JP4840934B2 - 水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は閉鎖冷却水システムにおける水を殺生物剤組成物で処理するための方法に関する。
イソチアゾロン殺生物剤の公知の用途の1つは、米国特許第3,761,488号に開示されるような水冷システムの処理である。しかしながら、市販の水冷システムにおいて最も頻繁に用いられるイソチアゾロン殺生物剤は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンそれぞれの3:1混合物である。この混合物は、高pHおよび高温での5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの相対的な不安定性を含む、幾つかの不都合を有する。冷却水システムにおいて用いられる他の殺生物剤配合物は、同じ理由で、並びに殺生物剤配合物中の非水溶媒、塩および揮発性有機化合物の存在のため、不都合である。
米国特許第3,761,488号
本発明が取り組む問題は、上で論じられる不都合を被ることのない、閉鎖冷却システムにおける水の処理方法を提供することである。
本発明は、少なくとも7のpHおよび少なくとも25℃の温度を有する閉鎖冷却システムにおける水を2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む組成物を添加することによって処理する方法であって、該組成物は非水溶媒、揮発性有機化合物およびハロゲン化殺生物剤を実質的に含まず、並びに2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは水中に15ppmから500ppmの2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン濃度を生じるのに十分な量で存在する方法に関する。
本発明は、さらに、使用中の金属加工用流体系におけるマイコバクテリア(グラム陽性、抗酸性菌)をMIを添加することによって制御するための方法に関する。
「MI」もしくは「MIT」は2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、別名2−メチル−3−イソチアゾロンである。「CMI」は5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、別名5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロンである。
ここで用いられる場合、以下の用語は、その文脈が他を明瞭に示さない限り、指定された定義を有する。「殺微生物剤」という用語は所定の位置での微生物の成長を阻害もしくは成長を制御することが可能な化合物を指す。殺微生物剤には殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤が含まれる。「微生物」という用語は、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビ)、細菌および藻類を含む。「位置」という用語は微生物による汚染を受ける産業システムもしくは製品を指す。「閉鎖冷却システム」という用語は、蒸発に対して開放されておらず、かつ水の損失が再循環率の5%未満である、産業冷却用途に用いられる水を含むシステムを指す。以下の略語が本明細書を通して用いられる。ppm=重量基準での100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、AI=活性成分、すなわち、イソチアゾロンの総量。他に指定されない限り、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージへの言及は重量基準である。
本発明に用いられる組成物は、好ましくは、20%から95%の水および5%から80%のMIを含むが、非水溶媒を実質的に含まず、すなわち、含まれるそのような溶媒は2%未満、あるいは1%未満、あるいは0.5%未満、あるいは0.1%未満である。この組成物は、EPA規定による定義で、実質的に揮発性有機化合物を含まず、すなわち、含まれるそのような化合物は2%未満、あるいは1%未満、あるは0.5%未満、あるいは0.1%未満である。この組成物はハロゲン化殺生物剤を実質的に含まず、すなわち、含まれるそのような殺生物剤は0.5%未満、あるいは0.1%未満、あるいは100ppm未満、あるいは50ppm未満である。ハロゲン化殺生物剤には、例えば、市販の殺生物剤においてしばしばMIと共に存在するCMI、2−ブロモ−2−ニトロ−l−プロパン−l,3−ジオール(BNPD)、および2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)が含まれる。本発明の一実施形態においては、この組成物はMI以外のすべての殺生物剤を実質的に含まない。一実施形態においては、この組成物は金属を実質的に含まず、すなわち、含まれる金属イオンは0.4%未満、あるいは0.2%未満、あるいは0.1%未満である。本発明の一実施形態においては、この組成物が特定の成分を実質的に含まないものとして説明されるとき、冷却水はこれらの成分を実質的に含まず、すなわち、それらが冷却水に別に添加されることはない。
