しかしながら、特許文献1に記載のタイヤ故障原因の定量解析方法では、例えば、多数のデータを得るために、モニタ対象となる多くの一般ユーザの車両に加速度センサを搭載する場合、例えば、この加速度センサにおける各測定方向と実際の車両の前後・左右・上下方向(走行軸方向とこれに直交する方向)とを正確に合わせることが非常に困難であり、これにより、精度のよい加速度データを得ることができないことがあった。すなわち、加速度センサによる測定結果が車両に対する加速度センサの設置傾きの影響を受けたままの測定値となり、これにより、車両の前後・左右・上下方向に対する正確な加速度を得ることができず、この結果、例えば、車両の加速度に基づいた種々の評価も正確性に欠けることがあった。
そこで本発明は、加速度の測定精度を向上することができる加速度解析装置、加速度解析方法及びソフトウェアプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による加速度解析装置では、移動体に作用する少なくとも2方向の加速度を同期して測定可能な加速度測定手段と、前記加速度測定手段が測定した前記2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する二次元頻度分布作成手段と、前記二次元頻度分布に基づいて前記移動体に対する前記加速度測定手段の設置偏向角を算出する設置偏向角算出手段と、前記設置偏向角に基づいて前記加速度測定手段が測定した加速度を補正する加速度補正手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明による加速度解析装置では、前記設置偏向角は、前記加速度測定手段が測定した加速度測定方向と、前記移動体において実際に加速度の出現頻度が最も高い基準加速度方向とがなす角度であることを特徴とする。
請求項3に係る発明による加速度解析装置では、前記加速度測定手段により所定距離又は所定時間ごとに同期して測定された前記移動体の前記2方向の加速度を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする。
請求項4に係る発明による加速度解析装置では、前記設置偏向角算出手段は、前記2方向のうちの少なくとも一方において、前記二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線を前記加速度測定方向に沿った設置偏向角算出線に設定し、該設置偏向角算出線と前記基準加速度方向に沿った基準線との角度を前記設置偏向角として算出することを特徴する。
請求項5に係る発明による加速度解析装置では、前記設置偏向角算出手段は、前記二次元頻度分布における最大加速度と最小加速度とを結んだ線を前記設置偏向角算出線に設定することを特徴する。
請求項6に係る発明による加速度解析装置では、前記設置偏向角算出手段は、前記二次元頻度分布における各加速度の最大頻度を結んだ線を前記設置偏向角算出線に設定することを特徴する。
請求項7に係る発明による加速度解析装置では、前記基準加速度方向は、前記移動体の前後方向及び該前後方向に直交する左右方向に設定されることを特徴とする。
請求項8に係る発明による加速度解析装置では、前記加速度測定手段は、さらに、前記移動体の前後方向及び左右方向に直交する上下方向の加速度を前記2方向の加速度の測定と同期して測定可能であり、前記二次元頻度分布作成手段は、さらに、前記前後方向と前記上下方向の加速度に関する二次元頻度分布、及び、前記左右方向と前記上下方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成可能であり、前記設置偏向角算出手段は、各々の前記二次元頻度分布に基づいてそれぞれ設置偏向角を算出可能であり、前記加速度補正手段は、各々の前記設置偏向角に基づいて各方向の加速度を補正可能であることを特徴とする。
請求項9に係る発明による加速度解析装置では、前記二次元頻度分布作成手段は、104組以上の加速度データに基づいて前記二次元頻度分布を作成することを特徴とする。
請求項10に係る発明による加速度解析装置では、前記加速度補正手段により補正された前記加速度に基づいて、タイヤを有する前記移動体のタイヤ使用条件の厳しさを解析する走行シビアリティ解析手段を備えることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項11に係る発明による加速度解析方法では、移動体に作用する少なくとも2方向の加速度を加速度測定手段により同期して測定する加速度測定工程と、前記加速度測定工程で測定した前記2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する二次元頻度分布作成工程と、前記二次元頻度分布に基づいて前記移動体に対する前記加速度測定手段の設置偏向角を算出する設置偏向角算出工程と、前記設置偏向角に基づいて前記2方向の加速度を補正する加速度補正工程とを備えることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項12に係る発明によるソフトウェアプログラムでは、移動体に作用する少なくとも2方向の加速度を加速度測定手段により同期して測定する加速度測定処理と、前記加速度測定処理で測定した前記2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する二次元頻度分布作成処理と、前記二次元頻度分布に基づいて前記移動体に対する前記加速度測定手段の設置偏向角を算出する設置偏向角算出処理と、前記設置偏向角に基づいて前記2方向の加速度を補正する加速度補正処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
