JP6224529B2 - ポリヒドロキシウレタンの製造方法 - Google Patents
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本発明の製造方法によって得られるポリヒドロキシウレタン化合物は、1分子中に少なくとも1個の5員環環状カーボネート基を有する化合物と、1分子中に少なくとも1個のアミノ基を有する化合物をモノマー単位として、その重付加反応により得られるものである。先にも述べたが、下記に示すように5員環環状カーボネートの開裂が2種類あるため、得られるヒドロキシウレタン化合物は、2種類の構造物が得られる。
本発明に使用される1分子中に少なくとも1個の5員環環状カーボネート基を有する化合物は、特に制限がなく、1分子中に1個以上の5員環環状カーボネート基を有するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ベンゼン骨格、芳香族多環骨格、縮合多環芳香族骨格を持つ化合物や、脂肪族系や脂環式系の化合物を使用することができる。以下に使用可能な化合物を例示する。
本発明において使用されるアミン化合物としては、従来公知のいずれのものも使用できる。好ましいものとして、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの鎖状脂肪族ポリアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−(ビスアミノメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ポリアミン、キシリレンジアミンなどの芳香環を持つ脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
[式(9)において、R13、R14、R15は、少なくとも1つが、その構造中にO、S、Nの各元素を含んでいてもよい炭素数が1〜20の分岐或いは非分岐のアルキル基であり、それ以外は水素原子である。R16、R17は、水素原子であるかCH3である。但し、R13〜R15のうち2つが水素原子の場合、R16、R17のうちの1つはCH3である。]
[式(10)において、R18、R19は、アミノ基、水酸基を置換基として有してもよい炭素数1〜20のアルキル基である。]
本発明の製造方法は、上記した環状カーボネート化合物と、アミン化合物との重付加反応によりポリヒドロキシウレタン化合物を得る際に、分子内に少なくとも1の水酸基を有し、且つ、炭素原子と、少なくとも1の窒素原子とを含んで構成された−C=N−部分を有する複素環式化合物及び/又はその互変異性体である化合物(以下、複素環式化合物等と略す場合がある)の存在下で、上記重付加反応を行うことを特徴とする。特に、複素環式化合物等の有する複素環が、5員環構造あるいは6員環構造を有することが好ましい。このようなものとしては、下記一般式(1)〜(3)で表される窒素を含む6員環構造の複素環式化合物が挙げられるが、本発明では、これらの式で表される化合物から選択されるいずれかを使用することが好ましい。
本発明の製造方法においては、上記した複素環式化合物等を必須成分として重付加反応を行うこと以外、特に限定されない。その好ましい条件を例示すると、上記した本発明を特徴づける複素環式化合物等の存在下、例えば、有機溶剤中、5〜200℃の範囲、好ましくは60〜120℃の範囲で重付加反応を行うことができる。本発明の製造方法では、このように、従来の製造条件よりも低温での製造が可能であり、例えば、60℃〜80℃の温度でも、十分な分子量のポリヒドロキシウレタン化合物を得ることができる。これに対し、反応時の温度が高い場合は着色や副反応の問題が生じるため、このように、反応時の温度を低くできたことは、本発明の製造方法は、従来方法に比べてランニングコストを低減できることに加えて、これらの問題の発生を低減することもできるので有用である。
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトート YD−128、新日鐵住金化学社製)100部と、ヨウ化ナトリウム(和光純薬(株)製)20部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。その後、反応液に300部の水を加え、生成物を析出させ、ろ別した。得られた白色粉末をトルエンにて再結晶を行い、白色の粉末52部(収率42%)を得た。
エポキシ樹脂として、エポキシ当量115のハイドロキノン型エポキシ樹脂(商品名:デナコール EX−203、ナガセケムテックス(株)製)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、下記式で表される構造の環状カーボネート化合物(A−II)を合成した。得られたA−IIは、白色の結晶であり、融点は141℃であった。また、収率は55%であり、IR分析の結果は、A−Iと同様であり、HPLC分析による純度は97%であった。A−IIの化学構造中に二酸化炭素由来の成分が占める割合は、28.0%(計算値)であった。
トルク計付き撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た化合物A−Iを78.7部、ヘキサメチレンジアミン(旭化成ケミカルズ(株)製)を21.3部、本発明で規定する複素環式化合物等として2−ヒドロキシピリジンを0.5部、さらに反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを100部加えた。そして、80℃の温度で撹拌しながら、8時間反応を行い、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂について、N,N−ジメチルホルムアミドを移動相としたGPC測定(東ソー製、GPC−8220;カラムSuperAW2500+AW3000+AW4000+AW5000;後述した実施例等も同様)したところ、その重量平均分子量は、41000(ポリスチレン換算)であった。また、得られた樹脂をIRにて分析したところ、1760cm-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。