この組成物は腐食抑制剤と共に用いることができ、これには、例えば、亜硝酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、リン酸塩、亜鉛塩、アゾールおよびホスホン酸塩が含まれ、これらは別に冷却水に添加することができる。腐食抑制剤中に存在する金属は、本発明の組成物中のあらゆる痕跡金属によって生じるものを上回る量で冷却水中に存在することができる。
この組成物はスケール抑制剤と共に用いることもでき、これには、例えば、ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、およびポリアスパラギン酸、またはリン酸塩もしくはホスホン酸塩が含まれる。スケール抑制剤は冷却水に1ppm未満、10ppm未満、もしくは100ppm未満の使用レベルで別に添加することができる。スケール抑制剤中に存在する金属も本発明の組成物によってもたらされる量を上回ることができる。
本発明の一実施形態において、冷却水中のMI濃度は少なくとも20ppm、あるいは少なくとも25ppm、あるいは少なくとも30ppm、あるいは少なくとも40ppm、あるいは少なくとも50ppm、あるいは少なくとも60ppmであり、好ましくは、MI濃度は300ppm以下、あるいは250ppm以下、あるいは200ppm以下、あるいは150ppm以下、あるいは125ppm以下である。
本発明の一実施形態において、冷却水のpHは少なくとも7.5、あるいは少なくとも8、あるいは少なくとも8.5、あるいは少なくとも9であり、好ましくは、pHは12以下、あるいは11.5以下、あるいは11以下、あるいは10.5以下である。一実施形態において、冷却水温度は少なくとも30℃、あるいは少なくとも35℃、あるいは少なくとも40℃であり、好ましくは、冷却水温度は70℃以下、あるいは60℃以下である。
「金属加工用流体におけるマイコバクテリアの成長の制御に対する、メチルイソチアゾロン殺生物剤の使用」
以下の例は、近年同定され、かつ使用中の金属加工用流体系から回収されるマイコバクテリア(グラム陽性、抗酸性菌)の制御に2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)殺生物剤を使用する概念を支持するデータを提供する。研究室および現場試料を用いる研究の結果は、MIT殺生物剤が汚染された金属加工用流体系において遭遇するマイコバクテリアの成長の制御において、特には公知の金属加工用流体殺生物剤と比較して、驚くべき効力を示すことを示している。加えて、MITの使用は、ホルムアルデヒドを含まないか、もしくは放出せず、かつ重金属、溶媒および臭気のない、1パック高pH安定殺生物剤処理を提供する。
概要
金属加工用流体産業において通常用いられる幾つかの殺生物剤を、標準微生物学的効力手順;最小阻止濃度(MIC)および最小殺生物濃度(MBC)試験を用いたときの、マイコバクテリアの純粋培養物に対するそれらの有効性の基本レベルについて試験した。これらの試験において、すべての市販殺生物剤が、それらの典型的な最大使用率を下回るレベルで、評価されたマイコバクテリアの2つの株を阻害もしくは殺生する効力を示した。これらの研究室効力試験に基づき、これらの殺生物剤のすべてが、現場からの汚染された試料中のこれらの生物を殺すことにおいてそれらの典型的な使用率で良好な効力を示すものと期待された。
しかしながら、6つの使用中の、かつ汚染された金属加工用流体系からのすべての試料における天然のマイコバクテリアの混合集団の成長の制御において、MITは予想外の結果をもたらした。MITは、それらの最大推奨適用量(3種類のイソチアゾロン物質、クロロフェノールおよびホルムアルデヒド放出性トリアジン殺生物剤を含む)で用いられるとき、現場から回収される汚染流体の6つの試料すべてにおける最小程度の効力(>90%殺生物)をもたらす上で、他の市販金属加工用流体殺生物剤のすべてを凌いでいた。
背景
金属加工用流体、別名、金属機械加工用流体もしくは金属切削用流体は、金属加工用途において冷却および潤滑性のために用いられる。水系金属加工用流体は、それらの流体が開放環境で再循環されるため、様々なタイプの細菌および真菌による微生物汚染を受けやすい。様々なタイプのグラム陰性およびグラム陽性細菌、酵母、およびカビに遭遇する。近年同定され、かつこれらの流体中で回収されている具体的なグラム陽性菌のタイプの1つはマイコバクテリウム属のメンバー、別名、マイコバクテリアである。