請求項1に係る発明による加速度解析装置によれば、加速度測定手段により同期して測定された移動体の2方向の加速度に関する二次元頻度分布を二次元頻度分布作成手段により作成し、設置偏向角算出手段によりこの二次元頻度分布に基づいて設置偏向角を算出し、加速度補正手段によりこの設置偏向角に基づいて加速度を補正することから、加速度測定手段を移動体に設置する際に、加速度測定手段の測定方向に設置偏向角が生じても、この設置偏向角に基づいて加速度測定手段により測定された加速度を補正するので、加速度の測定精度を向上することができる。
請求項2に係る発明による加速度解析装置によれば、設置偏向角が移動体において実際に加速度の出現頻度が最も高い基準加速度方向に対する加速度測定手段の加速度測定方向のずれ量に相当することから、この設置偏向角に応じて加速度を補正することで移動体に対する加速度測定手段の設置誤差の影響を加速度から排除することができるので、適正に補正された加速度を得ることができる。
請求項3に係る発明による加速度解析装置によれば、記憶手段により加速度測定手段が所定距離又は所定時間ごとに同期して測定した移動体の2方向に対する1対の加速度データを記憶するので、移動体が所定距離又は所定時間の間に2方向に受けた加速度を解析に利用することができる。
請求項4に係る発明による加速度解析装置によれば、加速度測定手段の加速度測定方向が二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線方向として現れることから、この稜線を設置偏向角算出線とし、移動体において加速度の出現頻度が最も高い基準加速度方向に沿った基準線に対するこの設置偏向角算出線の傾きを算出することで、設置誤差としての設置偏向角を容易に算出することができる。
請求項5に係る発明による加速度解析装置によれば、加速度測定手段により測定される各方向に対する加速度は、加速度測定方向に作用した際に最大値となることから、各方向における最大加速度と最小加速度とを結ぶことで設置偏向角算出線を設定することができ、これにより、少ない演算量で設置偏向角算出線を迅速に設定することができる。
請求項6に係る発明による加速度解析装置によれば、二次元頻度分布における各加速度の最大頻度を結んだ線を設置偏向角算出線に設定することから、多数の点から二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線を抽出することができるので、より正確に設置偏向角算出線を設定することができる。
請求項7に係る発明による加速度解析装置によれば、移動体の前後方向及びこの前後方向に直交する左右方向が基準加速度方向であることから、移動体の純粋な前後方向及び左右方向に対する加速度測定手段の設置偏向角を適正に補正することができるので、移動体の純粋な前後方向及び左右方向に対する精度の高い加速度を得ることができる。
請求項8に係る発明による加速度解析装置によれば、移動体の前後方向と左右方向に対する加速度測定手段の設置誤差に加え、前後方向と上下方向に対する設置誤差及び左右方向と上下方向に対する設置誤差の影響をも排除することができるので、さらに高精度な加速度を測定することができる。
請求項9に係る発明による加速度解析装置によれば、多数の加速度データに基づいて二次元頻度分布を作成することから、この二次元頻度分布をほぼ正規分布としてみることができ、これにより、二次元頻度分布を作成し設置偏向角を算出する際に、加速度測定手段により測定された加速度データのうちの特異な加速度データの影響を緩和することができ、よって、設置偏向角をより正確に算出することが可能となる。
請求項10に係る発明による加速度解析装置によれば、加速度測定手段の設置誤差である設置偏向角に応じて補正された高精度の加速度を用いて、走行シビアリティ解析手段により移動体のタイヤ使用条件の厳しさを定量的に解析することができるので、タイヤの摩耗の評価をより正確に行うことができる。
請求項11に係る発明による加速度解析方法によれば、加速度測定手段により同期して測定された移動体の2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成し、この二次元頻度分布に基づいて設置偏向角を算出し、この設置偏向角に基づいて加速度を補正することから、加速度測定手段を移動体に設置する際に、加速度測定手段の測定方向に設置偏向角が生じても、この設置偏向角に基づいて加速度測定手段により測定された加速度を補正するので、加速度の測定精度を向上することができる。
請求項12に係る発明によるソフトウェアプログラムによれば、加速度測定手段により同期して測定された移動体の2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成し、この二次元頻度分布に基づいて設置偏向角を算出し、この設置偏向角に基づいて加速度を補正することから、加速度測定手段を移動体に設置する際に、加速度測定手段の測定方向に設置偏向角が生じても、この設置偏向角に基づいて加速度測定手段により測定された加速度を補正するので、加速度の測定精度を向上することができる。
以下に、本発明に係る加速度解析装置、加速度解析方法及びソフトウェアプログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施形態に係るDSN解析装置の構成を示す概略ブロック図、図2は、本発明の実施形態に係るDSN解析装置が解析するタイヤの子午面を含む一部の断面を示す一部断面図、図3は、本発明の実施形態に係るDSN解析装置における加速度測定方向と基準加速度方向を説明する概略図、図4は、本発明の実施形態に係るDSN解析装置によるDSN解析方法の処理手順を示すフローチャート、図5は、本発明の実施形態に係るDSN解析装置の二次元頻度分布作成部が作成する二次元頻度分布の一例を示す分布図、図6は、本発明の実施形態に係るDSN解析装置のDSN解析部が作成する2方向の加速度頻度分布の一例を示す分布図である。
