JP4841724B2 - 腫瘍イメージングおよび抗腫瘍治療の標的としてのFlt4(VERG−3) - Google Patents
腫瘍イメージングおよび抗腫瘍治療の標的としてのFlt4(VERG−3) Download PDFInfo
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Description
本願は1998年10月9日に出願された米国特許出願番号第09/169,079号、1997年7月28日に出願された米国特許出願番号第08/901,710号、1994年11月14日に出願された米国特許出願番号第08/340,011号(現米国特許第5,776,755号)、および1994年60月9日に出願された米国特許出願番号第08/257,754号(すでに放棄)(なお、後者2つは1992年10月9日に出願された米国特許出願番号第07/959,951号(すでに放棄)の一部継続である)の優先権を主張する継続出願である。これらの出願は総て引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、受容体遺伝子、特には受容体チロシンキナーゼ遺伝子、組換えDNAベクターへのそれらの挿入、ならびに得られたタンパク質の、宿主菌株および宿主真核細胞での生産に関する。さらに詳しくは、本発明は、Flt4、すなわち受容体チロシンキナーゼ、Flt4をコードするヌクレオチド配列、Flt4をコードするDNAおよびそれらの遺伝子産物の作製方法、かかる受容体をコードする核酸を特異的に認識する(ハイブリダイズする)核酸プローブ、かかる受容体を特異的に認識する抗体、ならびに例えば動物およびヒト組織においてリンパ管および高内皮細静脈(HEV)を同定する、および病理学的症状においてFlt4発現細胞の増殖を増強または阻害するためにかかるプローブおよび抗体ならびその他のFlt4結合化合物を使用する方法に向けられる。
【0003】
背景
分化細胞および組織の発達、維持および修復に役割を果たす細胞の挙動は大部分、増殖因子および同様のリガンドならびにそれらの受容体を介して運ばれる細胞内シグナルによって調節される。受容体は応答細胞の細胞表面に位置し、増殖因子ならびにその他のホルモン様リガンドとして知られるペプチドまたはポリポリペプチドと結合する。この相互作用の結果、応答細胞で速やかに生物学的変化が起こり、同時に迅速かつ長期にわたる細胞内遺伝子発現の再調整が起こる。種々の細胞表面に会合したいくつかの受容体が特異的増殖因子と結合し得る。
チロシンのリン酸化は原形質膜を横切る鍵となるシグナル変換様式の1つである。いくつかのチロシンキナーゼ遺伝子は、上皮増殖因子(EGF)、インスリン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、血小板由来増殖因子(PDGF−Aおよび−B)および繊維芽細胞増殖因子(FGF)などのポリペプチド増殖因子およびホルモンのトランスメンブラン受容体をコードしている[Heldin et al., Cell Regulation, 1: 555-566 (1990); Ullrich et al., Cell, 61: 243-54 (1990)] 。いくつかの造血増殖因子の受容体はチロシンキナーゼであり、これらにはコロニー刺激因子−1受容体であるc−frns[Sherr et al., Cell, 41: 665-676 (1985)]、および原始的な造血増殖因子受容体であるc−kit[Huang et al., Cell, 63: 225-33 (1990)]が含まれる。
【0004】
これらの受容体はその特異性と親和性が異なっている。一般に、受容体チロシンキナーゼは、特異的増殖因子、トランスメンブランドメインと結合し得る細胞外ドメイン、通常タンパク質のα−らせん部分であるトランスメンブランドメイン、膜近傍ドメイン(受容体が例えばタンパク質リン酸化によって調節され得る場合)、チロシンキナーゼドメイン(受容体の酵素成分)、ならびに多くの受容体で、チロシンキナーゼの基質の認識および結合に関与するカルボキシ末端からなる糖タンパク質である。
【0005】
いくつかの受容体チロシンキナーゼでは、選択的スプライシングおよび選択的ポリアデニル化のプロセスは、同じ遺伝子に由来するいくつかの異なるポリペプチドを作り出すことができる。これらは上記で挙げられた種々のドメインを含んでも含んでいなくともよい。結局、いくつかの細胞外ドメインは細胞によって分泌された個々のタンパク質として発現されてもよく、いくつかの形態の受容体はチロシンキナーゼドメインを欠いていてもよく、短いカルボキシ末端含むトランスメンブランドメインを介して原形質膜に挿入された細胞外ドメインのみを含んでもよい。
【0006】
脈管系、胚の脈管形成および脈管形成、血液凝固、創傷治癒および再生、ならびにいくつかの疾病の生理学には血管を裏打ちする血管内皮が関与している。脈管樹状構造の発達は脈管形成を通じ、いくつかの理論に従って起こり、血管からの出芽による動脈およぼ静脈の発達の少し後にリンパ系の形成が始まる。F.R., Am. J. Anat. 9:43 (1909);およびvan der Putte, S.C.J, Adv. Anat. Embryol. Cell Biol. 51:3 (1975)参照。
【0007】
胎児期の後、内皮細胞は、新血管新生に関する脈管形成時以外は極めてゆっくり増殖する。脈管形成を刺激する増殖因子は特異的内皮細胞表面受容体チロシンキナーゼを介してそれらの作用を発揮する。
【0008】
受容体チロシンキナーゼのリガンドのうち、血小板由来増殖因子(PDGF)はひな漿尿膜では弱くとも脈管形成性があることが分かっている。形質転換増殖因子α(TGFα)はいくつかの腫瘍細胞種により、またマクロファージにより分泌される脈管形成因子である。c−met前癌遺伝子によりコードされる受容体のリガンドである肝細胞増殖因子(HGF)もまた、培養内皮細胞におけるTGFαのそれに対する応答同様、強力な脈管形成性、誘導性がある。
【0009】
種々の証拠が、内皮細胞の増殖、分化、ならびにある種の分化した機能の刺激に腫瘍な役割を果たし得る内皮細胞特異的増殖因子および受容体が存在することを示している。最も広く研究されている増殖因子は、PDGFファミリーのメンバーである血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である。血管内皮増殖因子はジスルフィド結合23kDaサブユニットの二量体糖タンパク質であり、これは内皮細胞に対するその分裂促進活性およびその血管透過誘導能(従ってその別名は血管透過性因子)のために発見された。報告されているその他のVEGFの作用としては、細胞内Ca2+の可動化、プラスミノーゲンアクチベーターおよびプラスミノーゲンアクチベターインヒビター−1合成の誘導、内皮細胞におけるヘキソース輸送の刺激、ならびにin vitroにおける単球移動の促進が挙げられる。異なるmRNAスプライシング変異体によってコードされる4つのVEGFイソ型は同じように内皮細胞の有糸分裂誘発を刺激し得ることが分かっている。VEGFの121および165アミノ酸イソ型は可溶性形態で分泌されるが、189および206アミノ酸残基のイソ型は細胞表面に会合したままであり、強いヘパリン親和性を有する。関連の胎盤増殖因子としては、可溶性の非ヘパリン結合形態およびヘパリン結合形態(PlGF、それぞれ131および152アミノ酸)も記載されており、これは胎盤、栄養膜腫瘍やヒト培養内皮細胞で発現する。
【0010】
VEGF発現のパターンは正常な脈管系の発達および維持、ならびに腫瘍の脈管形成におけるその関与が示唆されている。ネズミの発達中、交尾後7.5日の内胚葉は総てVEGFを発現し、心室神経外胚葉は毛細血管挿入期にVEGFを産生する。ウズラ発達2日目では、卵黄嚢の血管新生領域ならびに胚全体でVEGFの発現が見られる。さらにマウス成体において有窓内皮に隣接する内皮細胞は持続性のVEGF発現を示し、このことはこの特異的内皮表現型および機能の維持における役割を示唆している。
【0011】
高い親和性の2つのVEGF受容体、VEGFR−1/Flt1(fms様チロシンキナーゼ−1)およびVEGFR−2/Kdr/Flk−1(キナーゼインサートドメイン含有受容体/胎児肝キナーゼ−1)が同定されている。これらの受容体はPDGF受容体ファミリーに分類されている。しかしながらVEGF受容体はそれらの細胞外ドメインに7つの免疫グロブリン様ループ(PDGFファミリーのその他のメンバーでは5つであるのに対して)とより長いキナーゼインサートを有する。VEGF受容体の発現はいくらかは単球や黒色腫細胞系統にも存在するが、主として血管内皮細胞で起こる。内皮細胞だけがVEGFに応答して増殖することが報告されているが、異なる供給源からの内皮細胞は異なる応答を示す。このように、VEGFR−1およびVEGF−2によって媒介されるシグナルは細胞種特異的であることが明らかである。
【0012】
VEGFR−1およびVEGFR−2はVEGF165と高い親和性(それぞれKd20pMおよび200pM)。Flk−1受容体もVEGFに応答して自己リン酸化を受けることが示されているが、Flt1のリン酸化はほとんど検出されていない。VEGFR−2によって媒介されるシグナルはこの受容体を過剰発現するブタ大動脈内皮細胞の著しい形態変化、アクチン再構成および波打ち運動を引き起こす。これらの細胞では、VEGFR−2もリガンド誘導性の走化性および細胞分裂促進を媒介したが、一方、VEGFR−1トランスフェクト細胞はVEGFに対する細胞分裂応答を欠いていた。これに対してVEGFはVEGFR−1を発現するラット洞様内皮細胞に対して強い増殖刺激作用を持っていた。VEGFR−1およびVEGFR−2と共沈降するリンタンパク質は異なっているが、このことは異なるシグナル伝達分子が受容体特異的細胞内配列と相互作用することを示唆するものである。
【0013】
in situハイブリダイゼーション研究では、マウスVEGFR−2mRNA発現は、内皮が由来する卵黄嚢および胚内中胚葉(交尾後(p.c.)推定7.5日の胚)、ならびにその後、予定血管芽細胞、心内膜、および大・小血管内皮(12.5日p.c.)で認められた。増殖中の血管芽内皮細胞および胎児および生後初期の脳の分枝中の血管にVEGFR−2mRNAが豊富であり、成体の脳で発現が低いことは、VEGFR−2が脈管形成および血管形成の主要なレギュレーターであることを示唆するものである。VEGFR−1発現はマウス胎児における初期の血管発達および治癒中の皮膚創傷における新血管新生に同様に関連している。しかしながら成体の器官で高レベルのVEGFR−1の発現が検出されたことは、VEGFR−1が細胞増殖には関連のない休止した成熟血管内皮における機能を有していることを示唆している。鳥類のVEGFR−2相同体は原腸形成の開始から中胚葉で認められたが、VEGFR−1相同体は初期に内皮マーカーを同時発現する細胞で認められた。in vitroエピブラスト培養では、これらの細胞の脈管形成分化に必要なFGF−2はVEGFR−2発現をアップレギュレートした。両VEGF受容体の発現はその後の発達ではより制限されるようになることが分かっている。ヒト胎児組織では、VEGFR−1およびVEGFR−2は重複するがわずかに異なる発現パターンを示した。これらのデータはVEGFおよびその受容体がパラ分泌様式で働いて内皮細胞の分化と組織の新血管新生を調節することを示唆している。
【0014】
最近、VEGFは内皮細胞の増殖および脈管形成の低酸素症誘発性の刺激因子であことが示され、特異的モノクローナル抗体を用いるVEGF活性の阻害が実験的腫瘍の増殖およびそれらの脈管形成密度を低下させることが示されている[Ferrara et al., Endocrine Reviews, 18: 4-25 (1997); Shibuya et al, Adv. Cancer Res., 67:281-316 (1995); Kim et al., Nature, 362: 841-844 (1993)]。
【0015】
数立方ミリメートルの大きさを超える固形腫瘍の増殖は血管供給に依存し、このことは脈管形成を魅力ある抗癌療法とする。内因性脈管形成阻害剤、またはアンギオスタチン、プラスミノーゲン断片、およびエンドスタチン、コラーゲン18断片を含む「スタチン類」で助長的な結果が報告されている[O'Reilly et al, Cell, 79: 315-328 (1994); O'Rreilly et al., Cell, 88: 277-85 (1997)]。両因子は通常、一次腫瘍によって産生され、転移休眠を維持する。いずれかのスタチンの全身投与は動物モデルの一次腫瘍の休眠を誘導および維持することも示されている。受容体およびスタチンによるシグナル伝達、ならびにそれらを活性化するプロテアーゼはまだ同定されていない。癌およびその他の病理学的病状の治療における脈管形成の制御するためにはさらなる治療分子の必要性が存在する。
【0016】
一次乳癌はいくつかの脈管形成性ポリペプチド(そのうちVEGFが最も存在量が多い)を発現することが示されている[例えば、Relf et al, Cancer Res., 57: 963-969 (1997)参照]。腫瘍細胞は侵襲性および非侵襲性いずれの腺管癌(in situ)乳癌でも高レベルのVEGFmRNAを含んでいた[Brown et al., Hum. Pathol., 26: 86-91 (1995)]。in situ癌腫に隣接する内皮細胞はVEGFR−1およびVEGFR−2mRNAを発現した。VEGFおよびその受容体は、いくつかの独立した研究で腫瘍の血管密度と疾病の予後との間に相関が認められていることから、悪性乳癌の脈管形成の進行に寄与している可能性がある[Weidner et al., J. Natl. Cancer Inst., 84 1875-1887 (1992)]。診断およびスクリーニングを改良し、ならびに治療的介入の標的として機能させるには、乳癌および乳癌に関連する脈管形成のさらなるマーカーの必要性が存在する。
【0017】
リンパ系の主要な機能は、組織からの環流を与え、多くの血管外物質を再び血液へ輸送することである。さらに、成熟のプロセスでは、リンパ球は血液から出発し、リンパ器官やその他の器官を通って移動してリンパ管に入り、胸管を通って血液に戻る。特殊な細静脈である高内皮細静脈(HEV)は再びリンパ球と結合して、それらの組織への管外遊出を引き起こす。このようにリンパ管および特にリンパ節は免疫および種々の腫瘍の転移の進行に重要な役割を果たす。
【0018】
20世紀のはじめから、胎児のリンパ系の起源に関して3つの異なる理論が示されている。しかしながらリンパ管はそれらのための利用できる特異的マーカーが知られていないので同定が困難であった。
【0019】
リンパ管は最も一般にはリンパ管造影によって研究されている。リンパ管造影では、X線造影剤が直接リンパ管に注入される。この造影剤はリンパ節に回収されるが、ここで半年まで留まり、この期間の間X線解析によりリンパ節の大きさや構造の追跡調査が可能となる。この診断はリンパ節に転移のある癌患者や、リンパ腫などのリンパ性腫瘍においては特に重要である。しかしながら当技術分野ではリンパ組織を造画する材料および方法の改良が必要とされている。
【0020】
発明の概要
本発明は、第5染色体に位置し、未知のヒト白血病細胞由来チロシンキナーゼ相同体PCR−cDNA断片として同定される、新規な受容体チロシンキナーゼ遺伝子を得ようとするものである[Aprelikova et al., Cancer Res., 52: 746-748 (1992)]。この遺伝子およびそのコードタンパク質はFlt4と呼ばれる。この略号はfms様チロシンキナーゼ4から来ている。
【0021】
Flt4はVEGFR−1およびVEGFR−2遺伝子の産物に構造的に密接に関連のある受容体チロシンキナーゼである。この類似性および続いて発見されたこれら3つの受容体のリガンド間の類似性により、Flt4受容体は加えてVEGFR−3と呼ばれている。Flt4およびVEGFR−3は本明細書では相互交換的に用いられる。これら3つの受容体間の類似性にもかかわらず成熟型のFlt4はVEGFとは異なっており、これは細胞外ドメインのタンパク質分解切断において125/120kDと75kDの2つのジスルフィド結合ポリペプチドが得られる。Flt4遺伝子は4.5と5.8kbのmRNAをコードし、これは選択的3’エキソンを示し、それぞれ190kDと195kDのポリペプチドをコードしている。
【0022】
識別のさらなる証拠としては、VEGFはFlt4に対して特異的結合を示さず、その自己リン酸化を誘導しないということである。
【0023】
Flt4、Flt1およびKDR/Flt−1受容体mRNAシグナルの比較からは、研究された組織においては重複するが異なる発現パターンが示されている[Kaipainen, et al., J. Exp. Med., 178: 2077 (1993)]。Flt4遺伝子の発現はVEGFR−1またはVEGFR−2の発現よりも制限されていると思われる。Flt4の発現はまず、交尾後8.5日のマウス胚の頭部間葉織の血管芽細胞、主静脈、および胚外では尿膜におけるin situハイブリダイゼーションによって検出可能となっている。交尾後12.5日の胚においては、Flt4シグナルは発達中の静脈および予定リンパ内皮で認めらるが、動脈内皮は陰性であると思われる。その後の発達段階では、Flt4mRNAは発達中のリンパ管に限られるようになる。成人組織ではリンパ内といくつかの高内皮静脈だけがFlt4mRNAを発現し、転移性のリンパ節およびリンパ管腫のリンパ洞で高い発現が起こる。これらの結果はリンパ管の静脈起源説を支持するものである。
【0024】
ヒト赤白血病細胞系統からクローン化されたFlt4受容体チロシンキナーゼcDNAのタンパク質産物はN−グリコシル化されており、その細胞外ドメインに7つの免疫グロブリン様ループを含んでいる。Flt4およびKDRの細胞質チロシンキナーゼドメインはFlt1およびKDRの対応するドメインとアミノ酸レベルで約80%同一であり、血小板由来増殖因子、コロニー刺激因子−1、幹細胞因子の受容体、およびFlt3受容体と約60%同一である。Pajusola et al., Cancer Res., 52: 5738 (1992)参照。
【0025】
本発明は、Flt4タンパク質およびそのペプチド断片の産生およびその他の供給源からの関連遺伝子の発見に有用なFlt4受容体チロシンキナーゼをコードする単離ポリペプチド(例えば、所定の構造のDNAまたはRNAセグメント)を提供する。
【0026】
本発明は、微生物または真核細胞に挿入可能であって、コードされているタンパク質を発現できる、Flt4受容体チロシンキナーゼまたは関連のタンパク質をコードする異種セグメントを含む組換えDNAベクターを提供する。
【0027】
本発明は、有用な量のFlt4受容体チロシンキナーゼおよび多くの種に由来する同一機能を有するタンパク質を産生可能な真核細胞を提供する。
【0028】
本発明は、実験室内で、または微生物によって合成的に産生し得るペプチド(このペプチドは天然のFlt4受容体チロシンキナーゼタンパク質の活性を模倣する)を提供する。もう1つの具体例では本発明は、Flt4受容体チロシンキナーゼタンパク質の活性を阻害するペプチドに向けられる。
【0029】
(a)Flt4短鎖型(そのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列は配列番号1および2に示されている)、および(b)そのカルボキシ末端に異なるヌクレオチドおよび対応するアミノ酸残基を有する第2の形態、すなわちFlt4長鎖型(そのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列は配列番号3および4に示されている)からなる群から選択されるペプチドが特に好ましい。Flt4長鎖型は1363個のアミノ酸残基長を有する。
【0030】
上記で示されたタンパク質またはペプチドのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含んでなるDNAおよびRNA分子、組換えDNAベクター、および改変された微生物または真核細胞も本発明の一部をなす。特に、下記の2つのDNA配列番号、すなわち(a)Flt4短鎖型[配列番号2]をコードする配列番号1のようなDNA配列、および(b)Flt4長鎖型[配列番号4]をコードする、配列番号1のヌクレオチド3913〜4416が変化したFlt4をコードする配列番号3のようなDNA配列の総てもしくは一部を含んでなる配列、相補的DNAまたはRNA配列、または対応するRNA配列が特に好ましい。
【0031】
遺伝子操作およびオリゴヌクレオチドプローブの作製の技術によるかかるペプチドの産生に関する本発明の好ましい態様を実施するのに用いられる、さらに大きな配列のセグメントを含むDNAおよびRNA分子も提供される。
【0032】
本明細書ではFlt4タンパク質をコードするDNA配が同定されているので、市販の装置を用いて例えばポリメラーゼ連鎖反応、または合成化学によってFlt4タンパク質をコードするDNAを作製し、その後、その遺伝子を組換えDNA技術の公知の手法を用い、利用可能な多くのDNAベクターのいずれかへ挿入すればよい。さらに、本明細書に開示されたペプチドのいずれかの直接合成を容易に利用できるようにする自動装置も利用できる。
【0033】
本発明はまたFlt4ペプチドおよびその他の構築物、ならびにリンパ内皮細胞の特異的マーカーとしてのFlt4の使用に向けられる。
【0034】
具体例では、本発明は、Flt4を認識する核酸プローブおよび抗体、特にモノクローナル抗体、ならびにかかる抗体を含む組成物に向けられる。
【0035】
また具体例では、本発明は、組織サンプルおよび器官においてリンパ管をモニターする方法に向けられる。さらに本発明の目的としては、リンパ組織および特にはリンパ管の状態(炎症、感染、外傷、増殖など)を示す臨床的検出法を提供すること、ならびに生物においてリンパ管、例えばリンパ管形成を検出する方法を提供することがある。
【0036】
本発明のさらなる目的としては、Flt4受容体タンパク質またはその種々のエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することにある。組織、特にリンパ組織においてFlt4受容体を検出および定量する診断目的でこれらのモノクローナル抗体を使用することも本発明の目的である。抗Flt4抗体に関して、「Flt4を特異的に認識する」、「Flt4と特異的に結合する」、「Flt4に特異的」などは抗体が、VEGFR−2/Kdr/Flk−1およびVEGFR−1/Flt1をはじめとするその他の内皮細胞表面受容体よりも優先的にFlt4と結合する(免疫反応する)ことを意味する。このように、Flt4「に特異的」なFlt4抗体またはその他のFlt4結合化合物はその他の抗原のエピトープには結合できないか、またはこれらの実施上無視できるような、それらのFlt4結合親和性より十分に低い親和性でしか他の抗原には結合しないので、本明細書に記載の本発明の方法に従って組織または生物学的サンプル中のFlt4を同定および/または標識する(例えば、造画、検出、スクリーニングまたは標的治療)に有用である。
【0037】
本発明のもう1つの態様は、細胞サンプルのFlt4受容体の存在を決定する方法であって、(a)細胞サンプルを本発明の抗体、特にモノクローナル抗体に曝して;(b)該モノクローナル抗体とFlt4受容体との結合を検出する工程を含んでなる方法に関する。
【0038】
本発明はリンパ管形成、ならびに炎症性、感染性および免疫学的症状においてFlt4の機能を調整する(例えば、弱めるまたは増大させる)方法にさらに向けられる。例えば1つの具体例において、かかる方法は、特にFlt4の機能が転移性癌、リンパ腫、炎症(慢性または急性)、感染症および免疫学的症状などの疾病と関連している場合に、かかる反応にあずかるFlt4内皮細胞部位を封鎖するに十分な量のFlt4結合化合物を提供することによりFlt4によって媒介されるリンパ管形成を阻害することを含んでなる。
【0039】
本発明は特異的Flt4刺激リガンドおよびモノクローナル抗体と、リンパ系内皮を刺激するためのその使用、またFlt4機能に関連する様々な病状におけるものなど、要すれば、Flt4の機能を阻害するリガンドの研究により誘導された抗体とともに、断片およびペプチドにもさらに向けられる。
【0040】
本発明はFlt4受容体チロシンキナーゼのリガンドの細胞系統供給源を提供する。これらの細胞からのコンディショニング培地を用いてFlt4リガンドを精製し、当技術分野の常法を用いてクローニングする。このコンディショニング培地または精製リガンドを用いてFlt4リガンドのアッセイ系および二量体化阻害剤、ならびにFlt4シグナル変換の阻害剤を得られるが、これらによりかかる阻害剤の同定および調製が可能となる。
【0041】