マイコバクテリアは、ミコール酸をそれらの細胞壁に含み、標準細菌学的手順を用いる抗酸性染色に陽性に応答する、グラム陽性である細菌の属の1つを構成する。これらの生物は、近年、「過敏性肺炎」(HP)として知られる特定の健康問題の発生にも関連付けられており、これは、これらの細菌を含むエアロゾルが存在し得る金属機械加工もしくは金属加工環境において作業する個人が遭遇し得るものである(Shelton et al., 1999, Emerg. Infect. Dis. 5: 270−273;Moore et al., 2000, AIHJ 62: 205−213;Kreiss and Cox−Ganser, 1997, Am. J. Ind. Med. 32: 423−432)。
マイコバクテリウム・イムノゲヌム(Mycobacterium immunogenum)がHPの発生に関連付けられる金属加工用流体中のマイコバクテリアの新たな種として近年同定されており(Wilson et al., 2001, Int. J. Syst. Evol, Microbiol. 51: 1751−1764)、HP問題を経験するさらなる流体系で回収され続けている(Wallace et al., 2002, Appl. Environ. Microbiol. 68: 5580−5584; Veillette et al., 2004, Ann. Occ. Hyg. 48: 541−546)。マイコバクテリウム・イムノゲヌムATCC700505およびATCC700506株が、近年、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(Manassas、VA)に寄託された。金属加工用流体を殺生物剤で処理したにもかかわらずHPの報告が継続するとなると、金属加工用流体中のマイコバクテリウム・イムノゲヌムおよびマイコバクテリウムの他の株の成長を制御する改善された方法に対する必要性が存在することは明かである。
現在、多くの殺生物剤もしくは防腐剤が金属加工用流体系中の細菌および真菌の制御に用いられる。これらには、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)に加えて2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)殺生物剤の3:1混合物(CMIT/MIT)、CMIT/MITに加えてクエン酸モノ銅(MCC)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、ホルムアルデヒド放出性トリアジン(ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン)およびオキサゾリジン(4,4−ジメチルオキサゾリジン)、パラクロロメタクレゾール(PCMC)、並びに1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)が挙げられる。
複数の流体中の、制御された条件下での並列試験における、金属加工用流体中の特定のマイコバクテリアの制御に対するこれらの殺生物剤の相対効力に関しては、限られたデータしか存在しない。最近の論文の1つは、PCMCが現場における汚染された系のマイコバクテリアの制御において非常に有効であり、それに対して、トリアジンおよびイソチアゾロン殺生物剤は有効ではないものと報告した(Rossmoore, et al., 2004, Lubes ″N Greases, April, 20〜27)。金属加工用流体においてPCMCを使用する欠点の1つは、適用する際のその強力なフェノール臭である。金属加工用流体の混合集合においてM.イヌノゲヌムを用いる別の最近の研究は、等しい生成物濃度で迅速に殺すことに対して、イソチアゾロン殺生物剤(CMT/MIT)がトリアジン、PCMC、およびオキサゾリジン殺生物剤に対して、より有効であったことを示した(Selvaraju et al., 2005, Appl. Env. Microbiol, 71:542〜546)。
イソチアゾロンおよびクエン酸モノ銅の組み合わせ(CMIT/MIT/MCC)を用いる金属加工用流体中の微生物の成長を制御するための改善された方法が、最近の特許において、Rossmooreによって記述された(米国特許第4,608,183号)。CMIT化合物の相乗効果および改善された安定性が金属加工用流体中での改善された効力および性能をもたらした。
CMIT/MIT生成物の投与とMCCとの組み合わせを用いて、HPと関連付けられるマイコバクテリア、特には、M.イムノゲヌムの成長を制御する方法がRossmooreによって近年開示されている(米故国特許第6,951,618号)。高濃度のクエン酸銅(500ppm)が、CMIT/MIT混合物において最も活性のイソチアゾロンであるが、求核性化合物による急速分解を受ける塩素化イソチアゾロン(CMIT)の安定性を改善することが示された。しかしながら、金属加工用流体における高濃度の銅の使用は、最終用途流体の変色、使用済み流体の処分および廃棄物処理の経費の増加、並びに潜在的な腐食および金属染色の問題のため、常に望ましいものとは限らない。マイコバクテリアを制御するための単一生成物処理としてのMIT単独の使用はこの特許においてはRossmooreによって示されていない。したがって、改善された安定性を有し、高レベルの追加金属の添加もしくは二重生成物投与を用いることのない、金属加工用流体系中のマイコバクテリア、特には、M.イヌノゲヌムの制御をもたらす殺生物剤に対する必要性が存在する。