図1に示すように、本実施形態の加速度解析装置としてのDSN解析装置10は、タイヤ1などに関する耐摩耗性評価の1つとして市場モニタ等の車両8の加速度を測定し、走行条件による摩耗の厳しさを評価するものである。すなわち、このDSN解析装置10は、車両8の前後方向及びこれに直交する左右方向の加速度を測定可能な加速度センサを車両に搭載し、各々の方向に対する加速度を独立に測定し、この2方向の加速度に関する頻度分布解析を実行し、前後方向及び左右方向に対するタイヤ使用条件の厳しさを定量的に示す値、いわゆる、DSN(Driving severity Number)を算出し、これを用いて、タイヤ1の摩耗を評価するものである。なお、以下の説明では、本実施形態の加速度解析装置をDSN解析装置10に適用して説明するが、移動体として下記で説明する車両8の他、飛行機、船舶、潜水艦、人物、動物など種々の移動する物体の加速度を測定し種々の評価を行う他の装置にも適用可能である。
ここで、加速度解析装置としてDSN解析装置10による解析方法、すなわち、本発明の加速度解析方法としてのDSN解析方法を適用する対象である移動体としての車両8に装着されるタイヤ1について説明する。タイヤ1は、図2に示すように、カーカスや補強ベルト等をゴム材料によって被覆した複合材料であり、トレッド面5が地面と接地する。タイヤ内面4とトレッド面5との間にはアンダートレッド6が設けられている。そして、トレッド面5とアンダートレッド6との間のゴム層をキャップトレッド7といい、キャップトレッド7を構成するゴム材料をトレッドゴムという。トレッド面5には複数の溝2及び複数のブロック3が形成されている。そして、複数の溝2及び複数のブロック3により、トレッド面5にはトレッドパターンが形成される。
タイヤ1が車両8に取り付けられて転動すると、トレッドゴムが摩耗する結果、タイヤ1のトレッド面5などが摩耗する。そして、このトレッド面5などの摩耗量は、当該面に作用する摩擦力、ひいては当該面に作用する加速度と比例関係にある。したがって、車両8のタイヤ使用条件の厳しさをこの加速度に基づいたDSNにより定量的に解析することで、タイヤ1の摩耗を評価したり、摩耗量を推定したりすることが可能となる。
ここで、DSNは、例えば、車両8の各方向、ここでは2方向(前後、左右方向)に対する加速度を一定距離ごと(例えば、タイヤ1回転分)に同期して測定し、各方向における一定距離ごとの加速度の総和として算出することができる。さらに具体的には、DSNは、各方向における一定距離ごとの加速度の二乗の値と当該加速度の度数との積の総和に基づく値として算出することができ、すなわち、このDSNは、タイヤ1に作用するストレスの総和に応じた値となる。したがって、例えば、DSNが大きくなればなるほど加速度を受けた量が大きいということになるので、タイヤ1にとって摩耗しやすい環境にあった、という評価を得ることができる。そして、この評価値としてのDSN自体から、異なる種類のタイヤ1の摩耗を相対的に評価したり、タイヤ1の摩耗量を推定したりすることができる。
以下、DSN解析装置10及びDSN解析装置10によるDSN解析方法について詳細に説明する。
本実施形態のDSN解析装置10は、図1に示すように、加速度測定手段としての2軸加速度センサ11と、入力装置12と、ディスプレイ13と、演算装置20を備える。演算装置20は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、4つのタイヤ1が装着された車両8の2方向の加速度を測定する2軸加速度センサ11、種々の操作、情報を入力可能な入力装置12、種々の解析結果、情報を表示可能なディスプレイ13が接続されている。
演算装置20は、処理部21及び記憶手段としての記憶部22を備え、この処理部21と記憶部22とは互いに接続されている。上述の2軸加速度センサ11、入力装置12、ディスプレイ13は、入出力ポートを介してこの演算装置20内の処理部21に接続されている。
記憶部22は、本発明の加速度解析方法としてのDSN解析方法を実現するコンピュータソフトウェアプログラムを格納している。ここで、記憶部22は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
なお、上記コンピュータソフトウェアプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータソフトウェアプログラムとの組み合わせによって、本発明に係る加速度解析方法としてのDSN解析方法を実現できるものであってもよい。また、処理部21の機能を実現するための上記コンピュータソフトウェアプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータソフトウェアプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより本発明に係る加速度解析方法としてのDSN解析方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。また、記憶部22は、処理部21に内蔵されるものであっても、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。