本発明の好ましい具体例では、PC−3細胞系統のコンディショニング培地はFlt4受容体を刺激してある内皮細胞の増殖および分化、ならびに分化した機能を調節し得るタンパク質またはその断片を含んでなる。Flt4リガンドまたはそのペプチドもしくは誘導体は内皮細胞の増殖、分化、およびその分化した機能の調節において、またリガンドのアゴニストおよびアンタゴニストの生成において有用である。特にFlt4リガンドはリンパ系内皮の調節において有用である。しかしながら、Flt4リガンドはまた精製または組換え起源からの作製の際に、関連したKDR/aFlk−1受容体も刺激すると思われる。
【0042】
Flt4刺激リガンドの同定により直接的にこのリガンドの阻害剤またはFlt4機能の阻害剤についてアッセイすることが可能になる。かかる阻害剤をFlt4リガンド含有コンディショニング培地に単純に加え、それらが自己リン酸化を阻害する場合、それらはFlt4シグナリング阻害剤として作用していることになる。例えば組換えまたは合成ペプチド(限定されるものではないが、Flt4細胞外ドメインの断片を含む)をFlt4−リガンド相互作用またはFlt4二量体化の阻害についてアッセイすることができる。かかる推定Flt4阻害剤および、さらにはFlt4受容体−リガンド相互作用を妨害するFlt4リガンドに対する抗体、ペプチドまたは他の化合物、ならびにFlt4リガンドをコードするmRNA配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドが内皮細胞の調節において、また内皮細胞機能に関連した疾病の治療において有用である。
【0043】
VEGF−Cと呼ばれるFlt4リガンドの詳細な特性が、1998年2月2日に出願され、国際公開第WO98/33917号として公開されたPCT特許出願第PCT/US98/01973号;1996年8月1日に出願され、国際公開第WO97/05250号として公開されたPCT特許出願第PCT/FI96/00427号;および優先権を得た米国特許出願優先権証明書で提供されており、これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる。プレプロVEGF−Cの推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号21で示されている。
【0044】
VEGF−Dと呼ばれる第2のFlt4リガンドの詳細な説明がAchen, et al., Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A., 95 (2): 548-553 (1998)、およびGenbank受入番号AT000185で提供されており、これら双方とも引用することにより本明細書の一部とされる。プレプロVEGF−Dの推定アミノ酸配列は本明細書において配列番号22で示されている。
【0045】
本発明はまた細胞におけるFlt4チロシンキナーゼ(Flt4)の発現によって特徴づけられる疾病を患う哺乳類生物を治療する方法であって、哺乳類生物に、Flt4リガンドタンパク質と生物の細胞で発現されるFlt4との結合を阻害するのに有効な化合物を含んでなる組成物を投与し、それによりFlt4機能を阻害する工程を含んでなる方法に向けられる。該疾病は所望でないリンパ管形成を特徴とする疾病など、すでに上述した疾病である。さらに、Flt4発現が少なくともいくつかの乳癌、およびあるいはその他の癌に関連する血管の脈管構造においても(すなわち相当する正常(健康な)組織の血管の脈管構造におけるかろうじて検出可能な、または検出されないレベルの発現を大いに上回るレベルにおいて)起こることがわかってきた。よって、好ましい具体例において細胞は内皮細胞(リンパ系または血管)を含んでなる。もう1つの具体例において細胞はFlt4を発現するあるリンパ腫などの腫瘍細胞を含んでなる。特にヒトの治療が意図される。
【0046】
「Flt4リガンドタンパク質と生物の細胞で発現されるFlt4との結合を阻害するのに有効な化合物」とは、PC−3コンディショニング培地から単離可能な血管内皮増殖因子Cとして本明細書に記載されるFlt4リガンドの結合を阻害するいずれの化合物をも意味する。かかる化合物はまた血管内皮増殖因子DとFlt4との結合を阻害するのにも有効であると考えられる。典型的な化合物として次のポリペプチド:(a)抗Flt4抗体の抗原結合断片を含んでなるポリペプチド;(b)可溶性Flt4断片(例えば細胞外ドメイン断片)を含んでなるポリペプチド(この断片およびポリペプチドはFlt4リガンドと結合し得る);(c)脊椎動物血管内皮増殖因子C(VEGF−C)ポリペプチドの断片または類似体を含んでなるポリペプチド(このポリペプチドおよび断片または類似体は天然の宿主細胞(すなわちそれらの表面で天然のFlt4タンパク質を発現する生物の細胞)で発現されるFlt4と結合するが、これを刺激することはできない);および(d)脊椎動物血管内皮増殖因子D(VEGF−D)ポリペプチドの断片または類似体を含んでなるポリペプチド(このポリペプチドおよび断片または類似体は天然の宿主細胞で発現されるFlt4と結合するが、これを刺激することはできない)が挙げられる。
【0047】
標準in vitroスクリーニングアッセイにより、例えばVEGF−Cおよび組換えにより発現されるFlt4を用いて同定可能な小分子阻害剤もまた意図される。抗Flt4抗体の抗原結合断片を含んでなるポリペプチドが非常に好ましい。かかるポリペプチドには、例えばFlt4と特異的に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体;かかる抗体の断片;キメラおよびヒト化抗体;Flt4と特異的に結合し、また別の抗原とも特異的に結合する二重特異性抗体などが挙げられる。循環中のFlt4リガンドと結合し、それによりリガンドとFlt4との結合を阻害する化合物の使用についても意図される。かかる化合物には、抗VEGF−Cもしくは抗VEGF−D抗体またはその抗原結合断片を含んでなるポリペプチドが挙げられる。関連の変法では、本発明は下流で細胞内Flt4シグナル伝達を妨害し、それによりFlt4機能を阻害する治療方法を意図する。
【0048】
好ましい変法では、化合物は本明細書の他の部分で記載した検出可能な標識、または細胞傷害性薬剤をさらに含んでなる。典型的な細胞傷害性薬剤には、植物毒(例えばリシン、サポニン)、細菌または真菌毒、放射性同位元素(例えば211−アスタチン、212−ビスマス、90−イットリウム、131−ヨウ素、99m−テクニチウム、および本明細書に記載のその他のもの)、抗代謝剤(例えばメトトレキサート、5−フルオロデオキシウリジン)、アルカリ化剤(例えばクロラムブチル)、有糸分裂阻害剤(例えばビンカアルカロイド)、およびDNAインタカレート剤(例えば、アドリアマイシン)が挙げられる。
【0049】
また、投与を改良するには組成物が医薬上許容される希釈剤、アジュバントまたは担体媒質をさらに含んでなることが好ましい。
【0050】
本明細書において詳細に説明するように、Flt4発現は主として健康な成人のリンパ系内皮に限定される場合、少なくともある腫瘍を取り囲む血管構造で確認されてきた。従って、本発明は血管の内皮細胞におけるFlt4チロシンキナーゼ(Flt4)の発現によって特徴づけられる腫瘍性疾患を患う哺乳類生物を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類生物に、Flt4リガンドタンパク質と生物の血管内皮細胞で発現されるFlt4との結合を阻害するのに有効な化合物を含んでなる組成物を投与し、それによりFlt4によって媒介される血管内皮細胞の増殖を阻害する工程を含んでなる方法をさらに含む。特に癌腫(乳癌)、扁平上皮癌、リンパ腫、黒色腫および肉腫から選択される腫瘍性疾患の治療を意図する。しかしながら、本明細書において詳細に記載されるスクリーニング手法により本明細書において記載される抗Flt4治療管理に従いやすい候補となる、血管内皮細胞におけるFlt4発現によって特徴づけられるその他の腫瘍が確認されることは容易に理解されよう。
【0051】
特に血管内皮細胞におけるFlt4発現によって特徴づけられる乳癌の治療を意図する。「血管の内皮細胞におけるFlt4チロシンキナーゼの発現によって特徴づけられる腫瘍性疾患」とは、本明細書において例示されるように健康な組織の血管で通常観察される、かろうじて検出可能な、または検出されないレベルをかなり上回るレベルにおいてFlt4が血管構造で同定可能である疾患を意味する。
【0052】
治療上有効な量の化合物は、当技術分野で認知される用量漸増および用量−反応アッセイを用いて経験的に決定される。「腫瘍の治療に治療上有効な」とは、癌治療を受ける患者に対して許容できないレベルの副作用がなく、腫瘍増殖を弱めるのに有効な量、もしくは腫瘍増殖を抑えるのに有効な量、または腫瘍を全体的に縮小するまたは排除するのに有効な量を意味する。化合物が抗体またはその他のポリペプチドを含んでなる場合、特に体重kg当たり約0.1〜100mg抗体の用量、さらに好ましくは1〜10mg/kgであると考えられる。典型的に長期循環半減期を示すヒト化抗体については、特に毎日〜1ヶ月おきの範囲に及ぶ間隔で、さらに好ましくは毎週、もしくは1週間おき、または3週間おきの投与が考えられる。治療の経過、患者の副作用、および循環する抗体レベルをモニターすることにより、任意の投与管理についてのさらなる指針が提供される。その他の抗体を基礎材料にした癌治療用物質(例えば抗HER2、抗EGF受容体)についての公開されかつ進行中の臨床試験のデータによっても有用な投与管理指針が提供される。
【0053】
本明細書において記載される治療方法に関し、好ましい化合物には抗Flt4抗体の抗原結合断片を含んでなるポリペプチド、および可溶性Flt4細胞外ドメイン断片を含んでなるポリペプチドが挙げられる。ヒトおよびヒト化抗Flt4抗体が極めて好ましい。
【0054】
本発明の治療方法の期待される利点は、Flt4が通常健康な組織の血管構造ではいずれの重大なレベルでは発現されないということにある。極めて好ましい具体例において、治療用化合物は二重特異性抗体またはその断片を含んでなり、該抗体または断片はFlt4と特異的に結合し、かつ血管内皮マーカー抗原と特異的に結合する。「血管内皮マーカー抗原」とは、増殖中の血管内皮細胞で発現され、好ましくはリンパ系内皮細胞では発現されないいずれかの細胞表面抗原を意味する。典型的な血管内皮マーカーには、PAL−E[deWaal, et al., Am. J. Pathol., 150: 1951-1957 (1994)]、VEGFR−1およびVEGFR−2[Ferrara et al., Endocrine Reviews, 18: 4-25 (1997)]、Tie[Partanen et al., Mol. Cell. Biol. 12: 1698-1707 (1992)]、エンドグリン[引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,776,427号]、およびフォン・ビルブラント因子が挙げられる。かかる二重特異性抗体はFlt4および血管内皮マーカーの双方を発現する腫瘍関連脈管構造に選択的に存在すると考えられる。極めて好ましい具体例において、化合物は腫瘍細胞を壊死させる、および/または腫瘍細胞への脈管構造供給を立つ目的で二重特異性抗体と共役した抗腫瘍薬または細胞傷害性薬剤をさらに含んでなる。典型的な薬剤には、上述のものおよびまた宿主において腫瘍に対する免疫応答を刺激するスタチン類、サイトカイン類、ケモカイン類などの治療用タンパク質も挙げられる。
【0055】
もう1つの具体例において、化合物はFlt4/Flt4リガンド複合体(例えば、VEGF−CまたはVEGF−Dと結合したFlt4からなる複合体)からなるエピトープを認識する抗体(または二重特異性抗体)を含んでなる。
【0056】
治療用化合物を、脈管形成因子を阻害する可能性を有する広域スペクトルを有する薬剤と複合化して、またはこの薬剤と同時投与することもさらに意図される。かかる薬剤には、例えば ヘパリンと結合する脈管形成因子を阻害するヘパリン結合剤(ペントサンおよびスラミン類似体);およびフマギリンなどの内皮細胞増殖および移動を止める化学薬剤が挙げられる。
【0057】
また抗Flt4化合物と、抗Flt4化合物により腫瘍血管に向けられ、次いで腫瘍増殖部位で局所的に活性化される(例えば照射)プロドラッグとの共役も意図される。かかるプロドラッグ戦略の使用にはFlt4を発現する薬剤の健康なリンパ管への副作用が最小限になるという利点があると考えられている。
【0058】
同様に、本発明は、血管の内皮細胞におけるFlt4チロシンキナーゼ(Flt4)の発現によって特徴づけられる腫瘍性疾患を患う哺乳類生物を治療する方法であって、血管の内皮細胞におけるFlt4の発現によって特徴づけられる腫瘍性疾患状態を患う哺乳類生物を同定し、かかる治療を必要とする哺乳類生物に、Flt4リガンドタンパク質と生物の血管内皮細胞で発現されるFlt4との結合を阻害するのに有効な化合物を含んでなる組成物を投与し、それによりFlt4によって媒介される血管内皮細胞の増殖を阻害する工程を含んでなる方法を含む。
【0059】
本発明はまた生物学的サンプルをFlt4受容体チロシンキナーゼタンパク質(Flt4)の存在についてスクリーニングする方法であって、(a)化合物と生物学的サンプル中のFlt4とが結合する条件下でFlt4を含むと推定される生物学的サンプルと、Flt4結合化合物を含んでなる組成物とを接触させ;(b)生物学的サンプル中のFlt4と結合していないFlt4結合化合物を除去する条件下で生物学的サンプルを洗浄し;さらに(c)洗浄工程後にそのサンプルにおいてFlt4受容体チロシンキナーゼタンパク質に結合したFlt4結合化合物を検出することにより、サンプルをFlt4の存在についてスクリーニングする工程を含んでなる方法を提供する。好ましくは、化合物は(a)抗Flt4抗体の抗原結合断片を含んでなるポリペプチド;および(b)Flt4リガンドまたはFlt4結合断片またはその類似体を含んでなるポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含んでなる。特異的にFlt4と結合し、
かつ検出可能なマーカーをさらに含んでなる抗体が非常に好ましい。
【0060】
本発明はFlt4受容体チロシンキナーゼタンパク質(Flt4)を発現する細胞を含むと推定される脊椎生物組織のイメージング法であって、(a)脊椎生物組織とFlt4結合化合物を含んでなる組成物とを接触させ;さらに(b)その組織に結合したFlt4結合化合物を検出することにより組織を造画する工程を含んでなる方法にも向けられる。好ましくはその組織はヒト組織であり、その方法は接触工程の後、造画工程の前に、組織から組織中のFlt4と結合していないFlt4化合物を除去する条件下で組織を洗浄する工程をさらに含んでなる。
【0061】
関連した変法では、本発明は脊椎生物由来の組織の腫瘍イメージング法であって、(a)腫瘍を含むと推定される脊椎生物組織と、Flt4結合化合物を含んでなる組成物とを接触させ;(b)その組織において細胞に結合したFlt4結合化合物を検出し;さらに(c)Flt4結合化合物が結合した血管内皮細胞を同定することにより固形腫瘍を造画し、そこでFlt4を発現する血管が組織における腫瘍の存在および位置に相関している工程を含んでなる方法を提供する。
【0062】
1つの好ましい具体例において、その方法は組織と、リンパ系内皮細胞には実質的に存在しない血管内皮マーカー(例えばPAL−E、VEGFR−1、VEGFR−2)と特異的に結合する第2の化合物とを接触させ;さらに組織において細胞と結合した第2の化合物を検出する工程をさらに含んでなり、造画工程が、Flt4結合化合物と第2の化合物の双方で標識された血管を同定することを含んでなり、ここでFlt4結合化合物と第2の化合物の双方で標識された血管が組織における腫瘍の存在および位置に相関している。第2の化合物の使用は医師がFlt4を発現している血管とその表面でFlt4を発現する正常なリンパ管とをより迅速に識別する補助となることが理解されよう。
【0063】
本発明は腫瘍性疾患の状態のスクリーニング方法であって、(a)腫瘍性疾患の状態にあると推定される哺乳類生物由来の組織と、Flt4受容体チロシンキナーゼと特異的に結合する抗体または抗体断片を含んでなる組成物とを接触させ;(b)哺乳類生物において細胞に結合した抗体または抗体断片を検出し;さらに(c)哺乳類生物において細胞に結合した抗体の量または分布から腫瘍性疾患をスクリーニングする工程を含んでなる方法にさらに向けられる。本明細書において記載されるようにFlt4(通常血管構造においては検出されないか、またはかろうじて検出可能である)は少なくともいくつかの腫瘍の血管構造で強く染色される。よって、1つの具体例においてスクリーニング工程では血管内皮細胞に結合した抗体または抗体断片の検出は腫瘍性疾患の存在に相関している。この方法での「検出」とは、本明細書において記載されるように相当する正常(健康な)組織で起こるかろうじて検出可能な、または検出されないレベルを有意に上回るレベルにおける検出を意味する。かかる特徴的な発現は健康な生物由来の組織を用いて行う対照との比較により確認できる。特に哺乳類組織の腫瘍のスクリーニングを意図する。上述のように、かかる方法の実施は血管内皮マーカーと特異的に結合する第2の化合物を哺乳類に投与することによりさらに容易になり、そこで検出工程は腫瘍内皮細胞と結合した第1および第2の化合物を検出することを含んでなる。
【0064】
上述から本発明の方法における使用が記載された様々な化合物もまた本発明の態様とされることがさらに理解されよう。かかる化合物には、例えば上述の抗Flt4抗体および二重特異性抗体が挙げられる。同様に、本明細書に記載された治療もしくは診断、または造画のための医薬の製造における、本明細書に記載されたいずれの化合物の(単独または組み合わせての)使用もまた本発明の態様とされる。医薬は医薬上許容される希釈剤、アジュバントまたは担体などをさらに含んでなってもよい。
【0065】
同様に、本発明は本発明の方法を実施するため、その使用が容易になるようにパッケージされた本発明の化合物または組成物を含んでなるキットを含む。最も簡単な具体例において、かかるキットは、密閉ボトルまたは密閉容器などのラベルの貼られた容器にパッケージされた、または本発明の方法を実施するために化合物または組成物の使用を記載するパッケージに入っている本発明の化合物または組成物を含む。好ましくは化合物または組成物は単位投与形にパッケージされる。もう1つの具体例では、本発明のキットはリンパ系内皮には実質的に存在しないが、血管内皮細胞の表面で発現されるマーカー(抗原)と結合する第2の化合物とともにパッケージされたFlt4結合化合物を含む。
本発明のさらなる特徴および変法は、詳細な説明をはじめとする本出願全容から当業者には明らかであり、かかる総ての特徴は本発明の態様とされる。また本明細書において記載された本発明の特徴は、特徴の組合せが本発明の態様または具体例として特に上述されるか否かには関係なく、さらなる具体例に再び組み入れることが可能であり、これはまた本発明の態様とされる。また本発明に重要であるとして本明細書において記載されるかかる制限のみを制限とみるべきであり;重要であるとは本明細書において記載されなかった制限のない本発明の変法も本発明の態様とされる。
【0066】
上述のものに加え、本発明はさらなる態様として、特に上述された変法よりもとにかく範囲の制限された本発明の総ての具体例を含む。出願人は本明細書に添付される請求の全範囲を発明したが、本明細書に添付される請求の範囲は他者の先行技術研究をその範囲内に含むものではない。よって、特許庁もしくはその他の団体または個人により請求の範囲内にある制定法上の先行技術が出願人の目に留まる場合には、かかる請求の範囲の内容を再び定義して、特にかかる請求の範囲からかかる制定法上の先行技術または制定法上の先行技術の明白な変形を排除する適用できる特許法の下、出願人は修正された権利を行使する権利を有する。かかる補正の請求の範囲により定義された本発明の変形もまた本発明の態様とされる。
【0067】
詳細な説明
Flt4と呼ばれる新規受容体チロシンキナーゼのクローニング、配列決定および発現について以下に記載する。Flt4遺伝子は数多くの増殖因子および増殖因子受容体が存在する染色体領域5q35に位置している。Flt4の細胞外ドメインは12の有力なグリコシル化部位をはじめとする7つの免疫グロブリン様ループで構成されている。構造上の類似性から、Flt4およびこれまでに知られているFlt1ならびにKDR/FLK1受容体がIII型チロシンキナーゼのサブファミリーを構成していると考えられる。Flt4遺伝子はその3’配列において異なり、かつHELおよびDAMI白血病細胞で特異的に発現されることが分かっている5.8kbおよび4.5kbのmRNAとして発現される。
ウイルムス腫瘍細胞系統、網膜芽腫細胞系統および非分化奇形癌細胞系統はFlt4を発現したが、分化奇形癌細胞は陰性であった。ほとんどの胎児組織もまたFlt4mRNAを発現し、脾臓、脳中間帯および肺で最も高いレベルを示した。ヒト成人組織では最も高い発現レベルは、発現の減少順に胎盤、肺、腎臓、心臓および肝臓で見られた。in situハイブリダイゼーションでは、Flt4オートラジオグラフの粒子の大きさにより胎児肺の内皮細胞が修飾された。
【0068】
胎児組織におけるFlt4の免疫組織化学的染色により内皮細胞の染色が確認された。Flt4の発現パターンはFlt1およびKDRとの比較において18週齢ヒト胎児組織で極めて異なっている。Kaipainen et al., J. Exp. Med, 178: 2077 (1993)参照。
【0069】
実施例4および11に記載されるようにFlt4cDNAを含有する発現ベクターを作製し、COSおよびNIFI3T3細胞で発現させた。
【0070】
本発明のFlt4DNAおよびポリペプチドはFlt4リガンドの精製、および様々な生物における内皮細胞の増殖および分化の調節に有用であると考えられる。またこれらはある疾病の診断/治療においても価値のあることが証明されよう。
【0071】
次の説明では、組換えDNA(rDNA)技術に用いられる数多くの用語が広く使用される。明細書および請求項の十分に、かつ首尾一貫した理解が得られるように、かかる用語に与えられるべき範囲など、次の定義を提供する。
【0072】
遺伝子 RNAポリメラーゼの鋳型を含むDNA配列。遺伝子から転写されたRNAはタンパク質をコードしていてもよいし、コードしていなくともよい。タンパク質に関してコードするRNAをメッセンジャーRNA(mRNA)と呼び、真核生物ではRNAポリメラーゼIIにより転写される。しかしながら、RNAポリメラーゼII鋳型を含む遺伝子を構築することも知られており、そこでは通常は翻訳されないが、特異なmRNAのものに相補的な配列を有するRNA配列が転写される。かかる遺伝子構築物を本明細書では「アンチセンスRNA遺伝子」と呼び、かかるRNA転写物を「アンチセンスRNA」と呼ぶ。アンチセンスRNAはアンチセンスRNA配列にある翻訳停止コドンの存在により通常翻訳することができない。
【0073】
「相補的DNA」または「cDNA」遺伝子は介在配列(イントロン)を欠いたmRNAの逆転写により合成された組換え遺伝子を含む。
【0074】
クローニングビヒクル 宿主細胞において自律的に複製が可能であり、かつそこでかかるDNA配列をビヒクルの本質的生物学的機能を失うことなく、限定し得る様式で切断し、そこにDNAをスプライシングしてその複製およびクローニングをなし遂げる、1または少数のエンドヌクレアーゼ認識部位により特徴づけられるプラスミドまたはファージDNAもしくはその他のDNA配列。クローニングビヒクルはクローニングビヒクルで形質転換した細胞の同定における使用に好適なマーカーをさらに含む。例えばマーカーはテトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性である。「ベクター」は時に「クローニングベクター」の代わりに使用される。
【0075】
発現ベクター クローニングビヒクルに類似しており、宿主への形質転換の後にそれにクローニングできる遺伝子を発現し得るビヒクルまたはベクター。クローニングされた遺伝子は通常、プロモーター配列などの(すなわち機能し得る形で連結された)ある調節配列の制御下に置かれている。発現調節配列はベクターが原核生物または真核生物宿主において機能し得る形で連結された遺伝子を発現するよう設計されているかどうかによって異なり、エンハンサーエレメント、終結配列、組織特異性エレメント、および/または翻訳開始および終結部位などの転写エレメントを含んでいると考えられる。
【0076】
本発明は組換えFlt4タンパク質(短鎖型および長鎖型)の発現とこれらのタンパク質の機能的誘導体の両方に関係する。
【0077】
機能的誘導体 Flt4タンパク質の「機能的誘導体」は、非組換えFlt4タンパク質の生物学的活性と実質的に同じ生物学的活性(機能的または構造的のいずれか)を持ったタンパク質である。Flt4タンパク質の機能的誘導体は特異的な機能を行うためのかかる修飾の必要性により、共有結合した炭水化物などの翻訳後修飾を含んでもよいし、含まないともよい。「機能的誘導体」とは、分子の「断片」、「変異体」、「類似体」および「化学的誘導体」を包含するよう意図されている。
