JP4842087B2 - クローラ式走行体の転輪 - Google Patents

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本発明は、油圧ショベル等の建設機械、その他のクローラ式車両に装着されるクローラ式走行体の転輪に関するものである。
この種のクローラ式走行体として、駆動輪と従動輪との間にクローラベルトが無端帯状に巻回されてなり、クローラベルトの内周面にその全周にわたって設けられた転輪通過面上で、クローラベルトの送り移動に伴ってこのクローラベルトに対して転動させられる転輪が設けられた構成が知られている。そして従来から、クローラ式走行体の乗り心地を向上させたり、転輪通過面の磨耗や損傷を防ぐために、転輪通過面に接触する転輪の外周部を硬質樹脂材で形成することが知られている。
ところが、このようなクローラ式走行体では、走行中に、前記外周部に径方向内方に向けた押圧力が作用した状態で、その外周面が転輪通過面上を摺動するので、この外周面上で発生した熱が前記外周部に蓄積されて劣化し易くなり、転輪の寿命が短くなるおそれがあった。
そこで、転輪の放熱性を向上させるための手段として、例えば下記特許文献1に示されるような、前記外周部に、軸方向に延びる貫通孔を周方向に間隔をあけて複数形成することが提案されている。
実開平04−56588号公報
しかしながら、このような外周部を形成するには、例えば抜きテーパを考慮して成形型を設計しなければならない等、製造が困難であるとともに、前記貫通孔では、転輪の短命化を抑制する程度まで放熱性を向上させることができないおそれがあった。
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、転輪通過面に接触する外周部の熱を外部に良好に放熱することが可能になり、しかもこのような転輪を容易に形成することができるクローラ式走行体の転輪を提供することを目的とする。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のクローラ式走行体の転輪は、駆動輪と従動輪との間にクローラベルトが無端帯状に巻回されてなるクローラ式走行体において、前記クローラベルトの内周面にその全周にわたって設けられた転輪通過面上で、クローラベルトの送り移動に伴ってこのクローラベルトに対して転動させられるクローラ式走行体の転輪であって、内部に支軸が挿入される軸受筒部と、軸受筒部よりも大径とされるとともに、外周面に前記転輪通過面上に接触する外周部が設けられた支持筒部と、軸受筒部と支持筒部とを連結するフランジ状部と、を有する本体部が備えられ、前記外周部はゴム材料で、内周面が前記支持筒部の外周面に接着された円環板状に形成されるとともに、この外周部の外周面に凸状、凹状若しくは凹凸状の第1放熱部が形成され、前記軸受筒部の外周面、支持筒部の内周面、およびフランジ状部の表面の少なくとも一つに凸状、凹状若しくは凹凸状の第2放熱部が形成され、前記第2放熱部は、前記支持筒部の内周面および前記フランジ状部の表面の双方に跨って連結されたリブ状体とされていることを特徴とする。
この発明によれば、前記外周部の外周面に第1放熱部が形成されているので、この外周面の表面積を増大させることが可能になり、しかもこの第1放熱部が、前記外周部の内部ではなく外周面に形成されているので、転輪の転動時に空気を確実に第1放熱部上で流動させることができ、外周部の熱を外部に良好に放熱することができる。さらに、このように第1放熱部が前記外周部の内部ではなく外周面に形成されているので、この第1放熱部を有する外周部を容易に形成することが可能になり、放熱性の向上された転輪の製造コストが増大するのを抑えることができる。また、転輪の外周部がゴム材料で形成されているので、クローラ式走行体の走行中に、前記外周部の外周面と転輪通過面との間に例えば石等が噛み込まれ、前記外周部に局所的に大きな衝撃力や押圧力が加わっても、この外周部が割れるのを防ぐこともできる。
また、前記本体部に第2放熱部が形成されているので、前記外周部の熱を、その外周面側からのみならず、本体部との界面側からも放熱することが可能になり、この外周部の熱をより一層確実に外部に放熱することができる。すなわち、クローラ式走行体の走行中に外周部の外周面で発生した熱のうち、第1放熱部で放熱されず外周部に蓄積された熱が本体部に伝導したときに、この熱を第2放熱部から外部に放熱することができる。
