JP4838639B2 - 質量分析用基板及び質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子量の質量分析用測定対象分子を効率良く脱離化/イオン化処理でき、かつ低分子量域においても、分解物等に由来する複雑なピークの発生が少ない質量分析を、高精度で簡単に行うことを可能にした質量分析用のマトリックス化合物、質量分析用基板及び該質量分析用マトリックス化合物を用いた質量分析装置に関する。
質量分析計は、測定対象分子を何らかの方法でイオン化し、これに電界あるいは磁界を作用させ、質量/電荷数(m/z)に従って分離した後、電気的に検出した質量スペクトルから測定対象物の定性分析、定量分析を行うことができるものである。この場合、イオン化法としては、電子スプレイイオン化(ESI)、電子衝撃イオン化(EI)、化学イオン化(CI)、高速原子衝撃(FAB)、フィールドデソープション(FD)、レーザー脱離イオン化(LDI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)等の各種方法がある。例えば、レーザーイオン化質量分析計では、試料にパルスレーザ光を照射してイオン化し、そのイオンを飛行時間型等の分析部に導くことで質量スペクトル等を測定することができる。
従来、LDI法のようなレーザーイオン化質量分析計においては、まず測定対象化合物を水又は有機溶媒に溶解させた試料溶液を調製し、この試料溶液を金属製ホルダーの平滑面に塗布、乾燥させることで、試料を薄膜に形成し、この試料薄膜にレーザー光を照射すると、レーザー光が金属製試料支持基板に吸収され、照射個所で急激な温度上昇が生じ、試料のイオン化が起こるものである。
しかしながら、この試料作製方法では、レーザー光照射による測定対象分子の脱離/イオン化に加え、分解反応(以下、フラグメンテーションとも言う)も同時に発生し、測定対象分子の質量スペクトルが十分な強度で得られなかったり、分解物自体のピークも検出されるため質量スペクトルが複雑になり、その解析が困難になるという弊害が発生する。
そこで、この問題点の解決策として、グリセリンのような高粘性で低蒸気圧の液体と、金属微粒子との混合物(例えば、特許文献1)や、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッド(DHB)、シナピニックアシッド、α−シアノ−ヒドロキシ−シンナミックアシッド(CHCA)等の固体有機分子(例えば、特許文献2,3、)をマトリックスとして用いたMALDI法では、マトリックス自身が照射レーザー光のエネルギーを吸収して脱離/イオン化が起き、マトリックス中に含まれていた測定対象分子自体に対する照射レーザー光の影響が軽減されることから測定対象分子のフラグメンテーションは抑制され、高感度で検出を行うことが可能となった。このMALDI法の進歩により、従来の質量分析法では取り扱うことの出来なかった高分子量の測定対象化合物をごく僅かな量でも測定することが可能となり、生体材料や合成高分子の分析に広く用いられるようになった。
しかし、このMALDI法においても、測定対象分子の分解物は相当抑制できるものの、マトリックス自体がレーザー光を吸収することで引き起こる複雑な反応に由来したピークが多数検出されることになり、やはり低分子量域のスペクトル解析は困難な場合が多い。特に、近年のプロテオミックスやメタボロミクス分野においては単一の分子種だけではなく、血液や体液等に含有される化合物を網羅的に分析を行う必要性が高まっている。この網羅的分析の場合は、基質や代謝物等の質量数が数百程度の比較的低分子量の化合物の解析も重要情報を提供することになるが、従来のMALDI法ではマトリックス由来の複雑なピークのために、この低分子量域の解析が精度良く行えない課題が、クローズアップされている。また、合成高分子材料の分野においても、高分子材料の成型品においては酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の分子量が数百程度の添加剤を含有させることはごく一般的に行われており、高分子材料と低分子化合物を一括して分析する必要性もあり、上述の生化学における網羅的分析同様、MALDI法におけるマトリックス由来の複雑なピークは解析の支障となっている。