【0078】
本明細書において使用されるように、分子が通常の分子の一部ではなく、さらなる化学的部分を含む場合にはそれは別の分子の「化学的誘導体」であるとする。かかる部分は分子の可溶性、吸収、生物学的半減期などを改質する。またこの部分は分子の毒性を弱めて分子等のいずれの所望でない副作用を排除しまたは弱める。かかる作用を媒介し得る部分についてはRemington's Pharmaceutical Sciences (1980)で開示される。かかる部分と分子との結合手順は当技術分野で公知である。
【0079】
断片 Flt4タンパク質などの分子の「断片」とは、ペプチドコアまたはペプチドコアの変異体などの分子のいずれの部分をもいう。
【0080】
変異体 Flt4タンパク質などの分子の「変異体」とは、構造および生物学的活性において完全分子またはその断片のいずれかと実質的に同じ分子をいう。よって、2つの分子が同じ活性をもっている場合、たとえその一方の分子の組成物または二次、三次もしくは四次構造がもう一方のもので見られるものと同じでなく、またアミノ酸残基の配列が同じでない場合でもそれらは本明細書において使用される変異体と考えられる。
【0081】
類似体 Flt4タンパク質または遺伝子配列の「類似体」とは、機能において本明細書のFlt4タンパク質または遺伝子配列と実質的に同じタンパク質または遺伝子配列をいう。
【0082】
好ましい具体例の説明
本発明は出願人らが「Flt4」と呼ぶもの、チロシンキナーゼの受容体、Flt4をコードする核酸分子(例えば、cDNA、ゲノムDNA、RNA、アンチセンスRNAなど)、Flt4遺伝子配列およびその産物からのFlt4ペプチドまたはFlt4タンパク質の産生、組換えFlt4発現ベクター、Flt4類似体および誘導体、ならびにFlt4および関連タンパク質、Flt4リガンド、Flt4アンタゴニストおよび抗Flt4抗体の診断用および/または治療用の使用に向けられる。
【0083】
組換えFlt4の産生
好適な宿主細胞においてFlt4をコードする配列またはその機能的に同等なものをクローニングし発現させることにより、生物学的に活性なFlt4が産生され得る。
【0084】
組換えDNA技術を用いるFlt4の産生は記載目的のために段階的な工程に分割できる:(1)所望のFlt4のコード配列(遺伝子)の単離または作製;(2)所望のFlt4の合成にあたることのできる発現ベクターの構築;(3)Flt4遺伝子を複製し、発現し、かつ/または遺伝子産物をプロセッシングして所望のFlt4を産生し得る適当な宿主細胞のトランスフェクトまたは形質転換;ならびに(4)所望のFlt4産物の同定および精製。
【0085】
Flt4遺伝子の単離または作製
Flt4またはその機能的に同等なもののヌクレオチドコード配列を用いて、所望のFlt4産物の発現にあたるであろう組換え発現ベクターを構築することができる。本発明の方法の実施において、本明細書に示されるヌクレオチド配列またはその機能的に同等なものの断片を用いて、適当な宿主細胞において組換えFlt4産物の発現を命令する組換え分子を作製することができる。Flt4をコードするヌクレオチド配列はFlt4様活性を示す、および/またはFlt4をコードするmRNAを発現する種々の細胞供給源から得ることができる。出願人らはをヒト胎盤、白血病細胞およびいくつかの腫瘍細胞系統をはじめとするFlt4のいくつかの好適なヒト細胞供給源を同定している。
【0086】
Flt4コード配列はかかる細胞供給源から単離および精製されたRNAからのcDNAクローニングによってまたはゲノムクローニングによって得てもよい。Flt4配列は、例えば、当技術分野で十分に公知の技術を用いてポリメラーゼ鎖反応によってcDNAまたはゲノムDNA物質から増幅させてもよい。cDNAまたはゲノムライブラリーのクローンのいずれかは当技術分野で十分に公知の技術を用いて調製することができ、またFlt4遺伝子のいずれかの部分に実質的に相補的なヌクレオチドプローブを用いて特定のFlt4DNAをスクリーニングすることもできる。発現ベクターを構築するためには、全長クローン、すなわち、所望のFlt4の全コード領域を含むものを選択することもできる。あるいは、当技術分野で標準的な技術を用いて化学合成によってFlt4をコードするDNA全部をまたは部分的に合成してもよい。ヌクレオチドコード配列の内在する縮重のために、実質的に同一のまたは機能的に同等なアミノ酸配列をコードするその他のDNA配列を本発明の方法の実施に用いてもよい。Flt4ヌクレオチド配列のかかる変更としては同一または機能的に同等な遺伝子産物をコードする配列をもたらす、種々のヌクレオチドの欠失、付加または置換が挙げられる。遺伝子産物が配列内にサイレント変化をもたらし、従って生理活性産物を産生するアミノ酸残基の欠失、付加または置換を含む場合もある。かかるアミノ酸置換は含まれる残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としてはリジンおよびアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有し荷電していない極性頭部基または非極性頭部基を有するアミノ酸としては以下のロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシンが挙げられる。
【0087】
Flt4発現ベクターの構築
この情報を用いて、Flt4受容体チロシンキナーゼを適当な量で提供し得る種々の組換えDNAベクターが提供される。本明細書で同定される鍵となる構造特性を有する合成タンパク質、ならびに他の供給源由来の同一ファミリーのタンパク質をコードする関連構造のさらなる組換えDNAベクターを組換えDNA技術の標準的な技術を用いてFlt4受容体チロシンキナーゼcDNAから作製することができる。形質転換発現Flt4受容体チロシンキナーゼがこの技術の例として作製されている(実施例3および4参照)。新規に発見された配列および構造情報を用いて、真核細胞のトランスフェクションによりFlt4受容体チロシンキナーゼおよび生物学的目的のためのその種々のドメインを調製することができる。
【0088】
Flt4遺伝子産物を発現するトランスフェクタントまたは形質転換体の同定
組換えコード配列を含み、生物学的に活性な成熟産物を発現する宿主細胞は少なくとも4種の一般的なアプローチによって同定できる:(a)DNA−DNA、DNA−RNAまたはRNA−アンチセンスRNAハイブリダイゼーション;(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または不在;(c)宿主細胞におけるFlt4mRNA転写物の発現によって測定される転写レベルの評価;および(d)免役アッセイおよび最終的には生物学的活性によって測定される成熟遺伝子産物の検出。
【0089】
第1のアプローチでは、発現ベクターに挿入されたFlt4コード配列の存在がFlt4コード配列と相同なヌクレオチド配列からなるプローブを用いるDNA−DNAハイブリダイゼーションによって検出され得る。
【0090】
第2のアプローチでは、組換え発現ベクター/宿主系がある「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性、メトトレキサート耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成など)の存在または不在に基づいて同定され、選択され得る。例えば、Flt4コード配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されれば、そのコード配列を含む組換え体をマーカー遺伝子機能の不在によって同定することができる。あるいは、マーカー遺伝子はFlt4コード配列の発現を制御するのに用いられるものと同一のまたは異なるプロモーターの制御の下にFlt4配列と直列に配置され得る。誘導または選択に応じたマーカーの発現はFlt4コード配列の発現を示す。
【0091】
第3のアプローチでは、Flt4コード領域の転写活性がハイブリダイゼーションアッセイによって評価され得る。例えば、Flt4コード配列またはその特定の部分と相同なプローブを用いるノーザンブロッティングによってポリアデニル化RNAを単離、解析することができる。あるいは、宿主細胞の総核酸を抽出し、かかるプローブに対するハイブリダイゼーションについてアッセイしてもよい。
【0092】
第4のアプローチでは、Flt4の発現が、例えば、ウエスタンブロット、放射性免役沈降、酵素結合型免役アッセイなどの免役アッセイによって免疫学的に評価され得る。しかしながら、発現系の成功についての最終的な試験には生物学的に活性なFlt4遺伝子産物の検出が必要である。宿主細胞が遺伝子産物を分泌する場合には、培養されたトランスフェクト宿主細胞から得られる細胞を含まない培地をFlt4活性に関してアッセイすればよい。遺伝子産物が分泌されない場合には、細胞溶解物をかかる活性に関してアッセイすればよい。いずれの場合にも、Flt4へのリガンド結合またはFlt4のその他の生理活性を測定するアッセイを用いればよい。
【0093】
Flt4誘導体、類似体およびペプチド
Flt4に関連する誘導体、類似体およびペプチドの作製および使用も考慮され、かつ、本発明の範囲内にある。かかる誘導体、類似体またはペプチドは特定の適用に依存して生物学的活性を天然のFlt4と比較して増強しているかまたは低下させている場合もある。本発明のFlt4関連誘導体、類似体およびペプチドは当技術分野で公知の種々の手段によって作製できる。ゲノムおよびタンパク質レベルでの処置および操作は本発明の範囲内にある。ペプチド合成は当技術分野で標準的なものであるが、これを用いてFlt4ペプチドを得てもよい。タンパク質レベルでは、限定されるものではないが、エンドペプチダーゼ(例えば、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、V8プロテアーゼなど)またはエキソペプチダーゼによる特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、酸化などをはじめとする当技術分野で公知の技術によって多数の化学修飾を用いてFlt4様誘導体、類似体またはペプチドを作製してもよい。
【0094】
好ましい誘導体、類似体およびペプチドはFlt4リガンド結合性活性を保持するものである。Flt4リガンドを結合するがそれに応じてシグナルを伝達しない誘導体、類似体およびペプチドはFlt4阻害剤として有用である。Flt4リガンドを結合し、かつ、それに応じて、例えば、細胞内Flt4自己リン酸化を含む過程を通してシグナルを伝達する誘導体、類似体およびペプチドは天然Flt4として同様に有用である。かかる結合および/または自己リン酸化アッセイにおいて使用するのに好ましいFlt4リガンドは本明細書に記載のPC−3コンディショニング培地から単離可能な約23kdのポリペプチドを含んでなるリガンドである。血管内皮増殖因子−C(VEGF−C)と呼ばれるこのリガンドは1996年8月1日に出願され、国際公開WO97/05250として公開され、優先権は米国特許出願優先権証明書にある、PCT特許出願PCT/FI96/00427に詳細に特徴づけられている(なお、これらは総て引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0095】
抗Flt4抗体
本発明の範囲内にはFlt4または関連タンパク質を認識するポリクローナルおよびモノクローナル抗体の作製もある。
当技術分野で公知の種々の手順をFlt4のエピトープに対するポリクローナル抗体の作製に用いることができる。抗体の作製に関しては、種々の宿主動物(限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラットなどをはじめとする)をFlt4または合成Flt4ペプチドの注射によって免疫することができる。宿主種にもよるが、限定されるものではないが、フロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、オイルエマルション、スカシ貝ヘモシアニン、ジニトロフェノールおよびBCG(バチルス・カルメット−グエリン(Bacillus Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの有用である可能性のあるヒトアジュバントをはじめとする種々のアジュバントを用いて免疫学的応答を増大させることができる。
【0096】
Flt4のエピトープに対するモノクローナル抗体は連続培養細胞系統によって抗体分子を産生させるいずれの技術を用いて調製してもよい。これらとしては、限定されるものではないが、Kohler et al., Nature, 256,:495-497 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、およびより最近ではヒトB細胞ハイブリドーマ技術[Kosbor et al., Immunology Today, 4:72 (1983)]およびEBVハイブリドーマ技術[Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., pp77-96 (1985)]が挙げられる。また、Flt4に対する抗体は細菌において、クローニングされた免疫グロブリンcDNAからも産生され得る。組換えファージ抗体系の使用に関しては、細菌培養物において抗体を迅速に産生し、選抜し、またその構造を遺伝子操作することが可能であり得る。
【0097】
分子のイディオタイプを含む抗体断片も公知の技術によって作製することができる。例えば、かかる断片としては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化によって生じ得るF(ab’)2断片、F(ab’)2断片のジスルフィド橋の還元によって作製できるFab’断片、および抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって作製できる2種のFab断片が挙げられる。
【0098】
Flt4に対する抗体は成熟Flt4およびFlt4前駆およびサブコンポーネント種の定性および定量検出、Flt4ポリペプチドのアフィニティー精製、およびFlt4生合成、代謝および機能の解明に用いることができる。Flt4チロシンキナーゼ活性の検出をかかるアッセイにおけるFlt4特異的シグナルの作製および増幅の酵素的な手段として用いることができる。また、Flt4に対する抗体は診断および治療薬として有用であり得る。
【0099】
Flt4、Flt4をコードする核酸分子および抗Flt4抗体の使用
出願人らは、Flt4、Flt4類似体および誘導体、Flt4をコードする核酸分子、アンチセンス核酸分子および抗Flt4抗体の診断用のおよび/または治療用の使用をはじめとする本発明の組成物の広範な種々の使用を考慮している。
【0100】
Flt4をコードする核酸分子またはその断片をプローブとして用いてFlt4をコードするmRNAを検出および定量することができる。核酸プローブを用いて公知の遺伝子配列の総てまたは一部を含んでなる配列を検出するアッセイは当技術分野では十分に公知である。Flt4mRNAレベルは出現および/または存在する腫瘍形成ならびにその他のヒトの疾病の発症および/または進行を示し得る。0000従って、Flt4mRNAを検出し、定量し得るアッセイは貴重な診断手段を提供し得る。
【0101】
アンチセンスFlt4RNA分子は、治療目的がFlt4の存在の排除を望む、またはそのレベルのダウンレギュレートを望む場合には、Flt4をコードするmRNAの翻訳を阻害するために治療上有用である。Flt4アンチセンスRNAは、例えば、Flt4が、例えばその過剰発現によって原因剤として関与する疾病の治療においてFlt4拮抗剤として有用であり得る。さらに、Flt4アンチセンスRNAはFlt4機能的機構の排除において有用である。Flt4をコードする核酸分子は本出願において個別に論じられる組換えFlt4タンパク質および関連分子の産生のために用いることができる。
【0102】
アンチFlt4抗体を用いて、種々の範囲においてFlt4を診断し、定量することができる。例えば、Flt4の種々のドメインに対する抗体をFlt4免役アッセイまたはFlt4の免役組織化学的評価のベースとして用いてもよい。Flt4のチロシンキナーゼ活性はこれらのアッセイにおいてFlt4シグナルを作製するための酵素的増幅反応として有用であり得る。また、アンチFlt4抗体も細胞表面のFlt4量の研究において有用であり得る。
【0103】
Flt4リガンドアゴニストまたはアンタゴニストとして機能し、それによってFlt4活性の低下が可能となる抗体を作製できる。また、合成法によって、または組換え法によってランダムオリゴヌクレオチドからランダムペプチドも作製でき、Flt4受容体への特異的結合を示すものをFlt4細胞外ドメインを用いて選抜することができる。かかるペプチドセグメントはまた、当技術分野で標準的な方法を用いて、Flt4の細胞外ドメインを用いてファージディスプレーライブラリーから選抜することもできる。かかるペプチドはアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有し得る。Flt4抗体はまた、種々の化合物へ結合した後にFlt4発現細胞および組織または腫瘍のin vivoイメージングのための貴重な診断手段を提供し得る。
【0104】
Flt4に対するモノクローナル抗体を好適な強磁性、常磁性、電子密度、音波発生または放射活性剤に共有または非共有のいずれかで結合させ、標的とされるイメージング剤を作製することができる。モノクローナル抗体のエピトープ結合性ドメインを用いて作製された分子のタンパク質分解または化学的処理によって生じた抗体断片は完全な抗体に代用することができる。次いで、このイメージング剤を診断目的のためのヒト身体のX線、磁性共鳴、音波ホログラフィーまたはシンチグラフィーイメージングの造影剤として利用できるであろう。
【0105】
Flt4の分子生物学
配列番号1および3に示されるFlt4cDNAクローンの完全配列は、別のスプライシング次第で、4195または4795のヌクレオチドにわたり、1298個または1363個のアミノ酸からなるオープンリーディングフレームを含む。ヌクレオチドおよび推定されるFlt4アミノ酸配列(短鎖型)が配列番号1および2に示されている。図2はFlt4アミノ酸配列とFlt1チロシンキナーゼアミノ酸配列との比較を示している。Shibuya et al., Oncogens, 5: 519-524 (1990)参照。
【0106】
大部分が疎水性のアミノ酸からなる推定シグナルペプチド配列がイニシエーターメチオニンに続いている。対応するATGの周囲の配列は共通翻訳開始配列と一致している[Kozak, Nucl. Acids Res., 15: 8125-8135 (1987)]。両Flt4ポリペプチドの予想される細胞外部分は775個のアミノ酸長であり、アスパラギン結合型グリコシル化についての12個の可能性ある部位(NXS/T)を含んでいる。また、タンパク質の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーについて記載されたスペーシングパターンを示す数個のアミノ酸残基も含んでいる[Williams et al., Annu. Rev. Immunol., 6: 381-405 (1988)]。それは12個のシステイン残基を有し、7個の免役グロブリン様ドメインを構成し得る。予想されるIg様ドメインIVはシステイン残基を欠いている。また、図2はFlt1の細胞外ドメイン示しており(配列番号5)、これはFlt4の最も近いヒト相同体である。この図からシステイン残基の整列およびIg様領域の極めて類似した組成がわかる。
【0107】
Flt4の細胞質ドメインは23個の疎水性アミノ酸残基からなる推定膜貫通領域によって細胞外部分から分離されている。この配列は細胞質側で塩基性領域によってフランクされており、このことは膜貫通ドメインと細胞質ドメインの間の結合を示唆するものである。チロシンキナーゼ相同ドメインは残基843で始まり、ATP結合ポケットおよびY1068でのc−srcのY416に相同な推定自己リン酸化部位を含む(図2)。Flt4のチロシンキナーゼ触媒ドメインは、大部分が親水性でFlt1に相同性を示さない65個のアミノ酸配列(aa944〜1008)によって2つのサブドメインに分割されている。Flt1とは異なり、Flt4はそのキナーゼ挿入部分にチロシン残基を含まない。
【0108】
Flt4mRNAの第2種は別の3’末端を有し、これは長鎖型のFlt4タンパク質をコードしている。
【0109】
図3A〜Cでは、別のスプライシングによる短および長鎖型のFlt4mRNAの産生が例示されている。図3AはクローンJ.1.1およびI.1.1のcDNA挿入部分の3’末端の概略構造を示している。クローンJ.1.1のTAG終結コドンならびにポリアデニル化部位(ポリA)が示されている。クローンI.1.1は陰をつけたセグメントでクローンJ.1.1と異なっている(それぞれ、Flt4mRNAの長鎖型および短鎖型)。TAAおよびポリAはクローンI.1.1の終結コドンおよびポリアデニル化部位を示している。さらに、EcoRIおよびAvaIの制限エンドヌクレアーゼ切断部位が示されている。下記に示されるものはcRNA保護分析に用いたクローンI.1.1の256bpのEcoRI−AvaI挿入部分である。濃く陰をつけたセグメントのほとんどはin vitroでアンチセンス鎖を転写するための線状化センスRNA鋳型中のポリリンカーに由来する配列を示している。RNアーゼ保護分析にかんがみた保護断片の概略構造も示されている。図3Bおよび3Cは256bpの35S標識アンチセンスRNAプローブならびに示された細胞系統由来(Tera−2は奇形癌細胞系統であり、ここでは10日間のレチノイン酸(RA)処理をともなうかともなわないで分析されている)のポリアデニル化RNAによって保護された場合の、長鎖型および短鎖型のFlt4RNAに相当する211および124bpの消化断片のオートラジオグラムを示している。(負)対照レーンは転移RNAを用いた保護の結果を示している。Tera−2細胞の分化の際のFlt4mRNAのダウンレギュレーションが注目される。クローン13のTera−2細胞はDr. C. F. Graham(Department of Zoology, University of Oxford, UK)から提供された。継代18〜40の間の細胞をこの研究に用いた。細胞は10%ウシ胎児血清および抗生物質を添加したイーグルの最小必須培地(MEM)で維持した。分化を誘導するためには、細胞をゼラチンコートした組織培養等級皿で1.5×103細胞/cm2の密度で培養した。翌日、2×10−6MのRAを培地に加えた。細胞をRAの存在下で10日間まで培養した。
【0110】
図3A〜Cに示される結果は別のスプライシングによって生成したこれら2種のFlt4(長鎖および短鎖)型のカルボキシ末端の生成を例示している。
その推定されるアミノ酸配列によれば、Flt4はクラスIIIRTKに属する。より詳しくは、Flt4はそれらの細胞外部分に7個のIgループを含み、従って、5個のIgループを含むクラスIIIRTKのその他のメンバーとは異なる、RTKのサブファミリーに属する。Flt4はv−ros関連DNAとしてヒトゲノムDNAライブラリーからクローニングされたFLTファミリーの原型受容体、Flt1[Shibuya et al., Oncogene, 5: 519-524 (1990)]とおよびマウス肝臓の造血幹細胞濃縮画分からクローニングされたマウスFLK1受容体[Matthews et al., Cell, 65: 1143-1152 (1991);Matthews et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 9026-9030 (1991)]と最も密接に相同である。Flt4の細胞外ドメインはヒトFlt1およびマウスFLK1とそれぞれ33%および37%のアミノ酸配列同一性を示す。Flt1およびFLK1はFlt4同様、肺、心臓および腎臓などの種々の正常組織において広く発現されている。さらに、最近同定されたヒト内皮細胞受容体チロシンキナーゼKDR[Terman et al., Oncogene, 6: 1677-1683 (1991)]はFlt4およびFlt1ファミリーメンバーと相当な相同性を示す。利用できる配列データから、KDRはチロシンキナーゼ(TK)ドメインにおいてFlt4と81%同一であると算出できる。さらに、KDRの細胞外ドメインもまた、7個のIgループ構造を有し、そのTK1およびTK2ドメインはマウスFLK1受容体の相当するドメインと95%および97%同一である。このことはKDRはマウスFLK1のヒト相同体であるということを示唆するものである。
【0111】
Flt4TKドメインはFlt1およびFLK1/KDRのTKドメインと約80%同一であるが、RTKクラスIIIのその他の受容体のTKドメインとは約60%しか同一でない。これらの他の受容体はまた、細胞外領域に5個のIg様ドメインしか有さず、Flt4、Flt1およびFLK1/KDRをクラスIIIRTK内の個別のFLTサブファミリーに分類できる。