処理部21は、メモリ(図示省略)及びCPU(図示省略)により構成されている。前記2軸加速度センサ11で測定したデータから車両8の正確な加速度やDSNを算出し、タイヤ1の摩耗を評価、類推する際には、処理部21は、予め設定されているDSN解析方法の手順に基づいて前記コンピュータソフトウェアプログラムを当該処理部21に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部21は、適宜記憶部22へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。
なお、この処理部21は、前記コンピュータソフトウェアプログラムの代わりに専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。さらに、上記DSN解析装置10は、入力装置12、ディスプレイ13等を備えた端末装置から、通信により処理部21や記憶部22にアクセスするものであってもよい。また、DSN解析装置10は、2軸加速度センサ11と共に入力装置12、ディスプレイ13及び演算装置20も車両8に搭載してもよいし、2軸加速度センサ11のみを車両8に搭載してもよい。2軸加速度センサ11のみを車両8に搭載する場合、2軸加速度センサ11は、電波などの搬送波や各種記録媒体によって無線で測定結果を演算装置20に送信するようにしてもよい。
入力装置12は、キーボード、マウス、ディスプレイ13上に形成されたタッチパネル等の入力デバイスを使用することができ、ディスプレイ13を視認しながら情報を入力できるようになっている。入力装置12で入力されたこれらの各情報は、演算装置20に入力される。ディスプレイ13は、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなど表示内容を視認することができるものであれば、どのようなものでもよい。このディスプレイ13は、例えば、後述する二次元頻度分布作成部23により作成された二次元頻度分布(二次元ヒストグラム)やDSN解析部26による解析結果などを表示することができる。なお、本図中では、入力装置12、ディスプレイ13は、演算装置20に外付けするものとして図示されているが内蔵されていてもよい。
2軸加速度センサ11は、車両8に作用する2方向の加速度を測定可能なセンサであり、車両8の前後方向(走行軸方向)及びこの前後方向に直交する左右方向の加速度を測定する。この2軸加速度センサ11は、予め設定された所定距離ごとに同期して2方向の加速度をそれぞれ測定する。すなわち、車両8の移動距離を測定可能な距離センサの出力に応じて一定の距離間隔ごとに同期して車両8の前後方向及び左右方向の加速度を測定する。ここでは、予め設定される所定距離は、タイヤ1の1回転分の距離とし、すなわち、2軸加速度センサ11は、タイヤ1の回転パルスあるいは車両8のプロペラシャフトの回転パルスなどを不図示のセンサから取得し、このパルス信号に応じて同期して2方向の加速度を1対として測定する。そして、2軸加速度センサ11は、同期して測定した2方向に対する1対の加速度データを演算装置20に出力する。記憶部22は、2軸加速度センサ11により同期して測定された車両8の2方向に対する1対の加速度データを記憶する。
この2軸加速度センサ11は、車両8において、タイヤ1に作用する方向の加速度を精度よく測定できる位置に設けられる。ここで、2軸加速度センサ11が車両8の加速度を測定可能な2方向とは、上述したように、車両8の前後方向及び左右方向である。
ところで、このようなDSN解析装置10では、例えば、多数のデータを得るために、モニタ対象となる多くの一般ユーザの車両8に2軸加速度センサ11を搭載することがある。この場合、この2軸加速度センサ11が加速度を測定する前後方向及び左右方向(以下特に断りのない限り、「加速度測定方向」という)と、実際の車両8の前後方向(走行軸方向)及び左右方向(以下特に断りのない限り、「基準加速度方向」という)とを正確に合わせることが非常に困難である。すなわち、2軸加速度センサ11が車両8に搭載された際に、2軸加速度センサ11における加速度測定方向としての前後方向及び左右方向が車両8における基準加速度方向としての前後方向及び左右方向に対して設置偏向角θを有してしまうことがある。ここで、設置偏向角θは、2軸加速度センサ11を車両8に設置する際に生じる設置誤差に応じた値である。
そして、このように2軸加速度センサ11を車両8に設置する際に設置偏向角θが生じてしまうと、精度のよい加速度データを得ることができないおそれがある。すなわち、2軸加速度センサ11による測定結果が車両8に対する2軸加速度センサ11の設置誤差としての設置偏向角θの影響を受けたままの測定値となり、これにより、車両8の前後・左右方向に対する正確な加速度を得ることができず、この結果、上記のような車両8の加速度に基づいたDSN解析などの種々の評価も正確性に欠けるおそれがある。
ここで図3を参照して、車両8に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θと2軸加速度センサ11が測定する加速度の誤差との関係について説明する。まず、2軸加速度センサ11における加速度測定方向としての測定前後方向xと測定左右方向yとは直交し、車両8における基準加速度方向としての基準前後方向Xと基準左右方向Yとは直交している。そして、2軸加速度センサ11が車両8に設置偏向角θを有して搭載された場合、測定前後方向xと基準前後方向Xとがなす角度、測定左右方向yと基準左右方向Yとがなす角度は、設置誤差としての設置偏向角θとなる。ここで、例えば、基準前後方向Xの前方に対する加速度G1が車両8に作用したとすると、測定前後方向xが基準前後方向Xに対して、測定左右方向yが基準左右方向Yに対してそれぞれ設置偏向角θを有しているがために、実際には基準加速度方向としての基準前後方向Xのみに作用している加速度G1は、加速度測定方向としての測定前後方向x成分の加速度G1xと測定左右方向y成分の加速度G1yとに分解されて測定されてしまう。このようにして、設置偏向角θの影響で2軸加速度センサ11に測定される加速度に誤差が生じてしまう。