更に、高分子量化合物をMALDI法で分析する場合、例えば照射レーザー光の強度等の測定条件を変更することで積極的に測定対象化合物のフラグメンテーションを起こさせることが可能となる場合がある。ここで発生したフラグメントイオンを解析することにより、単なる分子量の分析に留まらず、置換基や側鎖構造と言った測定対象化合物の分子構造に関する情報を得ることも可能となる。しかし、マトリックス由来の複雑なピークが多数ある場合には、上述の測定対象化合物からのフラグメントイオンの解析においても大きな支障となる。
このような低分子量域の質量分析も同時に行えることが可能となる技術として、電解エッチングで形成した多孔質シリコン基板等の表面に微細な多孔質構造を有する試料支持基板上に直接測定対象分子を付着させた後にレーザー光照射することで、マトリックス由来の複雑なピークを出現させること無く、測定対象分子の脱離、イオン化を行う方法:SALDI(表面支援レーザー脱離イオン化)法が提案されている(例えば、特許文献4)。この方法により、効率的な脱離、イオン化及びレーザー光照射時の分解物生成抑制の両立が可能となってきたが、測定対象化合物の分子量の上限が概ね数千程度であり、それ以上の化合物の脱離、イオン化は困難であると言われている。
特開昭62−43562号公報 特開平10−182704号公報 特開2005−326391号公報 米国特許第6288390号明細書
このように、レーザー光照射による脱離、イオン化法の質量分析の技術においては、低分子量域から高分子量域までを、一括的、網羅的に検出することが困難であり、広い分子量範囲の解析を行うことができない課題がある。
従って、本発明の目的は、レーザー光照射による脱離、イオン化法の質量分析の技術において、脱離/イオン化による高分子量化合物の検出を高感度に行うと共に、実質的に低分子領域の解析に支障がでないようにフラグメンテーションを極力避けることを可能にする質量分析用マトリックス化合物及び質量分析用基板を提供することである。
本発明は、質量分析用基板において、金属若しくは半導体基板の表面にミクロポーラス膜又はメソポーラス膜を設け、更に、そのミクロ孔内又はメソ孔内にマトリックス化合物を担持させ、照射レーザー光により質量数が160未満の化合物のみを細孔外に選択的に発生させることを特徴とした質量分析用基板を提供するものである。
更に、本発明は、上記質量分析用基板を用いた質量分析装置を提供するものである。
本発明によれば、MALDI型質量分析装置、特にMALDI−IT(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ)型、MALDI−IT−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ−飛行時間)型やMALDI−FTICR(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)型の質量分析装置において、広い分子量域において高感度で夾雑物由来のシグナルが少ない質量スペクトルを得ることが可能である。
本発明の方法は、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)イオン源を有する質量分析装置を用いて、測定対象物質の質量数を測定する方法である。ここで、現時点において、MALDI法における脱離、イオン化及び、フラグメンテーションのメカニズムについては完全に解明されている状況にはない。本明細書では、現在最も多く受け入れられているメカニズムの解釈に基づいて本発明を説明する。
MALDI法による一般的な測定について解説する。ニトロアントラセン(9NA)、2,5−ジヒドロキシベンゾイックアシッド(DHB)、シナピニックアシッド、α−シアノ−ヒドロキシ−シンナミックアシッド(CHCA)等の固体有機分子をマトリックス分子とし、そのマトリックス中に測定対象分子を微量含有させた混合結晶を分析用試料支持基板上に形成させる。この時、測定対象分子は、希薄な状態であり、測定対象分子間の相互作用が無い状態になっていることが好ましい。次いでこの混合結晶にレーザー光を照射し、レーザー光を吸収したマトリックス分子が電子励起及び/或いは振動励起され気化される。