【0112】
PDGFRのキナーゼ挿入部分、c−fmsおよびc−kit中の配列D/E−D/E−Y−M/V−P/D/E−M[Cantley, et al., Cell, 64: 281-302 (1991)](配列番号6)中に位置するチロシン残基は自己リン酸化部位であり、リン酸化されるとホスファチジルイノシトール3’キナーゼ(PI−3K)のSH2ドメインを結合する[Reedljk et al., EMBO J., 11: 1365-1372 (1992)]。興味深いことに、これらのクラスIIIRTKとは異なり、FLTサブファミリーのメンバーまたはFlt3/FLK2受容体はかかる共通モチーフを含まない。
【0113】
8個のヒトクラスIIIRTK遺伝子は3個の異なる染色体に集中している。
染色体4はc−kit、PDGFR−αおよびKDR遺伝子を含んでいる[Yarden et al., EMBO J., 6: 3341-3351 (1987);Stenman et al., Genes, Chromosomes, Cancer, 1:155-158 (1989);Terman et al., Oncogene, 6: 1677-1683 (1991)]。Flt1およびFlt3遺伝子は染色体13q12に位置しており[Satoh et al., Jpn. J. Cancer Res., 78:772-775 (1987);Rosnet et al., Genomics, 9: 380-385 (1991)]、他方、Flt4は染色体5バンドq35に局在している[Aprelikova et al., Cancer Res., 52: 746-748 (1992)]、fmsおよびRDGFR−β遺伝子の近くにある[Warringron et al., Genomics, 11: 701-708 (1991)]。染色体5の長腕は白血病細胞において認められる転座に関与している。難治性貧血および大球症を患う患者の骨髄細胞において染色体5の長腕部の欠失が認められた[Van Den Berghe et al., Nature, 251: 437-439 (1974)]。過剰の芽細胞をともなう難治性貧血[Swolin et al., Blood, 58: 986-993 (1981)]、原因不明骨髄化生[Whang-Pang et al., Leuk. Res. 2: 41-48 (1978)]、慢性骨髄性白血病[Tomiyasu et al., Cancer Genet. Cytogenet., 2: 309-315 (1980)]、真性赤血球増加症[Van Den Berghe et al., Cancer Genet. Cytogenet., 1: 157-162 (1979)]および本態性血小板血症[Nowell et al., Cancer, 42: 2254-2260 (1978)]などのいくつかのその他の脊髄増殖性疾患において異常な5q染色体が認められている。
【0114】
Flt4mRNA発現に関する発見はそのタンパク質産物はある白血球細胞に特有のものであるということを示唆する。巨核芽球細胞および内皮細胞間で共有されるいくつかの分化抗原が、例えば、血小板糖タンパク質IIIaとして存在すると示されている[Ylanne et al., Blood, 72: 1478-1486 (1988);Kiefler et al., Blood, 72:1209-1215 (1988);Berridge et al., Blood, 66: 76-85 (1985)]。さらに、Flt4は胎児期に例えば、肺および腎臓の特定の内皮細胞によって発現されている。
【0115】
発達の際のFlt4の役割をさらに理解するために、マウスFlt4の部分cDNAをクローニングした。これらのプローブをin situハイブリダイゼーションに用いて、マウス発達の際のFlt4mRNA発現を分析した。Flt4はリンパ系の脈管形成および腫瘍起因性脈管形成の際に発現されると決定された。また、Flt4が健常および病的状態のヒト成人組織双方のリンパ系内皮ならびにいくつかの高内皮細静脈(HEV)において認められたので、これらの発見が健常および病的ヒト成人組織においても妥当であると確認された。
【0116】
マウスFlt4cDNA断片のクローニングによりそれらの推定されるアミノ酸配列が相当するヒト配列とほとんど同一であると示された(研究された両セグメントにおけるアミノ酸同一性約96%)。マウスFlt4cDNAの同一性に関するさらなる証拠がノーザンハイブリダイゼーション研究から得られ、これでは両種に由来するプローブによりマウス組織から特有の5.8kbのmRNAシグナルが生じた。成体マウスの種々の組織から単離されたRNAの分析から、肝臓、肺、心臓、脾臓および腎臓におけるFlt4発現が示されたが、脳および精巣では全くハイブリダイズしないか、またはほとんどハイブリダイズしなかった。このパターンはGalland et al., Oncogene, 8: 1233 (1993)によって早くに報告されたパターンと同様である。RNアーゼ保護の結果からFlt4遺伝子はマウス発達の際に必要とされ、8.5日p.c.胚から始まり、相対的発現レベルは全く安定しているようであると示唆された。
【0117】
in situハイブリダイゼーションのために、細胞外ドメインの配列をコードするマウスFlt4cDNAの2つの断片を選抜した。これによりハイブリダイゼーションパターンの、細胞外領域においてFlt4と極めて低い程度にしか配列同一性を示さない関連FLK−1およびFlt1受容体パターンとの明確な区別が可能となった。Mellauer et al., Cell, 72: 835 (1993);Yamaguchi et al., Development, 118: 489 (1993);Peters et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 8915 (1993);Finnerty et al., Oncogene, 8: 2293 (1993)参照。
【0118】
Flt4はFLK−1、Flt1、TieおよびTek内皮受容体チロシンキナーゼ遺伝子と同様に、7.5日交尾後(p.c.)胚において発現されなかった。8.5日p.c.胚では最も強いFlt4シグナルが尿膜、頭部間葉の血管芽細胞、背部大動脈、および主要静脈に局在していた。心内膜で弱いシグナルが認められた。対照的に、卵黄嚢の血管芽細胞は、FLK−1およびFlt1、TieおよびTekに関してとは異なり陰性であった。Korhonen et al., Oncogene, 8: 395 (1993);およびPeters et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 8915 (1993)参照。Flt4発現の静脈系への限定は11.5日マウス胚由来のサンプルにおいてさらにより明確であり、これではTiemRNAが動脈でも発現された。12.5日p.c.胚では、Flt4シグナルは発達中の静脈のおよび推定上リンパ系内皮を修飾したが、内皮Tie受容体チロシンキナーゼに関してとは異なり、動脈内皮は陰性であった。発達の後期段階の間に、Flt4mRNAは発達中のリンパ管に相当する、血液細胞を含まない血管神経叢に限定されるようになった。成人ヒト組織ではリンパ系内皮といくつかの高内皮細静脈のみがFlt4mRNAを発現した。リンパ洞および高内皮細静脈、転移リンパ節およびリンパ管腫では発現が増加した。マウス胚からのデータの解釈が困難であるため、リンパ系はヒトにおいてよりいっそう明確にされているのでヒト内皮を研究した。また、種々の内皮から確立された細胞はFlt4発現の特異性がin vitro条件で持続しているかどうか調べるために細胞培養物で研究することができよう。内皮細胞系統はin vitro培養では分化した特性を失っていると知られている。従って、Flt4mRNAに関して陰性であるとは予想しなかった。培養大動脈内皮細胞もFltmRNAを欠いていた。しかしながら、微小血管系から、ならびに大腿部および腹部中央の静脈から増殖させたヒト内皮細胞からシグナルが得られた。従って、少なくともFlt4発現の特異性のいくつかは細胞培養物において保持された。
【0119】
成人ヒト組織のin situハイブリダイゼーション分析により、発達中のマウス胚において認められたFlt4のリンパ系への限定が確認された。Flt4発現はリンパ系内皮におよびヒトリンパ節洞に認められた。興味深いことに、立方体様内皮を有し、白血球のリンパ節への輸送において機能すると示されているいくつかのHEVもまたFlt4陽性であった。さらに、平行ハイブリダイゼーション分析により、これらの転移構造において正常なリンパ節と比較してFlt4mRNAレベルが高まったと示された。また、Flt4は、結合組織間質と増殖性の内皮が並んだリンパチャンネルからなる良性腫瘍であるリンパ管腫において極めて顕著であった。Flt4mRNAはこれらの腫瘍のリンパ系内皮に限定されており、それらの動脈、静脈、毛細血管には存在しなかった。ヒト肺では、リンパ構造は唯一の同定されたFlt4陽性管であった。
【0120】
前記の結果はFlt4はヒト成人組織におけるリンパ管およびいくつかの高内皮細静脈の新規マーカーであるということを示すものである。この結果はまたリンパ管の静脈起源に関する理論を支持する。Flt4は増殖因子受容体としてこれらの管の分化および機能に関与し得る。Flt4リガンド、VEGF−Cを介してFlt4を通して媒介される生物学的作用の詳細な特性決定は1996年8月1日に出願され、国際公開WO97/05250として公開された、PCT特許出願PCT/FI96/00427に提供されている。
【0121】
これらの結果と本発明のFlt4結合化合物とを組み合わせて、特に、可視化され得る、放射活性、電子密度またはその他のレポーター物質と結合した本発明の抗体を用いることによる、リンパ系内皮の選択的標識化が可能となる。リンパ系にFlt4受容体インターナリゼーション誘導性モノクローナル抗体またはリガンドを含む物質を注射し、それによって規定の分子をリンパ系内皮に輸送することも可能であり得る。また、本発明のFlt4結合化合物を、高められたレベルのFlt4受容体を発現する、高内皮細静脈、特に活性化HEVの検出のために用いることも可能であり得る。本発明者らの知見の限りでは、リンパ系内皮のかかる特異的なマーカーは目下のところ利用できない。
【0122】
以下の実施例は単に本発明を例示するために記載されるものであり、その範囲を何ら限定するものではない。
実施例1
Flt4をコードするcDNAクローンの単離および特徴づけ
λバクテリオファージgt11のオリゴ−dTプライマーヒトHEL細胞cDNA[好意によりDr. Mortimer Poncz, Childrens Hospital of Philadelphia, PA; Poncz et al., Blood, 69: 219-223(19871) から提供を受けた] を同じライブラリーからPCR−増幅したcDNA断片でスクリーニングした [Aprelikova et al., Cancer Rex. 52, 746-748(1992)]。陽性のプラークを同定し、記載されているように精製した[Sambrook et al., Molecular Cloning- A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)]。λバクテリオファージのcDNA挿入物をEcoRI断片として単離し、GEM3Zt(+)プラスミド(Promega)にサブクローニングした。全長のFlt4蛋白質コード領域を単離した。HEL−ライブラリーから単離した3つの重複クローン(図1に例示)を、得られた配列により設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いたジデオキシ鎖成長停止反応を使用して配列決定した。cDNAsの全ての部分の両鎖を配列決定した。配列分析は、GCGパッケージプログラムを使用して実施した[Devereux et al., Nucleic Acids Res., 12: 387-395(1984)およびthe Prosite program for Apple MacIntosh]。
【0123】
図1Aは、分析したFlt4cDNAクローンの構造略図を例示している。矢印は、図1Bに図示するノーザンブロットのプローブに使用するサブクローニングした制限断片(サイズはkb単位)を示す。E=EcoRI部位、S=SphI部位。図1Bは、図1Aに示すプローブを用いたDAMIおよびHEL白血病細胞RNAsのノーザンハイブリダイゼーション分析を例示する。
【0124】
結果
HEL細胞cDNAライブラリーからPCRクローニング方法によって単離した210bp鎖長のFlt4c断片を、オリゴdT−プライマーヒト赤白血病細胞cDNAライブラリーをスクリーニングするための分子プローブとして使用した。
【0125】
クローンのヌクレオチド配列分析は、1298アミノ酸(aa)残基のオープンリーディングフレーム(配列番号:2、図2)を明らかにした。図中の翻訳イニシエーターメチオニンの周囲には典型的なコンセンサス配列が配置され[Kozac, Nucleic Acids Res., 12: 857-872(1984)]、その次に、小胞体内に転座するためのシグナル配列を特徴とする疎水性アミノ酸配列が配置されている。
【0126】
Flt4の細胞外ドメインは7つの免疫グロブリン様ループ内に配列されることもある(図2)。図はまた、Flt4と、非常に類似した構造を含有するFlt1の比較を示す。Flt1のアミノ酸配列を配列番号:5に記載する。
【0127】
アミノ酸残基775〜798は、受容体の膜貫通ドメインとして機能すると思われる疎水性配列鎖およびそれに続くポリペプチドの細胞質側と推定されるもののいくつかの塩基性残基を形成する。膜近傍ドメインは、aa842のチロシンキナーゼ配列相同性の開始部位手前の44残基である。65aaのキナーゼ挿入配列に相同性が中断されている場合には、この相同性は受容体のカルボキシ末端部分の1175aaにおいて最初に欠損している。アミノ酸配列データベースの関連するチロシンキナーゼドメインの検索(SwissprotおよびNBRF)は、触媒作用を有するチロシンキナーゼ領域の、それぞれ、約80%および60%の相同性を有するFlt1およびPDGFRBチロシンキナーゼを同定している。
【0128】
実施例2
抗−Flt4抗血清の調製
大腸菌(E. coli)内でGST−Flt4融合蛋白質を作製するために、Flt4短鎖型の予測されるc−末端をコードする657塩基対のEcoRI断片をpGEX−1λT細菌発現ベクター(Pharmacia)のグルタチオン−S−トランスフェラーゼコード領域内にクローニングした。得られた融合蛋白質を細菌内で産生し、製造業者の指示により、グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーによって部分的に精製した。Flt4に対するポリクローナル抗体を産生するためにこの蛋白質をウサギの免疫化に使用した。3回めの追加抗原投与による免疫化後の抗血清を使用した。
【0129】
実施例3
COS細胞におけるFlt4の発現
材料および方法
全長のFlt4蛋白質コード配列(3つのクローンを合わせたもの、図1)をSVpoly哺乳類発現ベクター [Stacey et al., Nucleic Acids Res., 18: 2829(1990)] 構築物SV14〜2のHindIII−BamHI部位に挿入した。発現ベクター(Flt4cDNAのそれぞれの形態を含有する、SV−FLT4短鎖およびSV−FLT長鎖)をDEAE−デキストラントランスフェクション方法によってCOS細胞に導入した[MacCutchan et al., J. Natl. Cancer Inst., 41: 351-357(1968)]。トランスフェクションの2日後に、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄し、免疫沈降緩衝液(10 mM Tris pH 7.5、50 mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.5% Nonidet P40、0.1% SDS、0.1 TIU/ml Aprotinin)中に回収した。溶解物を超音波処理し、10,000×gで15分間遠心分離し、3mlの抗血清と共に氷上で終夜インキュベーションした。プロテインAセファロース(Pharmacia)を添加し、回転させながらインキュベーションを30’継続した。沈殿物を免疫沈降緩衝液で4回、PBSで1回、水で1回洗浄してから、SDS−PAGEで分析した。
【0130】
結果
全長のFlt4短鎖および長鎖蛋白質コード領域をpSVpoly発現ベクターのHindIII−BamHI部位にクローニングし、これらの発現ベクターをCOS細胞にトランスフェクトすることによってFlt4cDNA配列の予測される構造を試験した。これらの2つの構築物によって産生される蛋白質はC−末端が異なる:長い方の鎖形態はさらに65アミノ酸を含有する。トランスフェクションの2日後、細胞を溶解し、予測されるFlt4蛋白質の短鎖型の40カルボキシル末端アミノ酸残基を含有するGST−Flt4融合蛋白質(すなわち、Flt4の短鎖型および長鎖型の両方に共通する部分)に対して形成した抗体を使用して免疫沈降した。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって免疫沈降ポリペプチドを分析した。免疫形成前の血清はいかなる特異的なバンドも示さなかったが、Flt4−特異的抗体は約170KDおよび190KDの2つのバンドを認識する。これらの2つのバンドは識別的にグリコシル化される形態のFlt4蛋白質を示す可能性がある。
【0131】
実施例4
NIH3T3細胞におけるFlt4の発現
全長のFlt4cDNA(短鎖型)を、モロニーマウス白血病ウイルス長鎖末端反復プロモーターを含有するLTRpolyベクター(ATCC受託番号77109およびGeneBank受託番号X60280を有する、プラスミドベクターpLTRpolyを開示しているLTRpolyベクター(Makela et al., Gene, 118: 293-294(1992)を参照)にサブクローニングした。NIH3T3細胞に同時トランスフェクトするためにこのLTR−Flt4発現ベクターをpSV2neoマーカープラスミドと共に使用し、G418耐性クローンをFlt4発現について分析した。
【0132】
ウェスタン免疫ブロット分析は、1つの集密化した大型平板培地の細胞を2.5%SDS、125mM Tris、pH6.5で溶解した。細胞溶解物をSDS−pageで電気泳動し、ニトロセルロース膜にエレクトロブロットした。膜を、Flt4カルボキシ末端ペプチドに対して形成された抗血清と共にインキュベーションし、結合した抗体をワサビペルオキシダーゼ結合ブタ抗−ウサギ抗血清(Dako)およびECL試薬(Amersham)を使用して可視化した。代謝標識化は、培養物を100μCi/ml35S−メチオニンで1時間標識した。標識後、細胞を2回洗浄し、増殖培地中で1または2時間インキュベーションし、溶解し、抗−Flt4抗体で免疫沈降し、SDS−PAGEで分析し、オートラジオグラフィーを実施した。
【0133】
結果
170および190KDポリペプチドはFlt4短鎖型をトランスフェクトしたNIH3T3細胞では検出できたが、pSV2neoだけをトランスフェクトした細胞では検出できなかった。これら2つのバンド以外に、約120Kdの主要なバンドがFlt4産生クローンで観察された。代謝標識およびパルス−チェイス実験は、この蛋白質は、短鎖型Flt4ポリペプチドの翻訳後処理の結果として産生されることを示した。
【0134】
実施例5
Flt4クローンの染色体マッピング
クラスIII受容体遺伝子のいくつかの集合化が観察されたので、Flt4の染色体局在化を求めることは非常に興味深い。従って、げっ歯類−ヒト細胞ハイブリッドを分析し、ヒト染色体5へのFlt4の結合を示している。
【0135】
染色体5sの一部を保有するハイブリッドを使用して、領域5q33−>5qter内のFlt4遺伝子の局在化を求めた。これらのハイブリッドは、フィルターハイブリダイゼーションによってFlt4遺伝子座の存在について試験した。Flt4−陽性ハイブリッドに共通で、Flt4−陰性ハイブリッドに欠損している染色体5領域は5q33.1−qterであった。従って、ハイブリッドのヒト染色体5q33−qterの存在はFlt4配列の存在と関連している。局所的マッピングの結果は、Flt4遺伝子座はCSRIR/血小板誘導増殖因子受容体−β(PDGFRE)遺伝子座およびβ−アドレナリン作動性受容体(ADRBR)遺伝子座のテロメアであり、その理由はこれらの遺伝子座は全て、Flt4が陰性であるハイブリッドGB13中に存在するからであることを示した。
【0136】
実施例6
腫瘍細胞系統および内皮細胞におけるFlt4mRNAの発現
この検討に使用した白血病細胞系統(K562)はいくつかの以前の報告に報告されている;[Lozzio et al., Blood, 45: 321-334(1975)]。HL−60[Collins et al., Nature, 270: 347-349(1977)]、HEL[Martin et al, Science, 216: 1233-1235(1982)]、DAMI[Greenberg et al., Blood, 72: 1968-1977(1988)]、MOLT−4[Minowada et al., J. Natl, Cancer Inst. 49: 891-895(1972)] 、ジャーカット [Schwenk et al., Blut. 31: 299-306(1975)] 、U937[Sundstom et al., Int. J. Cancer, 17: 565-577(1976)]、KG−1[Kieffler et al., Science, 200: 1153-1154(1978)]、JOK−1[Andersson et al, 1982, in R. F. Revoltekka(ed.), Expression of Differentiated Functions in Cancer Cells, 239-245, Raven Press, New York]およびML−2[Gahrnberg et al.,1985, in L. C. Anderson, et al(ed.), Gene Ezpression During Normal and Malignant Differentiation, 107-123, Academic Press, London]。American Type Culture Collectionから入手した以下の腫瘍細胞系統も分析した:JEG−3、絨毛癌;A204、横紋筋肉腫;SK−NEP−1,腎芽細胞腫;BT−474、乳癌;Y79、網膜芽腫。白血病細胞は、10%ウシ胎仔血清(FCS)および抗体を含有するRPMI中で増殖した。Dami細胞は10%ウマ血清を加えたIscoveの改良DMEMで培養した。第一継代ヒト臍静脈内皮細胞にA549肺癌細胞を融合することによって得られた永久ハイブリッド内皮細胞系統(EAhy926)[Edgell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 50: 3734-3737(1983)]を、10%FCSおよび抗体を含有するDMEM−HAT培地で培養した。
【0137】
記載されているように[Sambrook et al.,上記参照]、細胞系統からポリ(A)−RNAを抽出した。5μgのポリ(A)+RNA試料を、ホルムアルデヒドを含有するアガロールゲルで電気泳動し、標準的な条件を使用してブロットした[Sambrook et al.,上記参照]。Flt4cDNAクローンの挿入物をランダムプライミング方法によって標識し、ブロットにハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは、50%ホルムアルデヒド、5×デンハルト溶液(100×デンハルト溶液は、各々2%のフィコール、ポリビニルピロリドンおよびウシ血清アルブミンである)、5×SSPE(3M NaCl、200 mM NaH2PO4-H2O、20 mM EDTA、pH 7.0)、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)および0.1mg/mlの超音波処理したサケ精子DNA中で42℃において18〜24時間実施した。フィルターは65℃において1×SSC(150 mM NaCl,15 mM、クエン酸ナトリウム15 mM、pH 7.0)、0.1%SDSで洗浄し、Kodak XAR−5フィルムに露出した。
【0138】