実施例1:pH9バッファ溶液中、70℃での、BITおよびBNPD殺生物剤に対するMIの改善された安定性
概要
高pHおよび高温条件下でのMI(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン)、BIT(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)およびBNPD(2−ブロモ−2−ニトロ−プロパン−1,3−ジオール)の安定性を決定する研究を行った。MIは、pH9バッファ中、70℃で56日の保存の後、優れた安定性を示した。この時間にわたってMIの損失はなかった。BITは56日の研究にわたって安定性の減少を示し、第56日での活性成分の損失は32%であった。BNPDは、pH9および70℃で、5時間で完全に分解した。
方法
0.069Mホウ酸、0.017Mクエン酸、0.066Mリン酸ナトリウムを含むpH9バッファを蒸留水中で調製した。殺生物剤をこのpH9バッファ溶液に添加し、加熱ブロック内に70℃で保存した。これらの試料を、5時間、並びに1、3、7、23、30、35および56日後の時点での活性成分濃度について試験した。初期殺生物剤用量は166ppm MI、199ppm BITおよび150ppm BNPDであった。
これらの試料を活性成分濃度について高速液体クロマトグラフィーによって評価した。試料を加熱ブロックから採取し、室温に30分間冷却した。次に、それらの試料を、25mlガラス試料バイアルにおいて9.5mlの脱イオン水を0.5グラムの試料に添加することにより、脱イオン水で1:20に希釈した。試料を15秒間混合し、分析のためHPLC試料バイアルに移した。このHPLC法の分析変動は±10%である。
結果
70℃で56日にわたって保存したとき、MIの損失はなかった。BITは安定性に劣り、70℃で32%分解した。BNPDの安定性は乏しく、5時間後にほぼ即時の全体的な分解が観察された。
Figure 0004840934
実施例2:様々な酸化および還元剤を伴う、pH7およびpH9での、BITに対するMIの改善された安定性
概要
MIおよびBITの安定性を様々なレドックス剤の存在下、pH7.0および9.0バッファにおいて、第2および第8日に評価した。それらの結果は、様々なレドックス条件下および高pHでのBITに対するMIのより高い安定性を示した。両殺生物剤はpH9で亜硫酸水素ナトリウムでの僅かな分解を示したが、pH7.0で有意に分解した。亜硫酸水素塩は、特には低pH値での、イソチアゾロンの公知の不活性化剤である。
方法
酸化剤(2mM)は過酸化水素(H、68ppm)、t−ブチルヒドロゲンペルオキシド(t−butyl hydrogen peroxide)(t−BHP、180ppm)、および過硫酸カリウム(K、540ppm)を含んでいた。還元剤(2mM)はイソ−アスコルビン酸(IAA、352ppm)および亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO、208ppm)を含んでいた。殺生物剤は1mM濃度で試験し、これは115ppm MIおよび166ppm BITを表す。
pH7.0バッファは0.00426%リン酸一カリウムに加えて0.019%塩化マグネシウム六水和物を含んでいた。pH9.0バッファは0.0046M塩酸に加えて0.013Mホウ砂を含んでいた。レドックス剤のストック溶液を調製し、各バッファのアリコートに添加して2mM濃度を得た。次に、殺生物剤を添加して1mM濃度を得た。これらの試料を25℃で保存し、殺生物剤濃度をHPLCによって第0、第2および第8日に分析した。
結果
これらの結果は、様々なレドックス条件下および高pHでのBITに対するMIのより高い安定性を示した。MIは試験した酸化剤のすべてでBITより安定であり、過酸化水素で第8日に唯一の最小pH効果が見られた。8日後に、すべての酸化剤、pH9で残留するBITは、存在するとしても、非常に少量であった。BITは、特には過酸化水素で、pH7に対してより高いpHでのより多くの分解も示した。MIは、BITに対して、アスコルビン酸還元剤に対するより良好な安定性を示し、pHによる影響はなかった。両殺生物剤は亜硫酸水素ナトリウム、pH9で僅かな分解を示したが、pH7.0では2日以内に有意に分解した(イソチアゾロンの公知の不活性化剤)。
Figure 0004840934