マトリックス分子の気化は、単純に分子の構造を維持したまま気化するだけではなく、複雑な分解、イオン化等の光、熱反応を含む。マトリックス分子が気化される過程で、結晶中の測定対象分子も同時に気化するが、測定対象分子間の相互作用が少ない状態であれば、一分子単位に独立した状態で気化することが必要となる。レーザー光のエネルギーの大半は、マトリックス分子が吸収するため、測定対象分子自体はフラグメンテーションを起こさないのが理想的な状態である。また、実際に測定対象分子の質量が測定可能となるためには、測定対象分子がイオン化される必要があるが、このイオン化過程もマトリックス分子からのプロトネーション(プロトン付加で陽イオン生成)や、デプロトネーション(プロトン引き抜きで陰イオン生成)、ラジカルカチオン(電子の引き抜きで陽イオン生成)、ラジカルアニオン(電子の供与で陰イオン生成)、金属塩等のイオン化促進剤からのイオンの付加(金属イオンの付加:陽イオン生成、ハロゲンイオンの付加:陰イオン生成)等が知られている。
このようにMALDI法では、マトリックス分子は測定対象分子の気化(脱離)並びにイオン化の過程に深く関わり、測定対象分子を効率良く脱離・イオン化させていると考えられている。特に、MALDI法では分子量が数万以上の化合物でも測定対象分子として扱えるのは、マトリックス分子が気化する際にマトリックス分子自体並びのその分解物が測定対象分子の運び屋として作用しているからであると考えられている。
しかし、この運び屋であるマトリックス分子及びその分解物も同時にイオン化されることが多く、質量スペクトルにはこれらの化合物も招かざる客として出現してしまう。更に、このマトリックス分子の分解する反応過程は複雑であり、測定対象分子やイオン化促進剤、試料調整に用いた溶剤、或いはレーザー光強度、波長、測定対象の極性やイオンの加速電圧等、種々の測定パラメータの影響を受けるため、質量スペクトルに現れたマトリックス由来のピークは非常に複雑で、実質的に全てを同定することは不可能である。
そこで、本発明者らが鋭意検討を行った結果、レーザー光照射により質量数が160未満のもの、好ましくは質量数が50未満のものに分解される化合物をマトリックスとして選択すれば、実質的に質量スペクトルの解析においても夾雑物として支障を来たすことが殆ど無いことがわかった。MALDI法が用いられている生化学材料において、低分子量域に出現する可能性のある化合物としては、例えば必須アミノ酸では質量数が120〜200程度、単糖類が150〜180程度、DANを構成する4塩基は110〜150程度であり、合成高分子材料中に添加されるものとして使用されている可塑剤や酸化防止剤の大半も質量数が200以上の化合物である。
本発明者らは、下記一般式(1)で表される化合物を用いることで、レーザー光照射によりこれらの化合物が質量数:160未満の化合物へ分解し、質量分析結果の解析に殆ど支障を来たさないことを見出した。
上記一般式(1)において、R、R及びRはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、モルフォリノ基、アリール基から選ばれ置換基を示す。また、RとRは互いに環を形成してもよい。更にRは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基から選ばれる置換基を示す。
上記一般式(1)で表される化合物の例としては、下記化合物を挙げることが出来る。
このような化合物に対する光に対する反応全てが明確になっているわけではないが、いくつかの化合物では下記のような光分解反応の機構が解明されている。いずれの分解生成物の質量数も概ね160未満であり、更にイオン種の生成がないことより、質量スペクトルの陰イオン或いは陽イオンとして検出されることがない。
但し、これらの反応過程も限られた条件下の場合であり、マススペクトルの測定と全く同じ反応が起きるとは限らない。更に、これらの分解物の中には活性なラジカル種も含まれており、例えば下記反応式で示されるように、これらのラジカル種同士で別の質量数の大きい副生成物を生じる場合もある。
本発明者らが、更に詳細に検討を行った結果、より低分子量域における夾雑物が少ないピークを得るためには、レーザー光照射によって、より小さい単位にまで分解される化合物を用いると効果的であることを見出した。これの要件を満足する化合物としては、下記構造式で挙げられる化合物が挙げられる。