さらに、クローラ式走行体の走行中に、前記外周部の外周面に作用する径方向内方に向けた押圧力により、支持筒部においてフランジ状部が連結された部分から離れた部分が、径方向内方に向けて撓もうとしたときに、リブ状体の第2放熱部がこの撓み変形に抗するリブとして作用することになる。したがって、この転輪の放熱性のみならず剛性も向上させることが可能になり、転輪のさらなる長寿命化を図ることができる。
また、前記外周部は、前記本体部をインサート品としたインサート成形により射出成形された成形品を、この射出成形時のキャビティと同一のキャビティ内で加硫して形成してもよい。
この発明によれば、転輪通過面に接触する外周部の熱を外部に良好に放熱することが可能になり、しかもこのような転輪を容易に形成することができる。
以下、本発明に係るクローラ式走行体の転輪の第1実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
例えば、油圧ショベル等の建設機械、その他のクローラ式車両においてその下部に装着される左右一対のクローラ式走行体20はそれぞれ、図1に示されるように、駆動輪21と図示されない従動輪との間にクローラベルト22が無端帯状に巻回された概略構成とされている。
駆動輪21はスプロケットとされ、車両フレームに設けられた例えば油圧モータ等の駆動手段により回転可能に支持されている。また、従動輪は前記車両フレームに回転自在に支持されている。
クローラベルト22は、ゴム材料で無端帯状に成形されたベルト本体23に、複数の芯金24がベルト周方向に一定の間隔をあけて埋設されるとともに、これらの芯金24同士の間に駆動輪21に対する噛み合い孔25が開口され、かつ各芯金24のベルト幅方向中央部に、左右一対の芯金突起24aがベルト内周面側に向けて突設され、この芯金突起24aの間を駆動輪21および従動輪が通過するようになっている。また、ベルト本体23の内周面には、芯金突起24aよりもベルト幅方向外側に位置する部分に、その全周にわたって連続して延びる偏平な転輪通過面Sが形成されるとともに、ベルト本体23の外周面には推進ラグ26が突設されている。さらに、このベルト本体23内において、芯金24のベルト外周面側には、芯金突起24aよりもベルト幅方向外側に位置する部分に、その周方向に連続して延びるスチールコード層27が埋設されている。
また、クローラベルト22の内周面側において駆動輪21と従動輪との間には、前記車両フレームに回転自在に支持された複数の転輪10が設けられており、各転輪10は、転輪通過面S上で、クローラベルト22の送り移動に伴ってこのクローラベルト22に対して転動させられるようになっている。ここで、複数の転輪10のうち、一部はクローラベルト22の内周面において地面側の下側に位置する部分をその上側から支持するように配置されるとともに、残りはクローラベルト22の内周面において上側に位置する部分をその下側から支持するように配置されている。前者の転輪10により、クローラベルト22の外周面において下側に位置する部分をその全域にわたって接地させることが可能になり、また後者の転輪10により、クローラベルト22において上側に位置する部分が弛まないように保持できるようになっている。
そして、本実施形態では、転輪10は、図2に示されるように、例えば金属材料で形成された筒状の本体部12と、ゴム材料で形成されるとともに、転輪通過面S上に接触する外周部13とを備えている。本体部12は、内部に図示されない支軸が挿入される軸受筒部11と、この軸受筒部11よりも大径とされるとともに、外周面に前記外周部13が設けられた支持筒部14と、この支持筒部14と軸受筒部11とを連結するフランジ状部15と、を備えている。
図示の例では、軸受筒部11の両端開口部にそれぞれ、その径方向外方に延びる円板状のフランジ状部15が連結されている。そして、各フランジ状部15の外周縁部に、このフランジ状部15を挟んで軸受筒部11が配置されている側と反対方向に向けて支持筒部14が立設されている。また、フランジ状部15、支持筒部14および軸受筒部11は同軸上に配置されている。
さらに、本実施形態では、外周部13の外周面に、凸状、凹状若しくは凹凸状の第1放熱部16が形成されている。図示の例では、外周部13は、支持筒部14の外周面にその全域にわたって設けられており、第1放熱部16は、この外周部13の外周面にその全周にわたって連続して延在した周溝とされている。この第1放熱部16が、外周部13の幅方向に一定の間隔をあけて複数形成されている。
ここで、第1放熱部16の幅gは、例えばこの第1放熱部16のピッチ間隔wの10%より大きく、かつ50%より小さくなっている。また、第1放熱部16の深さdは、例えば外周部13の厚さhの10%より大きく、かつ30%より小さくなっている。