実施例3:緩衝水中で様々なpHおよび温度での、CMIおよびBITイソチアゾロンに対するMIの改善された安定性
概要
3種類のイソチアゾロンに対して、緩衝脱イオン水中、2種類の異なる温度(22℃および50℃)で安定性研究を行った。MIは最も安定であることが示され、50℃およびpH12で90日後に活性の僅かな損失が伴うのみであった。BITは、両温度で、pH10までは良好な安定性を示した。CMIは試験したイソチアゾロンのうちで最も安定性が低く、上昇する温度の影響を最も受けた。
方法
殺生物剤をバッファ溶液に添加し、22℃および50℃で、HPLCを用いて0時間、21日、43日、および88〜90日での殺生物剤濃度を測定して安定性を試験した。殺生物剤の安定性は以下のバッファ溶液中で決定した。pH2、0.01M HC1;pH6、0.1M KHPO;pH8、0.025Mホウ酸塩;pH10,0.025Mホウ酸塩;pH12、0.05M NaHPO。試験した殺生物剤濃度は100ppm MI、200ppm BIT、44ppm CMIであった。
結果
3種類のイソチアゾロンに対して、緩衝水中、2種類の異なる温度(22°および50℃)で安定性研究を行った。MIが最も安定な試験された殺生物剤であり、BITがそれに続き、CMIが条件の全範囲にわたって最も安定性が低かった。MIは室温でpH12まで優れた安定性を示した。50℃で、MIの安定性は、pH12のみではあるが、僅かに低下した。BITは室温および50℃でpH10まで優れた安定性を示した。pH12では、両温度で僅かな分解が生じた。CMIはpH10〜12、室温(22℃)での急速かつ完全な分解、およびpH6〜12、より高温での安定性の低さを示した。
Figure 0004840934
Figure 0004840934
実施例4:細菌および真菌に対するMIの有効濃度
概要
細菌および真菌を用いる最小阻止濃度(MIC)研究は、3:1比CMI+MI組み合わせ製品中に存在するMIと比較して、MI単独が効力を示すのに有意に高い濃度を必要とすることを示した。CMI+MI組み合わせにおいて、抗微生物活性のレベルは単に塩素化イソチアゾロン(CMI)によるものであり、存在するMIの濃度は有効性に必要なMI単独の濃度よりも有意に低い。
方法
最小阻止濃度(MIC)研究を行い、細菌および真菌の成長を阻害するのに必要な殺生物剤の最低濃度を決定した。試験は96ウェルマイクロタイタープレートにおいて行った。殺生物剤をプレート内の成長培地に添加し、連続的に希釈して一連の濃度を得た。細菌試験は、トリプチカーゼ大豆ブロス(TSB、pH7)において、mlあたり10コロニー形成単位で添加された一晩接種材料を用いて行った。試料を25℃で2日間インキュベートし、MIC値を成長・非成長基準で視覚的に決定した。真菌試験は、麦芽抽出物ブロス(MEB、pH4.7)において、mlあたり10コロニー形成単位で添加された5〜7日接種材料を用いて行った。試料を25℃で7日間インキュベートし、上述のようにMIC値を決定した。
結果
これらのMIC研究は、細菌および真菌の両者の制御について、効力を示すのに必要なMIの濃度が、3:1比CMI:MI組み合わせ製品中に存在するMI濃度よりも有意に(10−100×)高いことを示す。細菌および真菌に対するMI単独の平均MIC値は、それぞれ、24および63ppm MI単独であり、それに対して、3:1組み合わせにおいては、MIは、それぞれ、0.56および0.34ppmで存在するのみであった。したがって、組み合わせ殺生物剤中に存在するMIはMI単独で必要とされるものよりも有意に少なく、配合イソチアゾロンのCMI成分が単独で観察される効力の原因であった。
Figure 0004840934
Figure 0004840934
実施例5:高pH値での、細菌および真菌に対する、BITに対して改善されたMIの効力
概要
細菌および真菌を用いる最小阻止濃度(MIC)研究は、増加するpH(pH9対pH7)によって、MIの効力が有意に影響されることがなく、それに対して、よりアルカリ性の条件下(pH9)で、BITは微生物成長の制御に対する有効性に劣ることを示した。これらの知見に基づき、MIは高pH条件下での微生物の有効な制御により望ましい殺生物剤であった。
方法
最小阻止濃度(MIC)研究を行い、細菌および真菌の成長を阻害するのに必要な殺生物剤の最小濃度を決定した。試験は96ウェルマイクロタイタープレートにおいて行った。殺生物剤をプレート内の成長培地に添加し、連続的に希釈して一連の濃度を得た。試験は1/2強度トリプチカーゼ大豆ブロス(TSB、pH7.1もしくはpH9.0に調整)中で行った。細菌および真菌を試料にmlあたり10コロニー形成単位で添加し、30℃で3日間インキュベートした。MIC値は成長・非成長基準で視覚的に決定した。
結果
細菌および真菌を用いる最小阻止濃度(MIC)研究は、増加するpH(pH9対pH7)によって、MIの効力が有意に影響されることがなく、それに対して、よりアルカリ性の条件下(pH9)で、BITは微生物成長の制御に対する有効性に劣ることを示した。
