取り込まれた修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体であってもよい。いくつかの態様では、本発明の特異性増強基は、オリゴヌクレオチドが伸長されると1つ以上の蛍光特性に検出可能な変化がおこる蛍光基、または関心のある核酸の検出を可能にする任意の他の検出可能な標識であってもよい。好ましくは、標識は、本発明のオリゴヌクレオチドが合成または増幅反応において伸長されると、検出可能な変化を示す。
【0025】
本発明のオリゴヌクレオチドは、ヘアピンである可能性がある。本発明のヘアピンは、好ましくは少なくとも1つのステム構造および少なくとも1つのループ構造を持つ。塩基対によってステム構造を形成する配列は、いかなる長さでもよく、好ましくは、標的または鋳型配列に相補的な配列の少なくとも一部を含む。例えば、オリゴヌクレオチドの配列は、まず、標的または鋳型核酸配列の一部に部分的に相補的な配列を選択し、その後、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドに相補的な1つ以上のヌクレオチドを、そのオリゴヌクレオチドの5'末端に付加することにより、合成または増幅反応に使用される温度より低い温度ではヘアピンを形成するように選択できる。温度が低下すると、3'および5'末端の相補的なヌクレオチドは塩基対を作り、ステム構造を形成できる。付加すべき相補的ヌクレオチドの数は、ステム構造の望ましい融解温度を決定することにより選択できる。融解温度は、好ましくは反応混合物の調製時にオリゴヌクレオチドがヘアピン構造であり、それによってそのオリゴヌクレオチドが標的または鋳型核酸分子への間違ったアニーリングまたは間違ったプライミングをしない程度に高く、かつオリゴヌクレオチドの全体または一部が線状構造をとり、合成または増幅反応中の適当な時点で標的または鋳型にアニーリングできる程度に低い。ステム構造のための適当な融解温度の選択は、当技術分野で日常的に行われている。
【0026】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上述の特性の複数またはその組み合せを組み込んでいる可能性がある。例えば、オリゴヌクレオチドは1つ以上の標識および/または1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上のヘアピン構造を含む可能性がある。
【0027】
別の局面では、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の任意の手段によって、支持体に共有結合または非共有結合で結合しうる。そのような支持体に結合したオリゴヌクレオチドは、本発明の方法の実施に使用できる。例えば、核酸分子の検出もしくは定量は支持体上で実施でき、および/または核酸の合成もしくは増幅は、支持体上で実施できる。そのような支持体は、固体または半固体であってもよく、当技術分野で周知の任意の材料で作られていてもよい。支持体の例には、ポリオレフィン、焼結ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、シリカ等が含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
1つの局面では、本発明は、関心のある1つ以上の標的または鋳型核酸分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子の合成および/または増幅、またはそのような標的への本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの過程に使用する反応混合物または組成物を提供する。いくつかの好ましい態様では、反応混合物は本発明の少なくとも第1の、ならびに好ましくは第1および第2のオリゴヌクレオチドプライマーを含む可能性があり、プライマーは同一または異なる可能性があり、同一または異なる標識および/または特異性増強基を含む可能性がある。そのような第1のプライマーは好ましくは、標的または鋳型核酸に少なくとも部分的に相補的であって、標的または鋳型核酸の全体または一部に相補的な第1の伸長産物の合成をプライミングする、少なくとも1つの配列を含む。そのような第2のオリゴヌクレオチドプライマーは好ましくは、第1の伸長産物の全体または一部に少なくとも部分的に相補的な配列を含み、第1の伸長産物の全体または一部に少なくとも部分的に相補的な第2の伸長産物の合成をプライミングする。いくつかの態様では、反応混合物は本発明の同一または異なるオリゴヌクレオチドプライマーを1つ以上含み、プライマーは1つ以上の同一または異なる標識および/または特異性増強基を含む可能性がある。例えば、反応混合物または組成物は、少なくとも1つのプライマーがヘアピン型で、他はヘアピン型ではない(好ましくは、そのような他のプライマーは線状である)複数のオリゴヌクレオチドプライマーを含んでいてもよい。別の局面では、1つのプライマーは、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅/伸長時に1つ以上の特性が検出可能な変化をする少なくとも1つの標識を持ち、第2のプライマーはヘアピン型および/または少なくとも1つの特異性増強基を持つ可能性がある。別の局面では、第1および第2のプライマーはともにヘアピン型であり、上述のような標識および/または特異性増強基を含む可能性がある。そのよう本発明の反応混合物または組成物はさらに、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上の標的または鋳型分子、および本発明のハイブリダイゼーションまたは合成/増幅反応によって産生される1つ以上の産物からなる群より選択される1つ以上の成分を含む可能性がある。したがって、本発明は一般的に、本発明を実施するために産生される組成物/反応混合物、および/または本発明を実施して得られる組成物/反応混合物に関する。
【0029】
本発明は、以下の段階を含む、試料中で核酸分子の有無を検出するため、または核酸分子の量を定量するための方法に関する:
(a) 1つ以上の核酸分子を含むと考えられる試料に、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを接触させる段階;および
(b) 試料中の、核酸分子の有無を検出する、または定量する段階。
【0030】
いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは標識されていることがあり、検出段階には、本発明の標識オリゴヌクレオチドの1つ以上の蛍光または他の検出可能な特性の変化を検出する段階が含まれる場合がある。いくつかの態様では、変化する蛍光特性は、蛍光の強度である。いくつかの態様では、蛍光強度の上昇が検出される。
【0031】
好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドは、そのようなオリゴヌクレオチドが試料中の核酸分子にハイブリダイズするのに十分な条件下でインキュベートされる。好ましい局面では、検出または定量段階には、対照試料(核酸分子が存在しない)と核酸分子を含む試料との比較が含まれる。未知の試料中に存在する核酸分子の正確なまたはおおよその量を決定するために、比較のための陽性対照として、本発明にしたがって既知の量の核酸分子を含む別の対照試料が使用できる。
【0032】
関連する局面では、本発明は核酸の合成または増幅中またはその後における、試料中の核酸分子の検出または定量に関する。したがって、本発明は以下の段階を含む、試料中の1つ以上の核酸分子の検出または定量のための方法に関する:
(a) 本発明の1つ以上の鋳型または標的核酸分子を、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階;
(b) 鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、反応液をインキュベートする段階であって、合成または増幅された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 合成または増幅された核酸分子を検出または定量する段階。
【0033】
いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドを標識でき、検出段階においては本発明の標識されたオリゴヌクレオチドの1つ以上の蛍光または他の検出可能な特性の変化が検出されうる。いくつかの態様では、変化する蛍光特性は、蛍光の強度である。いくつかの態様では、蛍光強度の上昇が検出される。
【0034】
鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するために十分な条件は、好ましくは、1つ以上の核酸および1つ以上のポリメラーゼおよび/または逆転写酵素(好ましくはDNAポリメラーゼ、および最も好ましくは耐熱性DNAポリメラーゼ)の存在下で、鋳型/オリゴヌクレオチド混合物をインキュベートする段階を含む。最も好ましい局面では、使用する増幅過程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはRT PCRであるが、本発明にしたがって他の増幅方法も使用できる。本発明のこの局面では、検出/定量段階は、増幅もしくは合成中、または合成もしくは増幅の完了後に実施できる。増幅反応中に検出するときは、リアルタイムの蛍光検出のできるサーモサイクラーが使用できる。さらに、核酸合成または増幅法は、好ましくは二本鎖核酸分子(好ましくは、二本鎖DNA/DNAまたはDNA/RNA分子)を産生し、そのような二本鎖分子の有無または量は、本発明のこの方法によって決定できる。好ましい局面では、本発明の標識されたオリゴヌクレオチドを合成または増幅時にプライマーとして使用して、標識されたオリゴヌクレオチドプライマーは合成または増幅された分子中に取り込まれ、それによって標識された産物分子(一本鎖または二本鎖の可能性がある)が産生される。別の局面では、本発明にしたがって産生された合成または増幅核酸分子は、同一または異なる1つ以上の標識を含む可能性がある。好ましい局面では、検出または定量段階は、対照試料と関心のある標的/鋳型核酸分子を含む試料との比較を含む。比較のため、および/または未知の試料中に存在する標的/鋳型の正確なもしくはおおよその量を決定するために、陽性対照として、既知の量の標的/鋳型を含む別の対照試料を使用できる。
【0035】
より具体的には、本発明は以下の段階を含む、二本鎖標的核酸分子(例、DNA/DNA; RNA/RNA; またはRNA/DNA分子)の増幅方法に関する:
(a) 少なくとも第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的であり、かつ第2のプライマーは核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素の存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、第1のプライマーを第1の鎖、および第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;ならびに
(d) 段階(a)から(c)を1回以上繰り返す段階であって、プライマーのうちの1つ以上が本発明のオリゴヌクレオチドである段階。
【0036】
いくつかの態様では、プライマーの少なくとも1つは、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅/伸長すると、1つ以上の蛍光またはその他の検出可能な特性に検出可能な変化を起こす標識を少なくとも1つ含む。いくつかの態様では、プライマーの少なくとも1つは、プライマーの3'ヌクレオチドが標的分子と塩基対を形成しない場合、プライマーが実質的に伸長しにくくなるような、少なくとも1つの特異性増強基を含む。いくつかの態様では、プライマーの1つ以上は、ヘアピン型である。いくつかの態様では、プライマーの少なくとも1つはヘアピン型であり、さらに検出可能な標識および/または特異性増強基を含む。
【0037】
別の局面では、本発明は増幅または合成の産物を、反応管を開けることなく検出する直接の検出法を提供する。「閉管」形式のこの態様は、増幅または合成の産物のキャリーオーバー汚染の可能性を大きく低下させる。閉管法は、試料のハイスループット分析も提供する可能性があり、自動化できる。閉管形式は、検出過程を著しく単純化し、ゲル電気泳動またはドットブロット解析のような、増幅後または合成後の解析を不要にする。
【0038】
別の局面では本発明は、以下の段階を含む、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを、関心のある1つ以上の核酸分子にハイブリダイズまたは結合する方法に関する:
(a) 1つ以上のオリゴヌクレオチドを1つ以上の核酸分子と混合する段階;および
(b) 1つ以上のオリゴヌクレオチドが1つ以上の核酸分子にハイブリダイズまたは結合するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0039】
好ましい局面では、この方法で使用される少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドはヘアピン型であり、より好ましくは、1つ以上のオリゴヌクレオチドは1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上の標識を含むヘアピン分子である。
【0040】
本発明は以下の段階を含む、1つ以上の核酸分子の合成または増幅方法にも関する:
(a) 1つ以上の鋳型または標的核酸分子を、本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階;および
(b) 鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0041】
好ましい局面では、オリゴヌクレオチドはヘアピンであり、より好ましくは、1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上の標識を含むヘアピン分子である。鋳型または標的分子の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するために十分な条件は、好ましくは1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上のポリメラーゼ、および/または1つ以上の逆転写酵素(好ましくは、DNAポリメラーゼ、および最も好ましくは、耐熱性DNAポリメラーゼ)の存在下で、鋳型/オリゴヌクレオチド混合物(例、鋳型-オリゴヌクレオチド複合体)をインキュベートすることを含む。最も好ましい局面では、使用される増幅段階は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはRT PCRであるが、他の増幅方法も本発明したがって使用できる。さらに、核酸の合成または増幅方法は、好ましくは二本鎖核酸分子(好ましくは、二本鎖DNA/DNAまたはDNA/RNA分子)を産生する。本発明のオリゴヌクレオチドを使用すると、核酸分子をより効率的に合成および/または増幅することができる。
【0042】
より具体的には、本発明は、以下の段階を含む、二本鎖標的核酸分子の増幅方法に関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的で、第2のプライマーは核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的な段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素の存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成されるような条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第1の鎖を変性させる段階;
(d) 段階(a)から(c)を1回以上繰り返す段階であって、1つ以上のプライマーが本発明のオリゴヌクレオチドである段階。
【0043】
1つの態様では、使用される本発明のオリゴヌクレオチドはヘアピンであり、より好ましくは、1つ以上の特異性増強基および/または1つ以上の標識を含むヘアピンである。
【0044】
本発明は、検出/定量/増幅/合成される核酸分子がRNAまたはDNA分子であって、そのような分子が一本鎖または二本鎖のいずれかである、上述の方法の態様も提供する。
【0045】
本発明は、標的または鋳型核酸分子の3'末端がポリアデニル化されており(例、ポリ(A)RNAまたはmRNA)、および/または本発明のプライマーまたはオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つはポリ(T)配列を持ち、および/または本発明の他のプライマーまたはオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが少なくとも1つのデオキシイノシン残基を含む、上述の方法の態様も提供する。関連する局面では、鋳型または標的核酸はmRNA分子であり、少なくとも1つのプライマー/オリゴヌクレオチドは標識され、ポリ(T)配列を含み、および少なくとも1つのプライマー/オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのデオキシイノシン残基を含む。
【0046】
さらに理解されるように、本発明のオリゴヌクレオチドは、単一遺伝子特異的プライマーを用いてmRNA由来のcDNA末端の増幅へのPCRの応用に関するような、他の増幅法にも使用できる。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドは「RT-PCR」、「5'-RACE」、「アンカーPCR」、および「片側PCR」のような、mRNAの5'末端からの配列の捕捉を容易にする方法に使用できる。本発明の方法は、これらに限定されないが、PCR、LCR、SDA、およびNASBA、ならびに当技術分野で周知の他の増幅系を含む核酸配列の増幅の多くの方法に適応できる。
【0047】
別の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは標的核酸配列または関心のある遺伝子標的にはもともと存在していない特異的な配列であり得る(例、対立遺伝子特異的PCR)。そのような局面では、標的または鋳型分子に、まずアダプターまたはテール分子を導入する。そのようなアダプター分子は、様々な方法で結合できる。標的もしくは鋳型への連結、または合成反応(PCRなど)によって付加でき、この場合はアダプターまたはテール配列は、標的または鋳型に相補的な1つ以上の核酸分子の合成に使用された1つ以上のプライマーの一部である。そのようなテールまたはアダプターを含む鋳型または標的配列は、その後、本明細書に記述される方法にしたがって、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、検出できる。したがって、本発明は、様々な配列を検出するためのユニバーサル検出オリゴヌクレオチドも提供する。このようにして、本発明の特定のユニバーサルオリゴヌクレオチドを用いて、本発明のユニバーサルオリゴヌクレオチドに全てまたは特定のものが相補的である、1つ以上のアダプター配列を、いくつかの方法によって単に付加することによって、任意の数の標的または鋳型分子を検出できる。実施例20を参照されたい。1つの局面では、ユニバーサルオリゴヌクレオチドは(プライマーに)相補的なアダプター末端配列が付加または結合された、任意の核酸配列にアニーリングする。ユニバーサルオリゴヌクレオチドを用いるときは、「アダプター」が存在する全ての核酸配列に無作為に結合するのを避けるために、関心のある核酸を単離するために注意する必要があり、あるいは連結手法を関心のある配列のみで行なう必要がある(米国特許第6,174,709号)。別の局面では、標的配列に隣接する既知のベクター配列にアニーリングするまたは相補的な、ユニバーサルオリゴヌクレオチドが使用できる。アダプター分子として使用でき、当技術分野で周知の、市販されているそのようなベクター配列には、pUC/M13、pBR322、lambdagt10、lambdagt11等(米国特許第5,876,936号)が含まれる。アダプターは、pUC/M13、lambdagt10、およびlambdagt11等のように、ユニバーサルプライマーに由来するものでよく(Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、CSHL, 1989、第13節)、そのようなアダプター配列を含む1つ以上のプライマーは、核酸合成反応(PCRなど)によって、標的または鋳型分子に付加できる。
【0048】
本発明の別の局面では、本発明は以下の段階を含む、核酸分子の増幅を含む、試料中のポリメラーゼの活性または量の決定方法に関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは第1の核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的で、第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) ポリメラーゼの存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;
(d) 段階(a)から(c)を1回以上繰り返す段階;ならびに
(e) 増幅産物を検出する段階であって、プライマーの少なくとも1つは本発明のオリゴヌクレオチドであり、産生される増幅産物の量がポリメラーゼの活性または量を示す段階。
【0049】
いくつかの態様では、産生される増幅産物の量は、取り込まれた検出可能な標識の、1つ以上の蛍光または他の検出可能な特性の変化を検出することによって、決定される。
【0050】
したがって、一般に本発明は以下の段階を含む、試料中のポリメラーゼまたは逆転写酵素の活性または量を決定する方法に関する:
(a) ポリメラーゼまたは逆転写酵素を含むと考えられる試料を、1つ以上の核酸鋳型および1つ以上の本発明の標識オリゴヌクレオチドと混合する段階;
(b) 鋳型の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、合成または増幅された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 1つ以上の検出可能な標識に基づいて、試料中でポリメラーゼまたは逆転写酵素の活性または量を決定する段階。
【0051】
別の局面では、本発明は本発明の方法にしたがって、核酸分子またはポリメラーゼの検出を行なう時の、バックグラウンドの蛍光または他の検出可能な特性の消光に関する。本発明のこの局面では、一本鎖分子によって産生される蛍光または他の検出可能な特性を消光するために、1つ以上の標識された一本鎖核酸分子に結合する1つ以上の消光剤が使用される。好ましい局面では、消光剤は一本鎖分子に特異的で、二本鎖の標識核酸分子とは実質的に相互作用しない。したがって、本発明の標識(蛍光または他の検出可能な標識)されたオリゴヌクレオチドは、そのような物質が存在すると消光されるまたは実質的に消光される。標的分子と相互作用すると(例、ハイブリダイゼーション)、または増幅もしくは合成反応中に形成される本発明の標識オリゴヌクレオチド(蛍光または他の検出可能な標識)を含む二本鎖核酸分子は、そのような物質とは実質的に相互作用しないので、そのような物質によって実質的に消光されない。したがって本発明のこの局面は、蛍光のバックグラウンドを低下(または検出可能な特性のバックグラウンドを低下)させ、本発明の方法において標的核酸分子の検出を増強する。本発明で使用するために好ましい消光剤には、1つ以上の一本鎖結合タンパク質(SSB)が含まれる。そのようなSSBは、当技術分野で周知である(米国特許第5,449,603号および米国特許第5,605,824号)。別の局面では、そのような消光剤には、例えばDABCYLのような1つ以上の消光剤を含むブロッキングオリゴヌクレオチドが含まれる。別の局面では、消光成分は本発明のオリゴヌクレオチドの一部である場合がある。例えば、1つ以上の消光成分は、本発明の1つ以上のヘアピンのステム構造に取り込まれている可能性がある。そのようなステム構造は、1つ以上の標識も取り込んでいる可能性があり、ヘアピン構造の中では消光成分が標識のバックグラウンド活性のレベルを低下させる。ステム構造が変性すると(折畳みが開くと)、標識の消光は低下または予防される。
【0052】
別の態様では、本発明は、本発明の1つ以上の本発明の標識オリゴヌクレオチドを含む組成物に関するが、ここで標識は検出可能な標識であり、オリゴヌクレオチドはDNAおよびRNAからなる群より選択される。本発明の標識オリゴヌクレオチドは、用途によってプライマーおよび/またはプローブであってもよい。本発明の組成物はさらに、1つ以上のポリメラーゼ、1つ以上の消光剤、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の核酸分子(1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチドを含む、鋳型または核酸分子であり得る)、および1つ以上の緩衝塩からなる群より選択される1つ以上の成分を含む可能性がある。
【0053】
本発明の別の態様では、オリゴヌクレオチド標識はFRET対のメンバーである。この態様では、1つ以上の本発明の標識オリゴヌクレオチドは、内部、および/または3'および/または5'末端またはその付近に、FRET対のメンバーを1つ以上含む。好ましい局面では、標識成分は、1つ以上の蛍光成分であり、その発光は反応の進行を評価するために測定できる。
【0054】
本発明は核酸合成もしくは増幅産物の検出もしくは測定のため、または核酸分子の測定もしくは検出のためのキットにも関する。そのようなキットは、ハイブリダイズ、増幅、または合成される核酸の存在が、疾病または障害の有無と相関している、診断キットであってもよい。本発明のキットは、試料中のポリメラーゼの活性または量を検出または決定するためにも使用できる。さらに、本発明のキットは本発明のオリゴヌクレオチドを用いて、ハイブリダイゼーション、合成、増幅、または他の伸長反応を実施するためにも使用できる。本発明の好ましいキットは、本発明の方法で使用される試薬を含むように設計された1つ以上の容器(バイアル、チューブなど)、および選択的に、そのような試薬を使用するための説明書またはプロトコールを含みうる。本発明のキットは、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチド(プローブおよび/またはプライマーを含むがこれらに限定されない)、耐熱性ポリメラーゼのような1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、または任意の他のDNAもしくはRNAポリメラーゼ、1つ以上の標識を消光できる1つ以上の物質、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の標的/鋳型分子(反応の実行を決定するために使用できる、すなわち、対照反応)、および本発明の方法で産生された産物または中間体を解析またはさらに操作するためのその他の試薬からなる群より選択される成分を1つ以上含む可能性がある。そのような付加される成分には、クローニングおよび/または配列決定に使用される成分、および関心のある核酸分子の検出または定量に必要な成分または装置も含まれうる。
【0055】
本発明は本発明の方法を実行することによって産生される任意の産物または中間体(例、核酸分子)にも関する。本発明は本発明の方法によって産生されるそのような産物または中間体を含むベクターまたは宿主細胞にも関する。そのようなベクターの宿主細胞への導入は、当技術分野で周知の任意のクローニングおよび形質転換技術を用いて行なうことができる。
【0056】
また本発明は、以下の段階を含む、1つ以上の核酸分子の合成または増幅方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0057】
また本発明は、以下の段階を含む、核酸合成または増幅の特異性を上昇させた、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つのヘアピン構造を含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、ヘアピン構造ではないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。
【0058】
また本発明は、以下の段階を含む、核酸合成または増幅の特異性を上昇させた、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、非修飾型オリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。
【0059】
また本発明は、以下の段階を含む、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つのヘアピン構造を含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、ヘアピン構造ではないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する段階。
【0060】
また本発明は、以下の段階を含む、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する、1つ以上の核酸分子の合成または増幅の方法にも関する:
1つ以上の鋳型または標的の核酸を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、非修飾型オリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成反応と比較して、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する段階。
【0061】
本発明のオリゴヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドまたはリボヌクレオチド修飾または2'-もしくは3'-置換修飾、例えば、2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシ修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル、または2'-もしくは3'-O-アリール修飾、好ましくは3'末端またはその付近のヌクレオチド残基の2'-O-メチル修飾のような、修飾型ヌクレオチドの形であってもよい。2'-O-アルキル修飾を調製する方法は、米国特許第6,090,932号に示されている。そのようなオリゴヌクレオチドは、上述の複数の特性またはその組み合せを持ちうる。例えば、オリゴヌクレオチドは1つ以上の標識、および/または1つ以上の特異性増強基、および/または1つ以上のヘアピン、および/または1つ以上のヌクレオチド修飾、好ましくは3'末端またはその付近のヌクレオチド残基の2'-O-メチル修飾を含む可能性がある。さらに、本発明の修飾型オリゴヌクレオチド配列は、単一遺伝子特異的プライマーを用いてmRNA由来のcDNA末端を増幅するといったPCRの応用に関するような、他の増幅方法にも利用できる。したがって、本発明の修飾型オリゴヌクレオチドは、「RT-PCR」、「5'-RACE」、「アンカーPCR」、および「片側PCR」のような方法に利用できる。本発明の方法は、PCR、LCR、SDA、およびNASBAを含む、核酸配列の増幅のための多くの方法、および当技術分野で周知の他の増幅系に適用できる。
【0062】
本発明はさらに、1つ以上の核酸分子および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物に関するが、ここでオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は核酸分子の少なくとも一部にハイブリダイズでき、かつオリゴヌクレオチドは修飾型ヌクレオチドまたは2'-置換ヌクレオチド修飾、好ましくは3'末端ヌクレオチドまたはその付近で2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含む。本発明のそのような反応液または組成物は、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上の標的または鋳型分子、および1つ以上の本発明のハイブリダイゼーションまたは合成/増幅反応によって産生された1つ以上の産物からなる群より選択される、1つ以上の成分をさらに含む可能性がある。
【0063】
また本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅方法に関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的であり、第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼの存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成されるような条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;ならびに上述の段階を1回以上繰り返す段階であって、プライマーの1つ以上は、3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階。
【0064】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置で、関心のある少なくとも1つのヌクレオチドの存在を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置で、関心のあるヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成またはハイブリダイズすることができ、かつオリゴヌクレオチドがその3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成したときにオリゴヌクレオチドの伸長が起きるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物の存在またはその産生増加が特定の位置で特定のヌクレオチドが存在することを示す段階。
【0065】
また本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において少なくとも1つのヌクレオチドの欠如を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置に関心のあるヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成するまたはハイブリダイズする能力があり、かつオリゴヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドまたはその付近でヌクレオチド修飾を含む段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨げられるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物の欠如または産生減少がその特定の位置での特定のヌクレオチドの欠如を意味する段階。
【0066】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において、あるヌクレオチドの有無を判定する方法にも関する:
(a) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成するときに第1のオリゴヌクレオチドが伸長するよう十分な条件下で、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸を接触させる段階であって、第1のオリゴヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨害されるよう十分な条件下で、少なくとも第2のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階であって、第2のオリゴヌクレオチドが3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;および
(c) 第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは産生された伸長産物の量を比較する段階。
【0067】
さらに本発明は、以下の段階を含む1つ以上の核酸分子を合成または増幅するための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型または標的を、1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;および
(b) 鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0068】
さらに本発明は、以下の段階を含む、核酸合成または増幅の特異性が増強された、1つ以上の核酸分子の合成または増幅方法に関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型または標的を、1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドのうち1つ以上が3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含む段階;および
(b) 鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、3'末端ヌクレオチドまたはその付近にヌクレオチド修飾を含まないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。
【0069】
また本発明は、以下の構造式:
【化2】
を持つヌクレオチド類似体に関するが、ここで
Xは-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、C(R8R9)、-N(R10R11)、NR10、P(O2)、およびP(O)-O-R12からなる群から選択され;
R1は核酸塩基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ基、およびアリールからなる群より選択され;
R2は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノおよびチオからなる群より選択され;
R3は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ基およびチオからなる群より選択され;
各R4はヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、およびチオからなる群より独立して選択され;
R5は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ基およびチオからなる群より選択され;
Uは核酸塩基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ基、およびアリールからなる群より選択され;
UがCR8、NR10、Nの場合、R6はR2であり、またはUが-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-の場合、R6は存在せず;
R7は三リン酸、二リン酸、一リン酸、チオリン酸、オリゴヌクレオチド、核酸、DNA、RNA、LNA[JW1]およびPNAからなる群より選択され;
R8は水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノおよびチオからなる群より選択され;
R9は水素、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、アルキルメルカプト基、アリール基、アリールオキシ基、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ基およびチオからなる群より選択され;
R10, R11, およびR12は同一または異なっており、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、および糖からなる群より選択される。
【0070】
別の局面では、本発明は1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドを提供する。本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの内部、または5'末端および/または3'末端またはその付近の任意の1つ以上の位置に、1つ以上のそのようなヌクレオチドを含む可能性がある。さらに、オリゴヌクレオチドは上述の複数の特性またはその組み合せを持つ可能性がある。例えば、オリゴヌクレオチドは1つ以上の標識、および/または1つ以上の特異性増強基、および/または1つ以上のヘアピン、および/またはヌクレオチド類似体を含む可能性がある。
【0071】
本発明はさらに、1つ以上の核酸分子および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物に関するが、ここでオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである。
【0072】
さらに本発明は、以下の段階を含む、組成物の産生方法に関する:
(a) 少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを提供する段階;および
(b) オリゴヌクレオチドに少なくとも1つの核酸分子を接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が核酸分子の少なくとも一部にハイブリダイズでき、かつオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0073】
さらに本発明は、1つ以上のオリゴヌクレオチドと検出または定量対象の1つ以上の標的核酸分子とを含む試料中で、1つ以上の標的核酸分子を定量または検出するための組成物に関するが、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである。
【0074】
さらに本発明は、検出または定量する1つ以上の分子を1つ以上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる段階、および標的核酸分子の有無を検出および/または定量する段階を含む、試料中で1つ以上の標的核酸分子を定量または検出するための方法に関するが、ここでオリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである。
【0075】
さらに本発明は、以下の段階を含む、核酸合成中に試料中の1つ以上の核酸分子を定量または検出するための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;
(b) 鋳型の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、合成された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 試料中で合成された核酸分子の量を測定することにより、合成された核酸分子の有無または定量を行なう段階。
【0076】
さらに本発明は、以下の段階を含む、核酸増幅中に試料中で1つ以上の核酸分子の定量または検出を行なうための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型を1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、または1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;および
(b) 鋳型の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階であって、増幅核酸分子はオリゴヌクレオチドを含む段階;および
(c) 試料中で増幅された核酸分子の定量または有無を検出することにより、核酸分子の定量または有無を検出する段階。
【0077】
さらに本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅方法にも関する:
(a) 第1および第2のプライマーを提供する段階であって、第1のプライマーは核酸分子の第1の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的であって、第2の核酸プライマーは核酸分子の第2の鎖の内部または3'末端もしくはその付近の配列に相補的である段階;
(b) 1つ以上のポリメラーゼの存在下で、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、第1のプライマーを第1の鎖に、第2のプライマーを第2の鎖にハイブリダイズさせる段階;
(c) 第1および第3の鎖、ならびに第2および第4の鎖を変性させる段階;ならびに