そして、本実施形態では、第1放熱部16に加え、さらに転輪10の本体部12にも凸状、凹状若しくは凹凸状の第2放熱部17が形成されている。図示の例では、第2放熱部17は、支持筒部14の内周面およびフランジ状部15の表面の双方に跨って連結されたリブ状体とされている。すなわち、板状の第2放熱部17において、その表裏面が、転輪10の中心軸線方向および径方向の双方に沿って延在するように、支持筒部14の内周面およびフランジ状部15の表面の双方に跨って連結されている。また、この第2放熱部17は、転輪10の周方向に間隔をあけて複数配置されている。
なお、軸受筒部11、支持筒部14、フランジ状部15および第2放熱部17を有する本体部12は一体に形成されている。さらに、以上のように構成された転輪10は、例えば、本体部12をインサート品としたインサート成形により射出成形された成形品を、この射出成形時のキャビティと同一のキャビティ内で加硫して外周部13に形成することによって形成することができる。このように外周部13を形成したときに、この外周部13の内周面が支持筒部14の外周面に接着し、かつ外周部13の外周面に第1放熱部16が形成される。
以上説明したように、本実施形態によるクローラ式走行体の転輪10によれば、外周部13の外周面に第1放熱部16が形成されているので、この外周面の表面積を増大させることが可能になり、しかもこの第1放熱部16が、外周部13の内部ではなく外周面に形成されているので、転輪10の転動時に空気を確実に第1放熱部16上で流動させることができ、転輪10の外周部13の熱を外部に良好に放熱することができる。
さらに、このように第1放熱部16が外周部13の内部ではなく外周面に形成されているので、この第1放熱部16を有する外周部13を容易に形成することが可能になり、放熱性の向上された転輪10の製造コストが増大するのを抑えることができる。また、転輪10の外周部13がゴム材料で形成されているので、クローラ式走行体20の走行中に、外周部13の外周面と転輪通過面Sとの間に例えば石等が噛み込まれ、外周部13に局所的に大きな衝撃力や押圧力が加わっても、この外周部13が割れるのを防ぐこともできる。
また、本実施形態では、外周部13の外周面に形成された第1放熱部16に加え、本体部12にも第2放熱部17が設けられているので、外周部13の熱を、その外周面側からのみならず、本体部12との界面側からも放熱することが可能になり、この外周部13の熱をより一層確実に外部に放熱することができる。すなわち、クローラ式走行体20の走行中に外周部13の外周面で発生した熱のうち、第1放熱部16で放熱されず外周部13に蓄積された熱が本体部12に伝導したときに、この熱を第2放熱部17から外部に放熱することができる。
さらに、本実施形態では、第2放熱部17が、支持筒部14の内周面およびフランジ状部15の表面の双方に跨って連結されたリブ状体とされているので、クローラ式走行体20の走行中に、外周部13の外周面に作用する径方向内方に向けた押圧力により、支持筒部14においてフランジ状部15が連結された部分から離れた部分が、径方向内方に向けて撓もうとしたときに、リブ状体の第2放熱部17をこの撓み変形に抗するリブとして作用させることが可能になる。したがって、この転輪10の放熱性のみならず剛性も向上させることが可能になり、転輪10のさらなる長寿命化を図ることができる。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、第1放熱部16として、外周部13の全周にわたって連続して延在した溝部を示したが、これに代えて、幅方向に延在した溝部、または幅方向および周方向の双方に傾斜する方向に延びる溝部を採用してもよいし、さらには、これらの溝部を適宜組み合わせてもよい。また、第1放熱部16として凹状の溝部を示したが、これに代えて、例えば凸状、若しくは凹凸状の第1放熱部を採用してもよい。この第1放熱部として、例えば外周部13の外周面を粗面化することによってその表面粗さを大きくした粗面部を採用してもよい。なお、この粗面部は、例えば、加硫成形時に用いるキャビティの内面に微小な凹凸部を設けておく等の適宜手段によって形成することができる。
また、前記実施形態の第2放熱部17に代えて、凹状若しくは凹凸状の第2放熱部を採用してもよい。例えば、軸受筒部11の外周面、支持筒部14の内周面、およびフランジ状部15の表面の少なくとも一つに突設したフィンを採用してもよいし、あるいは軸受筒部11の外周面、支持筒部14の内周面、およびフランジ状部15の表面の少なくとも一つにサンドブラスト加工等の粗面化処理を施して形成した粗面部を採用してもよいし、さらには軸受筒部11の外周面、支持筒部14の内周面、およびフランジ状部15の表面の少なくとも一つに形成した溝部を採用してもよい。