これらの化合物は、レーザー光照射時の加熱により、主に窒素ガス、二酸化炭素、一酸化炭素、水といった質量数が50未満の化合物へ分解する。更に、これらの分解生成物はラジカル種のような反応活性を有しないために、複雑な副反応が起きる確率も少ない。
但し、B−5、B−6のようなフェニルスルホニルヒドラジド系の化合物は単に窒素ガスや水の放出だけではなく、下記反応式で表されるような副生成物も生じる反応を起こす。この副生成物の中には、質量数が200〜280程度のものも含まれるため、これらの化合物が質量スペクトルにおいて、その解析に支障を来たす場合も起こりうる。
レーザー光照射により、質量数が200〜280程度の副生成物が生じたり、また、分解しないでそのまま脱離・イオン化する化合物について、更に検討を重ねた結果、これらの化合物をミクロポーラス膜のミクロ孔内又はメソポーラス膜のメソ孔内に担持させることで、レーザー光照射により、質量数が160未満、更に例示化合物B−1〜B−6を用いた場合は、質量数が50未満の化合物のみを細孔外に選択的に発生させることが可能となり、本発明においては、より効果的な結果を得ることが出来ることを見出した。
また、質量分析装置のレーザー光に必ずしも十分な光吸収が無い場合には効率的に上述のマトリックスを分解せしめることが困難となる。この場合には、照射レーザー光に吸収を有するミクロポーラス膜のミクロ孔内又はメソポーラス膜のメソ孔内に本発明のマトリックス分子を担持させることで、レーザー光エネルギーを吸収したミクロポーラス膜内又はメソポーラス膜内の細孔壁を介してそのエネルギーをマトリックス分子に伝えることが出来、結果としてレーザー光に吸収を有さないマトリックスにおいても効率的に、しかも、低分子量の化合物を選択的にミクロ孔又はメソ孔外へ発生させることが可能となることを見出した。
ここでミクロポーラス膜及びメソポーラス膜等の多孔質膜について説明する。本発明に用いるこれら多孔質膜板は、細孔径が2nm以下のミクロポーラス膜、又は細孔径が2nm〜50nmのメソポーラス膜である。細孔径が50nmを超える所謂マクロポーラス膜を使用した場合には、質量数160以上の比較的質量数の大きな化合物がマクロ孔外へ放出されることを抑制することが出来にくくなるためである。また、これらの多孔質膜を形成する素材については特に限定は無く、無機系化合物、有機系化合物、無機−有機ハイブリッド化合物を用いることが可能である。特にレーザー光照射により多孔質膜自身から夾雑物の原因となる物質の生成を鑑みた場合には、無機系材料を用いることが好ましい。
無機系のミクロポーラス、又はメソポーラス膜は従来公知のものを用いることが可能である。特にゼオライトや二酸化ケイ素によるポーラスシリカ、シリカゲルは、検討例が多く目的に応じて細孔径や比表面積を調整することを容易に行うことができる。
多孔質膜における細孔径は電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等を用いて、観測することが可能である。また、細孔構造の規則性に関しては、X線回折測定を利用することが出来る。細孔膜が規則構造を有する場合、その細孔構造の間隔d100(nm)はX線回折分析により観測されたピークの回折角2θよりブラッグの法則に基づいて以下の数式(1)で求められる。
d100=λ/2sinθ (1)
ここで、λ(nm)はX線の波長であり、本発明ではCuKαを線源に用いている。
また、MALDI法に用いるレーザー光源として現在広く使用されているのが波長:λ=337nmの窒素レーザーである。この窒素レーザーも波長に十分な吸収を有する無機素材としては、酸化チタンや酸化タングステンが挙げられる。これらを細孔壁とする多孔質酸化チタンや多孔質酸化タングステンの細孔内に、337nmの光に対して十分な吸収を有さないマトリックスを担持させた場合においても、効率良く分解反応を起こし、測定対象化合物の運び屋として作用しうる低分子量化合物を細孔外へ放出することが可能となる。