そこで、本実施形態のDSN解析装置10では、図1に示すように、演算装置20内の処理部21に、二次元頻度分布作成手段としての二次元頻度分布作成部23と、設置偏向角算出手段としての設置偏向角算出部24と、加速度補正手段としての加速度補正部25を設けることで、加速度の測定精度の向上を図っている。
二次元頻度分布作成部23は、2軸加速度センサ11が測定した2方向の加速度に関する二次元頻度分布(二次元ヒストグラム)を作成する。設置偏向角算出部24は、二次元頻度分布作成部23により作成された二次元頻度分布に基づいて車両8に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θを算出する。加速度補正部25は、設置偏向角算出部24が算出した設置偏向角θに基づいて2軸加速度センサ11が測定した加速度を補正する。なお、本実施形態のDSN解析装置10では、演算装置20内の処理部21にさらに、走行シビアリティ解析手段としてのDSN解析部26を設けている。このDSN解析部26は、加速度補正部25により補正された加速度に基づいて、車両8のタイヤ使用条件の厳しさを定量的に示すDSNを算出し、このDSNに基づいてタイヤ1の解析を行う。
以下、図4のDSN解析方法の処理手順を示すフローチャートを参照して、加速度解析方法としてのDSN解析方法について詳細に説明する。
まず、DSN解析装置10は、2軸加速度センサ11により車両8に作用する2方向の加速度を同期して測定し、この2軸加速度センサ11は測定した加速度の加速度データを演算装置20に送信し、記憶部22は2軸加速度センサ11により所定距離ごとに同期して測定された車両8の2方向に対する1対の加速度データを各々記憶していく(S100)。
ここで、本実施形態では、2軸加速度センサ11が測定し、記憶部22が記憶する2方向に対する1対の加速度データの組み合わせの数は、例えば、500km以上の走行距離に応じた数、ここでは、104組以上とする。すなわち、本実施形態では、次のステップ(S102)において、二次元頻度分布作成部23は、104組以上の2方向の加速度データに基づいて二次元頻度分布を作成することとなる。これにより、二次元頻度分布に基づいて設置偏向角θを算出する際に、2軸加速度センサ11により測定された加速度データのうちの特異な加速度データの影響を緩和することができ、言い換えれば、二次元頻度分布作成部23により作成される二次元頻度分布をほぼ正規分布としてみることができ、この結果、二次元頻度分布に基づいた設置偏向角θを正確に算出することが可能となる。
なお、2軸加速度センサ11により測定された加速度データの解析は、上記一定区間の加速度データをすべて取得してからまとめ実行してもよいし、車両8の走行に伴って、データの取得に対してリアルタイムに行ってもよいし、これらの組み合わせでもよい。本実施形態では、上記一定区間の加速度データを測定した後にまとめて解析する場合で説明する。
次に、DSN解析装置10は、二次元頻度分布作成部23により2軸加速度センサ11が測定した2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する(S102)。二次元頻度分布は、図5に一例を示すように、ここでは、縦軸を基準加速度方向としての基準前後方向Xに対する加速度GX、横軸を基準加速度方向としての基準左右方向Yに対する加速度GYとし、2方向に対する1対の加速度データの頻度分布を3次元的に積み上げた形式で作成する。なお、ここでは、基準前後方向Xに対する前方への加速度の符号を正、後方への加速度の符号を負とし、基準左右方向Yに対する右方への加速度の符号を正、左方への加速度の符号を負としている。
そして、DSN解析装置10は、設置偏向角算出部24により二次元頻度分布作成部23が作成した二次元頻度分布に基づいて車両8に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θを算出する(S104)。ここで、この車両8が通常の走行を行えば、一般には統計学的に多数のサンプリングを行えば、純粋な方向(走行軸方向及びこれに直交する方向)に対する加速度、すなわち、基準加速度方向としての車両8の基準前後方向Xに対する加速度及び基準左右方向Yに対する加速度の出現頻度が他の方向に対する出現頻度よりも高くなることが見出された。つまり、縦軸を基準加速度方向としての基準前後方向Xに対する加速度GX、横軸を基準加速度方向としての基準左右方向Yに対する加速度GYとした図5の二次元頻度分布において、この縦軸及び横軸に平行な線上に各方向における加速度の最大頻度の稜線が現れるはずである。ところが、上記のように2軸加速度センサ11を車両8に設置する際に、設置誤差として設置偏向角θが生じてしまうと、図3で上述したように、仮に基準前後方向Xの前方に対する加速度G1が車両8に作用しても、加速度測定方向としての測定前後方向x成分の加速度G1xと測定左右方向y成分の加速度G1yとに分解されて測定されてしまうことから、各方向における加速度の最大頻度の稜線は、二次元頻度分布の縦軸及び横軸に平行な線に対して設置偏向角θだけ傾いて現れてしまう。言い換えれば、二次元頻度分布の縦軸、横軸の方向が各基準加速度方向X、Yに相当する方向である一方、二次元頻度分布の各方向における加速度の最大頻度の稜線方向が各加速度測定方向x、yに相当する方向となる。