MIのMIC値は、pH9.0対pH7.1で、抗微生物活性に大きな差は示さなかった。両pH値での結果は一般に同一であったか、もしくはMIC試験の決定限界であるマイクロタイタープレート内の1ウェル(2×差に等しい)以内であった。MIで試験した生物のいずれも、pHの関数としての効力に2×を上回る変化を示したものはなかった。
BITは、比較により、試験した細菌および真菌のほとんどについて、pH7.1に対してpH9.0で有意に高いMIC値を示した。9つの生物のうちの8つがBITでのpH有効性を示し、MIC値はpH7.1に対してpH9.0で4から30×高かった。
これらの結果は、高pH条件を伴う用途における使用に非常に有効な殺生物剤として、MIを示す。
Figure 0004840934
実施例6
標準実験培地中のマイコバクテリアの純粋培養物に対する、市販殺生物剤を用いる最小阻止濃度(MIC)および最小殺生物濃度(MBC)研究
MICおよびMBC研究を行い、2種類の株のマイコバクテリアの阻害および殺生に対する、金属加工用流体において典型的に用いられる数種類の市販殺生物剤の基本有効性を、標準培地および実験手順を用いて決定した。結果は、すべての市販殺生物剤がそれらの最大推奨使用濃度を下回る濃度で両株の(阻害および殺生の両者)の効力を示すことを示した。これは、これらの殺生物剤が、他の細菌が存在しない状態で試験し、かつ標準実験培地を用いるとき、マイコバクテリアの株に対する固有の抗微生物効力を有することを示す。
細菌の阻害に必要な殺微生物剤の最小濃度は高分解能MIC試験によって決定した。様々な量の各殺微生物剤を96ウェルマイクロタイタープレート内の培地に添加した。MIC試験に用いた培地は10%トリプチカーゼ大豆ブロス(1/10X TSB)であった。10倍連続希釈をBiomek 2000 Workstationで行い、殺微生物剤の一連の間隔の狭い濃度を得た。各ウェルにおいて10コロニー形成単位(CFU)/mLの細菌をもたらすように調整された静止期微生物の細胞懸濁液をマイクロタイタープレートに添加した。それらのマイクロタイタープレートを、マイコバクテリウム・イムノゲヌムについては30℃で、マイコバクテリウム・ケロナエ(Mycobacterium chelonae)については37℃で、24時間インキュベートした。650nmの吸光度に設定されたThermomaxマイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの濁度を測定することにより、微生物の成長の有無を決定した。成長が観察されなかった化合物の最小濃度をその殺微生物剤のMIC値とみなした。各殺微生物剤のMIC値を細菌に対する4回の決定の平均から決定した。
試験した細菌株には、マイコバクテリウム・ケロナエ(ATCC14472)およびマイコバクテリウム・イムノゲヌム(ATCC700505)が含まれていた。マイコバクテリア培養物は30℃(M.イムノゲヌム)もしくは37℃(M.ケロナエ)で、回転浸透浴において、Middlebrook富化のMiddlebrook 7H10 Agar中で一晩培養した。一晩培養物の1:20希釈物を適切な試験培地で作製し、接種して10から10CFU/mlの最終濃度を得た。
MBC試験は、MIC試験試料からの試料を新鮮な培地に移し、培養物の成長を観察することによって行った。成長は上述のように決定した。Biomek 2000 Workstationを用いるこの試験においては、96ウェルMICプレートから採取した10μlの試料を190mlの新鮮な成長培地に入れ、同じ殺生物剤濃度の勾配に対する生存生物の数を決定した。これらのプレートはMICプレートと同じ方式でインキュベートおよび読み取りを行った。新鮮な培地に移した2日後に、生存を示さなかったMICプレートからの殺生物剤の最小濃度をMBCとみなした。
表1に示される結果は、すべての市販殺生物剤がそれらの最大推奨使用濃度を下回る濃度で両株の(阻害および殺生の両者)の効力を示すことを示した。これらのデータに基づき、これらの殺生物剤が現場からの実際の金属加工用流体試料において遭遇する類似の生物に対してすべて有効であるはずであると期待された。
Figure 0004840934
実施例7
使用中のシステムからの金属加工用流体の汚染試料におけるマイコバクテリアの根絶および制御に対する最大推奨投与濃度での殺生物有効性の比較
6種類の使用中の金属加工用流体からのマイコバクテリウムの天然常在集団に対して6種類の金属加工用流体殺生物剤を評価する比較試験を行った。CMIT/MIT、CMIT/MIT/MCC、MIT、BIT、トリアジン、およびPCMC殺微生物剤を制御された実験条件下で試験し、製造者の最大推奨添加率でのそれらの効力を決定した(表2)。金属加工用流体は、殺生物剤を添加する前は、高濃度のマイコバクテリアを含むことが公知である。次に、試料に殺生物剤を添加して攪拌しながら室温でインキュベートし、48時間後に、Middlebrook 7H10培地に、望ましくない微生物の成長を抑制するために、Tween 80、グリセリン、シクロヘキサミド、クロラムフェニコール、およびゲンタマイシンと共にプレートすることによって生存しているマイコバクテリアの数を決定した。