(d) 上述の段階を1回以上繰り返す段階であって、1つ以上のプライマーが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0078】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置で、1つ以上のヌクレオチドの存在を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置で、関心のある1つ以上のヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成またはハイブリダイズすることができ、かつオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成したときにオリゴヌクレオチドの伸長が起きるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物が産生されることがその位置にその特定のヌクレオチドが存在することを示す段階。
【0079】
また本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において1つ以上の特定のヌクレオチドの欠如を判定する方法に関する:
(a) 標的核酸分子上の特定の位置に関心のある1つ以上のヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子に、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成するまたはハイブリダイズする能力があり、かつオリゴヌクレオチドが1つ以上のヌクレオチド類似体を含む段階;ならびに
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨げられるよう十分な条件下で、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子をインキュベートする段階であって、伸長産物の欠如または産生減少がその特定の位置での特定のヌクレオチドの欠如を意味する段階。
【0080】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において、1つ以上の特定のヌクレオチドの有無を判定する方法にも関する:
(a) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成するときに第1のオリゴヌクレオチドが伸長するよう十分な条件下で、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸を接触させる段階;
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に塩基対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨害されるよう十分な条件下で、少なくとも第2のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階;ならびに
(c) 第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは産生された伸長産物の量または有無を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0081】
本発明はさらに、以下の段階を含む、標的核酸分子の特定の位置において、関心のある少なくとも1つの特定のヌクレオチドの有無を判定する方法にも関する:
(a) 特定の位置に関心のあるヌクレオチドを持つ少なくとも1つの標的核酸分子を提供する段階;
(b) 標的核酸分子に少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部はその核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成するまたはハイブリダイズすることができ、オリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;ならびに
(c) オリゴヌクレオチドの3'末端が標的核酸と塩基対を形成しないときにはオリゴヌクレオチドの伸長能力がより低く、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成するときにはオリゴヌクレオチドの伸長能力がより高いポリメラーゼを、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子に接触させる段階;ならびに最適にオリゴヌクレオチドの伸長のレベル、または伸長の量、または有無を測定する段階。
【0082】
さらに本発明は、以下の段階を含む1つ以上の核酸分子を合成または増幅するための方法にも関する:
(a) 1つ以上の核酸鋳型または標的を、1つ以上のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、オリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階;および
(b) 鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つ以上の核酸分子を合成または増幅するのに十分な条件下で、混合物をインキュベートする段階。
【0083】
また、本発明のキットは、本発明のオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーション、合成、増幅、または他の伸長反応を実施するために使用できる。本発明の好ましいキットには、本発明の方法に使用される試薬を含むように構成された1つ以上の容器(バイアル、チューブ等)、および選択的にそのような試薬を使用する説明書またはプロトコールが含まれる。本発明のキットは、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチド(プローブ、および/またはプライマーを含むがこれらに限定されない)、耐熱性ポリメラーゼのような1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の逆転写酵素、または任意のDNAもしくはRNAポリメラーゼ、1つ以上の標識を消光できる1つ以上の物質、1つ以上の緩衝液または緩衝塩、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上の標的/鋳型分子(反応の実行を決定するために使用されうる、すなわち対照反応)、および本発明の方法によって産生される産物または中間体の分析またはさらなる操作のための他の試薬からなる群より選択される、1つ以上の成分を含むことができる。そのようなさらなる成分には、クローニングおよび/または配列決定に使用される成分、および関心のある核酸分子の検出または定量に必要な成分または装置が含まれうる。
【0084】
さらに本発明は、核酸分子の合成に使用されるキットにも関するが、キットは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、本発明のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。
【0085】
さらに本発明は、核酸分子の増幅に使用されるキットにも関するが、キットは本発明のオリゴヌクレオチドであるか、本発明のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。
【0086】
さらに本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドであるか、本発明のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む核酸合成または増幅産物の検出または測定のためのキットにも関する。
【0087】
さらに本発明は以下の段階を含む、一塩基多型の検出方法にも関する:
(a) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成するときに第1のオリゴヌクレオチドが伸長されるよう十分な条件下で、少なくとも第1のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階;
(b) オリゴヌクレオチドの3'末端ヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと実質的に遠位対を形成しないときにオリゴヌクレオチドの伸長が阻害または妨げられるよう十分な条件下で、少なくとも第2のオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの標的核酸分子を接触させる段階;ならびに
(c) 第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは産生された伸長産物の量または有無を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが本発明のオリゴヌクレオチドであるか、1つ以上のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである段階。
【0088】
さらに本発明は、3'末端にシトシンまたはグアニン、またはシトシンもしくはグアニンの類似体、および3'末端から少なくとも2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目の塩基に1つ以上の検出可能な標識を含むオリゴヌクレオチドにも関する。
【0089】
さらに本発明は、3'末端にアデニンまたはチミジン、5'末端に突出したグアニン、および内部に存在する1つ以上の検出可能な標識を含むオリゴヌクレオチドに関する。
【0090】
発明の詳細な説明
定義および略称
以下の記述において、組換えDNA技術で使用される多数の表現が広範囲に使用される。
本明細書で用いる以下の表現は、指定の略称で表されるものとする:
ASP=対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応
bp=塩基対
DABまたはDABCYL=4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸
EDANS=5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸
FAMまたはFlu=5-カルボキシフルオレセイン
JOE=2'7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
NASBA=核酸配列に基づく増幅
Rhod=ローダミン
ROX=6-カルボキシ-X-ローダミン
R6G=6-カルボキシローダミン
TAMRA=N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン
【0091】
増幅:
本明細書で用いる「増幅」という用語は、ポリメラーゼを用いてヌクレオチド配列のコピー数を増加させる任意のインビトロ法を意味する。核酸の増幅の結果、ヌクレオチドが核酸分子(例えばDNA)またはプライマーに取込まれることで核酸鋳型に相補的な新しい核酸分子が形成される。形成された核酸分子およびその鋳型は、追加的な核酸分子を合成するための鋳型として使用することができる。本明細書で用いる、1回の増幅反応は、多数回の核酸合成を含む場合がある。増幅反応は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。1回のPCR反応は、核酸分子の5〜100「サイクル」の変性および合成を含む場合がある。
【0092】
特異性増強官能基:
本明細書で用いる「特異性増強官能基」という表現は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが核酸標的/鋳型分子上のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合に、本発明のオリゴヌクレオチドの伸長性を低下させたり、また好ましくは実質的に低下させる、任意の分子または分子集団を意味する。任意の種類の官能基を使用することができる。好ましい例には、蛍光性官能基、修飾型ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、小分子、ハプテンなどが含まれるがこれらに限定されない。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの任意の位置に結合可能であるほか、オリゴヌクレオチドの3'末端のヌクレオチドが標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長性を低下させるか、また好ましくは実質的に低下させる限りにおいて、任意の位置でオリゴヌクレオチドの一部となる場合がある(例えば特異性増強官能基が修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の場合)。このような官能基は好ましくは、プライマーもしくはオリゴヌクレオチド、またはプライマーもしくはオリゴヌクレオチドの一部に、プライマーもしくはオリゴヌクレオチドの3'端もしくはその近傍に結合されるが、他の位置に結合または配置される場合もある。好ましくは、官能基はプライマーもしくはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する25塩基中の1個または複数に結合または配置される。いくつかの好ましい態様では、このような官能基は、オリゴヌクレオチドの3'端に隣接する20塩基中の1個もしくは複数に、またはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する15塩基もしくはその一部に、またはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する10塩基もしくはその一部に、または最も好ましくはオリゴヌクレオチドの3'端に隣接する5塩基もしくはその一部に結合または配置される。また特異性増強官能基は、最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型と塩基対を実質的に形成しない場合に伸長が阻害されるというより、プライマーの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型分子上の対応するヌクレオチドに相補的な場合に官能基の存在がプライマーの伸長を防止または阻害しない限りにおいて、最も3'側のヌクレオチドまたはその一部に結合させることができる。プライマーもしくはオリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型の対応するヌクレオチドと相補的でない場合にプライマーおよび鋳型により形成される二重鎖(二本鎖の複合体)の安定性を低下させることが可能な任意の官能基、および/または最も3'側のヌクレオチドが鋳型/標的の対応するヌクレオチドに相補的でない場合にオリゴヌクレオチドの3'端を伸長するポリメラーゼの効率を低下可能な任意の官能基を本発明を実施する際に使用することができる。いくつかの態様では、本発明の特異性増強官能基は、プライマーまたはオリゴヌクレオチドの配列中に取込まれる修飾型ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体でありうる。このような修飾は、ヌクレオチドの塩基、糖、またはリン酸部分において作られる場合があり、またホスホチオエートヌクレオチド、ホスホネートヌクレオチド、ペプチド核酸などを含むがこれらに限定されない。特異性増強官能基は例えば、識別を強化するために対立遺伝子特異的PCRで使用される。
【0093】
ポリメラーゼ:
本明細書で用いる「ポリメラーゼ」という用語は、ヌクレオチド重合活性を有する任意の酵素を意味する。本発明に有用なポリメラーゼ(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)は、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermotoga neopolitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENT(登録商標))DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiousus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENT(登録商標))DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woosii(Pwo)DNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bca)DNAポリメラーゼ、Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)DNAポリメラーゼ、Thermus flavus(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)DNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYME(登録商標))DNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)DNAポリメラーゼ、ミコバクテリアDNAポリメラーゼ(Mtb、Mlep)、およびこれらの変異体、変種ならびに誘導体を含むがこれらに限定されない。T3、T5、およびSP6などのRNAポリメラーゼ、ならびにこれらの変異体、変種、および誘導体も本発明に使用される場合がある。一般に、任意のI型DNAポリメラーゼを本発明に使用することができるが、III型またはAファミリー、Bファミリー、CファミリーなどのDNAポリメラーゼを含むがこれらに限定されない他のDNAポリメラーゼを使用することができる。
【0094】
本発明に使用されるポリメラーゼは、核酸鋳型から核酸分子を典型的には5'→3'方向に合成可能な任意の酵素でありうる。「3'→5'エキソヌクレアーゼ活性」とは当技術分野で周知の酵素活性である。この活性はDNAポリメラーゼと関連する場合が多く、DNA複製の「編集」または修正の機構に関連すると考えられている。「3'→5'エキソヌクレアーゼ活性が実質的に低下したポリメラーゼ」とは本明細書で(1)対応する非変異野生型酵素の3'→5'エキソヌクレアーゼ活性の約10%もしくは10%未満、または好ましくは約1%もしくは1%未満を有する変異型ポリメラーゼもしくは修飾型ポリメラーゼ、または(2)約1ユニット/mg タンパク質未満、または好ましくは約0.1ユニット/mg タンパク質、もしくは約0.1ユニット/mg タンパク質もしくは約0.1ユニット/mg タンパク質未満の3'→5'エキソヌクレアーゼの比活性を有するポリメラーゼのいずれかとして定義される。3'→5'エキソヌクレアーゼの活性のユニットは、10ナノモルの基質を60分間で37℃で可溶化する活性の量として定義され、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)によって[3H]dTTPで3'端が標識されたラムダDNAのHhaI断片を用いて、「BRL 1989 Catalogue & Reference Guide」の5ページに記載の手順でアッセイされる。タンパク質は、ブラッドフォード(Bradford)、Anal. Biochem. 72:248(1976)に記載の方法で測定される。比較手段として、pTTQ19-T5-2にコードされた天然の野生型T5-DNAポリメラーゼ(DNAP)すなわちT5-DNAPは、約10ユニット/mg タンパク質の比活性を示し、一方でpTTQ19-T5-2(Exo-)にコードされたDNAポリメラーゼ(米国特許第5,270,179号)は、約0.0001 ユニット/mg タンパク質の比活性、または非修飾型酵素の比活性の0.001%、105倍の低下を示す。「5'→3'エキソヌクレアーゼ活性」も当技術分野で周知の酵素活性である。この活性は、大腸菌のPolIおよびTaq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼと関連する場合が多い。「5'→3'エキソヌクレアーゼ活性が実質的に低下したポリメラーゼ」とは、本明細書で(1)対応する非変異型の野生型酵素の5'→3'エキソヌクレアーゼ活性の約10%もしくは10%未満、または好ましくは約1%もしくは1%未満の変異型ポリメラーゼもしくは修飾型ポリメラーゼ、または(2)約1ユニット/mg タンパク質未満、または好ましくは約0.1ユニット/mg タンパク質もしくは約0.1ユニット/mg タンパク質未満の5'→3'エキソヌクレアーゼの比活性を有するポリメラーゼのいずれかとして定義される。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性も5'→3'エキソヌクレアーゼ活性も配列決定用ゲル上で観察可能である。活性のある5'→3'エキソヌクレアーゼ活性は、延長中のプライマーの5'端からヌクレオチドを除去することにより、配列決定用ゲル上に非特異的なラダーを生じる。3'→5'エキソヌクレアーゼ活性は、配列決定用ゲル中における放射標識プライマーの分解を追跡することで測定可能である。したがって例えば野生型と変異体、または修飾型ポリメラーゼの比較による、これらの活性の相対量は、常用の実験法で決定することができる。
【0095】
本発明に使用される核酸ポリメラーゼは中温性または好熱性であり、好ましくは好熱性である。好ましい中温性DNAポリメラーゼには、T7 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウ断片DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIIIなどがある。本発明に使用可能な好ましい耐熱性DNAポリメラーゼには、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffel断片、VENT(登録商標)、およびDEEPVENT(登録商標)DNAポリメラーゼ、ならびにこれらの変異体、変種、および誘導体がある(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,188号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;米国特許第6,015,668号;米国特許第5,939,301号;米国特許第5,948,614号;米国特許第5,912,155号;国際公開公報第97/09451号;国際公開公報第98/35060号;国際公開公報第92/06188号;国際公開公報第92/06200号;国際公開公報第96/10640号;Barnes, W.M.、Gene 112:29-35(1992);Lawyer, F.C.ら、PCR Meth. Appl. 2:275-287(1993);Flaman, J.-Mら、Nucl. Acids Res. 22(15):3259-3260(1994))。長い核酸分子(例えば約3 Kb〜5 Kbより長い核酸分子)の増幅には、少なくとも2つのDNAポリメラーゼ(1つは実質的に3'エキソヌクレアーゼ活性を欠き、もう1つは3'エキソヌクレアーゼ活性を有する)が通常使用される。これについては参照として全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Barnes, W.M.、Gene 112:29-35(1992)を参照されたい。3'エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くDNAポリメラーゼの例には、Taq、Tne(exo-)、Tma(exo-)、Pfu(exo-)、Pwo(exo-)、およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにこれらの変異体、変種、および誘導体があるがこれらに限定されない。
【0096】
本発明に使用されるDNAポリメラーゼは、例えばInvitrogen Corporation(Life Technologies Division)(Rockville、 MD)、Pharmacia(Piscataway、NJ)、Sigma(St. Louis、MO)およびBoehringer Mannheim Biochemicalsから市販品を入手することができる。本発明に使用される好ましいDNAポリメラーゼには、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)製のTsp DNAポリメラーゼが含まれる。
【0097】
本発明の組成物、方法、およびキットに使用される酵素には、逆転写酵素活性を有する任意の酵素が含まれる。このような酵素には、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、B型肝炎ウイルス逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルス逆転写酵素、細菌逆転写酵素、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ(Saiki, R.K.ら、Science 239:487-491(1988);米国特許第4,889,818号および第4,965,188号)、Tne DNAポリメラーゼ(国際公開公報第96/10640号)、Tma DNAポリメラーゼ(米国特許第5,374,553号)、ならびにこれらの変異体、断片、変種、もしくは誘導体が含まれるがこれらに限定されない(例えば参照として全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,948,614号および第6,015,668号を参照)。当業者であれば理解するように、修飾型逆転写酵素、およびRT活性を有するDNAポリメラーゼは、当技術分野で周知の組換え技術、または遺伝子工学的手法で得られる。変異体逆転写酵素またはポリメラーゼは例えば、対象となる逆転写酵素もしくはポリメラーゼをコードする遺伝子もしくは遺伝子群に、部位特異的変異誘発法またはランダム変異誘発法で変異を導入することで入手できる。このような変異は、点突然変異、欠失変異、および挿入変異を含む場合がある。好ましくは、1つまたは複数の点突然変異(例えば1つもしくは複数の異なるアミノ酸と1つまたは複数のアミノ酸の置換)が、本発明に使用される変異体逆転写酵素またはポリメラーゼを構築する際に使用される。逆転写酵素またはポリメラーゼの断片は、当技術分野で周知の組換え技術により、または任意の多くの、よく知られたタンパク質分解酵素を用いた、対象となる逆転写酵素もしくはポリメラーゼの酵素的切断により、欠失変異によって入手することができる。
【0098】
本発明に使用される好ましい酵素には、RNase H活性が低下されているか、または実質的に低下されている酵素が含まれる。RNase H活性が低下されているか、または実質的に低下されているこのような酵素は、対象となる逆転写酵素内部のRNase H ドメインに変異を導入することで、好ましくは1つもしくは複数の点突然変異、1つもしくは複数の欠失変異、および/または1つもしくは複数の挿入変異を上述の手順で導入することで入手可能である。「RNase H活性が実質的に低下した」という表現は、酵素の活性が、対応する野生型RNase H活性、または野生型のモロニーマウス白血病ウイルス(M-MLV)、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)逆転写酵素などのRNase H+酵素の約30%未満、約25%未満、約20%未満、より好ましくは約15%未満、約10%未満、約7.5%未満、または約5%未満、また最も好ましくは約5%未満、もしくは約2%未満であることを意味する。任意の酵素のRNase H活性は、参照として全体が本明細書に組み入れられる例えば米国特許第5,244,797号、Kotewicz, M.L.ら、Nucl. Acids Res. 16:265(1988)、Gerard, G.F.ら、FOCUS 14(5):91(1992)、および米国特許第5,668,005号および第6,063,608号に記載の方法などのさまざまなアッセイ法で決定することができる。
【0099】
本発明に使用される逆転写酵素活性を有するポリペプチドは例えば、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)(Rockville、Maryland)、Pharmacia(Piscataway、New Jersey)、Sigma(Saint Louis、Missouri)、またはBoehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis、Indiana)から市販されている。あるいは、逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、当業者に周知の天然タンパク質を単離および精製する標準的な手順(例えばHouts, G.E.ら、J. Virol. 29:517(1979)を参照)にしたがって、天然のウイルスもしくは細菌の供給源から単離することができる。また逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、当業者によく知られる組換えDNA技術で調製することができる(例えばKotewicz, M.L.ら、Nucl. Acids Res. 16:265(1988);Soltis, D.A.およびSkalka, A.M.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3372-3376(1988)を参照)。
【0100】
本発明に使用される逆転写酵素活性を有する好ましいポリペプチドは、M-MLV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、ラウス関連ウイルス(RAV)逆転写酵素、骨髄芽球症関連ウイルス(MAV)逆転写酵素、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)逆転写酵素、および国際公開公報第98/47921号に記載の他逆転写酵素、ならびにこれらの誘導体、変種、断片、または変異体、およびこれらの組み合わせを含む。さらに好ましい態様では、逆転写酵素はRNase H活性が低下されるか、または実質的に低下されており、また最も好ましくは、M-MLV H-逆転写酵素、RSV H-逆転写酵素、AMV H-逆転写酵素、RAV H-逆転写酵素、MAV H-逆転写酵素、およびHIV H-逆転写酵素、ならびにこれらの誘導体、変種、断片、および変異体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される。特に対象となる逆転写酵素には、RNase H活性が低下または実質的に低下したAMV RTおよびM-MLV RT、またより好ましくはAMV RTおよびM-MLV RT(好ましくは、AMV RT αH-/BH+およびM-MLV RT H-)が含まれる。本明細書で使用される最も好ましい逆転写酵素には、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)から入手可能なSuperscript(商標)、Superscript(商標)II、ThermoScript(商標)、およびThermoScript(商標)IIが含まれる。これについては一般に参照として全体が本明細書に組み入れられる国際公開公報第98/47921号および米国特許第5,244,797号、第5,668,005号、ならびに6,063,608号を参照されたい。
【0101】
ヘアピン:
本明細書で用いる「ヘアピン」という表現は、オリゴヌクレオチドの1つまたは複数の部分が、オリゴヌクレオチドの1つまたは複数の他の部分と塩基対を形成するオリゴヌクレオチドの構造を示す表現として使用される。2つの部分が塩基対を形成してオリゴヌクレオチドの二本鎖部分を形成する場合、二本鎖部分はステムと呼ばれる。したがって、使用される相補的な部分の数に応じて、いくつかのステム(好ましくは約1本〜約10本)が形成される場合がある。
【0102】
いくつかの好ましい態様では、本発明のプライマーは、ヘアピン構造をとるように修飾可能である。これは、1個もしくは複数の塩基をオリゴヌクレオチドの5'末端に付加することで達成することができる(塩基はオリゴヌクレオチドの3'末端で塩基と相補的になるように選択される)。いくつかの好ましい態様では、少なくとも1個〜約20個の連続するヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの3'端に存在する少なくとも1個〜20個の連続するヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドの5'端に付加される。好ましい態様では、1個〜約10個のヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの5'端に付加されるが、これらのヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3'端に存在する少なくとも1個〜約10個の連続ヌクレオチドと相補的になるように選択される。別の好ましい態様では、1個〜約5個のヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの5'端に付加されるが、これらのヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3'端に存在する少なくとも1個〜約5個の連続ヌクレオチドと相補的になるように選択される。
【0103】
また、1本または複数のステムの形成は好ましくは、ヘアピン分子中における1つまたは複数のループ構造の形成を可能とする。1つの局面では、任意の1つまたは複数のループ構造は、ループもしくは複数のループ内の1か所または複数の部位で切断されたりニックが入ったりする場合があるが、好ましくは少なくとも1つのループはこのように切断されなかったりニックが入らなかったりする。オリゴヌクレオチドの配列は、塩基対を形成して、約3個〜約100個もしくはこれ以上のヌクレオチド、約3個〜約50個のヌクレオチド、約3個〜約25個のヌクレオチド、また約3個〜約10個のヌクレオチドからステムを形成するヌクレオチドの数が変化するように選択することができる。またオリゴヌクレオチドの配列は、0個〜約100個もしくはこれ以上のヌクレオチド、0個〜約50個のヌクレオチド、0個〜約25個のヌクレオチド、または0個〜約10個のヌクレオチドから塩基対を形成しないヌクレオチドの数を変化するように変化させることができる。塩基対を形成するオリゴヌクレオチドの2つの部分は、オリゴヌクレオチド配列中の任意の位置に、または任意の数の位置に配置することができる。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの1つの塩基対形成部分はオリゴヌクレオチドの3'末端を含む場合がある。いくつかの態様では、1つの塩基対形成部分はオリゴヌクレオチドの5'末端を含む場合がある。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの1つの塩基対形成部分は3'末端を含む場合があり、別の塩基対形成部分は5'末端を含む場合があり、また塩基対が形成される場合は、オリゴヌクレオチドのステムは平滑末端となる。他の態様では、オリゴヌクレオチドの塩基対形成部分の位置は、3'突出および/または5'-突出を形成するように選択することが可能であり、および/または最も3'側のヌクレオチドも最も5'側のヌクレオチドも塩基対形成に関与しないように選択することが可能である。
【0104】
オリゴヌクレオチドプライマーのヘアピンは、例えばオリゴヌクレオチドの3'端に相補的なプライマー配列の5'端に塩基を付加することで構築される場合がある。典型的には、5'端に付加される塩基の数は、オリゴヌクレオチドがアニーリング温度以下の温度でヘアピンを形成するように、またアニーリング温度またはその近傍で直鎖状となるように選択される。当業者であれば、プライマーが直鎖状となる温度を制御するようにプライマーの5'端に付加されるヌクレオチド数を容易に決定することができる。本発明のオリゴヌクレオチドがアニーリング温度で全体的に直鎖状に変換される必要はなく;当業者であれば、本発明のオリゴヌクレオチドが、可逆的に溶解して自己再アニーリング(すなわちブリージング)する能力をもつ場合があることを理解すると思われる。本発明のオリゴヌクレオチドの配列が、十分な数のオリゴヌクレオチドがアニーリング温度において伸長や増幅などの開始に利用できるように選択される限りは、配列は、オリゴヌクレオチドの一部がアニーリング温度でヘアピン状で残るか否かにかかわらず本発明における使用に適している。付加することができるヌクレオチド数は、約3個〜約25個のヌクレオチド、もしくは約3個〜約20個のヌクレオチド、もしくは約3個〜約15個のヌクレオチド、もしくは約3個〜約10個のヌクレオチド、または約3個〜約7個のヌクレオチドでありうる。いくつかの好ましい態様では、約5個〜約8個のヌクレオチドが、本発明のヘアピン状のオリゴヌクレオチドを形成させることを目的としてプライマーオリゴヌクレオチドの5'端に添加される場合がある。
【0105】
ハイブリダイゼーション:
本明細書で用いる「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリッドを形成する」という表現は、2本の相補的な一本鎖の核酸分子(RNAおよび/またはDNA)が対を形成して二本鎖分子を形成することを意味する。本明細書で用いられる2つの核酸分子はハイブリッドを形成する場合があるが、塩基対形成は完全に相補的というわけではない。したがって、誤対合を含む塩基は、当技術分野で周知の適切な条件を用いることが可能であれば2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨げない。
【0106】
取込み:
本明細書で用いる「取込み」という表現は、DNA分子もしくはRNA分子、またはプライマーの一部となることを意味する。
【0107】
ヌクレオチド:
本明細書で用いる「ヌクレオチド」という用語は、塩基-糖-リン酸の組み合わせを意味する。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)の単量体のユニットである。ヌクレオチドという用語は、一リン酸、二リン酸、および三リン酸の状態のデオキシリボヌクレオシドおよびリボヌクレオシド、ならびにこれらの誘導体を含む。ヌクレオチドという用語は特に、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPなどのデオキシリボヌクレオシド三リン酸、またはこれらの誘導体を含む。このような誘導体は例えば、[αS]dATP、7-デアザ-dGTP、および7-デアザ-dATPを含む。本明細書に用いられるヌクレオチドという用語は、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)、およびこの誘導体も意味する。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の説明目的の例には、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、およびddTTPが含まれるがこれらに限定されない。本発明の「ヌクレオチド」は標識されていない場合があるほか、既知の手法で検出目的で標識することができる。検出用標識には例えば、放射性同位元素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および酵素標識が含まれる。
【0108】
オリゴヌクレオチド:
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」という用語は、共有結合で連結されたヌクレオチドの配列、またはこれらの誘導体を含む合成分子、または生物学的に作られた分子を意味する。このようなヌクレオチドは、1つのヌクレオチドのペントースの3'位または5'位と、例えば隣接するヌクレオチドのペントースの5'位または3'位の間においてホスホジエステル結合で連結される場合がある。結合は3'位と5'位の間で、また他の任意の少なくとも2つの位置の間で生じる場合もある。
【0109】
本明細書で用いるオリゴヌクレオチドは、天然の核酸分子(すなわちDNAおよびRNA)、ならびにペプチド核酸、核酸を含むホスホチオエート、核酸を含むホスホネートなどの非天然分子もしくは誘導体分子を含む。1つの態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは5個〜100個のヌクレオチド(例えば5個〜10個、15個〜20個、25個〜30個、35個〜40個、45個〜50個、55個〜60個、65個〜70個、75個〜80個、85個〜90個、95個〜100個などのヌクレオチド)、好ましくは6ヌクレオチドを含む場合がある。また本発明のオリゴヌクレオチドは、後述する修飾型または非天然の糖残基(すなわちアラビノース)、および/または修飾型の塩基残基を含む場合がある。オリゴヌクレオチドは、さまざまな天然のヌクレオチド、誘導体ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾型ヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含む核酸分子などの誘導体分子を含む。このような修飾には、2'-O-アルキル基(具体的には2'-O-メチル基)をオリゴヌクレオチドに付加すること、オリゴヌクレオチド間に5'-5'ホスホジエステル結合を作ること、またC3-アミノ、C6-アミノ、またはビオチンをオリゴヌクレオチドに付加することが含まれるがこれらに限定されない。したがって、本発明の方法に有用な任意のオリゴヌクレオチドまたは他の分子(例えばプライマーまたはオリゴヌクレオチドプライマー)は、この定義の対象となる。本発明のオリゴヌクレオチドは、分子と特定のタンパク質、酵素、または基質間の相互作用を妨げるブロッキング用の官能基を含む場合もある。
【0110】
プライマー:
本明細書で用いる「プライマー」という用語は、核酸分子の増幅または重合化中におけるヌクレオチド単量体の共有結合によって伸長される、合成的に作られた、または生物学的に作られた一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。核酸の増幅は、核酸ポリメラーゼまたは逆転写酵素による核酸の合成を元にする場合が多い。このようなポリメラーゼまたは逆転写酵素の多くは、伸長されて核酸合成を開始することができるプライマーの存在を必要とする。プライマーは通常11塩基またはこれ以上であり;最も好ましくはプライマーは17塩基またはこれ以上であるが、より短いプライマーまたは、より長いプライマーを必要に応じて使用することができる。当業者であれば理解するように、本発明のオリゴヌクレオチドは、さまざまな伸長、合成、または増幅の反応における1本またはこれ以上のプライマーとして使用することができる。
【0111】
プローブ:
本明細書で用いる「プローブ」という用語は、デザインまたは選択により、特定のストリンジェンシーの下で、特異的に(すなわち選択的に)標的核酸配列とのハイブリッドの形成を可能とする特定のヌクレオチド配列を含む、合成的に作られた、または生物学的に作られた核酸(DNAまたはRNA)を意味する。当業者であれば理解するように、本発明のオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のプローブとして使用することが可能であり、また好ましくは、核酸分子の検出用もしくは定量用のプローブとして使用することができる。
【0112】
実質的に伸長能が弱い:
本明細書で用いる「実質的に伸長能が弱い」という表現は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型分子の対応する塩基と相補的でない場合に、伸長反応および/または増幅反応で非効率的に伸長されるか、または伸長されないオリゴヌクレオチドの特性を示す際に使用される。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド上に特異性増強官能基が存在する結果、実質的に伸長能が弱い。この場合オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが伸長されない場合に、または特異性増強官能基を欠くがそれ以外の構造は同一なオリゴヌクレオチドと比較して少量および/または低速で伸長される場合に、実質的に伸長能が弱い。当業者は、あるオリゴヌクレオチドが、特異性増強官能基を含むオリゴヌクレオチドを用いて伸長反応を行い、その伸長を、同じ構造であるが、特異性増強官能基を欠くオリゴヌクレオチドの伸長と比較することで、実質的に伸長能が弱いか否かを容易に決定することができる。伸長条件(例えば溶解の温度および時間、アニーリングの温度および時間、伸長の温度および時間、反応物濃度など)が同じ場合は、実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが、標的/鋳型分子上の対応するヌクレオチドと相補的でない場合に、特異性増強官能基を欠くがそれ以外は構造が同一なオリゴヌクレオチドによって作られるものと比較して伸長能が弱い産物を生じる。あるいは当業者であれば、あるオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つが1つまたは複数の特異性増強官能基を含む第1のセットのオリゴヌクレオチドと、特異性増強官能基を欠くがそれ以外は第1のセットのオリゴヌクレオチドの構造と同一な第2のセットのオリゴヌクレオチドを用いて対立遺伝子特異的PCRを実施することにより、実質的に伸長能が弱いか否かを判定することができる。次に判定は、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを用いて作られる産物の量、および/または産物が作られる速度が、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドに相補的でない3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを用いて作られる産物の量、および/または産物が作られる速度に対して差のある各セットのプライマーを対象に分けて行われる。実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドで、3'相補的オリゴヌクレオチドと3'非相補的オリゴヌクレオチドの間において、作られる産物の量、および/または産物が作られる速度に、より大きな差がみられる。好ましくは、特異性増強官能基を含むオリゴヌクレオチドを用いて作られる産物の量、および/または産物が作られる速度の差は、特異性増強官能基を欠くプライマーを用いて得られる差の約1.1倍〜約1000倍大きい範囲、または約1.1倍〜約500倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約250倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約100倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約50倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約25倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約10倍大きい範囲、もしくは約1.1倍〜約5倍大きい範囲、または1.1倍〜約2倍大きい範囲にある。産物の量は例えば、産物をアガロースゲルに流し、臭化エチジウムで染色し、同様に処理された既知量の核酸標準と比較する方法などの、当業者に周知の任意の方法で決定することができる。産物の量は、対立遺伝子特異的PCRの任意の簡便な時点において決定することができる。産物の形成速度を比較する1つの簡便な方法では、PCRで特定の量の産物の形成に必要なサイクル数を比較する。決定は、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドに相補的な3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドで任意の量の産物を得るために必要なサイクル数と、標的/鋳型核酸上の対応するヌクレオチドと相補的でない3'ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドで同じ量の産物を得るために必要なサイクル数との間に差のある各セットのプライマーに対して分けて行われる。実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドでは、3'相補的オリゴヌクレオチドと3'非相補的オリゴヌクレオチド間において、特定の量の産物を産生するために必要なサイクル数に、より大きな差がみられる。作られる産物の量は例えば、リアルタイム蛍光検出用に改造したサーモサイクラーを用いて標識産物の蛍光強度を決定する手順などの、当業者に周知の任意の手順で決定することができる。好ましくは、特異性増強官能基を含むオリゴヌクレオチドを用いて特定の量の産物を得るために必要なサイクル数の差は、特異性増強官能基を欠くプライマーを用いて得られる差より約1.05倍〜約100倍大きい範囲か、または約1.05倍〜約50倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約25倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約10倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約5倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約2.5倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約1.5倍大きい範囲、もしくは約1.05倍〜約1.2倍大きい範囲にある。
【0113】
支持体:
本明細書で用いる「支持体」という用語は、本発明のオリゴヌクレオチド、または標的/鋳型核酸配列の結合に適した任意の材料またはマトリックスでありうる。このようなオリゴヌクレオチドおよび/または配列は、当技術分野で周知の任意の手法、または手法の任意の組み合わせにより、本発明の支持体に付加したり、(共有結合または非共有結合で)結合したりすることができる。本発明の支持体は、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、シリコン、ポリスチレン(マイクロタイタープレートを含む)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、セファロース(登録商標)、寒天、デンプン、ナイロン、または核酸の固定化を可能とする任意の他の材料を含む場合がある。本発明の支持体は、平面、ビーズ、フィルター、膜、シート、フリット、プラグ、カラム、微粒子、ファイバー(例えば光ファイバー)などを含むがこれらに限定されない任意の形状または構造をとりうる。固相支持体は、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、および384ウェルプレートなどのマルチウェルチューブ(マイクロタイタープレートなど)を含む場合もある。好ましいビーズは、ガラス、ラテックス、または磁性材料(磁性ビーズ、常磁性ビーズ、または超常磁性ビーズ)から作られる。固相支持体を使用する場合は、標識されたオリゴヌクレオチドを固定化するか、または溶液に添加する場合がある(後者の場合、検出混合物の他の成分が固定化される)。
【0114】
任意の数の異なる配列を、任意の数の異なる領域中の支持体上に固定化して、核酸標的配列を含むがこれらに限定されない1つもしくは複数の配列を検出することができる。
【0115】
好ましい局面では、本発明の方法は、核酸分子(RNAまたはDNA)のアレイとともに使用することができる。核酸鋳型/標的のアレイ、または本発明のオリゴヌクレオチドのアレイはいずれも本発明の方法の対象となる。これらのアレイは、マイクロプレート、スライドガラス、または標準的なブロット用メンブレン上に形成可能であり、またアレイのフォーマットおよびデザインに応じてマイクロアレイまたは遺伝子チップを参照することができる。このようなアレイの用途には、遺伝子の発見、遺伝子発現プロファイリング、およびジェノタイピング(SNP解析、薬理ゲノム科学、およびトキシコジェネティクス)が含まれる。
【0116】
核酸アレイの合成および用途、また一般には支持体への核酸の結合法については文献に記載されている(例えば米国特許第5,436,327号、米国特許第5,800,992号、米国特許第5,445,934号、米国特許第5,763,170号、米国特許第5,599,695号、および米国特許第5,837,832号を参照)。さまざまな試薬を、基質上の、位置的に決定された部位に結合させる自動プロセスについては米国特許第5,143,854号、および米国特許第5,252,743号に記載されている。
【0117】
本質的には、任意の考えうる支持体を本発明に使用することができる。支持体は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、チューブ、粒子、容器、キャピラリ、パッド、切片、フィルム、プレート、スライドなどとして存在する生物的、非生物的、有機的、無機的な支持体、またはこれらの任意の組み合わせでありうる。支持体は、円盤形、正方形、球形、円形などの任意の利便性を考慮した形状でありうる。支持体は好ましくは平面であるが、さまざまな代替的な表面構造をとりうる。例えば支持体は、本発明の1つまたは複数の方法を実施可能な凸部領域または凹部領域を含む場合がある。支持体およびその表面は好ましくは、本明細書に記載の反応を実施可能な堅牢な支持体を形成する。支持体およびその表面は、適切な光吸収特性を提供するように選択される場合もある。例えば支持体は、重合化されたラングミュアーブロジェット膜、機能付与ガラス(functionalized glass)、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SIN4、修飾シリコンであるほか、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはこれらの組み合わせなどのさまざまな任意のゲルもしくは重合体の1つである。他の支持体材料は、本明細書を読むことで当業者に容易に明らかになる。好ましい態様では、支持体は平面ガラスまたは単結晶シリコンである。
【0118】
標的分子:
本明細書で用いる「標的分子」という表現は、特定のプライマーまたはプローブが選択的にハイブリッドを形成可能な核酸分子を意味する。
【0119】
標的配列:
本明細書で用いる「標的配列」という表現は、特定のプライマーまたはプローブが選択的にハイブリッドを形成可能な、標的分子中の核酸配列を意味する。
【0120】
鋳型:
本明細書で用いる「鋳型」という用語は、増幅される、合成される、または配列決定される二本鎖分子または一本鎖分子を意味する。二本鎖DNA分子の場合、第1および第2の鎖を形成するために鎖の変性を好ましくは実施して、これらの分子の増幅、配列決定、または合成を行う。鋳型の一部に相補的なプライマーは適切な条件下でハイブリッドを形成し、またポリメラーゼ(DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)が次に、鋳型またはその一部に相補的な核酸分子を合成することができる。本発明により新しく合成された分子は元の鋳型と比較して長さが等しいか、または短い。新しく合成された分子の合成中または伸長中における誤対合の取込みは、1つもしくは複数の誤対合のある塩基対を生じる場合がある。したがって合成された分子は、鋳型に正確に相補的である必要はない。鋳型は、RNA分子、DNA分子、またはRNA/DNAハイブリッド分子でありうる。新しく合成された分子は、その後の核酸の合成または増幅の鋳型として機能する場合がある。
【0121】
耐熱性:
本明細書で用いる「耐熱性」という表現は、熱による不活性化に対して耐性をもつポリメラーゼ(RNA、DNA、またはRT)を意味する。DNAポリメラーゼは、プライマーを5'→3'方向に伸長することで一本鎖DNA鋳型に相補的なDNA分子の構造物を合成する。中温性DNAポリメラーゼのこの活性は、加熱処理して不活性化することができる。例えばT5 DNAポリメラーゼの活性は、同酵素を90℃の温度に30秒間曝露することで完全に不活性化される。本明細書で用いる耐熱性DNAポリメラーゼの活性は、中温性DNAポリメラーゼと比較して、熱による不活性化に対する耐性が大きい。しかし耐熱性DNAポリメラーゼは、加熱による不活性化に完全に耐性をもつ酵素を意味しないので、加熱処理は、DNAポリメラーゼ活性をある程度に低下させる場合がある。耐熱性DNAポリメラーゼは通常、中温性DNAポリメラーゼより高い最適温度をもつ。
【0122】
ベクター:
本明細書で用いるベクターは、インビトロで、または宿主細胞内で複製可能な、または複製されうるDNAであるほか、挿入された遺伝子に有用な生物学的特性または生化学的特性を提供するDNAである。例には、プラスミド、ファージ、および他のDNA配列などが含まれる。ベクターは、DNA配列が、ベクターの本質的な生物学的機能を失うことなく決定可能な様式で切断可能で、複製およびクローニングを実施するために、内部にDNA断片がスプライスされうる1か所もしくは複数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有する。ベクターは例えば、PCR、転写、および/または翻訳を開始するためのプライマー認識部位、および/または調節部位、組換えシグナル、レプリコン、選択可能なマーカーなどをさらに提供する場合がある。クローニングベクターは、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定における用途に適した選択可能なマーカーをさらに含む場合がある。原核細胞および真核細胞を含む、任意の数の宿主は、本発明を実施するために使用することができる。使用可能な宿主細胞は当技術分野で周知の細胞である。
【0123】
本明細書で用いる、組換えDNA技術、ならびに分子生物学および細胞生物学の分野で使用される他の表現は、応用可能な分野の当業者によって一般に理解される。
【0124】
オリゴヌクレオチド:
本発明のオリゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNA、またはこれらのキメラ混合物もしくは誘導体、または修飾型でありうる。検出可能な成分で標識されたもののほかに、本発明のオリゴヌクレオチドは、塩基成分、糖成分、またはリン酸主鎖において修飾可能であり、また他の付加的な官能基または標識を含む場合がある。また本発明に使用されるオリゴヌクレオチドは、任意の適切な大きさをとることが可能であり、また好ましくは10個〜100個のヌクレオチド範囲、または10個〜80個のヌクレオチド範囲、より好ましくは11個〜40個のヌクレオチド範囲、また最も好ましくは17個〜25個のヌクレオチド範囲であるが、オリゴヌクレオチドは必要に応じて長くも短くもすることができる。
【0125】
本発明のオリゴヌクレオチドは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノ-メチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルケオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチル-リノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルケオシン、5'-メトキシカルボキシ-メチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチル-チオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンからなる群より選択されるがこれらに限定されない少なくとも1つもしくは複数の修飾型塩基成分を含む場合がある。
【0126】
別の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、ヘキソース、ならびにグルコース、マンノース、ガラクトース、グルコース、アロース、アルトロース、イドース、およびタロースを含むがこれらに限定されないグリコピラノシル基からなる群より選択されるがこれらに限定されない少なくとも1つの修飾型、もしくは非修飾型の糖成分を含む。フラノシル構造の例には、フルクトース、アラビノース、またはキシロースに由来する構造が含まれるがこれらに限定されない。
【0127】
さらに別の態様では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミドチオエート、ホスホラミデート、ホスホジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルマセタル(formacetal)、またはこれらの類似体からなる群より選択される少なくとも1つの修飾型リン酸主鎖を含む。
【0128】
また、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド誘導体、またはヌクレオチド類似体を含む。このような誘導体の例には、デオキシイノシン残基、チオヌクレオチド、ペプチド核酸などが含まれるがこれらに限定されない。
【0129】
本発明の実施に使用可能な修飾型オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の他の例は、以下の化学式で表される:
【化3】
式中、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、C(R8R9)、-N(R10R11)、NR10、P(O2)、またはP(O)-O-R12であり;
Uは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-Se-、C(R8)、またはNR10であり;
R1は、ヘテロアリール、ヘテロ環、またはアリールであり;好ましくはR1はヘテロアリール基、例えばアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、およびチミン、ならびにこれらの類似体および誘導体などの核酸塩基であり;
R2、R3、R5、R8、R9は独立に、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸エステル、ヒドロキシ酸エステル、ペプチド、糖残基、ヒドロキシ、アミノ、またはチオであり;
各R4は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、チオ、核酸分子、または修飾型核酸分子であり;
R6は、R2(UがCR8の場合)、または水素、アルキル、アリール、カルボキサミド、アミノ酸アミド、ヒドロキシ酸アミド、ペプチド、もしくは糖残基(UがNR10の場合)の任意の1つであり、またはR6は、Uが-O-、-S-、-SO-、-SO2-、または-Se-の場合には存在せず;
R7は、水素、三リン酸、二リン酸、一リン酸、核酸分子、または修飾型核酸分子であり;
R1OおよびR12は独立に、アルキル、アリール、カルボキサミド、アミノ酸エステルもしくはアミド、ヒドロキシ酸エステルもしくはアミド、ペプチド、または糖残基であり;かつ
R11は、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、または糖残基であり;
R4およびR7の少なくとも1つは、核酸分子もしくは修飾型核酸分子であり、また上記の構造は例えば核酸分子または修飾型核酸分子の糖成分に結合される。
【0130】
このようなヌクレオチド類似体は当業者に周知の方法で調製することができる。例えば5-[6-アミノヘキシル-3-アクリルアミド]-2'-デオキシウリジンを含む合成オリゴデオキシヌクレオチドは、ホスホラミダイト法、および適切なホスホラミダイトを用いて調製される。このようなオリゴデオキシヌクレオチドは、pH 8.5の0.1 Mのホウ酸ナトリウム緩衝液中に溶解する。30倍過剰の蛍光色素のN-ヒドロキシスクシニミドエステルを含む溶液はジメチルスルホキシド中に溶解し、この溶液をオリゴデオキシヌクレオチドに添加する。この反応を1時間かけて進ませる。過剰な色素は沈殿させて除き、また修飾型オリゴデオキシヌクレオチドは、ゲル濾過、ポリスチレンカートリッジ、またはHPLCで精製する。この手順で使用される色素のリストには以下の化合物が含まれるがこれらに限定されない:5-ROX、6-ROX、フルオレセイン(5+6の異性体混合物、ならびに純粋な5の異性体および純粋な6の異性体)、TAMRA、Texas Red、Tet、Hex、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、BODIPY 650、LaJolla Blue、およびJOE。
【0131】
有用なアルキル基は、直鎖状、および分枝状のC1-18アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-5アルキル基を含むがこれらに限定されない。典型的なC1-18アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、およびオクタデシル基を含むがこれらに限定されない。
【0132】
有用なアリール基は、C6-14アリール、特にC6-10アリールを含むがこれらに限定されない。典型的なC6-14アリール基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基(biphenylenyl)、およびフルオレニル基を含むがこれらに限定されない。
【0133】
有用なアルコキシ基は、上述のC1-10アルキル基の1つによる酸素置換を含むがこれらに限定されない。
【0134】
有用なアルキルチオ基は、上述のC1-10アルキル基の1つによる硫黄置換を含むがこれらに限定されない。
【0135】
有用なアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基は、-NHR13および-NR14R15(R13-R15は独立にC1-10アルキル基)を含むがこれらに限定されない。
【0136】
有用な飽和した、または部分的に飽和したヘテロ環基は、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピペリジニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、テトロノイル基、およびテトラモイル基を含むがこれらに限定されない。
【0137】
有用なヘテロアリール基は、以下の1つを含むがこれらに限定されない:チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル(thianthrenyl)、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチイニル(pnenoxanthiinyl)、2H-ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタルジニル、ナフチリジニル、キノザリニル、チノリニル(cinnolinyl)、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナンスリジニル、アクリンジニル(acrindinyl)、ペリミジニル、フェナンスロリニル(phenanthrolinyl)、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル、1,4-ジヒドロキノキサリン-2,3-ジオン、7-アミノイソクマリン、ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、1,2-ベンゾイソキサゾル-3-イル、ベンズイミダゾリル、2-オキシンドリル(oxindolyl)、および2-オキソベンズイミダゾリル。ヘテロアリール基が環内に窒素原子を含む場合、このような窒素原子は、N-オキシド、例えばピリジル N-オキシド、ピラジニルN-オキシド、ピリミジニル N-オキシドなどの状態でありうる。
【0138】
アミノ酸は、任意の天然アミノ酸、ならびに非天然アミノ酸を含むがこれらに限定されない。アミノ酸の例には、チロシン、グリシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、セリン、イソロイシン、ロイシン、スレオニン、バリン、プロリン、リシン、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸、トリプトファン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、およびシステインが含まれるがこれらに限定されない。.
【0139】
ペプチドの例には、約2個〜約50個のアミノ酸を含むペプチドが含まれるがこれらに限定されない。
【0140】
ヒドロキシ酸は、アルキル基がヒドロキシ基で置換された任意のアルキルカルボン酸を含むがこれらに限定されない。このようなヒドロキシ酸は、約2個〜約50個の炭素原子、好ましくは約2個〜約6個の炭素原子を含む場合があり、またグリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸などを含むがこれらに限定されない。
【0141】
このような核酸分子は、DNA、RNA、およびホスホロチオエート、タンパク質核酸(PNA)、およびロックドヌクレオシド類似体(LNA)などの修飾型核酸分子でありうる。このような修飾は、核酸分子の3'末端および/または5'末端、またはその近傍、および/または核酸分子の内部に存在する場合がある。
【0142】
核酸分子の既知の修飾には多くの種類がある。これについては例えば米国特許第6,160,109号、第6,153,737号、第6,153,599号、第5,147,200号、第6,146,829号、第6,133,444号、第6,133,438号、第6,127,533号、第6,114,519号、第6,114,513号、第6,111,085号、第6,093,807号、第6,063,569号、第6,043,352号、第6,025,482号、第6,005,087号、第6,001,841号、第5,998,603号、第5,998,419号、第5,969,118号、第5,965,721号、第5,955,600号、第5,914,396号、第5,866,691号、第5,859,232号、第5,859,221号、第5,856,466号、第5,808,023号、第5,736,336号、第5,717,083号、第5,714,331号、第5,705,621号、第5,700,922号、第5,654,284号、第5,646,265号、第5,644,048号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,596,091号、第5,506,212号、第5,521,302号、第5,541,307号、第5,543,507号、第5,519,134号、および第5,554,746号、ならびに国際公開公報第99/14226号(LNA)、国際公開公報第96/35706号、国際公開公報第96/32474号、国際公開公報第96/29337号(チオノ(thiono)トリエステル修飾アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドホスホロチオエート)、国際公開公報第94/17093号(オリゴヌクレオチドアルキルホスホネートおよびアルキルホスホチオエート)、国際公開公報第94/08004号(オリゴヌクレオチドホスホチオエート、メチルリン酸、ホスホラミデート、ジチオエート、架橋(bridged)ホスホロチオエート、架橋ホスホラミデート、スルホン、硫酸塩、ケト体、リン酸エステル、およびホスホロブチルアミン(van der Krolら、Biotech 6:958-976(1988);Uhlmannら、Chem. Rev. 90:542-585(1990))、国際公開公報第94/02499号(オリゴヌクレオチドアルキルホスホノチオエートおよびアリールホスホノチオエート)、ならびに国際公開公報第92/20697号(3'端がキャップされたオリゴヌクレオチド)を参照されたい。
【0143】
本発明の修飾型オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド内の1つまたは複数の位置に、および/または3'末端および/または5'末端、もしくはその近傍に1つまたは複数の修飾を有する場合がある。1つの態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの2個中1個、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの5個中1個、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの10個中1個、最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの15個中1個、または最も3'末端側のヌクレオチドもしくは最も5'末端側のヌクレオチドの20個中1個を修飾可能である。特定の態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、3'末端もしくは5'末端から2番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から3番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から4番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から6番目の塩基において、または3'末端もしくは5'末端から最長20番目の塩基までにおいて修飾可能である。
【0144】
本発明のオリゴヌクレオチドは、固相支持体上に固定化することができる。(本発明の方法で)クエンチされた標識オリゴヌクレオチドを固定化する方法は、さまざまな核酸の検出法と同様の方法である。好ましい態様では、試料に由来する標的DNAまたは標的RNAは、固定化されたオリゴヌクレオチドとハイブリッドを形成可能であり、固定化されたオリゴヌクレオチド上における検出可能な標識の変化が、試料中の特定の遺伝子または配列の有無の指標として用いられる。したがって、固定化されたオリゴヌクレオチドはプローブとして機能する場合がある。オリゴヌクレオチドを固定化することで、標的核酸をコピーする必要がなくなったり(非効率なコピー段階により配列が失われる場合がある)、標識する必要が無くなったりする。オリゴヌクレオチド検出用標識の変化は、ハイブリダイゼーション、またはハイブリダイゼーションに続く、固定化されたオリゴヌクレオチドの酵素的伸長に起因する場合がある。他の態様では、酵素的伸長により、固定化されたオリゴヌクレオチドの位置において標的核酸が局所的に増幅される場合がある。
【0145】
標識化
本発明は、内部で、および/または3'末端および/または5'末端、もしくはその近傍で標識可能な、または脱標識可能なオリゴヌクレオチドを提供する。1つの態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの2個中1個を、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの5個中1個を、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの10個中1個を、最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの15個中1個を、または最も3'末端側もしくは最も5'側のヌクレオチドの20個中1個を標識することができる。特定の態様では、オリゴヌクレオチド(群)は、3'末端もしくは5'末端から2番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から3番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から4番目の塩基、3'末端もしくは5'末端から6番目の塩基、または3'末端もしくは5'末端から最長20番目の塩基において標識することができる。
【0146】
別の局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは、特異性増強官能基が付加された状態で提供される場合がある。このような官能基は、オリゴヌクレオチドの内部に、および/または3'末端および/または5'末端、もしくはその近傍に配置することができる。別の局面では、本発明のオリゴヌクレオチドはヘアピン状とすることができる。いくつかの好ましい態様では、オリゴヌクレオチドは、これらの特徴を複数提供される場合があり(すなわち標識および/または特異性増強官能基を含む場合がある)、および/またはヘアピン状とすることができる。
【0147】
標識する場合は、本発明のオリゴヌクレオチドは、1つもしくは複数の標識を含む場合がある(これらは同じ場合もあれば異なる場合もある)。本発明のオリゴヌクレオチドは、プライマーおよび/またはプローブとして使用することができる。好ましい局面ではオリゴヌクレオチドは標識されており、また標識は、ハイブリダイゼーション時および/または伸長時に任意の観察可能な特性に検出可能な変化を受ける任意の成分である。好ましい態様では、標識は蛍光成分であり、標識は、1つもしくは複数の蛍光特性に検出可能な変化を受ける。このような特性は、蛍光強度、蛍光偏光、蛍光寿命、および蛍光の量子収量を含むがこれらに限定されない。
【0148】
本発明のオリゴヌクレオチドは、任意の既知の標識法で(上述のように)標識することができる。例として、オリゴヌクレオチドは以下の手順で標識することができる:(1)ホスホロチオエート結合の硫黄における結合;(2)2'-アミノ基における結合;(3)例えばアルキルアミン置換カルボキサミドを含む適切に修飾された糖を用いる1'位における結合;(4)例えば脱塩基部位、および例えばリンカーにアルキルジアミンを用いる1'位における結合;(5)アルキルジアミンと脱塩基部位間に形成される付加物の還元的アルキル化による構造の生成;(6)4'-チオ-2'-デオキシウリジンもしくは4'-チオチミジンを用いる取込み;(7)4-チオチミジン、もしくは4-チオ-2'-デオキシウリジンの2'位における結合;(8)デオキシシチジンの4-アミノ位における結合(4-アミノ基がアルキルアミンで誘導体化されている場合);(9)アデニンの6'位を介した結合(6-アミノ基がアルキルアミノ基で誘導体化されている場合);(10)アデニンの8'位を用いた取込み(同位置がアルキルチオアミンで置換されている場合);(11)グアニンのN2における結合(N2アミノがアルキルアミノ基で誘導体化されている場合);または(12)アミノアデニンのN2位における結合(2-アミノ基がアルキルアミンで誘導体化されている場合)。
【0149】
特異性を高めるため、またプライマー二量体の形成を減少させるための修飾
意外なことに、本発明のオリゴヌクレオチドが、増幅および/または合成の特異性を高める(例えばミスプライミングを減少させる)ため、および/またはハイブリダイゼーション反応を促進するために使用可能であることがわかっている。理論に制限されることは望ましくないが、PCR反応のアニーリング温度の周辺温度でヘアピン構造を形成するプライマーとしてのオリゴヌクレオチドの能力、またはプライマーの3'端の隔離が、標的核酸分子に対してミスプライミングを生じるプライマーの能力を低下させると考えられている。このような特異性の上昇は、特定の標的核酸鋳型に依存せず、またさまざまな鋳型で認められている。特異性の上昇は、PCR反応で増幅することが困難な鋳型の増幅、またPCR反応における所望の増幅産物の量が少ないか全くないような鋳型の増幅に特に重要である。これについては例えば実施例14および実施例15を参照されたい。
【0150】
ヘアピン構造のほかに、オリゴヌクレオチドプライマーの3'端を隔離する任意の構造を、本発明を実施するために使用することができる。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドプライマーの5'部分は、3'端が二重鎖と相互作用して三重鎖を形成するように二重鎖形成能力をもつ配列とともに提供される場合がある。一般に、鋳型DNAに対するアニーリング能力をもたない安定な構造でプライマーの3'部分に可逆的に関与する任意のプライマー配列は、このような構造では、本発明を実施するために使用することができる。いくつかの態様では、プライマーに相補的なオリゴヌクレオチドは、プライマーの3'端を隔離するように提供される場合がある。相補的オリゴヌクレオチドは、ヘアピンを形成可能な自己相補性領域を含むように設計可能な5'突出領域を伴って提供される場合がある。隔離されていないプライマーの3'部分が、核酸鋳型のミスプライミング能力をもたず、本発明を実施するのに十分な限りは、プライマーの3'部分の全体が隔離される必要はない。
【0151】
ヘアピン構造に関しては、プライマーがヘアピン構造をとっている場合には、プライマーの3'端は5'側のセグメントと塩基対を形成するので、ミスプライミングまたはプライマー二量体形成に利用されることは少ない。しかし、ヘアピンが平滑末端をもつ場合は、プライマー二量体が形成される別の経路が存在する。具体的には、2つの平滑末端は、ポリメラーゼの極めて近くに接近させることが可能であり、またこの結果として、例えばフォワードプライマーの3'端が、例えばリバースプライマーの5'端と置き換わり、相補的な配列を形成する場合がある。提案された機構は、ヘアピンプライマーにより得られたプライマー二量体の配列を決定することで確認されている。この機構が解明されることによって問題の解法を示すことが可能となっている。ヘアピン状プライマーの5'末端またはその近傍における修飾がプライマー二量体形成を妨げることがわかっている。これは、ヘアピンの5'端の置換の抑制によると考えられる。これについては実施例15および実施例16を参照されたい。このような修飾には、2'-O-アルキルまたは2'-O-メチルの付加、5'-5'ホスホジエステル結合の生成、およびC3-アミノ、C6-アミノ、またはビオチンの付加が含まれる。
【0152】
ヘアピンプライマーを用いる際に、プライマー二量体の形成を最低限に抑える別の方法では、相互に相補的でない1個もしくは2個のヌクレオチドによって伸長される3'端をもつオリゴヌクレオチドを作る。これについては実施例17を参照されたい。
【0153】
プライマー二量体を減少させる別の代替法は、プライマー二量体の形成を妨げないが見えなくする。ヘアピンプライマーにより、プライマー二量体は極めて均一に形成されるので(実施例15に記載)、二本鎖構造中の2本のプライマーの3'端は極めて近くに存在する。したがって1本のプライマーをレポーターで標識し、また別のプライマーを3'端の近くでクエンチャーで標識することで、蛍光のクエンチングが生じる。真のアンプリコンの蛍光は、約20個より長いヌクレオチド配列がプライマーから直ちに離れれば影響を受けない。これについては実施例18を参照されたい。
【0154】
したがって、核酸の合成中または増幅中における、核酸の増幅もしくは合成の特異性の上昇、および/またはプライマーのミスアニーリング(ミスプライミング)の低下もしくは減少に関しては、本発明のオリゴヌクレオチドは以下のような状態でありうる:(1)ヘアピン構造、またはオリゴヌクレオチドプライマーの3'端を隔離したりブロックしたりするような構造(例えば3'末端もしくはその近傍における配列のハイブリッドの形成による);(2)5'末端もしくはその近傍で修飾された状態;および/または(3)(1)と(2)の組み合わせ。
【0155】
本発明のオリゴヌクレオチドの例示的な用途
本発明のオリゴヌクレオチド(標識された状態、脱標識された状態、ヘアピン状態、修飾状態、または非修飾状態、またはこれらの任意の組み合わせ)は、増幅もしくは合成、またはハイブリダイゼーション反応の核酸産物を検出もしくは測定することで、プライマー配列の全体もしくは一部に相補的な試料中の標的核酸を検出または測定するための核酸の増幅、合成、またはハイブリダイゼーションの反応に(例えばプライマーとして)使用される。本発明のオリゴヌクレオチドは、PCR、5'-RACE、アンカーPCR、「片側PCR」、LCR、NASBA、SDA、RT-PCR、リアルタイムPCR、定量PCR、定量RT-PCR、およびユニバーサルプライマーフォーマットによる、当技術分野で周知の他の増幅系を含む任意の増幅反応で使用することができる。
【0156】
したがって本発明は一般に、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法に関する:
(a)1つもしくは複数の鋳型、または標的核酸分子を、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと混合する段階;および
(b)混合物を、鋳型もしくは標的分子の全体もしくは一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階。
【0157】
好ましくは、合成または増幅された核酸分子は、本発明の1つもしくは複数のオリゴヌクレオチド、またはこれらの一部を含む。1つの局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは、本発明の方法で作製された、合成もしくは増幅された核酸分子の一端もしくは両端またはこれらの近傍で取込まれる。本発明は、このような増幅反応または合成反応で作製される1つまたは複数の核酸分子にも関する。
【0158】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子を合成する方法に関する:
(a)1つまたは複数の核酸鋳型(cDNA分子などのDNA分子、mRNA分子などのRNA分子、もしくはこれらの分子の集団でありうる)を、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および1つもしくは複数のポリメラーゼと混合する段階;ならびに
(b)混合物を、鋳型の全体または一部に相補的な、1つもしくは複数の第1の核酸分子を十分合成する条件下でインキュベートする段階。
【0159】
このようなインキュベーション条件は、1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数の核酸合成用緩衝剤の使用を含む場合がある。本発明のこのような方法は任意選択で、合成された第1の核酸分子を、第1の核酸分子の全体または一部に相補的な、1つもしくは複数の第2の核酸分子を十分作る条件下でインキュベートする段階などの、1つまたは複数の追加的段階を含む場合がある。このような追加的段階は、本発明の1つまたは複数のプライマー、および本明細書に記載の1つもしくは複数のポリメラーゼの存在下で達成される場合もある。本発明は、このような方法で合成された核酸分子にも関する。
【0160】
本発明は、以下の段階を含む、核酸分子の配列決定法にも関する:
(a)配列決定対象となる核酸分子を、本発明の1本または複数のプライマー、1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数の停止薬剤と混ぜて混合物を得る段階;
(b)混合物を、配列決定対象分子の全体または一部に相補的な分子の集団を十分合成する条件下でインキュベートする段階:ならびに
(c)分子集団を分離して、配列決定対象分子の全体または一部のヌクレオチド配列を決定する段階。
【0161】
本発明は具体的には、以下の段階を含む、核酸分子の配列決定法に関する:
(a)本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、1つまたは複数のヌクレオチド、および1つまたは複数の停止用薬剤を混合する段階;
(b)オリゴヌクレオチドと第1の核酸分子とのハイブリッドを形成させる段階;
(c)段階(b)の混合物を、第1の核酸分子に相補的な核酸分子のランダムな集団を十分合成する条件下でインキュベートする段階(合成される分子は第1の分子より長さが短く、また合成される分子は、3'末端に停止用ヌクレオチドを含む);ならびに
(d)合成された分子を大きさにしたがって分離し、第1の核酸分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を決定可能とする段階。このような停止用ヌクレオチドは、ddTTP、ddATP、ddGTP、ddITP、またはddCTPを含む。このようなインキュベーション条件は、1つまたは複数のポリメラーゼ、および/または緩衝塩の存在下におけるインキュベーションを含む場合がある。
【0162】
関連する局面では、本発明のオリゴヌクレオチドは、増幅反応または合成反応の実施を必要することなく、試料中の核酸分子の有無を検出する際に、または核酸分子を定量する際に有用である。本発明では、オリゴヌクレオチドは、標識を含むオリゴヌクレオチドが二本鎖分子に(例えばオリゴヌクレオチドと標的分子のハイブリッドを形成することで)変換される場合に少なくとも1つの観察可能な特性に検出可能な変化を受ける1つもしくは複数の標識とともに提供される場合がある。したがって、観察可能な特性の変化は、対象核酸分子を含まない対照試料との比較時に、試料中に標的分子が存在することを意味する。試料中の核酸標的分子の定量は、未知試料の観察可能な特性の変化を、既知量の対象核酸標的分子を含む試料の観察可能な特性の変化と比較することでも決定することができる。対象核酸分子を含むと考えられる任意の試料は、血液、尿、組織、細胞、便、血清、血漿、または動物(ヒトを含む)、植物、細菌、ウイルスなどに由来する他の任意の試料などの生物試料を含むがこれらに限定されない試料に使用することができる。土壌試料、水系試料、気体試料などの環境試料も本発明に使用することができる。
【0163】