ノーザン分析は、8種の白血病細胞系統(HEL、K562、DAMI、U937、MOLT4、HL60、ジャーカットおよびKG-1)および内皮ハイブリッド細胞系統(EAhy926)から抽出したポリ(A)+RNAを用いて実施した。GAPDHプローブを用いたハイブリダイゼーションを、分析に均一な量のRNAを負荷するための内部対照として使用した。HEL赤白血病細胞およびDAMI骨髄巨核芽球白血病細胞だけが5.8kbおよび4.5kbのFlt4mRNAを発現した。K562赤白血病、ジャーカットおよびMOLT−4細胞白血病、並びにHL−60前骨髄細胞白血病、U937単球性白血病およびKG−1骨髄性白血病細胞はFlt4mRNAが陰性であった。
【0139】
ノーザン分析は5種の腫瘍細胞系統(JEG-3、A-204、SK-NEP-1、BT-474およびY79)および上記白血病細胞系統のうちの2種(JOK-1、MOLT-4)から抽出したポリ(A)+RNAを用いて実施した。標識したS2.5cDNAクローン(図1参照)はハイブリダイゼーションプローブとして使用した。β−アクチンプローブを用いたハイブリダイゼーションを、分析に均一な量のRNAを負荷するための内部対照として使用した。SK−NEP−1腎芽細胞腫およびY79網膜芽腫細胞だけがFlt4転写物を含有することが観察された。
【0140】
Tera−2−奇形癌細胞は、ニューロン分化を誘発するために、基剤(−)またはレチノイン酸(+)で10日間処理した後に分析した[Thompson et al., J. Cell Sci., 72: 37-64(1984)]。細胞から単離したポリ(A)+RNAのノーザンブロット分析では、未分化の細胞は5.8kbおよび4.7kbのFlt4のmRNAを発現したが、10日の分化後では、Flt4mRNAはノーザンブロットおよびハイブリダイゼーションでは検出できなかったことが見出された。これらの結果は、Flt4はこれらの細胞の分化中にダウンレギュレーションされたことを示している。
【0141】
Flt4mRNA発現も未分化およびTPA−分化HEL細胞中で分析した。HELおよびDAMI細胞系統は共に赤血球系/骨髄巨核芽球二重表現型を保有し、腫瘍プロモーター12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)による処理によって骨髄巨核芽球マーカーのさらなる発現を誘発することができる。本発明者らは、Flt4の発現が分化中にこれらの細胞において刺激されるかどうかを分析した。HEL細胞は、TPAまたはそれを溶解するために使用したDMSOで処理した2日後に分析した。Flt4シグナルを帯状化後、レーンの均一な負荷を確認するためにフィルターにRb−1およびβ−アクチンcDNAsをプローブ化した。オートラジオグラフのデンシトメトリー走査分析およびGAPDH遺伝子の構成的発現に対する正規化に基づいて、Flt4mRNAレベルは、細胞が骨髄巨核芽球分化を受けた場合にはTPA−誘導化HEL細胞では約3.4倍増加したことが求められた。
【0142】
実施例7
胎児肺におけるFlt4の発現
インサイチューハイブリダイゼーション:15週齢のヒト胎児の肺組織をUniversity Central Hospitalおよびthe University of Turku, Finlandの合同倫理委員会の許可を得て入手した。試料を4℃において10%ホルマリンに18時間固定し、脱水し、ワックスに包埋し、6μmの切片に切断した。SP6およびT7ポリメラーゼ並びに[35S]−UTPを使用して直線化したプラスミドから206および157塩基(アンチセンスおよびセンス)のRNAプローブを作製した。切片のインサイチューハイブリダイゼーションは、以下の改良を加えて、Wilkinson et al., Development, 99: 493-500(1987); Wilkinson, Cell. 50: 79-88(1987)により実施した:1)トルエンの代わりに、パラフィンワックスに包埋する前にキシレンを使用した;2)6μmの切片を切断し、2%3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(Sigma)で前処理したガラススライドの表面のジエチルピロカルボネート処理した水の層の上に配置した、3)プローブのアルカリ性加水分解を省いた、4)ハイブリダイゼーション混合物は60%のホルムアミド脱イオン水液を含有した;5)高度の緊縮条件は50mMDTTおよび1×SCCを含有する溶液中で65℃において80分間とした;6)切片はNTB−2エマルジョン(Kodak)をカバーし、4℃において保存した。14日間の露出時間後、スライドをKodak D-19現像液で2.5分間現像し、Unifix(Kodak)で5分間固定した。切片はヘマトキシリン水溶液で染色した。
【0143】
アンチセンスプローブを使用したハイブリダイゼーション検討では、Flt4mRNAは15週齢の胎児のある種の内皮細胞中に主に観察された。センス鎖プローブおよびRNAase A処理切片を用いた対照ハイブリダイゼーションはバックグラウンド以上の信号を生じなかった。
【0144】
免疫ペルオキシダーゼ染色法は、100倍希釈の抗−Flt4抗体、ペルオキシダーゼ結合ブタ抗−ウサギ抗体および当技術上標準的な方法を使用した。免疫形成前血清または免疫源遮断血清の対照染色は信号を生じなかった。17週齢のヒト胎児の肺組織を分析し、結果は、mRNAインサイチューハイブリダイゼーション実験の結果と一致しており、肺のある種の大血管の内皮細胞はウサギ抗−Flt4抗血清で陽性に染色された。
【0145】
実施例8
ヒト以外の哺乳類種におけるFlt4遺伝子の同定
図4には、異なる種のDNA中のFlt4配列の存在を検討した実験の結果を示す。Flt4遺伝子が進化によりどの程度保存されるかを明らかにするために、2.5kbのcDNA断片(図1参照)を異なる動物および酵母から精製したゲノムDNAsにハイブリダイゼーションし、EcoRIで消化した。ハイブリダイゼーション溶液は50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液(100×デンハルト溶液は、各々2%のフィコール、ポリビニルピロリドンおよびウシ血清アルブミンである)、5×生理食塩液−リン酸ナトリウム−EDTA(3M NaCl,200mM NaH2PO4-H2O、20 mM EDTA、pH 7.0)、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムおよび0.1mg/mlの超音波処理したサケ精子DNAを含んだ。ハイブリダイゼーションは、42℃において24時間実施した。フィルターは65℃において1×標準的な生理食塩液クエン酸塩(150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウム、pH 7.0)および0.1%ドデシル硫酸ナトリウム中で洗浄し、Kodak XAR-5フィルムに露出した。特定のバンドはサル、ラット、マウス、イヌ、ウシ、ウサギおよびニワトリDNAs中に見出されたが、酵母DNAは信号を生じなかった。Flt4cDNAはウズラから単離されている。Eichmann et al., Gene, 174(1):3-8(1996年9月26日)およびGenebank 受託番号X83287を参照。
【0146】
実施例9
成人組織中のFlt4遺伝子の発現
成人組織中のFlt4mRNAの発現は、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓組織のポリ(A)+RNA(Multiple Tissue Northern Blot, Clontech Inc.)を使用して、Flt4cDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによって分析した。構成的に発現される遺伝子のプローブを用いた対照ハイブリダイゼーションはレーンの均一な負荷を示した。
【0147】
Flt4cDNA断片を用いた種々のヒト組織のポリ(A)+RNAのハイブリダイゼーションは、胎盤、肺、心臓および腎臓に5.8および4.5kbの移動度のmRNAバンドと6.2kbの弱く標識されたバンドを示した。弱いmRNAバンドが肝臓および骨格筋に見られたが、胎盤および脳は、含有されたとしても非常にわずかなFlt4RNAしか含有しないと思われる。
【0148】
実施例10
ヒト胎児組織におけるFlt4の発現
ヒト胎児組織におけるFlt4mRNAの発現を検討するために、16〜19週のヒト胎児の以下に掲載する組織の総RNAを含有するノーザンブロットに1.9kbのFlt4cDNA断片をハイブリダイゼーションし(図1参照)、得られたオートラジオグラフをデンシトメトリーで走査した。結果は、対応する臭化エチジウム(EtBr)染色ゲルのUV像から推定されるRNA量について正規化した。以下の記号は増える順にmRNAのレベルを示す:−、+、++、+++。
【0149】
表1
【0150】
ヒト胎児組織の分析は、胸腺および小腸を除いた全てがFlt4転写物を含有することを示した。最も高い発現レベルは肺および脾臓で見られた。
【0151】
実施例11
Flt4発現ベクター
全長のFlt4cDNA(短鎖型)は、1)52.5kbの断片の5’側末端に[プライマーオリゴヌクレオチド5'-ACATGCATGC CACCATGCAG CGGGGCGCCG CGCTGTGCCT GCGACTGTGG CTCTGCCTGG GACTCCTGGA-3'(配列番号:7)(順方向)および5'-ACATGCATGC CCCGCCGGT CATCC-3'(逆方向)(配列番号:8)を使用してS2.5kbのクローン(図1参照)から増幅した]SphI−切断Flt4PCR断片をライゲーションし、2箇所のSphI部位を使用して、pSP73ベクター(Promega)にサブクローニングし、b)オリゴヌクレオチドプライマー5'-CGGAATTCCC CATGACCCCAAC-3'(配列番号:9)(順方向)および5'-CCATCGATGG ATCCTACCTG AAGCCGCTTT CTT-3'(配列番号:10(逆方向)を用いて0.6kbのEcoRI断片(図1参照)から増幅した末端の138bpsを含有するPCR断片を、EcoRIおよびBamHI部位を使用して、構築物a)の3’側末端にライゲーションし、c)構築物b)のEcoRI部位に1.2kbのEcoRI断片をライゲーションし、d)得られた全長のHindIII−BamHI断片をHindIII−BamHI切断SV−ポリ発現ベクターにライゲーションすることによって作製した[Stacy et al., Nucl. Acids Res., 18: 2829(1990)]。
【0152】
実施例12
Flt4リガンドの同定
ウシ胎仔血清(PBS)の不在下においてF12培地で7日間培養したPC−3前立腺腺癌細胞系統の調整培地を16000×gで20分間遠心分離して除去して、Flt4のチロシンリン酸化を誘導する能力についてスクリーニングした。
【0153】
組換えによりFlt4を発現するNIH3T3−細胞(実施例13を参照)を直径5cmの細胞培養皿に再度接種し、10%ウシ胎仔血清および抗体を含有するダルベッコの改良最小必須培地(DMEM)で集密化するまで増殖させた。集密化した細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、DMEME/2%ウシ血清アルブミン中で終夜飢餓化した。刺激は、飢餓培地を1mlの調整培地と交換し、細胞を37℃において5分間インキュベーションした。
【0154】
PC−3調整培地での刺激後、細胞を含有する培養平板培地を氷上に置き、100mMNaVO4を含有するTris−HCl、pH7.4、150 mMNaClで2回洗浄した。洗浄液を培養皿から除去し、細胞を、アプロチニン、1mM PMSFおよび1mMNaVO4を含有するRIPA緩衝液[10 mM Tris-HCl pH 7.5、50 mM NaCl、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.5% Norrider P40、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)]で溶解し、溶解物を10秒間、2回超音波処理した。次いで、溶解物を16,000×gで30分間遠心分離し、上清を新しい管に移し、免疫沈降に使用した。
【0155】
Flt4C−末端に対するポリクローナル抗体(上記)を免疫沈降に使用した。細胞溶解物の上清を2〜4μlのウサギポリクローナル抗−Flt4抗血清と共に氷上で2時間インキュベーションした。プロテインA−セファロース(Pharmacia)の約30μlの50%(vol/vol)PBS溶液を添加し、+4℃において回転させながら45分間インキュベーションを継続した。免疫沈降物をRIPA緩衝液で3回洗浄し、PBSで1回洗浄した。
【0156】
次いで、免疫沈降物に7.5%ゲルでSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を実施し、ニトロセルロースにブロットした。これらのウェスタンブロットをモノクローナル抗−ホスホチロシン(抗-P-Tyr)抗体(2000倍希釈のPT-66 Sigma、カタログ番号P-3300)と共にインキュベーションし、次に化学発光検出システム(Amersham)を使用してペルオキシダーゼ結合ウサギ抗−マウス抗体(1000倍希釈、Dako、カタログ番号P-161)で検出した。ブロットを帯状化し、時折撹拌しながら、100mM2−メルカプトエタノール、2%SDS、62.5mMTris−HClpH6.7中で50℃において30分間以前の信号を除去し、抗−Flt4抗体(1000倍希釈)で再度染色し、次にペルオキシダーゼ−結合ブタ抗−ウサギ抗体(1000倍希釈、Dako、P217)で染色した。Flt4のチロシンリン酸化の陽性対照として、100mMのチロシルホスファターゼ阻害剤過バナジン酸ナトリウム(PerVO4)で20分間処理したFlt4発現NIH3T3細胞の抗−Flt4免疫沈降物を使用した。過バナジン酸ナトリウムナトリウムによる細胞の処理は、100mM(最終濃度)のオルトバナジン酸ナトリウムおよび2mM(最終濃度)の過酸化水素を細胞培地に添加し、37℃において5%CO2雰囲気下で20分間細胞をインキュベーションすることによって実施した。その手法によって、生細胞中の蛋白質チロシンホスファターゼの非常に強力な阻害剤であるバナジン酸の過酸化型(バナジルヒドロペルオキシド)が形成された。
【0157】
PC−3細胞調整培地は、Flt4のチロシンリン酸化処理された成熟型と共に同時移動した120kDのポリペプチドのチロシンリン酸化を刺激した。同時移動は、抗−Flt4抗体でブロットを再度染色することにより確認した。
【0158】
120kDのポリペプチドが調整培地の非特定成分でないことを証明するために、15mlの調整培地をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロースにブロットし、ブロットを抗−P−Tyr抗体で染色した。いくつかのポリペプチドが検出されたが、それらのどれもFlt4と同時移動しなかった。これは、120kDバンドが実際に刺激された細胞から免疫沈降されたチロシン−リン酸化蛋白質であることを示している。室温において2時間ヘパリンセファロースCL−6B(Pharmacia)で前処理したPC−3調整培地による刺激の分析は(レーン3)、Flt4リガンドはヘパリンに結合しないことを示している。
【0159】
未張性培地はFlt4自己リン酸化を誘導しなかった。また、非トランスフェクトNIH3T3細胞およびFGFR−4をトランスフェクトしたNIH3T3細胞はどちらもPC−3細胞の調整培地による刺激の結果、120kDのポリペプチドのチロシンリン酸化を示さなかった。PC−3調整培地をCentricon−10濃縮剤(Amicon)を使用して4倍に濃縮した場合、刺激作用はかなり増加した。また、分子量10,000未満(<10,000)の蛋白質を含有する、濃縮後に得られたフロースルーはFlt4のリン酸化を刺激しなかった。製造業者の指示により、CNBr−活性化セファロース(1 mg/ml)に結合したFlt4細胞外ドメイン(Flt4EC-6XHis、以下参照)50mlを用いたPC−3細胞の濃縮した調整培地の前処理はFlt4のチロシンリン酸化を完全に消失させた。セファロースCL−4Bを用いた調整培地の同様の前処理は刺激作用に影響を与えなかった。
【0160】
これらのデータは、PC−3細胞はFlt4の可溶性リガンドを生ずることを証明している。上記の実験は、リガンドは組換えFlt4ECドメインに結合することを証明している。従って、そのリガンドは、アフィニティークロマトグラフィーにおいてFlt4ECドメインを使用して精製することができる。精製した蛋白質をSDS−PAGEで電気泳動し、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜にブロットし、そのアミノ末端配列を当技術上標準的な方法によって決定することができる。または、アミノ末端配列決定のために精製したリガンドをペプチドまで消化してもよい。精製した蛋白質から得られたペプチド配列を、このような配列をコードするオリゴヌクレオチドの混合物を合成するために使用する。当技術上標準的な方法によって(Wen et al., Cell 69: 559-572(1992))、このようなオリゴヌクレオチドおよびそれらの相補的なDNA鎖相対物を放射性標識し、リガンドをコードするcDNAを得るためにPC−3細胞から作製したcDNAライブラリーのスクリーニングに使用することができる。または、このようなオリゴヌクレオチドおよびそれらの相対物を、鋳型としてPC−3細胞RNAから作製したcDNAを使用して、リガンドをコードする配列を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして使用することができる。このようなcDNA合成方法およびPCR(RT-PCR)は当技術上標準的である(Innis et al., 1990, PCR protocols, Academic Press; McPherson, M. J. et al., 1991, PCR, a practical approach, IRL Press; Partanen et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87: 8913-8917(1990))。よりさらなる別法は、真核発現ベクターにクローニングしたcDNAsを使用して(例えば、Invitrogen LibrarianクローニングキットおよびpcDNAまたはpcDNA IIIなどの提供されているベクターを使用する)PC−3細胞のFlt4リガンドをクローニングし、例えばCOS細胞にトランスフェクトしたこのようなライブラリーをFlt4−アルカル性ホスファターゼ(Cheng and Flanagan, Cell, 79: 158-168,(1994))、Flt4−免疫グロブリン(Flt4-Ig)(Lyman et al., Cell, 75; 1157-1167(1993))、または同様の親和性試薬を用いて当技術上標準的な方法によってスクリーニングすることである。
【0161】
実施例13
細胞系統およびトランスフェクション
NIH3T3細胞および293−EBNA細胞(Invitrogen)を10%FCSを含有するDMEMで培養した。安定な発現のために、DOTAPトランスフェクション試薬(Boehringer-Mannheim)を使用してリポフェクション方法によって、NIH3T3細胞に、Flt4cDNAがモロニーマウス白血病ウィルスLTRプロモーターのコントール下で発現されるLTR−FLT4lベクターおよびpSV−neoベクターをトランスフェクトした(上記実施例4参照)。COS−1細胞はDEAEデキストラン方法によってトランスフェクトした(McClutchan and Pagano, J. Natl. Cancer Inst., 41: 351-35(1968) )。トランスフェクトした細胞は500mg/mlネオマイシン中で選択した。
【0162】
実施例14
Flt4融合蛋白質の構築および発現
pVTBac−FLT4EC−6xHis融合構築物。Flt4コードするcDNAの末端は以下のように改変した:細胞外ドメイン(EC)をコードするFlt4cDNA配列の3’側末端を、Ni−NTAカラム(Qiagen, Hilden, Germany)に結合するための6つのヒスチジン残基をコードする、オリゴヌクレオチド5'-CTGGAGTCGACTTGGCGGACT-3'(配列番号:13、下線はSalI部位、配列番号:1のヌクレオチド2184〜2204に相当する配列を含有する)および5'-CGCGGATCCCTAGTGATGGTGATGGTGATGTCTACCTTCGATCATGCTGCCCTTATCCTC-3'(配列番号:14、下線はBamHI部位、配列番号:1のヌクレオチド2341〜2324に相当する配列を含む)およびその次の停止コドンを使用して増幅した。増幅した断片はSalIおよびBamHIで消化し、SalI−BamHI断片としてLTR−FLT4lベクター内にライゲーションし(実施例4参照)、Flt4膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする配列を含有する独自のSalI−BamHI断片に交換した。
【0163】
Flt4シグナル配列コード領域を含有しないFlt4cDNAの5’側末端は、オリゴヌクレオチド5'-CCCAAGCTTGGATCCAAGTGGCTACTCCATGACC-3'(配列番号:11、下線はHindIIIおよびBamHI部位、配列番号:1のヌクレオチド86〜103に相当する配列を含有する)および5'-GTTGCCTGTGATGTGCACCA-3'(配列番号:12、配列番号:1のヌクレオチド700〜681に相補的な配列を含有する)を使用してPCRによって増幅した。この増幅した断片(配列番号:1のヌクレオチド86〜700を含んだ)をHindIII−BamHIで消化した(SphI部位、配列番号:1のヌクレオチド588〜593に相当する、Flt4cDNAの増幅した領域内にある)。
【0164】
得られたHindIII−SphI断片を使用して、すぐ上に上記した改変LTR−FLT4lベクターのHindIII−SphI断片に交換した(HindIII部位はFlt4挿入物とベクターのpLTRpoly部分の5'側結合部であり、SphI部位はFlt4cDNA内にあり、配列番号:1のヌクレオチド588〜593に相当する)。次いで、得られたFlt4EC−6XHis挿入物をpVTBacプラスミドのBamHI部位のBamHI断片としてライゲーションした(Tessier et al., Gene 98: 177-183(1991))。構築物をバキュロウィルスゲノムDNAと共にリポフェクションによってSF−9細胞にトランスフェクトした。組換えウィルスを作製し、High−Five細胞(Invitrogen)の感染に使用した。
【0165】
Flt4−AP融合構築物。Flt4ECドメインをコードする配列の3’側末端を、オリゴヌクレオチド5'CTGGAGTCGACTTGGCGGACT-3'(配列番号:15)および5'-CGGGATCCCTCCATGCTGCCCTTATCCT-3'(配列番号:16)を使用して増幅し、LTR−Flt4lベクターにSalI−BamHI断片としてライゲーションし、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする配列と交換した。次いで、得られた挿入物を、HindIII−BamHI断片として、アルカル性ホスファターゼコード領域内のプラスミドAPtag−1のHindIII−BglII部位にライゲーションした(Flanagan and Leder, 1990, Cell 63: 185-194)。NIH3T3細胞にFlt4−AP構築物およびpSVneo(Southern and Berg., J. Mol. Appl. Genet. 1: 327-341(1982))と共にDOTAPトランスフェクション試薬(Boehringer)を使用してリポフェクションによって同時トランスフェクトし、トランスフェクトした細胞を500mg/mlネオマイシンの存在下で選択した。培地中に産生された組換え蛋白質は、アルカル性ホスファターゼ活性の染色について発色反応によって検出した(Cheng and Flangan, Cell 79: 157-168(1994))。
【0166】