100%の製造者最大推奨処理率で添加された様々な殺生物剤の比較効力(log殺生)を表3に示す。MITが6種類の金属加工用流体の各々において少なくとも1対数減少(90%殺生)をもたらす唯一の殺生物剤であった(表4)。MITは試験した6種類の流体のうちの5種類において少なくとも2対数減少(99%殺生)をもたらす唯一の殺生物剤でもあった。PCMCは試験した5種類の流体において少なくとも90%殺生で、および4種類の流体において最小で99%殺生で有効であった。CMIT/MITおよびCMIT/MIT/MCCは試験した6種類の流体のうちの4種類においてこれらの殺生率でのみ有効であった。トリアジンおよびBIT殺生物剤は試験した流体のいずれにおいても効力を示さなかった。
これらの結果は、特にはこれらの殺生物剤のすべてがこれらの生物の純粋培養物に対する効力を実験室の研究においてより低い濃度で従来示していたため、天然に汚染された金属加工用流体におけるマイコバクテリアの成長の制御に対して最大推奨添加濃度で驚くほど有効であるものとしてMITを示した。MITは、Rossmooreによって(米国特許第6,951,618号)マイコバクテリアに対する非常に有効な殺生物剤として従来報告されるCMIT/MIT/MCCを含めて、他のすべての殺生物剤を有意に凌いでいた。しかしながら、MIT処理法は2種類の生成物の使用を必要とせず、並びに、流体に色を加え、かつ潜在的な腐食、金属染色および廃棄物処理の問題を有する、高濃度の銅塩を必要としない。
Figure 0004840934
Figure 0004840934
Figure 0004840934
実施例8
使用中のシステムからの金属加工用流体の汚染試料におけるマイコバクテリアの根絶および制御についての、最大推奨添加濃度の50%での殺生物剤有効性の比較
実施例7からのマイコバクテリアを含有する6種類の金属加工用流体試料を、同じ殺生物剤を製造者の最大推奨率の50%の添加(表2)で用いて同じ条件下でも試験した。これらの金属加工用流体は殺生物剤を添加する前は高濃度のマイコバクテリアを含むことが公知である。次に、試料に殺生物剤を添加して攪拌しながら室温でインキュベートし、48時間後に、Middlebrook 7H10培地に望ましくない微生物の成長を抑制するための、Tween 80、グリセリン、シクロヘキサミド、クロラムフェニコール、およびゲンタマイシンと共にプレーティングすることによって生きているマイコバクテリアの数を決定した。
最大処理率の50%での投与の効力(log殺生)データを表5に示す。MITおよびCMIT/MIT/MCCが6種類の流体のうちの4種類において少なくとも1対数減少(90%殺生)をもたらし、かつ試験した6種類の流体のうちの3種類において少なくとも2対数減少(99%殺生)をもたらす唯一の殺生物剤であった(表6)。CMIT/MITは3種類の流体においてのみ最小で90%から99%の殺生を達成した。PCMCは3種類の流体において90%以上の殺生をもたらし、2種類の流体のみにおいて99%以上の殺生を達成した。トリアジンおよびBIT殺生物剤は試験した6種類の流体のいずれにおいても効力を示さなかった。
これらの結果は、特にはこれらの殺生物剤のすべてがこれらの生物の純粋培養物に対する効力を実験室の研究において低濃度で従来示していたので、天然に汚染された金属加工用流体におけるマイコバクテリアの成長の制御に対して最大推奨処理濃度の50%で添加されたときでさえ驚くほど有効であるものとしてMITを示した。推奨使用率の1/2で、MITは、Rossmoore(米国特許第6,951,618号)によってマイコバクテリアに対する非常に有効な殺生物剤として従来報告されるCMIT/MIT/MCC殺生物剤と比較して類似の効力をもたらした。しかしながら、MIT処理法は2種類の生成物の使用を必要とせず、並びに、流体に色を加え、かつ潜在的な腐食、金属染色および廃棄物処理の問題を有する、高濃度の銅塩を必要としない。
Figure 0004840934
Figure 0004840934
実施例9
侵襲性金属加工用流体中でのCMIT(MCC含有および非含有)に対するMITの安定性の比較
3種類の高pH金属加工用流体使用時希釈物中で安定性試験を行い、MIT殺生物剤の持続性を、単独で、もしくはMCCとの組み合わせで試験したCMIT殺生物剤に対して比較した。使用時希釈流体のアリコートに17.5ppm活性CMIT/MITおよびCMIT/MIT/MCCを添加し、25℃で保存した。殺生物剤濃度を、時間ゼロで、および毎週、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を用いて決定した。