そこで、本実施形態の設置偏向角算出部24は、二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線を加速度測定方向に沿った設置偏向角算出線Lx、Lyに設定し、基準加速度方向に沿った基準線LX、LYとこの設置偏向角算出線Lx、Lyとの角度を設置偏向角θとして算出する。すなわち、設置偏向角算出部24は、前後方向に対応した設置偏向角算出線Lxと基準線LX(GY=0)との角度、左右方向に対応した設置偏向角算出線Lyと基準線LY(GX=0)との角度を設置偏向角θとして算出する。なお、本実施形態では、上述したように、加速度測定方向としての測定前後方向xと測定左右方向yとは直交し、基準加速度方向としての基準前後方向Xと基準左右方向Yとは直交していることから、前後方向に対応した設置偏向角θと左右方向に対応した設置偏向角θとは等しいので、少なくとも前後方向又は左右方向のいずれか一方の設置偏向角θを算出すればよい。
ここで、設置偏向角算出部24は、二次元頻度分布の各方向において最大加速度と最小加速度とを結んだ線をそれぞれの方向の設置偏向角算出線Lx、Lyに設定する。本実施形態では、上述したように、基準前後方向Xに対する前方への加速度の符号を正、後方への加速度の符号を負とし、基準左右方向Yに対する右方への加速度の符号を正、左方への加速度の符号を負としていることから、設置偏向角算出部24は、前方への最大加速度のポイントと後方への最大加速度のポイントとを結んだ稜線を前後方向に対応した設置偏向角算出線Lxとし、右方への最大加速度のポイントと左方への最大加速度のポイントとを結んだ稜線を左右方向に対応した設置偏向角算出線Lyとする。これは、2軸加速度センサ11により測定される各方向に対する加速度は、加速度測定方向としての測定前後方向x又は測定左右方向yに作用した際に最大値となる。すなわち、前後方向において前方への最大加速度のポイントと後方への最大加速度のポイントは、加速度測定方向としての測定前後方向xに沿った加速度が最大頻度となる稜線上にあるはずであり、したがって、前方への最大加速度のポイントと後方への最大加速度のポイントとを結ぶことで、上記稜線に相当する設置偏向角算出線Lxを設定することができる。設置偏向角算出線Lyについても同様である。
なお、設置偏向角算出部24は、二次元頻度分布における各加速度の最大頻度を結んだ線を設置偏向角算出線Lx、Lyに設定するようにしてもよい。この場合、前後方向に対する各加速度において最大頻度となるポイントを、例えば、最小二乗法等により直線回帰することで、この回帰直線を設置偏向角算出線Lxとして設定することができる。設置偏向角算出線Lyについても同様である。このようにすることで、最大加速度のポイントを結んで設置偏向角算出線Lx、Lyを設定する場合に比べて演算量が増加するものの、より正確に設置偏向角算出線Lx、Lyを設定することができる。
次に、DSN解析装置10は、演算装置20により設置偏向角算出部24が算出した設置偏向角θが1°以上であるか否かを判定する(S106)。設置偏向角θが1°以上であると判定された場合(S106:Yes)、加速度補正部25により加速度の補正を行う(S108)。設置偏向角θが1°よりも小さいと判定された場合(S106:No)、DSN解析部26によりDSNの解析を行う(S110)。ここで、設置偏向角θが1°以上であるか否かを判定したのは、設置偏向角θが極めて小さければ、その後の解析等にはほとんど影響が無いため、改めて加速度を補正する必要がないからである。これにより、余計な演算を防止することができ、計算速度を向上しハードウェア負荷を低減することができる。なお、ここでは設置偏向角θに対する閾値を1°としたが、これに限らず、所望の解析精度に応じて適宜設定すればよい。
DSN解析装置10は、設置偏向角θが1°以上であると判定すると(S106:Yes)、加速度補正部25により設置偏向角算出部24が算出した設置偏向角θに基づいて2軸加速度センサ11が測定した加速度を補正する(S108)。具体的には、加速度補正部25は、例えば、下記数式(1)を用いて設置偏向角θに基づいて加速度を補正する。ここで、GXは実際の基準前後方向Xへの加速度、GYは実際の基準左右方向Yへの加速度、Gxは2軸加速度センサ11が測定した測定前後方向xへの加速度、Gyは2軸加速度センサ11が測定した測定左右方向yへの加速度、θは設置偏向角を示す。
DSN解析装置10は、加速度を補正すると(S108)、S102に戻り以降の処理を繰り返し行う。ただし、ここでは、二次元頻度分布の作成及び設置偏向角θの算出を含む二次元頻度分布解析(S102、S104)は、S108において補正された後の加速度を用いて実行する。そして、S106にて、補正後の加速度に基づいて改めて算出された設置偏向角θが所定の角度よりも小さくなるまで、二次元頻度分布解析(S102、S104)及び加速度補正(S108)を繰り返し実行する。なお、S106において、加速度を補正する前の段階で設置偏向角θが1°よりも小さいと判定された場合、2軸加速度センサ11が測定した加速度Gx、Gyをそのまま実際の加速度GX、GYにしてS110に移行すればよい。