Flt4−Ig構築物。Flt4−免疫グロブリンキメラをコードする組換えDNAは以下のように構築した:シグナル配列をコードするFlt4ヌクレオチドを含むFlt4をコードするcDNAの5’側末端を、プライマー5'-GGCAAGCTTGAATTCGCCACCATGCAGCGGGGCGCC-3'(配列番号:17)および5'-GTTGCCTGTGATGTGCACCA-3'(配列番号:18)を使用してPCRによって増幅し、HindIII−SphI断片としてLTR−FLT4lベクターにライゲーションした。Flt4ECコード配列の3’側末端をオリゴヌクレオチド5'-CTGGAGTCGACTTGGCGGACT-3'(配列番号:19)および5'-CGCGGATCCAAGCTTACTTACCTTCCATGCTGCCCTTATCCTCG-3'(配列番号:20)を使用して増幅し、SalI−BamHI断片としてLTR−FLT4lベクターにライゲーションして、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする配列と交換した。スプライスドナー部位を含有するこのFlt4EC挿入物を、まずヒト免疫グロブリン重鎖ヒンジおよび不変領域エクソンをコードするエクソンを含有するpHγCE2にライゲーションした(Karjalainen, K., TIBTECH, 9: 109-113(1991))。Flt4−Igキメラを含有するEcoRI−BamHI挿入物を当技術上標準的な方法によってブロットし(Klenov)、pREP7(Invitrogen)のブロットしたHindIII部位にライゲーションした。リン酸カルシウム沈降方法によって構築物を293−EBNA細胞にトランスフェクトし、調整培地をプロテインA−セファロースアフィニティークロマトグラフィーによるFlt4−Ig蛋白質の単離のために使用した。
【0167】
実施例15〜17
Flt4リガンドの精製および配列決定
血清欠損条件下下でPC−3細胞によって産生された細胞培養上清をCetriprepフィルターカートリッジを使用して30〜50倍に濃縮し、固定したFlt4細胞質ドメインのカラムに負荷する。別の構築物および方法を使用して2つの親和性基質を調製する。第一の場合では、Flt4EC−6xHis融合蛋白質をCNBr−活性化セファロース4B(Pharmacia)に架橋し、第二の場合では、Flt4−Ig融合蛋白質をプロテインA−セファロースにジメチルピメリジン(Schneider et al., 1982, J. Biol. Chem., 257: 10766-10869)。アフィニティーカラムから溶出した物質をイオン交換および逆相高速液体クロマトグラフィーおよびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用してさらに精製する。クロマトグラフィー分画は、Flt4のチロシンリン酸化を刺激する能力について試験する。精製した生物学的に活性なリガンド蛋白質を微小配列決定し、リガンドをコードするcDNAを単離し、クローニングする目的のために、例えば、PC−3細胞から単離したポリ(A)−RNAから作製されるcDNAライブラリーから、得られたアミノ酸配列に基づいて、変性オリゴヌクレオチドを作製する。
【0168】
血管内皮増殖因子C(VEGF-C)と命名されるFlt4リガンドの詳細な特徴並びに、VEGF−CおよびVEGF−C変種および類似物をコードする未変性のヒト、ヒト以外の哺乳類および鳥類のポリヌクレオチド配列は、その全てが全体の内容が参照として組み入れられている1998年2月に提出された国際特許出願番号PCT/US98/01973号(国際公開公報第98/33917号として1998年8月06日に公開);Joukov et al., J. Biol. Chem., 273: 6599-6602(1998);Joukov et al.,EMBO J., 16(13): 3898-3911(1992)および1996年8月1日に提出された国際特許出願番号PCT/FI96/00427号(国際公開公報第97/05250号として公開)に提供されている。そこに詳細に説明されているように、ヒトVEGF−Cは最初、419アミノ酸のプレプロ−VEGF−Cポリペプチドとしてヒト細胞中で産生される。ヒトプレプロ−VEGF−Cのアミノ酸配列は配列番号21に記載されており、ヒトVEGF−CをコードするcDNAは、ブタペスト条約の規定に従って、American Type Culture Collection(ATCC)、10801University Blvd. Manasses, VA 20110-2209(USA)に寄託されている(寄託日、1995年7月24日、受託番号97231)。他の種のVEGF−C配列も報告されている。例えば、参照として本明細書に組み入れられているGenbank Accession Nos. MMU73620(Mus musculus)およびCCY15837(Cotunix cotunix)
【0169】
プレプロ−VEGF−Cは多段階で処理されて、約21〜23kDno成熟した、最も活性なVEGF−Cポリペプチドを産生する(還元条件下でSDS−PAGEによって評価したとき)。このような処理には、シグナルペプチドの切断(配列番号:21、残基1-31);約29kDの部分的に処理された形態を作製するための、カルボキシル−末端ペプチドの切断(配列番号:21のアミノ酸228-419にほぼ相当し、Balbiani環3蛋白質(BR3P)配列を回想する間隔をおいたシステイン残基パターンを有する[Dignam et al., Gene, 88:: 133-40(1990); Paulsson et al., J. Mol. Biol., 211: 331-49(1990)];および約21〜23kDの完全に処理された成熟型を作製するための、アミノ−末端ペプチド(配列番号:21のアミノ酸32-103にほぼ相当)の切断(あきらかに細胞外)が含まれる。実験による証拠は、VEGF−Cの部分的に処理された形態(例えば、29 kD型)はFlt4(VEGFR−3)受容体に結合することができるが、VEGFR−2への高親和性結合は、VEGF−Cの完全に処理された形態にのみ生じる。VEGF−Cポリペプチドは天然には非ジスルフィド結合ダイマーとして結合すると思われる。
【0170】
さらに、配列番号:2のアミノ酸配列103〜227はVEGF−C機能を維持するために必ずしも重大ではないことが実証されている。配列番号:2のアミノ酸113〜213からなるポリペプチド(103〜112および214〜227を欠失する)はVEGF−C受容体に結合し、刺激する能力を維持し、残基約131〜残基約211におよぶポリペプチドはVEGF−C生物活性を維持していることが期待される。位置156のシステイン残基はVEGFR−2結合能力にとって重要であることが示されている。しかし、VEGF−CΔC156ポリペプチド(すなわち、欠失または置換によりこのシステインを欠失している類似物)は、VEGFR−3の強力な活性を維持している。配列番号:2の位置165のシステインはどちらかの受容体の結合に必須であるが、位置83または137のシステインを欠失する類似物は両受容体との結合に関してVEGF−Cと競合し、両受容体を刺激する。
【0171】
ヒトVEGF−Cと他の種のVEGF−Cを並べると(一般に許容されている任意の配列アルゴリズムを使用して実施される)、VEGF-C生物活性を破壊することなく、改変が導入されていてもよい追加の残基を示唆している(ずなわち、挿入、置換および/または欠失)。2つ以上の種の並べたVEGF-Cポリペプチドが異なるアミノ酸、特に異なる化学的特性の側鎖を有する異なるアミノ酸を有する任意の位置は、それと同時に機能の消失を伴うことなく、改変を受けやすい位置であってもよい。ヒト、マウスおよびウズラVEGF-Cを例示的に並べたものはPCT/US98/01973号の図5に記載されている。
【0172】
上記の考慮とは別に、数多くの同類アミノ酸置換を野生型VEGF-C配列に実施することができ、特にこのような置換が小規模である場合には、VEGF-C生物活性を維持するポリペプチドが得られると思われる。「同類アミノ酸置換」は、ある種のアミノ酸と同様の化学的特徴の側鎖を有するアミノ酸の置換を意味する。同類アミノ酸置換を作製するための同様のアミノ酸には、酸性側鎖(グルタミン酸、アスパラギン酸)、塩基性側鎖(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、極性アミド側鎖(グルタミン、アスパラギン)、疎水性脂肪族側鎖(ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン)、芳香族側鎖(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、小型側鎖(グリニン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン)または脂肪族ヒドロキシ側鎖(セリン、スレオニン)を有するものを含む。VEGF-C生物活性を破壊することなく、1つまたは少数の内部アミノ酸の付加または欠失も考慮される。
【0173】
上記から、多数のポリペプチドおよび変異体が高親和性でFlt4(VEGFR−3)に結合することが考えられ、従って、Flt4結合化合物を使用して、組織試料の画像形成またはスクリーニングを含む本発明の局面においてFlt4結合化合物として有用である。得られたポリペプチドがVEGFR−3の高い結合特異性を有するように、VEGFR−3結合親和性を低下または排除する変更を保有する型のVEGF-Cは特に興味深い。上記のように、このような変更には、実質的にVEGFR−3結合親和性を排除するCys156の欠損または交換、または天然のプレプロ-VEGF-C蛋白質分解処理部位を破壊するアミノ酸配列変更を含む(VEGFR−2親和性は完全に処理されたVEGF-Cで最も高いからである)。また、Flt4結合親和性を維持するが、Flt4自己リン酸化を活性化しないように改変されているVEGF-C分子は、本明細書に記載する治療方法の有用なFlt4拮抗剤である。本明細書に記載するFlt4リガンドは、ヒトFlt4対立遺伝子変異体の正体を確認し、本明細書に教示するFlt4配列に相同性を有する非ヒト遺伝子配列(例えば、実施例8および図4参照)が実際にFlt4の非ヒト相対物であることを確認するための追加の指標としてアッセイに使用することができることは上記の教示からさらに明らかになる。プレプロ-VEGF-Cの推定されるアミノ酸配列を本明細書の配列番号:21に記載する。
【0174】
血管内皮増殖因子D(VEGF-D)と命名されるFlt4リガンドの詳細な特徴並びに、VEGF−DおよびVEGF−D変異体および類似物をコードする未変性のヒトポリヌクレオチド配列は、その全てが全体の内容が参照として組み入れられている1997年8月21日に提出され、国際公開公報第98/07832号として1998年2月26日に公開された国際特許出願番号PCT/US97/14696号;Achen et al., Proc. Natl. Acad. Scie U.S.A., 95(2):548-553(1998)に提供されている。そこに詳細に説明されているように、ヒトVEGF−Dは最初、354アミノ酸のプレプロ−VEGF−Dポリペプチドとしてヒト細胞中で産生される。ヒトプレプロ−VEGF−DのcDNAおよびアミノ酸配列は配列番号22に記載されている。他の種のVEGF−D配列も報告されている。例えば、参照として本明細書に組み入れられている、Genebank Accession Nos.D89628(Mus musculus)およびAF014827(Rattus norvegicus)参照。
【0175】
プレプロ−VEGF−Dポリペプチドは21アミノ酸のシグナルペプチドと推定され、明らかにプレプロ−VEGF−Dの処理と類似した方法で蛋白質分解的に処理される。配列番号:22の「組換えにより変異させたVEGF−D欠損残基1〜92および202から354は、受容体をVEGFR−2およびVEGFR−3活性化する能力を維持し、非共有結合的に結合したダイマーとして結合すると思われる。本発明のFlt4結合化合物としてのVEGF−Dポリペプチドの利用性はVEGF−Cについて上記したものと類似している。同様に、VEGF−Dの同様の変更(VEGF相同ドメインにおいて8つの保存されたシステインの2番目を排除する、Cys136または蛋白質分解処理部位を排除する)により、VEGFR−2結合親和性が低下または排除された、従って、Flt4特異性が増加したポリペプチドが得られる。Flt4結合親和性を維持するが、Flt4自己リン酸化を活性化しないように改変されているVEGF−D分子は、本明細書に記載されている治療方法の有用はFlt4拮抗剤である。
【0176】
実施例18
マウスFlt4cDNAプローブのクローニング
129SVマウス(Stratagene)のλFIX(登録商標)IIゲノムライゲーションの約106プラークを、細胞質ドメインをカバーする、上記S2.5ヒトFlt4受容体cDNA断片でスクリーニングしたPajusola et al., Cancer Res. 52: 5738(1992)を参照。2.5kbのBamHI断片を陽性プラークからサブクローニングし、両方の末端から配列決定した。このサブクローンからポリメラーゼ連鎖反応を使用して、増幅し、pBluescript KSII+/−ベクター(Stratagene)にマウスFlt4cDNA配列のヌクレオチド1745〜2049をカバーするエクソン断片クローニングした。Pinnerty et al., Oncogene, 8: 2293(1993)。
ヌクレオチド1〜192をカバーする第二の断片を同様にクローニングした。
【0177】
実施例19
マウス組織におけるFlt4mRNAの分析
Chomoczynski et al., Anal. Biochem., 162: 156(1987)により発生中の胚(8〜18日p. c.および1日齢のマウス)から総RNAを単離した。8日p. c.胚の試料は胎盤も含んでいた。
【0178】
RNAase保護分析は、アンチセンス方向化のために[32P]−UTPおよびT7ポリメラーゼを使用して、実施例18により得た直線化したマウスFlt4プラスミドからRNAプローブを作製した。使用したβ−アクチンプローブは報告されているマウスβ−アクチン配列のヌクレオチド1188〜1279に相当する。Tokunaga, et al., Nucleic Acid Res., 14: 2829(1986) を参照。6%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲルで精製後、標識した転写物を30μgの総RNAに52℃において終夜ハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションしなかったRNAをRNAase A(10U/ml)およびT1(1mg/ml)で37℃においてpH7.5で1時間消化した。RNAaseは37℃においてプロテイナーゼK消化によって15分間で不活性化し、試料を6%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲル中で分析した。
【0179】
この実験において分析したFlt4の発現パターンは、非常に弱いmRNAシグナルが肺、肝臓、心臓、腎臓、骨格筋および脾臓から得られたが、精巣および脳は特異的なシグナルを明らかに生じなかった。RNAase保護アッセイによって異なる発生段階において採取された一連のRNAsの分析は、Flt4RNAは8p.c.から新生児マウスまでの胚形成期間中に大きなシグナル強度の変化を生ずることなく発現されることを示した。
【0180】
実施例20
マウス胚におけるFlt4のインサイチューハイブリダイゼーション
Flt4転写物を細胞および組織によりよく割り付けるために、7.5および8.5日p.c.マウス胚の切片に標識したFlt4RNAsでハイブリダイゼーションした。マウス胚はCBAとNMRIマウスの交配から誘導した。妊娠マウスは断頭によって犠牲にし、胚を速やかに凍結するか、またはリン酸緩衝生理食塩液を介して4%パラホルムアルデヒドに移した。胚および単離したマウス器官を4℃において18時間固定し、脱水し、パラフィンに包埋し、6μmの切片に切断した。
【0181】
192および305ヌクレオチドのRNAプローブ(アンチセンスおよびセンス)(実施例18参照)は、[35S]−UTPを使用して直線化したプラスミドから作製した。切片のインサイチューハイブリダイゼーションは、以下の改良を加えて参照として本明細書に組み入れられているWilkinson et al., Development, 99: 493(1987);およびWilkinson et al., Cell. 50: 79(1987)により実施した:1)トルエンの代わりに、パラフィンワックスに包埋する前にキシレンを使用した;2)2)6μmの切片を切断し、2%3−リエトキシシリルプロピルアミンで前処理したガラススライドの表面のジエチルピロカルボネート処理した水の層の上に配置した;3)プローブのアルカリ性加水分解を省いた;4)高度の緊縮条件洗浄は30mMDTTおよび1×SCCを含有する溶液中で65℃において80分間とした。切片はNTB−2エマルジョン(Kodak)をカバーし、4℃において保存した。スライドを14日間の露出し、現像し、ヘマトキシリンで染色した。センス鎖およびRNAase−A処理した切片を用いた対照ハイブリダイゼーションはバックグラウンドを上回る特定のシグナルを生じなかった。
【0182】
Flt4mRNA発現は7.5日p.c.マウス胚では検出されなかったが、はっきりしたシグナルが発生8.5日の発生中の大動脈で検出された。一方、発生中の卵黄嚢はFlt4−陰性であった。胚外組織では、Flt4は羊水中で顕著に発現されたが、卵黄嚢の発生中の血島は陰性であった。一方、頭部間葉の血管芽細胞は強力にFlt4陽性であった。発生中の胎盤では、Flt4シグナルは抹消洞様血管に最初に見られた。9.5日p.c.胎盤では、静脈小窩の内皮およびライヘルト膜に部分的に融合した巨大細胞はFlt4を発現した。
【0183】
従って、Flt4発現は早期の内皮細胞前駆体、血管芽細胞では非常に顕著であるが、8.5日p.c.胚のある種の血管に制限されると思われた。Tie受容体は発生中のマウス胚の全ての内皮細胞に発現することが知られているので、これらの細胞のマーカーとなる。Korhonen, et al., Oncogene, 8: 395(1993) ;およびKorhonen et al., Blood, 80: 2548-2555(1992) 参照。Tieプローブとは異なって、注目すべきことには、Flt4プローブは、あったとしても非常に弱く、11.5日p.c.胚の動脈内皮、例えば発生中の背大動脈または頚動脈の内皮とハイブリダイゼーションした。代わりに、Flt4シグナルは発生中の静脈でははるかにずっと顕著であった。例えば、Flt4シグナルは発生中の後腎を取り巻く静脈内で検出されたが、Tieプローブは後腎内部の毛細血管を顕著に認識した。
【0184】
Flt4mRNAは12.5日p.c.マウス胚のいくつかの領域に分布していることが観察され、腋窩領域の拡張した血管に特に顕著であった。同様のFlt4−陽性血管構造は頸静脈領域の中心−矢状断面において見られた(データは示していない)。Flt4発現血管の網状組織様パターンは眼窩周囲領域および発生中の脊椎周囲で見られた。また、発生中の皮膚の下層でも、Flt4陽性血管網が明らかであった。より弱い毛細管シグナルは、発生中の脳を含むいくつかの領域から得られた。Flt4mRNAは頸部領域、発生中の鼻および発生中の舌の基底部並びに尾領域の小血管中でも検出された。また、肝臓は、斑点状パターンでFlt4mRNAが強力に陽性であった。
【0185】
さらに発生中では、Flt4mRNAは胚のある種の血管により限定されるようになると思われる。14.5日p.c.胚はこの制限されたパターンの発現をうまく示している。このような胚の中矢状切片では、最も顕著なFlt4信号はその前部の発生中の脊柱に沿って観察された。このシグナルは、この発生時期において形成される最も大きいリンパ管である胸管の内皮細胞を起源としていると考えられた。一方、背大動脈および下大静脈は陰性であった。腸間膜領域の拡張した血管もFlt4が強力に陽性であった。さらに、12.5日p.c.胚と同様に、眼窩周囲、下顎並びに頸部領域の解剖学的境界に沿った血管網はFlt4陽性内皮を含有した。同様の組織は心膜空間および皮下組織に存在した。注目すべきことに、Flt4陰性血管とは異なって、全てのFlt4陽性血管はその内腔に血球細胞が欠損していた。これらの発現パターンは、Flt4は、この発生時期ではリンパ管の内皮に限定されることを示唆している。Flt4発現が観察される追加の部位は発生中の骨髄の洞内である。
【0186】
Flt4プローブをハイブリダイゼーションした16.5日p.c.胚の上部胸部の横方向の切片を分析した。ヘマトキシリン−エオシン染色はこの領域の異なる種類の血管を可視化するために実施した。これらには、サイズがより小さく、周囲の血管および結合組織を欠損している頚動脈および腕頭動脈、大静脈および胸管が含まれる。より高倍率下では、胸管並びにその付近の小血管の内皮細胞はFlt4プローブとハイブリダイゼーションすることが観察された。
【0187】
実施例21
培養内皮細胞におけるFlt4mRNAの分析
実施例20に記載されたin situハイブリダイゼーションの結果は、Flt4が、動脈細胞ではなく、静脈内皮細胞で発現し、そしてリンパ管およびいくつかの静脈内皮細胞において後期に発現していることを明らかにした。そのような調節がインビトロで維持されているかどうかを明らかにするために、本発明者らは、ノーザンブロッティング分析およびハイブリダイゼーション分析を使用して培養内皮細胞を調べた。
【0188】
ヒト大動脈、大腿深静脈、臍静脈および包皮微小血管から内皮細胞を単離および培養して、この分野で以前に記載されているようにして特徴付けを行った。Van Hinsberg他、Arteriosclerosis、7:389(1987);およびVanHinsberg他、Thromb.Haemostas、57:148(1987)を参照のこと。ポリアデニル化RNAを単離するために、細胞を5代〜8代の継代(1:3のスプリット比)の後のコンフルエンス密度で使用した。
【0189】
内皮細胞株のBAhy926(Edgell他、Proc.Natl.Acad.Sci.80:3734〜3737(1983))、BCE(Folkman他、Proc.Natl.Acad.Sci.76:5217〜5221(1979))およびLEII(Schreiber他、Proc.Natl.Acad.Sci.82:6138(1985))はFlt4を発現しなかった。しかし、培養されたヒト微小血管、静脈および臍静脈の内皮細胞は、Flt4に特異的な5.8kbおよび4.5kbのmRNAに関して陽性であったが、大動脈の内皮細胞は陰性であった。対照的に、別の内皮細胞レセプターのチロシンキナーゼ遺伝子tieは、調べたすべての内皮細胞タイプで4.4kbのmRNAとして発現していた。
【0190】
実施例22
成人ヒト組織におけるFlt4のmRNA
実施例20で得られた結果は、Flt4のmRNAが、発達中のリンパ管の内皮細胞に大部分が限定されることを示していた。ヒトにおけるこの発見は重要と考えられるために、本発明者らはまた、成人ヒト組織におけるFlt4の発現を、ヒトFlt4プローブを使用して調べた。使用されたヒトFlt4プローブは、cDNA(配列番号1)の塩基対1〜595を覆うEcoRI−SphIフラグメントであった。Pajusola他、Cancer Res.52:5738(1992)もまた参照のこと。フォンウィルブラント因子プローブは、塩基対1〜2334を覆うEcoRI−HindIIIフラグメントであった。Botthron他、Nucleic Acids Res.141:7125(1986)。
【0191】
本発明者らは、組織病理学的診断のために送られてきた固定化材料を日常的に使用した。正常な肺組織を、類表皮ガンに冒された左下肺葉の切除物から得た。腸間膜および腸間リンパ節を結腸腺ガン患者から得た。唾液腺に隣接する正常なリンパ節を、その異常なサイズのために摘出した。2名の患者から得られた扁桃および2つの虫垂は診断的な変化を有していなかった。2つのリンパ管筋腫症および3つの嚢胞性リンパ管腫を調べたが、類似する結果が得られた。
【0192】
組織病理診断のために10%ホルマリンで固定された日常的なサンプルであるヒト組織の場合、正常なin situプロトコルはバックグラウンドを与えただけであったが、プロテイナーゼKの代わりにマイクロ波での処理は特異的なハイブリダイゼーションを可能にした。Shi他、J.Biol.Chem.266:5774(1991);Catoretti他、J.of Pathol.168:357(1992)。
【0193】
腸間膜において、肺および虫垂のリンパ内皮細胞はFlt4シグナルを与えたが、静脈、動脈および毛細血管は陰性であった。Flt4がHEVで発現しているかどうかを調べるために、扁桃を調べた。実際、扁桃において、Flt4に特異的なオートラジオグラフィーシグナルがいくつかのHEVで検出された。
【0194】
実施例23
正常なリンパ節および転移性リンパ節ならびにリンパ管腫におけるFlt4mRNAの分析
ヒトの腸間リンパ節(実施例22を参照)の一部をFlt4の発現について分析した。Flt4の発現が、リンパ洞ならびに求心性および遠心性のリンパ管で認められた。同じパターンが、腺ガン転移物を含むリンパ節で認められた。正常なリンパ節および転移性リンパ節の両方におけるいくつかのHEVもまた陽性であった。嚢胞性リンパ管腫におけるFlt4の発現は、すべての血管のフォンウィルブラント因子に対するin situシグナルとの比較から明らかであるように、リンパ内皮細胞に特異的であった。
【0195】