結果は、MIT単独が3〜4週間後に3種類の高pH使用時希釈流体のすべてにおいて殺生物剤活性の90%超を保持することを示した(表7)。対照的に、CMIT単独は3種類の流体中で急速に分解し、3〜4週間後には何も残らなかった。300ppm MCCの添加はCMITの安定性を中程度に改善したが、3〜4週間後に16%を上回る殺生物剤が残留する流体はなかった。
これらの結果は、典型的な(高pH)金属加工用流体使用時希釈物中での、CMITに加えてMCCの組み合わせに対するMIT殺生物剤の優れた安定性を明瞭に示す。Rossmoore(米国特許第6,951,618号)は、侵襲性流体中でのCMITの分解を防止するのに有効な安定化剤として、MCCを従来報告していた。しかしながら、この効果は、ここで試験した流体においては、永続もしくは長期間高度に有効であるものとは観察されなかった。したがって、MITは、金属加工用流体におけるマイコバクテリアの制御に最も有効な殺生物剤であることが示されただけではなく、侵襲性流体における微生物制御に対して長期間持続する最も安定なイソチアゾロン殺生物剤であることも示された。
Figure 0004840934
本発明は、多量の金属塩(例えば、500ppmクエン酸モノ銅)の添加の必要がなく、かつ金属加工用流体中での安定性が制限されることが公知である塩素化イソチアゾロン、例えば、CMITを用いることのない、金属加工用流体中のマイコバクテリア、特には、M.イムノゲヌムの成長の(添加後、少なくとも48時間の)制御のための、MITの低臭気、高安定性、持続性1パック殺生物剤処理としての使用を含む。この処理は、望ましくないヒト健康効果を生じる潜在能力を有する生物、例えば、マイコバクテリア、特には、M.イムノゲヌムの濃度を制御する改善された方法を提供する。
使用方法の鍵となる部分。
1.金属加工用流体中の過敏性肺炎(HP)に関連するマイコバクテリア、特には、M.イムノゲヌムの成長を制御する方法であって、臭気が少なく、ホルムアルデヒドを放出もしくは含有せず、金属塩(特には、銅)を含まず、塩素化イソチアゾロン、特には、クロロメチルイソチアゾロ(CMIT)を含まず、かつアルカリ性金属加工用流体(pH>7)中で非常に安定であるMIT殺生物剤を1パック処理として用いる方法。
a.50から300ppmでのMITでの処理が好ましく、100−200ppmがより好ましく、125〜150ppmが最も好ましい。
b.マイコバクテリアの制御は最小で添加後48時間で達成される。
c.マイコバクテリアの濃度を現場で監視し、マイコバクテリアの成長が処理後に抑制されていることを確認する。

Claims (4)

  1. 9〜10.5のpHおよび少なくとも35℃で、かつ60℃以下の温度を有する閉鎖冷却システムにおける水を、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む組成物を添加することによって処理する方法であって前記組成物は金属イオンと、非水系溶媒と、揮発性有機化合物と、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン以外のすべての殺生物剤とを実質的に含まず金属イオンと、非水系溶媒と、揮発性有機化合物と、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン以外のすべての殺生物剤とが前記水に別に添加されることはなく並びに2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは水中で15ppmから500ppmの2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン濃度を生成するのに十分な量で存在する、方法。
  2. 2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの濃度が25ppmから300ppmである請求項1記載の方法。
  3. 2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの濃度が30ppmから200ppmである請求項2記載の方法。
  4. 金属イオンと、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン以外のすべての殺生物剤とを実質的に含まない50〜300ppmの2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを、8〜12のpHを有し2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン以外のすべての殺生物剤を実質的に含まない金属加工用流体に添加することを含む
    金属加工用流体におけるマイコバクテリアの成長を制御する方法。
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