1H−NMR分析(ブルカー社製装置:溶媒DMSO−d6、温度120℃、内部標準TMS)の結果から、環状カーボネートとアミンとの付加反応が環状カーボネートの2種類の開裂に由来する結合のいずれの存在も確認され、意図した構造のポリヒドロキシウレタン樹脂が合成できていることが確認できた。なお、上記DMSO−d6は、6つの水素を重水素に置換したジメチルスルホキシドの略であり、TMSは、テトラメチルシアンの略である。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンの使用量を2.0部にした以外は、実施例1と同様に反応させてポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は43000であった。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンを、3−ヒドロキシピリジンに代えた以外は、実施例1と同様に反応させてポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は30000であった。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンを、4−ヒドロキシピリジンに代えた以外は、実施例1と同様に反応させてポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は31000であった。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンを、シアヌル酸に代えた以外は、実施例1と同様に反応させてポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は39000であった。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンを使用しなかった以外は、実施例1と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は25000であった。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンを、ピリジンに代えた以外は実施例1と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は25000であった。
実施例1で使用した2−ヒドロキシピリジンを、トリエチルアミンに代えた以外は実施例1と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は26000であった。
比較例3で使用したトリエチルアミンの使用量を2.0部とした以外は、比較例3と同様に反応させポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は27000であった。
トルク計付き撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た化合物A−Iを75.9部、m−キシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)を24.1部、本発明で規定する複素環式化合物等として2−ヒドロキシピリジンを0.5部、さらに反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを100部加えた。そして、80℃の温度で撹拌しながら、8時間反応を行い、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、33000であった。
トルク計付き撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例2で得た化合物A−IIを69.5部、m−キシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)30.5部、本発明で規定する複素環式化合物等として2−ヒドロキシピリジン0.5部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド100部を加えた。そして、80℃の温度で撹拌しながら、8時間反応を行い、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、30000であった。
トルク計付き撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た化合物A−Iを71.6部、イソホロンジアミン(デュポン(株)製)28.4部、本発明で規定する複素環式化合物等として2−ヒドロキシピリジンを0.5部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを100部加えた。そして、80℃の温度で撹拌しながら、8時間反応を行い、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、21000であった。
トルク計付き撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た化合物A−Iを75.9部、ピペラジン(広栄化学工業(株)製)を16.7部、本発明で規定する複素環式化合物等として2−ヒドロキシピリジン0.5部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド100部を加えた。そして、80℃の温度で撹拌しながら、8時間反応を行い、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、19000であった。
実施例6で使用した2−ヒドロキシピリジンをトリエチルアミンに代えた以外は、実施例6と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、15000であった。
実施例7で使用した2−ヒドロキシピリジンをトリエチルアミンに代えた以外は、実施例7と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、12000であった。
実施例8で使用した2−ヒドロキシピリジンをトリエチルアミンに代えた以外は、実施例8と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は、5000であった。