本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが感染源の配列(例えばゲノムまたはcDNA)に相補的か、または例えばウイルス(例えばHIVやHPVなど)、細菌、寄生虫、および真菌を含むがこれらに限定されないヒトの疾患の感染源の配列の合成もしくは増幅を開始することで、患者に由来する試料中の感染源の存在を調べることが可能な診断法に使用することができる。標的核酸の種類は、ゲノム、cDNA、mRNA、もしくは合成物でありうるか、または供給源は、ヒト、動物、または細菌でありうる。疾患または障害の診断または予後に使用可能な別の態様では、標的配列は、野生型のヒトゲノム、またはRNA配列もしくはcDNA配列であるか(これらの変異はヒトの疾患または障害の存在に関連づけられる)、または変異配列でありうる。このような態様では、本発明のハイブリダイゼーション、増幅、または合成の反応は、野生型配列または変異配列を選択的に同定する、本発明のさまざまなセットのオリゴヌクレオチドを用いて(例えばさまざまに標識された標識オリゴヌクレオチドを用いて)、同じ試料を対象に繰返すことができる。例えば、このような変異は、1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、置換、および/または欠失、または転座でありうる。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、SNP解析、薬理ゲノム科学、およびトキシコジェネティクスに使用することができる。
【0164】
特定の態様では、本発明は、以下の段階を含む、核酸の増幅反応または合成反応の産物の検出法または測定法を提供する:(a)1つまたは複数の標的核酸分子を含む試料を、1つまたは複数のプライマー(このようなプライマーは、同じ場合もあれば異なる場合もある、また内部、および/または3'端および/または5'端もしくはこれらの近傍が標識されたりする1つもしくは複数の標識を含む場合がある)に接触させる段階(プライマーは、標的配列もしくは核酸分子が試料中に存在する場合にプライマーが増幅反応もしくは合成反応の増幅産物もしくは合成産物に取込まれるように、増幅反応もしくは合成反応における使用に適したものとする);(b)増幅反応または合成反応を実施する段階;ならびに(c)1つまたは複数の合成産物分子または増幅産物分子を(好ましくは、1つまたは複数の標識の1つまたは複数の観察可能な特性の変化を検出することで)検出または測定する段階。
【0165】
別の特定の態様では、本発明は、以下の段階を含む、試料に含まれる標的核酸分子の有無または量の検出法および測定法を提供する:(a)1つまたは複数の標的核酸分子を含む試料を、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドに接触させる段階(このようなオリゴヌクレオチドは、同じ場合もあれば異なる場合もある、また内部、および/または3'端および/または5'端もしくはこれらの近傍で標識される場合がある1つもしくは複数の標識を含む場合がある);(b)混合物を、二本鎖分子を(好ましくはハイブリダイゼーションによって)十分形成させる、オリゴヌクレオチドと標的分子との相互作用を十分可能とする条件下でインキュベートする段階;ならびに(c)1つもしくは複数の標的核酸分子を(好ましくは、1つまたは複数の標識の1つまたは複数の観察可能な特性の変化を検出することで)検出する段階。
【0166】
本発明は、核酸混合物を含む試料を、本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドは標的核酸配列とハイブリッドを形成可能で、また少なくとも1つの検出可能な成分を含む(検出可能な成分は、標的核酸配列とハイブリッド形成時に1つもしくは複数の観察可能な特性に変化を受ける))、ならびに観察可能な特性を観察する段階(観察可能な特性の変化は、標的核酸配列が存在することを意味する)を含む、標的核酸配列を検出する方法を提供する。いくつかの態様では、標的核酸配列は混合物から分離されない。いくつかの態様では、観察可能な特性は蛍光である。いくつかの態様では、変化は蛍光の増加である。いくつかの態様では、変化は蛍光の減少である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは特異性増強官能基を含む。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。
【0167】
本発明は、標的核酸分子を含む核酸の混合物を含む試料を、本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドは、標的核酸分子とハイブリッドを形成可能で、少なくとも1つの検出可能な成分を含む(検出可能な成分は、標的核酸配列とハイブリッド形成時に1つもしくは複数の観察可能な特性に変化を受ける))、ならびに観察可能な特性を観察する段階(観察可能な特性の変化は、試料中の標的核酸分子の量に比例する)を含む、標的核酸分子の定量法を提供する。
【0168】
別の局面では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドの標識によって放出されるエネルギーの低下もしくは減少させる1つもしくは複数の処理の使用に関する。このような処理は、本発明のハイブリダイゼーション、合成法、または増幅法におけるバックグラウンドを低下させるために本発明で用いられる場合がある。1つの局面では、一本鎖核酸結合タンパク質(大腸菌、T4バクテリオファージ、または古細菌(Kellyら、Proceedings of the National Academy of Sciences、USA 95:14634-14639(1998)、Chedinら、TIBS 23:273-277(1998)、米国特許第5,449,603号、第5,605,824号、5,646,019号、および第5,773,257号を参照))を用いて、本発明の一本鎖の標識されたオリゴヌクレオチドを相互作用させて、標識から放出されたエネルギー、または他の検出可能な特性を低下またはクエンチさせることができる。このような一本鎖結合タンパク質は、天然のタンパク質の場合もあれば修飾型タンパク質の場合もある。検出または定量の段階(ハイブリダイゼーション、合成反応、または増幅反応)では、形成される二本鎖核酸分子は、一本鎖結合タンパク質と実質的に相互作用しないか、または二本鎖分子と極めてわずかにしか相互作用しない。したがって、非反応状態(本発明のオリゴヌクレオチドの一本鎖状態)では、放出されるエネルギー、または他の検出可能な特性(例えば蛍光)は低下またはクエンチするが、反応状態(二本鎖分子)では、放出されるエネルギー、または他の検出可能な特性は増強される。別の局面では、クエンチャー分子を含むブロッキングオリゴヌクレオチドを用いて、本発明の標識されたオリゴヌクレオチドを非反応状態で競合的に結合させることにより、放出されるエネルギー、または標識されたオリゴヌクレオチドの他の検出可能な特性を低下させることができる。別の局面では、1つもしくは複数の追加的蛍光成分を、ブロッキング分子中に取込ませて、本発明のオリゴヌクレオチドが非反応状態にある場合に本発明のオリゴヌクレオチド上の蛍光成分が、1つもしくは複数の追加的蛍光成分に近接させる。追加的蛍光分子の存在は、本発明のオリゴヌクレオチド上の蛍光成分の放出スペクトルと、ブロッキングオリゴヌクレオチド上の1つもしくは複数の追加的蛍光成分の吸収スペクトルの重複がほとんどないか全くない場合でもバックグラウンドの蛍光レベルを低下させる場合がある。このようなバックグラウンドの低下の原因には、蛍光クエンチャーの別の機構(例えば衝突的なもの〕)と関連が考えられる。フルオロフォアを、検出可能な標識として使用することに加えて、クエンチャーとして使用する場合、クエンチングの機構は衝突的となる。
【0169】
本発明のオリゴヌクレオチドが、ヘアピン構造の形成能力をもつ場合、当業者であれば、1つもしくは複数の追加的蛍光成分を、ヘアピンのステム構造の一方の鎖に結合させながら、1つもしくは複数の標識を、もう一方の鎖のヌクレオチドに結合させることで、1つまたは複数の追加的蛍光成分が本発明のオリゴヌクレオチド上の標識に近づくことを理解すると思われる。検出中または定量中に標的核酸分子は、本発明の標識されたオリゴヌクレオチドヌクレオチドと相互作用することで、標識から放出されるエネルギー、または他の検出可能な特性を高める。このような相互作用により、ブロッキングオリゴヌクレオチド(例えばクエンチャー/追加的蛍光成分を含む分子)を、標識を含む本発明のオリゴヌクレオチドから分離することができる。
【0170】
本発明の別の局面では、オリゴヌクレオチドおよび/またはブロッキングオリゴヌクレオチドの配列は、本発明のオリゴヌクレオチドのバックグラウンド蛍光を低下させるように選択することができる。意外なことに、標識付近の塩基配列が、バックグラウンド蛍光レベルに極めて大きな作用を及ぼすことがわかっている。本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドのバックグラウンド蛍光は、オリゴヌクレオチドの配列が、3'端に近い1つもしくは複数の塩基上に位置し、また二本鎖構造の最後の塩基対がG-C塩基対もしくはC-G塩基対である、1つもしくは複数の塩基上に位置する1つもしくは複数のフルオロフォアにより、平滑末端の二本鎖構造を形成するように選択されると約5倍低下させることができる。いくつかの好ましい態様では、二本鎖構造はヘアピン構造のステムでありうる。いくつかの好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドの3'端は以下の配列の1つで規定することができる:5'-...T(Fluo)C-3'、5'-...T(Fluo)G-3'、5'-...T(Fluo)AG-3'、5'-...T(Fluo)AC-3'、5'-...T(Fluo)TG-3'、および5'-...T(Fluo)TG-3'(フルオロフォアの結合を(Fluo)で示し、3'側の配列を、ブロッキングオリゴヌクレオチド(またはヘアピンオリゴヌクレオチドの5'端)が相補的配列で(好ましくはブロッキングオリゴヌクレオチド/ヘアピン分子の5'端において)規定されるように示す)。クエンチング作用を達成するためには、標識された塩基を、3'端から10ヌクレオチド以内に、好ましくは6ヌクレオチド以内に、また最も好ましくは3'端から2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目に配置するべきである。この種類のオリゴヌクレオチドの特定の例は、表2のオリゴ10(配列番号:22)で規定される。
【0171】
関連する態様では、最も3'側のヌクレオチドがGまたはCでなく、したがって3'端でG-C塩基対を形成しないオリゴヌクレオチドを用いる場合、5'が突出するようにG残基をオリゴヌクレオチドに付加することで、バックグラウンド蛍光を低下させることができる。この態様では、本発明は、以下を含むオリゴヌクレオチドに関する:3'末端におけるシトシンもしくはグアニン、またはシトシンもしくはグアニンの類似体、また3'末端から少なくとも2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、もしくは6塩基の位置における1つもしくは複数の検出可能な標識。
【0172】
別の態様では、上述のクエンチング法は、蛍光共鳴エネルギー移動、または静的クエンチングのようなクエンチングの別の機構と組み合わせることができる。本発明のいくつかの態様では、クエンチング法を組み合わせることで、バックグラウンド蛍光を低下させることができる。例えば本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドの配列をヘアピン構造の平滑末端にG-C塩基対を形成するように選択可能としながら、オリゴヌクレオチドの3'端の近傍に、検出可能な成分を配置することが可能であり、また1つもしくは複数の追加的蛍光成分をオリゴヌクレオチドの5'端、もしくはその近傍でヌクレオチドに結合させることができる。類似の構造は、ヘアピンの代わりにブロッキングオリゴヌクレオチドを用いて用いることができる。
【0173】
別の関連する態様では、蛍光強度が、オリゴヌクレオチド(群)もしくは鋳型の配列、およびオリゴヌクレオチド(群)もしくは鋳型のフルオロフォアもしくは他の検出可能な特性の位置に応じて二本鎖形成時に低下したり上昇したりする場合がある。5'末端にフルオレセインを含むオリゴデオキシヌクレオチドは、5'端にCまたはGがある系では、二重鎖の蛍光は約40%クエンチされるが、オリゴヌクレオチドの末端がAまたはTの場合にはクエンチングは認められない。グアノシンのクエンチング特性は、核酸塩基と近傍色素間における電荷移動を可能とする、電子供与能力に起因するとされている(Seidel, C.A.M.ら、J. Phys. Chem. 100:5541-5553(1996);Steenken, S.およびJovanovic, V.、J. Am. Chem. Soc. 119:617-618(1997))。しかし蛍光は、5'端にGを含む蛍光オリゴヌクレオチドが、Cを含む蛍光オリゴヌクレオチドとハイブリッドを形成した場合にもクエンチされた(図34を参照)。末端のG/C塩基対、およびC/G塩基対は、蛍光のクエンチングに関与する場合がある。
【0174】
さらに別の関連する態様では、本発明の修飾型オリゴヌクレオチド(例えば内部、または3'最末端もしくは5'最末端のヌクレオチドに位置するオリゴヌクレオチド(群)、標識(群)上の1つまたは複数の標識(オリゴヌクレオチドは、最も3'末端もしくは最も5'末端のヌクレオチドとしてGもしくはCを有する))は、オリゴヌクレオチド上における単標識または複数標識は、単標識もしくは複数標識(群)で修飾された、またはオリゴヌクレオチドに対するGまたはCを含む、標的鋳型の検出もしくは増幅に使用することができる。蛍光強度は、二重鎖形成時に低下または上昇する場合がある。
【0175】
他の関連する態様では、末端のG/C塩基対およびC/G塩基対も、オリゴヌクレオチドの3'端に近接して内在する場合にフルオロフォアもしくは他の検出可能な特性をクエンチさせる場合がある。二本鎖中における10倍以上の蛍光クエンチングは、フルオレセインが、3'端から2ヌクレオチドまたは3ヌクレオチド離れたチミジンのC-5位に位置する場合に示された。この作用は、標識された鎖の最も3'端におけるC残基またはG残基の存在に絶対的に依存していた。5'が標識されたオリゴヌクレオチドの場合と同様に、G/C塩基対は有効なクエンチャーであるがG単独では有効ではない。末端におけるG/T誤対合、または5'-Gの突出は、平滑末端のG/C塩基対と比較して、それほど顕著でないクエンチングを生じる。末端のG/C対のみが二重鎖の蛍光に影響し;A/T対に隣接する場合はクエンチングは生じない。このデータは、複数のフルオロフォアと核酸塩基間に電荷移動複合体が形成されるという提案と一致する(Seidel, C.A.M.ら、J. Phys. Chem. 100:5541-5553(1996);Lewis, F.D.ら、Acc. Chem. Res. 34:159-170(2001);Steenken, S.およびJovanovic, V.、J. Am. Chem. Soc. 119:617-618(1997))。全塩基のなかで電子供与能力が最も高いグアノシンは、この段階に重要な役割を果たす。しかしグアノシンのもつ、蛍光をクエンチする能力は、水素結合が関与するか否かに、また位置(鎖の末端もしくは内部)に極めて大きく依存する(実施例27〜30を参照)。
【0176】
本発明の別の局面では、特定のクエンチャーではない1つのレポーターまたは検出可能な標識で標識されたオリゴヌクレオチドは、PCRまたは他の関連する方法でリアルタイムに、またはエンドポイントにおいて反応容器を開封することなく、核酸を効率的に検出するために使用可能である。標識されたPCRプライマーは、二本鎖のPCR産物中に取込まれた場合に蛍光を高めるチミジンのC-5位に結合されたフルオロフォアを伴う、化学的に合成されたオリゴデオキシヌクレオチドでありうる(Lee, S.P.ら、Anal. Biochem. 220:377-383(1994);Knemeyer, J.P.ら、Anal. Chem. 72:3717-3724(2000);Crockett, A.O.ら、Anal. Biochem. 290:89-97(2001);Kurata, S.ら、Nucleic Acids Res. 29: E34(2001);Lakowicz, J.R.、Principles of fluolescence spectroscopy、Kluver Academic/Plenum Publishers、New York、第2版、185-210(1999);Cianferoni, A.ら、Blood 97:1742-1749(2001);Farrar, G.J.ら、Nucleic Acids Res. 19:6982(1991))。これは、末端がGまたはCであるオリゴヌクレオチドの3'端の近くにフルオロフォアをもつこと、標識周辺の数塩基以内にGが存在すること、またオリゴヌクレオチドが、プライマーのアニーリング温度付近の温度で平滑末端のヘアピンを形成する能力をもつことが原因である。蛍光強度のこのような変化の機構は、取込まれなかったヘアピンプライマーの蛍光を低下させる、核酸塩基(具体的にはグアノシン)とフルオロフォア間における電荷の分離に起因する可能性がある(Seidel, C.A.M.ら、J. Phys. Chem. 100:5541-5553(1996);Walter, N.G.およびBurke, J.M. RNA 3:392-404(1997);Sauer, M.ら、Chem. Physical Letters 284:153-163(1998);Lewis, F.D.ら、Acc. Chem. Res. 34:159-170(2001))。したがって本発明はさらに、以下を含むオリゴヌクレオチドに関する:3'末端におけるアデニンもしくはチミジン、5'末端における突出したグアニン、および内部に位置する1つもしくは複数の検出可能な標識。プライマー伸長時の蛍光の上昇は、さまざまな色素-プライマーの組み合わせでは10倍高い場合があるので、標識されたプライマーのデザインは、各社独自のソフトウェアによって推進される活発な研究領域である(実施例31)。
【0177】
複数の重要な特徴があるため、標識プライマーを使用するPCRは、定量的でリアルタイムのPCRおよびSNP検出を含む、DNA検出のツールとして大きな価値がある場合がある。モノ標識オリゴヌクレオチドの合成は、二重標識プローブおよびプライマーと比較して費用が高額でなく、また精製に要求される条件は厳格ではない。標識プライマーは、HIVなどの高頻度で出現する変異を有する標的、またはハイブリダイゼーションプローブを使用する際に問題となる選択的スプライシングを受けた標的を容易に検出することができる。蛍光または標識がPCR産物に取込まれることで、電気泳動法で大きさによる核酸の分離が可能となる。また標識プライマーを使用することで、「ユニバーサルフォーマット」の検出が可能となする。同じユニバーサルの標識プライマーは、非標識プライマー対(非標識プライマーの1本はアダプターテールをもつ)を使用して異なるアンプリコン中に取込まれうる。ユニバーサルフォーマットは、二重標識プライマーとともに良好に使用された(Nuovo, G.J.ら、J. Histochem. & Cytochem. 47:273-279(1999);Myakishev, M.V.、Genome Res. 77:163-169(2001))。言及された応用のほかに、一次構造および二次構造の変化に応じて、標識されたオリゴヌクレオチドが強力なシグナルを発生する能力は、酵素反応、ならびにタンパク質と核酸間の他の相互作用を調べる際に有用な場合がある。
【0178】
本発明は、蛍光成分をオリゴヌクレオチドに結合させる段階を含む、蛍光成分から蛍光をクエンチする方法を提供する(オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが蛍光成分の蛍光をクエンチする構造をとる能力をもつ)。いくつかの態様では、この構造はヘアピンである。
【0179】
本発明では、非反応性の標識されたオリゴヌクレオチドをクエンチしたり減少させたりする他の手段を使用することができるほか、これらの処置の任意の組み合わせを使用することができる。フルオロフォアが検出可能な標識として使用されることに加えてクエンチャーとして使用される場合、クエンチング機構は衝突的である。別のクエンチャー(蛍光性または非蛍光性)が使用される場合、クエンチング機構は、それぞれ衝突的、またはFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)となる。
【0180】
本発明は、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および1つもしくは複数の標的または鋳型の核酸分子を含む組成物を提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的もしくは鋳型の核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である(好ましくはオリゴヌクレオチドは、標的核酸分子とのハイブリダイゼーション時に1つもしくは複数の観察可能な特性に変化を受ける1つもしくは複数の検出可能な成分を含む))。いくつかの態様では、検出可能な成分は蛍光成分であり、また蛍光成分は、標的核酸分子とハイブリッドを形成すると蛍光が変化する。いくつかの態様では、標的核酸分子とハイブリッドを形成しない場合は、オリゴヌクレオチドはヘアピンである。
【0181】
いくつかの好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つの核酸分子、および本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは1つまたは複数の特異性増強官能基を含む)。いくつかの態様では、1つまたは複数の特異性増強官能基は蛍光成分である場合がある。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの任意の位置に結合することが可能であり、結果的にオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドと相補的でない場合に実質的に伸長能が弱くなる。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは3'側のヌクレオチド、またはその近傍でヌクレオチドに結合される。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個に結合される。言いかえると、この種の態様では、1つもしくは複数の特異性増強官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基と5'方向に結合される場合がある。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の5個のヌクレオチドの1個に結合される。いくつかの態様では、この官能基は標識でありうり、好ましくは二本鎖分子の一部となる観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識でありうる(例えば、別の核酸分子とのハイブリッドの形成によるか、または核酸の合成もしくは増幅による)。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン形成能力をもつ。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。
【0182】
別の態様では、本発明は、1つの標識をもつ、ヘアピン形成能力をもつオリゴヌクレオチド(群)を含む増幅法を提供する。クエンチャー分子またはクエンチャー成分は必要ない。標識または検出可能な成分は、内部、または3'末端もしくは5'末端に配置することができる。PCR産物に取込まれると、合成産物量に正比例する場合がある蛍光シグナルの上昇がみられる。本発明のオリゴヌクレオチドは、以下の操作を実施するために使用することができるがこれらに限定されない:配列決定、ジェノタイピング、SNP、エンドポイント検出、定量PCR、定量RT-PCR、変異検出、増幅遺伝子発現、およびインサイチューハイブリダイゼーション。本発明のオリゴヌクレオチドは、さまざまなアンプリコンに使用されたり、さまざまなプローブに使用されたりする、多重鎖形成に使用される場合もある。
【0183】
本発明は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを提供する段階、および1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの核酸分子に接触させる段階を含む、組成物を作製する方法を提供する(少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、少なくとも1つの核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である)。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、1つもしくは複数の特異性増強官能基、および/または少なくとも1つの検出可能な標識を含む。いくつかの態様では、このような官能基は蛍光成分である。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドと相補的でない場合に実質的に伸長能が弱いオリゴヌクレオチドを生じるオリゴヌクレオチドの任意の位置に結合させることができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、3'ヌクレオチドまたはその近傍にでヌクレオチドに結合される。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個に結合される。言いかえると、この種の態様では、1つもしくは複数の特異性増強官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基と5'方向に結合される場合がある。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の5個のヌクレオチドの1個に結合される。いくつかの態様では、官能基は標識であり、好ましくは二本鎖分子の一部となる際に(例えば別の核酸分子とハイブリッドを形成することで)観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識でありうる。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピンを形成可能である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。
【0184】
本発明は、以下の段階を含む、標的または鋳型の核酸分子中の特定の位置または複数の位置における特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが存在することを判定する方法を提供する:(a)特定の位置または複数の位置にヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的または鋳型の核酸分子に、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的もしくは鋳型の核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成(例えばハイブリッドを形成)可能であり、オリゴヌクレオチドは好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基および/または標識を含む);ならびに(b)オリゴヌクレオチドと核酸分子の混合物を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが核酸標的分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階。このような条件下では、伸長産物の産生は、特定の位置または複数の位置に特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが存在することを意味する。本明細書で用いる、伸長産物の存在、または伸長産物の産生の上昇は、修飾型オリゴヌクレオチドを用いて作製された増幅されたDNAの量の差が、修飾を欠くオリゴヌクレオチドを用いて得られる差と比較して1倍〜約1000倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約500倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約250倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約100倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約50倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約25倍大きい、もしくは約1倍〜約10倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約5倍以上の間にあること、または約1倍〜約2倍以上の間にあることを意味する。産物の量は例えば、産物をアガロースゲルに流し、臭化エチジウムで染色し、同様に処理された既知量の核酸標準と比較するといった、当業者に周知の任意の方法で決定することができる。
【0185】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的または鋳型の核酸分子中の特定の位置または複数の位置に少なくとも1つの特定のヌクレオチドが存在しないことを判定する方法を提供する:(a)特定の位置にヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、本発明のオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成(例えばハイブリッドを形成)可能であり(オリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基もしくは標識を含む));ならびに(b)オリゴヌクレオチドと核酸分子の混合物を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドと塩基対を形成しない(例えばハイブリッドを形成しない)場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分防止もしくは阻害する条件下でインキュベートする段階。このような条件では、伸長産物の産生がみられないこと、または産生の低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが存在しないことを意味する。本明細書で用いる、伸長産物の産生がみられないこと、または産生の低下は、修飾を欠くオリゴヌクレオチドを用いて作られた増幅されたDNAの量の差が、修飾型オリゴヌクレオチドを用いて得られた差と比較して約1倍〜約500倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約250倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約100倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約50倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約25倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約10倍以上の間にあること、もしくは約1倍〜約5倍以上の間にあること、または約1倍〜約2倍以上の間にあることを意味する。好ましい局面では、上記の第1の方法におけるオリゴヌクレオチドの伸長の結果を、上記の第2の方法におけるオリゴヌクレオチドの伸長がみられないこと、もしくは伸長レベルが低下することと比較する。好ましい局面では、第1の方法の条件は、標的核酸分子の全体もしくは一部が増幅されるように実施されるが、第2の方法の条件は、標的核酸分子が増幅されないように、または第1の方法で作られた、増幅された標的核酸分子と比較して低レベルで、もしくは遅い速度で増幅されるように実施される。いくつかの態様では、特異性増強官能基は蛍光成分である。特異性増強官能基は、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが、標的/鋳型核酸の対応するヌクレオチドに相補的でない場合に伸長能が弱い、好ましくは伸長能が実質的に弱いオリゴヌクレオチドを生じるオリゴヌクレオチドの任意の位置に結合することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチドで、もしくはその近傍でヌクレオチドに結合される。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個のヌクレオチドに結合される。言いかえると、この種の態様では、1つもしくは複数の特異性増強官能基の少なくとも1つは、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基と5'方向に結合される場合がある。いくつかの態様では、1つまたは複数の官能基の少なくとも1つは、最も3'側の5個のヌクレオチドの1個に結合される。いくつかの態様では、官能基は標識であり、好ましくは(例えば別の核酸分子とハイブリッドを形成することで)二本鎖分子の一部となる際に観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識である場合がある。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピンを形成可能である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。インキュベーション条件は好ましくは、Tsp DNAポリメラーゼ(Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)、Rockville、MDから入手可能)などの1つまたは複数のポリメラーゼ酵素の存在を含む。
【0186】
本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法を提供する:(a)少なくとも1つの標的または鋳型の核酸分子を本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的/鋳型核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である(オリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基および/または標識を含む));ならびに(b)オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成する(例えばハイブリッドを形成する)場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で標的核酸とオリゴヌクレオチドの混合物とをインキュベートする段階。
【0187】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成を低下させる方法を提供する:(a)少なくとも1つの標的もしくは鋳型の核酸分子を本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的/鋳型核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である(オリゴヌクレオチドは好ましくは少なくとも1つの特異性増強官能基および/または標識を含む));ならびに(b)標的/鋳型核酸分子とオリゴヌクレオチドの混合物を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的/鋳型核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドと塩基対を形成しない(例えばハイブリッドを形成しない)場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分防止もしくは阻害する条件下でインキュベートする段階。好ましい局面では、上記の第1の方法における合成の結果を、上記の第2の方法における合成の消失もしくは合成レベルの低下と比較する。好ましい局面では、第1の方法の条件を標的核酸分子の全体もしくは一部が増幅されるように実施し、一方で第2の方法の条件を、標的核酸分子が増幅されないか、または第1の方法で作られた増幅された標的核酸分子と比較して低レベルで、および/または遅い速度で増幅されるように実施する。いくつかの態様では、特異性増強官能基は蛍光成分である。いくつかの態様では、特異性増強官能基を、最も3'側のヌクレオチドもしくはその近傍でヌクレオチドに結合する。いくつかの態様では、特異性増強官能基は、最も3'側の10個のヌクレオチドの1個に結合する。言いかえると、この種の態様では、特異性増強官能基を、最も3'側のヌクレオチド、または続く9個のヌクレオチドの任意の残基に5'方向に結合される。いくつかの態様では、特異性増強官能基は標識、好ましくは、(例えば別の核酸分子とハイブリッドを形成することで)二本鎖分子の一部となる場合に観察可能な特性に検出可能な変化を受ける標識である場合がある。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピンを形成可能である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはヘアピン状である。インキュベーション条件は、好ましくは、Invitrogen Corporation(Life Technologies Division)、Rockville、MDから入手可能なTsp DNAポリメラーゼなどの1つまたは複数のポリメラーゼ酵素の存在を含む。
【0188】
本発明は、PCRにおけるプライマーの3'末端のヌクレオチド、もしくはその近傍における、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシ修飾を含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル修飾、または2'-もしくは3'-O-アリール修飾、または好ましくは、2'-O-メチルリボヌクレオチドの修飾などの、修飾型ヌクレオチドを使用する、一塩基多型(SNP)の検出法を提供する。この方法は、既存の手法による高スループットのスクリーニング法に容易に応用することができる。ポリメラーゼによる、(唯一の必要条件は不安定な(frayed)3'末端がないこと)鋳型配列に完全に相補的なプライマー鎖の3'末端へのヌクレオチドの取込み効率は、3'末端のヌクレオチドの位置における一塩基誤対合を形成する3'端への取込み効率と比較して有意に高い。不安定端の3'末端と比較した、完全にアニーリングしたプライマー/鋳型基質のプライマー伸長の動態の量的比較は、SNPを含むDNA試料を同定目的のスクリーニングに用いられている。しかし、ポリメラーゼは、誤対合のあるプライマー末端を十分な効率で伸長するので、この方法はSNP同定法としては信頼性が低い(誤対合のある末端の伸長速度は特定のプライマー/鋳型配列によって変動する)。このような基本的な手法の改善は、本発明では、修飾型オリゴヌクレオチドを使用して、アッセイ法の解像度を上げることで、標的鋳型配列中の一塩基変異の信頼性の高い検出を可能とすることで記載されている。このようにプライマーを修飾することで、ゲノム試料中のSNPの同定を高精度でかなり速めることができる。
【0189】
本発明は、DNA合成反応におけるプライマーの3'末端のヌクレオチドまたはその近傍における、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または例えば、2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシの修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル、または2'-もしくは3'-O-アリールの修飾、または好ましくは2'-O-メチルリボヌクレオチドの修飾を含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾などの修飾型ヌクレオチドを用いるSNP(一塩基多型)検出法も提供する。例えば末端が2'-O-メチルリボースであるプライマーは、3'末端にデオキシヌクレオチドをもつ標準的な非修飾プライマーと比較して効率は低いが、TaqなどのDNAポリメラーゼによって伸長されうる。DNAポリメラーゼによって触媒される1塩基対の誤対合を形成する3'末端の伸長効率は、3'末端のヌクレオチドが2'-O-置換成分、具体的には、2'-O-メチル成分を含む場合には大きく低下する。不安定な末端の場合と比較して、正しくアニーリングするプライマー3'端へのヌクレオチドの挿入速度に相対的な差があることは、DNA試料中の一塩基変化を検出するために使用することができる。PCR条件に2'-O-置換、または好ましくは末端が2'-O-メチルのプライマーを用いるこのような手法は、対費用効果に極めて優れており、DNA試料間の一塩基の変化を検出するための信頼性の高い方法であり、また高スループットのスクリーニングに容易に応用することができる。3'末端のヌクレオチドに2'-O-メチル修飾を含むプライマーを用いる標的配列のPCR増幅の例を以下に挙げる。3'末端で正しく塩基対を形成するプライマー、および誤対合のある末端を形成するプライマーでは、増幅収量が有意に変動した。好ましい態様では、誤対合のある3'末端を形成するプライマーでは、産物量は実質的に低下した(例えば20%未満、より好ましくは10%未満)か、または増幅産物は得られなかった。
【0190】
本発明は、1つまたは複数の核酸分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物も提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または例えば3'末端のヌクレオチドまたはその近傍における、2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシの修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキルの修飾、または2'-もしくは3'-O-アリールの修飾、または好ましくは2'-O-メチルリボヌクレオチドの修飾を含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾などの修飾型ヌクレオチドを含む)。本発明のこのような反応混合物または組成物は、1つもしくは複数のヌクレオチド、1つまたは複数のDNAポリメラーゼ、1つまたは複数逆転写酵素、1つもしくは複数の緩衝剤もしくは緩衝塩、1つもしくは複数の標的もしくは鋳型の分子、および本発明のハイブリダイゼーションもしくは合成/増幅反応で作られる1つもしくは複数の産物からなる群より選択される1つもしくは複数の成分をさらに含む場合がある。
【0191】
本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子を増幅する方法も提供する:
(a)第1および第2のプライマーを提供する段階(第1のプライマーは、核酸分子の第1の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的であり、また第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的である);
(b)第1のプライマーと第1の鎖のハイブリッド、および第2のプライマーと第2の鎖のハイブリッドを、1つもしくは複数のポリメラーゼの存在下、第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で形成させる段階;
(c)第1の鎖と第3の鎖を、および第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに、上記段階を1回もしくは複数回繰返す段階(1つもしくは複数のプライマーは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む)。
【0192】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置に少なくとも1個の対象ヌクレオチドが存在することを判定する方法を提供する:
(a)標的核酸分子上の特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチド、もしくはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階(伸長産物の存在、もしくは伸長産物の産生の増加は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在することを意味する)。
【0193】
本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置に少なくとも1個のヌクレオチドが存在しないことを判定する方法も提供する:
(a)標的核酸分子の特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下でインキュベートする段階(伸長産物が存在しないこと、または伸長産物の産生の低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する)。