本発明のマトリックス化合物には、測定対象分子のイオン化を促進する目的で、CFCOOM(M=Li,Na,K,Ce,Ag)等の金属塩を添加して使用してもよい。また、本発明のマトリックスを2種類以上混合して用いることも可能である。更に、本発明のマトリックスに9−NA、DHB及びCHCA等の従来公知のマトリックス分子を、夾雑物のピークが測定、解析に支障を来たさない程度の範囲で混合して使用することも可能である。
本発明の質量分析用基板は、金属若しくは半導体基板の表面にミクロポーラス膜又はメソポーラス膜を設け、更に、そのミクロ孔内又はメソ孔内にマトリックス化合物を担持させ、照射レーザー光により質量分析用測定対象分子を持続的に効率良く脱離、イオン化させることができる。この質量分析用基板を用いた本発明の物質の脱離、イオン化方法での質量分析装置によれば、質量分析用測定対象分子を持続的に比較的穏やかな条件でイオン化でき、試料調製が簡単である上、質量分析時のイオン化補助剤由来のノイズを大幅に低減して、分析精度の向上を図ることができる。それ故、このイオン化方法を用いることにより、広範囲な分子量の物質を高精度で簡単に質量分析することができ、特に低分子化合物の部分構造解析、モル分布、分子量分布等を簡単に行うことができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
<測定対象物質>
トリアセチル−β−シクロデキストリン(triacetyl−β−cyclodextrin)(分子式=C8411256/分子量=2017.75、東京化成:商品コード=T1844)をテトラヒドロフランに溶解し、100μmol/Lの測定試料溶液を調製した。
<実施例1>
上記測定対象物質のテトラヒドロフラン溶液を1mL分取し、更にマトリックス分子として、上記構造式A−1で示される化合物(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、商品名:RGACURE 651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を加えてマトリックス分子の濃度が5mmol/Lの濃度になるように調製した。この混合溶液を、ピペッターにて1μL取り、ステンレス製のMALDI−TOF MS測定用の試料ターゲット基板上へ滴下して乾燥させた。
<実施例2〜10>
実施例1において、マトリックス分子を表1に示す化合物に替えた以外は、同様にして測定試料を調製して試料ターゲット基板上へ滴下して乾燥させた。
<比較例1>
実施例1において、マトリックス分子A−1の替わりに9−ニトロアントラセン(アルドリッチ製、商品番号:N10209)を用いた以外は、同様にして測定試料を調製、滴下した。
<比較例2>
実施例1において、マトリックス分子A−1の替わりにα−シアノ−ヒドロキシ−シンナミックアシッド(アルドリッチ製、商品番号:145505)を用いた以外は、同様にして測定試料を調製、滴下した。
<比較例3>
実施例1において、マトリックス分子を添加せずに、測定対象分子溶液をそのまま滴下した以外は、同様にして測定試料を調製した。
<実施例11>
20質量部のテトラエチルオルトシリケート(アルドリッチ製、商品番号=86578)に6.5質量部のトリエトキシビニルシラン(アルドリッチ製、商品番号=95080)、1質量部のテトライソプロポキシチタン(アルドリッチ製、商品番号=205273)、7.5質量部のステアリルトリメチルアンモニウム塩化物を加え混合した(Ti/Siのmol比=1/50)。ここに、0.1規定の塩酸2質量部を更に加え、30分間混合した。得られた透明な粘性のある液体をn型シリコンウエハー(アンチモンドープ、三菱住友シリコン社製)上にスピンコート(回転数:1000RPM)して60℃で1日乾燥した。
これを空気中500℃で3時間焼成することによりテンプレートのステアリルトリメチルアンモニウム塩化物を除去し、多孔質シリカ−チタニア複合材の薄膜が得られた。
この基板のX線回折分析(X‘Pert PRO、フィリップ社)を行ったところ、面間隔5nmに明確な回折ピークが観測されたので、規則性を有するメソポーラス孔構造であると言える。