さらにまた、前記実施形態で示した第2放熱部17に代えて、例えば支持筒部14の内周面およびフランジ状部15の表面の双方に跨って連結されたリブ状体が転輪10の全周にわたって延設された構成を採用してもよい。また、本体部12に第2放熱部を設けなくてもよい。
さらに、前記実施形態では、軸受筒部11、支持筒部14、フランジ状部15および第2放熱部17が一体に形成された構成を示したが、これに代えて、例えば、それぞれを別部材として例えば溶接等で接合してもよい。
また、前記実施形態では、転輪通過面Sとして、ベルト本体23の内周面において、芯金突起24aよりもベルト幅方向外側に位置する部分に、その全周にわたって連続して延びる偏平な構成を示したが、これに代えて、例えば、ベルト周方向に間隔をあけて複数配置された芯金突起24aの突端面をベルト本体23と一体に連なるゴム材料で被覆して、この突端面上を被覆するゴム材料の表面を転輪通過面としてもよい。なお、この転輪通過面では、ベルト本体23の内周面にその全周にわたって断続的に延在している。
さらに、前記実施形態では、ベルト本体23に駆動輪21に対する噛み合い孔25を形成したが、これに代えて、例えば、ベルト本体23の内周面に、その周方向に間隔をあけて複数の噛み合い突部を形成し、これらの噛み合い突部同士の間を、駆動輪21におけるスプロケットの歯が挿入される噛み合い凹部とするクローラ式走行体を採用してもよい。このようなクローラ式走行体において、転輪10が転動させられる転輪通過面は、ベルト本体23の内周面において前記噛み合い突部よりもベルト幅方向外側に位置する平滑面としてもよい。なお、このようなベルト本体23では、その内部に芯金24に代えて複数の補強プライ層を埋設してもよい。
また、前記実施形態の本体部12に代えて、図3に示されるように、支持筒部14の径方向内方に軸受筒部11を同軸上に配置して、支持筒部14の内周面における軸線方向中央部と軸受筒部11の外周面における軸線方向中央部とを、フランジ状部15で連結した本体部18を採用してもよい。このような本体部18を備えた転輪10では、支軸の中心軸線方向両側にそれぞれ、転輪10を各別に取り付けて用いることができる。
転輪通過面に接触する外周部の熱を外部に良好に放熱することが可能になり、しかもこのような転輪を容易に形成することができる。
本発明に係る一実施形態として示したクローラ式走行体の一部断面を含む斜視図である。 図1に示すクローラ式走行体の転輪の縦断面図、および側面図である。 本発明に係る他の実施形態として示したクローラ式走行体の転輪の縦断面図である。
符号の説明
10 転輪
11 軸受筒部
12、18 本体部
13 外周部
14 支持筒部
15 フランジ状部
16 第1放熱部
17 第2放熱部
20 クローラ式走行体
21 駆動輪
22 クローラベルト
S 転輪通過面

Claims (2)

  1. 駆動輪と従動輪との間にクローラベルトが無端帯状に巻回されてなるクローラ式走行体において、前記クローラベルトの内周面にその全周にわたって設けられた転輪通過面上で、クローラベルトの送り移動に伴ってこのクローラベルトに対して転動させられるクローラ式走行体の転輪であって、
    内部に支軸が挿入される軸受筒部と、軸受筒部よりも大径とされるとともに、外周面に前記転輪通過面上に接触する外周部が設けられた支持筒部と、軸受筒部と支持筒部とを連結するフランジ状部と、を有する本体部が備えられ、
    前記外周部はゴム材料で、内周面が前記支持筒部の外周面に接着された円環板状に形成されるとともに、この外周部の外周面に凸状、凹状若しくは凹凸状の第1放熱部が形成され、
    前記軸受筒部の外周面、支持筒部の内周面、およびフランジ状部の表面の少なくとも一つに凸状、凹状若しくは凹凸状の第2放熱部が形成され
    前記第2放熱部は、前記支持筒部の内周面および前記フランジ状部の表面の双方に跨って連結されたリブ状体とされていることを特徴とするクローラ式走行体の転輪。
  2. 請求項1記載のクローラ式走行体の転輪であって、
    前記外周部は、前記本体部をインサート品としたインサート成形により射出成形された成形品を、この射出成形時のキャビティと同一のキャビティ内で加硫して形成することを特徴とするクローラ式走行体の転輪。
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