【0194】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置におけるヌクレオチドの有無の判定法を提供する:
(a)少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階(第1のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチド、またはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);
(b)少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下で接触させる段階(第2のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(c)第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルもしくは伸長産物の量、または伸長産物の有無を比較する段階。
【0195】
産物の量は例えば、産物をアガロースゲルに流し、臭化エチジウムで染色し、同様に処理した既知量の核酸標準と比較するといった、当業者に周知の方法で決定することができる。
【0196】
本発明は、以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子を合成または増幅する方法を提供する:
(a)1つもしくは複数の核酸の鋳型または標的と、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)混合物を、この鋳型もしくは標的の全体もしくは一部に相補的な1つもしくは複数の核酸分子が十分合成または増幅する条件下でインキュベートする段階。
【0197】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つもしくは複数の核酸分子の合成法または増幅法を提供する(核酸の合成または増幅の特異性は上昇する):
(a)1つもしくは複数の核酸鋳型もしくは標的と、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドもしくはその近傍にヌクレオチドの修飾を含む);ならびに
(b)混合物を、鋳型もしくは標的の全体もしくは一部に相補的な1つもしくは複数の核酸分子を十分合成もしくは増幅する条件下でインキュベートする段階(合成または増幅は、3'末端のヌクレオチドもしくはその近傍にヌクレオチドの修飾で修飾されていないオリゴヌクレオチドで実施された増幅もしくは合成と比較した場合に特異性を高める)。
【0198】
別の局面では、本発明は、本発明の修飾型オリゴヌクレオチドによるオリゴヌクレオチドの分解を防止する方法を提供する。本発明の方法は、PCR(例えば、「RT-PCR」、「5'-RACE」、「アンカーPCR」、および「片側PCR」)、LCR、SDA、およびNASBA、ならびに当業者に周知の他の増幅系を含むがこれらに限定されない、核酸配列の多くの増幅法に適用することができる。修飾型ヌクレオチド、具体的には3'末端のヌクレオチドまたはその近傍における2'-O-メチルリボヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの分解を防ぐ。これについては実施例26を参照されたい。さらに別の局面では、本発明は、オリゴヌクレオチドを、本発明の修飾型オリゴヌクレオチドで保護する段階を含む、オリゴヌクレオチドの分解の抑制法を提供する。
【0199】
さらに別の局面では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0200】
本発明は、1つまたは複数の核酸分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体であるオリゴヌクレオチドである)。
【0201】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、組成物の作製法を提供する:
(a)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを提供する段階;ならびに
(b)オリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの核酸分子に接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)
【0202】
本発明は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および検出または定量の対象となる1つまたは複数の標的核酸分子を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量用または検出用の組成物を提供する(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0203】
別の局面では、本発明は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと、検出または定量の対象となる1つまたは複数の分子のハイブリッドを形成させる段階、ならびに標的核酸分子の有無を検出する段階、および/または標的核酸分子を定量する段階を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量法もしくは検出法を提供する(オリゴヌクレオチドは本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0204】
本発明は、以下の段階を含む、核酸合成中における試料中の1つまたは複数の核酸分子の定量法または検出法を提供する:
(a)1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);
(b)混合物を、鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子を十分合成する条件下でインキュベートする段階(合成された核酸分子はオリゴヌクレオチドを含む);ならびに
(c)試料中に合成された核酸分子の量を測定することで、合成された核酸分子の有無を検出する、または合成された核酸分子を定量する段階。
【0205】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、核酸増幅中における、試料中の1つまたは複数の核酸分子の定量法または検出法を提供する:
(a)1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)混合物を、鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子を十分増幅する条件下でインキュベートする段階(増幅された核酸分子はオリゴヌクレオチドを含む);ならびに
(c)試料中で増幅された核酸分子の量を測定することで、核酸分子の有無を検出する、または核酸分子を定量する段階。
【0206】
本発明は、以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅法を提供する:
(a)第1および第2のプライマーを提供する段階(第1のプライマーは、核酸分子の第1の鎖の内部の配列、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的であり、また第2のプライマーは、核酸分子の第2の鎖の内部の配列、または3'末端もしくはその近傍の配列に相補的である);
(b)第1のプライマーと第1の鎖のハイブリッド、および第2のプライマーと第2の鎖のハイブリッドを、1つもしくは複数のポリメラーゼの存在下、第1の鎖の全体もしくは一部に相補的な第3の核酸分子、および第2の鎖の全体もしくは一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で形成させる段階;
(c)第1の鎖と第3の鎖を、および第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに
(d)上記段階を1回または複数回繰返す段階(1つもしくは複数のプライマーは、本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含む)。
【0207】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置における1つまたは複数の特定のヌクレオチドの存在の判定法を提供する:
(a)標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に1つもしくは複数の対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階(伸長産物の産生は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在することを意味する)。
【0208】
本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置に1つまたは複数の特定のヌクレオチドが存在しないことを判定する方法を提供する:
(a)標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に1つまたは複数の対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能か、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下インキュベートする段階(伸長産物が存在しないこと、または伸長産物の産生低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する)。
【0209】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置における1つまたは複数の特定のヌクレオチドの有無を判定する方法を提供する:
(a)少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
(b)少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下で接触させる段階;ならびに
(c)第1のヌクレオチドと第2のヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階(第1および/または第2のオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0210】
本発明は、以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置における少なくとも1つの特定の対象ヌクレオチドの有無を判定する方法を提供する:
(a)特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を提供する段階;
(b)標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階(オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、またオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(c)オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸と塩基対を形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が弱いポリメラーゼに、またオリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が強いポリメラーゼに接触させる段階;およびオリゴヌクレオチドの伸長レベルを測定する段階。
【0211】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、1つもしくは複数の核酸分子を合成法または増幅法を提供する:
(a)1つもしくは複数の核酸鋳型または標的と、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階(オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである);ならびに
(b)混合物を、鋳型もしくは標的の全体もしくは一部に相補的な1つもしくは複数の核酸分子を十分合成または増幅する条件下でインキュベートする段階。
【0212】
別の局面では、本発明は、以下の段階を含む、一塩基多型の検出法を提供する:
(a)少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
(b)少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害もしくは防止する条件下で接触させる段階;ならびに
(c)第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルもしくは伸長産物の量、または伸長産物の有無を比較する段階(第1および/または第2のオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチドであるか、または本発明の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである)。
【0213】
キット
本発明は、試料中の核酸分子またはポリメラーゼ活性の検出もしくは測定用のキットにも関する。このようなキットは、核酸の合成または増幅の反応中または反応後に対象核酸分子を検出/定量するためにデザインすることもできる。このようなキットは、核酸の存在が疾患または障害の有無と相関する、診断用キットでありうる。本発明は、本発明の伸長反応、合成反応、および/または増幅反応を実施するためのキット、および本発明の組成物を作製するキットにも関する。
【0214】
特定の態様では、本発明のキットは、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む(プライマーおよび/またはプローブを含む)。本発明のキットは、本発明の検出/定量アッセイ法、または他の方法を実施するための追加的成分を含む場合もある。このようなキットは、1つまたは複数のポリメラーゼ(例えばDNAポリメラーゼおよび逆転写酵素)、1つまたは複数のヌクレオチド、1つもしくは複数の緩衝塩(核酸の合成または増幅用の緩衝剤を含む)、1つまたは複数の対照核酸標的分子(アッセイ法を検討する際、または未知試料中の核酸分子の定量を補助する際の正の対照となる)、1つもしくは複数のクエンチャー(一本鎖結合タンパク質やブロッキングオリゴヌクレオチドなど)、および本発明の方法を実施するための指示書などからなる群より選択される1つもしくは複数の追加的成分を含む場合がある。対照核酸分子は、未知試料中の対象核酸分子の量を決定する者を補助するための標的分子の既知量の対照試料とするために、好ましくは本発明のキット内に既知濃度で提供される。したがって、既知試料に対する、標識されたオリゴヌクレオチドの活性の尺度は、未知試料中の標的核酸分子を定量するために未知試料に対する同尺度と比較することができる。本発明のキットは、好ましくは、本発明の方法を実施するためのさまざまな試薬を含む1つもしくは好ましくは複数の容器(チューブやバイアルなど)を収納するための容器(箱、カートン、または他の包装材料)を含む。試薬類は、別の容器に収容することができるほか、1つの容器内にさまざまな組み合わせで収容することができる。本発明のこのようなキットは、本発明の方法の実施手順を記載した指示書もしくはプロトコルをさらに含み、また任意選択で、本発明のオリゴヌクレオチドと結合する検出可能な標識を検出するための機器および他の装置を含む場合がある。
【0215】
別の態様では、本発明のキットは、デオキシヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの修飾、または例えば2'-もしくは3'-アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリール、もしくはアリールオキシの修飾、または2'-もしくは3'-O-アルキル、または2'-もしくは3'-O-アリール修飾、2'-O-アルキル、または好ましくは2'-O-メチルで修飾された本発明のオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない2'-もしくは3'-置換修飾などの修飾型ヌクレオチドを用いるハイブリダイゼーション反応、合成反応、増幅反応、または他の伸長反応を実施するために使用することができる。本発明の好ましいキットは、本発明の方法に使用される試薬類を含むように構成される1つまたは複数の容器(バイアルやチューブなど)を含む場合があるほか、また任意選択で試薬類の使用手順を記載した指示書またはプロトコルを含む場合がある。本発明のキットは、本発明の1つまたは複数のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド、プローブ、および/またはプライマー、ならびにヌクレオチドが修飾されたオリゴヌクレオチド、プローブ、および/またはプライマーを含むがこれらに限定されない)、耐熱性ポリメラーゼなどの1つもしくは複数のDNAポリメラーゼ、1つもしくは複数逆転写酵素、または他の任意のDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼ、1つもしくは複数の緩衝剤もしくは緩衝塩、1つまたは複数のヌクレオチド、1つもしくは複数の標的/鋳型分子(反応効率の決定、すなわち対照反応に使用される場合がある)、および本発明の方法で産生される産物もしくは中間体の解析用もしくはさらなる操作用の他の試薬類からなる群より選択される1つもしくは複数の成分を含む場合がある。このような追加的成分は、クローニングおよび/または配列決定に使用される成分、ならびに対象核酸分子の検出もしくは定量に必要とされる成分もしくは装置を含む場合がある。
【0216】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の合成に使用するキットを提供する。
【0217】
別の局面では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の増幅に使用するキットを提供する。
【0218】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、または本発明の1つもしくは複数のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドである1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸の合成産物または増幅産物の検出用または測定用のキットを提供する。
【0219】
本明細書に記載の方法および応用に対する他の適切な修飾および応用が自明であること、また発明の範囲または発明の任意の態様から解離することなくなされる場合があることは、関連分野の当業者に容易に明らかになると思われる。本発明を詳細に記載したが、本発明は、本明細書に説明目的でのみ含まれ、本発明を制限することは意図されない、以下の実施例を参照することで明瞭に理解される。
【0220】
実施例 1
オリゴヌクレオチドの調製
オリゴヌクレオチドは既知の任意の方法で調製してよい。いくつかの好ましい態様においては、市販の技術を用いて固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成してもよい。オリゴデオキシヌクレオチドはDNA合成装置-8700(ミリゲン社(Milligen)/バイオサーチ社(Biosearch))を用いて合成した。本発明のオリゴヌクレオチドには、任意の従来技術を用いて、且つ、オリゴヌクレオチド中の任意の座位(例:任意のヌクレオチド部位)に、蛍光性の成分を組み込んでもよい。例えば、自動化学合成の過程中に、蛍光標識をヌクレオシドホスホラミダイトに組み込み、且つオリゴデオキシヌクレオチドに直接組み込んでもよい。いくつかの好ましい態様において、修飾型ヌクレオチドはフルオレセイン-dTホスホラミダイト(グレンリサーチ社(Glen Research)、カタログ番号10-1056)であってもよく、フルオレセイン-dTホスホラミダイトはオリゴヌクレオチドの化学合成過程中に指定の位置に挿入されてもよい。5'-フルオレセインホスホラミダイト(FAM)(グレンリサーチ社、カタログ番号10-5901)および3'-TAMRA-CPG 500(グレンリサーチ社、カタログ番号20-5910)を用いて、化学合成過程中にオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端および3'末端をそれぞれ標識した。もしくは、反応性官能部を有するヌクレオチドを合成過程中にオリゴヌクレオチドに組み込んでもよい。合成および固体支持体からのオリゴヌクレオチドの除去が完了した後、反応性官能部分を利用して、蛍光性成分含有分子をオリゴヌクレオチドに結合させてもよい。いくつかの好ましい態様において、反応性官能部はアミノ修飾C6-dT(グレンリサーチ社、カタログ番号10-1039)であってもよく、アミノ修飾C6-dTはオリゴヌクレオチドの化学合成過程中に指定の位置に挿入し且つさらなる修飾に利用してもよい。さらなる修飾は、蛍光標識した分子の組込みを含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様において、蛍光標識した分子は、6-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(6-FAM、SE、カタログ番号C6164、モレキュラープローブ社(Molecular Probes))、フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)(モレキュラープローブ社、カタログ番号F1907)、5-(6-)-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)スクシンイミジルエステル(モレキュラープローブ社)、またはBODIPY 530/550 スクシンイミジルエステル(モレキュラープローブ社)であってもよい。
【0221】
すべての標識オリゴヌクレオチドは逆相HPLC(例:C-18カラム上で、0.2 Mトリエチル酢酸アンモニウム中に形成したアセトニトリルの濃度勾配を使用)で生成してもよい。
【0222】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置(バイオサーチ社(Biosearch)、アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)などから市販されているものなど)を使用して、当業者に既知の標準的な方法で合成してもよい。例として、スタイン(Stein)ら(Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988))の方法でホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドを合成してもよく、多孔質ガラス(controlled pore glass; CPG)ポリマー支持体を用いてメチルホスホネート型オリゴヌクレオチドを調製してもよい(Sarinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451 (1988))。オリゴヌクレオチドはまた、標準的なホスホラミダイト化学によって調製してもよく、または非特異的に核酸を切断する化合物もしくは酵素、または部位特異的な制限エンドヌクレアーゼを用いて、大きな核酸断片を切断することによって調製してもよい。本発明の標識オリゴヌクレオチドはまた、インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)(ライフテクノロジー事業部(Life Technologies Division))またはその他のオリゴヌクレオチド製造業者から購入してもよい。
【0223】
オリゴヌクレオチド合成法として好ましい方法の1つは、当業者に既知の方法で自動DNA合成装置を使用することである。所望のオリゴヌクレオチドを合成した後は、保護基を除去するため、合成および処理を行った固体支持体から当業者に既知の方法でオリゴヌクレオチドを切断する。次に、抽出およびゲル精製など当業者に既知の方法を用いてオリゴヌクレオチドを精製してもよい。アクリルアミドゲル上で分離されたオリゴヌクレオチドを調べることによって、または分光光度計で260 nmの光学濃度を測定することによって、オリゴヌクレオチドの濃度および純度を決定してもよい。
【0224】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当業者に既知の方法によって、化学合成中に標識してもよく、または合成後に標識を結合させてもよい。特定の態様において、標識成分は蛍光体である。蛍光体または消光剤として適した化学物質を表1に示す。
【0225】
【表1】
【0226】
当業者であれば、当業者に周知の分光測光技術を用いて、上述の蛍光体またはその組合せのいずれが本発明で使用可能であるかを容易に決定できる。オリゴヌクレオチドは好ましくは、Juら(Proc. Natl. Acad. Sci., USA 92:4347-4351 (1995))の論文に記載のように、修飾T塩基がアミノ修飾因子C6 dT(グレンリサーチ社)の使用により指定の位置に導入され、且つ、修飾T塩基上に第一級アミノ基が組み込まれるように合成過程中に修飾する。これらの修飾を利用して、標識オリゴヌクレオチドの指定の位置に引き続き蛍光色素を組み込んでもよい。
【0227】
また別の態様において、標識したオリゴヌクレオチドを、32P、35S、3Hなどの放射性標識を含む当業者に周知の他の任意の検出可能マーカー、またはアルカリフォスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼなど特定の化学反応の発生時に検出可能なシグナルを発する酵素マーカーでさらに標識してもよい。このような酵素マーカーは、増幅処理中または合成処理中の変性段階に耐えるよう、熱安定性を有することが好ましい。
【0228】
オリゴヌクレオチドは、ビオチンまたはジゴキシゲニンなどの分子またはハプテンに共有結合したヌクレオチドを組み込むことによって間接的に標識してもよい。ビオチンには標識したアビジン分子を結合させてもよく、ジゴキシゲニンには標識した抗ジゴキシゲニン抗体を結合させてもよい。オリゴヌクレオチドは、当業者に既知の方法によって、化学合成中に補助標識してもよく、または合成後に補助標識を結合させてもよい。
【0229】
後述の具体的な実施例で使用したプライマーの配列を表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
蛍光成分の結合対象としたヌクレオチドを太字の大文字で示した。
【0232】
実施例 2
PCR の標的および条件
当業者には、PCRで増幅可能な核酸であればいかなる核酸をも本発明の実施に使用できると理解されることと思われる。好適な核酸の例にはゲノムDNA、cDNA、およびクローニングしたPCR産物が含まれるが、これらに限定されることはない。本発明の実施は、DNA分子の使用に限定されない。例えば、当業者に周知の技術を用いて最初に第1の鎖の合成反応を行うことによって、mRNA分子を増幅反応用の鋳型として使用してもよい。本発明では、例として、対応する細胞に由来する全mRNAと第1鎖cDNA合成用Superscript(商標)システム(Gibco BRL, カタログ番号18089-011)とを用い、且つ製造業者のマニュアルに従って合成した、IL4およびβアクチンのcDNAを使用した。Gibco BRLのマニュアル(カタログ番号10156-016)に従い、IL4およびβアクチンのcDNAを増幅し、且つpTEPAプラスミドにクローニングした。
【0233】
適切なPCR条件は当業者であれば決定可能である。当業者には、目的の標的およびプライマーについてPCR反応条件を最適化するため、核酸標的の濃度、プライマー、および種々の段階の温度を調節する必要が生じうることが理解されると考えられる。このような最適化は過度の実験を必要とするものではない。本明細書に記載の具体的な実施例では、PLATINUM(登録商標)Taq反応緩衝液25μl中で、PLATINUM(登録商標)Taq 0.5 U、0.2 mM dNTPs、0.2 μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、および1.75 mM MgCl2を使用し、標的のコピー数を104〜106 としてPCRを行った。PLATINUM(登録商標)Tspも同じ条件下で使用した。熱サイクルには9600またはABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクター(Sequence Detector)(パーキンエルマー社(Perkin Elmer))を使用し、94℃で4分間変性した後、94℃で15秒間、55℃で30秒間、および72℃で40秒間を35〜40サイクル行った。2段階PCRではサイクル条件を94℃で15秒間および65℃で30秒間とした。特に断りがない限り、全実施例において、PLATINUM(登録商標)Taq(インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部)から入手可能)を使用して増幅を行った。
【0234】
実施例 3
核酸の検出
いかなる従来技術により核酸を検出することができる。いくつかの好ましい態様において、検出対象とする核酸はPCR産物であってもよく、且つ、アガロースゲル電気泳動かまたはホモジニアス(homogeneous)蛍光検出法のいずれかによって検出してもよい。この方法では、特異的に標識されたプライマーがPCR産物に取り込まれると蛍光シグナルが発せられる。この方法は、特異的な消光成分が存在していること、またはオリゴヌクレオチドを検出することを必要としない。いくつかの好ましい態様において、検出用オリゴヌクレオチドは、ヘアピン構造をつくることができ、且つ、3'末端またはその付近に結合されたフルオレセイン標識を有する。
【0235】
蛍光測定は、PCR反応緩衝液中で、ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクター、蛍光プレートリーダー(TECAN)、またはKODAK(登録商標)EDASデジタルカメラを使用して行った。励起/発光波長は、フルオレセインについては490 nm/520 nm、TAMRAについては555 nm/580 nmとした。
【0236】
実施例 4
フルオレセインで内部標識したオリゴヌクレオチドの蛍光シグナルは、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイズ時に増強する
同じ塩基配列の2つのオリゴヌクレオチドについて、T塩基上(内部標識)(オリゴA(配列番号:1))または5'末端(オリゴB(配列番号:2))を上述の方法によりフルオレセインで標識した。各オリゴヌクレオチド10ピコモルをPCR緩衝液0.05 ml中で相補的なオリゴC(配列番号:3)(50ピコモル)とハイブリダイズさせ、70℃で2分間加温し、次に25℃まで冷却した。ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクターで25〜95℃の融解曲線を決定した。
【0237】
図2A〜2Bに示すように、内部標識したオリゴA(配列番号:1)の場合は、標識していない相補オリゴヌクレオチドの存在によって蛍光シグナルが増強する。このことは、二重鎖構造の形成によってシグナル増強が生じたことを意味している。これとは対照的に、同じ配列の5'末端にフルオレセインが存在していた場合(オリゴB(配列番号:2))は、ハイブリダイズ時に蛍光シグナルが減弱した。
【0238】
実施例 5
3' 末端を TAMRA で標識したオリゴデオキシヌクレオチドでは、ハイブリダイズ時の蛍光シグナルが増強する
前記の、TAMRAで3'末端を標識したオリゴD(配列番号:4)20ピコモルを、PCR緩衝液0.5 ml中で、標識していない相補的オリゴデオキシヌクレオチド(オリゴE(配列番号:5))100ピコモルとアニーリングさせた。555 nmの励起波長を用いて分光蛍光計で蛍光発光スペクトルを検出した。
【0239】
図3に示すように、ハイブリダイズ時にシグナルの顕著な増強が観察された。このことから、本提案方法が種々の蛍光体に適用可能であることが示唆された。図中の「緩衝液」という曲線は、蛍光を緩衝溶液の波長の関数として示している。図中の「一本鎖」という曲線は、オリゴD(配列番号:4)の一本鎖単独で得られた結果を示している。非相補的なオリゴヌクレオチドをオリゴD(配列番号:4)に添加した場合は、シグナルのわずかな低減が観察された(「+非相補的」)。相補的なオリゴヌクレオチドであるオリゴE(配列番号:5)を添加した場合は、蛍光の大幅な増強が観察された(「+相補的」)。
【0240】
実施例 6
5' 末端を BODIPY 530/550 で標識したオリゴデオキシヌクレオチドでは、ハイブリダイズ時の蛍光シグナルが増強する
実施例4および5においては、フルオレセインで内部標識したオリゴヌクレオチドおよびTAMRAで3'末端を標識したオリゴヌクレオチドが、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイズ時に蛍光強度を増加させることが確認された。これとは対照的に、5'末端をフルオレセインで標識したオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ時に蛍光消光を生じる(実施例4;Cardulloら、PNAS 85: 8790-8794(1988);米国特許第5,846,729号を参照されたい。)
【0241】
しかし、オリゴヌクレオチドの5'末端部に配置されていてもハイブリダイズ時に蛍光強度を増強させうる色素がいくつか存在する。例えば、5'末端をBODIPY 530/550で標識したオリゴデオキシヌクレオチドは、ハイブリダイズ時に蛍光強度を増強させる。
【0242】
同じ配列のオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端を、フルオレセイン(オリゴF(配列番号:6))またはBODIPY 530/550(オリゴG(配列番号:7))で標識した。標識した各オリゴヌクレオチド20ピコモルを、PCR緩衝液0.5 ml中で、標識していない相補的オリゴデオキシヌクレオチド(オリゴH(配列番号:8))100ピコモルとアニーリングさせた。フルオレセインの場合は490 nm、BODIPYの場合は538 nmの励起波長を用いて、分光蛍光計で蛍光発光スペクトルを検出した。
【0243】
図4に示すように、BODIPY色素の場合はハイブリダイズ時にシグナルの顕著な増強が観察され、対照的に、フルオレセイン含有オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ時にはシグナルの低減が観察された。
【0244】
実施例4、5、および6の結果は、所与のオリゴヌクレオチドに蛍光体を結合させる位置(すなわち、配列内部、3'末端、および5'末端)の結果として、所与の蛍光体の蛍光特性(具体的には蛍光強度)が、発光スペクトルの有意なシフトを生じることなく、ハイブリダイズ時に影響されうるということを示している。
【0245】
実施例 7
フルオレセインで内部標識したプライマーを用いる、 IL4 cDNA の定量的 PCR
前述の方法を用いて、化学合成中に、IL-4プライマーの配列内にフルオレセイン-dTを直接組み込んだ。これにより得られたオリゴヌクレオチド(オリゴA(配列番号:1))を、IL4 cDNA増幅用のリバースプライマーとして使用した。種々の量の鋳型DNAの存在下で、リバースプライマー(オリゴA(配列番号:1))およびフォワードプライマー(オリゴI(配列番号:9))を用いて前述のように定量的PCRを実施した。1回の反応につき、濃度が未知である標的の試料4つと、クローニングしたIL4標的のコピー107個、106個、105個、104個、103個、102個、10個、および0個とを使用した。図5Aに示すように、DNA標的の希釈液はいずれも極めて高感度で検出可能であった。
【0246】
この実施例の結果は、標識したオリゴヌクレオチドの構造内に消光剤が存在していなくても、これを定量的PCRに問題なく使用できることを示している。
【0247】
実施例 8
合成後に FTTC で標識したプライマーを用いる、 IL4 cDNA のリアルタイム PCR
IL4用のリバースプライマー(オリゴA(配列番号:1))を合成し、前述のように合成後に標識した。前記実施例の説明と同様に、核酸標的のコピーを106個、104個、102個、および0個として増幅を行った。図6に示すように、DNA標的の希釈液はいずれも検出可能であった。
【0248】
前記実施例の実験結果は、異なるオリゴヌクレオチド標識法を使用して同じ結果が得られうることを示している。さらに、2つの合成法ではオリゴヌクレオチドと蛍光体との間のリンカーアームが異なる構造となるため、本提案方法において、異なるリンカーアームを用いて蛍光体を結合させてもよい。
【0249】
実施例 9
フルオレセインで内部標識したプライマーを用いる、βアクチン cDNA のリアルタイム PCR
ヒトβアクチンcDNA用のフォワードプライマーの配列内に、フルオレセイン-dTを化学合成中に直接組み込んだ(オリゴJ(配列番号:10))。このオリゴヌクレオチドと標識していないリバースプライマー(オリゴK(配列番号:11))とをβアクチンcDNAの増幅に使用した。HeLa細胞のmRNAの逆転写により、cDNA標的を得、且つ、クローニングされたcDNA断片(1回の反応につきコピー数107個、105個、および0個)を得た。前述のとおり定量的PCRを実施した。図7に示すように、DNA標的の希釈液はいずれも検出可能であった。
【0250】
この実験の結果は、本提案方法を用いて異なる標的を検出できることを示している。
【0251】
実施例 10
標的に非相補的な「 Tag 」配列を介して内部標識したプライマーを用いる、βアクチン cDNA のリアルタイム PCR
前述の実験はいずれも、標的の核酸と相補的なオリゴヌクレオチドの配列内に標識が組み込み可能であることを示している。しかし、PCRプライマーの5'末端に結合された非相補的なタグ配列上に標識が存在する場合も同じ結果が得られうる。この場合は、このテールドプライマー(tailed primer)がコピーされ且つ二本鎖PCR産物の中に組み込まれた後にシグナルが生成される。βアクチンPCRでこの手法を実施した。
【0252】
標的と非相補的な9ヌクレオチドのテールの構造内に直接組み込んだフルオレセイン-dTを用いて、オリゴデオキシヌクレオチド(オリゴL(配列番号:12))を合成した。このテールをβアクチンのフォワードプライマーの5'末端に付加した。オリゴL(配列番号:12)と標識していないリバースプライマー(オリゴK(配列番号:11))とを用いて、βアクチンcDNA、ならびにコピー数106個、104個、および0個のクローニングした標的を増幅した。図8に示すように、全cDNA群中のcDNAおよびクローニングした標的はいずれも検出された。
【0253】
実施例 11
修飾型オリゴヌクレオチドプライマーを用いる対立遺伝子特異的 PCR
対立遺伝子特異的PCRの原理を図9に示す。この方法は、3'末端が突然変異部位に配置される(すなわち、プライマーの最も3'末端側のヌクレオチドが、標的/鋳型の核酸中の変異ヌクレオチドに対応する)よう設計されたプライマーを用いたPCRによる、標的対立遺伝子の特異的な増幅に基づいて実施される。この塩基が、特定の対立遺伝子の対応ヌクレオチドの塩基と相補的である場合は、標的が増幅される;相補的でない場合は、PCRの進行が顕著に遅くなる。遅延が長いほど、このシステムによる対立遺伝子の識別効率が高くなる。本発明は、いくつかの好ましい態様において、対立遺伝子の識別を向上させるような特異性増強基を有する、対立遺伝子特異的PCRに有用なオリゴヌクレオチドを提供する。
【0254】
通常のPCRプライマーと、3'末端付近の塩基をフルオレセインで標識したプライマーとを用いて、対立遺伝子特異的PCRを実施した。IL4 cDNA上のC297およびG300の2箇所を検出位置として選択した。各検出位置について、同じフォワードプライマー(オリゴ1(配列番号:9))と、異なるリバースプライマー(標的に相補的な野生型(WT)または3'末端にミスマッチを有する突然変異型(MUT))とを用いて、2セットのPCRを実施した。使用したプライマーの配列を表2に示す。これらの対立遺伝子特異的なプライマーはそれぞれ、3'末端付近のT塩基に化学修飾を伴って、および伴わずに合成した。使用したプライマーは、塩基297位のC対立遺伝子に相補的なプライマー「297 WT」(オリゴ2(配列番号:14))、3'末端にC-T変異を有する同じプライマー「297 MUT」(オリゴ3(配列番号:15))、塩基300位のC対立遺伝子に相補的なプライマー「300 WT」(オリゴ4(配列番号:16))、および3'末端にG-T変異を有する同じプライマー「300 MUT」(オリゴ5(配列番号:17))である。オリゴヌクレオチド6、7、8、9(それぞれ、配列番号:1、19、20、21)は、指定のT塩基にフルオレセインを結合させたオリゴヌクレオチド2、3、4、5(それぞれ、配列番号:14、15、16、17)と対応する。
【0255】
前述のように、PLATINUM(登録商標)Taqを使用して3段階PCRを40サイクル実施した。結果を図10に示す。3'末端における297位または300位のリバースプライマーは、標的と相補的である(WT)か、または3'変異を有する(MUT)プライマーとした。レーン1〜4は、特異性増強基としてフルオレセインで修飾したプライマーを用いて得た結果を示す。レーン5〜8は非修飾型プライマーを用いて得た結果である。レーン1〜5はプライマー297 WT、レーン2〜6はプライマー297 MUT、レーン3〜7はプライマー300 WT、レーン4〜8はプライマー300 MUTをそれぞれ用いて得た結果を示す。レーン2と6との比較、およびレーン4と8との比較から、修飾が存在することによって、40サイクルでほぼ完全な識別が可能になることが示唆される。本発明の実施がフルオレセインの使用に限定されることはなく、特異性増強基としてTAMRAを使用した場合も同様の結果が得られた。
【0256】
実施例 12
ヘアピンオリゴヌクレオチドプライマーを用いる対立遺伝子特異的 PCR
突然変異の識別は、対立遺伝子特異的なプライマーの二次構造を介して向上できることが発見されている。この特徴を、RDS遺伝子に特異的なプライマーを用いて例示する。RDS遺伝子用のフォワードプライマーは、C/T多型部位である塩基558位に3'末端が位置するようなプライマーとした。DNA標的はC対立遺伝子を含むものとした。リバースプライマーは両対立遺伝子について同じものを使用し、且つ、リアルタイムにおける増幅のホモジニアス検出(homogeneous detection)を可能にするような標識を含有するプライマーとした(オリゴ10(配列番号:22))。対立遺伝子特異的なフォワードプライマーの構造は、従来の線状構造(オリゴ11、12(それぞれ、配列番号:23、24))またはヘアピン構造(オリゴ13、14(それぞれ、配列番号:25、26))のいずれかとした。ヘアピンプライマーは、標的特異的な配列とプライマーの3'末端断片に相補的な短いテールとで構成した。前述のように、PLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを使用してPRIZM(登録商標)7700で3段階PCRを実施した。図11の結果は、プライマーの平滑末端ヘアピン構造により突然変異の識別能が顕著に向上することを示している。本発明のプライマーを用いて、PLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼによる対立遺伝子特異的PCRによって、同じ蛍光リバースプライマー(オリゴ10(配列番号:22))と、異なる対立遺伝子特異的フォワードプライマーとを使用してヒトRDS遺伝子のC対立遺伝子とT対立遺伝子とを識別した。使用したプライマーは、C対立遺伝子に特異的な線状プライマー「L-C」(オリゴ11(配列番号:23))、T対立遺伝子に特異的な線状プライマー「L-T」(オリゴ12(配列番号:24))、C対立遺伝子に特異的なヘアピンプライマー「H-C」(オリゴ13(配列番号:25))、およびT対立遺伝子に特異的なヘアピンプライマー「H-T」(オリゴ14(配列番号:26))である。反応のリアルタイム蛍光測定の比較結果をサイクル数の関数としてプロットした。線状のTミスマッチプライマーからは、ヘアピン型のTミスマッチプライマーよりはるかに早く、検出可能なシグナルが発せられた。このことは、プライマーの3'末端をヘアピン内に組み込むことにより対立遺伝子の識別能が向上したことを示している。
【0257】
ヘアピンプライマーを使用した対立遺伝子特異的PCRの別の実施例を図12に示す。この実施例では、2つのゲノムDNA試料を2段階PCRで試験した。試料の1つはRDS遺伝子の558C対立遺伝子を有し、もう1つは558T対立遺伝子を有することが既知であった。フォワードプライマーは全てヘアピンプライマーとし、検出には蛍光リバースプライマーを使用した。曲線1はC特異的プライマーを用いてC標的DNAで得られたもの;曲線2はC特異的プライマーを用いてT標的DNAで得られたもの;曲線3はC特異的プライマーを用いて標的DNAなしで得られたもの(陰性対照);曲線4はT特異的プライマーを用いてT標的DNAで得られたもの;曲線5はT特異的プライマーを用いてC標的DNAで得られたもの;曲線6はT特異的プライマーを用いて標的DNAなしで得られたもの(陰性対照)である。