実施例9で使用した2−ヒドロキシピリジンをトリエチルアミンに代えた以外は、実施例9と同様に反応させてポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は5000であった。
実施例及び比較例で得たポリウレタン樹脂の製造方法を、下記の方法及び基準にて評価した。
実施例に記載の撹拌装置に搭載されたトルク計を用いて、反応の際の粘度を測定し、一定の粘度に到達するまでの時間を測定した。具体的には、予め、反応液の粘度と撹拌機にかかるトルクの関係を算出し、合格基準となる粘度の値を定め、トルク計の値をもって粘度測定を行い、樹脂溶液がその粘度に到達した時間を基準粘度到達時間とした。なお、8時間反応後に粘度が基準に到達していない場合には、反応時間を最大24時間まで延長した。そして、24時間後も基準粘度に到達しない場合には、その評価を「>24時間」と記載した。
実施例に記載の測定装置及び条件にて測定した。具体的には、実施例に記載した装置で8時間反応させた各樹脂溶液について、N,N−ジメチルホルムアミドを移動相としたGPC測定(東ソー製、GPC−8220;カラムSuperAW2500+AW3000+AW4000+AW5000)で重量平均分子量を測定し、得られた測定値で比較し、評価した。
実施例及び比較例の方法で得た各ポリウレタン樹脂でフィルムをそれぞれ作製し、JISK6251に準拠して、得られたフィルムの破断点強度をそれぞれ測定した。具体的には、8時間反応させて得られた樹脂溶液を用いて、厚み25μmのキャストフィルムを作製し、得られたフィルムからJIS3号ダンベルを切り出した後、オートグラフにて室温(25℃)で測定した。得られた破断点強度の測定値を下記の5段階にわけ評価した。
A:50MPa以上
B:30MPa以上〜50MPa未満
C:20MPa以上〜30MPa未満
D:10MPa以上〜20MPa未満
E:10MPa未満
Claims (7)
- 1分子中に少なくとも1個の5員環環状カーボネート基を有する化合物と、1分子中に少なくとも1個のアミノ基を有する化合物との重付加反応によりポリヒドロキシウレタン化合物を得る際に、
炭素原子と、少なくとも1の窒素原子とを含んで構成された−C=N−部分を有する複素環式化合物及び/又はその互変異性体であって、且つ、複素環の環上に少なくとも1の水酸基が直接置換している構造の、上記重付加反応の触媒として機能し得る化合物の存在下で、上記重付加反応を行うことを特徴とするポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。 - 前記複素環式化合物及び/又はその互変異性体である化合物が、5員環構造あるいは6員環構造を有する請求項1に記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
- 前記複素環式化合物が、下記一般式(1)〜(3)で示される少なくともいずれかの化合物である請求項1に記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
[ただし、式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つが水酸基であり、それ以外は、水素原子であるか、または、その構造中にO、S、Nの各元素を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基である。]
[ただし、式(2)において、R6、R7、R8のうちの少なくとも1つが水酸基であり、それ以外は、水素原子であるか、または、その構造中にO、S、Nの各元素を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基である。]
[ただし、式(3)において、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 のうちの少なくとも1つが水酸基であり、それ以外は、水素原子であるか、アミノ基、または、その構造中にO、S、Nの各元素を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基であり、R 11 、R 12 は環化していてもよい。] - 前記1分子中に少なくとも1個の5員環環状カーボネート基を有する化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素を原料として製造されたものであり、製造されるポリヒドロキシウレタン化合物中の−O−CO−結合が、二酸化炭素由来のものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
- 前記複素環式化合物及び/又はその互変異性体の使用量が、前記5員環環状カーボネート基有する化合物と前記アミノ基を有する化合物の混合物100質量部当たり、0.1〜20.0質量部の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
- 前記1分子中に少なくとも1個のアミノ基を有する化合物のアミノ基のうち、少なくとも1つのアミノ基が、H2N−CH2−以外の第1級アミノ基又は第2級アミノ基である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
- 前記1分子中に少なくとも1個のアミノ基を有する化合物が、イソホロンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、メチルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1,2−ジアミノブタン、ピペラジン、1,6−シクロヘキサンジアミン、3−アミノピロリジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン及びα,ω−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレングリコールエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン化合物の製造方法。
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