JP4840717B2 - 4(5)−シアノイミダゾール誘導体の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬及び農薬の中間体となる4(5)−シアノイミダゾール誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
4(5)−シアノイミダゾール誘導体の製造方法として、例えば、J.Heterocycl.Chem.,(1983),20(4),p1103−54 には、4(5)−シアノ−5(4)−イミダゾールカルボン酸をニトロベンゼン溶媒中で20時間加熱還流して脱炭酸させる4(5)−シアノイミダゾールの合成方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
5(4)−イミダゾールカルボン酸誘導体の脱炭酸反応による4(5)−シアノイミダゾール誘導体の製造に用いる有機溶媒に関しては、前記文献記載のニトロベンゼンの1例のみである。しかしニトロベンゼンは、比較的毒性が高く、独特な臭気を有し、融点・沸点が高いなど、物性面において反応溶媒としては決して満足のいくものではなかった。またこの脱炭酸反応速度は、用いる有機溶媒の性質に大きく依存し、かかる理由により、実用的に用いることの出来る有機溶媒はごく一部に限られていた。本発明は、実用的に使用可能な有機溶媒の範囲を広げ、より一般的な有機溶媒中においても、円滑に、4(5)−シアノイミダゾール誘導体を良好な収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、これまで反応速度の低かった溶媒に、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩存在下または非存在下において、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等の触媒を添加することで反応速度が増大することを見出し本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、
(1)式(I)
【化3】
(式中Aは、水素原子または、C1〜C20炭化水素基、またはRX基(RはC1〜C20炭化水素基、またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を表す。)を表し、Bは水素原子及び、直鎖又は分枝鎖を有するC1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C2〜C6アルキニル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、N−無置換若しくは置換カルバモイル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、置換アミノスルホニル基を表す。)で表される4(5)−シアノイミダゾール誘導体の製造方法において、式(II)
【化4】
(式中A,Bは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物を、有機溶媒中、触媒の存在下、加熱して脱炭酸反応をさせることを特徴とする製造方法に関し、
(2)触媒が、ホスホニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載の製造方法、及び
(3)アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩存在下、脱炭酸反応を行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の製造方法、
に関する。
【0006】
【発明実施の形態】
式(I)で表される化合物中、Aは、水素原子、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ環基、またはRX基(RはC1〜C20炭化水素基、またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を表す。)を表し、Bは水素原子、直鎖又は分枝鎖を有するC1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C2〜C6アルキニル基、アラルキル基、トリチル基、アシル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、置換アミノスルホニル基を表す。
【0007】
Aとして具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、s−ヘキシル基、1,1−ジメチル−n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等C1〜C20のアルキル基、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、4−オクテニル基等のC2〜C20のアルキニル基、エチニル基、プロパルギル基、1−メチル−プロピニル基等のC2〜C20のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−メチルアダマンチル基、2−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、ノルボルニル基等のC3〜C20の脂環式炭化水素基、フェニル基、1−ナフチル基、9−アントラセニル基等のC6〜C20の芳香族炭化水素基、2−ピリジル基、3―ピリジル基、4−ピリジル基、2−フラニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−ピロロ基、2−オキサゾリル基、3−イオオキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イオチアゾリル基、1−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,3,4−トリアゾール−2−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,3,4−テトラゾール−5−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、ピラジン−2−イル、ピリダジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−6−イル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1−ピロリジニル基、1−ピペリジル基、4−モルホリニル基、2−テトラヒドロフラニル基、4−テトラヒドロピラニル基等のヘテロ環基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭化水素オキシ基、2−ピリジルオキシ基等のヘテロ環オキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ基等の炭化水素チオ基、2−ピリジルチオ基等のヘテロ環チオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、アニリノ基等の炭化水素アミノ基、2−ピリジルアミノ基等のヘテロ環アミノ基等を例示することができる。Bとして具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、ビニル基、プロパルギル基、アリル基、ベンジル基、トリチル基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル基、N、N−ジメチルカルバモイル基、フェニルスルホニル基、メチルスルホニル基、N、N−ジメチルスルファモイル基、等を例示することができる。
式(II)で表される化合物中、A、Bは、前記と同様の意味を表し、上記したのと同様の置換基を例示することができる。なお、Bの置換位置によりシアノ基の置換位置は、4位、5位のいずれかをとり得る場合がある。
【0008】
本反応に用いられるホスホニウム塩として、例えば式(III)で表される化合物を例示することができる。
【0009】
【化5】