【0258】
この結果から、ヘアピンプライマーを使用した場合、C特異的プライマーではC対立遺伝子のみが、T特異的プライマーではT対立遺伝子のみがシグナル陽性となることが示された。プライマーが3'末端にミスマッチを有する場合は、蛍光の増強が検出されなかった。標的の不在下ではシグナルが発せられなかった。図13A〜Bに示すように、リアルタイムの場合のみならずエンドポイントにおいても、同様の高い特異性で対立遺伝子が検出可能であった。検出には蛍光リバースプライマーを使用した。1、3、5はC特異的プライマー、2、4、6はT特異的プライマー、1および2はC対立遺伝子標的DNA、3および4はT対立遺伝子標的DNA、5および6はDNAなし(陰性対照)である。図13Aは蛍光測定結果の棒グラフであり、図13Bは増幅反応後の反応混合物の写真である。検出システムのシグナル/雑音比が高いためエンドポイントでの検出が可能であり、蛍光プレートリーダーまたはUVトランスイルミネータおよびデジタルカメラを使用することにより検出を行うことができる。
【0259】
本発明のプライマーの利用による別の驚くべき結果として、PCR反応からのプライマー二量体の排除がある。図14に示すように、PCR反応にヘアピンオリゴヌクレオチドを使用することにより、プライマー二量体の形成が阻害される。PCR標的としてIL4 cDNAを使用した。オリゴ1(配列番号:9)をフォワードプライマーとして、オリゴ2(配列番号:14)を線状リバースプライマーとして、オリゴ15(配列番号:27)をヘアピンリバースプライマーとして使用した。PLATINUM(登録商標)Taqを使用してPCRを50サイクル行った。レーン1、5は標的のコピーを106個、レーン2、6は標的のコピーを104個、レーン3、7は標的のコピーを102個含んだものであり、レーン4、8は標的を含まないものである。レーン4と8との比較から、線状リバースプライマーではプライマー二量体が形成されたがヘアピンリバースプライマーでは形成されなかったことが示される。
【0260】
実施例 13
対立遺伝子特異的 PCR におけるミスマッチ識別ポリメラーゼの使用
対立遺伝子特異的PCRによって対立遺伝子を識別する能力は、オリゴヌクレオチドの最も3'末端側のヌクレオチドが標的核酸配列と塩基対を形成していないときオリゴヌクレオチドを実質的に伸長できないよう改変されたDNAポリメラーゼを用いることによって向上させてもよい。このような改変DNAポリメラーゼの調製法は国際公開広報第99/10366号および同第98/35060号に開示されている。これらの公報には、熱安定性ポリメラーゼ、特にテルモトーガ(Thermatoga spp)から単離された熱安定性DNAポリメラーゼのクローニングおよび突然変異生成が開示されている。本発明のいくつかの好ましい態様においては、テルモトーガ・ネオポリタナ(Thermotoga neopolitana) (Tne) のDNAポリメラーゼ由来の突然変異DNAポリメラーゼを用いて対立遺伝子特異的PCRが実施される。好適な突然変異には、1つ以上のアミノ酸欠失、フレームシフト突然変異、酵素中の1つ以上の部位で1つ以上のアミノ酸置換を起こす点突然変異、挿入突然変異、およびこれらの組合せが含まれる。本発明の好ましい態様において、突然変異は、アミノ酸284番目のメチオニンから始まる断片を残すような、野生型酵素の最初の283個のアミノ酸の欠失(Δ283)、323番目のアミノ酸をアスパラギン酸からアラニンに変更させるような点突然変異(D323A)、および722番目のアミノ酸をアルギニンからリシンに変更させるような点突然変異(R722K)を含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様において、突然変異Tne DNAポリメラーゼは少なくとも3つの突然変異(すなわち、Δ283、D323A、およびR722K)を有する。
【0261】
インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部)が所有する酵素、PLATINUM(登録商標)Tsp DNAポリメラーゼは、温度による賦活化が可能であり、したがってPCRのホットスタートを可能にする(米国特許第5,338,671号および同第5,587,287号)。本明細書では、この酵素の新しい特性、すなわち、プライマーの塩基対3'末端に対する特異性の高さについて開示する。PLATINUM(登録商標)TspまたはPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを用い、IL4 cDNAを標的として使用してPCRを45サイクル行った。IL4 cDNAの、C297およびG300の2箇所を検出部位として選択した。これら各位置について、同じフォワードプライマー(オリゴ1(配列番号:9))と、異なるリバースプライマーとを使用して2つのPCR反応を行った。プライマーの配列を表2に示す(オリゴ1〜5(配列番号:9, 14〜17))。オリゴヌクレオチドは、3'末端のヌクレオチドが標的に相補的である場合を野生型(WT)、3'末端にミスマッチを有する場合を突然変異型(MUT)とした。使用したオリゴヌクレオチドは、297位でC対立遺伝子と相補的な297 WTプライマー(オリゴ2(配列番号:14)、レーン1)、3'末端のC-T変異以外は297 WTプライマーと同じ配列を有する297 MUTプライマー(オリゴ3(配列番号:15)、レーン3)、300位でC対立遺伝子と相補的な300 WTプライマー(オリゴ4(配列番号:16)、レーン2)、および3'末端のG-T変異以外は300 WTプライマーと同じ配列を有する300 MUTプライマー(オリゴ5(配列番号:17)、レーン4)である。図15に示すように、PLATINUM(登録商標)Tsp DNAポリメラーゼを使用した場合の結果とPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを使用した場合の結果とを比較すると、PLATINUM(登録商標)TspのほうがPLATINUM(登録商標)Taqよりも識別特性が優れている。
【0262】
実施例 14
PCR の特異性を高めるためのヘアピンプライマーの使用
この実験では、Pfx緩衝液(インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部))中でPLATINUM(登録商標)Pfx温度安定性ポリメラーゼを使用してヒトゲノムDNAからヒトβグロビンの3.6 kb断片を増幅した。2つの異なるプライマーセットを使用した。各プライマーセットは、線状プライマーのペア1つと、同じ遺伝子特異的なプライマー配列を有するヘアピンプライマーのペア1つという、2つのプライマーペアで構成した。オリゴヌクレオチドの各ペアのヘアピン型のものは、前述のように、オリゴヌクレオチドの3'末端に相補的な塩基をプライマー配列の5'末端に追加することによって作製した。典型的に、5'末端に追加する塩基の数は、オリゴヌクレオチドが、アニーリング温度より低い温度でヘアピンを形成し、且つ、アニーリング温度またはその付近では線状となるように選択した。当業者であれば、プライマーが線状になる温度を制御するため、プライマーの5'末端に追加するヌクレオチドの数を容易に決定できる。
【0263】
βグロビン遺伝子の増幅には2セットのプライマーを使用した。セットA−オリゴ16(配列番号:28)および17(配列番号:29)(線状)、または18(配列番号:30)および19(配列番号:31)(ヘアピン型)、ならびに、セットB−オリゴ20(配列番号:32)および21(配列番号:33)(線状)、または22(配列番号:34)および23(配列番号:35)(ヘアピン型)である。PCRは、種々の量の鋳型DNAを使用して、次のとおり実施した:94℃2分間、続いて、94℃で15秒間、60℃で30秒間、68℃で4分間を35サイクル。結果を図16A〜Bに示す。「M」と表示したレーンは、分子量マーカーを含むレーンである。レーン1および2は鋳型DNAを50 ng使用して得られた結果、レーン3および4は鋳型DNAを20 ng使用して得られた結果、レーン5および6はDNAを使用せずに行った対照である。線状のプライマーセットでは種々のミスプライミング産物およびプライマー二量体が産生されたが、対応するヘアピンプライマーを用いた増幅では、不適当な産物をほとんど生じることなく、予測されたサイズの増幅産物が産生されたことが明らかである。
【0264】
別のヒト遺伝子、壊死因子2(Necrosis Factor 2、NF2)の増殖においても同様の結果が得られた。PCR SuperMix(インビトロジェン社(ライフテクノロジー事業部))中でPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼを使用して1.3 kbおよび1.6 kb断片を増幅した。1.3 kb断片の増幅には、プライマーとして、オリゴ24(配列番号:36)および25(配列番号:37)(線状)、または26(配列番号:38)および27(配列番号:39)(ヘアピン型)を使用した。1.6 kb断片の増幅には、プライマーとして、オリゴ28(配列番号:40)および29(配列番号:41)(線状)、または30(配列番号:42)および31(配列番号:43)(ヘアピン型)を使用した。ヒトゲノムDNA 50 ngに対して、次のようにPCRを行った:94℃2分間、続いて、94℃で30秒間、62℃で30秒間、68℃で4分間を35サイクル。結果を図17A〜Bに示す。レーン「M」は、分子量マーカーを含むレーンである。「+」は鋳型DNAが存在することを示し、「-」はDNAを含まない対照を示す。レーン1は、鋳型DNAの存在下で1.3 kb断片用の線状プライマーを使用した結果を示す。レーン2はレーン1に対するDNA不使用対照である。レーン3は、1.3 kb断片用のヘアピンプライマーを使用した結果を示す。レーン4はレーン3に対するDNA不使用対照である。レーン5は、1.6 kb断片用の線状プライマーを使用した結果を示す。レーン6はレーン5に対するDNA不使用対照である。レーン7は、1.6 kb断片用のヘアピンプライマーを使用した結果を示す。レーン8はレーン7に対するDNA不使用対照である。いずれの場合も、同じ遺伝子特異的配列の線状プライマーと比較して、ヘアピンプライマーのほうが、適切なサイズの増幅産物をより多く且つ純粋に生成した。
【0265】
実施例 15
ヘアピンプライマーの 5' 末端を 2'-O メチル , 5'-5' ホスホジエステル結合で修飾すると、プライマー二量体の発生率が低下しうる
ヒトツベリン(tuberin)cDNAを、MgCl2の濃度を3 mMとし、3%グリセロールを添加した以外は実施例2と同様の方法でPCRにより増幅した。検出にはSYBR Green(モレキュラープローブ社、30,000倍に希釈)を使用した。各プライマーセットにつき、標的を添加した反応2つと標的を使用しない対照反応(NTC)6つとからなる8つの反応を行った。プライマー二量体形成の頻度およびプライマー形成が生じたサイクル数をプライマー二量体人工産物の尺度として使用した。
【0266】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーとしてオリゴヌクレオチド32および33を使用した。
【0267】
【0268】
図18A〜Dの結果は、修飾が標的増幅にネガティブな影響を与えないことを示している(標的+)。しかし、プライマー二量体の形成は大幅に低減された。プライマーの5'末端付近に修飾を行った場合も同様の結果が得られる可能性がある。図18A〜Dにおいて:
18A − 5'末端を修飾していないフォワードプライマーおよびリバースプライマー;
18B − 両プライマーの5'末端のヌクレオチドを2'-O-メチル類似物で置換;
18C − 両プライマーの5'末端のヌクレオチドに5'-5'ホスホジエステル結合を使用;
18D − フォワードプライマーを2'-O-メチルで、リバースプライマーを5'-5'結合で修飾。
【0269】
実施例 16
ヘアピンプライマーの 5' 末端を C3 アミノ、 C6 アミノ、またはビオチンで修飾すると、プライマー二量体の発生率が低下しうる
ヒトツベリンcDNAを、実施例2と同様にPCRにより増幅した。検出には、フルオレセイン標識したフォワードプライマーを使用した。各プライマーセットにつき、標的を添加した反応2つと標的を使用しない対照反応(NTC)6つとからなる8つの反応を行った。プライマー二量体形成の頻度およびプライマー形成が生じたサイクル数をプライマー二量体人工産物の尺度として使用した。
【0270】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーとしてオリゴヌクレオチド34および33を使用した。
【0271】
【0272】
図19A〜Dの結果は、標的不使用の対照においてプライマー二量体の形成が大幅に低減されたことを示している。プライマーの5'末端付近に修飾を行った場合も同様の結果が得られる可能性がある。図19A〜Dにおいて:
19A − 5'末端を修飾していないフォワードプライマーおよびリバースプライマー;
19B − 両プライマーの5'末端をC3アミノ修飾剤(グレンリサーチ社)で修飾;
19C − 両プライマーの5'末端をC6アミノ修飾剤(グレンリサーチ社)で修飾;
19D − 両プライマーの5'末端をビオチン(グレンリサーチ社)で修飾。
【0273】
実施例 17
プライマー二量体形成に対する 3' 末端伸長ヌクレオチドの影響
前述のとおり、ヘアピンプライマーを使用してプライマー二量体形成を最小限に抑える別の方法は、互いに相補的でない1つまたは2つまたはそれ以上のヌクレオチドで3'末端を伸長したオリゴヌクレオチドをつくることである。この実施例では、特定の条件下で顕著なプライマー二量体人工産物を示した2つの標的、ヒトツベリンcDNAおよびヒトRDS遺伝子を選択した。MgCl2の濃度を3 mMとし、3%グリセロールを添加した以外は実施例2と同様の方法でPCRを行った。検出にはSYBR Green(モレキュラープローブ社、30,000倍に希釈)を使用した。各プライマーセットにつき、標的を添加した反応2つと標的を使用しない対照反応(NTC)6つとからなる8つの反応を行った。プライマー二量体形成の頻度およびプライマー形成が生じたサイクル数をプライマー二量体人工産物の尺度として使用した。
【0274】
【0275】
図20A〜Dの結果は、3'末端を伸長したヘアピンプライマーを使用した場合に、プライマー二量体人工産物が顕著に低減されることを示している。図20A〜Dにおいて:
20A − 平滑末端を有するヘアピン型のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてツベリンcDNAを増幅(オリゴ32および33);
20B − 3'末端を伸長したフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてツベリンcDNAを増幅(オリゴ35および36);
20C − 平滑末端を有するヘアピン型のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてヒトRDS遺伝子を増幅(オリゴ37および38);
20D − 3'末端ヌクレオチドを1つ伸長したフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてヒトRDS遺伝子を増幅(オリゴ39および40)。
【0276】
実施例 18
プライマー二量体は、プライマーの 1 つに蛍光体を、別の 1 つに消光剤を配置することによって非蛍光性にすることができる
この実施例で説明する方法においては、プライマー二量体の形成を防止するのではなく、これらを不可視化する。この手法を、ヒト遺伝子WIAE-1328の対立遺伝子特異的PCRで実施した。PCRの条件は実施例2と同様である。リバースプライマーには、フルオレセインで標識した同じオリゴ43を使用した。A対立遺伝子およびB対立遺伝子用のフォワードプライマーは、消光剤としてDABCYLで標識した(オリゴ41および42)。図21が示しているとおり、標的でない対照の蛍光シグナルはプライマー二量体の形成に伴って低下した。同時に、標的の存在下ではシグナルの正常な増強が観察された。
【0277】
【0278】
実施例 19
IL4 cDNA およびβアクチンのマルチプレックス PCR
この実施例は、本発明の検出法の多重処理能を示すものである。IL4 cDNA用には、フォワードプライマー(オリゴ46)およびフルオレセイン標識したリバースプライマーの2つのプライマー(オリゴ47)を使用した。βアクチンの増幅用としては、フォワードプライマーをJOEで標識し(オリゴ44)、リバースプライマーは標識せずに(オリゴ45)使用した。これら4つのプライマーすべてを、実施例2で説明した条件下で同一チューブ内で増幅した。βアクチン標的の濃度は一定に維持され(1つの反応につきコピー数106個)た。IL4標的の濃度はコピー数2個〜3 x 105個とばらつきがあった。2つの蛍光体の蛍光をリアルタイムで検出した。図22A〜Bの結果は、検出の感度が高く且つダイナミックレンジが大きいことを示している。
【0279】
【0280】
実施例 20
対立遺伝子特異的 PCR と組み合わせた、ユニバーサル検出プライマー形式
蛍光修飾したオリゴヌクレオチドを、遺伝子特異的なあらゆるヌクレオチド標的配列を検出できるような形式で使用してもよい。より具体的には、前述の各実施例で説明した設計の蛍光性検出用プライマーを、3つのプライマーを必要とする「ユニバーサル」プライマー形式で、PCR産物の検出に使用した。この方法においては、PCRに使用する遺伝子特異的標的プライマーの5'末端に配列テール(テールX)を追加する必要がある。テールXは標的に非相補的な配列である。テールを付けた配列は、蛍光検出プライマーの3'末端配列と同一である。第2のプライマーは、テールXと少なくとも部分的に同一であり、且つ、蛍光部分を有する、ユニバーサルプライマーである(線状またはヘアピン型)。第3のプライマーは通常のPCRプライマーである。第1のプライマーがフォワードプライマーである場合は第3のプライマーがリバースプライマーであり、第1のプライマーがリバースプライマーである場合は第3のプライマーはフォワードプライマーである。したがって、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの両方、ならびにユニバーサルプライマーが使用されうる。フォワードプライマーおよびリバースプライマーがXテールを有していてもよく、または一方がXテールを有し且つ他方がYテールを有していてもよい。ユニバーサルプライマーがXテール配列を含んでいてもよく、または1つがXテール配列を含みもう1つがYテール配列を含む2つのユニバーサルプライマーを使用してもよい。PCRのサイクル初期に生成された増幅産物が、サイクル後期においてユニバーサル検出プライマーの鋳型として機能する。図33を参照されたい。
【0281】
本実施例では遺伝子特異的配列を対立遺伝子特異的PCR用に設計したが、遺伝子特異的プライマーに適切な配列の5'末端テールを追加することにより、任意の標的に対してユニバーサル検出形式を使用してもよい。PCRは、1.5 mM MgCl2、0.2 mMの各dNTP、PLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ 2.5 U、0.2 μMの標識したユニバーサル検出用フォワードプライマー、0.02 μMの対立遺伝子特異的なテールを付加したフォワードプライマー、および0.2 μMのリバースプライマーを含む、反応緩衝液(20 mM Tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl)50 μl中で行った。熱サイクルおよび蛍光検出は、ABI 7700シークエンスディテクションシステム(Sequence Detection System)を用いて、25℃を2分間保持、94℃を2分間保持、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル、および25℃を2分間保持するという設定で実施した。
【0282】
図23で使用したプライマー配列は、ユニバーサル検出プライマー用のオリゴ48、対立遺伝子A特異的なフォワードプライマー用のオリゴ49、およびリバースプライマー用のオリゴ50である。対立遺伝子B特異的なフォワードプライマー(オリゴ51)を使用した場合、ユニバーサル形式の検出と対立遺伝子識別とは等価であった。同じ実験で他のユニバーサル検出配列(オリゴ52〜58)を使用した場合も、同様の結果が得られた。これらおよび他のユニバーサルプライマー配列をFAM以外の色素(JOE、TAMRA、ALEXA 450、ALEXA 594、HEX、およびTET)で標識した場合も、同様の結果が得られた。
【0283】
【0284】
実施例 21
標識したオリゴヌクレオチドの配列決定
標的の各鎖において標識オリゴヌクレオチドの配列を発見するには、標識したプライマーを以下の段階により発見する:
段階1 − Tを発見する。
段階2 − Tの3'側がAG、TG、AC、TC、C、またはGであること。
段階3 − Tの5'側は、3つのヌクレオチドのうち少なくとも1つがGであること(NGG/GNG/GGN、NNG、NGN、GNN、またはGGG)(これらの配列は好ましい順に記載してある)。
段階4 − 段階2で発見した3'末端を有するプライマーを、64〜70℃、好ましくは66〜68℃で作製する。Rozen, S.およびH.J. Skaletsky(1996, 1997, 1998)「Primer 3」を参照されたい(コードはhttp:/www-genome.wi.mit.edu/genome_software/other/primer3.htmlまたはhttp:/www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3 www.cgiより入手可能)。
段階5 − デルタG(すなわち、得られるヘアピン構造の安定性を決定するエネルギーの測定値)を確認しながら、3'末端に相補的なヌクレオチドを5'末端に追加することによって、ヘアピンをつくるためのテールをプライマーに追加する。
デルタGは「Primer 3」を用いて算出する。デルタGの計算結果は2.5〜5.5であること。デルタGが小さいほどヘアピン構造の安定度が高い。
【0285】
段階1〜5の結果として、両鎖用の標識プライマーが得られる。
【0286】
さらに、上述の各段階を、「Primer 3」(一般公開されている)などの既存のプライマー設計用プログラムと組み合わせても良い。標識したプライマーと、標識していないその相対物とをDNA標的の各鎖上に発見する必要がある。次に、以下の各段階を行う:
段階1 − Tを発見する。
段階2 − Tの3'側がAG、TG、AC、TC、C、またはGであること。
段階3 − Tの5'側は、3つのヌクレオチドのうち少なくとも1つがGであること(NGG/GNG/GGN、NNG、NGN、GNN、またはGGG)。
段階4 − 段階2で発見した3'末端を有するプライマーを、64〜70℃、好ましくは66〜68℃で作製する。Rozen, S.およびH.J. Skaletsky(1996, 1997, 1998)「Primer 3」を参照されたい(コードはhttp:/www-genome.wi.mit.edu/genome_software/other/primer3.htmlまたはhttp:/www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3 www.cgiより入手可能)。
段階5 − 最良のプライマーを選択するため、標識プライマーに「Primer 3」の関数を適用する。選択した各標識プライマーに対する相対プライマー(右側標識に対しては左側、左側標識に対しては右側)を発見する。
段階6 − 得られるヘアピン構造のデルタGを確認しながら、3'末端に相補的なヌクレオチドを5'末端に追加することによって、ヘアピンをつくるためのテールをプライマーに追加する。
デルタGは「Primer 3」を用いて算出する。デルタGの計算結果は2.5〜5.5であること。
【0287】
実施例 22
PCR プライマーの 3' 末端のヌクレオチド残基を 2'-O- メチルで修飾することにより、対立遺伝子特異的 PCR の特異性が上昇しうる
対立遺伝子特異的PCRの原理を図9に示し、且つ実施例11で説明した。この実験では、2セットのPCRプライマー(セットAおよびB)を用いて線状化したpUC19プラスミド20 ngを増幅した。PCRを実施例2と同様に実施した。検出には、実施例15に記載のSYBR Greenを使用した。
【0288】
セットAは通常の線状オリゴヌクレオチドで構成した。フォワードプライマーとして、3'末端がA、T、C、およびGである4種類のオリゴヌクレオチドを使用した。末端がCのオリゴヌクレオチドのみが標的と相補的であり(G/C)、他は3'末端にミスマッチを有する(G/T; G/A; G/G)。リバースプライマーにはオリゴ63を使用した。
【0289】
セットBにも同じ配列のオリゴヌクレオチドを使用したが、全てのフォワードプライマーの3'末端ヌクレオチドを2'-O-メチルで修飾した。リバースプライマーにはオリゴ63を使用した。
【0290】
【0291】
リアルタイムPCRの結果を図24A〜Bに示す。この結果は、修飾が存在することによりウィンドウ識別(マッチするプライマーによる増幅産物とミスマッチのプライマーによる増幅産物が出現するサイクル数の差)が向上することを示している。
【0292】
さらに、下記にオリゴ68、69、70、および71として示した配列の異なる4つのフォワードプライマーを使用して、2.7 Kbの標的DNA配列(pUC19)の増幅実験を行った。各フォワードプライマーは、3'末端ヌクレオチドにdNTPまたは2'-O-メチルリボヌクレオチドを有する類似のプライマーを有する。図25Aは、3'末端に標準的なヌクレオチド(デオキシヌクレオチド)を有するフォワードプライマーを用いた増幅結果を示す;図25Bは、3'末端に2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を有するフォワードプライマーを用いた増幅結果を示す。リバースプライマーは各増幅アッセイ法で同じものを使用した(オリゴ72を参照されたい)。C、T(U)、G、およびAと記したレーンは各フォワードプライマーの3'末端ヌクレオチドの配列を示しており、Cでは標的配列と正しいワトソン/クリック塩基対が形成されている。標的配列をTaq DNAポリメラーゼで増幅し、増幅サイクルを40回繰り返した。各増幅反応は二連に実施した。図26A〜Bに、30回繰り返した増幅サイクルを示す。
【0293】
【0294】
図25A〜Bおよび図26A〜Bの結果は、非修飾のプライマーを使用した場合と比較して、2'-O-メチル修飾したプライマーでは増幅産物の特異性が上昇することを示している。
【0295】
実施例 23
3' 末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる 3' 末端のヌクレオチド残基の 2'-O- メチル修飾は、 Taq ポリメラーゼにより、効率が有意に低下した状態で伸長される
この実験では、3'末端ヌクレオチドにデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、および2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含むプライマーをTaq DNAポリメラーゼにより60℃で伸長させたときの相対的な伸長度を分析した。その結果を図27A〜Cに示す。各種類の3'末端ヌクレオチド修飾(標準的な非修飾型プライマーも含む)について、完全に相補的なプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および3'末端で一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。これらのアッセイ法に使用したプライマー配列はオリゴ73およびオリゴ74である。オリゴ73の鋳型配列は
である。
オリゴ74の鋳型配列は
である。
【0296】
末端がリボヌクレオチドまたは2'-O-メチルであるオリゴヌクレオチドの場合は、3'末端ヌクレオチドにチミンではなくウラシルを使用した(オリゴ74を参照されたい)。
【0297】
【0298】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、60℃のDNA基質の溶液9 μLに市販(インビトロジェン社、ライフテクノロジー事業部;メリーランド州Rockville))のTaq(5単位/μlを1 μL)を添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、Taqポリメラーゼ添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0299】
このアッセイ結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチドまたは2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーはTaqポリメラーゼによる伸長が可能である(図27BおよびC)。ただし、2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾した3'末端の伸長効率は、3'末端にdNTPまたはrNTPを含むプライマーと比較して低い(図27AとBとのデータ比較);(ii)各3'末端リボース修飾について、プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、完全にアニーリングしたDNA基質と比較して、Taqによる伸長効率が低い(図27A〜Cのパネルaとbとのデータ比較);および(iii)3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーは、Taqによる伸長の効率が有意に低下する(図27C、パネルb)。
【0300】
実施例 24
2'-O- メチル修飾したプライマーの 3' 末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる DNA 基質は、 Taq ポリメラーゼによる伸長レベルが無視できる程度に低い
図28A〜Bは、3'末端ヌクレオチドに2'-O-メチルリボース修飾を含むプライマーの、周囲温度(レーンa)、55℃(レーンb)、および72℃(レーンc)における相対的な伸長効率を示している。図28Aは完全に相補的なプライマー/鋳型基質を、図28Bはプライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるプライマー/鋳型基質を示している。
【0301】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、周囲温度、55℃、および72℃にしたDNA基質の溶液9 μLにTaq(5単位/μlを1 μL)を添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各パネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、Taq添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0302】
この結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端に2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーは、周囲温度において、Taqポリメラーゼによる伸長効率が非常に低くなる;および(ii)プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は(図28B)、本アッセイ法の各温度において、10分間の反応後、Taqによる伸長レベルが無視できる程度に低い。
【0303】
実施例 25
3' 末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる 2'-O- メチルリボヌクレオチド修飾プライマーは、類似のプライマー / 鋳型基質に対して伸長効率が有意に低かった
図29は、デオキシヌクレオチド修飾(パネルI)、リボヌクレオチド修飾(パネルII)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾(パネルIII)を3'末端ヌクレオチドに含むプライマーを、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントにより37℃で伸長したときの相対的な伸長効率を示している。各種類の3'末端修飾について、完全な塩基対となるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0304】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にクレノウフラグメントを添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。各反応条件について、DNA基質およびクレノウフラグメントの濃度をそれぞれ約12 nMおよび75 nMに維持した。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、クレノウフラグメント添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0305】
図29に示した結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチド(rNTP)または2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーはクレノウフラグメントにより容易に伸長可能である(パネルIIおよびIII)。ただし、2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾したオリゴヌクレオチドの伸長効率は、3'末端にdNMPまたはrNMPを含むプライマーと比較して低かった(パネルIII);(ii)本実験の条件下において、末端がデオキシヌクレオチドまたはリボヌクレオチドであるプライマーの場合、プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、完全に相補的なDNA基質と同程度の効率でクレノウフラグメントにより伸長される(パネルIおよびIIのサブパネルaとbとの比較)。この結果は、プライマーの3'末端におけるミスマッチが3'→5'エクソヌクレアーゼの作用により排除されたことを示唆している;ならびに(iii)本実験の条件下において、3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾プライマーは、類似のプライマー/鋳型基質に対して伸長効率が有意に低下していた(パネルIIIのサブパネルaとbとの比較)。
【0306】
上述と同じ実験を、突然変異クレノウフラグメント(エクソヌクレアーゼ欠失変異誘導体;Asp424Ala)を用いて行った。図30は、デオキシヌクレオチド修飾(パネルI)、リボヌクレオチド修飾(パネルII)、または2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾(パネルIII)を3'末端ヌクレオチドに有するプライマーを、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(エクソヌクレアーゼ欠失変異誘導体;Asp424Ala)により37℃で伸長したときの相対的な伸長効率を示している。各種類の3'末端について、完全な塩基対となるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0307】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。dNTPおよびMgCl2の存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にクレノウフラグメントの変異誘導体(3'→5'エクソヌクレアーゼ欠失)を添加することにより、重合反応を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、4つの各dNTPは200 μM、MgCl2は1.5 mMとした。各反応条件について、DNA基質およびクレノウフラグメントの濃度をそれぞれ約12 nMおよび75 nMに維持した。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を、FLは完全に伸長した反応産物(60 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、クレノウフラグメント添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0308】
この実験の結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチドまたは2'-O-メチルリボヌクレオチドを含むプライマーはクレノウフラグメントにより容易に伸長可能である(パネルIIおよびIII)。ただし、2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾したオリゴヌクレオチドの伸長効率は、3'末端にdNMPまたはrNMPを含むプライマーと比較して低かった(パネルIII);(ii)本実験の条件下において、DNA基質の各セットについて、プライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は完全に相補的なDNA基質と比較してクレノウフラグメントによる伸長効率が低い(各パネルのサブパネルaとbとのデータ比較);ならびに(iii)本実験の条件下において、3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じる2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾プライマーは、完全に相補的なプライマー/鋳型基質に対して、クレノウフラグメント(3'→5'エクソヌクレアーゼ欠失タンパク質)による伸長効率が低下していた(パネルIIIのサブパネルaとbとのデータ比較)。
【0309】
実施例 26
2'-O- メチル修飾は、オリゴヌクレオチドを分解から有意に保護する
37℃で大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントにより触媒される、3'→5'エクソヌクレアーゼによる分解の相対的速度を図31に示す。プライマー/鋳型基質は、プライマー鎖の3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、または2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)を含む。各種類の3'末端ヌクレオチド修飾について、完全な塩基対となるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)および3'末端ヌクレオチド位置で一塩基対ミスマッチを生じるプライマー配列のプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0310】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。MgCl2およびNaClの存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にクレノウフラグメントを添加することにより、エクソヌクレアーゼによる分解を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、クレノウフラグメントは約75 nM、MgCl2およびNaClの濃度はそれぞれ6 mMおよび50 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を示している。各反応条件について、DNA基質およびクレノウフラグメントの濃度をそれぞれ約12 nMおよび75 nMに維持した。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、分解開始後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0311】
この実験の結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチド修飾または2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含むプライマーは、その速度は異なるものの、クレノウフラグメントにより除去可能である。完全に相補的なプライマー/鋳型基質の場合、3'末端がdNTP、rNTP、および2'-O-メチル-NTPの順で除去速度が速い。この結果から、2'-O-メチル修飾が、クレノウフラグメントの3'→5'エクソヌクレアーゼ活性による分解からオリゴヌクレオチドを有意に保護することが示唆される;ならびに(ii)本実験の条件下において、プライマーの3'末端でdNTPまたはrNTPと一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、同程度の効率でクレノウフラグメントにより分解される(パネルIおよびIIのサブパネルbのデータ比較)。
【0312】
Tneポリメラーゼを用いたさらなる実験では、2'-O-メチル修飾により、Tneの3'→5'エクソヌクレアーゼ活性による分解からオリゴヌクレオチドが有意に保護されることが示された。72℃でTne DNAポリメラーゼ(Asp137Ala変異誘導体;5'→3'エクソヌクレアーゼ欠失をもたらす)により触媒される、3'→5'エクソヌクレアーゼによる分解の相対的速度を図32に示す。プライマー/鋳型基質は、プライマー鎖の3'末端に、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、または2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)を含む。各種類の3'末端ヌクレオチド修飾について、完全な塩基対を生じるプライマー/鋳型基質(サブパネルa)およびプライマーの3'末端ヌクレオチドで一塩基対ミスマッチを生じるプライマー/鋳型基質(サブパネルb)を用いてアッセイした。
【0313】
いずれの場合も、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてプライマー鎖の5'末端を32Pで標識したDNA基質(32/60 mer)を使用した。MgCl2およびNaClの存在下で、37℃にしたDNA基質の溶液にTneを添加することにより、エクソヌクレアーゼによる分解を開始させた。DNAの反応濃度は約12 nM、Tneポリメラーゼは75 nM、MgCl2およびNaClの濃度はそれぞれ6 mMおよび50 mMとした。PはDNAプライマー(32 mer)の位置を示している。各サブパネルの最も左側のレーンは対照のオリゴヌクレオチド基質である。Tは、Tne添加後、反応の消失までの経過時間を分で示している。
【0314】
この実験の結果から以下のことが示唆される:(i)3'末端にリボヌクレオチド修飾または2'-O-メチルリボヌクレオチド修飾を含むプライマーは、その速度は異なるものの、Tneにより除去可能である。完全に相補的なプライマー/鋳型基質の場合、プライマーの3'末端がdNTP、rNTP、および2'-O-メチル-NTPの順で除去速度が速い。この結果から、2'-O-メチル修飾が、Tneの3'→5'エクソヌクレアーゼ活性による分解からオリゴヌクレオチドを有意に保護することが示唆される;ならびに、(ii)本実験の条件下において、3'末端でdNTPまたはrNTPと一塩基対ミスマッチを生じるDNA基質は、同程度の効率でTneにより分解される(パネルIおよびIIのサブパネルbのデータ比較)。
【0315】
実施例 27
共役フルオレセインの蛍光に対する末端塩基対の影響
種々の一次構造および二次構造を有する、オリゴヌクレオチドと共役させた一般的ないくつかの蛍光体について、蛍光強度、偏光、および寿命を調べた。蛍光強度は、標識した鎖がその相補鎖とハイブリダイゼーションする際に、配列および蛍光体の位置によって増強または減弱しうる。一本鎖における蛍光の消光は、色素と、電子の最も効率的な供与体であるグアノシンとの間の電荷移動プロセスによって生じうる。二本鎖構造の形成により電荷の分離が抑制され、蛍光強度が増強する。フルオレセイン標識したオリゴヌクレオチドの偏光および寿命の測定値は、塩基共役蛍光体が「暗い」および「明るい」という2つのコンホメーションで存在し、且つ、移動度が低く、消光状態の寿命が短い状態であることを意味する。蛍光に対する二次構造の有意性は、一本鎖および二本鎖のオリゴヌクレオチドの使用により研究されている。
【0316】