これらの結果と一致して、Flt4に関する免疫染色は、考えられるリンパ内皮細胞の増殖を特徴とする希な疾患である皮膚のリンパ管腫転移物の内皮細胞において強い陽性であった。Lymboussaki他、Am.J.Pathol.153(2):395〜403(1998年8月)、これは参考としてその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0196】
さらに、Flt4に対する免疫染色により、紡錘細胞がカポジ肉腫皮膚節病巣組織サンプル内に同定された。Jussila他、Cancer Res.58:1599〜1604(1998年4月)。Flt4の明らかなリンパ特異性を考慮して、これらの結果は、カポジ肉腫内の特定の細胞はリンパ内皮細胞起源であるという示唆と一致すると考えることができる。例えば、Beckstead他、Am.J.Pathol.119:294〜300(1985);Dictor他、Am.J.Pathol.130:411〜417(1988)を参照のこと。
【0197】
実施例24
胎児内皮細胞中へのFlt4の局在化
実施例2で述べたように、短形の40個のカルボキシ基末端アミノ酸をエンコードしたFlt cDNA断片を657bpEcoRJ断片として、グルタチオン-S-転移酵素コード化部位を有するフレーム中のpGEX-1λT細菌性発現ベクターへクローン化した。得られるGST-Flt4融合蛋白は、E.coli中に生産され、グルタチオン-Sepharose 4Bカラムを用いてアフィニティークロマトグラフィーで精製した。精製したプロテインを凍結乾燥し、PBSに溶解し、フロインドアジュバントと混合し、ウサギの免疫化に使用した。抗血清を三番目の追加免疫の免疫化に使用した。
【0198】
17週及び20週齢のヒト胎児からの組織を、プロスタグランジンで誘発した合法的流産児から得た。本研究は,Helsinki Central 病院の倫理委員会の承認を受けた。妊娠期間は、胎児の足の長さから推定した。胎児組織はTissue-Tek中に包埋し、ただちに凍結し、-70℃で保管した。
【0199】
Anti-Flt4抗血清を、GST-Sepharoseカラムに交叉吸着させ、anti-GST抗体を除去し、次いで、GST-Flt4アフィニティークロマトグラフィーで精製した。厚さ6μmの数個のクリオスタット組織切片をアセトンで固定し、メタノール中0.3%のH2O2で30分間処理し、内因性のペルオキシダーゼ活性をブロックした。洗浄後、切片を5%標準豚スクラムで培養した。次に切片をFlt4に対する抗体で培養し、洗浄した。結合した抗体はペルオキシダーゼ-複合豚 抗-ウサギIgGで検出し、次いでペルオキシダーゼ活性のために基質として0.2% 3,3-ジアミノベンチジン(Ameraham)を用いて染色した。
【0200】
ヒト胎児腸間膜のAnti-Flt4免疫ペルオキシダーゼ染色により、幾つかの内腱鞘血管Flt4蛋白が認められた。一方、抗原-ブロックしたanti-Flt4抗体およびプレ免疫血清による対照染色は陰性であった。比較のために、切片を、FactorVIIIに関係する抗原に対する抗血清で染色した。これは血管内皮細胞に特異的である。Flt4の免疫ペルオキシダーゼ染色は、血管の内皮細胞上で観察された。これには、赤血球細胞は含まれていない。一方、血管は陰性であった。赤血球のない血管はリンパ性の内皮細胞のようであり;そのような血管は特に腸間膜に多い。FactorVIIIに関係する抗原に対する抗体により、全ての内皮細胞を染色した。
【0201】
実施例25
Flt4に対するモノクローナル抗体の産生
融合I:
High−Five細胞においてFlt4EC−6xHis−pVTBacプラスミド(実施例14)を発現することによって、組換えFlt4細胞外ドメイン蛋白質を産生した。組換えFlt4細胞外ドメインのCOOH−末端にコードされる6xHis標識を結合し、溶出するために、Flt4細胞外ドメイン(Flt4EC)は、製造業者の指示により、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーを使用して感染させたHigh−Five細胞の培養培地から精製した。
【0202】
4月齢のBalb/c雄マウスに、フロイントの完全アジュバントで乳化した組換え産生し、精製したFlt4細胞外ドメイン蛋白質(150μg/マウス)を腹腔内注射することによって免疫した。150μgの追加抗原投与は3〜4週間間隔で投与し、最終抗原投与(10μgFlt4 BCのPBS溶液、腹腔内投与)はさらに3週間の間隔後に投与した。最後の追加抗原投与の4日後に、マウスを犠牲にし、マウスの脾臓リンパ系細胞にSP2/0形質細胞腫細胞を2:1の比でそれぞれ融合した。
【0203】
融合した細胞を、96ウェルの培養プレート(NUNC)の20%ウシ胎仔血清およびHAT強化剤(ハイポキサンチン−アミノプテリン−チミジン;GIBCO,043−01060H;50倍希釈)を含有するEx−Cell320培地(SERALAB)に回収した。細胞を+37℃において、5%CO2雰囲気中で培養した。10日後、HAT−強化培地をHT強化した細胞培養培地(GIBCO,043−01065H;50倍希釈)に交換した。HT培地はHAT培地と同じであるが、アミノプテリンを欠損している。
【0204】
3週間後、特異的な抗体産生を、以下の実施例26に記載した抗原特異的ImmunoFluoroMetric Assay,(IFMA)によって求めた。マスタークローンをStaszewski et al., Yale Journal of Biology and Madicine, 57: 865-868(1984)によって記載されているように限界希釈によってクローニングした。陽性クローンを24ウェルの組織培養プレート(NUNC)で増殖し、再度クローニングし、同じ方法によって試験した。陽性のクローンは蛍光活性化細胞選別(FACS)によって試験した。
【0205】
安定なクローンは、おそらくクラスIgAに属するIgを産生した1つを除いて、IgG1クラスに属する免疫グロブリンを分泌した。モノクローナル抗体のサブクラスは、IFMAにおけるビオチン結合物(SEROTEC)としてマウスサブクラスに対するラットモノクローナル抗体を使用して求めた。
【0206】
Balb/cマウスを使用して腹水中でモノクローナル抗体を産生した。上記のハイブリドーマを、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン98%、ALDRICH-CHEMIE F 7924 Steinheim,カタログ番号T2,280-2)で動物を前処理した後に、マウスに腹腔内注射した。0.5mlのプリスタン(i.v.)を、ハイブリドーマ細胞の約2週間前に注射した。注射した細胞の量は約7.5〜9×106/マウスであった。ハイブリドーマの注射の10〜14日後に腹水を採取した。
【0207】
融合II:
2月齢のBalb/cマウス(雌)に、フロイントの完全アジュバントで乳化した組換え産生し、精製したFlt4細胞外ドメイン蛋白質(20μg/マウス)を腹腔内注射することによって免疫した。20μgの追加抗原投与は3〜4週間間隔で投与し、最終抗原投与(10μgFlt4 BCのPBS溶液、静脈内投与)はさらに3週間の間隔後に投与した。最後の追加抗原投与の4日後に、マウスを犠牲にし、マウスの脾臓リンパ系細胞にSP2/0形質細胞腫細胞を2:1の比でそれぞれ融合した。
【0208】
融合した細胞を、96ウェルの培養プレート(FALCON)の20%ウシ胎仔血清およびHAT強化剤(ハイポキサンチン−アミノプテリン−チミジン;GIBCO BRL 21060−017;50倍希釈)を含有するOptiMEM1(およびGlutamax,1,51985−026,GIBCOBRL)培地に回収した。細胞を+37℃において、5%CO2雰囲気中で培養した。10日後、HAT−強化培地をHT強化した細胞培養培地(GIBCO BRL,41605−012;50倍希釈)に交換した。
【0209】
3週間後、特異的な抗体産生を、以下の実施例26に記載した抗原特異的ImmunoFluoroMetric Assay,(IFMA)によって求めた。マスタークローンをStaszewski et al(1984)によって記載されているように限界希釈によってクローニングした。陽性クローンを24ウェルの組織培養プレート(FALCON)で増殖し、再度クローニングし、同じ方法によって試験した。陽性のクローンはFACSによって試験した。
【0210】
2E11および6B2クローンはIgG1クラスに属する免疫グロブリンを分泌し、2B12はIgMに属するIgを分泌した。マウスサウブクラスIgG1は、IFMAにおいてビオチン結合物(SEROTEC)としてマウスサブクラス重鎖に対するラットモノクローナル抗体を使用して求め、マウスサブクラスIgMは、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Dipstick Format)(19663-012, Life Technologies Inc.)を用いて求めた。
【0211】
実施例26
Flt4に対するモノクローナル抗体の特異性
精製された組換えFlt4細胞外ドメイン−6xHis融合生成物(実施例14および25に記載されたように製造された)をMukkala et al., Anal.Biochem,176(2),319-325(1989)に従ってユーロピウムで標識した。但し次のような改変がなされた:イソチオシアネートDTTA−Eu(N1キレート、WALLAC、フィンランド)の250倍モルの過剰量をFlt4溶液(PBS中0.5mg/ml)に加え、pHを0.5Mの炭酸ナトリウム緩衝液pH9.8を加えることによってpH約9に調整した。標識は+4℃で一晩で実施した。未結合の標識はPD−10(PHARMACIA、スウェーデン)をTSA緩衝液(50mMTris−HCl、pH7.8、0.15MNaClを含む)とともに用いることにより除去した。
【0212】
精製の後、1mg/ml牛血清アルブミン(BSA)を表紙記されたFlt4に加え、標識を+4℃で保存した。Flt4一分子あたり導入されたユーロピウムの平均数は、公知のEuCl3標準に対するフルオレセンスの比を測定することにより決定した(hemmila et al., Anal. Biochem., 137:335-343(1984))ところ、1.9であった。
【0213】
実施例25で生産された抗体をサンドウィッチ型免疫蛍光アッセイを用いて、ウサギ抗マウスIg(Z259、DAKOPATTS)でコーティングされたマイクロタイターストリップウェル(NUNC、polysorb)を用いて、スクリーニングした。あらかじめコートされたウェルをPlatewash1296-024(WALLAC)とDELFIA洗浄溶液により一回洗浄した。DELFIAアッセイ緩衝溶液を、前段階のスクリーニングアッセイにポジティブコントロールとして用いられる、細胞培養用のおよび脾臓摘出マウスの血清用の希釈緩衝液(1:1000から1:100,000の間の希釈)として、用いられた。
【0214】
+4℃での一晩の(あるいは室温で2時間の)インキュベーションはPlateshaker shaker(1296−001、WALLAC)で5分間振とうすることにより開始した。次いで上記の洗浄溶液で4回洗浄した。
【0215】
ユーロピウムで標識されたFlt4はアッセイ緩衝溶液100μl中1:500の希釈で加えられた。
【0216】
増強溶液(DELFIA)は200μl/ウェルで加えられた。プレートは次いでPlateshake shakerで5分間振とうされ蛍光の密度がARCUS−1230(WALLAC)で10〜15分間で測定された(Lovgren et al., In:Collins W.P.(Ed)Alternative Immunoassays, John Wiley & Sons Ltd.(1985),pp203-216)。DELFIAの結果は、試験されたすべてのモノクローナル抗体がFlt4EC高原に結合したことを示している。Flt4(およびその抗体を生産するハイブリドーマ)と反応性であるモノクローナル抗体は、さらなるスクリーニングのために選択された。
【0217】
得られたモノクローナル抗体は、LTR−FLT4構築物を発現するNIH3T3細胞およびネオマイシン耐性トランスフェクトNIH3T3細胞の二重抗体免疫蛍光染色において使用した。細胞はEDTAを用いて培養プレートから剥離させ、染色し、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)において分析した。FACS分析の結果は細胞染色陽性の割合と示唆されたモノクローナル抗体によって示されている(下記表2参照)。
表2
a)LTR感染細胞から結果として得られたFACS
b)NEO細胞(コントロール)から結果として得られたFACS
【0218】
LTR−FLT4lトランスフェクト細胞でのFACSの結果は、抗体がFlt4発現細胞を有効に認識することを示している。これらの同じ抗体はネオマイシンホスホトランフェラーゼトランスフェクトNIH3T3細胞のバックグラウンド染色のみを示す。従って、これらの抗体は細胞表面でFlt4チロシンキナーゼを特異的に認識する。
【0219】
抗Flt4ハイブリドーマ9D9F9と表示される1つのクローンは、IFMAにより免疫グロブリンクラスIgG1のものであると同定されたモノクローナル抗体を安定して分泌することが分かった。ハイブリドーマ9D9F9はGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures, Department of Human and Animal Cell Cultures and Viruses, Mascheroder Weg 1b, 3300 Braunschweing, Germany, March 23, 1995に寄託し、受託番号ACC2210を得た。
【0220】
融合 II 抗体
上記のユーロピウム標識Flt4細胞外ドメインタンパク質を用いても実施例25に記載の融合ll抗体をスクリーニングした。抗体は、ウサギ抗マウスIg(Z259、DAKO)で被覆した微量滴定ウェル(Nunc、polysorb)Flt4特異的を用いてIFMAでスクリーニングした。DELZFIAプレート洗浄装置を用いてこのプレコートウェルを洗浄溶液(Wallac)で1回洗浄した。
【0221】
DELFIAアッセイバッファーを細胞培養上清(予備スクリーニングでは1:2希釈)および脾臓摘出マウスの血清(1:1000〜1:100,000希釈)の希釈バッファーとして用い、これを陽性対照として用いた。標準としては精製抗Flt4 9D9F9(マウスサブクラスIgG1)を1.0ng/ml〜250ng/mlの間の濃度で用いた。まずサンプルを室温で5分間プレートシェーク・シェーカーで振盪し、次ぎに4℃で約18時間インキュベートした。このフレームをまず4回洗浄し、次ぎにEu標識Flt4(100μlアッセイバッファー中1:2000)を加え、最後にそのフレームを室温で1時間インキュベートした。記載のようにして洗浄した後、増強溶液(200μl/ウェル、Wallac)を加え、フレームを5分間プレートシェーク・シェーカーで浸透した。蛍光強度はARCUS−1230(Wallac)で測定した。上記のようにしてFlt4発現NTH3T3細胞を用いる二重抗体免疫蛍光染色アッセイでさらなるスクリーニングのために、Flt4に反応性のあるモノクローナル抗体を選択した。
【0222】
得られたFLt4に対する融合IIモノクローナル抗体およびそれに対応するFACS分析の結果(記載のモノクローナル抗体で陽性染色される細胞のパーセンテージで表示)は表3に要約されている。
【0223】
抗Flt4抗体の定量のための標準曲線はアフィニティー精製した抗Flt4 9D9F9によって作製した。直線範囲は1.0ng/mlから250ng/mlまでに達した。
【0224】
表面で全長Flt4を発現するpLTRFLT4l構築物で同時トランスフェクトしたNIH3T3細胞の細胞溶解物を、6.5%SDS−PAGEで電気泳動に付し、タンパク質を硝酸ニトロセルロース膜に移した(0.45μm、SCHLEICHER & SCHUELL)に移し、モノクローナル抗体を含有するハイブリドーマ細胞培養上清(1:10、50mM TRIS−4%メタノールを含有する40mMグリシンバッファー、SDS0.04%)で免疫ブロッティングした。モノクローナルの特異性は、HRPコンジュゲートウサギ抗体Ig(P161、DAKO、150mM生理食塩水、5%粉乳を含有する20mM TRISバッファー、pH7.5で1:1000希釈)およびECL(増強化学発光、AMERSHAM)でインキュベーションすることにより検出した。
表3
a)LTRトランスフェクト細胞によるFACSの結果
b)NEO細胞(対照)によるFACSの結果
c)標準として用いたアフィニティー精製した抗FLT 9D9F9抗体に基づくMab産生の定量
NF FACSに作用しない
WB ウエスタン免疫ブロッティングで首尾よく使用
【0225】
実施例27
細胞溶解物中のおよびヒト組織におけるパンパ内皮細胞で発現したFltを同定するために抗Flt4抗体の使用
上記実施例に記載のハイブリドーマ9D9によって産生されたモノクローナル抗体をHEL細胞の溶解物の免疫沈降およびウエスタンブロッティングに用いた。実施例6で報告したように、Flt4mRNA発現はこれまでにHEL細胞で認められていた。約2X107のHEL培養細胞を実施例11で明示したRIPAバッファーで溶解し、約2gの9D9抗体を用いて免疫沈降させた(実施例11においてポリクローナル抗体について記載した通り)。ウエスタン解析については、免疫沈降物をSDS−PAGE(6%ゲル)で電気泳動に付し、ニトロセルロース膜へエレクトロブロッティングした。1μg/ml希釈の9D9抗体を用いた免疫沈降物のウエスタンブロッティング解析で、Flt4ポリペプチドに相当する175kDと125kDのポリペプチドバンドが検出された。
【0226】
ヒト皮膚組織の免疫染色は9D9モノクローナル抗体およびアルカリ性ホスファターゼABC−APキット(Dako)を用いて行った。要するに、6μmの成人皮膚サンプルを含むスライドを30分間室温で乾燥させ、10分間冷アセトンで固定し、その後5分間、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄した。次ぎにこのサンプルを2%ウマ血清とともに室温で30分間インキュベートし、PBS中で5分間3度洗浄した。
【0227】
免疫染色については、サンプルを9D9一次抗体とともに室温で1時間インキュベートし、PBS中で5分間3回洗浄した。洗浄後、サンプルをビオチニル化ウサギ抗マウス二次抗体とともに室温で30分間インキュベートし、再びPBSで5分間3回洗浄した。
【0228】
結合した抗体は、ABC−AP複合体とともにサンプルを室温で30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、AP−基質(Sigma Fast Red TR/Naphtol AS-MX(カタログ番号F−4648))とともに室温で15分間インキュベートして水洗することにより検出した。次ぎにサンプルをメイヤーのヘマトキシリンで30秒間対比染色して水洗した。水をのせてカバーガラスをかけ、顕微鏡下でサンプルを観察した。これらのヒト皮膚切片のリンパ内皮細胞で9D9抗体染色が認められた。血管内皮細胞は極めて弱い染色しか示さなかったか、あるいは全く染色されていなかった。リンパ内皮に対する明らかな特異性を確認するためにさらなる分析を用いた。Lymbouskaki et al., Am. J. Pathol., 153(2):395-403(1998年8月)、およびJussila et al., Cancer Res., 58:1599-1604(1998年4月)参照。なお、両者とも引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0229】
これらの結果からさらに、リンパ内皮の有用なマーカーとしてのFlt4の有用性、ならびに組織サンプルにおいてこれらの細胞で発現されたFlt4を同定および視覚化するための抗Flt4抗体の有用性が確認される。
【0230】
実施例28
乳癌の脈管形成におけるVEGF−C/VEGFR−3シグナル伝達経路のアップレギュレーション
上記の実施例はFlt4(VEGFR−3)が正常な組織におけるリンパ内皮の特異的脈管形成マーカーとして有用であることを示している。以下の手法はさらに、VEGFR−3が悪性乳癌において脈管形成マーカーとして(例えば診断およびスクリーニングのため)、また治療標的として有用であることを証明するものである。組織学的に正常な乳房組織に比べて侵襲性乳癌では、極めて高い数のVEGFR−3陽性血管が認められた(P<0.0001)。
【0231】
材料および方法
ヘルシンキ大学病理学科のファイルから新たに凍結させた乳房組織サンプルを入手した。このサンプルは腺管癌(n=6)、小葉癌(n=6)、分泌管内癌(n=8)、繊維腺癌(n=4)および組織学的に正常な乳房細胞(n=12)からなっていた。サンプルは総て摘出後直ちに液体窒素中で凍結させ、−70℃で保存した。
【0232】
ヒトFlt4(VEGFR−3)に対するマウスモノクローナル抗体(Mab)は実質的に上記実施例、例えば実施例25に記載のようにして作製した。VEGFR−3細胞外タンパク質ドメイン(VEGFR−3EC)は培地から精製した昆虫細胞中の組換えバキュウロウイルスによって発現させた。次ぎに標的な方法を用いてVEGFR−3ECに対するマウスモノクローナル抗体を作製し、ハイブリドーマ腹水またはTecnomouse(登録商標)培養上清からAタンパク質アフィニティークロマトグラフィーによって免疫グロブリン画分を精製した。
【0233】
5μmの組織サンプルの凍結切片を風乾し、冷アセトン中で10分間固定した。この切片をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で再び水和し、室温下、5%正常ウマ血清中で30分間インキュベートした。次ぎにこの切片を加湿雰囲気下、室温で2時間、1.0μg/mlの濃度のMab 9D9F9(実施例26)とともにインキュベートした。VEGFR−3ECの異なるエピトープに対するその他の抗VEGFR−3Mabについても検討し、2B11D11(実施例26)および7B8F9(実質的に実施例26に記載のようにして作製)をそれぞれ9.5および8.5μg/mlの濃度で用いた。次ぎにビオチニル化抗マウス血清中で30分間インキュベートした後、Vectastain Elite Mouse IgG ABCキット(Vector laboratories, Burlingame, USA)の試薬を用いて60分間インキュベートした。3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC, Sigma, St. Louis, USA)で10分間ペルオキシダーゼ活性を進展させた。最後にこの切片をヘマトキシリンで20秒間染色した。陰性対照は一次抗体を除くか、または同じイソ型の無関係の一次抗体を用いて行った。精製したバキュウロウイルス免疫原を用いてもう一方の陰性対照として9D9抗体の結合をブロックした。これらの実験では、抗体をPBS中で10倍モル過剰のVEGFR−3ECタンパク質とともに一晩インキュベートした。4000rpm、4℃、4分間の遠心分離後、上清を注意深く回収し、次ぎに一次抗体として用いた。抗VEGFR−3抗体で染色したものに隣接する5μmの凍結切片を、血管内皮マーカーPAL−E(0.15μg/ml, Monosan, Uden, the Netherlands)、ラミニン(LAM−891, Sigma, St Louis, MOの上清の1:4000希釈)、コラーゲンXVIII(1.9μg/ml)、α−平滑筋アクチン(SMA, 0.5μg/ml, クローンIA4, Sigma)、VEGFR−1(クローン19の上清の1:200希釈)またはVEGFR−2(1:100希釈)に関して免疫染色した。
【0234】
上記試料のすべての病理学検査は、上記染色手順後に行われた。血管の密度は、GaspariniおよびHarrisによって薦められたガイドラインに従って、PAL−E[deWaal等、Am.J.Pathol.、150:1951〜1957(1997)]に対して染色されたスライドから得られた。[GaspariniG、およびHarrisA、J.Clin.Oncol.,13:765〜782(1995)]VEGFR−3の正の血管密度は同様に研究された。スライドは最初に低倍率で走査され、次に腫瘍内血管密度は、最も高い血管密度(「血管ホットスポット」)を有する領域または最も高いVEGFR−3正血管密度を有する領域において400倍の倍率の高電界(hpf)当りの染色された血管の数を数えることによって決められた。1スライドにつき最低5つの電界が計数された後、3つの最高計数値が平均された。
【0235】