DSN解析装置10は、設置偏向角θが1°よりも小さいと判定すると(S106:Yes)、DSN解析部26により実際の加速度GX、GYに基づいて、車両8のタイヤ使用条件の厳しさを定量的に示すDSNを算出し、このDSNに基づいてタイヤ1の解析を行い(S110)、DSN解析処理を終了する。具体的には、DSN解析部26は、図6に例示すように、基準加速度方向としての基準前後方向Xに対する加速度GX及び基準左右方向Yに対する加速度GYの一次元の加速度頻度分布をそれぞれ独立に作成する。そして、各加速度頻度分布から基準前後方向Xに対するDSNと、基準左右方向Yに対するDSNとをそれぞれ1つずつ算出する。ここでは、DSN解析部26は、基準前後方向Xにおける一定距離ごとの加速度の二乗の値と当該加速度の度数との積の総和をとることで基準前後方向Xに対するDSNを算出する。基準左右方向Yに対するDSNも同様である。そして、DSN解析部26は、基準前後方向X及び基準左右方向Yに対する1対のDSNを用いて、異なる種類のタイヤ1の摩耗を相対的に評価したり、タイヤ1の摩耗量を推定して、DSN解析処理を終了する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10によれば、車両8に作用する少なくとも2方向の加速度を同期して測定可能な2軸加速度センサ11と、2軸加速度センサ11が測定した2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する二次元頻度分布作成部23と、二次元頻度分布に基づいて車両8に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θを算出する設置偏向角算出部24と、設置偏向角θに基づいて2軸加速度センサ11が測定した加速度を補正する加速度補正部25を備える。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析方法によれば、車両8に作用する少なくとも2方向の加速度を2軸加速度センサ11により同期して測定する加速度測定工程(S100)と、加速度測定工程(S100)で測定した2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する二次元頻度分布作成工程(S102)と、二次元頻度分布に基づいて車両8に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θを算出する設置偏向角算出工程(S104)と、設置偏向角θに基づいて2方向の加速度を補正する加速度補正工程(S108)を備える。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るソフトウェアプログラムによれば、車両8に作用する少なくとも2方向の加速度を2軸加速度センサ11により同期して測定する加速度測定処理(S100)と、加速度測定処理(S100)で測定した2方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成する二次元頻度分布作成処理(S102)と、二次元頻度分布に基づいて車両8に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θを算出する設置偏向角算出処理(S104)と、設置偏向角θに基づいて2方向の加速度を補正する加速度補正処理(S108)をコンピュータに実行させる。
したがって、2軸加速度センサ11により同期して測定された2方向の加速度に関する二次元頻度分布を二次元頻度分布作成部23により作成し、設置偏向角算出部24によりこの二次元頻度分布に基づいて設置偏向角θを算出し、加速度補正部25によりこの設置偏向角θに基づいて加速度を補正することから、2軸加速度センサ11を車両8に設置する際に、2軸加速度センサ11の測定方向に設置誤差が生じても、この設置誤差に応じた設置偏向角θに基づいて2軸加速度センサ11により測定された加速度を補正するので、加速度の測定精度を向上することができる。この結果、2軸加速度センサ11の設置に熟練が必要なく誰でも簡単に車両8に設置することができるので、効率的に高精度の加速度データを多数取得することができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、設置偏向角θは、2軸加速度センサ11が測定した加速度測定方向x、yと、車両8において実際に加速度の出現頻度が最も高い基準加速度方向X、Yとがなす角度である。したがって、設置偏向角θが車両8において実際に加速度の出現頻度が最も高い基準加速度方向X、Yに対する2軸加速度センサ11の加速度測定方向x、yのずれ量に相当することから、この設置偏向角θに応じて加速度を補正することで車両8に対する2軸加速度センサ11の設置誤差の影響を加速度から排除することができるので、適正に補正された加速度を得ることができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10によれば、2軸加速度センサ11により所定距離ごとに同期して測定された車両8の2方向の加速度を記憶する記憶部22を備える。したがって、記憶部22により2軸加速度センサ11が所定距離、ここでは、タイヤ1回転分ごとに同期して測定した車両8の2方向に対する1対の加速度データを記憶するので、タイヤ1が1回転する間に2方向に受けた加速度を解析に利用することができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、設置偏向角算出工程(S104)にて、設置偏向角算出部24は、2方向のうちの少なくとも一方において、二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線を加速度測定方向x、yに沿った設置偏向角算出線Lx、Lyに設定し、この設置偏向角算出線Lx、Lyと基準加速度方向X、Yに沿った基準線LX、LYとの角度を設置偏向角θとして算出する。したがって、2軸加速度センサ11の加速度測定方向x、yが二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線方向として現れることから、この稜線を設置偏向角算出線Lx、Lyとし、車両8において加速度の出現頻度が最も高い基準加速度方向X、Yに沿った基準線LX、LYに対するこの設置偏向角算出線Lx、Lyの傾きを算出することで、設置誤差としての設置偏向角θを容易に算出することができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、設置偏向角算出工程(S104)にて、設置偏向角算出部24は、二次元頻度分布における最大加速度と最小加速度とを結んだ線を設置偏向角算出線Lx、Lyに設定する。