オリゴデオキシヌクレオチド合成用の試薬はグレンリサーチ社から購入した。ただし、洗浄用アセトニトリルはフィッシャー(Fisher)から購入し、標準CPGはABIから入手した。Perceptive Biosystems Expedite DNA合成装置で、フルオレセインホスホラミダイトを5'末端に、フルオレセインCPGを3'末端に、C5-フルオレセイン-dTホスホラミダイトを配列内部に直接組み込むことによって、蛍光オリゴデオキシヌクレオチドを合成した。他の色素は合成後に組み込んだ。合成中にアミノ修飾剤C6 T ホスホラミダイト(ホスホラミダイト-5-[N(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジンホスホラミダイト)を結合させる段階と、合成後にモレキュラープローブ社より販売されている蛍光色素をN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルで修飾する段階とからなる、2段階処理を行った(Ju, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4347-4351 (1995))。逆相HPLC解析およびオリゴヌクレオチド精製には、Millenniumソフトウェア・パッケージ(バージョン3.1)を備えたコンピュータに接続したWaters Alliance HPLCを使用した。
【0317】
20 mM tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl、2 mM MgCl2中の200 nM 蛍光オリゴヌクレオチドについて、蛍光強度、寿命、および偏光を測定した。二重鎖形成に使用した非標識の相補オリゴヌクレオチドの濃度は、特に断りがない限り1 μMとした。蛍光オリゴヌクレオチドおよび二重鎖の融解曲線を、上述の緩衝液50 μl中で以下のプロトコルを用いてABI PRISM 7700で測定した:25℃2分間、95℃2分間、次に、15秒につき2℃の割合で温度を25℃まで低下、25℃で2分間インキュベーション、次に、15秒につき2℃の割合で温度を25℃まで上昇。一本鎖オリゴヌクレオチドと対応する二重鎖とで蛍光を正確に比較するため、93〜95℃で正規化を行った。この温度で二重鎖は完全に融解する。正規化手順により、蛍光測定値のウェルごとのばらつきを排除することが可能となった。
【0318】
いくつかの実験においては、標識したオリゴヌクレオチドを、突出した5'末端を有する相補オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。平滑末端を有する二重鎖を作製するため、この複合体を、20 mM tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl、2 mM MgCl2の溶液50 μl中でTaq DNAポリメラーゼ(インビトロジェン社)1単位および対応する200 nM dNTPとともに37℃で15分間インキュベートした。得られた二重鎖の融解を上記と同様に行った。
【0319】
IL4 cDNAの133 bp断片のPCR産物を、
をフォワードプライマーとして、
(太字の(t)はフルオレセイン結合位置を示す)をリバースプライマーとして使用して合成した。別の実験では、標識した線状プライマーの代わりに、標識したヘアピンオリゴヌクレオチド
(下線部の配列がプライマーの3'末端に相補的)を使用した。PCR混合液50 μl中には、200nMの各プライマー;各200 μMのdATP、dGTP、dCTP、dTTPを含む1x Platinum q PCR Supermix緩衝液(インビトロジェン社)中のクローニングしたIL4 cDNAの106コピー;2 mM MgCl2;20 mM tris-HCl(pH 8.4);50 mM KCl;Platinum(商標)1 Uが含まれるようにした。25℃2分間、95℃2分間、続いて、95℃で15秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクルというプロトコルにより、反応を行った。
【0320】
5'末端塩基が蛍光に及ぼす影響を調べるため、5'末端を6-カルボキシフルオレセインで標識した4つのオリゴヌクレオチドを合成した。これらオリゴヌクレオチドの配列は、5'末端部の2塩基をd(AA)、TT、d(CC)、またはd(GG)とした以外は同一とした。これらの標識オリゴヌクレオチドを過量の同じ長さの非標識相補配列とハイブリダイズさせ、ABI PRISM 7700で融解曲線を測定した。上記および図34に示したように、一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二重鎖について、25℃で正規化した蛍光強度を計算した。得られたデータは、オリゴヌクレオチドが5'末端にAAまたはTTを含む場合はハイブリダイズ時に蛍光シグナルが変化しないことを示している。一方、蛍光オリゴヌクレオチドが5'末端にCCを含む場合はハイブリダイズ時に約40%の蛍光減弱が生じ、蛍光オリゴヌクレオチドが5'末端にGGを含む場合は約30%の蛍光減弱が生じる。
【0321】
3'末端塩基が蛍光に及ぼす影響を調べるため、オリゴヌクレオチドの3'末端付近のチミジンにフルオレセインを結合させた。3'末端の塩基のみが異なる(C、G、T、またはA)、4つの標識した一本鎖オリゴヌクレオチドを使用した(表3)。これらのオリゴヌクレオチドを長さが異なる一連の相補鎖とハイブリダイズさせることによって、平滑末端または5'突出末端を有する二重鎖を形成させた。5'突出末端に基づいて、適切なdNTPおよびDNAポリメラーゼを使用して種々の末端を有する多数の二重鎖が生成されている。いくつかの二重鎖は、標識した鎖の3'末端と相補オリゴヌクレオチドの5'末端との間にミスマッチを含んでいた。上記のように、二重鎖形成時の蛍光の変化を融解曲線から計算し、結果を表3に示した。3'末端にCを含む標識オリゴヌクレオチドは、二重鎖形成時に87%消光した(シリーズA、二重鎖A1)。単一のA-T塩基対の追加により伸長した同じ二重鎖では、消光が全く生じなくなった(二重鎖A2)。この末端のA-T塩基対をC-G塩基対で置換すると消光が回復した(二重鎖A3)。標識していない相補鎖にGの5'突出末端がある場合は、C-G塩基対の平滑末端と比較して、消光効果がはるかに小さい(二重鎖A4)。相補鎖に2つ目のGを追加して突出末端を2塩基にすると、消光効果がさらに小さくなる(二重鎖A5)。標識したオリゴヌクレオチドの末端がGである場合も同様の結果が得られた(シリーズB、表3)。末端にG-C塩基対を含む二重鎖では、71%の消光が観察された(二重鎖B1)。G-C塩基対の次にA-T塩基対を追加することによってこの二重鎖を伸長すると、消光効果が失われた(二重鎖B2)。
【0322】
【表3】
【0323】
3'末端にTを含み、且つ末端から2番目の塩基にフルオレセインを含むオリゴヌクレオチドは、二重鎖形成時に蛍光を減弱させなかった(シリーズC、二重鎖C1)。平滑末端に単一のG-C塩基対を追加することによってこの二重鎖を伸長したところ、蛍光の有意な消光が生じた(二重鎖C2)。このG-C塩基対をGの5'突出末端または末端G-Tミスマッチで置換すると、観察された消光効果が実質的に小さくなった(二重鎖C3、C4、およびC5)。末端がアデノシンである標識オリゴヌクレオチド(シリーズD)では、末端がTであるオリゴヌクレオチドと同様の結果となった。末端にG-C塩基対を追加することによってこの二重鎖を伸長した場合にのみ、蛍光の消光が観察された(二重鎖D2)。
【0324】
表3の結果は、末端のG-C塩基対またはC-G塩基対による蛍光の消光が蛍光体と平滑末端との距離に依存することも示している。蛍光体の位置が3'末端から遠くなるほど、ハイブリダイズ時の消光効果が小さくなる(二重鎖A1、A3、およびA6;C2、C6〜C8)。蛍光体が末端から6番目の塩基にある場合は(二重鎖C8)、消光効果が完全に失われ、蛍光の強力な増強が観察される。
【0325】
蛍光体を3'末端付近に配置した場合と5'末端付近に配置した場合とについて、ハイブリダイゼーションが蛍光に及ぼす影響を比較した。3'末端側半分が5'末端側半分の鏡像となるよう、同じ配列の2つのオリゴヌクレオチドを合成した(図35および表4)。3'末端塩基および5'末端塩基はGとした。オリゴヌクレオチドのうち1つについては5'末端に最も近いチミジンにフルオレセインを結合させ、もう一方のオリゴヌクレオチドについては3'末端に最も近いチミジンを標識した。これらの標識オリゴヌクレオチドを、標識していない同サイズの相補配列とハイブリダイズさせた。一本鎖構造および二本鎖構造の蛍光強度を測定し、表4および図35に示した。3'末端付近を標識したオリゴヌクレオチドはハイブリダイズ時に顕著な消光効果を示した。一方、5'末端付近を標識したオリゴヌクレオチドでは蛍光の低減が生じなかった。
【0326】
【表4】
【0327】
実施例 28
二重鎖形成時の、内部共役フルオレセインの蛍光強度の増強
表3の結果に示すように、蛍光体を3'末端のG-Cから離すと、消光効果が小さくなり、最終的に蛍光の増強が観察される(二重鎖C7およびC8)。これをさらに調べるため、別のオリゴヌクレオチドセットを合成した。第1のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3'末端から三番目の塩基を標識した。第2のオリゴヌクレオチドは、3'末端にヌクレオチドを3つ多く追加した以外は同じ配列とした。したがって、第2のオリゴヌクレオチドでは3'末端から6塩基離れた位置にフルオレセインが結合された。各オリゴヌクレオチドを相補配列にハイブリダイズさせた。両二重鎖の融解曲線を図36に示す。3'末端のG-C塩基対と標識とが2つのヌクレオチドで隔てられている場合はハイブリダイズ時に蛍光強度が減弱したが、蛍光体が3'末端から6ヌクレオチド離れている場合は蛍光強度が増強した。
【0328】
このハイブリダイズ時の蛍光の増強は、オリゴヌクレオチド配列中の蛍光体の位置に依存する(図37)。同じ配列のオリゴヌクレオチドだがフルオレセインの位置のみが異なる(すなわち、5'末端、3'末端、または配列内部(6つの異なるT塩基のうちの1つ))オリゴヌクレオチドを8種類合成した。一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二重鎖の融解曲線を分析した。相対的な蛍光データを図37に示す。5'末端、3'末端、またはT3を標識したオリゴヌクレオチドの蛍光はハイブリダイズ時に消光した。しかし、T6以降の内部位置を標識したオリゴヌクレオチドでは、蛍光の増強が観察された。標識が5'末端から遠いほどハイブリダイズ時の蛍光増強が大きかった。
【0329】
ハイブリダイズ時の蛍光増強の説明としては、一本鎖のとき消光状態にあった蛍光体が二重鎖形成によって非消光化されるという可能性が考えられる。そうであるならば、二重鎖のときの蛍光増強度が異なる種々の標識オリゴヌクレオチドは、一本鎖型のときの消光も同程度になるはずである。図37に、種々の位置を標識した一本鎖オリゴヌクレオチドについて、pmolあたりの蛍光強度の測定値を示した。これらオリゴヌクレオチドの均質性はHPLCにより確認された。表5に示すように、遊離のフルオレセインの比蛍光は色素標識したヌクレオチドの蛍光より実質的に強く、色素標識したヌクレオチドの蛍光はオリゴヌクレオチドと共役させた色素の蛍光よりも強い。興味深いことに、位置T3〜T18を標識した一本鎖オリゴヌクレオチドの蛍光/pmolは、対応する二重鎖の蛍光増強と逆比例の関係にある。したがって、位置T16〜T18を標識したオリゴヌクレオチドは、一本鎖の状態では最も蛍光強度が小さいが、二重鎖形成によって最も強力な蛍光増強を示す。したがって、ハイブリダイゼーションにより、一本鎖オリゴヌクレオチドで観察される消光効果が減弱するようにみえる。蛍光体付近の配列が二重鎖における蛍光増強にどのように影響するかを調べるため、内部標識したオリゴデオキシヌクレオチドを多数分析した。その結果、3'末端または5'末端から少なくとも6ヌクレオチド離れた位置に標識がある場合は、3'末端または5'末端の塩基が蛍光増強に有意な影響を及ぼさないことが示された。しかし、二重鎖形成時に蛍光の増強が起こるためには、標識から4ヌクレオチド以内にグアノシンが少なくとも1つ存在する必要がある。例えば、配列
において標識付近のGをAに置換し、
とした場合、ハイブリダイズ時に蛍光増強は観察されなかった。
【0330】
二重鎖構造における色素の電荷または到達性が一本鎖と比較して異なっているか否かを調べるため、フルオレセイン標識した一本鎖および二本鎖のオリゴヌクレオチドの蛍光強度を、既知の消光剤である25mM NaIの存在下で測定した。一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二本鎖オリゴヌクレオチドのいずれの場合も、NaIにより蛍光がわずかに減弱した。このことから、蛍光色素に対するNaIの到達性はいずれの形態でも同等であることが示唆され、二重鎖への色素の挿入は否定的であると考えられた。
【0331】
【表5】
【0332】
実施例 29
オリゴヌクレオチドの一次構造および二次構造が、共役フルオレセインの蛍光の偏光および寿命に与える影響
位置T3、T18、または5'末端をフルオレセインで標識したオリゴヌクレオチドの蛍光の強度および偏光を、これらオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して得られた133 bpの二本鎖PCR産物の強度および偏光と比較した。線状オリゴヌクレオチドとあわせて、位置T18を標識したヘアピンオリゴヌクレオチドについても調べた。このオリゴヌクレオチドにおいては、平滑末端のヘアピンを形成するため、線状オリゴヌクレオチドの5'末端に6個のヌクレオチドを追加した。一本鎖構造および二本鎖構造の蛍光の強度および偏光を表6に示す。オリゴヌクレオチドの5'末端位置に結合させたフルオレセインの場合、二本鎖構造の形成時に蛍光強度が減弱し偏光が増強した。内部標識したオリゴヌクレオチドの場合はこれと逆の効果が観察された。この場合、強度の増強は偏光の減弱を伴っていた。内部標識したヘアピンオリゴヌクレオチドは、PCR産物形成時の蛍光強度および偏光の双方で変化が最も大きかった。
【0333】
フルオレセイン標識した一本鎖オリゴヌクレオチドと、蛍光強度が1.8倍異なっていたその二重鎖とについて、蛍光寿命を決定した(T18、表5)。測定は、25℃にて、方法の項で説明した溶液中、SPEX分光蛍光計を用いて周波数領域モードで行った。データはDataMaxソフトウェアを使用して解析した(表7)。一本鎖オリゴヌクレオチドおよび二本鎖オリゴヌクレオチドのいずれのデータにも、減衰成分を約4 nsおよび1 nsとする二重指数関数型の減衰モデルがもっともよく適合した。一次成分の寿命は遊離のフルオレセインの寿命と同程度であり、且つ、その分画振幅は短寿命成分のものと比較してはるかに大きかった。一本鎖構造とに二本鎖構造との間で寿命パラメータの有意差は見出されなかった。しかし、χ2の値から、他の多重指数関数型の減衰モデルがこのデータにより良好に適合し、より複雑な減衰成分の組合せの解を与える可能性が示唆された。
【0334】
【表6】
【0335】
【表7】
【0336】
実施例 30
オリゴヌクレオチドの一次構造および二次構造が、フルオレセイン以外の色素の蛍光に与える影響
実施例27〜29で示したデータはすべて、チミジンのC5位置を介して共役させたかまたは短いアルキル基のリンカーにより末端に結合させたフルオレセインを有するオリゴヌクレオチドを用いて得たものである。フルオレセインとあわせて、他の種々の蛍光体についても検証した。フルオレセインと同様に、JOE、HEX、TET、Alexa 594、ROX、MAX、およびTAMRAも末端のG-C塩基対およびC-G塩基対の付近で消光され、オリゴヌクレオチドの末端から少なくとも6ヌクレオチド離れた配列内部に配置されている場合は二重鎖の形成により蛍光が増強する。テキサスレッド、BODIPY TR、ならびにCy3およびCy5など特定の色素はこのパターンに従わなかった。
【0337】
実施例 31
蛍光原性 PCR プライマーの設計および特性
二本鎖PCR産物への組込み時に蛍光強度が増強するように蛍光原性プライマーを設計した。この設計は、オリゴヌクレオチドの一次構造および二次構造が共役蛍光体の特性に与える影響を研究した結果に基づくものである。考慮すべき設計要因または規則は次のとおりである:プライマーの3'末端ヌクレオチドにCまたはGが存在すること;蛍光体が3'末端から2番目または3番目の塩基(チミジン)に結合されていること;5'末端側の標識ヌクレオチドから3ヌクレオチド以内にGが1つ以上存在すること;およびヘアピンプライマーについては、プライマーの3'末端に相補的な5'末端テールが存在すること。5'末端テールは融点より低い温度で平滑末端のヘアピンを形成する。融点は、プライマーと鋳型とのアニーリング温度にほぼ等しい。ヘアピンプライマーのステムのΔGは -1.6 〜 -5.8 kcal/molであった(表8)。これらの特性および他の標準的なプライマーの特性(長さおよびTmなど)を独自仕様のソフトウェアによりプライマー設計に組み込んだ。ユーザーはこのソフトウェアを使用して標的配列または鋳型配列を入力してもよい。ソフトウェアは前述の設計要因または規則に従ってプライマーを設計する(配列決定に関する各ステップについては実施例21を参照されたい)。これらの設計規則により、標的配列全体にわたって配置される多数のプライマー対をソフトウェアが出力することが可能になる。例えば、GAPDH配列(1310塩基対)に対して、94対の使用可能なプライマー対がソフトウェアにより出力される。
【0338】
【表8】
【0339】
蛍光体を有するプライマーはシンセティックジェネティクス(Synthetic Genetics、カリフォルニア州San Diego)またはインビトロジェン社(Invitrogen Corporation(ライフテクノロジー事業部)、メリーランド州Rockville)の化学部門から供給されている。フルオレセイン-dTホスホラミダイトの直接組込み、またはアミノ修飾剤C6 T ホスホラミダイト(グレンリサーチ社)を結合させる段階とカルボキシフルオレセインNHSエステル(5-および6-異性体の混合物、モレキュラープローブ社)を用いた合成後修飾の段階とからなる2段階処理によって、FAM標識オリゴヌクレオチドの化学合成を行った。2段階処理は全てのJOE標識オリゴヌクレオチドの合成にも使用し、この合成には5-カルボキシJOE NHSエステル(モレキュラープローブ社)を使用した。ポリスチレン樹脂への吸収によって修飾型プライマーの逆相精製を行った。非標識プライマーはインビトロジェン社から供給されているものを使用した。
【0340】
Trizol試薬(インビトロジェン社)を使用して、供給者のプロトコルに従いHela細胞およびヒト血液リンパ球から全RNAを単離した。刺激したまたはアスピリン処理した末梢血T細胞(PBT)から単離したRNAの試料はVincenzo Casolaro博士(Johns Hopkins University、メリーランド州Baltimore)の厚意により提供された。オリゴ-d(T12-18)またはランダムヘキサマープライマーを用いるSuperscript II(商標)キット(インビトロジェン社)を使用し、供給者のプロトコルに従って、逆転写により全RNAから第1鎖cDNAを合成した。刺激リンパ球由来の全RNAのRT-PCRを行うことによって、インターロイキン-4(IL-4)のクローンcDNA鋳型を生成した。遺伝子特異的プライマー(プライマー配列は示していない)およびTaqポリメラーゼをTaqポリメラーゼ抗体(Platinum Quantitative PCR Supermix-UDG;インビトロジェン社)と併用して、標準的な「ホットスタート」PCRを行った。これらのPCRにより、ほぼ全長の適切なcDNAが増幅された。次にこの増幅産物を、TOPO T/Aクローニングキット(インビトロジェン社)を使用して細菌にクローニングした。最後に、クローンのプラスミドDNAをアルカリ溶解により精製して遠心分離を行い、次に、フェノール抽出およびエタノール沈殿によって線状化およびさらなる精製を行った上で、PCR鋳型として使用に供した。励起波長260 nmでの吸光度測定によりプラスミドのコピー数を計算した。この他、c-myc癌遺伝子、βアクチン、グリセルアルデヒド-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、および18SリボソームRNAのクローンcDNA鋳型も同様の方法を用いてHela細胞RNAから作製した。
【0341】
反応液50 μlの含有物は次のとおりとした:該当する鋳型cDNA、80〜200 nMの各遺伝子特異的プライマー、各200 μMのdATP、dGTP、dCTPと400 μMのdUTPとを含む1x Platinum Quantitative PCR Supermix-UDG(インビトロジェン社)、ウラシルDNAグリコシラーゼ 1 U、3 mM MgCl2、20 mM tris-HCl(pH 8.4)、50 mM KCl、DNAポリメラーゼ抗体、安定剤、ならびに、Taqポリメラーゼ 1.5 Uおよび1x ROX基準色素(インビトロジェン社)。3段階サイクルとして、反応液を25℃で2分間および95℃で2分間インキュベートし、次に95℃で15秒間、55℃で30秒間、および72℃で30秒間のサイクルを行い、次に25℃で2分間インキュベートした。500塩基対より長い増幅産物については例外を設けた。これには、120秒間の伸長時間およびサイクル後の72℃4分間の保持時間を含めた。2段階サイクルは95℃15秒間および65℃30秒間で構成した。反応は、96ウェルの分光蛍光測定用サーマルサイクラー(ABI PRISM 7700、アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems, Inc.))またはi-Cycler(BioRad)中で行った。各PCRサイクルのアニーリング中に蛍光をモニターした。
【0342】
蛍光原性プライマーを用いたPCRの略図を図38に示す。プライマーは、Tmより低い温度で比較的弱い蛍光を示す、平滑末端を有するヘアピン構造を維持している。ヘアピン型が融解すると蛍光が数倍増強し、プライマーの3'末端が伸長して二本鎖PCR産物になったときに蛍光は最大になる。ヘアピンプライマーは、線状プライマーと比較して非伸長時の消光度が大きいため、リアルタイムPCR中により良好なシグナルを発する(図39A〜C)。同一の配列特異的部位を有する、ヘアピン型および線状の2つの標識リバースプライマーを調製した(プライマーセット1および2、表8)。これらを、同じ非標識の線状プライマーとともに使用してIL-4 cDNAを増幅した。25℃の反応前段階、94℃の変性段階、各PCRサイクルのアニーリング段階(55℃)、およびPCR完了後の25℃の段階において、ABI PRISMを用いてPCR用混合物の蛍光を測定した(図39A〜C)。線状プライマーの蛍光は、94℃の変性段階よりも25℃の反応前段階のときのほうが強く、これは蛍光に対する温度およびpHの既知の影響によるものである(Lakowicz, J.R., 「Principles of fluorescence spectroscopy」, Kluver Academic/Plenum Publishers, New York, 第2版, pp. 185-210 (1999))。線状の標識プライマーを用いたPCRにおいて、蛍光はPCRの最初のサイクル中一定に維持されたためこれがベースラインとなり、次にプラトーまで上昇した。利得(gain)は2000相対蛍光単位であった。線状プライマーの場合、PCR後の25℃での蛍光はPCR前と比較して2000単位強かった。ヘアピンプライマーは25℃で線状プライマーより3倍強力に消光され、したがって、エンドポイントにおける蛍光の利得は線状プライマーよりも大きく、5700相対蛍光単位に等しい。ヘアピン構造は55℃でもある程度維持され、したがって消光がある程度維持されることから、ヘアピンプライマーの利得が大きいことは理解可能である。
【0343】
ヘアピンプライマーがPCRの効率および特異性に与える影響を調べるため、線状プライマーを用いた場合とヘアピンプライマーを用いた場合とでリアルタイムPCRの増幅曲線のCTおよび傾きを比較した。増幅曲線のCTおよび傾きは線状プライマーとヘアピンプライマーとで同程度であり、このことから、ヘアピン構造がPCRの効率に悪影響を与えていないことが示唆された(図39A〜Cおよび40)。さらに、平滑末端を有するヘアピンプライマーを使用することにより、標的不在下におけるプライマー二量体人工産物の形成が低減され、これにより、PCRの特異性が上昇する。線状の標識プライマーと、これと相対する線状またはヘアピン型の非標識プライマーとを使用した別々の反応において、プライマー二量体形成を比較した(図40;プライマーセット3および4、表8)。反応には、ゲノムDNAとDNAを含まない対照との10倍段階希釈液を含めた。両プライマーとも線状である場合、鋳型を添加していない対照ではPCRの45サイクル目でプライマー二量体が増幅される。一方、ヘアピンプライマーを含むPCRでは、55サイクル経過後でもプライマー二量体の増幅が生じない(図40)。アガロースゲル解析により、プライマー、プライマー二量体、およびPCR産物について予想通りの移動パターンが確認された。
【0344】
実施例 32
定量的リアルタイム PCR
クローニングしたc-myc cDNAの10倍段階希釈液(コピー数10〜10,000,000)を含む鋳型を試料として、2段階リアルタイムPCRで識別を行った(図41A;プライマーセット3、表8)。コピー数10〜10,000,000では、CTと開始時コピー数との間に直線関係(r2 = 0.999)が存在する(標準曲線、図41B)。種々の標的に対して蛍光原性PCRが利用可能であることを示すため、IL-4のクローンDNAの10倍段階希釈液を用いて同様の蛍光原性PCRを実施した(プライマーセット2、表8)。相関係数は0.992となり、同等の結果が得られた。クローニングしたIL-4 cDNAの3倍段階希釈液(1希釈につき3回の反復反応)(コピー数22〜1,000,000)を含む試料を用いて、3段階蛍光原性PCRで識別を行った(プライマーセット2、表8)。CTとコピー数との相関係数は0.999であった。
【0345】
この他、種々のサイズの増幅産物について蛍光原性PCRを行った。サイズが66、562、1107塩基対のc-myc、およびサイズが74、570、956塩基対のGAPDHの増幅産物に対してFAM標識プライマーを設計した(表8)。Hela全RNA(2.5 ng)を鋳型として第1鎖合成反応から得たcDNA(20 μl)を用いて蛍光原性PCR(3段階サイクル)を行った。PCRには、これら第1鎖反応液2、0.2、0.02、または0 μlを使用した。全てのプライマーセットについて等間隔のCTでcDNA希釈液が決定された。このことから、種々のサイズの増幅産物に対してPCR効率が同程度であることが確認された。
【0346】
実施例 33
マルチプレックス定量的 PCR
遺伝子特異的プライマーを2セット使用した、定量的、リアルタイム、且つマルチプレックスの蛍光原性PCRは、1つのプライマーセットを変数遺伝子の量の検出に、もう1つのプライマーセットを比較的一定であり基準として使用される遺伝子の検出に使用できるため、有用である。c-myc用またはIL-4用のFAM標識プライマーと基準遺伝子用のJOE標識プライマーとを用いたマルチプレックスPCRを行った。クローンIL-4 cDNAの3倍段階希釈液(プライマーセット2、表8)(コピー数22〜300,000)の各希釈液にクローンGAPDH cDNAを1,000,000コピー入れ、これら希釈液の識別について調べた(プライマーセット12、表1;図42A)。3つの反復希釈液のうち良好な2つについて、CTとIL-4のコピー数との相関係数は0.999であった。したがって、IL-4の量が未知である試料のPCRにおいてCTが標準曲線上のどの点で生じるかを分析することによって、未知の試料を決定することが可能である。クローニングしたc-mycのcDNA(プライマーセット5、表8)を変数遺伝子として、GAPDHを定数遺伝子として使用し、同様のPCRセットを行った。図42Bの結果は、c-mycの希釈液間の識別がIL-4と同様であることを示している。
【0347】
GAPDH以外のcDNAを基準遺伝子として使用してもよい。βアクチン(プライマーセット13、表8)または18S(プライマーセット14、表8)のクローンcDNA 1,000,000コピーを基準遺伝子として用いた蛍光原性PCRにより、標的濃度(IL-4)の3倍段階希釈液の識別が可能であった。標準曲線プロットから得られたr2値は、βアクチンおよび18Sについてそれぞれ0.995および0.998であった。
【0348】
さらに、特定のクローンcDNAの代わりに、Hela細胞の全RNA由来の第1鎖cDNAを基準遺伝子の供給源として使用した。これは、PCRにより、非特異的なcDNAの混合物中から特異的な標的が増幅されるか否かを確認するために実施した。これらの実験のため、クローニングしたIL-4 cDNA(3倍段階希釈)を変数鋳型とし、Hela全RNAの逆転写から得た固定量の第1鎖cDNAを定数鋳型とした(図43A〜B)。標準曲線から得られたr2値は、βアクチンが0.997(プライマーセット13、表8)、GAPDHが0.996(プライマーセット12、表8)、および18Sが0.999(プライマーセット14、表8)であった。蛍光原性PCRはその適切な標的のみを増幅した。アガロースゲル電気泳動でPCR産物の分析を行ったところ、プライマー二量体の非特異的なPCR産物は全くないかまたはごくわずかであった。
【0349】
上記の結果はすべてABI 7700システムを使用して得たものである。一定量のクローンGAPDHと混合した種々の量のクローンIL-4について、BioRad i-Cycler IQシステムを用いてマルチプレックス蛍光原性PCRを行った。Biorad i-Cycler IQシステムにより、ABI 7700と同等の感度およびダイナミックレンジでcDNAが検出された。
【0350】
蛍光原性プライマーを使用した定量的PCRの結果は、比較CT法によって分析してもよい。比較CT法は、試料中の未知量の標的cDNAを定量するうえで、標準曲線法のほかに広く用いられている方法の1つである(ユーザー速報(User Bulletin)#2、ABI PRISM 7700シークエンスディテクションシステム、P/N 4303859)。この分析方法では、CT対開始時コピー数の標準曲線をプロットする必要がない。その代わりに、標的と内部基準遺伝子とのCTの差に基づいて標的の量が計算される。アスピリン処理したリンパ球ではIL-4発現が低減することを比較CT法と5'末端ヌクレアーゼアッセイ法との併用により示した既報の研究では、RNA試料のサブセットが使用された(Cianferoni, A.ら、Blood 97:1742-1749 (2001))。これらと同じ試料中のIL-4の量を、蛍光原性マルチプレックスPCRを用いて比較CT法により解析した。アスピリン処理を施したまたは施していない刺激PBT試料から取得した全RNA(1 ng)を逆転写してcDNAを作製し、この反応液2 μlを用いてリアルタイムPCRを行った。各RNA試料に対してRT反応を1回行い、3つの反復PCR用の鋳型を作製した。IL-4用のFAM標識プライマーおよびGAPDH用のJOE標識プライマー(プライマーセット2および12、表8)を用いて、3段階リアルタイム・マルチプレックスPCRのプロトコルを実施した。ABI 7700を用いて標的遺伝子(IL-4)および基準遺伝子(GAPDH)のCTを求めた。比較CT法で計算したところ、アスピリン処理したPBT試料では未処理PBT試料と比較して試料中のIL-4 mRNAレベルが33%低かった。TaqMan(商標)プローブを使用した既報の研究では、アスピリン処理後IL-4発現が43%低減したと報告されており(Cianferoni, A.ら、Blood 97:1742-1749 (2001))、上記の結果はこの報告と一致する。
【0351】
実施例 34
対立遺伝子特異的 PCR のエンドポイント検出
エンドポイント検出能を示すため、ヒトゲノムDNAを鋳型として使用し、対立遺伝子特異的PCRを行った。これらのPCRにより、RDS遺伝子の558位にC/T多型が存在することが検出された(Farrar, G.J.ら、Nucl. Acids Res. 19:6982 (1991))。CまたはTの多型を検出するため、3'末端にCまたはTを有する非標識の対立遺伝子特異的フォワードプライマー2つと、蛍光原性リバースプライマーとを設計した(プライマーセット15、表8)。DNAポリメラーゼにおいて3'末端ミスマッチを伸長する効率が、正しいマッチを伸長する効率と比較してはるかに低いことに基づいて、対立遺伝子の識別を行った(Petruska, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6252-6256 (1988))。異なる一塩基多型を有する2つのゲノムDNA試料それぞれについて、対立遺伝子特異的PCRを2回行った(図44)。PCRに続いて、蛍光プレートリーダー(Polarion, TECAN)またはUVトランスイルミネータのいずれかを使用してPCRチューブ内で直接蛍光を測定した。測定結果から、適切なプライマーにより両遺伝子とも正しく同定されたこと、および標的不在下でシグナル増強が生じないことが示された。
【0352】
実施例 35
遺伝子発現研究用の定量的 RT-PCR
1つのプライマー(蛍光原性プライマー)が3'末端から1塩基対前のT残基を単一の蛍光体(FAM)で標識したプライマーであるプライマー対を用いて、リアルタイム1段階RT-PCRを行った。消光剤は必要としない。蛍光原性プライマーが、PCR産物に組み込まれていないとき平滑末端のヘアピンを形成するよう、5ヌクレオチドのテールを蛍光原性プライマーの5'末端に追加した。この設計により、蛍光プライマーの蛍光は最初は弱く、PCR産物の形成時に増強する。ヘアピンプライマーは、線状プライマーと同等の効率性を示す可能性があり、且つ、プライマー二量体およびミスプライミングを防ぐことによりPCRの特異性を高めることができる。効率的な標識部位を同定するための規則を組み込み、且つPCR中の非特異的な相互作用を最小限に抑えるための専用ソフトウェア(実施例21を参照)により、蛍光原性プライマーおよび非標識プライマーを設計した。上記のように設計したβアクチン特異的プライマー対を用いたリアルタイム定量において、HeLa全RNAを鋳型として用いた1段階RT-PCRを実施した。βアクチン標的は、FAM標識プライマーを用いたPCRにおいて高精度で検出された。Trizol試薬を用いて全RNAの単離を行った。One Step Thermoscript qRT-PCRキット(インビトロジェン社、カタログ番号:11731-015)を用いて1段階RT-PCRを実施した。
【0353】
HeLa細胞の全RNAの10倍段階希釈液(100 ng〜0.1 pg)を含む試料について、鋳型なしの対照をも含めた3つの反復調製液でβアクチン転写物の定量を行った。ABI PRISM 7700装置で、50℃30分間(RT反応)、95℃5分間、および95℃15秒間/60℃45秒間を45サイクル(PCR反応)というプロトコルを用いて、リアルタイム1段階RT-PCRを実施した。図45に増幅プロットを、図46に開始時RNA濃度対CTのプロットを示す。
【0354】
以上、明確な理解に資することを目的として、図示および実施例により本発明をある程度詳細に説明したが、当業者には、広範且つ同等の条件、処方、およびその他のパラメータの範囲内で本発明を修正または変更することにより本発明の範囲またはその特定の態様に影響を及ぼすことなく上記を実施することが可能であること、ならびに、そのような修正または変更は添付の特許請求の範囲に含まれると意図されることが明らかであると考えられる。
【0355】
本明細書記載の全ての刊行物、特許、および特許出願は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示すものであり、各刊行物、特許、または特許出願は参照として本明細書に組み込まれると具体的且つ個別に示されてもいるように、参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0356】
(図1) 本発明のホモジニアス/リアルタイム検出系の模式図である。1つ以上の蛍光の変化または他の検出可能な特性の変化は、標識されたプライマーの二本鎖増幅産物への取り込み(図1A)、または標識されたプローブの核酸標的への直接のハイブリダイゼーション(図1B)によって検出される。本発明では、検出または定量される核酸分子は、合成もしくは増幅の産物であっても、または天然に存在する核酸であってもよい。そのような核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、RNA、DNA、またはRNA/DNAハイブリッドであってもよい。本発明では、いかなる1つ以上の標識(同一でも異っていてもよい)が使用できる。
(図2) 内部(図2A)および5'-フルオレセイン標識(図2B)オリゴヌクレオチドの蛍光に対する、ハイブリダイゼーションの効果を示す、温度の関数としての蛍光強度の線グラフである。標識されたオリゴヌクレオチドは異なる温度で蛍光の試験を行なった。一本鎖(SS)または二本鎖(DS)オリゴヌクレオチドは、実施例4に記述のように融解した。5'標識オリゴヌクレオチドについては、SSオリゴヌクレオチドからDSオリゴヌクレオチドに転換すると、蛍光が低下したが、内部標識したオリゴヌクレオチドでは、SSオリゴヌクレオチドからDSオリゴヌクレオチドに転換すると、蛍光が上昇した。
(図3) 波長の関数としての蛍光強度の線グラフであり、相補的および非相補的オリゴヌクレオチドの存在下での3'-TAMRAオリゴヌクレオチドの蛍光を示す。相補鎖(二本鎖分子を形成する)の存在下では、一本鎖型と比較して蛍光は上昇した(実施例5参照を参照)。
(図4) 波長の関数としての蛍光強度の線グラフであり、フルオレセインおよびBODIPY 530/550で5'標識したオリゴヌクレオチドの蛍光に対するハイブリダイゼーションの効果を示す。相補的なオリゴヌクレオチド(二本鎖分子を形成する)の存在下では、BODIPY色素の場合には蛍光は上昇し、フルオレセインの場合には低下した。
(図5) 図5Aは実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、内部標識したプライマーを用いたIL4 cDNAの定量的PCRを示す。PCRは実施例7に記述のように実行した。ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクターから得られたデータは、メーカーの説明書にわずかな変更を施して処理された(図5B)。図5Cは鋳型DNAの開始量に対して、増幅サイクルの数をプロットした標準曲線である。
(図6) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、フルオレセインで合成後標識したプライマーを用いて行ったIL4 cDNAのPCRを示す。PCRは実施例8に記述のように実行した。リアルタイム増幅データは、ABI PRISM(登録商標)7700シークエンスディテクターからエクセルに出力した。
(図7) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、フルオレセインで内部標識したプライマーを用いて行ったPCRによるβアクチンcDNAの検出を示す。PCRは実施例9に記述のように実行した。
(図8) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、5'検出テールで内部標識したプライマーを用いたβアクチンcDNAのPCRを示す。PCRは実施例10に記述のように実行した。
(図9) 対立遺伝子特異的PCRの模式図である。
(図10) 本発明のプライマーと標準的プライマーとを比較した、対立遺伝子特異的PCR反応の結果を示すアガロースゲルの写真である。
(図11) 本発明のヘアピンプライマーと標準的な線状プライマーとを比較した、対立遺伝子特異的PCR反応において実行したPCRのサイクル数の関数としての、蛍光のプロットである。
(図12) 2段階PCR反応形式を用いて、本発明のヘアピンプライマーと標準的な線状プライマーとを比較した、対立遺伝子特異的PCR反応において実行したPCRのサイクル数の関数としての、蛍光のプロットである。
(図13) 図13Aは本発明のプライマーを用いた対立遺伝子特異的PCR反応のエンドポイントにおいて得られた蛍光強度の棒グラフを示す。図13Bは対立遺伝子特異的反応が行われたPCRチューブに紫外線を照射した写真である。
(図14) 本発明のプライマーを用いた対立遺伝子特異的PCR反応に対する、標的DNA濃度の影響を示すアガロースゲルの写真である。
(図15) Tsp DNAポリメラーゼを用いた結果とPLATINUM(登録商標)Taqポリメラーゼを用いた結果とを比較した、標準的プライマーによる対立遺伝子特異的反応の結果を示すアガロースゲルの写真である。
(図16) 様々な量の鋳型DNAを用いた増幅反応において、本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドと線状オリゴヌクレオチドとを比較した結果を示す、エチジウムブロマイド染色アガロースゲルの写真である。図16Aは第1のプライマーセットを用いたヒトβグロビン遺伝子の3.6 kb断片の増幅を示す。図16Bは第2のプライマーセットを用いたヒトβグロビン遺伝子の3.6 kb断片の増幅を示す。
(図17) 様々なサイズの増幅産物を産生する増幅反応において、本発明のヘアピンオリゴヌクレオチドと線状オリゴヌクレオチドとを比較した結果を示すエチジウムブロマイド染色アガロースゲルの写真である。図17AはNF2遺伝子の1.3 kb断片の増幅を示す。図17BはNF2遺伝子の1.6 kb断片の増幅を示す。
(図18) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、2'-O-Me (図18B)、5'-5'結合(図18C)で両方のプライマーの5'末端を修飾したヘアピンプライマー、および修飾していないヘアピンプライマー(図18A)、ならびに2'-O-Meで修飾したフォワードプライマーおよび5'-5'結合のリバースプライマー(図18D)を用いて行ったPCRによるヒトツベリンcDNAの検出を示す。PCRは実施例15に記述のように実行した。「F」=フォワードプライマー;「R」=リバースプライマー;および「NTC」=標的なしの対照。
(図19) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、C3アミノ(図19B)、C6アミノ(図19C)およびビオチン(図19D)で5'末端を修飾したヘアピンプライマー、および修飾していないヘアピンプライマー(図19A)を用いて行ったPCRによるヒトツベリンcDNAの検出を示す。PCRは実施例16に記述のように実行した。「R」=リバースプライマー。
(図20) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、平滑末端ヘアピンプライマー(図20A, 20C)および伸長した3'末端を有するヘアピンプライマー(図20B、20D)を用いたPCRによるヒトツベリンcDNA(図20A, 20B)およびRDSゲノムDNA(図20C, 20D)の検出を示す。PCRは実施例17に記述のように実行した。
(図21) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、DABCYL標識のA特異的またはB特異的フォワードプライマー(オリゴ41、42)、およびFAM(オリゴ43)標識のリバースプライマーを用いて行ったPCRによる5 ngのゲノムDNA(A対立遺伝子)の検出を示す。PCRは実施例18に記述のように実行した。
(図22) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、FAM標識プライマー(図22A)を用いたIL4 cDNA、およびJOE標識プライマー(図22B)を用いたヒトβアクチンの検出を示す。PCRは実施例19に記述のように実行した。
(図23) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフであり、FAM標識ユニバーサル検出プライマーを用いたヒトRDS対立遺伝子の検出を示す。PCRは実施例20に記述のように実行した。図23AはAAホモ接合ヒトDNA上でA特異的プライマーを用いたRDS A対立遺伝子の検出を示す。図23BはA特異的プライマーの識別を示す(A特異的プライマーはBBホモ接合DNAを検出できない)。図23Cは、DNA鋳型なしの対照には検出可能な増幅がないことを示す。
(図24) 実行した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフである。図24Aは通常のPCRプライマーを用いて行った検出を示す。図24Bは3'末端が2'-Oメチル修飾されたPCRプライマーを用いて行った検出を示す。実施例22を参照されたい。
(図25) 2.7 Kbの標的DNA配列(pUC19)の増幅を示すエチジウム染色したアガロースゲルの写真である。増幅サイクルは40回繰り返された。
(図26) 2.7 Kbの標的DNA配列(pUC19)の増幅を示すエチジウム染色したアガロースゲルの写真である。増幅サイクルは30回繰り返された。
(図27) 3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(図27A)、リボヌクレオチド(図27B)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド(図27C)修飾を含むプライマーの、Taq DNAポリメラーゼによる60℃での相対的な伸長を示すオートラジオグラフである。