二重染色は、2つの導管内の癌腫において小リンパ管および血管の免疫組織化学染色を区別するために行われた。アセトン固定の5μmの低温部分は、抗PAL−E抗体で一時間、ビオチン化された馬の抗マウス抗体(VectastainEliteMouseIgG ABCキット、Vector研究所、米国バーリンゲーム)で30分間、ABC−ペルオキシダーゼ(Vectastain、1:100)で45分間培養され、最終的にAECで10分間現像された。第二工程は、上記部分が、ISH信号向上のために文献に前に記載された手順に従って、抗VEGFR−3抗体で1時間(0.14μg/ml)、次にビオチン化抗マウス抗体によって30分間(クローンの上澄みの1:200の希釈)、ABCペルオキシダーゼで30分間(1:100)、0.01%の過酸化物を含有しているビオチン化チラミン溶液(1:2000)で5分間、ABCアルカリ性ホスファターゼ(1:100)で20分間培養され、FastBlue(Sigma、米国セントルイス)で20分間現像された。[Kerstens等、J.Histochem.Cytochem.、43:347〜352(1995)]二重に染色された部分に隣接している低温部分(5μm)はまた、VEGFR−3抗体でのみ上述したように免疫染色された。
【0236】
ポリクローン抗体は、成熟し分泌されたヒトの導管内皮成長因子CのN末端のアミノ酸残基2〜18に相当する合成ペプチド(VEGF−C)(VEGF−CプレプロVEGF−C ポリペプチドの残基104〜120)に対してウサギにおいて文献に記載されたように生成された。[Joukov等、EMBO J.16:3898〜3911(1997)、参照で全体において準用される]抗血清は、エポキシで活性化されたセファロース6Bカラムに結合された免疫原性のポリペプチドを用いてアフィニティー精製され且つVEGF−Cまたは対照β−ガラクトシダーゼを表すアデノウイルス性ベクトルで感染された細胞を使用して、VEGF−Cの特定の染色に対して試験された。
【0237】
8つの導管内癌腫およびVEGFR−3に対して分析された侵入癌腫のすべては、VEGF−Cの発現をさらに分析するために選択された。抗VEGFR−3抗体で染色された部分に隣接している5ミクロメートルの低温部分は、冷アセトンにおいて10分間空気乾燥且つ固定された。上記部分はPBSにおいて再度水和され、5%の正常なヤギの血清において30分間培養された後、PBSにおいて1:200で希釈されたヒトのVEGF−Cに対するウサギの多クローン性抗体で2時間湿気のある雰囲気において室温で培養された。次のビオチン化抗ウサギ血清における30分間の培養後、VectastainEliteRabbitIgG ABCキット(Vector研究所、米国バーリンゲーム)の試薬を用いて60分間の培養が行われた。上記部分は、上述したようにさらに処理された。負の対照として、精製された免疫原が使用されてVEGF−C抗体の結合を妨げた。これらの実験において、VEGF−C抗体は、PBSにおけるVEGF−Cタンパク質の10倍モル超過で一晩培養された。4分間4000rpm+4℃の遠心分離後、上記上澄みは注意深く集められ且つ免疫染色に使用された。
【0238】
ヒト型XVIIIコラーゲンに対するモノクローン抗体は、DiaBorLtd.(オール、フィンランド)によって、ヒト型XVIIIコラーゲンのN端子NC1領域の共通領域に相当する組み換えポリペプチドQH48.18でマウスを免疫化することによって生成された[Saarela等、MatrixBiology、16:319〜28(1998)]。クローンは、ポリペプチドQH48.18を使用してELISA検定およびWestern分析によって、また凍結ヒト組織部分の免疫蛍光染色によって篩い分けられた。ハイブリドーマ・クローンの篩い分けの結果、3つの単クローン性抗体は、上述したすべての3つの検定において正であった(ELISA、Western、免疫蛍光染色)。最も強い信号を出した抗体の1つ、DB144−N2は次の実験に使用された。該抗体は、多クローン性の抗全ヒト(XVIII)のパターンに対して(例えば、成人の皮膚および肝臓の試料において)同一の染色パターンを与えた。
【0239】
結果
A. 組織的に正常な胸部組織および良性繊維腺腫におけるVEGFR−3
正常な胸部組織におけるVEGFR−3の免疫組織化学染色は、導管内の間質の毛管に非常に弱い染色を示した。これらの導管は特定のパターンを形成しなかったが、間質に分散されていた。正常な胸部組織試料におけるVEGFR−3正導管の密度の範囲はhpf当り6〜17で、中央値は9(n=12)であった。このような導管のほとんどは、血管の内皮マーカーPAL−Eおよび基底板成分、コラーゲンXVIIIに対して強く染色され、ここでVEGFR−3は正常な胸部組織の血管において弱く表されたことを示唆する。しかしながら、間質におけるいくつかの細い導管は、VEGFR−3に対して明瞭に染色されたが、PAL−Eに対して負であり且つコラーゲン型XVIIIに対してのみ弱く正であったが、ここで導管が小リンパ管であることを示唆した。VEGFR−3正導管はまた、良性繊維腺腫において一様に見られたが、ここで導管の密度(中央値はhpf当り8つの導管;範囲3〜19;n=4)は、組織的に正常な胸部組織の密度(中央値8つの導管、9;P>0.1、Mann−Whitney試験)と異ならなかった。
【0240】
B.分泌管内癌におけるVEGFR−3陽性癌
分泌管内癌において、 強く染色されたVEGFR−3陽性管の識別パターンが観察された。この陽性管は、変質管の回りにアーチ状構造を形成していた(図5A)。また、この「ネックレス」パターンは、血管の内皮の標識PAK−E(図5B)についての隣接する区域の染色にも観察され、VEGFR−3表現が毛細管内皮で高められたことを示唆していた。血管とリンパ管とをさらに明確に区別するとともに管壁内の平滑筋細胞および周皮細胞の存在を調べるために、平滑筋αアクチン(SMA)に対する抗体およびラミニンやXVIIIタイプのコラーゲンなどの基底板成分を使用して、追加の染色を行った。この染色によれば、分泌管内癌に近接する小さい管は、同時にVEGFR−3および基底板蛋白質を示したが、SMAに対してさらに弱く染色され、これらの管が管壁(図5C−図5Fの白抜き矢印)内の周皮細胞/平滑筋細胞によって不完全に覆われることを示した。対照的に、腺管内の病変から離間した大きな血管は、一般にVEGFR−3に対して陰性であるが、ラミニン、コラーゲンXVIIIおよびSMAに対して陽性である(赤矢印)。また、VEGFR−3に対して陽性であるが、基底板蛋白質、ラミニンおよびXVIIIタイプのコラーゲンに対して非常に弱く染色され、SMAに対して全く染色されない管が発見された(緑矢印)。これらは、リンパ管を示すものと考えられた。
【0241】
C.血管およびリンパ管の差別的な二重染色
免疫組織化学的二重染色手順によりリンパ管と血管とをさらに明確に区別するために、2つの分泌管内癌を選んだ(de Wallら、Am.J.Pathol., 150、1951−1957頁(1997年)参照)。この方法を使用して、VEGFR−3陽性管を青く染色するとともに、PAL−E陽性管および基底板を茶色に染色した。いずれの試験試料も同様の染色パターンを示し、腫瘍で満たした管を内側に張った管は、主としてPAL−E陽性管である(図5Gおよび図5Hの矢印の頭部)とともに、おそらくリンパ管であり、腺管内ストロマ内で少し離間したVEGFR−3陽性管は、PAL−E陰性管であった(図5Gおよび図5Hの黒矢印)。陽性の二重染色の人為結果による誤った解釈を除外するために、隣接する5μmの区域をアンチVEGFR−3だけで染色した。この染色は、PAL−E陽性血管の幾つかがVEGFR−3に対しても陽性であることを確認した。
【0242】
D.分泌管内癌細胞内のVEGF−C、VEGFR−1およびVEGFR−2、および隣接する管内のその受容体
ヒトVEGF−Cに対する親和性生成したポリクロナール抗体を使用して、8つの分泌管内癌試料を染色した。いずれの試験試料も少なくとも幾つかのVEGF−Cを含んでいたが、染色の強度および表現パターンにおいてかなりの異質性が観察された。ある場合には、殆どの癌細胞がVEGF−Cに対して強い陽性であるとともに、他の癌細胞では、少しの癌細胞だけが染色信号を与えた。対照的に、変質しない正常な管の上皮では、非常に少ない染色が観察され、または全く染色が観察されなかった。抗原阻止実験は、VEGF−Cに対する染色が特異的であることを示した。他のVEGF−C受容体、VEGFR−2だけでなくVEGF受容体(VEGFR−1)も、分泌管内癌に隣接する同じ「ネックレス」管内に表現された。
【0243】
E.侵入性乳癌におけるVEGFR−3陽性管およびVEGF−C
検討した全ての侵入性腺管癌および小葉癌には、強く染色したVEGFR−3陽性管も存在した。VEGFR−3陽性管は、特異的な分布パターンを形成しないように見られ、これらの管の殆どは、PAL−E抗原に対しても免疫反応的であった。腫瘍内のVEGFR−3陽性管の密度(中央値21、範囲:hpf当たり9−56の管、n=12)は、正常な乳房の組織(中央値21対9、P<0.0001、Mann−Whitney試験)と比較して、侵入性乳癌ではかなり高くなっていた。時折、VEGFR−3陽性リンパ管への癌細胞の侵入を観察することもできた。
【0244】
検討した侵入性癌の中で VEGF−Cの免疫染色が強く変化した。幾つかの癌細胞はVEGF−Cに対して強い陽性であり、他の癌細胞は非常に弱く染色され、ある場合には、染色が全く観察されなかった。腺管内の癌のように、これらの区域における結合組織では、染色が非常に少なく観察され、または全く観察されなかった。
【0245】
上記のデータは、殆ど大人の組織内の主にリンパ内皮の標識であるように見えたVEGFR−3が、正常な乳房の組織の毛細管内皮にも非常に弱く示されることを明らかにしている。さらに重要なことは、腺管内の癌では、強く染色されるVEGFR−3の陽性の管の「ネックレス」パターンが、腫瘍で満たされた管が内側に張られたことを検出されたことである。これらの管の殆どは、血管内皮の標識PAL−Eおよび基底板成分、ラミニンおよびコラーゲンXVIIIを示したが、SMAに対する抗体を使用して染色することによって示されるように、腫瘍細胞からさらに離れた所に位置する血管よりも見かけ上少ない周皮細胞/平滑筋細胞を有していた。これらの特徴は、「ネックレス」管が上述した血管形成であったことを示唆している。変質管から離れて配置された第2のグループの管は、VEGFR−3に対して陽性であったが、基底板成分に対して非常に弱い陽性であり、PAL−Eに対して陰性であり、これらはリンパ管であることを示唆した。また、これらの管は、SMA陽性の周皮細胞成分も欠乏していた。侵入性乳癌においても、VEGFR−3はPAL−E陽性血管において上方に調整されていたが、見られた血管パターンは、腫瘍細胞の回りの結合組織のストロマ内にさらにランダムに組織されていた。これらの結果は、VEGFR−3表現が、腫瘍の成長と関連する血管形成中に乳癌において上方に調整されることを示している。原位置の癌において発見された非常に多くの数のVEGFR−3陽性管は、癌細胞がその癌細胞のすぐ近くの血管の成長を活性化する要因となるという仮説に適合している。
【0246】
VEGF−Cは、VEGFR−3とVEGFR−2の両方と高い親和性で結合し、腺管内および侵入性癌細胞のいずれもVEGF−C蛋白質に対して陽性に染色することが多かったので、この成長の要因が、癌におけるVEGFR−3およびVEGFR−2陽性管に対する成長の要因候補である。これらのデータは、35の殆ど半分が(乳癌、扁平上皮癌、リンパ腫、黒色腫および肉腫を含む)悪性の侵入性腫瘍を選択せず、ノーザンブロット法分析においてVEGF−CmRNAを含んでいた他の研究と一致している(Salvenら、Am.J.Pathol., 153(1)、103−108頁(1998年7月)参照)。ここで報告したデータは、集合的に乳癌の治療の指示を提供し、VEGFR−3やVEGFR−2のVEGF−C介在シミュレーションを阻止する因子を有する他の非リンパ癌も提供する可能性がある。期待される遮断薬は、抗VEGF−C抗体、抗VEGFR−3抗体、抗VEGFR−2抗体、VEGFR−3およびVEGFR−2またはVEGFR−1と結合する二特異性(bispecific)抗体、循環VEGF−Cを結合するVEGFR−3の可溶性の細胞外領域の断片、VEGFR−3やVEGFR−2を結合させ且つこのような受容体の活性化を示すVEGF−C断片および類似体、 VEGFR−3やVEGFR−2を結合させ且つ適当な治療薬と接合するVEGF−Cのポリペプチド、断片および類似体、VEGFR−3チロシンキナーゼ阻害剤、およびこれらの受容体を結合させ且つ阻害する小さい分子を含む。また、VEGF−DはVEGFR−3およびVEGFR−2の両方を結合させるので、抗VEGF−D抗体および抑制VEGF−Dの断片および類似体も適当な遮断薬であることが期待される。ヒト抗体、または抗体薬をヒト治療のために選択される程度までヒト化した抗体およびその断片が好ましい。また、本発明の他の見地として、例えば、悪性および悪性の広がりのための診断およびスクリーニングのために、哺乳類の組織を生体外または生体内で評価するために、上述した遮断薬のいずれかを使用することが期待される。
【0247】
上述した遮断薬のいずれについても、放射性同位元素(例えば14C、133Iおよび125I)、発色団(例えばフルオレセイン、フィコビリプロティエン、テトラエチルローダミン、蛍光による検出のために蛍光または着色生成物を生成する酵素、電子顕微鏡検査による検出のための電子密度の高い生成物を生成する吸光度、可視色または凝集反応)、またはフェリチン、ペルオキシダーゼ、金のビーズのような電子密度の高い分子などを含む検出可能なラベルの付加によって、診断およびスクリーニングのために遮断薬をさらに改良してもよいことが期待される。
【0248】
同様に、植物、動物、微生物または菌類の起源の毒素のような抗腫瘍性特性を有する分子、放射性同位元素、薬剤、酵素、シトキン(cytokines)および他の治療蛋白質を付加(例えば接合)またはこれらとともに投与することによって、治療のために遮断薬をさらに改良してもよい(例えばPieterszおよびMcKenzie(癌の治療用抗体接合体)、Immunological Reviews、129、57―80頁(1992年)参照)。
【0249】
例29
ヒトの治療薬として投与するための抗Flt4抗体
A.抗Flt4モノクローナル抗体のヒト化
本明細書、例えば例28に記載のFlt4の生物学は、Flt4レセプターのリガンド依存性シグナル形成を遮断するFlt4インヒビター(アンタゴニスト)に対する治療薬の使用を示している。Flt4中和抗体は、Flt4アンタゴニストとして用いられる治療薬の一つのクラスを含んでなる。下記のものは、抗Flt4モノクローナル抗体を「ヒト化」してそれらの血清中半減期を向上させかつヒト宿主における免疫原性を少なくする(すなわち、非ヒト抗Flt4抗体に対するヒト抗体の応答を防止する)ことによって、モノクローナル抗体のヒトにおける治療薬としての有用性を向上させるためのプロトコールである。
【0250】
ヒト化の原理は文献に記載されており、抗体タンパク質のモジュール配置によって促進される。補体結合の可能性を最小限にするには、IgG4アイソタイプのヒト化抗体が好ましい。
【0251】
例えば、ヒト化のレベルは、本明細書記載の抗Flt4モノクローナル抗体のような目的とする非ヒト抗体タンパク質の可変ドメインをヒト抗体分子の定常ドメインと共に含んでなるキメラ抗体を生成することによって達成される(例えば、Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1989)を参照)。Flt4中和抗Flt4抗体の可変ドメインは、B細胞ハイブリドーマのゲノムDNAまたは目的とするハイブリドーマから単離したmRNAから生成したcDNAからクローニングされる。V領域遺伝子断片をヒト抗体定常ドメインをコード化するエキソンに連結し、生成する構築物を適当な方法に宿主細胞(例えば、骨髄腫またはCHO細胞)中で発現させる。
【0252】
ヒト化のレベルを更に高くするため、非ヒトモノクローナル抗体遺伝子の抗原結合相補性決定領域(「CDR」)をコードする可変領域遺伝子断片の部分のみをヒト抗体配列中にクローニングする[例えば、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechman et al., Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-36 (1988); およびTempest et al., Bio/Technology, 9:266-71 (1991)を参照]。必要ならば、CDR3領域を取り巻くヒト抗体のβ−シート骨格も改質して、もとのモノクローナル抗体の抗原結合ドメインの三次元構造を一層緊密に反映させる(Kettleborough et al., Protein Engin, 4:773-783 (1991);およびFoote et al., J. Mol. Biol., 224:487-499 (1992)を参照)。
【0253】
もう一つの方法では、目的とする非ヒトモノクローナル抗体の表面を、非ヒト抗体の内部を総て保持して残基を接触させたまま、非ヒト抗体の選択された表面残基を変更することによって、例えば位置指定突然変異誘発によって、ヒト化する。Padlan, Molecular Immunol., 28(4/5):489-98 (1991)を参照されたい。
【0254】
上記の方法は、Flt4を中和するFlt4モノクローナル抗体およびそれらを生成するハイブリドーマ、例えば抗体9D9F9を用いて用いられ、Flt4発現が有害な症状を治療しまたは緩和する治療薬として有用なヒト化したFlt4中和抗体を生成させる。
【0255】
B.ファージディスプレー由来のヒトFlt4中和抗体
ヒトFlt4中和抗体は、Aujame et al., Human Antibodies, 8(4):155-168 (1997); Hoogenboom, TIBTECH, 15:62-70 (1997); およびRader et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8:503-508 (1997)に記載のファージディスプレー法によって生成し、上記文献の総ての内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。例えば、Fab断片または連結した単一鎖Fv断片の形態での抗体可変領域を繊維状ファージマイナーコートタンパク質pIIIに融合させる。融合タンパク質を発現しこれを成熟ファージコートに組み入れると、表面に抗体を示しかつ抗体をコードする遺伝子材料を含むファージ粒子を生じる。このような構築物を含んでなるファージライブラリーを細菌で発現させ、ライブラリーを標識または固定したFlt4を抗原プローブとして用いてFlt4特異的ファージ抗体についてパンニング(スクリーニング)する。
【0256】
C.トランスジェニックマウス由来のヒトFlt4中和抗体
ヒトFlt4中和抗体は、Bruggemann and Neuberger, Immunol. Today, 17(8):391-97 (1996)およびBruggemann and Taussig, Curr. Opin. Biotechnol., 8:455-58 (1997)に本質的に記載されている方法でトランスジェニックマウスで生成させる。生殖系列配置でヒトV遺伝子セグメントを有し、これらのトランスジーンをリンパ系組織で発現するトランスジェニックマウスを、通常の免疫法を用いてFlt4組成物で免役する。ハイブリドーマを、通常の方法を用いて免疫マウス由来のB細胞を用いて生成させ、スクリーニングを行って抗Flt4ヒト抗体(例えば、上記のもの)を分泌するハイブリドーマを同定する。
【0257】
D.二重特異性抗体
Flt4に特異的に結合しかつ病因および/または治療に関連する他の抗原に特異的に結合する二重特異性抗体を、文献に記載されている標準的方法を用いて生成させ、単離して、試験する。例えば、Pluckthum & Pack, Immunotechnology, 3:83-105 (1997); Carter et al., J. Hematotherapy, 4: 463-470 (1995); Renner & Pfreundschuh, Immunological Reviews, 1995, No. 145, pp. 179-209; Pfreundschuhの米国特許第5,643,759号明細書; Segal et al., J. Hematotherapy, 4:377-382 (1995); Segal et al., Immunobiology, 185: 390-402 (1992); およびBolhuis et al., Cancer Immunol. Immunother., 34: 1-8 (1991)を参照されたい。上記文献の総ての内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。
【0258】
例30
癌の治療のための抗Flt4療法の効果を示すための動物モデル
癌治療のための任意の認められた動物を用いて、癌治療のための抗Flt4療法の効果を示すことができると考えられる。標準的な用量−応答研究を用いる乳癌の治療の効果を示す代表的なモデルとしては、Tekmal and Durgam, Cancer Lett., 118 (1): 21-28 (1997); Moshakis et al., Br. J. Cancer, 43: 575-580 (1981); およびWilliams et al., J. Nat. Cancer Inst., 66: 147-155 (1981)に記載されているものが挙げられる。ネズミモデルの他に、イヌおよびブタモデルが考えられるが、少なくともある種の抗ヒトFlt4抗体(例えば、9D9抗体)はイヌおよびブタ由来のFlt4も認識するからである。腫瘍の大きさおよび副作用を観察して、コントロールに対する治療効果を示す。
【0259】
本発明の概要または詳細な説明に引用されている特許明細書および文献などの総ての文書の内容は、その開示の一部として本明細書に引用される。
【0260】
本発明を具体的態様について記載してきたが、本発明は更に改質することが可能であり、また、本出願明細書は、一般的に本発明の原理に従って本発明の任意の変化、用途または翻案をカバーし、本発明が関係する技術の範囲内での既知または通常の実施の範囲内に収まり、上記の本質的特徴に適用することができ、特許請求の範囲に示されるような本開示からの離反を包含するものであることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 Flt4cDNAクローン構造の略図である。
【図1B】 ノーザンハイブリダイゼーションゲルの写真複写である。
【図2】 A〜F:Flt4の構造的特徴の略図とFlt1チロシンキナーゼ配列との比較を示す。
【図3A】 クローンJ.1.1およびI.1.1のcDNA挿入物3’末端の略図である。
【図3B】 アンチセンスRNAプローブと長鎖型および短鎖型Flt4RNAとのハイブリダイゼーションのオートラジオグラフの写真複写である。
【図3C】 アンチセンスRNAプローブと長鎖型および短鎖型Flt4RNAとのハイブリダイゼーションのオートラジオグラフの写真複写である。
【図4】 異なる種由来のDNAサンプルのFlt4配列のハイブリダイゼーション解析を示すゲルの写真複写である。
【図5】 脈管内癌においてVEGFR−3を発現する血管の免疫組織化学的特徴を示す。隣接する部分(図5A、B)では、VEGFR−3およびPAL−Eが癌細胞で占められた脈管周囲に類似したパターンの「ネックレス」管(矢印)を与えている。別の隣接する部分群とVEGFR−3(図5C)、ラミニン(図5D)、コラーゲンXVIII(図5E)およびSMA(図5F)に関する染色とを比較した。PAL−EおよびVEGFR−3(図5G)に関する二重染色とVEGFR−3単独(図5H)に関して染色した隣接する部分との比較。影響を受けた脈管に隣接する血管は二重陽性であり(矢印)、VEGFR−3陽性血管は脈管間ストロマにある影響を受けた脈管から少し離れたところに存在する(矢印)。基底膜が二重染色手順においてPAL−Eに関し陽性であることには留意のこと;拡大写真:図5A、B 400倍、図5C、D、E、F 320倍、図5E、F 480倍。
【配列表】
Claims (2)
- 脊椎生物由来の組織の腫瘍のイメージング方法であって、下記工程:
(a)腫瘍を含むと疑いがある脊椎生物組織と、Flt4結合化合物を含んでなる組成物とをイン・ビトロにおいて接触させること;
(b)その組織において細胞に結合したFlt4結合化合物を検出すること;および
(c)Flt4結合化合物が結合した血管内皮細胞を同定することにより固形腫瘍を造画すること(ここで、Flt4を発現する血管が組織における腫瘍の存在および位置に相関している)
を含んでなり、
該Flt4結合化合物が、抗Flt4抗体、その抗原結合断片、または抗Flt4抗体の抗原結合断片を含んでなるポリペプチドである、方法。 - 化合物が、検出可能な標識を結合してさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
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