上記シリコンウエハー上にメソポーラス孔を有する多孔質シリカ−チタニア膜を形成させた多孔質基板を、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(東京化成製、商品コード=H0089)中に30分間浸漬し次いでヘキサンでゆすぎ疎水化処理をした。更に、上記構造式A−1で示されるマトリックス分子のクロロホルム飽和溶液(25℃)に、疎水化処理を施した多孔質基板を3時間浸し、メタノールでかるく濯いだ。この基板を、0.6mmだけ切削したMALDI−TOF MS測定用の試料ターゲット基板へ導電性両面テープで接着して固定した。このマトリックス含有多孔質基板上に、100μmol/mLの試料溶液(テトラヒドロフラン)を1μL滴下、乾燥し測定試料を調製した。
<実施例12〜17>
実施例11において、マトリックス分子:A−1の替わりに、表1に示す化合物を用いた以外は、同様にして測定試料を調製した。
<質量スペクトルの測定>
測定は、市販のMALDI−TOF MS装置(商品名:REFLEX−III、ブルカー・ダルトニクス社製)を用いて行った。照射レーザーは窒素レーザー(波長=337nm)であり、ポジイオンの反射モード(レフレクターモード)とした。照射レーザー強度は、親イオンのピークが出始めた強度よりも2%だけ強い強度で測定し、一箇所において20パルス分のスペクトルを積算し、それを10箇所に渡り積算し、合計200パルス分のレーザー照射から得られる信号強度を合計したスペクトルを得た。
また、加速電圧26.5kVに設定し、質量数0〜2500までのピークを取り込んだ。
また、測定における低分子量域のカットオフ値は0以上、即ちカットオフ無しで、検出器に飛行してきたカチオン種を全ての領域で取り込んだ。
得られたスペクトルの評価は、測定対象分子(プロトン若しくは基板上のNa、K、Ag等の1価の金属カチオンの付加体として分子量域:2018〜2125付近に出現するピークを親イオンとした)の強度、及び、分子量域160〜100における測定分子の分解物やマトリックスより派生する夾雑物のピークの強度及び種類の多さ、更に分子量域50〜160における測定分子の分解物やマトリックスより派生する夾雑物のピークの強度及び種類の多さにより判定を行った。それぞれのスペクトルにおいて、親イオンならびに夾雑物ピークの相対的な強度を比べ、強度のまったく無いものを0、以下、強度が強くなったり、種類が増えるごとに1〜5までのランク付けを行った。評価結果を表1にまとめて示す。
以上の実施例、比較例より、本発明のマトリックス化合物を使用することにより低い分子量域における測定分子の分解物やマトリックス由来の夾雑物ピークを抑制し、親ピークを高強度で得ることが可能となることが確認される。更に、マトリックスを多孔質基板へ担持させることで、その効果が一層良く発揮されることが確認される。

Claims (3)

  1. 質量分析用基板において、金属若しくは半導体の基板上にミクロポーラス膜又はメソポーラス膜を設け、更に、そのミクロ孔内又はメソ孔内にマトリックス化合物を担持させ、照射レーザー光により質量数が160未満の化合物のみを細孔外に選択的に発生させる質量分析用基板であって、
    前記マトリックス化合物が下記一般式(1)で示される構造を有する

    (上記一般式(1)において、R 、R 及びR はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、モルフォリノ基、アリール基から選ばれ置換基を示す。また、R とR は互いに環を形成してもよい。R は水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基から選ばれる置換基を示す。)
    ことを特徴とした質量分析用基板。
  2. 質量分析用基板において、金属若しくは半導体の基板上にミクロポーラス膜又はメソポーラス膜を設け、更に、そのミクロ孔内又はメソ孔内にマトリックス化合物を担持させ、照射レーザー光により質量数が160未満の化合物のみを細孔外に選択的に発生させる質量分析用基板であって、
    前記マトリックス化合物が下記構造式群から選ばれる化合物であることを特徴とした質量分析用基板。
  3. 請求項1または2に記載の質量分析用基板と、前記質量分析用基板に向けてレーザを照射する照射部とを備える質量分析装置。
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