したがって、2軸加速度センサ11により測定される各方向に対する加速度は、加速度測定方向に作用した際に最大値となることから、各方向における最大加速度と最小加速度とを結ぶことで設置偏向角算出線Lx、Lyを設定することができ、これにより、少ない演算量で設置偏向角算出線Lx、Lyを迅速に設定することができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、設置偏向角算出工程(S104)にて、設置偏向角算出部24は、二次元頻度分布における各加速度の最大頻度を結んだ線を設置偏向角算出線Lx、Lyに設定してもよい。このように構成すると、二次元頻度分布における各加速度の最大頻度を結んだ線を設置偏向角算出線Lx、Lyに設定することから、多数の点から二次元頻度分布における最大頻度に応じた稜線を抽出することができるので、より正確に設置偏向角算出線Lx、Lyを設定することができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、基準加速度方向X、Yは、車両8の基準前後方向X及びこの基準前後方向Xに直交する基準左右方向Yに設定される。したがって、車両8の基準前後方向X及びこの基準前後方向Xに直交する基準左右方向Yが基準加速度方向であることから、車両8の純粋な前後方向(走行軸方向)及び左右方向(走行軸方向に直交する方向)に対する2軸加速度センサ11の設置偏向角θを適正に補正することができるので、車両8の純粋な前後方向及び左右方向に対する精度の高い加速度を得ることができる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、二次元頻度分布作成工程(S102)にて、二次元頻度分布作成部23は、104組以上の加速度データに基づいて二次元頻度分布を作成する。したがって、多数の加速度データに基づいて二次元頻度分布を作成することから、この二次元頻度分布をほぼ正規分布としてみることができ、これにより、二次元頻度分布を作成し設置偏向角θを算出する際に、2軸加速度センサ11により測定された加速度データのうちの特異な加速度データの影響を緩和することができ、よって、設置偏向角θを正確に算出することが可能となる。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るDSN解析装置10、DSN解析方法及びソフトウェアプログラムによれば、加速度補正工程(S108)にて加速度補正部25により補正された加速度に基づいて、DSN解析工程(S110)にてタイヤ1を有する車両8のタイヤ使用条件の厳しさを解析するDSN解析部26を備える。したがって、2軸加速度センサ11の設置誤差である設置偏向角θに応じて補正された高精度の加速度に用いて、DSN解析部26により車両8のタイヤ使用条件の厳しさを定量的に解析することができるので、タイヤ1の摩耗の評価をより正確に行うことができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る加速度解析装置としてのDSN解析装置、加速度解析方法としてのDSN解析方法及びソフトウェアプログラムは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、加速度測定手段は、車両8の前後方向(走行軸方向)及びこの前後方向に直交する左右方向の加速度を測定可能な2軸加速度センサ11であるものとして説明したが、さらに、車両8の前後方向及び左右方向に直交する上下方向の加速度を2方向の加速度の測定と同期して測定可能な3軸加速度センサとしてもよい。この場合、二次元頻度分布作成部23は、さらに、前後方向と上下方向の加速度に関する二次元頻度分布、及び、左右方向と上下方向の加速度に関する二次元頻度分布を作成し、設置偏向角算出部24は、各々の二次元頻度分布に基づいてそれぞれ設置偏向角θを算出し、加速度補正部25は、各々の設置偏向角θに基づいて各方向の加速度を補正すればよい。このように構成することで、前後方向と左右方向に対する加速度測定手段の設置誤差に加え、前後方向と上下方向に対する設置誤差及び左右方向と上下方向に対する設置誤差の影響をも排除することができるので、さらに高精度な加速度を測定することができる。
また、以上の説明では、2軸加速度センサ11の加速度加速度測定方向は、測定前後方向x及び測定前後方向xに直交する測定左右方向yであるものとして説明したが、2つの方向は必ずしも直交してなくてもよく、車両8に設置する前に予め一定角度に設定されていればよい。また、この2軸加速度センサ11は、所定距離(タイヤ1回転分)ごとに同期して2方向の加速度を測定するものとして説明したが、予め設定される所定時間ごとに同期して2方向の加速度を測定するようにしてもよい。
また、以上の説明では、設置偏向角算出部24により設置偏向角算出線Lx、Lyを設定するものとして説明したが、ディスプレイ13を介して二次元頻度分布を目視し、入力装置12を介して手動で設定するようにしてもよい。この場合、演算装置20での演算量をさらに抑制することができる。
また、以上の説明では、DSN解析部26は、基準前後方向Xにおける一定距離ごとの加速度の二乗の値と当該加速度の度数との積の総和をとることで、基準前後方向Xに対するDSNを算出するものとして説明したが、DSN解析部26によるDSNの算出は他の方法を用いてもよい。すなわち、例えば、DSN解析部26は、図6に示した加速度頻度分布を表す関数の積分値をDSNとして用いてもよい。基準左右方向Yに対するDSNについても同様である。