式(III)で表される化合物中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子または、直鎖または分枝鎖を有するC1〜C20アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C2〜C6アルキニル基、アラルキル基を表し、Xはハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、硝酸イオン、酢酸イオン等の有機酸イオンを表し、nは1から2のいずれかの整数を表す。
1、R2、R3、R4として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデカノイル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、ビニル基、プロパルギル基、アリル基、ベンジル基等を例示することができる。Xとして具体的には、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオン等を例示することができる。nはXすなわち対をなす陰イオンの価数に応じて1または2のいずれかの整数を表す。
【0010】
ホスホニウム塩として具体的には、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレーと、テトラ−n−ブチルホスホニウムハイドロキサイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等を例示することができる。
【0011】
本反応に用いられる4級アンモニウム塩として、例えば式(II)で表される化合物を例示することができる。
【0012】
【化6】
【0013】
式(IV)で表される化合物中、R1,R2,R3,R4及びXは、前記と同様の意味を表し、上記したのと同様の置換基を例示することができる。nはXすなわち対をなす陰イオンの価数に応じて1または2のいずれかの整数を表す。
【0014】
4級アンモニウム塩として具体的には、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化N−ラウリルピリジニウム、塩化N−ベンジルピコリニウム、塩化トリカプリルメチルアンモニウム、沃化テトラメチルアンモニウム、沃化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムサルフェート等を例示することができる。
【0015】
本反応に用いる有機溶媒としては、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン等の芳香族系溶媒、テトラリン、デカリン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)等を例示することができ、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。用いる溶媒の量は特に制限されないが、熱効率及び、反応の安全性を考慮して式(II)で表される化合物100gに対して300ml以上用いるのが好ましい。
【0016】
反応は、有機溶媒中、加熱しながら行うのが好まく、その温度は、室温から用いる有機溶媒の還流温度の範囲である。また、還流温度としては、反応時間等を考慮すると、130〜220℃の範囲がこの好ましい。加熱方法は特に限定されないが、室温から徐々に昇温しながら加熱する方法、溶媒還流温度の熱源で一気に加熱する方法、所定の温度までに段階的に加熱する方法等、いずれの方法も採用することができる。
反応は通常常圧下で行われるが、加圧下で反応を行うこともできる。
【0017】
本反応では、ホスホニウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の塩を触媒として用いることが好ましい。用いる量は、式(II)で表される化合物に対して、1〜50mol%の範囲で用いるのが好ましい。
【0018】
本反応で用いるアルカリ金属塩とは、具体的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム等を例示することができる。また、アルカリ土類金属とは、具体的に、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどを例示することができる。
用いるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量は、特に制限されないが、式(II)で表される化合物に対して1〜200g/molの範囲で用いるのが好ましい。
【0019】
反応は、通常大気下で行うが、発生する炭酸ガスを反応系外に追い出すために、窒素等の不活性ガスを反応槽または反応液中に吹込ながら反応を行うこともできる。
以下実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
実施例1
4(5)−シアノ−5(4)−イミダゾールカルボン酸(CIMC)1.36g(10mmol)をo−ジクロロベンゼン20mlに懸濁させ、これに臭化テトラブチルホスホニウム 0.68g(2mmol)と塩化リチウム 0.5g(12mmol)を加え、昇温して4時間加熱還流させた。冷却後、高速液体クロマトグラフィーにて反応溶液を分析し、4(5)−シアノイミダゾール(CIM)の収率を求めた。
4(5)−シアノイミダゾール:収率89%
【0021】
実施例2〜3
実施例1と同様の方法で反応を行いその結果を、実施例1の結果も含めて第1表にまとめて示す。
【0022】
比較例1
臭化テトラブチルホスホニウム塩を用いない以外は実施例1と同様に反応行った。その結果をまとめて第1表に示す。
【0023】
【表1】
a)o−ジクロロベンゼン
b)テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド
c)テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド
d)CIMCに対して20mol%用いた。
e)CIMCに対して50g/mol用いた。
g)4(5)−シアノイミダゾール
f)4(5)−シアノ−5(4)−イミダゾールカルボン酸
【0024】
なお、4(5)−シアノ−5(4)−イミダゾールカルボン酸は、特開昭50−29560号公報に記載の方法で、4(5)−シアノイミダゾールは、J.Heterocycl.Chem.,(1983),20(4),p1103−54 記載の方法で合成し、標準品とした。
【0025】
【発明の効果】
以上、述べたように、本発明の方法を用いることにより、実用的に使用できる反応溶媒の選択範囲が広がり、工業的にニトロベンゼンを用いて製造する際に問題となる環境への影響を抑えることができ、工業的製造方法として有用である。

Claims (2)

  1. 式(I)
    (式中Aは、水素原子または、C1〜C20炭化水素基、またはRX基(RはC1〜C20炭化水素基、ヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を表す。)を表し、Bは水素原子及び、直鎖又は分枝鎖を有するC1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C2〜C6アルキニル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、N−無置換若しくは置換カルバモイル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、置換アミノスルホニル基を表す。)で表される4(5)−シアノイミダゾール誘導体の製造方法において、式(II)
    (式中A,Bは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物を、有機溶媒中、ホスホニウム塩および4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の存在下、加熱して脱炭酸反応をさせることを特徴とする製造方法。
  2. アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩存在下、脱炭酸反応を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
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