(図28) 3'末端ヌクレオチドに、2'-O-メチルリボース修飾を含むプライマーの、Taq DNAによる室温(レーンa)、55℃(レーンb)、および72℃(レーンc)での相対的な伸長効率を示すオートラジオグラフである。
(図29) 3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)修飾を含むプライマーの、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントによる37℃での相対的な伸長効率を示すオートラジオグラフである。
(図30) 3'末端ヌクレオチドに、デオキシヌクレオチド(パネルI)、リボヌクレオチド(パネルII)、および2'-O-メチルリボヌクレオチド(パネルIII)修飾を含むプライマーの、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(エキソヌクレアーゼ欠損突然変異誘導体;Asp424Ala)による37℃での相対的な伸長効率を示すオートラジオグラフである。
(図31) 大腸菌のDNAポリメラーゼのクレノウフラグメントにより37℃で触媒される、3'→5'エキソヌクレアーゼ分解の相対速度を示すオートラジオグラフである。
(図32) 72℃で、Tne DNAポリメラーゼ(Asp137Ala突然変異誘導体;5'→3'エキソヌクレアーゼ欠損)によって触媒される3'→5'エキソヌクレアーゼ分解の相対速度を示すオートラジオグラフである。
(図33) 対立遺伝子特異的PCRに結合したアダプターおよびユニバーサル検出オリゴヌクレオチドを用いた模式図である。実施例20を参照されたい。
(図34) 5'末端がフルオレセインで標識されたオリゴヌクレオチドの蛍光強度に対する5'核酸塩基の効果を示す相対蛍光の棒グラフである。10 pmolの
を、5倍過剰量の同じサイズの相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。グラフに示されるようにNN-変動ヌクレオチド。融解曲線は、実施例27に記述のように検出して標準化した。二本鎖構造の蛍光は、(1.0)として示される対応する一本鎖オリゴヌクレオチドに対する相対量で示されている。
(図35) 3'末端または5'末端に近い内部でフルオレセイン標識されたオリゴヌクレオチドの、二重鎖形成に伴う蛍光の変化を示す相対蛍光の棒グラフである。標識位置は太字で示されている。
(図36) フルオレセインで標識された二重鎖オリゴデオキシヌクレオチドの融解曲線を示す棒グラフである。
。標識の位置は、太字で示されている。二重鎖形成には標識オリゴヌクレオチドと同じサイズの相補鎖を使用し、融解曲線は実施例27に記述のように測定した。
(図37) 5'末端、3'末端、または内部でFAM標識されたオリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションに伴う蛍光強度の変化を示す蛍光強度の棒グラフである。内部の標識位置は太字で示されている。相補鎖は小文字で示されている。二本鎖および一本鎖の標識オリゴヌクレオチドの蛍光の比は、実施例27に記述のように融解曲線から決定された。
(図38) 蛍光原性プライマーによるシグナル生成の模式図である。平滑末端でヘアピン構造をとるオリゴヌクレオチドの蛍光シグナルが最も弱い。シグナルはプライマーが線状になると増加し、プライマーが二本鎖DNAに取り込まれると最大になる。
(図39) 線状またはヘアピン型の蛍光原性プライマーを用いたリアルタイムPCRにおける、蛍光測定値を示す蛍光強度の線グラフである。蛍光はPCR前の25℃、予備加熱段階の94℃、各PCRサイクル中の55℃、最後にサイクリング後の25℃で測定された。FAM標識線状リバースプライマーを用いたPCR中の蛍光強度は、図39Aに示されている(実施例31、プライマーセット1、表8を参照)。FAM標識ヘアピンリバースプライマーを用いたPCR中の蛍光強度は、図39Bに示されている(実施例31、プライマーセット2、表8を参照)。PCRは、同様の条件で106コピーのクローンIL-4 cDNAを用い、および共通の非標識フォワードプライマーを用いて行われた。図39Cは温度に対する検出器測定値のプロットである。
(図40) PCRの特異性および効率に対するヘアピン構造の効果を示す相対蛍光の線グラフである。ヒトRDS遺伝子は線状(点線)またはヘアピン型(実線)のいずれかの非標識リバースプライマーおよび共通蛍光原性線状フォワードプライマーを用いて増幅された(実施例31、プライマーセット3および4、表8を参照)。両プライマーセットのPCRは、100 ng、2 ng、0.08 ng、および0 ngのゲノムDNAを用いて行われた。
(図41) 図41Aは増幅サイクルの数の関数としての相対蛍光を示す線グラフである。蛍光原性リアルタイムPCRの感度、精度、およびダイナミックレンジが示されている。実施例32に記述のように、c-myc cDNAの10倍段階希釈を増幅し、ABI 7700での2段階PCRにおいてはFAM標識蛍光原性プライマーを用いて検出した(実施例31、プライマーセット5、表8を参照)。図41Bは最初のcDNA濃度に対する閾値サイクル(CT)を表すグラフであり、エラーバーとして標準偏差が示されている(1希釈につき12回の反復)。
(図42) 増幅サイクルの数の関数としての相対蛍光を示す線グラフであり、ABI PRIZM 7700での多重蛍光原性PCRの代表として、クローンcDNAの3倍段階希釈を含むPCRを示す。図42Aは303,030から22コピーまでのIL-4 cDNA(灰色)を示す。図42Bは1,000,000から22コピーまでのc-myc cDNA(灰色)を示す。各希釈液は、クローンGAPDH cDNAを1,000,000コピー持っていた(黒)。IL-4(実施例31、プライマーセット2、表8を参照)、およびc-myc(実施例31、プライマーセット5、表8を参照)の検出にはFAM標識の蛍光原性プライマーを使用し、GAPDH(実施例31、プライマーセット12、表8を参照)の検出にはJOE標識プライマーが使用された。図42C〜Dは、CTに対する初期cDNA濃度(1濃度につき2回の重複する反応)の対応するプロットである。
(図43) Hela細胞由来の第1の鎖cDNA群を用いた多重リアルタイム蛍光原性PCRを示す線グラフである。Hela全RNAから作製された一定量のcDNAの存在下で、91,000から22コピーまでのクローンIL-4 cDNAの段階希釈液を含む鋳型を用いて、3段階PCRを実行した。FAM標識のヘアピンプライマーを用いて変動するIL-4標的が検出され(実施例31、プライマーセット2、表8を参照;灰色の線)、JOE標識ヘアピンプライマーを用いて一定のGAPDH標的が検出された(実施例31、プライマーセット12、表8を参照;黒線)。
(図44) 図44AはRDS多型の蛍光強度を示す棒グラフである。蛍光は、490 nm励起、20 nm帯域幅、525 nm発光、20 nm帯域幅を用いて、プレートリーダー(Polarion, TECAN)で検出された。エンドポイントにおける蛍光PCR産物の検出が示されている。C対立遺伝子またはT対立遺伝子に特異的な2つの異なるフォワードプライマー、およびFAM標識された共通のヘアピンリバースプライマー(プライマーセット15;表8)を用いて、RDS遺伝子におけるC558/T558多型に特異的なPCR産物が産生された。実施例34に記述のように、3段階PCRは40サイクル行われた。図44Bは緑色のフィルター(520 nm, 40 nm帯域幅)を備えたKodakイメージングシステムを用いて撮影した、UVトランスイルミネータ上のチューブの写真である。
(図45) 実施した増幅サイクルの数の関数としての蛍光強度を示す線グラフである。
(図46) 鋳型DNAの開始量に対して増幅サイクルの数をプロットした標準曲線である。
Claims (74)
- 少なくとも3つのオリゴヌクレオチドを含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量用または検出用の組成物であって、第1のオリゴヌクレオチドは、標的分子に非相補的かつ第2のオリゴヌクレオチドの3'端の配列に同一な、遺伝子特異的標的プライマーの5'端にテールを有し;第2のオリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドのテールに少なくとも部分的に同一であり、および蛍光成分で標識されており;ならびに第3のオリゴヌクレオチドは、標的の3'端に相補的なプライマーである組成物。
- 以下の段階を含む、核酸の増幅中における、試料中の1つまたは複数の核酸分子の定量法または検出法:
1つまたは複数の核酸鋳型と、請求項1記載のオリゴヌクレオチドとを、鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分増幅される条件下で混合する段階であって、増幅された核酸分子がオリゴヌクレオチドを含む段階;および
該オリゴヌクレオチドの検出可能な標識を測定することで、該核酸分子の有無を検出する、または該核酸分子を定量する段階。 - 少なくとも3つのオリゴヌクレオチドを含む、二本鎖核酸分子を増幅する方法であって、第1のオリゴヌクレオチドは、標的分子に非相補的かつ第2のオリゴヌクレオチドの3'端の配列に同一な、遺伝子特異的標的プライマーの5'端にテールを有し;第2のオリゴヌクレオチドは、第1のオリゴヌクレオチドのテールに少なくとも部分的に同一であり、および蛍光成分で標識されており;ならびに第3のオリゴヌクレオチドは、標的の3'端に相補的なPCRプライマーである方法。
- 以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的を、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドのうちの1つまたは複数が少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
該混合物を、該鋳型または標識の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階。 - 以下の段階を含む、核酸の合成または増幅の特異性を上昇させた、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドの1つまたは複数が、少なくとも1つのヘアピン構造を含む段階;および
該混合物を、該鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階であって、ヘアピン構造ではないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。 - 以下の段階を含む、核酸の合成または増幅の特異性を上昇させた、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドのうちの1つまたは複数が、少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
該混合物を、該鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階であって、非修飾型オリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。 - 以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法であって、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する方法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的を、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドのうちの1つまたは複数が、少なくとも1つのヘアピン構造を含む段階;および
該混合物を、該鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階であって、ヘアピン構造ではないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する段階。 - 以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法であって、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する方法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドのうちの1つまたは複数が、少なくとも1つの修飾型オリゴヌクレオチドを含む段階;および
該混合物を、該鋳型または標識の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階であって、非修飾型オリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅においてミスプライミングが阻害されるまたは低下する段階。 - 1つまたは複数の核酸分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、および該オリゴヌクレオチドが、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む組成物。
- 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項9記載の組成物。
- 1つまたは複数のヌクレオチド、1つまたは複数のDNAポリメラーゼ、および1つまたは複数逆転写酵素からなる群より選択される、少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項9または10のいずれか一項記載の組成物。
- 以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅法:
第1および第2のプライマーを提供する段階であって、該第1のプライマーは、該核酸分子の第1の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍における配列に相補的であり、および該第2のプライマーは、該核酸分子の第2の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍における配列に相補的である段階;
該第1のプライマーと該第1の鎖とのハイブリッド、および第2のプライマーと第2の鎖とのハイブリッドを、1つまたは複数のポリメラーゼの存在下、該第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および該第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で形成させる段階;
該第1の鎖と第3の鎖を、および該第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに
上記段階を1回または複数回繰返す段階であって、プライマーのうちの1つまたは複数が、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む段階。 - 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項12記載の方法。
- 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置において少なくとも1つの対象ヌクレオチドの存在を判定する方法:
標的核酸分子上の特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む段階;ならびに
オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で、オリゴヌクレオチドと標的核酸分子とをインキュベートする段階であって、伸長産物の存在、または伸長産物の産生増加は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在することを意味する段階。 - 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項14記載の方法。
- 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置において少なくとも1つのヌクレオチドの欠如を判定する方法:
標的核酸分子上の特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む段階;ならびに
オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置でヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長が十分阻害または防止される条件下で、オリゴヌクレオチドと標的核酸分子とをインキュベートする段階であって、伸長産物の実質的な減少、または伸長産物が産生されないことは、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する段階。 - 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項16記載の方法。
- 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置においてヌクレオチドの有無を判定する方法:
少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドが十分伸長する条件下で接触させる段階であって、第1のオリゴヌクレオチドが、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む段階;
少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長が十分阻害または防止される条件下で接触させる段階であって、第2のオリゴヌクレオチドが、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む段階;ならびに
第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階。 - 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項18記載の方法。
- 以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドの1つまたは複数が、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型ヌクレオチドを含む段階;ならびに
該混合物を、該鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階。 - 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項20記載の方法。
- 以下の段階を含む、核酸の合成または増幅の特異性を上昇させた、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドの1つまたは複数が、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍に修飾型リボヌクレオチドを含む段階;ならびに
該混合物を、該鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階であって、3'末端のヌクレオチドまたはその近傍において修飾型ヌクレオチドで修飾されていないオリゴヌクレオチドで実施した増幅または合成と比較して、合成または増幅の特異性が高まる段階。 - 修飾型リボヌクレオチドが2'-O-アルキルリボヌクレオチドである、請求項22記載の方法。
- 以下の式を有するヌクレオチド類似体:
Xは、-O-、-S-、-SO-、SO2-、-Se-、C(R8R9)、-N(R10R11)、NR10、P(O2)、およびP(O)-O-R12からなる群より選択され;
R1は、核酸塩基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ環基、およびアリールからなる群より選択され;
R2は、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ、およびチオからなる群より選択され;
R3は、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ、およびチオからなる群より選択され;
各R4は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、およびチオからなる群より選択され;
R5は、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ、およびチオからなる群より選択され;
Uは、核酸塩基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ環基、およびアリールからなる群より選択され;
R6はR2であり(UがCR8、NR10、Nの場合)、またはR6が存在せず(Uが-O-、-S-、-SO-、-SO2-、または-Se-の場合);
R7は、三リン酸、二リン酸、一リン酸、ホスホロチオエート、オリゴヌクレオチド、核酸、DNA、RNA、LNA[JW2]、およびPNAからなる群より選択され;
R8は、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ、およびチオからなる群より選択され;
R9は、水素、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、糖、ヒドロキシ、アミノ、およびチオからなる群より選択され;
R10、R11、およびR12は、同じかまたは異なっており、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、カルボン酸、カルボキサミド、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ペプチド、および糖からなる群より選択される。 - 1つまたは複数の請求項24記載のヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチド。
- 1つまたは複数の核酸分子、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物であって、該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部が、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、および該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む組成物。
- 以下の段階を含む、組成物を作製する方法:
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを提供する段階;ならびに
オリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの核酸分子を接触させる段階であって、該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、該核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、および該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む段階。 - 検出対象または定量対象となる、1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および1つまたは複数の標的核酸分子を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量用または検出用の組成物であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む組成物。
- 1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと、検出対象または定量対象となる1つまたは複数の分子とのハイブリッドを形成させる段階、ならびに該標的核酸分子の有無を検出する段階、および/または該標的核酸分子を定量する段階を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子を定量または検出する方法であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む方法。
- 以下の段階を含む、核酸合成中における、試料中の1つまたは複数の核酸分子を定量または検出する方法:
1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む段階;
該混合物を、該鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成される条件下でインキュベートする段階であって、該合成された核酸分子が、該オリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
該試料中の、合成された核酸分子の量を測定することで、該合成された核酸分子の有無を検出する、または該合成された核酸分子を定量する段階。 - 以下の段階を含む、核酸増幅中における、試料中の1つまたは複数の核酸分子を定量するまたは検出する方法:
1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む段階;
該混合物を、該鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分増幅される条件下でインキュベートする段階であって、該増幅された核酸分子が、該オリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
該試料中の、増幅された核酸分子の量を測定することで、該核酸分子の有無を検出する、または該核酸分子を定量する段階。 - 以下の段階を含む、二本鎖核酸分子を増幅する方法:
第1および第2のプライマーを提供する段階であって、該第1のプライマーは、該核酸分子の第1の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍における配列に相補的であり、該第2のプライマーは、該核酸分子の第2の鎖の内部、または3'末端もしくはその近傍における配列に相補的である段階;
該第1のプライマーと該第1の鎖とのハイブリッド、および該第2のプライマーと該第2の鎖とのハイブリッドを、1つまたは複数のポリメラーゼの存在下、該第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸、および該第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で形成させる段階;
該第1の鎖と第3の鎖を、および該第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに
上記段階を1回または複数回繰返す段階であって、1つまたは複数のプライマーが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置において1つまたは複数の特定のヌクレオチドの存在を判定する方法:
標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に1つまたは複数の対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチドを含む段階;ならびに
オリゴヌクレオチドと標的核酸分子とを、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階であって、伸長産物の産生は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在することを意味する段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置において1つまたは複数の特定のヌクレオチドの欠如を判定する方法:
標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に1つまたは複数の対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチドを含む段階;ならびに
オリゴヌクレオチドと標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害または防止する条件下でインキュベートする段階であって、伸長産物が存在しないこと、または伸長産物の産生減少は、特定の位置における特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置において1つまたは複数の特定のヌクレオチドの有無を判定する方法:
少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害または防止する条件下で接触させる段階;ならびに
第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチドを含む段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置において少なくとも1つの対象ヌクレオチドの有無を判定する方法:
特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を提供する段階;
標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能であるか、またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、請求項24記載の少なくとも1つのヌクレオチドを含む段階;
オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が弱いポリメラーゼ、およびオリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が強いポリメラーゼに接触させる段階;ならびに
オリゴヌクレオチドの伸長レベルを測定する段階。 - 以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的を、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと混合する段階であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含む段階;ならびに
該混合物を、鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階。 - 請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含んだ、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の合成用のキット。
- 請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含んだ、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の増幅用のキット。
- 以下の段階を含む、一塩基多型の検出法:
少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害または防止する条件下で接触させる段階;ならびに
第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが、請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチドを含む段階。 - 請求項24記載の1つまたは複数のヌクレオチド類似体を含んだ、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸の合成産物または増幅産物の検出用または測定用のキット。
- 以下を含むオリゴヌクレオチド:
3'末端におけるシトシンもしくはグアニン、またはシトシンもしくはグアニンの類似体、および
3'末端から少なくとも2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目の塩基に位置する、1つまたは複数の検出可能な標識。 - 5'端を標識されたヌクレオチドに隣接する3ヌクレオチド以内に、1つまたは複数のグアニンをさらに含む、請求項42記載のオリゴヌクレオチド。
- ヘアピンを形成可能な、請求項42記載のオリゴヌクレオチド。
- 1つの検出可能な標識を有する、請求項42記載のオリゴヌクレオチド。
- 塩基がチミジンである、請求項42記載のオリゴヌクレオチド。
- 検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、および生物発光標識からなる群より選択される、請求項42記載のオリゴヌクレオチド。
- 蛍光標識が、FAM、TAMRA、JOE、ローダミン、BODIPY、R6G、ROX、およびEDANSからなる群より選択される、請求項47記載のオリゴヌクレオチド。
- ヘアピンが平滑末端である、請求項44記載のオリゴヌクレオチド。
- ヘアピンが、突出したグアニンを含む、請求項44記載のオリゴヌクレオチド。
- 以下を含むオリゴヌクレオチド:
3'末端におけるアデニンまたはグアニン、
5'末端における突出したグアニン、および
3'末端から少なくとも2番目、3番目、4番目、5番目、または6番目の塩基における1つまたは複数の検出可能な標識。 - 5'端を標識されたヌクレオチドに隣接する3ヌクレオチド以内に、1つまたは複数のグアニンをさらに含む、請求項51記載のオリゴヌクレオチド。
- ヘアピンを形成可能な、請求項51記載のオリゴヌクレオチド。
- 1つの検出可能な標識を有する、請求項51記載のオリゴヌクレオチド。
- 塩基がチミジンである、請求項51記載のオリゴヌクレオチド。
- 検出可能な標識が、蛍光標識、化学発光標識、および生物発光標識からなる群より選択される、請求項51記載のオリゴヌクレオチド。
- 蛍光標識が、FAM、TAMRA、JOE、ローダミン、BODIPY、R6G、ROX、およびEDANSからなる群より選択される、請求項56記載のオリゴヌクレオチド。
- 1つまたは複数の核酸分子、および請求項42または51のいずれか一項記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む組成物であって、該オリゴヌクレオチドの一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能である組成物。
- 1つまたは複数のヌクレオチド、1つまたは複数のDNAポリメラーゼ、および1つまたは複数逆転写酵素からなる群より選択される、少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項58記載の組成物。
- 以下の段階を含む、組成物を作製する方法:
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを提供する段階;ならびに
オリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの核酸分子に接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部とハイブリッドを形成可能であり、および該オリゴヌクレオチドが、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階。 - 1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、および検出対象または定量対象となる1つまたは複数の標的核酸分子を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子の定量用または検出用の組成物であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む組成物。
- 1つまたは複数のオリゴヌクレオチドと、検出対象または定量対象となる1つまたは複数の分子とのハイブリッドを形成させる段階、および標的核酸分子の有無を検出する段階、および/または標的核酸分子を定量する段階を含む、試料中の1つまたは複数の標的核酸分子を定量または検出する方法であって、該オリゴヌクレオチドが、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む方法。
- 以下の段階を含む、核酸合成中において、試料中の1つまたは複数の核酸分子を定量または検出する方法:
1つまたは複数の核酸鋳型と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドとを混合する段階であって、オリゴヌクレオチドが、請求項41または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階;
該混合物を、該鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成される条件下でインキュベートする段階であって、該合成された核酸分子が、該オリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
試料中の、合成された核酸分子の量を測定することで、該合成された核酸分子の有無を検出する、または該合成された核酸分子を定量する段階。 - 以下の段階を含む、二本鎖核酸分子の増幅法:
第1および第2のプライマーを提供する段階であって、該第1のプライマーは、該核酸分子の第1の鎖の内部、または3'末端もしくは近傍における配列に相補的であり、また該第2のプライマーは、該核酸分子の第2の鎖の内部、または3'末端もしくは近傍における配列に相補的である段階;
1つまたは複数のポリメラーゼの存在下、該第1の鎖の全体または一部に相補的な第3の核酸分子、および該第2の鎖の全体または一部に相補的な第4の核酸分子が合成される条件下で、該第1のプライマーと該第1の鎖とのハイブリッド、および該第2のプライマーと該第2の鎖とのハイブリッドを形成させる段階;
該第1の鎖と第3の鎖を、および該第2の鎖と第4の鎖を変性させる段階;ならびに
上記段階を1回または複数回繰返す段階であって、1つまたは複数のプライマーが、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置において1つまたは複数の特定のヌクレオチドの存在を判定する方法:
1つまたは複数の対象ヌクレオチドを、標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能、またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、請求項41または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
オリゴヌクレオチドと標的核酸分子とを、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下でインキュベートする段階であって、伸長産物の産生は、特定の位置における特定のヌクレオチドが存在することを意味する段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置において1つまたは複数の特定のヌクレオチドの欠如を判定する方法:
1つまたは複数の対象ヌクレオチドを、標的核酸分子上の特定の位置または複数の位置に有する少なくとも1つの標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、標的核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、請求項41または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
オリゴヌクレオチドと標的核酸分子とを、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害または防止する条件下でインキュベートする段階であって、伸長産物が存在しないこと、または伸長産物の産生の低下は、特定の位置に特定のヌクレオチドが存在しないことを意味する段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置または複数の位置において1つまたは複数の特定のヌクレオチドの有無を判定する方法:
少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害または防止する条件下で接触させる段階;ならびに
第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが、請求項41または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階。 - 以下の段階を含む、標的核酸分子中の特定の位置において少なくとも1つの特定の対象ヌクレオチドの有無を判定する方法:
特定の位置に対象ヌクレオチドを有する少なくとも1つの標的核酸分子を提供する段階;
該標的核酸分子を、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに接触させる段階であって、オリゴヌクレオチドの少なくとも一部は、核酸分子の少なくとも一部と塩基対を形成可能またはハイブリッドを形成可能であり、およびオリゴヌクレオチドが、請求項42または51のいずれか一項記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む段階;
オリゴヌクレオチドおよび標的核酸分子を、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が弱いポリメラーゼに、およびオリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドが標的核酸分子と塩基対を形成する場合にオリゴヌクレオチドの伸長能が強いポリメラーゼに接触させる段階;ならびに
オリゴヌクレオチドの伸長レベルを測定する段階。 - 以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸分子の合成法または増幅法:
1つまたは複数の核酸鋳型または標的と、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを混合する段階であって、オリゴヌクレオチドが、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
該混合物を、該鋳型または標的の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分合成または増幅される条件下でインキュベートする段階。 - 以下の段階を含む、一塩基多型の検出法:
少なくとも第1のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を形成する場合に第1のオリゴヌクレオチドを十分伸長させる条件下で接触させる段階;
少なくとも第2のオリゴヌクレオチドを、少なくとも1つの標的核酸分子に、オリゴヌクレオチドの最も3'側のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが標的核酸分子の特定の位置または複数の位置でヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドと塩基対を実質的に形成しない場合にオリゴヌクレオチドの伸長を十分阻害または防止する条件下で接触させる段階;ならびに
第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとで伸長レベルまたは伸長産物の量を比較する段階であって、第1および/または第2のオリゴヌクレオチドが、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドを含む段階。 - 以下の段階を含む、核酸増幅中における、試料中の1つまたは複数の核酸分子を定量または検出する法:
1つまたは複数の核酸鋳型と、請求項42または51のいずれか一項記載のオリゴヌクレオチドとを、該鋳型の全体または一部に相補的な1つまたは複数の核酸分子が十分増幅される条件下で混合する段階であって、該増幅された核酸分子が、オリゴヌクレオチドを含む段階;ならびに
該オリゴヌクレオチドの検出可能な標識を測定することで、該核酸分子の有無を検出する、または該核酸分子を定量する段階。 - 請求項42または51のいずれか一項記載の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の合成用のキット。
- 請求項42または51のいずれか一項記載の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸分子の増幅用のキット。
- 請求項42または51のいずれか一項記載の1つまたは複数のオリゴヌクレオチドを含む、核酸の合成産物または増幅産物の検出用または測定用のキット。
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